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特表2024-546049位置に依存した溶接パラメータのセグメント制御
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  • 特表-位置に依存した溶接パラメータのセグメント制御 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】位置に依存した溶接パラメータのセグメント制御
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20241210BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20241210BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B23K20/00 310L
B23K1/00 330D
H01R43/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528577
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022081044
(87)【国際公開番号】W WO2023083768
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021129735.4
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518322573
【氏名又は名称】シュトルンク コネクト オートメイテッド ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Strunk Connect automated solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Siegtalstrasse 20, 57548 Kirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ シュトルンク
(72)【発明者】
【氏名】ウヴェ カイル
【テーマコード(参考)】
4E167
5E051
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA08
4E167AB03
4E167AB05
4E167AB06
4E167BA22
4E167BM00
4E167DA04
5E051LA01
5E051LB01
5E051LB10
(57)【要約】
ホットクリンプ接合を形成する方法が、可能な限り定性的な変動を排除した状態で、電気導体と電気端子との間の長期間にわたって安定な電気的接続を形成できるように改善されることが望ましい。この課題を解決するために、金属工学的にそれぞれ異なる次のようなセクションを連続的に経過する、すなわち、セグメント1:時間的に並列に進行するコンパクティングおよび/または予備変形によって絶縁層が除去された外側ワイヤの完全なかつ/または部分的な共晶溶融過程によって、成形部材とワイヤの外側層および/またはリッツ線ワイヤの外側層との間に第1の接合が形成され、セグメント2:コンパクティングによって絶縁層が除去されたリッツ線の内側ワイヤ間に拡散接合および/または少なくとも部分的な溶融接合が形成され、セグメント3:ホットクリンプ複合体の無電流冷却が行われ、ここで、連続する少なくとも2つのセグメント間の切り替えが、セグメントに固有の高さ位置に到達した後にかつ/または供給されたエネルギもしくは電荷に到達した後に行われる、ことが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形部材と少なくとも1つのワイヤおよび/または金属から成る少なくとも2線の少なくとも1つのリッツ線との間にホットクリンプ接合を形成する方法であって、コンパクティングと変形とが同時に行われる際に、接合コンポーネント間の材料接続による接合および前記リッツ線のワイヤ間の材料接続による接合の双方が行われる、方法において、
金属工学的にそれぞれ異なる次のようなセクションを連続的に経過する、すなわち、
a)セグメント1:時間的に並列に進行するコンパクティングおよび/または予備変形によって絶縁層が除去された外側ワイヤの完全なかつ/または部分的な共晶溶融過程によって、前記成形部材と前記ワイヤの外側層および/または前記リッツ線ワイヤの外側層との間に第1の接合が形成され、
b)セグメント2:コンパクティングによって絶縁層が除去された前記リッツ線の内側ワイヤ間に拡散接合および/または少なくとも部分的な溶融接合が形成され、
c)セグメント3:ホットクリンプ複合体の無電流冷却が行われ、ここで、連続する少なくとも2つのセグメント間の切り替えが、セグメントに固有の高さ位置に到達した後にかつ/または供給されたエネルギもしくは電荷に到達した後に行われる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記セグメントに依存して設定された期間を超過した場合、それぞれの前記セグメントの遮断が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
電極の距離-時間軌跡が前記セグメントに依存して設定された沈み込み速度に追従し、かつ前記セグメントに固有の高さ位置を下方超過した後かつ/または所定のエネルギもしくは電荷への到達後に次のセグメントへの切り替えが行われるように、電極電流が制御される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記セグメント1のセクションaでの前記第1の接合が、はんだ付け過程によって行われる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記セグメント1のセクションaでの前記第1の接合が、コーティングされていないコンポーネントの共晶溶融過程によって行われる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記成形部材が、前記リッツ線の材料に等しいかまたは金属工学的にきわめて類似した金属でコーティングされる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記セクションaおよび/または前記セクションbおよび/または前記セクションcは、別の複数のセグメントに分割されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
それぞれのセグメントに対して、押圧力、電流特性、電流レベル、沈み込み速度、最大持続時間、エネルギまたは電荷、および切り替え高さが設定される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記切り替え高さの代わりに、電極移動距離が切り替え基準として設定されている、請求項8記載の方法。
【請求項10】
熱膨張行程とそれぞれの個別セグメントに対しての持続時間および/または移動距離および/または沈み込み速度および/またはエネルギもしくは電荷とが品質基準として使用される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つの対向する電極のための材料がそれぞれ異なる材料から成る、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
構造部材に対する電極の接触面積がそれぞれ異なっている、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ホットクリンプの前に、高さ監視を伴う予備変形が行われる、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記予備変形とホットクリンプとは、同一の設備内で同時にまたは直接に連続して実行される、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記セグメント1内での加熱の間に前記予備変形が実行される、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
プロセスに関連する全ての調整量および測定値が検出されて個別構造部材に対応付けられる、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
成形部材と少なくとも1つのワイヤおよび/または金属から成る少なくとも2線の少なくとも1つのリッツ線との間にホットクリンプ接合を形成する方法であって、コンパクティングと変形とが同時に行われる際に、接合コンポーネント間の材料接続による接合およびリッツ線のワイヤ間の材料接続による接合の双方が行われる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日一般的な制御パラメータの評価
抵抗特性:当該特性は、測定された電圧と測定された電流との商から計算される。接合ゾーン内の電圧の直接測定は技術的に実行できないので、電圧測定値には、コンポーネントおよび電極の接触抵抗ならびにコンポーネントおよび電極の材料抵抗によって誤りが生じる。しかし、大まかな方向付けは可能である。
電流特性および電圧特性:抵抗測定の場合に問題となる。
温度特性:温度は外部からのみ測定可能である。接合ゾーンの温度は直接には制御することができない。測定スポットは大抵の場合に大きすぎ、構造部材および電極を同域のものとして検出してしまう。光学システムの場合、補正係数を決定することが困難であり、一定とならない。熱電対は冷却ゾーンの領域における電極温度を測定するものである。
押圧力特性:押圧力特性を制御するための付加的な測定量である。
沈み込み距離:接合過程によって生じる電極の追従量である。区間全体が検出されるので、運動の時間特性に関する情報は得られない。
最終的な終了高さ:顧客仕様の制御である。開始高さが検出されなければ、測定値は実際の全体的な沈み込み距離に関する情報を送出しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の基礎を成す課題は、上述した欠点を回避し、定性的な変動を可能な限り排除した状態で電気導体と電気端子との間の長期間にわたって安定な電気的接続を形成し、さらにこれを迅速にかつ低コストで作製できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1記載の方法ステップによって解決される。さらなる方法ステップは請求項2から16までに記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明によるホットクリンプ過程の特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明を図面(図1)に即して詳細に説明する。図1には、本発明によるホットクリンプ過程の特性の一例が示されている。
【0007】
図1には、直前に行われる予備成形フェーズまたは予備圧着フェーズ(14)を伴うホットクリンプ過程(15)の可能な特性が例示的に示されている。後者の予備圧着フェーズは、ここでは冷間圧着フェーズ(16)と熱間圧着フェーズ(17)とから構成されている。ホットクリンプフェーズ(15)は、ここではセグメント1(10)、セグメント2a(11)、セグメント2b(12)およびセグメント3(13)の各セクションから構成されている。
【0008】
セグメント1(10)では、開始高さ4の検出が開始され、セグメント1(6)の切り替え高さを下方超過すると終了する。熱膨張行程(5)とホットクリンプ(4)の開始高さとの高さ差から、セグメント1(10)におけるエネルギ入力を推定することができる。当該初期エネルギは、セグメント1(10)における第1の接合構造(セクションa)を生じさせる。電流特性(2)は、この場合、加熱(18)中の傾斜状の電流特性と、場合によりここでの硬はんだ付け(19)中の定電流特性とに分けられる。ここでの第1の接合構造は、制限されることなく既に加熱フェーズ(18)において開始され、セグメント2(11または12)において終了することができる。接合ゾーンにおける温度の展開は、力特性(1)、電流特性(2)、開始高さ(4)、予備圧着フェーズ(14)における入熱、切り替え高さ(6+7+8)の位置および持続時間に大きく依存する。
【0009】
セグメント1(10)での第1の接合構造への到達により、さらにエネルギが、ただし変更されたレベルで、供給される。ここでは、セグメント2a+2b(20+21)において、切り替え高さ(7+8)に到達した際に、拡散接合および/または部分的な溶融接合の形成の要求に合わせて、電流(2)および力(1)が適応化される。
【0010】
セグメント2における最後の切り替え高さ、ここでは切り替え高さ(8)を下方超過し場合に電流が遮断され(22)、セグメント3(13)における冷却(23)は、クリンプ高さのさらに沈み込んだ状態(電極の追従量)に関連して開始される。
【0011】
各セグメントにおけるクリンプ高さ(3)の時間特性は、主として切り替え高さ(ここでは6,7,8)の位置、電流(2)、押圧力(1)、および先行するセグメントにおける予備加熱とにより決定される。
【0012】
特許請求する方法は、材料接続による接合プロセスを、それぞれ異なるパラメータセットを有する、それぞれ金属工学的に異なって作用する複数のセグメントへと分割する。各セグメントに対する切り替え基準として、設定された遮断高さの下方超過が使用される。1つのセグメントにおける電極の沈み込みが充分に深くないために確実な切り替えが不可能である場合には、定義された持続時間を上回ったときにも遮断を行うことができる。
【0013】
押圧力はセグメントごとに切り替え可能であるべきなので、好ましくは、力調整器の過渡応答過程の持続時間にわたって電流の流れは生じない。これにより、力がアンダーシュートした場合にも、過度に小さい押圧力に起因する電極および/または構造部材の過熱が回避される。
【0014】
しかし、こうした短い休止時間では、通常、電極の制御されない沈み込みに結びつくリッツ線ワイヤのさらなるコンパクティングが行われる。つまり、セグメントの切り替え基準としては、通電中の沈み込み距離ではなく、各セグメントの予め定められた遮断高さを使用することができる。
【0015】
本明細書に記載の方法は、例えば銅、アルミニウム、鉄、チタン、ニッケルなどの複数の金属およびその合金に、種類別にまたは混合された状態で適用することができる。
【0016】
最も重要な溶接パラメータは、電流、押圧力および持続時間である。これらの主要パラメータは、接合されるべき構造部材および電極の寸法、ならびに構造部材、電極およびコーティングの材料特性(種類および厚さ)に依存する。
【0017】
さらに、冷却部および電流源も考慮されるべきである。電流源の場合、AC/DC、位相差、パルス幅または類似の量、電流方向および制御形式(定電流、定電圧または定電力)が重要である。
【0018】
ホットクリンプでは、機械的過程と物理的過程とが、すなわち変形加工と接合とが、相互に関連付けられている。
【0019】
特に一般に、本明細書では、冷間圧着とは、少なくとも1つの成形部材とリッツ線との間における、場合により電流の流れによって支援される機械的変形(その後の熱間圧着)である。本明細書では、予備加圧または予備成形または予備圧着とも称される。
【0020】
ホットクリンプとは、本明細書では、少なくとも2つの接合パートナ(成形部材およびリッツ線)の機械的変形を同時に行う、少なくとも2段階の接合プロセスであると理解される。
【0021】
基本的に、ホットクリンプの際には、1つまたは複数のワイヤおよび/または典型的にはリッツ線の円形ワイヤもしくは成形ワイヤがケーブルシュー、スリーブ、タブ、プラグインコネクタ、突合せコネクタのような成形部材に接合され、これにより、これらの構造部材間の持続的な、機械的かつ金属工学的な材料接続による接合を達成することができる。
【0022】
こうした過程は、大まかに2つの部分、すなわち、定義され拡大された電極接触面積を形成するための予備加圧または予備変形と本来のホットクリンプとに分割される。後者はさらに、はんだの完全な溶融または部分的な溶融に分けることができ、ここで、硬はんだは軟はんだに対する拡散バリアの特性を有している。しかし、接合パートナは、例えば銅から成る構造部材を、リッツ線のアルミニウムワイヤでコーティングすることなく、後続の拡散において、場合によりリッツ線ワイヤの部分的な溶融を伴うものの、直接に使用することもできる。後者の場合、リッツ線ワイヤは相互に接合されている。
【0023】
同時に、コンパクティング過程によって、予備加圧過程中とホットクリンプ過程中との双方での絶縁層の除去が行われる。ここでの絶縁層は、公知のように、酸化物層、レジスト層、絶縁層または汚染物層でありうる。コーティングまたははんだは、(電流を用いておよび無電流で)ガルバニックに、物理的に(スパッタリングによって)、成形インサート部材として、または圧延技術において被着させることができる。
【0024】
研究によって、各セグメントの押圧力および電流のほか、各セグメントの達成可能な沈み込み距離が溶接品質にとって決定的であることが判明している。
【0025】
典型的な調整パラメータ、すなわち電流、押圧力および各セグメントの持続時間とは異なり、ここでは、電流、押圧力および遮断高さから成るパラメータセットが提案される。時間制御によっては、多くの影響量に起因して、十分に確実で再現可能なホットクリンプ過程を達成できないことが判明した。
【0026】
次のセグメントへの切り替えのための付加的なまたは代替的な基準として、各セグメントに供給されたエネルギまたは電荷を使用することができる。
【0027】
ホットクリンプの様々な変形形態が提案される。ワンショットでは、予備加圧および本来のホットクリンプがコンポーネントを一時的に取り出すことなく設備内において実行される一方、ツーショットでは2つの設備が使用される。
【0028】
ツーショットでは、第1の設備が予備加圧のために利用され、第2の設備がホットクリンプを実行するために利用される。予備加圧の際には、冷間圧着(無電流でのコンパクティング)によって、かつ/または低い予備加熱電流の支援を受けて、定義された予備圧着高さおよび/または定義された電極接触面積を得ることを目的として、予備圧着が実行される。ただし、冷間圧着においては専ら、冷間圧着高さは実質的に押圧力および材料特性によって決定され、したがって実用上より高い品質のためにはあまり適していない。付加的な高さの遮断によって改善を達成することができる。
【0029】
したがって、好適には、冷間圧着過程に直接に続いて高さ監視を伴う熱間圧着が行われる。このようにすることで、定義された予備圧着高さが得られ、同じステップにおいて電極用の十分に同じ接触面積も得られる。
【0030】
このようにして予備成形され、相互に固定された構造部材、すなわち成形部材を備えたリッツ線は、後続のホットクリンプステップにおいて材料接続によって相互に接合される。
【0031】
このステップも同様に複数のセグメントに分割される。
【0032】
第1のセグメントには、リッツ線の外側ワイヤと成形部材との共晶溶融接合に必要なエネルギが導入される。最も重要な調整パラメータは、押圧力、電流および遮断高さならびにエネルギまたは電荷である。
【0033】
最大の広がりを上方超過した後、続いて、セグメント1につき固有に定められた切り替え高さおよび/またはエネルギもしくは電荷を下方超過した場合に、セグメント2への切り替えが行われる。
【0034】
リッツ線束の最も外側のワイヤとセグメント1内の成形部材との接合ゾーンにおいて第1の接合構造が得られた後、第2のセグメントおよび場合により別のサブセグメントにおいて、リッツ線ワイヤ相互の拡散接合および/または少なくとも部分的な溶融が行われる。ここでも、各セグメントに対する押圧力、電流および遮断高さおよび/またはエネルギもしくは電荷のパラメータが別個に定められる。
【0035】
最後の切り替え閾値に到達した後、電流が遮断され、新たに適応化された押圧力で冷却が開始される。
【0036】
こうした多段階のプロセス制御により、例えば低融点のリッツ線が許容不能な量で溶融物へと移行し、これにより合金の変化および断面積の減少によって接合部全体の強度が弱まってしまうことを防止できる。
【0037】
溶接品質監視のための重要な品質基準として、導入された電流による熱膨張の結果としての成形部材およびリッツ線の測定された広がりと、検出された通電持続時間または個々の各セグメントに導入されたエネルギまたは電荷とを利用することができる。
【0038】
ワンショットでは、予備加圧プロセスとホットクリンププロセスとを組み合わせた1つの全体プロセスが構成される。
【0039】
別の一構成では、予備加圧フェーズがセグメント1の加熱フェーズに組み込まれてもよい。
【0040】
接合過程を非破壊で制御するためには、通常、抵抗特性、電流特性または電圧特性、温度特性、押圧力特性、沈み込み距離または最終的な終了高さが使用される。
【0041】
DINまたは顧客仕様に従った破壊試験は、バッチ式にて行うことができる。
【0042】
制御の目的は、構造部材間または溶接パートナ間の長期間にわたって安定な材料接続による接合を保証することである。
【0043】
溶接タスク、例えばホットクリンプのために、本発明では、溶接のフローを、通常はそれぞれ異なるパラメータセットを有する複数のセグメントに分割すると有利であることが実証された。これにより、接合プロセス中の種々の金属工学的な変換が良好に考慮され、溶接接続の品質を評価するためのさらなる測定量が利用可能となる。
【0044】
ここでの接合方法は、接合プロセスをそれぞれのセグメントに対して最適なプロセスパラメータを有する複数のセグメントに分割することを特徴としている。品質制御は、各セグメントの熱補償行程の監視、実際の個別セグメントの持続時間、および/または沈み込み速度、および/または供給されるエネルギもしくは電荷、または電流持続時間において行われる。
【0045】
個々の各構造部材の測定データおよび調整量は、データベースに記憶される。個々の標識付けは、公知のように、データコード、例えばバーコード、データマトリクスコードなどをコンポーネントのうちの1つに被着させることによって行われる。LOSカードとタイムスタンプとを使用することによっても、制限された追跡可能性が得られる。
【0046】
重要なのは、このような多段階接合技術が同一の金属材料間または異なる金属材料間の材料接続による接合および機械的に固定の結合の形成を可能にすることである。特に2段階の方法では、相互に大きく隔たった融点を有する材料どうしを接合することができる。本明細書に記載の方法を適用しない場合、低融点材料が溶融物へと移行し、その後、接合パートナ間に接合が生じてしまうおそれがある。
【0047】
今日、パラメータの発見においては、電流強度と時間とを常に別個に調整して、試験において変形への影響ひいては所定の時間にわたる沈み込み距離を算定しなければならない。さらに、ホットクリンプの場合、電流需要が大きいことから電力網における変動が予想され、この変動は定義フェーズにおけるパラメータの発見および生産フェーズにおける安定な生産品質をさらに困難にする。
【0048】
こうした問題の解決手段として、ホットクリンプの個々に最適化されたセグメントの、高さに依存したかつ/または供給されたエネルギもしくは電荷に依存した切り替えが挙げられる。持続時間は、各セグメントに対して、切り替え機構により、構造部材固有の状況に合わせて適応化される。こうして、材料特性、寸法、電流供給、電極摩耗などの変動が各個別構造部材ごとに独立に補償される。
【0049】
関連して、このことは、きわめて高い製造品質レベルと追跡可能性およびプロセス最適化の可能性とを意味する。これにより容易にバッチ変動および/または設備の不安定性を検出して自動的に評価し、自動化された状態で介入することができる。
【0050】
材料、例えば電極などの物理的特性により、3つのセクションa,b,c間の固有加熱の温度特性が決定される。高オーム性材料、例えばタングステンは、低抵抗材料、例えば銅などの材料よりも強い固有加熱をもたらす。
【0051】
さらに、熱伝導率は、冷却のための接触ゾーンからの放熱に影響を与える。また、比重および比熱容量は、断熱加熱に対する方程式に従って、電極の加熱挙動を変化させる。
【0052】
断熱温度の上昇=電流/面積*比抵抗/比重/非熱容量*期間
を観察した場合、電極を固定する際には、材料選択のほか、接触ゾーンの面積と接触ゾーンの輪郭(平坦、凹状または凸状)とが重要な役割を果たすこともある。
【0053】
本発明の思想に従えば、ここでは、成形部材内およびリッツ線内の熱流を必要な形式で制御するために、寸法および材料の用途固有の最適化が提案される。
【0054】
例えば、適用形態により、例えば下側電極上でより強い熱発生が必要とされる場合、この熱発生は、好ましくは、対向する上側電極よりも高オーム性の材料から、かつ/または比較的小さな接触面積で形成される。こうしたケースは、上方「舌片」側の接触ゾーンにおけるリッツ線よりも下方「舌片」側の接触ゾーンにおけるリッツ線のほうを強く加熱しなければならない成形部材において生じる。電流変化または持続時間変化は、両側で同一の電極加熱のみを生じさせる。
【0055】
成形部材とリッツ線との間に長期間にわたって安定な材料接続による接合を形成する際には、この過程は複数のセクションに分割される。このことは重要である。なぜなら、成形部材とリッツ線の外側ワイヤとの接合ゾーンにおける熱発生と、リッツ線複合体内部での熱発生とが、例えばアルミニウムの融解温度が部分的にしか達成されないように制御されるからである。抵抗溶接において生じる特筆すべき完全な溶融は、以下のようなエラーの原因となりうる。
【0056】
圧着過程によって形成される、ワイヤ(酸化物層および/またはレジスト層)上の非導電層の破壊に必要なコンパクティング圧力は、形成不可能である。逆に、溶融されたリッツ線材料(例えばアルミニウム)は押し潰され、したがってリッツ線ワイヤ間の接触面積が不十分にしか形成されない。さらに、熱発生は、主にリッツ線を通る電流の流れ(自己加熱)によってではなく、電極および成形部材を通って流れる電流によって行われる。
【0057】
外側ワイヤがスリーブに取り付けられた後、変形の増大に伴い、さらにこれによってワイヤ、酸化物層および絶縁層の間で拡大された接触面積が圧力および温度によって除去され、リッツ線が拡散温度に保持される程度のエネルギのみが供給される。当該セクションにおいてリッツ線ワイヤの強化された溶融が発生すると、このことから許容不能な溶融物の流出およびワイヤ相互の不十分な接合を発生するおそれがある。
【0058】
溶融物を形成するには、溶融温度への到達のためにまずジュール熱が必要となり、次いで溶融熱が必要となる。付加的に、電極およびコンポーネントを介して流出する熱を導入しなければならない。典型的には、溶融熱はジュール熱よりも9倍高い。
【0059】
これに対して、拡散接合には、高い押圧力、高温であるがただし溶融温度を下回る温度および長い持続時間が必要とされる。
【0060】
強化された溶融物の形成が生じないようにするために、全体過程が複数のセクション、場合により複数のサブセクションへと分割され、これにより、高い押圧力および可能な限り長い持続時間において固体の拡散接合が形成され、リッツ線内部での溶融接合は形成されない。この場合、セグメントの全てに対してそれぞれ異なる電流調整量または電流通流時間または沈み込み速度が有用であることが判明している。セグメント間の切り替えは、好ましくは高さによって制御されて、かつ/または供給されたエネルギもしくは電荷に依存して、行うことができる。
【0061】
溶融過程に代わる拡散過程を保証するために有用であるのは、溶融物を形成するための熱需要が、ジュール加熱よりも約9倍高いという物理的特性である。
【0062】
ワイヤ間においては、部分的な、多くの場合に点状の溶融が生じる。なぜなら、変形の際にワイヤのうちの幾つかが相互に点状の接触部(アスペリティ(Asperiden))を有しており、その小さな面がきわめて高い温度を発するからである。
【0063】
成形部材とリッツ線ワイヤとの間の第1の接合は、リッツ線材料と成形部材との間の共晶溶融によって生じる。2つの材料は各側でまたは両側で共にコーティング可能であるので、多くの可能な組み合わせのほか、例えば次のような組み合わせ、すなわち、
銅から成るブランク成形部材とアルミニウムから成るブランクリッツ線との組み合わせ、
コーティングされた銅から成る成形部材とアルミニウムから成るブランクリッツ線との組み合わせ、
コーティングされた銅から成る成形部材とコーティングされたアルミニウムから成るリッツ線との組み合わせ、
銅から成るブランク成形部材とコーティングされたアルミニウムから成るリッツ線との組み合わせ、
が生じる。
【0064】
コーティングのための公知の軟はんだはスズおよび亜鉛であり、硬はんだとしてはDINに準拠したアルミニウム硬はんだ、または拡散バリアの好ましい特性を有する共晶はんだ、例えばニッケルまたは銀が利用可能である。コーティング用の材料はコンポーネント材料に伴って変化する。重要なのは共晶温度である。
【0065】
ホットクリンプ接合技術にとって重要なのは、接合パートナがリッツ線材料の溶融温度よりも低い共晶溶融温度を有するという要求であり、例えば銅とアルミニウムとは約550℃の共晶溶融温度を有しており、銀(銅が銀でコーティングされている場合)とアルミニウムとは約570℃の共晶溶融温度を有しており、ニッケル(銅がニッケルでコーティングされている場合)とアルミニウムとは約640℃の共晶溶融温度を有している。
【0066】
本発明の思想は、抵抗溶接接合とは異なり、リッツ線と成形部材との間の最初の共晶溶融接合(セクションa)と第2の接合の形成(セクションb)であるリッツ線ワイヤ間の拡散過程とを含む2段階のプロセスシーケンスを意図している。
【0067】
セクション(a)とセクション(b)とは自然に重なり合って発生する可能性がある。なぜなら、接触ゾーンおよび接合ゾーンの空間的な広がりにより、それぞれ異なる局所的な加熱が生じるからである。
【0068】
各セグメントに対して、最適な沈み込み速度を設定することができる。プロセス中、各セグメントの内部で、行われた沈み込み距離とこの沈み込み距離に必要となる持続時間とから、連続的に沈み込み速度が計算される。ここでの軌跡(トラジェクトリ)が目標軌跡と比較され、制御技術的なアルゴリズムを使用して電流が追従制御される。切り替え高さを下方超過した場合および/または当該セグメントが予め選択されたエネルギもしくは電荷に到達した場合に、次のセグメントへの切り替えが行われる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形部材と少なくとも1つのワイヤおよび/または金属から成る少なくとも2線の少なくとも1つのリッツ線との間にホットクリンプ接合を形成する方法であって、コンパクティングと変形とが同時に行われる際に、接合コンポーネント間の材料接続による接合および前記リッツ線のワイヤ間の材料接続による接合の双方が行われる、方法において、
金属工学的にそれぞれ異なる次のようなセクションを連続的に経過する、すなわち、
a)セグメント1:時間的に並列に進行するコンパクティングおよび/または予備変形によって絶縁層が除去された外側ワイヤの完全なかつ/または部分的な共晶溶融過程によって、前記成形部材と前記ワイヤの外側層および/または前記リッツ線ワイヤの外側層との間に第1の接合が形成され、
b)セグメント2:コンパクティングによって絶縁層が除去された前記リッツ線の内側ワイヤ間に拡散接合および/または少なくとも部分的な溶融接合が形成され、
c)セグメント3:ホットクリンプ複合体の無電流冷却が行われ、ここで、連続する少なくとも2つのセグメント間の切り替えが、セグメントに固有の高さ位置に到達した後にかつ/または供給されたエネルギもしくは電荷に到達した後に行われる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記セグメントに依存して設定された期間を超過した場合、それぞれの前記セグメントの遮断が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
電極の距離-時間軌跡が前記セグメントに依存して設定された沈み込み速度に追従し、かつ前記セグメントに固有の高さ位置を下方超過した後かつ/または所定のエネルギもしくは電荷への到達後に次のセグメントへの切り替えが行われるように、電極電流が制御される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記セグメント1のセクションaでの前記第1の接合が、はんだ付け過程によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記セグメント1のセクションaでの前記第1の接合が、コーティングされていないコンポーネントの共晶溶融過程によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記成形部材が、前記リッツ線の材料に等しいかまたは金属工学的にきわめて類似した金属でコーティングされる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記セクションaおよび/または前記セクションbおよび/または前記セクションcは、別の複数のセグメントに分割されている、請求項1記載の方法。
【請求項8】
それぞれのセグメントに対して、押圧力、電流特性、電流レベル、沈み込み速度、最大持続時間、エネルギまたは電荷、および切り替え高さが設定される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記切り替え高さの代わりに、電極移動距離が切り替え基準として設定されている、請求項8記載の方法。
【請求項10】
熱膨張行程とそれぞれの個別セグメントに対しての持続時間および/または移動距離および/または沈み込み速度および/またはエネルギもしくは電荷とが品質基準として使用される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つの対向する電極のための材料がそれぞれ異なる材料から成る、請求項1記載の方法。
【請求項12】
構造部材に対する電極の接触面積がそれぞれ異なっている、請求項1記載の方法。
【請求項13】
ホットクリンプの前に、高さ監視を伴う予備変形が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記予備変形とホットクリンプとは、同一の設備内で同時にまたは直接に連続して実行される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記セグメント1内での加熱の間に前記予備変形が実行される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
プロセスに関連する全ての調整量および測定値が検出されて個別構造部材に対応付けられる、請求項1記載の方法。
【国際調査報告】