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特表2024-546059構成要素の製造方法及び相応に製造された構成要素
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  • 特表-構成要素の製造方法及び相応に製造された構成要素 図1
  • 特表-構成要素の製造方法及び相応に製造された構成要素 図2A
  • 特表-構成要素の製造方法及び相応に製造された構成要素 図2B
  • 特表-構成要素の製造方法及び相応に製造された構成要素 図2C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】構成要素の製造方法及び相応に製造された構成要素
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/38 20210101AFI20241210BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20241210BHJP
   B22F 10/22 20210101ALI20241210BHJP
   B22F 10/31 20210101ALI20241210BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20241210BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20241210BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241210BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241210BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241210BHJP
   B23K 9/04 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
B22F10/38
F28D9/00
B22F10/22
B22F10/31
B22F10/28
F28F9/02 Z
B33Y50/02
B33Y10/00
B33Y80/00
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529277
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2022025536
(87)【国際公開番号】W WO2023094029
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21020593.6
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach i. Isartal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カンツラー、カールマン
(72)【発明者】
【氏名】ウィマー、ゲオルグ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルワース、クリスチャン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アームブルスター、フェリックス
【テーマコード(参考)】
3L103
4K018
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103DD61
4K018AA14
4K018BA08
4K018BA20
4K018KA01
4K018KA70
(57)【要約】
本発明は、ベース構造(6)及び1つ以上の補助構造(6.1-6.3)を有する技術デバイス(100)用の構成要素を製造する方法に関する。ベース構造(6)は付加製造されず、1つ以上の補助構造(6.1-6.3)は付加製造プロセスによってベース構造(6)上に適用され、ベース構造(6)は付加製造プロセス中に変形を受ける。ベース構造(6)は、変形がベース構造(6)の所望の目標形状をもたらすように選択される開始形状を備える。本発明は同様に、対応する構成要素に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース構造(6)及び1つ以上の補助構造(6.1-6.3)を有する技術デバイス(100)用の構成要素を製造する方法であって、前記ベース構造(6)が付加製造されておらず、前記1つ以上の補助構造(6.1-6.3)が付加製造プロセスによって前記ベース構造(6)上に適用され、前記ベース構造(6)が前記付加製造プロセス中に変形を受け、前記ベース構造(6)が、前記変形が前記ベース構造(6)の所望の目標形状をもたらすように選択された開始形状を備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記変形が予測データを取得しながら予測方法を使用して予測される材料適用と、前記付加製造プロセス中の材料適用とが、前記予測データに基づいて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予測方法が、有限要素法及び/又は最適化アルゴリズムの使用を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料適用の1つ以上の位置及び/又は1つ以上の量が、前記予測データに基づいて決定される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
複数の補助構造(6.1-6.3)が、前記付加製造プロセスによって前記ベース構造(6)に適用され、前記補助構造(6.1-6.3)が、1つ以上の第1の補助構造(6.1)及び1つ以上の第2の補助構造(6.2、6.3)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の補助構造(6.1)、又は前記複数の第1の補助構造(6.1)のうちの少なくとも1つ、及び前記第2の補助構造(6.2、6.3)、又は前記複数の第2の補助構造(6.2、6.3)のうちの少なくとも1つが、前記付加製造プロセスによって同時に又は互い違いに適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の補助構造(6.1)又は前記複数の第1の補助構造(6.1)のうちの少なくとも1つの適用後に、前記変形が決定され、前記第2の補助構造(6.2、6.3)又は前記複数の第2の補助構造(6.2、6.3)のうちの少なくとも1つの適用が、それに応じて実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記構成要素が、プロセスエンジニアリング装置、圧力容器の構成要素、又は陸上車両若しくは航空機の軽量構成要素である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記構成要素が、プレートフィン熱交換器(100)の、ヘッダ(7)に取り付けられたノズル(6)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ベース形状が、円筒形状、球形状、半球形状、ドーム形状、プレート形状、及びそれらの部分形状から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ベース形状が、円形若しくは多角形の管又は中実プロファイルから選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ベース構造(6)及び1つ以上の補助構造(6.1-6.3)を有する技術デバイス用の構成要素であって、前記ベース構造(6)が付加製造されず、前記1つ以上の補助構造(6.1-6.3)が付加製造プロセスによって前記ベース構造(6)上に適用され、前記ベース構造(6)が前記付加製造プロセス中に変形を受け、前記ベース構造(6)が、前記変形が前記ベース構造(6)の所望の目標形状をもたらすように選択された開始形状を備えることを特徴とする構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、技術デバイス用の構成要素を製造する方法及び技術デバイス用の構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
機械、装置、又はシステムなどの技術デバイス、或いはそれらの個々の構成要素は、動作中に高い負荷にさらされることが多い。例えば、流体が流れる技術デバイスの構成要素において、構成要素を通って誘導される流体に起因して、高い負荷が発生する可能性がある。例えば、熱交換を実行するためのプロセス媒体は、熱交換器、例えば、ろう付けされたプレートフィン熱交換器のヘッダによって供給及び排出される。したがって、そのような構成要素又はその壁は、しばしば、高圧、応力、及び更なる負荷に耐えなければならない。例えば、圧力容器の壁は、例えば、正又は負の外部圧力又は内部圧力下で物質を貯蔵するための容器において、そのような高い負荷にさらされる可能性もある。
【0003】
そのような構成要素の寸法決めのために、例えば、構成要素上の最も高い負荷の位置を仮定することができる。この位置における構成要素の壁厚は、壁がその位置における高負荷に耐えることができるように選択することができる。従来の製造方法では、最も高い負荷を有するこの位置が、構成要素全体の壁厚を規定する。
【0004】
しかしながら、最小の必要とされる壁厚を有する構成要素の単純なベース構造を製造し、付加製造プロセスによって材料を適用することによって、増加した機械的応力にさらされる特定の位置で当該ベース構造を特に補強する又は強固にすることも可能である。同じことが、本出願人の国際公開第2022/073640号パンフレットに開示されている。補強されるベース構造の領域又は位置は、最適化方法又は最適化アルゴリズムによって決定することができる。
【0005】
国際公開第2016/001360号パンフレットは、自動車用の予め製造された構成要素に、付加製造された補強構造を特定の位置に設け、このようにして事故の際の変形を防止又は偏向することを提案している。国際公開第2017/021440号パンフレットも、予め製造された構成要素への補強構造の付加的な適用を提案しており、構成要素は、付加製造プロセス中の変形を防止するために金型内に保持される。これとは対照的に、純粋な付加製造による構成要素の製造は、例えば米国特許第11,022,967号明細書から公知である。
【0006】
換言すれば、ベース構造は、構成要素を製造するために提供され、付加製造プロセスによって補助構造によって補われ得る。補助構造は、付加製造プロセスによってベース構造に適用され、それによってベース構造に一体的に接続される。
【0007】
本発明の目的は、部分的に付加製造プロセスによって、対応する方法で行われる構成要素の製造を改善することである。
【0008】
発明の開示
この背景に対して、本発明は、独立請求項の特徴を有する、技術デバイス用の構成要素を製造する方法、及び技術デバイス用の構成要素を提案する。実施形態の各々は、従属請求項及び以下の説明の主題である。
【0009】
最初に説明した方法で構成要素を製造する間、すなわち、ベース構造が提供され、付加製造プロセスによって補助構造で補われ、付加製造プロセスによって補助構造がベース構造に適用され、それによってベース構造に一体的に接合される方法では、付加製造プロセスに起因して材料の変形が生じる可能性があり(特に、ベース構造への熱入力が行われるプロセス、例えば、適用溶接方法の場合)、この変形は、目標形状を達成するために、又は変形を補償するために、付加製造プロセスに続く複雑な後処理を必要とする。
【0010】
本発明は、付加製造によって引き起こされる変形が予測され、付加製造を実行する前に存在する構成要素の形状(以下、初期形状とも呼ばれる)及び付加製造プロセスの方法が、付加製造プロセス後に構成要素が目標形状を有するように選択される場合、対応する後処理を回避することができるという発見に基づく。補助構造及び目標形状が備えられる構成要素は、すなわち、特に構成要素を更に変形させることなく、構成要素の一部が構成要素である構成に設置することができる。したがって、本発明の一実施形態は、構成要素を使用する構成の製造も含む。
【0011】
したがって、従来技術の方法とは対照的に、付加製造プロセスにおける構成要素の変形は、明確に許容され、複雑な方法で最小化又は防止されない。したがって、変形は、所望の最終形状を達成するために、製造方法の不可欠な部分である。したがって、例えば国際公開第2017/021440号パンフレットに記載された方法とは異なり、付加製造プロセス中の変形を防止し、相当な変形力に耐え、したがって十分な安定性を有して製造されなければならない形状のホルダは必要とされない。製造は、全体的により単純であり、より費用効果が高い。
【0012】
全体として、本発明は、ベース構造及び1つ以上の補助構造を有する技術デバイス用の構成要素を製造する方法を提案する。1つ以上の補助構造は、付加製造によってベース構造に適用され、ベース構造は、付加製造プロセス中に変形を受ける。それにより、ベース構造は、変形がベース構造の所望の目標形状をもたらすように選択される開始形状を備える。変形は、特に、付加製造プロセスにおける熱応力によって引き起こされる応力変形であり得る。
【0013】
ここで提案される方法の文脈において、構成要素のベース構造(以下では、簡略化のために単数形のみが使用され、対応する説明は複数の既存の構成要素にも関連する)は、所定の壁厚で製造され得る。構成要素の少なくとも1つの領域(便宜上、少なくとも1つの補強される領域)は、最適化方法によって決定又は識別又は位置特定され得る。この少なくとも1つの領域において、付加製造方法によって補強構造をベース構造に適用することができる。以下で使用される用語において、この補強構造は、それに応じてベース構造を補助するので、補助構造である。それにより、付加製造プロセスによって引き起こされる(電圧)変形は、所望の方法で(更なる)補助構造によって影響を受けることができる。補強効果を有さないか又は有する必要がない後者は、変形を補償するためだけに役立つ構造である。以下、これを補償構造とも呼ぶ。上述したように、全ての要素は複数存在することができるが、以下では簡略化して単独で説明する。
【0014】
ベース構造は、便宜上、基本体積又は第1の材料体積を表す。補強構造は、特に、追加体積又は第2の材料体積を表す。補強構造は、特に、更なる追加体積又は第3の材料体積を表す。したがって、構成要素全体又は構成要素の総体積は、ベース構造又は基本体積及びそれに適用された補強構造、並びに補償構造又はその追加体積によって形成される。
【0015】
ベース構造は付加的に製造されるか又は製造されず、提案された方法はベース構造の製造を含むことができる。それは、例えば、一次成形又は再成形による製造方法によって製造することができる。したがって、当業者の通常の理解において、一次成形は、形状のない物質から、幾何学的に規定された形状を有する中実体が製造される製造方法の群を意味すると理解される。一次成形は、中実体の初期形状を生成し、材料凝集を作り出すために使用される。特に、一次成形は、液体状態又は塑性状態から、特に重力鋳造、圧力鋳造、低圧鋳造、遠心鋳造、若しくは連続鋳造などの鋳造方法によって、又は圧縮成形若しくは延伸成形によって行うことができる。再成形は、特に、熱間若しくは冷間成形、又はシートメタル若しくは塊状成形、又は圧縮、引張-圧縮、曲げ、若しくはせん断成形を含むことができる。本発明は、特定の非付加製造プロセスに限定されない。
【0016】
この場合、特に、段階的な材料適用が、例えば、2、3、4、5、又は10ステップを超えて行われず、むしろ、製造が、特に、実質的にすでに所望されている最終形状(又は変形前に存在する形状)を有する構成要素又は部分構成要素を提供することによって行われる場合、非付加的は、対応する製造方法であるが、一次成形及びその後の再成形、又は異なる対応するワークピースの、例えば、溶接又はプレスによる接合などの方法ステップの連続は除外されない。特に、非付加製造プロセスは、溶融又は粉末適用なしにいくつかの層で実行される。
【0017】
例えば、提案された方法の過程で、構成要素を画定する壁全体を単一部品として製造することができる。同様に、個々の部分壁は、例えば一次成形又は再成形などの製造方法によって別々に製造され、例えば接合方法、例えば溶接方法によって組み合わされて、構成要素の全ての壁を形成することもできる。
【0018】
特に、ベース構造の壁厚は、可能な限り小さい、特に最小壁厚として事前定義することができ、この最小壁厚は、構成要素に作用する低負荷のために便宜上設計されるか、又は作用負荷に耐えることができるようにするためにベース構造を少なくとも必要とする。次に、ベース構造は、より高い負荷を有する位置で支持構造によって特に補強され、その結果、構成要素は、これらの位置に作用するより高い負荷にも耐えることができる。したがって、補強構造は、構成要素の特に応力がかかる位置に目標とされる方法で適用することができ、構成要素は、問題の負荷事例に個々に適合させることができる。上述したように、補償構造は、特に、変形を補償するためだけに役立つが、必ずしも固定効果を提供するわけではない。
【0019】
換言すれば、本発明の実施形態では、複数の補助構造は、付加製造プロセスによってベース構造に適用することができ、複数の補助構造は、1つ以上の補強構造及び1つ以上の補償構造を含み、上述したように、補強構造は、特に、1つ以上の点で構成要素の安定性を増加させる補助構造を表し、補償構造は、特に、必ずしも安定性を増加させないが所望の変形を引き起こす補助構造を表す。したがって、補強構造は構成要素の仕様強度に基づいて適用され、補償構造は変形予測に基づいて適用される。より一般的には、「第1」及び「第2」の補助構造もまた、この文脈において参照される。
【0020】
付加製造方法は、補強構造又は第1の補助構造及び補償構造又は第2の補助構造を正確に適用することを可能にし、したがって、ベース構造の正確な局所的補強及び変形への影響を生成することを可能にする。付加製造は、材料を層ごとに連続的に付加することによって三次元物体又は三次元構造を製造する製造方法である。次々と、新しい材料層が適用され、凝固され、例えば、レーザ、電子ビーム、又は電気アークによって、下にある層にしっかりと接合される。
【0021】
本方法の文脈において、補強構造又は第1の補助構造又は補償構造又は第2の補助構造がベース構造に適用されるべき領域又は点は、最適化方法又は対応する最適化アルゴリズムによって決定又は識別又は位置特定され得る。一般的に言えば、最適化方法又は最適化は、複素系の最適化された、特に最小化又は最大化されたパラメータを発見するための分析的又は数値的計算方法であると一般的に理解される。
【0022】
本発明の一実施形態では、予測データを取得しながら予測方法を使用して変形を予測することができ、予測データに基づいて付加製造プロセス中の材料適用を実行することができる。このような構成において、本発明は、特に目標とされる正確な材料適用を可能にする。
【0023】
予測方法は、特に、有限要素法及び/又は最適化アルゴリズムの使用を含むことができる。補強構造に必要な材料の適用を決定するために、対応する方法を実行することもできる。
【0024】
1つの最適化問題では、解の範囲
【数1】
、すなわち、可能な解又は変数の数
【数2】
及び目標関数
【数3】
を指定することができる。この最適化問題を解くために、変数又は解の値のセット
【数4】
が求められるので、
【数5】
所定の基準、例えば最大又は最小を満たす。更に、制約又は二次条件を事前定義することもでき、
【数6】
許容可能な解はこれらの事前定義された制約を満たさなければならない。この場合、最適化問題を解くために、例えば、構成要素の総壁厚が可能な限り最小化されるように、目標関数を規定することができる。
【0025】
特に好都合なことに、最適化方法は、数値解の関数として、特に前述の有限要素法を使用して実行することができる。有限要素法とは、偏微分方程式の複素系の数値解に基づく数値的方法である。ベース構造又は異なる構成要素は、単純な形状の有限数のサブ領域に分割される、すなわち、その単純な幾何学的形状に基づいて物理的又は熱水力学的挙動を計算することができる有限要素に分割される。有限要素のそれぞれにおいて、偏微分方程式は、単純な微分方程式又は代数方程式によって置き換えられる。このようにして得られた方程式系が、偏微分方程式の近似解を得るために解かれる。1つの要素から隣接要素への移行中、本体全体の物理的挙動が、所定の連続性条件によってシミュレートされる。このような有限要素法は、最適化方法を実行するのに特に有利である。例えば、本方法の文脈では、個々の有限要素の各々について、それらがベース構造又は支持構造の一部として対応する材料で充填されるべきかどうかを調べることができる。
【0026】
有利には、最適化方法は、ベース構造及び付加製造プロセスのシミュレーションに応じて、特に数値シミュレーションによって実行される。特に、静的又は動的シミュレーション、例えば熱機械強度シミュレーションを実行することができる。シミュレーションによって、構成要素又は技術デバイス全体を構成要素とともに理論的に再現することができる。付加製造中の構成要素の挙動、及び構成要素に作用する応力、負荷などをシミュレートすることができる。特に、補償構造として適用される材料の量及び位置は、異なる条件下での構成要素の挙動を調査するために、シミュレーションの過程で変更することができる。このようにして、構成要素は、最適化方法の一部として複数の個々の領域に分割することができ、材料が付加製造によってこれらの領域の各々に適用されるべきかどうかをこれらの領域に対して個々に決定することができる。
【0027】
本方法は、部分的に付加製造された構成要素を生成する有利な可能性を提供する。ベース構造は、費用効果が高く、材料を節約する方法で非付加的に製造することができる。付加製造方法の使用を減らすことができるので、これに関してコスト及び材料も節約することができる。構成要素は、材料を節約し、重量を低減して費用効果的に製造することができ、その後の適用及びその使用領域に最適に適合させることができる。補償構造の適用は、特に、目標形状を達成するため及び逆再成形のための後続の後処理を省くことを可能にする。
【0028】
本発明の一実施形態では、補強構造又は複数の補強構造のうちの少なくとも1つ、及び補償構造又は複数の補償構造のうちの少なくとも1つ、又は換言すれば、第1の補助構造(複数可)及び第2の補助構造(複数可)は、付加製造プロセスによって同時に又は互い違いに適用することができる。特に、互い違いの適用の場合、補強構造又は複数の補強構造のうちの少なくとも1つ、すなわち第1の補助構造(複数可)の適用後、変形を決定することができ、補償構造又は複数の補償構造のうちの少なくとも1つ、すなわち第2の補助構造(複数可)の適用は、それに応じて実行することができる。これにより、実際に生じた変形に正確に対応することができる。
【0029】
特に好ましい実施形態によれば、補助構造(複数可)は、ワイヤアーク付加製造(WAAM)によってベース構造に適用される。この方法の過程で、消耗ワイヤ及びアークによって個々の層が生成される。この目的のために、例えば、アークが溶接トーチと製造される構成要素との間で燃焼するガスシールド金属アーク溶接のための溶接トーチを使用することができる。対応する材料が、例えばワイヤ又はストリップの形態で連続的に供給され、アークによって溶融される。これにより、溶融した液滴が形成され、この液滴は、製造されるワークピース上に移行し、ワークピースに強固に接続する。特定の材料は、例えば、溶接トーチの消耗ワイヤ電極として供給することができ、アークは、このワイヤ電極と構成要素との間で燃焼する。溶接トーチのアークによって溶融される追加のワイヤの形態で材料を供給することも考えられる。
【0030】
代替的又は追加的に、更なる付加製造方法を使用することができ、その過程で、支持構造又は追加体積の材料が、例えば、粉末形態で、又はワイヤ若しくはストリップの形態で適用され、レーザ及び/又は電子ビームによって適用される。このようにして、材料は、凝固させるために、例えば焼結又は溶融プロセスを受けることができる。層を製造した後、次の層を類似の方法で製造することができる。このタイプの付加製造方法は、例えば、選択的レーザ焼結(SLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、電子ビーム溶融(EBM)、ステレオリソグラフィ(SL)若しくは溶融堆積モデリング(FDM)、又は溶融フィラメント製造(FFF)を含む。
【0031】
代替的又は追加的に、レーザビーム、電子ビーム、又はアークを使用しない付加製造方法を使用することもできる。好ましくは、支持構造は、コールドスプレー(CS)又はガスダイナミックコールドスプレーによってベース構造に適用することができる。このプロセスの過程で、材料は、例えば粉末形態で高速で適用される。この目的のために、数百度に加熱された窒素又はヘリウムなどのプロセスガスを、例えば膨張によって超音速に加速することができる。材料の粉末粒子は、高速に加速され、ベース構造との衝突時に強固に付着する層を形成するように、ガスジェット中に注入することができる。
【0032】
本発明の実施形態では、ベース構造、補強構造、及び補償構造(又はこれらの構成要素の一部)は、同じ材料、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金から製造することができる。更に、ベース構造、補強構造、及び補償構造(又はこれらの構成要素のうちの2つの一部)は、異なる材料から製造することもできる。ベース構造、補強構造、及び補償構造のための材料は各々、例えば、それらの特定の材料特性に基づいて、及び/又は特定の構成要素要件に基づいて、又は構成要素に作用する特定の負荷及び構成要素の変形に基づいて選択され得る。
【0033】
本発明の実施形態では、ベース構造、補強構造、及び補償構造(又はこれらの構成要素の一部)は、類似又は非類似のタイプの材料、特にアルミニウム材料又はアルミニウム合金から作製することができる。「類似のタイプ」又は「同じタイプ」の材料は、特に、同一若しくは同等の構造及び/又は同一若しくは同等の熱膨張を有する材料であると理解されるべきであり、これは、対照的に、「非類似のタイプ」又は「異なるタイプ」の材料の場合には当てはまらない。類似のタイプの材料は、例えば、異なる炭素鋼である。対照的に、炭素鋼及びステンレス鋼は、例えば、異なる材料構造(構造及び熱膨張)に起因して、非類似のタイプである。「類似のタイプの材料」という用語は、可能な合金の多様性に起因して、機械的特性及び熱的特性の大きな差異をもたらす様々なアルミニウム合金を意味すると理解することもできる。非類似のタイプの材料の例は、アルミニウム材料の(ステンレス)鋼材への接合であってもよく、これは一般に「不適合」であると理解されている。したがって、便宜上、ベース構造、補強構造、及び補償構造(又はこれらの構成要素のうちの2つ)を構築するために、他の特性を有する同一又は異なるタイプの材料を具体的に使用することが可能である。特に、補助構造、特に補償構造の材料は、既知の又は特に有利な変形特性を有する材料とすることができる。
【0034】
本発明の実施形態において、構成要素は、プロセスエンジニアリング装置の構成要素、圧力容器、又は陸上車両若しくは航空機の軽量構成要素である。本発明は、多くの異なる適用分野に適しており、プロセスエンジニアリング、調整エンジニアリング、及び/又は制御エンジニアリングにおいて使用される様々な技術デバイス用の構成要素の製造に適している。本発明の文脈において、技術デバイスは、特に、技術プロセス、特にプロセス、調整、及び/又は制御エンジニアリングプロセスを実行するためのユニット又は異なるユニットのシステムとして理解されるべきである。技術デバイスは、有利には、機械として、すなわち、特にエネルギー又は力変換のための装置として、及び/又は装置として、すなわち、特に物質又は材料変換のための装置として設計され得る。更に、技術デバイスは、特に、システムとして、すなわち、特に、各々が例えば機械及び/又は装置であってもよい複数の構成要素のシステムとして設計することもできる。
【0035】
一実施形態によれば、構成要素は、技術デバイスの流体が流れる又は流れることができる構成要素である。好ましくは、構成要素は、圧力容器のための構成要素であるか、又はそれ自体が圧力容器である。このような圧力容器は、特に、正又は負の内圧又は外圧下で物質を貯蔵するために設けることができる。圧力容器は、高い互い違いの圧力負荷にさらされる可能性がある。
【0036】
最初に、熱交換器及び圧力容器などのプロセスエンジニアリング機器について言及したが、本発明の実施形態は、対応する技術分野における使用に限定されず、基本的に、他の構成要素、特に構造構成要素の製造において、例えば、装置及び容器の構築において適用可能であるが、付加製造が使用される他の分野においても、例えば、航空機又は車両の構築における軽量構築のために適用可能である。
【0037】
本発明の一実施形態では、構成要素は、プレートフィン熱交換器(PFHE)、例えば、アルミニウム製のはんだ付けされたプレートフィン熱交換器(ろう付けアルミニウムプレートフィン熱交換器、PFHE、ISO 15547-2:3005のドイツ語版及び英語版による名称)のノズルを有するヘッダである。このタイプのプレート熱交換器は、複数の積み重ねられた仕切りプレート及び薄板、並びにカバープレート、エッジストリップ又はサイドバー、ディストリビュータ又はヘッダを有する。更に、個々の媒体を供給及び排出するためのパイプ部分又はパイプラインが設けられる。そのような要素は、熱交換器の動作中に高い負荷、例えば、高い温度又は温度差、並びに高い圧力及び機械的応力にさらされる可能性があり、したがって、本方法に従って製造されるのに特に適している。
【0038】
ベース形状は、特に、円筒形状、球形状、半球形状、ドーム形状、プレート形状、及びそれらの部分形状から選択される、複雑でなく容易に製造可能な形状であり得る。製造は、組み合わされた製造のために特に単純である。ベース形状は、特に、円形又は多角形の管、又は対応する材料適用によって目標とされる方法で変形され得る中実プロファイルから選択することもできる。
【0039】
ベース構造及び1つ以上の補助構造を有し、ベース構造が付加製造されず、1つ以上の補助構造が付加製造プロセスによってベース構造に適用され、ベース構造が付加製造中に変形を受けている、技術デバイス用の構成要素も、同様に本発明の主題である。ベース構造は、変形がベース構造の所望の目標形状をもたらすように選択された開始形状を備えていた。補助構造は、1つ以上の補強構造及び1つ以上の補償構造を含む。
【0040】
したがって、構成要素を製造する方法に加えて、本発明は更に、特に本方法に従って製造される、技術デバイス用の構成要素にも関する。本発明によるこの構成要素の実施形態は、本発明による方法の上記説明から同様に得られる。
【0041】
本発明の更なる利点及び実施形態は、説明及び添付の図面から生じる。
【0042】
上記の特徴及び以下で更に説明される特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、指定された特定の組み合わせだけでなく、他の組み合わせで、又は単独で使用されてもよいことを理解されたい。
【0043】
本発明は、例示的な実施形態を使用して図面に概略的に表され、図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】簡略化された等角図で熱交換器を示す。
図2A】本発明の態様を示す。
図2B】本発明の態様を示す。
図2C】本発明の態様を示す。
【0045】
図面において、機能的又は構造的に互いに対応する構成要素は、同一の参照符号によって示されており、明確にするためだけに繰り返し説明されない。方法ステップに関する説明は、同様にデバイス特徴に関連し、逆もまた同様である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、100で示される熱交換器の概略図である。熱交換器は、特に、流体が流れる熱交換器100の個々の要素又は構成要素、特に、そのヘッダ7及びノズル6は、本発明の一実施形態による特に有利な方法で製造される技術デバイスを表す。
【0047】
図1に示される熱交換器100は、非常に異なる圧力及び温度で多数のシステムにおいて使用され得るような、アルミニウム(PFHE)製のろう付けされたプレートフィン熱交換器(ISO 15547-2:3005のドイツ語及び英語版による名称)である。例えば、それらは、極低温空気分離、天然ガスの液化、及びエチレン製造プラントにおいて使用される。「アルミニウム」は、アルミニウム合金も意味し得ることが理解される。
【0048】
アルミニウム製のろう付けプレートフィン熱交換器は、上述のISO 15547-2:3005の図2、並びにALPEMA刊行物「The Standards of the Brazed Aluminum Plate-Fine Heat Exchanger Manufacturers’ Association”」、第3版、2010年の第5頁に示され、説明されている。この図1は、前述のISO規格の図に実質的に対応しており、本発明の背景を説明するために以下に説明される。
【0049】
図1に部分的に開いて示されるプレート熱交換器100は、示される例において5つの異なるプロセス媒体A~Eの熱交換のために使用される。プロセス媒体A~Eの間の熱交換のために、プレート熱交換器100は、互いに平行に配置された複数の分離シート4(括弧内の後続の参照も参照する前述の刊行物では、これらは「分割シート」と呼ばれる)を備え、これらの分離シート4の間に、薄板3(「フィン」)を有する構造シートによって画定された熱交換通路1が、各場合にプロセス媒体A~Eのうちの1つに対して形成され、それによって互いに熱交換することができる。
【0050】
ISO 15547-2:3005の図1にも示されているように、薄板3を有する構造シートは、典型的には折り畳まれるか又は波形にされ、流路は、折り目又は波形の各々によって形成される。薄板3を有する構造シートの提供は、薄板のないプレート熱交換器と比較して、改善された熱伝達、より目標とされる流体誘導、及び機械的(引張)強度の増加という利点を提供する。熱交換通路1において、プロセス媒体A~Eは、特に分離シート4によって分離されて流れるが、穿孔された構造シートの場合、選択的に薄板3を有する分離シート4を通過することができる。
【0051】
個々の通路1又は薄板3を有する構造シートは、サイドバー8として知られているものによって各側で囲まれているが、サイドバー8は、供給及び排出開口9のための自由空間を残している。サイドバー8は、分離シート4をある距離で保持し、圧力チャンバの機械的補強を確実にする。特に補強されたカバーシート5(「キャップシート」)は、分離シート4と平行に配置され、特に少なくとも2つの側面を閉鎖するために使用される。
【0052】
ノズル6を備えるいわゆるヘッダ7によって、プロセス媒体A~Eは、供給及び排出開口9を介して供給及び排出される。通路1の入口領域には、分配薄板2(「分配フィン」)として知られているものを有する更なる構造シートが存在し、分配薄板2は、通路1の全幅にわたる均一な分配を確実にする。流れの方向に見られるように、分配薄板2を有する更なる構造シートを通路1の端部に配置することができ、プロセス媒体A~Eを通路1からヘッダ7に導き、ヘッダ7においてプロセス媒体A~Eは収集され、対応するノズル6を介して回収される。
【0053】
ここでは直方体である熱交換器ブロック20は、薄板3を有する構造シートと、分配薄板2を有する更なる構造シートと、サイドバー8と、分離シート4と、カバーシート5とによって全体的に形成されており、「熱交換器ブロック」は、ここでは、相互接続された状態のヘッダ7及びノズル6のない上述の要素として理解されるべきである。図1には示されていないが、プレート熱交換器100は、特に製造上の理由から、複数の対応する直方体状の相互接続された熱交換器ブロック20から形成することができる。
【0054】
対応するプレート熱交換器100は、アルミニウムからろう付けされる。薄板3を有する構造シートと、分配薄板2を有する更なる構造シートと、カバーシート5と、サイドバー8とを備える個々の通路1は、この場合、各々はんだが設けられ、互いに積み重ねられるか、又はそれに応じて配置され、オーブン内で加熱される。ヘッダ7及びノズル6は、このようにして製造された熱交換器ブロック20に溶接される。
【0055】
ヘッダ7は、従来の方法で、例えば半円筒形の押出形材を使用して製造され、押出プロファイルは、必要な長さにされ、次いで熱交換器ブロック20に溶接される。この場合、ヘッダ7は、一定の壁厚で製造されることが多く、この壁厚は、最も高い利用率の位置に向けられる。
【0056】
これとは対照的に、本発明の方法は、例えば、費用効果が高く、材料を節約する方法で、特に、個々に存在する負荷の場合に特に適合される変化する壁厚を有するノズル6を有するヘッダ7を製造することを可能にする。これは、部分的な付加製造によって達成され、変形は、以下に説明するように特に有利に補償される。
【0057】
図2A図2Cは、本発明の態様を示しており、いずれの場合も、ノズル6を有する、上で7によって示されたヘッダがここに示されている。ヘッダは、少なくとも一部分が半円形管の形状に設計される。この部分は、特に、一定の壁厚で、一貫して同じ材料で製造することができる。
【0058】
しかしながら、ここで使用される用語では、ノズル6を形成する管状構成要素は、本発明の実施形態によれば、異なる構成要素でなければならないベース構造である。補強構造6.1の形態の補助構造は、付加製造プロセスによって、ベース構造、すなわち、本例ではヘッダ6に適用される。更に図示されているように、ヘッダ7自体にも、それを安定させるために、対応する補強構造7.1を備えている。
【0059】
図2A及び図2Bは、特に、多段階製造方法の異なる段階を示す。図2A及び図2Bの概観から分かるように、変形を生じさせる上述の補償構造6.2の形態の更なる補助構造が、ここに示す例では、同様に変形を生じさせる補強構造6.1の適用後に適用される。補償構造6.2のタイプ、位置、及び材料は、補強構造6.1の適用によって生じる変形がその適用によって補償され、目標形状が達成されるように選択される。
【0060】
図2B及び図2Cから再び分かるように、概観において、補償構造6.2は、付加製造プロセスによって、ベース構造、すなわちノズル6の外周上、及びその内部(ここでは6.3で示す)に設けることができる。図2Cは、ノズル6を上から見た図である。
図1
図2A
図2B
図2C
【国際調査報告】