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特表2024-546061電気光学デバイスのマイクロセルをシールするためのシールフィルム組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電気光学デバイスのマイクロセルをシールするためのシールフィルム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241210BHJP
   G02F 1/167 20190101ALI20241210BHJP
   G02F 1/1681 20190101ALI20241210BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20241210BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20241210BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20241210BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20241210BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C08J5/18
G02F1/167
G02F1/1681
C08L29/04 Z
C08L75/04
C08L71/02
C08K5/06
C08K3/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529629
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 US2022079784
(87)【国際公開番号】W WO2023091886
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/281,345
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サーヴィ, アリ
(72)【発明者】
【氏名】ベルハネ, アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ペアレント, メアリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, スティーブン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2K101
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BA02
2K101BB13
2K101BB23
2K101BC02
2K101BC30
2K101BE07
2K101BE09
2K101BE27
2K101BE32
2K101BE61
2K101BF43
2K101EB41
2K101EE02
2K101EG37
2K101EG52
2K101EH12
4F071AA29
4F071AA53
4F071AA67
4F071AB03
4F071AC10
4F071AC12
4F071AG34
4F071AH02
4F071BA02
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
4J002BE021
4J002BE031
4J002CH023
4J002CK022
4J002CP183
4J002DA036
4J002ED037
4J002FD116
4J002FD203
4J002FD207
(57)【要約】
本発明は、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとであるポリマーの組合せ、導電性フィラー、および水溶性エーテルを水性担体中に含んでいる水性シール組成物を対象とする。水性シール組成物は、2つの電極層の間に配置されている電気光学材料層を有し(a)荷電された粒子および非極性流体が充填された複数のマイクロセルならびに(b)シールフィルムを含んでいる電気光学デバイスにおける、シールフィルムを形成するために使用され得る。デバイスは、良好な電気光学性能を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールフィルムの重量に対し15重量%~60重量%の含量の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、前記ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90%~99.5%の加水分解度を有しており、前記ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90%~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有している、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、
シールフィルムの重量に対し7重量%~29重量%の含量のポリウレタン、
シールフィルムの重量に対し5重量%~70重量%の含量のカーボンブラック、
シールフィルムの重量に対し0.5重量%~25重量%の含量の水溶性エーテルであり、75~5,000ダルトンの分子量を有しており、必要に応じてヒドロキシ基を含む水溶性エーテル
を含んでいる、シールフィルム。
【請求項2】
前記シールフィルムの全表面エネルギーが、60mN/mよりも低い、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項3】
前記水溶性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーと前記ポリウレタンとの界面張力が、2mN/m未満である、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項4】
前記カーボンブラックが、ASTM2414に従うOAN法を使用して測定して、カーボンブラック100mg当たり100mL未満の吸油量を有している、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項5】
前記カーボンブラックが、ASTM D 6556に従う窒素吸着法を使用して測定して、70m/g未満の全表面積を有している、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項6】
前記水溶性エーテルが、式I、式II、または式III
【化5】
[式中、
nは、1~145であり、
R1は、水素、メチルまたはエチル基であり、
R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、水素、1個の炭素原子~6個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基、フェニル、およびベンジル基からなる群から独立に選択され、
式Iは、少なくとも1個のエーテル官能基を含み、
式IIは、少なくとも1個のエーテル官能基を含み、
式IIIは、少なくとも1個のエーテル官能基を含む]
によって表される、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項7】
nが、1~10である、請求項6に記載のシールフィルム。
【請求項8】
前記水溶性エーテルが、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールn-モノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールn-モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールn-モノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、およびトリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルからなる群から選択される、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項9】
有機シリコーン湿潤剤をさらに含む、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項10】
10~1010オーム.cmの体積抵抗率を有している、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項11】
前記ポリウレタンが、エステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、またはそれらの組合せである、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項12】
前記ポリウレタンポリマーが、1,000~2,000,000ダルトンの数平均分子量を有している、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項13】
前記ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーが、1,000~1,000,000ダルトンの数平均分子量を有している、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項14】
前記ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーが、92%~99%の加水分解度を有している、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項15】
前記ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーが、9%未満のエチレン含量を有している、請求項1に記載のシールフィルム。
【請求項16】
導電層、
複数のマイクロセルを含んでいるマイクロセル層であり、各マイクロセルは、開口部を含んでおり、各マイクロセルは、電気泳動媒体を含んでおり、前記電気泳動媒体は、非極性担体中に、荷電された粒子を含んでいる、マイクロセル層、
各マイクロセルの前記開口部にわたっている、請求項1に記載のシールフィルム、
接着層、および
電極層
を含む、電気光学デバイス。
【請求項17】
前記電気泳動媒体が、少なくとも3つのタイプの荷電された色素粒子を含んでおり、1つのタイプの荷電された粒子が、青、緑、赤、シアン、マゼンタ、およびイエローからなる群から選択される色を有している、請求項16に記載の電気光学デバイス。
【請求項18】
水を除く水性シール組成物の重量に対し14重量%~55重量%の含量の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、前記ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90%~99.5%の加水分解度を有しており、前記ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90%~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有している、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、
水を除く水性シール組成物の重量に対し6重量%~27重量%の含量のポリウレタン、
水を除く水性シール組成物の重量に対し5重量%~64重量%の含量のカーボンブラック、
水を除く水性シール組成物の重量に対し1.0重量%~40重量%の含量の水溶性エーテルであり、75~5,000ダルトンの分子量を有しており、必要に応じてヒドロキシ基を含む水溶性エーテル、および
水性シール組成物の重量に対し20重量%~95重量%の含量の水
を含んでいる、水性シール組成物。
【請求項19】
水を除く前記水性シール組成物の重量に対し0.1重量%~8重量%の含量の架橋剤をさらに含んでおり、前記架橋剤が、ポリイソシアネート、多官能性ポリカルボジイミド、多官能性アジリジン、シランカップリング剤、ホウ素/チタン/ジルコニウムベースの架橋剤、またはメラミンホルムアルデヒドである、請求項18に記載の水性シール組成物。
【請求項20】
シールフィルムレオロジーの重量に対し0.05重量%~5重量%の含量のレオロジー調整剤をさらに含んでおり、前記水性シール組成物が、10-4 1/秒のせん断速度における粘度と10 1/秒のせん断速度における粘度との間で、5分の1~10,000分の1への粘度低下を示すレオロジープロファイルを有している、請求項18に記載の水性シール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年11月19日出願の米国仮特許出願第63/281,345号に基づく優先権を主張する。本明細書において参照される特許、公開出願または他の公開文献はいずれも、その内容全体が参照により組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、電気光学デバイス、例えば電気泳動ディスプレイにおいて使用することができるシールフィルムに関する。シールフィルムは、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、ポリウレタン、導電性フィラー、および水溶性エーテルを含んでいる。シールフィルムは、水性シール組成物を硬化または乾燥させることによって形成することができる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
「電気光学」という用語は、材料またはディスプレイに適用される場合、本明細書では、少なくとも1つの光学特性が異なっている第1および第2のディスプレイ状態を有している材料であって、その材料への電界の印加によってその第1のディスプレイ状態からその第2のディスプレイ状態に変化する材料を指すために、イメージング分野におけるその従来の意味で使用される。光学特性は、典型的にヒトの目に知覚できる色であるが、別の光学特性、例えば、光伝送、反射率、発光、または、機械での読取りを意図されているディスプレイの場合には、可視域外の電磁波長の反射率の変化の意味での疑似カラーであってもよい。
【0004】
「双安定」および「双安定性」という用語は、本明細書では、当技術分野におけるそれらの従来の意味で使用され、少なくとも1つの光学特性が異なっている第1および第2のディスプレイ状態を有しているディスプレイ素子を含んでいるディスプレイであって、任意の所与の素子が駆動された後、有限持続期間のアドレス指定パルスを用いてその第1または第2のディスプレイ状態のいずれかを呈し、アドレス指定パルスが終了した後、その状態が、ディスプレイ素子の状態を変化させるのに必要なアドレス指定パルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば少なくとも4倍持続するようなディスプレイを指す。米国特許第7,170,670号では、グレースケールが可能な一部の粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極限の黒状態および白状態においてだけでなく、それらの中間のグレー状態においても安定であり、同じことが一部の他のタイプの電気光学デバイスにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切には、双安定ではなく「多安定」と呼ばれるが、便宜上、「双安定」という用語は、本明細書では双安定ディスプレイおよび多安定ディスプレイの両方を網羅するために使用され得る。
【0005】
長年にわたる精力的な研究および開発の対象となってきた電気光学デバイスの1つのタイプが、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、この粒子ベースの電気泳動ディスプレイでは、複数の荷電された粒子が、電界の影響下で流体中を移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較した場合、良好な明るさおよびコントラスト、広視野角、状態の双安定性、ならびに低電力消費の属性を有することができる。
【0006】
マサチューセッツ工科大学(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California,LLCおよび関連会社に譲渡されたかまたはそれらの名義となっている多数の特許および出願が、カプセル化電気泳動媒体およびマイクロセル電気泳動媒体、ならびに他の電気光学媒体において使用される様々な技術を記載している。カプセル化電気泳動媒体は、多数の小型カプセルを含んでおり、これらの小型カプセルはそれぞれ、それら自体が、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含有している内相と、その内相を取り囲むカプセル壁とを含んでいる。典型的に、カプセルは、それら自体がポリマーバインダー内に保持されて、2つの電極の間に位置されたコヒーレント層を形成する。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電された粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されておらず、その代わりに、担体媒体、典型的にポリマーフィルム内に形成された複数の空洞内に保持される。
【0007】
これらの特許および出願に記載されている技術には、以下が含まれる。
【0008】
(a)電気泳動粒子、流体および流体添加剤、例えば米国特許第7,002,728号および同第7,679,814号を参照されたい。
【0009】
(b)カプセル、バインダーおよびカプセル化プロセス、例えば米国特許第6,922,276号および同第7,411,719号を参照されたい。
【0010】
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法、例えば米国特許第7,072,095号および同第9,279,906号を参照されたい。
【0011】
(d)マイクロセルを充填し、シールするための方法、例えば米国特許第7,144,942号、同第7,005.468号および同第7,715,088号、ならびに米国特許出願公開第2004-0120024号および同第2004-0219306号を参照されたい。
【0012】
(e)電気光学材料を含有しているフィルムおよびサブアセンブリ、例えば米国特許第6,982,178号および同第7,839,564号を参照されたい。
【0013】
(f)バックプレーン、接着層および他の補助層、ならびにディスプレイにおいて使用される方法、例えば米国特許第7,116,318号および同第7,535,624号を参照されたい。
【0014】
(g)色形成および色調整、例えば米国特許第7,075,502号および同第7,839,564号を参照されたい。
【0015】
(h)ディスプレイを駆動するための方法、例えば米国特許第7,012,600号および同第7,453,445号を参照されたい。
【0016】
(i)ディスプレイの適用、例えば米国特許第7,312,784号および同第8,009,348号を参照されたい。
【0017】
(j)米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に記載されている、非電気泳動ディスプレイ、ならびにディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の適用、例えば米国特許第7,615,325号、ならびに米国特許出願公開第2015/0005720号および同第2016/0012710号を参照されたい。
【0018】
前述の参考文献のすべての内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
非極性流体中に荷電された色素粒子の分散物を収容している複数のシールされたマイクロセルを有する構造は、電気光学デバイスにおいて商業的に使用されている。マイクロセルは、文献ではマイクロキャビティまたはマイクロカップとしても公知である。電気光学デバイスのためのシールされたマイクロセル構造を作製する典型的な方法は、(a)マイクロエンボス加工により、各マイクロキャビティが開口部を有している複数のマイクロキャビティを有するポリマーシートを製作するステップと、(b)マイクロキャビティを、非極性流体中に荷電された色素粒子を含んでいる分散物である電気泳動媒体で充填するステップと、(c)マイクロキャビティを水性シール組成物でシールして、シールフィルムを形成するステップとを含む。電気泳動媒体を収容している、シールされたマイクロキャビティは、デバイスの電気光学材料層を形成する。電気光学材料層は、正面電極と背面電極の間に配置されている。これらの電極による、電気泳動媒体にわたる電界の印加により、色素粒子が電気泳動媒体中を遊走して、画像を生じる。シールフィルムは、デバイスの機能および性能のために重要な役割を果たす。まず、シールフィルムは、電気泳動媒体と接触し、電気泳動媒体をマイクロキャビティ内側にシールするので、シール層は、(1)電気泳動媒体の非極性流体に実際に不溶性でなければならず、(2)非極性流体がデバイス寿命中にマイクロセルから出て拡散しないように、非極性流体に対する良好なバリアでなければならない。第2に、シールフィルムは、環境から著しい量の湿気を吸収してはならない。すなわち、環境の湿気がデバイスの電気泳動媒体に入らないようにしなければならない。このような湿気は、デバイスの電気光学性能にマイナスの影響を及ぼし得る。シールフィルムは、デバイスの有用な寿命の間に機械的に弾性力があり、実際に経時的に一定に維持される最適な体積抵抗率を有するべきである。非極性流体に対するシールフィルムのバリア特性が劣っていると、電気泳動媒体からの流体の低減およびシールフィルムのたるみが生じる。最後に、シールフィルムの導電性特性が重要であり、なぜなら、電位はデバイス全体にわたって印加され、数ある成分の中でもシールフィルムを介して伝わるからである。これらの特色を有しているシールフィルムを形成する水性シール組成物を提供する上での技術的問題は、様々な目的に様々な配合戦略が必要とされ得るため、難しいものとなる。例えば、非極性流体に対するバリア特性は、典型的に、より高い親水性の成分を必要とする一方、このような成分は、環境からより多くの湿気を吸収する。シールフィルムが低い電気導電率を有している場合、デバイスの操作には、電力消費量の増大が必要になり、一方、導電率が高過ぎると、ブルーミングにより劣った画質が引き起こされ得る。したがって、非極性流体に対する改善されたバリア、低減された吸湿、および改善された電気光学性能のために最適化されたシールフィルムを形成する水性シール組成物が必要である。本発明者らは、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、ポリウレタン、導電性カーボンブラック、および水溶性エーテルの組合せを含んでいるシールフィルム組成物が、良好な電気光学性能および優れた色を有するシールフィルムを提供することを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第7,170,670号明細書
【特許文献2】米国特許第7,002,728号明細書
【特許文献3】米国特許第7,679,814号明細書
【特許文献4】米国特許第6,922,276号明細書
【特許文献5】米国特許第7,411,719号明細書
【特許文献6】米国特許第7,072,095号明細書
【特許文献7】米国特許第9,279,906号明細書
【特許文献8】米国特許第7,144,942号明細書
【特許文献9】米国特許第7,005.468号明細書
【特許文献10】米国特許第7,715,088号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/0120024号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0219306号明細書
【特許文献13】米国特許第6,982,178号明細書
【特許文献14】米国特許第7,839,564号明細書
【特許文献15】米国特許第7,116,318号明細書
【特許文献16】米国特許第7,535,624号明細書
【特許文献17】米国特許第7,075,502号明細書
【特許文献18】米国特許第7,012,600号明細書
【特許文献19】米国特許第7,453,445号明細書
【特許文献20】米国特許第7,312,784号明細書
【特許文献21】米国特許第8,009,348号明細書
【特許文献22】米国特許第6,241,921号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2015/0277160号明細書
【特許文献24】米国特許第7,615,325号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2015/0005720号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2016/0012710号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の要旨
一態様では、本発明は、シールフィルムの重量に対し15重量%~60重量%の含量の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90%~99.5%の加水分解度を有しており、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90%~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有している、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー;シールフィルムの重量に対し7重量%~29重量%の含量のポリウレタン;シールフィルムの重量に対し5重量%~70重量%の含量のカーボンブラック;ならびにシールフィルムの重量に対し0.5重量%~25重量%の含量の水溶性エーテルを含んでいる、シールフィルムをを含んでいるシールフィルムを対象とする。
【0021】
ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、1,000~1,000,000ダルトンの数平均分子量を有することができる。ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、92%~99%の加水分解度を有することができる。ポリウレタンポリマーは、1,000~2,000,000ダルトンの数平均分子量を有することができる。ポリウレタンは、エステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、またはそれらの組合せであり得る。シールフィルムの全表面エネルギーは、60mN/mよりも低くてもよい。水溶性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの間の界面張力は、2mN/m未満であり得る。シールフィルムは、有機シリコーン湿潤剤をさらに含み得る。
【0022】
水溶性エーテルは、75~5,000ダルトンの分子量を有しており、必要に応じてヒドロキシ基を含む。水溶性エーテルは、式I、式II、または式III
【化1】
によって表される
[式中、nは、1~145であり、R1は、水素、メチルまたはエチル基であり、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、水素、1個の炭素原子~6個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基、フェニル、およびベンジル基からなる群から独立に選択され、式Iは、少なくとも1個のエーテル官能基を含み、式IIは、少なくとも1個のエーテル官能基を含み、式IIIは、少なくとも1個のエーテル官能基を含む]。式Iについて、nは、1~10であり得る。シールフィルムは、10~1010オーム.cmの体積抵抗率を有することができる。
【0023】
別の態様では、本発明は、導電層;複数のマイクロセルを含んでいるマイクロセル層であり、各マイクロセルは、開口部を含んでおり、各マイクロセルは、電気泳動媒体を含んでおり、電気泳動媒体は、非極性担体中に、荷電された粒子を含んでいる、マイクロセル層;各マイクロセルの開口部にわたっているシールフィルム;接着層;および電極層を含む、電気泳動デバイスを対象とする。シールフィルムは、シールフィルムの重量に対し15重量%~60重量%の含量の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90%~99.5%の加水分解度を有しており、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90%~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有している、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー;シールフィルムの重量に対し7~29重量%の含量のポリウレタン;シールフィルムの重量に対し5重量%~70重量%の含量のカーボンブラック;シールフィルムの重量に対し0.5重量%~25重量%の含量の水溶性エーテルであり、70~5,000ダルトンの分子量を有しており、必要に応じてヒドロキシ基を含む水溶性エーテルを含んでいる。電気泳動媒体は、少なくとも3つのタイプの荷電された色素粒子を含み得、1つのタイプの荷電された粒子は、青、緑、赤、シアン、マゼンタ、およびイエローからなる群から選択される色を有している。
【0024】
さらに別の態様では、本発明は、水を除くシール組成物の重量に対し14重量%~55重量%の含量の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90%~99.5%の加水分解度を有しており、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90%~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有している、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー;水を除く水性シール組成物の重量に対し6重量%~27重量%の含量のポリウレタン;水を除く水性シール組成物の重量に対し5重量%~64重量%の含量のカーボンブラック;水を除く水性シール組成物の重量に対し1.0重量%~40重量%の含量の水溶性エーテルであり、75~5,000ダルトンの分子量を有しており、必要に応じてヒドロキシ基を含む水溶性エーテル;ならびに水性シール組成物の重量に対し20重量%~95重量%の含量の水を含んでいる水性シール組成物を対象とする。水性シール組成物は、水を除く水性シール組成物の重量に対し0.1重量%~8重量%の含量の架橋剤をさらに含み得、架橋剤は、ポリイソシアネート、多官能性ポリカルボジイミド、多官能性アジリジン、シランカップリング剤、ホウ素/チタン/ジルコニウムベースの架橋剤、またはメラミンホルムアルデヒドである。水性シール組成物は、水を除く水性シール組成物の重量に対し0.05重量%~5重量%の含量のレオロジー調整剤をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、充填およびシールされる前の複数のマイクロセルの構造の側面図を示す。
【0026】
図2図2は、マイクロセル構造を含む電気光学デバイスの例の側面図を示す。
【0027】
図3図3は、マイクロセル構造を含む電気光学デバイスを形成するために使用することができる、フロントプレーン積層物アセンブリの例の側面図を示す。
【0028】
図4図4は、マイクロセル構造を含む電気光学デバイスを形成するために使用することができる、二重リリースシートの例の側面図を示す。
【0029】
図5図5は、ロールツーロールプロセスを使用してマイクロセルを作製するための方法を示す。
【0030】
図6-1】図6Aおよび6Bは、熱硬化性物質前駆体でコーティングされた導体フィルムのフォトマスクを介する、フォトリソグラフィ露光を使用したマイクロセルの生成を詳述する。
【0031】
図6-2】図6Cおよび6Dは、フォトリソグラフィを使用するマイクロセルアレイの製作の代替実施形態を詳述する。図6Cおよび6Dでは、上部および底部の露光の組合せを使用して、一横方向の仕切り壁を、上部フォトマスクの露光によって硬化させ、別の横方向の仕切り壁を、不透明なベース導体フィルムを介する底部の露光によって硬化させることを可能にする。
【0032】
図7A図7A~7Dは、マイクロセルのアレイを充填し、シールするステップを示す。
図7B図7A~7Dは、マイクロセルのアレイを充填し、シールするステップを示す。
図7C図7A~7Dは、マイクロセルのアレイを充填し、シールするステップを示す。
図7D図7A~7Dは、マイクロセルのアレイを充填し、シールするステップを示す。
【0033】
図8-1】図8A~8Dは、シールフィルムの体積抵抗率の評価のために構築される様々な成分を示す。
【0034】
図8-2】図8A~8Dは、シールフィルムの体積抵抗率の評価のために構築される様々な成分を示す。図8Eは、シールフィルムの体積抵抗率の評価のために使用される波形を示す。
【0035】
図9図9は、対照および本発明のシールフィルムの電気インピーダンス分光法の結果を示す。
【0036】
図10図10は、水性シール組成物の電気光学性能の評価のために使用した電気光学デバイスの構造を示す。
【0037】
図11図11は、本発明および対照の電気光学デバイスの色域を決定するために使用した波形を示す。
【0038】
図12図12は、水性シール組成物のバリア特性を評価するために使用した電気光学デバイスの構造の側面図を示す。
【0039】
図13A図13A~13Dは、バリア特性について評価したマイクロセルの顕微鏡画像を示す。
図13B図13A~13Dは、バリア特性について評価したマイクロセルの顕微鏡画像を示す。
図13C図13A~13Dは、バリア特性について評価したマイクロセルの顕微鏡画像を示す。
図13D図13A~13Dは、バリア特性にいつて評価したマイクロセルの顕微鏡画像を示す。
【0040】
図14図14は、様々な界面張力を有するポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せを含んでいるポリマーシールフィルムの顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
本明細書で使用される場合、「分子量」は、別段記述されない限り、化合物の重量平均分子量を指す。分子量は、業界標準方法であるゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定される。
【0042】
ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの加水分解度は、ポリマーにおけるビニルアルコール基のモル数およびビニルアセテート基のモル数の合計に対する、ビニルアルコール基のモル数の比である。したがって、以下に(式IV)で提供された簡素化されたポリビニルアルコール式の例では、加水分解度は、方程式1によって計算される。
加水分解度=100×p/(p+q) 方程式1
典型的に、ポリビニルアルコールの製造者により、それらの生成物の加水分解度が報告される。このパラメーターは、ポリマーの重要な物理的特性、例えば、ポリマーの水溶度および対応する乾燥フィルムの耐水性に影響を及ぼす。ポリビニルアルコール(ホモポリマーおよびコポリマー)の加水分解度を決定するために、滴定方法が使用される。方法の詳細は、JIS K 6726法(日本規格協会、第94版、2017年10月20日)に記載されている。
【化2】
【0043】
「シールフィルム」および「シール層」という用語は、同義であり、電気光学デバイスに関して交換可能に使用される。
【0044】
「接着フィルム」および「接着層」という用語は、同義であり、電気光学デバイスに関して交換可能に使用される。
【0045】
別段記述されない限り、シールフィルムの成分の開示される含量は、水を除くシールフィルムの重量に対する成分の重量%として計算される。別段記述されない限り、水性シール組成物の成分の開示される含量は、水を除く水性シール組成物の重量に対する成分の重量%として計算される。
【0046】
A.マイクロセルの構造
【0047】
図1は、充填およびシールされる前の複数のマイクロセル100の構造の側面図を示している。各マイクロセルは、底部101、仕切り壁102、および開口部103を含んでいる。
【0048】
B.マイクロセル構造を含む電気光学デバイスの構造
【0049】
図2は、マイクロセルを含んでいる電気光学デバイス200の例の側面図を示している。この電気光学デバイス200の例は、第1の光透過性電極層210、マイクロセル層220、シールフィルム230、接着層240、および第2の電極層250を含んでいる。マイクロセル層は、底部221および仕切り壁222によって画定されている複数のマイクロセルを含んでいる。複数のマイクロセルのそれぞれは、電気泳動媒体225を収容しており、この媒体は、非極性流体中に荷電された粒子を含んでいる。マイクロセルは、シールフィルム230でシールされており、このシールフィルムは、複数のマイクロセルの開口部にわたっている。第2の電極層250は、接着層240を用いてシールフィルム230に接続されている。シール層230によってシールされ、電気泳動媒体225を含んでいる複数のマイクロセルは、電気光学デバイス200の電気光学材料層を構成している。電界の供給源は、第1の光透過性電極層210を第2の電極層250と接続し得る。電気泳動材料層にわたる電界の印加により、荷電された粒子が電気泳動媒体中を移動して画像を作り出し、この画像は、電気光学デバイス200の観察側215から見る観察者によって観察することができる。必要に応じたプライマー層(図2には示されず)は、第1の光透過性電極層210と複数のマイクロセル222との間に配置され得る。
【0050】
図2に示されている電気光学デバイスの例は、図3に示されているフロントプレーン積層物300によって構築され得る。フロントプレーン積層物300は、第1の光透過性電極層310、複数のマイクロセル325を含んでいるマイクロセル層320、シールフィルム330、接着層340、およびリリースシート360を含んでいる。複数のマイクロセルの各マイクロセルは、電気泳動媒体325を収容しており、この媒体は、非極性流体中に荷電された粒子を含んでいる。マイクロセル325は、シールフィルム330でシールされており、このシールフィルムは、複数のマイクロセルの開口部にわたっている。リリースシート360は、接着層340を用いてシールフィルム330に接続されている。リリースシート360の除去により、接着層340の表面が露出し、この接着層は、第2の電極層上に接続されて、電気光学デバイスを形成し得る。必要に応じたプライマー層(図3には示されず)は、第1の光透過性電極層310と複数のマイクロセル330との間に配置され得る。
【0051】
図2に示されている電気光学デバイスの例は、図4に示されている二重リリースシート400によっても構築され得る。二重リリースシート400は、第1のリリースシート480、第1の接着層470、複数のマイクロセル425を含んでいるマイクロセル層420、シールフィルム430、第2の接着層440、および第2のリリースシート460を含んでいる。複数のマイクロセルのそれぞれは、電気泳動媒体425を収容しており、この媒体は、非極性流体中に荷電された粒子を含んでいる。マイクロセルは、シールフィルム430でシールされており、このシールフィルムは、複数のマイクロセルの開口部にわたっている。第1のリリースシート480は、第1の接着層470を用いてマイクロセル層420に接続されている。第2のリリースシート460は、第2の接着層440を用いてシールフィルム430に接続されている。第1のリリースシート480の除去により、第1の接着層470の表面が露出し、この接着層は、第1の光透過性電極層上に接続され得る。第2のリリースシート460の除去により、第2の接着層440の表面が露出し、この接着層は、第2の電極層上に接続されて、電気光学デバイスを形成し得る。必要に応じたプライマー層(図4には図示せず)は、第1の接着層470とマイクロセル層430との間に配置され得る。
【0052】
C.マイクロセル構造の形成
【0053】
マイクロセルを構築するための技術。マイクロセルは、バッチ式プロセスまたは米国特許第6,933,098号に開示されている連続的なロールツーロールプロセスのいずれかで形成され得る。後者は、利益をもたらす作用物質の送達および電気泳動ディスプレイを含めた様々な用途における使用のためのコンパートメントを生成するための、連続的な低コストのハイスループット製造技術を提供する。本発明との併用に適したマイクロセルアレイは、図5に示されている通り、マイクロエンボス加工を用いて作り出すことができる。雄型(500)は、ウェブ504の上またはウェブ504の下(図示せず)のいずれかに置かれ得る。しかし、代替の配置が可能である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,715,088号を参照されたい。導電性基材は、デバイスのためのバッキング層になるポリマー基材上に導体フィルム501を形成することによって、構築され得る。次に、熱可塑性物質、熱硬化性物質、またはそれらの前駆体を含んでいる組成物502が、導体フィルム上にコーティングされる。熱可塑性物質または熱硬化性物質の前駆体層は、熱可塑性物質または熱硬化性物質の前駆体層のガラス転移温度よりも高い温度で、ローラー、プレートまたはベルトの形態の雄型によってエンボス加工される。
【0054】
マイクロセルの調製のための熱可塑性物質または熱硬化性物質の前駆体は、多官能性アクリレートまたはメタクリレート、ビニルエーテル、エポキシド、およびそれらのオリゴマーまたはポリマーなどであり得る。多官能性エポキシドと多官能性アクリレートとの組合せは、望ましい物理的機械的特性を達成するのにも非常に有用である。可撓性を付与する架橋可能なオリゴマー、例えばウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレートは、エンボス加工されたマイクロセルの曲げ耐性を改善するために添加され得る。組成物は、ポリマー、オリゴマー、モノマーおよび添加剤を含有し得るか、またはオリゴマーだけ、モノマーだけおよび添加剤だけを含有してもよい。このクラスの材料のガラス転移温度(T)は、通常、約-70℃~約150℃、または約-20℃~約50℃の範囲である。マイクロエンボス加工プロセスは、典型的に、Tよりも高い温度で行われる。加熱された雄型、またはその型が圧力をかける加熱されたハウジング基材は、マイクロエンボス加工の温度および圧力を制御するために使用され得る。
【0055】
図5に示される通り、型は、前駆体層が硬化されている間またはその後に離型されて、マイクロセル503のアレイを現す。前駆体層の硬化は、冷却、溶媒蒸発、放射線、熱または湿気による架橋によって達成され得る。熱硬化性物質の前駆体の硬化が、UV放射線によって達成される場合、UVは、2つの図に示されている通り、ウェブの底部または上部から透明導体フィルム上に放射され得る。代替として、UVランプは、型の内側に置かれ得る。この場合、UV光を、予めパターン化された雄型を通して熱硬化性物質の前駆体層上に放射させるために、型は透明でなければならない。雄型は、任意の適切な方法、例えばダイヤモンド旋盤プロセスまたはフォトレジストプロセスに続いて、エッチングまたは電気めっきのいずれかによって調製され得る。雄型のためのマスターテンプレートは、任意の適切な方法、例えば電気めっきによって製造され得る。電気めっきでは、ガラスベースに、クロムインコネルなどの種金属(seed metal)の薄層がスパッタリングされる(典型的に3000Å)。次に、型がフォトレジストの層でコーティングされ、UVに露光される。マスクが、UVとフォトレジストの層との間に置かれる。フォトレジストの露光領域が硬化される。次に、非露光領域が、適切な溶媒を用いて洗浄することによって除去される。残った硬化したフォトレジストが乾燥させられ、種金属の薄層が再びスパッタリングされる。これにより、マスターが電鋳のために準備ができる。電鋳のために使用される典型的な材料は、ニッケルコバルトである。代替として、マスターは、電鋳または無電解ニッケル堆積によって、ニッケルから作製することができる。型の床面は、典型的に約50~400ミクロンの間である。マスターは、”Replication techniques for micro-optics”, SPIE Proc. Vol. 3099, pp. 76-82 (1997)に記載されている通り、eビーム書き込み、乾燥エッチング、化学エッチング、レーザー書き込みまたはレーザー干渉を含めた他のマイクロエンジニアリング技術を使用して作製することもできる。代替として、型は、フォトマシニングによって、プラスチック、セラミックまたは金属を使用して作製することができる。
【0056】
UV硬化性樹脂組成物を適用する前に、型は、脱型プロセスを助ける離型剤を用いて処理され得る。UV硬化性樹脂は、分注前に脱気され得、必要に応じて溶媒を含有し得る。溶媒は、存在する場合、容易に蒸発する。UV硬化性樹脂は、雄型を覆うように、コーティング、浸漬、注入などの任意の適切な方法によって分注される。分注装置は、移動していても固定されていてもよい。導体フィルムは、UV硬化性樹脂に重ね合わされる。必要ならば、樹脂とプラスチックとの間に適切な結合を確保し、マイクロセルの床部の厚さを制御するために、圧力が適用され得る。圧力は、積層ローラー、真空成形、圧縮デバイスまたは任意の他の同様の手段を使用して適用され得る。雄型が金属製であり、不透明である場合、プラスチック基材は、典型的に、樹脂を硬化させるために使用される化学線を透過させる。それとは逆に、雄型が透明であってもよく、プラスチック基材は、化学線を透過させなくてもよい。成型されたフィーチャーを、転写シート上に良好に転写させるために、導体フィルムは、UV硬化性樹脂に対して良好な接着を有している必要があり、この樹脂は、型表面に対して良好な離型特性を有しているべきである。
【0057】
本発明のためのマイクロセルアレイは、典型的に、予め形成された導体フィルム、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)導体ラインを含むが、他の導電性材料、例えば銀またはアルミニウムを使用してもよい。導電層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアラミド、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ポリスルホン、エポキシおよびそれらの複合物などの基材によって裏打ちされ得るか、または基材に統合され得る。導体フィルムは、放射線硬化性ポリマー前駆体層でコーティングされ得る。次に、フィルムおよび前駆体層は、放射線に像様に露光されて、マイクロセル壁部構造を形成する。露光後に、前駆体材料は、非露光領域から除去されて、導体フィルム/支持ウェブに結合した、硬化したマイクロセル仕切り壁を残す。像様露光は、導体フィルム上にコーティングされた放射線硬化性材料の露光画像または所定の露光パターンを生成するためのフォトマスクに、UVまたは他の形態の放射線が通過することによって達成され得る。一般には必要ないが、マスクは、透明なマスク部分がITOラインの間の空間と整列し、不透明なマスク部分がITO材料(マイクロセルのセル底部領域を意図されている)と整列するように、導体フィルム、すなわちITOラインに対して位置し、整列させられ得る。
【0058】
フォトリソグラフィ。マイクロセルは、フォトリソグラフィを使用して生成することもできる。マイクロセルアレイを製作するためのフォトリソグラフィプロセスは、図6Aおよび6Bに示されている。図6Aおよび6Bに示されている通り、マイクロセルアレイ600は、公知の方法によって導体電極フィルム602上にコーティングされた放射線硬化性材料601aを、マスク606を通してUV光(または代替として他の形態の放射線、電子線など)に露光して、マスク606を通して映し出された画像に対応する仕切り壁601bを形成することによって、調製され得る。ベース導体フィルム602は、好ましくは、支持基材ベースウェブ603上にマウントされ、このウェブは、プラスチック材料を含み得る。
【0059】
図6Aのフォトマスク606において、暗色正方形604は、不透明領域を表しており、暗色正方形の間の空間は、マスク606の透明領域605を表している。UVは、透明領域605を通して、放射線硬化性材料601a上に放射される。露光は、好ましくは、放射線硬化性材料601a上に直接実施され、すなわち、UVは、基材603へもベース導体602へも通過しない(上部露光)。この理由のために、基材603も導体602も、用いられるUVまたは他の波長の放射線を透過させる必要がない。
【0060】
図6Bに示されている通り、露光された領域601bは硬化する。次に、露光されていない領域(マスク606の不透明領域604によって保護されている)は、適切な溶媒または現像剤によって除去されて、マイクロセル607を形成する。溶媒または現像剤は、放射線硬化性材料を溶解するか、またはその粘度を低減するために一般に使用されているもの、例えばメチルエチルケトン(MEK)、トルエン、アセトン、イソプロパノールなどから選択される。マイクロセルの調製は、導体フィルム/基材支持ウェブの下にフォトマスクを置くことによっても同様に達成され得、この場合、UV光は、フォトマスクを通して底部から放射され、この基材は、放射線を透過させる必要がある。
【0061】
像様露光。像様露光による本発明のマイクロセルアレイの調製のためのさらに別の代替方法は、図6Cおよび6Dに示されている。不透明な導体ラインが使用される場合、底部からの露光のためのフォトマスクとして、導体ラインを使用することができる。耐久性のあるマイクロセル仕切り壁は、上部から、導体ラインに対して垂直な不透明ラインを有している第2のフォトマスクを通してさらに露光することによって形成される。図6Cは、本発明のマイクロセルアレイ610を生成するために、上部および底部の両方からの露光原理を使用することを示している。ベース導体フィルム612は、不透明であり、ラインをパターン化されている。ベース導体612および基材613上にコーティングされている放射線硬化性材料611aは、底部から、導体ラインパターン612を通して露光され、この導体ラインパターン612は、第1のフォトマスクとして働く。第2の露光は、「上部」側から、導体ライン612に対して垂直なラインパターンを有している第2のフォトマスク616を通して実施される。ライン614の間の空間615は、UV光を実質的に透過させる。このプロセスにおいて、壁部材料611bは、底部から上方に向かって一方の側面方向に硬化し、上部から下方に向かって垂直方向に硬化して、一緒になって完全なマイクロセル617を形成する。次に、図6Dに示されている通り、露光されていない領域は、前述の通り溶媒または現像剤によって除去されて、マイクロセル617を現す。
【0062】
マイクロセルは、マイクロセルと良好な適合性を有しており、媒体と相互作用しない熱可塑性エラストマーから構築され得る。有用な熱可塑性エラストマーの例として、ABA、および(AB)nタイプのジブロック、トリブロック、およびマルチブロックコポリマーが挙げられ、ここでAは、スチレン、α-メチルスチレン、エチレン、プロピレンまたはノルボルネンであり、Bは、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ジメチルシロキサンまたはプロピレンスルフィドであり、AおよびBは、式において同じであってはならない。数nは、≧1、好ましくは1~10である。特に有用なのは、スチレンまたはox-メチルスチレンのジブロックまたはトリブロックコポリマー、例えばSB(ポリ(スチレン-b-ブタジエン))、SBS(ポリ(スチレン-b-ブタジエン-b-スチレン))、SIS(ポリ(スチレン-b-イソプレン-b-スチレン))、SEBS(ポリ(スチレン-b-エチレン/ブチレン-b-スチレン(stylene)))ポリ(スチレン-b-ジメチルシロキサン-b-スチレン)、ポリ((α-メチルスチレン-b-イソプレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-イソプレン-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-プロピレンスルフィド-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-ジメチルシロキサン-b-α-メチルスチレン)である。商業的に入手可能なスチレンブロックコポリマー、例えばKraton DおよびGシリーズ(Kraton Polymer、Houston、Tex.製)が、特に有用である。結晶性ゴム、例えばポリ(エチレン-co-プロピレン-co-5-メチレン-2-ノルボルネン)(poly(ethylene-co-propylene-co-5-methylene-2-norbomene))またはEPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)ゴム、例えばVistalon 6505(Exxon Mobil、Houston、Tex.製)およびそれらのグラフト化コポリマーも、非常に有用であることが見出された。
【0063】
熱可塑性エラストマーは、溶媒または溶媒混合物に溶解させられ得、この溶媒または溶媒混合物は、マイクロセルにおける担体と不混和性であり、担体の比重よりも低い比重を示す。低表面張力の溶媒は、マイクロセル仕切り壁およびその流体よりも濡れ特性が良好なので、オーバーコーティング組成物には、低表面張力の溶媒が好ましい。35ダイン/cmよりも低い表面張力を有している溶媒または溶媒混合物が、好ましい。30ダイン/cmよりも低い表面張力が、より好ましい。適切な溶媒には、アルカン(好ましくはC6~12アルカン、例えばヘプタン、オクタンまたはExxon Chemical Company製のIsopar溶媒、ノナン、デカンおよびそれらの異性体)、シクロアルカン(好ましくはC6~12シクロアルカン、例えばシクロヘキサンおよびデカリンなど)、アルキルベンゼン(alkylbezenes)(好ましくはモノ-またはジ-C1~6アルキルベンゼン、例えばトルエン、キシレンなど)、アルキルエステル(好ましくはC2~5アルキルエステル、例えば酢酸エチル、酢酸イソブチルなど)およびC3~5アルキルアルコール(例えば、イソプロパノールなどおよびそれらの異性体)が含まれる。アルキルベンゼンおよびアルカンの混合物が、特に有用である。
【0064】
ポリマー混合物は、ポリマー添加剤に加えて、湿潤剤(界面活性剤)を含み得る。また、マイクロセルへのシーラントの接着を改善し、より柔軟なコーティングプロセスを提供するために、湿潤剤(例えば、3M Company製のFC界面活性剤、DuPont製のZonylフッ素系界面活性剤、フルオロアクリレート、フルオロメタクリレート、フルオロで置換されている長鎖アルコール、ペルフルオロ置換されている長鎖カルボン酸およびそれらの誘導体、ならびにOSi、Greenwich、Conn.製のSilwetシリコーン界面活性剤)が組成物に含まれ得る。オーバーコーティングプロセス中またはその後に、架橋または重合反応によってシールフィルムの物理的機械的特性を増強するために、架橋剤(例えば、ビスアジド、例えば4,4’-ジアジドジフェニルメタンおよび2,6-ジ-(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン)、加硫剤(例えば、2-ベンゾチアゾリルジスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド)、多官能性モノマーまたはオリゴマー(例えば、ヘキサンジオール、ジアクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレン(diallylphthalene))、熱開始剤(例えば、過酸化ジラウロイル(dilauroryl)、過酸化ベンゾイル)および光開始剤(例えば、イソプロピルチオキサントン(ITX)、Ciba-Geigy製のIrgacure 651およびIrgacure 369)を含めた他の成分も非常に有用である。
【0065】
マイクロセルアレイ、例えば図7Aに示されているアレイ700は、前述の方法のいずれかによって調製され得る。図7A~7Dの断面図に示されている通り、マイクロセル仕切り壁702は、マイクロセル底部701および導電層710から上方に延びて、開いたマイクロセルを形成する。一実施形態では、導電層710は、マイクロセル底部701上またはマイクロセル底部701に形成される。図7A~7Dは、導電層710がマイクロセル底部701上に連続して延びていることを示しているが、導電層710は、底部701の下もしくは底部701内に連続して延びているか、またはマイクロセル仕切り壁702によって中断されていることも可能である。
【0066】
次に、マイクロセルは、非極性流体中に荷電された粒子を含んでいる電気泳動媒体725で充填されて、複数の充填されたマイクロセル770を形成する。マイクロセルは、様々な技術を使用して充填され得る。一部の実施形態では、マイクロセル仕切り壁702の深さまでマイクロセルを充填するために、ブレードコーティングが使用され得る。
【0067】
図7Cに示されている通り、充填後、マイクロセルは、水性シール組成物を適用することによってシールされて、シールフィルム730を含んでいるシールされたマイクロセル780を形成する。一部の実施形態では、シールプロセスは、熱、乾燥熱風、またはUV放射線への曝露を含み得る。シールフィルムは、電気泳動媒体725の非極性流体に対する良好なバリア特性を有していなければならない。
【0068】
代替実施形態において、様々な個々のマイクロセルには、反復フォトリソグラフィを使用することによって、所望の混合物が充填され得る。このプロセスは、典型的に、空のマイクロセルのアレイを、ポジ型として働くフォトレジストの層でコーティングし、ポジ型フォトレジストを像様露光することによってある一定数のマイクロセルを選択的に開口させ、続いてフォトレジストを現像させ、開口しているマイクロセルを所望の混合物で充填し、充填されたマイクロセルをシールプロセスによってシールすることを含む。これらのステップは、他の混合物で充填された、シールされたマイクロセルを作り出すために反復され得る。この手順は、所望の比率の混合物または濃度を有しているマイクロセルの大型シートの形成を可能にする。
【0069】
充填されたマイクロセルのシールは、いくつかのやり方で達成され得る。ある手法は、水性シール組成物を電気泳動媒体組成物と混合することを含む。水性シール組成物は、電気泳動組成物とは不混和性であり得、好ましくは電気泳動媒体組成物の比重よりも低い比重を有し得る。シール組成物および電気泳動媒体組成物の2種の組成物は、十分に混合され、正確なコーティング機序、例えばメイヤーバー、グラビア、ドクターブレード、スロットコーティングまたはスリットコーティングを用いて複数のマイクロセル上にすぐにコーティングされる。過剰の流体は、ワイパーブレードまたは類似のデバイスによってかき落される。マイクロセルの仕切り壁の上部表面上に残った流体をきれいにするために、少量の弱溶媒または溶媒混合物、例えばイソプロパノール、メタノールまたはその水溶液が使用され得る。その後、水性シール組成物は、電気泳動媒体組成物から分離され、電気泳動媒体の液体組成物の上部に浮かぶ。代替として、電気泳動媒体組成物および水性シール組成物の混合物がマイクロセルに充填された後、組成物の混合物の計量を制御し、電気泳動媒体組成物からの水性シール組成物の相分離を促進して均一なシールフィルムを形成するために、基材が上部に積層され得る。使用される基材は、最終構造における機能的基材であってもよく、または後で除去することができる捨て基材(sacrifice substrate)、例えばリリース基材であってもよい。次に、水性シール組成物をin situで(すなわち、電気泳動媒体組成物と接触しているときに)硬化させることによって、シールフィルムが形成される。水性シール組成物の硬化は、UVまたは他の形態の放射線、例えば可視光線、IRもしくは電子線によって達成され得る。代替として、熱または湿気硬化性水性シール組成物が使用される場合には、水性シール組成物を硬化させるために、熱または湿気も用いられ得る。
【0070】
第2の手法では、最初に、電気泳動媒体組成物がマイクロセルに充填され得、その後、充填されたマイクロセル上に、水性シール組成物がオーバーコーティングされる。オーバーコーティングは、従来のコーティングおよびプリンティングプロセス、例えばブランケットコーティング、インクジェットプリンティングまたは他のプリンティングプロセスによって達成され得る。この手法では、水性シール組成物を溶媒蒸発、放射線、熱、湿気、または界面反応により硬化させることによって、シールフィルムがin situで形成される。界面重合に続いてUV硬化することが、シールプロセスに有益である。電気泳動媒体組成物と、シール用オーバーコートとの混合は、界面重合によって界面に薄いバリア層が形成されることによって、著しく抑制される。次に、例えばUV放射線による後硬化ステップによって、シールが完了する。混合度は、電気泳動媒体組成物の比重よりも低い比重を有している水性シール組成物を使用することによって、さらに低減され得る。シール用オーバーコートの粘度および厚さを調整するために、揮発性有機溶媒が使用され得る。水性シール組成物のレオロジーは、最適なシール適性(sealability)およびコーティング適性(coatability)に合わせて調整され得る。揮発性溶媒がオーバーコートにおいて使用される場合、揮発性溶媒は、電気泳動媒体組成物における溶媒と不混和性であることが好ましい。
【0071】
マイクロセルが充填され、シールされた後、シールされたマイクロセルアレイには、図7Dに示されている通り、複数の電極を含んでいる第2の電極層750が積層され得る。第2の電極層750は、図7Dに示されている通り、シールフィルム730上に結合して、電気光学デバイス790を形成する。第2の電極層750をシールフィルム730上に結合させるために、接着剤が使用され得る。接着層は、図7Dでは示されていない。接着層の接着材料は、導電性であり得る。接着層の接着剤は、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、または熱、湿気もしくは放射線硬化性接着剤であり得る。積層用接着剤は、上部導電層が放射線を透過させる場合には、上部導電層を通る放射線、例えばUVによって後硬化され得る。他の実施形態では、複数の電極が、マイクロセルのシールされたアレイに直接結合され得る。
【0072】
一般に、マイクロセルは、いかなる形状であってもよく、それらのサイズおよび形状は変わり得る。マイクロセルは、ある系では実質的に均一なサイズおよび形状であり得る。しかし、複数の形状およびサイズが混ざったマイクロセルを有することが可能である。マイクロセルの開口部は、円形、正方形、矩形、六角形または任意の他の形状であり得る。開口部の間の仕切り領域のサイズも変わり得る。個々の各マイクロセルの寸法は、約1×10~約1×10μm、または約1×10~約1×10μm、または約1×10~約1×10μmの範囲であり得る。
【0073】
マイクロセルの深さは、約5μm~約200μm、または約10μm~約100μmの範囲であり得る。全面積に対する開口部面積の比は、0.05~0.95、好ましくは0.4~0.9の範囲である。
【0074】
電気泳動ディスプレイは、普通、電気泳動材料の層、およびその電気泳動材料の両側に配置されている少なくとも2つの他の層を含んでおり、これらの2層のうちの一方は、電極層である。ほとんどのこのようなディスプレイでは、両方の層が電極層であり、ディスプレイの画素を画定するためにこれらの電極層のうちの一方または両方がパターン化されている。例えば、一方の電極層は、細長い行電極にパターン化され得、他方は、行電極に対して直角に延びる細長い列電極にパターン化され得、画素は、行電極および列電極の交差部によって画定される。代替として、より一般的には、一方の電極層は、単一の連続式電極の形態を有しており、他方の電極層は、画素電極のマトリックスにパターン化され、それらはそれぞれ、ディスプレイの1つの画素を画定している。ディスプレイと分離されているスタイラス、プリントヘッドまたは類似の可動電極と併用することが意図されている、別のタイプの電気泳動ディスプレイでは、電気光学材料層に隣接している層の一方だけが電極を含んでおり、電気光学材料層の反対側の層は、典型的に、可動電極が電気光学材料層に損傷を与えないようにすることを意図された保護層である。
【0075】
三層電気泳動ディスプレイの製造は、普通、少なくとも1つの積層操作を含む。例えば、前述のMITおよびE Inkの特許および出願のいくつかには、カプセル化された電気泳動ディスプレイを製造するための方法が記載されており、そのディスプレイにおける、バインダー中にカプセルを含んでいるカプセル化された電気泳動媒体は、インジウムスズ酸化物(ITO)を含んでいる可撓性基材上、またはプラスチックフィルム上にコーティングされた類似の導電性コーティング上にコーティングされる。これとは別に、画素電極のアレイおよびその画素電極を接続して回路を駆動するのに適した配置の導体を含んでいる、バックプレーンが調製される。最終ディスプレイを形成するために、電気光学材料層を有している基材は、積層用接着剤を使用してバックプレーンに積層される。
【0076】
前述の米国特許第6,982,178号は、大量生産に良く適合している固体電気光学ディスプレイをアセンブリする方法を記載している。本質的に、この特許は、いわゆる「フロントプレーン積層物」(「FPL」)を記載しており、これは順に、図3に示される、光透過性電極層、光透過性電極層と電気的に接触している電気光学材料層、接着層、およびリリースシートを含んでいる。典型的に、光透過性電極層は、光透過性基材上に担持され、この光透過性基材は、永久的な変形を受けずに直径10インチ(254mm)のドラム(例えば)の周りに手作業で巻き付けることができるという意味で、好ましくは可撓性である。「光透過性」という用語は、本特許および本明細書においては、そのように指定された層を通して見ている観察者が、電気泳動媒体のディスプレイ状態の変化を観察することを可能にするのに十分な光を、そのように指定された層が透過することを意味するために使用され、この変化は、普通は光透過性電極層および隣接する基材(存在する場合)を通して見られる。電気泳動媒体が非可視波長の反射性の変化を示す場合、「光透過性」という用語は、当然のことながら、関連する非可視波長の透過を指していると解釈されるべきである。基材は、典型的にポリマーフィルムであり、普通、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは約2~約10ミル(51~254μm)の範囲の厚さを有する。光透過性電極層は、好都合には、例えば、アルミニウムもしくはITOの薄い金属もしくは金属酸化物層であるか、または導電性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、例えばE.I.du Pont de Nemours&Company、Wilmington、DE製の「アルミめっき処理されたMylar」(「Mylar」は、登録商標である)として商業的に入手可能であり、このような市販材料は、フロントプレーン積層物において良好な結果を得て使用され得る。このようなフロントプレーン積層物を使用する電気泳動ディスプレイのアセンブリは、フロントプレーン積層物からリリースシートを除去し、接着層をバックプレーンに接着させるのに有効な条件下で、接着層をバックプレーンと接触させ、それによってバックプレーンに接着層、電気光学材料層、および光透過性電極層を固定することによって行われ得る。このプロセスは、フロントプレーン積層物が、典型的にロールツーロールコーティング技術を使用して大量生産され、次に特定のバックプレーンとの併用に必要な任意のサイズの小片に切断され得るので、大量生産に良く適合している。
【0077】
米国特許第7,561,324号は、いわゆる「二重リリースシート」を記載しており、これは本質的に、前述の米国特許第6,982,178号のフロントプレーン積層物を簡素化したものである。ある形態の二重リリースシートは、図4に示されるように、2つの接着層の間に挟まれた電気光学材料層を含んでおり、接着層の一方または両方がリリースシートによって被覆されている。別の形態の二重リリースシートは、2つのリリースシートの間に挟まれた固体電気光学材料の層を含んでいる。両方の形態の二重リリースフィルムは、既に記載されているフロントプレーン積層物から電気泳動ディスプレイをアセンブリするためのプロセスにほぼ類似しているが、2つの別個の積層物を含んでいるプロセスにおける使用を意図されている。典型的に、第1の積層物では、二重リリースシートが正面の電極に積層されて、正面のサブアセンブリが形成され、次に第2の積層物では、正面のサブアセンブリがバックプレーンに積層されて、最終ディスプレイが形成されるが、これらの2つの積層順は、所望に応じて逆にすることができる。
【0078】
米国特許第7,839,564号は、いわゆる「逆フロントプレーン積層物」を記載しており、これは前述の米国特許第6,982,178号に記載されているフロントプレーン積層物の変形である。この逆フロントプレーン積層物は、順に、光透過性保護層および光透過性電極層の少なくとも一方、接着層、電気光学材料層、ならびにリリースシートを含み得る。この逆フロントプレーン積層物を使用して、電気光学材料層と光透過性電極層との間に積層用接着剤の層を有している電気光学デバイスが形成されるが、電気光学材料層とバックプレーンとの間に、典型的に薄い第2の接着層が存在しても存在していなくてもよい。このような電気光学ディスプレイは、良好な解像度と良好な低温性能を組み合わせることができる。
【0079】
電気泳動媒体。
【0080】
電気泳動媒体は、本発明の文脈では、マイクロセルにおける組成物を指す。マイクロセルには、ディスプレイ用途のために、非極性流体中の少なくとも1つのタイプの荷電された色素粒子が充填され得る。電気泳動媒体は、1つのタイプの荷電されたタイプの粒子、または異なる色、電荷および電荷極性を有している1つまたはそれより多くのタイプの粒子を含み得る。荷電された粒子は、電気光学材料層にわたって印加された電界の影響の下で、電気泳動媒体中を移動する。荷電された粒子は、それらの安定性を改善するために、ポリマー表面処理を有している無機または有機色素であり得る。電気泳動媒体は、白、黒、シアン、マゼンタ、イエロー、青、緑 赤、および他の色を有している色素を含み得る。電気泳動媒体はまた、電荷制御剤 電荷補助剤(charge adjuvant)、レオロジー調整剤、および他の添加剤を含み得る。非極性流体の例として、炭化水素、例えばIsopar、デカヒドロナフタレン(デカリン)、5-エチリデン-2-ノルボルネン、脂肪油、パラフィン油、シリコン(silicon)液、芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、フェニルキシリルエタン、ドデシルベンゼンまたはアルキルナフタレン、ハロゲン化溶媒、例えばペルフルオロデカリン、ペルフルオロトルエン、ペルフルオロキシレン、ジクロロベンゾトリフルオリド、3,4,5-トリクロロベンゾトリフルオリド、クロロペンタフルオロ-ベンゼン、ジクロロノナンまたはペンタクロロベンゼン、および全フッ素置換溶媒、例えば3M Company、St.Paul MN製のFC-43、FC-70またはFC-5060、低分子量ハロゲン含有ポリマー、例えばTCI America、Portland、Oregon製のポリ(ペルフルオロプロピレンオキシド)、ポリ(クロロトリフルオロ-エチレン)、例えばHalocarbon Product Corp.、River Edge、NJ製のハロカーボン油、ペルフルオロポリアルキルエーテル、例えばAusimont製のGalden、またはDuPont、Delaware製のKrytox油およびGreases K-Fluidシリーズ、Dow-corning製のポリジメチルシロキサンベースのシリコーン油(DC-200)が挙げられる。
【0081】
電気泳動媒体は、異なる色を有している2つのタイプの荷電された粒子を含有し得、第1のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性を有しており、第2のタイプの荷電された粒子は、第1の荷電された極性とは反対の第2の荷電された極性を有している。第1のタイプの荷電された粒子は、黒であり得、第2のタイプの荷電された粒子は、白であり得る。
【0082】
電気泳動媒体は、すべてが異なる色を有する3つのタイプの荷電された粒子を含有し得、第1のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性を有し、第2のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性とは反対の第2の電荷極性を有し、第3のタイプの荷電された粒子は、第1または第2の電荷極性と同じ第3の電荷極性を有する。第1のタイプの荷電された粒子は、黒であり得、第2のタイプの荷電された粒子は、白であり得、第3のタイプの荷電された粒子は、赤、イエロー、青、シアン、マゼンタ、緑、および橙からなる群から選択され得る。
【0083】
電気泳動媒体は、すべてが異なる色を有する4つのタイプの荷電された粒子を含有し得、第1のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性を有し、第2のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性を有し、第3のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性とは反対の第2の電荷極性を有し、第4のタイプの荷電された粒子は、第2の電荷極性を有する。第1のタイプの粒子の電荷の大きさは、第2のタイプの粒子の電荷の大きさよりも高くてもよく、第3のタイプの粒子の電荷の大きさは、第4のタイプの粒子の電荷よりも高くてもよい。一例では、第1のタイプの荷電された粒子は、シアンであり、第2のタイプの荷電された粒子は、マゼンタであり、第3のタイプの粒子は、イエローであり、第4のタイプの荷電された粒子は、白である。
【0084】
電気泳動媒体は、すべてが異なる色を有する4つのタイプの荷電された粒子を含有し得、第1のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性を有し、第2のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性を有し、第3のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性を有し、第4のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性とは反対の第2の電荷極性を有する。第1、第2、および第3の粒子の電荷の大きさは、互いに異なっていてもよい。第3のタイプの粒子の電荷の大きさは、第1のタイプの粒子の電荷の大きさよりも高くてもよく、第1のタイプの粒子の電荷の大きさは、第2のタイプの粒子の電荷の大きさよりも高くてもよい。一例では、第1のタイプの粒子は、シアンであり、第2のタイプの粒子は、マゼンタであり、第3のタイプの粒子は、イエローであり、第4のタイプの粒子は、白である。
【0085】
電気泳動媒体は、すべてが異なる色を有する5つのタイプの荷電された粒子を含有し得、第1のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性を有し、第2のタイプの荷電された粒子は、第1の電荷極性を有し、第3のタイプの粒子は、第1の電荷極性を有し、第4のタイプの粒子は、第1の電荷極性とは反対の第2の電荷極性を有し、第5のタイプの粒子は、第2の電荷極性を有する。第1、第2、および第3の電荷の大きさは、互いに異なっていてもよい。第3のタイプの粒子の電荷の大きさは、第1のタイプの粒子の電荷の大きさよりも高くてもよく、第1のタイプの粒子の電荷の大きさは、第2のタイプの粒子の電荷の大きさよりも高くてもよい。第4のタイプの粒子の電荷は、第5のタイプの荷電された粒子よりも高い電荷を有することができる。一例では、第1のタイプの粒子は、シアンであり、第2のタイプの粒子は、マゼンタであり、第3のタイプの粒子は、黒であり、第4のタイプの粒子は、イエローであり、第5のタイプの粒子は、白である。
【0086】
水性シール組成物からのシールフィルム
【0087】
電気光学ディスプレイのマイクロセルの開口部をシールするシールフィルムは、非極性流体が複数のマイクロセルから除去されないように、電気泳動媒体にバリアを提供しなければならない。さらに、シールフィルムは、デバイスの電気光学性能にマイナスの影響を及ぼしてはならない。
【0088】
シールフィルムの重要な特性の1つは、その電気体積抵抗率である。シールフィルムの体積抵抗率が高過ぎると、シールフィルム内にかなりの電圧低下が生じて、デバイスを操作するために電極にわたって電圧上昇が必要になる。この方式で電極にわたって電圧を上昇することは、ディスプレイの電力消費量を増大し、上昇した電圧を取り扱うためにより複雑で高価な制御回路の使用が必要になり得るので、望ましくない。他方では、シールフィルムの体積抵抗率が少なすぎると、隣接する画素電極の間に望ましくないクロストークが観察され、画質が低下する(ブルーミング)。加えて、体積抵抗率は、典型的に温度の低下と共に急速に上昇するので、シールフィルムの高過ぎる体積抵抗率は、ディスプレイの低温での電気光学性能にマイナスの影響を及ぼす。シールフィルムは、10オーム.cmまたはそれよりも高い体積抵抗率を有することができる。シールフィルムは、3.5×10~1012オーム.cmまたは10~1010オーム.cmの体積抵抗率を有することができる。シールフィルムは、1010オーム.cmまたはそれ未満の体積抵抗率を有することができる。
【0089】
バリア特性および体積抵抗率以外のシールフィルムの別の重要な特性は、その吸湿である。シールフィルムが環境から著しい量の湿気を経時的に吸収する場合、デバイスの電気光学性能が劣ったものになり得る。
【0090】
シールフィルムは、水を除く水性シール組成物の重量に対し14重量%~55重量%の含量の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、水を除く水性シール組成物の重量に対しポリウレタンの6重量%~27重量%の含量のポリウレタン、水を除く水性シール組成物の重量に対し5重量%~64重量%の含量のカーボンブラック、水を除く水性シール組成物の重量に対し1.0重量%~40重量%の含量の水溶性エーテル、および水性シール組成物の重量に対し20重量%~95重量%の含量の水を含む水性シール組成物から調製することができる。
【0091】
ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90%~99.5%の加水分解度を有している。ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90%~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有している。ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーおよびポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの加水分解度は、92%~99%、または92%~95%であり得る。ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーのエチレン含量は、9%未満、または8.5%未満、または8%未満であり得る。ポリビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマーの加水分解度は、このようなポリマーの製造者によって慣用的に報告されており、全ビニル単位に対するポリマーにおけるビニルアルコールの単位(モル)による割合を示す。その他の単位は、典型的に酢酸ビニル(エステル)である。ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーのエチレン含量も、製造者によって報告されており、その他の単位に対するポリマーにおけるエチレンの単位(モル)の割合を表す。この場合、その他の単位は、ビニルアルコールおよび酢酸ビニルである。水性シール組成物のポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーおよびポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、1,000~1,000,000ダルトン、または10,000~500,000ダルトン、または20,000~400,000ダルトンの重量平均分子量を有することができる。
【0092】
水性シール組成物中の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの含量は、水を除く水性シール組成物の重量に対し、14重量%~53重量%、または25重量%~50重量%、または30重量%~48重量%、または33重量%~46重量%であり得る。
【0093】
ポリウレタンは、典型的に、ジイソシアネートを伴う重付加プロセスにより調製される。ポリウレタンの非限定的な例として、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアネート(例えば、イソシアネート結合を含んでいるポリウレタン)、およびポリカルボジイミド(例えば、カルボジイミド結合を含んでいるポリウレタン)が挙げられる。一般に、ポリウレタンは、ウレタン基を含有している。本明細書に記載されている水性シール組成物およびシールフィルムにおいて利用されるポリウレタンは、当技術分野で公知の方法を使用して調製され得る。本発明の水性シール組成物のポリウレタンは、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、およびそれらの混合物である。水性シール組成物のポリウレタンは、1,000~2,000,000ダルトン、または10,000~300,000ダルトン、または15,000~200,000ダルトンの重量平均分子量を有することができる。ポリウレタンは、水溶液もしくは水性分散物もしくは水性エマルション、またはラテックスとして水性シール組成物に添加され得る。
【0094】
水性シール組成物中のポリウレタンの含量は、水を除く水性シール組成物の重量に対し、7重量%~27重量%、または9重量%~24重量%、または11重量%~22重量%、または12重量%~20重量%であり得る。
【0095】
水性シール組成物は、水を除く水性シール組成物の重量に対し架橋剤の0.1重量%~8重量%の架橋剤(あるいは架橋薬剤とも呼ばれる)を含み得る。架橋剤は、シールフィルムを調製するための水性シール組成物の硬化中に、水性シール組成物のポリウレタンと、潜在的にマイクロセルのポリマー分子との間に化学結合を形成して、シールフィルムとマイクロセルとの間の接着を増大する。架橋剤は、好ましくは水性シール組成物の水性担体に可溶性または分散性である。架橋剤は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーであり得る。架橋剤の例として、ポリイソシアネート、多官能性ポリカルボジイミド、多官能性アジリジン、シランカップリング剤、ホウ素/チタン/ジルコニウムベースの架橋剤、またはメラミンホルムアルデヒドが挙げられる。ポリカルボジイミド架橋剤は、酸性pH条件で反応性である。好ましくは、架橋剤は、スルホスクシネート界面活性剤を含まない。水性シール組成物中の架橋剤の含量は、水を除く水性シール組成物の重量に対し、0.1重量%~5重量%、または0.2重量%~4重量%、または0.3重量%~3.5重量%、または0.5重量%~3重量パーセント、または0.8重量%~2.6重量%であり得る。
【0096】
本発明者らは、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せを含んでおり、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの間の界面張力が2mN/m未満である水性シール組成物が、優れた性能を有するシールフィルムを形成することができることを見出した。
【0097】
また、大規模な実験的研究により、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せを含んでおり、ポリウレタンの表面エネルギーの極性成分が10~20mN/mである水性シール組成物からも、優れた性能が観察されたことが明らかになった。
【0098】
水性シール組成物はまた、水を除く水性シール組成物の重量に対し5重量%~64重量%の含量の導電性フィラーを含み得る。水性シール組成物のフィラーは、カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、およびカーボンナノチューブからなる群から選択され得る。フィラーは、シールフィルムの体積抵抗率を低下するが、層の他の特性、例えばその表面エネルギーにも影響を及ぼし得る。カーボンブラックは、フィラーとして有用になるには、水性シール組成物への良好な分散性を有していなければならない。水性シール組成物中の導電性カーボンブラックの含量は、水性シール組成物の10重量%~55重量%、または20重量%~50重量%、または25重量%~45重量%、または30重量%~40重量%であり得る。
【0099】
水性シール組成物において使用されるカーボンブラックの吸油量は、カーボンブラック100mg当たり100cmまたはそれ未満であり得る。吸油量は、典型的に、カーボンブラックの製造者によって、ASTM2414に従う方法を使用して測定したOANとして報告される。それは、カーボンブラック粒子の構造および凝集の度合いを表す。すなわち、OANが大きいほど、カーボンブラック粒子の構造度がより高く(互いに結合しており、分岐構造を有している)、かつ/または粒子の凝集度がより高い。より構造度/凝集度が高いカーボンブラックは、一般に、シールフィルムにより高い導電率をもたらし得るが、導電率は、フィラーの分散性に応じても変わり得、OANが高いほど、カーボンブラックを分散させることが困難となり得ることを示している。水性シール組成物のカーボンブラックフィラーは、好ましくは30nmよりも大きい一次粒子の平均直径を有することができる。平均直径は、カーボンブラックの製造者によって報告され得る、カーボンブラックグレードの別の物理的特性である。一次粒子は、電子顕微鏡によって決定され得る。典型的に、非常に小さい平均直径の一次粒子を有するカーボンブラックは、分散させることが困難である。カーボンブラックは、80m/g未満、または75m/g未満、または70m/g未満の全表面積を有することができる。全表面積は、カーボンブラックの製造者によって日常的に報告される、別の一般的な物理的特性である。全表面積は、ASTM D 6556に従った窒素吸着法を使用して測定される。カーボンブラックは、ASTM D 2663法を使用して40MPaの圧力において粉末形態で測定して、0.1オーム.cmよりも高い体積抵抗率を有することができる。
【0100】
水性シール組成物の導電性カーボンブラックの全表面エネルギーは、ウォッシュバーン法を用いて試験液としてヘキサンを使用して決定して、40mN/mよりも高く、または55mN/mよりも高くてもよい。水性シール組成物の導電性カーボンブラックの全表面エネルギーは、40mN/m~80mN/m、または40mN/m~70mN/m、または40mN/m~65mN/mであり得る。導電性カーボンブラックの表面エネルギーの分散成分は、ウォッシュバーン法を用いて試験液としてヘキサンを使用して決定して15mN/mよりも高くてもよい。導電性フィラーの分散成分は、15mN/m~40mN/m、または15mN/m~30mN/mであり得る。
【0101】
水性シール組成物は、水を除く水性シール組成物の重量に対し1.0重量%~40重量%の水溶性エーテルを含んでいる。水性シール組成物は、水を除く水性シール組成物の重量に対し、1.5重量%~35重量%、または2.0重量%~30重量%、または2.5重量%~25重量%、または4.0重量%~22重量%、または5.0重量%~20重量%の水溶性エーテルを含み得る。水性シール組成物中の水溶性エーテルの含量は、水を除く水性シール組成物の重量に対し、1.7重量%よりも高く、または2重量%よりも高く、または3重量%よりも高く、または4重量%よりも高く、または5重量%よりも高く、または6重量%よりも高く、または7重量%よりも高く、または8重量%よりも高く、または10重量%よりも高く、または12重量%よりも高く、または15重量%よりも高くてもよい。水性シール組成物中の水溶性エーテルの含量は、水を除く水性シール組成物の重量に対し、40重量%よりも低く、または30重量%よりも低く、または25重量%よりも低くてもよい。
【0102】
水溶性エーテルは、75~5,000ダルトンの重量平均分子量を有する。水溶性エーテルは、85~3,000ダルトン、または90~1,000ダルトン、または90~500ダルトン、または90~300ダルトンの重量平均分子量を有することができる。水溶性エーテルは、75よりも高い、または90よりも高い、または100よりも高い、または200よりも高い重量平均分子量を有することができる。水溶性エーテルは、5,000よりも低い、または3,000よりも低い、または1,000よりも低い、または500よりも低い、または300よりも低い、または200よりも低い、または150よりも低い重量平均分子量を有することができる。
【0103】
水溶性エーテルは、水および極性有機溶媒に可溶性の極性化合物である。水溶性エーテルは、式I、式II、または式IIIによって表され得る。
【化3】
【化4】
nの値は、1~145である。nの値は、1~100、または1~50、または1~20、または1~10、または1~5、または1~4、または1~3、または1~2であり得る。R1は、水素、メチルまたはエチル基であり、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、水素、1個の炭素原子~6個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基、フェニル、およびベンジル基からなる群から独立に選択される。式Iは、少なくとも1つのエーテル官能基を含む。式IIは、少なくとも1つのエーテル官能基を含む。式IIIは、少なくとも1つのエーテル官能基を含む。
【0104】
水溶性エーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールn-モノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールn-モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールn-モノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0105】
水性シール組成物はまた、水を除く水性シール組成物の重量に対し、0.05重量%~10重量%、または0.05重量%~5重量%、または0.1重量%~3重量%の含量のレオロジー調整剤を含み得る。レオロジー調整剤は、水性シール組成物の保存中の安定性を増大する。レオロジー調整剤はまた、フィルム形成を促進し、シール安定性を改善し、他の機能を提供する。例として、会合性増粘剤、アルカリ膨潤性アクリルエマルション、および他のポリマー増粘剤が挙げられる。水性シール組成物は、せん断減粘性であり得、すなわち、その粘度がより高いせん断で低減される。例えば、水性シール組成物のレオロジープロファイルは、10-4 1/秒のせん断速度における粘度と10 1/秒のせん断速度における粘度との間で、5分の1~10,000分の1への粘度低下を示し得る。シールフィルムはまた、シールフィルムの重量に対し、0.05重量%~10重量%、または0.05重量%~5重量%、または0.1重量%~3重量%の含量のレオロジー調整剤を含み得る。
【0106】
水性シール組成物はまた、界面活性剤とも呼ばれる湿潤剤を含み得る。湿潤剤の非限定的な例として、3M Company製のFC界面活性剤、DuPont製のZonylフッ素系界面活性剤、フルオロアクリレート、フルオロメタクリレート、フルオロで置換されている長鎖アルコール、ペルフルオロ置換されている長鎖カルボン酸およびそれらの誘導体、ならびにOSi、Greenwich、Conn.製のSilwetシリコーン界面活性剤が挙げられる。湿潤剤は、シールフィルムとマイクロセルとの間の親和性を増大し、それらの間の界面領域を増強し、マイクロセルに対するシールフィルムの接着を改善し、より柔軟なコーティングプロセスを提供し得る。水性シール組成物中の湿潤剤の含量は、水を除く水性シール組成物の重量に対し、0.01重量%~3.0重量%、または0.04重量%~2.0重量%、または0.06重量%~1.0重量%、または0.07重量%~0.8重量%であり得る。シールフィルムは、湿潤剤を含み得る。シールフィルム中の湿潤剤の含量は、シールフィルムの重量に対し、0.01重量%~3.0重量%、または0.04重量%~2.0重量%、または0.06重量%~1.0重量%、または0.07重量%~0.8重量%であり得る。
【0107】
水性シール組成物は、水性シール組成物の重量に対し、20重量%~95重量%、または50重量%~94重量%、または70重量%~92重量%、または75重量%~90重量%、または80重量%~88重量%の水を含み得る。
【0108】
水性シール組成物は、pH調整剤も含み得る。pH調整剤は、水性シール組成物に、そのpHを6.5~8.5の値に調整するために添加される。pH調整剤の一例は、水酸化アンモニウムであるが、様々な酸および塩基を使用することができる。pH調整剤は、水性シール組成物のpHを上昇させ、それによって、使用前に水性シール組成物の架橋速度を低減することができ、また、レオロジー調整剤が水性シール組成物の粒子と相互作用するのに最適なpH条件を提供して、その有効性を改善する。pH調整剤は、水を除く水性シール組成物の重量に対し0.2重量%~1重量%の含量で使用され得る。
【0109】
水性シール組成物は、水性シール組成物を適用し、水性シール組成物を乾燥または硬化させることによってシールフィルムを形成するために使用することができる。シールフィルムは、水性シール組成物の成分の大部分を含み得る。水性組成物が架橋剤を含んでいる場合、架橋剤は、硬化中にシールフィルムのポリウレタンポリマーに組み込まれる。加えて、シール組成物の水は、水性シール組成物の乾燥または硬化中に、シールフィルムを調製するように蒸発する。実験データは、最初に添加された水溶性エーテルのおよそ37重量%も、乾燥または硬化中に蒸発し、水性シール組成物の最初に添加された水溶性エーテル含量のおよそ63重量%だけがシールフィルム中に存在することを示している。シールフィルムに残留しているまたは吸収された任意の水または湿気が存在している場合、開示されるシールフィルムの成分の含量は、別段記述されない限り、残留しているまたは吸収された水を除く水性シール組成物の重量に対する成分の重量%として計算される。
【0110】
シールフィルムは、シールフィルムの重量に対し15重量%~60重量%の含量の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーを含んでおり、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90%~99.5%の加水分解度を有しており、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90%~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有している。シールフィルムはまた、シールフィルムの重量に対し7重量%~29重量%の含量のポリウレタン、シールフィルムの重量に対し5重量%~70重量%の含量のカーボンブラック、およびシールフィルムの重量に対し0.5重量%~25重量%の含量の水溶性エーテルを含んでいる。水溶性エーテルは、90~5,000ダルトンの分子量を有することができる。水溶性エーテルは、必要に応じてヒドロキシ基を含み得る。
【0111】
様々なクラスのシールフィルム成分の物理的および化学的特性を、先に詳述してきた。
【0112】
シールフィルム中の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの含量は、シールフィルムの重量に対し、16重量%~55重量%、または28重量%~52重量%、または33重量%~50重量%、または35重量%~48重量%であり得る。
【0113】
シールフィルム中のポリウレタンの含量は、シールフィルムの重量に対し、8重量%~29重量%、または10重量%~26重量%、または12重量%~24重量%、または14重量%~22重量%であり得る。
【0114】
シールフィルムは、シールフィルムの重量に対し、11重量%~60重量%、または24重量%~55重量%、または29重量%~50重量%、または30重量%~45重量%の含量の導電性カーボンブラックを含み得る。
【0115】
シールフィルムは、シールフィルムの重量に対し0.5重量%~25重量%の含量の水溶性エーテルを含んでいる。シールフィルムは、シールフィルムの重量に対し、0.8重量%~20重量%、または1.0重量%~18重量%、または1.2重量%~20重量%、または1.5重量%~18重量%、または2.0重量%~16重量%の含量の水溶性エーテルを含み得る。シールフィルム中の水溶性エーテルの含量は、シールフィルムの重量に対し、0.5重量%よりも高く、または0.6重量%よりも高く、または0.7重量%よりも高く、または0.8重量%よりも高く、または0.9重量%よりも高く、または1重量%よりも高く、または1.5重量%よりも高く、または2.0重量%よりも高く、または3.0重量%よりも高く、または4重量%よりも高くてもよい。シールフィルム中の水溶性エーテルの含量は、シールフィルムの重量に対し、25重量%よりも低く、または20重量%よりも低く、または18重量%よりも低く、または15重量%よりも低く、または12重量%よりも低く、または10重量%よりも低くてもよい。
【0116】
水性シール組成物によって調製されたシールフィルムは、電気光学デバイスのマイクロセルをシールするために使用することができる。電気光学デバイスは、導電層、複数のマイクロセルを含んでいるマイクロセル層(各マイクロセルは、開口部を含んでおり、各マイクロセルは、電気泳動媒体を含んでおり、電気泳動媒体は、非極性担体中に荷電された粒子を含んでいる)、シールフィルム(シールフィルムは、各マイクロセルの開口部にわたっている)、接着層、および電極層を含んでいる。
【0117】
一般に、電気光学デバイスのシールフィルムは、ディスプレイ性能において重要な役割を果たしている。シールフィルムの劣ったバリア特性は、電気光学材料層からの電気泳動媒体の非極性流体の経時的な流出をもたらし、それによって、ディスプレイの電気光学性能の深刻な劣化をもたらす。シールフィルムのポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの含量の増大が、そのバリア特性を改善することが観察された。しかし、高含量のポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーを有しているシールフィルムは、層の吸湿を増大し、これもまた望ましくない。
【0118】
本発明者らは、驚くべきことに、シールフィルムが、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタン、導電性カーボンブラック、ならびに75~5,000ダルトンの分子量を有する水溶性エーテルの組合せを含む場合、色域に関して最適な電気光学性能を達成することができることを見出した。水性シール組成物およびシールフィルムへの水溶性エーテルの添加は、シールフィルムおよび隣接している層の一方または両方の界面、例えば、シールフィルム接着界面およびシールフィルム電気泳動媒体界面の電気抵抗を低減すると考えられる。界面のこの電気抵抗の低減は、実施例の節に示されている通り、体積抵抗率測定を用いて、また電気インピーダンス分光法実験を用いて実験的に示された。重要なことには、界面のこの電気抵抗は、シールフィルム自体の電気導電率には影響を及ぼさなかった。実際、データが示している通り、本発明のシールフィルムは、水溶性エーテルを含んでいない対照フィルムの体積抵抗率よりも高い体積抵抗率を有している。前述の通り、シールフィルムのより高い体積抵抗率は、電気光学分野において周知の現象であるブルーミングの低下に寄与する。
【0119】
ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの組合せが使用され、ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの間の界面張力が2mN/m未満である場合にも、改善された性能が観察される。さらに本発明者らは、驚くべきことに、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せが使用され、ポリウレタンの表面エネルギーの極性成分が10~20mN/mである場合にも、最適な性能が観察されることを見出した。
【0120】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の実施例を考慮するとさらに理解され、以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を例示するように意図されているが、特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定するように意図されているものではない。
【実施例
【0121】
シールフィルムの評価方法
【0122】
A.水性シール組成物の調製の実施例
【0123】
A1.カーボンブラック分散物の調製の実施例。溶液の体積に対し20重量%のポリマーを含有しているポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの水溶液を調製した。一例では、ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー(クラレによって供給されたExceval(商標)RS-1717)である。すなわち、溶液は、溶液1リットル当たりポリマー200gを含有している。カーボンブラック粉末を、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの水溶液と混合する。一例では、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー106gを含んでいる水溶液を、カーボンブラック(Orion Engineered Carbonによって供給されたNerox(登録商標)3500)162gと混合した。分散物を、オーバーヘッドミキサー(Hei-Torque Value 200)で、300rpmで30分間混合した。次に、分散物をGeneration 1 Q1375 Flocell超音波処理器に再循環させ、超音波処理器のジャケットを、10℃の冷水を使用して、100%の振幅で3時間23分冷却する。分散物を、シール組成物を調製するために使用するまで、継続的に撹拌した。
【0124】
A2.水性シール組成物の調製の実施例。容器に、水性ポリウレタン分散物を、湿潤剤、およびポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの水溶液と合わせた。一例では、35重量%ポリウレタン水性分散物(Hauthawayによって供給されたL3838水性分散物)194gを、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの水溶液(溶液の体積に対し20重量%のコポリマーを含有している)372gと混合した。この実施例では、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、クラレによって供給されたExceval(商標)RS-1717であった。混合物を、Hei-torque Value 200オーバーヘッドミキサーを使用して90rpmで10分間混合した。次に、適正な量のジプロピレングリコールジメチルエーテル(一例では45g)を、90rpmで混合し続けながら5分間にわたって添加した。結果として生じた混合物を、90rpmでさらに10分間混合し、適正な量の架橋剤を添加した。混合物を90rpmでさらに60分間混合した。A1で調製された適正な量のカーボンブラック分散物を添加し(一例では1.39L)、結果として生じた分散物を500rpmで60分間混合した。次に、水酸化アンモニウムを使用してpHを6.5~8.5に調整し、分散物をさらに30分間混合した。適正な量のレオロジー調整剤を、分散物に滴下添加し、さらに60分間混合し続けた。次に、分散物を減圧下で(25mmHg)5日間脱気した。結果として生じた水性シール組成物を、シール組成物を調製してから7日以内に、対応するデバイスのシールフィルムの調製のために使用した。
【0125】
B1.ドローダウン方法を使用するシールフィルムの調製の実施例。
【0126】
先のA2で調製されたシール組成物を、ITO-PETフィルムのインジウムスズ酸化物(ITO)側に、Gardcoドローダウンコーティング機を使用してコーティングした。15ミルのギャップおよび8つのパスのスクエアアプリケーターを使用した。ドローダウン速度を2m/分に設定して、30+/-2μmの乾燥フィルム厚さを目標にした。コーティングを100℃のオーブンで15分間乾燥させた。乾燥させたフィルムを、25℃および55%RHで24時間コンディショニングした。
【0127】
B2.ロールツーロールコーティングラインを使用するシールフィルムの調製の実施例。
【0128】
先のA2で調製されたシール組成物を、乾燥厚さ30μmのITO-PET薄膜のインジウムスズ酸化物(ITO)側に、ロールツーロールコーティングラインのスロットダイを使用して9フィート/分の速度でコーティングした。フィルムを、4つの加熱帯域からなる対流式オーブン(convention oven)に、9フィート/分の速度で通過させた。各加熱帯域は、長さが5フィートであった。第1の帯域は80℃の温度に設定し、残りの加熱帯域は100℃の温度に設定した。乾燥させたら、ITO-PET上のシールフィルムを乾燥オーブンに通過させ、フィルムを、それぞれおよそ24~30インチの長さの3つの部分に切断し、温度25℃および55%相対湿度(RH)の制御環境のクリーンルームに入れる。
【0129】
C.体積抵抗率の決定-TCBC方法。
【0130】
前述の方法B2(シールフィルムの調製方法)によって調製されたシールフィルムを、体積抵抗率について評価した。「TCBC方法」は、体積測定による抵抗率を測定する過渡電流のバックグラウンド電流方法を説明するために使用された。体積抵抗率の決定のために、Labview 2014ソフトウェアおよびTCBC波形プログラム、NI USB 6211多機能デバイス、ならびにモデル603電力増幅器を使用した。その装置により、使用者は、プリセット電圧で波形を印加し、出力電流を測定して抵抗を計算することによって、電極が積層された試料の体積測定による抵抗率を測定することができる。この方法は、(a)先に開示されている「シールフィルムの調製方法」B2に従うシールフィルムの調製、(b)導電性接着剤およびシールフィルムのグラファイトバックプレーンを用いる積層方法、ならびに(c)ならびに波形プログラムおよびセットアップを使用する試験方法を含んでいた。フィルムの厚さを、ミツトヨ製のモデルS112EXB厚さゲージを使用して測定した。積層プロセスの後、試料を、試験前に25℃/55%RHで10日間コンディショニングした。次に、示された抵抗および測定された厚さを使用して、以下の方程式r=R/t(rは抵抗率であり、Rは抵抗率であり、tは厚さである)を使用して体積抵抗率を計算した。
【0131】
先の方法B2に記載されているロールツーロールコーティングラインから、ITO-PET上にコーティングされた各シールのパネルの1つを収集した。シールを12インチの長さの小片に切断した。12インチの長さの小片を、図8Aの画像に示されている通り、幅4.5インチに切断した。端部の過剰のITOは切り落とさなかった。
【0132】
グラファイトバックプレーンの調製:シールフィルムごとにグラファイトバックプレーンの1つのシート(5ピクセル)を、試験のために収集した。4ピクセルだけが残存するように、終端からピクセルの1つを切り取った。図8Bの画像に示されている通り、上端部および側端部(画素ラインが伸びている)を切り落とした。他方の側端部は切り落とさなかった。
【0133】
KA2フィルムの調製:適格とされた6μmの厚さのKA2導電性接着フィルムの長いロールを、試験に使用するために収集した。KA2フィルムを3インチ幅の小片に切断した。3インチ幅の小片を、図8Cの画像に示されている通り、長さ10インチに切断した。リリースライナーのオーバーハングが他方の側面に残るように、片側だけを切断した。
【0134】
TCBC試料の積層:6μmの厚さを有する導電性接着性KA2を、ホットロールラミネーターを介して乾燥させたシールフィルム上に積層した。この積層について、ラミネーターの底部プレートおよび上部ローラーを80℃に設定し、積層の速度を17mm/秒に設定した。切断したKA2フィルムを、KA2上の保護シートをシールに触れさせながら、切断シールにテープで貼った。KA2フィルムの底部および右端部を、シールの底部および右端部に合わせた。KA2フィルムの上部をシールにテープで貼った。シールの上端部がローラーの中心の真下になるように、シールの上部をラミネータープレートにテープで貼った。上部シートをKA2と共に保持しながら、KA2保護シートをそっと除去した。依然としてKA2を保持したまま、積層を開始して、ローラーでKA2をシール上にゆっくりプレスした。積層を行った後、テープを除去し、層をKA2からリリースした。KA2上にグラファイトバックプレーンを注意深く置いた。電極をKA2の中心に置いた。試料を積層し、最終調製物を図8Dに示す。最終的なTCBC試料800は、ITO/PET導電性フィルム801、シールフィルム802、KA2接着性803、およびグラファイトバックプレーン804を含んでいた。導電性フィルム801の領域およびグラファイトバックプレーン804の第1の試験点を、電圧源を介して電気的に接続した。次に、試料を25℃/55%RHで10日間コンディショニングして、完全な加湿を確保した。
【0135】
TCBC試料の試験:25℃/55%RHで10日間コンディショニングした後、試料は試験のための準備が整った。また試料の試験は、温度または相対湿度による変動性を最小限に抑えるために、25℃/55%RHに設定された制御環境チャンバ内で行った。TCBC試験を実施するために、対応するソフトウェアを開くことから始めた。シールの1/2インチセグメントを、試料の側面から剥がして、ITO-PET表面を曝露させた。Windows(登録商標)10を搭載したコンピューターで、Labview 2014およびTCBC波形プログラムを使用するTCBC抵抗率プログラムを開いた。試料の抵抗率を測定するために使用する単一画素領域の接触面積を、25cmに設定した。範囲を200μA(モデル6487 Electrometerにも適合した)に設定した。ワニ口クリップ1つを、シール抵抗率試料のITO-PETに接続した。他方のワニ口クランプを、グラファイトバックプレーンの第1の試験画素に接続した。接続を設定したら、試験を開始した。試験中、以下の波形を実行して、図8Eに示されている通り、合計26699ミリ秒にわたって15ボルトの大きさまでパルスを送った。この時間の間に、ソフトウェアプログラムおよび電位計により、電流を時間の関数として測定した。次に、ソフトウェアにより、オームの法則:R=(V/I)(Vは入力された電圧であり、Iは測定された電流であり、Rは抵抗である)に基づいて、測定された電流および入力された電圧から試料の抵抗を計算した。試料の最終体積抵抗率を計算するために、以下の方程式:r=R/t(Rは、試験からの抵抗であり、tは、試験を完了するために厚さゲージを使用して測定されたシールフィルムの厚さである)を使用した。
【0136】
D.電気インピーダンス分光法(EIS):電気インピーダンス分光法(EIS)を使用して、シールフィルムにおける水溶性エーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテル)の存在が、フィルムの体積抵抗率を上昇させることなく電気光学性能にどのように影響を及ぼすかについて理解した。EISにより、シールフィルムと電気泳動媒体(非極性溶媒および荷電されたイエローの色素粒子を含んでいる)との間の界面抵抗率を決定した。
【0137】
EIS結果を使用して、緩和時間分布(DRT)を計算した。図9は、2種の異なる電気泳動媒体AおよびBについて、対照シールフィルム(水溶性エーテルを含んでいない)に対して、本発明のシールフィルム(水溶性エーテルを含んでいる)のEISデータからのガンマ値対緩和時間(タウ)のグラフを示している。異なる緩和時間のガンマ値(タウ)の異なるピークは、電気泳動媒体と接触しているシールフィルムを含む電気光学デバイスにおける異なる並列抵抗器およびコンデンサ(RC)素子と相関している。各ピークは、電気光学デバイスにおいて類似の緩和時間を有するすべてのRC素子についての緩和時間の平均である。緩和時間ごとのガンマ値は、対応するRC素子における抵抗の尺度である。4 1/秒の緩和時間(タウ)は、シールフィルム-電気泳動媒体の界面におけるRC素子に対応する可能性が最も高い。電気泳動媒体AおよびBの両方についてわかる通り、シールフィルムおよび電気泳動媒体の界面の抵抗は、水溶性エーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテル)を含んでいるシールフィルムの場合の方が低い。より低い界面抵抗は、実施例の表のデータの通り、改善された電気光学性能に対応する。
【0138】
E.フィルムの表面エネルギーの決定。
【0139】
調製されたシールフィルム(先のB1に記載されている通り)の表面エネルギーを、Kruss GmbHによって供給された液滴形状分析器を使用して測定した。ニードルを備えたシリンジを使用して、2.6μLのサイズの脱イオン水の液滴を、シールフィルムの上部表面上に置き、液体(水)とシールフィルムとの間の接触角を測定した。測定を、水滴をジヨードメタン液滴で置き換えることによって反復した。既知の表面エネルギーのこれらの2種の液体を使用して接触測定を実施することによって、フィルムの表面エネルギーを計算した。接触角測定を、液体(水およびジヨードメタン)ごとに3回反復した。液体と、シールフィルムの上部表面との接触角を、液滴を試料フィルム上に置いてから5秒後、30秒後、および55秒後に高解像度カメラを使用して測定した。次に、Owens、Wendt、RabelおよびKaelble(OWRK)の方法を使用して、全表面エネルギー、ならびにその極性成分および分散成分を、データ点ごとに計算した。報告された表面エネルギーは、9つのデータ点(3つの液滴×3回の尺度)の平均であった。
【0140】
F.電気光学デバイスの調製。
【0141】
電気光学デバイスを、複数のマイクロセルに、Isopar E中の電気的に荷電された色素粒子(白、シアン、マゼンタ、およびイエロー)の混合物を充填することによって調製した。白およびイエローの粒子は負に帯電しており、シアンおよびマゼンタの粒子は正に帯電している。次に、水性シール組成物を、先のBに記載されている通り、マイクロセルの開口部上にコーティングした。図10に示されているデバイスを構築した。電気光学デバイス1000は、順に、保護フィルム1001、光学的に透明な第1の接着層1002、基材1003、光透過性導電層10904、プライマー層1005、マイクロセル層1006、シールフィルム1007、第2の接着層1008、ITO電極層1009、およびガラス層1010を含んでいた。電界の供給源1011により、光透過性導電層1004をITO電極層1009と電気的に接続した。この供給源により波形を印加して、所望の光学的状態を駆動した。第1の光透過層1002は、およそ25μmの厚さを有していた。基材903は、およそ100μmの厚さを有していた。プライマー層(primary layer)1005は、およそ0.4μmの厚さを有していた。マイクロセル層1006は、複数のマイクロセルを含んでいた。各マイクロセルは、およそ0.4μmの底部厚さおよびおよそ10μmの高さを有していた。シールフィルム807は、およそ10μmの厚さを有しており、第2の接着層は、およそ4.5μmの厚さを有していた。
【0142】
G.色域測定。
【0143】
方法Fによって調製された電気光学デバイスを電気的に駆動して、8つの光学的状態を生じさせた。電気泳動デバイスを、電気パルス系列(そのような系列は「波形」と呼ばれている)を使用してアドレス指定した。以下の説明では、ディスプレイの正面(画面観察)表面における電極が、すべての画素に共通の電極であり、接地されているものと仮定して、波形において使用される電圧を、ディスプレイの背面電極に供給される電圧とする。試験波形は、図11に示される通り、「ダイポール」系列を含む。各ダイポールは、それぞれ長さtおよび大きさVのパルスである2つのモノポールから構成されている。各ダイポールにおける2つのモノポールは、反対の極性のものである。
【0144】
試験波形において使用した電圧は、+/-24V、+/-18V、+/-15Vおよび+/-10Vであった。時間は、11.74ミリ秒の単位に離散化され、これを「フレーム」と呼んだ。各フレームは、85Hzの周波数でリフレッシュされた薄膜トランジスタアレイバックプレーンの1回のスキャンに対応すると思われるが、記載されている試験においては、バックプレーンは分割され、直接駆動された。
【0145】
2つのタイプの試験波形を使用して、デバイスの電気光学性能を査定した。第1の試験で使用した波形は、長さが18フレームであり、一方、第2の試験で使用した波形は、長さが42フレームであった。各場合、波形に、許容された数のフレーム以内に適合すると思われる数の同一ダイポールを追加投入した。これは、表1および2に示されており、それぞれ18および42フレーム波形タイプに対応している。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
第2のモノポールの長さは、ダイポールの長さから第1のモノポールの長さを引いたものであった。「第1の」および「第2の」は、ダイポールを構成するモノポールの特定の時間的秩序を必ずしも暗示しているわけではないことに留意すべきである。これらの規則に対応するすべてのダイポールを用いたわけではない。より妥当な長さの試験を行うために、(V*t)/(V*t)<2の波形だけを用いた。
【0149】
各波形には、DCバランスパルス(特定の試験波形に等しくかつ反対のインパルスを有する)および白状態へのディスプレイのリセットが先行した。各波形は、3秒間の接地で終了した。
【0150】
ディスプレイの色状態(CIELab L*、a*およびb*単位で測定された)を、3秒間の接地の後に記録した。ディスプレイの色域は、一組の試験波形によって生成されたすべての有色状態を含有している凸包の体積をコンピューター計算することによって測定した。生じた8つの色状態は、赤、緑、青、イエロー、シアン、マゼンタ、白、および黒(R、G、B、Y、C、M、W、およびK)であった。色域を、DE単位で報告する。色域が広範であるほど、すなわち空間が大きいほど、電気光学デバイスの電気光学性能が良好であることを意味する。
【0151】
H.ポリマーの界面張力の決定。
【0152】
ポリマーの特定の組合せについて、ポリマー1とポリマー2との間の界面張力を、表面張力値(先のHに記載されている方法により決定される)から計算した。2つの成分の間の界面張力の計算は、各成分の表面エネルギーの値および以下の幾何方程式を使用することによって実施した。
【数1】
式中、σABは、ポリマーAとBとの間の界面張力であり、σは、ポリマーAの全表面エネルギーであり、σは、ポリマーBの全表面エネルギーであり、σ およびσ は、それぞれポリマーAおよびBの表面エネルギーの分散成分であり、σ およびσ は、表面の極性成分である。
【0153】
同様に、シールフィルムと接着層との間の界面張力が測定され得る。ポリウレタンを含む接着層標準を、水分散性ポリウレタンの水性分散物によって形成した。
【0154】
I.非極性流体に対するシールフィルムのバリア特性の評価。
【0155】
水性分散物を、水100mL中、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマー10グラムまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー10グラムおよびポリウレタン10グラムを混合することによって調製した。その分散物を、水性ポリマー組成物として使用して、図12に示されているデバイス1200のシールフィルムを形成した。シールフィルムを、先のB1に記載されている方法によって形成した。デバイス1200は、順に、基材1203、光透過性導電層1204、プライマー層1205、マイクロセル層1206、およびシールフィルム1207を含んでいた。マイクロセルは、Isopar E中に白、黒、および赤の色素粒子を含む電気泳動媒体を含んでいた。デバイス1200を、70℃で少なくとも24時間保存した。この期間の後、電気光学デバイスを、電気泳動媒体の非極性流体の喪失によって引き起こされたシールフィルムのたるみについて、光学顕微鏡を使用して検査した。検査したマイクロキャビティの底部とシールフィルムの底面の最下点との間の距離が、同じマイクロセルにおけるマイクロキャビティの底部とシールフィルムの下面の最上点との間の距離の85%未満である場合、水性ポリマー組成物は、そのバリア特性について「不合格」として分類される。そうでなければ、すなわち検査したマイクロセルの底部とシールフィルムの最下点との間の距離が、マイクロセルの底部と検査したマイクロセルにおけるシールフィルムの底面の最上点との間の距離の85%またはそれより大きい場合、シール水性ポリマー組成物は、そのバリア特性について「合格」として分類される。例えば、図13Cに示されている電気光学デバイスを調製するために使用した水性ポリマー組成物は、h2:h1の比が1である(たるみがない)ので「合格」として分類され、一方、図13Dに示されている電気光学デバイスを調製するために使用した水性ポリマー組成物は、h2:h1の比が35%である(85%超のたるみレベル)ので「不合格」として分類された。バリア特性の評価も、光学顕微鏡によってデバイスの観察面から見て、調製された電気光学デバイスを観察することによって、質的に実施され得る。ひどくたるんだシールフィルムを含んでいるデバイスは、非極性流体に対して良好なバリア特性を有しているシールフィルムを含んでいるデバイスとは、著しく異なる外観を有している(均一な表面に対して、不均一な表面)。例えば、図13Bに示されている通り不均一に見える、図13Dのシールフィルムに対応する水性ポリマー組成物を有しているマイクロセル(「不合格」)とは対照的に、図13Cのシールフィルムに対応する水性ポリマー組成物を有しているマイクロセル(「合格」)は、図13Aに示されている通り均一に見える。(1)ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよび(2)ポリウレタンの様々な組合せの評価は、表10に示されている。ポリマー1は、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、ポリマー2は、ポリウレタンである。ポリマー1およびポリマー2の市販材料に関する詳細は、表11に見出すことができる。
【0156】
J.シールフィルムにおける水溶性エーテルの含量の決定。
【0157】
シールフィルムにおける水溶性エーテルの含量は、熱重量分析(TGA)およびカール・フィッシャー(KF)湿気分析の組合せによって決定した。シールフィルムにおける水溶性エーテルおよび湿気の量の合計は、下記の熱重量分析方法によって決定される。シールフィルムにおける含水量を、150℃でカール・フィッシャー法を使用して測定する。次に、シールフィルムにおける水溶性エーテルの含量を、水溶性エーテルおよび湿気の量の合計(TGA)から含水量(KF)を引くことによって計算した。熱重量分析は、(a)試料ホルダーを風袋引きし、(b)試料を試料ホルダーに入れ、秤量し、(c)試料を30℃で平衡化し、(d)試料を50℃/分の加熱速度で105℃に加熱し、(e)試料を105℃で10分間保持して、湿気および他の揮発性材料を蒸発させて試料から除去し、(f)試料を50℃/分の速度で215℃に加熱し、(g)試料を215℃で10分間保持して、水溶性エーテルを蒸発させ、(h)試料を完全に分解させるために試料を20℃/分の速度で650℃に加熱することを含む。試料を、熱重量分析中、窒素ガス下で維持した。湿気および水溶性エーテルの全量は、Triosソフトウェアを使用して、40℃から220℃までの試料の重量減少によって得た。
【0158】
評価結果
【0159】
別段記述されない限り、以下の表の開示されている組成物における成分の量は、水を除く組成物の重量に対する成分の重量パーセントで提供されている。水担体の含量を表すために、いくつかの組成物においてQ.S.(適量)という用語が使用される。この用語は、組成物における水の含量が、組成物の合計100%を達成してこれを超えないのに必要な量であることを意味する。
【0160】
シールフィルムに任意の残留しているまたは吸収された水または湿気が存在していた場合、シールフィルムの成分の開示されている含量は、別段記述されない限り、残留しているまたは吸収された水を除く重量に対する成分の重量%として計算される。
【0161】
文字Fで終了している番号を有している実施例の組成物は、シールフィルム組成物に対応しており、一方、残りの実施例の組成物は、水性シール組成物に対応している。シールフィルム組成物の実施例は、シールフィルム組成物を調製するために使用される水性シール組成物と同じ実施例番号(接尾辞Fを有する)に対応している。したがって、実施例1F(シールフィルム組成物)は、実施例1(水性シール組成物)から調製されている。
【0162】
実施例19Fのシールフィルムにおける水溶性エーテルの含量は、先のJに記載されている方法を使用して、シールフィルムの重量に対し8.6重量%であると決定された。その他のシールフィルム実施例における水溶性エーテルの含量は、水性シール組成物における全水溶性エーテルの63%として計算した。
【0163】
【表3A】
【0164】
【表3B】
【0165】
表3Aおよび3Bは、水溶性エーテル、例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテルまたはテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含んでいる水性シール組成物が、より高い体積抵抗率を有するシールフィルムを形成する、水溶性エーテルを含んでいない対照水性シール組成物とは対照的に、10オーム.cmよりも低い体積抵抗率(TCBC)を有するシールフィルムを形成することを示している。このことは、実施例1F~5Fを比較例6Fと比較し、実施例7F~8Fを比較例9Fと比較することによって示される。
【0166】
【表4A】
【0167】
【表4B】
【0168】
【表5A】
【0169】
【表5B】
【0170】
【表6A】
【0171】
【表6B】
【0172】
【表7A-1】
【0173】
【表7A-2】
【0174】
表4A、4B、5A、5B、4A、6B、7A、および7Bは、水溶性エーテル、例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテルまたはテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含んでいる水性シール組成物が、水溶性エーテルを含んでいない対照水性シール組成物よりも大きい色域を有するシールフィルムを形成することを示している。このことは、本発明の実施例を対応する比較例と比較することによって示される。改善された電気光学性能は、異なる温度(0℃および25℃)で測定された色域で一貫して観察される。
【0175】
【表8A】
【0176】
【表8B】
【0177】
【表9A】
【0178】
【表9B】
【0179】
表8A、8B、9A、および9Bは、水溶性エーテル、例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテルを含んでいる水性シール組成物(実施例18~19および実施例21)が、水溶性エーテルを含んでいない水性シール組成物(比較例20および比較例22)とは対照的に、接着層との界面張力が20mN/mよりも低いシールフィルムを形成することを示している。
【0180】
[1]ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー;クラレによって供給されたExceval(商標)RS-1717、
【0181】
[2]ポリウレタン水性分散物;Hauthawayによって水中35%分散物として供給されたL3838水性分散物、
【0182】
[3]カーボンブラック;Orion Engineered Carbonによって供給されたNerox(登録商標)3500、
【0183】
[4]ポリカルボジイミド(多官能性ポリカルボジイミド-水溶液);日清紡ケミカルによって水中40%溶液として供給されたCARBODILITE(登録商標)V-02-L2、
【0184】
[5]疎水性修飾アルカリ膨潤性アクリルエマルション;Lubrizolによって供給されたSolthix(商標)A-100、
【0185】
[6]シロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー;Momentiveによって供給されたSilwet(登録商標)L-7607コポリマー、
【0186】
[7]ジプロピレングリコールジメチルエーテル;Dow Chemicalによって供給されたProglyde(登録商標)DMM、
【0187】
[8]テトラエチレングリコールジメチルエーテル;Sigma Aldrichによって供給された(CAS143-24-8)。
【0188】
表10は、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーである様々なポリマー1の種、およびポリウレタンであるポリマー2の種についての表面エネルギーデータを含んでいる。表10はまた、様々な層のバリア特性および様々なポリマーの組合せの計算された界面の評価を含んでいる。バリア特性を評価するために使用した対応するポリマー層を調製するための方法は、先のIに記載されている。表面エネルギーの決定(先のEに記載されている方法に従う)は、まず、一方のポリマーだけを含んでいる対応する水性組成物からシールフィルムを調製し、コンディショニングすることによって実施した。ポリマーの組合せごとの界面張力を、表面エネルギーデータおよび先のHに記載されている計算方法から計算した。
【0189】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【0190】
【表11-1】
【表11-2】
【0191】
表10のポリマー1およびポリマー2の界面張力のデータは、(a)90%~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有しているポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、ならびに(b)水性担体中のポリウレタンを含んでいるシールフィルムであって、2種のポリマー(a)と(b)との間の界面張力が2mN/m未満であるシールシールフィルムが、非極性流体に対して良好なバリア特性を有しているシールシールフィルムを形成することを示している。
【0192】
また表10のデータは、水性シール組成物から作製されたシールフィルムであって、(a)90%~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有しているポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、ならびに(b)水性担体中のポリウレタンを含み、ポリウレタンの表面エネルギーの極性成分が10~25mN/mの間であるシールフィルムが、非極性流体に対して良好なバリア特性を有するシールフィルムを形成することを示している。
【0193】
先のB1に記載されている方法によって調製された4種の水性シール組成物によって調製されたシールフィルムの顕微鏡的評価は、フィルムの均一性と、2種のポリマーの間の界面張力との間に相関があることを示した。表12および図14の顕微鏡画像は、界面張力が低いほど、より均一なシールフィルムが提供されることを示している。より小さい界面張力を有しているポリマーの組合せによって達成された、改善された適合性は、対応する層の改善されたバリア特性を説明し得る。
【0194】
【表12】
【0195】
さらに研究中に、水を除く水性シール組成物の重量に対し70重量%超のポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーを含んでいる水性シール組成物が、環境から著しい量の湿気を吸収するシールフィルムを形成することが観察された。この高い吸湿は、ディスプレイの電気光学性能にマイナスの影響を及ぼす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7A
図7B
図7C
図7D
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
【国際調査報告】