特表 2024-546062 安全装置付き電池貯蔵装置および安全装置の作動方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公表特許公報(A)

(11)【公表番号】

(43)【公表日】2024-12-17

(54)【発明の名称】安全装置付き電池貯蔵装置および安全装置の作動方法

(51)【国際特許分類】

   H01M 50/204 20210101AFI20241210BHJP

   H01M 10/0563 20100101ALI20241210BHJP

   H01M 10/052 20100101ALN20241210BHJP

【ＦＩ】

H01M50/204 401Z

H01M10/0563

H01M50/204 401D

H01M10/052

【審査請求】未請求

【予備審査請求】未請求

(21)【出願番号】P 2024529683

(86)(22)【出願日】2022-11-23

(85)【翻訳文提出日】2024-05-17

(86)【国際出願番号】 EP2022083018

(87)【国際公開番号】W WO2023104523

(87)【国際公開日】2023-06-15

(31)【優先権主張番号】102021132742.3

(32)【優先日】2021-12-10

(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE

(81)【指定国・地域】

(71)【出願人】

【識別番号】398037767

【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト

(74)【代理人】

【識別番号】100069556

【弁理士】

【氏名又は名称】江崎 光史

(74)【代理人】

【識別番号】100111486

【弁理士】

【氏名又は名称】鍛冶澤 實

(74)【代理人】

【識別番号】100139527

【弁理士】

【氏名又は名称】上西 克礼

(74)【代理人】

【識別番号】100164781

【弁理士】

【氏名又は名称】虎山 一郎

(74)【代理人】

【識別番号】100221981

【弁理士】

【氏名又は名称】石田 大成

(72)【発明者】

【氏名】ユング・ローラント

(72)【発明者】

【氏名】ヴェールレ・トーマス

(72)【発明者】

【氏名】シャルナー・ゼバスティアン

(72)【発明者】

【氏名】アーダム・アレクサンダー

【テーマコード（参考）】

5H029

5H040

【Ｆターム（参考）】

5H029AJ12

5H029AM01

5H040AA34

5H040AS01

5H040AS04

5H040DD26

(57)【要約】

貯蔵ハウジング（１２）と、貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）に配置され、二酸化硫黄をベースとする電解質を含む少なくとも１つの電池セルとを備える電池貯蔵装置（１０）であって、電池貯蔵装置が、供給装置（３２）を備える安全装置を有し、供給装置（３２）は、発泡性添加剤（１６）を含み、電解質を中和するために発泡性添加剤（１６）から発泡体（３５）を生成し、貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）に発泡体（３５）を放出するように設計され前記電池貯蔵装置。

【特許請求の範囲】

【請求項1】

貯蔵ハウジング（１２）と、貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）に配置されておりおよび二酸化硫黄をベースとする電解質を含む少なくとも１つの電池セル（１４）とを備える電池貯蔵装置（１０）であって、電池貯蔵装置（１０）が、供給装置（３２）を備える安全装置を有し、前記供給装置（３２）は、発泡性添加剤（１６）を含み、かつ電解質を中和するために発泡性添加剤（１６）から発泡体（３５）を生成しかつ貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）に発泡体（３５）を放出するように設計されている、前記電池貯蔵装置（１０）。

【請求項2】

発泡性添加剤（１６）は水溶液中に存在しおよび以下の成分：
（Ａ） イオン性界面活性剤、サポニンおよびタンパク質ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも１種の発泡剤、
（Ｂ） 炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物および水酸化物ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも１種の塩基、ならびに
（Ｃ） 任意で、アルカリ土類金属塩化物、難燃剤、高級アルコールおよび尿素、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるさらに別の添加剤、
を含む、請求項１に記載の電池貯蔵装置（１０）。

【請求項3】

供給装置（３２）が、発泡性添加剤（１６）を含むリザーバー（１８）と、リザーバー（１８）に接続された供給ポンプ（２２）とを有し、供給ポンプ（２２）が、貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）に配置された発泡体分配器（２４）に接続されていることを特徴とする、請求項１または２に記載の電池貯蔵装置（１０）。

【請求項4】

供給装置（３２）が、混合器（２６）と循環ポンプ（２８）を備え、混合器（２６）が、発泡体分配器（２４）、供給ポンプ（２２）および循環ポンプ（２８）に対してそれぞれ別個の接続部を有し、循環ポンプ（２８）が、貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）に流体連結されていることを特徴とする、請求項３に記載の電池貯蔵装置（１０）。

【請求項5】

安全装置が監視装置（３７）を有し、監視装置（３７）が、電池制御システム（３６）と、電池制御システム（３６）に接続されたセンサーユニット（３８）とを備えることを特徴とする、請求項１～４のいずれか１つに記載の電池貯蔵装置（１０）。

【請求項6】

センサーユニット（３８）が、光学センサー、圧力センサー、温度センサーおよび化学センサーからなる群から選択され、さらに好ましくは、センサーユニットが、ガス状二酸化硫黄を検出するための分光ガスセンサー（３９）であることを特徴とする、請求項５に記載の電池貯蔵装置（１０）。

【請求項7】

センサーユニット（３８）は、電池セル（１４）からの電解液の漏出を検出し、そこからデータを生成し、電池制御システム（３６）に転送するように設計されており、電池制御システム（３６）は、センサーユニット（３８）からデータを受信し、作動シナリオまたは非作動シナリオに関してそれを評価するように設けられていることを特徴とする、請求項５または６に記載の電池貯蔵装置（１０）。

【請求項8】

前記電池制御システム（３６）は、作動シナリオが存在する場合には、前記供給装置（３２）を制御して、発泡体（３５）が発泡性添加剤（１６）から生成されそしてそれが貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）に放出されるように、さらに設計されていることを特徴とする請求項７に記載の電池貯蔵装置（１０）。

【請求項9】

前記電池制御システム（３６）は、作動シナリオが存在する場合には、供給装置（３２）を制御して循環ポンプ（２８）を稼働させるようにさらに設計されており、その際、この循環ポンプ（２８）は、貯蔵ハウジング内に存在するガス雰囲気を吸引して、それを再び、混合器および発泡体分配器を介して貯蔵ハウジングに供給することを特徴とする、請求項８に記載の電池貯蔵装置（１０）。

【請求項10】

請求項８または９に記載の電池貯蔵装置（１０）の安全装置を作動させる方法であって、以下のステップ；
（ａ） 監視装置（３７）のセンサーユニット（３８）により、貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）における電池セル（１４）からの電解液の漏出を検知し、その際、それからデータが生成され、そして電池制御システム（３６）に転送されるステップ、
（ｂ） 電池制御システム（３６）により、作動シナリオまたは非作動シナリオの有無に関して前記データを評価するステップ、
（ｃ） 作動シナリオを認識するステップ、
（ｄ） 供給装置（３２）を制御するステップ、
（ｅ） 発泡性添加剤（１６）から発泡体（３５）を製造するステップ、
（ｆ） 貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）に発泡体（３５）を放出するステップ、
（ｇ） 任意に、待機期間を遵守するステップ、
（ｈ） 任意に、循環ポンプ（２８）を作動させ、この際、この循環ポンプ（２８）は、貯蔵ハウジング（１２）の内部空間（３３）に存在するガス雰囲気を吸引し、それを再び、混合器（２６）および発泡体分配器（２４）を介して貯蔵ハウジング（１２）に供給するステップ、
を含むことを特徴とする前記方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、安全装置を備えた電池貯蔵装置および安全装置を作動させる方法に関する。

【背景技術】

【0002】

電気化学セルは、多くの技術分野で非常に重要である。例えば、電気化学セルはノートパソコン、電気自転車、携帯電話などのモバイル・アプリケーションによく使われている。電気化学セルの利点のひとつは、直列または並列に接続して、より高いエネルギーを持つ電池を形成できることである。このような電池は、いわゆる電池貯蔵装置（電池貯蔵システム）と組み合わせることができ、とりわけ高電圧用途にも適している。例えば、電池貯蔵装置は、自動車の電気駆動を可能にし、定置エネルギー貯蔵装置として使用することができる。

【0003】

以下では、「電気化学セル」という用語は、セル、電池、電池セル、アキュムレータ、バッテリーアキュムレータ、二次電池など、充電可能なガルバニック素子について当技術分野で一般的に使用されているすべての用語と同義に使用される。

【0004】

電気化学セルは、放電過程において外部回路に電子を供給することができる。逆に、電気化学セルは、電子を供給することによって、外部回路を使用して充電プロセス中に充電することができる。

【0005】

電気化学セルには少なくとも２つの異なる電極、正極（カソード）と負極（アノード）がある。両電極は、電気絶縁体であるセパレータと接触している。例えば、液体電解質組成物を含浸させた多孔性ポリオレフィン製セパレータが当技術分野で使用されている。セパレータは、２つの電極を空間的に互いに分離し、２つの電極をイオン伝導的に互いに接続する。

【0006】

最も一般的に使用されている電気化学電池は、リチウムイオン電池としても知られているリチウムイオン電池である。先行技術のリチウムイオン電池は、通常、複合アノードを有し、この複合アノードは、非常に多くの場合、炭素ベースのアノード活物質、典型的にはグラファイトカーボンからなり、このアノード活物質は、通常、金属銅担体箔上に電極バインダーで被覆されている。原則として、複合カソードはカソード活物質、例えば層状酸化物、バインダー、導電性添加剤からなり、これらは例えば圧延アルミニウム集電箔に塗布される。層状酸化物は、しばしば、ＬｉＣｏＯ_２またはＬｉＮｉ_１／３Ｍｎ_１／３Ｃｏ_１／３Ｏ_２からなる。

【0007】

リチウムイオン電池は一般的に、充電放電プロセスにおいてカソードとアノードの間の電荷平衡化を保証する液体電解質組成物を有する。このために必要な電流の流れは、電解質組成物中の導電性塩のイオン輸送によって達成される。リチウムイオン電池では、導電性塩はリチウム導電性塩（例えばＬｉＰＦ_６、ＬｉＢＦ_４）であり、解離したリチウムイオンは電極間の電界中を移動する。

【0008】

電解質組成物は、リチウム伝導性塩に加えて、伝導性塩の解離とリチウムイオンの十分な移動度を可能にする溶媒を含む。直鎖状および環状ジアルキルカーボネートからなる液体有機溶媒は、先行技術から知られている。原則として、エチレンカーボネート（ＥＣ）、ジメチルカーボネート（ＤＭＣ）、ジエチルカーボネート（ＤＥＣ）、プロピレンカーボネート（ＰＣ）およびエチルメチルカーボネート（ＥＭＣ）の混合物が使用される。ここで挙げた溶媒はそれぞれ、与えられたセル電圧下で安定に機能する特定の安定性範囲を持っている。この範囲は電圧ウィンドウとも呼ばれる。電気化学セルは、この電圧ウィンドウの範囲内で安定的に作動することができる。電圧ウィンドウの限界に近づくと、電解質組成物の成分の電気化学的酸化または還元が起こる。そのため、異なるセル電圧に対してより安定した電解質を使用する努力がなされている。

【0009】

したがって、二酸化硫黄を溶媒とする無機電解質を用いたリチウムイオン電池は、有機電解質を用いたリチウムイオン電池のさらなる発展を意味する。二酸化硫黄をベースとする安定な電解質組成物のための様々なアプローチが、当該技術分野において知られている。

【0010】

ＥＰ１２０１００４Ｂ１は、二酸化硫黄をベースとする電解質を用いた二次電池を開示している。二酸化硫黄は添加剤として添加されているのではなく、電解質組成物の導電性塩の溶媒としての主成分である。したがって、電極間のイオン輸送に影響を及ぼす導電塩のリチウムイオンの移動度を、少なくとも部分的に確保する必要がある。提案されたセルでは、テトラクロロアルミン酸リチウム（ＬｉＡｌＣｌ_４）が、リチウム含有導電塩として、遷移金属酸化物、特にコバルト酸リチウム（ＬｉＣｏＯ_２）などのインターカレーション化合物からのカソード活物質と組み合わせて、使用されている。二酸化硫黄含有電解質組成物に塩添加剤、例えばフッ化リチウム、塩化ナトリウム、塩化リチウムなどのハロゲン化アルカリを添加することにより、機能する充電可能なセルが得られた。

【0011】

ＥＰ２５３４７１９Ｂ１には、カソード活物質としてリン酸鉄リチウム（ＬＦＰ）と組み合わせた二酸化硫黄ベースの電解質を用いた二次電池用リチウム電池セルが記載されている。テトラクロロアルミン酸リチウムは、電解質組成における好ましい導電性塩として使用された。これらの成分をベースにしたセルのテストでは、セルの高い電気化学抵抗が実証された。

【0012】

ＷＯ２０１５／０４３５７３Ａ２には、ハウジング、カソード、アノード、および二酸化硫黄と導電性塩とを含む電解質を備える電気化学二次電池セルが記載されており、電極の少なくとも１つは、ポリマーからなるバインダーＡからなる群から選択されるバインダーを含む。バインダーＡは、共役カルボン酸のモノマー構造単位、またはこの共役カルボン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアンモニウム塩、またはこれらの組み合わせからなるポリマー、およびバインダーＢは、スチレンおよびブタジエンのモノマー構造単位をベースとするポリマー、またはバインダーＡとＢの混合物からなる群から選択される。

【0013】

ＷＯ２０２１／０１９０４２Ａ１には、活性金属、カソード活物質としての層状酸化物、および二酸化硫黄を含む電解質を備えた二次電池セルが記載されている。多くの一般的なリチウム伝導性塩の二酸化硫黄への溶解性が低いため、式Ｍ^＋［Ｚ（ＯＲ）］_４ ^－の伝導性塩が電池に使用された。式中、Ｍはアルカリ金属、アルカリ土類金属および周期表第１２族の金属からなる群から選択される金属を表し、Ｒは炭化水素残基である。アルコキシ基－ＯＲはそれぞれ、アルミニウムまたはホウ素であってもよい中心原子に結合している。好ましい実施形態において、セルは式Ｌｉ^＋［Ａｌ（ＯＣ（ＣＦ_３）_３）_４ ^－］のパーフルオロ導電性塩を含む。記載された成分からなるセルは、実験的研究において安定した電気化学的性能を示す。さらに、導電性塩、特にパーフルオロ化アニオンは驚くべき加水分解安定性を示す。さらに、電解質は５．０Ｖの上限電位まで酸化に対して安定であると示されている。また、開示された電解質を用いたセルは、－４１℃までの低温で放電または充電できることが示された。

【0014】

さらに、未公開のドイツ特許出願第１０２０２１１１８８１１．３号は、電気化学セル用の二酸化硫黄をベースとする液体電解質組成物を開示している。この電解質組成物は、以下の成分を含む：Ａ）二酸化硫黄；Ｂ）少なくとも１つの塩であって、該塩が少なくとも１つの二座配位子を有するアニオン性複合体を含む塩。アニオン性錯体の対イオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属および周期表第１２族の金属からなる群から選択される金属カチオンである。複合体（錯体）の中心イオンＺは、アルミニウムおよびホウ素からなる群から選択される。二座配位子は、中心イオンＺと、中心イオンＺとブリッジ残基に結合した２個の酸素原子とで環を形成し、これにより環は、２～５個の炭素原子の連続した配列を含む。さらに、上記の電解質組成を有する電気化学セル、特にリチウムイオン電池が提案されている。

【0015】

加えて、二酸化硫黄をベースとする電解質を有するセルは、ＥＰ３７０３１６１Ａ１、ＥＰ２２２７８３８Ｂ１、ＥＰ２７４２５５１Ｂ１、ＥＰ３７７１０１１Ａ２、ＷＯ２００５／０３１９０８Ａ２、およびＷＯ２０１４／１２１８０３Ａ１から公知であり、ここで参照される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0016】

【特許文献1】ＥＰ２５３４７１９Ｂ１

【特許文献2】ＷＯ２０１５／０４３５７３Ａ２

【特許文献3】ＷＯ２０２１／０１９０４２Ａ１

【特許文献4】独国特許出願第１０２０２１１１８８１１．３号

【特許文献5】ＥＰ３７０３１６１Ａ１

【特許文献6】ＥＰ２２２７８３８Ｂ１

【特許文献7】ＥＰ２７４２５５１Ｂ１

【特許文献8】ＥＰ３７７１０１１Ａ２

【特許文献9】ＷＯ２００５／０３１９０８Ａ２

【特許文献10】ＷＯ２０１４／１２１８０３Ａ１

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0017】

電池セル、特に二酸化硫黄を主成分とする電解質組成のリチウムイオン電池に機械的、電気的、熱的欠陥が生じた場合、セルが開き、電解質成分、特に二酸化硫黄などのガス状電解質成分がセルから放出される可能性がある。

【0018】

本発明は、二酸化硫黄を主成分とする電解液を使用したセルがそのような損傷を受けた場合に、電解液が環境中に漏出（流出）するのを防止するという課題に基づいている。

【課題を解決するための手段】

【0019】

本発明によれば、この問題は、請求項１に記載の安全装置と少なくとも１つの電池セルとを備えた電池貯蔵装置によって解決される。

【0020】

本発明による電池貯蔵装置の有利な実施形態は、従属請求項および図に示されており、これらは任意に互いに組み合わせることができる。

【0021】

本発明によれば、この問題は、貯蔵ハウジングと、貯蔵ハウジングの内部空間に配置されており、および、二酸化硫黄をベースとする電解質を含む少なくとも１つの電池セルとを備える電池貯蔵装置であって、電池貯蔵装置が、供給装置を備える安全装置を有し、供給装置は発泡性添加剤を含み、かつ、電解質を中和するために発泡性添加剤から発泡体を生成し、かつ、貯蔵ハウジングの内部空間で発泡体を放出するように設計されている電池貯蔵装置によって解決される。

【0022】

本発明の基本的な考え方は、セルに機械的、熱的、電気的な欠陥が発生した場合、提案されている電池貯蔵装置は、発泡体を放出することによってセルから漏出する二酸化硫黄ベースの電解液を中和または結合する安全装置を備えているということである。

【0023】

これにより、漏出した電解液は、発泡体の大きな表面積によって迅速かつ安全に吸収され、容易に中和または結合できるという技術的利点を提供できる。

【0024】

この時点で、電解液の中和とは、電解液成分、特に二酸化硫黄を化学的により安定で毒性の低い化合物に変換する化学的中和を意味すると理解される。

【0025】

さらに、電解液の中和がすでに貯蔵ハウジングの内部空間で行われるという利点もある。特に貯蔵ハウジングは液密に設計されているため、中和後も発泡体、電解液、その他の成分は電池貯蔵システム内に残る。したがって、貯蔵ハウジングは、化学的中和を制御された条件下で実施することができる、定義された空間的に限定された反応室を提供する。有利なことに、中和が完了すると、電池貯蔵装置ユニットは個別に廃棄されるか、リサイクルプロセスに投入されることができる。

【0026】

発泡体を使用する技術的な利点は、放出された発泡体が漏出した電解液を固定できることである。電解液の個々の成分は、発泡体の気泡スキンに吸着的に付着し、発泡体に結合することができる。また、電解質成分を発泡体の気泡内に貯蔵することもできる。いずれの場合も、漏出した電解液はその移動が制限され、貯蔵ハウジングの内部空間に速やかに固定される。さらに、このようにして固定された電解液は、発泡体自体の化学的性質によって中和され得る。より具体的には、電解液は発泡体の成分と化学反応を起こし、電解液を中和し、より化学的に安定性の高い化合物に変換することができる。発泡体は同時に電解液も固定するので、電解液の特に完全で効率的な中和が行われる。

【0027】

提案されている電池貯蔵装置は、好ましくは車両内に配置され、車両に電力を供給するために使用される。もちろん、このような車両に複数の電池貯蔵装置を配置することも可能である。本発明による電池貯蔵装置は、車両のような移動用途に限定されず、定置の作動にも使用することができる。例えば、本発明による電池貯蔵装置は、ソーラーシステムや風力発電所からのエネルギーを貯蔵するために使用することができる。

【0028】

本発明の目的において、電池貯蔵装置とは、少なくとも１つの電池セル、好ましくは複数の電池セルが配置された貯蔵ハウジングを指す。電池セルは、より高いレベルのエネルギーを供給するために、貯蔵ハウジング内で相互に接続することができる。電池セルとは、二酸化硫黄をベースとする電解質を備えた電気化学セルを意味する。好ましくは、電池セルはリチウムイオン電池である。

【0029】

本発明は、二酸化硫黄をベースとする電解質組成物に関してさらに限定されるものではない。したがって、従来技術で慣用されている二酸化硫黄をベースとする電解質組成物はすべて使用することができる。

【0030】

特に、二酸化硫黄を主成分とする電解質は、二酸化硫黄を成分として含む液体電解質組成物と理解される。二酸化硫黄は、電解質組成物中に、液体、気体または複合体に結合した形態で存在することができる。

【0031】

このような電解質組成物の好適な例は、ＥＰ１２０１００４Ｂ１、ＥＰ２５３４７１９Ｂ１、ＷＯ２０１５／０４３５７３Ａ２、ＷＯ２０２１／０１９０４２Ａ１、ＥＰ３７０３１６１Ａ１、ＥＰ２２２７８３８Ｂ１、ＥＰ２７４２５５１Ｂ１、ＥＰ３７７１０１１Ａ２、ＷＯ２００５／０３１９０８Ａ２およびＷＯ２０１４／１２１８０３Ａ１、ならびにまだ公開されておらず、ここで参照されるドイツ特許出願第１０２０２１１１８８１１．３号から公知である。

【0032】

本発明の有利な態様においては、発泡性添加剤は水溶液中に存在する。

【0033】

発泡性添加剤は、少なくとも１種の発泡剤を含む。本発明は、発泡剤に関してさらに限定されるものではない。一般に、先行技術において一般的に使用されている全ての発泡剤を、発泡性添加剤に使用することができる。

【0034】

使用できる発泡剤には、タンパク質発泡剤、フッ素タンパク質発泡剤、水性膜形成タンパク質発泡剤、マルチグレード発泡剤、耐アルコール発泡剤が含まれる。

【0035】

好ましくは、発泡性添加剤は、イオン性界面活性剤、サポニンおよびタンパク質、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。

【0036】

発泡剤の好適な例としては、アルキルベンゼンスルホナート、脂肪アルコールポリグリコールエーテルサルフェート、アルカンスルホナート、アルキルエーテルカルボンキシレート、ベタイン、脂肪酸スルホアルキルアミド、脂肪酸スルホアルキルエステル、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ココナッツ脂肪酸モノグリセリドサルフェート、ドキュセートナトリウム、ラウロイルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、および、ドデシル硫酸ナトリウム、ならびに、それらの組み合わせが挙げられる。

【0037】

提案されている発泡剤には、安価で入手しやすく、水とよく混合できるという技術的利点を有する。

【0038】

発泡性添加剤は、発泡性添加剤の総質量に基づいて、０．１～６質量％、好ましくは４～６質量％、特に好ましくは５～６質量％を含むことができる。

【0039】

発泡性添加剤は、塩基をさらに含む。本発明は、塩基に関してさらに限定されるものではない。一般に、先行技術において一般的に使用されている全ての塩基を発泡性添加剤に使用することができる。

【0040】

例えば、塩基は多孔質の天然石灰とすることができる。

【0041】

好ましくは、塩基は炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。

【0042】

特に、炭酸塩として金属炭酸塩が使用され、好ましくはアルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩が使用される。炭酸塩の好適な例は、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、および、炭酸亜鉛、ならびにそれらの組み合わせである。

【0043】

特に、炭酸水素塩として金属炭酸水素塩が使用され、好ましくはアルカリ金属およびアルカリ土類金属炭酸水素塩が使用される。炭酸水素塩の好適な例としては、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素ナトリウム、および、炭酸水素カリウム、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。

【0044】

特に、酸化物として金属酸化物を使用することができ、好ましくはアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物である。酸化物の好適な例としては、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、および、酸化バリウム、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。

【0045】

特に、水酸化物として金属水酸化物が使用され、好ましくはアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物が使用される。水酸化物の例としては、特に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、および、水酸化亜鉛、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。

【0046】

発泡性添加剤は水溶液中に存在するので、塩基も水溶液中に存在する。好ましくは、塩基は水溶液中に溶解している。

【0047】

本発明の有利な実施形態において、水溶液は塩基で飽和した溶液である。塩基含量が高いため、飽和溶液は特に高いイオン濃度を有する。好ましくは、イオン濃度はそれぞれの塩基の溶解度積に相当する。このような塩基濃度を有する水溶液は、水の凝固点以下でも液体のままである。その結果、塩基は不凍剤としても機能する。このような飽和溶液は、特に車両での操作または使用に適している。

【0048】

特に好ましくは、添加剤は炭酸ナトリウムの飽和水溶液、さらに好ましくは炭酸カリウムの飽和水溶液およびそれらの組み合わせを含む。

【0049】

発泡性添加剤に塩基を含有させることで、二酸化硫黄を主成分とする電解液を酸塩基中和の形で直接中和することが有利に可能となる。

【0050】

電解液に含まれる二酸化硫黄は、特に水によく溶解するため、特によく吸収される。二酸化硫黄の水への溶解度は、２０℃で水１リットル当たり１１２．７ｇである。二酸化硫黄は水と反応して亜硫酸を生成し、中和反応で塩基と反応できる。そのため塩基は、水溶液に溶解した二酸化硫黄を、より安定した化学化合物に変換することができる。例えば、二酸化硫黄は炭酸塩によって安定な亜硫酸塩または硫酸塩および／または亜硫酸水素塩に変換することができる。さらに、塩基は無毒で、水に溶けやすく、入手しやすいという技術的利点がある。

【0051】

発泡性添加剤は、他の添加剤を含むことができる。

【0052】

添加剤の好適な例としては、アルカリ土類金属塩化物、難燃剤、高級アルコールおよび尿素、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。高級アルコールは、特に、２～１２個の炭素原子を有する飽和、１価～３価のアルコールであり、これにより、高級アルコールは、１級、２級または３級のヒドロキシル基を有することができる。アルカリ土類金属塩化物としては、塩化カルシウム（ＣａＣｌ_２）が特に好ましい。

【0053】

塩化カルシウムの添加は、不溶性の亜硫酸カルシウムへの反応によって二酸化硫黄の吸収が増加するという技術的な利点がある。

【0054】

本発明のさらなる実施形態において、供給装置は、発泡性添加剤を含むリザーバーと、リザーバーに接続された供給ポンプとを有する。供給ポンプは、貯蔵ハウジングの内部空間に配置された発泡体分配器に接続されている。

【0055】

好ましくは、発泡性添加剤を含むリザーバー（貯蔵容器）は貯蔵ハウジングの外側に配置される。しかしながら、リザーバーは貯蔵槽ハウジングの内部空間に配置することもできる。リザーバーは、発泡体が形成され、発泡体が貯蔵ハウジングの内部空間に放出される前に、発泡性添加剤を貯蔵するために使用される。

【0056】

リザーバーを設ける利点は、添加剤を電池セルとは別に貯蔵できることである。つまり、発泡性添加剤は必要なときだけリザーバーから取り出すことができる。

【0057】

好ましくは、リザーバーに接続される供給ポンプは高圧ポンプである。高圧ポンプを使用することにより、発泡性添加剤を特に迅速にリザーバーから除去することができる。

【0058】

さらに、供給ポンプは発泡体分配器に接続されている。本発明は、発泡体分配器に関してさらに限定されるものではない。一般に、発泡性添加剤、特に、発泡剤、少なくとも１つの塩基および任意選択で他の添加剤からなる発泡性添加剤を貯蔵ハウジングの内部空間に放出するのに適した、従来技術で知られている全ての発泡体分配器を使用することができる。

【0059】

例えば、発泡体分配器は、発泡性添加剤を分配するためのノズル出口を有するライン、好ましくは可撓性ラインで構成することができる。好ましくは、ノズルは、発泡性添加剤の噴霧を可能にし、これは、有利には、添加剤と出現する電解質との間の接触面を増加させる。

【0060】

本発明の別の態様において、安全装置は、監視装置をさらに備え、監視装置は、電池制御システムと、電池制御システムに接続されたセンサーユニットとを備える。

【0061】

電池制御システムは、好ましくは電池貯蔵装置の外部に配置される。したがって、電池制御システムが複数の電池貯蔵装置を監視することが考えられる。センサーユニットは、バッテリー監視システムに接続され、好ましくは貯蔵ハウジング内に配置される。

【0062】

一実施形態において、センサーユニットは、光学センサー、圧力センサー、温度センサー、および化学センサーからなる群から選択される。

【0063】

一実施形態において、センサーユニットは、ガス状の二酸化硫黄を検知するための分光式ガスセンサーである。

【0064】

好ましい実施形態において、分光ガスセンサーは非分散型赤外線センサーである。

【0065】

バッテリー動作中に少なくとも１つの電池セルの異常挙動が発生した場合、上記のセンサータイプによって検知することができる。したがって、圧力、温度の上昇、または貯蔵ハウジング内の雰囲気組成（大気組成）の変化は、センサーユニットによって検知することができる。こうして、電池セルの欠陥は、直接的に回り道をすることなく直接認識することができる。

【0066】

特に、二酸化硫黄に選択的に反応するガスセンサーは、貯蔵ハウジング内の二酸化硫黄の存在に関する直接的な情報を提供する。ガスセンサーが貯蔵ハウジングの雰囲気中の二酸化硫黄を検知した場合、二酸化硫黄に基づく電解液が電池セルから漏出し、したがって対応するセルは不良である。

【0067】

センサーユニットによって収集されたデータは、センサーユニットに接続された電池制御システムに転送される。通常、電池制御システムに送信されるデータは、特定の時間間隔で収集された測定データである。

【0068】

本発明のさらなる態様において、電池制御システムは、センサーユニットからデータを受信し、作動シナリオまたは非作動シナリオに関してそれを分析するために提供される。

【0069】

電池制御システムは、センサーユニットからのデータを受信し、貯蔵ハウジング内の電池セルの欠陥の有無に関して評価する。データに基づいて、電池制御システムは、作動シナリオまたは非作動シナリオのいずれを作動するかを決定する。電池制御システムが異常なデータ、より正確には期待されるデータから逸脱したデータを登録した場合、電池制御システムは作動シナリオを開始する。センサーユニットから受信したデータが予想データと一致した場合、非作動シナリオが選択される。

【0070】

作動シナリオが発生した場合、供給装置は電池制御システムによって作動され、発泡性添加剤が発泡体分配器によって放出され、貯蔵ハウジング内に発泡体が形成される。非作動シナリオの場合、現状が維持され、供給装置は作動しない。

【0071】

好ましくは、上述のプロセスは一定の時間間隔で行われる。これは、監視装置がリアルタイムで電池セルを監視できることを意味し、貯蔵ハウジング内の圧力、温度および大気（雰囲気）パラメータのような異常データを即座にかつ確実に記録することができる。したがって、電池制御システムは、電池貯蔵装置の内部空間で漏出した電解液を中和するために添加剤を放出する措置を即座に取ることもできる。したがって、供給装置と監視装置からなる本発明による安全装置は、能動的安全システムである。

【0072】

さらなる実施形態において、供給装置は、混合器および循環ポンプを備え、混合器は、発泡体分配器、供給ポンプおよび循環ポンプへの別個の接続を有し、循環ポンプは、貯蔵ハウジングの内部空間に流体連結される。

【0073】

通常、貯蔵ハウジングの内部空間で発泡体が放出された場合、十分な量の電解液を直ちに固定して中和することはできない。放出された電解液は、時間の経過とともに貯蔵ハウジングの雰囲気に蓄積され、通常、ガス拡散によってのみ放出された発泡体と接触する。上述した実施形態において、循環ポンプが内部空間、ひいては貯蔵ハウジングの雰囲気に流量的に接続されているという利点がある。これにより、貯蔵ハウジングの雰囲気がポンプで汲み出され、混合機および発泡体分配器を介して貯蔵ハウジングに再び供給される。言い換えれば、貯蔵ハウジング内で雰囲気が循環する。つまり、二酸化硫黄ベースの電解液を繰り返し発泡体と接触させることができる。このようにして、電解液のほぼ完全な中和が保証される。

【0074】

さらなる実施形態において、電池制御システムは、作動シナリオが存在する場合に循環ポンプを作動させるように供給装置を制御するように設計され、それにより、貯蔵ハウジング内に存在するガス雰囲気を吸引して、混合器を介して貯蔵ハウジングに送り返す。

【0075】

好ましくは、貯蔵ハウジングから除去されたガス雰囲気は、混合器および発泡体分配器を経由して貯蔵装置に再び供給される。

【0076】

循環ポンプと監視装置を連動させることで、発泡体の生成に加えて、貯蔵ハウジング内のガス雰囲気の循環制御も可能になるという技術的利点がある。

【0077】

本発明はさらに、先のタイプの電池貯蔵装置の安全装置を作動するための方法に関し、この方法は以下のステップを含む：
ａ） 監視装置のセンサーユニットにより、貯蔵ハウジングの内部空間で電池セルからの電解液の漏出を検知、そこからデータが生成され、電池制御システムに転送されるステップ、
ｂ） 電池制御システムによる、作動シナリオまたは非作動シナリオの存在に関して、前記データの評価するステップ、
ｃ） 作動シナリオを認識するステップ、
ｄ） 供給装置を制御するステップ、
ｅ） 発泡性添加剤から発泡体を製造するステップ、
ｆ） 貯蔵ハウジング内部空間に発泡体を放出するステップ、
ｇ） 任意に、待ち時間を遵守するステップ
ｈ） 任意の循環ポンプの作動、この際、この循環ポンプは、貯蔵ハウジングの内部空間に存在するガス雰囲気を吸引し、それを再び混合器および発泡体分配器を介して内部空間に供給するステップ。

【0078】

したがって、上述の方法を用いた安全装置は、電池セルから電解液が漏出した場合に直ちに反応し、対策を講じることができる。放出された発泡体は、二酸化硫黄をベースとする電解液を固定することを可能にし、発泡体中に存在する塩基は、電解液と中和反応、特に二酸化硫黄と反応することができる。つまり、電解液が環境に漏れるのを確実に防ぐことができる。

【図面の簡単な説明】

【0079】

以下、添付図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
－ 図１は、電池セル、供給装置、監視装置を備えた電池貯蔵装置の模式図である；
－ 図２は、欠陥のある電池セルから電解液が漏出した場合の、図１の電池貯蔵システムのアクティブ動作の模式図である；
－ 図３は、ガス状二酸化硫黄を選択的に検知するガスセンサーの模式図である；
－ 図４は、図３のガスセンサーに適した測定範囲の例を示す。
－ 図５は、図１の電池貯蔵装置の安全装置を作動するプロセスのステップを示す概略フローチャートである。

【発明を実施するための形態】

【0080】

図１は、安全装置３２、３７を備えた電池貯蔵装置１０を示している。安全装置３２、３７は、供給装置３２と監視装置３７を備える。

【0081】

また、電池貯蔵装置１０は、貯蔵ハウジング１２と、貯蔵ハウジング１２の内部空間３３に配置された複数の電池セル１４とを備えている。特に、貯蔵ハウジング１２は気密性を有している。

【0082】

内部空間３３には少なくとも１つの電池セル１４が配置されている。しかし、任意の数の電池セル１４を貯蔵ハウジング１２内に配置することができる。より高いエネルギーを有する電池を提供するために、電池セル１４を相互に接続することができる（ここでは図示せず）。

【0083】

電池セル１４は、二酸化硫黄をベースとする少なくとも１つの電解質（ここでは図示せず）を含む。一般に、本発明は、電池セル１４が電解質として二酸化硫黄を含む限り、電池セル１４に関してさらに限定されるものではない。

【0084】

例えば、ＷＯ２０２１０１９０４２Ａ１、ＷＯ２０１５０４５７３Ａ２、またはまだ公開されていないドイツ特許出願第１０２０２１１１８８１１．３号からの電解質組成物を有する電池セル１４を使用することができる。

【0085】

供給装置３２はリザーバー１８を備え、リザーバー１８は貯蔵ハウジング１２の外側に配置される。

【0086】

リザーバー１８は発泡性添加剤１６を含む。

【0087】

発泡性添加剤１６は水溶液中で存在し、以下の成分を含む：
（Ａ） イオン性界面活性剤、サポニンおよびタンパク質ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも１種の発泡剤、
（Ｂ） 炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物および水酸化物ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも１つの塩基、ならびに
（Ｃ） 任意で、アルカリ土類金属塩化物、難燃剤、高級アルコールおよび尿素、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるさらに別の添加剤。

【0088】

リザーバー１８は、電池セル１４に含まれる二酸化硫黄を中和するのに十分な量の発泡性添加剤１６を含む。好ましくは、リザーバー１８は、少なくとも１つの電池セル１４に含まれる二酸化硫黄を完全に中和するのに十分な量の発泡性添加剤１６を含む。特に好ましくは、リザーバー１８は、少なくとも１つの電池セル１４に含まれる二酸化硫黄ベースの電解質に対して過剰量の発泡性添加剤１６を含む。発泡性添加剤１６がリザーバー１８から取り出されたとき、通常、リザーバー１８内に残留物が残るので、後者が特に有利である。

【0089】

リザーバー１８は、ライン２０によって、貯蔵ハウジング１２の外部にある供給ポンプ２２に流体連結されている。供給ポンプ２２は、同じく貯蔵ハウジングの外部にある混合器２６に接続されている。

【0090】

混合器２６は、ライン２０を介して、発泡体分配器２４、循環ポンプ２８および供給ポンプ２２に流体連結されている。

【0091】

発泡体分配器２４は貯蔵ハウジング１２の内部空間３３に配置される。発泡体分配器２４は、剛性ラインまたは可撓性（柔軟性のある）ラインとして設計することができる。さらに、発泡体分配器２４は貯蔵ハウジング１２内の任意の場所に配置することができる。例えば、発泡体分配器２４は、貯蔵ハウジングの内壁に取り付けたり、電池セル１４の外壁に固定したりすることができる。

【0092】

さらに、発泡体分配器２４は、発泡性添加剤１６を放出するための出口（ここでは図示せず）を有する。出口は、例えば、貯蔵ハウジング１２の内部空間３３に発泡性添加剤１６を分配するノズルとして設計することができる。発泡性添加剤１６の放出により、電解液を中和するための本発明による発泡体３５が生成される。発泡体３５は、特に、発泡性添加剤１６と貯蔵ハウジング１２内の雰囲気との混合によって生成される。特に、発泡性添加剤１６からの発泡体の生成には、漏出する電解液によって放出されるガスが寄与する。

【0093】

さらに、貯槽ハウジング１２の一方の壁には、漏出口３０が埋設されている。漏出口３０は、貯留槽ハウジング１２の内部空間３３と循環ポンプ２８とを流体連結させる。漏出口３０は、例えば弁として設計することができる。

【0094】

さらに、安全装置は監視装置３７を備えている。

【0095】

監視装置３７は、電池制御システム３６と、電池制御システム３６に接続されたセンサーユニット３８とからなり、電池制御システム３６は貯蔵ハウジング１２内に配置されている。

【0096】

センサーユニット３８は貯蔵ハウジング１２内のどこにでも配置できる。したがって、センサーユニット３８を貯蔵ハウジング１２の内壁に固定することが考えられる。しかし、センサーユニット３８を電池セル１４に直接取り付けることもできる。

【0097】

本発明の変形例においては、複数のセンサーユニット３８を貯蔵ハウジング１２内の任意の所望の位置に配置することもできる。このようにして、電池貯蔵ユニット１０の異なる領域をセンサーユニット３８によって監視することができる。

【0098】

本発明は、センサーユニット３８に関してさらに限定されるものではない。圧力、温度または雰囲気の差を検知するのに適した、従来技術で一般的に使用されているすべてのセンサーユニットを使用することができる。

【0099】

好ましくは、センサーユニットは、二酸化硫黄、好ましくは雰囲気中のガス状二酸化硫黄を選択的に検知するためのセンサーである。当技術分野で知られているすべてのセンサーをこの目的に使用することができる。

【0100】

例えば、ＵＳ４２２２７４５から知られている既知の検知剤を使用して、電池から漏出する二酸化硫黄を検知することができる。これは、微分散した二酸化ケイ素に吸着した重クロム酸カリウムと、安定化マトリックスとしての接着性ポリマー材料、例えばポリジメチルシロキサンからなる。二酸化チタンを添加することで、色を強く認識させることもできる。この検知剤は二酸化硫黄と接触すると変色する。

【0101】

また、ＷＯ０２０７９７４６から知られている既知の粉末状の重クロム酸カリウムからなる検知剤も考えられる。この検知剤は、酸化促進剤および金属酸化物抑制剤とともに粘着ストリップに適用され、特に二酸化硫黄の検知を可能にする。

【0102】

ガス状二酸化硫黄を検知するためのＵＳ６５７９７２２のセンサーも知られており、このセンサーでは化学発光試薬がポリマーフィルムに固定化されている。二酸化硫黄との接触によって生じる化学発光は、光電子増幅器または光電素子を用いて検知される。

【0103】

特開２００３０３５７０５号公報から知られている既知のセンサーも使用することができ、これはガス状試料中の二酸化硫黄の検知に適しており、ＵＶ／ＶＩＳ／ＩＲ領域の光透過率が被分析物の影響下でモニターされる。このセンサーは、オレンジ－１とアミンの組み合わせ、および、硫酸鉄アンモニウム、フェナントロリン、酸の組み合わせでから成る。

【0104】

二酸化硫黄を検知するためのセンサー膜として設計されたセンサーもＥＰ０５８５２１２から知られている。ルテニウム、オスミウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、白金またはレニウムを中心原子とし、２，２’－ビピリジン、１，１０－フェナントロリンまたは４，７－ジフェニル－１，１０，フェナントロリンを配位子とし、過塩素酸塩または塩化物または硫酸塩を対アニオンとする遷移金属錯体がこの目的のために使用される。ポリマーマトリックスは、セルロース誘導体、ポリスチレン、ポリテトラヒドロフランまたはそれらの誘導体の群から得られる。

【0105】

二酸化硫黄を検知するための光学センサーのセンサー膜を提供するＥＰ０５７８６３０のセンサーを使用することもできる。この目的のために、蛍光色素キニーネや吸収色素ブロモクレゾールパープルのようなｐＨ指示薬が、長鎖スルホン酸イオンや長鎖残基を有するアンモニウムイオンのような対イオンとともに、ポリ塩化ビニル製のポリマーマトリックスに固定化されている。

【0106】

ガス状（気体の）二酸化硫黄を選択的に検知する光学センサーが特に好ましい。

【0107】

例えば、「Ｏｐｔｉｃａｌ ｓｅｎｓｏｒｓ ｆｏｒ ｄｉｓｓｏｌｖｅｄ ｓｕｌｆｕｒ ｄｉｏｘｉｄｅ」（Ａ．Ｓｔａｎｇｅｌｍａｙｅｒ， Ｉ．Ｋｌｉｍａｎｔ， Ｏ．Ｓ．Ｗｏｌｆｂｅｉｓ， Ｆｒｅｓｅｎｉｕｓ Ｊ．Ａｎａｌｙｔｉｃａｌ Ｃｈｅｍｉｓｔｒｙ，１９９８，３６２，７３－７６）から知られるように、光学センサーを使用することができる。ガス状二酸化硫黄の検知には、ガス透過性シリコーン膜またはＯｓｍｏＳｉｌ膜に固定化されたイオン対の形態の親油性ｐＨ検知剤が、ガス状サンプルの二酸化硫黄センサーとして使用される。ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルーの長鎖アルキル残基を有するジテトラアルキルアンモニウム塩がｐＨ指示薬として使用される。ＵＶ／ＶＩＳ領域の光の吸光度が測定変数として使用される。

【0108】

ＤＥ１０２００４０５１９２４Ａ１から知られているように、試料中の二酸化硫黄を定量的に測定するために光学センサーを使用することもできる。ここで提案されているセンサーは、透明なセンサーのマトリックスに均一に固定化された指示物質を含み、この指示物質は少なくとも間接的に試料と接触し、二酸化硫黄の存在下でその濃度を変化させる。この指示物質の濃度変化は、センサーのＵＶ／ＶＩＳ領域における光透過率の変化として、光計測的にモニターすることができる。

【0109】

特に好ましい変形例においては、二酸化硫黄を選択的に検知するセンサーは、図３に記載されているようなセンサーである。

【0110】

センサーユニット３８は、電池セル１４からの電解液の漏出を検知し、そこからデータを生成して電池制御システム３６に転送するように設計されている。データは電気接続３４を介して送信される。

【0111】

電池制御システム３６は、貯蔵ハウジング１２の外部に配置され、接続部３４を介してセンサーユニット３８に電気的に接続されている。好ましくは、接続部３４は電気信号ひいてはデータを伝送するように設計されている。

【0112】

電池制御システム３６は、センサーユニット３８からデータを受信し、作動シナリオまたは非作動シナリオに関して評価することができる。電池制御システムが、貯蔵ハウジング１２内の温度、圧力または雰囲気の変化に関する異常データを登録した場合、電池制御システム３６は、作動シナリオを作動する。

【0113】

電池制御システム３６は、接続部３４を介して供給ポンプ２２に電気的に接続されている。作動シナリオが発生した場合、電池制御システム３６は、供給ポンプ２２が作動し、発泡性添加剤１６がリザーバー１８から供給されるように、供給ポンプ２２を特に制御することができる。こうして、発泡性添加剤１６は、リザーバー１８からライン２０および供給ポンプ２２を介して発泡体分配器２４に入り、最終的に貯蔵ハウジング１２の内部空間３３で発泡性添加剤１６を放出し、こうして発泡体３５を生成する。

【0114】

待機時間の後、電池制御システム３６は、電気接続３４を介して循環ポンプ２８を作動させることができ、これにより、内部空間３３の雰囲気が吸引され、ライン２０、混合器２６および発泡体分配器２４を介して内部空間３３に再び供給される。これにより、内部空間３３の雰囲気が循環され、中和されていない電解質成分が発泡体３５と再び接触する。

【0115】

図２は、作動シナリオが発生した場合の図１の電池貯蔵装置１０を示している。

【0116】

さらに、図２には、図１ですでに説明したのと同じ構成要素が含まれている。

【0117】

作動シナリオのメカニズムは図２を参照して以下に示す。電池セル１４に電気的、熱的、化学的な欠陥が発生した場合、特定の状況下で当該セル１４が開口される可能性がある。そのような電池セル１４は、したがって欠陥セル３１である。しかし、セル１４は、セル開放が並行して発生することなく損傷することもある。しかし、いずれの場合も、温度、圧力、セルの電気的特性、または雰囲気の組成のような、貯蔵ハウジング１２の内部空間のパラメータが必然的に変化する。これらのパラメータの変化はセンサーユニット３８によって検知される。

【0118】

欠陥のあるセル３１が開口されると、二酸化硫黄をベースとする電解液が漏れ出す可能性がある。電解液は、液体または気体の形態で貯蔵ハウジング１２の内部空間３３に入ることができる。センサーユニット３８は、上述したように、逸脱したパラメータの形で、貯蔵ハウジング内の液体状または気体状のそのような電解質の存在を検知する。これらの逸脱したパラメータは、データの形で異常パラメータとして電池制御システム３６に送られる。電池制御システム３６は、受信したデータを予想データと連続的に比較する。予想データからの受信データの予め定義された偏差が検知された場合、電池制御システム３６は作動シナリオを作動する。次いで、発泡性添加剤１６は、供給ポンプ２２によってリザーバー１８から取り出され、発泡体分配器２４に供給される。発泡体分配器２４は、発泡性添加剤を貯蔵ハウジング１２の内部空間３３に放出する。この放出により、内部空間３３の電解質、放出された発泡性添加剤１６および貯蔵ハウジング１２内に存在する雰囲気が混合される。これにより、内部空間３３に堆積する発泡体３５が生成される。発泡体３５は電解液を固定し、酸塩基反応で中和することができる。

【0119】

図３は、デュアルビーム分光計に基づく二酸化硫黄センサーを示している。

【0120】

ガスセンサー３９は、検知器ハウジング４３で囲まれた検知器チャンバ４４を有する。さらに、検知器ハウジング４３はガス入口開口部４１を有する。

【0121】

ガス入口開口部４１は、検知器チャンバ４４と貯蔵ハウジングの内部空間３３とを流体連結している。これにより、２つの領域間でガスの自由な交換が行われ、貯蔵ハウジング１２内の漏出する電解液がガスセンサー３９によって検知される。

【0122】

検知器ハウジング４３は細長い形状を有し、光源４２はハウジング内の一端に付随している。

【0123】

光源４２は、好ましくは赤外光源であり、特に好ましくは近赤外光源である。本発明は、赤外光源に関して限定されるものではない。ガス雰囲気中の二酸化硫黄の検知に適した波長を放出することができる限り、従来技術で知られているすべての赤外光源を使用することができる。

【0124】

好ましくは、光源４２は、４００～１８００ｃｍ^－１の範囲、特に好ましくは４５０～６００ｃｍ^－１、１１００～１２００ｃｍ^－１および／または１３００～１４００ｃｍ^－１の範囲の波長を放出する。作動時、光源４２は、上記範囲の波長の連続スペクトルを有するＮＩＲビーム４６を放出する。

【0125】

光源４２によって放射されたＮＩＲビーム４６は、検知器チャンバ４４に配置された測定ビーム隔壁４８と参照ビーム隔壁５０によって、空間的に分離された２つのＮＩＲビームに分割される。より正確には、ＮＩＲビーム４６は、測定ビーム隔壁４８によって測定ビーム５６に分割され、参照ビーム隔壁５０によって参照ビーム５８に分割される。ダイアグラムによって２つのビーム経路が生成される。

【0126】

測定ビーム５６は、測定ビーム隔壁４８を通過した後、測定ビームフィルター５２に入射する。参照ビーム５８は、参照ビーム隔壁５０を通過した後、参照ビームフィルター５４に入射する。

【0127】

適切な測定ビームフィルター５２および参照ビームフィルター５４は、例えばバンドパスフィルター、好ましくは狭いバンド域フィルターである。例えば、バンドパスフィルターは、１０～０．２ｎｍ、好ましくは５～０．２ｎｍ、特に好ましくは２～０．２ｎｍの帯域幅を有することができる。これにより、参照ビーム５８および測定ビーム５６から所定の波長を選択的にフィルタリングすることができる。

【0128】

参照として、基準ビームフィルター５４の透過範囲は、二酸化硫黄も二酸化炭素などの他の分子も吸収バンドを持たない狭いスペクトル範囲で透過するように選択される。

【0129】

測定ビームフィルター５２、すなわち測定ビーム５６の透過範囲は、二酸化硫黄のみが吸収されるが、測定信号を改ざんする可能性のある他のガスが吸収されない範囲に入るように選択される

【0130】

測定ビームフィルターに適した波長の例としては、次のようなものがある：１．５６μｍ、１．５７μｍ、１．５８μｍ、２．４６μｍ、４．０２μｍ。

【0131】

測定ビームフィルター５２を通過した後、測定ビーム５６は測定ビームフィルター５２の下流の測定ビーム検知器６２に入射する。同様に、参照ビーム５８は参照ビームフィルター５４の下流の参照ビーム検知器６０に入射する。

【0132】

フィルターが透過する波長を検知するには、例えば熱電対を利用した検知器が適している。熱電対は熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換することができるため、非常に低い熱電圧を発生させ、それを検知することができる。したがって、この方法で使用される検知器は、特に精度が高く、雰囲気（大気）中の少量の二酸化硫黄の検知にも適している。

【0133】

図４は、図３の二酸化硫黄センサーの測定範囲を示し、波長に対する吸光度がプロットされている。測定ビーム検知器と参照ビーム検知器６０、６２の吸収の和が示されている。

【0134】

測定ビーム検知器６２は測定波長範囲６８で測定信号６４を検知し、参照ビーム検知器６０は参照波長範囲７０で参照信号６６を検知する。基準波長範囲７０および測定波長範囲６８は、ビームフィルターの選択によって事前に決定される。同様に、測定波長範囲の幅はビームフィルターの選択に依存し、一般に１０～０．２ｎｍ、好ましくは５～０．２ｎｍ、特に好ましくは２～０．２ｎｍである。

【0135】

測定ビーム検知器６２が測定信号６４を検知した場合、二酸化硫黄は検知器チャンバ４４の雰囲気中に存在し、したがって貯蔵ハウジング１２の内部空間にも存在する。二酸化硫黄の陽性検知には閾値を定めることができ、これは通常検知器のバックグラウンドノイズを上回る値である。

【0136】

図示のデュアルビーム分光計の利点は、コンパクトであるため、貯蔵ハウジング１２内に収容してスペースを節約できることである。さらに、二酸化硫黄は分光学的に検知されるため、従来の方法と比較して評価および電子情報への変換が容易である。

【0137】

図５は、上述した電池貯蔵装置１０の安全装置を作動させる手順のステップを示す概略フローチャートである。

【0138】

最初のステップにおいては、電池セルからの電解液の漏出を検知する（ステップ１）。検知は、貯蔵ハウジング内に設置された監視装置のセンサーユニットによって行われる。センサーユニットはデータを生成し、電池制御システムに送信する。

【0139】

その後、電池制御システムによってデータが分析され、作動シナリオが発生したか非作動シナリオが発生したかが判定される（ステップ２）。電池制御システムは、センサーユニットによって測定されたパラメータを、予想されるパラメータと比較することによって評価される。

【0140】

パラメータに偏差があり、それが許容範囲外である場合、作動シナリオが実行される（ステップ３）。許容範囲は、検知器の選択やビーム経路の設計など様々な要因に依存するため、電池貯蔵装置やガスセンサーの設計に応じて選択される。

【0141】

その後、電池制御システムが供給ポンプを作動させることによって供給装置が作動し、供給ポンプがリザーバーから発泡性添加剤を取り出し、それを貯蔵ハウジング内に設置された発泡体分配器に供給する（ステップ４）。

【0142】

次のステップにおいて、発泡体分配器が、発泡性添加剤を貯蔵ハウジングの内部空間の雰囲気と接触させることによって、発泡性添加剤から発泡体を生成する（ステップ５）。

【0143】

その後、生成された発泡体は貯蔵ハウジング内に放出される（ステップ６）。

【0144】

その後、任意で待機時間を設けることができる（ステップ７）。これは、待ち時間が発泡体と漏出した電解液に一定の反応時間を与え、その間に中和が行われるため、特に有利である。

【0145】

待機時間の後、任意で循環ポンプを作動させることができる（ステップ８）。貯蔵ハウジング内のガス雰囲気は、循環ポンプによって吸引され、混合器および発泡体分配器を介して貯蔵ハウジング内に再び供給され得る。これにより、内部空間のガス雰囲気を循環させることができる。このようにして、内部空間の大気中に蓄積された漏出した電解液を、放出された発泡体と効率的に接触させることができる。好ましくは、循環ポンプは、センサーユニットが内部空間に電解液を検知しなくなるまで作動し続ける。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【国際調査報告】