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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】二軸配向ポリオレフィンフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241210BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20241210BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20241210BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241210BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B32B27/32 E
C08L23/06
B29C55/12
B65D65/40 D
C08L23/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529825
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2021133162
(87)【国際公開番号】W WO2023092393
(87)【国際公開日】2023-06-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ、ジェー
(72)【発明者】
【氏名】パン、ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、シャオビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シージュン
(72)【発明者】
【氏名】シュー、ジンイー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ホン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4F210
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB01
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA05
3E086CA13
3E086CA15
3E086CA22
4F100AK04A
4F100AK05A
4F100AK07B
4F100AK63A
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4F100AK66B
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4F100BA07
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4F100EJ38A
4F100EJ38B
4F100GB15
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4F210QG01
4F210QG17
4J002BB031
4J002GG02
(57)【要約】
ポリエチレン系組成物を含むコア層を有する二軸配向多層フィルム。コア層が、0.2g/10分~5.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)と、0.930g/cm~0.956g/cmの密度と、3.5SCB/1000C超かつ10.0SCB/1000C未満である、4.0~5.0のlog(Mw)の間の部分(SCBlogMw4~5)における平均短鎖分岐(SCB)レベルとを有する。二軸配向多層フィルムはまた、プロピレン系組成物を含む少なくとも1つの追加の層を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸配向多層フィルムであって、
ポリエチレン系組成物を含むコア層であって、前記コア層は、
0.2g/10分~5.0g/10分である全メルトインデックス(I)と、
0.930g/cm~0.956g/cmである全体密度と、
log(Mw)が4.0~5.0の間の部分(SCBlogMw4~5)において、3.5SCB/1000C超10.0SCB/1000C未満である平均短鎖分岐レベルと、を有するコア層と、
少なくとも1つの追加の層であって、前記少なくとも1つの追加の層はプロピレン系組成物を含む、少なくとも1つの追加の層と、を含む、二軸配向多層フィルム。
【請求項2】
前記プロピレン系組成物が、
プロピレンと他のオレフィンとのコポリマー、
プロピレンと他のオレフィンとのターポリマー、及び
それらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項3】
前記プロピレン系組成物が、120℃~150℃であるDSC融点を有する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項4】
前記ポリエチレン系組成物が、第1のポリエチレン系成分と第2のポリエチレン系成分とを含むブレンドである、請求項1~3のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項5】
前記第1のポリエチレン系成分が、01.0g/10分~1.5g/10分であるメルトインデックス(I)、及び0.965g/cm~0.970g/cmである密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)であり、
前記第2のポリエチレン系成分が、0.1g/10分~3.0g/10分であるメルトインデックス(I)、及び0.915g/cm~0.930g/cmである密度を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である、請求項4に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項6】
前記ポリエチレン系組成物が、第3のポリエチレン系成分を更に含む、請求項4又は5のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項7】
前記第3のポリエチレン系成分が、0.1g/10分~0.5g/10分であるメルトインデックス(I)及び0.955g/cm~0.965g/cmである密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)である、請求項6に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項8】
前記コア層の前記全体密度が0.940g/cm~0.955g/cmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項9】
前記コア層が、4.5SCB/1000Cを超える平均SCBlogMw4~5を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項10】
前記二軸配向多層フィルムが4:1~7:1の延伸比で縦方向に配向され、
6:1~12:1の延伸比で横方向に配向される、請求項1~9のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項11】
前記コア層が、前記二軸配向多層フィルムの全厚の70%超を構成する、請求項1~10のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項12】
前記コア層が、前記二軸配向多層フィルムの全厚の90%超を構成する、請求項1~11のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項13】
前記二軸配向多層フィルムが、500MPa~3500MPaの縦方向弾性率、及び700MPa~4000MPaの横方向弾性率を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルム。
【請求項14】
前記物品は、可撓性包装、パウチ、スタンドアップパウチ、既製包装、又は既製パウチである、請求項1~13のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルムを含む物品。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の二軸配向多層フィルムを含む積層製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンコアを含む二軸配向多層ポリオレフィンフィルム、そのようなフィルムを含む積層体、並びにそのようなフィルム及び積層体を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムは、持続可能かつ再利用可能な包装の開発において、配向ポリエステルフィルム又は配向ポリアミドフィルムに取って代わる非常に良好な候補であるため、可撓性包装市場において大きな注目を集めている。BOPEフィルム用に様々なポリエチレン樹脂が開発され市販されているが、それらの多くは、0.930g/cm未満の密度を有する。このような樹脂から製造されたBOPEフィルムの剛性及び耐熱性は、配向ポリエステルフィルム又は配向ポリアミドフィルムよりも著しく低い。これは、可撓性包装産業における現在のBOPEフィルムの用途を制約してきた。可撓性包装の多層性及びある種のポリオレフィン間の相溶性を考慮すると、少量の異種ポリオレフィンを含むことは、リサイクルシステムにおいて許容され得る。例えば、少量のプロピレン系ポリマーを含有するポリエチレン(PE)系フィルムは、依然としてモノPE包装として認識され得る。これは、改善された剛性、耐熱性及びバランスのとれた光学特性を有し、包装産業におけるより持続可能な解決策に対する市場ニーズを満たすことができるPEリッチ二軸配向ポリオレフィンフィルムを開発する機会を開く。
【0003】
加工側の1つの比較的新しい材料技術は、キャスト押出によって形成され、次いで縦方向(MD)に配向され、続いてテンタフレームを使用して横方向(TD)に配向される二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムである。あるいは、このような配向工程はまた、同時に実施される場合もある。ポリエチレンの分子構造、微細構造、及び結晶化速度論のために、多くの場合、従来のポリエチレンを二軸配向することは困難である。
【0004】
二軸配向ポリエチレンフィルムへの良好な加工性を有する新しいポリエチレン系組成物、並びに所望の特性及び/又は改善された特性を有する新しい二軸配向ポリエチレンフィルムを有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
典型的には、PEフィルムの剛性及び耐熱性は、PEの密度によって制御される。より高い密度のPEで作られたフィルムは、一般に、より高い剛性を有する。しかしながら、PEの密度を増加させることは、配向安定性を低下させ、二軸配向プロセスにおける操作窓を著しく狭める可能性がある。その結果、より高密度のPEから商業的に許容可能なBOPEフィルムを製造することは困難であった。
【0006】
本開示は、二軸配向多層ポリエチレンポリオレフィンフィルムへの加工に好適なポリエチレン系組成物、並びに所望の特性及び/又は改善された特性を有する二軸配向多層ポリオレフィンフィルムを提供する。そのようなポリエチレン系組成物は、いくつかの実施形態では、フィルムを延伸するための操作窓を有利に拡大して、二軸配向ポリオレフィンフィルムを提供することができる。例えば、二軸配向に操作窓を拡大することにより、より高密度のポリエチレンを配向させることができ、これにより、フィルム剛性の改善もたらすことができる。他の利点としては、フィルムのより良好な変換及び印刷適性、改善された光学特性(例えば、より高い透明度及びより低いヘイズ)、金属化二軸配向ポリエチレンフィルムの改良されたバリア性能、及びより大きくより幅の広いテンタフレーム上での改善された加工性が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0007】
態様1は、二軸配向多層フィルムを含み、ポリエチレン系組成物を含むコア層であって、コア層が、0.2g/10分~5.0g/10分である全メルトインデックス(I)と、0.930g/cm~0.956g/cmである全体密度と、3.5SCB/1000C超かつ10.0SCB/1000C未満である、4.0~5.0のlog(Mw)の間の部分(SCBlogMw4~5)における平均短鎖分岐レベルと、を有する、コア層と、プロピレン系組成物を含む少なくとも1つの追加の層と、を含む。
【0008】
態様2は、態様1に記載の二軸配向多層フィルムを含み、プロピレン系組成物は、プロピレンと他のオレフィンのコポリマー、プロピレンと他のオレフィンのターポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
態様3は、プロピレン系組成物が120℃~150℃であるDSC融点を有する、態様1又は2のいずれか1つに記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0010】
態様4は、ポリエチレン系組成物が、第1のポリエチレン系成分及び第2のポリエチレン系成分を含むブレンドである、態様1~3のいずれか1つに記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0011】
態様5は、第1のポリエチレン系成分が、01.0g/10分~1.5g/10分のメルトインデックス(I)及び0.965g/cm~0.970g/cmの密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)であり、第2のポリエチレン系成分が、0.1g/10分~3.0g/10分のメルトインデックス(I)及び0.915g/cm~0.930g/cmの密度を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である、態様4に記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0012】
態様6は、ポリエチレン系組成物が第3のポリエチレン系成分を更に含む、態様4又は5のいずれか1つに記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0013】
態様7は、第3のポリエチレン系成分が、0.1g/10分~0.5g/10分のメルトインデックス(I)、及び0.955g/cm~0.965g/cmの密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)である、態様6に記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0014】
態様8は、コア層の全体密度が0.940g/cm~0.955g/cmである、態様1~7のいずれか1つに記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0015】
態様9は、コア層が4.5SCB/1000Cを超える平均SCBlogMw4~5を有する、態様1~8のいずれか1つに記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0016】
態様10は、二軸配向多層フィルムが、4:1~7:1の延伸比で縦方向に、及び6:1~12:1の延伸比で横断方向に配向される、態様1~9のいずれか1つに記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0017】
態様11は、コア層が、二軸配向多層フィルムの全厚の70%超を構成する、態様1~10のいずれか1つに記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0018】
態様12は、コア層が、二軸配向多層フィルムの全厚の90%超を構成する、態様1~11のいずれか1つに記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0019】
態様13は、二軸配向多層フィルムが、500MPa~3500MPaである縦方向率、及び700MPa~4000MPaである横方向率を有する、態様1~12のいずれか1つに記載の二軸配向多層フィルムを含む。
【0020】
態様14は、態様1~13のいずれか1つの二軸配向多層フィルムを含む物品を含み、物品は、可撓性包装、パウチ、スタンドアップパウチ、既製包装、又は既製パウチである。
【0021】
態様15は、態様1~13のいずれか1つの二軸配向多層フィルムを含む積層製品を含む。
【0022】
これら及び他の実施形態は、「発明を実施するための形態」において、より詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
矛盾する記述がなく、文脈から暗に示されてもおらず、又は当該技術分野において慣習的でもない限り、全ての部分及びパーセントは重量に基づいて、全ての温度は℃であり、全ての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物を構成する材料、並びに組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物の混合物を指す。
【0025】
「ポリマー」は、同じ種類であるか又は異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合させることによって調製されるポリマー化合物を意味する。したがって、総称用語ポリマーは、以下に定義される用語ホモポリマー、及び以下に定義される用語インターポリマーを包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)は、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれてもよい。ポリマーは、単一のポリマー、ポリマーブレンド、又は重合中にその場で形成されるポリマーの混合物を含むポリマー混合物であってもよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ホモポリマー」という用語は、微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得ると理解した上で、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指す。
【0027】
本明細書で使用する場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2タイプの異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという一般的な用語は、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)、及び2つ以上の異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0028】
本明細書で使用する場合、「オレフィン系ポリマー」又は「ポリオレフィン」という用語は、(ポリマーの重量に基づいて)過半量のオレフィンモノマー、例えば、エチレン又はプロピレンを重合形態で含み、任意選択的に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で、過半量(50モル%超)の、エチレンモノマーに由来する単位と、残りの量の、1つ以上のα-オレフィンに由来する単位と、を含む、インターポリマーを指す。エチレン/α-オレフィンインターポリマーの形成に使用される典型的なα-オレフィンは、C~C10アルケンである。
【0030】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、重合形態で、2種類のみのモノマーとして、過半量(50モル%超)のエチレンモノマーと、α-オレフィンと、を含むコポリマーを指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、「α-オレフィン」という用語は、一次位置又はアルファ(α)位置に二重結合を有するアルケンを指す。
【0032】
「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」は、過半量(50モル%超)の、エチレンモノマーに由来する単位を含む、ポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において周知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、極低密度ポリエチレン(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、エチレン系プラストマー(POP)及びエチレン系エラストマー(POE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。これらのポリエチレン材料は、一般に、当該技術分野において周知である。しかしながら、以下の記載は、これらの異なるポリエチレン樹脂のうちのいくつかの間の差異を理解するのに役立つ場合がある。
【0033】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、又は「高分岐ポリエチレン」とも称されてもよいが、ポリマーが、過酸化物などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、オートクレーブ又は管状反応器中で、部分的に又は完全に、ホモ重合又は共重合されることを意味するように定義される(例えば、参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第4,599,392号を参照)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.935g/cmの範囲内の密度を有する。
【0034】
「LLDPE」という用語は、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒系及びクロム系触媒、並びにモノ-又はビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、幾何拘束触媒、ホスフィンイミン触媒及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される両方の樹脂を含み、かつ直鎖状、実質的に直鎖状、又は不均質なポリエチレンコポリマー又はホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、及び同第5,733,155号に更に定義されている、実質的に直鎖状エチレンポリマー;米国特許第3,645,992号のものなどの、均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されるものなどの不均質分岐エチレンポリマー、及び/又はこれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は同第5,854,045号に開示されているものなど)が挙げられる。LLDPEは、当技術分野で既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はこれらの任意の組み合わせを介して作製され得る。
【0035】
「MDPE」という用語は、0.926~0.935g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロム又はチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又は置換モノ-又はビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、束縛構造触媒、ホスフィンイミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して製造され、典型的には、2.5超の分子量分布(「MWD」)を有する。
【0036】
「HDPE」という用語は、一般にチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又は置換モノ-若しくはビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、幾何拘束触媒、ホスフィンイミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、約0.935g/cm超~最大約0.980g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。
【0037】
「ULDPE」という用語は、一般にチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又は置換モノ-若しくはビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、幾何拘束触媒、ホスフィンイミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、0.855~0.912g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。ULDPEとしては、ポリエチレン(エチレン系)プラストマー及びポリエチレン(エチレン系)エラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレン(エチレン系)エラストマー及びプラストマーは、一般に、0.855~0.912g/cmの密度を有する。
【0038】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、及び同様の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。このようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。このようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。このようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当該技術分野で既知の任意のその他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含有しても、そうでなくてもよい。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層が、ブレンドを含有してもよい。このようなブレンドは、乾燥ブレンドとして調製され得るか、その場で(例えば、反応器内で)、溶融ブレンドとして、又は当業者に既知の他の技法を使用して形成され得る。
【0039】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の構成成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲から任意の他の成分、工程、又は手順を排除する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる構成成分、工程、又は手順を排除する。
【0040】
本開示は、概して、ポリエチレンコアを有する二軸配向多層ポリオレフィンフィルムに関する。そのようなフィルムは、いくつかの実施形態では、テンタフレームを使用して二軸配向されている。二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、ポリエチレン系組成物を含むコア層を利用する。例えば、二軸配向に操作窓を拡大することにより、より高密度のポリエチレンを配向させることができ、これにより、フィルム剛性の改善もたらすことができる。二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、いくつかの実施形態では、包装用途に使用することができる。
【0041】
実施形態において、二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、0.2グラム/10分(g/10分)~5.0g/10分のメルトインデックス(I)、0.930グラム/立方センチメートル(g/cm)から0.956g/cmである密度、3.5SCB/1000℃を超える、4.0~5.0の重量平均分子量の対数(SCBlogMw4~5)を有する部分における平均短鎖分岐(SCB)レベルを含むポリエチレン系組成物を含むコア層を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、二軸配向多層フィルムのポリエチレンコアは、フィルム厚さの少なくとも70%を構成する。1つ以上の実施形態において、二軸配向多層フィルムは少なくとも1つのスキン層を含み、少なくとも1つのスキン層は、120℃~150℃である示差走査熱量測定(DSC)融点を有するプロピレン系ポリマーを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる二軸配向多層フィルムは、4:1~7:1の延伸比で縦方向に、かつ6:1~12:1の延伸比で横方向に配向されている。いくつかの実施形態では、二軸配向フィルムは、5:1~6:1の延伸比で縦方向に、かつ8:1~10:1の延伸比で横方向に配向されている。
【0044】
実施形態において、ポリエチレン系組成物は、第1のポリエチレン系成分と第2のポリエチレン系成分とのブレンドを含む。実施形態において、第1のポリエチレン系成分は、本明細書に更に記載される特性を有するHDPEであり、第2のポリエチレン系成分は、本明細書に更に記載される特性を有するLLDPEであってもよい。1つ以上の実施形態において、ポリエチレン系組成物は、第3のポリエチレン系成分を含む。実施形態において、第3のポリエチレン系成分は、本明細書に更に記載されるようなHDPEであってもよい。
【0045】
実施形態において、本明細書に開示される二軸配向ポリエチレン多層フィルムは、食品包装などの包装に使用され得る。実施形態では、物品は、本明細書に開示される二軸配向多層フィルムのうちのいずれかを含む。
【0046】
コア層
上述したように、本明細書に開示される二軸配向多層フィルムは、少なくともポリエチレン系組成物を含み、特定の特性を有するコア層を含む。実施形態では、コア層は、0.2g/10分~5.0g/10分のメルトインデックス(I)、0.930g/cm~0.956g/cmである密度、3.5SCB/1000C超である、4.0~5.0のlog(Mw)の間の部分(SCBlogMw4~5)における平均SCBレベルを有する。
【0047】
実施形態では、コア層は、メルトインデックス(I)は0.5g/10分~5.0g/10分であり、例えば、1.0g/10分~5.0g/10分、1.5g/10分~5.0g/10分、2.0g/10分~5.0g/10分、2.5g/10分~5.0g/10分、3.0g/10分~5.0g/10分、3.5g/10分~5.0g/10分、4.0g/10分~5.0g/10分、4.5g/10分~5.0g/10分、0.2g/10分~4.5g/10分、0.5g/10分~4.5g/10分、1.0g/10分~4.5g/10分、1.5g/10分~4.5g/10分、2.0g/10分~4.5g/10分、2.5g/10分~4.5g/10分、3.0g/10分~4.5g/10分、3.5g/10分~4.5g/10分、4.0g/10分~4.5g/10分、0.2g/10分~4.0g/10分、0.5g/10分~4.0g/10分、1.0g/10分~4.0g/10分、1.5g/10分~4.0g/10分、2.0g/10分~4.0g/10分、2.5g/10分~4.0g/10分、3.0g/10分~4.0g/10分、3.5g/10分~4.0g/10分、0.2g/10分~3.5g/10分、0.5g/10分~3.5g/10分、1.0g/10分~3.5g/10分、1.5g/10分~3.5g/10分、2.0g/10分~3.5g/10分、2.5g/10分~3.5g/10分、3.0g/10分~3.5g/10分、0.2g/10分~3.0g/10分、0.5g/10分~3.0g/10分、1.0g/10分~3.0g/10分、1.5g/10分~3.0g/10分、2.0g/10分~3.0g/10分、2.5g/10分~3.0g/10分、0.2g/10分~2.5g/10分、0.5g/10分~2.5g/10分、1.0g/10分~2.5g/10分、1.5g/10分~2.5g/10分、2.0g/10分~2.5g/10分、0.2g/10分~2.0g/10分、0.5g/10分~2.0g/10分、1.0g/10分~2.0g/10分、1.5g/10分~2.0g/10分、0.2g/10分~1.5g/10分、0.5g/10分~1.5g/10分、1.0g/10分~1.5g/10分、0.2g/10分~1.0g/10分、0.5g/10分~1.0g/10分、又は0.2g/10分~0.5g/10分である。
【0048】
1つ以上の実施形態において、コア層は、0.935g/cm~0.956g/cmの密度を有し、例えば、0.938g/cm~0.956g/cm、0.940g/cm~0.956g/cm、0.942g/cm~0.956g/cm、0.945g/cm~0.956g/cm、0.948g/cm~0.956g/cm、0.950g/cm~0.956g/cm、0.952g/cm~0.956g/cm、0.935g/cm~0.952g/cm、0.938g/cm~0.952g/cm、0.940g/cm~0.952g/cm3、0.942g/cm~0.952g/cm3、0.945g/cm~0.952g/cm、0.948g/cm~0.952g/cm、0.950g/cm~0.952g/cm、0.935g/cm~0.950g/cm、0.938g/cm~0.950g/cm、0.940g/cm~0.950g/cm、0.942g/cm~0.950g/cm、0.945g/cm~0.950g/cm、0.948g/cm~0.950g/cm、0.935g/cm~0.948g/cm、0.938g/cm~0.948g/cm、0.940g/cm~0.948g/cm、0.942g/cm~0.948g/cm、0.945g/cm~0.948g/cm、0.935g/cm~0.945g/cm、0.938g/cm~0.945g/cm、0.940g/cm~0.945g/cm、0.942g/cm~0.945g/cm、0.935g/cm~0.942g/cm、0.938g/cm~0.942g/cm、0.940g/cm~0.942g/cm、0.935g/cm~0.940g/cm、0.938g/cm~0.940g/cm又は0.935g/cm~0.938g/cmである。
【0049】
1つ以上の実施形態において、コア層は、4.0~5.0のlog(Mw)の部分において平均SCBレベル(SCBlogMw4~5)を有し、3.5SCB/1000C超、例えば、4.0SCB/1000C超、4.5SCB/1000C超、5.0SCB/1000C超、5.5SCB/1000C超、6.0SCB/1000C超、6.5SCB/1000C超、又は7.0SCB/1000C超である。1つ以上の実施形態において、log(Mw)4.0~5.0の間の部分(SCBlogMw4~5)における最大平均SCBレベルは、10.0SCB/1000Cであり、上記の値のいずれかに適用することができる。SCBlogMw4~5は、本明細書において以下に記載される試験手順に従って測定される。
【0050】
1つ以上の実施形態において、コア層は、125.0℃~135.0℃、例えば、128.0℃~135.0℃、130.0℃~135.0℃、132.0℃~135.0℃、125.0℃~132.0℃、128.0℃~132.0℃、130.0℃~132.0℃、125.0℃~130.0℃、128.0℃~130.0℃、又は125.0℃~128.0℃であるDSC融点(T)を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、コア層中のポリエチレン系組成物は、2つ以上のポリエチレン系成分のブレンドを含む。ポリエチレン系組成物がブレンドである場合、ブレンドは、反応器内ブレンド、溶融ブレンド、乾燥ブレンド、又はこれらのブレンド方法の組み合わせのいずれかによって達成され得ることが理解されるべきである。
【0052】
コア層中のポリエチレン系組成物が2つ以上のポリエチレン系成分のブレンドを含む実施形態では、コア層は第1のポリエチレン系成分を含む。実施形態において、第1のポリエチレン系成分は、0.1g/10分~2.5g/10分のメルトインデックス(I)を有する高密度ポリエチレンであり、例えば、0.1g/10分~1.0g/10分、0.1g/10分~0.5g/10分、0.5g/10分~2.5g/10分、0.5g/10分~1.0g/10分、1.0g/10分~1.5g/10分、又は1.5g/10分~2.5g/10分である。実施形態において、第1のポリエチレン系成分は、0.955g/cm~0.970g/cm、0.955g/cm~0.960g/cm、0.960g/cm~0.965g/cm、又は0.965g/cm~0.970g/cmの密度を有する。
【0053】
1つ以上の実施形態において、二軸配向多層フィルムのコア層は、第1のポリエチレン系成分と第2のポリエチレン系成分とのブレンドであるポリエチレン系組成物を含む。第2のポリエチレン系成分は、実施形態において、第1のポリエチレン系成分のメルトインデックス(I)より少なくとも0.3g/10分大きい、第1のポリエチレン系成分のメルトインデックス(I)より少なくとも0.5g/10分大きい、又は第1のポリエチレン系成分のメルトインデックス(I)より少なくとも0.7g/10分大きいなどの、第1のポリエチレン系成分のメルトインデックス(I)より少なくとも0.1g/10分大きいメルトインデックス(I)を有するLLDPEである。実施形態において、第2のポリエチレン系成分のメルトインデックス(I2)は、10g/10分以下である。したがって、実施形態では、第2のポリエチレン系成分は、0.2g/10分~2.8g/10分のメルトインデックス(I2)を有し、例えば、0.2g/10分~1.3g/10分、0.2g/10分~0.8g/10分、0.6g/10分~2.8g/10分、0.6g/10分~1.3g/10分、1.1g/10分~1.8g/10分、又は1.6g/10分~2.8g/10分である。実施形態において、第2のポリエチレン系成分は、0.2g/10分~10.0g/10分、例えば2.0g/10分~8.0g/10分、又は4.0g/10分~6.0g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。実施形態において、第2のポリエチレン系成分は、第1のポリエチレン系成分の密度より少なくとも0.005g/cm小さい密度を有し、例えば、第1のポリエチレン系成分の密度より少なくとも0.01g/cm小さく、第1のポリエチレン系成分の密度より少なくとも0.02g/cm小さく、第1のポリエチレン系成分の密度より少なくとも0.03g/cm小さく、第1のポリエチレン系成分の密度より少なくとも0.04g/cm小さく、第1のポリエチレン系成分の密度より少なくとも0.05g/cm小さく、又は、第1のポリエチレン系成分の密度より少なくとも0.06g/cm小さい。実施形態では、第2のポリエチレン組成物の密度は、0.900g/cm以上である。第2のポリエチレン系成分は、0.900g/cm~0.950g/cm、0.910g/cm~0.948g/cm、又は0.920g/cm~0.945g/cmの密度を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリエチレン系成分は、The Dow Chemical Companyから市販されているINNate(商標)TF 80であり得る。
【0054】
1つ以上の実施形態において、二軸配向多層フィルムのコア層は、少なくとも第2のポリエチレン系成分及び第3のポリエチレン系成分を含むブレンドであるポリエチレン系組成物を含む。実施形態において、第3のポリエチレン系成分は、0.1g/10分~0.5g/10分、例えば0.3g/10分~0.5g/10分、又は0.1g/10分~0.3g/10分のメルトインデックス(I)を有するHDPEである。実施形態において、第3のポリエチレン系成分は、0.955g/cm~0.965g/cm、0.960g/cm~0.965g/cm、又は0.955g/cm~0.960g/cmの密度を有する。実施形態において、第3のポリエチレン系成分は、The Dow Chemical Companyから入手可能なCONTINUUM(商標)DMDE-6620であり得る。
【0055】
ポリエチレン系組成物が第1のポリエチレン系成分と第2のポリエチレン系成分とのブレンドを含む実施形態では、ポリエチレン系組成物は、第1のポリエチレン系成分を、ポリエチレン系組成物の15重量%~85重量%、例えば20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、又は40重量%~50重量%の量で含む。したがって、そのような実施形態において、ポリエチレン系組成物は、第2のポリエチレン系成分を、ポリエチレン系組成物の15重量%~85重量%、例えば20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、又は40重量%~50重量%の量で含む。
【0056】
ポリエチレン系組成物が第3のポリエチレン系成分と第2のポリエチレン系成分とのブレンドを含む実施形態では、ポリエチレン系組成物は、第3のポリエチレン系成分を、ポリエチレン系組成物の15重量%~85重量%、例えば20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、又は40重量%~50重量%の量で含む。したがって、そのような実施形態において、ポリエチレン系組成物は、第2のポリエチレン系成分を、ポリエチレン系組成物の15重量%~85重量%、例えば20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、又は40重量%~50重量%の量で含む。
【0057】
したがって、実施形態において、ポリエチレン系組成物は、第2のポリエチレン系成分を、ポリエチレン系組成物の15重量%~85重量%、例えば20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、又は40重量%~50重量%の量で含む。
【0058】
実施形態において、ポリエチレン系組成物は、第1のポリエチレン系成分と第2のポリエチレン系成分とのブレンド、第2のポリエチレン系成分と第3のポリエチレン系成分とのブレンド又は第1のポリエチレン系成分、第2のポリエチレン系成分、及び第3のポリエチレン系成分のブレンドであってもよい。
【0059】
実施形態において、コア層は、本明細書において上で開示及び記載されたポリエチレン系組成物を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、又はそれからなり得ることが理解されるべきである。他の実施形態では、コア層は、本明細書の上で開示及び記載されたポリエチレン系組成物と、任意の数の追加のポリエチレン系組成物とを含む、それらから本質的になる、又はそれらからなるブレンドであってもよい。コア層において組み合わせて使用されるポリエチレン系組成物の数は限定されず、実施形態によれば、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のポリエチレン系組成物を含んでもよい。
【0060】
第1のポリエチレン系成分の製造
コア層が本明細書に記載される第1のポリエチレン系成分を含む実施形態について、以下の説明は、重合及び潜在的な触媒に関する情報を提供する。第1のポリエチレン系成分の製造に関する追加の情報は、以下の実施例の項に見出すことができる。
【0061】
重合
実施形態において、第1のポリエチレン系成分は、溶液相重合プロセスによって作製され得る。一般に、溶液相重合プロセスは、1つ以上の等温ループ反応器又は1つ以上の断熱反応器などの1つ以上の十分に混合される反応器において、115~250℃、例えば、115~200℃の範囲の温度で、及び300~1,000psigの範囲の圧力で、例えば、400~750psiの範囲内の圧力で起こる。いくつかの実施形態では、二重反応器では、第1の反応器の温度は、115~190℃、例えば、115~175℃の範囲であり、第2の反応器の温度は、150~250℃、例えば、130~165℃の範囲である。他の実施形態では、単一の反応器では、反応器の温度は、115~250℃、例えば、115~225℃の範囲内である。
【0062】
溶液相重合プロセスにおける滞留時間は、2~30分、例えば、10~20分の範囲内であり得る。エチレン、溶媒、水素、1つ以上の触媒系、任意選択的に1つ以上の助触媒、及び任意選択的に1つ以上のコモノマーが、1つ以上の反応器に連続的に供給される。例示的な溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、これに限定されない。例えば、そのような溶媒は、ExxonMobil Chemical Co.(Houston,Texas)からISOPAR Eの名称で市販されている。次いで、ポリエチレン組成物と溶媒との得られた混合物が、反応器から取り出され、ポリエチレン組成物が単離される。溶媒は、典型的に、溶媒回収ユニット、すなわち熱交換器及び気液分離器ドラムを介して回収され、次いで、重合系にリサイクルされる。
【0063】
一実施形態では、ポリエチレン成分は、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、ここで、エチレンは、1つ以上の触媒系の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。加えて、1つ以上の助触媒が存在し得る。別の実施形態において、ポリエチレン組成物は、単一の反応器系、例えば、単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、ここで、エチレンは、2つの触媒系の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。
【0064】
触媒系
本明細書に記載のポリエチレン組成物を生成するために使用することができる触媒系の特定の実施形態をここで説明する。本開示の触媒システムは、異なる形態で具現化されてよく、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全であり、主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0065】
「独立して選択される」という用語は、R、R、R、R、及びRなどのR基が、同一であっても異なってもよいこと(例えば、R、R、R、R、及びRが、全て置換アルキルであるか、又はR及びRが、置換アルキルであり、Rが、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は複数のヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、当業者に既知の定義を、補足し例示することを意図するものであり、排除するものではない。
【0066】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に変換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「共触媒」及び「活性化剤」という用語は、互換的な用語である。
【0067】
ある特定の炭素原子含有化学基を記載するために使用するとき、「(C~C)」の形態を有する括弧内の表現は、化学基の非置換型がx及びyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C~C40)アルキルは、その非置換型において1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造において、ある特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換され得る。括弧付きの「(C~C)」を用いて定義される化学基のR置換型は、任意の基Rの同一性に従ってy個を超える炭素原子を含有し得る。例えば、「Rがフェニル(-C)である、厳密に1つの基Rで置換された(C~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(C~C)」を用いて定義される化学基が1つ以上の炭素原子含有置換基Rによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小及び最大合計数は、xとyとの両方に、全ての炭素原子含有置換基R由来の炭素原子の合計数を加えることによって、決定される。
【0068】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素原子(-H)が、置換基(例えばR)によって置換されることを意味する。「過置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した全ての水素原子(H)が置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物若しくは官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも2個の、ただし全部よりは少ない水素原子が、置換基によって置き換えられることを意味する。
【0069】
「-H」という用語は、別の原子に共有結合した水素又は水素ラジカルを意味する。「水素」及び「-H」は、互換性があり、明記されていない限り同じものを意味する。
【0070】
「(C~C40)ヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカル及び各炭化水素ジラジカルは、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、二環式を含む縮合及び非縮合多環式を含み、3個以上の炭素原子)又は非環式であり、非置換であるか、若しくは1つ以上のRによって置換されている。
【0071】
本開示では、(C~C40)ヒドロカルビルは、非置換又は置換(C~C40)アルキル、(C~C40)シクロアルキル、(C~C20)シクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C40)アリール、又は(C~C20)アリール-(C~C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態では、前述の(C~C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子を有し(すなわち、(C~C20)ヒドロカルビル)、他の実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0072】
「(C~C40)アルキル」及び「(C~C18)アルキル」という用語は、それぞれ、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている1~40個の炭素原子又は1~18個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C~C40)アルキルの例は、非置換(C~C20)アルキル、非置換(C~C10)アルキル、非置換(C~C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C~C40)アルキルの例としては、置換(C~C20)アルキル、置換(C~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[C45]アルキルが挙げられる。「[C45]アルキル(角括弧付き)」という用語は、置換基を含めてラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C~C)アルキルである1つのRによって置換された、(C27~C40)アルキルである。各(C~C)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル又は1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0073】
「(C~C40)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子の非置換又は置換(1つ以上のRによる)、単環式、二環式、又は三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子が芳香環炭素原子で、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ1、2又は3個の環を含み、式中、単環は、芳香族であり、2個又は3個の環は、独立して縮合又は非縮合であり、2個又は3個の環のうちの少なくとも1つは、芳香族である。非置換(C~C40)アリールの例は、非置換(C~C20)アリール、非置換(C~C18)アリール、2-(C~C)アルキル-フェニル、2,4-ビス(C~C)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、及びフェナントレンが挙げられる。置換(C~C40)アリールの例は、置換(C~C20)アリール、置換(C~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、及びフルオレン-9-オン-1-イルが挙げられる。
【0074】
「(C~C40)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか又は1つ以上のRで置換されている、3~40個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば、(C~C)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、又は1つ以上のRによって置換されているかのいずれかであるのと、同様の様式で定義される。非置換(C~C40)シクロアルキルの例としては、非置換(C~C20)シクロアルキル、非置換(C~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルが挙げられる。置換(C~C40)シクロアルキルの例としては、置換(C~C20)シクロアルキル、置換(C~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、及び1-フルオロシクロヘキシルが挙げられる。
【0075】
(C~C40)ヒドロカルビレンの例としては、置換又は非置換(C~C40)アリーレン、(C~C40)シクロアルキレン、(C~C40)アルキレン(例えば、(C~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ジラジカルは同じ炭素原子上(例えば、-CH-)又は隣接する炭素原子上(つまり1,2-ジラジカル)、又は、1つ、2つ、又は3つ以上の炭素原子が介在して離間している(例えば、それぞれの1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカルなど)。一部のジラジカルは、α,ω-ジラジカルを含む。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C~C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち-CHCH2-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち-CHCHCH-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち-CHCH(CH)CH-)が挙げられる。(C~C50)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、又はナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0076】
「(C~C40)アルキレン」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRで置換されている、1~40個の炭素原子の飽和直鎖又は分枝鎖のジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上ではない)を意味する。非置換(C~C50)アルキレンの例は、非置換-CHCH2-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-CHHCH、及び-(CH(H)(CH)を含む、非置換(C~C20)アルキレンであり、式中、「C」は、水素原子が除去されて、二級又は三級アルキル基を形成している炭素原子を示す。置換(C~C50)アルキレンの例は、置換(C~C20)アルキレン、-CF2-、-C(O)-、及び-(CH14C(CH(CH-(すなわち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。前述のように、2つのRは、一緒になって、(C~C18)アルキレンを形成し得るため、置換(C~C50)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、及び2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンも挙げられる。
【0077】
「(C~C40)シクロアルキレン」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRで置換されている、3~40個の炭素原子の環式ジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上にある)を意味する。
【0078】
「ヘテロ原子」という用語は、水素又は炭素以外の原子を指す。ヘテロ原子の例としては、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、P(R)、N(R)、-N=C(R、-Ge(R2-、又は-Si(R)-が挙げられ、各R、各R、及び各Rは、非置換(C~C18)ヒドロカルビル又は-Hである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子又は分子骨格を指す。「(C1~40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素は、1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子又はヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1個又は2個の炭素原子、(2)1個又は2個のヘテロ原子、又は(3)1つの炭素原子及び1つのヘテロ原子上に存在し得る。各(C~C50)ヘテロヒドロカルビル及び(C~C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換、又は(1つ以上のRによって)置換されてよく、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分枝鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含む)又は非環式であり得る。
【0079】
(C~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換又は置換(C~C40)ヘテロアルキル、(C~C40)ヒドロカルビル-O-、(C~C40)ヒドロカルビル-S-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-Si(R-、(C~C40)ヒドロカルビルN(R)-、(C~C40)ヒドロカルビル-P(R)-、(C~C40)ヘテロシクロアルキル、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C20)シクロアルキル-(C~C19)ヘテロアルキレン、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)ヘテロアルキレン、(C~C40)ヘテロアリール、(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)アルキレン、(C~C20)アリール-(C1~19)ヘテロアルキレン、又は(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)ヘテロアルキレンであり得る。
【0080】
「(C~C40)ヘテロアリール」という用語は、4~40個の総炭素原子及び1~10個のヘテロ原子の非置換又は置換(1つ以上のRによる)、単環式、二環式、又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ、1、2、又は3個の環を含み、2又は3個の環は、独立して、縮合又は非縮合であり、2又は3個の環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香環である。他のヘテロアリール基(例えば、一般に、(C~C12)ヘテロアリールなどの(C~C)ヘテロアリール)は、x~y個の炭素原子(例えば4~12個の炭素原子など)を有し、かつ非置換であるか、又は1つ若しくは2つ以上のRで置換されているものとして、同様の様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環又は6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、又は3であってよく、各ヘテロ原子は、O、S、N、又はPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、及びテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1又は2であってよく、ヘテロ原子は、N又はPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、及びピラジン-2-イルが挙げられる。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-又は6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、インドール-1-イル、及びベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、及びイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、又は6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0081】
前述のヘテロアルキルは、(C~C50)の炭素原子又はそれ以下の炭素原子及び1個以上のヘテロ原子を含む飽和直鎖又は分岐鎖ラジカルであってもよい。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子及び1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカルであってもよい。上に定義されたようなヘテロ原子は、Si(R、Ge(R、Si(R、Ge(R、P(R、P(R)、N(R、N(R)、N、O、OR、S、SR、S(O)、及びS(O)を含んでもよく、ヘテロアルキル基及びヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、又は1つ以上のRによって置換される。
【0082】
非置換(C~C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、及び2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0083】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、又はヨウ化物(I-)といったハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0084】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基Rによって置換されている場合、1つ以上の二重及び/又は三重結合は、任意選択的に、置換基R中に存在しても、しなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を含有すること、ただし、存在するとしたら置換基R中に存在し得るか、又は存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得るような任意の二重結合は含まないことを意味する。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、ポリエチレン組成物を生成するための触媒系は、下式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【0086】
【化1】
【0087】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムから選択される金属であり、金属は、+2、+3、又は+4の形式酸化状態にあり、nは、0、1、又は2であり、nが1である場合、Xは、単座配位子又は二座配位子であり、nが2である場合、各Xは単座配位子であり、同じであるか又は異なっており、金属-配位子錯体が、全体的に電荷中性であり、各Zは、独立して、-O-、-S-、-N(R)-、又は-P(R)-から選択され、Lは、(C~C40)ヒドロカルビレン又は(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、(C~C40)ヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の炭素原子~10個の炭素原子のリンカー骨格を含む部分(これにLが結合している)を有するか、又は(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の原子~10個の原子のリンカー骨格を含む部分を有し、(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンの1個の原子~10個の原子のリンカー骨格の1~10個の原子の各々は、独立して、炭素原子又はヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、Ge(R、P(R)、又はN(R)であり、独立して、各Rは、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、R及びRは、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、及び式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される。
【0088】
【化2】

式(II)、(III)、及び(IV)において、R31~35、R41~48、又はR51~59の各々は、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-N=CHR、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、又は-Hから独立的に選択され、ただし、R又はRの少なくとも1つは、式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルである。
【0089】
式(I)において、R2~4、R5~7、及びR9~16の各々は、独立して、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-N=CHR、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、及び-Hから選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、第1の反応器内で式(I)による第1の触媒、及び第2の反応器内で式(I)による異なる触媒を使用して形成される。
【0091】
二重ループ反応器が使用される1つの例示的な実施形態では、第1のループで使用されるプロ触媒は、ジルコニウム,[[2,2’’’-[[ビス[1-メチルエチル]ゲルミレン]ビス(メチレンオキシ-κO)]ビス[3’’,5,5’’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-オクチル[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オラト-κO]](2-)]ジメチル-であり、これは、化学式C86128GeOZr、及び以下の構造(V)を有する:
【0092】
【化3】

このような実施形態では、第2のループで使用されるプロ触媒は、ジルコニウム,[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-κO)]ビス[3-[2,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]]-5’-(ジメチルオクチルシリル)-3’-メチル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)[1,1]-ビフェニル]-2-オラト-κO]](2-)]ジメチルであり、化学式C107154SiZr及び以下の構造を有する:
【0093】
【化4】
【0094】
共触媒成分
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属系触媒を活性化するための当該技術分野で既知の任意の技術によって触媒的に活性化され得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体を含む系は、錯体を活性化助触媒と接触させるか、又は錯体を活性化助触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性化され得る。本明細書で使用するのに好適な活性化助触媒としては、アルキルアルミニウム、ポリマー又はオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られている)、中性ルイス酸、及び非ポリマー、非配位性、イオン形成化合物(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)が挙げられる。好適な活性化技術は、バルク電気分解である。前述の活性化助触媒及び技法のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリド若しくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムヒドリド若しくはジアルキルアルミニウムハライド、又はトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサン、及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0095】
ルイス酸活性化剤(助触媒)としては、本明細書に記載されるような、1~3個の(C~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物が挙げられる。一実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C~C20)ヒドロカルビル)-置換-アルミニウム又はトリ((C~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物である。他の実施形態では、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)-置換アルミニウム、トリ((C~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C~C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C~C18)アリール)ホウ素化合物、及びこれらのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。更なる実施形態では、第13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化助触媒は、トリス((C~C20)ヒドロカルビルボレート(例えばトリチルテトラフルオロボレート)又はトリ((C~C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用される場合、「アンモニウム」という用語は、((C~C20)ヒドロカルビル)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H) 、(C~C20)ヒドロカルビルN(H) 、又はN(H) である窒素カチオンを意味し、各(C~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同じであっても異なっていてもよい。
【0096】
中性ルイス酸活性化剤(助触媒)の組み合わせとしては、トリ((C~C)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ((C~C18)アリール)ホウ素化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物と、ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンとの組み合わせ、及び単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランと、ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば、4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモル数の比は、1:1:1~1:10:30であり、他の実施形態では、1:1:1.5~1:5:10である。
【0097】
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、1つ以上の助触媒との組み合わせ、例えばカチオン形成助触媒、強ルイス酸、又はそれらの組み合わせによって、活性化して活性触媒組成物を形成することができる。好適な活性化助触媒としては、ポリマー又はオリゴマーのアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、並びに不活性、相溶性、非配位性、イオン形成性の化合物が挙げられる。好適な助触媒の例としては、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1)アミン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
いくつかの実施形態では、前述の活性化助触媒のうちの1つ以上は、互いに組み合わせて使用される。特に好ましい組み合わせは、トリ((C~C)ヒドロカルビル)アルミニウム、トリ((C~C)ヒドロカルビル)ボラン、又はホウ酸アンモニウムとオリゴマー若しくはポリマーアルモキサン化合物との混合物である。式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数と、1つ以上の活性化助触媒の総モル数と比率は、1:10,000~100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、いくつかの他の実施形態では、少なくとも1:1000及び10:1以下であり、いくつかの他の実施形態では、1:1以下である。アルモキサンを単独で活性化助触媒として使用する場合、用いられるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍であることが好ましい。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化助触媒として使用するとき、いくつかの他の実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数は、0.5:1~10:1、1:1~6:1、又は1:1~5:1である。残りの活性化助触媒は、概して、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量におおよそ等しいモル量で用いられる。
【0099】
二軸配向多層フィルム
本開示の二軸配向ポリエチレンフィルムは多層フィルムである。以前に示したように、そのようなフィルムは、本明細書に記載のポリエチレン系組成物を含むコア層を含む。
【0100】
実施形態のコア層に使用されるポリエチレン系組成物の量は、例えば、フィルム中の他の層、フィルムの所望の特性、フィルムの最終用途などを含む、多数の要因に依存して変化し得る。上記に開示されるように、実施形態において、コア層は、ポリエチレン系組成物からなるか、又は本質的になる。コア層が組成物のブレンドを含む実施形態では、コア層は、本明細書に開示及び記載されるポリエチレン系組成物を、コア層の30重量パーセント(重量%)~70重量%の量で含み、例えば、35重量%~70重量%、40重量%~70重量%、45重量%~70重量%、50重量%~70重量%、55重量%~70重量%、60重量%~%~70重量%、65重量%~70重量%、30重量%~65重量%、35重量%~65重量%、40重量%~65重量%、45重量%~65重量%、50重量%~65重量%、55重量%~65重量%、60重量%~65重量%、30重量%~60重量%、35重量%~60重量%、40重量%~60重量%、45重量%~60重量%、50重量%~60重量%、55重量%~60重量%、30重量%~55重量%、35重量%~55重量%、40重量%~55重量%、45重量%~55重量%、50重量%~55重量%、30重量%~50重量%、35重量%~50重量%、40重量%~50重量%、45重量%~50重量%、30重量%~45重量%、35重量%~45重量%、40重量%~45重量%、又は30重量%~35重量%である。
【0101】
フィルム中の層の数は、例えば、フィルムの所望の特性、フィルムの所望の厚さ、フィルムの他の層の含量、フィルムの最終用途、フィルムの製造に利用できる機器などを含む、多数の要因に依存して変化し得る。例えば、多層フィルムは、用途に応じて典型的に多層フィルムに含まれる他の層を更に含むことができ、これには、例えば、シーラント層、バリア層、タイ層、構造層などが含まれる。多層ブローフィルム又はキャストフィルムは、様々な実施形態において、最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11層から構成され得る。
【0102】
本開示の実施形態の多層フィルム内の、本明細書においてスキン層とも呼ばれるコア以外の層は、プロピレン系ポリマーを含むことができる。実施形態において、プロピレン系ポリマーは、プロピレン及び他のオレフィン(例えば、エチレン、ブタンなど)とのコポリマーであり得る。プロピレン系ポリマーは、実施形態によれば、プロピレンと、エチレン、ブタンなどの他のオレフィンとのターポリマーであってもよい。
【0103】
実施形態において、1つ以上のスキン層は、プロピレン系組成物を含む。上述したコア層と組み合わせてスキン層におけるようにプロピレン系組成物を使用することにより、二軸配向多層フィルムは、プロピレン系フィルムと同様の剛性及び溶融特性を有するので、従来のプロピレン加工ラインにおいて使用することができる。しかしながら、本明細書に開示される実施形態の二軸配向多層フィルムは、著しくより多くのプロピレンを含むフィルムよりも容易にリサイクルされ得る。更に、フィルム中のプロピレンが多すぎると、多層フィルムのヘイズ及び透明度の問題を引き起こす可能性がある。実施形態において、スキン層は、120℃~150℃、例えば、120℃~150℃、130℃~150℃、140℃~150℃、100℃~140℃、120℃~140℃、130℃~140℃、100℃~130℃、120℃~130℃、又は100℃~120℃であるDSC Tを有するプロピレン系組成物を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなってもよい。実施形態において、プロピレン系組成物は、Sinopecによって製造されるSanren F800Eであり得る。
【0104】
スキン層は、実施形態において、プロピレン系組成物と、エチレン系組成物、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレンなどの別の組成物とのブレンドであってもよい。スキン層がプロピレン系組成物と別の組成物とのブレンドである実施形態では、スキン層は、プロピレン系組成物を40重量%超、例えば45重量%超、50重量%超、55重量%超、60重量%超、65重量%超、70重量%超、75重量%超、80重量%超、85重量%超、90重量%超、又は95重量%超の量で含む。
【0105】
実施形態による二軸配向多層フィルムの厚さは、主にコア層からのものである。実施形態において、コア層は、二軸配向多層フィルムの厚さの70%超、例えば、二軸配向多層フィルムの厚さの75%超、二軸配向多層フィルムの厚さの80%超、二軸配向多層フィルムの厚さの85%超、二軸配向多層フィルムの厚さの90%超である。実施形態において、コア層は、二軸配向多層フィルムの厚さの70%超かつ95%未満、例えば、二軸配向多層フィルムの厚さの75%超かつ95%未満、二軸配向多層フィルムの厚さの80%超かつ95%未満、二軸配向多層フィルムの厚さの85%超かつ95%未満、二軸配向多層フィルムの厚さの90%超かつ95%未満である。
【0106】
実施形態において、実施形態による二軸配向多層フィルムは、少なくとも1つのスキン層を含む。少なくとも1つのスキン層は、二軸配向多層フィルムの厚さの30%未満、例えば、二軸配向多層フィルムの厚さの25%未満、二軸配向多層フィルムの厚さの20%未満、二軸配向多層フィルムの厚さの15%未満、二軸配向多層フィルムの厚さの10%未満、又は二軸配向多層フィルムの厚さの5%未満を含む。
【0107】
実施形態において、二軸配向多層フィルムは、本明細書に開示及び記載されるポリエチレン系組成物を含むコア層と、プロピレン系組成物を含む少なくとも1つのスキン層とを含む。
【0108】
1つ以上の実施形態において、二軸配向多層フィルムは、ポリエチレン系組成物を含むコア層と、それぞれがプロピレン系ポリマーを含む2つのスキン層とを含む。ポリエチレン系組成物は、実施形態において、第1のポリエチレン系成分と第2のポリエチレン系成分とのブレンドを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。実施形態において、ポリエチレン系組成物は、第1のポリエチレン系成分、第2のポリエチレン系成分、及び第3のポリエチレン系成分のブレンドを含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0109】
フィルム内の前述の層のいずれも、いくつかの実施形態では、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、顔料又は着色剤、加工助剤、架橋触媒、難燃剤、充填剤、及び発泡剤などの、当業者に既知であるような1種以上の添加剤を更に含み得ることを理解されたい。
【0110】
ポリエチレンベースであることにより、本発明の二軸配向多層フィルムは、本明細書で開示されている実施形態によれば、より容易にリサイクル可能なフィルム及び物品を提供するために、実質的又は完全ではないにしても、主にポリエチレンから構成される物品に組み込むことができる。例えば、主にポリエチレンを含むフィルムは、そのようなポリマーの使用が提供し得る他の利点に加えて、改善されたリサイクル性プロファイルを有する。例えば、いくつかの実施形態では、多層フィルムは、添加剤以外、完全にエチレン系ポリマーから構成される。
【0111】
実施形態において、二軸配向多層フィルムは、少なくとも65重量%のポリエチレン系成分、例えば少なくとも70重量%のポリエチレン系成分、少なくとも75重量%のポリエチレン系成分、少なくとも80重量%のポリエチレン系成分、少なくとも85重量%のポリエチレン系成分、少なくとも90重量%のポリエチレン系成分、又は少なくとも95重量%のポリエチレン系成分を含む。
【0112】
多層フィルムは、配向前に、例えば、層の数、フィルムの意図される用途、及び他の要因に応じて、様々な厚さを有し得る。そのような多層フィルムは、いくつかの実施形態では、配向前に250~3200ミクロン(典型的には、500~1920ミクロン)の厚さを有する。
【0113】
配向前に、ポリエチレンフィルムは、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技法を使用して形成することができる。例えば、フィルムはブローフィルム又はキャストフィルムであり得る。例えば、多層フィルムの場合、共押出され得る層については、そのような層は、当業者に既知の技術を使用してかつ本明細書の教示に基づいてブローフィルム又はキャストフィルムとして共押出することができる。
【0114】
フィルムが二層配向されているいくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、テンタフレーム逐次二軸配向プロセスを使用して二軸配向されている。そのような技術は、概ね、当業者に既知である。全般的に、テンタフレーム逐次二軸配向プロセスでは、テンタフレームは、多層共押出ラインの一部として組み込まれる。フラットダイから押出した後、フィルムを冷却ロール上で冷却し、室温の水を充填した水浴に浸漬する。次いで、キャストフィルムは異なる回転速度を有する一連のローラ上に通されて、縦方向における延伸を達成する。製作ラインのMD延伸セグメントには数対のローラがあり、それらは全て油加熱されている。対のローラは、予熱ローラ、延伸ローラ、並びに弛緩及びアニーリング用ローラとして逐次作動する。ローラの各対の温度は、別々に制御される。縦方向における延伸後、フィルムウェブが、加熱ゾーンを有するテンタフレーム熱風炉に通されて、横断方向における延伸を実行する。最初のいくつかのゾーンは予熱用であり、その後に延伸用のゾーン、次いで弛緩及びアニーリング用の最終ゾーンが続く。
【0115】
実施形態において、二軸配向は、所定の温度で2つの異なる延伸チャンバ内で順次行われる。縦方向配向(MDO)は、第1のチャンバ内で行われる。その直後に、縦方向に配向された試料は、横方向配向(TDO)のために第2のチャンバに送られる。MDO工程において、シートは、最初に、180秒間、所望の温度(TMDO)で強制対流を伴う熱風によって加熱され、次いで、500パーセント/秒(%/s)の延伸速度で縦方向に5倍に延伸される。TDO工程では、250%/秒の延伸速度で8倍の横方向配向を行う前に、第2のチャンバ内で空気を循環させることによって、試料を所望の温度(TTDO)で30秒間加熱する。
【0116】
TDO配向調査のための適切なTMDOは、コア層のDSC Tmより約2℃高い固定TTDOの2℃間隔を有する様々なTMDOでフィルム配向挙動をスクリーニングすることによって同定される。適切なTMDOは、安定な逐次延伸を達成することができる最低MDO温度として定義される。例えば、約131℃のDSC Tmを有するコア層を有する構造体のTMDOは、133℃で固定されたTTDOと組み合わせた様々なTMDO下での逐次二軸配向によってスクリーニングされる。安定した逐次二配向性をもたらすことができる最も低いTMDOは、TDO動作窓を調査するための適切なTMDOである。
【0117】
実施形態において、二軸配向多層フィルムは、5℃超、7℃超、10℃超、12℃超、14℃超、又は15℃超であるTDO動作窓を有する。1つ以上の実施形態において、二軸配向多層フィルムは、5℃~20℃のTDO動作窓を有し、例えば、7℃~20℃、10℃~20℃、12℃~20℃、14℃~20℃、15℃~20℃、17℃~20℃、5℃~17℃、7℃~17℃、10℃~17℃、12℃~17℃、14℃~17℃、15℃~17℃、5℃~15℃、7℃~15℃、10℃~15℃、12℃~15℃、14℃~15℃、5℃~14℃、7℃~14℃、10℃~14℃、12℃~14℃、5℃~12℃、7℃~12℃、10℃~12℃、5℃~10℃、7℃~10℃、又は5℃~7℃である。
【0118】
いくつかの実施形態では、配向後、二軸配向フィルムは、5~50ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、二軸配向フィルムは、15~40ミクロンの厚さを有する。
【0119】
実施形態において、二軸配向多層フィルムは、500メガパスカル(MPa)~3500MPa、例えば600MPa~3000MPa、700MPa~2500MPa、800MPa~2000MPa、又は900MPa~1500MPaである平均縦方向(MD)弾性率を有する。実施形態において、二軸配向多層フィルムは、700MPa~4000MPa、例えば、1000MPa~3500MPa、1250MPa~3000MPa、1500MPa~2500MPa、又は1750MPa~2000MPaである平均横方向(TD)弾性率を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、例えば最終用途に応じて、配向ポリエチレンフィルムは、当業者に既知の技法を使用して、コロナ処理、プラズマ処理、又は印刷され得る。いくつかの実施形態では、配向多層フィルムは、本明細書の教示に基づいて、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は当業者に既知の他の金属で表面コーティングすることができる。
【0121】
実施形態において、本明細書に開示及び記載されるBOPEフィルムは、他の層と積層されてもよい。積層は、接着積層又は押出積層などの適切かつ既知の積層プロセスによって行うことができる。
【0122】
物品
本開示の実施形態はまた、本明細書に開示されるような二軸配向多層フィルムから形成されるか、又はそれを組み込む、包装などの物品に関する。
【0123】
このような物品の例としては、可撓性包装、パウチ、自立型パウチ、及び既製包装又は既製パウチが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本発明の配向多層ポリエチレンフィルム又は積層体は、食品包装に使用され得る。そのような包装に含まれ得る食品の例としては、肉、チーズ、シリアル、ナッツ、ジュース、ソースなどが挙げられる。このような包装は、本明細書の教示に基づいて、かつ包装の特定の用途(例えば、食品の種類、食品の量など)に基づいて、当業者に既知の技法を使用して形成され得る。
【0124】
試験方法
本明細書に別段示されない限り、本発明の態様の説明では以下の分析方法を使用する。
【0125】
メルトインデックス
メルトインデックスI(又はI2)及びI10(又はI10)は、それぞれ、190℃で、2.16kg及び10kgの荷重で、ASTM D-1238(方法B)に従って測定した。それらの値を、g/10分で報告する。
【0126】
密度
密度は、ASTM D792に従って測定された。
【0127】
DSC融点
DSC融点(DSC T)は、窒素雰囲気下、10℃/分の加熱及び冷却速度で、TA instruments Q2000シリーズ示差走査熱量計で測定した。3サイクルを行った。1番目は周囲温度から250℃まで、2番目は250℃から0℃まで、3番目は0℃から280℃まで。3回目のサイクルにおける吸熱(融解)ピークを、TAユニバーサル分析ソフトウェアにおいてIntegrate Peak Signal Horizontal法を使用して分析して、各試料についてDSC Tmを得た。
【0128】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)
分子量(Mw、Mz、Mnなど)は、別段の指示がない限り、GPCを使用して測定した。
【0129】
クロマトグラフィシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を装備するPolymerChar社(スペイン、Valencia)製GPC-IRの高温GPCクロマトグラフから構成された。オートサンプラオーブンコンパートメントを160℃に設定し、カラムコンパートメントを150℃に設定した。使用したカラムは、4本のAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの線形混床式カラムであった。使用されたクロマトグラフィ溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有していた。溶媒源を、窒素スパージした。採用した注入体積は、200マイクロリットルであり、流量は、1.0ミリリットル/分であった。
【0130】
GPCカラムセットの較正を、580~8,400,000の範囲の分子量を有する21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて行い、個々の分子量の間に少なくとも10倍の間隔を有する6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準を、Agilent Technologies社から購入した。1,000,000以上の分子量については、50ミリリットルの溶媒中の0.025グラムで、1,000,000未満の分子量については、50ミリリットルの溶媒中の0.05グラムで、ポリスチレン標準を調製した。ポリスチレン標準を、穏やかに撹拌しながら80℃で30分間溶解させた。ポリスチレン標準のピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換し(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり)、
ポリエチレン=A×(Mポリスチレン (式1)
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい。
【0131】
五次多項式を使用して、それぞれのポリエチレン等価較正点に当てはめた。Aに対してわずかな調整(約0.375~0.445)を行い、カラム分解能及びバンド拡張効果を、線状ホモポリマーポリエチレン標準が120,000Mwで得られるように補正した。
【0132】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、デカン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて実行した。プレートカウント(等式2)及び対称性(等式3)を、200マイクロリットル注入で以下の式に従って測定した。
【0133】
【数1】

式中、RVは、ミリリットル単位での保持体積であり、ピーク幅は、ミリリットル単位であり、ピーク最大値は、ピークの最大高さであり、1/2高さは、ピーク最大値の1/2の高さである。
【0134】
【数2】

式中、RVは保持体積(ミリリットル単位)であり、ピーク幅はミリリットル単位であり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10高さはピーク最大値の1/10の高さであり、後方ピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、前方ピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィシステムのプレートカウントは、18,000超になるべきであり、対称性は、0.98~1.22となるべきである。
【0135】
試料を、PolymerChar社製「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動様式で調製し、2mg/mlを試料の目標重量とし、PolymerChar社製高温オートサンプラを介して、予め窒素スパージされたセプタム付きのキャップが付いたバイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪下で、160℃で2時間溶解した。
【0136】
Mn(GPC)、Mw(GPC)、及びMz(GPC)の計算は、PolymerChar社製GPCOne(商標)ソフトウェア、各等間隔のデータ回収点(i)におけるベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、及び式1の点(i)についての狭い標準較正曲線から得られるポリエチレン等価分子量を使用して、等式4~6に従って、PolymerChar社製GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャンネル)を使用した、GPC結果に基づいた。
【0137】
【数3】
【0138】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar社製GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して、各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(flowrate marker、FM)を用いて、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))と、狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのそれとを、RV整合させることによって、各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に補正した。次いで、デカンマーカーピークの時間のいかなる変化も、実行の全体にわたって流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に当てはめる最小二乗適合ルーチンが使用される。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を解く。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量を、等式7のとおり計算する。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar社製GPCOne(商標)ソフトウェアを介して行った。許容可能な流量補正は、有効流量が見かけの流量の±1%以内になるはずであるようにする。
流量(有効)=流量(見かけ)(RV(FM較正済み)/RV(FM試料))
(等式7)。
【0139】
分岐測定
SCBlogMw4~5(4.0~5.0のlog(Mw)の平均短鎖分岐レベル)。ポリマー樹脂及びブレンドの組成を、GPCを用いて試験した。GPCシステムは、Polymer Char IR-5赤外検出器、2角光散乱検出器(Agilent 1260)及びPolymer Char製の示差粘度計を備えた150℃高温クロマトグラフからなる。Agilentから市販されている4つのPL Mixed Aカラム(7.5×300mm)を、検出器オーブン内のIR-5検出器の前に直列に設置する。1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB、HPLCグレード)及び2,5-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)(Sigma-Aldrichから市販されているものなど)を得る。800ミリグラムのBHTを4リットルのTCBに添加する。ここで、BHTを含有するTCBを、単に「TCB」と呼ぶことにする。試料調製は、160℃で3時間振盪させながら2mg/mLでオートサンプラを用いて行う。注入量は200mLである。GPCの温度は150℃であり、流量は1mL/分である。GPCは、一連の狭い分子量(Mw)のポリスチレン標準を用いて較正される。
【0140】
GPCカラムセットの較正は、分子量が580~9,835,000の範囲の21種類の狭い分子量分布のポリスチレン標準を使用して実行され、個々の分子量間に少なくとも10年の間隔がある6つの「カクテル」混合物に配置される。五次多項式を使用して、それぞれのポリエチレン等価較正点に当てはめる。ポリスチレン標準ピーク分子量は、式1Aを使用してポリエチレン分子量に変換される。
【0141】
IR-5赤外線検出器を使用して、MWDと共に組成を測定する。組成検出器は、様々なレベルのコモノマーを有する一連のコポリマー標準を使用して較正される。これらの試料の重量%コモノマーレベルは、C13NMRによって得られる。各標準について、組成関連シグナルを収集し、「測定」、「メチレン」(CH)及び「メチル」(CH)と標識する。「測定」信号は、分子量較正を行うときに濃度信号として使用され、「メチル」信号と「メチレン」信号の比は、組成計算のために使用される。一連の標準について、NMRからのコモノマーの重量%対これらの比のプロットを作成する。データの線形回帰は、データセットの良好な適合をもたらす。重量%コモノマーデータは、1000総炭素(SCB/1000C)中の短鎖分岐に変換することができる。
【0142】
Mwは重量平均分子量である。logMwは、重量平均分子量の対数である。wlogMwは、特定のlogMwにおける部分の重量分率である。SlogMwは、特定のlogMwにおける部分の1000個の炭素当たりの短鎖分岐である。(SCB/1000C)におけるSCBlogMw4~5は、以下の式によって計算される。
【0143】
【数4】
【0144】
二軸配向
二軸配向は、所定の温度で2つの異なる延伸チャンバ内で連続的に行われる。シート試料をMD方向及びTD方向に沿って10×10cmのサイズに切断し、4つの辺のそれぞれに5つのクリップを配置して延伸フレーム上に載せる。クリップを空気圧で駆動して試料縁部をクランプし、次いで延伸フレームを第1のチャンバ内に移送する。縦方向配向(MDO)は、第1のチャンバ内で行われる。その直後に、縦方向に配向された試料は、横方向配向(TDO)のために第2のチャンバに送られる。MDO工程において、試料シートは、最初に、180秒間、所望の温度(TMDO)で強制対流を伴う熱風によって加熱され、次いで、500%/秒の延伸速度で縦方向に5倍に延伸される。TDO工程では、250%/秒の延伸速度で8倍の横方向配向を行う前に、第2のチャンバ内で空気を循環させることによって、試料を所望の温度(TTDO)で30秒間加熱する。次に、延伸フィルム試料を延伸フレームから取り出し、少なくとも1週間エージングした後、このセクションで以下に記載するようにフィルム特性について試験した。
【0145】
TDO配向調査のための適切なTMDOは、それぞれのコア層のDSC Tmより約2℃高い固定TTDOと組み合わせて、2℃間隔で様々なTMDOでフィルム配向挙動をスクリーニングすることによって同定される。適切なTMDOは、安定な逐次延伸を達成することができる最低MDO温度として定義される。例えば、約131℃のDSC Tmを有するコア層を有する構造体のスクリーニングは、133℃で固定されたTTDOを有する様々なTMDO下での逐次二軸配向によって行われる。安定した逐次的二配向性をもたらすことができる最も低いTMDOは、TDO配向性窓を調査するための適切なTMDOである。
【0146】
ヘイズ
ヘイズは、ASTMのD1003に従って、BYK Gardner社製Haze-gardを使用して測定される。
【0147】
透明度
透明度は、ASTM D1746に従って測定される。
【0148】
引張弾性率
引張弾性率(縦方向(MD)弾性率及び横方向(TD)弾性率を含む)は、ASTM D882における2%割線弾性率に従って測定される。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例において詳細に説明される。
【実施例
【0150】
実施例及び比較例の材料
実施例及び比較例のフィルムの形成に使用した材料を以下に示す。
【0151】
「第1のポリエチレン系成分」は、1.1g/10分のメルトインデックス(I2)及び0.9668g/cmの密度を有する、本明細書に開示される実施形態による高密度ポリエチレンであり、実施例のコア層に使用される。第1のポリエチレン系成分の製造方法を以下に提供する。
【0152】
「第2のポリエチレン系成分」は、1.7g/10分のメルトインデックス(I2)及び0.927g/cmの密度を有する、The Dow Chemical Companyの直鎖状低密度ポリエチレンであるINNATE(商標)TF80であり、実施例のコア層に使用される。
【0153】
「第3のポリエチレン系成分」は、The Dow Chemical Company製の高密度ポリエチレンであるCONTINUUM(商標)DMDE-6620 NT 7であり、メルトインデックス(I)0.3g/10分及び密度0.960g/cm を有し、いくつかの実施例のコア層に使用される。
【0154】
Exceed XP 6026(「XP6026」)は、Exxon Mobil製の直鎖状低密度ポリエチレンであり、メルトインデックス(I2)が0.2g/10分、密度が0.916g/cmであり、比較例のコアに使用される。
【0155】
Evolue SP 3022(「SP3022」)は、1.7g/10分のメルトインデックス(I)及び0.926g/cmの密度を有する三井化学製の直鎖状低密度ポリエチレンであり、比較例のコア層に使用される。
【0156】
CONTINUUM(商標)DMDC-1270 NT 7(「DMDC-1270」)は、The Dow Chemical Company製の高密度ポリエチレンであり、2.5g/10分のメルトインデックス(I)及び0.955g/cmの密度を有し、比較例のコア層に使用される。
【0157】
エクソンHTA108(「HTA-108」)は、エクソンモービル社の高密度ポリエチレンであり、0.7g/10分のメルトインデックス(I2)及び0.961g/cmの密度を有し、比較例のコア層に使用される。
【0158】
実施例及び比較例のスキン層は、142.6℃のDSC Tmを有する、Sinopecから供給されるSanren F800Eプロピレンランダムコポリマーから作製される。
【0159】
第1のポリエチレン系組成物を作製するための方法
実施例で使用される第1のポリエチレン系成分を、以下のプロセスに従って、かつ表1に報告されている反応条件に基づいて調製する。
【0160】
反応環境に導入する前に、全ての原材料(エチレンモノマー)及びプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒、Isopar-E)を分子ふるいで精製した。水素は、高純度グレードとして加圧して供給され、更なる精製は行われなかった。反応器モノマー供給流を、機械的圧縮機を介して反応圧力を超える圧力で加圧した。ポンプを介して、溶媒供給を反応圧力より高い圧力まで加圧した。個々の触媒構成成分を精製された溶媒で手動で特定の構成成分濃度までバッチ希釈し、反応圧力を超える圧力まで加圧した。全ての反応供給流を質量流量計で測定し、コンピュータ自動弁制御システムで独立して制御した。
【0161】
連続溶液重合反応器は、熱除去を伴う連続撹拌槽反応器(CSTR)と同様の2つの液体充填非断熱式等温循環ループ反応器からなっていた。各反応器への全ての新鮮な溶媒、モノマー、水素、及び触媒成分供給物の独立した制御が可能であった。各反応器への新鮮な供給流全体(溶媒、モノマー、及び水素)は、供給流を熱交換器に通すことにより温度制御された。各重合反応器への新鮮な供給物全体を、各注入位置間でほぼ等しい反応器体積で、1つの反応器当たり2つの位置で反応器に注入した。第1の反応器への未使用供給物は、典型的には、各注入器が、新鮮な供給物の質量流量全体の半分を受けるように制御された。直列の第2の反応器への新鮮供給物は、典型的には、各注入器の近くでエチレン質量流量全体の半分を維持するように制御され、第1の反応器からの未反応エチレンは、低圧の新鮮供給物に隣接する第2の反応器に入ったため、この注入器は通常、第2の反応器への新鮮供給物の質量流量全体の半分未満を有した。
【0162】
各反応器のための触媒/助触媒成分は、特別に設計された注入スティンガを通して重合反応器に注入された。各触媒/助触媒成分は、反応器の前の接触時間なしに、反応器内の同じ相対位置に別々に注入された。主要な触媒成分は、各反応器のモノマー変換を特定の目標値に維持するようにコンピュータ制御された。助触媒成分は、計算された特定のモル比に基づいて、一次触媒成分に供給した。
【0163】
第1の反応器で使用した触媒は、ジルコニウム,[[2,2’’’-[[ビス[1-メチルエチル]ゲルミレン]ビス(メチレンオキシ-κO)]ビス[3’’,5,5’’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-オクチル[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オラト-κO]](2-)]ジメチル-であり、これは、化学式C86128GeOZr、及び以下の構造(「触媒1」)を有する:
【0164】
【数5】
【0165】
第2の反応器で使用した触媒は、ジルコニウム、[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-κO)]ビス[3-[2,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]]-5’-(ジメチルオクチルシリル)-3’-メチル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)[1,1]-ビフェニル]-2-オラト-κO]](2-)]ジメチルであり、化学式C107154SiZr及び以下の構造(「触媒2」)を有する:
【0166】
【数6】
【0167】
各反応器供給物注入位置の直後に、供給物流を循環重合反応器の内容物と静的混合要素を用いて混合した。各反応器の内容物を、反応熱の大部分を除去する役割を果たす熱交換器に、特定の反応器温度で等温反応環境を維持する役割を果たす冷却剤側の温度で、連続的に循環させた。各反応器ループの周りの循環は、ポンプによって提供した。
【0168】
第1の重合反応器からの流出物(溶媒、モノマー、水素、触媒成分、及び溶融ポリマーを含有する)は、第1の反応器ループから出て、制御弁(第1の反応器の圧力を特定の目標値に維持する役割を有する)を通過し、同様の設計の第2の重合反応器に注入された。第2の重合反応器からの最終流出物は、好適な試薬(水)の添加及びそれとの反応により流出物が非活性化されるゾーンに入った。この同じ反応器出口位置で、他の添加剤をポリマー安定化のために添加した。この最終流出物流は、触媒の非活性化及び添加剤の分散を促進するために、静的混合要素の別のセットを通過した。
【0169】
触媒の不活化及び添加剤の添加に続いて、反応器流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発システムに入った。単離されたポリマー溶融物をペレット化して収集した。非ポリマー流は、系から除去されたエチレンの大部分を分離した様々な機器を通過した。溶媒の大部分は、精製系を通過した後、反応器にリサイクルされた。少量の溶媒がプロセスからパージされた。第1のポリエチレン系成分を少量(ppm)の量の安定剤で安定化させた。
【0170】
第1のポリエチレン系成分の重合条件を表1に報告する。表1に見られるように、助触媒1(ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン);及び助触媒2(変性メチルアルミノキサン(MMAO))を各々、触媒1及び触媒2のための助触媒として使用した。
【0171】
【表1】
【0172】
多層フィルムの形成
溶融ブレンドを行って、表1に列挙される配合に従うことによってコア層化合物を調製した。コア層化合物は、Coperion ZSK40二軸スクリュー押出機で製造した。スクリュー速度は250rpmであり、供給速度は50kg/hに制御した。異なるゾーンの温度を表2に列挙した。全ての材料を主供給口から供給した。揮発物を除去するためにゾーン11で真空を使用した。水中ペレット化を使用してペレットを製造した。次いで、コア層化合物ペレットを特徴付けに使用し、シートにキャストした。
【0173】
【表2】
【0174】
第2のポリエチレン系成分は、二軸配向に使用される最先端のPEであり、配向性のためにコア-1及びコア-2配合物において使用された。第1のポリエチレン系成分は、高剛性用途に使用されるHDPEであり、第2のポリエチレン系成分とブレンドされると、所望の高密度及び短鎖分布を有するコア-1及びコア-2配合物を提供し、第3のポリエチレン系成分は、非常に低MIのHDPEであり、これは、より高い分子量を有するコア-2配合物を提供し;HTA-108は一般的なHDPEであり、SP3022は、国際公開第2019156733号パンフレットに開示された二軸配向用の比較PEであり、これらを組み合わせてコア-3配合物を作製した。DMDC-1270は、コア-4配合物が4.0~5.0のlog(Mw)の間の部分においてより少ない平均短鎖分岐レベルを有することを可能にする高MI HDPEであり、XP6026は、所望の密度を有するコア-4配合物を提供する低MI LLDPEである。
【0175】
【表3】
【0176】
コア層配合物の特性を、前のセクションで紹介した試験方法に従って分析し、表3に列挙する。
【0177】
【表4】
【0178】
6つの異なる3層共押出シートを、POTOPによって供給される実験室規模の多層キャストシートライン上で、約200℃の溶融温度での通常のキャスティングシートプロセスに従うことによって作製した。単層構造であったCE-5を除いて、残りのシートは、同じスキン成分及び同様の総厚さ(約700μm)を共有していたが、異なるコア層成分及び層比を有していた。詳細な構造情報は表4に列挙されており、「E」は実施形態による実施例を示し、「CE」は比較例を示す。層比は厚さの百分率である。
【0179】
【表5】
【0180】
多層フィルムの二軸配向
その後、各多層共押出シートの二軸配向特性を、先のセクションに記載した方法に従って、Bruecknerによって供給された夏炉IV実験室延伸機で評価した。適切なTMDOは、E-1、E-2、CE-1、及びCE-2について、上記のプロトコルによって定義されるように、129℃で見出された。CE-3については、適切なTMDOは125℃であることが分かった。E-1と同じコア層を共有するが、CE-4構造の配向は、E-1の最良のMDO温度(129℃)では成功しなかった。CE-4 MDOを131℃で操作し、より高いTDO温度と組み合わせて、連続二軸配向を成功させた。CE-4の層比の差を考慮して、配向性能評価を131℃のMDO温度で行ったが、これは、それが良好な配向を得ることができる最も低いMDO温度であるためである。CE-5のMDOは、それらが同じコア層成分を共有するので、E-1の適切なTMDOで行われた。最良のTMDOにおける詳細なTTDO窓を表5に要約する。表5では、配向性能が安定であることを確認するために、各MDO/TDO温度の組み合わせで3回の繰り返し配向の試みを試みた。成功した配向は、3回の試み全てにおいて良好な延伸(フィルム破断又はクリップからの滑り落ちがない)によって定義された。不良延伸(フィルム破断又はクリップからの滑り落ち)が起こったら、不合格と分類される。
【0181】
【表6】

F:失敗、少なくとも1回の配向の試みが失敗
S:成功、全ての配向の試みが成功
N:配向試験を実施しなかった
【0182】
二軸配向試験において、E-1及びE-2は、CE-1、CE-2、CE-3、及びCE-5と比較して、有意に広い安定動作窓を示した。
【0183】
典型的には、その配向窓においてより低い温度で配向されたフィルムは、より良好な光学特性及びより高い剛性を有する。その結果、配向窓の下限近くで作製されたフィルム試料を選択して、上記の方法に従って光学試験及び弾性率試験を行った。結果を表6にまとめる。CE-5は、いかなる条件においてもうまく配向することができないので、フィルムデータは利用できない。
【0184】
【表7】
【0185】
E-1及びE-2は、所望の光学特性(高い透明度及び低いヘイズ)及び高い剛性(高い弾性率)の最良の組み合わせをもたらすことが見出された。CE-1は、良好なヘイズ及びかなり良好な剛性を示したが、透明度は劣っていた。CE-2の透明度、ヘイズ、及びTD弾性率の全ては、E-1及びE-2より劣っていた。CE-3は、E-1及びE-1と比較して劣った光学特性及びより低い剛性の両方をもたらした。CE-4のヘイズ及び剛性は、E-1及びE-2と比較して劣っており、好ましくない。
【国際調査報告】