(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】完全印刷電子デバイスのための銀ナノワイヤおよび金属酸化物ナノ粒子のブレンドを使用した印刷透明電極
(51)【国際特許分類】
H01L 21/288 20060101AFI20241210BHJP
H10K 50/81 20230101ALI20241210BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20241210BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20241210BHJP
H10K 50/828 20230101ALI20241210BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20241210BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20241210BHJP
H10K 30/82 20230101ALI20241210BHJP
H10K 102/20 20230101ALN20241210BHJP
【FI】
H01L21/288 M
H10K50/81
H10K71/60
H10K77/10
H10K50/828
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/82
H10K102:20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533121
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 GR2021000076
(87)【国際公開番号】W WO2023099926
(87)【国際公開日】2023-06-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524208870
【氏名又は名称】オーガニック エレクトロニック テクノロジーズ プライベート カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ロゴテティディス,ステルギオス
(72)【発明者】
【氏名】ガラツォプロス,アナスタシオス
(72)【発明者】
【氏名】メケリディス,エヴァンゲロス
【テーマコード(参考)】
3K107
4M104
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC45
3K107DD22
3K107DD27
3K107DD44X
3K107DD44Y
3K107DD46X
3K107DD46Y
3K107DD47X
3K107DD47Y
3K107GG07
3K107GG28
3K107GG41
4M104AA10
4M104BB04
4M104BB08
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4M104CC01
4M104DD51
4M104GG04
4M104GG05
5F251AA11
5F251CB13
5F251CB27
5F251FA02
5F251FA06
5F251FA30
5F251XA01
5F251XA56
(57)【要約】
本発明は、完全印刷電子デバイスにおける透明電極の新規製造方法を提供する。本方法により、銀ナノワイヤおよび金属酸化物ナノ粒子の高導電性透明ブレンドが、大量製造プロセスに適合する広範な印刷技術を使用して、上部電極および下部電極として効果的に堆積される。本方法は、有機太陽電池(OPV)ペロブスカイト太陽電池(PPV)、有機発光ダイオード(OLED)、透明ヒーター、センサーなどの完全印刷光電子デバイスの製造に特に有用である。本方法の主な目標は、蒸着された銀金属コンタクトを透明で高導電性の印刷電極に置き換え、光電子デバイスの性能を向上させるとともに、完全印刷エレクトロニクスの大規模製造に適合させることである。本特許は、銀ナノワイヤ:金属酸化物ナノ粒子のブレンドの材料加工と、印刷ステップの正確な順序を含む。本方法の適用は、機能的で高性能な完全印刷電子デバイスの製造をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明印刷電極を形成することを含む方法において、前記透明印刷電極が、金属酸化物/有機/無機ナノ粒子インク(SnO、ZnO、AZO、MoO、WO
3など)と金属(Ag、Cuなど)ナノワイヤインクのブレンドにより作製されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記透明印刷電極が、例えば、PPV、OPV、OLEDなどの印刷電子デバイスの上部電極または下部電極として使用され得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項2に記載の透明印刷電極が、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、およびスクリーン印刷技術を使用して印刷され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ナノワイヤが、40℃を超えて加熱されることなくナノ粒子と連結される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
完全印刷PPVの製造方法として、バッファー電極の上または下のPPV(それぞれ上部電極または下部電極)に印刷またはコーティングされ得ることを特徴とする、請求項3に記載の透明印刷電極。
【請求項6】
例えば、OPV(単接合、多接合、タンデムなど)、OLED(単接合、ポリマー、ホストエミッターなど)、色素増感太陽電池(DSSC)、透明ヒーターなどの多層薄膜デバイス上に、上部電極または下部電極として印刷またはコーティングされ得ることを特徴とする、請求項3に記載の透明印刷電極。
【請求項7】
前記金属酸化物がSnOであり、金属ナノワイヤがAgであることを特徴とする、請求項5、6に記載の透明印刷電極。
【請求項8】
この種の材料ブレンドが、例えば、OPV、OLED、DSSCなどの、他の光電子デバイスの高性能導電電極の製造に使用され得ることを特徴とする、銀ナノワイヤおよび二酸化スズナノ粒子のブレンドと最先端の印刷技術であるスロットダイコーティングの適合性ならびに請求項1、2および3に記載のバッファー層の半導体材料の非破壊的な層間相互作用。
【請求項9】
各層(金属酸化物ナノ粒子および金属ナノワイヤ)を別々に、または一層ずつ上に印刷し、ブレンドとして印刷しない方法と比較して印刷電子デバイスの出力を増加させる、請求項3、4、5、6に記載の透明印刷電極。
【請求項10】
高コストの真空法を必要とすることなく、印刷電子デバイス(例えば、OPV、PPV、DSSC、OLED)の製造ステップを削減する多層薄膜デバイス上に印刷またはコーティングされ得ることを特徴とする、請求項3に記載の透明印刷電極。
【請求項11】
フレキシブル基板上の大規模なペロブスカイトPVデバイス(モジュールおよびパネル)が、大規模製造に完全に適合する印刷技術である請求項3の透明印刷電極のスロットダイコーティングを使用することにより、単一のコーティング技術で製造され得ることを特徴とする、請求項4に記載の完全印刷高効率ペロブスカイト太陽電池の製造。
【請求項12】
印刷光電子機器の製造プロセスが、大量ロールトゥーロール製造ラインまでスケールアップされ得ることを特徴とする、請求項3および4に記載の大規模ペロブスカイトPVおよびその他の光電子デバイスの製造。
【発明の詳細な説明】
【図面の簡単な説明】
【0001】
【
図1A】多層太陽光デバイスの断面を示す図である。
【
図2-1】
図2Aは、多層OLEDデバイスの断面を示す図である。
【
図3】銀ナノワイヤおよび金属酸化物ナノ粒子のブレンドの使用を具体化することができるOPVデバイスを形成するための層の逐次堆積を表す図である。
【
図4】銀ナノワイヤおよび金属酸化物ナノ粒子のブレンドの使用を具体化することができるOLEDデバイスを形成するための層の逐次堆積を表す図である。
【
図5】
図5Aは、原子間力顕微鏡で撮影した、印刷された銀ナノワイヤおよび金属酸化物層の18×18um画像を示す図である。
図5Bは、(I)がAgNW、(II)が金属酸化物ナノ粒子であるこの層の図解(上面図)である。
図5Cは、(I)がAgNW、(II)が金属酸化物ナノ粒子であるこの層の図解(側面図)である。
【
図6】本開示に記載されるブレンドの逐次層堆積および使用を具体化することができる印刷電子デバイス(PVまたはLED)の標準的な製造ラインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0002】
図面の詳細な説明
図面では、デバイスの寸法は実際の縮尺ではなく、図面とそれらからなる層との間の相対的な大きさは実際の寸法と一致しない。多層構造は連続した長方形に見え、各々が薄膜を表している。実際には、薄膜は互いに物理的に接触し、最終的に電子デバイス(PVまたは/およびLED)を作り出す。明細書において、第1の層、第2の層などの呼称は、デバイスのベース、すなわちフレキシブル基板または非フレキシブル基板から始まる層の順序を記載している。用語「の上に(on)」または「に続く(follows)」は、各デバイスの層が印刷される順番を意味し、常に基板から始まる。
【0003】
電子デバイスは前述の薄膜からなり、これらの薄膜は集合的に機能し、その各々がデバイスの最終的な動作と性能に個別に寄与している。各デバイスのタイプに応じて、その動作(PVまたは/およびLED)は、特定の物理化学的現象が起こるその活性層によって決定される。印刷OPVとOLEDの両方の薄膜技術に関して、各薄膜層のための適切な印刷技術は、電子デバイス全体の製造プロセスにとって重要である。R2R製造プロセスでは、薄いフレキシブル基板がローラーを介して製造ラインに供給される。基板処理の後に続いて、各層の印刷が行われる。各印刷層は、高温チャンバーと適切な乾燥環境に入る。後続の薄膜を逐次印刷することで、最終的に印刷電子デバイス(OPV、PPV、またはOLED)が形成される。最後に、印刷されたデバイスは巻き取りロールに導かれ、希望のサイズに分けられる。
【0004】
図1Aおよび
図2Aは、それぞれOPV(デバイス9)およびOLED(デバイス20)デバイスの断面図であり、本開示で具体化される内容によるものである。また、
図1Bおよび
図2Bは、デバイス9および20の
図1Aおよび
図2Aのそれぞれに対応する実施形態の上面図である。
【0005】
図1A~1Bおよび
図3において、OPVのデバイス9は、フレキシブル基板(10)、透明電極(11、30)、2つのバッファー層(12、40、14および60)、有機(例えばOPV用)または半有機(例えばペロブスカイト太陽電池用)光活性層(13、50)、および本開示で主張されるスロットダイ技術を使用して印刷された、ブレンドされた銀ナノワイヤおよび金属酸化物ナノ粒子からなる上部電極層(15、70)を備えてもよい。
図2A~2Bおよび
図4において、OLEDのデバイス20は、それぞれ、フレキシブル基板(10)、透明電極(11、30)、2つのバッファー層(16、80、18、100)、有機発光層(17、90)および太陽電池デバイスで請求されたものと同じ上部電極層を備えてもよい。
【0006】
印刷電子デバイス
電子デバイスは、導電性材料と半導電性材料(例えば、有機太陽電池、有機発光ダイオード、ペロブスカイト太陽電池)を含むマルチスタックからなってもよい。このような構造は、単層または連続層として製造される。各デバイスはその独自のマルチスタックアーキテクチャを有し、異なるアプリケーションに対応している。
【0007】
有機太陽電池とペロブスカイト太陽電池は共通の構造を有する。これらのデバイスは光を取り入れ、電気エネルギーを生成する。太陽電池は、下部電極(アノードまたはカソード)、バッファー層(電子または正孔輸送層)、光活性層、第2のバッファー層、および上部電極を備えてもよい。上部電極および/または下部電極の両方が、Agナノワイヤおよび金属酸化物ナノ粒子(ZnO、AZO、SnO2など)をブレンドとして含んでもよい。光活性層は、有機または無機ブレンド、n-またはp-ドープ半導体、金属化合物および/またはハロゲンからなってもよい。バッファー層に関しては、nドープおよび/またはpドープ半導体、高分子材料、金属酸化物ナノ粒子などであってもよい。
【0008】
有機発光ダイオード(OLED)は、2つの電極(すなわちアノードとカソード)の間の有機層と、電荷キャリア(電子と正孔)を注入・輸送する2つ以上の層からなる多層デバイスである。発光層は、可視スペクトルの異なる領域で発光可能な1つまたは複数の層を備える。OLEDアーキテクチャの電極には、生成された光をデバイスから取り出すために一定の透明性が要求される。カソードとアノードの両方が、Agナノワイヤおよび金属酸化物ナノ粒子のブレンド(ZnO、AlドープZnO、SnO2など)を含んでもよい。
【0009】
AgNW:金属酸化物ナノ粒子ブレンドの合成と使用
ブレンドAgNW:金属酸化物ナノ粒子は、金属酸化物と組み合わせた銀ナノワイヤの混合物からなってもよい。これらの金属酸化物は、銀ナノワイヤ溶液の溶媒と適合性のある溶媒中で、ナノ粒子マイクロエマルジョンとして形成することができる。このような溶媒は、水および/またはある特定のアルコールであってもよい。金属酸化物ナノ粒子とAgナノワイヤのブレンドは、磁気撹拌機または機械的撹拌機で激しく撹拌しながら製造することができる。同ブレンドの微視的構造は、原子間力顕微鏡画像(
図5A)を使用して明らかにすることができる。これらの画像に基づいて、金属酸化物のマイクロ粒子およびナノ粒子(
図5C_II)は、銀ナノワイヤの表面(
図5C_I)、または銀ナノワイヤの間(
図5B、
図5C)に堆積していることを観察することができる。この現象は、膜の導電性の向上と層の均一性の両方に寄与しており、これは、このような粒子の配置では、ナノワイヤ間のギャップが覆われるからである。このブレンドから適切な膜を形成するための重要なパラメータは、膜の導電性の向上に寄与する質の高い焼結を達成するために、印刷された膜が所定の期間、高温に耐えることである。さらに、膜の形成時に非常に重要なパラメータは印刷フローであり、これは印刷速度と併せて、製造される層の厚さを決定する。
【0010】
上述のブレンドは、先の段落で記載されたような印刷もしくは半印刷、または有機電子デバイスもしくは半有機電子デバイスの電極として使用され得る。さらに、同じブレンドが透明なフレキシブルポリマー基板に表面印刷技術で使用され、透明電極を形成することもできる。多層プリント電子デバイスにおけるその使用は、ブレンドの溶媒とその前の層との間に化学的適合(chemical agreement)があるかどうかに応じて、カソードまたはアノードの形成のためであってもよい。
【0011】
この溶液を使用する方法として、粘度と化学組成に基づいて材料を適合させることができる、任意の印刷技術が提案される。本開示において、この材料を印刷またはコーティングして固定することができる適合性のある技術は、スロットダイ、ブレードコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、およびスクリーン印刷である。特に、これらの技術によるブレンドの印刷と、形成された膜の正しい乾燥条件との組み合わせは、導電性と均質性の向上につながる。本明細書で特許を取得する透明電極は、フルコートされるかまたは特定のパターンで印刷され得る。
図6は、上記の規定で言及されているような印刷電子デバイスの形成プロセスを示している。印刷ライン(330)は、印刷基板の処理と管理、および多層構造の印刷ステージ(ステーション)を含む、6つの別々の部分に分けられ得る。開始時(270)、フレキシブルポリマー基板(120)は供給ロール(110)から巻き出され、印刷中はロール(200)上を所定の速度で移動する。巻き出された後、該基板は第1の印刷ステーション(280)に入り、第1のナノ層が印刷される。選択される印刷技術(130)は、形成される構造によって異なる。その後、印刷された基板は乾燥ステーションに入り、基板は高温環境(230)下で移動する。乾燥中の蒸気は、適切な排気システム(170)によって回収される。印刷技術は、印刷される層に応じて変化する。基板の表面に透明電極がない場合、第1の印刷ステーションにおいて本開示で具体化するブレンドAgNW:金属酸化物を使用してそのような層を形成することができる。この層の印刷は、スロットダイコーティングおよび/もしくはインクジェット、または上述の技術を使用して行うことができる。構造を構成する他の全ての層を印刷するプロセスは、前のものと同様である。各ステージで印刷される層に応じて、層の印刷フロー、乾燥、および/またはアニールに関する印刷パラメータは異なる。全ての層の印刷プロセスが終わると、印刷されたフレキシブル基板は巻き取り機(210)に巻き取られる。
【符号の説明】
【0012】
9 デバイス
10 フレキシブル基板
11 透明電極
12 バッファー層
13 光活性層
14 バッファー層
15 上部電極層
16 バッファー層
17 上部電極層
18 バッファー層
20 デバイス
30 透明電極
40 バッファー層
50 光活性層
60 バッファー層
70 上部電極層
80 バッファー層
90 上部電極層
100 バッファー層
110 供給ロール
120 フレキシブルポリマー基板
130 印刷技術
140 印刷技術
150 印刷技術
160 印刷技術
170 排気システム
180 排気システム
190 排気システム
200 ロール、排気システム
210 巻き取り機
230 高温環境
240 高温環境
250 高温環境
260 高温環境
270 開始
280 印刷ステーション
290 印刷ステーション
300 印刷ステーション
310 印刷ステーション
320 終了
330 印刷ライン
【国際調査報告】