(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】アンドロゲン性脱毛症の治療薬物の調製におけるフリバンセリンの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20241210BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20241210BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20241210BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K31/496
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
A61P17/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533813
(86)(22)【出願日】2024-01-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 CN2024073632
(87)【国際公開番号】W WO2024104511
(87)【国際公開日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】202211546154.1
(32)【優先日】2022-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524212785
【氏名又は名称】上海迪邁和生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI DIMAIHE BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3/F, Building 2, No. 511 Xiaowan Road Fengxian District, Shanghai 201401, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金 亮
(72)【発明者】
【氏名】孫 英杰
【テーマコード(参考)】
2G045
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045FB03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA89
(57)【要約】
本発明は、アンドロゲン性脱毛症の治療薬物の調製におけるフリバンセリンの使用を開示する。細胞モデルの結果は、低濃度のフリバンセリンがLncap細胞の増殖を抑制できることを示しており、細胞レベルの薬力学的活性を示している。動物実験の結果は、フリバンセリンは、アンドロゲンが介在するアンドロゲン性脱毛症障害を改善することができ、アンドロゲン性脱毛症を治療して毛髪の成長を回復することができることを示している。従って、フリバンセリンは、アンドロゲン性脱毛症の治療薬物の調製に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンドロゲン性脱毛症の治療薬物の調製におけるフリバンセリンの使用。
【請求項2】
フリバンセリンは、毛髪の長さ、成長期と休止期との比、表皮と真皮の厚さの比、単位面積内の毛包数及び毛包の直径を増加させることができることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
フリバンセリンは、アンドロゲンが介在するアンドロゲン性脱毛症障害を改善し、アンドロゲン性脱毛症を治療し、毛髪成長を回復する薬物の調製における使用であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
アンドロゲン受容体二量体を抑制し、それが細胞核に入ることを阻止する薬物の調製におけるフリバンセリンの使用。
【請求項5】
アンドロゲン性脱毛症の治療薬物のスクリーニングにおける治療標的としてのアンドロゲン受容体二量体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子薬物の分野に属し、アンドロゲン性脱毛症の治療薬物の調製におけるフリバンセリンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アンドロゲン性脱毛症(AGA、androgenic alopecia)は毛髪密度の進行性の減少を特徴とする疾患であり、一般的に前頭部の生え際の両側頭部から後退し、次に頭頂部からびまん性の薄毛になり、最終的に頭頂部の中心から完全に脱毛する。これは、常染色体優性遺伝病の一種である。後頭部領域に位置する毛包と比較して、男性及び女性の頭皮前頭部領域におけるアンドロゲン受容体並びに5α-レダクターゼI型及びII型の活性レベルは比較的高い。額の毛包におけるα-レダクターゼI型及びII型の活性は、男性の方が女性よりも3倍高い。従って、男性のアンドロゲン性脱毛症はアンドロゲン依存性疾患であると考えられ、中国では、男性全体の罹患率は21.3%であるが、年齢とともに増加する。AGAは患者の社会的及び心理的な側面に深刻な影響を与えるため、患者は治療を求めるようになっている。AGAの病理的特徴は毛包の小型化、毛包成長期の短縮及び休止期の延長を含む。臨床的に、絨毛で末端の毛髪を代替する(絨毛は直径<30μm、長さ<30μm、過渡的な髪の幅は30~40μmの間、末端の毛髪>40μmとして定義される)こと、及び総毛髪密度(毛髪/平方センチメートル)の低下によって主な臨床症状として現れる。組織学的に、終末毛包が絨毛包で代替されるとともに、マクロファージの毛包の周囲が浸潤され、アポクリンのサイズが増大し、かつ真皮の薄化が見られる。毛包の周期的成長は、真皮乳頭細胞(DPCs、dermal papilla cells)の周囲に位置する毛基質角質が細胞増殖して、毛幹が成長する成長期(anagen)、毛包に厳しく制御されたアポトーシス及び細胞外基質再生が発生する退行期(catagen)、毛幹は毛包上皮の球状基部に付着しており、髪を梳いたり、顔を洗ったりすることに起因して脱落する恐れがある休止期(telogen)、及び、休止期の毛髪の脱落段階である活発な脱毛期(exogen)の4つの時期に分けられる。テストステロン(T、testosterone)は人体の主要な性ホルモンの1つであり、DPCsで発現される5α-レダクターゼ(5GR、5a-reductase)はTがより活発な5α-ジヒドロテストステロン(DHT、5α-dihvdrotestosterone)に変化するように促進する。DHTは、毛髪基質細胞上のアンドロゲン受容体(AR、androgen receptor)に結合して、DHT-AR複合物を形成して細胞核に入り、毛包毛乳頭細胞が複数種類のサイトカイン、例えば、形質転換増殖因子-B(TGF-B、transforming growth factor B)、インターロイキン-1a(1L-1a、interleukin 1a)及び腫瘍壊死因子-a(TNF-a、tumor necrosis facior a)を分泌するように誘導する転写因子として機能する。毛包成長期の早期終了を誘導して、AGAを引き起こす可能性がある。アンドロゲン性脱毛症は頭皮毛包が循環アンドロゲンに非常に敏感である結果であり、アンドロゲンの誘導によってアンドロゲン受容体の発現が増加し、それにより毛包内の間葉系-上皮細胞の相互作用が変化し、毛髪の成長、真皮のサイズ、真皮細胞並びに角質形成細胞及びメラニン細胞の活性に影響を与え、Wnt信号チャネルが真皮中の細胞を調節し、アンドロゲンの髪成長への作用において重要な役割を果たす可能性がある。ところが、アンドロゲン関連作用の潜在的な分子機構はほとんど未知のままである。
【0003】
現在のところ、アンドロゲン性脱毛症の治療薬としてFDAにより認可されているのは、内服薬物であるフィナステリドと外用塗布剤であるミノキシジルの2つだけである。フィナステリドは5αレダクターゼ阻害剤であり、体内のDHT含有量を減少させることで脱毛を治療する。ミノキシジルは血管拡張剤であり、毛包の微小循環を改善することで脱毛を治療する効果を実現する。他の治療手段はレーザ治療、毛髪移植、幹細胞治療などの非薬物治療手段を含む。しかしながら、これらの治療方法はいずれも大きな副作用、例えば、性機能障害、多毛症、高額な費用などの問題がある。従って、副作用がより少ない新規のアンドロゲン性脱毛症の治療薬物を見出すことは重要な意味を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の上記欠点に対して、アンドロゲン性脱毛症の治療薬物の調製におけるフリバンセリンの使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、以下の技術的解決策により実現することができる。
アンドロゲン性脱毛症の治療薬物の調製におけるフリバンセリンの使用である。
【0006】
本発明の好適な選択肢として、フリバンセリンは、毛髪の長さ、成長期と休止期との比、表皮と真皮の厚さの比、単位面積内の毛包数及び毛包の直径を増加させることができる。
【0007】
本発明の好適な選択肢として、フリバンセリンは、アンドロゲンが介在するアンドロゲン性脱毛症障害を改善し、アンドロゲン性脱毛症を治療し、毛髪成長を回復する薬物の調製において使用される。
【0008】
フリバンセリンは、アンドロゲン受容体二量体を抑制し、それが細胞核に入ることを阻止する薬物の調製において使用される。
【0009】
アンドロゲン性脱毛症の治療薬物のスクリーニングにおける治療標的としてのアンドロゲン受容体二量体の使用である。フリバンセリンは、アンドロゲン受容体二量体の構造と組み合わせてコンピュータシミュレーション技術を利用してスクリーニングして得られたアンドロゲン性脱毛症を治療する化合物である。
【発明の効果】
【0010】
有益な効果は以下のとおりである。
本発明は、コンピュータシミュレーションスクリーニング技術とインビトロおよびインビボ薬物スクリーニング実験とを組み合わせてスクリーニングしてアンドロゲン受容体二量体の阻害剤を得る一方、該化合物は構造的にアンドロゲン受容体二量体の構造に対して結合活性を有し、ミノキシジルに対する作用標的が明確であり、特異性が高い。該化合物はアンドロゲン受容体二量体の阻害剤であり、アンドロゲン受容体二量体との結合によりアンドロゲン受容体二量体の核への侵入を抑制し、該複合体の下流の活性化因子の動員及びアンドロゲン受容体応答成分との結合を抑制することができ、それにより下流の遺伝子応答を遮断してアンドロゲン性脱毛症を治療する。該薬物はフィナステリドと比較して、作用条件が穏やかで、他の部位のアンドロゲン受容体が介在する下流応答を引き起こさないため、アンドロゲン性脱毛症治療薬物の副作用を大幅に軽減することができる。
【0011】
細胞モデルの結果は、低濃度のフリバンセリンがLncap細胞の増殖を抑制できることを示しており、細胞レベルの薬力学的活性を示している。動物実験の結果は、モデル群と比較して、フリバンセリン及びフィナステリド投薬群のマウスの毛髪がいずれも程度の差こそあれ回復し、且つ対照群及び完全ブランク群における毛成長状況に近いことを示している。フリバンセリン群の動物の毛髪回復有効率は85.7%に達し、フィナステリド群は71.4%に達した。モデル群と比較して、HE組織切片の染色は、フリバンセリン群の毛髪の長さが増加し、成長期と休止期との比が増加し、マウスの表皮と真皮の厚さの比が増加し、単位面積内の毛包数が増加し、毛包の直径が増加することを示している。従って、今回の結果は、フリバンセリンは、アンドロゲンが介在するアンドロゲン性脱毛症障害を改善することができ、アンドロゲン性脱毛症を治療して毛髪の成長を回復することができることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1はジヒドロテストステロン刺激による前立腺ガン細胞Lncap細胞の増殖の抑制を示す図である。
【
図2】
図2はフリバンセリンのAGAモデルマウスにおける毛髪長の統計図である。
【
図3】
図3はフリバンセリンのAGAモデルマウスにおける毛髪再生率のヒストグラムである。
【
図4】
図4はフリバンセリンのAGAモデルマウスに対する毛包の成長期と休止期との比を示すヒストグラムである。
【
図5】
図5はフリバンセリンのAGAモデルマウスに対する真皮層と表皮層の厚さの比を示すヒストグラムである。
【
図6】
図6はフリバンセリンのAGAモデルマウスにおける単位面積当たりの毛包数を示す統計ヒストグラムである。
【
図7】
図7はフリバンセリンのAGAモデルマウスにおける毛包の直径を示す統計ヒストグラムである。
【
図8】
図8はフリバンセリンのAGAモデルマウスに対する毛髪回復図である。
【
図9】
図9はフリバンセリンがアンドロゲン受容体二量体の核への侵入を抑制する核質分離タンパク質マップである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例1
細胞関連実験に関わる試薬及び細胞については、ジヒドロテストステロン、ロット番号:CHB16A802100Gである。DMSO、ロット番号:#RNBK5094であり、フリバンセリン、ロット番号:W16O8Z45834であり、5mgのフリバンセリンを1.28mLのDMSOに溶解して、濃度10000uMの母液を調製した。Lncap細胞系はヒト前立腺ガン細胞系であり、廈門逸漠生物科技有限公司から購入し、サンプル番号:20210106-06であり、バイオセーフティーレベル:BSL-1であり、類上皮が接着成長し、単細胞及び緩く接着した細胞クラスタである。培養条件はRPMI Medium 1640(Invitrogen、11875093)88ml+FBS(Gibco)10ml+Glutamax(Invitrogen、35050)1ml+Sodium Pyruvate 100mM Solution(Invitrogen、11360070)1mlであり、該細胞はジヒドロテストステロン(成長を調節して酸性ホスファターゼACPを生成する)に応答する。
【0014】
ジヒドロテストステロンをDMSOに溶解して、0.01mol/Lの母液を調製し、培地で順に10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10Mの濃度勾配になるように希釈して、接着したLncap細胞に加えて、48h、72h、96h培養し、MTTでLncap細胞の増殖を測定し、RT-PCRと組み合わせて異なる濃度における下流遺伝子KLK3、KLK2の応答を調べ、増殖促進効果が最も明らかであり且つ下流遺伝子の応答に最も著しく対応するジヒドロテストステロンの濃度10-9MをLncap細胞の最適なアンドロゲンによるモデリング濃度とした。アンドロゲンによるモデリング後のLncap細胞に異なる濃度勾配の薬物10-3uM、10-1uM、1uM、10uM、50uM、100uMを加えてそれぞれ24h、48h、96h共培養して、MTT法によりフリバンセリンのLncap細胞の増殖に対する抑制率を測定した。結果は、低濃度のフリバンセリンがLncap細胞の増殖を抑制できることを示しており、細胞レベルの薬力学的活性を示している。
【0015】
この実験の結果をExcelソフトウェアで処理した実験結果を
図1と以下の表に示す。
【0016】
表1 異なる濃度のDHTはLncap細胞の増殖を48h促進する
【0017】
実験結果は、異なる濃度のDHTのLncap細胞の増殖に対する促進状況が異なり、10-9uMのDHTのLncap細胞の増殖に対する促進が最も明確であることを示している。従って、この濃度を薬物モデリングの最適な濃度として選択した。
【0018】
表2 異なる濃度のFibanserinはLncap細胞の増殖を48h抑制する
【0019】
実験結果は、10-9MのDHTでモデリングし、異なる濃度のフリバンセリンを添加した後、フリバンセリン濃度の上昇とともにLncap細胞の増殖に対する抑制が向上することを示している。従って、細胞レベルでは、フリバンセリンは薬力学的活性を有している。
【0020】
実施例2
動物実験に関連する試薬については、プロピオン酸テストステロン、ロット番号:T818615である。ダイズ油、ロット番号:A23GS146219である。80mgのプロピオン酸テストステロンを40mLのダイズ油に溶解して、2mg/mLの溶液を調製した。フィナステリド、ロット番号:A16GS145548である。0.28mgのフィナステリドを20mLの生理食塩水に溶解して、1.4X10-2mg/mLの溶液を調製し、フリバンセリン、ロット番号:W16O8Z45834であり、0.32mgのフリバンセリンを20mLの生理食塩水に溶解して、1.6X10-2mg/mLの溶液を調製した。
【0021】
試験動物は雄性C58BL/6マウスであり、非近交系閉鎖群、体重18~22g、5週齢、合格証番号:No.202207119であり、揚州大学比較医学センターにより提供された。実験室は室温20~22℃、相対湿度40%~60%であり、換気扇で換気し、自然光源12h/日であり、ケージで飼育し、各ケージに7匹飼育し、2日間おきにケージを1回清掃した。
【0022】
プロピオン酸テストステロンを注射してモデリングする前に、まずマウスを固定して、電動バリカンでマウスの背部の毛を刈って、更に脱毛クリームで絨毛を除去する前処理を行った。7匹/ケージで群分けして、完全ブランク群(脱毛以外の処理を何もしない)、対照群(ダイズ油を0.2mL注射した+胃内に生理食塩水を0.1mL注入した)、モデル群(プロピオン酸テストステロン溶液を0.2mL注射した+胃内に生理食塩水を0.1mL注入した)、モデル群+フィナステリド(プロピオン酸テストステロン溶液を0.2mL注射した+胃内にフィナステリド溶液を0.1mL注入した)、モデル群+フリバンセリン(プロピオン酸テストステロン溶液を0.2mL注射した+胃内にフリバンセリン溶液を0.1mL注入した)に分け、胃内注入を行う前に、まずプロピオン酸テストステロン溶液を注射して21日間モデリングし、マウスの背部の毛の成長状況を観察することでモデリング成功率を判断した。モデリングに成功した後、プロピオン酸テストステロン溶液を注射し続ける上で胃内投薬処理を行い、4週間投薬した。投薬が終了した後、薬物の有効率(毛髪が回復したマウスとマウスの総数との比の百分率)を計算し、マウスの毛生え部位の面積と脱毛部位の面積との比を計算し、マウスの背部における毛髪が回復した異なる部位の複数点からマウスの毛髪を取って長さの測定及び計算を行い、頚椎脱臼してマウスを屠殺し、その背部の皮膚を取って、一部を-80℃で凍結保存してタンパク質を抽出して核質分離実験を行って薬物のアンドロゲン受容体二量体の核への侵入に対する抑制状況を調べるために用いた。一部を商品番号:AF030の4%のパラホルムアルデヒドで48h固定した後、組織切片を行って、HE染色をし、顕微鏡下でマウスの背部の皮膚の単位面積内の毛包数、毛乳頭の直径、毛包の成長期と休止期との比を計算し、モデル群、完全ブランク群、対照群及び陽性薬フィナステリドと比較して、フリバンセリンの薬効を計算した。判断基準については、マウスの脱毛後の背部の脱毛面積を測定してAとして記し、投薬が終了した後のマウスの背部の毛生え面積をBとして記し、各群におけるA/Bの数値の平均値を取って動物の毛髪回復有効率とした。
【0023】
結果は、フリバンセリン及びフィナステリド投薬群のマウスは、モデル群と比較して、程度の差こそあれ毛髪が回復し、且つ対照群及び完全ブランク群における毛成長状況に近いことを示している(
図2)。フリバンセリン群の動物の毛髪回復有効率は85.7%に達し、フィナステリド群は71.4%に達した(
図3)。モデル群と比較して、HE組織切片の染色は、フリバンセリン群の毛髪の長さが増加し、成長期と休止期との比が増加し、マウスの表皮と真皮の厚さの比が増加し、単位面積内の毛包数が増加し、毛包の直径が増加することを示している(
図4~
図7)。従って、今回の結果は、フリバンセリンが、アンドロゲンが介在するアンドロゲン性脱毛症障害を改善することができ、アンドロゲン性脱毛症を治療して毛髪の成長を回復することができることを示している(
図8)。
【0024】
表3 対照群、フィナステリド及びフリバンセリンにおける動物の有効率
【0025】
実施例3
酵素消化法によりマウスの毛乳頭初代細胞を抽出した。培養条件は、L-DMEM(凱基生物)88ml+FBS(森貝伽生物)10ml+Glutamax(Invitrogen、35050)1ml 1mlであり、10日間培養し、初代細胞がT25培養フラスコを満たすまで増殖して継代した。一部をフローサイトメトリー実験に用いて細胞表面マーカーの同定を行った。同定結果は、CD56、CD133、CD140aが陽性、CD73、CD90が陰性であり、毛乳頭細胞であることが判明した。細胞を12ウェルプレートに接種し、それぞれブランク群、DHT群(10-8mol/L)、DHT(10-8mol/L)+フィナステリド群(5umol/L)、DHT(10-8mol/L)+高投薬量のフリバンセリン(5umol/L)、DHT(10-8mol/L)+低投薬量のフリバンセリン群(1umol/L)に応じて投薬処理を行い、48h後に、碧雲天製の核タンパク質及び細胞質タンパク質の分離キットを利用して説明書に従って核質分離実験を行い、分離された核タンパク質及び細胞質タンパク質それぞれに対してSDS-PAGEゲル電気泳動を行った。
【0026】
実験結果は、H3が核タンパク質の内部標準であり、β-Tublinが細胞質タンパク質の内部標準であることを示している。タンパク質マップから、核タンパク質群にはH3タンパク質のみがあり、細胞質タンパク質群にはβ-Tublinタンパク質のみがあり、核質分離実験に成功したことがわかる。ブランク群と比較して、DHT群は、アンドロゲン受容体の発現が増加した。DHT群と比較して、フィナステリド群及び2種類の投薬量のフリバンセリン群は、アンドロゲン受容体の含有量に有意な差はなく、フィナステリド及びフリバンセリンがアンドロゲン受容体の総量を変化させないことを示している。しかしながら、フリバンセリン群の2種類の投薬量の細胞核内のアンドロゲン受容体の含有量は、フィナステリド群及びDHT群と比較して、いずれも減少した。細胞質内の含有量はいずれも相対的に増加しており、フリバンセリンがアンドロゲン受容体の核への侵入を抑制できることを示している(
図9)。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンドロゲン性脱毛症の治療薬物の調製におけるフリバンセリンの使用。
【請求項2】
フリバンセリンは、毛髪の長さ、成長期と休止期との比、表皮と真皮の厚さの比、単位面積内の毛包数及び毛包の直径を増加させることができることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
フリバンセリンは、アンドロゲンが介在するアンドロゲン性脱毛症障害を改善し、アンドロゲン性脱毛症を治療し、毛髪成長を回復する薬物の調製における使用であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
アンドロゲン受容体二量体を抑制し、それが細胞核に入ることを阻止する薬物の調製におけるフリバンセリンの使用。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンドロゲン性脱毛症の治療薬物の調製におけるフリバンセリンの使用。
【請求項2】
フリバンセリンは、毛髪の長さ、成長期と休止期との比、表皮と真皮の厚さの比、単位面積内の毛包数及び毛包の直径を増加させることができることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
フリバンセリンは、アンドロゲンが介在するアンドロゲン性脱毛症障害を改善し、アンドロゲン性脱毛症を治療し、毛髪成長を回復する薬物の調製における使用であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【国際調査報告】