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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ラベキシモド化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20241210BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
A61P29/00 101
A61K31/4985
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534019
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2022085060
(87)【国際公開番号】W WO2023104998
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21213418.3
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522473391
【氏名又は名称】シクソン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ダルビー ブラウン,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ピンクステレン,ローレンス アドリアヌス ヘンドリクス
(72)【発明者】
【氏名】スティーンダム,リエンク エリバート
(72)【発明者】
【氏名】ニッベ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ベルト―ルド,マリン イングリッド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZB15
(57)【要約】
本発明は、ラベキシモドのHCl塩、メタンスルホン酸塩及びマロン酸塩から選択されるラベキシモド化合物に関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物のHCl塩、メタンスルホン酸(メシル酸塩)塩及びマロン酸塩からなる群から選択される化合物。
【化1】
【請求項2】
前記化合物が、固体形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、結晶形態である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が、ラベキシモドと、HCl、マロン酸及びメタンスルホン酸から選択される酸との反応によって得られる塩からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、結晶形態のHCl塩であり、好ましくは、以下のXRPDピークを特徴とする結晶形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【表1】
【請求項6】
前記化合物が、結晶形態のメタンスルホン酸塩であり、好ましくは、以下のXRPDピークを特徴とする結晶形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【表2】
【請求項7】
前記化合物が、結晶形態のマロン酸塩であり、好ましくは、以下のXRPDピークを特徴とする結晶形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【表3】
【請求項8】
前記化合物が、塩であり、前記塩は、
a)固体、懸濁液または溶液としてのラベキシモドの前記遊離塩基に、HCl、メタンスルホン酸またはマロン酸を懸濁液または溶液として添加し、対応する塩の溶液または懸濁液を提供すること、
b)冷却、溶媒の蒸発、抗溶媒の添加もしくは抗溶媒への添加によって、または共結晶化剤の添加によってなど、沈殿または結晶化によって前記塩を固体として得、その後、濾過または遠心分離し、必要に応じて前記塩を精製すること、を含むプロセスによって得ることができる、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、本明細書の実験セクションに記載されるプロセスによって得ることができる塩である、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、室温で少なくとも5mg/ml、例えば5~15mg/mlの水への溶解度を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物、及び任意に薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項12】
関節リウマチ、好ましくは中等度の関節リウマチ、重度の関節リウマチ、または中等度から重度の関節リウマチに罹患している、またはそれと診断されている哺乳動物、例えばヒト患者を治療する方法に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
関節リウマチ、好ましくは中等度の関節リウマチ、重度の関節リウマチ、または中等度から重度の関節リウマチに罹患している、またはそれと診断されている、ヒトなどの哺乳動物を治療する方法であって、前記関節リウマチを治療するのに有効な量の請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物を前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なラベキシモド化合物に関する。さらに、本発明は、本発明のラベキシモド化合物を含む医薬組成物に関する。ラベキシモドの塩酸塩(HCl)、メタンスルホン酸塩及びマロン酸塩から選択されるラベキシモド化合物は、例えば、関節リウマチに罹患しているかまたは関節リウマチと診断されている、ヒトなどの哺乳動物の治療に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
INN「ラベキシモド」で知られる化合物は、IUPAC名が、9-クロロ-2,3-ジメチル-6-(N,N-ジメチルアミノエチルアミノ-2-オキソエチル)-6H-インドロ-[2,3-b]キノキサリンであり、次の分子構造を有する。
【化1】
【0003】
化合物ラベキシモドは、欧州特許出願公開第EP1756111A1号及びその米国対応特許第US2005/288296号に記載されている。これらの特許公報では、ラベキシモドの調製は、化合物Eとして具体的に説明されている。説明されているプロセスは、小規模プロセスであり、ラベキシモドを遊離塩基の形で生成される。遊離塩基としてのラベキシモドは、非常に安定した化合物であり、室温では水にほぼ不溶性である。EP1756111及びUS2005/288296では、関節リウマチ及び多発性硬化症の動物モデルにおけるラベキシモド(化合物E)の初期試験について説明している。未公開の国際出願第PCT/EP2021/065697号は、ラベキシモド(遊離塩基)の経口投与によるヒトRA患者の治療を開示している。未公開の国際出願第PCT/EP2021/065693号には、ラベキシモド(遊離塩基)の急性呼吸器症候群、特にインフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、フィロウイルス、アレナウイルス、及びコロナウイルスなどの病原性感染に関連する急性呼吸器症候群の治療への使用が記載されている。
【0004】
臨床診療でのこれらの(及びその他の)治療用途におけるラベキシモドの潜在能力を十分に活用するためには、高い(相対的)バイオアベイラビリティ、低いピークアンドスルー変動、及び/または低い患者間変動などのより好ましい薬物動態(「PK」)特性と、優れた製造性、剤形、及び安定性の特性とを組み合わせたラベキシモド化合物を開発することが望ましい。製造性が良好であるということは、通常は、化合物が高純度で大規模かつ経済的に実行可能な方法で容易に得られることを意味する。剤形の観点からは、化合物は、固形経口剤形などの所望の剤形(複数可)に容易に加工できることが求められ、例えば、高齢患者または酸素投与患者など、固形経口剤形を飲み込むことが困難な(またはできない)患者の亜群を念頭に置いた、他のタイプの製剤にも加工できることが求められる。もちろん、薬剤化合物は、(バルクの)薬剤化合物としても完成薬剤製品としても、保管時に十分な化学的及び/または物理化学的安定性を備え、賦形剤と適合性がある必要がある。
【0005】
実際には、このような目的を両立させることは非常に難しいことが多く、優れたPK特性と最適な剤形、製造性、安定性の特性を兼ね備えた薬剤化合物を開発するための単純なアプローチは存在しない。
【0006】
本発明の目的は、ラベキシモド遊離塩基よりも優れたPK、剤形、製造性及び/または安定性の特性を有し、総合的に、臨床診療での実際の使用に好ましい候補となる新しいラベキシモド化合物を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、前記目的を満たす新規ラベキシモド化合物を提供する。より具体的には、本発明は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びマロン酸塩からなる群から選択される塩の形態のラベキシモドを提供する。
【0008】
実施例に示されているように、本発明のラベキシモド化合物は、同等の投与量でAUCの増加に反映されるように、マウスにおける(経口)バイオアベイラビリティが大幅に改善されていることがわかった。さらに、本発明のラベキシモド化合物は、(単回)経口投与により、血漿濃度がより緩やかに低下することを特徴とする、より好ましい血漿プロファイルを生成することがわかった。
【0009】
さらに、本発明のラベキシモド化合物は、遊離塩基よりも水溶性がかなり高い(<0.005mg/ml)。同時に、本発明のラベキシモド化合物は、吸湿性が低く、変化する湿度条件に暴露されても安定した状態を保つ。
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、式(I)の化合物のHCl塩、メタンスルホン酸(メシル酸塩)塩及びマロン酸塩からなる群から選択される化合物に関する。
【化2】
【0011】
一実施形態では、化合物は、HCl塩である。
【0012】
さらなる実施形態では、化合物は、メタンスルホン酸塩である。
【0013】
さらに別の実施形態では、化合物は、マロン酸塩である。
【0014】
さらなる実施形態では、本発明の化合物は固体形態、好ましくは結晶形態であり、特に、塩は多形形態である。
【0015】
さらなる実施形態では、化合物は、遊離塩基としてのラベキシモドと、HCl、マロン酸及びメタンスルホン酸から選択される酸との反応によって得ることのできる塩から選択される。
【0016】
一実施形態では、化合物は、固体及び/または非解離形態、すなわち非晶質形態または結晶形態である。別の実施形態では、化合物は、溶解及び/または解離した形態である。さらなる実施形態では、化合物は、結晶形態である。さらに別の実施形態では、化合物は、水和形態である。
【0017】
さらなる実施形態では、化合物は、遊離塩基としてのラベキシモドと、HCl、マロン酸及びメタンスルホン酸から選択される酸との反応によって得ることのできる塩から選択される。
【0018】
特定の実施形態では、化合物は、結晶形態のHCl塩であり、より好ましくは、以下のXRPDピークを特徴とする結晶形態のHCl塩である:
【表1】
【0019】
別の特定の実施形態では、化合物は、結晶形態のメタンスルホン酸塩であり、より好ましくは、以下のXRPDピークを特徴とする結晶形態のメタンスルホン酸塩である:
【表2】
【0020】
さらなる特定の実施形態では、化合物は、結晶形態のマロン酸塩であり、より好ましくは、以下のXRPDピークを特徴とする結晶形態のマロン酸塩である:
【表3】
【0021】
さらに別の実施形態では、化合物は、
a)液体または溶媒中で、HCl、メタンスルホン酸またはマロン酸をラベキシモド遊離塩基と混合して、対応する塩の溶液または懸濁液を生成することと、
b)冷却、溶媒の蒸発、抗溶媒の添加もしくは抗溶媒への添加によって、または共結晶化剤の添加によってなど、沈殿または結晶化によって塩を固体として得、その後、濾過または遠心分離し、必要に応じて記塩を精製することと、を含むプロセスによって得ることができる。通常、塩は、本明細書の実験セクションに記載されているプロセスによって得ることができる。
【0022】
本発明の各化合物は、室温で0.3mg/ml超の水への溶解度を有する。一部の化合物は、室温で少なくとも5mg/ml、例えば5~15mg/mlの水への溶解度を有する。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、本発明の化合物、例えば上記の実施形態のいずれか1つによる化合物を含む組成物に関する。さらなる実施形態では、前記組成物は、例えば、組成物が、バルク粉末、顆粒、または固体の完成剤形である場合、固体及び/または非解離形態の化合物を含む。さらなる実施形態では、前記組成物は、例えば、組成物が、液体の完成剤形である場合、または固体剤形などの製造において形成及び/または使用される水溶液である場合、溶解及び/または解離した形態の塩を含む。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、本発明の化合物、例えば上記の実施形態のいずれか1つに記載の化合物、及び任意に薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物に関する。
【0025】
さらに別の態様では、本発明は、関節リウマチ、好ましくは中等度の関節リウマチ、重度の関節リウマチ、または中等度から重度の関節リウマチに罹患している、またはそれと診断されているヒト対象、または病原性感染に関連する可能性のある急性呼吸器症候群に罹患しているヒト対象など、治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒト対象を治療する方法に使用するための、上記の実施形態のいずれか1つに記載の化合物などの本発明の化合物に関する。さらに別の態様では、本発明は、関節リウマチ、好ましくは中等度の関節リウマチ、重度の関節リウマチ、または中等度から重度の関節リウマチを治療する方法に使用するため、または治療を必要とするヒト対象などの哺乳動物における病原性感染に関連する可能性のある急性呼吸器症候群を治療するための、上記の実施形態のいずれか1つに記載の化合物などの本発明の化合物に関する。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、関節リウマチ、好ましくは中等度の関節リウマチ、重度の関節リウマチ、または中等度から重度の関節リウマチに罹患している、またはそれと診断されているヒト対象などの、治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒト対象を治療する方法に関し、この方法は、上記の実施形態のいずれか1つに記載の塩などの本発明の化合物を、哺乳動物に投与することを含む。さらに別の態様では、本発明は、関節リウマチ、好ましくは中等度の関節リウマチ、重度の関節リウマチ、または中等度から重度の関節リウマチを治療する方法、またはヒト対象における病原性感染に関連する可能性のある急性呼吸器症候群を治療する方法に関し、この方法は、上記の実施形態のいずれか1つに記載の塩などの本発明の化合物を、哺乳動物に投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本出願全体を通じて、「ラベキシモド」、「ラベキシモド」及び「9-クロロ-2,3-ジメチル-6-(N,N-ジメチルアミノエチルアミノ-2-オキソエチル)-6H-インドロ-[2,3-b]キノキサリン」という用語は、互換的に使用され得、特定の状況下で別途示されるかまたは暗示されない限り、任意の固体形態または液体形態の化合物を意味する。
【0028】
ラベキシモドは、EP1756111A1及びUS2005/288296に記載されているプロセスから取得し、その後精製及び単離することができる。さらに、結晶形態としてのラベキシモド遊離塩基は、欧州特許出願第20179279.3号(未公開)に記載されているように得ることができる。
【0029】
ラベキシモドのいくつかのHCl、Mao、及びMes塩が結晶化され、ラベキシモド遊離塩基と比較して物理化学的特性が改善された新しい塩形態が得られた。これらのラベキシモド化合物は、実験セクションで説明した実験で例証されるように、溶解性、結晶性、物理的安定性、熱挙動、加工性、及び水和特性に関して非常に有利な特性の組み合わせを備えている。
【0030】
本明細書において使用される場合、「対イオン」という用語は、プロトン化されたラベキシモド遊離塩基と塩を形成する酸性対イオンを意味する。本明細書でラベキシモド塩について説明する場合、対イオンを識別する3文字のコードを使用して示され得る。以下の表には、ここの文献で使用されている特定の3文字コードがリストされ、定義されている。3文字コードの使用により、ラベキシモドの塩が識別され、例えば、ラベキシモドの塩酸塩は、コードHClで示される。HClなどのラベキシモド塩の説明には、固体、非晶質、溶解、または多形などのあらゆる形態の塩が含まれる。
【0031】
上述のように、本明細書に開示される組成物、特に医薬組成物は、本明細書に開示される化合物に加えて、少なくとも1つの薬学的に許容される補助剤、希釈剤、賦形剤及び/または担体をさらに含み得る。このような薬学的に許容される補助剤、希釈剤、賦形剤及び/または担体は、限定されないが、オレイン酸、Tween80、カルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選択され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1~99重量%の前記少なくとも1つの薬学的に許容される補助剤、希釈剤、賦形剤及び/または担体、及び1~99重量%の本明細書に開示される式Iの化合物を含む。有効成分と薬学的に許容される補助剤、希釈剤、賦形剤及び/または担体との合計量は、組成物、特に医薬組成物の重量の100%(100%w/w)を超えてはならない。
【0033】
本発明のさまざまな態様によれば、組成物は、好ましくは単位剤形の形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象のための単位投薬量として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位は、任意の好適な薬学的担体(複数可)及びまたは賦形剤(複数可)に関連して、所望の治療効果を生み出すように算出された、既定量の活性物質を含有する。例示的、非限定的な単位剤形としては、錠剤(例えば、チュアブル錠剤)、カプレット、カプセル(例えば、ハードカプセルまたはソフトカプセル)などが挙げられる。本発明の好ましい実施形態によれば、単位剤形は、経口投与に好適な単位剤形である。最も好ましくは、錠剤またはカプセルなどの固体単位剤形であり、最も好ましくは、本明細書の他の箇所で定義される粉末が充填された標準ゼラチンカプセルなどのカプセルである。
【0034】
本発明の他の実施形態では、本ラベキシモド化合物は、液体経口剤形の形態で提供され得る。液体経口剤形は、嚥下が困難な患者にとって好ましい、または必須の経口剤形である。液体経口剤形には、放出、生物学的利用能、安定性、及び味の要件を満たす、安定、溶解、または懸濁の形態の薬剤を必要とする。
【0035】
本発明の他の実施形態では、本ラベキシモド化合物は、静脈内注射または点滴による投与などの非経口投与に好適な滅菌液の形態で提供され得る。このような非経口製剤は、重度の呼吸器疾患を患っている患者、例えば、挿管され人工的に昏睡状態に保たれている患者にとって好ましいまたは必要な投与形態であり得る。減菌非経口剤形には、放出、生物学的利用能、及び安定性の要件を満たす、安定、溶解、または懸濁の形態の薬剤を必要とする。
【0036】
当該技術分野における平均的な技能を有する者であれば、本教示に基づき、また、その全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Meade Publishing Co.,Easton,Pa.,20th Ed.,2000)などの教科書に反映されている技術常識に依拠して、好適な製剤を考案し開発することができる。
【0037】
広義には、本発明は、治療を必要とする対象を治療する方法にも関し、前記治療は、本発明のラベキシモド化合物、好ましくは本明細書で定義される前記ラベキシモド化合物を含む組成物、製剤または単位剤形を前記対象に投与することを含む。本発明の好ましい実施形態では、治療される対象はヒト対象であり、好ましくはヒトである。
【0038】
第一の実施形態では、本発明はまた、関節リウマチまたは関連症状に罹患している及び/またはそれと診断された対象を治療する方法に関し、この方法は、本発明のラベキシモド化合物の投与を含む。
【0039】
さらなる実施形態では、本発明はまた、任意に、コロナウイルス感染症などの病原性感染症に関する、急性呼吸器症候群に罹患している対象を治療する方法に関し、この方法は、本発明のラベキシモド化合物の投与を含む。
【0040】
本明細書で使用される「治療」及び「治療すること」という用語は、疾患または障害など、状態と闘う目的のための患者の管理及びケアを指す。この用語は、疾患、障害または状態の進行を遅らせるため、症状または合併症を緩和または軽減させるため、及び/または、疾患、障害または状態を治療または除去するため、ならびに、状態を予防するために、症状または合併症を緩和するための活性化合物の投与など、患者が罹患する所与の状態のための全範囲の治療を含むことを意図しており、予防とは、疾患、状態または障害と戦うことを目的とした患者の管理及びケアを指すものと理解され、症状または合併症の発病を予防するための活性化合物の投与を含む。治療は、急性または慢性のいずれかの方法で行うことができる。治療対象となる患者は、好ましくは哺乳動物、特に、ヒトであるが、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタなどの動物も含み得る。
【0041】
本発明の化合物を製造するためのプロセスの具体的な実施形態は、本明細書の実験セクションに記載されており、各個別のプロセス及び各出発物質は、実施形態の一部を形成し得る実施形態を構成する。
【0042】
本明細書で使用される「及び/または」という用語は、両方の選択肢だけでなく、それぞれの選択肢を個別に意味することを意図している。例えば、「xxx及び/またはyyy」という表現は、「xxx及びyyy」、「xxx」、または「yyy」を意味し、3つの選択肢は全て個別の実施形態に従う。
【0043】
本明細書で使用される「薬学的に許容される添加剤」には、ラベキシモドを製剤化して医薬組成物を製造する際に当業者が使用することを検討する担体、賦形剤、希釈剤、補助剤、着色剤、香料、防腐剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の組成物に使用され得る補助剤、希釈剤、賦形剤及び/または担体は、ラベキシモド及び医薬組成物の他の成分と適合性があり、その受容者に対して有害でないという意味で、薬学的に許容されるものである必要がある。組成物には、アレルギー反応などの有害反応を引き起こす可能性のある物質が含まれていないことが望ましい。本発明の医薬組成物に使用できる補助剤、希釈剤、賦形剤及び担体は、当業者には周知である。
【0045】
特に明記しない限り、本明細書で提供される全ての正確な値は、対応する近似値を表す(例えば、特定の要因または測定値に関して提供される全ての正確な例示的な値は、適切な場合は「約」で修正された、対応する近似測定値も提供すると見なすことができる)。
【0046】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別様が示されない限り、または文脈によって別様が明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。
【0047】
本明細書内に提供される任意及び全ての実施例、または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図しており、別段の指示がない限り、本発明の範囲に対して制限を課すものではない。いかなる本明細書の表現も、明確にそのように述べられていない限り、いかなる要素も本発明の実践に必須であるとして示すものとして解釈されるべきではない。
【0048】
本明細書における特許文献の引用及び組み込みは便宜上のみ行われ、当該特許文献の有効性、特許性及び/または執行可能性についてのいかなる見解も反映するものではない。
【0049】
本明細書において、一要素または複数の要素に関して「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」または「含有する」などの用語を使用する、本発明のいかなる態様または実施形態も、特に明記されていない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、その特定の要素「からなる」、「本質的にからなる」または「実質的に含む」本発明の同様の態様または実施形態を支持することを意図している(例えば、本明細書で特定の要素を含むと説明されている組成物は、特に明記されていない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、その要素からなる組成物も説明していると理解されるべきである)。
【0050】
本発明は、最大限に適用法によって許可されるように、本明細書に提示される態様及び特許請求の範囲で列挙される主題の全ての修正及び等価物を含む。
【0051】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、保護の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。前述の説明及び以下の実施例で開示された特徴は、個別にも、またそれらの任意の組み合わせでも、本発明をさまざまな形で実現するための材料となり得る。
【0052】
上記実施形態は、実施形態が本発明の特定の態様または複数の態様に関連すると明記されていない限り、本明細書に記載の態様(「治療方法」、「医薬組成物」、「薬剤として使用するための化合物」、または「方法に使用するための化合物」など)のいずれか、ならびに本明細書に記載の実施形態のいずれかを指すものとみなされるべきである。
【0053】
本明細書で引用される出願公開、特許出願、特許を含む全ての参考文献は、各々の参考文献が参照によって個々に且つ具体的に組み込まれるものと示される、その全体が本明細書で示されているのと同じ程度に参照によって本明細書に組み込まれる。
【0054】
ここで使用されている全ての見出し及び副見出しは便宜上のみ使用されており、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0055】
それらの全ての可能な変形における、上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別様が示されない限り、または文脈によって別様が明らかに矛盾しない限り、本発明によって包括される。
【0056】
本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別様が示されない限り、単に、範囲内に収まるそれぞれの別個の値を個々に指す速記方法としての役割を果たすことが意図され、それぞれの別個の値は、本明細書に個々に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。特に明記しない限り、本明細書で提供される全ての正確な値は、対応する近似値を表す(例えば、特定の要因または測定値に関して提供される全ての正確な例示的な値は、適切な場合は「約」で修正された、対応する近似測定値も提供すると見なすことができる)。
【0057】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別様が示されない限り、または文脈によって別様が明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。
【0058】
本明細書内に提供される任意及び全ての実施例、または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図しており、別段の指示がない限り、本発明の範囲に対して制限を課すものではない。いかなる本明細書の表現も、明確にそのように述べられていない限り、いかなる要素も本発明の実践に必須であるとして示すものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】調製された結晶性HCl塩形態のXRPD回折図を示している。
図2】調製された結晶性Mao塩形態のXRPD回折図を示している。
図3】調製された結晶性Mes塩形態のXRPD回折図を示している。
図4】メタンスルホン酸塩の結晶化実験に適用された温度プロファイルを示している。温度は、0.17℃/分の速度で、5~50℃で変化させた。初期温度及び最終温度は、25℃であった。
図5】塩酸塩及びマロン酸塩の結晶化実験に適用された温度プロファイルを示している。温度は、0.17℃/分の速度で、5~50℃で変化させた。初期温度及び最終温度は、25℃であった。
図6】Mes塩(実験ID:TCS35)の25~300℃(加熱速度10℃/分)間のTGMS分析を示している。25~220℃で、4.9%の質量損失が測定された。
図7】Mes塩(実験ID:TCS35)の25~300℃(加熱速度10℃/分)間のDSCトレースを示している。室温~110℃の吸熱現象は、水分の損失に起因し得る。APIの融解は、257℃での急激な吸熱反応に関連し得る。
図8】Mes塩(実験ID:TCS35)のLCMSクロマトグラムを示している。APIの保持時間は1.66分であった。MSスペクトルにより、化合物の分子量は、409.9g/mol、[M+H]+イオンは、m/z410.3であることが確認された。
図9】Mes塩(実験ID:TCS35、上)、及び遊離塩基(SM、上)の、DMSO-dで測定したH-NMRスペクトルを示す。ラベキシモドに加えて、水(3.4ppm)、DMSO(2.5ppm)、及びメタンスルホン酸(CHが2.53ppm、OHが9.3ppm)の信号が検出された。
図10】Mes塩(実験ID:TCS35)の13C-NMR-APTスペクトルを示しており、DMSO-dで測定した。CH及びCH基は、正の信号であるが、CH及び第四級炭素は、負の信号である。APIに加えて、メタンスルホン酸及びDMSOの信号が存在する。
図11A】Mes塩(実験ID:TCS35)の水分吸着速度論(A)及び等温線(B)のプロットを示しており、第1の吸着サイクルは、40%RH~95%RH、続いて脱着が95%RH~0%RH、0%RH~40%RHまで10%RHずつ吸着し、最小段階時間は10分、最大段階時間は6時間であった。
図11B】Mes塩(実験ID:TCS35)の水分吸着速度論(A)及び等温線(B)のプロットを示しており、第1の吸着サイクルは、40%RH~95%RH、続いて脱着が95%RH~0%RH、0%RH~40%RHまで10%RHずつ吸着し、最小段階時間は10分、最大段階時間は6時間であった。
図12】HCl塩(実験ID:TCS160)の25~300℃(加熱速度10℃/分)間のTGMS分析を示している。約0.3%の質量損失が、約25~80℃の間で記録された。285℃での吸熱現象は、おそらく融解を意味する。
図13】HCl塩(実験ID:TCS160)の25~300℃(加熱速度10℃/分)間のDSCトレースを示している。APIの融解は、294℃での急激な吸熱反応に関連し得る。
図14】HCl塩(実験ID:TCS160)のH-NMRスペクトルを示している。APIに加えて、DMSO-d、2-プロパノール及びTMSの信号が検出された。
図15A】HCl塩(実験ID:TCS160)の水分吸着速度論(A)及び等温線(B)のプロットを示しており、第1の吸着サイクルは、40%RH~95%RH、続いて脱着が95%RH~0%RH、0%RH~40%RHまで10%RHずつ吸着し、最小段階時間は10分、最大段階時間は6時間であった。
図15B】HCl塩(実験ID:TCS160)の水分吸着速度論(A)及び等温線(B)のプロットを示しており、第1の吸着サイクルは、40%RH~95%RH、続いて脱着が95%RH~0%RH、0%RH~40%RHまで10%RHずつ吸着し、最小段階時間は10分、最大段階時間は6時間であった。
図16】雄CD1マウス(n=3/時点)に3.00mg/kgの公称用量で静脈内投与した後の、ラベキシモド及びラベキシモド塩の平均(±SD)血漿濃度対時間プロファイルを示している。
図17】雄CD1マウス(n=3/時点)に30.00mg/kgの公称用量で経口投与した後の、ラベキシモド及びラベキシモド塩の平均(±SD)血漿濃度対時間プロファイルを示している。
【実施例
【0060】
一般的実験情報
一般的な略語
H-NMR プロトン核磁気共鳴
13C-NMR 炭素-13核磁気共鳴
AAC 加速老化条件(40℃及び75%RH)
Am 非晶質
APT アタッチドプロトンテスト
API 活性薬学的成分
DSC 示差走査熱量測定
GEN 非晶質実現可能性テストの実験ID
HR-XRPD 高解像度X線粉末回折
HT-XRPD 高スループットX線粉末回折
LCMS 高性能液体クロマトグラフィー/質量分析
MS 質量分析
Pc 結晶性が悪い
PAMPA 並列人工膜透過性アッセイ
PLM 偏光顕微鏡
RF 応答係数
RH 相対湿度
RT 室温
Ssm 等温条件下での塩結晶化実験の実験ID
TCS 熱サイクルを伴う塩結晶化実験の実験ID
TGMS 熱重量分析/質量分析
【0061】
化学物質
Ace アセトン
AcN アセトニトリル
EtOH エタノール
IPA イソプロパノール、2-プロパノール
MeOH メタノール
MEK メチルエチルケトン
THF テトラヒドロフラン
【0062】
分析方法
X線粉末回折
高処理XRPD装置を使用して、XRPDパターンを得た。プレートは、強度と形状の変化を補正したVÅNTEC-500ガスエリア検出器を備えたBruker General Area Detector Diffraction System(GADDS)に取り付けられた。測定精度(ピーク位置)の較正は、NIST SRM1976標準(Corundum)を使用して実行した。
【0063】
データ収集を、1.5°~41.5°の2θ領域で単色Cu Kα放射を使用して室温で行い、これはXRPDパターンの最も特徴的な部分である。各ウェルの回折パターンを、各フレームに対して90秒の曝露時間で、2つの2θ範囲(第1のフレームに対しては、1.5°≦2θ≦21.5°、及び第2のフレームに対しては、19.5°≦2θ≦41.5°)で収集した。XRPDパターンには背景差分または曲線の平滑化を適用しなかった。
【0064】
高解像度X線粉末回折測定
HR-XRPDデータを、室温で、ゲルマニウムモノクロメータを使用してCu Kα1放射線(1.54056Å)を使用してD8 Advance回折計で収集した。回折データは、範囲2~41.5°2θの範囲の2θで収集した。固体状態LynxEye検出器の検出器スキャンを、10秒/ステップのスキャン速度で、1ステップあたり0.015°を使用して実行した。試料は、外径0.5mmの、長さ8mmのガラス毛細管で測定した。
【0065】
TGA/SDTA及びTGMS分析
溶媒に因る質量損失または結晶からの水損をTGA/DSCにより判定した。TGA/DSC3+STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)で加熱中に試料の重量をモニタリングすると、重量対温度曲線及び熱流信号が得られた。TGA/DSC3+は、インジウム及びアルミニウムの試料を使用して温度校正した。試料(およそ1mg)を計量して100μLのアルミニウム製るつぼ内に入れ、密封した。ふたに針穴を開けて、るつぼを10℃/分の加熱速度で25℃から300℃にTGA内で加熱した。乾燥Nガスをパージに使用した。
【0066】
TGA試料から発生したガスを、質量分析計Omnistar GSD301T2(Pfeiffer Vacuum GmbH,Germany)により分析した。後者は四重極質量分析計であり、0~200amuの温度範囲で質量を分析する。
【0067】
DSC分析
熱イベントは、熱流束DSC3+STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)で記録された、DSCサーモグラムから取得した。DSC3+を、小さなインジウム片(m.p.=156.6℃、δHf=28.45J/g)及び亜鉛(m.p.=419.6°C;δHf=107.5J/g)を用いて、温度及びエンタルピーに関して較正した。標準的な40μLのアルミニウム製鍋内に試料(およそ1mg)を密封し、針穴を開けて、違って指定されない場合は、10℃/分の加熱速度で、25℃から300℃にDSC内で加熱した。50mL/分の流速で測定中にDSC機器をパージするために、乾燥Nガスを使用した。
【0068】
cDSC分析
サイクリングDSCは、標準の40μLアルミニウムパンで測定され、ピンホールが開けられ、DSC内で25℃からさまざまな温度に加熱され、その後25℃まで冷却した。加熱及び冷却速度は10℃/分であった。50mL/分の流速で測定中にDSC機器をパージするために、乾燥Nガスを使用した。実験後、固形物をパンから取り出し、HT-XRPDによって分析した。
【0069】
偏光顕微鏡
偏光顕微鏡写真は、Leica DM2500M光学顕微鏡で収集した。試料をスライドガラス上に載せ、乾燥固体として測定した。
【0070】
LCMS分析方法
LCパラメータ
【表4】
【0071】
化合物の完全性は、次のように、「注入ピーク」を除くクロマトグラムの各ピークの面積と合計ピーク面積から計算されたピーク面積のパーセンテージとして表される。
【数1】
【0072】
目的の化合物のピーク領域パーセンテージは、試料中の構成成分の純度の示度として利用される。
【0073】
HPLCアッセイでは、ラベキシモド(SM)の溶液を参照として測定し、TGMSによって決定された溶媒の量を考慮した後、ピーク面積を100%回収率に割り当てた。塩の試料を同じ方法で測定し、溶媒の量を考慮して回収率を再度計算した。測定された全ての塩について、<100%の回収率をAPIに割り当てることができ、残りの回収%を、対イオンに割り当てることができ、そこからAPI:対イオンの比率を決定することができた。
【0074】
H-NMR
DMSO-d中のH-NMR分光法は、化合物の完全性の特性評価と塩の化学量論の決定に使用した。スペクトルは、標準パルスシーケンスを使用して500MHz機器(Bruker BioSpin GmbH)で室温(32スキャン)で記録した。データは、ACD LabsソフトウェアSpectrus Processor2016.2.2(Advanced Chemistry Development Inc.Canada)を使用して処理した。
【0075】
13C-NMR
化合物の完全性特性評価には、DMSO-d中の13C-NMR-APT分光法を使用した。スペクトルは、標準パルスシーケンスを使用して500MHz機器(Bruker BioSpinGmbH)で室温(2048スキャン)で記録した。データは、ACD LabsソフトウェアSpectrus Processor2016.2.2(Advanced Chemistry Development Inc.Canada)を使用して処理した。
【0076】
動的蒸気吸着
さまざまな形態の固体材料の吸湿性(水分吸収)の違いにより、相対湿度の増加に対する相対的な安定性の尺度が提供される。少量試料の水分吸着等温線は、Surface Measurement Systems(London,UK)のDVS-1システムを使用して取得した。この機器は、数ミリグラムの試料での使用に適しており、精度は0.1μgである。相対湿度は、25℃の一定温度で、吸着-脱着-吸着(40-95-0-40%RH)中に変化した。ステップごとの重量平衡は、最短1時間または最長6時間、dm/dt<0.0002mg/分に設定した。その後、試料をHT-XRPDで測定した。
【0077】
吸湿性は欧州薬局方吸湿性分類に従って分類した。25℃/80%RH(24時間)での水分吸収率は次のとおりである:
・質量変化<0.2%-非吸湿性
・質量の変化>0.2%&<2%-わずかに吸湿性あり
・質量の変化>2%&<15%-中程度の吸湿性
・質量変化率>15%-非常に吸湿性がある
【0078】
ラベキシモド遊離塩基の特定の結晶形態を、「形態1」とする。形態1は、260℃で融解する無水物質であった。1H-NMR及びLCMSによって測定したところ、出発物質の化学的純度は高かった。形態1はわずかに吸湿性があり、相対湿度値0~95%に暴露されても物理的に安定したままであった。
【0079】
実施例1:本発明の化合物の調製
材料及び方法
全ての化学物質は、Fisher ScientificまたはSigma Aldrichから入手した。使用した化学物質は、少なくとも研究グレードのものである。UPLC分析に使用した溶媒は、HPLCグレードである。
【0080】
塩の形成と結晶化
それぞれに20mgのラベキシモド遊離塩基を含む、1.8mlバイアルのセットを調製した。各バイアルに、磁気撹拌棒及び選択した酸1.1当量を加えた。酸は、1Mまたは2Mの水溶液として加えた。さらに、APIのみを含む1.8mlバイアルのセットも調製した。その後、750μlの選択した溶媒を加えた。バイアルを、Crystal16(商標)並列晶析装置に移し、懸濁液を、750rpmで撹拌した。メタンスルホン酸に関する実験は、図4に示す温度プロファイルに従って行った。塩酸及びマロン酸には、わずかに異なる温度プロファイルを適用した(図5)。
【0081】
全ての混合物を25℃から50℃に加熱し、その後、混合物を50℃で1時間撹拌した。その後、温度を5℃に下げ、混合物を5℃で1時間撹拌した。もう一度加熱-冷却サイクルを適用し、混合物を再び50℃で1時間撹拌した。適用された加熱及び冷却速度は-0.17℃/分であった。使用した酸の種類に応じて、温度プログラムの最終ステップは次のようになる:
塩酸を伴う実験では、温度を50℃からすぐに25℃に設定した。25℃に到達した後、混合物を撹拌せずに25℃で3日間インキュベートした。
【0082】
温度プログラムの完了後、懸濁液を遠心分離に供し、固形物を分離させ、真空下で乾燥させ(50℃、5mbar、18時間)、HT-XRPDで分析した。懸濁液が得られなかった実験では、溶媒は完全に蒸発した。固体が形成されたほとんどの実験からの母液も蒸発乾固させた。溶媒蒸発によって得られた固体は、HT-XRPDによって分析した。
【0083】
全ての固体をAAC(40℃/75%RH、3日間)に曝露し、HT-XRPDによって再測定した。その後、750μlの選択した溶媒を加えた。バイアルをCrystal16(商標)並列結晶化装置に移し、懸濁液を750rpm、50℃で18時間撹拌した後、懸濁液を遠心分離に供し、固体を分離させ、真空下で乾燥させ(50℃、5mbar、18時間)、HT-XRPDで分析した。実験条件と結果は、第1セット及び第2セットの実験について、それぞれ以下の表1及び表2に示している。作製した結晶塩の得られたXRPDパターンを図1(HCl)、図2(Mao)、図3(Mes)に示す。
【表5】
【0084】
メタンスルホン酸の実験条件及び結果。全ての実験において、750μlの溶媒を使用した。対イオン(CI)の略語は、純粋な対イオンを表すが、数字の付いた対イオンは新しい塩の形態を表す。API:CIの懸濁液を熱サイクル(TCS実験)または等温条件(Ssm実験)に供した後、固体を分離させ、乾燥させ(5mbar、50℃、18時間)、XRPDで分析した。いくつかの実験では、液相を乾燥させ、得られた固体をXRPDで分析した。ほとんどの固体をAAC(40℃、75%RH、3日間)に供し、XRPDによって再測定した。
【表6】
【0085】
塩酸塩及びマロン酸塩の結晶化実験の実験条件及び結果。全ての実験において、750μlの溶媒を使用した。対イオン(CI)の略語は、純粋な対イオンを表すが、数字の付いた対イオンは新しい塩の形態を表す。API:CIの懸濁液を熱サイクルに供した後、固体を分離させ、乾燥させ(5mbar、50℃、18時間)、XRPDで分析した。液相を乾燥させ、得られた固体をXRPDで分析した。ほとんどの固体をAAC(40℃、75%RH、3日間)に供し、XRPDによって再測定した。
【表7】
*=熱分解<150℃
AACは加速老化条件(40°C、75%RHで3日間)を指す。
【0086】
表3は、本研究で得られた塩形態の概要を示す。室温での塩の水への溶解度は、塩が溶解するまで水を加えて推定した。全ての塩は、塩が水と相互作用する仕方によって示されるように、遊離塩基よりも高い溶解度を示した(<0.005mg/ml)。遊離塩基は、溶解の兆候を示さなかったが、全ての塩は、水中で良好な溶液となった。TGMSデータから、塩が化学量論的水和物であるかどうかを推定した。
【0087】
実施例2:スケールアップ実験
さらなる分析特性評価のための追加材料を得るために、選択された塩の調製をより大規模に実行した。実験は、100mg(第1のセット)または1200mg(第2のセット)のラベキシモド遊離塩基(形態1、出発物質)のいずれかで開始した。100mgの実験では、出発物質を、磁気撹拌子の入った8mlバイアルに計量導入した。1200mgの実験は、オーバーヘッドスターラーを備えた100mlのMettler Toledo MultiMax(商標)結晶化装置で実行した。選択した酸を、1Mまたは2Mの水溶液として加えた。その後、選択した溶媒を加え、撹拌速度750rpmで撹拌した。撹拌された懸濁液を、図5で説明したプロファイルと同様の温度プロファイルに供したが、最終的な9時間のインキュベーション期間は25℃で行った。
【0088】
温度サイクル後、懸濁液を、ブフナー漏斗と組み合わせた真空濾過を使用して濾過した。固体を周囲条件で18時間乾燥させ、試料をXRPDによって測定した。実験TCS32-34及びTCS36から得られた固体は、さらに50℃及び5mbarで18時間乾燥させた。実験TCS35から得た固体を、さらに室温及び200mbarで4日間乾燥させ、実験TCS37から得た固体は、さらに50℃及び5mbarで4日間乾燥させた。
【0089】
選択されたラベキシモド塩のスケールアップ実験の実験条件及びXRPD結果を表4に示す。対イオン(CI)の略語は純粋な対イオンを示し、数字の付いた対イオンはAPIの新しい塩形態を示す。「AAC」とは、試料がXRPDによる分析前に40℃/75%RHに3日間暴露されたことを意味する。材料を真空条件下で乾燥させ、その詳細は、以下に記載する。
【表8】
室温及び200mbarで4日間、室温及び5mbarで1日間。
【0090】
MES塩とHCl塩のTGMS、DSC、LCMS、H-NMR、13C-NMR-APT、及び水分吸着分析の結果を、それぞれ図6~11及び7~15に示す。これらの結果は、それぞれの製品が高純度であり、良好な安定性特性を備えていることを確証する。
【0091】
実施例3:溶解度
定性的溶解度の測定
塩スクリーンから選択した塩の溶解度を室温で水中で推定した。約2mgの塩に、肉眼で観察して物質が溶解するまで、溶媒アリコートを50μlずつ加えた。
【0092】
定性的溶解度の測定
ラベキシモド遊離塩基(形態1)の熱力学的溶解度を、フラスコ振とう法により25℃で、pH1.2~pH7.4の3つの異なるUSP緩衝液中(50mM)及び水中(実験ID:QSA21-24)で測定した(表5)。約30mgを1mlの選択した緩衝液約に加え、得られた懸濁液を、連続撹拌しながら室温で4時間平衡化した。15分及び4時間撹拌した後、溶液のpHを記録した。平衡時間が完了したら、懸濁液を遠心分離した。溶液を濾過し、希釈した後、LCMS分析を行って溶液中のAPI濃度を測定した。残留物を真空下で乾燥させ、得られた乾燥固体をXRPDで分析した。標準LC検量線を作成し、希釈した母液を測定してAPI濃度を決定した。
【0093】
スケールアップにより調製した遊離塩基(形態1)及び塩の溶解度を室温で水中で測定した。懸濁液を18時間撹拌した後、液相を分離させ、LCMSで検量線に対して測定した。固体を乾燥させ、XRPDで測定して固体の形状を決定した。結果を以下の表に要約する。遊離塩基(形態1)について、最も低い溶解度を決定した。信号が検量線よりも低かったため、溶解度は<0.005mg/mlであると判定した。2つの無水塩Mao1及びHCl1の水への溶解度は、それぞれ5.3mg/ml及び5.5mg/mlであった。最も高い溶解度はMes1で試験され、13.3mg/mlの溶解度を示した。実験の詳細を表5に記載する。
表5.ラベキシモド遊離塩基形態1)及び塩Mes1の水及びpH範囲1.2~7.4の3つの緩衝液における溶解度測定の実験の詳細と結果。15分後及び4時間後の溶液のpHが報告されている。溶解度は、4時間の平衡後に、LCMSで液相を較正線に対して測定することによって決定した。
【表9】
【0094】
実施例4:薬物動態特性
製剤の調製
IV製剤は、投与当日に調製した。製剤は、化合物を茶色のガラスバイアルに量り入れて調製した。投与当日に、ClinOleic20%静脈内脂肪乳剤(200μg/mL、Tamro)をチューブに追加した(20%ClinOleic中1.5mg/mL)。製剤を投与の5分前に均質化した。IV製剤は、調製後5時間以内に投与した。
【0095】
PO製剤は、投与前日に調製した。製剤は、試験アイテムをPOビヒクル(水道水中0.45%(v/v)Tween80、0.11%(w/v)カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)中6mg/ml)に配合して調製した。懸濁液をボルテックスで混合し、一晩冷蔵(+4℃)保存した。投与当日、投与の15分前に製剤を均質化した。
【0096】
動物実験
この研究では、ナイーブの動物を使用した(表6参照)。6匹ずつのマウス群に分けて、個別に換気された(IVC)ケージに収容した。ケージには、巣作りの材料としてアスペンの敷材(4HP及びPM90L、Tapvei、Estonia)と紙の束(Sizzlenest、Datesand、UK)が備え付けられ、ケージのエンリッチメントとして紙パルプキャビンと赤色のポリカーボネートシリンダー(Datesand、UK)が備え付けられた。IVCケージの温度(22±2℃)、湿度(55±10%)、換気回数(75回/時)、及び動物飼育室の12/12時間の明暗サイクル(午前6時に500ルクスの照明が点灯、午後6時に1.5ルクスの照明が点灯)は自動的に制御され、維持された。動物を、研究前に少なくとも5日間、その場所に順応させた。動物はいつでも自由に食物(SDS食事、RM1(E)801002、Special Diets Services、UK)と水道水を得ることができ、毎日の観察によって動物のウェルネスを確保した。
【表10】
*全ての動物は投与前日に体重を測定した。
【0097】
研究化合物は指定された経路で投与され、投与及び血液採取の時間を記録した。サンプリング後30分以内に、血液を遠心分離して血漿を分離させた(室温、10分、2700G)。血漿試料はプラスチックチューブに移し、分析まで凍結して-20℃で保存した。必要に応じて、動物の臨床症状と一般的な行動を記録した。
【0098】
薬物動態分析
薬物動態パラメータは、Phoenix64(Build6.4.0.768)WinNonlin(バージョン6.4)ソフトウェアを使用して、非コンパートメント法(NCA)で計算した。全ての動物に名目用量を使用した。終末期半減期(T1/2)は、対数濃度-時間曲線の終末線形部分の最小二乗回帰分析によって計算した。血漿濃度時間曲線下面積(AUC)は、最後の測定可能濃度(AUC0-last)まで増加する値については線形台形則、減少する値については対数台形則を使用して決定し、可能な場合は末端消失相の無限大への外挿を使用した。以下の基準を使用した:
・ラムダを計算するために最低3点(Cmaxは含まない)が使用される(R調整値>0.85)
・T1/2はラムダを計算するのに使われる時間より短い
・AUCinf_Extrap%<20%
【0099】
最大血漿濃度(Cmax)及びCmaxに達する時間(tmax)は、血漿濃度データから直接導き出した。
【0100】
ラベキシモド及びラベキシモド塩の静脈内及び経口投与後の平均(±SD)血漿濃度対時間プロファイルを、図16及び17に示す。これらの図は、以下の結果を示している。
【0101】
ラベキシモドを遊離塩基として3.00mg/kgで静脈内投与した後、血漿濃度は、投与後0.0833時間の最初の試料採取時にピークに達し、平均Cmaxは、150ng/ml、平均Cは、351ng/mlであった。AUC0-inf及びT1/2の値は、それぞれ681h*ng/ml及び8.99hであった。CL及びVssの値は、それぞれ73.4ml*分/kg(マウス肝臓血流量(120ml/min/kg;Ring et all,2011)の61.2%)及び49.4l/kgであった。ラベキシモドを30.0mg/kgで経口投与した後、血漿濃度は、投与後4.00時間でピークに達し、平均Cmaxは、728ng/mlであった。AUC0-lastの値は、8330h*ng/mlであった。
【0102】
ラベキシモドHClを3.00mg/kgで静脈内投与した後、血漿濃度は、投与後0.0833時間の最初の試料採取時にピークに達し、平均Cmaxは、454ng/ml、平均Cは、600ng/mlであった。AUC0-inf及びT1/2の値は、それぞれ2220h*ng/ml及び8.43hであった。CL及びVssの値は、それぞれ22.6ml*分/kg(マウス肝臓血流量(120ml/min/kg)の18.8%)及び14.2l/kgであった。ラベキシモドHClを30.0mg/kgで経口投与した後、血漿濃度は、投与後4.00時間でピークに達し、平均Cmaxは、893ng/mlであった。AUC0-lastの値は、13 700h*ng/mlであった。
【0103】
ラベキシモドMaoを3.00mg/kgで静脈内投与した後、血漿濃度は、投与後0.0833時間の最初の試料採取時にピークに達し、平均Cmaxは、355ng/ml、平均Cは、390ng/mlであった。AUC0-inf及びT1/2の値は、それぞれ1870h*ng/ml及び8.43hであった。CL及びVssの値は、それぞれ26.8ml*分/kg(マウス肝臓血流量(120ml/min/kg)の22.3%)及び16.9l/kgであった。ラベキシモドMaoを30.0mg/kgで経口投与した後、血漿濃度は、投与後0.17時間でピークに達し、平均Cmaxは、1140ng/mlであった。AUC0-lastの値は、11 400h*ng/mlであった。
【0104】
ラベキシモドMesを3.00mg/kgで静脈内投与した後、血漿濃度は、投与後0.0833時間の最初の試料採取時にピークに達し、平均Cmaxは、383ng/ml、平均Cは、507ng/mlであった。AUC0-inf及びT1/2の値は、それぞれ2320h*ng/ml及び9.80hであった。CL及びVssの値は、それぞれ21.5ml*分/kg(マウス肝臓血流量(120ml/min/kg)の17.9%)及び15.9l/kgであった。ラベキシモドMesを30.0mg/kgで経口投与した後、血漿濃度は、投与後2.00時間でピークに達し、平均Cmaxは、707ng/mlであった。AUC0-last及びT1/2の値は、それぞれ11 600h*ng/ml及び8.93hであった。
【0105】
結論として、AUC0-lastの値を比較すると、経口投与後の曝露量の順位は、ラベキシモドHCl>ラベキシモドMes>ラベキシモドMao>ラベキシモドとなった。

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【国際調査報告】