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特表2024-546101FGFRキナーゼ阻害剤を用いた癌の治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】FGFRキナーゼ阻害剤を用いた癌の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20241210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20241210BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K39/395 T
A61K31/519
A61K31/506
A61K31/55
A61K31/5377
A61K31/436
A61K31/517
A61K31/565
A61K31/4166
A61K33/243
A61K31/7068
A61K31/513
A61K31/4709
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534141
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 US2022081059
(87)【国際公開番号】W WO2023107979
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,456
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522162945
【氏名又は名称】キネート バイオファーマ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フラノヴィック,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッサー,アンジー
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】コバヤシ,ケン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,リチャード トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ティホナス,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カニア,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】コックス,ジェイソン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ティンプル,ノエリート
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,エリック エス.
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,エリック エー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086BC43
4C086BC46
4C086BC50
4C086BC73
4C086CB09
4C086CB22
4C086DA09
4C086EA17
4C086GA13
4C086HA12
4C086HA24
4C086HA26
4C086HA28
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、癌の治療のための組成物および方法である。前記組成物は、FGFRキナーゼ阻害剤を含む。いくつかの実施形態は、FGFRキナーゼ阻害剤と少なくとも1つの癌治療薬とを特徴とする併用療法を含む。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療を必要とする患者において癌を治療する方法であって、1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
癌の治療を必要とする患者において癌を治療する方法であって、1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4、6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項3】
癌の治療を必要とする患者において癌を治療する方法であって、
(a)1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む組成物、および
(b)mTOR阻害剤、MAPK/PI3K阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、EGFRキナーゼ阻害剤もしくはEGFRキナーゼ抗体、HER2キナーゼ阻害剤、エストロゲン受容体拮抗薬、アンドロゲン受容体拮抗薬、CDKキナーゼ阻害剤、ALK受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、ROS受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、NTRK受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、または化学療法レジメンからなる群より選択される少なくとも1つの癌治療薬
を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項4】
前記癌は、少なくとも1つの癌原性FGFR1、FGFR2またはFGFR3遺伝子変異の存在を特徴とする、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
癌原性FGFR変異は、
FGFR2[K660M]、
FGFR2[K659M]、
FGFR2[L618V]、
FGFR2[L617V]、
FGFR2[N550H]、
FGFR2[N549H]、
FGFR2[N550K]、
FGFR2[N549K]、
FGFR2[V565F]、
FGFR2[V564F]、
FGFR2[N550S/T]、
FGFR2[N549S/T]、
FGFR3[G697C]、
FGFR3[V555M]、
FGFR3[K650E]、
FGFR3[N540K/S]、
FGFR3[K650M]、および
FGFR1[V561M]、またはそれらの組み合わせ、
からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
癌原性FGFR変異は、FGFR2増幅、FGFR3-TACC3、またはFGFR3-BAIAP2L1である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記癌は、野生型FGFR2またはFGFR3を有することを特徴とする、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項8】
前記患者は、FDA承認試験により検出されるFGFR2またはFGFR3融合または再配列により選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記癌は、固形腫瘍である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記癌は、膀胱癌(bladder cancer)、膀胱癌(urinary bladder carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial cancer)、腎細胞癌、前立腺癌、二重陰性前立腺、去勢抵抗性前立腺癌、胃癌(gastric carcinoma)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、肝細胞癌、胆管癌、肝内胆管癌、膵臓腺癌、膵癌、乳癌、HER2(-)/ER(+)乳癌、HER2(-)/ER(+)/PR(+)乳癌、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍、真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、多発性骨髄腫、膠芽腫、神経膠腫、星細胞腫、退形成性星細胞腫、髄芽腫、乏突起膠腫、退形成性乏突起膠腫、髄膜腫、肺癌、および非小細胞肺癌からなる群より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記癌は、膀胱癌(bladder cancer)、膀胱癌(urinary bladder carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial cancer)、胆管癌、または肝内胆管癌から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記癌は、転移性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、外科的切除後のアジュバント療法である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、外科的切除前のネオアジュバント療法である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者は、以前の治療後に再発している、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者は、以前の治療に対する耐性を獲得している、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者は、治療抵抗性である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、またはPD-L1阻害剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記CTLA-4阻害剤は、イピリムマブである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記PD-1阻害剤は、スパルタリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはセミプリムマブである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、CDK阻害剤である、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記CDK阻害剤は、CDK4/6阻害剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記CDK4/6阻害剤は、パルボシクリブ、アベマシクリブ、またはリボシクリブである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、EGFRキナーゼ阻害剤またはEGFRキナーゼ抗体である、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記EGFRキナーゼ阻害剤は、ナザルチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ブリガチニブ、イコチニブ、ネラチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、またはラパチニブである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記EGFR抗体は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、またはマツズマブである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、mTOR阻害剤である、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記mTOR阻害剤は、ラパマイシンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、MAPK/PI3K阻害剤である、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記MAPK/PI3K阻害剤は、ビニメチニブまたはコパンリシブである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、HER2キナーゼ阻害剤である、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記HER2阻害剤は、ラパチニブである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、エストロゲン受容体拮抗薬である、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記エストロゲン受容体拮抗薬は、フルベストラントである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、アンドロゲン受容体拮抗薬である、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記アンドロゲン受容体拮抗薬は、エンザルタミドである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、ALK受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、ROS受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、またはNTRK受容体型チロシンキナーゼ阻害剤から選択される、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの癌治療薬は、化学療法レジメンである、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記化学療法レジメンは、白金ベースの化学療法を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記白金ベースの化学療法は、オキサリプラチン、シスプラチン、またはカルボプラチンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記化学療法レジメンは、ゲムシタビンレジメンを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記化学療法レジメンは、FOLFOXレジメンを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記FOLFOXレジメンは、フォリン酸を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記FOLFOXレジメンは、5-フルオロウラシルを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記FOLFOXレジメンは、フォリン酸およびフォリン酸を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
経口投与は、1日おき、1日1回、1日2回、または1日3回行われる、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月8日に出願された米国特許出願第63/287,456号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞増殖因子受容体(FGFRs)は、線維芽細胞増殖因子ファミリーのタンパク質メンバーに結合する受容体型チロシンキナーゼ(RTKs)のサブファミリーである。線維芽細胞増殖因子/FGF受容体ネットワークの調節異常は、腫瘍において頻繁に起こる。従って、異常なFGFRキナーゼ活性を標的とする治療法が、癌や他の疾患の治療に使用されることが望まれている。FGFRキナーゼのそのような調節因子の1つは、1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドである。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態は、癌の治療を必要とする患者において癌を治療する方法を提供する。癌を治療する方法は、1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を患者に投与することを含み、癌は、膀胱癌(bladder cancer)、膀胱癌(urinary bladder carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial cancer)、腎細胞癌、前立腺癌、二重陰性前立腺、去勢抵抗性前立腺癌、胃癌(gastric carcinoma)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部腺癌、肝細胞癌、胆管癌、肝内胆管癌、膵臓腺癌、膵癌、乳癌、HER2(-)/ER(+)乳癌、HER2(-)/ER(+)/PR(+)乳癌、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍、真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、多発性骨髄腫、膠芽腫、神経膠腫、星細胞腫、退形成性星細胞腫、髄芽腫、乏突起膠腫、退形成性乏突起膠腫、髄膜腫、肺癌、または非小細胞肺癌から選択される。別の実施形態は、癌が癌原性FGFR変異を有することを特徴とする方法を提供する。別の実施形態は、癌が癌原性FGFR2変異を有することを特徴とする方法を提供する。別の実施形態は、癌が癌原性FGFR3変異を有することを特徴とする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】RT-112 FGFR3駆動型ヒト癌細胞株由来の異種移植片モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性を示す図である。
図1B】RT-112 FGFR3駆動型ヒト癌細胞株由来の異種移植片モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性を示す図である。
図1C】RT-112 FGFR3駆動型ヒト癌細胞株由来の異種移植片モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性を示す図である。
図2A】SNU-16 FGFR2駆動型ヒト癌細胞株由来の異種移植片モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性を示す図である。
図2B】SNU-16 FGFR2駆動型ヒト癌細胞株由来の異種移植片モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性を示す図である。
図2C】SNU-16 FGFR2駆動型ヒト癌細胞株由来の異種移植片モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性を示す図である。
図3】BOIN試験デザインのフローチャートを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
参照による組み込み
本明細書において言及される全ての刊行物、特許および特許出願は、本明細書において特定される特定の目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
特定の用語
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「and」および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「薬剤(an agent)」に対する言及は、複数のそのような薬剤を含み、「細胞(the cell)」に対する言及は、1つ以上の細胞(または複数の細胞)および当業者に公知のその等価物等に対する言及を含む。本明細書において、分子量などの物理的特性、または化学式などの化学的特性について範囲が使用される場合、その範囲の全ての組み合わせおよび部分的な組み合わせ、およびその範囲内の特定の実施形態が含まれることが意図される。数値または数値範囲に言及する場合の「約」という用語は、言及される数値または数値範囲が実験のばらつきの範囲内(または統計的な実験誤差内)の近似値であることを意味し、従って、数値または数値範囲は、場合によっては、記載される数値または数値範囲の1%~15%の間で変動する。「備える(comprising)」という用語(および、「備える(comprise)」もしくは「備える(comprises)」、または「有する(having)」もしくは「含む(including)」などの関連用語)は、他の特定の実施形態、例えば、本明細書に記載される任意の物質組成物、組成物、方法、またはプロセスなどの実施形態において、記載される特徴から「からなる(consist of)」または「から本質的になる(consist essentially of)」ことを除外することを意図するものではない。
【0007】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、反対の指定がない限り、以下の用語は、以下に示される意味を有する。
【0008】
「薬学的に許容される塩」には、酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれる。本明細書に記載される複素環式FGFRキナーゼ阻害剤の薬学的に許容される塩は、あらゆる薬学的に好適な塩の形態を包含することが意図される。本明細書に記載される化合物の好ましい薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸付加塩および薬学的に許容される塩基付加塩である。
【0009】
「薬学的に許容される酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的または他の点で望ましくないものではなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸などの無機酸を用いて形成される塩を指す。また、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸などの有機酸を用いて形成される塩も含まれ、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが含まれる。従って、例示的な塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが含まれる。また、アルギン酸塩、グルコン酸塩およびガラクツロン酸塩などのアミノ酸の塩も考慮される(例えば、Berge S.M.ら、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science、66:1-19(1997)を参照)。塩基性化合物の酸付加塩は、いくつかの実施形態において、当業者が精通している方法および技術に従って、塩を生成するのに十分な量の所望の酸と遊離塩基形態を接触させることによって調製される。
【0010】
「薬学的に許容される塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的または他の点で望ましくないものではない塩を指す。これらの塩は、遊離酸への無機塩基または有機塩基の付加から調製される。薬学的に許容される塩基付加塩は、いくつかの実施形態において、アルカリ金属およびアルカリ土類金属もしくは有機アミンなどの金属またはアミンを用いて形成される。無機塩基から生じる塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などが含まれるが、これらに限定されない。有機塩基から生じる塩には、第一級、第二級、および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2ジメチルアミノエタノール、2ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、エチレンジアニリン、N-メチルグルカミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが含まれるが、これらに限定されない。Bergeら、前掲を参照。
【0011】
「薬学的に許容される溶媒和物」は、溶媒付加形態である物質組成物を指す。いくつかの実施形態において、溶媒和物は、化学量論的量または非化学量論的量の溶媒のいずれかを含み、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒を用いて製造する過程で形成される。溶媒が水である場合は水和物が形成され、溶媒がアルコールである場合はアルコラートが形成される。本明細書に記載される化合物の溶媒和物は、本明細書に記載される過程で都合よく調製または形成される。本明細書で提供される化合物は、任意に、溶媒和物だけでなく、非溶媒和物の形態でも存在する。
【0012】
「被験者」または「患者」という用語には、哺乳動物が含まれる。哺乳動物の例には、ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、他の類人猿およびサル類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、ネコなどの家畜;ラット、マウス、モルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などの哺乳類クラスの任意のメンバーが含まれるが、これらに限定されない。一態様において、哺乳動物は、ヒトである。
【0013】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」、あるいは「緩和すること」もしくは「改善すること」は、互換的に使用される。これらの用語は、治療上の利益および/または予防上の利益を含むがこれらに限定されない、有益または所望の結果を得るためのアプローチを指す。「治療上の利益」とは、治療される基礎疾患の根絶または改善を意味する。また、治療上の利益は、患者が依然として基礎疾患に罹患しているにもかかわらず、患者に改善が観察されるような、基礎疾患に関連する生理学的症状の1つ以上の根絶または改善によって達成される。予防上の利益のために、いくつかの実施形態において、組成物は、特定の疾患を発症する危険性のある患者、またはこの疾患の診断がなされていないにもかかわらず、疾患の生理学的症状の1つ以上を報告している患者に投与される。本明細書で使用される「治療する」という用語は、特に指示がない限り、当該用語が適用される疾患もしくは状態、または当該疾患もしくは状態の1つ以上の症状を逆転させること、緩和すること、進行を抑制すること、または予防することを意味する。いくつかの実施形態において、「治療する」という用語は、当該用語が適用される疾患または障害の進行を遅らせることまたは遅延させることを含む。さらに、いくつかの実施形態において、「治療する」という用語は、その用語が適用される疾患または障害に起因する1つ以上の合併症に適用される。本明細書で使用される「治療」という用語は、特に指示が無い限り、「治療する」がすぐ上で定義されているように、治療する行為を指す。
【0014】
本明細書で使用される「腫瘍」または「癌」という用語は、特に指定が無い限り、腫瘍性細胞の増殖を指し、前癌性および癌性の細胞ならびに組織を含む。腫瘍は通常、病変またはしこりとして現れる。本明細書で使用される場合、腫瘍を「治療する」とは、腫瘍自体、腫瘍の血管新生、または疾患が特徴付けられる他のパラメータなどの疾患の1つ以上の症状が軽減され、改善され、抑制され、寛解状態に置かれ、または寛解状態に維持されることを意味する。腫瘍を「治療する」ことはまた、腫瘍の1つ以上の特徴が治療により除去、減少または予防され得ることを意味する。このような特徴の非限定的な例には、基底膜および近位細胞外マトリックスの制御不能な分解、新しい機能を有する毛細血管への内皮細胞の移動、分裂、および組織化、ならびにそのような機能を有する毛細血管の持続が含まれる。
【0015】
「難治性」または「治療抵抗性」という用語は、患者が治療に一度も反応しなかったことを示す。
【0016】
「再発した」または「治療後に再発した」という用語は、患者が以前の治療に最初は反応した後、後天性の耐性および/または不耐性のために病気が進行していることを示す。
【0017】
「治療に対する耐性」または「治療に対する後天性の耐性」という用語は、患者が以前の治療に最初は反応した後、治療に対する臨床的耐性または分子的耐性のために病気が進行していることを示す。後天性の耐性は、治療の分子標的における耐性変異の出現、または排出ポンプなどの生理学的機能の発達に起因し得る。
【0018】
本明細書で用いられる「治療上有効な量」という語句は、研究者、獣医、医学博士などが求めている組織、システム、動物、またはヒトの生物学的または医学的反応を引き出す薬物または医薬品の量を指す。
【0019】
本発明の他の態様、利点および特徴は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0020】
線維芽細胞増殖因子受容体
線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)は、胚発生から腫瘍形成に至る多様な生理学的および病理学的プロセスを制御する受容体型チロシンキナーゼである。FGFRファミリーメンバー(FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4)は、細胞外リガンド結合ドメインと細胞内チロシンキナーゼドメインを含む膜貫通タンパク質である。線維芽細胞増殖因子(FGF)リガンドが存在しない場合、非リン酸化FGFRキナーゼは、不活性な構造のままである。FGFリガンドの結合により、受容体の二量体化と自己リン酸化が起こり、続いてラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(RAS-MAPK)、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ/プロテインキナーゼB(PI3K-AKT)、およびホスホリパーゼCγ/プロテインキナーゼC(PLCγ-PKC)軸などの下流のシグナル伝達経路が活性化され、細胞増殖、生存、および移動を制御する(Babina & Turner 2017年, Katoh 2019年)。
【0021】
全てのヒト癌の約7%で観察される癌原性FGFR遺伝子変異は、典型的には、活性化点突然変異、小さな遺伝子内欠失、ゲノム増幅、または染色体再配列/融合として現れ(Ceramiら 2012年、Gaoら 2013年、Helstenら 2016年)、異常なシグナル伝達を引き起こし、腫瘍形成を促進する。その結果、調節不全に陥ったFGFRシグナル伝達は、腫瘍細胞の増殖、生存、薬剤耐性の発現を促進する(Babina & Turner 2017年、Katoh 2019年)。特に、FGFR2遺伝子融合とFGFR3活性化変異は、それぞれ胆管癌の10~20%および尿路上皮癌(urothelial cancer)の20~35%の原因と予測されている(Katoh 2019年、Krookら 2020年)。一貫して、FGFRの薬理学的阻害は、FGFR依存性ヒト癌の前臨床モデルにおいて顕著な抗増殖効果と抗腫瘍効果を示し、FGFR阻害剤の臨床開発を支持している(Hallら 2016年、Pereraら 2017年、Goyalら 2019年、Liuら 2020年、Sootomeら 2020年)。
【0022】
3つのFGFR阻害剤、エルダフィチニブ、ペミガチニブ、およびインフィグラチニブは、進行性または転移性のFGFR2およびFGFR3駆動型癌の患者の治療のために、最近、米国食品医薬品局によって承認された(Loriotら 2019年、Abou-Alfaら 2020年、Jayleら 2021年、BALVERSA(登録商標)Package Insert[PI]、PEMAZYRE(登録商標)PI、TRUSELTIQ(登録商標)PI)。現在承認されて臨床段階にあるFGFR阻害剤の主な制限は、反応期間を制限する二次的な標的遺伝子変異の出現である(Goyalら 2017年、Goyalら 2019年、Silvermanら 2021年、Vargheseら 2021年)。FGFRキナーゼドメインの主要なゲートキーパー残基の変異は、アデノシン三リン酸(ATP)結合ポケット内の立体障害につながり、ATP競合性FGFR阻害剤のアクセスを阻害する。各FGFR(FGFR1-V561、FGFR2-V565F(FGFR2-V564Fとしても知られる)、FGFR3-V555M、FGFR4-V550L)におけるゲートキーパー残基の変異は、可逆的なI型汎FGFR阻害に対する耐性を付与することが実証されている(Daiら 2019年)。既知のゲートキーパー変異および活性化変異に対応するFGFR2キナーゼドメイン一塩基変異は、FGFR阻害剤治療で進行した患者で特定されており、肝内胆管癌における後天性の耐性機構を構成することが実証されている(Goyalら 2017年、Goyalら 2019年)。FGFR3における類似の活性化変異が患者のサンプルで検出されており、前臨床モデルで耐性を示している(Pataniら 2016年)。
【0023】
複素環式FGFRキナーゼ阻害剤
本明細書に記載の複素環式FGFRキナーゼ阻害剤は、以下の構造を有する化合物1を指し、化学名は、1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドである。
【0024】
【化1】
【0025】
化合物1は、不可逆的な低分子FGFRキナーゼ阻害剤である。本開示を通して、複素環式FGFRキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に言及する場合、その言及は、化合物1、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物への言及である。
【0026】
癌および治療方法
一実施形態において、本明細書に開示されるように、酵素を化合物1、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と接触させることを含む、FGFRキナーゼ酵素を阻害する方法が開示される。特定の態様において、本明細書に開示されるのは、癌の治療を必要とする個体において癌を治療する方法であって、本明細書に記載される複素環式FGFRキナーゼ阻害剤の有効量を個体に投与することを含む方法である。特定の態様において、本明細書に開示されるのは、癌の治療に使用するための複素環式FGFRキナーゼ阻害剤である。特定の態様において、本明細書に開示されるのは、癌を治療するための医薬品の調製に使用するための、本明細書に記載される複素環式FGFRキナーゼ阻害剤である。
【0027】
一実施形態は、1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を患者に投与することを含む、癌の治療を必要とする患者において癌を治療する方法を提供する。1つの実施形態は、1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4、6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を患者に投与することを含む、癌の治療を必要とする患者において癌を治療する方法を提供する。別の実施形態は、癌が癌原性FGFR変異を有することを特徴とする、方法を提供する。別の実施形態は、癌が癌原性FGFR2変異を有することを特徴とする、方法を提供する。別の実施形態は、癌が癌原性FGFR3変異を有することを特徴とする、方法を提供する。別の実施形態は、FGFR変異が、
FGFR2[K660M]、
FGFR2[K659M]、
FGFR2[L618V]、
FGFR2[L617V]、
FGFR2[N550H]、
FGFR2[N549H]、
FGFR2[N550K]、
FGFR2[N549K]、
FGFR2[V565F]、
FGFR2[V564F]、
FGFR2[N550S/T]、
FGFR2[N549S/T]、
FGFR3[G697C]、
FGFR3[V555M]、
FGFR3[K650E]、
FGFR3[N540K/S]、
FGFR3[K650M]、および
FGFR1[V561M]、またはそれらの組み合わせ、
からなる群より選択される、方法を提供する。
【0028】
別の実施形態は、FGFR変異が表1に開示された少なくとも1つの変異から選択される、方法を提供する。
【0029】
【表1-1】
【0030】
【表1-2】
【0031】
【表1-3】
【0032】
別の実施形態は、癌原性FGFR変異が、FGFR2増幅、FGFR2融合もしくは再配列、FGFR2挿入-欠失変異、FGFR3融合もしくは再配列、FGFR3-TACC3、またはFGFR3-BAIAP2L1である、方法を提供する。
【0033】
一実施形態は、癌を治療する方法を提供し、癌は、膀胱癌、膀胱癌(urinary bladder carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial cancer)、腎細胞癌、前立腺癌、二重陰性前立腺、去勢抵抗性前立腺癌、胃癌(gastric carcinoma)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、肝細胞癌、胆管癌、肝内胆管癌、膵臓腺癌、膵癌、乳癌、HER2(-)/ER(+)乳癌、HER2(-)/ER(+)/PR(+)乳癌、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍、真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、多発性骨髄腫、膠芽腫、神経膠腫、星細胞腫、退形成性星細胞腫、髄芽腫、乏突起膠腫、退形成性乏突起膠腫、髄膜腫、肺癌、または非小細胞肺癌から選択される。
【0034】
別の実施形態は、腫瘍が、少なくとも1つのFGFR2またはFGFR3遺伝子変異の存在によって特徴付けられる、癌を治療する方法を提供する。別の実施形態は、腫瘍が、FGFR2およびFGFR3遺伝子変異の存在によって特徴付けられる、癌を治療する方法を提供する。別の実施形態は、腫瘍が、少なくとも1つのFGFR1、FGFR2またはFGFR3遺伝子変異の存在によって特徴付けられる、癌を治療する方法を提供する。別の実施形態は、腫瘍が、任意のFGFR遺伝子変異の存在によって特徴付けられる、癌を治療する方法を提供する。別の実施形態は、FDA承認試験によって検出されるFGFR1、FGFR2またはFGFR3遺伝子変異によって患者が選択される、癌を治療する方法を提供する。別の実施形態は、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合または再配列によって患者が選択される、癌を治療する方法を提供する。別の実施形態は、FDA承認試験によって検出されるFGFR2融合または再配列によって患者が選択される、癌を治療する方法を提供する。別の実施形態は、FDA承認試験によって検出されるFGFR3融合または再配列によって患者が選択される、癌を治療する方法を提供する。
【0035】
一実施形態は、癌が、胃癌(gastric carcinoma)、胃癌(gastric cancer)、または食道胃接合部癌から選択される、癌を治療する方法を提供する。
【0036】
一実施形態は、癌が、膀胱癌(bladder cancer)、膀胱癌(urinary bladder carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial carcinoma)、または尿路上皮癌(urothelial cancer)から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が、胆管癌、肝内胆管癌、膵臓腺癌、膵癌から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が、胃癌(gastric carcinoma)、胃癌(gastric cancer)、または食道胃接合部癌から選択され、患者が、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合もしくは再配列によって選択される、癌を治療する方法を提供する。
【0037】
一実施形態は、癌が、膀胱癌(bladder cancer)、膀胱癌(urinary bladder carcinoma)、尿路上皮癌(urothelial carcinoma)、または尿路上皮癌(urothelial cancer)から選択され、患者が、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合もしくは再配列によって選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が、胆管癌、肝内胆管癌、膵臓腺癌、膵癌から選択され、患者が、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合もしくは再配列によって選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が、前立腺癌、二重陰性前立腺、または去勢抵抗性前立腺癌から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が、乳癌、HER2(-)/ER(+)乳癌、またはHER2(-)/ER(+)/PR(+)乳癌から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が非ホジキンリンパ腫から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が急性骨髄性白血病から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が多発性骨髄腫から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が、真性多血症、本態性血小板血症、および原発性骨髄線維症を含む骨髄増殖性腫瘍から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が、膠芽腫、神経膠腫、星細胞腫、退形成性星細胞腫、髄芽腫、乏突起膠腫、退形成性乏突起膠腫、または髄膜腫から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が肺癌、または非小細胞肺癌から選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が腎細胞癌である、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が肝細胞癌である、癌を治療する方法を提供する。
【0038】
一実施形態は、癌が膀胱癌(bladder cancer)である、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が膀胱癌(urinary bladder carcinoma)、である、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が尿路上皮癌(urothelial carcinoma)である、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が尿路上皮癌(urothelial cancer)である、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が胆管癌である、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が肝内胆管癌である、癌を治療する方法を提供する。
【0039】
一実施形態は、癌が膀胱癌(bladder cancer)であり、患者が、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合もしくは再配列によって選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が膀胱癌(urinary bladder carcinoma)であり、患者が、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合もしくは再配列によって選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が尿路上皮癌(urothelial carcinoma)であり、患者が、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合もしくは再配列によって選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が尿路上皮癌(urothelial cancer)であり、患者が、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合もしくは再配列によって選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が胆管癌であり、患者が、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合もしくは再配列によって選択される、癌を治療する方法を提供する。一実施形態は、癌が肝内胆管癌であり、患者が、FDA承認試験によって検出されるFGFR2またはFGFR3融合もしくは再配列によって選択される、癌を治療する方法を提供する。
【0040】
別の実施形態は、癌が転移性である、方法を提供する。別の実施形態は、方法は、外科的切除後のアジュバント療法である、方法を提供する。別の実施形態は、方法が外科的切除前のネオアジュバント療法である、方法を提供する。別の実施形態は、患者が以前の治療後に再発している、方法を提供する。別の実施形態は、患者が以前の治療に対して耐性を獲得している、方法を提供する。別の実施形態は、患者が治療抵抗性である、方法を提供する。別の実施形態は、1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が経口投与される、方法を提供する。別の実施形態は、1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が経口投与される、方法を提供する。別の実施形態は、経口投与が1日おき、1日1回、1日2回、または1日3回行われる、方法を提供する。
【0041】
一実施形態は、癌の治療を必要とする患者において癌を治療する方法であって、
(a)1-((3S,5R)-1-アクリロイル-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-3-((1-シクロプロピル-4,6-ジフルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-イル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む組成物、および
(b)mTOR阻害剤、MAPK/PI3K阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、EGFRキナーゼ阻害剤もしくはEGFRキナーゼ抗体、HER2キナーゼ阻害剤、エストロゲン受容体拮抗薬、アンドロゲン受容体拮抗薬、CDKキナーゼ阻害剤、ALK受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、ROS受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、NTRK受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、または化学療法レジメンから選択される少なくとも1つの癌治療薬
を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0042】
別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬がmTOR阻害剤である、方法を提供する。別の実施形態は、mTOR阻害剤がラパマイシンである、方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬がMAPK/PI3K阻害剤である、方法を提供する。別の実施形態は、MAPK/PI3K阻害剤がビニメチニブまたはコパンリシブである、方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬がHER2キナーゼ阻害剤である、方法を提供する。別の実施形態は、HER2阻害剤がラパチニブである、方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬が免疫チェックポイント阻害剤である、方法を提供する。別の実施形態は、免疫チェックポイント阻害剤がCTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、またはPD-L1阻害剤である、方法を提供する。別の実施形態は、CTLA-4阻害剤がイピリムマブである、方法を提供する。別の実施形態は、PD-1阻害剤がスパルタリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、またはセミプリマブである、方法を提供する。別の実施形態は、PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブである、方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬がCDK阻害剤である、方法を提供する。別の実施形態は、CDK阻害剤がCDK4/6阻害剤である、方法を提供する。別の実施形態は、CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、アベマシクリブ、またはリボシクリブである、方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬がEGFRキナーゼ阻害剤またはEGFRキナーゼ抗体である、方法を提供する。別の実施形態は、EGFRキナーゼ阻害剤が、ナザルチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ブリガチニブ、イコチニブ、ネラチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、またはラパチニブである、方法を提供する。別の実施形態は、EGFR抗体が、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、またはマツズマブである、方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬がエストロゲン受容体拮抗薬である、方法を提供する。別の実施形態は、エストロゲン受容体拮抗薬がフルベストラントである、方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬がアンドロゲン受容体拮抗薬である、方法を提供する。別の実施形態は、アンドロゲン受容体拮抗薬がエンザルタミドである、方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬が、ALK受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、ROS受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、またはNTRK受容体型チロシンキナーゼ阻害剤から選択される、方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの癌治療薬が化学療法レジメンである、方法を提供する。別の実施形態は、化学療法レジメンが、シスプラチンレジメン、ゲムシタビンレジメン、またはFOLFOXレジメンである、方法を提供する。
【0043】
医薬組成物
特定の実施形態において、本明細書に記載の複素環式FGFRキナーゼ阻害剤は、純粋な化学物質として投与される。他の実施形態において、本明細書に記載される複素環式FGFRキナーゼ阻害剤は、選択された投与経路および標準的な薬学的慣行に基づいて選択される薬学的に適切なまたは許容される担体(本明細書では、薬学的に適切なもしくは許容される賦形剤、生理学的に適切なもしくは許容される賦形剤、または生理学的に適切なもしくは許容される担体とも呼ばれる)と組み合わされる。
【0044】
本明細書において提供されるのは、本明細書に記載の複素環式FGFRキナーゼ阻害剤、またはその立体異性体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を、1つ以上の薬学的に許容される担体とともに含む医薬組成物である。担体(複数可)(または賦形剤(複数可))は、担体が組成物の他の成分と適合し、組成物の受容者(すなわち、被験者または患者)に対して有害でない場合、許容可能か適切である。
【0045】
一実施形態は、本明細書に記載の複素環式FGFRキナーゼ阻害剤、またはその立体異性体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物と、薬学的に許容される担体とを混合することを含む、医薬組成物を調製する方法を提供する。
【0046】
本明細書において提供されるのは、医薬組成物が経口投与される方法である。適切な経口投与形態としては、例えば、錠剤、丸薬、小袋、または硬質または軟質ゼラチン、メチルセルロース、または消化管で容易に溶解する他の適切な材料のカプセルが挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む適切な無毒性固体担体が使用される。(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed.Mack Pub.Co., Easton,PA(2005年))を参照)。
【0047】
本明細書において提供されるのは、医薬組成物を注射によって投与する方法である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の複素環式FGFRキナーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、注射による投与のために処方される。いくつかの例において、注射製剤は、水性製剤である。いくつかの例では、注射製剤は、非水性製剤である。いくつかの例では、注射製剤は、ゴマ油などの油性製剤である。
【0048】
本明細書に記載の複素環式FGFRキナーゼ阻害剤、またはその立体異性体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含む組成物の投与量は、被験者または患者(例えば、ヒト)の状態によって異なる。いくつかの実施形態において、そのような要因には、一般的な健康状態、年齢、および他の要因が含まれる。医薬組成物は、治療(または予防)される疾患に適切な方法で投与される。適切な投与量ならびに適切な投与期間および投与頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類および重症度、有効成分の特定の形態、および投与方法などの要因によって決定される。一般に、適切な投与量および治療レジメンは、治療上および/または予防上の利益(例えば、より頻繁な完全寛解もしくは部分寛解、またはより長い無病生存期間および/もしくは全生存期間、または症状の重症度の軽減などの臨床転帰の改善)を提供するのに十分な量の組成物(複数可)を提供する。最適な投与量は一般に、実験モデルおよび/または臨床試験を用いて決定される。最適な投与量は、患者の体格、体重、または血液量に依存する。
【実施例
【0049】
これらの実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、本明細書で提供される特許請求の範囲を限定するものではない。
【0050】
新規の、次世代の、不可逆的な、低分子の汎FGFR阻害剤である化合物1は、承認されたFGFR阻害剤に対する耐性を引き起こすことが知られている、臨床的に観察される二次変異を阻害するように構造的に設計された。この研究では、野生型および変異型FGFRキナーゼのパネルに対する化合物1の生化学的阻害活性と、その他のキノームに対する選択性を評価した。
【0051】
実施例1:化合物1のFGFRキナーゼの阻害活性
化合物1を、複数の独立した実験において、野生型および変異型FGFRキナーゼファミリーメンバーの両方に対する活性を評価するために、生化学的アッセイで試験した。移動度シフトアッセイを、精製されたFGFRキナーゼ酵素のパネルにわたって実施した。表2に、酵素パネルに対する化合物1の阻害力の平均を示す。野生型FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4はそれぞれ、3.90nM、5.25nM、9.70nM、4.91nMのIC50値を示した。それぞれのゲートキーパー残基FGFR1-V561M、FGFR2-V565F(FGFR2-V5654Fとしても知られる)、FGFR3-V555Mのキナーゼドメイン変異はそれぞれ、62.98nM、20.81nM、24.27nMのIC50値を示した。FGFR2-N550H(FGFR2-N549Hとしても知られる)分子ブレーキおよびFGFR3-K650M活性化変異はそれぞれ、22.80nMおよび4.63nMのIC50値を示した。
【0052】
【表2】
【0053】
化合物1の広範なキノーム選択性を、移動度シフトアッセイ(MSA)によって試験した。1μMの濃度の化合物1を、321個のキナーゼのパネルに対してスクリーニングした。表3は、40%を超える阻害を示したキナーゼのリストである。このパネルでは、40%を超える阻害を示したのは、それぞれ89.5%のTNK1と64.6%のLOK(別名セリンスレオニンキナーゼ10[STK10])とを含む2つの非FGFRキナーゼのみであった。
【0054】
【表3】
【0055】
結論
生化学的アッセイにおいて、化合物1は、FGFR野生型および変異型キナーゼの強力な阻害剤であった。さらに、ヒトキナーゼの広範なパネルにおけるキノームスクリーニングでは、FGFRキナーゼファミリー以外のキナーゼに対する活性は最小であることが示された。これらの研究は、化合物1がFGFRファミリーキナーゼの強力な阻害剤であり、ヒトキノーム全体にわたって選択的であることを示している。
【0056】
実施例2:化合物1は、細胞培養において細胞増殖を阻害する
細胞FGFRキナーゼを阻害する化合物1の能力を、NanoBRETターゲットエンゲージメント、薬力学的バイオマーカー調節、および腫瘍細胞増殖阻害という一連のアッセイ形式にわたって試験した。
【0057】
細胞FGFRターゲットエンゲージメント
細胞内ターゲットエンゲージメントは、HEK-293細胞において、生物発光タンパク質ドナー(NanoLuc融合)から蛍光プローブ(NanoBRETトレーサー)へのエネルギー移動を測定することにより、近接ベースのアッセイで実証された。NanoBRETアッセイでは、生細胞内の融合タンパク質に可逆的に結合するトレーサーの競合的置換により、化合物1の見かけの親和性を測定した。表4に示すように、化合物1は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、およびFGFR4野生型タンパク質において、それぞれ13.7nM、7.3nM、25.8nM、および24.1nMのターゲットエンゲージメント半数阻害濃度(IC50)値を示した。K659M、L617V、N549H(別名FGFR2-N550H)、N549K、およびV565F(別名FGFR2-V564F)を含むFGFR2変異に対するNanoBRET IC50値は、それぞれ51.3nM、21.7nM、6.8nM、27.5nM、および13.4nMであった。G697CおよびV555MのFGFR3変異のNanoBRET IC50値は、それぞれ32.3nMおよび71.6nMであった。
【0058】
【表4】
【0059】
FGFR調節不全のヒト癌細胞におけるpERKの阻害
化合物1は、表5に示すように、複数の独立した実験において、投与1時間後にpERKバイオマーカーの薬力学的調節によって読み取られたMAPK経路阻害によって決定されるように、ヒトFGFR変異癌モデル全体にわたって幅広い細胞活性を示した。FGFR2増幅SNU-16およびKATO-IIIヒト胃癌(gastric cancer)細胞では、pERK EC50値は、それぞれ1.26nMおよび2.58nMであった。RT-112およびRT-4 FGFR3-TACC3融合を有する膀胱癌(bladder carcinoma)細胞のpERK EC50値は、それぞれ3.02nMおよび2.77nMであった。SW-780 FGFR3-BAIAP2L融合を有する膀胱癌(bladder carcinoma)細胞の平均pERK EC50値は、2.68であった。
【0060】
【表5】
【0061】
FGFR2増幅ヒト癌細胞におけるFGFR2自己リン酸化の阻害
FGFR2のTyr653/654自己リン酸化部位の化合物1の阻害を、2つのFGFR2増幅ヒト癌細胞株において、複数の独立した実験で評価した。細胞活性は、表6に示すように、阻害剤投与2時間後にFGFR2のリン酸化の調節によって決定し、リン酸化Tyr653/654に特異的なMeso Scale Discoveryアッセイで測定した。化合物1は、SNU-16およびKATO-III胃癌(gastric cancer)細胞株において、それぞれ3.01nMおよび5.53nMの平均EC50値で細胞pFGFR2を阻害した。
【0062】
【表6】
【0063】
FGFR調節不全ヒト癌細胞増殖の阻害
複数の独立した実験において、細胞増殖の化合物1の阻害を、ヒトFGFR調節不全癌モデルのパネルにわたって評価し、化合物1の投与5日後にCellTiter-Glo(CTG)により測定した。表7に示すように、FGFR2増幅胃SNU-16細胞およびKATO-III細胞では、化合物1のEC50値は、3.89nMおよび5.19nMであった。FGFR3融合発現膀胱癌(bladder carcinoma)細胞株RT-112、RT-4、およびSW-780の細胞EC50値は、それぞれ4.14nM、5.96nM、および4.14nMであった。
【0064】
【表7】
【0065】
結論
化合物1は、野生型および変異型FGFRキナーゼファミリータンパク質の細胞ターゲットエンゲージメント、ならびにFGFR2およびFGFR3調節不全ヒト癌細胞モデルのパネルにわたる細胞活性を示した。化合物1の細胞ターゲットエンゲージメントは、野amongst others生型FGFR1、FGFR2、FGFR3、およびFGFR4、ならびにゲートキーパー残基および分子ブレーキ残基に既知の二次キナーゼドメイン耐性変異を含むFGFR2およびFGFR3タンパク質において確立された。試験した5つのヒト腫瘍細胞株における化合物1の内因性FGFR阻害のEC50値は、1~6nMであった。総合すると、これらの知見は、化合物1がヒトFGFR駆動型癌細胞の増殖およびFGFRシグナル伝達を強力に阻害し、臨床的に関連する変異FGFRタンパク質と結合することを示す。
【0066】
実施例3:異種移植片モデルにおける抗増殖活性の決定
新規の、次世代の、不可逆的な、低分子の汎FGFR阻害剤である化合物1は、承認されたFGFRキナーゼ阻害剤に対する耐性を引き起こすことが知られている、臨床的に観察される二次変異を阻害する。前臨床試験によれば、化合物1は、とりわけFGFR2およびFGFR3のゲートキーパー(それぞれFGFR2-V565F(FGFR2-V564Fとしても知られる)およびFGFR3-V555M)、分子ブレーキ(FGFR2-N550X(FGFR2-N549Xとしても知られる))、および活性化ループ(FGFR3-K650M)変異などに対して強力であり、低ナノモルの生化学的および細胞ターゲットエンゲージメント半数阻害濃度(IC50)値を示す。そのため、化合物1は、第1世代のFGFR阻害剤で進行したFGFR駆動型腫瘍患者の標的耐性変異に対処する可能性があるだけでなく、フロントライン治療における反応期間を延長する可能性もある。ここでは、化合物1の生体忍容性および抗腫瘍活性を、FGFR2およびFGFR3駆動型ヒト癌細胞株由来の異種移植片モデルで評価した。
【0067】
試験デザイン
平均腫瘍体積が約200~250mmに達した時点で、グループ分けと治療を開始した。マウスは、開始時の腫瘍体積および体重に基づいて各グループに割り当てられ、両パラメータの平均値が各治療グループでバランスが取れるようにした。FGFR駆動型ヒト癌(RT-112およびSNU-16)における化合物1の抗腫瘍活性を評価するためのグループと治療を表8に示す。
【0068】
【表8】
【0069】
結果
I.ヒトRT-112膀胱移行細胞癌異種移植片モデル
FGFR3-TACC3融合を有するヒトRT-112膀胱移行細胞癌異種移植片モデルにおいて、化合物1の抗腫瘍活性を評価した。化合物1(2、5、または15mg/kg)を用いる治療は、腫瘍体積が約200~250mm(全グループの実際の平均腫瘍体積は、264mm)に達した時点で開始し、1日1回(QD)を3週間継続した。
【0070】
RT-112異種移植片を有するマウスに化合物1をPOおよびQD投与する治療では、最後の投与後24時間のAUClast値は、1,320~9,760h*ng/mLであった。化合物1の投与により、対照(賦形剤投与)腫瘍に対する用量依存的な腫瘍増殖抑制が観察された(図1A)。試験された用量は全て忍容性が良好であったが、15mg/kgで治療した動物では、若干の体重減少が観察された(平均体重減少5.4%、図1B)。15mg/kgのコホートでは、3匹の動物が治療中に体重の10%以上を失ったが、試験終了時には回復していた。
【0071】
治療グループ別の、ベースラインからの腫瘍体積の変化として定義される個々の腫瘍反応および平均TGIのウォーターフォールプロットを、それぞれ図1Cおよび表9に示す。RT-112腫瘍増殖の統計学的に有意な減少が試験した全ての用量で達成された。2mg/kg、5mg/kgおよび15mg/kgの1日投与量で達成された平均TGIは、それぞれ80%、91%および99%であり(p<0.0001、図1Cおよび表9)、後者の2つのグループでは、それぞれ9匹中4匹(44%)が腫瘍退縮を示した。表9は、化合物1によるFGFR3駆動型膀胱癌(bladder cancer)(RT-112)異種移植片腫瘍増殖阻害の結果の概要である。
【0072】
【表9】
【0073】
II.ヒトSNU-16胃癌異種移植片モデル
次に、FGFR2遺伝子増幅を示すヒト異種移植片モデルおよびFGFR2-PDHXを含む低レベルのFGFR2融合において、化合物1の抗腫瘍活性を評価した。SNU-16胃癌細胞株由来の異種移植片も同様に、化合物1を1日2mg/kg、5mg/kg、15mg/kgで3週間投与した。腫瘍体積が約200~250mmになった時に治療を開始した(全グループの実際の平均TVは、262mmであった)。
【0074】
SNU-16異種移植片を有するマウスに化合物1をPOおよびQD投与する治療では、最後の投与後24時間のAUClast値は、1,090~9,760hng/mLであった。化合物1の投与により、対照(賦形剤投与)腫瘍に対するSNU-16腫瘍の用量依存的な増殖抑制が観察された(図2A)。試験した全ての用量および投与スケジュールは、投与動物に有意な体重変化がないことから示されるように、忍容性が良好であった(図2B)。
【0075】
治療グループ別の個々の腫瘍反応および平均TGIのウォーターフォールプロットを、それぞれ図2Cおよび表10に示す。SNU-16腫瘍増殖の統計学的に有意な減少が試験した全ての用量で達成された。2mg/kg、5mg/kgおよび15mg/kgの1日投与量で達成された平均TGIは、それぞれ69%、81%および93%であった(p<0.0001、図2、表10)。腫瘍の退縮は、15mg/kg QDコホートの1匹の動物で観察された。表10は、化合物1によるFGFR2駆動型胃癌(gastric cancer)(SNU-16)異種移植片腫瘍増殖阻害の結果の概要である。
【0076】
【表10】
【0077】
結論
化合物1の毎日の投与(2~15mg/kg)により、FGFR2およびFGFR3駆動型ヒト癌細胞株由来の異種移植片の増殖に対する用量依存的阻害が観察された。RT-112(FGFR3-TACC3融合陽性)およびSNU-16(FGFR2増幅およびFGFR2-PDHX融合陽性)の異種移植片は、それぞれ80~99%および69~93%の平均TGIを示した(p<0.0001)。前者のモデルでは、化合物1の最高用量(15mg/kg)で体重減少が認められたが、後者のモデルでは認められなかった。総合すると、化合物1の経口投与は、FGFR駆動型ヒト癌のマウス異種移植片モデルにおいて一般的に忍容性が高く、有効である。
【0078】
実施例4:ヒト臨床試験における化合物1の使用
表題:FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍を有する参加者における化合物1の安全性、忍容性、薬物動態、薬力学、および抗腫瘍活性を調査するための第1/1b相、非盲検、多施設、二部構成試験
治験薬:化合物1
試験相:第1/1b相
適応症:FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍
【0079】
概要
本試験は、次世代の不可逆的な低分子汎線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害剤である化合物1の安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)、および抗腫瘍活性を評価するために設計された、ファースト・イン・ヒューマン(FIH)、二部構成、非盲検、多施設、用量漸増、および用量拡大試験である。さらに、本試験では、さらなる臨床開発のための化合物1の推奨第2相用量(RP2D)を決定し、関連するFGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍を有する参加者を対象に、化合物1の治療に対する客観的反応を評価する。
【0080】
試験目的
本試験の用量漸増部であるA部の主な目的は、FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍を有する参加者における、用量制限毒性(DLT)を含む化合物1の経口投与の安全性および忍容性を決定し、さらなる臨床開発のために化合物1の最大耐容量(MTD)および/またはRP2Dを特定することである。
【0081】
本試験の用量拡大部であるB部の主な目的は、FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍(肝内胆管癌[ICC]、尿路上皮癌(urothelial carcinoma)[UC]、および必要に応じて他の固形癌を含む)を有する参加者における、化合物1の抗腫瘍活性の予備的証拠を評価することである。
【0082】
副次的目的は、化合物1のPKを特徴付けることである。
【0083】
探索的目的には、有効性および安全性に関する曝露反応関係ならびに潜在的な化合物1の代謝物のさらなる特徴付けと、化合物1による目標PD調節の評価と、血液サンプルおよび/または腫瘍生検における化合物1に対する反応/耐性の潜在的なバイオマーカーの評価とが含まれる。
【0084】
試験デザイン
本試験は二部構成で実施される。A部は用量漸増、B部は用量拡大である。A部は、化合物1の安全性、忍容性、PK、およびPDを評価し、修正ベイズ最適間隔(BOIN)デザインを用いて、FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍を有する参加者における1日1回(QD)投与スケジュールのMTDを決定することを目的とする。A部でMTDおよび/または生物学的に活性な用量(例えば、さらなる臨床開発のための化合物1のRP2D)が決定されると、試験の用量拡大部(B部)を開始することができる。A部は最大約45名の参加者で構成され、B部は、FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍(すなわち、ICC、UC、およびその他全ての進行腫瘍)を有する少なくとも3名のコホートを含む約75名の参加者で構成される。B部では、A部の臨床データおよびPKデータに基づいて異なる投与スケジュールを使用することができるが、28日間の毎日の投与スケジュールよりも少ない投与強度を有するものに限定される。DLT評価期間は、28日間である。
【0085】
A部およびB部の参加者に対する化合物1の投与は、疾患の進行、試験薬に対する不耐性、許容できない毒性、癌に対する新たな全身療法の開始、同意の撤回、治験責任医師/治験依頼者の決定、または死亡の証拠が得られるまで継続することができる。
【0086】
A部(用量漸増):
A部は、FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍を有する参加者における化合物1のMTDおよび/またはRP2Dを特定するために修正BOIN用量漸増スキームに従う。MTDの目標DLT率は、28日間のDLT評価期間中に用量レベルでDLTを経験した参加者の30%と定義される。
【0087】
A部では、FGFR2および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍を有する参加者が、プロトコルで定義された全ての適格性要件を満たすことを条件として含まれる。
【0088】
FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍を有する参加者に、化合物1を28日間の治療サイクルでQD経口投与する。試験データに応じて代替投与スケジュールが含まれ、用量審査委員会(DRC)によって推奨される場合がある。
【0089】
本試験は、3名のコホート人数で開始される。開始用量である用量レベル1(DL1)は、現在の用量レベルで観察されたDLT率を、固定の予め指定された用量漸増境界値0.197(λe)および非漸増境界値0.298(λd)と比較することにより、5mgとする(表11参照)。A部の用量漸増のための暫定的な化合物1用量レベル。また、現在の用量レベルで治療された参加者数に対する観察されたDLTの数に基づいて、現在の用量を漸増、漸減、排除、または維持することを決定することもできる(表2)。「排除」とは、毒性が強すぎるため、将来の患者をこれらの用量レベルで治療することを防ぐために、現在の用量およびそれ以上の用量を試験から排除することを意味する。最低用量が排除されると、MTDを選択することなく試験は中止される。
【0090】
【表11】

*用量漸増のステップサイズは、100%を上限とする。コホートに登録される参加者数は、その投与コホート中にDLTが発生するかどうかによる。最大コホート人数は、9名である。
【0091】
【表12】
【0092】
用量漸増は、表12および図3に概説されている修正BOIN決定規則に従って、計画されたサンプルサイズ(n=30)に達するか、または最大コホート人数(n=9)に達するまで、次のより高い用量へと継続する。暫定的な化合物1の用量レベルは、表11に示されている。必要に応じて、中間用量が推奨されることもある。
【0093】
治験責任医師と治験依頼者の代表者で構成される用量審査委員会(DRC)は、次の用量レベルでの登録を開始する前に、利用可能な安全性、PK、およびPDのデータを審査する。具体的なステップサイズは、修正BOINデザイン推奨を参照し、場合によっては、追加の補足的なベイズモデルを追加して決定してもよい。上記の用量漸増および用量漸減のルールは、試験が行われる中間用量レベルにも適用される。DRCは、十分な安全性、有効性、およびPK/PDデータが得られた時点で、さらなる臨床開発のために化合物1のMTDおよび/またはRP2Dを決定する。
【0094】
本試験のA部では、治験依頼者の判断で、参加者内での用量漸増およびバックフィルが認められる。
【0095】
B部(用量拡大):
B部では、以下のコホート(約25名/コホート)における、A部で決定されたコホート拡大のための化合物1の推奨用量での化合物1の抗腫瘍活性を評価する。
・コホート1:FGFR2遺伝子変異を伴う進行ICCの参加者
・コホート2:FGFR2および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行UCの参加者
・コホート3:FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍(ICCまたはUC以外)を有する参加者
【0096】
3つの用量拡大コホートへの参加者の登録は同時に行われてもよいが、A部では行われない。指針として、許容される遺伝子変異の表が提供される。
【0097】
コホート1と2については、Simonの2段階最適設計が計画されている。
【0098】
コホート3では、FGFR2および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う様々な腫瘍タイプを有する参加者の登録が、本試験の過程でモニタリングされる。特定の腫瘍タイプの登録は、このコホートにおける様々な進行腫瘍の幅広い提示を確保するために、制限される場合がある。
【0099】
試験評価項目
主要評価項目
安全性の評価項目には、以下が含まれる。
・用量制限毒性(DLT)の発生率
・治療有害事象(TEAE)および治療関連有害事象(TRAE)を含む有害事象(AE)の発生率
・バイタルサイン、身体検査、12誘導心電図(ECG)、および臨床検査における臨床的に有意な変化
【0100】
有効性は、以下によって測定される。
・固形癌の効果判定基準(RECIST:Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)v1.1に従って、部分奏効(PR)と完全奏効(CR)を足した割合として定義される客観的奏効率(ORR)
・病勢コントロール率(DCR)
・奏効期間(DOR)
・無増悪生存期間(PFS)
【0101】
副次的評価項目
化合物1のPKパラメータには、最大血漿中濃度(Cmax)、Cmax到達時間(tmax)、および血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)が含まれるが、これらに限定されない。
探索的
・化合物1の曝露と安全性および曝露と有効性の関係
・全生存期間(OS)
・安定期間
・血漿中および尿中の化合物1の潜在的代謝物の特性評価
・拡大コホート(B部)では、生活の質のPROを組み入れる可能性がある(例:5Q-ED-5L)。
・血中および/または腫瘍生検サンプル中のリン濃度、FGF23濃度、ゲノム解析、遺伝子発現プロファイリング(GEP)、およびFGFR経路調節を含むがこれらに限定されないバイオマーカーの分子解析および/または遺伝学的解析により、薬力学的関係を評価し、潜在的な耐性メカニズムを特徴付けること。
【0102】
サンプルサイズ
A部(用量漸増):
本試験のA部には、最大約45名の参加者が登録される。45名の参加者のうち約30名が、修正BOINデザインに従って登録される。MTDおよび/またはRP2Dをさらに特徴付けるため、バックフィルとして最大15名の参加者が追加登録される場合がある。
B部(用量拡大):
【0103】
約75名の参加者が、以下のコホート(約25名の参加者/コホート)を含む試験のB部に登録される。
・コホート1:FGFR2遺伝子変異を伴う進行ICCの参加者
・コホート2:FGFR2および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行UCの参加者
・コホート3:FGFR1、FGFR2および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍(ICCまたはUC以外)を有する参加者
【0104】
参加者適格基準の概要
組織学的または細胞学的に進行期悪性腫瘍の診断が確認された成人参加者(18歳以上、または現地の管轄区域において成人年齢以上)は、本試験の対象となる。A部の用量漸増では、FGFR1、FGFR2および/またはFGFR3遺伝子変異を伴うあらゆるタイプの進行腫瘍を有する参加者を登録する。B部の用量拡大では、FGFR2遺伝子変異を伴う進行ICC、FGFR2および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行UC、あるいはFGFR1、FGFR2および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍(ICCまたはUC以外)を有する参加者を登録する。参加者は、腫瘍のタイプと病期に適した標準治療(現地の管轄区域で承認された薬剤を含む)を以前に受けているか、または治験責任医師の見解では、標準治療に耐えられないか、標準治療から臨床的に意味のある利益を得る見込みがないかのいずれかでなければならない。腫瘍に関連しないカルシウム-リン恒常性の変化の既往歴および/または現在の証拠を有する参加者、臨床的に有意な異所性鉱化/石灰化の既往歴および/または現在の証拠を有する参加者、または臨床的に有意な網膜障害の既往歴および/または現在の証拠を有する参加者は、本試験への参加から除外される。
【0105】
参加登録は、臨床検査室改善法(CLIA)認定の検査施設(米国内)、または現地の規制要件(他の国内)に従って実施された腫瘍組織またはctDNAの以前のゲノム解析によって確認された、FGFR1、FGFR2、および/またはFGFR3遺伝子変異を伴う進行腫瘍を有する参加者に制限される。同意後、参加者は病歴を提出し、スクリーニング安全性テストを受け、本試験の全ての適格性要件が満たされていることを確認する。参加者は、過去5年以内に採取された保存腫瘍組織標本(ホルマリン固定パラフィン包埋[FFPE]標本)を提供し(入手可能な場合)、医学的に可能であれば、必須の治療前腫瘍生検を受ける。
【0106】
試験地/場所
本試験は、A部については約10ヶ所、B部については約30ヶ所で世界的に実施される。
【0107】
試験期間
本試験の推定実施期間は、約4年間である。
【0108】
治療期間
参加者は、疾患の進行、試験薬に対する不耐性、許容できない毒性、癌に対する新たな全身療法の開始、同意の撤回、治験責任医師の決定、スポンサーの決定、または死亡の証拠が得られるまで、化合物1を28日周期で投与される。
【0109】
統計的考察
本試験のA部では、MTDの目標DLT率を25%とする修正BOINデザインが使用される。A部の用量漸増が完了すると、さらなる臨床開発のための化合物1のMTDおよび/またはRP2Dを特定するために、等張回帰分析が実施される。全ての用量レベルにわたって観察されたDLTの概要は、AEおよび重篤な有害事象(SAE)の概要とともに提供される。
【0110】
全てのAE、臨床試験値およびバイタルサインの解析を含む安全性解析には、本試験のA部およびB部の両方で化合物1の少なくとも1回の投与を受けた全ての参加者が含まれる。
【0111】
有効性解析は、B部に登録された参加者に焦点を当てる。しかしながら、B部と同じ用量を投与される参加者は、感度解析として適切な疾患コホートに含まれてもよい。ORRエンドポイントについては、クロッパー・ピアソン95%信頼区間(CI)が提供される。DORは、奏効者(CRおよびPR)において算出される。PFS、OS、およびSDの期間は、カプラン・マイヤー曲線のグラフ表示を用いたカプラン・マイヤー法を用いて解析される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
【国際調査報告】