IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スペースクラフト セブン リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特表2024-546103AAVベクターを用いたジャンクトフィリン-2(JPH2)遺伝子治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】AAVベクターを用いたジャンクトフィリン-2(JPH2)遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20241210BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241210BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241210BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241210BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
A61K35/76
A61P9/00
A61P9/06
A61P9/04
A61K48/00
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534162
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 US2022081122
(87)【国際公開番号】W WO2023108029
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,393
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521067485
【氏名又は名称】スペースクラフト セブン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ハーツォグ クリストファー ディーン
(72)【発明者】
【氏名】サクラメント チェスター ビッテンコート
(72)【発明者】
【氏名】リックス デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】プラバカール ラジ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA09
4C087CA12
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA36
(57)【要約】
例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた、JPH2 (ジャンクトフィリン-2)の遺伝子治療を本明細書において提供する。ベクターのプロモーターは、MHCK7プロモーターまたは心筋トロポニンT (HTNNT2)プロモーターでありうる。キャプシドは、AAV9もしくはAAVrh74キャプシドまたはその機能的バリアントでありうる。他のプロモーターまたはキャプシドを用いてもよい。rAAVベクターの静脈内投与、冠動脈内投与、頸動脈内投与または心臓内投与によるなどの処置の方法ならびに他の組成物および方法をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発現カセットおよび任意で隣接するアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復配列(ITR)を含むポリヌクレオチドであって、プロモーターに機能的に連結された、ジャンクトフィリン-2 (JPH2)またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む、前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
プロモーターが心臓特異的プロモーターである、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
プロモーターが筋肉特異的プロモーターである、請求項1または請求項2記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
プロモーターが心筋細胞特異的プロモーターである、請求項1~3のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
プロモーターがミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7 (MHCK7)プロモーターである、請求項1~4のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
MHCK7プロモーターがSEQ ID NO: 31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する、請求項5記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
プロモーターが心筋トロポニンT (hTNNT2)プロモーターである、請求項1~4のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
hTNNT2プロモーターがSEQ ID NO: 33と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する、請求項7記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
発現カセットが、心筋トロポニンT (hTNNT2)遺伝子のエクソン1を含み、ここで任意で、該hTNNT2のプロモーターおよびエクソン1が一緒になって、SEQ ID NO: 32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有していてもよい、請求項1~8のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
プロモーターが遍在性プロモーター、任意でCMVプロモーターまたはCAGプロモーターである、請求項1~4のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
発現カセットがポリAシグナルを含む、請求項1~10のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
ポリAシグナルがヒト成長ホルモン(hGH)ポリAである、請求項11記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
発現カセットがウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、任意でWPRE(x)を含む、請求項1~12のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
発現カセットが緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む、請求項1~12のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
ジャンクトフィリン-2 (JPH2)またはその機能的バリアントがJPH2である、請求項1~14のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
JPH2がヒトJPH2である、請求項14または請求項15記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
JPH2をコードするポリヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する、請求項1~16のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
JPH2をコードするポリヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する、請求項1~16のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
JPH2をコードするポリヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 6と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する、請求項1~16のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
JPH2をコードするポリヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 8と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する、請求項1~16のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
JPH2をコードするポリヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 10と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する、請求項1~16のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
JPH2をコードするポリヌクレオチド配列がヒトJPH2ポリヌクレオチドである、請求項1~21のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
少なくとも約3.0 kb、少なくとも約3.2 kb、少なくとも約3.4 kb、少なくとも約3.5 kb、少なくとも約3.7 kb、少なくとも約4.0 kb、少なくとも約4.1 kb、少なくとも約4.2 kb、少なくとも約4.3 kb、少なくとも約4.4 kb、少なくとも約4.5 kb、少なくとも約4.6 kb、少なくとも約4.7 kb、少なくとも約4.8 kbまたは少なくとも約5.0 kbを含む、請求項1~22のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
多くても約3.1 kb、多くても約3.3 kb、多くても約3.5 kb、多くても約3.7 kb、多くても約3.9 kb、多くても約4.1 kb、多くても約4.2 kb、多くても約4.3 kb、多くても約4.4 kb、多くても約4.5 kb、多くても約4.6 kb、多くても約4.7 kb、多くても約4.8 kb、多くても約4.9 kbまたは多くても約5.0 kbを含む、請求項1~23のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
4.4 kb~5.0 kb、4.4 kb~4.9 kbもしくは4.4 kb~4.8 kbを含むか、4.0 kb~4.6 kb、4.0 kb~4.5 kbもしくは4.0 kb~4.4 kbを含むか、4.0 kb~4.3 kb、4.0 kb~4.2 kbもしくは4.0 kb~4.1 kbを含むか、または3.0 kb~3.9 kb、3.0 kb~3.8 kbもしくは3.0 kb~3.7 kbを含む、請求項1~24のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
JPH2またはその機能的バリアントが、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸を含む、請求項1~24のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
発現カセットが5'および3'逆位末端反復配列(ITR)によって挟まれている、請求項1~26のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
前記ITRがAAV2 ITRであり、および/または前記ITRがSEQ ID NO: 15~21のいずれか1つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有する、請求項27記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクター。
【請求項30】
遺伝子治療ベクターが、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項29記載のベクター。
【請求項31】
rAAVベクターがAAV9またはその機能的バリアントである、請求項30記載のベクター。
【請求項32】
rAAVベクターが、SEQ ID NO: 97のいずれか1つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項31記載のベクター。
【請求項33】
rAAVベクターがAAVrh10またはその機能的バリアントである、請求項30記載のベクター。
【請求項34】
rAAVベクターが、SEQ ID NO: 99のいずれか1つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項33記載のベクター。
【請求項35】
rAAVベクターがAAV6またはその機能的バリアントである、請求項30記載のベクター。
【請求項36】
rAAVベクターが、SEQ ID NO: 98のいずれか1つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項35記載のベクター。
【請求項37】
rAAVベクターがAAVrh74またはその機能的バリアントである、請求項36記載のベクター。
【請求項38】
rAAVベクターが、SEQ ID NO: 100のいずれか1つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む、請求項37記載のベクター。
【請求項39】
その必要がある対象において疾患または障害を処置および/または予防する方法であって、請求項29~38のいずれか一項記載のベクターを該対象に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項40】
疾患または障害が心臓障害である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
心臓障害が心筋症、任意で家族性肥大型心筋症17である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
心筋症が肥大型心筋症(HCM) (異常肥大)である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
心筋症が拡張型心筋症(DCM)である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
疾患または障害が不整脈、任意で心房細動または洞結節疾患である、請求項39または40記載の方法。
【請求項45】
疾患または障害が心不全である、請求項39または40記載の方法。
【請求項46】
対象が哺乳動物である、請求項39~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
対象が霊長類である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
対象がヒトである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
対象がJPH2遺伝子における変異を有する、請求項39~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
対象がJPH2の切断型バリアントを有する、請求項39~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
前記ベクターが静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法によって投与される、請求項39~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
前記投与がJPH2発現を少なくとも約5%増加させる、請求項39~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
前記投与がJPH2発現を少なくとも約30%増加させる、請求項39~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
前記投与がJPH2発現を少なくとも約70%増加させる、請求項39~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
前記投与がJPH2発現を約5%~約10%増加させる、請求項39~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
前記投与がJPH2発現を約30%~約50%増加させる、請求項39~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記投与がJPH2発現を約50%~約70%増加させる、請求項39~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
前記投与がJPH2発現を約70%~約100%増加させる、請求項39~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
疾患または障害を処置および/または予防する、請求項39~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
有効量の前記ベクターを投与する段階を含む、請求項39~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
疾患または障害が、対象におけるJPH2の切断に関連するかまたはそれによって引き起こされる、請求項39~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
有効量の前記ベクターを含む薬学的組成物を投与する段階を含む、請求項39~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
約1×1011ベクターゲノム~約1×1013ベクターゲノムの前記ベクターを対象に投与する段階、約1×1012ベクターゲノム~約1×1014ベクターゲノムの前記ベクターを対象に投与する段階、または約1×1013ベクターゲノム~約1×1015ベクターゲノムの前記ベクターを対象に投与する段階を含む、請求項39~62のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
請求項29~38のいずれか一項記載のベクターを含む、薬学的組成物。
【請求項65】
請求項29~38のいずれか一項記載のベクターまたは請求項64記載の薬学的組成物および任意で使用説明書を含む、キット。
【請求項66】
任意で請求項39~63のいずれか一項記載の方法による、疾患または障害の処置における請求項29~38のいずれか一項記載のベクターの使用。
【請求項67】
任意で請求項39~63のいずれか一項記載の方法による、疾患または障害の処置における使用のための請求項29~38のいずれか一項記載のベクター。
【請求項68】
SEQ ID NO: 26~30のいずれか1つとまたはSEQ ID NO: 76~95のいずれか1つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項69】
MHCK7プロモーターを含む、請求項68記載のポリヌクレオチド。
【請求項70】
MHCK7プロモーターがSEQ ID NO: 31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する、請求項69記載のポリヌクレオチド。
【請求項71】
ヒトJPH2をコードする配列を含む、請求項68記載のポリヌクレオチド。
【請求項72】
請求項68~71のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクター。
【請求項73】
遺伝子治療ベクターが、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項72記載のベクター。
【請求項74】
rAAVベクターがAAV9ベクターである、請求項73記載のベクター。
【請求項75】
rAAVベクターがAAVrh74ベクターである、請求項73記載のベクター。
【請求項76】
請求項72~75のいずれか一項記載のベクターを対象に投与する段階を含む、JPH2における切断を有すると同定された対象において心臓障害を処置および/または予防する方法。
【請求項77】
心臓障害が心筋症、任意で家族性肥大型心筋症17である、請求項76記載の方法。
【請求項78】
心筋症が肥大型心筋症(HCM) (異常肥大)である、請求項77記載の方法。
【請求項79】
心筋症が拡張型心筋症(DCM)である、請求項77記載の方法。
【請求項80】
心臓障害が不整脈、任意で心房細動もしくは洞結節疾患、または家族性肥大型心筋症17である、請求項76記載の方法。
【請求項81】
心臓障害が心不全である、請求項76記載の方法。
【請求項82】
対象が哺乳動物である、請求項76~81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
前記ベクターが静脈内注射、心臓内注射、心臓内注入、および/または心臓カテーテル法によって投与される、請求項76~82のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月8日付で出願された米国仮特許出願第63/287,393号の優先権の恩典を主張するものであり、その開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み入れられる。配列表を含むテキストファイルの名前は、ROPA_025_01WO_SeqList_ST26.xmlである。テキストファイルは約 272,918 バイトで、2022 年 12 月 6 日に作成され、EFS-Web 経由で電子的に提出されている。
【背景技術】
【0003】
背景
肥大型心筋症(HCM)も拡張型心筋症(DCM)もともに、重篤な致命的疾患である。遺伝子ジャンクトフィリン-2 (JPH2)の機能喪失変異は、HCMおよびDCM、ならびに心房細動(AF)などの、他の心臓病に関連している。
【0004】
ジャンクトフィリン-2 (JPH2)は、心筋細胞の接合膜複合体(JMC)内の筋小胞体にある横行(T)管関連の心臓L型Ca2+チャネルと2型リアノジン受容体との間の橋渡しとなる構造タンパク質である。これらのチャネル間の効果的なシグナル伝達により、正常な心筋収縮能に必要とされる十分なCa2+放出が確保される。JPH2の下方制御は、不全心臓の一般的な特徴である、JMC細胞内ドメインの破壊で検出される。
【0005】
薬物療法および心臓アブレーションを含む現在の処置法は、JPH2欠損型心筋症患者には依然として効果がない。それゆえ、心筋症および他の心臓病を含む、JPH2関連疾患および障害の処置に対する当技術分野における満たされていない要求が依然として存在している。本明細書において開示される組成物および方法は、この要求に対処するものである。
【発明の概要】
【0006】
概要
本開示は全体として、JPH2またはその機能的バリアントを発現するベクターを用いた疾患または障害、例えば、心臓疾患または障害の遺伝子治療に関する。
【0007】
1つの局面において、本開示は、発現カセットおよび任意で隣接するアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復配列(ITR)を含むポリヌクレオチドであって、プロモーターに機能的に連結された、ジャンクトフィリン-2 (JPH2)またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
いくつかの態様において、プロモーターは心臓特異的プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは筋肉特異的プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは心筋細胞特異的プロモーターである。
【0009】
いくつかの態様において、プロモーターはミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7 (MHCK7)プロモーターである。いくつかの態様において、MHCK7プロモーターはSEQ ID NO: 31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0010】
いくつかの態様において、プロモーターは心筋トロポニンT (hTNNT2)プロモーターである。いくつかの態様において、hTNNT2プロモーターはSEQ ID NO: 32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する。いくつかの態様において、発現カセットは、心筋トロポニンT (hTNNT2)遺伝子のエクソン1を含み、ここで任意でhTNNT2プロモーターおよびエクソン1は一緒になって、SEQ ID NO: 32と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有していてもよい。
【0011】
いくつかの態様において、プロモーターは遍在性プロモーター、任意でCMVプロモーターまたはCAGプロモーターである。
【0012】
いくつかの態様において、発現カセットはポリAシグナルを含む。いくつかの態様において、ポリAシグナルはヒト成長ホルモン(hGH)ポリAである。
【0013】
いくつかの態様において、発現カセットはウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、任意でWPRE(x)を含む。
【0014】
いくつかの態様において、発現カセットは緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む。
【0015】
いくつかの態様において、ジャンクトフィリン-2 (JPH2)またはその機能的バリアントはJPH2である。いくつかの態様において、JPH2はヒトJPH2である。いくつかの態様において、JPH2をコードするポリヌクレオチド配列はヒトJPH2ポリヌクレオチドである。
【0016】
いくつかの態様において、JPH2をコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0017】
いくつかの態様において、JPH2をコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0018】
いくつかの態様において、JPH2をコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 6と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0019】
いくつかの態様において、JPH2をコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 8と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0020】
いくつかの態様において、JPH2をコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 10と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0021】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは少なくとも約3.0 kb、少なくとも約3.2 kb、少なくとも約3.4 kb、少なくとも約3.5 kb、少なくとも約3.7 kb、少なくとも約4.0 kb、少なくとも約4.1 kb、少なくとも約4.2 kb、少なくとも約4.3 kb、少なくとも約4.4 kb、少なくとも約4.5 kb、少なくとも約4.6 kb、少なくとも約4.7 kb、少なくとも約4.8 kbまたは少なくとも約5.0 kbを含む。
【0022】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは多くても約3.1 kb、多くても約3.3 kb、多くても約3.5 kb、多くても約3.7 kb、多くても約3.9 kb、多くても約4.1 kb、多くても約4.2 kb、多くても約4.3 kb、多くても約4.4 kb、多くても約4.5 kb、多くても約4.6 kb、多くても約4.7 kb、多くても約4.8 kb、多くても約4.9 kbまたは多くても約5.0 kbを含む。
【0023】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは4.4 kb~5.0 kb、4.4 kb~4.9 kbもしくは4.4 kb~4.8 kbを含むか、ポリヌクレオチドは4.0 kb~4.6 kb、4.0 kb~4.5 kbもしくは4.0 kb~4.4 kbを含むか、ポリヌクレオチドは4.0 kb~4.3 kb、4.0 kb~4.2 kbもしくは4.0 kb~4.1 kbを含むか、またはポリヌクレオチドは3.0 kb~3.9 kb、3.0 kb~3.8 kbもしくは3.0 kb~3.7 kbを含む。
【0024】
いくつかの態様において、JPH2またはその機能的バリアントは、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸を含む。
【0025】
いくつかの態様において、JPH2またはその機能的バリアントは、少なくとも600または少なくとも696アミノ酸を含む。
【0026】
いくつかの態様において、JPH2またはその機能的バリアントは、少なくとも100または少なくとも129アミノ酸を含む。
【0027】
いくつかの態様において、発現カセットは5'および3'逆位末端反復配列(ITR)によって挟まれている。いくつかの態様において、ITRはAAV2 ITRであり、および/またはITRはSEQ ID NO: 15~21のいずれか1つと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有する。
【0028】
1つの局面において、本開示は、本開示において記述されるポリヌクレオチドを含む、遺伝子治療ベクターを提供する。いくつかの態様において、遺伝子治療ベクターは、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである。いくつかの態様において、rAAVベクターはAAV9またはその機能的バリアントである。いくつかの態様において、rAAVベクターは、SEQ ID NO: 97のいずれか1つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む。いくつかの態様において、rAAVベクターはAAVrh10またはその機能的バリアントである。いくつかの態様において、rAAVベクターは、SEQ ID NO: 99のいずれか1つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む。いくつかの態様において、rAAVベクターはAAV6またはその機能的バリアントである。いくつかの態様において、rAAVベクターは、SEQ ID NO: 98のいずれか1つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む。
【0029】
いくつかの態様において、rAAVベクターはAAVrh74またはその機能的バリアントである。いくつかの態様において、rAAVベクターは、SEQ ID NO: 100のいずれか1つと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するキャプシドタンパク質を含む。
【0030】
1つの局面において、本開示は、その必要がある対象において疾患または障害を処置および/または予防する方法であって、本開示のベクターを対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0031】
いくつかの態様において、疾患または障害は心臓障害である。いくつかの態様において、心臓障害は肥大型心筋症(HCM)または拡張型心筋症(DCM)などの、心筋症である。いくつかの態様において、疾患または障害は不整脈である。いくつかの態様において、不整脈は心房細動である。いくつかの態様において、不整脈は洞結節疾患である。いくつかの態様において、疾患または障害は家族性肥大型心筋症17である。いくつかの態様において、疾患または障害は心不全である。
【0032】
いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、対象は霊長類である。いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0033】
いくつかの態様において、対象はJPH2遺伝子における変異を有する。いくつかの態様において、対象はJPH2の切断型バリアントを有する。
【0034】
いくつかの態様において、ベクターは静脈内投与、心臓内投与、冠動脈内投与、心臓内投与、および/または心臓カテーテル法によって投与される。ある種の態様において、いずれの投与経路も注入または注射によって実施されうる。
【0035】
いくつかの態様において、投与はJPH2発現を少なくとも約5%増加させる。いくつかの態様において、投与はJPH2発現を少なくとも約30%増加させる。いくつかの態様において、投与はJPH2発現を少なくとも約70%増加させる。いくつかの態様において、投与はJPH2発現を約5%~約10%増加させる。いくつかの態様において、投与はJPH2発現を約30%~約50%増加させる。いくつかの態様において、投与はJPH2発現を約50%~約70%増加させる。いくつかの態様において、投与はJPH2発現を約70%~約100%増加させる。
【0036】
1つの局面において、本開示は、疾患または障害を処置および/または予防する方法を提供する。いくつかの態様において、本方法は有効量のベクターを投与する段階を含む。いくつかの態様において、疾患または障害は、対象におけるJPH2の切断に関連するか、またはそれによって引き起こされる。いくつかの態様において、本方法は、有効量のベクターを含む薬学的組成物を投与する段階を含む。
【0037】
いくつかの態様において、本方法は、約1×1011ベクターゲノム~約1×1013ベクターゲノムのベクターを対象に投与する段階、約1×1012ベクターゲノム~約1×1014ベクターゲノムのベクターを対象に投与する段階、約1×1013ベクターゲノム~約1×1015ベクターゲノムを投与する段階、もしくは約1×1015ベクターゲノム~約1×1017ベクターゲノムを投与する段階、もしくは約1×1017ベクターゲノム~約1×1018ベクターゲノムのベクターを対象に投与する段階、またはこれらの値のいずれか2つの間の任意の範囲のものを投与する段階を含む。
【0038】
1つの局面において、本開示は、本開示のベクターを含む薬学的組成物を提供する。
【0039】
1つの局面において、本開示は、本開示のベクターまたは本開示の薬学的組成物および任意で使用説明書を含むキットを提供する。
【0040】
1つの局面において、本開示は、任意で本開示の方法による、疾患または障害の処置における本開示のベクターの使用を提供する。
【0041】
1つの局面において、本開示は、任意で本開示の方法による、疾患または障害の処置における使用のための本開示によるベクターを提供する。
【0042】
1つの局面において、本開示は、SEQ ID NO: 26~30のいずれか1つとまたはSEQ ID NO: 76~95のいずれか1つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0043】
いくつかの態様において、プロモーターはMHCK7プロモーターである。いくつかの態様において、MHCK7プロモーターはSEQ ID NO: 31と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0044】
さまざまな他の局面および態様が、以下の詳細な説明に開示されている。本開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 26である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図2】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 27である。
図3】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 28である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図4】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 29である。
図5】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 30である。
図6】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 76である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図7】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 77である。
図8】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 78である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図9】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 79である。
図10】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 80である。
図11】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 81である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図12】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 82である。
図13】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 83である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図14】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 84である。
図15】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 85である。
図16】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 86である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図17】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 87である。
図18】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 88である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図19】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 89である。
図20】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 90である。
図21】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 91である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図22】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 92である。
図23】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 93である。本明細書において記述されるMHCK7プロモーターは、図中で「エンハンサー/MHCK7」と表示されている。
図24】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 94である。
図25】ベクターゲノムの非限定的な例を例示する図を示す。ベクターゲノムの完全なポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 95である。
図26】C57BL/6Jマウスの心臓におけるJPH2タンパク質の発現を示す。図はJPH2 (上パネル)またはローディング対照であるGAPDH (下パネル)のウエスタンブロット(WB)を示す。
図27】実験の時系列を例示する。
図28図28A~28Bは、経時的な(図28A)およびTAC後9週の時点での(AAV注射後6週; 図28B)、左室駆出率(EF %)を例示する。統計分析(一元配置ANOVA)とそれに続くDunnettの事後比較により、未処置群と比較してAAV処置群の大きな利益が明らかにされた(p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、****p<0.0001)。図28Aについて、TAC後5週の時点で、線は上から下に、FB (Neg CON)、AAV9-hTnT-JPH2、AAVrh.74-hTnt-JPH2、AAV9-MHCK7-JPH2、FB (POS CON)およびAAVrh.74-MHCK7-JPH2に対応する。
図29A図29A~29Fは、左室駆出率(EF %)を経時的に示す。図29A: 正常マウスの結果を示し、図29B: 未処置TACマウスの結果を示す。図29C: AAV9ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAV9-MHCK7)を用いた結果を示す。図29D: AAVrh.74ベクターおよびMHCK7プロモーター(AAVrh.74-MHCK7)を用いた結果を示す。図29E: AAV9ベクターおよびhTnTプロモーター(AAV9-hTnT)を用いた結果を示す。図29F: AAVrh.74ベクターおよびhTnTプロモーター(AAVrh.74-hTnT)を用いた結果を示す。
図29B図29Aの説明を参照のこと。
図29C図29Aの説明を参照のこと。
図29D図29Aの説明を参照のこと。
図29E図29Aの説明を参照のこと。
図29F図29Aの説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0046】
開示の詳細な説明
本開示は、JPH2ポリペプチドまたはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチドを送達するJPH2の遺伝子治療ベクターを、使用の方法とともに、ならびに他の組成物および方法を提供する。特定の態様において、本開示は、JPH2ポリペプチドまたはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーター配列を含む遺伝子治療ベクターに関する。いくつかの態様において、プロモーターはミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7 (MHCK7)プロモーターである。いくつかの態様において、AAVベクターはAAV9ベクターである。いくつかの態様において、プロモーターはMHCK7プロモーターであり、AAVベクターはAAV9ベクターである。いくつかの態様において、プロモーターはhTNNT2プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターはhTNNT2プロモーターであり、AAVベクターはAAV9ベクターである。いくつかの態様において、JPH2はヒトJPH2である。いくつかの態様において、JPH2はヒトJPH2アイソフォーム1 (SEQ ID NO:1)である。いくつかの態様において、JPH2はヒトJPH2アイソフォーム2 (SEQ ID NO:108)である。いくつかの態様において、AAVベクターはrh74ベクターである。いくつかの態様において、プロモーターはMHCK7プロモーターであり、AAVベクターはrh74ベクターである。いくつかの態様において、プロモーターはhTNNT2プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターはhTNNT2プロモーターであり、AAVベクターはrh74ベクターである。いくつかの態様において、JPH2はヒトJPH2である。
【0047】
本開示はさらに、本開示の遺伝子治療ベクターを対象に投与することにより対象において疾患または障害を処置する方法を提供する。ある種の態様において、疾患または障害は心房細動である。ある種の態様において、疾患または障害は不整脈である。ある種の態様において、疾患または障害は洞結節疾患である。ある種の態様において、疾患または障害は家族性肥大型心筋症17である。JPH2の変異は、家族性肥大型心筋症17および心房細動に関連している。
【0048】
ある種の態様において、処置される対象は、JPH2遺伝子に1つまたは複数の変異または切断を有する心不全患者である。JPH2の発現レベルは、ヒト心不全を含む複数の病因の不全心臓において低下している。心不全患者は、心臓ストレスの際に生成されるJPH2断片を保有している。
【0049】
JPH2遺伝子はジャンクトフィリン-2 (JPH2)タンパク質をコードする。JPH2は、心筋細胞の接合膜複合体(JMC)内の筋小胞体にある2型リアノジン受容体と細胞膜の横行(T)管関連の心臓L型Ca2+チャネルとの間の構造的橋渡しとなる膜結合タンパク質である。その構造は、心筋二重膜(cardiac dyad)の筋細胞膜と筋小胞体膜との間の12~15 nmのギャップを維持することにより細胞表面と細胞内Ca2+放出チャネルとの間の機能的クロストークの構造基盤となる。JPH2は、心筋細胞における正常な興奮収縮連関に必要であり、骨格筋の三重接合部の構築に寄与する。
【0050】
心臓ストレス後、JPH2はCa2+依存性プロテアーゼであるカルパインにより切断され、これによりN末端断片(JPH2NT)を遊離し、この断片が核へ移行し、ゲノムDNAに結合し、心筋細胞におけるさまざまな遺伝子の発現を制御する。ストレスによって誘発されるJPH2のタンパク質分解は、超微細構造機構を破壊し、心不全の進行を促進する。
【0051】
カルパインによる切断は、不全心臓におけるJPH2レベルの喪失の根底にある主な機構の一つである。カルパイン-1およびカルパイン-2活性はストレス(すなわち、虚血、酸化ストレス、HF)を受けた心臓組織で増加するため、病的条件下ではJPH2のCa2+依存性タンパク質分解が観察されている。ヒトJPH2は3つのカルパイン切断部位を含む。カルパイン-1およびカルパイン-2は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸番号572および573の位置でJPH2を切断することができる。カルパイン-1はまた、SEQ ID NO: 1に記載されるヒトJPH2, アイソフォーム1のアミノ酸番号155および156、ならびにアミノ酸番号204および205に見出される部位でもJPH2を切断することができる。さらなるカルパイン-2切断部位は、Weninger et al. Sci Rep 12, 10387 (2022)に開示されており、これは参照によりその全体が組み入れられる。
【0052】
本開示のいくつかの態様において、遺伝子治療ベクターの作製に用いるためのJPH2をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 1に記載されるJPH2参照配列のアミノ酸番号155および156に対するアラニン置換を含みうる。いくつかの態様において、遺伝子治療ベクターの作製に用いるためのJPH2をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 1に記載されるJPH2参照配列のアミノ酸番号204および205に対するアラニン置換を含みうる。いくつかの態様において、遺伝子治療ベクターの作製に用いるためのJPH2をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 1に記載されるJPH2参照配列のアミノ酸番号573および573に対するアラニン置換を含みうる。いくつかの態様において、遺伝子治療ベクターの作製に用いるためのJPH2をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 1に記載されるJPH2参照配列のアミノ酸番号155、156、204、205、572および573に対するアラニン置換、またはそれらの任意の組み合わせを含みうる。
【0053】
いくつかの態様において、少なくとも1つのカルパイン切断部位は、少なくとも1つの切断部位のアミノ酸をアラニンで置換することによりJPH2をコードするポリヌクレオチドから除去される。いくつかの態様において、少なくとも1つのカルパイン切断部位は、少なくとも1つの切断部位のアミノ酸を、類似の特性を有するアミノ酸で置換することまたは保存的アミノ酸置換、例えば、バリンの代わりにアラニンを用いる、アルギニンの代わりにリジンを用いる、ロイシンの代わりにアラニンを用いる、およびスレオニンの代わりにセリンを用いることによりJPH2をコードするポリヌクレオチドから除去される。本開示によれば、JPH2またはその機能的バリアントであって、少なくとも129個、少なくとも600個、少なくとも630個または少なくとも696個のアミノ酸を含む該JPH2またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチドが、遺伝子治療ベクターの作製において利用されうる。得られたベクターは、疾患または障害、例えば、JPH2関連疾患または障害、例えば、心房細動、不整脈、洞結節疾患、高血圧性心疾患、心不全、心臓肥大、心房線維症、心筋梗塞、症候性洞不全症候群、心房疾患、心筋梗塞、家族性肥大型心筋症17などの処置において利用されうる。
【0054】
別途定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記述されるものと類似または同等の方法および材料を本開示の実践において使用することができるが、適当な方法および材料を以下に記述する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりその全体が明示的に組み入れられる。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が優先される。さらに、本明細書において記述される材料、方法および実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0055】
本明細書において言及される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、参照により組み入れられることが具体的かつ個別的に示されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。矛盾する場合は、本明細書の任意の定義を含めて本出願が優先される。しかしながら、本明細書において引用される任意の参照文献、記事、刊行物、特許、特許公開および特許出願の言及は、有効な先行技術を構成するか、または世界の任意の国で共通の一般知識の一部を形成するという承認または任意の形態の提案とされるものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0056】
本記述において、別段の示唆がない限り、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比範囲、または整数範囲は、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合にはその分数(例えば、整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。「約」という用語は、数字または数の直前にある場合、その数字または数がプラスまたはマイナス10%の範囲であることを意味する。本明細書において用いられる場合、「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、別段の示唆がない限り、列挙された構成要素のうちの「1つまたは複数」をいうことが理解されるべきである。代替物(例えば「または」)の使用は、代替物のいずれか一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。「および/または」という用語は、選択肢の一方または両方を意味すると理解されるべきである。本明細書において用いられる場合、「含む(include)」および「含む(comprise)」という用語は同義的に用いられる。
【0057】
本明細書において用いられる場合、「同一性」および「同一である」という用語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列に関して、BLASTアルゴリズムにより生成されたアライメントなどの、その「クエリ」配列と「対象」配列とのアライメントにおける、完全に一致している残基のパーセンテージをいう。同一性は、特に明記しない限り、対象配列の全長にわたって計算される。したがって、クエリ配列が、対象配列と整列しているときに、対象配列中の残基の少なくともx% (切り捨て)が、クエリ配列中の対応する残基と完全に一致するように整列される場合、クエリ配列は、対象配列と「少なくともx%の同一性を共有する」。対象配列が可変位置(例えば、Xで示される残基)を有する場合、クエリ配列中の任意の残基へのアライメントは、一致としてカウントされる。配列アライメントは、NCBI Blastサービス(BLAST + バージョン2.12.0)を用いて実施されてもよい。
【0058】
本明細書において用いられる場合、「機能的に連結された」という用語は、2つまたはそれ以上の核酸(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係をいう。典型的には、転写された配列に対する転写調節配列の機能的関係をいう。例えば、プロモーター配列は、適切な宿主細胞または他の発現系においてコード配列の転写を刺激するか、または調節する場合、コード配列に機能的に連結される。一般に、転写された配列に機能的に連結されたプロモーター転写調節配列は、転写された配列に物理的に連続しており、すなわち、それらはシス作用性である。しかしながら、エンハンサーなどのいくつかの転写調節配列は、それらが転写を増強するコード配列に物理的に連続している、または近接して配置されている必要はない。
【0059】
本明細書において用いられる場合、「AAVベクター」または「rAAVベクター」は、AAV逆位末端反復配列(ITR)が隣接する1つまたは複数の関心対象ポリヌクレオチド(または導入遺伝子)を含む組み換えベクターをいう。そのようなAAVベクターは、repおよびcap遺伝子産物をコードし発現するプラスミドでトランスフェクトされた宿主細胞中に存在する場合、複製され、感染性ウイルス粒子にパッケージングされうる。あるいは、AAVベクターは、rep遺伝子とcap遺伝子を発現するように安定的に操作された宿主細胞を用いて、感染性粒子にパッケージングされてもよい。
【0060】
本明細書において用いられる場合、「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質およびキャプシド化ポリヌクレオチドAAVベクターから構成されるウイルス粒子をいう。本明細書において用いられる場合、粒子が、異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達される導入遺伝子などの野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、通常、これは、「AAVベクター粒子」または単に「AAVベクター」といわれる。したがって、AAVベクター粒子の産生は、ベクターがAAVベクター粒子内に含まれるため、必然的にAAVベクターの産生を含む。
【0061】
本明細書において用いられる場合、「プロモーター」は、真核細胞においてポリヌクレオチドからのRNA転写の開始を促進することができるポリヌクレオチド配列をいう。
【0062】
本明細書において用いられる場合、「ベクターゲノム」は、隣接配列(AAVでは、逆位末端反復)を含む、ベクター(例えば、rAAVビリオン)によってパッケージングされたポリヌクレオチド配列をいう。AAVでは、「発現カセット 」および「ポリヌクレオチドカセット 」という用語は、隣接ITR配列間のベクターゲノムの部分をいう。「発現カセット」は、ベクターゲノムが、任意の調節エレメントおよび/またはエンハンサーエレメントを含めて、発現を駆動するエレメント(例えば、プロモーター)に機能的に連結された遺伝子産物をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むことを意味する。「ポリヌクレオチドカセット 」は、任意の調節エレメントおよび/またはエンハンサーエレメントを含めて、発現を駆動するエレメント(例えば、プロモーター)に機能的に連結された遺伝子産物をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むベクターゲノムの部分をいう。
【0063】
本明細書において用いられる場合、「必要がある患者」または「必要がある対象」という用語は、本明細書において開示される組み換え遺伝子治療ベクターまたは遺伝子編集システムを用いた治療または改善に適している疾患、障害、または状態のリスクのあるまたは罹患している患者または対象をいう。必要がある患者または対象は、例えば、心臓に関連する障害と診断された患者または対象であってもよい。対象は、JPH2タンパク質の異常な発現および/または核転座を引き起こす、JPH2遺伝子における変異、またはJPH2遺伝子の全部もしくは一部の欠失、または遺伝子調節配列の欠失を有しうる。「対象」および「患者」は、本明細書において互換的に用いられる。本明細書において記述される方法によって処置される対象は、成人または子供であってよい。対象の年齢はさまざまであってよい。
【0064】
本明細書において用いられる場合、「バリアント」という用語は、親タンパク質と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入、または欠失を有するタンパク質をいう。本明細書において用いられる場合、「機能的バリアント」という用語は、親タンパク質と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入、または欠失を有し、親タンパク質の1つまたは複数の所望の活性を保持するタンパク質をいう。
【0065】
本明細書において用いられる場合、「処置する」とは、疾患または障害の1つまたは複数の症状を改善することをいう。「予防する」という用語は、疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状の発症を遅延もしくは中断すること、またはJPH2関連疾患もしくは障害、例えば、家族性肥大型心筋症17の進行を緩徐化させることをいう。
【0066】
ある種の態様において、「投与」は注射、カテーテル処置、および/または注入によって実施されうる。いくつかの態様において、ベクターは静脈内注入、静脈内注射、心腔内注入、心腔内注射、冠動脈内注入、冠動脈内注射、および/または心臓カテーテル法によって投与される。
【0067】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは約4.7 kbの長さであり、2つの約145ヌクレオチド逆位末端反復配列(ITR)を含む。AAVには複数の公知のバリアントがあり、抗原エピトープによって分類されると血清型と呼ばれることもある。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は公知である。例えば、AAV-1の完全ゲノムはGenBankアクセッション番号NC_002077において提供されており、AAV-2の完全ゲノムはGenBankアクセッション番号NC_001401およびSrivastava et al., J. Virol., 45: 555-564 (1983)において提供されており、AAV-3の完全ゲノムはGenBankアクセッション番号NC_1829において提供されており、AAV-4の完全ゲノムはGenBankアクセッション番号NC_001829において提供されており、AAV-5ゲノムはGenBankアクセッション番号AF085716において提供されており、AAV-6の完全ゲノムはGenBankアクセッション番号NC_00 1862において提供されており、AAV-7およびAAV-8ゲノムの少なくとも一部は、それぞれGenBankアクセッション番号AX753246およびAX753249において提供されており、AAV-9ゲノムはGao et al., J. Virol., 78: 6381-6388 (2004)において提供されており、AAV-10ゲノムはMol. Ther., 13(1): 67-76 (2006)において提供されており、ならびにAAV-11ゲノムはVirology, 330(2): 375-383 (2004)において提供されている。AAVrh.74ゲノムの配列は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9,434,928号において提供されている。ウイルスDNA複製(rep)、キャプシド形成/パッケージングおよび宿主細胞染色体組込みを指令するシス作用配列は、AAV ITR内に含まれる。3つのAAVプロモーター(それらの相対的マップ位置についてp5、p19およびp40と命名)は、repおよびcap遺伝子をコードする2つのAAV内部読み取り枠の発現を駆動する。2つのrepプロモーター(p5およびp19)は、(ヌクレオチド番号2107および2227の位置での)単一AAVイントロンの差次的スプライシングと相まって、rep遺伝子から4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52およびrep40)の産生をもたらす。Repタンパク質は、ウイルスゲノムの複製を最終的に担う複数の酵素特性を保有する。cap遺伝子はp40プロモーターから発現され、3つのキャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードする。選択的スプライシングおよび非コンセンサス翻訳開始部位が、関連する3つのキャプシドタンパク質の産生を担っている。単一のコンセンサスポリアデニル化部位はAAVゲノムのマップ位置番号95に位置している。AAVのライフサイクルおよび遺伝学はMuzyczka, Current Topics in Microbiology and Immunology, 158: 97-129 (1992)に概説されている。
【0068】
AAVは、例えば遺伝子治療などで外来DNAを細胞に送達するためのベクターとして魅力的な独自の特徴を保有している。培養中の細胞のAAV感染は非細胞変性であり、ヒトおよび他の動物の自然感染は無症状および無症候性である。さらに、AAVは多くの哺乳動物細胞に感染し、インビボで多くの異なる組織を標的とする可能性を許容する。さらに、AAVはゆっくりと分裂する細胞と分裂しない細胞に形質導入し、転写的に活性な核エピソーム(染色体外エレメント)として、これらの細胞の生存期間に本質的に存続することができる。AAVプロウイルスゲノムは、プラスミド内にクローン化DNAとして挿入され、これにより組み換えゲノムの構築が実現可能となる。さらに、AAV複製およびゲノムのキャプシド化を指令するシグナルは、AAVゲノムのITR内に含まれているため、ゲノムの内部約4.3 kbの一部または全部(複製および構造キャプシドタンパク質、rep-capをコードする)は、外来DNAで置換されてもよい。AAVベクターを作製するために、repタンパク質およびcapタンパク質をトランスで提供してもよい。AAVのもう一つの重要な特徴は、AAVが非常に安定した強力なウイルスであることである。アデノウイルスの不活化に使用される条件(56℃~65℃で数時間)に容易に耐え、AAVの低温保存の重要性を軽減する。AAVは凍結乾燥することもできる。最後に、AAV感染細胞は重複感染に耐性がない。
【0069】
本開示の実践において有用な遺伝子送達ウイルスベクターは、分子生物学の技術分野において周知の方法論を利用して構築されうる。典型的には、導入遺伝子を担持するウイルスベクターは、導入遺伝子、適切な調節因子、およびウイルスタンパク質の産生に必要なエレメントをコードするポリヌクレオチドから構築され、これは細胞形質導入を媒介する。そのような組み換えウイルスは、当技術分野において周知の技法により、例えば、パッケージング細胞をトランスフェクトすることにより、またはヘルパープラスミドもしくはウイルスによる一過性トランスフェクションにより作製されうる。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例としては、HeLa細胞、SF9細胞(任意選択的にバキュロウイルスヘルパーベクターを有する)、HEK293細胞などが挙げられるが、これらに限定されることはない。US2017/0218395A1に記述されるように、ヘルペスウイルス系システムを使用してAAVベクターを産生することができる。そのような複製欠損組み換えウイルスを産生するための詳細なプロトコルは、例えば、W095/14785、W096/22378、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号およびW094/19478において見出すことができ、それらの各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
本開示は、ジャンクトフィリン-2 (JPH2)タンパク質またはポリペプチドに関連する組成物および使用方法を企図する。JPH2のストレス誘導性切断は、Beavers et al. Cardiovascular Research 103:198-205 (2014)において、および他の情報源において記述されているものなどの疾患を含めて、心筋症および心不全に関連することが知られている。JPH2タンパク質の切断型バリアントに関する詳細は、例えば米国特許出願第2019/0307899号において見出すことができ、その各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる。それゆえ、JPH2遺伝子のウイルスベクター媒介送達は、心筋症および心不全などのJPH2関連ヒト疾患に対する実行可能な治療法として役立ちうる。
【0071】
家族性肥大型心筋症17 (CMH17)を有する人々において、JPH2遺伝子における変異が同定されている。(「CMH17」, NCBI MedGen参照)。この状態は、心室肥大によって特徴付けられる遺伝性心疾患であり、通常は非対称性で、心室中隔を巻き込むことが多い。症状には呼吸困難、失神、虚脱、動悸および胸痛が含まれ、運動によって容易に誘発されうる。この障害は、良性型から心不全および心臓突然死のリスクの高い悪性型まで、家族間および家族内変動がある。
【0072】
いくつかの態様において、JPH2は、以下から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含む: SEQ ID NO: 1と比べて付番された、予測されるカルパイン1切断部位における1つまたは複数の残基の変異(V155A、R156K、L204A、L205A、R572KまたはT573S)。すなわち、JPH2タンパク質は、R572AまたはR572K、T573AまたはT573S、V155A、R156AまたはR156K、L204AおよびL205Aからなる群より選択される1つもしくはそれ以上、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、または4つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含みうる。Xが、参照JPH2タンパク質に存在するアミノ酸以外の任意の天然アミノ酸または非天然アミノ酸を表す、R572X、T573X、V155X、R156X、L204XおよびL205Xからなる群より選択される1つもしくはそれ以上、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上(three one or more)、または4つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を非限定的に含む、これらの部位のいずれかの位置での代替の保存的または非保存的な変異または置換が用いられうる。
【0073】
本明細書において用いられる「保存的置換」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸が別の生物学的に類似した残基によって置換されることを示す。例としては、類似の特性を有するアミノ酸残基、例えば、小型アミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸および芳香族アミノ酸の置換が挙げられる。以下の図式では、アミノ酸の保存的置換を物理化学的特性によってグループ分けしている。I: 中性, 親水性、II: 酸かつアミド、III: 塩基性、IV: 疎水性、V: 芳香族, 嵩高いアミノ酸。
【0074】
以下の図式では、アミノ酸の保存的置換を物理化学的特性によってグループ分けしている。VI: 中性または疎水性、VII: 酸性、VIII: 塩基性、IX: 極性、X: 芳香族。
【0075】
本開示によって企図される特定の変異は、R572AもしくはR572K; T573AもしくはT573S; V155A; R156AもしくはR156K; L204A; またはL205Aを含む。いくつかの態様において、アミノ酸置換は分子内界面または分子間界面を撹乱する。いくつかの態様において、アミノ酸置換は、電荷、サイズおよび/または疎水性などの、残基の1つまたは複数の特徴を維持しながら、分子内界面または分子間界面を撹乱する。
【0076】
活性化されたJPH2は、カルパイン1によって媒介されるJPH2の切断から保護し、それによってカルパインによるJPH2切断を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入または欠失(総称して、変異)を含みうる。例えば、JPH2は、カルパイン1による結合およびその後の切断を低減させる1つのカルパイン1部位の変異、またはカルパイン1による結合およびその後の切断を低減させる3つのカルパイン1部位の変異を含みうる。
【0077】
JPH2のさまざまなさらなる態様を表1に示す。
【0078】
(表1)アミノ酸置換の例示的組み合わせ
【0079】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、参照JPH2タンパク質と比べてArg-572およびThr-573の位置に1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
【0080】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、参照JPH2タンパク質と比べてVal-155、Arg-156、Leu204、Leu205、Arg-572およびThr-573の位置に1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
【0081】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、参照JPH2タンパク質と比べてR572A、R572K、T573A、T573S、V155A、R156A、R156K、L204Aおよび/またはL205Aから選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
【0082】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、参照JPH2タンパク質と比べてR572AおよびT573Aのアミノ酸置換を含む。
【0083】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、参照JPH2タンパク質と比べてR572KおよびT573Sのアミノ酸置換を含む。
【0084】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、参照JPH2タンパク質と比べてV155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573Aのアミノ酸置換を含む。
【0085】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、参照JPH2タンパク質と比べてV155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573Sのアミノ酸置換を含む。
【0086】
ヒトJPH2アイソフォーム1およびアイソフォーム2タンパク質のネイティブ配列ならびにポリヌクレオチドコード配列を以下に示す:
JPH2-野生型, アイソフォーム1 (SEQ ID NO: 1) - 696アミノ酸
JPH2-野生型, 転写産物1 (SEQ ID NO: 2) - 2091ヌクレオチド塩基
JPH2-野生型, アイソフォーム2 (SEQ ID NO: 108) - 696アミノ酸
JPH2-野生型, 転写産物2 (SEQ ID NO: 107) - 390ヌクレオチド塩基
【0087】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 1と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、JPH2ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 2と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、野生型またはネイティブJPH2タンパク質、例えば、ヒトJPH2である。
【0088】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 108と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、JPH2ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 107と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、野生型またはネイティブJPH2タンパク質、例えば、ヒトJPH2である。
【0089】
本開示は、カルパイン1結合部位変異を有するJPH2タンパク質またはポリヌクレオチドに関連する組成物および使用方法を企図する。JPH2の1mutAA変異体は、アミノ酸置換R572AおよびT573Aを含むポリペプチド配列を含む(SEQ ID NO: 3)。JPH2の1mutAA変異体は、アミノ酸置換R572AおよびT573Aをコードするポリヌクレオチドを含む(SEQ ID NO: 4)。
【0090】
JPH2-1mutAA (SEQ ID NO: 3) - 696アミノ酸
JPH2-1mutAA (SEQ ID NO: 4) - 2091ヌクレオチド塩基
【0091】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 3と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 4と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、変異型JPH2タンパク質である。
【0092】
本開示は、カルパイン1結合部位変異を有するJPH2タンパク質またはポリヌクレオチドに関連する組成物および使用方法を企図する。JPH2の1mutKS変異体は、アミノ酸置換R572KおよびT573Sを含むポリペプチド配列を含む(SEQ ID NO: 5)。JPH2の1mutKS変異体は、アミノ酸置換R572KおよびT573Sをコードするポリヌクレオチドを含む(SEQ ID NO: 6)。
JPH2-1mutKS (SEQ ID NO: 5) - 696アミノ酸
JPH2-1mutKS (SEQ ID NO: 6) - 2091ヌクレオチド塩基
【0093】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 5と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 6と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0094】
本開示は、カルパイン1結合部位変異を有するJPH2タンパク質またはポリヌクレオチドに関連する組成物および使用方法を企図する。JPH2の3mutAA変異体は、アミノ酸置換V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573Aを含むポリペプチド配列を含む(SEQ ID NO: 7)。JPH2の3mutAA変異体は、アミノ酸置換V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573Aをコードするポリヌクレオチドを含む(SEQ ID NO: 8)。
JPH2-3mutAA (SEQ ID NO: 7) - 696アミノ酸
JPH2-3mutAA (SEQ ID NO: 8) - 2091ヌクレオチド塩基
【0095】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 7と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 8と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0096】
本開示は、カルパイン1結合部位変異を有するJPH2タンパク質またはポリヌクレオチドに関連する組成物および使用方法を企図する。JPH2の3mutAKAAKS変異体は、アミノ酸置換V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573Sを含むポリペプチド配列を含む(SEQ ID NO: 9)。JPH2の3mutAKAAKS変異体は、アミノ酸置換V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573Sをコードするポリヌクレオチドを含む(SEQ ID NO: 10)。
JPH2-3mutAKAAKS (SEQ ID NO: 9) - 696アミノ酸
JPH2-3mutAKAAKS (SEQ ID NO: 10) - 2091ヌクレオチド塩基
【0097】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 9と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 10と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0098】
いくつかの態様において、本開示は、ベクターゲノムが、プロモーターに機能的に連結された、JPH2またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む、キャプシドおよびベクターゲノムを含んだ、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供する。いくつかの態様において、本開示は、ベクターゲノムが、プロモーターに機能的に連結された、JPH2をコードするポリヌクレオチド配列を含む、キャプシドおよびベクターゲノムを含んだ、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供する。いくつかの態様において、JPH2タンパク質は、SEQ ID NO: 1と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリペプチド配列を含む。JPH2をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 2と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含みうる。
【0099】
任意で、ベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド配列は、GCCACCATGG (SEQ ID NO: 11)を含むがこれに限定されない、Kozak配列を含んでもよい。Kozak配列は、JPH2タンパク質またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列と重複してもよい。例えば、ベクターゲノムは、SEQ ID NO: 12と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列(最初の10ヌクレオチドがKozak配列を構成する)を含んでもよい。
SEQ ID NO: 12
【0100】
いくつかの態様において、Kozak配列は、以下:
のいずれか1つを含む、またはこれらのいずれか1つからなる、代替Kozak配列である。
【0101】
いくつかの態様において、ベクターゲノムはKozak配列を含まない。
【0102】
本開示のAAVビリオンは、ベクターゲノムを含む。ベクターゲノムは、発現カセット(またはポリヌクレオチド配列の発現を必要としない遺伝子編集用途のためのポリヌクレオチドカセット)を含んでもよい。任意の適当な逆位末端反復配列(ITR)が用いられてもよい。ITRは、AAVビリオンに存在するキャプシドと同じ血清型由来のAAV ITRであってもよく、またはキャプシドとは異なる血清型由来のAAV ITRであってもよい(例えば、AAV9キャプシドまたはAAVrh74キャプシドを有するAAVビリオンでAAV2 ITRが用いられてもよい)。いずれの場合も、キャプシドの血清型によってビリオンに適用される名称が決定される。ITRは一般に、ベクターゲノムの最も5'側および最も3'側のエレメントである。ベクターゲノムはまた、一般に、5'から3'方向の順に、プロモーター、導入遺伝子、3'非翻訳領域(UTR)配列(例えばWPREエレメント)およびポリアデニル化配列を含む。変形例では、ベクターゲノムはエンハンサーエレメント(一般にプロモーターの5'側)および/またはエクソン(一般にプロモーターの3'側)を含む。変形例では、ベクターゲノムは、一般に導入遺伝子の3'側に、緑色蛍光タンパク質(GFP)タンパク質を含む。変形例では、本開示のベクターゲノムは、遺伝子編集システムにおいて修復鋳型として用いられる部分的または完全な導入遺伝子配列をコードする。そのような変形例では、ベクターゲノムは外因性プロモーターを含んでもよく、または遺伝子編集システムは、心臓特異的プロモーターまたは筋細胞特異的プロモーターなどの、内因性プロモーターを有するゲノム中の遺伝子座に導入遺伝子を挿入してもよい。
【0103】
いくつかの態様において、5' ITRはAAV2 ITRを含む。いくつかの態様において、5' ITRは、SEQ ID NO: 15と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0104】
いくつかの態様において、5' ITRはAAV2 ITRを含む。いくつかの態様において、5' ITRは、SEQ ID NO: 16と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0105】
いくつかの態様において、5' ITRはAAV2 ITRを含む。いくつかの態様において、5' ITRは、SEQ ID NO: 17)と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0106】
いくつかの態様において、5' ITRはAAV2 ITRを含む。いくつかの態様において、5' ITRは、SEQ ID NO: 18と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0107】
いくつかの態様において、3' ITRはAAV2 ITRを含む。いくつかの態様において、5' ITRは、SEQ ID NO: 19と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0108】
いくつかの態様において、3' ITRはAAV2 ITRを含む。いくつかの態様において、5' ITRは、SEQ ID NO: 20と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0109】
いくつかの態様において、3' ITRはAAV2 ITRを含む。いくつかの態様において、5' ITRは、SEQ ID NO: 21と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0110】
いくつかの態様において、ベクターゲノムは1つまたは複数の充填配列(filler sequence)、例えば、SEQ ID NO: 22; SEQ ID NO: 23; またはSEQ ID NO: 24と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一の1つまたは複数の充填配列を含む。
【0111】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列は、プロモーターに機能的に連結される。ある種の態様において、プロモーターはMHCK7プロモーターである。ある種の態様において、プロモーターはTNNT2プロモーターである。
【0112】
本開示はさまざまなプロモーターの使用を企図する。本開示の態様において有用なプロモーターは、非限定的に、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、またはCMVエンハンサーならびにニワトリβ-アクチンプロモーターおよびウサギβ-グロビン遺伝子(CAG)の一部から構成されるプロモーター配列を含む。いくつかの場合において、プロモーターは合成プロモーターであってもよい。例示的な合成プロモーターは、Schlabach et al. PNAS USA. 107(6):2538-43 (2010)によって提供されている。いくつかの態様において、プロモーターは、SEQ ID NO: 25と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0113】
いくつかの態様において、JPH2タンパク質またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列は、誘導性プロモーターに機能的に連結される。誘導性プロモーターは、作用物質の添加もしくは蓄積に応答して、または作用物質の除去、分解もしくは希釈に応答して、ポリヌクレオチド配列を転写発現させるかまたは転写発現させないように構成されうる。作用物質は薬物であってもよい。作用物質はテトラサイクリンまたはその誘導体の1つ、例えば、非限定的に、ドキシサイクリンであってもよい。いくつかの場合において、誘導性プロモーターは、tet-onプロモーター、tet-offプロモーター、化学的に調節されるプロモーター、物理的に調節されるプロモーター(すなわち、光の有無または低温もしくは高温に応答するプロモーター)である。誘導性プロモーターは、重金属イオン誘導性プロモーター(マウス乳腺腫瘍ウイルス(mMTV)プロモーターまたはさまざまな成長ホルモンプロモーターなどの)、およびT7 RNAポリメラーゼの存在下で活性となるT7ファージ由来のプロモーターを含む。この誘導性プロモーターのリストは非限定的である。
【0114】
いくつかの場合において、プロモーターは組織特異的プロモーター、例えば、心臓細胞における発現を非心臓細胞におけるよりも大きく駆動することができるプロモーターである。いくつかの態様において、組織特異的プロモーターは、デスミン(Des)、α-ミオシン重鎖(α-MHC)、ミオシン軽鎖2 (MLC-2)、心筋トロポニンC (cTnC)、心筋トロポニンT (hTNNT2)、筋クレアチンキナーゼ(CK)、およびMHCK7などのそれらのプロモーター/エンハンサー領域の組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意のさまざまな心臓細胞特異的プロモーターから選択される。いくつかの場合において、プロモーターは遍在性プロモーターである。「遍在性プロモーター」とは、実験的または臨床的条件下で組織特異的ではないプロモーターをいう。いくつかの場合において、遍在性プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)、ウサギβ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプターを有するサイトメガロウイルス初期エンハンサーエレメントニワトリβ-アクチン遺伝子イントロン(Cytomegalovirus early enhancer element chicken beta-Actin gene intron with the splice acceptor of the rabbit beta-Globin gene; CAG)、ユビキチンC (UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、真核生物翻訳伸長因子1α1 (EF1-α)、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、シミアンウイルス40 (SV40)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ニワトリβ-アクチン、およびヒトβ-アクチンプロモーターのいずれか1つである。
【0115】
いくつかの態様において、プロモーター配列は表3から選択される。いくつかの態様において、プロモーターは、SEQ ID NO: 31~51のいずれか1つと少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、SEQ ID NO: 31~51のいずれか1つのポリヌクレオチド配列の断片、例えば、SEQ ID NO: 31~51のいずれか1つの少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を含む断片を含む。
【0116】
(表3)
【0117】
ある種の態様において、ベクターゲノムは、SEQ ID NO: 31と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。ある種の態様において、ベクターゲノムは、SEQ ID NO: 32と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。ある種の態様において、ベクターゲノムは、SEQ ID NO: 33と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0118】
プロモーターのさらなる例示的な例は、シミアンウイルス40由来のSV40後期プロモーター、バキュロウイルス多面体エンハンサー/プロモーターエレメント、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV tk)、サイトメガロウイルス(CMV)由来の最初期プロモーターおよびLTRエレメントを含むさまざまなレトロウイルスプロモーターである。多種多様な他のプロモーターが当技術分野において公知であり、一般に入手可能であり、多くのそのようなプロモーターの配列はGenBankデータベースなどの配列データベースにおいて入手可能である。
【0119】
いくつかの場合において、本開示のベクターは、エンハンサー、イントロン、ポリAシグナル、2Aペプチドコード配列、WPRE (ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント)、およびHPRE (B型肝炎ウイルス転写後調節エレメント)からなる群より選択される1つまたは複数の調節エレメントをさらに含む。
【0120】
いくつかの態様において、ベクターはCMVエンハンサーを含む。
【0121】
ある種の態様において、ベクターは1つまたは複数のエンハンサーを含む。特定の態様において、エンハンサーは、CMVエンハンサー配列、GAPDHエンハンサー配列、β-アクチンエンハンサー配列またはEF1-αエンハンサー配列である。前記の配列は当技術分野において公知である。例えば、CMV最初期(IE)エンハンサーの配列は、SEQ ID NO: 50である。
【0122】
ある種の態様において、ベクターは1つまたは複数のイントロンを含む。特定の態様において、イントロンはウサギグロビンイントロン配列、ニワトリβ-アクチンイントロン配列、合成イントロン配列、SV40イントロン、またはEF1-αイントロン配列である。
【0123】
ある種の態様において、ベクターはポリA配列を含む。特定の態様において、ポリA配列はウサギグロビンポリA配列、ヒト成長ホルモンポリA配列、ウシ成長ホルモンポリA配列、PGKポリA配列、SV40ポリA配列、またはTKポリA配列である。いくつかの態様において、ポリAシグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(bGHpA)でありうる。
【0124】
ある種の態様において、ベクターは1つまたは複数の転写産物安定化エレメントを含む。特定の態様において、転写産物安定化エレメントはWPRE配列、HPRE配列、スキャフォールド付着領域、3' UTRまたは5' UTRである。特定の態様において、ベクターは5' UTRおよび3' UTRの両方を含む。
【0125】
いくつかの態様において、ベクターは、表4から選択される5'非翻訳領域(UTR)を含む。いくつかの態様において、ベクターゲノムは、SEQ ID NO 51~61のいずれか1つと少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0126】
(表4)
【0127】
いくつかの態様において、ベクターは、表5から選択される3'非翻訳領域を含む。いくつかの態様において、ベクターゲノムは、SEQ ID NO 62~70のいずれか1つと少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0128】
(表5)
【0129】
いくつかの態様において、ベクターは、表6から選択されるポリアデニル化(ポリA)シグナルを含む。いくつかの態様において、ポリAシグナルは、SEQ ID NO 71~75のいずれか1つと少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0130】
(表6)
【0131】
例示的ベクターゲノムは図1~25に描かれ、SEQ ID NO: 26~30および76~95として提供される。いくつかの態様において、ベクターゲノムは、任意でITR配列を有してもまたは有しなくてもよい、SEQ ID NO: 26~30および76~95のいずれか1つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列を含むか、任意でITR配列を有してもまたは有しなくてもよい、SEQ ID NO: 26~30および76~95のいずれか1つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列から本質的になるか、あるいは任意でITR配列を有してもまたは有しなくてもよい、SEQ ID NO: 26~30および76~95のいずれか1つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有するポリヌクレオチド配列からなる。本開示は同様に、図1~25に描写される例示的ベクターゲノムの発現カセットおよびこれらを含む配列、例えば、SEQ ID NO: 26~30および76~95に記載されているが、5'および3' ITRを欠いている配列、ならびに前記のいずれかと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を共有しているそれらのバリアントを企図する。
【0132】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; MHCK7プロモーター; JPH2導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; ヒトGHポリ(A)シグナル(hGH)配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、ポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 26; または前記のいずれかと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の野生型導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 26
【0133】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 27; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の野生型導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 27
【0134】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 28; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の野生型導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 28
【0135】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 29; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の野生型導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 29
【0136】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; CMVエンハンサーエレメント; CMVプロモーター; JPH2導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 30; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の野生型導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 30
【0137】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; MHCK7プロモーター; JPH2 1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、ポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 76; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 76
【0138】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2 1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 77; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 77
【0139】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; MHCK7プロモーター; JPH2 1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、ポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 78; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 78
【0140】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2 1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 79; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 79
【0141】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; CMVエンハンサーエレメント; CMVプロモーター; JPH2 1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 80; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の1mutAA (R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 80
【0142】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; MHCK7プロモーター; JPH2 1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、ポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 81; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 81
【0143】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2 1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 82; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 82
【0144】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; MHCK7プロモーター; JPH2 1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、ポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 83; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 83
【0145】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2 1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 84; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 84
【0146】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; CMVエンハンサーエレメント; CMVプロモーター; JPH2 1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 85; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の1mutKS (R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 85
【0147】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; MHCK7プロモーター; JPH2 3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、ポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 86; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 86
【0148】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2 3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 87; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 87
【0149】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; MHCK7プロモーター; JPH2 3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、ポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 88; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 88
【0150】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2 3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 89; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 89
【0151】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; CMVエンハンサーエレメント; CMVプロモーター; JPH2 3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 90; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 3mutAA (V155A、R156A、L204A、L205A、R572AおよびT573A)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 90
【0152】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; MHCK7プロモーター; JPH2 3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 91; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 91
【0153】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2 3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 92; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 92
【0154】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; MHCK7プロモーター; JPH2 3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 93; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 93
【0155】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; hTnnT2プロモーター; JPH2 3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 94; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長のJPH2 3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 94
【0156】
ある種の態様において、ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、5' ITR; CMVエンハンサーエレメント; CMVプロモーター; JPH2 3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子; GFPタグ; WPRE(x)エレメント; hGH配列; および3' ITRを含む。ベクターゲノムは5'から3'方向の順に、いずれか1つのポリヌクレオチド配列SEQ ID NO: 95; または前記の各々と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を共有しているポリヌクレオチド配列を含みうる。ある種の態様において、このベクターゲノムはAAV9またはAAVrh74ベクターにパッケージングされる。この態様のJPH2導入遺伝子は、完全長の3mutAKAAKS (V155A、R156K、L204A、L205A、R572KおよびT573S)導入遺伝子、すなわち、少なくとも600または少なくとも630アミノ酸のJPH2をコードする導入遺伝子である。
SEQ ID NO: 95
【0157】
いずれの場合も、任意のWPREエレメントは存在してもまたは存在しなくてもよい。
【0158】
アデノ随伴ウイルスベクターおよびその使用
本開示の実践において有用なAAVベクターは、アデノウイルスベースおよびヘルパーフリーシステムを含むさまざまなシステムを用いて、AAVビリオン(ウイルス粒子)にパッケージングすることができる。AAV生物学における標準的な方法には、Kwon and Schaffer. Pharm Res. (2008) 25(3):489-99; Wu et al. Mol. Ther. (2006) 14(3):316-27. Burger et al. Mol. Ther. (2004) 10(2):302-17; Grimm et al. Curr Gene Ther. (2003) 3(4):281-304; Deyle DR, Russell DW. Curr Opin Mol Ther. (2009) 11(4):442-447; McCarty et al. Gene Ther. (2001) 8(16):1248-54; およびDuan et al. Mol Ther. (2001) 4(4):383-91に記述されているものが含まれる。ヘルパーフリーシステムには、米国特許第6,004,797号; 同第7,588,772号; および同第US 7,094,604号に記述されているものが含まれる;
【0159】
rAAVゲノム中のAAV DNAは、AAVバリアントまたは血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAVrh.74およびAAVrh10を含むが、これらに限定されない、組み換えウイルスが誘導されうる任意のAAVバリアントまたは血清型由来であってよい。偽型rAAVの産生は、例えば、WO 01/83692に開示されている。他のタイプのrAAVバリアント、例えばキャプシド変異を有するrAAVも企図される。例えば、Marsic et al., Molecular Therapy, 22(11): 1900-1909 (2014)を参照されたい。さまざまなAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列が当技術分野において公知である。
【0160】
いくつかの場合において、rAAVは自己相補性ゲノムを含む。本明細書において定義される場合、「自己相補性」または「二本鎖」ゲノムを含むrAAVは、McCarty et al. Self-complementary recombinant adeno-associated virus (scAAV) vectors promoter efficient transduction independently of DNA synthesis. Gene Therapy. 8 (16): 1248-54 (2001)に記述されているように、rAAVのコード領域が分子内二本鎖DNA鋳型を構成するように操作されたrAAVをいう。本開示は、感染(形質導入のような)時に、rAAVゲノムの第2鎖の細胞媒介合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補的な半分が会合して1つの二本鎖DNA (dsDNA)ユニットを形成し、即座に複製および転写の準備が整うので、いくつかの場合において、自己相補性ゲノムを含むrAAVの使用を企図する。rAAVに見られる完全なコーディング能力(4.7~6 kb)の代わりに、自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その量の約半分(およそ2.4 kb)しか保持できないことが理解されよう。
【0161】
他の場合において、rAAVベクターは一本鎖ゲノムを含む。本明細書において定義される場合、「単一標準」ゲノムは、自己相補性ではないゲノムをいう。ほとんどの場合、非組み換えAAVは一本鎖DNAゲノムを有する。細胞の効率的な形質導入を達成するために、rAAVはscAAVであるべきという指摘もある。しかしながら、本開示は、標的細胞において最適な遺伝子転写を得るためには、rAAVベクターの他の遺伝子改変が有益でありうることを理解した上で、自己相補性ゲノムではなく、一本鎖ゲノムを有しうるrAAVベクターを企図する。
【0162】
いくつかの場合において、rAAVベクターは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh10またはAAVrh74のものである。偽型rAAVの産生は、例えば、WO 01/83692に開示されている。他のタイプのrAAVバリアント、例えばキャプシド変異を有するrAAVも企図される。例えば、Marsic et al., Molecular Therapy, 22(11): 1900-1909 (2014)を参照されたい。いくつかの場合において、rAAVベクターは血清型AAV9のものである。いくつかの態様において、rAAVベクターは血清型AAV9のものであり、一本鎖ゲノムを含む。いくつかの態様において、rAAVベクターは血清型AAV9のものであり、自己相補性ゲノムを含む。いくつかの態様において、rAAVベクターはAAV2の逆位末端反復(ITR)配列を含む。いくつかの態様において、rAAVベクターは、rAAVベクターがAAV-2/9ベクター、AAV-2/6ベクターまたはAAV-2/8ベクターであるような、AAV2ゲノムを含む。
【0163】
ほとんどの既知AAVの完全長配列およびキャプシド遺伝子配列は、米国特許第8,524,446号に提供されており、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0164】
AAVベクターは野生型AAV配列を含んでもよく、または野生型AAV配列に対する1つもしくは複数の改変を含んでもよい。ある種の態様において、AAVベクターは、キャプシドタンパク質、任意でVP1、VP2および/またはVP3内の1つまたは複数のアミノ酸改変、任意で置換、欠失または挿入を含む。特定の態様において、改変は、AAVベクターが対象に提供される場合に免疫原性の低減を提供する。
【0165】
rAAVのキャプシドタンパク質は、rAAVが心筋細胞などの関心対象の特定の標的組織を標的とするように改変されてもよい。いくつかの態様において、rAAVは対象の脳室内腔に直接注射される。
【0166】
いくつかの態様において、rAAVビリオンはAAV2 rAAVビリオンである。キャプシドはAAV2キャプシドまたはその機能的バリアントでありうる。いくつかの態様において、AAV2キャプシドは参照AAV2キャプシド、例えば、SEQ ID NO: 96と少なくとも98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0167】
いくつかの態様において、rAAVビリオンはAAV9 rAAVビリオンである。キャプシドはAAV9キャプシドまたはその機能的バリアントでありうる。いくつかの態様において、AAV9キャプシドは参照AAV9キャプシド、例えば、SEQ ID NO: 97と少なくとも98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0168】
いくつかの態様において、rAAVビリオンはAAV6 rAAVビリオンである。キャプシドはAAV9キャプシドまたはその機能的バリアントでありうる。いくつかの態様において、AAV6キャプシドは参照AAV6キャプシド、例えば、SEQ ID NO: 98と少なくとも98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0169】
いくつかの態様において、rAAVビリオンはAAVrh.10 rAAVビリオンである。キャプシドはAAV9キャプシドまたはその機能的バリアントでありうる。いくつかの態様において、AAVrh.10キャプシドは参照AAVrh.10キャプシド、例えば、SEQ ID NO: 99と少なくとも98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0170】
いくつかの態様において、キャプシドタンパク質は、トランスファープラスミドに、トランスでプラスミド上に供給されるポリヌクレオチドによってコードされる。野生型AAVrh74キャップのポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 100として提供される。
【0171】
本開示はさらに、SEQ ID NO: 101~103を含む、AAVrh74 VP1、VP2およびVP3のタンパク質配列、ならびにそれらの相同体または機能的バリアントを提供する。
【0172】
ある種の場合において、AAVrh74キャプシドは、SEQ ID NO: 101に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、rAAVベクターは、例えばSEQ ID NO: 101に記載されるAAVrh74 VP1のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一の、配列を含む、または例えばSEQ ID NO: 101に記載されるAAVrh74 VP1のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一の、配列から本質的になる、またはさらに例えばSEQ ID NO: 101に記載されるAAVrh74 VP1のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一の、配列からなる、ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、rAAVベクターは、例えばSEQ ID NO: 102に記載されるAAVrh74 VP2のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一の、配列を含む、または例えばSEQ ID NO: 102に記載されるAAVrh74 VP2のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一の、配列から本質的になる、またはさらに例えばSEQ ID NO: 102に記載されるAAVrh74 VP2のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一の、配列からなる、ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、rAAVベクターは、例えばSEQ ID NO: 103に記載されるAAVrh74 VP3のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一の、配列を含む、または例えばSEQ ID NO: 103に記載されるAAVrh74 VP3のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一の、配列から本質的になる、またはさらに例えばSEQ ID NO: 103に記載されるAAVrh74 VP3のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一の、配列からなる、ポリペプチドを含む。
【0173】
いくつかの態様において、rAAVビリオンは、AAV-PHP.B rAAVビリオンまたはその中性栄養性(neutrotrophic)バリアント、例えば、非限定的に、国際特許公開番号WO 2015/038958 A1およびWO 2017/100671 A1に開示されるものである。例えば、AAVキャプシドは、例えば、AAV9のアミノ酸番号588および589をコードする配列の間に挿入された、配列TLAVPFK (SEQ ID NO: 105)またはKFPVALT (SEQ ID NO: 106)からの少なくとも4つの連続するアミノ酸を含みうる。
【0174】
キャプシドはAAV-PHP.Bキャプシドまたはその機能的バリアントでありうる。いくつかの態様において、AAV-PHP.Bキャプシドは参照AAV-PHP.Bキャプシド、例えば、SEQ ID NO: 104と少なくとも98%、99%または100%の同一性を共有する。
【0175】
本開示のrAAVビリオンにおいて用いられるさらなるAAVキャプシドは、特許公開番号WO 2009/012176 A2およびWO 2015/168666 A2に開示されるものを含む。
【0176】
理論によって束縛されるわけではないが、本発明者らは、AAV9ベクター、AAVrh.74またはAAVrh.10ベクターが、ベクターに望ましい心臓向性を付与するものと判定した。理論によって束縛されるわけではないが、本発明者らは、AAV9ベクター、AAVrh.74またはAAVrh.10ベクターが心臓細胞に対して望ましい特異性を提供しうるものとさらに判定した。
【0177】
1つの局面において、本開示は、本開示のrAAVビリオンおよび1つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0178】
任意で注射による、投与の目的のために、滅菌水溶液などの、さまざまな溶液を利用することができる。そのような水溶液は、所望により、緩衝化することができ、液体希釈剤は生理食塩水またはグルコースで最初に等張にすることができる。遊離酸(DNAは酸性リン酸基を含む)または薬理学的に許容される塩としてのrAAVの溶液は、例えば0.001%または0.01%で、ポロキサマー188などの界面活性剤と適当に混合された水の中で調製することができる。rAAVの分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中で、ならびに油中で調製することもできる。貯蔵および使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存料を含有する。これに関連して、利用される滅菌水性媒体は全て、当業者に周知の標準技法により容易に入手可能である。
【0179】
注射可能な使用に適した薬学的形態は、滅菌水溶液または分散液および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含むが、これらに限定されることはない。いずれの場合も、形態は無菌であり、容易に注射可能な程度に流動的でなければならない。製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適当な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒子径の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。いくつかの態様において、糖または塩化ナトリウムなどの等張剤が含まれてもよい。注射可能な組成物の長期間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0180】
滅菌注射液は、適切な溶媒に必要な量のrAAVを、必要に応じて、上に列挙したさまざまな他の成分とともに組み入れ、その後にろ過滅菌することによって調製されうる。一般に、分散液は、滅菌された活性成分を、基本的な分散媒体および上に列挙したものから必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み入れることによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、ある種の調製方法は、活性成分に加えて任意のさらなる所望の成分の粉末を、予め滅菌ろ過されたその溶液からもたらす、真空乾燥および凍結乾燥技法である。
【0181】
別の局面において、本開示は、本開示のrAAVビリオンおよび使用説明書を含むキットを含む。
【0182】
1つの局面において、本開示は、本開示のrAAVと細胞を接触させる段階を含む、細胞においてJPH2発現および/または活性を増加させる方法を提供する。別の局面において、本開示は、本開示のrAAVを対象に投与する段階を含む、対象においてJPH2発現および/または活性を増加させる方法を提供する。いくつかの態様において、細胞および/または対象は、JPH2メッセンジャーRNAもしくはJPH2タンパク質発現レベルおよび/もしくは活性が欠損しており、かつ/またはJPH2の機能喪失変異を含む。いくつかの態様において、細胞および/または対象は、JPH2メッセンジャーRNAもしくはJPH2タンパク質発現レベルおよび/もしくは活性が欠損しており、かつ/または多くても150もしくは多くても200アミノ酸を有するJPH2の切断型バリアントを含む。細胞は心臓細胞、例えば心筋細胞であってもよい。特定の態様において、対象は哺乳動物、例えばヒトである。
【0183】
いくつかの態様において、本方法は細胞培養および/またはインビボにおいて、心臓細胞、例えば心筋細胞細胞の生存を促進する。いくつかの態様において、本方法は心臓の機能を促進および/または回復させる。
【0184】
別の局面において、本開示は、その必要がある対象において疾患または障害を処置する方法であって、本開示のrAAVビリオンの有効量を対象に投与する段階を含む方法を提供する。いくつかの態様において、疾患または障害は心臓疾患または障害である。例示的な心臓障害としては、心不全、拡張型心筋症、肥大型心筋症、心房細動、不整脈、洞結節疾患、高血圧性心疾患、心臓肥大、心房線維症、心筋梗塞、症候性洞不全症候群、心房疾患、心筋梗塞および家族性肥大型心筋症17 (CMH17)が挙げられる。ある種の態様において、対象はCMH17に罹患している、またはCMH17のリスクがある。特定の態様において、対象は、JPH2遺伝子における機能喪失変異を有する哺乳動物、例えばヒトである。特定の態様において、対象は、JPH2のストレス誘導性の切断型バリアントを有する哺乳動物、例えばヒトである。特定の方法において、rAAVビリオンによる処置は対象において、例えば対象の心臓または心臓組織において、rAAVビリオンによりコードされるJPH2タンパク質の発現をもたらす。ある種の態様において、rAAVビリオンによる処置は、対象の心臓において検出可能な少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍またはそれ以上のJPH2タンパク質レベルをもたらす。ある種の態様において、rAAVビリオンによる処置は、対象の心臓の心臓線維芽細胞(CF)において検出可能な少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍またはそれ以上のJPH2タンパク質レベルをもたらす。ある種の態様において、rAAVビリオンによる処置は、対象の心臓の心筋細胞において検出可能な少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍またはそれ以上のJPH2タンパク質レベルをもたらす。ある種の態様において、rAAVビリオンによる処置は、対象の心臓の平滑筋細胞(SMC)において検出可能な少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍またはそれ以上のJPH2タンパク質レベルをもたらす。ある種の態様において、rAAVビリオンによる処置は、対象の心臓の内皮細胞(EC)において検出可能な少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍またはそれ以上のJPH2タンパク質レベルをもたらす。ある種の態様において、rAAVビリオンによる処置は、対象の心臓の心外膜において検出可能な少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍またはそれ以上のJPH2タンパク質レベルをもたらす。ある種の態様において、rAAVビリオンによる処置は、対象の心臓の心筋において検出可能な少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍またはそれ以上のJPH2タンパク質レベルをもたらす。ある種の態様において、rAAVビリオンによる処置は、対象の心臓の心内膜において検出可能な少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍またはそれ以上のJPH2タンパク質レベルをもたらす。
【0185】
AAVを介したJPH2タンパク質の心臓への送達は、寿命を延ばし、心臓細胞の変性、心不全、瘢痕化、駆出率の低減、不整脈、狭心症、運動不耐性、狭心症(胸痛)、心臓突然死、労作性筋痛および痙攣を予防または減弱しうる。AAVを介したJPH2タンパク質の心臓への送達は、心エコー検査、病理学的心電図、心臓MRI、心臓生検の使用、発作性心室性不整脈の減少および/もしくは心臓突然死の減少によって検出される通常の疾患経過からの改善を示し、または心エコー検査、病理学的心電図、心臓MRI、心臓生検の使用、発作性心室性不整脈の減少および/もしくは心臓突然死の減少によって検出される通常の疾患経過を予防しうる。
【0186】
本明細書において開示される方法は、心臓におけるJPH2の効率的な生体内分布を提供しうる。それらは、心臓細胞、例えば心筋細胞の全て、またはかなりの部分において持続的な発現をもたらしうる。注目すべきことに、本明細書において開示される方法は、AAVベクター投与後に対象の生涯を通じてJPH2タンパク質の長期にわたる発現を提供しうる。いくつかの態様において、処置に応答したJPH2タンパク質の発現は、少なくとも1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、15年、20年、25年、30年、35年または40年持続する。
【0187】
併用療法も本開示によって企図される。本開示の方法と標準的な医学的処置(例えば、コルチコステロイドまたは局所的減圧薬)との組み合わせは、新規治療との組み合わせと同様に、特に企図される。いくつかの場合において、本明細書において記述されるrAAVの投与に対する免疫応答を抑止または軽減するために、対象はステロイドおよび/または免疫抑制剤の組み合わせで処置されうる。
【0188】
いくつかの態様において、AAVベクターは、対象の総体重1キログラムあたりAAVベクター(vg)約1×1012~5×1014ベクターゲノム(vg)または約1×1012~6×1014 vgの用量(vg/kg)で投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約1×1013~5×1014 vg/kgの用量で投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約5×1013~3×1014 vg/kgの用量で投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約5×1013~1×1014 vg/kgの用量で投与される。ある種の態様において、AAVベクターは約5×1013~5×1014 vg/kgの用量で投与される。ある種の態様において、AAVベクターは約1×1013~1×1015 vg/kgの用量で投与される。ある種の態様において、AAVベクターは約5×1013~1×1014 vg/kgの用量で投与される。ある種の態様において、AAVベクターは約8×1013~1×1014 vg/kgの用量で投与される。
【0189】
いくつかの態様において、AAVベクターは約1×1012 vg/kg未満、約3×1012 vg/kg未満、約5×1012 vg/kg未満、約7×1012 vg/kg未満、約1×1013 vg/kg未満、約3×1013 vg/kg未満、約5×1013 vg/kg未満、約7×1013 vg/kg未満、約1×1014 vg/kg未満、約3×1014 vg/kg未満、約5×1014 vg/kg未満、約7×1014 vg/kg未満、約1×1015 vg/kg未満、約3×1015 vg/kg未満、約5×1015 vg/kg未満、約7×1015 vg/kg未満、約1×1016 vg/kg未満、約3×1016 vg/kg未満、約5×1016 vg/kg未満、約7×1016 vg/kg未満、約1×1017 vg/kg未満、約3×1017 vg/kg未満、約5×1017 vg/kg未満、約7×1017 vg/kg未満、約1×1018 vg/kg未満、約3×1018 vg/kg未満、約5×1018 vg/kg未満または約7×1018 vg/kg未満の用量で投与される。ある種の態様において、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。いくつかの場合において、AAV rh74ベクターの場合にはAAV9ベクターの場合よりも高い用量を用いることが有利でありうる。
【0190】
いくつかの態様において、AAVベクターは約1×1012 vg/kg、約3×1012 vg/kg、約5×1012 vg/kg、約7×1012 vg/kg、約1×1013 vg/kg、約3×1013 vg/kg、約5×1013 vg/kg、約6×1013 vg/kg、約7×1013 vg/kg、約8×1013 vg/kg、約9×1013 vg/kg、約1×1014 vg/kg、約3×1014 vg/kg、約5×1014 vg/kg、約7×1014 vg/kg、約1×1015 vg/kg、約3×1015 vg/kg、約5×1015 vg/kg、約7×1015 vg/kg、約1×1016 vg/kg、約3×1016 vg/kg、約5×1016 vg/kg、約7×1016 vg/kg、約1×1017 vg/kg、約3×1017 vg/kg、約5×1017 vg/kg、約7×1017 vg/kg、約1×1018 vg/kg、約3×1018 vg/kg、約5×1018 vg/kgまたは約7×1018 vg/kgの用量で投与される。ある種の態様において、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0191】
いくつかの態様において、AAVベクターは1×1012 vg/kg、3×1012 vg/kg、5×1012 vg/kg、7×1012 vg/kg、1×1013 vg/kg、3×1013 vg/kg、5×1013 vg/kg、6×1013 vg/kg、7×1013 vg/kg、8×1013 vg/kg、9×1013 vg/kg、1×1014 vg/kg、3×1014 vg/kg、5×1014 vg/kg、7×1014 vg/kg、1×1015 vg/kg、3×1015 vg/kg、5×1015 vg/kgもしくは7×1015 vg/kg、1×1016 vg/kg、3×1016 vg/kg、5×1016 vg/kg、7×1016 vg/kg、1×1017 vg/kg、3×1017 vg/kg、5×1017 vg/kg、7×1017 vg/kg、1×1018 vg/kg、3×1018 vg/kg、5×1018 vg/kg、7×1018 vg/kgの用量、またはこれらの値のいずれかの間の範囲で投与される。ある種の態様において、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0192】
いくつかの態様において、AAVベクターは、対象の総体重1キログラムあたりAAVベクター(vg)約1×1012~5×1014ベクターゲノム(vg)の用量(vg/kg)で全身投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約1×1013~5×1014 vg/kgの用量で全身投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約5×1013~3×1014 vg/kgの用量で全身投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約5×1013~1×1014 vg/kgの用量で全身投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約1×1012 vg/kg未満、約3×1012 vg/kg未満、約5×1012 vg/kg未満、約7×1012 vg/kg未満、約1×1013 vg/kg未満、約3×1013 vg/kg未満、約5×1013 vg/kg未満、約7×1013 vg/kg未満、約1×1014 vg/kg未満、約3×1014 vg/kg未満、約5×1014 vg/kg未満、約7×1014 vg/kg未満、約1×1015 vg/kg未満、約3×1015 vg/kg未満、約5×1015 vg/kg未満、約7×1015 vg/kg未満、約1×1016 vg/kg未満、約3×1016 vg/kg未満、約5×1016 vg/kg未満、約7×1016 vg/kg未満、約1×1017 vg/kg未満、約3×1017 vg/kg未満、約5×1017 vg/kg未満、約7×1017 vg/kg未満、約1×1018 vg/kg未満、約3×1018 vg/kg未満、約5×1018 vg/kg未満または約7×1018 vg/kg未満の用量で全身投与される。ある種の態様において、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0193】
いくつかの態様において、AAVベクターは約1×1012 vg/kg、約3×1012 vg/kg、約5×1012 vg/kg、約7×1012 vg/kg、約1×1013 vg/kg、約3×1013 vg/kg、約5×1013 vg/kg、約6×1013 vg/kg、約7×1013 vg/kg、約8×1013 vg/kg、約9×1013 vg/kg、約1×1014 vg/kg、約3×1014 vg/kg、約5×1014 vg/kg、約7×1014 vg/kg、約1×1015 vg/kg、約3×1015 vg/kg、約5×1015 vg/kg、約7×1015 vg/kg、約1×1016 vg/kg、約3×1016 vg/kg、約5×1016 vg/kg、約7×1016 vg/kg、約1×1017 vg/kg、約3×1017 vg/kg、約5×1017 vg/kg、約7×1017 vg/kg、約1×1018 vg/kg、約3×1018 vg/kg、約5×1018 vg/kgまたは約7×1018 vg/kgの用量で全身投与される。ある種の態様において、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0194】
いくつかの態様において、AAVベクターは1×1012 vg/kg、3×1012 vg/kg、5×1012 vg/kg、7×1012 vg/kg、1×1013 vg/kg、3×1013 vg/kg、5×1013 vg/kg、6×1013 vg/kg、7×1013 vg/kg、8×1013 vg/kg、9×1013 vg/kg、1×1014 vg/kg、3×1014 vg/kg、5×1014 vg/kg、7×1014 vg/kg、1×1015 vg/kg、3×1015 vg/kg、5×1015 vg/kg、7×1015 vg/kg、1×1016 vg/kg、3×1016 vg/kg、5×1016 vg/kg、7×1016 vg/kg、1×1017 vg/kg、3×1017 vg/kg、5×1017 vg/kg、7×1017 vg/kg、1×1018 vg/kg、3×1018 vg/kg、5×1018 vg/kg、7×1018 vg/kgの用量で全身投与される。ある種の態様において、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0195】
いくつかの態様において、AAVベクターは、対象の総体重1キログラムあたりAAVベクター(vg)約1×1012~5×1014ベクターゲノム(vg)の用量(vg/kg)で静脈内投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約1×1013~5×1014 vg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約5×1013~3×1014 vg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約5×1013~1×1014 vg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの態様において、AAVベクターは約1×1012 vg/kg未満、約3×1012 vg/kg未満、約5×1012 vg/kg未満、約7×1012 vg/kg未満、約1×1013 vg/kg未満、約3×1013 vg/kg未満、約5×1013 vg/kg未満、約7×1013 vg/kg未満、約1×1014 vg/kg未満、約3×1014 vg/kg未満、約5×1014 vg/kg未満、約7×1014 vg/kg未満、約1×1015 vg/kg未満、約3×1015 vg/kg未満、約5×1015 vg/kg未満、約7×1015 vg/kg未満、約1×1016 vg/kg未満、約3×1016 vg/kg未満、約5×1016 vg/kg未満、約7×1016 vg/kg未満、約1×1017 vg/kg未満、約3×1017 vg/kg未満、約5×1017 vg/kg未満、約7×1017 vg/kg未満、約1×1018 vg/kg未満、約3×1018 vg/kg未満、約5×1018 vg/kg未満または約7×1018 vg/kg未満の用量で静脈内投与される。ある種の態様において、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0196】
いくつかの態様において、AAVベクターは約1×1012 vg/kg、約3×1012 vg/kg、約5×1012 vg/kg、約7×1012 vg/kg、約1×1013 vg/kg、約3×1013 vg/kg、約5×1013 vg/kg、約6×1013 vg/kg、約7×1013 vg/kg、約8×1013 vg/kg、約9×1013 vg/kg、約1×1014 vg/kg、約3×1014 vg/kg、約5×1014 vg/kg、約7×1014 vg/kg、約1×1015 vg/kg、約3×1015 vg/kg、約5×1015 vg/kg、約7×1015 vg/kg、約1×1016 vg/kg、約3×1016 vg/kg、約5×1016 vg/kg、約7×1016 vg/kg、約1×1017 vg/kg、約3×1017 vg/kg、約5×1017 vg/kg、約7×1017 vg/kg、約1×1018 vg/kg、約3×1018 vg/kg、約5×1018 vg/kgまたは約7×1018 vg/kgの用量で静脈内投与される。
【0197】
いくつかの態様において、AAVベクターは1×1012 vg/kg、3×1012 vg/kg、5×1012 vg/kg、7×1012 vg/kg、1×1013 vg/kg、3×1013 vg/kg、5×1013 vg/kg、6×1013 vg/kg、7×1013 vg/kg、8×1013 vg/kg、9×1013 vg/kg、1×1014 vg/kg、3×1014 vg/kg、5×1014 vg/kg、7×1014 vg/kg、1×1015 vg/kg、3×1015 vg/kg、5×1015 vg/kg、7×1015 vg/kg、1×1016 vg/kg、3×1016 vg/kg、5×1016 vg/kg、7×1016 vg/kg、1×1017 vg/kg、3×1017 vg/kg、5×1017 vg/kg、7×1017 vg/kg、1×1018 vg/kg、3×1018 vg/kg、5×1018 vg/kg、7×1018 vg/kgの用量で静脈内投与される。ある種の態様において、これらの用量のいずれかで送達されるAAVベクターは、AAV9ベクターまたはAAV rh74ベクターである。
【0198】
患者における機能的改善、臨床的利点または有効性の証拠は、ニューヨーク心臓協会の機能分類(NYHAクラス)の改善、心エコー検査(左室駆出率、短縮率、左室流出路閉塞、左室壁厚、左室もしくは右室容積、右室面積および/または速度時間積分の安定化または改善)、心電図記録法(STセグメント変化、T波逆転、Q波、心房細動および/または上室性頻拍症の安定化または改善)、心臓MRI、心臓生検、発作性心室性不整脈の減少、心臓突然死の減少、および/または線維性脂肪沈着のさらなる発達の減少もしくは欠如によって明らかにされうる。
【0199】
組成物の有効用量の投与は、全身投与、局所投与、直接注射、静脈内投与、心臓内投与を含むが、これらに限定されない、当技術分野において標準的な経路によって行われうる。いくつかの場合において、投与は全身注射、局所注射、直接注射、静脈内注射、心臓内注射を含む。投与は心臓カテーテル法によって実施されうる。
【0200】
いくつかの態様において、本開示は、rAAVおよび本開示の組成物の有効用量の局所投与および全身投与を提供する。例えば、全身投与は、全身が影響を受けるように循環系への投与でありうる。全身投与は注射、注入または移植による非経口投与を含む。本明細書において開示される組成物の投与経路は、静脈内(「IV」)投与、腹腔内(「IP」)投与、筋肉内(「IM」)投与、病巣内投与もしくは皮下(「SC」)投与、または徐放装置、例えば、ミニ浸透圧ポンプ、デポ製剤などの移植を含む。いくつかの態様において、本開示の方法は、本開示のAAVベクターまたはその薬学的組成物を、静脈内、筋肉内、動脈内、腎臓内、尿道内、心臓内、冠動脈内、心筋内、皮内、硬膜外、皮下、腹腔内、脳室内、またはイオン泳動投与によって投与することを含む。
【0201】
特に、本開示のrAAVの投与は、rAAV組み換えベクターを動物の標的組織に輸送する任意の物理的方法を用いることにより達成されうる。投与は、心臓への注射を含むが、これに限定されることはない。
【0202】
いくつかの態様において、本開示の方法は心臓内送達を含む。注入は、注入ポンプを使い特殊なカニューレ、カテーテル、注射器/針を用いて実施されうる。投与は心臓への、有効量のrAAVビリオン、またはrAAVビリオンを含む薬学的組成物の送達を含みうる。これらは、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腎臓内、尿道内、心臓内、冠動脈内、心筋内、皮内、硬膜外、皮下、腹腔内、脳室内、またはイオン泳動投与によって達成されうる。本開示の組成物はさらに、静脈内投与されうる。
【0203】
rAAV投与の効果
いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、対象にとって有益な効果を有しうる。例えば、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、対象の生存性を増加させうる。
【0204】
いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、生存性を少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%または少なくとも約500%増加させる。
【0205】
いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、生存性を1%~90%、20%~80%、30%~80%、40%~80%、50%~80%、1%~2%、2%~3%、3%~4%、4%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~35%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、95%~100%、100%~200%、200%~300%、300%~400%または400%~500%増加させる。
【0206】
いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、対象における駆出率の低下を抑止する。いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、駆出率の低下を少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約100%抑止する。
【0207】
いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、駆出率の低下を1%~90%、20%~80%、30%~80%、40%~80%、50%~80%、1%~2%、2%~3%、3%~4%、4%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~35%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%または95%~100%抑止する。
【0208】
いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、対象における拡張末期径(EDD)の増加を抑止する。いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、対象における拡張末期径(EDD)の増加を少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%または少なくとも約500%抑止する。
【0209】
いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、対象におけるEDDの増加を1%~90%、20%~80%、30%~80%、40%~80%、50%~80%、1%~2%、2%~3%、3%~4%、4%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~35%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、95%~100%、100%~200%、200%~300%、300%~400%または400%~500%抑止する。
【0210】
いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、対象における収縮期左室後壁厚(LVPW)の増加を抑止する。いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、対象におけるLVPWの増加を少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%または少なくとも約500%抑止する。
【0211】
いくつかの態様において、本開示のrAAVの投与は、本開示のrAAVを投与されていない対象と比較して、対象におけるLVPWの増加を1%~90%、20%~80%、30%~80%、40%~80%、50%~80%、1%~2%、2%~3%、3%~4%、4%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~35%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、95%~100%、100%~200%、200%~300%、300%~400%または400%~500%抑止する。
【実施例
【0212】
実施例1: インビトロでの前臨床生物活性および有効性
図1~25に例示されるベクターを試験する。AAVベクターまたは各発現カセットを、培養心筋細胞(例えば、患者由来の人工多能性幹細胞心筋細胞(iPSC-CM)もしくは動物モデルから採取した初代心筋細胞)またはこれらのコンストラクトによるトランスフェクションまたは形質導入に適している他の細胞を用いインビトロで試験する。JPH2の発現を免疫蛍光法およびウエスタンブロット法により評価する。変異心筋細胞を利用した細胞ベースの研究により、JPH2導入遺伝子の過剰発現(AAVベクターによる形質導入および/またはベクタープラスミドによるトランスフェクション後のいずれか)の利点が、a) カルシウム処理の正常化とそれに伴う収縮ペースの正常化、ならびに/またはb) 正常なT管構造の回復および/もしくはリモデリングの減衰によって明らかになるであろう。
【0213】
実施例2: 大動脈縮窄(TAC)後のインビボでの心不全の救済
上述した選択のAAVベクターによるAAV-JHP2遺伝子治療は、本質的にReynolds et al. (Int J Cardiol. 2016 Dec 15; 225: 371-380)に記述されているように実施される。AAV発現カセットは、AAV9および/またはAAV rh.74などの異なるキャプシド血清型を用いてインビボでパッケージングおよび送達される。
【0214】
マウスTACモデル:
マウスにおける大動脈縮窄(TAC)は、圧力過負荷による心臓肥大とそれに続く心不全を実験的に誘導したものである。他の実験的心不全マウスモデルと比較して、TACモデルはより再現性の高い心臓肥大をもたらし、心不全発症の時間経過も緩やかである。マウスのTAC後、駆出率および他の心機能指標の漸進的低下が心臓JPH2レベルの漸進的低下と並行する。雄性C57BI/6Jマウス(約4ヶ月齢)を麻酔し、第3肋間腔のレベルまで前方開胸術を実施することによって大動脈弓を可視化する。絹縫合糸を28ゲージの針で大動脈弓の第一幹と第二幹の間に結束して縮窄を行う。一貫性を保つため、術後7日目に左右頸動脈のドップラー流速の変化を測定することにより縮窄レベルを定量化する。右頸動脈と左頸動脈のピーク速度比は5.0から6.5の範囲にあり、TAC後2週間の駆出率は40%から50%の範囲にありうる。
【0215】
心エコー検査による有効性の機能的証拠:
TACモデルでの心臓への利益に対する有効性および生物活性の証拠は、ベースラインおよびTAC後のさまざまな間隔を含む予め規定された時点における経胸壁心エコー検査を用いて評価される。このマウスモデルに適した十分な心不全を有する動物をスクリーニングするために、TAC後1週時に右頸動脈と左頸動脈のピーク速度のドップラー比(RC/LC)を決定し、基準(RC/LCが5.0~6.5)を満たさないものは試験から除外される。さらに、TAC後2週時の心エコー検査を実施し、駆出率(EF)が40~50%の範囲外の動物も除外される。その後、心エコー検査によって適切なドップラーRC/EVおよびEFを有したマウスに、Tac後3週時にJPH2タンパク質を過剰発現するAAVコンストラクトまたは製剤緩衝液(FB; ビヒクル対照)を(静脈内または眼窩後方内のどちらかに)注射する。AAV-JPH2処置動物では、FB対照群と比較してEFが経時的に有意に増加することにより、有効性が明らかになる。心エコー検査は、FBを注射したマウスのEFが時間とともに徐々に低下し、拡張末期径(EDD)が時間とともに増大し、収縮期左室後壁厚(LVPW)も時間とともに増大することが見られると明らかにされよう。対照的に、AAV-JPH2を注射した動物は、AAV-JPH2処置後に、EFおよびEDDが時間とともに安定なまま、またはわずかに改善し、LVPWが時間とともにFB対照より大きくなることが見られよう。
【0216】
横行管リモデリングの減衰による有効性の形態学的証拠:
T管構造に及ぼすAAV9-JPH2の効果を試験するために、単離された心筋細胞をTACの結果としての潜在的なリモデリングについて評価する。TACの結果として、FB対照注射マウスは、筋細胞におけるT管構造の完全性の尺度であるT管面積とT管力(T-tubule power)の有意な低下によって明らかな典型的な心臓リモデリングを呈する。JPH2の過剰発現による有効性の証拠は、FBを注射した対照と比較して、AAV-JPH2を注入した動物における心臓リモデリングの緩和およびT管面積とT管力の変化の減衰によって観察されよう。
【0217】
カルシウム処理の改善による有効性の機能的証拠:
TACの結果として、単離された心室筋細胞における筋小胞体(SR) Ca2+処理は、Ca2+過渡振幅の低下によって測定されるように有意に損なわれており、正常なNa2+/Ca2+交換体の変化を伴うカフェインダンププロトコルを用いたCa2+ SR負荷の有意な低下が観察される。TACモデルにおけるAAVを介したJPH2過剰発現の利点または有効性の証拠は、心筋細胞におけるCa2+過渡振幅の正常化、SR Ca2+負荷の改善およびNa2+/Ca2+交換体の正常化によって明らかになるであろう。
【0218】
遺伝子導入タンパク質の発現および下流肥大応答の改善による有効性の証拠:
AAV投与の結果としてのJPH2タンパク質の発現レベルを、ウエスタンブロットにより心臓溶解液において評価する。FBを注射した動物ではTACの結果としてJPH2タンパク質レベルが低減するが、AAVを介したJPH2の過剰発現により、TAC後最大9週間までタンパク質レベルが持続するものと予想される。さらに、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)により、FB対照を注射したTACマウスでは正常なシャム手術の対照と比較して、いくつかの肥大促進マーカーのmRNAレベルの増加が明らかになるであろう。肥大促進マーカーの増加は「カルシニューリン1アイソフォーム4調節因子」(Rcan1.4)、つまり「活性化T細胞核因子」(NFAT)のマーカー、ミオシン重鎖7 (Myh7)、ナトリウム利尿ペプチドA型(Nppa)、およびナトリウム利尿ペプチドB型(Nppb)を含むが、これらに限定されることはない。AAV遺伝子治療によるJHP2送達の有益な効果はAAV-JPH2を注入した動物の心臓溶解液において、FBを注入したTAC対照と比較して、これらの肥大促進マーカーの1つまたはいくつかのmRNAレベルを減衰させるまたは有意に低下させることで明らかになるであろう。
【0219】
実施例3: JPH2-A399Sノックインマウスにおけるインビボでの前臨床有効性
JPH2-A399Sノックインマウスは、ヒト疾患の要素を捉えた遺伝子モデルであり、肥大型心筋症(HCM)のバリアントに相当し、変異マウスでは6ヶ月齢までに左室肥大と線維症を引き起こす。ヒト疾患のマウスモデルとして、さらにJPH2のAAV過剰発現の潜在的な生物活性と有効性を評価することができる。
【0220】
横行管リモデリングの減衰による有効性の形態学的証拠:
JPH2-A399SマウスモデルでのT管構造に及ぼすAAV9-JPH2の効果を試験するために、単離された心筋細胞をA399S変異の結果としての潜在的なリモデリングについて評価する。A399S変異の結果として、FB対照を注射したA399Sマウスは、心筋細胞におけるT管構造の完全性の尺度であるT管面積とT管力が有意に低下することによって明らかな典型的な心臓リモデリングを呈しうる。JPH2の過剰発現による有効性の証拠はFBを注入したA399Sノックイン対照と比較して、AAV-JPH2を注射した動物における心臓リモデリングの緩和ならびにT管面積およびT管力の変化の減衰により観察されるであろう。
【0221】
カルシウム処理の改善によるA399S変異マウスの有効性の機能的証拠:
JPH2 HCM遺伝子マウスモデルであるA399Sでは、マウスはヒトに見られる変異(A405S)と類似した変異を発現し、数週間から数ヶ月の経過で心筋細胞肥大と著しい線維化を引き起こす。A399Sマウスは、肥大性心室中隔、LV質量の増加、非対称性LV肥大、拡張期充満の低減および筋線維の乱れを含む、HCに関連するさまざまな特徴を示すことが明らかになっている。A399SマウスモデルにおけるJPH2の過剰発現の結果としての治療的有用性の証拠は、心臓の形態と機能に対する上記の異常な結果を緩和することによって明らかになるであろう。さらに、A399Sノックイン変異の結果として、単離された心室筋細胞における筋小胞体(SR) Ca2+処理が、正常なNa2+/Ca2+交換体の変化とともに、Ca2+過渡振幅の低下、およびCa2+ SR負荷の有意な低下によって測定されるように、有意に損なわれている可能性がある。A399SモデルにおけるAAVを介したJPH2の過剰発現の利点または有効性の証拠は、心筋細胞におけるCa2+過渡振幅の正常化、SR Ca2+負荷の改善、および/またはNa2+/Ca2+交換体の正常化によって明らかになりうる。
【0222】
実施例4: 前臨床導入遺伝子発現
図1および図2に例示した発現カセットを、AAV.rh74またはAAV9ベクターにパッケージングした後に試験した。得られたAAVベクター(AAVrh.74およびAAV9の両方)を、C57BL/6Jマウスを用いてインビボで試験し、JPH2の発現レベルを、心臓組織タンパク質のウエスタンブロット(WB)によって評価した(図26)。MHCK7プロモーターは、AAV9-MHCK7-JPH2およびAAVrh.74-MHCK7-JPH2のそれぞれの送達後、マウスの心臓においてWBによりJPH2の最も高い発現レベルを生じた。hTnnT2プロモーター(「hTnT」)はJPH2タンパク質の発現レベルを低下させることが分かり、AAVrh.74はAAV9よりも高いレベルの発現をもたらした。これらの結果に基づいて、AAVrh.74およびAAV9ベクターは心臓内でJPH2を発現させるために効果的に使用できると結論付けることができる。
【0223】
実施例5: 大動脈縮窄(TAC)後のインビボでの心不全の救済
上述した選択のAAVベクターによるAAV-JHP2遺伝子治療は、本質的にReynolds et al. (Int J Cardiol. 2016 Dec 15; 225: 371-380)に記述されているように実施された。AAV発現カセットは、異なるキャプシド血清型AAVrh.74およびAAV9を用いてインビボでパッケージングおよび送達された。
【0224】
マウスTACモデル:
マウスにおける大動脈縮窄(TAC)は、圧力過負荷による心臓肥大とそれに続く心不全を実験的に誘導したものである。他の実験的心不全マウスモデルと比較して、TACモデルはより再現性の高い心臓肥大をもたらし、心不全発症の時間経過も緩やかである。マウスのTAC後、駆出率(EF)および他の心機能指標の漸進的低下が心臓JPH2レベルの漸進的低下と並行する。AAVを介したJPH2の過剰発現が、この心臓肥大マウスモデルにおいてどの程度の利益をもたらしうるかを調べるために、雄性C57BL/6Jマウス(約4ヶ月齢)を麻酔し、第3肋間腔のレベルまで前方開胸術を実施することによって大動脈弓を可視化した。絹縫合糸を28ゲージの針で大動脈弓の第一幹と第二幹の間に結束して縮窄を行った。一貫性を保つため、心エコー検査による変化を測定することにより縮窄レベルを定量化し、TAC後2週間の駆出率が40%~50%の範囲にあったマウスを、この試験のために選択した。
【0225】
心エコー検査による有効性の機能的証拠:
TACモデルでの心臓への利益に対する有効性および生物活性の証拠を、ベースラインおよびTAC後のさまざまな間隔を含む予め規定された時点における経胸壁心エコー検査を用いて評価した(図27)。このマウスモデルに適した十分な心不全を有する動物をスクリーニングするために、TAC後2週時の心エコー検査を実施し、駆出率(EF)が40~50%の範囲外の動物を除外した。その後、心エコー検査によって適切なEFを有したマウスに、Tac後3週時にJPH2タンパク質を過剰発現するAAVコンストラクト3×1013 vg/kgの用量または製剤緩衝液(FB; ビヒクル対照)を眼窩後方注射した。この結果をシャム手術、FB (POS CON)またはTAC手術、FB (Neg CON)のいずれかのマウスと比較する。有効性はAAV-JPH2処置動物において、経時的にFB対照群と比較して有意に増加したEFによって明らかであった(図28A~28Bおよび図29A~29F)。
【0226】
心エコー検査により、FB (POS CON)を注射したマウスが、経時的に徐々に低下したEFを有することが明らかにされた(図28A)。対照的に、AAV-JPH2を注射した動物は、TAC手術後にEF喪失の進行の明らかな停止を示し、これはAAV-JPH2処置後9週時のEFデータによって証明される(図28B)。
【0227】
AAVrh.74およびAAV9を介したJPH2発現のいずれの後にも、程度の差はあっても、疾患表現型の緩和の証拠が観察された(図29A~29F)。これらの結果は、AAVrh.74とAAV9の両方とも、TACマウスが適切なモデルであると考えられるJPH2欠損を伴う心臓の適応症に利益をもたらす可能性があることを示している。さらに、hTnTプロモーターまたはMHCK7プロモーターのいずれかを有するベクターは、このマウスモデルにおけるJPH2関連欠損症の処置に有効であることが実証されている。それにもかかわらず、時間経過データ(図28Aおよび図29A~29F)を考慮すると、hTnTプロモーターを利用したベクターコンストラクトでは、より強固で一貫したEFの保存が観察された。さらに、hTnTプロモーターを有するAAVコンストラクトを注射された動物は、計画された9週間の殺処理時点より前に死亡しなかった。対照的に、FB (POS CON)動物8匹のうち4匹が早期に死亡し、AAV9-MHCK7群の動物8匹のうち2匹が早期に死亡し、AAVrh.74-MHCK7群の動物3匹のうち2匹が早期に死亡した。
【0228】
上記の米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、ならびに本明細書において言及されおよび/または出願データシートに記載されている非特許公報は全て、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0229】
前述から、本発明の特定の態様を例示の目的で本明細書において記述したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更が加えられうることが理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による以外は限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図29C
図29D
図29E
図29F
【配列表】
2024546103000001.xml
【国際調査報告】