(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】リンパ浮腫を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4995 20060101AFI20241210BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20241210BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241210BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241210BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20241210BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20241210BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20241210BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20241210BHJP
A61K 31/4412 20060101ALI20241210BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K31/4995
A61P7/10
A61P17/00
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/05
A61K31/352
A61K31/37
A61K31/47
A61K31/4412
A61K31/192
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534215
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2022052230
(87)【国際公開番号】W WO2023107608
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524215188
【氏名又は名称】セルタクシス,エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ロックソン,スタンレー,グレン
(72)【発明者】
【氏名】ニコルス,マーク,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,シングオ
(72)【発明者】
【氏名】ティエン,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】スプリングマン,エリック,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘファーナン,アイリーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA511
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4C084ZA891
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4C086ZA51
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4C086ZB26
4C206AA01
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4C206DA25
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4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA51
4C206ZA89
4C206ZB26
4C206ZC20
(57)【要約】
それらを必要とする患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、該患者において、リンパ浮腫を治療する方法、皮膚の肥厚を低減する方法、皮膚のトルゴール、構造、組織学および/または機能を向上する方法、および/またはリンパ流および/または脈管機能を向上する方法が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上肢端リンパ浮腫の治療を必要とする患者に、有効量のアセビルスタットを投与する工程を含む、該患者において上肢端リンパ浮腫を治療する方法であって、該治療が皮膚の肥厚の低減を生じる、方法。
【請求項2】
皮膚の肥厚の低減が皮膚超音波により測定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
皮膚の肥厚の低減が皮膚カリパスにより測定される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
患者が続発性または後天的な上肢端リンパ浮腫に苦しんでいる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
患者が、癌についての手術および/または放射線療法を以前に経験している、請求項4記載の方法。
【請求項6】
癌が固形腫瘍である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
患者が、乳癌治療に関連する上肢リンパ浮腫に苦しんでいる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
有効量のアセビルスタットが、LTA4Hの最大阻害を提供する量未満である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
アセビルスタットが経口投与される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
アセビルスタットの日用量が200mg/日以下である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
アセビルスタットの日用量が100mg/日以下である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
アセビルスタットの日用量が75mg/日以下である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アセビルスタットの日用量が50mg/日以下である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
アセビルスタットが1日に2回投与される、請求項1および12~13いずれか一項記載の方法。
【請求項15】
アセビルスタットが1日に1回投与される、請求項1および10~13いずれか一項記載の方法。
【請求項16】
アセビルスタットが局所投与される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
アセビルスタットが拍動投与により投与されるかまたはアセビルスタットが拍動放出医薬組成物中にある、請求項1記載の方法。
【請求項18】
皮膚の厚さの低減が、アセビルスタットの第1の投与後の24週以内に起こる、請求項1記載の方法。
【請求項19】
皮膚の肥厚の低減が、ベースラインと比較して少なくとも約10%の低減である、請求項1および18記載の方法。
【請求項20】
皮膚の肥厚の低減が、ベースラインと比較して少なくとも約20%の低減である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第2の活性剤を投与する工程をさらに含む方法であって、該第2の活性剤が、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤、クマリン、抗ヒスタミン、モンテルカストおよび関連のあるロイコトリエン改変物質、抗線維症化合物、利尿薬、スタチンmTOR阻害剤およびピルフェニドンからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
第2の活性剤を投与する工程をさらに含む方法であって、該第2の活性剤が、プロリンパ管形成薬物、抗TGF-β1抗体、抗IFN-γ抗体、抗IL-4抗体および抗IL-13抗体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項23】
上肢端リンパ浮腫の治療を必要とする患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、該患者において上肢端リンパ浮腫を治療する方法であって、該治療が皮膚の肥厚の低減を生じ、選択的LTA4H阻害剤がアミノペプチダーゼに対してエポキシドヒドロラーゼに選択的である、方法。
【請求項24】
LTA4H阻害剤が、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも、LTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ活性について少なくとも約1.5倍選択的である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
LTA4H阻害剤が、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも、LTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ活性について少なくとも約2倍選択的である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
LTA4H阻害剤が、他のアミノペプチダーゼよりも、LTA4Hについて少なくとも約1.5倍選択的である、請求項23~25いずれか記載の方法。
【請求項27】
選択的LTA4H阻害剤が、アセビルスタット、シス-レスベラトロール、トランス-レスベラトロール、イソフラボンダイゼイン、7,8,4'-トリヒドロキシイソフラボンからなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項28】
選択的LTA4H阻害剤がアセビルスタットである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
皮膚の肥厚の低減が皮膚超音波により測定される、請求項23記載の方法。
【請求項30】
皮膚の肥厚の低減が皮膚カリパスにより測定される、請求項23記載の方法。
【請求項31】
選択的LTA4H阻害剤の有効量が、LTA4Hの最大阻害を提供する量未満である、請求項23記載の方法。
【請求項32】
皮膚の肥厚の低減を必要とする患者に、有効量のアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、該患者において皮膚の肥厚を低減する方法であって、該治療が皮膚の肥厚の低減を生じる、方法。
【請求項33】
患者が皮膚の柔らかさの向上を必要とする、請求項32記載の方法。
【請求項34】
患者が強皮症に苦しんでいる、請求項32記載の方法。
【請求項35】
皮膚の肥厚の低減が皮膚超音波により測定される、請求項32記載の方法。
【請求項36】
皮膚の肥厚の低減が皮膚カリパスにより測定される、請求項32記載の方法。
【請求項37】
有効量のアセビルスタットが、LTA4Hの最大阻害を提供する量未満である、請求項32記載の方法。
【請求項38】
アセビルスタットが経口投与される、請求項32記載の方法。
【請求項39】
アセビルスタットの日用量が200mg/日以下である、請求項32記載の方法。
【請求項40】
アセビルスタットの日用量が100mg/日以下である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
アセビルスタットの日用量が75mg/日以下である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
アセビルスタットの日用量が50mg/日以下である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
アセビルスタットが局所投与される、請求項32記載の方法。
【請求項44】
アセビルスタットが拍動投与により投与されるかまたはアセビルスタットが拍動放出医薬組成物中にある、請求項32記載の方法。
【請求項45】
リンパ浮腫の治療を必要とする患者に、アセビルスタットおよび第2の活性剤の組合せの有効量を投与する工程を含む、該患者においてリンパ浮腫を治療する方法であって、該第2の活性剤が、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤、クマリン、抗ヒスタミン、モンテルカストおよび他のロイコトリエン阻害剤、抗線維症化合物、利尿薬、スタチン、mTOR阻害剤およびピルフェニドンからなる群より選択される、方法。
【請求項46】
第2の活性剤がケトプロフェンまたはイブプロフェンである、請求項45記載の方法。
【請求項47】
第2の活性剤がケトプロフェンである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
ケトプロフェンの日用量が225mg未満である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
アセビルスタットが経口投与される、請求項45記載の方法。
【請求項50】
アセビルスタットの日用量が200mg/日以下である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
アセビルスタットの日用量が100mg/日以下である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
アセビルスタットの日用量が75mg/日以下である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
アセビルスタットの日用量が50mg/日以下である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
アセビルスタットが局所投与される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
アセビルスタットが拍動投与により投与されるかまたはアセビルスタットが拍動放出医薬組成物中にある、請求項54記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年12月9日に出願された米国仮出願第63/287,748号の利益を主張する。上記参照される出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
リンパ浮腫は、明確な薬理学的処置がない消耗性の慢性状態である。死亡率は低いが、リンパ浮腫関連入院は、米国の健康管理システムに対して重大な負担である4。リンパ浮腫は、世界で2億人ほど多くの患者が罹り、米国では少なくとも300万人が罹る6。しかしながら、リンパ浮腫は十分理解されておらず、十分に文書化されていないので、現在受け入れられている発生数および有病率の割合はその規模を過小評価している可能性が高い7。
【0003】
リンパ浮腫は、リンパ循環を通る損なわれた流体の輸送が解消されずに、段々にくぼんだままでない流体の保持を引き起こす場合に生じる9、10。該疾患は、相対的なリンパ管不全により引き起こされる11。リンパ浮腫の自然の病歴は、増加する肢の周囲寸法、線維症、炎症、異常な脂肪の堆積および再発性皮膚感染のリスクを増加する顕著な皮膚病理学により定義される12。リンパ浮腫は、不快さを引き起こし、毎日の仕事を行う能力に影響を及ぼすので、実質的に、美容的関心に加えて、患者の毎日の生活の質に影響を及ぼし得る。
【0004】
リンパ浮腫は、成長因子の不均衡13および持続的な組織炎症の存在10を特徴とする。修復性のリンパ管新生(lymphangiogenesis)を助長する治療的アプローチは、将来にはリンパ浮腫の病状を逆転させる可能性を有し得るが、持続的な炎症と損なわれたリンパ管新生の関係は、現在まで十分に調査されていない14。
【0005】
情報に基づく薬理学的アプローチについての将来的な探究において、ヒトおよびマウスの両方の実験的リンパ浮腫の分子的病因におけるロイコトリエンB4 (LTB4)の機械作用的役割が同定されている14、15。ヒトリンパ浮腫のマウスモデルの以前の翻訳調査16により、リンパ浮腫の病因および潜在的な治療標的としての両方におけるロイコトリエンについての役割が示唆された16。5-リポキシゲナーゼ(5-LO)経路18の阻害を含む作用の認識された二重抗炎症機構を有するNSAID剤であるケトプロフェン17は、リンパ浮腫のための治療として調べられている。例えば米国特許第8,965,708号参照。実験的な後天的リンパ浮腫を有するマウスにケトプロフェンを全身投与する場合、治療前リンパ浮腫性組織病理学の顕著な標準化など、疾患負荷が逆転された17。ヒトリンパ浮腫についての薬物療法の第1のヒトパイロット臨床試験の結果も公開されている。集合された55成人リンパ浮腫被験体のこの実験のためのオープンラベルでその後のプラセボ無作為化される調査により、臨床的に計測された皮膚の厚さを向上し、リンパ浮腫の皮膚組織病理学的変化を逆転させる薬物の能力が確認された19。これらの結果は、リンパ循環の欠陥の修復を補助するかかるアプローチの見込みを強調するが、臨床的適用は長期的なNSAIDの使用に関連する心臓血管罹患率に対する懸念により阻害される。
【0006】
米国特許第10,500,178号には、リンパ浮腫の予防および治療のためのLTB4の特定の阻害剤の使用が記載される。また、LTA4ヒドロラーゼ阻害剤、ウベニメクス(文献において「ベスタチン」とも称される)は、下肢のリンパ浮腫の治療のための第2相臨床試験で調査されている。臨床試験では、皮膚の厚さおよび肢の体積ならびにプラセボに対するウベニメクスについてのバイオインピーダンスの向上は同定されなかった。
【0007】
現在、リンパ浮腫の治療について承認された治療はない。したがって、この慢性の消耗性状態を安全かつ有効に治療し得る治療のための重大な必要性が残る。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、その必要がある患者に、有効量のアセビルスタット(acebilustat)または別の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、該患者において、リンパ浮腫を治療する方法、皮膚の厚さを低減する方法、皮膚のトルゴール、構造、組織学および/または機能を向上する方法、および/またはリンパ流および/または脈管機能を向上する方法に関する。本発明の方法により治療され得るリンパ浮腫としては、例えば原発性および続発性(または後天的)リンパ浮腫が挙げられる。本明細書に記載される治療は、皮膚の厚さの低減および/または皮膚のトルゴール、構造、組織学もしくは機能の向上、および/またはリンパ流および/または脈管機能の増加を生じ得る。
【0009】
本発明は、リンパ浮腫、例えば続発性リンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に有効量のアセビルスタットを投与する工程を含む、リンパ浮腫、例えば続発性リンパ浮腫を治療する方法を包含し、該治療は、皮膚の厚さの低減を生じる。さらなる局面において、本発明は、上肢端リンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に有効量のアセビルスタットを投与する工程を含む、上肢端リンパ浮腫を治療する方法であり、該治療は皮膚の厚さの低減を生じる。
【0010】
本発明はまた、リンパ浮腫、例えば続発性リンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に、有効量のアセビルスタットを投与する工程を含む、リンパ浮腫、例えば続発性リンパ浮腫を治療する方法を包含し、該治療は皮膚の厚さの低減および/または皮膚のトルゴール、構造、組織学および/または機能の向上を生じる。本発明はまた、上肢端リンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に有効量のアセビルスタットを投与する工程を含む、上肢端リンパ浮腫を治療する方法を包含し、該治療は、皮膚のトルゴール、構造、組織学および/または機能の向上を生じる。
【0011】
本発明はさらに、リンパ浮腫、例えば続発性のリンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に有効量のアセビルスタットを投与する工程を含む、リンパ浮腫、例えば続発性のリンパ浮腫を治療する方法を含み、該治療は、リンパ流および/または脈管機能の向上を生じる。さらなる局面において、本発明は、上肢端リンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に、有効量のアセビルスタットを投与する工程を含む、上肢端リンパ浮腫を治療する方法であり、該治療は、リンパ流の向上を生じる。
【0012】
本発明はまた、リンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、リンパ浮腫を治療する方法を含み、該治療は、皮膚の厚さの低減を生じ、選択的LTA4H阻害剤は、アミノペプチダーゼに対してエポキシドヒドロラーゼに選択的である。ある局面において、本発明は、上肢端リンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、上肢端リンパ浮腫を治療する方法に関し、該治療は、皮膚の厚さの低減を生じ、選択的LTA4H阻害剤は、アミノペプチダーゼに対してエポキシドヒドロラーゼに選択的である。
【0013】
本発明はまた、皮膚の厚さの低減を必要とする患者において、該患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、皮膚の厚さを低減する方法を包含し、選択的LTA4H阻害剤は、アミノペプチダーゼに対してエポキシドヒドロラーゼに選択的である。なおさらなる態様において、本発明は、皮膚の厚さの低減を必要とする患者において、該患者に、有効量のアセビルスタットを投与する工程を含む、皮膚の厚さを低減する方法に関する。該患者は、例えばリンパ浮腫に苦しむ患者、皮膚の柔らかさの向上を必要とする患者または強皮症に苦しむ患者であり得る。
【0014】
本発明はまた、リンパ浮腫、例えば続発性のリンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、リンパ浮腫、例えば続発性のリンパ浮腫を治療する方法を含み、該治療は、皮膚のトルゴール、構造、組織学または機能の向上の増加を生じる。なおさらなる局面において、本発明は、皮膚のトルゴール、構造、組織学または機能の向上を必要とする患者において、該患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、皮膚のトルゴール、構造、組織学または機能を向上する方法に関する。該患者は、例えばリンパ浮腫に苦しむ患者、皮膚の柔らかさの向上を必要とする患者または強皮症に苦しむ患者であり得る。
【0015】
本発明はまた、リンパ浮腫、例えば続発性のリンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、リンパ浮腫、例えば続発性のリンパ浮腫を治療する方法を含み、該治療は、リンパ流の増加および/または脈管機能の向上を生じる。なおさらなる局面において、本発明は、リンパ流および/または血管流の向上の増加を必要とする患者においてリンパ流および/または血管流の向上させる方法に関し、該方法は、該患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む。該患者は、例えばリンパ浮腫に苦しむ患者、皮膚の柔らかさの向上を必要とする患者または強皮症に苦しむ患者であり得る。
【0016】
さらなる局面において、本発明は、リンパ浮腫の治療を必要とする患者において、該患者に、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤および第2の活性剤の組合せの有効量を投与する工程を含む、リンパ浮腫を治療する方法に関し、該第2の活性剤は、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤、クマリン、抗ヒスタミン、モンテルカストおよび関連のあるロイコトリエン改変物質、抗線維症化合物、利尿薬、スタチン、mTOR阻害剤およびピルフェニドンからなる群より選択される。さらに別の態様において、第2の活性剤は、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤、クマリン、抗ヒスタミン、抗線維症化合物、利尿薬、スタチン、mTOR阻害剤およびピルフェニドンからなる群より選択される。ある局面において、リンパ浮腫は上肢端リンパ浮腫である。
【0017】
皮膚の厚さの低減は、例えば皮膚超音波、皮膚カリパスまたは任意の他の方法により測定され得る。
【0018】
リンパ流および/または脈管機能の増加は、例えばリンパシンチグラフィーおよび/またはインドシアニングリーンリンパ管造影により測定され得る。
【0019】
ある局面において、リンパ浮腫は、限定されないが、癌についての手術および放射線治療を以前に受けた患者におけるものを含む続発性リンパ浮腫である。いくつかの例において、癌は固形腫瘍である。一例において、患者は、上肢リンパ浮腫に関連する乳癌治療に苦しんでいる。別の例において、患者は、頭頸部領域リンパ浮腫に苦しんでいる。
【0020】
いくつかの態様において、該方法は、選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む。選択的LTA4H阻害剤は、LTA4Hの阻害について、他のアミノペプチダーゼ酵素よりも高い選択性を有する薬剤または化合物および/またはLTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ活性の阻害について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも高い選択性を有する薬剤である。LTA4H阻害剤の文脈において、選択性は、阻害の能力をいう。例えば、LTA4H阻害剤は、エポキシドヒドロラーゼ阻害についてのIC50がアミノペプチダーゼ活性についてのIC50よりも低い場合に、エポキシドヒドロラーゼ活性について、アミノペプチダーゼ活性よりも選択的である。一態様において、LTA4H阻害剤は、LTA4Hについて、他のアミノペプチダーゼ酵素、限定されないが、アミノペプチダーゼN、アミノペプチダーゼM、アミノペプチダーゼP、ロイシンアミノペプチダーゼなどの群よりも少なくとも約2倍選択的である。別の態様において、LTA4H阻害剤は、エポキシドヒドロラーゼ活性の阻害について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性の阻害に対して少なくとも約1.5倍選択的である。さらなる局面において、LTA4H阻害剤は、LTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ活性の阻害について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性の阻害に対して少なくとも約1.5または約2倍選択的である。なおさらなる態様において、LTA4H阻害剤は、LTA4Hについて、他のアミノペプチダーゼよりも少なくとも2倍選択的であり、エポキシドヒドロラーゼ活性について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも約1.5より高く倍選択的である。
【0021】
本発明はまた、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、リンパ浮腫患者において、軟組織感染、例えば蜂巣炎の発生数を低減する方法を含む。
【0022】
ある局面において、該方法は、患者に有効量のアセビルスタットを投与する工程を含む。例えばアセビルスタットは、1日に少なくとも1回、例えば経口的に投与され得る。ある態様において、該方法は、患者に、アセビルスタットを、約200mg以下、約150mg以下、約100mg以下、約50mg以下、約50mg~約100mg、約100mgまたは約50mgの総日用量で経口投与する工程を含む。
【0023】
他の局面において、該方法は、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の局所投与を含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様の説明を以下にする。
【0025】
本明細書で使用する場合、単語「a」および「an」は、そうではないと特定されない限り1つ以上を含むことを意味する。例えば、用語「さらなる治療剤(an additional therapeutic agent)」は、単一のさらなる治療剤および2つ以上のさらなる治療剤の組合せの両方を包含する。
【0026】
薬物または有効成分(例えばアセビルスタット)の用量または量の範囲が範囲の下限の「間」および範囲の上限の「間」と記載される場合、範囲は、下限および上限ならびに下限と上限の間の用量の両方を含むことを意図することが理解される。例えば「約50mg~約100mgの用量」について、該範囲は、範囲の下限約50mgおよび範囲の上限約100mgならびにその間の用量、例えば約75mgを含むことが理解される。また、「約50mg以下の用量」は、約50mgの用量および約50mg未満の用量を含むことを意図する。
【0027】
用語「約」は、数値または範囲に関して本明細書で使用する場合、例えば値または範囲の10%以内、5%以内もしくは4%以内、または2%以内あるいは値または範囲の1%以内である値または範囲の変動性の程度を可能にする。
【0028】
本発明は、リンパ浮腫患者、例えば上肢リンパ浮腫を有する患者においてLTB4の酵素的産生を阻害して、それにより罹患率、機能の喪失および生活の質の原因となる疾患の病理学的な皮膚のスチグマを逆転させるためのアセビルスタットおよび他の選択的LTA4H阻害剤の使用に関する。
【0029】
本明細書で使用する場合、リンパ浮腫は、リンパの発生異常(原発性リンパ浮腫)またはリンパ管の閉塞、乱れもしくは機能不全(続発性または後天的リンパ浮腫)のための身体の領域(1つまたは複数)の水腫である。症状および徴候は、身体の1つ以上の領域における硬性、繊維状、くぼみのない水腫の変動の程度を含み得る。
【0030】
原発性リンパ浮腫は構成的であり、続発性形態よりも比較的に一般的でない。それらは、提示の際の表現型および患者年齢において変化する。本発明の方法は、これらの原発性形態に適用可能であるが、治療は、異なる疾患病因のための他のもの以外のいくつかの形態においてより効果的であり得ることが当業者に理解される。リンパ浮腫の原発性形態としては、限定されずに、ミルロイ病、メージュ病、(原発性リンパ浮腫)、リンパ浮腫睫毛重生、リンパ浮腫タルダ(tarda)等、ならびに顕著なリンパ浮腫を有する他の遺伝的症候群、例えばターナー症候群およびヘネカム症候群が挙げられる。例えば先天的なリンパ浮腫は、出生時またはその後数カ月以内に出現し、リンパ性の発育不全または形成不全のためであり得る。ミルロイ病は、FLT4遺伝子突然変異に起因し、水腫および時々下痢および/または腸のリンパ管拡張により引き起こされるタンパク質喪失腸症のための低蛋白血症に関連する先天的なリンパ浮腫の常染色体優勢家族性形態である。リンパ浮腫睫毛重生は、転写因子遺伝子(FOXC2)の突然変異に起因し、過剰な睫毛(睫毛重生)ならびに足、腕および時々顔面の水腫に関連する原発性リンパ浮腫の常染色体優勢家族性形態である。リンパ浮腫タルダは加齢(age)の後に生じる35。家族性および散発性形態の両方が存在し;両方の遺伝的基準は不明である。臨床的所見は原発性リンパ浮腫のものと同様であるが、より重症でないことがある。遺伝性リンパ浮腫II型(メージュ病、原発性リンパ浮腫)は、ほとんどの個体において思春期頃またはその少し後に発症する。これは、原発性リンパ浮腫の最も一般的な型である。肢のリンパ浮腫に加えて、身体の他の領域、例えば腕、顔面および喉頭が罹患し得る。いくつかの個体は黄色爪を発症し得る。ターナー症候群;胸水を特徴とする黄色爪症候群、慢性肺疾患、リンパ浮腫および黄色爪;および全身のリンパの異常、顔の奇形および知力の無能の稀な先天的な症候群であるヘネカム症候群などのリンパ浮腫は、いくつかの他の遺伝的症候群において顕著である。本発明の方法および組成物は、これらの原発性リンパ浮腫およびそれらの症状のいずれかを治療するために使用され得る。
【0031】
続発性(後天的)リンパ浮腫は、原発性リンパ浮腫よりもかなり一般的である。これは一般的に、手術(特に、典型的に癌の病期決定および治療のためのリンパ節切開)、放射線治療(特に腋窩または鼠蹊部)、外傷、腫瘍によるリンパ閉塞および発展途上国においてリンパ性フィラリア症により引き起こされる。ある局面において、本明細書に記載される方法は、続発性リンパ浮腫を治療するために使用される。
【0032】
ある態様において、該方法は、例えば癌治療の結果として罹った確立された続発性リンパ浮腫を有する患者の治療を含む。乳癌生存者の15%より多くが続発性リンパ浮腫を経験すると推定される。リンパ節の外科的除去またはリンパ節の治療放射線は、リンパ浮腫のリスクを高める。腋窩介入の後、乳癌生存者の15%~30%は、臨床的に関連のあるリンパ浮腫を経験するが、他の種類の癌およびそれらの関連する治療は、続発性リンパ浮腫も引き起こし得る。他の悪性疾患(癌)に関連するリンパ浮腫の有病率は以下の通りであった:軟組織肉腫30%、下肢黒色腫28%、婦人科学癌20%、尿生殖器癌10%および頭頸部癌3%。リンパ浮腫はまた、慢性静脈不全、うっ血性心不全および静脈高血圧の他の原因を有する患者において、リンパ産生の増加により生じ得る。本発明の方法は、全てのかかる続発性リンパ浮腫患者に適用可能である。ある局面において、該方法は、上肢端リンパ浮腫の治療に関する。さらなる局面において、本発明は、乳癌治療後の上肢端リンパ浮腫(本明細書において乳癌治療関連上肢リンパ浮腫と称される)の治療に関する。さらなる局面において、リンパ浮腫は、頭頸部癌に関連する。
【0033】
後天的リンパ浮腫の基本的な徴候は、4段階で等級付けられる軟組織の浮腫である。用語「確立されたリンパ浮腫」は一般的に、限定されることなく疾患のより進行した病期、例えば罹患した組織の構造的変化が観察される病期2および病期3を含む、疾患の病期1~3のいずれかをいい得る。病期0において、罹患した領域は身体的に正常であるが、臨床的評価によりリンパ不全が示され得る。病期1において、浮腫はくぼんでおり、罹患した領域はしばしば、罹患した肢(1つまたは複数)の隆起の後に正常に戻る。病期2において、浮腫はくぼんでおり、慢性の軟組織炎症は、くぼんだ浮腫を伴う組織の構造的変化を引き起こす。病期3において、大きく慢性の軟組織構造変化のために、浮腫は、肥厚して不可逆的である。
【0034】
アセビルスタットおよび他のLTA4H阻害剤は、例えば米国特許第7,737,145号、米国特許第9,820,974号および米国特許出願公開20100210630A1に記載され、それらのそれぞれの内容は、本明細書において参照により援用される。アセビルスタットの化学名は、4-{[(1S,4S)-5-({4-[4-オキサゾル-2-イル-フェノキシ]フェニル}メチル)-2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル]メチル}安息香酸(CTX-4430とも称される)である。アセビルスタットは、ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ(LTA4H)の潜在的な阻害剤であり、ロイコトリエンB4(LTB4)の産生の律速酵素である。
【0035】
本発明の方法は、アセビルスタット(CTX-4430としても公知)の有効用量のヒト患者への投与を含む。ある局面において、アセビルスタットは、経口投与される。この化合物およびその調製のための方法は、米国特許第7,737,145号、米国特許第9,820,974号および米国特許出願公開20100210630A1に詳細に記載され、それらのそれぞれの内容は、本明細書において参照により援用される。アセビルスタットは以下に示される化学構造を有する:
【化1】
【0036】
インビトロで、アセビルスタットは、LTB4産生について、6.3ng/mLのIC50でLTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ酵素活性を阻害する。エクソビボで試験されたヒト全血において、アセビルスタットは、30.8ng/mLのおよそのIC50でLTB4産生を阻害する。アセビルスタット48ng/mLは、ヒト嚢胞線維症(CF)の痰における存在する因子に応答してインビトロで80%だけ好中球スウォーミングを低減することも示された。ヒトにおける薬力学的試験において、アセビルスタットは、93ng/mLの推定インビボEC50でLTB4産生を阻害する。CF患者において、痰の白血球は、全ての治療被験体(50または100mgの用量)においてベースラインから31%だけ、および100mgアセビルスタット群においてベースラインから60%だけ減少した。痰の好中球は、全ての治療患者(50~100mgの用量)において34%および100mg群において65%だけ減少した。CFを有する成人患者の第II相の最近の試験において、アセビルスタットは、感染の増加したリスクの証拠なく、48週の治療の経過にわたり、肺の悪化の速度の低減においての見込みを示した(例えば米国特許第10,898,484号に記載され;その内容は、本明細書において参照により明確に援用される)。この効果は初期疾患を有する患者において最も顕著であった。
【0037】
いくつかの例において、経口投与される有効量のアセビルスタットは200mg以下であり得る。したがって、本発明は、患者への約200mg以下のアセビルスタットの経口投与を包含する。ある局面において、患者は、200mgのアセビルスタット;例えば慢性経口投与(例えば約1日間より長く、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間または少なくとも約6ヶ月間または24週および/または患者の治療の間中)を投与される。本発明は、該患者への、約100mgのアセビルスタットの経口投与;例えば慢性経口投与(例えば約1日間より長く、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間または少なくとも約6ヶ月間または24週および/または患者の治療の間中)を包含する。本発明はまた、該患者への50mgのアセビルスタットの投与;例えば慢性経口投与(例えば少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間または少なくとも約6ヶ月間または24週および/または患者の治療の間中)を包含する。アセビルスタットは、例えば12または24時間毎に約50mgの用量で(または1日に1または2回)または12または24時間毎に約100mgの用量で(または1日に1回または2回)投与され得る。ある局面において、アセビルスタットは、24時間毎に100mgの用量で投与される(または1日に1回)。アセビルスタットの総日用量は、約200mg以下、約100mg以下または約50mg以下の用量であり得る。アセビルスタットの総日用量は、100mg~200mg、例えば約150mgでもあり得る。アセビルスタットの総日用量は、約50mg~約100mg、例えば約75mgでもあり得る。ある局面において、アセビルスタットの用量は、1日に1回もしくは2回約25mgの用量で投与されるか、または1日に1回もしくは2回約25~50mgの用量で投与される。アセビルスタットは食事と共にまたは食事なしで投与され得る。
【0038】
ある局面において、有効量のアセビルスタットまたは他の選択的LTA4Hヒドロラーゼ阻害剤は、有効量で投与され、該有効量は、LTA4Hエポキシドヒドロラーゼ活性の最大阻害を提供するもの未満である。いくつかの例において、有効量は、LTA4Hエポキシドヒドロラーゼ活性の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または約少なくとも約(bout)85%の阻害、例えばLTB4生成の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約85%の阻害を提供し得る。例えば、ヒト薬力学的試験において、50mg用量のアセビルスタットは63%以上のLTB4阻害を提供すること、100mg用量のアセビルスタットは約74%以上のLTB4阻害を提供すること、150mg用量は約82%以上のLTB4阻害を提供することおよび200mgのアセビルスタットは約85%以上のLTB4阻害を提供することが示されている。
【0039】
さらなる局面において、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4ヒドロラーゼ阻害剤は局所投与される。
【0040】
本発明はまた、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4ヒドロラーゼ阻害剤が拍動投与により投与されるかまたはアセビルスタットが拍動放出医薬組成物中にある方法を含む。拍動投与は、予め決定された放出なしの期間または遅延時間の後の活性剤または薬物の投与または放出を包含する。このように、拍動投与は、薬物放出がない期間の後に迅速かつ完全に薬物を送達することを含み得る。例えば、血漿中の活性剤または薬物の濃度は、次の用量が投与される前に、LTA4H活性の約50%阻害未満またはLTB4生成の約50%未満まで低下される。アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤はまた、制御放出、持続放出様式および/または遅延放出様式で投与され得る。アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤はまた、例えば持続放出製剤および/または遅延放出製剤などの制御放出製剤中で投与され得る。「制御放出」は、薬物の放出が即時的でない、すなわち制御放出製剤を用いた薬物含有製剤またはその単位投与形態をいい、投与は、吸収プールに投与される薬物の全ての即時放出を生じない。該用語は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed. (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995)において定義されるように、「非即時的放出」と交換可能に使用される。一般的に、制御放出製剤は、持続放出および遅延放出製剤を含む。「持続放出」および「延長放出」は、延長された時間にわたる薬物の徐々の放出を提供する薬物製剤を意味し、典型的に、必ずではないが、延長された時間にわたる薬物の実質的に一定の血液レベルを生じる。「遅延放出」は、患者への投与後に、薬物が製剤から患者の身体に放出される前に測定可能な時間の遅延を提供する薬物製剤をいう。
【0041】
治療は、患者の治療の間中、同じ用量および/または投与養生法の投与を含み得る。該方法はまた、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の初期用量(1つまたは複数)、その後1つ以上の維持用量を含む保持療法を含み得、1つ以上の維持用量は初期用量とは異なる。例えば、1つ以上の維持用量は、初期用量よりも少なくあり得るか、および/または初期投与養生法よりも低い頻度であり得る。別の例において、1つ以上の維持用量は、初期用量よりも高くあり得るか、および/または初期投与養生法よりも高い頻度であり得る。
【0042】
治療は、例えば手術後、直後にまたは1週間もしくは1~3日以内に開始され得る(例えば初期用量は投与され得る)。治療はまた、外科的創傷治癒が完了した後に、または放射線療法もしくは癌治療の開始の直後もしくは1週間もしくは1~3日以内に、または病期0のリンパ浮腫の開始もしくは診断前の時点で開始され得る。治療はまた、病期0のリンパ浮腫の開始もしくは診断の後または臨床的に明らかなリンパ浮腫の開始もしくは診断の後に開始され得る。
【0043】
本発明はまた、アセビルスタット以外の選択的LTA4H阻害剤を使用してリンパ浮腫を治療する方法を包含する。LTA4Hは、LTA4からLTB4を生成するエポキシドヒドロラーゼである。LTB4は、前炎症性メディエーターであるので、LTA4H活性の阻害は、前炎症性LTB4の産生を阻害する。LTA4Hはまた、アミノペプチダーゼであり、好中球化学誘引物質であるトリペプチドPro-Gly-Pro (PGP)を分解する(Low et al. (2017), Scientific Reports 7, 44449 (2017). https://doi.org/10.1038/srep44449;その内容は本明細書において参照により明確に援用される)。PGPの蓄積は前炎症性効果に関連する。したがって、LTA4Hは、PGPの分解において重要な抗炎症性の役割を果たし、該役割はその前炎症性エポキシドヒドロラーゼ活性に対して逆説的である。本発明は、少なくとも部分的に、続発性リンパ浮腫などのリンパ浮腫が、アセビルスタットなどの選択的LTA4H阻害剤を使用して有利に治療され得るという発見に基づく。選択的LTA4H阻害剤は、LTA4Hについて、他のアミノペプチダーゼ酵素よりも高い選択性を有する薬剤もしくは化合物および/またはLTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ活性について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも高い選択性を有する薬剤である。LTA4阻害剤の状況において、選択性は、阻害の能力をいう。例えばLTA4H阻害剤は、エポキシドヒドロラーゼ阻害についてのIC50がアミノペプチダーゼ活性についてのIC50よりも低い場合に、LTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ活性について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも選択的である。別の例において、LTA4H阻害剤は、LTA4H阻害剤についてのIC50が他のアミノペプチダーゼについてのIC50よりも低い場合に、LTA4Hの阻害について、他のアミノペプチダーゼよりも選択的である。LTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ活性について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも選択的である選択的LTA4H阻害剤は、PGP分解に対して最小の効果を有しながら、LTB4の生成を阻害する。アセビルスタットは、LTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ活性についてLTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも選択的であり、LTA4H阻害についてアミノペプチダーゼ阻害よりも選択的である選択的LTA4H阻害剤である。具体的に、アセビルスタットは、エポキシドヒドロラーゼ活性の阻害について、アミノペプチダーゼ活性に対して2倍の優先度を有する(Bhatt et al. (2017), Seminars in Immunology 33: 65-73;その内容は、本明細書において参照により明確に援用される)。具体的に、Bhatt et al.は、アセビルスタットが、LTA4Hアミノペプチダーゼ(27nM)に対してLTA4Hエポキシドヒドロラーゼについて(12nM)2倍の機能的選択性を示し、他のメタロ酵素に対してLTA4Hについて高度に選択的であることを教示する。対照的に、いくつかの他のLTA4H阻害剤、例えばSC567461A (Searle/Pharmacia)、DG-051 (DeCODE Pharmaceuticals)およびJNJ-40929837 (Johnson and Johnson)は、LTB4生成およびPGP分解の阻害について同様の能力を有するので、PGP蓄積を生じることにより前炎症性の効果を有し得る。かかる阻害剤は、本明細書において「非選択的LTA4H阻害剤」と称される。ウベニメクスは、非選択的LTA4H阻害剤であり、広域スペクトルアミノペプチダーゼ阻害剤である(Bhatt et al. (2017); Inoi et al. (1995), Anticancer Res. 15(5B): 2081-2087;その内容は、本明細書において参照により明確に援用される)。
【0044】
LTA4Hエポキシドヒドロラーゼ活性のIC50は、当該技術分野で公知の方法を使用して、例えばその内容が本明細書において参照により明確に援用される例えば米国特許第7,737,145号および同10,202,362号に記載されるLTA4ヒドロラーゼ相同時間分解蛍光アッセイを使用して測定され得る。ヒドロラーゼ相同時間分解蛍光アッセイは、産生されるLTB4の量を分析することによりLTA4のLTB4への加水分解を測定する2工程アッセイである。第1の工程は、LTA4のLTB4への酵素的変換を含み、第2の工程は、相同時間分解蛍光アッセイにより形成されるLTB4の定量を含む。LTA4Hエポキシドヒドロラーゼ活性はまた、そのそれぞれの内容が本明細書において参照により明確に援用されるPenning, T. D. et al., J. Med. Chem. (2000), 43(4): 721-735および米国特許第7,737,145号に記載される方法を使用して、全血アッセイにおいて、例えばヒト全血を使用して測定され得る。全血アッセイにおいて、阻害剤化合物は、カルシウムイオノフォアでの刺激の際にLTB4放出を阻害するそれらの能力について試験され、上清中のLTB4レベルは、ELISAにより測定される。LTA4Hエポキシドヒドロラーゼ活性はまた、Low et al. (2017)に記載される方法に従って測定され得る。LTA4Hアミノペプチダーゼ活性についてのIC50は、当該技術分野で公知の方法を使用して、例えばそのそれぞれの内容が本明細書において参照により明確に援用されるKull et al., The Journal of Biological Chemistry 274(49): 34683-34690に記載される方法、米国特許第10,202,362に記載される方法および/またはLow et al. (2017)に記載される方法を使用して測定され得る。LTA4Hエポキシドヒドロラーゼ活性および/またはLTA4Hペプチダーゼ活性を測定するための他の方法は、例えばその内容が本明細書において参照により明確に援用されるAskonas, L. J., et al., The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 2002, 300(2): 577-582;Penning, T. D., J. Med. Chem. 2000, 43(4): 721-735;Kull, F. et al., The Journal of Biological Chemistry 1999, 274 (49): 34683-34690に記載される。
【0045】
本発明は、リンパ浮腫の治療を必要とする患者に、有効量の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、リンパ浮腫を治療する方法を包含する。選択的LTA4H阻害剤は、LTA4Hのエポキシドヒドロラーゼ活性について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性に対して、例えば少なくとも約1.5倍または少なくとも約2倍高い選択性を有し得る。選択的LTA4H阻害剤は、付加的にまたは代替的に、LTA4Hについて、他のアミノペプチダーゼよりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍または少なくとも約10倍高い選択性を有し得る。さらに別の態様において、LTA4H阻害剤は、LTA4Hについて他のアミノペプチダーゼよりも少なくとも約2倍選択的であり、エポキシドヒドロラーゼ活性についてLTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも約1.5倍よりも高く選択的である。LTA4H阻害剤はまた、エポキシドヒドロラーゼ活性について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍または少なくとも約10倍選択的であり得る。なおさらなる態様において、LTA4H阻害剤は、LTA4Hについて、他のアミノペプチダーゼよりも少なくとも約2倍選択的であり、エポキシドヒドロラーゼ活性について、LTA4Hのアミノペプチダーゼ活性よりも約2倍より高く選択的である。選択的LTA4H阻害剤としては例えばアセビルスタットが挙げられる。他の選択的LTA4H阻害剤は、Low et al.に記載されており、そこに記載されるレスベラトロールコアを有する化合物が挙げられる。LTA4H阻害剤の非限定的な例としては、例えばシス-レスベラトロール、トランス-レスベラトロール、イソフラボンダイゼインおよび7,8,4'-トリヒドロキシイソフラボンが挙げられる。LTA4H阻害剤のさらなる非限定的な例を以下の表に示す:
【表1】
【表2】
【表3】
【0046】
いくつかの態様において、アセビルスタットの有効用量は、限定されずに確立されたリンパ浮腫などのリンパ浮腫を有する個体に、罹患した(リンパ浮腫性(lymphadematous))組織の組織病理学を、治療されない対照群と比較して減少または逆転させるのに十分な時間投与される。治療は、治療的利益の保持に必要とされる場合に継続され得:必要とされる場合、保持療法は、以前の治療と同じ用量およびスケジュールで保持され得るかまたは例えばより低い用量、より低い頻度の用量等で代替的な保持スケジュールに移行することにより達成され得る。いくつかの態様において、治療する医師は、罹患した組織の構造の変化を検証することにより、治療が有効であることを決定し得る。組織は、視覚的調査単独が不十分である場合に、治療利益を検証するために本明細書に記載される任意の数の手段によりアッセイされ得る。いくつかの適用における有効性の都合の良い基準は皮膚の厚さであるが、当業者は、本開示の構想の際に、治療をモニタリングして有効性を決定するために種々の徴候が使用され得ることを理解する。治療が有効であるかどうかを決定するさらなる方法としては、リンパシンチグラフィーおよびインドシアニングリーン(ICG)リンパ管造影が挙げられる。
【0047】
いくつかの態様において、有効用量のアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤は、リンパ浮腫が疑われる個体、例えば限定されることなく癌についての手術または放射線を経験した個体に提供される。さらなる局面において、リンパ浮腫は続発性または後天的リンパ浮腫である。
【0048】
他の態様において、本発明は、リンパ浮腫を治療する方法に関し、患者は、癌治療、例えば手術または放射線療法またはリンパ系を損傷する他の療法の結果として、リンパ浮腫(病期0~3)を有する。いくつかの態様において、個体は、典型的に癌診断および治療の結果としての手術により治療されているが、リンパ節に影響を及ぼす他の手術は、本発明に従って治療可能なリンパ浮腫を引き起こし得る。かかる態様において、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤を用いた治療は、外科的創傷治癒の直後に開始され得るか、またはいくつかまたはさらに実質的な創傷治癒が起こった後、例えば手術の3~14日後であるが病期0のリンパ浮腫を有すると患者が診断される前などの外科的創傷治癒後の時点で開始され得る。なおさらなる局面において、患者は、放射線療法で治療され、それ自体に癌治療のための手術が続き得る。かかる態様において、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤を用いた治療は、放射線療法中、放射線療法後すぐに開始され得るか、または上述のようにいくつかまたはさらに実質的な創傷治癒が起こった後であるが患者が病期0のリンパ浮腫を有すると診断された前などの放射線療法後の時点で始まり得る。
【0049】
本発明は、癌手術および/または放射線療法後に患者において上肢端リンパ浮腫を治療する方法を含む。本発明はさらに、乳癌手術および/または放射線療法の後に患者において上肢端リンパ浮腫を治療する方法を含む。腕または上肢リンパ浮腫は、手術または放射線療法による、腋窩リンパ系の中断により引き起こされ、腕の皮下組織に流体の蓄積を生じる。
【0050】
本発明はまた、癌について治療されるか、治療されたかまたは治療されているが、リンパ浮腫はまだ発症していない治療対象の個体において、リンパ浮腫の進行を予防または阻害する方法を含む。本発明はまた、成功裡の治療後などの他の予防的形式において実施され得る。いくつかの患者は、本発明に従って治療され得、完全または有意に完全な回復を獲得し得、さらなる治療から利益を受けない。しかしながら他の患者は、疾患の再発を予防するための治療が成功した後に、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の継続した投与から利益を受け得る。したがって、リンパ浮腫予防の予防的目的のために、本発明の方法による治療後に、罹患した患者の皮膚の構造、例えば四肢の皮膚は、成功裡の治療と一致して、実質的に正常な構造を維持する。本発明の方法を用いた予防的処置の後、組織、例えば上肢、下肢等の体積は、治療の非存在下の対照群と比較して、経時的に安定であるべきである。治療利益を見るための時間は、約1週間、約2週間、約3週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月またはそれ以上であり得る。いくつかの態様において、罹患したまたはリスクがある組織、すなわちリンパ浮腫性組織の体積および/または構造は、測定されるか、またはそうでなければ経時的な種々の時点、例えば少なくとも開始時および試験のためのいくつかの指定されたエンドポイントでアッセイもしくは評価される。いくつかの態様において、罹患した組織の構造は、皮膚の厚さの測定によりまたは組織学的評価によりアッセイされ;リンパ浮腫の非存在は、肢のバイオインピーダンスの連続測定により確認され得る。リンパ系に対する効果はまた、例えばリンパシンチグラフィーおよび/またはインドシアニングリーンリンパ管造影を使用して評価され得る。いくつかの態様において、治療後の罹患した組織の構造は、罹患していない組織の構造に似るかまたはより近く似る。
【0051】
アセビルスタットは、それらの現在の治療養生法を熟知してまたは治療水準を熟知して、患者に投与され得る。リンパ浮腫の治療についての治療水準としては、限定されないが、例えば利尿薬、抗生物質、運動、手動リンパ排泄、圧縮包帯および圧縮衣服が挙げられる。本発明の方法はまた、LTA4H阻害剤以外の少なくとも1つのさらなる活性剤の治療有効量の投与を含み得る。さらなる薬剤は、例えば選択的COX-1阻害剤、選択的COX-2阻害剤、非選択的COX-1/COX-2阻害剤、クマリン、抗ヒスタミン、モンテルカストおよび他の関連のあるロイコトリエン阻害剤、抗線維症化合物、利尿薬、スタチン、mTOR阻害剤およびピルフェニドンからなる群より選択され得る。ある局面において、さらなる薬剤は、例えば選択的COX-1阻害剤、選択的COX-2阻害剤、非選択的COX-1/COX-2阻害剤、クマリン、抗ヒスタミン、抗線維症化合物、利尿薬、スタチン、mTOR阻害剤およびピルフェニドンからなる群より選択され得る。非選択的COX-1/COX-2阻害剤の非限定的な例としては、サリチル酸誘導体、例えばアスピリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、スルファサラジンおよびオルサラジン;パラアミノフェノール誘導体、例えばアセトアミノフェン、インドールおよびインデン酢酸、例えばインドメタシンおよびスリンダク、ヘテロアリール酢酸、例えばトルメチン、ジクロフェナクおよびケテロラク(ketorolac)、アリールプロピオン酸、例えばイブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェンおよびオキサプロジン、アントラニル酸(フェナメート(fenamate))、例えばメファナム酸(mefanamic acid)およびメクロフェナミン酸、エノール酸、例えばオキシカム、例えばピロキシカムおよびメロキシカムおよびアルカノン、例えばナブメトン、ならびにそれらの薬学的に有効なエステル、塩、異性体、コンジュゲートおよびプロドラッグが挙げられる。なおさらなる局面において、非選択的COX-1/COX-2阻害剤は、プロピオン酸誘導体、例えばケトプロフェンである。選択的COX-2阻害剤としては、例えばセレコキシブが挙げられる。利尿薬の非限定的な例は、フロセミド、トラセミドおよびヒドロクロロチアジド、組換えアンギオテンシン変換酵素-2およびアセチルサリチル酸である。スタチンとしては、例えばアトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチンおよび/またはエゼチミブ/シンバスタチン組合せが挙げられる。mTOR阻害剤としては、例えばラパマイシン、エベロリムスおよびシロリムスおよびラパログ(rapalog)が挙げられる。抗線維症剤としては、以下の非限定的な例:ピルフェニドン、トランスホーミング成長因子ベータ(TGFβ)阻害剤、例えばガルニセルチブ(galunisertib)および結合組織成長因子(CTGF)阻害剤、例えばFG-3019が挙げられる。さらなる活性剤はまた、リンパ浮腫の治療に使用される任意の他の薬剤および/または前リンパ管形成薬物、例えばレチノイン酸(例えば9-シスレチノイン酸等)であり得る。別の例において、さらなる活性剤は、薬剤、例えば抗リンパ管形成成長因子またはサイトカインを標的化および/または阻害する生物製剤または小分子、例えば限定されないが、抗TGF-β1抗体、抗IFN-γ抗体、抗IL-4抗体および抗IL-13抗体である。例えば、さらなる薬剤は、抗リンパ管形成成長因子またはサイトカインを標的化および/または阻害する抗体(例えばモノクローナル抗体)、例えば限定されないが抗TGF-β1抗体、抗IFN-γ抗体、抗IL-4抗体および抗IL-13抗体であり得る。抗体は、1つ以上の抗リンパ管形成成長因子またはサイトカインを標的化するもの、例えば限定されないがデュピルマブ(IL-4およびIL-13を阻害するモノクローナル抗体)およびパスコリズマブ(pascolizumab)(ヒト化抗IL-4モノクローナル抗体)であり得る。さらなる薬剤はまた、ピトラキンラ(pitrakinra)、IL-4およびIL-13のアンタゴニストであるヒト組換えタンパク質であり得る。
【0052】
また、本発明は、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤およびさらなる活性剤、例えば選択的COX-1阻害剤、選択的COX-2阻害剤、非選択的COX-1/COX-2阻害剤、クマリン、抗ヒスタミン、モンテルカストおよび関連のあるロイコトリエン改変物質、抗線維症化合物、利尿薬、スタチン、mTOR阻害剤およびピルフェニドンを含む医薬製剤を提供する。別の局面において、医薬製剤は、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤および選択的COX-1阻害剤、選択的COX-2阻害剤、非選択的COX-1/COX-2阻害剤、クマリン、抗ヒスタミン、抗線維症化合物、利尿薬、スタチン、mTOR阻害剤およびピルフェニドンから選択されるさらなる活性剤を含む。本発明はまた、リンパ浮腫を治療する方法を含み、該方法は、治療を必要とする患者が、リンパ浮腫の治療において承認または使用される1つ以上の薬物または他の療法および/または前リンパ管形成薬、例えばレチノイン酸(例えば9-シスレチノイン酸等)と組み合わせて、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の有効用量を投与される併用療法を含む。本発明はさらに、リンパ浮腫を治療する方法を含み、該方法は、治療を必要とする患者が、抗リンパ管形成成長因子またはサイトカインを標的化および/または阻害する1つ以上のさらなる活性剤(例えば生物製剤または小分子)、例えば限定されないが抗TGF-β1抗体、抗IFN-γ抗体、抗IL-4抗体および抗IL-13抗体と組み合わせてアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の有効用量を投与される併用療法を含む。例えば、さらなる薬剤は、抗リンパ管形成成長因子またはサイトカインを標的化および/または阻害する抗体(例えばモノクローナル抗体)、例えば限定されないが抗TGF-β1抗体、抗IFN-γ抗体、抗IL-4抗体および抗IL-13抗体であり得る。該抗体は、1つ以上の抗リンパ管形成成長因子またはサイトカインを標的化するもの、例えば限定されないがデュピルマブ(IL-4およびIL-13を阻害するモノクローナル抗体)およびパスコリズマブ(ヒト化抗IL-4モノクローナル抗体)であり得る。さらなる薬剤はまた、ピトラキンラ、IL-4およびIL-13のアンタゴニストであるヒト組換えタンパク質であり得る。
【0053】
さらに別の局面において、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤は、リンパ浮腫の予防または治療において有用な1つ以上の他の薬物と組み合わせて投与される。これらの態様のいくつかにおいて、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤は、異なるLTB4阻害剤と共に投与される。例えば異なるLTB4阻害剤は、LTB4阻害剤のBLT1/BLT2アンタゴニストクラスであり得る。
【0054】
アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤が、少なくとも1つのさらなる活性剤(例えば選択的COX-1阻害剤、選択的COX-2阻害剤、非選択的COX-1/COX-2阻害剤、クマリン、抗ヒスタミン、モンテルカストおよび関連のあるロイコトリエン改変物質、抗線維症化合物、利尿薬、スタチンmTOR阻害剤およびピルフェニドン、および/または他の治療剤、例えばレチノイン酸、および/または1つ以上の抗リンパ管形成成長因子またはサイトカインを標的化する薬剤)と共投与される場合に、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤が、1つ以上のさらなる活性剤の投与と同時に、その前にまたはその後に投与され得ることが理解される。かかる併用療法は、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤および1つ以上のさらなる活性剤を含む単一の医薬用量製剤の投与、ならびにそれ自体の別の医薬用量製剤内のアセビルスタットおよびそれぞれの活性剤の投与を含む。
【0055】
アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤は、治療が有効であると決定される場合に投与され続け得る。該方法は、治療が有効であると決定される場合に、治療におけるアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の投与量を維持、先細り、低減または停止することを含み得る。該方法は、治療が有効でないと決定されるかまたは用量が1日量においてもしくは投与スケジュールの変化を介して増加される場合により有効である可能性がある場合、治療におけるアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の投与量を増加することを含み得る。代替的に、該方法は、治療が有効でないと決定される場合に治療を停止することを含み得る。
【0056】
例えば治療は、病期0のリンパ浮腫の開始後の任意の時点で始まり得、例えば治療は、患者の状態を無症候の状態まで安定化または逆転する。本発明の方法による治療は、例えば任意の臨床的に明らかなリンパ浮腫、例えば病期1の開始後に始まり得る。本発明の方法による治療はまた、例えば病期2のリンパ浮腫の開始後に始まり得る。本発明の方法による治療は、病期3のリンパ浮腫の開始後に始まり得る。治療はまた、病期0のリンパ浮腫の開始前であるが、リンパ浮腫の発症のリスクを増加する手術、放射線療法または他の医学的介入の後に始まり得る。
【0057】
疾患進行を伴い得る膨潤は、片側または両側であり得、天候が温かい場合に、月経が起こる前に、身体的努力の後におよび/または肢が長時間ぶら下がった位置にあるままの後に悪化し得る。膨潤は、肢の任意の部分(単離された近位または遠位)または四肢全体に、または顔面、頭部および頸部、胴部、胸部または生殖器に影響し得;膨潤は動きの範囲を制限し得る。不能および感情的苦痛は、特にリンパ浮腫が医学的または外科的処置により生じる場合に有意であり得る。皮膚の変化は一般的であり、角質増殖、色素過剰、苔癬化、ゆうぜい、乳頭腫および真菌感染を含む。本発明の方法は、例えば限定されないが本明細書に記載されるアセビルスタットの投与によりこれらの状態および症状のいずれかおよび全てを治療する方法を含む。
【0058】
リンパ管炎または蜂巣炎は、例えば細菌が、リンパ浮腫において損なわれる皮膚障壁を通過する場合に発症し得る。リンパ浮腫における蜂巣炎は、肢における非常に微妙な変化のみを特徴とし得、診断または根絶することが困難であり得る。リンパ管炎は、頻度高く、丹毒を生じる連鎖球菌性であり;時々それは、ブドウ球菌性である。罹患した肢は赤くなり、熱く感じ;赤いすじは、侵入の点から近位に広がり得、リンパ節症が発症し得る。まれに、皮膚は壊れる。まれに、長期持続的なリンパ浮腫は、通常乳房切除の患者およびフィラリア症を有する患者においてリンパ管肉腫(スチュアート-トリーヴェス症候群)を引き起こす。本発明の方法は、例えば限定されないが本明細書に記載されるアセビルスタットの投与により、これらの状態および症状のいずれかおよび全てを治療する方法を含む。
【0059】
治療なしで、細胞過増殖、脂肪堆積および線維症は、罹患した領域の進行性の解剖学的歪みおよび機能の喪失を促進する。さらに、リンパにおける抗原提示細胞の損なわれた輸送は、流入領域リンパ節へのリンパ浮腫性領域(1つまたは複数の)の局所的な免疫サーベイランスを妨げる。したがって、慢性の炎症、感染および皮膚の硬化があり、次いでこれはさらなるリンパ管損傷および罹患した身体部分の形状の歪みを生じる。さらに、運動の大きさの低減、末端の重量の増加、疼痛の増加および日々の仕事を実行する能力の障害を引き起こす関節運動性の低下などの身体的要因のために、高い程度の機能不全がある。本発明の方法は、例えば限定されないが本明細書に記載されるアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の投与によりこれらの状態および症状のいずれかおよび全てを治療する方法を含む。
【0060】
リンパ浮腫に関連する病理学的皮膚変化は、皮膚の層の細胞性、糖タンパクの蓄積、弾力の喪失および皮下の脂肪層の増加を含む。本発明の方法は、例えば限定されないが本明細書に記載されるアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の投与により、これらの状態および症状のいずれかおよび全てを治療する方法を含む。
【0061】
したがって、当業者は、本発明の方法は、リンパ浮腫の以下の臨床的な徴候に関連するものなどのその徴候および症状を含む、リンパ浮腫の治療および予防に適用可能であることを理解する。いくつかの臨床的な徴候は、リンパ浮腫を診断するため、ならびに本発明の組成物および方法を用いた治療を含む治療の有効性をモニタリングするために使用され得る。本発明は、(a)患者における臨床的指標のエンドポイントを測定すること、ここで該エンドポイントは治療が開始した後に測定される、(b)臨床的指標のエンドポイントを、ベースラインまたは参照と比較すること、ここでベースラインまたは参照は、治療が開始される前に同じ被験体または同様の被験体集団において測定される、および(c)比較工程に基づいて、リンパ浮腫治療の有効性を決定することによりリンパ浮腫の治療を必要とする被験体において、リンパ浮腫の治療の有効性を決定する方法を提供する。
【0062】
臨床的徴候の分析は、皮膚の厚さ;足/腕/手のリンパ浮腫の体積の変化;肩/胴部の高さでの流体の停滞の変化;腕における細胞外流体の変化;腕/肩/胴部の皮膚(cutis)および皮下(subcutis)の厚さおよび反射性の変化;腕の皮膚および皮下組織の弾力の変化;リンパの構造および機能の変化;腕/胴部における静脈循環の変化;蜂巣炎のエピソードの数の測定を含み得る。
【0063】
リンパ浮腫を診断するためまたは疾患状態もしくは進行を評価するために画像化を使用する場合、診断についての最も一般的なモダリティーは、間接的な放射性核種リンパシンチグラフィーである。この手順は、適切な放射性標識トレーサー、例えば99mTc-硫化アンチモンコロイドまたは99mTc-標識ヒト血清アルブミンの皮下注射を必要とする。リンパ機能不全の診断のための基準は:(1)局所リンパ節の遅延、非対称または非存在視覚化;(2)リンパチャンネルの非対称視覚化;(3)側副リンパチャンネル;(4)皮膚逆流;(5)中断された脈管構造;および(6)深いリンパ系のリンパ節の視覚化を含む。「皮膚逆流」の存在は異常とみなされる。これは、リンパおよび/または静脈高血圧の結果としてリンパ管からのリンパ流体の間隙への管外遊出を示すと解釈される。リンパシンチグラフィー以外は、磁気共鳴画像化およびコンピューター軸方向連動断層撮影が臨床的有用性を有する。これらの画像化技術は、リンパ浮腫により引き起こされる構造的変化の客観的な考証を可能にする。磁気共鳴アプローチにおける最近の進歩は、増強されないおよびコントラストが増強された適用の両方におけるリンパ管異常の視覚化を向上した(例えばPankaj et al. (2013) World J Surg Oncol. 2013; 11: 237参照)。代替物として、細胞外流体の変化を定量化するための周波数依存的電流フローの特性を使用する生体電気インピーダンスは、上肢リンパ浮腫を検出およびモニタリングするために使用された(Ridner et al. (2009) Lymphat Res Biol. 7(1): 11-15参照)。種々の態様において、かかる技術は、本発明に従って治療される患者の治療の進行をモニタリングするためまたはかかる治療から利益を受け得る患者を同定するために使用される。画像化はまた、例えばSuami et al., BMC Cancer 19, 985 (2019)に記載されるインドシアニングリーン(ICG)蛍光リンパ管造影を含み得る。https://doi.org/10.1186/s12885-019-6192-1、その内容は、本明細書において参照により明確に援用される。
【0064】
本発明の方法による治療の有効性は、疾患症状および病理学の向上により証明される。治療される個体および医学実務者は、任意の都合の良い徴候により、成功を評価すること、治療の経過をモニタリングすること、用量およびタイミングを調整すること等を選択し得る。
【0065】
本発明のいくつかの態様において、例えば確立された疾患を有する患者の治療、皮膚の構造の向上は、治療の成功を評価するための都合の良い方法を提供する。例えば、皮膚の厚さは、リンパ浮腫における構造的変化を反映する。例えば、それぞれ本明細書において参照により具体的に援用されるMellor et al., Breast J 2004; 10:496-503;Hacard et al. Skin Res Technol 2014; 20: 274-81参照。本発明は、リンパ浮腫に関連する皮膚の厚さを低減する方法を包含する。皮膚の厚さは、例えば工場で較正された皮下脂肪(skinfold)カリパス、例えばLange皮下脂肪カリパス、モデルEQ0014921を用いて測定され得る。さらなる局面において、皮膚の厚さまたは皮膚の厚さの減少は超音波を使用して測定される。いくつかの態様において、本明細書に提供される治療は、治療の開始からの時間(例えば2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月またはそれ以上)の後、治療の開始前の少なくとも1つの罹患した領域の皮膚の厚さと比較して、少なくとも1つの罹患した領域(例えば肢)の皮膚の厚さの減少がある場合に有効である。成功裡の治療を用いて観察される皮膚の厚さの減少は、治療を開始する前(本明細書において「ベースライン」と称される)または治療養生法における早期の時点でのものと比較して、少なくとも約1mm、少なくとも約2.5mm、少なくとも約5mm、少なくとも約7.5mm、少なくとも約10mmの減少であり得、少なくとも約12.5mm、少なくとも約15mmまたはそれ以上であり得る。なおさらなる局面において、皮膚の厚さは、治療を開始する前(本明細書において「ベースライン」と称される)または治療養生法の早期の時点でのものと比較して少なくとも約5%、約10%、約20%またはそれ以上減少し得る。皮膚の構造の病理学の修正を決定するためのさらなる測定は、例えばDEXAスキャニング、直接生検、視覚的視診等を含み得る。罹患した肢における皮膚の厚さおよび構造、例えば角質増殖の存在、皮膚コラーゲンおよび脂肪堆積がモニタリングされ得る。
【0066】
いくつかの態様において、罹患した肢の体積の変化は、治療成功の基準として測定され、すなわち体積は成功裡の治療に伴って低下する。体積は、当該技術分野におけるいくつかの方法のいずれか、例えば周囲測定、水置換体積測定等により測定され得る。例えば、評価者は、2~6cmごとに取られる周囲測定のための標準化されたテープ基準を使用し得、例えば切断コーン法により体積を計算する。成功裡の治療は、リンパ浮腫性の身体の部分(流体および組織内容物の両方)の体積を低減または減少し得る。いくつかの例において、体積は、治療後に2倍以上、すなわち治療前の体積と比較して、例えば2倍以上、3倍以上、4倍以上、時々5倍以上、10倍以上、15倍以上、いくつかの例において20倍以上、50倍以上等減少する。すなわち、体積は、約50ミリリットル以上、100ミリリットル以上、200ミリリットル以上、300ミリリットル以上、400ミリリットル以上、500ミリリットル以上減少する。いくつかの例において、体積は、正常な体積、すなわちリンパ浮腫の開始前の体積、例えば罹患しない両側組織の体積まで回復される。
【0067】
いくつかの態様において、血清LTB4のレベルは、診断のためまたは治療について患者を選択するためまたは等級分けするためまたは有効性をモニタリングするために使用され得る。正常LTB4の参照レベルは、(アッセイ型および形式および個々の実験室実施に応じて)約50pg/mL以上まで、約100pg/mL以上まで、約200pg/mL以上まで、約250pg/mL以上まで、約300pg/mLまでであり得る。リンパ浮腫を有する個体は、血清LTB4の増加したベースラインレベルを有し得、ここで血清レベルは約1000pg/ml以上までであり、約500pg/ml~約1500pg/mlの範囲であり得る。ある局面において、患者から得られる試料中の血清LTB4のレベルを測定し、それが所定の閾値レベルを超える場合、患者は、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤を投与される。本発明において提供される治療は、治療が開始された後に、被験体のエンドポイントLTB4レベルがベースラインLTB4レベルから減少する場合に、有効であると決定され得る。他の態様において、本発明において提供される治療は、治療が開始された後にエンドポイントLTB4レベルが、ベースラインLTB4レベルよりも2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上低い場合に有効である。例えばいくつかの態様において、対照の値よりも少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも5倍、少なくとも約10倍高い、少なくとも約15倍高い、より高いまたは増加したレベルの血液試料中のLTB4は、患者が、本発明の治療を使用した治療を必要とすることまたは患者が本発明の治療に応答する可能性があることを示す。LTB4レベルを評価するための標準的な方法が利用される。該方法はさらに、有効量のアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤を、本発明の治療から利益を受ける可能性がある、本発明の治療を必要とするまたは本発明の治療に応答する可能性があると決定された患者に投与して、それにより患者においてリンパ浮腫を治療または予防する工程を含む。
【0068】
本発明はまた、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、リンパ浮腫患者において、軟組織感染、例えば蜂巣炎の発生数を低減する方法を含む。皮膚感染または蜂巣炎は、リンパ浮腫の一般的な合併症である。リンパ浮腫において蜂巣炎のリスクを低減する必要がある患者に、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤を投与する工程を含む、本明細書に記載される方法は、リンパ浮腫において蜂巣炎のリスクを低減するために使用され得る。
【0069】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」または「有効量」は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与される場合に、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて目的の疾患または状態の、以下に定義される治療を実行するのに十分な、化合物または薬物の量をいう。「治療有効量」または「有効量」を構成する本発明の化合物の量は、例えば使用される具体的な化合物の活性;化合物の代謝安定性および作用の長さ;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事;投与の様式および時間;排出の速度;薬物組合せ;特定の障害または状態の重症度;ならびに治療を受ける被験体に応じて変化するが、彼自身の知識および本開示について関心を有する当業者により常套的に決定され得る。ある局面において、アセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の有効量または治療有効量は、LTA4Hを阻害するかもしくはLTB4を阻害する、および/または疾患を治療するかもしくは阻害するかもしくは重症度を減少する、および/または皮膚の厚さを低減する、および/または皮膚のトルゴール、病歴および/または機能を向上するあるいはリンパ流を増加するおよび/または脈管機能を向上する量である。
【0070】
「治療すること」または「治療」は、本明細書で使用する場合、リンパ浮腫、好ましくはヒトの治療をカバーし、例えば:(i)疾患もしくは状態もしくはその1つ以上の症状の重症度を阻害もしくは減少すること、すなわち疾患もしくは状態の発症または進行を拘束もしくは遅延することおよび/または皮膚の厚さを低減することおよび/または皮膚のトルゴール、病歴および/または機能を向上することおよび/またはリンパ流を増加すること、および/または1つ以上の症状を改善もしくは減少すること;(ii)疾患もしくは状態を軽減すること、すなわち疾患もしくは状態もしくはその1つ以上の症状の寛解を引き起こすこと;および/または(iii)疾患または状態を安定化することを含む。「治療すること」または「治療」は、リンパ浮腫の進行のリスクを減少することを含み得る。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「疾患」および「状態」は、交換可能に使用され得るか、または特定の疾病もしくは状態が公知の原因因子を有し得ず(そのために病因がまだ働いていない)、そのためにそれが依然として疾患として認識されていないが、望ましくない状態または症状としてのみ認識されることにおいて異なり得、ここでより多いまたはより少ない特定の組の症状は、臨床医により同定されている。
【0072】
「医薬組成物」は、本明細書に記載される化合物、例えばアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤および/またはさらなる治療剤、および当該技術分野において哺乳動物、例えばヒトへの生物学的に活性な化合物の送達について一般的に許容される媒体の製剤をいう。かかる媒体は、全ての薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0073】
「任意の」または「任意に」は、その後に記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、ならびに該記載が、該事象または状況が起こる例およびそれが起こらない例を含むことを意味する。
【0074】
「薬学的に許容され得る賦形剤」としては、限定されることなく、任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、顔料/着色料、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定化剤、等張性剤、溶媒、または例えば米国食品医薬品局によりヒトまたは家畜動物における使用について許容されるように承認された乳化剤が挙げられる。
【0075】
本明細書に記載される化合物または薬物の投与は、該化合物または薬物の薬学的に許容され得る塩の投与、例えばアセビルスタットまたは他の選択的LTA4H阻害剤の薬学的に許容され得る塩の投与を包含する。純粋な形態または適切な医薬組成物中の本明細書に記載される化合物もしくは薬物(例えばアセビルスタットまたは他のさらなる治療剤)もしくはそれらの薬学的に許容され得る塩の投与は、同様の有用性を供給するための薬剤の許容される投与形態のいずれかにより実行され得る。本明細書に記載されるように、アセビルスタットについての例示的な投与形式は経口投与である。本明細書に記載される医薬組成物は、化合物または薬物と、適切な薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を合わせることにより調製され得、固体、半固体、液体または気体の形態、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル、マイクロスフィアおよびエーロゾルで、調製物に製剤化され得る。
【0076】
かかる医薬組成物を投与する経路としては、限定されることなく、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、直腸、膣および鼻腔内が挙げられる。用語非経口は、本明細書で使用する場合、皮下注射、静脈内、筋内、胸骨内の注射または注入技術を含む。本発明の医薬組成物は、そこに含まれる有効成分が、患者への組成物の投与の際に生物利用可能であるように製剤化される。被験体または患者に投与される組成物は、1つ以上の投与単位の形態をとり、ここで例えば錠剤は、単一投与単位であり得、エーロゾルの形態の本発明の化合物の容器は、複数の投与単位を保持し得る。かかる剤型を調製する実際の方法は公知であるか、または当業者に明らかであり;例えばThe Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000)参照。投与される組成物は、任意の事象において、本発明の教示に従う目的の疾患または状態の治療のために、治療有効量の化合物または薬物またはその薬学的に許容され得る塩を含む。
【0077】
上述のように、本明細書に記載される医薬組成物は、種々の異なる方法で投与され得る。例としては、薬学的に許容され得る担体を含む組成物を、経口、鼻腔内、直腸、局所、腹腔内、静脈内、筋内、皮下(subcutaneous)、皮下(subdermal)、経皮および鞘内の方法により投与することが挙げられる。例えば関節内(関節内)、静脈内、筋内、皮内、腹腔内および皮下の経路などの非経口投与に適した製剤は、酸化防止剤、バッファ、静菌剤を含み得る水性および非水性の等張性滅菌注射溶液ならびに製剤を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、濃化剤、安定化剤および保存剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁物を含む。例えば局所投与(例えば溶液、ローション、クリーム、ペースト、エマルジョン、懸濁物等)、経口、直腸、膣または吸入によるなどの腸投与に適した製剤としては、カプセル、液体溶液、エマルジョン、懸濁物およびエリキシルが挙げられる。例えば局所適用について調製される場合、組成物は、生体適合性有機溶媒、例えばイソプロピルエステル、例えばミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピル;極性脂質、例えばレシチン、ホスファチジルコリン等、界面活性剤、例えばドクサートナトリウム、ドクサートナトリウムベンゾエート、ドクサートカルシウム、tween 80、ポリソルベート80;水;および/または尿素(最終組成物の約5~20質量%の濃度で存在する)を含み得る。いくつかの例において、局所製剤は、皮膚透過の増強物質、例えばSEPA 09を含む。局所製剤の例は、その完全な開示が参照により本明細書に援用される例えば米国特許第5,654,337号、同5,093,133号、同5,210,099号、同3,957,971号、同5,016,652号に見られ得る。
【0078】
医薬組成物を製剤化するために使用される成分は、好ましくは高純度であり、潜在的に有害な汚染物質を実質的に含まない(例えば少なくともNational Food (NF)等級、一般的に少なくとも分析等級およびより典型的に少なくとも医薬品等級)。さらに、インビボ使用に意図される組成物は、通常滅菌性である。所定の化合物が使用前に合成されなければならない程度まで、得られる生成物は典型的に、任意の潜在的に毒性の薬剤、特に合成または精製プロセスの間に存在し得る任意のエンドトキシンを実質的に含まない。非経口投与用の組成物も、滅菌性で実質的に等張性であり、GMP条件下で作製される。
【0079】
医薬組成物は、固体または液体の形態であり得る。一局面において、担体(1つまたは複数)は、粒状物であるので、組成物は例えば錠剤または散剤形態である。一局面において、組成物は、カプセル封入された散剤または顆粒剤の形態であり得る。別の局面において、カプセル封入された散剤または顆粒剤製剤は、食品中で開かれて散布され得るかまたは胃挿管法により投与され得る。担体(1つまたは複数)は液体であり得、組成物は、例えば経口シロップ、注射可能液体または例えば吸入投与に有用なエーロゾルである。経口投与に意図される場合、医薬組成物は、固体または液体形態のいずれかであり得、ここで半固体、半液体、懸濁物およびゲルの形態は、本明細書において固体または液体のいずれかとみなされる形態に含まれる。
【0080】
経口投与用の固体組成物として、医薬組成物は、散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸薬、カプセル剤、チューインガム、ウェーハ等の形態に製剤化され得る。かかる固体組成物は、典型的に1つ以上の不活性希釈物または可食性担体を含む。また、以下:結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチン;賦形剤、例えばデンプン、ラクトースまたはデキストリン、崩壊剤、例えばアルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、トウモロコシデンプン等;滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはSterotex;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリン;矯味矯臭剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー剤;および着色剤の1つ以上が存在し得る。
【0081】
医薬組成物がカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、これは、上述の種類の材料に加えて、ポリエチレングリコールまたは油などの液体担体を含み得る。
【0082】
医薬組成物は、液体、例えばエリキシル、シロップ、溶液、エマルジョンまたは懸濁液の形態であり得る。液体は、2つの例として、経口投与または注射による送達のためであり得る。経口投与について意図される場合、組成物は、本発明の化合物に加えて、1つ以上の甘味剤、保存剤、顔料/着色剤および香味増強剤を含み得る。注射により投与されることが意図される組成物において、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定化剤および等張性剤の1つ以上が含まれ得る。
【0083】
本発明の液体医薬組成物は、溶液、懸濁液または他の同様の形態のいずれにせよ、以下のアジュバント:滅菌希釈剤、例えば注射用水、食塩水溶液、好ましくは生理食塩水、リンガー溶液、等張性塩化ナトリウムまたは生理食塩水、固定油、例えば溶媒または懸濁媒体として働き得る合成モノまたはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および等張性の調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースの1つ以上を含み得る。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数用量バイアルに封入され得る。生理食塩水は好ましいアジュバントである。注射可能医薬組成物は好ましくは滅菌性である。
【0084】
本発明は、以下の非限定的な実施例により説明される。
【実施例】
【0085】
実施例1:ヒト上肢リンパ浮腫の治療のためのアセビルスタット(CTX-4430)のパイロットプラセボ対照試験
1. 試験薬剤
コード名CTX-4430によっても公知であるアセビルスタットは、炎症性状態の治療のために開発される新規の合成小分子ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ(LTA4H)阻害剤である。CTX-4430の化学名は、4-[[(1S,4S)-5-[[4-[4-(2-オキサゾリル)フェノキシ]フェニル]メチル]-2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル]メチル]-安息香酸である。これは、単一異性体として製造されるキラル分子である。調査生成物は、サイズ0、白色、不透明、硬質ゼラチンカプセル中の散剤混合物として製造され、白色高密度ポリエチレン(HDPE)ボトル中、1単位当たり30~36カプセルの量で供給される。調査生成物は、紫外線(UV)光への曝露から保護される場合、制御された室温(15~25℃/59~77°F)で少なくとも4年間安定である。
【0086】
機械論的に、アセビルスタットは、インビトロで0.013μMのIC50(50%阻害効果を生じる濃度)およびエクソビボ誘導ヒト全血において0.064μMのIC50を有する、強力な炎症性メディエーターロイコトリエンB4(LTB4)のLTA4H媒介産生の強力で選択的な阻害剤である。アセビルスタットで経口的に処理した動物およびヒトにおける薬力学(PD)試験により、アセビルスタットの血漿濃度とエクソビボ誘導全血におけるLTB4産生のパーセント阻害の間の強力な相関が示される。ヒト臨床PD試験において、血中のLTB4産生の阻害についてのアセビルスタットの50%有効濃度(EC50)は、93ng/mL(0.19μM)であることが見出された。LTB4産生の減少に加えて、LTA4H阻害の潜在的なさらなる薬理学的利益は、遮断機構を介する抗炎症性メディエーターリポキシンA4 (LXA4)の濃度を増加することであるが、この効果は、アセビルスタットで処理されたヒトにおいて生じることは決定的には示されていない20。
【0087】
アセビルスタットの非臨床的試験は、ヒト臨床試験を支持するように行われた薬理学、薬物動態学(PK)、代謝および毒性試験の包括的な問題を含んだ。薬理学的に、アセビルスタットは、ロイコトリエンB4(LTB4)の産生を低減する。LTB4は、好中球および他の免疫細胞の移動および活性化を誘導することにより働く炎症の重要なメディエーターである。アセビルスタットは、迅速に吸収されて、組織に広く分布され、次いで主に肝臓-胆汁-便を介して排除され、総薬物の3%未満が腎臓を介して排出される。動物における質量バランス試験は、色素沈着組織、特にブドウ膜(uveal tract)におけるアセビルスタットの蓄積および保持についてのいくつかの能力を示したが、長期間安全性試験における眼科学的変化についての証拠はなかった。インビトロ試験により、P-糖タンパク質(P-gp)の基質および多剤・毒素排出(multidrug and toxin extrusion)(MATE)-2Kとの薬物相互作用の能力が示唆され、これは明確な臨床的薬物相互作用試験が行われるまで、将来の臨床試験のために考慮されるべきである。前臨床試験により、光毒性効果についての能力は示されなかった。種を超えた長期的動物安全性試験において観察された用量制限毒性は、食物消費の低下に伴い重量の増加に失敗した。非臨床的毒物学試験は、2歳以上のヒトへの200mg/日までの用量のアセビルスタットの慢性的な投与を支持する。
【0088】
軽症のCOVID-19の治療についての進行中の臨床試験は含まず、327名の成人被験体([14C]-アセビルスタットの単一用量を受けた6名の被験体を含む)は、Celtaxsys Inc (Celltaxis LLCの前のIND所有者)により支援された合計6回の完了臨床試験において、今日まで少なくとも1用量のアセビルスタットを受け;このうち、嚢胞性線維症(CF)を有する112名の被験体は、48週間治療された。これらの試験は、健常ボランティアにおける14日までの単一用量および複数用量のファースト・イン・ヒューマン試験(CTX-4430-HV-001、NCT01748838)、成人CF患者における15日間の複数用量試験(CTX-4430-CF-001、NCT01944735)、シトクロムP450(CYP) 3A4の誘導の能力を評価するための7日間の健常ボランティアにおける複数用量薬物-薬物相互作用試験(CTX-4430-DI-001、NCT02233244)、第1相質量バランスおよび代謝試験(CTX-4430-ADME-001)、ならびに2回の第2相試験:16~44歳の中程度から重度の顔面尋常性ざ瘡を有する被験体における12週間の複数用量試験(CTX-4430-AV-201、NCT02385760)、および18~30歳のCF患者における48週間の複数用量試験(CTX-4430-CF-201、NCT02443688)を含む。
【0089】
ヒトにおいて、経口投与されるアセビルスタットは迅速に吸収され、絶食しながら薬物が摂取された場合に約1.5時間および薬物を高脂肪食と共に摂取する場合に5~6時間のTmax(最大血漿濃度が観察された時間)を有する。観察されるT1/2(排除半減期)は、まだわからない理由のために健常ボランティア(15~18時間)とCF患者(8~9時間)の間で異なった。T1/2における明らかな違いに関わらず、曝露は、最大観察血漿濃度(Cmax)および時間濃度曲線下面積(AUC)により評価される場合に健常ボランティアとCF患者の間で眼に見えるほどに異ならなかった。アセビルスタット曝露は、治療の最初の7日にわたり定常状態まで増加する。臨床薬物-薬物相互作用試験において、アセビルスタットの定常状態曝露は、CYP3A4/5を誘導せず、これはアセビルスタットがCYP3A4/5により代謝に供される他の薬物の薬物動態学を変更しないことを示唆した。第2相CF試験のサブ試験として行った集団PK分析は、CF患者における体のサイズおよび同時医薬の両方に依存する広範囲のアセビルスタットクリアランス速度を示し;ここでより大きな体のサイズおよび嚢胞線維症膜貫通コンダクタンス制御因子(CFTR)調節剤治療(イバカフトル(ivacaftor)またはイバカフトル+ルマカフトル(lumacaftor))の同時使用の両方は、アセビルスタットのクリアランスを増加し、それにより血漿濃度を低減する。
【0090】
健常ボランティアにおける14日間の200mg/日までの1日1回経口投与は良好に調整された。アセビルスタットは一般的に、CTX-4430-CF-201において48週間、1日当たり50mgおよび100mgの用量でCF患者において良好に調整された。これらの試験における有害事象(AE)は一般的に、軽度から中程度であった。頭痛は、アセビルスタットに関連するとみなされる8%で、臨床試験において見られる最も一般的な有害事象であった。また、感染性肺増悪は、CF-201臨床試験において最も頻繁に観察されるTEAE(有病率はアセビルスタットよりもプラセボにおいてより高い)であった。感染性肺増悪は、CF集団の状況を考慮すると、予想される有害な反応であった。アセビルスタット治療は、循環好中球計数または痰微生物学を変化させなかった。
【0091】
48週第2相CF試験において、パーセント予想FEV1におけるベースラインからの変化の主要有効性エンドポイント分析の結果は、アセビルスタットとプラセボの間で統計的に有意な差を示さなかった。二次有効性分析は、肺増悪の低減された割合およびアセビルスタットでの治療からの最初の肺増悪までの増加された時間の両方において、一致する数的利益を示した。さらに、肺増悪の低減された割合および最初の肺増悪までの増加された時間における臨床的に有意な数的利益は、より軽度の疾患(ベースラインppFEV1 >75)を有する被験体の予め特定されたサブグループおよび同時CFTR調節因子治療での被験体において観察された。
【0092】
ヒトにおける50mgおよびそれより高い1日1回の経口投与は、全体で24時間の投与間隔にわたりおよび第1相試験における投与期間を通じて、血液中の薬理学的機構の有意な関与を示した。しかしながら第2相CF試験において、100mgの1日1回の投与は、50mg用量と比較して、24時間の投与間隔にわたり薬理学的機構のより一致した関与を提供した。これは、より大きな体のサイズのCF患者および同時CFTR調節因子治療を受ける患者について特に顕著であった。したがって、1日1回の100mgは、コンセプト試験の臨床的証明についての現在推奨される用量である。
【0093】
2. 試験設計
本発明者らは、片側乳癌リンパ浮腫を有する70名の成人患者を登録することを提唱する。潜在的な被験体は、以前の同様の臨床試験について成功裡の登録に関して以前に利用されたStanford Center for Lymphatic and Venous Disorders、高体積焦点専門クリニックから採用される。設計は、プラセボ曝露の前後の試験エンドポイントの評価による12週プラセボ導入部を利用する。参加者は、36週の活性な治療のうち12週間、アセビルスタットについてのプラセボを受けるが、12週プラセボ曝露の正確な時間枠について盲目にされることについての情報を受ける(全員は0~12週の間にプラセボを受ける)。この設定は、プラセボに対する主観的な応答の統計的な分析を可能にし、プラセボおよび活性薬物のそれぞれに対する主観的な応答の統計的な比較を容易にする。全ての参加者は、アセビルスタットのオープンラベルの使用を受ける。治療前および治療後の評価は、Stanford CTRUにおいて行う。試験の主要なエンドポイントは、超音波検査により測定される皮膚の厚さの変化である。第2のエンドポイントは、罹患した肢のカリパス皮下脂肪の厚さの変化である。調査エンドポイントは、肢の体積の評価、および検証された患者が報告する結果の連続評価、例えば症状および機能に対する治療の知覚される影響の視覚アナログスケール定量を含む。プラセボ導入部および薬物応答の対になった比較が実行される。肝臓機能モニタリングは、それぞれの患者遭遇で実行される。
【0094】
相関試験バックグラウンド
本発明者らは、リンパ浮腫におけるLTB4拮抗に対する治療応答の分子的特徴付けに対処する相関試験を計画する。これらの分子的データの潜在的解釈および治療応答に対するそれらの関係は、一般的な血漿LTB4濃度における同時変化との相関を必要とし得る。したがって、治療前および治療後のLTB4血漿濃度は、ELISAにより並行にアッセイされる。
【0095】
リンパ浮腫の分子的病因を解明することを望んで、本発明者らは以前に、後天的な手術後リンパ浮腫のマウスモデルを調査した16。この以前の試験において、皮膚の強い組織病理学的炎症変化の存在は、リンパ浮腫性領域由来の免疫応答性細胞の損なわれた移動に相関した。リンパ浮腫性組織の大規模転写プロファイリングは、疾患の病因においておよび潜在的な治療標的としての両方で、本発明者らにロイコトリエンの役割を仮定させる明らかな有力な炎症性分子発現プロフィールを開示した16。これらの結果および薬物療法についての未解決な必要性により、本発明者らは、ケトプロフェン17、5-リポキシゲナーゼ(5-LO)経路の阻害を含む認識される二重抗炎症性の作用機構を有するNSAID剤18の治療の影響を調べることを決定した。本発明者らがケトプロフェンを、実験的な後天的リンパ浮腫を有するマウスに体系的に投与した場合、治療前リンパ浮腫性組織学の顕著な標準化を含む疾患負荷の記録された逆転があった17。インビボおよびインビトロの両方における本発明者らのその後の前臨床試験により15、実験的リンパ浮腫におけるケトプロフェンの治療的利益がその5-LO経路の阻害に特異的に起因することが強く示唆される。
【0096】
ベスタチン、LTA4H阻害剤の効果の前臨床的調査は、ケトプロフェンなどのLTB4拮抗が、リンパ浮腫のマウスモデルにおいて浮腫を逆転させ、リンパ機能を向上し、リンパ構造を回復することを開示した。低LTB4濃度はヒトリンパ内皮細胞の発生および成長を促進したが、より高い濃度(未治療のマウスおよびヒトリンパ浮腫の両方で観察された)は、リンパ管形成を阻害し、アポトーシスを誘導した。リンパ浮腫進行の間に、リンパ流体LTB4濃度は、初期リンパ管形成前濃度から抗リンパ管形成範囲まで上昇した。高濃度のLTB4は、培養されたヒトリンパ内皮細胞において脈管内皮増殖因子受容体3およびNotch経路を阻害した。リンパ特異的Notch1(-/-)マウスは、LTB4拮抗の有益な効果に無反応性であり、これはNotchシグナル伝達のLTB4抑制が、疾患維持に重要な機構であることを示唆した。要約すると、本発明者らは、LTB4が、確立された疾患において観察される濃度でリンパ修復に有害であることを見出した。これらの所見は、LTB4がリンパ浮腫の治療について有望な薬物標的であるという考えを支持する。
【0097】
本発明者らのその後の臨床的な変換的調査は、ヒトリンパ浮腫の炎症性分子署名の特徴付けを含んだ。マウス16およびヒト21リンパ浮腫の両方の予想されるトランスクリプトミック(transcriptomic)プロファイリングは、リンパ浮腫において変化した皮膚発現を有する顕著に少数の特異的経路を同定した。ヒトリンパ浮腫における同定された中心的経路のうち、炎症性基質は、組織病理学の病因に直接関連するように思われる。ヒトリンパ浮腫についての経口ケトプロフェン治療の本発明者らのパイロット、プラセボ対照予想試験において19、皮膚の厚さおよび皮膚の組織病理学の両方に対する治療の有益な効果は、Luminexマルチプレックスアッセイにより検出されるように、循環サイトカインおよびケモカインの明らかな変化を伴った。本発明者らは、ウベニメクス、LTA4H阻害剤の小さなプラセボ対照試験においてサイトカイン応答の同様のパターンを観察した(公開されない観察)。
【0098】
3. 参加者選択および登録手順
含む基準:≧1.2の罹患した:罹患していない肢の体積比および≧6ヶ月の持続を有する上肢の片側病期II慢性リンパ浮腫。潜在的な参加者が以前の微小血管または減量手術的介入を経験した場合、スクリーニング前に少なくとも1年経過させなければならない。性別または人種-民族的な制限はない。18~75歳の参加者は、登録に適格である。ECOG性能状態が使用される。ECOG段階0~2は適格である。以下の陳述はインフォームドコンセントフォームに含まれる:「参加者は、記載されるインフォームドコンセント文書を理解する能力およびそれに署名する意志を有さなければならない。」
【0099】
リンパ浮腫についての身体的治療介入は、スクリーニングの少なくとも8週前に完了しなければならない。試験プロトコルが完了するまで、さらなる維持モダリティーは、スクリーニング後に追加できない。リンパ浮腫についての選択的外科的介入を計画する任意の潜在的な参加者は排除される。
【0100】
他の調査剤は許可されない。
【0101】
急性肢浮腫、例えば(限定されないが)急性静脈血栓症をもたらし得る任意の他の医学的状態;罹患した肢においてリンパ浮腫の症状と重複するもの(例えば疼痛、腫脹、移動範囲の減少)を生じ得る他の医学的状態;凝固障害(凝固能亢進性状態)の病歴;罹患した肢における慢性(持続性)感染;スクリーニングの1ヶ月以内の任意の他の感染(リンパ浮腫に関連しない);現在受けている化学療法または放射線療法;活性な悪性疾患の現在の証拠、または過去2年以内の悪性疾患の病歴(治療的意図を持ったインサイチュで治療される非黒色腫皮膚癌または頸部癌は除く)。参加者は、癌治療を経験した場合、登録の>2年前にこれを完了していなければならず;慢性腎不全(スクリーニング時に血清クレアチニン>2.5mg/dLまたは推定糸球体濾過速度[eGFR]<30mL/分と定義される)または透析支持を必要とする;肝臓機能不全、スクリーニング時にアラニントランスアミナーゼ(ALT)またはアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベル>3×正常範囲の上限(ULN)および/またはビリルビンレベル>2×ULNと定義される;スクリーニング時に絶対好中球計数<1500mm3;スクリーニング時にヘモグロビン濃度<9g/dL;妊娠または授乳;スクリーニング前6ヶ月以内の物質乱用(例えばアルコールまたは薬物乱用);調査者の意見において、試験の完全な参加を妨げる何らかの理由(上述のものに加えて)。
【0102】
アレルギー反応の病歴に関する要件は、調査剤またはデバイスと同様の化学的または生物学的組成物の化合物に起因した:調査剤中の化学成分のいずれかに対する公知のアレルギー。
【0103】
薬剤特異的排除基準:ケトプロフェンの任意の現在または以前の治療的使用。
【0104】
妊娠および授乳中の参加者は排除される。
【0105】
全ての参加者は、参加者が彼らの参加に関して情報に基づく決定をするための十分な情報により試験を説明するコンセントフォームを提供されなければならない。参加者は、任意の試験特異的手順への参加の前にIRB承認インフォームドコンセントに署名しなければならない。参加者は、署名した日付入りの同意文書の謄本を受けなければならない。同意文書の元の署名された謄本は、医学的記録または研究ファイルに保持されなければならない。
【0106】
参加者は無作為化されない。
【0107】
最初の完了は、第1の参加者収集の24ヶ月後に起こる。試験完了は、第1の参加者収集の30ヶ月後に起こる。
【0108】
4. 治療計画
V1スクリーニング/訪問1
記載のインフォームドコンセントを得た後、以下の行動が起こる:
・完全な身体検査、例えば身長、体重、BMIおよび生命徴候(心拍数、血圧、呼吸速度、体温)および体重の測定。
・医薬の評価
・症状の評価
・CBC、包括的代謝パネル、検尿、β-HCG(閉経前の女性のみ)を含む臨床実験室試験についての血液および尿試料
・血漿試料は、将来の相関試験のために蓄えられる(banked)
・生活の質に対する影響を評価するためのLYMQOL質問票およびVASスコア
・両方の上肢の肢体積測定
・皮膚の厚さのカリパス測定
・皮膚超音波検査
・医薬日記は集められて、丸薬計数が実行される
・参加者は、試験医薬の3カ月の供給を提供される。参加者は、医薬を接種するための正確な様式で指示され、これは訪問1の後の朝に開始される。医薬日記は参加者に提供される。
・参加者は、全ての試験医薬のボトルを貯めて、戻すように指示される。
【0109】
V2訪問2(13±1週)
・人口統計情報を収集する
・医学的経歴を再検討する
・完全な身体検査、例えば身長、体重、BMIおよび生命徴候(心拍数、血圧、呼吸速度、体温)、および体重の測定
・医薬の評価
・症状の評価
・生活の質に対する影響を評価するためのVASスコア
・両方の上肢の肢体積測定
・皮膚厚さのカリパス測定
・皮膚超音波検査
・医薬日記は集められて、丸薬計数が行われる
・参加者は、試験医薬および新規の医薬日記の次の3カ月の供給を提供される
・参加者は、全ての試験医薬のボトルを貯めて、戻すように指示される
【0110】
V3訪問3(25±1週)
・人口統計情報を収集する
・医学的経歴を再検討する。
・完全な身体検査、例えば身長、体重、BMI、および生命徴候(心拍数、血圧、呼吸速度、体温)および体重の測定。
・医薬の評価
・症状の評価
・医薬日記は集められて、丸薬計測が行われる
・参加者は、試験医薬および新規の医薬日記の次の3カ月の供給を提供される
・参加者は、全ての試験医薬のボトルを貯めて、戻すように指示される
【0111】
V4訪問4(37±1週)
・人口統計情報を収集する
・医学的経歴を再検討する
・完全な身体検査、例えば身長、体重、BMI、および生命徴候(心拍数、血圧、呼吸速度、体温)および体重の測定。
・医薬の評価
・症状の評価
・CBC、包括的代謝パネル、検尿などの臨床的実験室試験のための血液および尿試料
・血漿試料は、将来の調査使用のために蓄えられる
・生活の質に対する影響を評価するためのLYMQOL質問票およびVASスコア
・両方の上肢の肢体積測定
・皮膚の厚さのカリパス測定
・皮膚超音波検査
・医薬日記は集められて、丸薬計数が実行される
【0112】
早期に試験を中断する参加者は、試験薬物の中断の1週間以内に早期の終了訪問に戻るか尋ねられる。AEのために試験参加を終了する任意の参加者は、AEの結果が調整されるまで従う。
【0113】
4.1 一般的な同時医薬および支持的医療ガイドライン
参加者は、登録の持続時間の間、処方ケトプロフェンを避けるように指示される。
瀉血(SOCおよび研究):瀉血のリスクとしては:疼痛;挫傷;出血;炎症;感染;静脈穿刺を行った皮膚の一時的な赤み;および立ちくらみ(light headedness)が挙げられる。ケアは、これらの困難さを回避するようにとられる。
皮膚の厚さのカリパス測定(研究):カリパスは、皮膚をつまむためにいくらかの不快さを生じ得る。
円周テープ測定による肢体積定量化(研究):付随のリスクはない
皮膚超音波検査(研究):付随のリスクはない
【0114】
4.2 試験からの除去の基準
それぞれの被験体が臨床試験を完了したかどうかが文書で記録される。早期に試験を中断した参加者は、離脱の決定後1週間以内に最終試験訪問に戻るか尋ねられる。参加者が離脱する場合、全ての努力は、可能な限り完全に観察、特に追跡検査を完了して報告するようになされる。真実の努力は、参加者が必要な訪問に戻ることができないかまたは試験から離脱する理由を決定するように、参加者と、電話、手紙またはeメールのいずれかで連絡を取るようになされ、理由(1つまたは複数)は、文書で記録される。被験体が臨床試験への参加を中断し得る理由は、以下を含み得る:
・試験の継続を妨げる介入性の疾病
・AEの有病率または重症度により示される患者に対する潜在的な健康の危険性
・被験体は、任意の理由で任意の時点で試験から離脱することを選択し得る
・調査者の判断において、被験体をさらなる治療に許容でなくする、患者の状態における一般的または特異的な変化
・調査者により判断されるようなプロトコルに対する重度の非コンプライアンス
・死亡
・試験の終結
【0115】
4.3 代替物
該試験手順は最小の代替物を含む。潜在的な参加者が参加しないことを選択する場合、代替物は、浮腫を安定化するための身体的介入の維持の継続である。
【0116】
5. 調査剤/デバイス/手順の情報
5.1 調査剤/デバイス/手順
アセビルスタットおよび適合プラセボは、サイズ0、白色硬質ゼラチンカプセルとして提供され、1単位当たり30~36カプセルの量で白色高密度ポリエチレン(HDPE)ボトル中に供給される。アセビルスタットカプセルは、100mgの活性薬物および約250mgの不活性乾燥粉末賦形剤混合物を含む。プラセボカプセルは、約325mgの不活性乾燥粉末賦形剤混合物を含む。アセビルスタットまたはプラセボカプセルは、朝食時に水と共に1日1回経口投与される。調査生成物は、紫外(UV)光への曝露から保護される場合、制御された室温(15~25℃/59~77°F)で少なくとも4年間安定である。
【0117】
この試験のために、プラセボは、朝食と共に1日1回、12週間経口投与され、次いでアセビルスタット治療は、朝食と共に1日1回、24週間経口投与される。
【0118】
調査薬物生成物、アセビルスタットおよびその適合プラセボは、Celltaxis LLCにより提供される。
【0119】
6. 用量改変
この試験のための用量改変は実行可能ではない。主要な調査者は、以下の条件のいずれかが満たされて、突発的な有害反応が、潜在的に治療に関連すると疑われる場合はいつでも治療を終結する:
-ALTおよび/またはASTが、≧3x正常の上限(ULN)のレベルまで上昇される
-ALTおよび/またはASTが≧2.5x ULNおよびT Bili≧1.5x ULNのレベルまで上昇される
-任意の疑われる予測されない深刻な有害反応が明らかにされる場合
【0120】
7. 有害事象および報告手順
7.1 潜在的な有害事象
6回の臨床試験を通じて嚢胞性線維症を有する145名の被験体を含む合計327名の被験体は、少なくとも1用量のアセビルスタットを受けた。アセビルスタット用量は5から200mgの範囲であり;嚢胞性線維症を有する112名の被験体はアセビルスタット(50および100mgの用量で)を48週間受けた。アセビルスタットは一般的に安全であり、6回の臨床試験を通じて良好に許容された。健常ボランティア試験において、臨床的に有意な傾向は観察されなかった。以下の表は、安全性集団における最も一般的な治療出現有害事象を要約する:
【表4-1】
【表4-2】
【0121】
健常ボランティアまたはCFを有する被験体における第1相試験においてSARは報告されなかった。
【0122】
完了した第2相試験において報告され、潜在的に薬物治療に関連すると疑われたSARを以下の表にまとめる。
【0123】
体系臓器クラスおよび好ましい用語による深刻な有害反応:第2相アセビルスタット安全性集団
【表5】
【0124】
8. 相関/特殊試験
8.1実験室相関試験
8.1.1 リンパ浮腫におけるLTB4拮抗に対する治療応答の分子的特徴付け。
試験臨床事象の全ての終了の完了の際に、本発明者らは、試験の間に収集される治療前および治療後試料の分子的分析に着手する。目的は、治療に応答する分子経路を特徴づけることおよび治療に対する有益な応答を予測し得る治療前の変数を潜在的に同定することである。マルチオミクス(multi-omics)アプローチを含む4組の分析を実行する:
1. LTB4の血漿濃度は、Cayman ChemicalsのロイコトリエンB4 ELISAキット(#520111)を使用して決定する。
2. 炎症性サイトカインおよびケモカインの特異的発現は、Bio-rad Luminexヒト48プレックスパネルキット(12007283)を使用して評価する。
3. 細胞外小胞は、超遠心分離により血漿から精製する。小胞の純度、サイズおよび濃度は、Nanosight NS300 (Malvern)を使用して評価する。これらの小胞の構成は、質量分析により決定する。タンパク質バイオマーカーについてのエクソソーム分析は以前に記載されるように実行する22。
4. PBMC中の細胞成分を評価するために複数パネルフローサイトメトリー分析を行う。
5. 単一細胞RNA配列決定を使用して、種々の免疫集団のトランスクリプトミックランドスケープ(transcriptomic landscape)の際のLTB4拮抗の影響がどのようなものであるかを特徴づける。
【0125】
8.1.1.1 検体(1つまたは複数)の収集:2回の瀉血を行う:登録時に第1および試験終了時に第2。全血をCPTチューブに収集し、チューブを5~10回ゆっくりと転倒して混合する。
【0126】
8.1.1.2 検体(1つまたは複数)の取り扱い:LTB4およびその代謝産物の生体安定性を保存するために、血漿およびバフィコートを、水平ローター中1800gで30分間の室温での遠心分離によりすぐに分離する。血漿をピペッティングして、きれいなスクリューキャップバイアルに分ける(それぞれ1ml)。次いで個々の血漿試料を急速凍結して、研究実験室の-80℃冷凍庫に移す。
【0127】
バフィコート由来の末梢血単核細胞を50mlの円錐チューブに移す。3細胞体積のリン酸塩緩衝化食塩水(PBS)をチューブに添加し、細胞と混合し、室温で10分間、300gで遠心分離する。PBS添加、混合および遠心分離工程は3回反復し、細胞計数を行う。最後の遠心分離工程の終了時に、細胞ペレットを5x106細胞/mlで凍結培地に懸濁する。1mlアリコートの細胞懸濁物を予め標識した凍結バイアルに入れる。バイアルは、-80℃細胞凍結コンテナ中で保存する。
【0128】
8.1.1.3 部位(1つまたは複数)実行相関試験:調査者のStanford研究実験室中で相関試験を行う。血漿アリコートは-80℃冷凍庫中で保存する。PBMCは液体窒素中で保存する。
【0129】
8.1.1.4 プライバシー保護のための検体の暗号化:相関研究目的の血漿試料を特有の試験識別名で同定する。研究チームメンバーは、参加者情報を同定しない(de-identify)。全ての識別名(例えば名前、最初の医学的記録番号、受け入れ番号)は除去する。研究チームのみが検体へのアクセスを有する。参加者がインフォームドコンセントに署名したら、試験参加者番号に番号を割り当てる。参加者名を含む文書は調査者および研究チームが確かに保持する。暗号に対するカギは、安全な場所に保たれたパスワードで保護されたStanfordコンピューター中で試験プロトコル管理者および試験コーディネーターが保持し、公衆にはアクセス可能ではない。研究スタッフはHIPAA証明を完了することが必要である。また、試験コーディネーターは医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(Good Clinical Practice)ガイドラインにおいてさらなる訓練を完了することが必要である。
【0130】
【0131】
10. 測定
主要な結果測定 罹患した上肢における皮膚の厚さの変化超音波検査測定
・タイトル:超音波検査皮膚厚さの変化
・時間枠:プロトコルにおける36週の登録後
・安全性問題:この結果測定は安全性問題を評価しているか?いいえ
注意:プロトコル内に列挙されるそれぞれの結果測定は、主要な結果測定の完了後1年以内にclinicaltrials.govに法律上必要とされる結果を報告することを必要とする。
【0132】
10.1主要な結果
主要な結果測定は超音波検査皮膚厚さの変化である。
10.1.1 関連のあるサブセット:標的集団は、この試験に登録される片側上肢リンパ浮腫を有する参加者である。
【0133】
10.1.2 測定定義:これは客観的な有効性測定である。登録時の皮膚厚さの測定を12週の測定と比較し、12週の測定を試験終了時(36週)の測定と比較する。本発明者らは、登録から12週までの超音波検査皮膚厚さの測定の差を、12週から36週までのものに対して定量的に評価する。分散(変動)を標準偏差として評価する。
【0134】
10.1.3 測定方法:皮膚厚さは、Terason 3200Tデバイスを使用した前腕の皮膚の超音波検査試験に由来する。目的の領域は、登録時に第1の試験で同定され、同じ目的の領域は、その後の試験のそれぞれで再度質問される。最終的な解釈のために、評価者は、参加者同一性および治療状態に対して盲目にされる。治療前および治療後の測定の変化を利用して報告する。
【0135】
10.1.4 測定時点:超音波検査皮膚厚さを、登録時、12週および試験の終了時(36週)に測定する。
【0136】
10.1.5 応答再検討:結果は、指名された独立盲検評価者により評価される。
【0137】
10.2 第2の結果
カリパス皮下脂肪厚さにより測定される皮膚厚さの測定の変化。
10.2.1 関連のあるサブセット:標的集団は、この試験に登録される片側上肢リンパ浮腫を有する参加者である。
【0138】
10.2.2 測定定義:これは客観的な有効性測定である。登録時の皮膚厚さの測定を、12週の測定および試験の終了(36週)試験終了時の測定と比較する。この測定は、2つの適格者選択スクリーニング訪問時に得られた値(標準偏差を有する)の算術平均として定義する。本発明者らは、登録から12週までの皮下脂肪厚さ測定の、12週から36週までのものに対する差を定量的に評価する。ばらつき(分散)を標準偏差として評価する。
【0139】
10.2.3 測定方法:皮膚厚さ測定(mm)は、Lange皮下脂肪カリパス(Beta Technology, Santa Cruz, CA)を用いて行う。それぞれの参加者について、それぞれの評価時に、3つの測定:手の背部、前腕の手のひら側の面の中間点および上腕の内側面の中間点を得る。最初の評価時に、皮膚描記鉛筆を使用してそれぞれの測定の部位に印をつける。一旦位置を決めると、その位置に印をつける(手首から測定する)。それぞれの追跡訪問のための連続測定について、これらの位置を再度利用する。それぞれの使用前にカリパスを較正する。評価者は、治療状態について盲目にされる。治療前および治療後の測定の変化を利用して報告する。
【0140】
10.2.4 測定時点:登録時、12週および試験の終了時(36週)に皮膚厚さ測定を行う。
【0141】
10.2.5 応答再検討:結果は指定された独立の盲目評価者に評価される。
【0142】
10.3 調査結果
10.3.1 リンパ浮腫生活の質(LymQOL)の変化:リンパ浮腫生活の質(LymQOL)集合スコアの変化。
【0143】
10.3.1.1関連のあるサブセット:標的集団は、この試験に登録される片側上肢リンパ浮腫を有する参加者である。
【0144】
10.3.1.2測定定義:これは客観的な有効性測定である。LymQoL調査は、検証されて自己報告された結果の質問票である23。質問は、4つの領域:症状、体の画像/見た目、機能および気分をカバーする。解答は1~4のスコア(重度未満~重度の損傷)がつけられる。LymQoL調査を使用して、治療介入の結果として変化を評価する。変化=36週集合スコア-登録集合スコア)。
【0145】
10.3.1.3測定方法:LymQoLは、有効性評価(体積測定、皮膚カリパス測定、皮膚超音波検査)の実行前に完了される。
【0146】
10.3.1.4測定時点:参加者は、登録および試験の終了(36週)時にLymQoL調査を完了する。
【0147】
10.3.1.5応答再検討:結果は、指定された独立の盲目評価者に評価される。
【0148】
10.3.2 徴候学のVAS評価の変化
VASスコアの変化。LTA4H阻害の以前の臨床調査において、本発明者らは、活性薬物を受けた参加者における有意な主観的向上を観察した。主観的な向上の促進されない報告は、以下の変数を含む:
・リンパ浮腫の肢はより軽度に感じる
・向上されたリンパの流れの感覚
・より柔らかい皮膚および組織
・低減された感染数
・自己管理についての低減された必要性
・より低い等級の圧縮を有するリンパ浮腫の保持
・浮腫は治療に対してより応答性になった
・衣類の向上した適合
・向上した自信、自尊心
・減少した恥ずかしさ
・人生がより愉快になる
【0149】
したがって、本発明者らは、治療的介入に対する主観的な応答の評価のためのVASアナログスケールの組を構築して検証し、これらはこの試験の参加者に連続的に付与される。
【0150】
10.3.2.1関連のあるサブセット:標的集団は、この試験に登録される片側上肢リンパ浮腫を有する参加者である。
【0151】
10.3.2.2測定定義:これは客観的な有効性測定である。患者は、視覚アナログスケール(VAS)上で表されるリンパ浮腫に関連する徴候学を自己報告する。これらの自己報告された事象のそれぞれの結果は、センチメートル(cm)で-10~+10の直線の寸法として表される。-10の値は症状の最も重度の表現を表し、+10は症状の非存在を表す。変化を12週および36週に評価し、12週スコア-登録スコア、または36スコア-12週スコアのそれぞれとして計算する。また、12週および36週に、特定のVASスケールが付与され、症状領域の変化の主観的知覚が評価される。
【0152】
10.3.2.3測定方法:VASスコアリングは有効性評価(体積測定、皮膚カリパス測定、皮膚超音波検査)の実行前に完了される。
【0153】
10.3.2.4測定時点:参加者は、登録時、12週および試験の終了時(36週)にVASスコアを完了する。
【0154】
10.3.2.5応答再検討:結果は指定された独立の盲目評価者により評価される。
【0155】
10.3.3 リンパ浮腫肢体積の変化:リンパ浮腫に罹患した肢の体積の変化
【0156】
10.3.3.1関連のあるサブセット:標的集団は、この試験に登録される片側上肢リンパ浮腫を有する参加者である。
【0157】
10.3.3.2測定定義:12週の罹患した肢の肢の体積(mL)の定量的な評価を登録の値と比較し、試験の終了時(36週)の罹患した肢の肢の体積(mL)を12週の値と比較する。12週および36週の平均の差を比較する。
【0158】
10.3.3.3測定方法:罹患したおよび罹患していない肢の肢の体積の定量は、手首から始めて4cm間隔で肢の円周測定を使用して行う。肢の体積は、切断円錐近似法{(体積=πh (R2 + Rr + r2)/3)、式中hは肢の軸に沿った長さであり、Rは下方基部の半径であり、rは切断された円錐の上面の半径である}を使用して決定する。肢の体積の計算について、肢の円周は、登録時、12週および試験の終了時(36週)に連続して測定される。定量的分析のために、過剰な肢の体積は、罹患したおよび罹患していない腕の測定された体積の差として定義され、過剰な肢の体積の変化は、絶対値としておよびパーセント変化としての両方で計算される。
【0159】
10.3.3.4測定時点:肢の体積の計算についての肢の円周は、登録時、12週および試験の終了時(36週)に測定される。
【0160】
10.3.3.5応答再検討:結果は指定された独立の盲目評価者により評価される。
【0161】
11. 規制考察
11.1プロトコルの制度上の再検討
プロトコル、提唱されたインフォームドコンセントおよび試験に関連する参加者情報の全ての形態(例えば参加者を採用するために使用される広告)は、Stanford IRBおよび適用可能な場合はStanford Cancer Institute Scientific Review Committee (SRC)により再検討および承認される。プロトコルに対してなされる任意の変化は、改変として提出され、実行の前にIRBにより承認される。プロトコル管理者は、プロトコル修正情報を全ての関係する調査者に広める。
【0162】
11.2データおよび安全性モニタリング計画
DSMBは、試験が、プロトコル、局所的標準操作手順、FDA規制および医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)に従って実施されたかどうかを決定するために試験に関連する活動を検査する。これは、試験に関係する以下の種類の文書:規制バインダー(regulatory binder)、ケースレポートフォーム(case report form)、適格性チェックリストおよびソース文書の再検討を含み得る。また、DSMBは、ヒト被験体の保護を確実にするために重度な有害事象および研究に関連するプロトコルのずれを定期的に再検討する。DSMB検査の結果は、再検討を継続する時点でまたは必要な場合は促進された様式で、IRBおよび適切な規制当局に伝達される。
【0163】
11.3 データ管理計画
プロトコル管理者および彼の研究チームは、試験に直接関係のある観察およびデータにより、適切および正確な参加者症例病歴を作成および維持する。試験特異的ケースレポートフォーム(CRF)は、データ分析のために治療結果を文書で記録する。ケースレポートフォームは、RedcapまたはOncoreデータベースシステムを使用して開発され、主要調査者および彼の研究チームにより維持される。CRF(紙の書類)は、安全な施錠された場所に保管され、公衆にアクセス可能ではない。
【0164】
12. 統計的考察
統計的設計
これは、全ての参加者が指定された24週の活性薬物への曝露を受ける限り、オープンラベル試験として設計される。参加者は、全ての登録の36週のうちの12週の間に、適合プラセボも受けることを知っているが、プラセボ曝露が登録の0~12週の間にそれぞれの参加者において均一に行われるという事実については盲目にされる。この単一盲目設計は、プラセボ応答 対 活性薬物に対する応答の被験体間の比較を可能にする。
【0165】
主要な結果
主要な結果は、リンパ浮腫罹患上肢の前腕における超音波検査により検出される皮膚の厚さの変化として示される。登録から12週までに測定される変化は、12週から36週までに測定される変化に対して統計的に比較される。
【0166】
第2の結果
第2の結果は、リンパ浮腫罹患上肢におけるカリパス皮下脂肪厚さの変化として示される。登録から12週までに測定される変化は、12週から36週までに測定される変化に対して統計的に比較される。
【0167】
主要な分析
分析集団:主要な分析は、全ての必要な試験訪問を完了した参加者を含む。しかしながら、試験を完了しない参加者について、彼らのデータは、分析集団を用いて検閲および精査される。治療の要約および有害事象データも、それぞれの治療カテゴリーについて別々に提供される。
分析計画:最終的な分析は、最後の登録された参加者が全ての計画された試験事象を完了した後に着手される。主要な分析は、試験の終了までにプロトコルを完了した全ての登録された被験体を使用する。
【0168】
提唱されるものなどの予想される臨床試験において、主要な関心は、追跡されない(loss to follow up)ことである。かかる場合に、参加者が追跡されなければ、参加者は、少なくとも1つのベースライン後の値が追跡されない前に記録される場合は分析に含まれ得る。追跡の喪失についてのアプローチは、失われたデータについての柔軟な仮定に頼り、つまり失われた値はランダムに失われる。しかしながら現在の提案の状況において、5-LOおよびLTB4の臨床的な拮抗による本発明者らの以前の経験により、臨床応答は、合計6カ月の連続的な治療の前には測定可能でないことが明らかである。この理由のために、追跡されない状況において、分析についての暫定的なデータは作成されないかまたは利用可能でない。
【0169】
この分析について、本発明者らは、12週から試験の終了までに検出される平均変化(単一盲目のアセビルスタットへの曝露)に対して、登録から12週までに検出される超音波検査により測定される皮膚の厚さの平均変化(単一盲目プラセボ曝露)の2組の両側対応(two-sided paired)t検定分析を実施する。
【0170】
第2の分析
分析集団:第2の分析は、全ての必要な試験訪問を完了した参加者を含む。しかしながら、試験を完了しない参加者について、彼らのデータは分析集団を用いて検閲および精査される。治療の要約および有害事象データも、それぞれの治療カテゴリーについて別々に提供される。
【0171】
分析計画:最終的な分析は、最後の登録された参加者が全ての計画された試験事象を完了した後に着手される。第2の分析は、試験の終了までにプロトコルを完了した全ての登録された被験体を使用する。
【0172】
提唱されるものなどの予想される臨床試験において、主要な関心は、追跡されないことである。かかる場合に、参加者が追跡されなければ、参加者は、少なくとも1つのベースライン後の値が追跡されない前に記録される場合は分析に含まれ得る。追跡の喪失についてのアプローチは、失われたデータについての柔軟な仮定に頼り、つまり失われた値はランダムに失われる。しかしながら現在の提案の状況において、5-LOおよびLTB4の臨床的な拮抗による本発明者らの以前の経験により、臨床応答は、合計6カ月の連続的な治療の前には測定可能でないことが明らかである。この理由のために、追跡されない状況において、分析についての暫定的なデータは作成されないかまたは利用可能でない。
【0173】
この分析について、本発明者らは、12週から試験の終了までに検出される平均変化(単一盲目のアセビルスタットへの曝露)に対して、登録から12週までに検出されるカリパス皮下脂肪厚さの平均変化(単一盲目プラセボ曝露)の2組の両側対応t検定分析を実施する。
【0174】
試料サイズ
蓄積する(accrual)推定値:主要な調査者は、リンパ障害についての国立の患者を専門医に回す(referral)センターを管理し、年に1回の基準で臨床的に有意なリンパ浮腫を有する約600名の新規の患者を見出す。これらの患者のいくらかは、Stanfordで外科および腫瘍学乳房クリニックから照会されるが、大部分は市内および地方の医療センターから来る。適格な患者のこのプールを用いて、本発明者らは、1年(one calendar year)以内に必要とされる70名の参加者を集めることができると予想する。提唱される試験が承認され、登録に対して開かれると、本発明者らは、試験についてのIRB承認マーケティングキャンペーンを通じて登録を容易にする。
【0175】
試料サイズ正当化:この調査についての帰無仮説は、アセビルスタットを用いた腕の24週間のリンパ浮腫の治療はプラセボ曝露と比較して皮膚厚さの向上を提供しないということである。対立仮説は、プラセボと比較して、アセビルスタットが統計的に有意な改善を提供するということである。調査について、主要および第2のエンドポイントは、連続応答変数の適合されたペアを示す。リンパ浮腫におけるケトプロフェン治療の本発明者らが公開したプラセボ対照パイロット調査に由来する以前のデータは19、かかるデータの適合されたペアにおける差は通常、6の標準偏差を伴って分散されることを示す。適合されたペアの平均応答の真の差が2.4である場合、本発明者らは、この応答の差が確率(検出力)0.9で0であるという帰無仮説を却下し得るために68ペアの被験体を試験する必要がある。この帰無仮説のこの試験に関連するI型誤差確率は0.05である。
【0176】
効果サイズ正当化:慢性リンパ浮腫におけるLTB4/5-LO拮抗の以前に示された効果サイズは、以前に参加した治療応答者における有意義な主観的および機能的な向上を提供することが示されている。現在の試験は、以前に観察された効果サイズを反復または潜在的に増大するように設計される。
【0177】
将来の試験についての基準:現在のパイロット調査が主要なエンドポイントを統計的に達成する場合、本発明者らは、慢性リンパ浮腫におけるアセビルスタットの適度に促進され、十分に無作為化されたプラセボ対照試験の手続をとる。さらなる予想される臨床的調査は、リンパ浮腫発症についてリスクが高いコホートにおけるアセビルスタットを用いた有効予防療法の能力を調査するためおよび治療後の軟組織感染の有病率を低減するためのこの療法の能力の形式的な調査のために計画される。
【0178】
参照文献
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【0179】
本発明は、その好ましい態様に関して特に示され、記載されているが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者に理解される。
【0180】
本明細書で参照される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用される全ての米国特許および公開されたまたは公開されない米国特許出願は、参照により援用される。本明細書で引用される全ての公開された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に援用される。本明細書で引用される全ての他の公開された参照文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に援用される。本明細書で引用される全ての特許、公開された出願および参照文献の関連のある教示は、それらの全体において参照により援用される。
【国際調査報告】