(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】P53ペプチド模倣大環状分子
(51)【国際特許分類】
C07K 14/00 20060101AFI20241210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241210BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241210BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241210BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241210BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241210BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20241210BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20241210BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20241210BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241210BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20241210BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20241210BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20241210BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K35/76
A61K35/761
A61K38/12
A61K47/54
A61K47/64
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534327
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 US2022051762
(87)【国際公開番号】W WO2023107353
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】524199707
【氏名又は名称】エムエスディー・インターナショナル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】322003499
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス、テクノロジー アンド リサーチ
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ジョシン,フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラモハン,アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス,チャールズ・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,クリストファー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】カンナン,スリニヴァサラガヴァン
(72)【発明者】
【氏名】パートリッジ,アンソニー・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルマ,チャンドラ・シェカール
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,ツ・イン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD34
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA25
4C084BA41
4C084CA59
4C084NA03
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA03
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA30
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA33
(57)【要約】
p53ペプチド模倣大環状分子を開示し、ここで、それぞれのp53ペプチド模倣大環状分子は、i,i+4オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子に共有結合したポリペプチド尾部;i,i+7オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子に共有結合したポリペプチド尾部;またはi,i+7ジアルキン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子に共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部を含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有する。p53ペプチド模倣大環状分子はプロテアーゼ耐性であり、膜破壊を誘発することなく細胞透過性であり、MDM2およびMDMXに結合することによってp53へのMDM2およびMDMXの結合に拮抗することによって、細胞内でp53を活性化する。これらのp53ペプチド模倣大環状分子は、特に化学療法または放射線療法と組合せて、抗癌療法において有用でありうる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)i,i+4オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部;
(b)i,i+7オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部;または
(c)i,i+7ジアルキン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部
を含むp53ペプチド模倣大環状分子であって、
ここで、p53ペプチド模倣大環状分子が、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部が3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸が、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいはポリペプチド尾部における各アミノ酸がD配置を有する、前記p53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項2】
p53ペプチド模倣大環状分子がi,i+7ジアルキン・ステープルと、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部とを含む、請求項1記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項3】
p53ペプチド模倣大環状分子が、12個のアミノ酸と、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置6および10に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+4オレフィン・ステープルと、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部とを含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子が、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部が3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸が、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部の各アミノ酸がD配置を有する、請求項1記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項4】
p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置6および10のα,α-二置換アミノ酸が(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸を含む、請求項3記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項5】
p53ペプチド模倣大環状分子がアミノ酸位置3のD-6-フルオロ-トリプトファンおよびアミノ酸位置7のD-p-CF
3-フェニルアラニンを更に含む、請求項4記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項6】
p53ペプチド模倣大環状分子がアミノ酸位置1にトレオニンを、アミノ酸位置2にアラニンを、アミノ酸位置4にチロシンを、アミノ酸位置5にアラニンを、アミノ酸位置8にグルタミン酸を、アミノ酸位置9にリジンまたはグルタミンを、アミノ酸位置11にロイシンを、およびアミノ酸位置12にアルギニンまたはセリンを更に含む、請求項5記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項7】
p53ペプチド模倣大環状分子がアミノ酸位置9にグルタミンを、およびアミノ酸位置12にセリンを含む、請求項6記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項8】
p53ペプチド模倣大環状分子が、12個のアミノ酸と、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5および12に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+7ジアルキン・ステープルと、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部とを含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子が、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部が3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸が、独立して、D配置またはL配置を有する、請求項1記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項9】
p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5のα,α-二置換アミノ酸が(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸を含み、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸が(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸を含む、請求項8記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項10】
p53ペプチド模倣大環状分子がp53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置3のD-6-フルオロ-トリプトファンおよびp53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置7のD-p-CF
3-フェニルアラニンを更に含む、請求項9記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項11】
p53ペプチド模倣大環状分子がアミノ酸位置1にトレオニンを、アミノ酸位置2にアラニンを、アミノ酸位置4にチロシンを、アミノ酸位置6にアスパラギンを、アミノ酸位置8にグルタミン酸を、アミノ酸位置9にリジンまたはグルタミンを、アミノ酸位置10にロイシンを、およびアミノ酸位置11にロイシンを更に含む、請求項9記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項12】
p53ペプチド模倣大環状分子がアミノ酸位置9にグルタミンを含む、請求項11記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項13】
p53ペプチド模倣大環状分子が、12個のアミノ酸と、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5および12に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+7オレフィン・ステープルと、所望により存在していてもよいポリペプチド尾部とを含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子が、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部が3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸が、独立して、D配置またはL配置を有する、請求項1記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項14】
p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5のα,α-二置換アミノ酸が(S)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸を含み、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸が(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸を含む、請求項13記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項15】
p53ペプチド模倣大環状分子がp53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置3のD-6-フルオロ-トリプトファンおよびp53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置7のD-p-CF
3-フェニルアラニンを更に含む、請求項14記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項16】
p53ペプチド模倣大環状分子がアミノ酸位置1にトレオニンを、アミノ酸位置2にアラニンを、アミノ酸位置4にチロシンを、アミノ酸位置6にアスパラギンを、アミノ酸位置8にグルタミン酸を、アミノ酸位置9にリジンまたはグルタミンを、アミノ酸位置10にロイシンを、およびアミノ酸位置11にロイシンを更に含む、請求項15記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項17】
p53ペプチド模倣大環状分子がアミノ酸位置9にグルタミンを含む、請求項16記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項18】
ポリペプチド尾部が3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸が、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいはポリペプチド尾部における各アミノ酸がD配置を有する、請求項1または2記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項19】
ポリペプチド尾部が3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部における各アミノ酸がD配置を有する、請求項1または2記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項20】
ポリペプチド尾部が6個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸が、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいはポリペプチド尾部における各アミノ酸がD配置を有する、請求項1または2記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項21】
ポリペプチド尾部が、配列番号20、配列番号21、配列番号22または配列番号23に記載されているアミノ酸配列を含む、請求項1または2記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項22】
[ここで、X
3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO
2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO
2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO
2-Trpである;X
6は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である;X
7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO
2-PheまたはD-p-CF
3-Pheである;X
10は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である;X
11はD-Leuである;X
12はD-ArgまたはD-Serである;X
13はD-Ala、D-GluまたはD-Gla(γ-カルボキシルグルタミン酸)である;X
14はD-Alaである;X
15はD-Ala、D-PheまたはD-Gluである;X
16はD-Alaである、または存在しない;X
17はD-Ala、D-α-メチル-Gluである、または存在しない;X
18はD-Alaである、または存在しない;X
19はD-Alaである、または存在しない;X
20はD-Alaである、または存在しない;X
21はD-Alaである、または存在しない;N末端アミノ基は、式RCO-を有するアシル基に所望により結合していてもよい;Rは、式C
nH
2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;アミノ酸1~21はDアミノ酸である;およびステープルは、X
6とX
10との間の閉環メタセシスによって得られるオレフィンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項23】
X
3がD-6-フルオロ-Trpである;またはX
7がD-p-CF
3-Pheである;またはX
3がD-6-フルオロ-Trpであり、X
7がD-p-CF
3-Pheである、請求項22記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項24】
アシル基がアセチル基である、請求項22記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項25】
[ここで、X
3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO
2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO
2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO
2-Trpである;X
5は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸である;X
7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO
2-PheまたはD-p-CF
3-Pheである;X
9はD-LysまたはD-Glnである;X
11はD-Leuである;X
12は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸である;X
13はD-Ala、D-Glu、D-Gla(γ-カルボキシルグルタミン酸)である、または存在しない;X
14はD-Alaである、または存在しない;X
15はD-Ala、D-PheもしくはD-Gluである、または存在しない;X
16はD-Alaである、または存在しない;X
17はD-Ala、D-α-メチル-Gluである、または存在しない;X
18はD-Alaである、または存在しない;X
19はD-Alaである、または存在しない;X
20はD-Alaである、または存在しない;X
21はD-Alaである、または存在しない;N末端は、式RCO-を有するアシル基に所望により結合していてもよい;Rは、式C
nH
2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;アミノ酸1~21はDアミノ酸である;およびステープルは、X
5とX
12との間のアルキンクロスカップリングによって得られるジアルキンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項26】
X
9がD-Glnである、請求項25記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項27】
X
3がD-6-フルオロ-Trpである;またはX
7がD-p-CF
3-Pheである;またはX
3がD-6-フルオロ-Trpであり、X
7がD-p-CF
3-Pheである、請求項25記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項28】
アシル基がアセチル基である、請求項25記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項29】
[ここで、X
3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO
2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO
2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO
2-Trpである;X
5は(S)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸である;X
7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO
2-PheまたはD-p-CF
3-Pheである;X
9はD-LysまたはD-Glnである;X
11はD-Leuである;X
12は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である;X
13はD-Ala、D-Glu、D-Gla(γ-カルボキシルグルタミン酸)である;X
14はD-Alaである;X
15はD-Ala、D-PheまたはD-Gluである;X
16はD-Alaである;X
17はD-AlaまたはD-α-メチル-Gluである;X
18はD-Alaである;X
19はD-Alaである、または存在しない;X
20はD-Alaである、または存在しない;X
21はD-Alaである、または存在しない;N末端は、式RCO-を有するアシル基に所望により結合していてもよい;Rは、式C
nH
2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;アミノ酸1~21はDアミノ酸である;およびステープルは、X
5とX
12との間の閉環メタセシスによって得られるオレフィンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子
【請求項30】
X
9がD-Glnである、請求項29記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項31】
X
3がD-6-フルオロ-Trpである;またはX
7がD-p-CF
3-Pheである;またはX
3がD-6-フルオロ-Trpであり、X
7がD-p-CF
3-Pheである、請求項29記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項32】
アシル基がアセチル基である、請求項29記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項33】
[ここで、X
3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO
2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO
2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO
2-Trpである;X
5は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸である;X
7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO
2-PheまたはD-p-CF
3-Pheである;X
9はD-LysまたはD-Glnである;X
11はD-Leuである;X
12は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸である;N末端は、式RCO-を有するアシル基に所望により結合していてもよい;Rは、式C
nH
2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;アミノ酸1~21はDアミノ酸である;およびステープルは、X
5とX
12との間のアルキンクロスカップリングによって得られるジアルキンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項34】
X
9がD-Glnである、請求項33記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項35】
X
3がD-6-フルオロ-Trpである;またはX
7がD-p-CF
3-Pheである;またはX
3がD-6-フルオロ-Trpであり、X
7がD-p-CF
3-Pheである、請求項33記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項36】
アシル基がアセチル基である、請求項33記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項37】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含むp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項38】
p53ペプチド模倣大環状分子が、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む、請求項37記載のp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項39】
請求項1~37のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子と薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項40】
請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物を対象に投与することを含む、癌の治療を要する対象における癌の治療方法。
【請求項41】
癌の治療用医薬の製造のための、請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物の使用。
【請求項42】
癌の治療のための、請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物。
【請求項43】
癌が、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎臓癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、膵臓癌、気管支癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫および血液組織の癌からなる群から選択される、請求項40~42のいずれか1項記載の方法、使用またはp53ペプチド模倣大環状分子。
【請求項44】
請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物を対象に投与することを含む、対象におけるp53および/またはMDM2および/またはMDMXの活性を調節する方法。
【請求項45】
p53および/またはMDM2および/またはMDMXの活性を調節するための医薬の製造のための、請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物の使用。
【請求項46】
p53および/またはMDM2および/またはMDMXの活性を調節するための、請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物。
【請求項47】
請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物を対象に投与することを含む、対象におけるp53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗させる方法。
【請求項48】
p53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗させる医薬の製造のための、請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物の使用。
【請求項49】
p53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗させるための、請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物。
【請求項50】
請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物の治療的有効量と化学療法剤または放射線の治療的有効量とを対象に投与することを含む、癌を治療するための併用療法。
【請求項51】
化学療法剤または放射線を対象に投与し、次いでp53ペプチド模倣大環状分子を投与する;p53ペプチド模倣大環状分子を対象に投与し、次いで化学療法剤または放射線を投与する;あるいは化学療法剤または放射線をp53ペプチド模倣大環状分子の投与と同時に対象に投与する、請求項50記載の併用療法。
【請求項52】
請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物の治療的有効量と化学療法剤または放射線の治療用量とを含む、癌を治療するための併用療法。
【請求項53】
化学療法剤が、アクチノマイシン、全トランス-レチノイン酸、アリトレチノイン、アザシチジン、アザチオプリン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルモフール、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、イキサベピロン、イリノテカン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニトロソウレア、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ロミデプシン、テガフール、テモゾロミド(経口ダカルバジン)、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、ウチデロン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンおよびボリノスタットからなる群から選択される、請求項52記載の併用療法。
【請求項54】
請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物の治療的有効量とチェックポイントインヒビターの治療的有効量とを、癌の治療を要する対象に投与することを含む、癌を治療するための併用療法。
【請求項55】
チェックポイントインヒビターが抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である、請求項53記載の併用療法。
【請求項56】
併用療法が更に、化学療法剤または放射線の治療的有効量を対象に投与することを含む、請求項53記載の併用療法。
【請求項57】
癌を有する対象に、野生型p53または転写活性化活性を有するp53変異体もしくは類似体をコードする核酸分子を含むベクターを投与し、次いで、請求項1~38のいずれか1項記載のp53ペプチド模倣大環状分子または請求項39記載の組成物の治療的有効量を1回以上投与することを含む、癌の治療。
【請求項58】
ベクターがプラスミド、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスである、請求項57記載の癌の治療。
【請求項59】
対象にベクターを投与する前または対象にベクターを投与した後に、対象に化学療法または放射線治療を施す、請求項57記載の癌の治療。
【請求項60】
チェックポイントインヒビターを対象に投与する、請求項57記載の癌の治療。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出される配列表に対する言及
本出願は、XML形式で電子的に提出されている配列表を含み、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。2022年10月3日付で作成されたXMLファイルは25346WOPCT_SL.XMLと称され、104バイトのサイズを有する。
【0002】
(1)発明の分野
本発明はp53ペプチド模倣の大環状分子(マクロサイクル)を提供し、ここで、それぞれのp53ペプチド模倣大環状分子は、i,i+4オレフィン・ステープル(staple)、およびp53ペプチド模倣大環状分子に共有結合したポリペプチド尾部;i,i+7オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子に共有結合したポリペプチド尾部;またはi,i+7ジアルキン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子に共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部を含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有する。p53ペプチド模倣大環状分子はプロテアーゼ耐性であり、膜破壊を誘発することなく細胞透過性であり、MDM2およびMDMXに結合することによってp53へのMDM2およびMDMXの結合に拮抗することによって、細胞内でp53を活性化する。
【背景技術】
【0003】
(2)関連技術の説明
p53は、主にDNA転写因子として機能する重要な腫瘍抑制タンパク質である。それは、がん(以下、癌と表記される)において一般に抑制され、細胞周期停止、アポトーシスまたは老化の誘導を介して種々のストレスシグナルに応答して細胞を保護することにおいて、決定的に重要な役割を果たしている[46]。p53の不活性化および腫瘍形成を頻繁に引き起こすメカニズムは、p53の負の調節因子であるMDM2およびMDMX(別名MDM4)の発現増強を含む。MDM2およびMDMXは共に、p53と直接的に相互作用すること、および転写に必要な関連活性化因子(例えば、dTAFII、hTAFII)とのその相互作用を妨げることによって、p53の機能を低減する。また、それらは共にE3リガーゼ成分であり、プロテアソーム媒介性分解のためにp53を標的化する。MDMXは、MDM2とは異なり、固有のE3ユビキチンリガーゼ活性を有さない。その代わりに、MDMXはMDM2とヘテロ二量体複合体を形成し、それによってMDM2のユビキチン活性を刺激する。その結果、p53活性およびタンパク質レベルはMDM2およびMDMXの過剰発現によって急激に抑制される。したがって、MDM2またはMDMXの一方または両方とのp53の相互作用を阻害するインヒビターの開発は非常に望ましい。なぜなら、それはp53の分解を防ぎ、p53依存性転写抗腫瘍応答を回復させるからである[47,48]。
【0004】
p53 MDM2/MDMX複合体の構造的境界は、MDM2とMDMXとの両方のN末端ドメインの表面上の疎水性溝内に結合する、p53のN末端トランス活性化ドメインからのαヘリックスによって特徴付けられる。p53の3つの疎水性残基、すなわち、Phe
19、Trp
23およびLeu
26は、この相互作用の重要な決定因子であり、MDM2/MDMX相互作用溝内に深く突出している[
図1Aを参照されたい]。単離されたp53ペプチドは著しく無秩序であり、結合に際してαヘリックスコンホメーションへと変形する。これらの相互作用を模倣し、MDM2/MDMX結合に関して競合してp53を遊離させる小分子、ペプチド、および生物製剤の幾つかの例がある[49]。しかし、開発された小分子の大多数はMDMXに対するアフィニティーおよび活性をほとんど示さない。MDMXは、MDM2と比較して、p53ペプチド結合溝における幾つかの明確な構造的差異を有する。幾つかのMDM2特異的分子は初期臨床試験に入っているが、それらはほとんどが患者における用量制限毒性を示している[49]。腫瘍におけるMDMXの過剰発現はMDM2特異的化合物の有効性を低減することが実証されている。これは、おそらく、p53を阻害し、標的化してプロテアソーム分解をもたらすMDM2とMDMXとのヘテロ二量体複合体の維持によるものであろう。MDM2選択的インヒビターはまた、より高いレベルのMDMXを誘導しうる。これは、最適な治療応答を得るためにp53の効率的活性化を達成するために両方のタンパク質を同時に標的化する重要性を強調するものである。
【0005】
タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)はほとんどの生物学的プロセスの中心であり、疾患においてしばしば調節不全となる[1,2]。したがって、PPIは新薬発見のための魅力的な治療標的である。しかし、小分子を典型的に収容する深いタンパク質空洞とは対照的に、PPI表面は一般に大きく且つ平坦であり、これは、PPI標的に対する小分子インヒビターの開発の成功が限定的であることの一因となっている[3]。全てのPPIの40%が、比較的短いペプチドモチーフによって引き起こされるという認識は、リガンド-標的同族(コグネイト)パートナー間の境界に関してオルソステリックに競合する、ペプチドに基づくインヒビターの開発の可能性をもたらした[4]。そのようなペプチドは、タンパク質リガンドのコンテキストから取り出され合成された場合、しばしば、構造化されておらず、本質的に無秩序であるが、タンパク質標的と結合すると、それらの生物学的に適切なコンホメーションを達成しうる[4]。しかし、細胞内標的の場合には、タンパク質分解感受性、低いコンホメーション安定性(弱いアフィニティーおよびオフターゲット効果をもたらす)および低い細胞透過性(細胞内標的への機能遂行および経口バイオアベイラビリティを更に制限する)ゆえに、ペプチド・モダリティは困難となりうる[5-11]。これらの問題に対処するために、幾つかの戦略が追求されており、これらには、改善された活性および薬物動態特性を有する分子を得るための、ペプチド骨格の大環状化および修飾、ならびにペプチドがその標的に結合するようにペプチドを生物学的に適切なコンホメーションに制限することが含まれる[5-13]。第1に、ペプチドをその結合コンホメーションへと偏向させることによって、結合時のエントロピー・ペナルティを低減して、結合定数を改善し、そしておそらく、望ましくないオフターゲット効果の可能性を減少させる。第2に、大環状化は、ペプチド内の中心的骨格および/または側鎖構造部分を修飾することによって、種々の度合のタンパク質分解耐性をもたらしうる。第3に、大環状化は細胞透過性を増強しうる。これは、例えば、分子内水素結合の安定性の増強によって、そうでない場合にペプチドの無極性細胞膜通過輸送において生じる脱溶媒和ペナルティが低減することによる。記載されている幾つかの環化技術のなかで、非タンパク質新生性アミノ酸、例えばアルファメチルアルケニル側鎖を使用するメタセシスによるステープル化(ステープリング(stapling))は、ペプチド大環状分子の望ましい二次構造がヘリックス(らせん)状である場合に特に、非常に有効であることが証明されている[13-18]。ステープル化は、適切な非天然アミノ酸前駆体の組み込みがペプチド配列沿いの適切な位置に配置されて、それらがヘリックスの結合面を妨げないようにすることを要する。それらは主にヘリックスコンホメーションを安定化するために使用されているが、最近の研究はまた、閉環メタセシス(RCM)法を非ヘリックスペプチドに適用している[19,20]。
【0006】
ステープル化ペプチド法は、以下のものを含め、治療適用可能性を有する幾つかのPPIを阻害するために成功裏に適用されている:BCL-2ファミリー-BH3ドメイン[21-24]、β-カテニン-TCF[25]、Rab-GTPase-エフェクター[26]、ERα-コアクチベータータンパク質[27]、カリン(Cullin)3-BTB[28]、VDR-コアクチベータータンパク質[29]、eIf4E[30]、ATSP-7041[WO2013123266を参照されたい]、SAH-p53-8[Bernalら,Cancer Cell 18:411-422(2010)]およびp53-MDM2/MDMX[31-34]。注目すべきことに、p53-MDM2/MDMXの場合、二重選択的ステープル化ペプチド(ALRN-6924;Aileron Therapeutics,Inc.)が更に第II相臨床試験に成功裏に進められている[35-37]。この例は、ステープル化ペプチドが臨床へと進められることに関して確かに励みとなるものであるが、課題は尚も残されている。これらのうち、持続的な標的結合および細胞活性のための十分なタンパク質分解安定性を有する分子を設計することが非常に重要である。実際、L-アミノ酸ペプチドのステープル化はプロテアーゼ媒介性分解に対する耐性をもたらしうるが、その効果は、しばしば、完全ではなく、大環状環の外部に位置する残基に影響を及ぼしうる[38-40]。
【0007】
一方、全てD配置であるα-アミノ酸ペプチドはタンパク質分解に対して超安定である。なぜなら、ほとんどのプロテアーゼはキラルであり、それらは基質のL-エナンチオマーとD-エナンチオマーとを識別し、その結果、全てD配置であるα-アミノ酸ペプチドはプロテアーゼの活性に抵抗しうるからである。全てD配置であるα-アミノ酸ペプチドは、p53-MDM2[41-42]、VEGF-VEGF受容体[43]、PD-1 - PD-L1[44]およびヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)侵入[45]を含む種々の標的に対する強力な結合アフィニティーを有するように設計されている。残念ながら、全てD配置であるα-アミノ酸ペプチドはタンパク質分解に対して本質的に超安定であるが、一般に膜透過性および細胞活性を欠いている。
【0008】
例えば、DPMI-δは、Liuら[41]および米国公開特許第20120328692号において報告されている鏡像ファージ・ディスプレイ・スクリーニングから誘導された、全てD配置であるαアミノ酸直鎖ペプチド(PMIはp53-MDM2/MDMXインヒビターを意味する)である。しかし、このペプチドは細胞透過性を欠いていたが、ナノ担体を使用して送達された場合、細胞においてp53を活性化した[42]。
【0009】
ペプチドに基づくインヒビターは細胞内タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)の標的化調節の大きな可能性を秘めている。なぜなら、それらは、多数の種々の二次構造および三次構造ならびに配列多様性を含む広範囲の化学的空間に接近可能だからである。しかし、現在のところ、低いコンホメーション安定性、タンパク質分解感受性および細胞透過性を含む欠点がペプチド治療薬の開発を妨げている。また、これらのインビトロ結合性物質を、オンターゲット選択性および特異性を有する、細胞内活性でありインビボ活性である化合物に変換することは困難である。幾つかの現代のペプチド設計戦略は様々な角度からこれらの問題に対処している。ステープルと一般に称されるオレフィン炭化水素架橋のような最適に配置された化学的補強構造体による戦略的大環状化は、i)コンホメーション自由度を制限して標的アフィニティーを改善すること、ii)タンパク質分解耐性を改善すること、およびiii)細胞透過性を増強することによって、これらの問題に対処しうる。逆に、完全にD-アミノ酸から構築された分子はタンパク質分解切断に対して超耐性であるが、一般に、コンホメーション安定性および膜透過性を欠いている。
【発明の概要】
【0010】
発明の概括
本発明者らは、当技術分野において特定されているペプチドインヒビターに関する問題の多くを解決するp53ペプチド模倣大環状分子を本発明において開発した。本発明はp53ペプチド模倣の大環状分子(マクロサイクル)を提供し、ここで、それぞれのp53ペプチド模倣大環状分子は、i,i+4オレフィン・ステープル(staple)、およびp53ペプチド模倣大環状分子に共有結合したポリペプチド尾部;i,i+7オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子に共有結合したポリペプチド尾部;またはi,i+7ジアルキン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子に共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部を含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸(D-アミノ酸)を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。これらのp53ペプチド模倣大環状分子は、(i)プロテアーゼ耐性であり、(ii)コンホメーション安定性を有し、(iii)膜破壊を誘発することなく細胞透過性であり、ならびに(iv)低い細胞毒性を有する、または細胞毒性を全く有さない[開示されているp53ペプチド模倣大環状分子は、カウンタースクリーン活性および乳酸脱水素酵素(LDH)放出で、細胞活性を低減した]。更に、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子はマウス・ダブル・マイニュート(mouse double minute)2(MDM2;別名E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ)およびMDMX(別名MDM4)に結合し、MDM2およびMDMXに結合することによってp53へのMDM2およびMDMXの結合に拮抗することによって、細胞内でp53を活性化する。
【0011】
特定の実施形態においては、本発明は、i,i+4オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部;i,i+7オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部;またはi,i+7ジアルキン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供し、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0012】
特定の実施形態においては、前記のp53ペプチド模倣大環状分子は、i,i+4オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部を含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0013】
特定の実施形態においては、前記のp53ペプチド模倣大環状分子は、i,i+7オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部を含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。特定の実施形態においては、オレフィン・ステープルはアルキン・ステープルである。
【0014】
特定の実施形態においては、前記のp53ペプチド模倣大環状分子は、i,i+7ジアルキン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部を含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0015】
更なる実施形態においては、本発明は、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置6および10に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+4オレフィン・ステープル(そのようなステープルは「6-10オレフィン・ステープル」と称される)と、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部とを含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供し、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。特定の実施形態においては、位置6および10のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸を含む。
【0016】
更なる実施形態においては、本発明は、12個のアミノ酸と、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置6および10に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+4オレフィン・ステープルと、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部とを含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供し、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部の各アミノ酸はD配置を有する。特定の実施形態においては、アミノ酸位置6および10のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸を含む。
【0017】
6-10オレフィン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は位置3のD-6-フルオロ-トリプトファンおよび位置7のD-p-CF3-フェニルアラニンを更に含む。
【0018】
6-10オレフィン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子の更にもう1つの実施形態においては、位置1のアミノ酸はトレオニンを含み、位置2のアミノ酸はアラニンを含み、位置4のアミノ酸はチロシンを含み、位置5のアミノ酸はアラニンを含み、位置8のアミノ酸はグルタミン酸を含み、位置9のアミノ酸はリジンまたはグルタミンを含み、位置11のアミノ酸はロイシンを含み、位置12のアミノ酸はアルギニンまたはセリンを含む。
【0019】
6-10オレフィン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子の更にもう1つの実施形態においては、位置9のアミノ酸はグルタミンを含み、位置12のアミノ酸はセリンを含む。
【0020】
更なる実施形態においては、本発明は、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5および12に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成された5-12ジアルキン・ステープルと、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部とを含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供し、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部の各アミノ酸はD配置を有する。
【0021】
5-12ジアルキン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、アミノ酸位置5のα,α-二置換アミノ酸は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸を含み、アミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸を含む。
【0022】
5-12ジアルキン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、前記のp53ペプチド模倣大環状分子はC末端アミノ酸においてポリペプチド尾部のN末端に共有結合しており、ここで、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0023】
更なる実施形態においては、本発明は、12個のアミノ酸と、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5および12に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+7ジアルキン・ステープル(そのようなステープルは「5-12ジアルキン・ステープル」と称される)と、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部とを含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供し、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有する。
【0024】
5-12ジアルキン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、アミノ酸位置5のα,α-二置換アミノ酸は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸を含み、アミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸を含む。
【0025】
5-12ジアルキン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はC末端アミノ酸においてポリペプチド尾部のN末端に共有結合しており、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0026】
5-12ジアルキン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、5-12ジアルキン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子はアミノ酸位置3のD-6-フルオロトリプトファンおよびアミノ酸位置7のD-p-CF3-フェニルアラニンを更に含む。
【0027】
5-12ジアルキン・ステープルを含むp53ペプチド模倣大環状分子の更にもう1つの実施形態においては、位置1のアミノ酸はトレオニンを含み、位置2のアミノ酸はアラニンを含み、位置4のアミノ酸はチロシンを含み、位置6のアミノ酸はアスパラギンを含み、位置8のアミノ酸はグルタミン酸を含み、位置9のアミノ酸はリジンまたはグルタミンを含み、位置10のアミノ酸はロイシンを含み、位置11のアミノ酸はロイシンを含む。もう1つの実施形態においては、位置9のアミノ酸はグルタミンを含む。
【0028】
更なる実施形態においては、本発明は、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5および12に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+7オレフィン・ステープル(そのようなステープルは「5-12オレフィン・ステープル」)と、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部とを含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供し、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有し、ここで、アミノ位置5のα,α-二置換アミノ酸は(S)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸であり、アミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である。
【0029】
5-12オレフィン結合を含むp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はC末端アミノ酸においてポリペプチド尾部のN末端に共有結合しており、ここで、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0030】
更なる実施形態においては、本発明は、12個のアミノ酸と、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5および12に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+7オレフィン・ステープルと、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部とを含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供し、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、ここで、アミノ位置5のα,α-二置換アミノ酸は2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸であり、アミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である。
【0031】
5-12オレフィン結合を含むp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はC末端アミノ酸においてポリペプチド尾部のN末端に共有結合しており、ここで、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0032】
5-12オレフィン結合を含むp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、アミノ酸位置3のD-6-フルオロ-トリプトファンおよびアミノ酸位置7のD-p-CF3-フェニルアラニンを更に含む。
【0033】
5-12オレフィン結合を含むp53ペプチド模倣大環状分子の更にもう1つの実施形態においては、位置1のアミノ酸はトレオニンを含み、位置2のアミノ酸はアラニンを含み、位置4のアミノ酸はチロシンを含み、位置6のアミノ酸はアスパラギンを含み、位置8のアミノ酸はグルタミン酸を含み、位置9のアミノ酸はリジンまたはグルタミンを含み、位置10のアミノ酸はロイシンを含み、位置11のアミノ酸はロイシンを含む。もう1つの実施形態においては、位置9のアミノ酸はグルタミンを含む。
【0034】
本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、α,α-二置換アミノ酸の、1つの置換基は、アルケニルであり、α,α-二置換アミノ酸のもう1つの置換基はメチルである。特定の実施形態においては、アルケニルはC3-10アルケニル、C4-7アルケニルまたはC5-6アルケニルである。
【0035】
本発明は更に、p53ペプチド模倣大環状分子およびi,i+4オレフィン結合を、低いまたは検出不能な毒性、コンホメーション安定性および膜透過性の、改善された薬理学的特性を有するp53ペプチド模倣大環状分子に変換する方法を提供し、該方法は、3~9個のアミノ酸を含むポリペプチド尾部をp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に共有結合させることを含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子の位置6および10における2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素はi,i+4オレフィン結合で連結されている。特定の実施形態においては、アミノ酸位置6および10のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸を含む。
【0036】
本発明は更に、p53ペプチド模倣大環状分子およびi,i+7オレフィン結合またはi,i+7ジアルキン結合を、低いまたは検出不能な毒性、コンホメーション安定性および膜透過性の、改善された薬理学的特性を有するp53ペプチド模倣大環状分子に変換する方法を提供し、該方法は、3~9個のアミノ酸を含むポリペプチド尾部をp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に結合させることを含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子の位置5および12における2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素はi,i+7オレフィン結合で連結されている。特定の実施形態においては、アミノ酸位置5のα,α-二置換アミノ酸は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸を含み、アミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸を含む。
【0037】
該方法のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5および12に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素をオレフィン結合で結合させ、3~9個のアミノ酸を含むポリペプチド尾部をp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に共有結合させることによって、p53ペプチド模倣大環状分子を、低いまたは検出不能な毒性、コンホメーション安定性および膜透過性の、改善された薬理学的特性を有するp53ペプチド模倣大環状分子に変換し、ここで、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D-配置またはL-配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD-配置を有し、ここで、アミノ位置5のα,α-二置換アミノ酸は(S)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸であり、アミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸はは(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である。
【0038】
MDM2および/またはMDMXへのp53ペプチド模倣大環状分子の結合を改善し、p53細胞レポーター遺伝子アッセイにおける細胞活性を改善することを目的とする実施形態においては、3~9個のアミノ酸を含むポリペプチド尾部の各位置のアミノ酸は、独立して、天然または非天然のL-またはD-アミノ酸から選択される。開示されているp53ペプチド模倣大環状分子の特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部の各位置のアミノ酸はアラニンを含む。もう1つの実施形態においては、ポリペプチド尾部の位置3および6のアミノ酸は、それぞれ独立して、アルキルまたは芳香族アミノ酸から選択される。ポリペプチド尾部の特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部の位置3および6のアミノ酸は、それぞれ独立して、アルキルまたはフェニルアラニンから選択される。ポリペプチド尾部の特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部は6個のアミノ酸を含み、または6個のアミノ酸からなる。ポリペプチド尾部の特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部のアルキルアミノ酸はアラニンを含む。ポリペプチド尾部の特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部は6個のアミノ酸を含む。ポリペプチド尾部の更なる実施形態においては、ポリペプチド尾部の各アミノ酸はD配置である。
【0039】
p53ペプチド模倣大環状分子の両親媒性、溶解性および/または細胞活性を改善することを目的とする実施形態においては、3~9個のアミノ酸を含むポリペプチド尾部の各位置のアミノ酸は、少なくとも1つのアミノ酸が負に荷電している限り、天然または非天然の負荷電L-またはD-アミノ酸から、独立して選択される。ポリペプチド尾部のもう1つの実施形態においては、ポリペプチド尾部の位置1のアミノ酸は、独立して、アルキル、グルタミン酸またはガンマ-カルボキシルグルタミン酸(Gla)から選択され、ポリペプチド尾部の位置3のアミノ酸は、独立して、アルキルまたはグルタミン酸から選択され、ポリペプチド尾部の位置5のアミノ酸は、独立して、アルキルおよびアルファ-メチルグルタミン酸から選択され、ただし、位置1、3、または5のアミノ酸の少なくとも1つはグルタミン酸またはアルファ-メチルグルタミン酸を含む。ポリペプチド尾部の特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部は6個のアミノ酸を含み、または6個のアミノ酸からなる。ポリペプチド尾部の更なる実施形態においては、ポリペプチド尾部のアルキルアミノ酸はアラニンを含む。ポリペプチド尾部の更なる実施形態においては、ポリペプチド尾部の各アミノ酸はD配置である。
【0040】
本発明は更に、
[ここで、X
3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO
2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO
2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO
2-Trpである;X
6は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である;X
7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO
2-PheまたはD-p-CF
3-Pheである;X
10は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である;X
11はD-Leuである;X
12はD-ArgまたはD-Serである;X
13はD-Ala、D-GluまたはD-Gla(γ-カルボキシルグルタミン酸)である;X
14はD-Alaである;X
15はD-Ala、D-PheまたはD-Gluである;X
16はD-Alaである、または存在しない;X
17はD-Ala、D-α-メチル-Gluである、または存在しない;X
18はD-Alaである、または存在しない;X
19はD-Alaである、または存在しない;X
20はD-Alaである、または存在しない;X
21はD-Alaである、または存在しない;位置1のThrのN末端アミノ基は、式RCO-を有するアシル基に結合している;Rは、式C
nH
2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;およびステープルは、X
6とX
10との間の閉環メタセシスによって得られるオレフィンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0041】
特定の実施形態においては、アミノ酸1~12は全てDアミノ酸であり、アミノ酸13~21は、それぞれ独立して、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸であり、またはそれぞれD-アミノ酸である。
【0042】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X12はD-Serである。p53ペプチド模倣大環状分子の更なる実施形態においては、X3はD-6-フルオロ-Trpである;X7はD-p-CF3-Pheである;またはX3はD-6-フルオロ-Trpであり、X7はD-p-CF3-Pheである。もう1つの実施形態においては、アシル基はアセチル基である。
【0043】
本発明は、
[ここで、X
3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO
2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO
2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO
2-Trpである;X
5は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸である;X
7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO
2-PheまたはD-p-CF
3-Pheである;X
9はD-LysまたはD-Glnである;X
11はD-Leuである;X
12は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸である;X
13はD-Ala、D-Glu、D-Gla(γ-カルボキシルグルタミン酸)である、または存在しない;X
14はD-Alaである、または存在しない;X
15はD-Ala、D-PheもしくはD-Gluである、または存在しない;X
16はD-Alaである、または存在しない;X
17はD-Ala、D-α-メチル-Gluである、または存在しない;X
18はD-Alaである、または存在しない;X
19はD-Alaである、または存在しない;X
20はD-Alaである、または存在しない;X
21はD-Alaである、または存在しない;位置1のThrのN末端アミノ基は、式RCO-を有するアシル基に結合している;Rは、式C
nH
2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;およびステープルは、X
5とX
12との間のアルキンクロスカップリングによって得られるジアルキンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0044】
特定の実施形態においては、アミノ酸1~12は全てD-アミノ酸であり、アミノ酸13~21は、それぞれ独立して、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸であり、またはそれぞれD-アミノ酸である。
【0045】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X9はD-Glnである。p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X3はD-6-フルオロ-Trpである;X7はD-p-CF3-Pheである;またはX3はD-6-フルオロ-Trpであり、X7はD-p-CF3-Pheである。もう1つの実施形態においては、アシル基はアセチル基である。
【0046】
本発明は、
[ここで、X
3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO
2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO
2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO
2-Trpである;X
5は(S)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸である;X
7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO
2-PheまたはD-p-CF
3-Pheである;X
9はD-LysまたはD-Glnである;X
11はD-Leuである;X
12は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である;X
13はD-Ala、D-Glu、D-Gla(γ-カルボキシルグルタミン酸)である;X
14はD-Alaである;X
15はD-Ala、D-PheまたはD-Gluである;X
16はD-Alaである;X
17はD-AlaまたはD-α-メチル-Gluである;X
18はD-Alaである;X
19はD-Alaである、または存在しない;X
20はD-Alaである、または存在しない;X
21はD-Alaである、または存在しない;位置1のThrのN末端アミノ基は、式RCO-を有するアシル基に結合している;Rは、式C
nH
2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;アミノ酸1~12はD-アミノ酸である;およびステープルはX
5とX
12との間の閉環メタセシスによって得られるオレフィンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0047】
特定の実施形態においては、アミノ酸1~12は全てD-アミノ酸であり、アミノ酸13~21は、それぞれ独立して、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸であり、またはそれぞれD-アミノ酸である。
【0048】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X9はD-Glnである。p53ペプチド模倣大環状分子の更なる実施形態においては、X3はD-6-フルオロ-Trpである;X7はD-p-CF3-Pheである;またはX3はD-6-フルオロ-Trpであり、X7はD-p-CF3-Pheである。もう1つの実施形態においては、アシル基はアセチル基である。
【0049】
本発明は、
[ここで、X
3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO
2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO
2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO
2-Trpである;X
5は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸である;X
7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO
2-PheまたはD-p-CF
3-Pheである;X
9はD-LysまたはD-Glnである;X
11はD-Leuである;X
12は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸である;位置1のThrのN末端アミノ基は、式RCO-を有するアシル基に結合している;Rは、式C
nH
2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;アミノ酸1~12はD-アミノ酸である;およびステープルは、X
5とX
12との間のアルキンクロスカップリングによって得られるジアルキンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0050】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X9はD-Glnである。p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X3はD-6-フルオロ-Trpである;X7はD-p-CF3-Pheである;またはX3はD-6-フルオロ-Trpであり、X7はD-p-CF3-Pheである。もう1つの実施形態においては、アシル基はアセチル基である。
【0051】
もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0052】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子と薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0053】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物を対象に投与することを含む、癌の治療を要する対象における癌の治療方法を提供する。本発明は更に、癌の治療用医薬の製造のための、本明細書に開示されているペプチド模倣大環状分子の使用を提供する。本発明は更に、癌の治療のための、本明細書に開示されているペプチド模倣大環状分子を提供する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0054】
任意の開示されている方法、使用または使用用組成物の更なる実施形態においては、癌は、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎臓癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、膵臓癌、気管支癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫および血液組織の癌からなる群から選択される。
【0055】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物を対象に投与することを含む、対象におけるp53および/またはMDM2および/またはMDMXの活性を調節(モジュレーション)する方法を提供する。本発明は更に、該活性を調節する医薬の製造のための、本明細書に開示されているペプチド模倣大環状分子の使用を提供する。本発明は更に、該活性の調節のための、本明細書に開示されているペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0056】
もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0057】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物を対象に投与することを含む、対象におけるp53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗させる方法を提供する。本発明は更に、p53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗させる医薬の製造のための、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子の使用を提供する。
【0058】
本発明は更に、p53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗させるための、本明細書に開示されているペプチド模倣大環状分子を提供する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0059】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物の治療的有効量と化学療法剤または放射線の治療的有効量とを対象に投与することを含む、癌を治療するための併用療法(組合せ療法)を提供する。もう1つの実施形態においては、化学療法剤または放射線を対象に投与し、次いでp53ペプチド模倣大環状分子を投与する;p53ペプチド模倣大環状分子を対象に投与し、次いで化学療法剤または放射線を投与する;あるいは化学療法剤または放射線をp53ペプチド模倣大環状分子の投与と同時に対象に投与する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0060】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物の治療的有効量と化学療法剤または放射線の治療用量とを含む、癌を治療するための併用療法を提供する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0061】
特定の実施形態においては、化学療法剤は、アクチノマイシン、全トランス-レチノイン酸、アリトレチノイン、アザシチジン、アザチオプリン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルモフール、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、イキサベピロン、イリノテカン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニトロソウレア、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ロミデプシン、テガフール、テモゾロミド(経口ダカルバジン)、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、ウチデロン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンおよびボリノスタットからなる群から選択される。
【0062】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物の治療的有効量とチェックポイントインヒビターの治療的有効量とを対象に投与することを含む、癌を治療するための併用療法を提供する。特定の実施形態においては、チェックポイントインヒビターは抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である。もう1つの実施形態においては、併用療法は更に、化学療法剤または放射線の治療的有効量を対象に投与することを含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0063】
本発明は更に、癌を有する対象に、野生型p53または転写活性化活性を有するp53変異体もしくは類似体をコードする核酸分子を含むベクターを投与し、次いで、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物の治療的有効量を1回以上投与することを含む、癌の治療を提供する。特定の実施形態においては、ベクターはプラスミド、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスである。特定の実施形態においては、対象にベクターを投与する前または対象にベクターを投与した後に、対象に化学療法または放射線治療を施す。更なる実施形態においては、療法は、チェックポイントインヒビターを対象に投与することを更に含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1Aは天然ヒトp53ペプチド:MDM2[Protein Data Bank(PDB)ID:1YCR]複合体の結晶構造を示す(Baekら,JACS 134:103-106(2012))。MDM2は面として示されており、結合した天然p53ペプチド(配列番号15)はリボン絵として示されており、ここで、p53ペプチドの相互作用残基L-Phe
19、L-Trp
23およびL-Leu
26は棒状物として強調表示されている。水素結合相互作用が点線で示されている。p53ペプチドのアミノ酸番号は、配列番号16に記載されているアミノ酸配列を有する天然ヒトp53のアミノ酸15~29に対応する。H96、K94、Q72およびY100はMDM2におけるアミノ酸である。
【0065】
図1Bは
DPMI-δ p53ペプチド模倣ペプチド:MDM2(PDB ID:3PTX)複合体の結晶構造を示す(Zhanら,J.Med.Chem.55:6237-6241(2012))。MDM2は面として示されており、結合した
DPMI-δペプチド模倣大環状分子(配列番号11)はリボン絵として示されており、ここで、相互作用残基
DLeu
11、pCF
3-
DPhe
7および6-F-
DTrp
3は棒状物として強調表示されている。水素結合相互作用が点線で示されている。H96、K94、Q72およびY100はMDM2におけるアミノ酸である。
【
図2】
図2は、分子動力学(MD)シミュレーションから得られた代表的な
DPMI-δ-(5-12)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子:MDM2複合体の構造描写を示す。MDM2は面として示されており、結合した
DPMI-δ-(5-12)オレフィン・ステープル化ペプチド模倣大環状分子は棒状の絵として示されており、ここで、相互作用残基は棒状物として強調表示されている。炭化水素オレフィンリンカーは、矢印によって示されているペプチドの明るい部分である。水素結合相互作用は点線で示されている。H96、K94およびQ72はMDM2におけるアミノ酸である。
【
図3】
図3は、分子動力学シミュレーション中にサンプリングされたMDM2との複合体における、アミノ酸配列AFAAAA(配列番号21)を含む6個のアミノ酸ポリペプチド尾部に連結された代表的な
DPMI-δ-(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子のコンホメーションを示す。MDM2は面/絵として示されており、結合したp53ペプチド模倣大環状分子は、3つの重要な結合残基6-F-
DTrp
3、pCF
3-
DPhe
7および
DLeu
11;
DPhe
14(ポリペプチド尾部におけるもの)と共に絵で示されており、オレフィン・ステープルが強調表示されている。
【
図4】
図4は、分子動力学シミュレーション中にサンプリングされた代表的な
DPMI-δ-(5-12)ジアルキン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子のコンホメーションを示す。p53ペプチド模倣大環状分子が絵で示されており、ここで、3つの重要な結合残基およびジアルキンが棒状物として強調表示されている。
【0066】
発明の詳細な説明
定義
本明細書中で用いる「投与」および「投与する」は、少なくとも1つのp53ペプチド模倣大環状分子または少なくとも1つのp53ペプチド模倣大環状分子を含む医薬組成物を対象内に導入することを意味する。投与が治療目的である場合、腫瘍のような異常細胞増殖の診断時または診断後に該物質を投与する。この物質の治療的投与は、腫瘍の細胞増殖または異常細胞増殖を抑制するように働く。
【0067】
本明細書中で用いる「α-アミノ酸」または単に「アミノ酸」は、側鎖(R基)と水素原子とに結合したα炭素と称される炭素に結合したアミノ基とカルボキシル基との両方を含有する分子を意味し、(R)α-アミノ酸および(S)α-アミノ酸に関して示される以下の式によって表されうる。
【化1】
【0068】
一般に、L-アミノ酸は、(R)配置を有するシステインおよびアキラルであるグリシンを除き、(S)配置を有する。本明細書に開示されている全てDアミノ酸配置であるペプチドのための適切なα-アミノ酸には、天然に存在するアミノ酸およびそれらの類似体のD異性体のみ、ならびに有機合成または他の代謝経路によって製造された天然に存在しないアミノ酸のD異性体のみが含まれる。ただし、α,α-二置換アミノ酸はL、Dまたはアキラルでありうる。文脈が別段の定めを特に示していない限り、本明細書中で用いるアミノ酸なる語はアミノ酸類似体を含むと意図される。本明細書中で用いるD-アミノ酸(またはD配置アミノ酸)は上付き文字「D」(例えば、DLeu)によって示され、L-アミノ酸は「L」(例えば、L-Leu)によって、またはLの識別子を伴わない(例えば、Leu)で示される。本明細書中で用いるD-アミノ酸およびD配置アミノ酸なる語は互換的に用いられる。
【0069】
本明細書中で用いる「α,α-二置換アミノ酸」は、2つの天然アミノ酸側鎖または非天然アミノ酸側鎖(またはそれらの組合せ)に結合したα炭素に結合したアミノ基とカルボキシル基との両方を含有する分子または部分を意味する。例示的なα,α-二置換アミノを以下に示す。これらのα,α-二置換アミノ酸は、末端オレフィン反応性基を有する側鎖を含む。
【化2】
【0070】
これらのα,α-二置換アミノ酸は、末端アルキン反応性基を有する側鎖を含む。
【化3】
【0071】
本明細書中で用いる「アミノ酸類似体」または「非天然アミノ酸」は、p53ペプチド模倣大環状分子の形成においてアミノ酸の代替物となりうる、構造的にアミノ酸に類似している分子を意味する。アミノ酸類似体には、アミノ基とカルボキシル基との間に1以上の追加的なメチレン基が含まれていること(例えば、α-アミノ、β-カルボキシ酸)、またはアミノ基もしくはカルボキシ基が類似反応性の基で置換されていること(例えば、第一アミンが第二アミンもしくは第三アミンで置換されていること、またはカルボキシ基がエステルで置換されていること)を除き、本明細書中に定義されているアミノ酸と構造的に同一である化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
本明細書中で用いる「アミノ酸側鎖」は、アミノ酸におけるα炭素に結合している部分を意味する。例えば、アラニンのアミノ酸側鎖はメチルであり、フェニルアラニンのアミノ酸側鎖はフェニルメチルであり、システインのアミノ酸側鎖はチオメチルであり、アスパラギン酸(アスパルタート)のアミノ酸側鎖はカルボキシメチルであり、チロシンのアミノ酸側鎖は4-ヒドロキシフェニルメチルである、などである。また、天然に存在しない他のアミノ酸側鎖、例えば、合成によって製造されるもの(例えば、α,α-二置換アミノ酸)、または天然に存在するもの(例えば、アミノ酸代謝物)も含まれる。
【0073】
本明細書中で用いる「アシル基」は、式RCO-を有する部分を意味し、ここで、Rは、式CnH2n+1を有するアルカンである。
【0074】
本明細書中で用いる「キャッピング基」は、対象p53ペプチド模倣大環状分子のポリペプチド鎖のカルボキシ末端またはアミノ末端のいずれかに存在する化学部分を意味する。カルボキシ末端のキャッピング基には、未修飾カルボン酸(すなわち、-COOH)、または置換基を有するカルボン酸が含まれる。例えば、カルボキシ末端をアミノ基で置換して、C末端にカルボキサミドを生成させることが可能である。種々の置換基には、第一級アミン、および第二級アミン、例えばペグ化(pegylated)第二級アミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。アミノ末端のキャッピング基には、未修飾アミン(すなわち、-NH2)、または置換基を有するアミンが含まれる。例えば、アミノ末端をアシル基で置換して、N末端にカルボキサミドを生成させることが可能である。種々の置換基には、置換アシル基、例えばC1-C6カルボニル、C7-C30カルボニルおよびペグ化カルバマートが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
本明細書中で用いる「共投与」は、少なくとも2つの異なる生物活性化合物のそれぞれが、生物活性のそれぞれの期間が重なる時間枠内で対象に投与されることを意味する。したがって、この用語は、逐次的投与および同時期(co-extensive)の投与を含む。共投与を用いる場合、投与経路は同じである必要はない。生物活性化合物には、p53ペプチド模倣大環状分子、ならびに癌の治療に有用な他の化合物、限定的なものではないが例えばビンカアルカロイド、核酸インヒビター、白金剤、インターロイキン2、インターフェロン、アルキル化剤、代謝拮抗剤、コルチコステロイド、DNAインターカレーション剤、アントラサイクリンおよび尿素のような物質が含まれる。本明細書に例示されているものに加えて、特定の物質の例には、ヒドロキシウレア、5-フルオロウラシル、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダカバジン、シタラビン、ブスルファン、チオテパ、ロムスチン、メクロレハミン、シクロホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、クロラムブシル、カルムスチン、6-チオグアニン、メトトレキサートなどが含まれる。2つの異なるp53ペプチド模倣大環状分子が対象に共投与されうる、またはp53ペプチド模倣大環状分子と前記物質の1つのような物質とが対象に共投与されうる、と当業者は理解するであろう。
【0076】
本明細書中で用いる「併用療法」は、第1治療用物質と第2治療用物質とを連続的または同時に個体に投与することを含む、ヒトまたは動物個体の治療を意味する。一般に、第1治療用物質と第2治療用物質とは、混合物としてではなく、別々に個体に投与されるが、投与前に第1治療用物質と第2治療用物質とを混合する実施形態もありうる。
【0077】
本明細書中で用いる「保存的置換」は、アミノ酸が、類似特性(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、バックボーンコンホメーションおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換されることを意味し、この場合、該変化は、しばしば、タンパク質の生物活性を変化させることなく施されうる。一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は生物活性を実質的に変化させない、と当業者は認識している(例えば、Watsonら Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)(1987)を参照されたい)。また、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物活性を損なう可能性が低い。例示的な保存的置換を表1に示す。
【表1】
【0078】
本明細書中で用いる「用量」、「投与量」、「単位用量」、「単位投与量」、「有効用量」および関連用語は、所望の治療効果(例えば、癌細胞の死)が得られるように計算された所定量の有効成分(例えば、p53ペプチド模倣大環状分子)を含有する物理的に別個の単位を意味する。これらの用語は、治療的有効量、および本明細書に開示されている方法の示されている目的を達成するのに十分な量と同義である。
【0079】
本明細書中で用いる「DPMI-δ p53ペプチド模倣ペプチド」は、上付き文字「D」によって示される全てのD配置であるアミノ酸を含む、配列番号11に記載されているアミノ酸を有する直鎖状p53ペプチド模倣ペプチドを意味する。
【0080】
本明細書中で用いる「DPMI-δ(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子」は、修飾DPMI-δ p53ペプチド模倣ペプチドが得られるように、アミノ酸位置6および10のアミノ酸のそれぞれが、末端アルケニル基を有するアミノ酸側鎖を含むα,α-二置換アミノ酸で置換されているDPMI-δ p53ペプチド模倣ペプチドを意味し、ここで、それらの2つのα,α-二置換アミノ酸の間の閉環メタセシスによる修飾DPMI-δペプチドの大環状化はDPMI-δ(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子を生成する。特定の実施形態においては、α,α-二置換アミノ酸の他方の側鎖はメチル置換基である。DPMI-δ(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子は、N末端またはC末端への更なるアミノ酸修飾、挿入、置換または付加、あるいはN末端への非アミノ酸付加、例えばアシル化、またはC末端への非アミノ酸付加、例えばアミド化を含みうる。
【0081】
本明細書中で用いる「DPMI-δ(5-12)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子」は、修飾DPMI-δ p53ペプチド模倣ペプチドが得られるように、アミノ酸位置5および12のアミノ酸のそれぞれが、末端アルケニル基を有するアミノ酸側鎖を含むα,α-二置換アミノ酸で置換されているDPMI-δ p53ペプチド模倣ペプチドを意味し、ここで、それらの2つのα,α-二置換アミノ酸の間の閉環メタセシスによる修飾DPMI-δペプチドの大環状化はDPMI-δ(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子を生成する。特定の実施形態においては、α,α-二置換アミノ酸の他方の側鎖はメチル置換基である。DPMI-δ(5-12)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子は、N末端またはC末端への更なるアミノ酸修飾、挿入、置換または付加、あるいはN末端への非アミノ酸付加、例えばアシル化、またはC末端への非アミノ酸付加、例えばアミド化を含みうる。
【0082】
本明細書中で用いる「DPMI-δ(5-12)ジアルキン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子」は、修飾DPMI-δ p53ペプチド模倣ペプチドが得られるように、アミノ酸位置5および12のアミノ酸のそれぞれが、末端アルキニル基を有するアミノ酸側鎖を含むα,α-二置換アミノ酸で置換されているDPMI-δ p53ペプチド模倣ペプチドを意味し、ここで、それらの2つのα,α-二置換アミノ酸の間のアルキンクロスカップリングによる修飾DPMI-δペプチドの大環状化はDPMI-δ(6-12)ジアルキン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子を生成する。特定の実施形態においては、α,α-二置換アミノ酸の他方の側鎖はメチル置換基である。DPMI-δ(5-12)ジアルキン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子は、N末端またはC末端への更なるアミノ酸修飾、挿入、置換または付加、あるいはN末端への非アミノ酸付加、例えばアシル化、またはC末端への非アミノ酸付加、例えばアミド化を含みうる。
【0083】
本明細書中で用いる「ヘリックス安定性」は、円二色性またはNMRによって測定された場合の、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子のステープルまたはステッチ(stitch)によるαヘリックス構造の維持を意味する。例えば、幾つかの実施形態においては、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子は、対応する非架橋大環状分子と比較して、円二色性によって測定された場合の、αヘリシティーにおける少なくとも1.25、1.5、1.75または2倍の増加を示す。
【0084】
本明細書中で用いる「大環状分子」は、少なくとも9個の共有結合原子によって形成される環またはサイクル(cycle)を含む化学構造を有する分子を意味する。
【0085】
本明細書中で用いる「大環状化試薬」または「大環状分子形成試薬」は、α,α-二置換アミノ酸上の2つの反応性基間の反応を引き起こすことにより、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子を製造するために使用されうる任意の試薬を意味する。α,α-二置換アミノ酸上の反応性基は、例えば、アジドおよびアルキンであることが可能であり、その場合、大環状化試薬には、Cu試薬、例えば、CuBr、CuIまたはCuOTfのような、反応性Cu(I)種を与える試薬、ならびに、アスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムのような還元剤の添加によってインサイチュ(in situ)で活性Cu(I)試薬に変換されうるCu(CO2CH3)2、CuSO4およびCuCl2のようなCu(II)塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
大環状化試薬には、更に、例えば、当技術分野で公知のRu試薬、例えば、Cp*RuCl(PPh3)2、[Cp*RuCl]4、または反応性Ru(II)種を与えうる他のRu試薬が含まれうる。他の場合には、反応性基は末端オレフィンである。そのような実施形態においては、大環状化試薬または大環状分子形成試薬は、安定化後期遷移金属カルベン錯体触媒、例えば第VIII族遷移金属カルベン触媒(これらに限定されるものではない)を含むメタセシス触媒である。例えば、そのような触媒は、+2の酸化状態、16の電子数および五配位を有するRuおよびOs金属中心である。追加的な触媒は、Grubbsら,“Ring Closing Metathesis and Related Processes in Organic Synthesis”Acc.Chem.Res.1995,28,446-452および米国特許第5,811,515号に開示されている。更に他の場合には、反応性基はチオール基である。そのような実施形態においては、大環状化試薬は、例えば、ハロゲン基のような2つのチオール反応性基で官能基化されたリンカーである。
【0087】
本明細書中で用いる「p53」は、細胞腫瘍抗原p53(UniProt名)、リン酸化タンパク質p53、腫瘍抑制因子p53、抗原NY-CO-13もしくは形質転換関連タンパク質53(TRP53)としても公知である腫瘍タンパク質P53、または種々の生物における相同遺伝子(例えば、ヒトにおけるTP53遺伝子)によってコードされるタンパク質の任意のアイソフォームを意味する。
【0088】
本明細書中で用いる「MDM2」は、E3ユビキチン-タンパク質リガーゼとしても公知であるマウス・ダブル・マイニュート(mouse double minute)2タンパク質である。MDM2は、ヒトにおいてMDM2遺伝子によってコードされるタンパク質である。MDM2タンパク質はp53腫瘍抑制因子の重要な負の調節因子である。MDM2タンパク質は、p53腫瘍抑制因子のN末端トランス活性化ドメイン(TAD)を認識するE3ユビキチンリガーゼと、p53転写活性化のインヒビターとの両方として機能する。本明細書中で用いるMDM2なる語はヒトホモログを意味する。GenBankアクセッション番号228952;GI:228952を参照されたい。
【0089】
本明細書中で用いる「MDMX」または「MDM4」は、MDM2に対する有意な構造的類似性を示すタンパク質であるマウス・ダブル・マイニュートXまたは4を意味する。MDMXまたはMDM4は、MDMXまたはMDM4タンパク質のN末端領域に位置する結合ドメインを介してp53と相互作用する。本明細書中で用いるMDMXまたはMDM4なる語は、同じヒトホモログを意味する。GenBankアクセッション番号:88702791;GI:88702791を参照されたい。
【0090】
p53またはその変異体もしくは類似体に関して本明細書中で用いる「転写活性化活性」は、p53またはその変異体もしくは類似体がp53依存的プロモーターからの転写を活性化する能力を意味する。p53またはその変異体もしくは類似体の活性化能力は、p53依存的プロモーターに機能的に連結されたレポーター遺伝子の発現が検出され測定されることを可能にする転写アッセイにおいて測定されうる。
【0091】
大環状分子または大環状分子形成リンカーに関して本明細書中で用いる「メンバー」(「員」)は、大環状分子を形成するまたは形成しうる原子を意味し、置換基または側鎖の原子を含まない。類推により、シクロデカン、1,2-ジフルオロデカンおよび1,3-ジメチルシクロデカンは全て、10員環の大環状分子と見なされる。なぜなら、水素もしくはフルオロ置換基またはメチル側鎖は大環状分子の形成に関与しないからである。
【0092】
本明細書中で用いる「天然に存在するアミノ酸」または「天然アミノ酸」は、天然で合成されるペプチドにおいて一般的に見出される20種類のアミノ酸のいずれかを意味し、それらは1文字の略語A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、YおよびVによって示される。天然に存在するアミノ酸はD配置(D-アミノ酸)またはL配置(L-アミノ酸)を有しうる。
【0093】
本明細書中で用いる「天然に存在しないアミノ酸」または「非天然アミノ酸」は、天然で見出されないアミノ酸類似体を意味する。
【0094】
「非必須」アミノ酸残基は、ポリペプチドの必須の生物学的または生化学的活性(例えば、受容体結合または活性化)を消失させたり実質的に変化させたりすることなくポリペプチドの野生型配列から改変されうる残基である。「必須」アミノ酸残基は、ポリペプチドの野生型配列から改変されると、ポリペプチドの必須の生物学的または生化学的活性を消失させまたは実質的に変化させる残基である。
【0095】
本明細書中で用いる「ペプチド模倣大環状分子」または「架橋ポリペプチド」は、複数のペプチド結合によって連結された複数のアミノ酸残基と、少なくとも1つの大環状分子形成リンカー[これは、同じ分子内の第1の天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸残基(または類似体)と第2の天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸残基(または類似体)との間で大環状分子を形成する]とを含む化合物を意味する。ペプチド模倣大環状分子には、大環状分子形成リンカーが第1のα,α-二置換アミノ酸残基(または類似体)のα炭素を第2のα,α-二置換アミノ酸残基(または類似体)のα炭素に連結する実施形態が含まれる。ペプチド模倣大環状分子は、所望により、1以上のアミノ酸残基および/またはアミノ酸類似体残基間の1以上の非ペプチド結合を含んでいてもよく、そして所望により、大環状環(大環状分子)を形成するものに加えて、1以上の天然に存在しないアミノ酸残基またはアミノ酸類似体残基を含んでいてもよい。ペプチド模倣大環状分子の文脈で言及された場合の「対応する非架橋ポリペプチド」は、ステープルまたはステッチ架橋に関与するアミノ酸を除いて、ペプチド模倣大環状分子と同じアミノ酸配列のポリペプチドに関するものと理解される。
【0096】
本明細書中で用いる「ジアルキン」は、単結合によって分離された2つのアルキンを意味し、例えば、構造式
【化4】
【0097】
によって表される。
【0098】
特に示されていない限り、本明細書において言及される化合物および構造は、1以上の同位体濃縮原子の存在のみにおいて異なる化合物をも含むと意図される。例えば、水素が重水素またはトリチウムによって置換されている、あるいは炭素原子が13Cまたは14C濃縮炭素によって置換されている、あるいは炭素原子がケイ素によって置換されている本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。本発明の化合物は、そのような化合物を構成する1以上の原子における、非天然の比率の原子同位体を含有しうる。例えば、該化合物は、トリチウム(3H)、ヨウ素125(125I)または炭素14(14C)のような放射性同位体で放射能標識されうる。本発明の化合物の、全ての同位体変異は、放射性であるかどうかにかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。
【0099】
本明細書中で用いる「薬学的に許容される誘導体」は、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子の任意の薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、プロドラッグまたは他の誘導体であって、個体に投与されると、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子を(直接的または間接的に)生成しうるものを意味する。特に好ましい薬学的に許容される誘導体は、個体に投与された際に、(例えば、経口投与された本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子の血中への吸収を増強することによって)本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子のバイオアベイラビリティを増強するもの、または親種と比較して生物学的コンパートメント(例えば、脳またはリンパ系)への活性化合物の送達を増強するものである。幾つかの薬学的に許容される誘導体は、水溶性または経胃腸粘膜能動輸送を増強する化学基を含む。
【0100】
本明細書中で用いる「ポリペプチド」は、共有結合(例えば、アミド結合)によって連結された2以上の天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸を含む。本明細書に記載されているポリペプチドには、全長タンパク質(例えば、完全にプロセシングされたタンパク質)、およびより短いアミノ酸配列(例えば、天然に存在するタンパク質の断片または合成ポリペプチド断片)も含まれる。
【0101】
本明細書中で用いる「安定性」は、円二色性、NMRもしくは他の生物物理学的手段によって測定された場合の、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子による、溶液中の一定の二次構造の維持、またはインビトロもしくはインビボでのタンパク質分解に対する耐性を意味する。本発明において想定される二次構造の非限定的な例としては、αヘリックス、βターンおよびβプリーツシートが挙げられる。
【0102】
本明細書中で用いる「治療的有効量」または「治療的有効用量」は、治療される対象において所望の効果を達成するのに十分な特定の物質の量を意味する。例えば、これは、MDM2およびMDMXへのp53の結合を阻害することによってp53を活性化するのに必要な本発明のp53ペプチド模倣大環状分子の量でありうる。それはまた、癌を治療するために対象に一般的に投与される、癌を有する対象に投与される化学療法剤または放射線の量または線量をも意味しうる。
【0103】
本明細書中で用いる「治療する」または「治療」は、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子のいずれかを含有する組成物のような治療用物質を、該物質が治療活性または予防活性を有する1以上の疾患症状を有するまたは疾患を有する疑いのある対象または患者に内的または外的に投与することを意味する。典型的には、治療用物質は、いずれかの臨床的に測定可能な度合によるそのような症状の退縮の誘導またはそのような症状の進行の抑制により、治療される対象または集団における1以上の疾患症状を軽減するのに有効な量で投与される。いずれかの特定の疾患症状を軽減するのに有効な治療用物質の量は患者の病態、年齢および体重、ならびに対象において所望の応答を惹起する薬物の能力のような要因によって変動しうる。疾患症状が軽減したかどうかは、その症状の重症度または進行状態を評価するために医師または他の熟練した医療提供者によって典型的に用いられるいずれかの臨床的尺度によって評価されうる。この語は更に、障害に関連した症状の発生の遅延および/またはそのような障害の症状の重症度の低減を含む。この語は更に、既存の無制御の又は望ましくない症状の改善、追加的な症状の予防、およびそのような症状の根本原因の改善または予防を含む。したがって、この語は、障害、疾患もしくは症状を有する、またはそのような障害、疾患もしくは症状を発生する可能性を有するヒトまたは動物対象に、有益な結果がもたらされていることを示す。
【0104】
本明細書中で用いる、ヒトまたは獣医学個体に適用される「治療」は、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子での治療を要するヒトまたは動物個体に本発明のp53ペプチド模倣大環状分子を接触させることを含む治療的処置を意味し、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は治療活性または予防活性を有する。
【0105】
P53ペプチド模倣大環状分子
ペプチドに基づくインヒビターは細胞内タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)の標的化調節の大きな可能性を秘めている。なぜなら、それらは、多数の種々の二次構造および三次構造ならびに配列多様性を含む広範囲の化学的空間に接近可能だからである。現在のところ、ペプチド治療薬の開発を妨げている欠点には、低いコンホメーション安定性、タンパク質分解感受性および細胞透過性が含まれる。また、これらのインビトロペプチドインヒビターを、オンターゲット選択性および特異性を有する、細胞内活性でありインビボ活性である化合物に変換することは困難である。幾つかの現代のペプチド設計戦略は様々な角度からこれらの問題に対処している。ステープルと一般に称されるオレフィン炭化水素架橋のような最適に配置された化学的補強構造体による戦略的大環状化は、(i)コンホメーション自由度を制限して標的アフィニティーを改善すること、(ii)タンパク質分解耐性を改善すること、および(iii)細胞透過性を増強することによって、これらの問題に対処しうる。逆に、完全にD-アミノ酸から構築された分子はタンパク質分解切断に対して超耐性であるが、一般に、コンホメーション安定性および膜透過性を欠いている。本発明者らは、全てD配置であるαヘリックス・ステープル化ペプチド(以下、ペプチド大環状分子と称される)が、特定のステープルを使用することによって設計可能であり、ペプチド大環状分子のC末端への3~9個のアミノ酸ポリペプチド尾部の付加が薬理学的特性の改善を示すことを見出した。薬理学的特性におけるこれらの改善には、プロテアーゼ耐性、コンホメーション安定性、膜破壊の誘発の非存在下の細胞透過性、および低い細胞毒性または細胞毒性の非存在(例えば、p53ペプチド模倣大環状分子は、後記の「一般的方法」に開示されているアッセイを用いて測定されるカウンタースクリーン活性およびLDH放出で、細胞活性の低減を示した)が含まれる。更に、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子はマウス・ダブル・マイニュート2(MDM2;別名E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ)およびMDMX(別名MDM4)に結合し、MDM2およびMDMXに結合することによってp53へのMDM2およびMDMXの結合に拮抗することによって、細胞内でp53を活性化する。
【0106】
本発明者らは、直鎖状DPMI-δペプチド(Liuら[41]および米国特許公開第20120328692号;配列番号11に開示されている)から誘導され、WO2020257153に開示されているペプチドのアミノ酸位置6および10に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間のオレフィン・ステープル(6-10オレフィン・ステープル)を含む全てD配置であるp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に、3~9個のアミノ酸を含むポリペプチド尾部を付加して、改善された薬理学的特性を有するp53ペプチド模倣大環状分子を得ることによって、本発明者らの知見を本発明において具体化した。位置9のアミノ酸をグルタミンで、そして位置12のアミノ酸をセリンで置換することによって、更なる改善が達成されうる。
【0107】
本発明者らはまた、ペプチドのアミノ酸位置5と12との間のオレフィン・ステープル(5-12オレフィン・ステープル)を含むDPMI-δペプチドの薬理学的特性の改善が、5-12オレフィン・ステープルを5-12ジアルキン・ステープルで置換すること、そして所望により、3~9アミノ酸のポリペプチド尾部をC末端に付加することによって達成されうることも見出した。位置9のアミノ酸をグルタミンで置換することによって、更なる改善が達成されうる。
【0108】
本発明は、(a)i,i+4オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部;(b)i,i+7オレフィン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部;または(c)i,i+7ジアルキン・ステープル、およびp53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供し、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0109】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はi,i+7アルキン・ステープルを含み、C末端アミノ酸においてポリペプチド尾部のN末端に共有結合している。
【0110】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、12個のアミノ酸と、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置6および10に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+4オレフィン・ステープルと、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合したポリペプチド尾部とを含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部の各アミノ酸はD配置を有する。
【0111】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置6および10のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸を含む。
【0112】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、アミノ酸位置3のD-6-フルオロ-トリプトファンおよびアミノ酸位置7のD-p-CF3-フェニルアラニンを更に含む。
【0113】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、アミノ酸位置1にトレオニンを、アミノ酸位置2にアラニンを、アミノ酸位置4にチロシンを、アミノ酸位置5にアラニンを、アミノ酸位置8にグルタミン酸を、アミノ酸位置9にリジンまたはグルタミンを、アミノ酸位置11にロイシンを、およびアミノ酸位置12にアルギニンまたはセリンを更に含む。
【0114】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はアミノ酸位置9にグルタミンを、およびアミノ酸位置12にセリンを含む。
【0115】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、12個のアミノ酸と、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5および12に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+7ジアルキン・ステープルと、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部とを含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有する。
【0116】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5のα,α-二置換アミノ酸は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸を含み、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸を含む。
【0117】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はp53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置3のD-6-フルオロ-トリプトファンおよびp53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置7のD-p-CF3-フェニルアラニンを更に含む。
【0118】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、アミノ酸位置1にトレオニンを、アミノ酸位置2にアラニンを、アミノ酸位置4にチロシンを、アミノ酸位置6にアスパラギンを、アミノ酸位置8にグルタミン酸を、アミノ酸位置9にリジンまたはグルタミンを、アミノ酸位置10にロイシンを、およびアミノ酸位置11にロイシンを更に含む。
【0119】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はアミノ酸位置9にグルタミンを含む。
【0120】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、12個のアミノ酸と、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5および12に位置する2つのα,α-二置換アミノ酸のα炭素間に形成されたi,i+7オレフィン・ステープルと、p53ペプチド模倣大環状分子のC末端アミノ酸に自身のN末端において共有結合した所望により存在していてもよいポリペプチド尾部とを含み、ここで、p53ペプチド模倣大環状分子は、全てD配置であるアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有する。
【0121】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置5のα,α-二置換アミノ酸は(S)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸を含み、p53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置12のα,α-二置換アミノ酸は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸を含む。
【0122】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はp53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置3のD-6-フルオロ-トリプトファンおよびp53ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸位置7のD-p-CF3-フェニルアラニンを更に含む。
【0123】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はアミノ酸位置1にトレオニンを、アミノ酸位置2にアラニンを、アミノ酸位置4にチロシンを、アミノ酸位置6にアスパラギンを、アミノ酸位置8にグルタミン酸を、アミノ酸位置9にリジンまたはグルタミンを、アミノ酸位置10にロイシンを、およびアミノ酸位置11にロイシンを更に含む。
【0124】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子はアミノ酸位置9にグルタミンを含む。
【0125】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、ポリペプチド尾部は3~9個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0126】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、ポリペプチド尾部は6個のアミノ酸を含み、ポリペプチド尾部の各アミノ酸は、独立して、D配置またはL配置を有し、あるいは特定の実施形態においては、ポリペプチド尾部における各アミノ酸はD配置を有する。
【0127】
開示されているp53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、ポリペプチド尾部は、配列番号20、配列番号21、配列番号22または配列番号23に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0128】
【0129】
[ここで、X3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO2-Trpである;X6は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である;X7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO2-PheまたはD-p-CF3-Pheである;X10は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である;X11はD-Leuである;X12はD-ArgまたはD-Serである;X13はD-Ala、D-GluまたはD-Gla(γ-カルボキシルグルタミン酸)である;X14はD-Alaである;X15はD-Ala、D-PheまたはD-Gluである;X16はD-Alaである、または存在しない;X17はD-Ala、D-α-メチル-Gluである、または存在しない;X18はD-Alaである、または存在しない;X19はD-Alaである、または存在しない;X20はD-Alaである、または存在しない;X21はD-Alaである、または存在しない;位置1のThrのN末端アミノ基は、式RCO-を有するアシル基に結合している;Rは、式CnH2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;およびステープルは、X6とX10との間の閉環メタセシスによって得られるオレフィンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0130】
特定の実施形態においては、アミノ酸1~12は全てDアミノ酸であり、アミノ酸13~21は、それぞれ独立して、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸であり、またはそれぞれD-アミノ酸である。
【0131】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X12はD-Serである。p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X3はD-6-フルオロ-Trpである;X7はD-p-CF3-Pheである;またはX3はD-6-フルオロ-Trpであり、X7はD-p-CF3-Pheである。もう1つの実施形態においては、アシル基はアセチル基である。
【0132】
【0133】
[ここで、X3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO2-Trpである;X5は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸である;X7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO2-PheまたはD-p-CF3-Pheである;X9はD-LysまたはD-Glnである;X11はD-Leuである;X12は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸である;X13はD-Ala、D-Glu、D-Gla(γ-カルボキシルグルタミン酸)である、または存在しない;X14はD-Alaである、または存在しない;X15はD-Ala、D-PheもしくはD-Gluである、または存在しない;X16はD-Alaである、または存在しない;X17はD-Ala、D-α-メチル-Gluである、または存在しない;X18はD-Alaである、または存在しない;X19はD-Alaである、または存在しない;X20はD-Alaである、または存在しない;X21はD-Alaである、または存在しない;位置1のThrのN末端アミノ基は、式RCO-を有するアシル基に結合している;Rは、式CnH2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;およびステープルは、X5とX12との間のアルキンクロスカップリングによって得られるジアルキンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0134】
特定の実施形態においては、アミノ酸1~12は全てD-アミノ酸であり、アミノ酸13~21は、それぞれ独立して、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸であり、またはそれぞれD-アミノ酸である。
【0135】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X9はD-Glnである。p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X3はD-6-フルオロ-Trpである;X7はD-p-CF3-Pheである;またはX3はD-6-フルオロ-Trpであり、X7はD-p-CF3-Pheである。もう1つの実施形態においては、アシル基はアセチル基である。
【0136】
【0137】
[ここで、X3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO2-Trpである;X5は(S)-2-アミノ-2-メチルデカ-9-エン酸である;X7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO2-PheまたはD-p-CF3-Pheである;X9はD-LysまたはD-Glnである;X11はD-Leuである;X12は(R)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-エン酸である;X13はD-Ala、D-Glu、D-Gla(γ-カルボキシルグルタミン酸)である;X14はD-Alaである;X15はD-Ala、D-PheまたはD-Gluである;X16はD-Alaである;X17はD-AlaまたはD-α-メチル-Gluである;X18はD-Alaである;X19はD-Alaである、または存在しない;X20はD-Alaである、または存在しない;X21はD-Alaである、または存在しない;位置1のThrのN末端アミノ基は、式RCO-を有するアシル基に結合している;Rは、式CnH2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;およびステープルはX5とX12との間の閉環メタセシスによって得られるオレフィンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0138】
特定の実施形態においては、アミノ酸1~12は全てD-アミノ酸であり、アミノ酸13~21は、それぞれ独立して、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸であり、またはそれぞれD-アミノ酸である。
【0139】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X9はD-Glnである。p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X3はD-6-フルオロ-Trpである;X7はD-p-CF3-Pheである;またはX3はD-6-フルオロ-Trpであり、X7はD-p-CF3-Pheである。もう1つの実施形態においては、アシル基はアセチル基である。
【0140】
【0141】
[ここで、X3はD-Trp、D-6-フルオロ-Trp、D-6-クロロ-Trp、D-6-ブロモ-Trp、D-6-ヨード-Trp、D-6-メチル-Trp、D-6-シアノ-Trp、D-6-ヒドロキシ-Trp、D-6-NO2-Trp、D-7-フルオロ-Trp、D-7-クロロ-Trp、D-7-ブロモ-Trp、D-7-ヨード-Trp、D-7-メチル-Trp、D-7-シアノ-Trp、D-7-ヒドロキシ-Trp、D-7-NO2-Trp、D-6,7-フルオロ-Trp、D-6,7-クロロ-Trp、D-6,7-ブロモ-Trp、D-6,7-ヨード-Trp、D-6,7-メチル-Trp、D-6,7-シアノ-Trp、D-6,7-ヒドロキシ-TrpまたはD-6,7-NO2-Trpである;X5は(S)-2-アミノ-2-メチルヘプタ-6-イン酸である;X7はD-p-フルオロ-Phe、D-p-クロロ-Phe、D-p-ブロモ-Phe、D-p-ヨード-Phe、D-p-メチル-Phe、D-p-シアノ-Phe、D-p-ヒドロキシ-Phe、D-p-NO2-PheまたはD-p-CF3-Pheである;X9はD-LysまたはD-Glnである;X11はD-Leuである;X12は(R)-2-アミノ-2-メチルオクタ-7-イン酸である;位置1のThrのN末端アミノ基は、式RCO-を有するアシル基に結合している;Rは、式CnH2n+1を有するアルカンである;nは1~10の整数である;C末端アミノ酸は、所望により、アミノ基を含んでいてもよい;アミノ酸1~12はD-アミノ酸である;およびステープルは、X5とX12との間のアルキンクロスカップリングによって得られるジアルキンである]
を含むp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0142】
p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X9はD-Glnである。p53ペプチド模倣大環状分子のもう1つの実施形態においては、X3はD-6-フルオロ-Trpである;X7はD-p-CF3-Pheである;またはX3はD-6-フルオロ-Trpであり、X7はD-p-CF3-Pheである。もう1つの実施形態においては、アシル基はアセチル基である。
【0143】
もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0144】
【0145】
を有するp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0146】
【0147】
を有するp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0148】
【0149】
を有するp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0150】
【0151】
を有するp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0152】
【0153】
を有するp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0154】
【0155】
を有するp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0156】
【0157】
を有するp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0158】
【0159】
を有するp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0160】
【0161】
を有するp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0162】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子と薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0163】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物を対象に投与することを含む、癌の治療を要する対象における癌の治療方法を提供する。本発明は更に、癌の治療用医薬の製造のための、本明細書に開示されているペプチド模倣大環状分子の使用を提供する。本発明は更に、癌の治療のための、本明細書に開示されているペプチド模倣大環状分子を提供する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0164】
もう1つの実施形態においては、癌は、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎臓癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、膵臓癌、気管支癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫および血液組織の癌からなる群から選択される。
【0165】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物を対象に投与することを含む、対象におけるp53および/またはMDM2および/またはMDMXの活性を調節(モジュレーション)する方法を提供する。本発明は更に、該活性を調節する医薬の製造のための、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子の使用を提供する。本発明は更に、該活性の調節のための、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0166】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物を対象に投与することを含む、対象におけるp53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗させる方法を提供する。本発明は更に、p53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗させる医薬の製造のための、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子の使用を提供する。本発明は更に、p53とMDM2との間および/またはp53とMDMXとの間の相互作用に拮抗させるための、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子を提供する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0167】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物の治療的有効量と化学療法剤または放射線の治療的有効量とを対象に投与することを含む、癌を治療するための併用療法(組合せ療法)を提供する。もう1つの実施形態においては、化学療法剤または放射線を対象に投与し、次いでp53ペプチド模倣大環状分子を投与する;p53ペプチド模倣大環状分子を対象に投与し、次いで化学療法剤または放射線を投与する;あるいは化学療法剤または放射線をp53ペプチド模倣大環状分子の投与と同時に対象に投与する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0168】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物の治療的有効量と化学療法剤または放射線の治療用量とを含む、癌を治療するための併用療法を提供する。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0169】
特定の実施形態においては、化学療法剤は、アクチノマイシン、全トランス-レチノイン酸、アリトレチノイン、アザシチジン、アザチオプリン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルモフール、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、イキサベピロン、イリノテカン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニトロソウレア、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ロミデプシン、テガフール、テモゾロミド(経口ダカルバジン)、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、ウチデロン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンおよびボリノスタットからなる群から選択される。
【0170】
本発明は更に、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物の治療的有効量とチェックポイントインヒビターの治療的有効量とを、癌の治療を要する対象に投与することを含む、癌を治療するための併用療法を提供する。特定の実施形態においては、チェックポイントインヒビターは抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である。もう1つの実施形態においては、併用療法は更に、化学療法剤または放射線の治療的有効量を対象に投与することを含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0171】
本発明は更に、癌を有する対象に、野生型p53または転写活性化活性を有するp53変異体もしくは類似体をコードする核酸分子を含むベクターを投与し、次いで、本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子または該p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物の治療的有効量を1回以上投与することを含む、癌の治療を提供する。特定の実施形態においては、ベクターはプラスミド、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスである。特定の実施形態においては、対象にベクターを投与する前または対象にベクターを投与した後に、対象に化学療法または放射線治療を施す。更なる実施形態においては、療法は、チェックポイントインヒビターを対象に投与することを更に含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9または配列番号10に記載されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、配列番号4、配列番号6、配列番号7または配列番号9に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0172】
医薬組成物
本発明はまた、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子を含む医薬組成物を提供する。p53ペプチド模倣大環状分子は、任意の適切な医薬担体または賦形剤と組合せて使用されうる。そのような医薬組成物は、1以上のp53ペプチド模倣大環状分子の治療的有効量と、薬学的に許容される賦形剤および/または担体とを含む。具体的な製剤(処方)は投与方式に適合する。特定の態様においては、薬学的に許容される担体は水または緩衝化溶液でありうる。
【0173】
医薬組成物中に含まれる賦形剤は、例えば薬物の性質および投与方式に応じて、種々の目的を有する。一般的に使用される賦形剤の例には、以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、注射用水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組合せ、安定剤、可溶化剤および界面活性剤、バッファーおよび保存剤、等張化剤、増量剤、滑沢剤(例えば、タルクまたはシリカ、および脂肪、例えば植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸)、乳化剤、懸濁剤または増粘剤、不活性希釈剤、充填剤(例えば、セルロース、第二リン酸カルシウム、植物性油脂、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム)、崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、または修飾セルロース、例えば微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、糖、例えばスクロースおよびラクトース、または糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトールもしくはマルチトール、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコール)、湿潤剤、抗菌剤、キレート剤、コーティング剤(例えば、セルロースフィルムコーティング、合成ポリマー、シェラック、トウモロコシタンパク質ゼインまたは他の多糖、およびゼラチン)、保存剤(例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニルおよびセレン、システイン、メチオニン、クエン酸およびクエン酸ナトリウム、ならびに合成保存剤、例えばメチルパラベンおよびプロピルパラベン)、甘味剤、芳香剤、香味剤、着色剤、投与補助剤およびそれらの組合せ。
【0174】
担体は、医薬組成物の場合には、対象への有効成分の送達を改善および/または延長する化合物および物質である。担体は、制御放出(コントロール・リリース)技術を用いて、薬物のインビボ活性を延長するように、または対象における薬物の放出を遅延させるように働きうる。担体はまた、対象における薬物代謝を低減し、および/または薬物の毒性を低減しうる。担体は、対象における特定の細胞または組織に薬物の送達を標的化するためにも使用されうる。一般的な担体(親水性担体と疎水性担体との両方)には、脂肪エマルジョン、脂質、PEG化(ペグ化)リン脂質、PEG化リポソーム、環状RGDペプチドc(RGDDYK)でPEGスペーサーを介してコーティングされたPEG化リポソーム、リポソームおよびリポスフィア、マイクロスフィア(生分解性ポリマーまたはアルブミンから構成されるものを含む)、ポリマーマトリックス、生体適合性ポリマー、タンパク質-DNA複合体、タンパク質コンジュゲート、赤血球、小胞、ナノ粒子、および炭化水素ステープル化用の側鎖が含まれる。前記担体は、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子の細胞膜透過性を増強するためにも使用されうる。担体は、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用に加えて、他の用途、例えば、インビトロ(例えば、培養細胞への送達)および/またはインビボでの研究用途のための組成物においても使用されうる。
【0175】
経口投与に適した医薬組成物は、カプセル剤もしくは錠剤のような個別の単位として;散剤もしくは顆粒剤として;溶液、シロップ剤もしくは懸濁剤(水性または非水性の液体中)として;または可食性泡状物もしくはホイップとして;またはエマルジョン(乳剤)として提供されうる。錠剤または硬ゼラチンカプセル剤のための適切な賦形剤には、ラクトース、トウモロコシデンプンまたはその誘導体、ステアリン酸またはその塩が含まれる。軟ゼラチンカプセル剤で使用される適切な賦形剤には、例えば植物油、ワックス、脂肪、半固体、または液体ポリオールなどが含まれる。溶液およびシロップ剤の製造の場合、使用されうる賦形剤には、例えば、水、ポリオールおよび糖が含まれる。懸濁剤の製造の場合、水中油型または油中水型懸濁剤を得るために、油、例えば植物油が使用されうる。特定の状況においては、遅延放出製剤が有利でありうる。遅延または制御放出様態でp53ペプチド模倣大環状分子を送達しうる組成物も製造されうる。長期の胃内滞留は、胃に存在する酵素による分解の問題を引き起こし、したがって、活性物質が胃腸管のより下部で放出される腸溶コーティング・カプセル剤も当技術分野における標準的な技術によって製造されうる。
【0176】
経皮投与に適した医薬組成物は、長期間にわたって被投与者の表皮と密に接触した状態が維持されることを意図した個別のパッチとして提供されうる。例えば、有効成分は、Pharmaceutical Research,3(6):318(1986)に一般的に記載されているイオントフォレシスによってパッチから送達されうる。
【0177】
局所投与に適した医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、溶液、ペースト剤、ゲル剤、噴霧剤、エアロゾル剤または油剤として製剤化されうる。軟膏剤に製剤化する場合、有効成分はパラフィン系または水混和性の軟膏基剤と共に使用されうる。あるいは、有効成分は、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤を使用して、クリーム剤に製剤化されうる。眼への局所投与に適した医薬組成物には、有効成分が適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁されている点眼剤が含まれる。口内への局所投与に適した医薬組成物には、ロゼンジ、トローチおよび洗口液が含まれる。
【0178】
直腸投与に適した医薬組成物は坐剤または浣腸剤として提供されうる。
【0179】
担体が固体である鼻腔内投与に適した医薬組成物には、例えば20~500ミクロンの粒子サイズを有する粗い散剤が含まれ、これは、鼻吸入による方法、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔経由で急速に吸入することによって投与される。鼻腔噴霧剤または点鼻剤としての投与のための、担体が液体である適切な組成物には、有効成分の水溶液または油溶液が含まれる。
【0180】
吸入による投与に適した医薬組成物には、種々のタイプの定量加圧エアロゾル、ネブライザーまたは吸入器によって生成されうる微粒子のダストまたはミストが含まれる。
【0181】
膣投与に適した医薬組成物はペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム(泡)または噴霧製剤として提供されうる。
【0182】
非経口投与に適した医薬組成物には、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、および製剤を対象被投与者の血液と実質的に等張にする溶質を含有しうる水性および非水性の無菌注射溶液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含みうる水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。注射可能な溶液に使用されうる賦形剤には、例えば、注射用水、アルコール、ポリオール、グリセリンおよび植物油が含まれる。組成物は、単位用量または複数用量の容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアルにおいて提供されることが可能であり、使用直前に無菌液体担体、例えば注射用の水または生理食塩水の添加のみを要するフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されうる。即時調製注射溶液および懸濁液は無菌の散剤、顆粒剤および錠剤から調製されうる。医薬組成物は保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、塩(本発明の物質自体が、薬学的に許容される塩の形態で提供されうる)、バッファー、コーティング剤または抗酸化剤を含有しうる。また、それらは、本発明の物質に加えて、治療において活性な物質を含有しうる。
【0183】
医薬組成物は、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮下、鼻腔内または皮内経路による方法のような簡便な方法で投与されうる。医薬組成物は、特定の適応症の治療および/または予防に有効な量で投与される。一般に、医薬組成物は少なくとも約0.1mg/kg体重~約100mg/kg体重の量で投与される。ほとんどの場合、投与経路、症状などを考慮して、投与量は1日当たり約10mg/kg体重~約1mg/kg体重である。
【0184】
本発明のp53ペプチド模倣大環状分子の投与量は、癌の部位、発生源、種類、広がりおよび重症度、治療される個体の年齢および状態などに応じて、広範囲にわたって変動しうる。医師が、使用されるべき適切な投与量を最終的に決定する。
【0185】
p53ペプチド模倣大環状分子は、本発明に従い、インビボでの該アンタゴニストの発現、すなわち遺伝子治療によっても使用されうる。遺伝子治療の状況における該ペプチドまたは組成物の使用も、本発明の目的においては、該ペプチドの「投与」の一種であると見なされる。
【0186】
したがって、本発明はまた、本発明の1以上のp53ペプチド模倣大環状分子の薬学的に有効な量、または該アンタゴニストの1以上を含む医薬組成物を、治療を要する対象に投与することを含む、癌を有する対象の治療方法に関する。「癌」なる語は、広く解釈されると意図され、それは、異常な細胞増殖および/または細胞分裂の全態様を含む。例には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、および皮膚、乳房、前立腺、膀胱、膣、子宮頸部、子宮、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、肺、気管、気管支、結腸、小腸、胃、食道、胆嚢の癌;肉腫、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性血管内皮腫、悪性神経鞘腫、骨肉腫、軟部肉腫、および骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管および造血組織の癌;リンパ腫および白血病、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、成熟B細胞腫瘍、例えば慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ腫および形質細胞腫瘍、成熟T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞腫瘍、例えばT細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、侵襲性NK細胞白血病および成人T細胞白血病/リンパ腫、ホジキンリンパ腫、および免疫不全関連リンパ増殖性障害;生殖細胞腫瘍、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、精巣癌および卵巣癌;芽腫、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、肝芽腫、髄芽腫、腎芽腫、神経芽腫、膵芽腫、胸膜肺芽腫および網膜芽腫。この用語は良性腫瘍をも含む。
【0187】
本発明の実施形態のそれぞれにおいては、治療を受ける個体または対象はヒトまたは非ヒト動物、例えば非ヒト霊長類、鳥類、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、伴侶動物、例えばイヌ、ネコもしくはげっ歯類、または他の哺乳動物である。幾つかの実施形態において、対象はヒトである。
【0188】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分の1以上が充填された1以上の容器、例えば、本発明のp53ペプチド模倣大環状分子と薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物が充填された容器を含むキットを提供する。そのような容器には、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知が添付されうる。この通知は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売の、該機関による承認を示す。また、医薬組成物は他の治療用化合物と組合せて使用されうる。
【0189】
化学療法を含む併用療法
本発明のp53ペプチド模倣大環状分子は、化学療法と組合せて、癌を有する個体に投与されうる。個体は、p53ペプチド模倣大環状分子が個体に投与されるのと同時に、化学療法を受けるうる。個体は、個体がp53ペプチド模倣大環状分子での一連の治療を完了した後、化学療法を受けうる。個体は、個体が化学療法剤での一連の治療を完了した後、p53ペプチド模倣大環状分子の投与を受けうる。本発明の併用療法は、化学療法を受けている、または化学療法を完了した、疾患の進行または再発を伴う再発性または転移性癌を有する個体に投与されうる。
【0190】
化学療法は、以下の群から選択される化学療法剤を含む:
(i)アルキル化剤、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、二官能性アルキル化剤、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシルおよびメルファラン;
(ii)単一官能性アルキル化剤、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、ダカルバジン、ニトロソ尿素およびテモゾロミド(経口ダカルバジン);
(iii)アントラサイクリン、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロンおよびバルルビシン;
(iv)細胞骨格破壊剤(タキサン)、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサンおよびタキソテレ;
(v)エポチロン、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、イキサベピロンおよびウチデロン;
(vi)ヒストン脱アセチル化酵素インヒビター、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、ボリノスタットおよびロミデプシン;
(vii)トポイソメラーゼIのインヒビター、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、イリノテカンおよびトポテカン;
(viii)トポイソメラーゼIIのインヒビター、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、エトポシド、テニポシドおよびタフルポシド;
(ix)キナーゼインヒビター、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブおよびビスモデギブ;
(x)ヌクレオチド類似体および前駆体類似体、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、アザシチジン、アザチオプリン、フルオロピリミジン(例えば、カペシタビン、カルモフール、ドキシフルリジン、フルオロウラシルおよびテガフール)、シタラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキサートおよびチオグアニン(旧名:チオグアニン);
(xi)ペプチド抗生物質、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、ブレオマイシンおよびアクチノマイシン;白金に基づく物質、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチン;
(xii)レチノイド、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、トレチノイン、アリトレチノインおよびベキサロテン;ならびに
(xiii)ビンカアルカロイドおよび誘導体、例えば(以下のものに限定されるわけではない)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビン。
【0191】
化学療法のための化学療法剤の用量の選択は、該物質の血清または組織代謝回転速度、症状の程度、該物質の免疫原性、および治療される個体における標的細胞、組織または器官の接近可能性を含む幾つかの要因に左右される。追加的な治療用物質の用量は、許容レベルの副作用をもたらす量であるべきである。したがって、各追加的治療用物質の用量および投与頻度は、部分的には、個々の治療用物質、治療される癌の重症度、および患者の特性に左右される。抗体、サイトカインおよび小分子の適切な用量を選択する際の指針が利用可能である。例えば、以下のものを参照されたい:Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(編)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(編)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baertら(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgromら(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitzら(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghoshら(2003)New Engl.J.Med.348:24-32;Lipskyら(2000)New Engl.J.Med.343:1594-1602;Physicians’Desk Reference 2003(Physicians’Desk Reference,57th Ed);Medical Economics Company;ISBN:1563634457;第57版(2002年11月)。適切な投与レジメンの決定は、例えば、治療に影響を及ぼすことが当技術分野で公知である若しくは疑われている又は治療に影響を及ぼすと予想されるパラメータまたは因子を用いて、臨床家によりなされることが可能であり、例えば、個体の臨床履歴(例えば、過去の治療)、治療される癌のタイプおよび病期、ならびに併用療法における治療用物質の1以上に対する応答のバイオマーカーに左右される。
【0192】
本発明は、白金含有化学療法、ペメトレキセドおよび白金化学療法またはカルボプラチンおよびパクリタキセルとナブ-パクリタキセルとのいずれかを含む化学療法工程を含む併用療法の実施形態を想定している。特定の実施形態においては、化学療法工程を伴う併用療法は、少なくともNSCLCおよびHNSCCを治療するために用いられうる。
【0193】
併用療法は、任意の増殖性疾患の治療、特に癌の治療に用いられうる。特定の実施形態においては、本発明の併用療法は、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、腎臓癌、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌または唾液腺癌を治療するために用いられうる。
【0194】
もう1つの実施形態においては、併用療法は、膵臓癌、気管支癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫または血液組織の癌を治療するために用いられうる。
【0195】
特定の実施形態においては、併用療法は、黒色腫(転移性または切除不能)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌、MSIHC、胃癌、子宮頸癌、肝細胞癌(HCC)、メルケル細胞癌(MCC)、腎細胞癌(進行癌を含む)および皮膚扁平上皮癌から選択される1以上の癌を治療するために用いられうる。
【0196】
追加的な併用療法
本明細書に開示されているp53ペプチド模倣大環状分子は、他の療法と組合せて使用されうる。例えば、併用療法は、1以上の追加的な治療剤、例えばホルモン治療、ワクチンおよび/または他の免疫療法と共製剤化(共処方)および/または共投与される、p53ペプチド模倣大環状分子を含む組成物を含みうる。他の実施形態においては、p53ペプチド模倣大環状分子は、手術、放射線治療、凍結手術および/または温熱療法を含む他の治療方式と組合せて投与される。そのような併用療法は、投与される治療用物質の、より低い投与量を有利に利用して、種々の単独療法に伴う生じうる毒性または合併症を回避しうる。
【0197】
「と組合せて」は、療法または治療用物質が同時に投与されなければならないこと、および/または一緒に送達(運搬)されるために製剤化(処方)されなければならないことを意味するものではないが、これらの送達方法は、本明細書に記載されている範囲に含まれる。p53ペプチド模倣大環状分子は、1以上の他の追加的な療法または治療用物質と同時に、またはその前に、またはその後で投与されうる。p53ペプチド模倣大環状分子およびその他の物質または治療プロトコルは任意の順序で投与されうる。一般に、各物質は、その物質に関して決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。更に、この組合せで使用される追加的な治療用物質は単一組成物において一緒に投与されうる、あるいは異なる組成物において別々に投与されうると理解されるであろう。一般に、組合せて使用される追加的な治療用物質は、それらが個別に使用されるレベルを超えないレベルで使用されると予想される。幾つかの実施形態においては、組合せて使用されるレベルは、個別に使用されるレベルよりも低くなる。
【0198】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されているp53ペプチド模倣大環状分子は、プログラム死受容体1(PD-1)またはそのリガンドPD-L1およびPD-L2の、1以上のチェックポイントインヒビターまたはアンタゴニストと組合せて投与される。該インヒビターまたはアンタゴニストは抗体、抗原結合性フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質またはオリゴペプチドでありうる。幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(OPDIVO,Bristol Myers Squibb,New York,New York)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA,Merck Sharp & Dohme Corp,Kenilworth,NJ USA)、セチプリマブ(Regeneron,Tarrytown,NY)またはピジリズマブ(CT-011)から選択される。幾つかの実施形態においては、PD-1インヒビターは、イムノアドヘシン[例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合性部分を含むイムノアドヘシン]である。幾つかの実施形態においては、PD-1インヒビターはAMP-224である。幾つかの実施形態においては、PD-L1インヒビターは抗PD-L1抗体、例えばデュルバルマブ(IMFINZI,Astrazeneca,Wilmingon,DE)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ,Roche,Zurich,CH)またはアベルマブ(BAVENCIO,EMD Serono,Billerica,MA)である。幾つかの実施形態においては、抗PD-L1結合性アンタゴニストは、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718CまたはMDX-1105から選択される。
【0199】
以下の実施例は、本発明の更なる理解を促すことを意図したものである。
【0200】
一般的な方法
ペプチド合成
全てのペプチドはCPC Scientificから入手した。ペプチドの純度および同一性は、分析HPLCおよび質量分析によって確認した。最終的なペプチドの全ては90%以上の純度を有する。全てのペプチドを、10mMのストック溶液として、原液(ニート)のジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、後続実験のためにそれを希釈する。
【0201】
ペプチドを、Rink Amide 4-メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂およびFmoc保護アミノ酸を使用して合成し、ここで、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド/ヒドロキシベンゾトリゾール(DIC/HOBt)活性化剤を使用してカップリングを順次行った。最初のアミノ酸において、そしてまた、ステープル化位置において、二重カップリング反応を行った。これらの後者の位置においては、カップリング効率を改善するために、活性化試薬をN,N-ジイソプロピルエチルアミン/ヘキサフルオロホスファート・アザベンゾトリアゾール・テトラメチル・ウロニウム(DIEA/HATU)に切り替えた。閉環メタセシス反応を、最初に樹脂をDCM(ジクロロメタン)で3回洗浄し、次いで第1世代のグラブス(Grubbs)触媒(DCM中の20mol%)を加え、2時間反応させることによって行った。グラブス触媒を使用する全ての工程は暗所で行った。完全な反応が保証されるように、RCM(閉環メタセシス)反応を繰り返した。RCMが完了した後、十分な収量が保証されるように試験切断を行った。ペプチドを切断し、次いで逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によってシス-トランス異性体の混合物として精製した。グレイザー(Glaser)アルキンクロスカップリング反応を以下のとおりに樹脂上で行った。最初に樹脂をDCMで3回洗浄し、次いでテトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、Pd(PPh3)2Cl2を加え、次いでCuIを加え、超音波処理を行い、次いで30℃で16時間加熱した。混合物を濾過し、ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄した。
【0202】
MDM2タンパク質の製造
ペプチド結合アッセイで使用するために、ヒトMDM2 1-125配列をpNIC-GSTベクター内にクローニングした。TEV(タバコエッチ病ウイルス)切断部位をENLYFQS(配列番号13)からENLYFQG(配列番号14)へと変化させて、以下の配列を有する融合タンパク質を得た。
【0203】
【0204】
対応するプラスミドをBL21(DE3)ロゼッタ(Rosetta)T1R大腸菌(Escherichia coli)細胞内に形質転換し、カナマイシン選択下で増殖させた。適切な抗生物質および100μLの消泡剤204(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)で補足された750mLのテリフィック・ブロス(Terrific Broth)のボトルに、一晩培養した20mLの種培養物を接種した。濾過空気を培養物に吹き込むことで通気および撹拌を行いながら、培養物をLEX系(Harbinger Biotech,Toronto,Canada)において37℃でインキュベートした。培養物のOD600が2に達したら、LEX系の温度を18℃に低下させ、60分後に0.5mM IPTGで培養物を誘導した。タンパク質発現を一晩継続した。細胞を4000×g、15℃で10分間の遠心分離によって回収した。上清画分を捨て、細胞ペレットを細胞溶解バッファー(細胞ペレット1グラム当たり1.5mL)に再懸濁させた。細胞懸濁液を精製実施前に-80℃で保存した。
【0205】
再懸濁細胞ペレット懸濁液を解凍し、氷上で70%振幅、3秒のオン/オフで3分間、超音波処理した(Sonics Vibra-Cell,Newtown,CO,USA)。ライセートを47,000×g、4℃で25分間の遠心分離によって清澄化した。上清画分を1.2μmのシリンジフィルターで濾過し、AKTA Xpress系(GE Healthcare,Fairfield,CO,USA)上にローディングした。精製方法を以下に簡潔に説明する。
【0206】
ライセートを、10カラム容量の洗浄1バッファーで平衡化された1mLのNi-NTA Superflowカラム(Qiagen,Valencia,CA,USA)上にローディングした。全体的なバッファー条件は以下のとおりであった。固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)洗浄1バッファー - 20mM HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、500mM NaCl、10mM イミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)、pH7.5;IMAC洗浄2バッファー - 20mM HEPES、500mM NaCl、25mM イミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5;IMAC溶出バッファー - 20mM HEPES、500mM NaCl、500mM イミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5。空気センサーによって空気が検出されるまで、サンプルを0.8mL/分でローディングした。次いでカラムを20カラム容量(CV)の洗浄1バッファーで洗浄し、次いで20CVの洗浄2バッファーで洗浄した。タンパク質を5CVの溶出バッファーで溶出した。溶出タンパク質を系上のサンプルループ内に収集し、保存し、次いでゲル濾過(GF)カラム内に注入した。溶出ピークを2mLの画分中に収集し、SDS-PAGEゲル上で分析した。精製全体を4℃で行った。関連ピークをプールし、TCEPを2mMの総濃度まで添加した。タンパク質サンプルをVivaspin 20(登録商標)フィルター濃縮器(VivaScience,Littleton,MA,USA)で15℃で約15mg/mLに濃縮した(18kDa未満 - 5KMWCO、19~49kDa - 10KMWCO、50kDa超 - 30KMWCO)。Nanodrop ND-1000(登録商標)(Thermo Fisher,Waltham,MA,USA)で280nmの吸光度を測定することによって、最終タンパク質濃度を評価した。最終タンパク質純度をSDS-PAGEゲル上で評価した。次いで最終タンパク質バッチをより小さな画分にアリコート化し、液体窒素中で凍結し、-80℃で保存した。
【0207】
X線結晶構造解析のために、pGEX-6P-1 GST発現ベクター(GE Healthcare)を使用して、MDM2(6-125)をGST融合タンパク質としてクローニングした。次いでGST融合MDM2(6-125)構築物を大腸菌BL21(DE3)pLysS(Thermo Fisher,Waltham,MA,USA)コンピテント細胞内に形質転換した。細胞をルリア-ベルターニ(Luria-Bertani)(LB)培地内で37℃で増殖させ、0.5mM イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で0.6のOD600nmで16℃で誘導した。一晩の誘導の後、細胞を遠心分離によって回収し、結合バッファー(50mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaCl)に再懸濁させ、超音波処理によって細胞溶解した。19,000×g、4℃で60分間の遠心分離の後、細胞ライセートを、洗浄バッファー(50mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaCl、1mM DTT)で予め平衡化された5mLのGSTrap(登録商標)FFカラム(GE Healthcare)に適用した。次いでGST融合MDM2(アミノ酸6~125)をPreScission(登録商標)プロテアーゼ(GE Healthcare)によって4℃で一晩、カラム上で切断し、洗浄バッファーでカラムから溶出した。次いでタンパク質サンプルを、HiPrep(登録商標)26/10脱塩カラムを使用して、バッファーA溶液(20mM ビストリス(pH6.5)、1mM DTT)中に透析し、バッファーA中で予め平衡化された陽イオン交換Resource S 1mLカラム(GE Healthcare)上にローディングした。次いでカラムを6CVのバッファーAで洗浄し、1M NaCl、20mM ビストリス(pH6.5)および1mM DTTを含むバッファーにおける直線勾配で30カラム容量にわたって結合タンパク質を溶出した。タンパク質純度はSDS-PAGEによる評価で約95%であった。Amicon-Ultra(3kDa MWCO)濃縮器(Millipore,Burlington,MA,USA)を使用して、タンパク質を濃縮した。280nmの吸光度測定を用いて、タンパク質濃度を決定した。
【0208】
MDM4タンパク質の製造
MDM4タンパク質をpNIC-GSTベクター内にクローニングし、NTU School of Biological SciencesのProtein Production Platform(PPP)におけるLEX系(Harbinger Biotech)において発現させた。グリセロールストックを使用して、カナマイシンで補足された8g/L グリセロールを含有する20mLのテリフィック・ブロス(Terrific Broth)において、接種物の培養を開始した。培養物を37℃、200rpmで一晩インキュベートした。翌朝、カナマイシンおよび100μLの消泡剤204(Sigma-Aldrich)で補足された8g/Lグリセロールを含有する750mLのテリフィック・ブロスのボトルに培養物を接種した。濾過空気を培養物に吹き込むことで通気および撹拌を行いながら、培養物をLEX系において37℃でインキュベートした。OD600が2に達したら、温度を18℃に低下させ、30~60分後に0.5mM IPTGで培養物を誘導した。タンパク質発現を一晩継続した。翌朝、細胞を4200×g、15℃で10分間の遠心分離によって回収した。上清画分を捨て、細胞を細胞溶解バッファー[Calbiochemから入手した、(細胞溶解バッファー中で1000倍希釈の)EDTA非含有の250U/μL Merck Calbiochem(商標)プロテアーゼ・インヒビター・カクテル・セット(Protease Inhibitor Cocktail Set)IIIおよびベンゾナーゼ(750mLの培養当たり4μL)を含有する100mM HEPES、500mM NaCl、10mM イミダゾール、10% グリセロール、0.5mM TCEP(pH8.0)]に200rpm、4℃で約30分間にわたって再懸濁させ、-80℃で保存した。再懸濁細胞ペレット懸濁液を解凍し、氷上で70%振幅、3秒のオン/オフで3分間、超音波処理した(Sonics Vibra-Cell)。ライセートを47,000×g、4℃で25分間の遠心分離によって清澄化した。上清を1.2μmのシリンジフィルターで濾過し、1mL Ni-NTA Superflow(Qiagen)IMACカラムを伴うAKTA Xpress系(GE Healthcare)上にローディングした。20カラム容量(CV)の洗浄バッファー1(20mM HEPES、500mM NaCl、10mM イミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5)および20CVの洗浄バッファー2(20mM HEPES、500mM NaCl、25mM イミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5)で、またはそれぞれ、3分間の安定なベースラインおよびデルタベース5mAU(0.8mL/分)が得られるまで、カラムを洗浄した。溶出バッファー(20mM HEPES、500mM NaCl、500mM イミダゾール、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5)でMDM4タンパク質を溶出し、溶出ピーク(収集開始:>50mAU、勾配>200mAU/分、収集停止:<50mAU、0.5分の安定プラトー、デルタプラトー5mAU)を収集し、系上のサンプルループ内で保存し、次いで、平衡化されたゲル濾過(GF)カラム(HiLoad 16/60 Superdex 200 prep grade(GE Healthcare))内に注入し、20mM HEPES、300mM NaCl、10%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5で1.2mL/分の流速で溶出した。溶出ピーク(収集開始:>20mAU、勾配>10mAU/分、収集終了:<20mAU、勾配>10mAU/分、最小ピーク幅0.5分)を2mLの画分中に収集した。精製全体を4℃で行った。関連ピークをプールし、TCEPを2mMの最終濃度まで添加した。タンパク質サンプルをVivaspin 20フィルター濃縮器(VivaScience)で15℃で約15mg/mLに濃縮した。Nanodrop(商標)ND-1000(Nano-Drop Technologies)で280nmの吸光度を測定することによって、最終タンパク質濃度を評価した。最終タンパク質純度をSDS-PAGEで評価し、精製されたMDM4タンパク質を液体窒素中で凍結し、-80℃で保存した。
【0209】
競合蛍光異方性アッセイ(MDM2およびMDM4)
精製されたMDM2(1-125)タンパク質を50nMのカルボキシフルオレセイン(FAM)標識12/1ペプチド13[Fischer,Intl.J.Pept.Res.Ther.12:3-19(2006)に開示されている9量体FAM-RFMDYWEGL-NH2(配列番号26)]に対して滴定した。FAM標識12/1ペプチドに対するMDM2およびMDM4の滴定の解離定数を、以下に示されている1:1結合モデル方程式に実験データを当てはめることによって決定した。
【0210】
【0211】
[P]はタンパク質濃度(MDM2)であり、[L]は標識ペプチド濃度であり、rは、測定された異方性であり、r
0は遊離ペプチドの異方性であり、r
bはMDM2-FAM標識ペプチド複合体の異方性であり、K
dは解離定数であり、[L]
tは全FAM標識ペプチド濃度であり、[P]
tは全MDM2濃度である。MDM2およびMDM4に対するFAM標識12/1ペプチドの見掛けK
d値は、それぞれ、13.0nMおよび4.0nMと決定された。次いで、これらの値を用いて、蛍光異方性実験における後続の競合アッセイにおいて、それぞれの競合リガンドの見掛けのK
d値を決定した。MDM2およびMDM4の競合実験を、それぞれの濃度を250nMおよび75nMに一定に保ちながら、50nMのFAM標識12/1の存在下で行った。次いで競合分子をFAM標識ペプチドとタンパク質との複合体に対して滴定した。以下に示されている式に実験データを当てはめることによって、見掛けのKd値を決定した。
【数2】
【0212】
[L]stおよび[L]tは、それぞれ、標識リガンドおよび全非標識リガンドの投入濃度を示す。Kd2は非標識リガンドとタンパク質との間の相互作用の解離定数である。全ての競合実験において、[P]t>[L]stであると想定される。そうでない場合には、相当な量の遊離標識リガンドが常に存在し、測定に干渉するであろう。Kd1は、使用した標識ペプチドの見掛けKdであり、前段落に記載されているとおり、実験的に決定されている。FAM標識ペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)に1mMで溶解し、実験バッファー中に希釈した。Envision Multilabel Reader(PerkinElmer)を使用して、読み取りを行った。実験は、PBS(2.7mM KCl、137mM NaCl、10mM Na2HPO4、2mM KH2PO4(pH7.4))および0.1% Tween-20バッファー中で行った。全ての滴定は3回繰り返して行った。曲線フィッティングは、Prism 4.0(GraphPad(登録商標))を使用して行った。1:1結合モデルのフィッティングを検証するため、MDM2とFAM標識ペプチドと間の直接滴定の開始時の異方性値が、遊離蛍光標識ペプチドで観察された異方性値と有意に異ならないことを慎重に確認した。また、試験されているリガンドの陰性対照滴定を、蛍光標識ペプチド(MDM2の非存在下)を使用して行って、リガンドとFAM標識ペプチドとの間で相互作用が生じていないことを確認した。また、競合滴定における最終的なベースラインが遊離FAM標識ペプチドの異方性値を下回らないようにした。そうでない場合には、それは、MDM2結合部位から除去されるべきFAM標識ペプチドとリガンドとの間の意図しない相互作用を示すであろう。測定は少なくとも3回(生物学的反復)行った。値は該反復の幾何平均として示されている。
【0213】
全細胞ホモジネートの安定性
1μMの濃度のペプチドを、100万個/mLの細胞溶解細胞から調製されたHCT116全細胞ホモジネート共に37℃でインキュベートした。0、1、2、4時間および22時間の時点で有機溶媒で反応を停止させ、次いで遠心分離を行った。試験ペプチドの検出のために、得られた上清をLC/MSに注入した。各化合物の残存率を時間0の量に対して正規化し、報告した。
【0214】
プラズマ安定性
ペプチドを1mMの濃度でヒト血漿と共に37℃で1、2、3、4時間インキュベートした。示されている時点で、有機溶媒の添加によってインキュベーションを停止し、次いで遠心分離を行った。上清中の親化合物をLC/MSによって分析した。ペプチドの残存率を時間0における化合物の量に対して計算した。
【0215】
p53ベータ-ラクタマーゼレポーター遺伝子細胞機能アッセイ
HCT116細胞をp53応答性β-ラクタマーゼレポーターで安定にトランスフェクトし、10% ウシ胎児血清(FBS)、ブラストサイジンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するMcCoy’s5A培地内で増殖させ、次いで1.5mLの凍結バイアルに移し、5% DMSOを含有する増殖培地内で液体窒素下で保存した。アッセイの1日前に、バンク化細胞のバイアルを細胞培養フラスコ内に回収し、24時間インキュベートし、次いで細胞増殖培地を除去し、2% FBSを含有するOpti-MEMとの交換を行った。次いで細胞を384ウェルプレート内に8000細胞/ウェルの密度で播いた。次いで液体ハンドラーECHO555を使用して、ペプチドを各ウェルに分注し、16時間インキュベートした。DMSOの最終実施濃度は0.5%であった。ToxBLAzer Dual Screen(Invitrogen)を製造業者の説明に従い使用して、β-ラクタマーゼ活性を検出した。測定は、Envisionマルチプレートリーダー(PerkinElmer)を使用して行った。最大p53活性を、50μM アジド-ATSP-7041によって誘導されるβ-ラクタマーゼ活性の量として定義した。これは、HCT116細胞における滴定から、アジド-ATSP-7041によって誘導されるp53活性の最高量として決定された。測定は少なくとも3回(生物学的反復)行った。値は該反復の幾何平均として示されている。
【0216】
乳酸脱水素酵素(LDH)放出アッセイ
HCT116細胞をp53応答性β-ラクタマーゼレポーターで安定にトランスフェクトし、10% ウシ胎児血清(FBS)、ブラストサイジンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するMcCoy’s5A培地内で増殖させ、次いで1.5mLの凍結バイアルに移し、5% DMSOを含有する増殖培地内で液体窒素下で保存した。アッセイの1日前に、バンク化細胞のバイアルを細胞培養フラスコ内に回収し、24時間インキュベートし、次いで細胞増殖培地を除去し、2% FBSを含有するOpti-MEMとの交換を行った。次いで細胞を384ウェルプレート内に8000細胞/ウェルの密度で播いた。次いで液体ハンドラーECHO555を使用して、ペプチドを各ウェルに分注し、16時間インキュベートした。DMSOの最終実施濃度は0.5%であった。CytoTox-ONE均質膜完全性アッセイキット(Homogenous Membrane Integrity Assay Kit)(Promega)を製造業者の説明に従い使用して、乳酸脱水素酵素の放出を検出した。測定は、Tecanプレートリーダーを使用して行った。最大LDH放出を、細胞溶解性ペプチド(iDNA79)によって誘導されるLDH放出量として定義し、結果を正規化するために用いた。測定は少なくとも3回(生物学的反復)行った。値は該反復の幾何平均として示されている。
【0217】
テトラサイクリン・ベータラクタマーゼレポーター遺伝子細胞アッセイ(カウンタースクリーン)
このアッセイは、誘導性サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下で安定に組み込まれたβ-ラクタマーゼを含有するJump-In(商標)T-REx(商標)CHO-K1 BLA細胞に基づく。10% ウシ胎児血清(FBS)、ブラストサイジンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するダルベッコ最小イーグル培地(DMEM)内で細胞を維持し、次いで1.5mLの凍結バイアルに移し、5% DMSOを含有する増殖培地内で液体窒素下で保存した。アッセイの1日前に、バンク化細胞のバイアルを細胞培養フラスコ内に回収し、24時間インキュベートし、次いで細胞増殖培地を除去し、2% FBSを含有するOpti-MEMとの交換を行った。細胞をウェル当たり4000細胞の密度で384ウェルプレート内に播いた。次いで液体ハンドラーECHO555を使用して、ペプチドを各ウェルに分注し、16時間インキュベートした。DMSOの最終実施濃度は0.5%であった。ToxBLAzer Dual Screen(Invitrogen)を製造業者の説明に従い使用して、β-ラクタマーゼ活性を検出した。Envisionマルチプレートリーダー(PerkinElmer)を使用して、測定を行った。カウンタースクリーン(counterscreen)活性を、テトラサイクリンによって誘導されるβ-ラクタマーゼ活性の量として定義した。測定は少なくとも3回(生物学的反復)行った。値は該反復の幾何平均として示されている。
【0218】
HCT-116ウェスタンブロット分析
化合物ストック溶液および実施溶液の調製: 化合物の10mMまたは1mMストック溶液を100% DMSOで調製した。次いで各化合物を100% DMSO中で系列希釈し、HPLC等級の滅菌水中に更に10倍希釈して、10% DMSO/水中の各化合物の10×実施溶液を調製した。関連アッセイにおいて使用される必要体積に応じて、化合物を加えて、1% v/vの残留DMSO濃度で、関連図面に示されている最終濃度を得た。
【0219】
HCT116細胞(Thermo Fisher Scientific)を、10% ウシ胎児血清(FBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンで補足されたDMEM細胞培地内で培養した。全ての細胞株を、5% CO2雰囲気を有する37℃の加湿インキュベーター内で維持した。HCT116細胞をウェル当たり60,000細胞の密度で96ウェルプレート内に播き、一晩インキュベートした。また、10% ウシ胎児血清(FBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンで補足されたDMEM細胞培地内で細胞を維持した。次いで細胞培地を除去し、2% FCSを含有するDMEM細胞培地内に、示されている濃度の種々の化合物/ビヒクル対照を含有する細胞培地と交換した。示されているインキュベーション時間(4時間または24時間)の後、細胞をPBSでリンスし、次いで、Invitrogenによって供給された100μLの1×NuPAGE LDSサンプルバッファー(NP0008)内に回収した。次いでサンプルを超音波処理し、90℃で5分間加熱し、10秒間の2回の超音波処理に付し、13,000rpmで5分間遠心分離した。タンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce)によって測定した。Tris-Glycine 4-20%勾配ゲル(BIORAD)上で製造業者のプロトコルに従いサンプルを分離した。Trans-Blot Turbo系(BIORAD)を使用して、Immuno-blot PVDF膜(Bio-Rad)で、ウェスタントランスファーを行った。次いで、ローディング対照としてのアクチンに対する抗体(AC-15、Sigma)、p21(118マウスモノクローナル抗体)、MDM2(2A9マウスモノクローナル抗体)およびp53(DO-1マウスモノクローナル抗体)を使用して、ウェスタンブロット染色を行った。
【0220】
等温滴定熱量測定(ITC)
1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.2)、3% DMSOおよび0.001% Tween-20を含有するバッファー中で、タンパク質およびペプチドの一晩の透析を行った。約100~200μMのペプチドを、20μMの精製組換えヒトMDM2タンパク質(アミノ酸1~125)中に、それぞれ1μLずつの40回の注入にわたって滴定した。高濃度で不溶性のペプチドに関しては、逆ITC(200μMのMDM2タンパク質を20μMのペプチド中に滴定する)を行った。全ての実験は、MicroCal PEAQ-ITC Automated系を使用して、2回重複して行った。MicroCal PEAQ-ITC解析ソフトウェアを使用して、データ分析を行った。
【0221】
円二色性(CD)
合計5μLの10mM ストックペプチドを45μLの100% メタノールと混合し、SpeedVac(商標)濃縮器(Thermo Scientific)において2時間乾燥させた。乾燥したペプチドをバッファー(1mM Hepes(pH7.4)および5% メタノール)中で1mMの濃度に再構成させた。ペプチドサンプルを、0.2cmの経路長を有する石英キュベット内に配置した。280nMにおけるペプチドの吸光度によってペプチド濃度を測定した。Chirascan-plus qCD装置(Applied Photophysics,Surrey,UK)を使用して、CDスペクトルを25℃で300~190nmにおいて記録した。全ての実験は2回重複して行った。CDNNソフトウェア(Applied Photophysicsによって頒布されたもの)を使用して、ペプチドの二次構造成分のデコンボリューションおよび推定を行う前に、CDスペクトルを平均残余楕円率に変換した。測定は少なくとも2回行い、算術平均として表した。
【0222】
実施例1
低い細胞活性ならびにLDHおよびカウンタースクリーン活性の両方を有していたDPMI-δ(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子の改良
WO2020257153A1は、親ペプチドと比較して改善した細胞活性を示した一連のDPMI-δオレフィン・ステープル化ペプチドを記載している(Chem Sci.2020,11,5577も参照されたい)。本発明者らはDPM-δ(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子に焦点を合わせた。なぜなら、それは本有的な超安定性、MDM2への検証済みの結合および両親媒性を有していたからである。しかし、それはLDHアッセイとカウンタースクリーンアッセイとの両方において、低い細胞活性および細胞活性の欠点を示した(化合物1、表1、パート1~3)。それらの欠点は、遊離N末端および2つの塩基性残基(位置9のD-リジンおよび位置12のD-アルギニン)を含むペプチドの3つの正電荷によるものである可能性があった。良好な細胞透過性および活性を有する両親媒性参照物質としてATSP-7041を使用して、本発明者らはその極性ヘリックス面上のSer残基およびGln残基の存在に着目した。したがって、DPMI-δ(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子の正電荷を除去するために、位置9にD-グルタミンを、そして位置12にD-セリンを導入し、N末端をアセチル化した。それらの修飾は、LDH放出およびカウンタースクリーン活性を除去することに成功し(両方においてEC50>50μM)、p53レポーター遺伝子の機能的細胞活性を、0% 血清において、3.6μMへと3倍改善した(化合物2)。しかし、該化合物は、10% 血清条件下、弱い細胞有効性を示した(>50μM)。
【0223】
実施例2
DPMITM(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子へのC末端尾部の付加は細胞更新および生理化学的特性の改善をもたらした
幾つかのD-アラニン残基を含むポリペプチド尾部の導入は、おそらくは該付加ポリD-アラニン尾部のヘリックス特性を調節することによって、本発明者らのDPMI-δ(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子の細胞活性を更に増強しうるであろう。これは、βシートに基づくペプチド凝集を緩和することによってαヘリックス・コンホメーションを優先することにより、溶解度を増加させ、溶液状態のペプチドオリゴマーの動力学を変化させうるであろう。また、水相のヘリシティー(ヘリックス性)の増強は、細胞膜脂質二重層の低誘電率において典型的に誘導される高ヘリックス含有量の適応に関連するエントロピー・ペナルティを減少させることによって、透過性を増強しうるであろう。本発明者らは、種々の数のD-アラニン残基を含むポリペプチド尾部が付加された一連の化合物2類似体を作製した(化合物3~5、表1、パート1~3)。評価した3つの尾部の長さのうち、6アミノ酸長が最良のプロファイルをもたらした(化合物4)。6×(D-Ala)C末端尾部の付加は、最初の親ペプチドと比較して100倍の全体的改善として、細胞活性を10% 血清中で0.3μMへと改善した。興味深いことに、化合物2の場合、ポリアラニン尾部の長さを更に9×(D-Ala)に延長すると、より低い細胞有効性を有する化合物2類似体(化合物5)が得られた。
【0224】
異なるポリアラニンサイズ長を有するこれらの類似体の物理化学的特性の比較は、化合物5が、3×(D-Ala)または6×(D-Ala)ポリペプチド尾部が付加された類似体より遥かに低い溶解性を示し(それぞれ16μM対140μMまたは150μM)、親化合物2より低い溶解性を示す(16μM対167μM)ことの、可能な説明をもたらす(表2)。同様に、化合物5は、化合物2~4と比較して、より高い測定HPLC logDをも示したが、これは、凝集を含む、より不良な溶解挙動をもたらしうるであろう。
【0225】
本発明者らは、ポリペプチド尾部配列を最適化することによって、オフターゲット効果を回避しながら細胞効力を更に増強することを目指した。本発明者らの多面的アプローチは、尾部における追加的な結合相互作用によってMDM2(X)結合を最適化すること、および疎水性特性のバランスをとるために両親媒性を増強することによって溶解度および溶解状態の挙動を最適化することを含んでいた。ヘリカルホイール(helical wheel)の検査は、位置14における非極性残基の配置がMDM2結合を増強することを示した。更に、分子モデリングは、フェニルアラニンがその位置のための適切な残基でありうることを示唆した(
図3)。したがって、位置14のD-AlaがD-Pheで置換されたポリアラニン尾部を有する化合物6を作製した。このペプチドは水溶液中で約65%のヘリシティーを示した。
【0226】
化合物6は、ポリペプチド尾部を欠く親化合物2と比較して、幾らかの細胞活性を保持していたが、化合物4と同等であることが判明した。この結果は、該化合物に関する、高い測定HPLC logD測定値に関連づけられうるであろう(表1、パート1~3および表2)。ペプチドの溶解性を増強するために、細胞活性を損なうことなく極性残基を許容するアミノ酸位置も調べた。ヘリカルホイールの検査(ヘリックス構造の説明は、Chem Sci.2020,11,5577を参照されたい)は、アミノ酸位置16における非極性残基の配置が許容されうることを示した。したがって、6つのD-Alaのポリペプチド尾部を有する化合物7を作製したが、ここで、アミノ酸位置16のD-AlaはD-Gluで置換されていた。このペプチドは、0% 血清および10% 血清において、化合物6と比較して細胞活性を改善した(1.41μMおよび0.79μM対9.65μMおよび1.75μM)。その細胞活性は化合物4と比較してやや右にシフトしているが、グルタミン酸は、より低い溶解性のスキャフォールドに利点をもたらしうる。
【0227】
実施例3
DPMI-δ-(5-12)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子におけるオレフィンの代わりに特定の架橋(位置5および12のi,i+7ビスアルキン)を使用することは剛性およびαヘリックス性の改善をもたらした
本発明者らはまた、カウンタースクリーン(オフターゲット)活性および溶解性を改善するための手段として、ヘリックス・コンホメーションを安定化させるために、本発明者らの
DPMI-δシリーズにおいて、異なるステープル型を導入することも検討した。以前に報告された
DPMI-δ-(5-12)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子(WO2020257153およびChem Sci.2020,11,5577を参照されたい)は良好な候補であった。なぜなら、該化合物はカウンタースクリーンアッセイにおいて中程度の細胞活性および幾らかの細胞活性特性を示したからである。溶解度およびHPLC logDを決定する試みも失敗していたが、これはおそらく、その低い溶解度によるものであろう(化合物8、表1、パート1~3および表2)。i,i+7オレフィン・ステープルに関して、ジアルキン・ステープル置換を行った。なぜなら、そのような置換はi,i+7アミノ酸側鎖のβ炭素間の最適な距離をもたらして、安定化したαヘリックス構造を与えうるからである(Chembiochem 2018;19,1031を参照されたい)。ジアルキン・ステープルは該ヘリックスに単一コンホメーションをもたらして、その構造を著しく安定化した(
図4)。予想ヘリシティも改善を示した(
図4)。このペプチドは、約60%の、増加したヘリシティを示した(対応する炭化水素ステープルは約32%のヘリシティを示した)。
【0228】
実施例4
DPMI-δ-(5-12)ジアルキン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子と或る他の特定のアミノ酸置換およびポリペプチド尾部との組合せは細胞更新および生理化学的特性を改善した
本発明者らはDPMI-δ-(5-12)ジアルキン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子を以下のことによって修飾した:(i)DPMI-δ-(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子における本発明者らの改変と同様にして、N末端アセチル化と共に、アミノ酸位置9にD-Glnを導入して、正電荷を除去すること、ならびに(ii)溶解度およびヘリシティーを最適化するために、C末端に6×(D-Ala)ポリペプチド尾部を連結すること。全体として、それらの改変は、親ペプチド化合物8と比較して100倍の全体的改善として、10% 血清中で0.3μMまでの著しく改善された細胞活性を示す化合物9を生成した(表1、パート1~3)。この化合物はまた、カウンタースクリーンアッセイにおいて、親化合物よりもクリーン(clean)であり(表1、パート1~3)、溶解度を測定することが可能であった(表2)。化合物9は、本発明において記載されている修飾の適用可能性を示している。
【0229】
実施例5
前記修飾を適用することによって、カウンタースクリーンにおいて非常にクリーンな化合物が得られうる
よりクリーンな「薬物」様化合物を作製する際の前記修飾の影響を更に確立するために、細胞増殖アッセイにおいて、本発明の化合物のセットをプロファイリングした(表3)。参照化合物2は、HTC116陽性対照細胞株において、9.1μMの中程度の有効性を示し、また、最大濃度で88%阻害によって表される、p53ヌル陰性対照細胞株における幾らかのレベルの活性を示した。対照的に、化合物4は細胞効力を6倍以上改善し、最大濃度でp53ヌル陰性対照細胞株における活性を66%阻害まで低下させた。化合物9はHTC116陽性対照細胞株(オンターゲットアッセイ)においてはマイクロモル未満の細胞活性を、そしてp53ヌル陰性対照細胞株(オフターゲットアッセイ)においては欠点の欠如を示した(それぞれ、最大濃度で0.65μMおよび-0.5%阻害)。
【0230】
本明細書に記載されている化合物は、強力で細胞活性でありクリーンなp53ペプチド模倣大環状分子を得るための、
DPMI-δ p53ペプチド模倣ペプチドに対する、本明細書に開示されている種々の修飾の適用可能性を示している。
【表2】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
まとめ
ファージディスプレイおよびmRNAディスプレイのような現代のディスプレイ技術は、インビトロにおいて、関心のあるタンパク質(POI)への結合性物質を容易に提供する。これらのインビトロ結合性物質を、オンターゲット選択性および特異性を有する、細胞内活性でありインビボ活性である化合物に変換することは困難である。
【0236】
本発明は、DPMI-δ-(6-10)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子のような毒性(カウンタースクリーン活性およびLDH放出を伴う不良な細胞活性)p53ペプチド模倣大環状分子を、該大環状分子のC末端にポリペプチド尾部を付加することによって、改善された薬理学的特性を有する全てD配置であるペプチドへと変換することを実証している。アミノ酸位置9のD-LysをD-Glnで置換すること、およびアミノ酸位置12のD-ArgをD-Serで置換することによって、更なる改善が達成された。
【0237】
本発明はまた、大環状分子のC末端におけるポリペプチド尾部およびジアルキン・ステープルでのオレフィン・ステープルの置換による、
DPMI-δ-(5-12)オレフィン・ステープル化p53ペプチド模倣大環状分子の改良をも実証しており、これは、遥かにクリーンなオフターゲットプロファイルを有する改良された化合物をもたらした。アミノ酸位置9のD-LysをD-Glnで置換することによって、更なる改良が達成された。
【表3】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
本明細書中に引用されており、参照により本明細書に組み入れる参考文献
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本発明は例示実施形態に関して本明細書に記載されているが、本発明はこれらに限定されないと理解されるべきである。本明細書の教示を利用する当業者は本発明の範囲内の追加的な修飾および実施形態を認識するであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付されている特許請求の範囲のみによって限定される。
【配列表】
【国際調査報告】