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特表2024-546117低誘電率高分子基板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】低誘電率高分子基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/02 20060101AFI20241210BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20241210BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20241210BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241210BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20241210BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C23C14/02 A
C23C14/14 D
C23C14/08 D
C23C14/08 C
B32B7/025
B32B18/00 C
B32B15/08 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534419
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2021018783
(87)【国際公開番号】W WO2023106473
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0176081
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521103510
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ マテリアルズ サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ジュン スンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム ドグン
(72)【発明者】
【氏名】イ スンフン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン ウンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジュンヨン
【テーマコード(参考)】
4F100
4K029
【Fターム(参考)】
4F100AA25C
4F100AA33C
4F100AB01C
4F100AB12C
4F100AB13C
4F100AB16C
4F100AB17C
4F100AD00C
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK17A
4F100AK18A
4F100AK19A
4F100AK49A
4F100AS00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100EA022
4F100EH662
4F100EJ522
4F100EJ52B
4F100EJ942
4F100GB41
4F100JA11A
4F100JB04B
4F100JG05A
4F100JK06
4K029AA11
4K029AA24
4K029BA07
4K029BA08
4K029BA12
4K029BA17
4K029BA49
4K029BA50
4K029CA05
4K029CA08
4K029DC34
4K029FA01
4K029FA05
4K029KA01
(57)【要約】
本発明は低誘電率高分子基板及びその製造方法を提供する。より具体的には、本発明は高分子基板を表面改質して別途の接着層なしに高い密着力で金属又はセラミックを蒸着することができる低誘電率高分子基板及びその製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低誘電率高分子層と、
高分子層表面上にイオンビームを前処理して形成された表面改質層と、及び、
選択的に前記表面改質層上に形成される金属又はセラミックコーティング層と、を含み、
前記表面改質層の水との接触角が90°以下であることを特徴とする低誘電率高分子基板。
【請求項2】
ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)、パーフルオロアルコキシ(Perfluoroalkoxy、PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(Ethylene tetrafluoroethylene、ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene、FEP)、ポリビニリデンフロリド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、変性ポリイミド(Modified polyimide、MPI)、ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylene Sulfide、PPS)、オレフィン(Olefin)及び液晶ポリマー(Liquid crystal polymer、LCP)のうち1種以上を含む請求項1に記載の低誘電率高分子基板。
【請求項3】
前記低誘電率高分子層の誘電率は4以下である請求項1に記載の低誘電率高分子基板。
【請求項4】
前記低誘電率高分子層の厚さは、0.01以上2mm未満である請求項1に記載の低誘電率高分子基板。
【請求項5】
前記イオンビーム前処理は水素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガスと水素ガスが使用されるイオンビーム前処理である請求項1に記載の低誘電率高分子基板。
【請求項6】
前記金属はCu、Ni、Cr及びTiのうちの1種以上である請求項1に記載の低誘電率高分子基板。
【請求項7】
前記セラミックはZnOおよびITO(Indium tin oxide)のうちの1種以上である請求項1に記載の低誘電率高分子基板。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の低誘電率高分子基板を含む、製品。
【請求項9】
低誘電率高分子層表面に表面改質のためのイオンビームを前処理する段階、及び選択的に高分子層上に金属又はセラミックコーティング層を形成する段階、を含み、
前記イオンビーム前処理時のイオンビームエネルギーは50~2000eVである低誘電率高分子基板の製造方法。
【請求項10】
前記低誘電率高分子層はポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)、パーフルオロアルコキシ(Perfluoroalkoxy、PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(Ethylene tetrafluoroethylene、ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene、FEP)、ポリビニリデンフロリド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、変性ポリイミド(Modified polyimide、MPI)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene Sulfide、PPS)、オレフィン(Olefin)及び液晶ポリマー(Liquid crystal polymer、LCP)のうち1種以上を含む、請求項9に記載の低誘電率高分子基板の製造方法。
【請求項11】
イオンビーム前処理に使用されるガスは水素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガスと水素ガスである請求項9に記載の低誘電率高分子基板の製造方法。
【請求項12】
前記イオンビーム前処理する時に使用されるガスが水素である場合、イオンビームの速度当たりの印加電力量は2kW/mpm以下である請求項9に記載の低誘電率高分子基板の製造方法。
【請求項13】
前記低誘電率高分子層の厚さが0.01以上2mm未満の場合、前記イオンビーム前処理時の印加電圧は0.5以上2kV未満である請求項9に記載の低誘電率高分子基板の製造方法。
【請求項14】
前記金属又はセラミックコーティング層はスパッタリング蒸着又はイオンビーム補助スパッタリング蒸着で形成される請求項9に記載の低誘電率高分子基板の製造方法。
【請求項15】
前記段階らはロールツーロール工程(roll-to-roll process)で進む請求項9に記載の低誘電率高分子基板の製造方法。
【請求項16】
前記ロールツーロール工程の工程速度は0.1~10mpmである請求項15に記載の低誘電率高分子基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低誘電率高分子基板及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は高分子基板を表面改質して別途の接着層がなくても高い密着力で金属又はセラミックを蒸着することができる低誘電率高分子基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子製品に対する高性能化、高速伝送化、小型化、軽量化及び薄型化の需要が増加しているため、主要部品であるFPCB(Flexible Printed Circuit Board)と共に、FPCBの核心素材であるフレキシブル銅張積層板(Flexible Copper Clad Laminated Substrate、FCCL)などの素材に対する関心も高まっている。
【0003】
フレキシブル銅張積層板は高分子フィルムの片面又は両面に銅箔を積層して貼り付けたもので、耐屈曲性など素材の柔軟性の側面から優れた素材である。従来のフレキシブル銅張積層板は高分子基板上に金属との密着力を向上させるために、ニッケル、クロム、チタンなどの金属層を形成した後、銅を蒸着した。フレキシブル銅張積層板は、今後、パターン形成作業時に別途のエッチング工程等が必要だが、前記のような構造のフレキシブル銅張積層板は高温工程等で高分子フィルムと金属層及び銅蒸着層が剥離することができる問題点があった。また、柔軟性及び耐屈曲性が重要なフレキシブル銅張積層板の厚さが増加するという問題点が発生することができた。
【0004】
前記の電子製品に対する需要及び趨勢に加えて、高周波数帯域で大規模データを高速伝送しなければならない5G及び5G以降の通信市場では、信号損失率が少ない低誘電率素材が重要である。これによって、フレキシブル銅張積層板、超高速通信用アンテナなどの通信装置やサーバボードなどに適用されることができる低誘電率を有する高分子基板に対する開発が続けている。
【0005】
特に、低誘電率を有する高分子のうち、フッ素を含む高分子の場合、疎水性の性質のため、高分子基板上に金属薄膜を形成しても高分子基板との接着力が低いのが一般的である。したがって、高分子基板上に形成される薄膜との接着力を形成するために、紫外線などで高分子基板の表面を前処理する方法が試みられているが、顕著な接着力向上効果を得ることが難しくて、活用性に対しての制限がある問題点があった。
【0006】
したがって、低誘電率を有しつつ、より薄い厚さを有する、コーティング層との密着力も一緒に優れた低誘電率高分子基板の開発が必要である。
【0007】
本発明の背景技術として、日本登録特許第6076844号にフッ素含有樹脂の表面処理方法及びフッ素含有樹脂の表面処理装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は高分子層と金属又はセラミックコーティング層間の密着力が向上された低誘電率高分子基板を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は高分子層と金属層間の密着力が向上した低誘電率高分子基板を効率的に製造することができる低誘電率高分子基板の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明のまた他の目的は製造工程が短縮された低誘電率高分子基板の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってよって、明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様によれば、低誘電率高分子層と、前記高分子層表面上にイオンビームを前処理して形成された表面改質層と、及び、選択的に前記表面改質層上に形成される金属又はセラミックコーティング層と、を含み、前記表面改質層の水との接触角が90°以下であることを特徴とする低誘電率高分子基板が提供される。
【0013】
一実施例によれば、前記低誘電率高分子層はポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)、パーフルオロアルコキシ(Perfluoroalkoxy、PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(Ethylene tetrafluoroethylene、ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene、FEP)、ポリビニリデンフロリド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、変性ポリイミド(Modified polyimide、MPI)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene Sulfide、PPS)、オレフィン(Olefin)及び液晶ポリマー(Liquid crystal polymer、LCP)のうち1種以上を含むことができる。
【0014】
一実施例によれば、前記低誘電率高分子層の誘電率は4以下であり得る。
一実施例によれば、前記低誘電率高分子層の厚さは0.01以上2mm未満であり得る。
一実施例によれば、前記イオンビーム前処理は水素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガスと水素ガスが使用されるイオンビーム前処理であってもよい。
【0015】
一実施例によれば、前記金属はCu、Ni、Cr及びTiのうち1種以上であり得る。
【0016】
一実施例によれば、前記セラミックはZnO及びITO(Indium tin oxide)のうち1種以上であり得る。
【0017】
他の態様によれば、本願に記載の低誘電率高分子基板を含む、製品が提供される。
【0018】
さらに他の態様によれば、低誘電率高分子層表面に表面改質のためのイオンビームを前処理する段階、及び選択的に前記高分子層上に金属又はセラミックコーティング層を形成する段階、を含み、前記イオンビーム前処理時のイオンビームエネルギーは50~2000eVである低誘電率高分子基板の製造方法が提供される。
【0019】
一実施例によれば、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記低誘電率高分子層は、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)、パーフルオロアルコキシ(Perfluoroalkoxy、PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(Ethylene tetrafluoroethylene、ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene、FEP)、ポリビニリデンフロリド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、変性ポリイミド(Modified polyimide、MPI)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene Sulfide、PPS)、オレフィン(Olefin)及び液晶ポリマー(Liquid crystal polymer、LCP)のうち1種以上を含むことができる。
【0020】
一実施例によれば、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、イオンビーム前処理に使用されるガスは水素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガスと水素ガスであってもよい。
【0021】
一実施例によれば、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記イオンビーム前処理する時に使用されるガスが水素である場合、イオンビームの速度当たりの印加電力量は2kW/mpm以下であってもよい。
【0022】
一実施例によれば、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記低誘電率高分子層の厚さが0.01以上2mm未満の場合、前記イオンビーム前処理時の印加電圧は0.5以上2kV未満であり得る。
【0023】
一実施例によれば、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記金属又はセラミックコーティング層は、スパッタリング蒸着又はイオンビーム補助スパッタリング蒸着で形成されることができる。
【0024】
一実施例によれば、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記段階らは前記ロールツーロール工程(roll-to-roll process)で進むことができる。
【0025】
一実施例によれば、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記ロールツーロール工程の工程速度は0.1~10mpmであり得る。
【発明の効果】
【0026】
一実施例によれば、イオンビーム前処理条件を調節して高分子層と金属又はセラミックコーティング層間の密着力が優れた低誘電率高分子基板を提供することができる。
【0027】
一実施例によれば、イオンビーム前処理条件を調節して高分子層と金属又はセラミックコーティング層間の密着力が優れた低誘電率高分子基板を効率的に製造することができる。
【0028】
一実施例によれば、別途の接着層形成工程を必要なく、イオンビーム前処理によって、製造工程を短縮して低誘電率高分子基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施例による低誘電率高分子基板を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施例による実施例1の低誘電率高分子基板の製造方法を概略的に示す図である。
図3】本発明の比較例1~3の低誘電率高分子基板の製造方法を概略的に示す図である。
図4】本発明の比較例4の低誘電率高分子基板の製造方法を概略的に示す図である。
図5】本発明の一実施例による表面改質層が形成された低誘電率高分子基板の水の接触角を示すグラフである。
図6】本発明の一実施例による水素ガスイオンビームの速度当たりの印加電力量に応じた表面形状を示すイメージである。
図7】本発明の一実施例による表面改質層が形成された低誘電率高分子基板の表面成分分析結果を示すグラフである。
図8】本発明の一実施例による低誘電率高分子基板の金属層の表面構造を示すイメージである。
図9】本発明の一実施例による低誘電率高分子基板の密着力テスト結果を示すグラフである。
図10】本発明の一実施例による低誘電率高分子基板のクロスカットテスト(Cross cut Test)結果を示すイメージである。
図11】本発明の一実施例による低誘電率高分子基板の90°ピーリングテスト(90°Peeling test)方法を概略的に示す図である。
図12】本発明の一実施例による低誘電率高分子基板の90°フィリングテスト90°Peeling test)結果を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願で使用される用語は単に特定な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0031】
単数の表現は文脈上、明らかに別の意味を持たない限り、複数の表現を含むことである。
【0032】
本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は明細書に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、又はそれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、又はそれらを組み合わせたものの存在又は追加の可能性を予め排除しないことで理解しなければならない。
【0033】
本出願において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時には、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除外することではなく、他の構成要素を更に含み得ることを意味する。なお、明細書全体において、「上に」というのは、対象部分の上又は下に位置することを意味することであり、必ず重力方向を基準として上側に位置することを意味するものではない。
【0034】
本発明は様々な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるので、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳しく説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定しようとすることではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変換、均等物から代替物を含むことを理解されなければならない。本発明を説明することにあたって、関連する公知技術に対しての具体的な説明が本発明の要旨をぼやかせると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0035】
第1、第2などの用語は様々な構成要素を説明するために使用することができるが、前記の構成要素は前記の用語によって限定されるべきではない。前記の用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0036】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して詳細に説明することにして、添付図面を参照して説明することにあたって、同一又は対応する構成要素は同一な図面番号を付与し、これに対する重複される説明は省略することにする。
【0037】
図1は本発明の低誘電率高分子基板を概略的に示す図である。
【0038】
図1を参照すると、本発明の一態様によって、低誘電率高分子層10、前記高分子層10の表面上にイオンビームを前処理して形成される表面改質層12、及び選択的に前記表面改質層12上に形成される金属又はセラミックコーティング層20、を含み、前記表面改質層12の水との接触角が90°以下であることを特徴とする、低誘電率高分子基板が提供される。
【0039】
前記低誘電率高分子層10は公知の様々な素材で構成されることができる。これに限定されるものではないが、前記低誘電率高分子層10はポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)、パーフルオロアルコキシ(Perfluoroalkoxy、PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(Ethylene tetrafluoroethylene、ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene、FEP)、ポリビニリデンフロリド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、変性ポリイミド(Modified polyimide、MPI)、ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylene Sulfide、PPS)、オレフィン(Olefin)及び液晶ポリマー(Liquid crystal polymer、LCP)のうち1種以上を含むことができる。
【0040】
これに限定されるものではないが、前記低誘電率高分子層10の誘電率は4以下であってもよい。前記の構成によれば、耐久性も優れ、信号損失率が最小化され、超高速通信用アンテナなどの通信装置、サーバボード、ディスプレイなどに有用に適用されることができる。
【0041】
これに限定されるものではないが、前記低誘電率高分子層10の厚さが0.01以上2mm未満であってもよい。前記のような構成によれば、柔軟性及び耐屈曲性が優れた同時に、同時に耐久性が優れ、フレキシブル銅張積層板、超高速通信用アンテナ等の通信装置、サーバボード、ディスプレイ等に有用に適用されることができる。
【0042】
前記表面改質層12はイオンビーム前処理によって、形成されたものである。前記イオンビーム前処理によって、高分子層10の表面が改質され、別途の接着層がなくても金属又はセラミックコーティング層20との密着力が向上されることができる。前記イオンビーム前処理によって表面改質されると、表面エネルギーが増加し、水との接触角が低い特性を有することができる。
これに限定されるものではないが、前記表面改質層12の水との接触角が90°以下であるものが、高分子層10と金属又はセラミックコーティング層20との接着面で適合することができ、前記表面改質層12の水との接触角が80°以下であるものがもっと適合することができ、前記表面改質層12の水との接触角が70°以下であるものが更に適合することができ、前記表面改質層12の水との接触角が60°以下であるものが更に適合することができ、前記表面改質層12の水との接触角が50°以下であるものが更に適合することができ、前記表面改質層12の水との接触角が40°以下であるものが更に適合することができ、前記表面改質層12の水との接触角が30°以下であるものが更に適合することができ、前記表面改質層12の水との接触角が20°以下であるものが更に適合することができ、前記表面改質層12の水との接触角が10°以下であるものが更に適合することができ、前記表面改質層12の水との接触角が10°未満であるものが更に適合することができる。
【0043】
これに限定されるものではないが、前記イオンビーム前処理は水素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガスと水素ガスが使用されるイオンビーム前処理であってもよい。前記の構成によれば、高分子層10と金属又はセラミックコーティング層20間の密着力向上に適合することができ、アルゴンガスと水素ガスを使用されるイオンビーム前処理がより適合することができる。
【0044】
これに限定されるものではないが、前記金属はCu、Ni、Cr及びTiのうちの1種以上であってもよい。
【0045】
これに限定されるものではないが、前記セラミックはZnO及びITO(Indium tin oxide)のうち1種以上であってもよい。
【0046】
これに限定されるものではないが、前記金属又はセラミックコーティング層20は、高分子層10の両面に形成されでもよい。
【0047】
これに限定されるものではないが、前記金属又はセラミックコーティング層20は単層又は複数層であってもよい。
【0048】
他の態様によれば、本願に記載された低誘電率高分子基板を含む、製品が提供される。
【0049】
前記製品は、柔軟性、耐屈曲性、及び低誘電率などが要求される製品であってもよい。これに限定されるものではないが、前記製品はフレキシブル銅張積層板、通信用アンテナ、通信装置、サーバボード、及びディスプレイのうちの1種であってもよい。
【0050】
さらに他の態様によれば、低誘電率高分子層表面に表面改質のためのイオンビーム前処理する段階、及び選択的に前記高分子層上に金属又はセラミックコーティング層を形成する段階、を含み、前記イオンビーム前処理する時には、イオンビームエネルギーは50~2000eVである、低誘電率高分子基板の製造方法が提供される。
【0051】
前記イオンビームを前処理する段階は、コーティング層との密着力を高めるために低誘電率高分子層表面を改質する段階である。この時、イオンビームエネルギーは50~2000eVであることが表面エネルギーが増加し、高分子層と金属又はセラミックコーティング層との密着力を高めることに適合することができ、50~1500eVであることがより適合することができ、50~1000eVであることがさらに適合することができ、50~500eVであることがより適合することができる。
【0052】
これに限定されるものではないが、イオンビームエネルギーは50eV未満の場合、表面改質効果が十分でないかもしれないし、2000eVを超えると高分子層が変形され、むしろ金属又はセラミックコーティング層との密着力が低くなる可能性がある。
【0053】
これに限定されるものではないが、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記低誘電率高分子層は、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)、パーフルオロアルコキシ(Perfluoroalkoxy、PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(Ethylene tetrafluoroethylene、ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene、FEP)、ポリビニリデンフロリド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、変性ポリイミド(Modified polyimide、MPI)、ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylene Sulfide、PPS)、オレフィン(Olefin)及び液晶ポリマー(Liquid crystal polymer、LCP)のうち1種以上を含むことができる。
【0054】
これに限定されるものではないが、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、イオンビーム前処理に用いられるガスは水素ガス、ヘリウムガス、又はアルゴンガスと水素ガスであってもよい。前記の構成によれば、高分子層と金属又はセラミックコーティング層間との密着力向上に適合することができ、アルゴンガスと水素ガスを使用することがより適合することができ、アルゴンガスを用いてイオンビーム前処理後、水素カスでイオンビーム処理することが更に適合することができる。
【0055】
これに限定されるものではないが、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記イオンビーム前処理する時に、用いられるガスが水素である場合、イオンビームの速度当たりの印加電力量は2kW/mpm以下であるものが高分子層と金属又はセラミックコーティング層との密着力を高めることに適合することができ、1.7kW/mpm以下であるものがより適合することができる。
【0056】
これに限定されるものではないが、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において前記イオンビーム前処理すると時に、用いられるガスがアルゴン及び水素の場合、アルゴンイオンビーム及び水素イオンビームの速度当たりの印加電力量の合が3kW/mpm以下の場合が低誘電率高分子層の表面形状維持及びコーティング層との密着力向上に適合することができるし、2.5kW/mpm以下であることがより適合することができる。
【0057】
これに限定されるものではないが、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記低誘電率高分子層の厚さが0.01以上2mm未満の場合、前記イオンビーム前処理時印加電圧は0.5以上5kV未満が密着力改善及び高分子層の変形防止面で適合することができるし、0.5以上2kV未満がより適合することができる。前記低誘電率高分子層の厚さが相対的に薄い場合、印加電圧が前記0.5以上5kV未満の範囲を外れると密着力低下又は高分子層の変形が発生する可能性がある。
【0058】
次に、本願の低誘電率高分子基板の製造方法において、前記高分子層上に金属又はセラミックコーティング層を形成する段階は、これに限定されるものではないが、前記金属又はセラミックコーティング層がスパッタリング蒸着又はイオンビーム補助スパッタリング蒸着で形成されることができる。前記金属又はセラミックコーティング層はイオンビーム補助スパッタリング蒸着で形成されると、コーティング層がより緻密に形成されて物性が向上されることができ、高分子層とコーティング層間の密着力も向上されることができる。
【0059】
これに限定されることではないが、本願の低誘電率高分子基板の製造方法においては、前記段階らはロールツーロール工程で進むことができる。ロールツーロール工程を用いる場合、大面積の低誘電率高分子基板を大量に生産することができるという利点がある。これに限定されるものではないが、前記ロールツーロール工程の工程速度は0.1~10mpmであることが好適であり得る。
【0060】
実施例
以下では本発明の具体的な実施例及び比較例、これらの特性評価結果を通じて本発明をより具体的に説明することにする。
【0061】
1.イオンビーム前処理の有無による低誘電率高分子層と銅コーティング層間の密着力の評価
実施例1
図2は本発明の一実施例による実施例1の低誘電率高分子基板の製造方法を概略的に示す図である。
【0062】
2mm厚の低誘電率高分子であるPTFE表面上にArガスを用いて1.2kV、1mm/sの速度で線形イオンビームで前処理し、イオンビーム前処理されたPTFE上にDCスパッタ、400Wの電力で300nm厚のCu層を蒸着して、実施例1の低誘電率高分子基板を作製した。
【0063】
以降、実施例1の低誘電率高分子基板のPTFE基板とCu層の密着力評価するために蒸着されたCu層上に10μmのCu層をめっきした後、90°Peeling Testerを用いて密着力を評価した結果、PTFE基板とCu層との密着力が6N/cmであることを確認した。
【0064】
比較例1~比較例3
図3は本発明の比較例1~3の低誘電率高分子基板の製造方法を概略的に示す図である。
【0065】
2mm厚の低誘電率高分子であるPTFE表面上にArガスを用いて1.2kV、1mm/sの速度で線形イオンビームで前処理し、イオンビーム前処理されたPTFE上にDCスパッタ、300Wの電力で接着層である100nm厚のTi層(比較例1)、Cr層(比較例2)、NiCr層(比較例3)を蒸着し、Ti層(比較例1)、Cr層(比較例2)、NiCr層(比較例3)が蒸着されたPTFE上にDCスパッタ、400Wの電力で300nm厚のCu層を蒸着して比較例1~3の低誘電率高分子基板を作製した。
【0066】
以後、比較例1~3の低誘電率高分子基板のPTFE基板とCu層との密着力評価のために蒸着されたCu層上に10μmのCu層をめっきした後、90°Peeling Testerを用いて密着力を評価した結果、比較例1はPTFE基板とCu層との密着力が0.4N/cm、比較例2は0.5N/cm、比較例3は3.6N/cmであることを確認した。
【0067】
比較例4
図4は本発明の比較例4の低誘電率高分子基板の製造方法を概略的に示す図である。
【0068】
イオンビーム前処理工程を行わずに、2mm厚の低誘電率高分子であるPTFE表面上にDCスパッタ、400Wの電力で300nm厚のCu層を蒸着して比較例4を製造した。
【0069】
以後、比較例4の低誘電率高分子基板のPTFE基板とCu層との密着力評価のために蒸着されたCu層上に10μmのCu層をめっきした後、90°Peeling Testerを用いて密着力を評価した結果、PTFE基板とCu層との密着力が0.1N/cmであることを確認した。
【0070】
上述した密着力評価結果によると、低誘電率高分子層の表面上にイオンビーム前処理した後、金属コーティング層を蒸着する場合、イオンビーム前処理を行わないか、接着層が形成された後に金属コーティング層を蒸着された場合よりも、低誘電率高分子層と金属コーティング層間の密着力がより優れていることが確認できる。
【0071】
したがって、本願の低誘電率基板は、別途の接着層を形成することなく低誘電率高分子層とコーティング層間の密着力を向上させることができ、製造工程も短縮できることがわかる。
【0072】
2.ガス種類に応じたイオンビーム前処理された低誘電率高分子層の水接触角の評価
低誘電率高分子であるPTFE、FEP、PFA基板を用意し、各高分子基板の表面上に異なる種類のガスを用いながら下記の条件でイオンビーム前処理を進行して表面改質層を形成し、表面改質層が形成された高分子基板表面の水接触角を測定した。表面改質層の形成に用いられるイオンビームのエネルギーは、イオンビーム陽極電圧の30%~80%の範囲で分布するため、Gaussian分布の形態を一般に有するので、300~1000eVレベルのエネルギーを有するイオンビームを試片に照射するために、0.6~1.2kVレベルのイオンビーム陽極電圧を使用した。
【0073】
1) アルゴン(Ar)
- 1 kV、70 mA、0.6 mpm、10 回、1.17kW/mpm
2) 酸素(0
- 1 kV、58 mA、0.1 mpm、2 回、1.16 kW/mpm
3) 水素(H
- 1 kV、80 mA、0.1 mpm、2 回、1.6 kW/mpm
4) アルゴン(Ar)及び水素(H
- アルゴン(Ar): 0.6kV、26 mA、0.1 mpm、2 回、0.31 kW/mpm
- 水素(H):1.2kV、80mA、0.1 mpm、2 回、1.92 kW/mpm
- 合計2.23 kW/mpm
図5は本発明の一実施例による表面改質層が形成された低誘電率高分子基板の水接触角を示すグラフである。
【0074】
図5を参照すると、水素イオンビーム処理されたPTFE、FEP及びPFA基板表面の水との接触角が全て50°以下であり、アルゴンイオンビーム処理後の水素イオンビーム処理されたPTFE、FEP及びPFA基板表面の水との接触角が全部10°以下で現れた。これは、アルゴンイオンビーム処理又は酸素イオンビーム処理された場合よりも水との接触角が著しく低いことがわかる結果である。水との接触角が著しく低いというは表面エネルギーが高いことを意味しているし、これによって、イオンビーム前処理された高分子層の表面形状が変化が少ないことを示す。
【0075】
図6は本発明の一実施例による水素ガスイオンビームの速度当たりの印加電力量に応じた表面形状を示すイメージである。
【0076】
図6を参照すると、水素ガスイオンビームの速度当たりの印加電力量が2.1kW/mpm以上の場合、低誘電率高分子基板の表面形状が変化することがわかる。したがって、水素イオンビーム前処理する時のイオンビームの速度当たりの印加電力量は、2.0kW/mpm以下であることが適合することができることを確認した。
【0077】
したがって、フレキシブル銅張積層板等に適用されることができる本願の低誘電率高分子基板は、水素イオンビーム処理されることが表面形状を平坦に維持することに適合することができ、アルゴンイオンビーム処理後に水素イオンビーム処理することが表面形状を平らに維持することに適合することができることを確認した。
【0078】
3.ガス種類に応じたイオンビーム前処理された低誘電率高分子層表面の成分分析結果
低誘電率高分子であるPTFE基板を用意し、各PTFE基板の表面上に異なる種類のガスを用いながらイオンビーム前処理を進行して表面改質層を形成した。その後、X線光電子分光法(XPS)を活用して表面改質層が形成された高分子基板表面の成分分析を進行した。
【0079】
図7は本発明の一実施例による表面改質層が形成された低誘電率高分子基板の表面成分分析結果を示すグラフである。
【0080】
図7を参照すると、PTFE表面上にイオンビーム前処理しなかった場合及び酸素イオンビーム前処理した場合、フッ素系高分子のCF結合に該当する結合エネルギー292eVにピークが存在した。一方、水素イオンビーム又はアルゴンと水素イオンビーム前処理した場合、CF結合に該当する結合エネルギー292eV付近でピークがほとんど現れなかった。すなわち、水素イオンビーム又はアルゴンと水素イオンビーム前処理した場合、CF結合に該当する結合エネルギー292eV付近でのピークが3×10CPS以下であった。
【0081】
したがって、前記結果により、フッ素系高分子表面に水素イオンビーム又はアルゴンと水素イオンビームを前処理し、フッ素を選択的に除去することで水との接触角を下げることができ、コーティング層との密着力も向上させることができる結果が得られることを確認した。
【0082】
4.ガス種類に応じたイオンビーム前処理後に金属コーティング層が蒸着された低誘電率高分子基板
図8は本発明の一実施例による低誘電率高分子基板の金属層の表面構造を示すイメージである。
【0083】
図8を参照すると、水素イオンビーム又はアルゴンイオンビーム処理後、水素イオンビーム処理されたPTFE、FEP及びPFA基板上に銅を蒸着した場合、表面構造が平坦であることを確認することができる。一方、酸素イオンビーム又はアルゴンイオンビーム処理されたPTFE、FEP及びPFA基板上に銅を蒸着した場合、突起状の構造が形成され、表面構造が平坦でないことを確認することができる。
【0084】
したがって、フレキシブル銅張積層板等に適用されることができる本願の低誘電率高分子基板は、水素イオンビーム処理されることが表面形状を平坦に維持することに適合することができ、アルゴンイオンビーム処理後、水素イオンビーム処理することが表面形状を平坦に維持することにより適合することが出来ることを確認しました。
【0085】
5.ガス種類に応じたイオンビーム前処理後、金属コーティング層が蒸着された低誘電率高分子基板の密着力評価
低誘電率高分子であるPTFEの表面にそれぞれ異なる種類のガスを用いてイオンビーム処理後、銅を蒸着した。
【0086】
その後、PTFE基板と銅コーティング層間の密着力を評価するために、ASTM D 4541プルオフテスト(ASTM D4541 Pull-off test)、クロスカットテスト(Cross-cut test)及び90°ピーリングテスト(90°Peeling test)を行った。
【0087】
図9は本発明の一実施例による低誘電率高分子基板の密着力テスト結果を示すグラフである。
【0088】
図10は本発明の一実施例による低誘電率高分子基板のクロスカット(Cross cut)テスト結果を示すイメージである。
【0089】
図9はASTM D 4541プルオフテストを進めて密着力を評価した結果である。図9を参照すると、PTFE基板の表面上にイオンビーム処理しない場合、アルゴン又は酸素イオンビーム処理した場合より、水素イオンビーム処理した場合に低誘電率高分子基板と銅コーティング層との密着力が最も高いことがわかる。
【0090】
図10は、tesa#7475を活用したクロスカットテストを行い、密着力を評価した結果である。図10を参照すると、PTFE基板の表面上にイオンビーム処理しなかった場合、アルゴン又は酸素イオンビーム処理した場合には銅コーティング層が多く剥離されたことがわかる。一方、PTFE基板の表面上に水素イオンビーム処理した場合とアルゴンイオンビーム処理後に水素イオンビーム処理した場合には銅コーティング層がほとんど剥離されなかったことが確認できる。
【0091】
図11は本発明の一実施例による低誘電率高分子基板の90°ピーリングテスト方法を概略的に示す図である。
【0092】
図12は本発明の一実施例による低誘電率高分子基板の90°ピーリングテスト結果を示すイメージである。
【0093】
水素イオンビーム前処理して表面改質したPTFE基板とイオンビーム処理しなかったPTFE基板上に300nm厚の銅をスパッタコーティング(sputter coating)した。その後、PTFE基板と銅コーティング層間の密着力評価のために10μmの厚さで銅を電解めっきした後、90°ピーリングテストを行った。
【0094】
図12を参照すると、イオンビーム前処理しなかったPTFE基板と銅コーティング層間の接着力は0.1N/cm以下で、ほぼ評価が不可能な結果を示した。一方、水素イオンビーム前処理したPTFE基板と銅コーティング層間の接着力は7N/cmで、イオンビーム前処理しなかった場合より著しく高い接着力を示し、又アルゴンイオンビーム前処理した場合より、更に高い接着力を示したことを確認した。
【0095】
したがって、低誘電率高分子基板上に水素イオンビーム処理後にコーティング層を形成することにより、高分子層とコーティング層との密着力を向上させることを確認し、低誘電率高分子基板上に順次にアルゴンイオンビーム処理及び水素イオンビーム処理後に コーティング層を形成することが高分子層とコーティング層との密着力をさらに向上させることができることを確認した。
【0096】
以上、本発明の一実施例について説明したが、当該技術分野において、通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から外れない範囲内で、構成要素の追加、変更、削除又は追加等によって、本発明を多様に修正及び変更させることができるものであり、これも本発明の権利の範囲内に含まれるといえるだろう。
【符号の説明】
【0097】
10:低誘電率高分子層
12:表面改質層
20:コーティング層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】