IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特表2024-546120リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/086 20060101AFI20241210BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20241210BHJP
【FI】
C01B21/086
H01M10/0568
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534485
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 FR2022052214
(87)【国際公開番号】W WO2023111417
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2113700
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロジェット, セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジュアノー, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】クチュリエ, ジャン-リュック
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
(57)【要約】
本発明は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法に関し、当該製造方法は、以下の工程を含むものである:
ビス(フルオロスルホニル)イミドを、カーボネート、エーテル及びニトリルから選択される溶媒中でリチウム塩基と接触させて、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及び水を含む混合物を得る工程;
前記混合物をナノろ過膜で透析ろ過して、まず、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを増加させて水を減少させた濃縮物を、次に、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを減少させて水を増加させた透過液を得る工程。
本発明はまた、Liイオン電池用電解質の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造する方法であって、以下の工程:
ビス(フルオロスルホニル)イミドを、カーボネート、エーテル及びニトリルから選択される溶媒中でリチウム塩基と接触させて、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及び水を含む混合物を得る工程;
前記混合物をナノろ過膜で透析ろ過して、まず、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを増加させて水を減少させた濃縮物を、次に、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを減少させて水を増加させた透過液を得る工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記溶媒がカーボネートであり、好ましくはジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、又はこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リチウム塩基が、水酸化リチウム、炭酸リチウム、及びこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノフィルター膜が、80~250ダルトン、好ましくは100~200ダルトン、より好ましくは100~200ダルトンのカットオフ閾値を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と接触させる工程と、透析ろ過工程との間に、浸透気化の工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と接触させる工程と、透析ろ過工程との間に、共沸蒸留の工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを増加させて水を減少させた濃縮物の水含有量が、当該濃縮物の重量に対して、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
透析ろ過工程の間、前記濃縮物に溶媒が添加され、前記溶媒が好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と接触させる工程で使用される溶媒と同じものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
透析ろ過工程が、1~60barの圧力で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Liイオン電池の電解質を製造する方法であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載されたようにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造すること、
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含有する電解質を製造すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノろ過膜で透析ろ過(ダイアフィルトレーション)する工程を含む、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホニルイミド型のアニオンは、塩基性が非常に低いので、電池における無機塩の形態、若しくはスーパーキャパシタにおける有機塩の形態でのエネルギー貯蔵の分野、又はイオン液体の分野で、ますます使用されている。電池市場は本格的に拡大しており、電池製造コストの削減が主要な課題になっているので、このタイプのアニオンを合成するための安価で大規模なプロセスが必要である。
【0003】
Liイオン電池の特定の分野において、現在最も広く使用されている塩はLiPFだが、この塩には多くの欠点があり、それは例えば、熱安定性が限られていること、加水分解に対する感受性、ひいては電池の安全性の低さである。近年では、FSO2-基を有する新たな塩が研究されており、良好なイオン伝導性及び耐加水分解性など、多くの利点が実証されている。これらの塩のうちの1つであるLiFSI(LiN(FSO)は、非常に有利な特性を示しており、LiPFに取って代わるための有力な候補である。
【0004】
フルオロスルホニル基を有するイミド塩を製造するためのプロセスの大部分は、多数の工程を含んでいるため、除去するのが複雑なことが判明している、かつ/又は高価な精製工程を必要とする物理的特性を有する副生成物が、形成され得る。さらに、所望の塩を得るためのリチオ化反応に続いて、かなりの量の水が、イミド塩を含む溶液中に存在し得る。この水の量を低減可能に、又はさらには排除可能にすることが、重要である。
【0005】
有機溶媒の脱水は、エネルギーを消費するプロセスである。蒸留、及びその他の熱による分離法は、工業的分離で消費されるエネルギーの80%を占めており、これは、より効率的な分離が必要なことを示している。
【0006】
国際公開第2015/004236号(WO 2015/004236)は、導電性塩(例えばLiPF)のための溶媒として使用することが意図された、脱水された液状混合物(水含有量が減少している)の製造方法に関するものであり、当該製造方法は、以下のものを含有する液状出発混合物から始まる:1つ、2つ又は3つの有機カーボネートを、液状出発混合物の全量に対して合計で90重量%以上、pKaが4未満の酸からなる群から選択される1つ、2つ、又は3つの化合物、及び加水分解により、pKaが4未満の酸を液状出発混合物へと放出する前駆体。
【0007】
仏国特許第3089214号(FR 3089214)は、フルオロスルホニル基を有するイミド塩を製造する方法に関し、当該方法は、少なくとも1つの水非混和性の有機溶媒の存在下で無水HFによるフッ素化工程を含む工程b)、及び先の工程で得られた組成物と、少なくとも1つのリチオ化塩基を含む水性組成物との反応を含む工程を含むものである。
【0008】
米国特許出願公開第2012/0141868号(US 2012/0141868)は、非水性電解質溶液の脱水処理を可能にするゼオライトに関し、当該ゼオライトでは、ゼオライトを使用するリチウム電池のための非水電解質溶液の脱水の間に、ゼオライトからナトリウムが溶出するという問題が生じることはない。
【0009】
米国特許出願公開第2020/0148633号(US 2020/0148633)は、フッ化スルホニルを、有機溶媒中でヘキサメチルジシラザンと接触させることを含む、水素ビスフルオロ(スルホニル)イミドの製造方法に関する。この文献はまた、水素ビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム化合物と接触させることにより、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を製造する方法に関する。
【0010】
特願2002-001107号(JP 2002001107)は、非水電解質を処理するための、シリカ含有率が低い結晶性フォージャサイト型のゼオライト、また当該ゼオライトを用いた非水電解質の製造方法に関する。
【0011】
よって、フルオロスルホニル基を有するイミド塩、特にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法であって、既存の技術と比較して、エネルギー消費の低減が可能であるとともに、プロセス中に使用される溶媒量の低減も可能な製造方法を提供することが、真に必要とされている。さらに、フルオロスルホニル基を有するイミド塩、特にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法であって、毒性化合物、例えばフッ化リチウムによるリチオ化を避けることができるだけでなく、プロセスの精製工程も削減することが可能な製造方法を提供する必要がある。
【0012】
発明の概要
本発明はまず、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造する方法に関し、当該製造方法は、以下の工程:
ビス(フルオロスルホニル)イミドを、カーボネート、エーテル及びニトリルから選択される溶媒中でリチウム塩基と接触させて、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及び水を含む混合物を得る工程;
前記混合物をナノろ過膜で透析ろ過して、まず、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを増加させて水を減少させた濃縮物を、次に、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを減少させて水を増加させた透過液を得る工程
を含むものである。
【0013】
複数の実施態様によれば、溶媒がカーボネートであり、好ましくはジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、又はこれらの混合物から選択される。
【0014】
複数の実施態様によれば、リチウム塩基は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、及びこれらの混合物から選択される。
【0015】
複数の実施態様によれば、ナノろ過膜はカットオフ閾値が、80~250ダルトン、好ましくは100~200ダルトン、より好ましくは120~180ダルトンである。
【0016】
複数の実施態様によれば、本方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と接触させる工程と、透析ろ過工程との間に、浸透気化の工程を含む。
【0017】
複数の実施態様によれば、本方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と接触させる工程と、透析ろ過工程との間に、共沸蒸留の工程を含む。
【0018】
複数の実施態様によれば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを増加させて水を減少させた濃縮物は、水含有量が、当該濃縮物の重量に対して、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下である。
【0019】
複数の実施態様によれば、透析ろ過工程の間、濃縮物に溶媒が添加され、当該溶媒が好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と接触させる工程で使用される溶媒と同じである。
【0020】
複数の実施態様によれば、透析ろ過工程が、1~60barの圧力で行われる。
【0021】
本発明はまた、Liイオン電池の電解質を製造する方法に関し、当該方法は、
前述のようにビス(フルオロスルホニル)イミドを製造すること、
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含有する電解質を製造すること
を含むものである。
【0022】
本発明により、前述の必要性を満たすことが可能になる。より具体的には、本発明により、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法であって、既存の技術と比較して、エネルギー消費の低減が可能であるとともに、プロセス中に使用される溶媒量の低減も可能な製造方法が提供される。さらに、本発明によってまた、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法であって、毒性化合物、例えばフッ化リチウムによるリチオ化を避けることができるだけでなく、プロセスの精製工程も削減することが可能な製造方法も提供される。
【0023】
これは、本発明の方法により達成される。より具体的には、本方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミドと、リチウム塩基(それ自体とビス(フルオロスルホニル)イミドとの反応後に、水を生成可能なもの)とを、カーボネート、エーテル、及びニトリルから選択される溶媒中で接触させて、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩及び水を含む混合物を形成する第1の工程を含む。このようなリチウム塩基の使用、またその後に水を効果的に除去可能であるという事実により、毒性のあるリチウム塩の使用を回避することが可能になる。
【0024】
次に、ナノろ過膜で透析ろ過する工程により、プロセスのエネルギー消費又は溶媒の消費を増加させる方法を使用せずに、残っている水の量を効果的に除去することが可能になる。
【0025】
最後に、透析ろ過の間に、ビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と接触させる工程の後に得られた混合物中に存在する様々な不純物を排除することもでき、これによって、追加の精製工程を減らすこと、又はさらにはこれを回避することが可能になる。
【0026】
詳細な説明
以下で本発明をより詳細に説明するが、下記説明により本発明が限定されることはない。
【0027】
リチウム電池
リチウム電池は、少なくとも1つの電気化学セルを含み、好ましくは、複数の電気化学セルを含む。電気化学セルはそれぞれ、負極、正極、及び負極と正極との間に介在する電解質を備える。
【0028】
電気化学セルはそれぞれ、電解質が含侵されたセパレータを備えることもできる。
【0029】
電気化学セルは、電池において直列及び/又は並列で組み立てることができる。
【0030】
「負極」という用語は、電池が電流を運ぶとき(すなわち、電池が放電プロセスにあるとき)にはアノードとして作用するとともに、電池が充電プロセスにあるときにはカソードとして作用する電極を意味すると理解される。
【0031】
負極は通常、電気化学的な活物質を、任意選択的に導電性材料、及び任意選択的にバインダを含む。
【0032】
「正極」という用語は、電池が電流を運ぶとき(すなわち、電池が放電プロセスにあるとき)にはカソードとして作用するとともに、電池が充電プロセスにあるときにはアノードとして作用する電極を意味すると理解される。
【0033】
正極は通常、電気化学的な活物質を、任意選択的に導電性材料、及び任意選択的にバインダを含む。
【0034】
「電気化学的な活物質」という用語は、可逆的にイオンを挿入可能な物質を意味すると理解される。
【0035】
「導電性材料」とは、電子の伝導が可能な材料を意味すると理解される。
【0036】
電気化学セルの負極は、特に、電気化学的な活物質として、金属リチウムを含み得る。この金属リチウムは、実質的に純粋な形態、又は合金の形態であり得る。使用可能なリチウム系合金うち、例えば、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-シリカ合金、リチウム-スズ合金、Li-Zn、LiBi、LiCd、及びLiSBを挙げることができる。上記材料の混合物も、使用することができる。
【0037】
負極は、膜又はロッドの形状であり得る。負極の一例は、ローラ間でリチウムのストリップを圧延することにより製造された活性リチウム膜を含み得る。
【0038】
正極は、電気化学的な活物質を含み、これは好ましくは酸化物系であり、好ましくは、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウム/マンガン複合酸化物(例えば、LiMn、又はLixMnO)、リチウム/ニッケル複合酸化物(例えば、LiNiO)、リチウム/コバルト複合酸化物(例えば、LiCoO)、リチウム/ニッケル/コバルト複合酸化物(例えば、LiNi1-yCoyO)、リチウム/ニッケル/コバルト/マンガン複合酸化物(例えば、LiNiMnCo、ただしx+y+z=1)、リチウムを増加させたリチウム/ニッケル/コバルト/マンガン複合酸化物(例えば、Li1+x(NiMnCo1-x)、リチウム/遷移金属複合酸化物、スピネル構造のリチウム/マンガン/ニッケル複合酸化物(例えば、LiMn2-yNi)、酸化バナジウム、及びこれらの混合物から選択される。
【0039】
正極は好ましくは、電気化学的な活物質を含み、これはニッケル含有量が高いリチウム/ニッケル/マンガン/コバルト複合酸化物(LiNiMnCo、ここでx+y+z=1(略称はNMC)、ただしx>y、かつx>z)、又は、ニッケル含有量が高いリチウム/ニッケル/コバルト/アルミニウム複合酸化物(LiNix’Coy’Alz’、ここでx’+y’+z’=1(略称はNCA)、ただしx’>y’、かつx’>z’)。
【0040】
これらの酸化物の特定の例は、NMC532(LiNi0.5Mn0.3Co0.2)、NMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2)、及びNMC811(LiNi0.8Mn0.1Co0.1)である。
【0041】
各電極の材料はまた、電気化学的な活物質以外に、炭素源などの導電性材料を含むこともでき、これには例えば、カーボンブラック、Ketjen(登録商標)カーボン、シャウィニガン(Shawinigan)カーボン、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維(例えば、気相成長炭素繊維、又はVGCF)、有機前駆体を炭化することにより得られる非粉末状炭素、又はこれらのうち2つ若しくは3つの組み合わせが含まれる。他の添加剤もまた、正極の材料中に存在していてよく、他の添加剤は例えば、リチウム塩、又はセラミックス型若しくはガラス型の無機粒子、又はその他の適合性活物質(例えば、硫黄)である。
【0042】
各電極の材料は、バインダを含むこともできる。バインダの非限定的な例には、直鎖状、分岐状及び/若しくは架橋ポリエーテルポリマーバインダー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)又はポリ(プロピレンオキシド)(PPO)に基づくポリマー、又はこれら2つの混合物(又はEO/POコポリマー)に基づくポリマーであって、任意選択的に架橋単位を含むもの)、水溶性バインダ(例えば、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエンゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム)、又はフルオロポリマー系のバインダ(例えばPVDF(ポリビニリデンフルオリド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))、及びこれらの組み合わせが含まれる。いくつかのバインダ、例えば水に可溶性のものは、添加剤、例えばCMC(カルボキシメチルセルロース)を含むこともできる。
【0043】
セパレータは、多孔質ポリマー膜であり得る。非限定的な例として、セパレータは、ポリオレフィンの多孔質フィルムから、例えばエチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/メタクリレートコポリマー、又は上記コポリマーの多層構造からなり得る。
【0044】
電解質は、少なくとも1つのリチウム塩を含み、好ましくは複数のリチウム塩を含む。
【0045】
本発明の文脈において、リチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含む。
【0046】
複数の実施態様において、リチウム塩は、実質的にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなるか、又はさらには、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)からなる。
【0047】
他の実施態様によれば、リチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)と、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDBOB)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO)、及びリチウムテトラフルオロボレート(LiBF)から選択される1又は複数のさらなる塩も含む。
【0048】
電解質溶媒は、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類、ニトリル類、カーボネート類、アミド類、スルファミド類、及びスルホンアミド類、並びにこれらの混合物から選択され得る。電解質溶媒は好ましくは、カーボネート、エーテル、及びニトリルから選択される少なくとも1つの溶媒を含み、より好ましくは電解質溶媒が、少なくとも1つのカーボネートを含む。
【0049】
エーテル類のうち、直鎖又は環状のエーテルを挙げることができ、それは例えば、ジメトキシエタン(DME)、2~5個のオキシエチレン単位を有するオリゴエチレングリコールのメチルエーテル、ジオキソラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物である。
【0050】
これらのエステル類のうち、リン酸エステル又は亜硫酸エステルを挙げることができる。例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0051】
ケトン類のうち、特にシクロヘキサノンを挙げることができる。
【0052】
アルコール類のうち、例えばエチルアルコール又はイソプロピルアルコールを挙げることができる。
【0053】
ニトリル類のうち、例示的に、アセトニトリル、ピルボニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアミノプロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ピバロニトリル、イソバレロニトリル、グルタロニトリル、メトキシグルタロニトリル、2-メチルグルタロニトリル、3-メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、マロノニトリル、1,2,6-トリシアノヘキサン、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0054】
カーボネート類のうち、例えば、環状カーボネート、例えば、エチレンカーボネート(EC)(CAS:96-49-1)、プロピレンカーボネート(PC)(CAS:108-32-7)、ブチレンカーボネート(BC)(CAS:4437-85-8)、ジメチルカーボネート(DMC)(CAS:616-38-6)、ジエチルカーボネート(DEC)(CAS:105-58-8)、エチルメチルカーボネート(EMC)(CAS:623-53-0)、ジフェニルカーボネート(CAS:102-09-0)、メチルフェニルカーボネート(CAS:13509-27-8)、ジプロピルカーボネート(DPC)(CAS:623-96-1)、メチルプロピルカーボネート(MPC)(CAS:1333-41-1)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ビニレンカーボネート(VC)(CAS:872-36-6)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)(CAS:114435-02-8)、トリフルオロプロピレンカーボネート(CAS:167951-80-6)、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0055】
アミド類のうち、ジメチルホルムアミド、及びN-メチルピロリジノンを挙げることができる。
【0056】
より好ましくは、電解質溶媒は、EC、EMC、ECとEMCとの混合物、ECとDMCとの混合物、ECとDECとの混合物、ECとDECとPCとの混合物、ECとDMCとEMCとの混合物から選択される。
【0057】
任意選択的に、電解質は、1又は複数の極性ポリマーを含み得る。極性ポリマーは、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピフルオロヒドリン、トリフルオロエポキシプロパン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸及びメタクリロニトリル酸のエステル及びアミド、フッ化ビニリデン、N-メチルピロリドン、並びに/又はポリカチオン若しくはポリアニオンの高分子電解質から誘導されるモノマー単位を含む。本発明の電解質組成物が1つより多いポリマーを含む場合、これらのうち少なくとも1つが、架橋されていてよい。
【0058】
さらに、電解質は、1又は複数の添加剤を含み得る。1又は複数の添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ブタジエン、セバコニトリル、アルキルジスルフィド、フルオロトルエン、1,4-ジメトキシテトラフルオロトルエン、t-ブチルフェノール、ジ(t-ブチル)フェノール、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、オキシム、脂肪族エポキシド、ハロゲン化ビフェニル、メタクリル酸、アリルエチルカーボネート、酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、プロパンスルトン、アクリロニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、メチルホスホネート、ビニルを含むシラン化合物、及び/又は2-シアノフランからなる群から選択され得る。
【0059】
少なくとも1つのリチウム塩は、電解質の重量に対して0.1%~50%の含有量で、電解質中に存在し得る。
【0060】
プロセス
本発明による方法により、直接、又は塩、溶媒及び/若しくは添加剤の添加後に、Liイオン電池の電解質として使用可能な、水の含有量が少ないリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド溶液を製造することが可能になる。
【0061】
本発明による方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミドを、溶媒中でリチウム塩基と接触させて、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及び水を含む混合物を得る工程を含む。
【0062】
この工程で使用されるビス(フルオロスルホニル)イミドは、以下の式(I)のスルホンアミドから塩素化工程により得られるものであり得る:
(I) R-(SO)-NH
式中、Rは、フッ素原子、塩素原子、又はヒドロキシ基から選択され得る。
【0063】
この工程は、少なくとも1つの硫黄系酸、及び少なくとも1つの塩素化剤によって行われ得る。
【0064】
さらに、この工程は、
・30℃~150℃の間の温度で、かつ/又は
・1時間と7日との間の反応時間で、かつ/又は
・1bar absと20bar absとの間の圧力で、
行われ得る。
【0065】
本発明によれば、硫黄系剤は、クロロスルホン酸(ClSOH)、硫酸、発煙硫酸、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0066】
本発明によれば、塩素化剤は、塩化チオニル(SOCl)、塩化オキサリル(COCl)2、五塩化リン(PCl)、三塩化ホスホニル(PCl)、三塩化ホスホリル(POCl)、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。塩素化剤は好ましくは、塩化チオニルである。
【0067】
塩素化工程は、触媒の存在下で行うことができ、この触媒は例えば、第三級アミン(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、又はジエチルメチルアミン)、ピリジン、及び2,6-ルチジンから選択される。
【0068】
硫黄系酸と式(I)の化合物とのモル比は、0.7~5、好ましくは0.9~5であり得る。
【0069】
塩素化剤と式(I)の化合物とのモル比は、2~10、好ましくは2~5であり得る。
【0070】
特に、硫黄系剤がクロロスルホン酸である場合、後者と式(I)の化合物とのモル比は、0.9~5であり、かつ/又は塩素化剤と式(I)の化合物とのモル比は、2~5である。
【0071】
特に、硫黄系剤が硫酸(又は発煙硫酸)である場合、硫酸(又は発煙硫酸)と式(I)の化合物とのモル比は、0.7~5である。
【0072】
特に、硫黄系剤が硫酸(又は発煙硫酸)である場合、硫酸(又は発煙硫酸)と式(I)の化合物とのモル比は、0.9~5であり、かつ/又は塩素化剤と式(I)の化合物とのモル比は、2~10である。
【0073】
塩素化工程によって、有利なことに、式(II)の化合物:
(II) R-(SO)-NH-(SO)-Cl
を形成することが可能になる。
【0074】
本発明による方法は、次に、式(II)の化合物をフッ素化する工程を含み得る。
【0075】
式(I)のこの化合物をフッ素化する工程は、少なくとも1つのフッ素化剤によって行うことができ、好ましくは少なくとも1つの有機溶媒SO1の存在下で行うことができる。
【0076】
1つの実施態様によれば、フッ素化剤が、HF(好ましくは無水HF)、KF、AsF、BiF、ZnF、SnF、PbF、CuF、及びこれらの混合物からなる群から選択され、フッ素化剤は、好ましくはHFであり、さらに好ましくは、無水HFである。
【0077】
本発明の文脈において、「無水HF」という用語は、水を500ppm未満、好ましくは水を300ppm未満、好適には水を200ppm未満、含有するHFを意味すると理解される。
【0078】
フッ素化工程は好ましくは、少なくとも1つの有機溶媒SO1中で行われる。有機溶媒SO1は好ましくは、ドナー数が1~70、有利には5~65である。溶媒のドナー数は、-ΔH値を表し、ΔHは、溶媒と五塩化アンチモンとの間の相互作用のエンタルピーである(Journal of Solution Chemistry, vol. 13, No. 9, 1984に記載された方法に準拠)。有機溶媒SO1としては、特にエステル、ニトリル、ジニトリル、エーテル、ジエーテル、アミン、ホスフィン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0079】
有機溶媒SO1は好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、グルタロニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ピリジン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジエチルイソプロピルホスフィン、及びこれらの混合物から成る群から選択される。有機溶媒SO1は特に、ジオキサンである。
【0080】
フッ素化工程は、0℃と有機溶媒SO1(又は有機溶媒SO1の混合物)の沸点との間の温度で行われ得る。フッ素化工程は好ましくは、5℃と有機溶媒SO1(又は有機溶媒SO1の混合物)の沸点との間の温度で、好適には、20℃と有機溶媒SO1(又は有機溶媒SO1の混合物)の沸点との間の温度で行う。
【0081】
フッ素化工程(好ましくは、無水フッ酸によるフッ素化工程)は、圧力P、好ましくは0~16bar absの圧力で行われ得る。
【0082】
フッ素化工程は好ましくは、フッ化剤と、好ましくは無水HFと反応させる工程の前に、式(II)の化合物を、有機溶媒SO1中、又は有機溶媒SO1の混合物中に溶解させることにより行われる。
【0083】
式(II)の化合物と、有機溶媒SO1、又は有機溶媒SO1の混合物との質量比は好ましくは、0.001~10、有利には0.005~5である。
【0084】
1つの実施態様によれば、無水HFが、反応媒体中、好ましくは気体状の反応媒体中に導入される。
【0085】
フッ化剤、好ましくは無水HFと、使用される式(II)の化合物との質量比は好ましくは、1~10、有利には1~5である。
【0086】
フッ化剤、好ましくは無水HFと反応させる工程は、閉鎖媒体中、又は開放媒体中で行うことができる。フッ素化工程は、特に気体状HClの発生を伴う、開放媒体中で行うのが好ましい。
【0087】
フッ素化反応は通常、HClの形成につながり、その大部分は、例えば中性ガス(例えば窒素、ヘリウム、アルゴン)による同伴(ストリッピング)によって、反応媒体から脱気され得る(フッ素化剤がHFの場合の、過剰なHFと同様)。
【0088】
しかしながら、残留HF及び/又はHClは、反応媒体中に溶解されていてよい。HClの場合、その量は非常に少ない。作業圧力及び温度において、HClは主に気体だからである。
【0089】
フッ素化工程の終了時に得られる組成物は、HFに耐性のある容器で保管することができる。
【0090】
フッ素化工程の終了時に得られる組成物は、HF(特に未反応のHF)、ビス(フルオロスルホニル)イミド、溶媒SO1(例えばジオキサン)を、及び場合によりHCl、及び/又は任意選択的に重質化合物を含み得る。
【0091】
本発明による方法は好ましくは、フッ素化工程の後に得られる溶液を蒸留する工程を含む。
【0092】
1つの実施態様によれば、蒸留工程により、以下の流れを形成及び回収することが可能になる:
・HFを、好ましくは蒸留塔の上部で含む第1の流れF1であって、任意選択的に有機溶媒SO1、及び/又は任意選択的にHClを含み、気体状又は液状である、流れF1、
・ビス(フルオロスルホニル)イミドを、好ましくは蒸留塔の底部で含む第2の流れF2であって、任意選択的に重質化合物を含み、好ましくは液状である、流れF2。
【0093】
流れF2が重質化合物を含む場合、流れF2を第2の蒸留塔でさらなる蒸留工程に供して、以下の流れを形成及び回収することができる:
・ビス(フルオロスルホニル)イミドを、好ましくは蒸留塔の上部で含む流れF2-1であって、重質化合物を含まず、好ましくは液状である、流れF2-1、
・重質化合物及びビスフルオロスルホニルイミドを、好ましくは蒸留塔の底部で含む流れF2-2であって、フッ素化工程の後に得られる組成物中に含まれるビス(フルオロスルホニル)イミドを10重量%未満、好ましくは7重量%未満、好適には5%未満含み、好ましくは液状である、流れF2-2。
【0094】
1つの実施態様によれば、フッ素化工程で得られた組成物を、2つの蒸留塔を使用して蒸留する工程により、以下の流れを形成及び回収することが可能になる:
・HFを、第1の蒸留塔の上部で含む第1の流れF1であって、任意選択的に有機溶媒SO1、及び/又はHClを含み、気体状又は液状である、流れF1、
・ビス(フルオロスルホニル)イミドを、第1の蒸留塔の底部で含む第2の流れF2であって、任意選択的に重質化合物を含み、好ましくは液状である、流れF2、
・当該流れF2は、第2の蒸留塔で蒸留工程に供され、以下の流れを形成及び回収する:
・ビス(フルオロスルホニル)イミドを、第2の蒸留塔の上部で含む流れF2-1であって、重質化合物を含まず、好ましくは液状である、流れF2-1、
・重質化合物及びビス(フルオロスルホニル)イミドを、第2の蒸留塔の底部で含む流れF2-2であって、フッ素化工程の後に得られた組成物中に含まれるビス(フルオロスルホニル)イミドを10重量%未満、好ましくは7%未満、好適には5%未満、含み、好ましくは液状である、流れF2-2。
【0095】
本発明の文脈において、「重質化合物」という用語は、ビス(フルオロスルホニル)イミドよりも高い沸点を有する有機化合物を意味すると理解される。重質化合物は、式(II)の切断反応から生じることがあり、これによって例えば、FSONH等の化合物につながり、かつ/又は溶媒分解反応から、オリゴマーの形成につながる。
【0096】
1つの実施態様によれば、フッ素化工程で得られた組成物を蒸留する工程により、以下の流れを形成及び回収することが可能になる:
・HFを、好ましくは蒸留塔の上部に含む第1の流れF’1であって、任意選択的に有機溶媒SO1、及び/又は任意選択的にHClを含み、気体状又は液状である、流れF’1、
・好ましくは側方流抜き取りにより回収された、ビス(フルオロスルホニル)イミドを含む第2の流れF’2であって、好ましくは液状である、流れF’2、
・重質物及びビス(フルオロスルホニル)イミドを、好ましくは蒸留塔の底部に含む第3の流れF’3であって、フッ素化工程で得られた組成物中に含まれるビス(フルオロスルホニル)イミドを10%未満、好ましくは7%未満、好適には5%未満、含み、好ましくは液状である、流れF’3。
【0097】
側方流抜き取りを行うため、蒸留塔は、少なくとも1つのトレイを有し得る。
【0098】
蒸留工程は、0~5bar abs、好ましくは0~3bar abs、好適には0~2bar abs、有利には0~1bar absの圧力範囲で行われ得る。
【0099】
蒸留工程は、
・150℃~200℃、好ましくは160℃~180℃、好適には165℃~175℃の範囲の蒸留塔底部温度にて、1bar absの圧力で、又は
・30℃~100℃、好ましくは40℃~90℃、好適には40℃~85℃の範囲の蒸留塔底部温度にて、0.03bar absの圧力で、
行われ得る。
【0100】
蒸留工程は、あらゆる従来の装置で行われ得る。このような装置は、蒸留塔、ボイラ、及び凝縮器を含む蒸留装置であり得る。
【0101】
蒸留塔は、
・少なくとも1つの充填物、例えば不規則充填物及び/若しくは規則充填物、並びに/又は
・トレイ、例えば有孔トレイ、固定バルブトレイ、可動式バルブトレイ、バブルキャップトレイ、又はこれらの組み合わせ
を含み得る。
【0102】
蒸留塔の高さは通常、分離すべき化合物の性質に依存する。通常、使用する流量に応じて、蒸留塔は、任意のタイプの直径(小さい:1メートル以下)、又は大きい:1メートル超)を有し得る。
【0103】
蒸留塔の材料、内部構成要素(充填物及び/又はトレイ)の材料、ボイラの材料、及び/又は凝縮器の材料は、蒸留に供される組成物中にHF及び/又はHClが存在する可能性を考慮して、耐食性材料から選択されるのが有利である。
【0104】
耐食性材料は、エナメル鋼、ニッケル、チタン、クロム、黒鉛、炭化ケイ素、ニッケル系合金、コバルト系合金、クロム系合金、保護性フルオロポリマーコーティング(例えばPVDF:ポリフッ化ビニリデン、PTFE:ポリテトラフルオロエチレン、PFA:Cと過フッ素化ビニルエーテルとのコポリマー、FEP:CとCとのコポリマー、ETFE:エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、若しくはFKM:ヘキサフルオロプロピレンとジフルオロエチレンとのコポリマー)で部分的又は完全にコーティングされた鋼から選択され得る。
【0105】
ニッケル系合金は好ましくは、合金の総重量に対して、ニッケルを少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50%含む、合金である。その例として挙げられるのは、Inconel(登録商標)、Hastelloy(登録商標)、又はMonel(登録商標)の合金である。
【0106】
流れF1及びF’1は、HF、HCl、及び有機溶媒SO1(特にジオキサン)を含み得る。
【0107】
1つの実施態様によれば、流れF1は、流れF1の総重量に対して、HFを2~70重量%、好ましくはHFを5~60重量%、含み、流れF1の総重量に対して、SO1を30~98重量%、好ましくはSO1を40~95重量%、含む。
【0108】
1つの実施態様によれば、流れF’1は、流れF1の総重量に対して、HFを2~70重量%、好ましくはHFを5~60重量%、含み、流れF1の総重量に対して、SO1を30~98重量%、好ましくはSO1を40~95重量%、含む。
【0109】
1つの実施態様によれば、流れF2は、流れF2の総重量に対して、ビス(フルオロスルホニル)イミドを50~100重量%、好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドを70~99重量%、含む。
【0110】
1つの実施態様によれば、流れF’2は、流れF’2の総重量に対して、ビス(フルオロスルホニル)イミドを50~100重量%、好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドを70~99重量%、含む。
【0111】
1つの実施態様によれば、流れF2-1は、流れF2-1の総重量に対して、ビス(フルオロスルホニル)イミドを50~100重量%、好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドを70~99重量%、含む。
【0112】
こうして、ビス(フルオロスルホニル)イミド(又はフッ素化工程から生じる溶液)を含む流れ、例えば上記流れF2、F’2及び/又はF-1を、リチウム塩基と接触させる。
【0113】
リチウム塩基は、少なくとも1つのリチウム原子、及び少なくとも1つの酸素原子を含み得る。よってこの塩基は、ビス(フルオロスルホニル)イミドと反応した後、水を生成することができる。この塩基は例えば、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)、及びこれらの混合物を含み得るか、又はこれらから選択され得る。
【0114】
好ましくは、リチウム塩基が、フッ化リチウムを含まない。
【0115】
リチウム塩基の、ビス(フルオロスルホニル)イミドに対するモル比は、0.9~1.1、好ましくは1~1.05であり得る。
【0116】
この接触は、溶媒中で行われる。溶媒は、カーボネート、エーテル、及びニトリルから選択される。
【0117】
エーテル類のうち、直鎖状又は環状エーテル、例えばジメトキシエタン(DME)、オキシエチレン単位を2~5個有するオリゴエチレングリコールのメチルエーテル、ジオキソラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0118】
ニトリル類のうち、例示的には例えば、アセトニトリル、ピルボニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアミノプロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ピバロニトリル、イソバレロニトリル、グルタロニトリル、メトキシグルタロニトリル、2-メチルグルタロニトリル、3-メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、マロノニトリル、1,2,6-トリシアノヘキサン、及びこれらの混合物を挙げることができる。好ましいニトリルは、アセトニトリルである。
【0119】
カーボネート類、例えば環状カーボネートのうち、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0120】
リチウム塩基とビス(フルオロスルホニル)イミドとを接触させるために使用される溶媒は、好ましくはカーボネートであり、より好ましくは、ジメチルカーボネートである。
【0121】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの、溶媒に対する質量比は、10%~60%、好ましくは30%~40%である。
【0122】
この工程は、ビス(フルオロスルホニル)イミド及びリチウム塩基を、溶媒に添加することによって行うことができる。例えば、ビス(フルオロスルホニル)イミドは、溶媒中にリチウム塩基を分散させた分散液に添加され得る。
【0123】
さらに、接触工程は、0~50℃の温度で行われ得る。
【0124】
よって、この工程により、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及び水を含む混合物を得ることが可能になる。この混合物は、当該混合物の重量に対して、水の含有量が2%以下、好ましくは3%以下、好ましくは4%以下であり得る。
【0125】
この混合物はまた、1又は複数の不純物を含み得る。これらの不純物は例えば、フッ化リチウム(LiF)、硫酸リチウム(LiSO)、及び/又は塩化リチウム(LiCl)を含み得る。
【0126】
ろ過工程は、任意選択的に、接触工程後に行われ得る。
【0127】
複数の実施態様によれば、本発明による方法は、先に得られた混合物を浸透蒸発させる工程を含む。この工程により、混合物中の水含有量を減らすことが可能になる。よって、工程の終了後、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む混合物は、水含有量が、混合物の重量に対して500ppm以下、好ましくは400ppm以下である。例えば、この含有量は、混合物の重量に対して、100~150ppm、又は150~200ppm、又は200~250ppm、又は250~300ppm、又は300~350ppm、又は350~400ppm、又は400~450ppm、又は450~500ppmであり得る。
【0128】
追加的に、又は代替的に、本発明による方法は、先に得られた混合物を共沸蒸留させる工程を含み得る。この蒸留工程は例えば、蒸発(バッチ蒸発、若しくは流下薄膜蒸発、若しくは薄膜(wiped-film)蒸発)によって、又は蒸留塔の存在下で、好ましくは0.01~1013mbarの圧力にて、好ましくは100℃未満の温度、好ましくは50℃未満の温度で行われ得る。この工程によって、混合物中の水含有量を減らすことも可能になる。よって、この工程の終了後、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む混合物は、水含有量が、混合物の重量に対して500ppm以下、好ましくは400ppm以下であり得る。例えば、この含有量は、混合物の重量に対して、100~150ppm、又は150~200ppm、又は200~250ppm、又は250~300ppm、又は300~350ppm、又は350~400ppm、又は400~450ppm、又は450~500ppmであり得る。
【0129】
上記工程の1つに代えて、又はこれに追加して、本発明による方法は、混合物を透析ろ過する工程を含む。ここで「混合物」という用語は、リチウム塩基をビス(フルオロスルホニル)イミドと接触させる工程の後に得られる混合物、又は浸透蒸発後に得られる混合物、又は共沸蒸留工程後に得られる混合物のいずれかを意味すると理解される。
【0130】
透析ろ過は、ナノろ過膜で行われる。
【0131】
複数の実施態様によれば、ナノろ過膜は、カットオフ閾値が、80~250ダルトン、好ましくは100~200ダルトン、より好ましくは120~180ダルトンであり得る。
【0132】
ナノろ過膜が存在することにより、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを保持することが可能になる一方で、水、溶媒、及び様々な不純物を通過させることが可能になる。よって、この工程終了後には、まず、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを増加させて水(及び不純物)を減少させた濃縮物が得られ、次に、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを減少させて水(及び不純物)を増加させた透過液が得られる。
【0133】
複数の実施態様によれば、透析ろ過工程は、1~60barの圧力で行われる。
【0134】
複数の実施態様によれば、透析ろ過工程は、5~60℃の温度で行われる。
【0135】
好ましくは、透析ろ過工程の間に、溶媒が濃縮物に添加され得る。よって、好ましくは、濃縮物中におけるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量は、透析ろ過に入る混合物中のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量と、実質的に等しい。好ましくは、この溶媒は、ビス(フルオロスルホニル)イミドとリチウム塩基とを接触させる工程で使用される溶媒と、同じものである。代替的には、この溶媒は、ビス(フルオロスルホニル)イミドとリチウム塩基とを接触させる工程で使用される溶媒と異なる。この場合、この溶媒は、先に詳術したカーボネート類、エーテル類、及びニトリル類から選択され得る。添加される溶媒は好ましくは、水を含まないか、又は例えば、50ppm以下、若しくは20ppm以下の水含有量を含む。溶媒は代替的に、希釈を行うために、透析ろ過工程の前に、混合物に添加され得る。この場合に濃縮物は、溶媒のうちいくらかを除去するために、濃縮され得る。
【0136】
透析ろ過工程の間、使用する溶媒の量は、リチウム塩基とビスフルオロスルホニルイミドとを接触させる工程の後に得られる混合物の体積の1倍から20倍であり得る。より具体的には、プロセスが浸透蒸発又は共沸蒸留する工程を含む場合(透析ろ過の前に)、透析ろ過工程の間に使用する溶媒の量は、リチウム塩基とビスフルオロスルホニルイミドとを接触させる工程の後に得られる混合物の体積の1倍~10倍、好ましくは2~3倍であり得る。一方で、プロセスが浸透蒸発又は共沸蒸留する工程を含まない場合、透析ろ過工程の間に使用する溶媒の量は、リチウム塩基とビスフルオロスルホニルイミドとを接触させる工程の後に得られる混合物の体積の5~20倍、好ましくは6~8倍であり得る。
【0137】
好ましい実施態様によれば、透析ろ過工程の後に得られる濃縮物は、濃縮物の重量に対して、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下の水含有量を含む。この含有量は例えば、濃縮物の重量に対して、1~10ppm、又は10~20ppm、又は20~30ppm、又は30~40ppm、又は40~50ppm、又は50~60ppm、又は60~70ppm、又は70~80ppm、又は80~90ppm、又は90~100ppmであり得る。
【0138】
さらに、透析ろ過工程の後に得られる濃縮物は、不純物含有量として、フッ化リチウムを100ppm以下、及び/又は塩化リチウムを10ppm以下、及び/又は硫酸リチウムを50ppm以下、含み得る。
【0139】
よって濃縮物は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量が、10~60重量%、好ましくは30~40重量%であり得る。
【0140】
使用
本発明はまた、本発明による方法によって得られるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの、前述のLiイオン電池における、特にLiイオン電池の電解質における使用に関する。
【0141】
特に、このような電池は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、カメラ、タブレット、若しくはラップトップコンピュータ)のLiイオン電池、電気自動車のLiイオン電池、又は再生エネルギー(例えば、光起電又は風力エネルギー)を貯蔵するためのLiイオン電池である。
【0142】
複数の実施態様によれば、透析ろ過工程の後に得られる濃縮物は、Liイオン電池の電解質として直接、使用され得る。
【0143】
他の好ましい実施態様によれば、透析ろ過工程の後に得られる濃縮物は、1又は複数の成分(例えば、さらなるリチウム塩、さらなる溶媒、及び/又は添加剤)を添加した後に、Liイオン電池の電解質として、使用され得る。これらの成分については、先に述べたとおりである。
【国際調査報告】