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特表2024-546124モリブデン化合物、その製造方法、およびそれを含む薄膜蒸着用組成物
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  • 特表-モリブデン化合物、その製造方法、およびそれを含む薄膜蒸着用組成物 図1
  • 特表-モリブデン化合物、その製造方法、およびそれを含む薄膜蒸着用組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】モリブデン化合物、その製造方法、およびそれを含む薄膜蒸着用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20241210BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20241210BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
C23C16/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534608
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 KR2022019323
(87)【国際公開番号】W WO2023113308
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0177700
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515339697
【氏名又は名称】ディーエヌエフ シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】DNF CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヨンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イム ヨンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン サンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ピョン テソク
(72)【発明者】
【氏名】イ サンチャン
(72)【発明者】
【氏名】イ サンイック
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA09
4K030AA10
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA12
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA01
4K030FA01
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030JA16
4K030LA15
5F058BA06
5F058BB01
5F058BB02
5F058BB05
5F058BB06
5F058BB07
5F058BC01
5F058BC07
5F058BD02
5F058BD03
5F058BD09
5F058BF04
5F058BF07
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
5F058BJ01
(57)【要約】
本発明は、モリブデン化合物、その製造方法、それを含むモリブデン薄膜含有薄膜蒸着用組成物、それを用いたモリブデン含有薄膜の製造方法に関し、優れた熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を有する本発明のモリブデン化合物を採用することで、向上した蒸着速度で均一な厚さのモリブデン含有薄膜を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるモリブデン化合物。
【化1】
[前記化学式1中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり、
~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してよい。]
【請求項2】
前記化学式1中、
Lは、C1-C6アルキレンであり、
~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してよい、請求項1に記載のモリブデン化合物。
【請求項3】
下記化学式2で表されるものである、請求項1に記載のモリブデン化合物。
【化2】
[前記化学式2中、
~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してよく、
mは、1~3の整数である。]
【請求項4】
下記化合物から選択されるものである、請求項1に記載のモリブデン化合物。
【化3】
【請求項5】
水素供給源またはアルキルリチウム、下記化学式4の化合物、および下記化学式5の化合物を反応させ、下記化学式1-1で表されるモリブデン化合物を製造するステップを含む、モリブデン化合物の製造方法。
【化4】
【化5】
【化6】
[前記化学式1-1、4、および5中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり、
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してよく、
Xは、ハロゲンである。]
【請求項6】
請求項1~4の何れか一項に記載のモリブデン化合物を含む、モリブデン含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のモリブデン含有薄膜蒸着用組成物を用いて薄膜を製造する、モリブデン含有薄膜の製造方法。
【請求項8】
a)チャンバー内に取り付けられた基板を昇温させるステップと、
b)前記チャンバー内に反応ガスと前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を注入してモリブデン含有薄膜を製造するステップと、を含む、請求項7に記載のモリブデン含有薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記反応ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、蒸留水(HO)、過酸化水素(H)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、窒素(N)、ヒドラジン(N)、アミン、ジアミン、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、C~C12の飽和または不飽和炭化水素、水素(H)、アルゴン(Ar)、およびヘリウム(He)から選択される何れか一つまたは二つ以上のものである、請求項8に記載のモリブデン含有薄膜の製造方法。
【請求項10】
c)b)ステップの後に、チャンバー内に反応ガスを注入するステップをさらに含む、請求項8に記載のモリブデン含有薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記b)およびc)ステップを一周期とし、前記周期を繰り返し行う、請求項10に記載のモリブデン含有薄膜の製造方法。
【請求項12】
モリブデン35%以上、窒素40%以上を含む、モリブデン含有薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン化合物、その製造方法、それを含む薄膜蒸着用組成物、それを用いた薄膜の製造方法、およびそれを含む薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の有機金属前駆体が金属薄膜の形成に用いられている。多様な技術が薄膜の蒸着のために用いられており、反応性スパッタリング(reactive sputtering)、イオン補助蒸着(ion-assisted deposition)、ゾルゲル蒸着(sol-gel deposition)、化学気相蒸着法(CVD)の一種である有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、原子層エピタキシー(ALE)とも呼ばれる原子層蒸着法(ALD)などがある。化学気相蒸着法(CVD)および原子層蒸着法(ALD)は、良好な組成制御、高い膜均一性、良好なドープ制御といった利点を有し、優れたコンフォーマル蒸着(conformal deposition)が可能であって、高非平面のマイクロエレクトロニクスデバイスの幾何学構造でも、均一な膜厚を実現することができる。
【0003】
化学気相蒸着法(CVD)は、基板上に薄膜を形成するために、有機金属前駆体が用いられる化学的工程である。一般的な化学気相蒸着法(CVD)において、前駆体は、低い圧力や大気圧のチャンバーで基板を通過しつつ、基板の表面で反応または分解される。揮発性副産物は、ガスの流れにより除去される。
【0004】
原子層蒸着法(ALD)は、精緻な厚さ制御が可能であり、均一な膜厚を実現して、優れたコンフォーマル蒸着が可能な方法であって、基板の表面で反応しつつ逐次膜成長させる方法である。しかし、かかる原子層蒸着法(ALD)の最大の欠点は、時間当りの、膜を成長させる工程速度が遅いということである。かかる原子層蒸着法(ALD)の工程速度を高められる方式として、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)が挙げられる。プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)は、原子層蒸着法(ALD)よりも低温で反応性を高めることができるという利点もある。したがって、特にアスペクト比の高い膜であるキャパシタやゲートスペーサーの場合は、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)がさらに必要である。
【0005】
原子層蒸着法(ALD)およびプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)は、通常、有機金属からなる第1前駆体が基板上に単一層を生成するパルス(purlse)A、過量の第1前駆体を除去するパージ(purge)A、非金属前駆体である第2前駆体が第1前駆体と基板の反応を誘導するパルス(purlse)B、および未反応物を除去するパージ(purge)Bの、4ステップにより行われる。これらの4ステップは、所望の厚さの薄膜が得られるまで繰り返し行われる。
【0006】
薄膜は、半導体装置の製造とナノテクノロジーのような重要なアプリケーションに多様に用いられている。かかるアプリケーションは、例えば、伝導性膜、高屈折率の光学コーティング、腐食防止コーティング、光触媒自己洗浄ガラスコーティング、生体適合性コーティング、電界効果トランジスタ(FET)内のゲート誘電体絶縁膜、誘電体キャパシタ層、キャパシタ電極、ゲート電極、接着体拡散障壁、および集積回路などを含む。また、薄膜は、ダイナミックランダムアクセスメモリー(DRAM)アプリケーションのためのhigh-k誘電体酸化物、赤外線検出器、および不揮発性強誘電体ランダムアクセスメモリー(non-volatile ferroelectric random access memories、NV-FeFAMs)に用いられる強誘電性のペロブスカイトのようなマイクロ電子応用分野にも用いられている。マイクロ電子工学部品の小型化が続けられており、これに伴い、誘電体薄膜の使用の必要性が増大している。
【0007】
CVDおよびALDに用いるための現在の多くのモリブデン前駆体は、半導体のような次世代装置の製造のための新しい工程を実現するに求められる性能を満たしていない。改善された熱安定性、より高い揮発性、向上した蒸気圧、均一な蒸着、および安定した蒸着速度を有するモリブデン前駆体の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、モリブデン化合物およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記モリブデン化合物を含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を用いたモリブデン含有薄膜の製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明は、モリブデン35%以上、窒素40%以上を含む、モリブデン含有薄膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記化学式1で表されるモリブデン化合物を提供する。
【0013】
【化1】
[前記化学式1中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり、
~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してよい。]
【0014】
本発明の一実施形態に係る化学式1中、Lは、C1-C6アルキレンであり、R~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり、Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、R11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してよい。
【0015】
好ましい一実施形態に係るモリブデン化合物は、下記化学式2で表されるものであってよい。
【0016】
【化2】
[前記化学式2中、
~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してよく、
mは、1~3の整数である。]
【0017】
一実施形態において、前記モリブデン化合物は、下記化合物から選択されるものであってよい。
【0018】
【化3】
【0019】
本発明は、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物を製造する方法を提供し、水素供給源またはアルキルリチウム、下記化学式4の化合物、および下記化学式5の化合物を反応させ、下記化学式1-1で表されるモリブデン化合物を製造するステップを含んで製造されてよい。
【0020】
【化4】
【0021】
【化5】
【0022】
【化6】
[前記化学式1-1、4、および5中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり、
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してよく、
Xは、ハロゲンである。]
【0023】
本発明は、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物を含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を用いた薄膜の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態に係る前記モリブデン含有薄膜の製造方法は、
a)チャンバー内に取り付けられた基板を昇温させるステップと、
b)前記チャンバー内に反応ガスと前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を注入してモリブデン含有薄膜を製造するステップと、を含んでよい。
【0026】
一実施形態に係る前記反応ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、蒸留水(HO)、過酸化水素(H)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、窒素(N)、ヒドラジン(N)、アミン、ジアミン、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、C~C12の飽和または不飽和炭化水素、水素(H)、アルゴン(Ar)、およびヘリウム(He)から選択される何れか一つまたは二つ以上のものであってよい。
【0027】
本発明の一実施形態に係る前記モリブデン含有薄膜の製造方法は、
c)b)ステップの後に、チャンバー内に反応ガスを注入するステップをさらに含んでよく、前記b)およびc)ステップを一周期とし、前記周期を繰り返し行ってよい。
【0028】
本発明は、モリブデン35%以上、窒素40%以上を含む、モリブデン含有薄膜を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るモリブデン化合物は、より向上した熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を有することで、安定した蒸着速度を示し、高い信頼度を有する薄膜を形成することができる。
【0030】
本発明に係るモリブデン化合物の製造方法は、単純な工程により、産業的に容易に高純度のモリブデン化合物を高収率で製造することができる。
【0031】
本発明に係るモリブデン含有薄膜の製造方法は、本発明のモリブデン化合物を含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物を用いることで、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)などにより、高い膜均一性および良好なドープ調整性を有することができる。さらに、前記製造方法は、立体的な半導体装置に対する均一なステップカバレッジ(conformal step coverage)を提供することができる。
【0032】
本発明に係るモリブデン含有薄膜は、モリブデン35%以上、窒素40%以上を含み、優れた組成比を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施例1に係るモリブデン含有薄膜の走査型電子顕微鏡の測定結果を示した写真である。
図2】本発明の実施例2に係るモリブデン含有薄膜の走査型電子顕微鏡の測定結果を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、モリブデン化合物、その製造方法、それを含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物、およびそれを用いた薄膜の製造方法を提供する。
【0035】
本発明で用いられる単数の形態は、文脈で特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0036】
本発明に記載の「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、追加で挙げられていない要素、材料、または工程を排除しない。
【0037】
本発明に記載の「アルキル」は、直鎖または分岐の形態を何れも含み、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子であってよい。また、さらに他の態様において、アルキルは、1~4個の炭素原子を有してよい。
【0038】
本発明に記載の「アルキレン」は、「アルキル」で一つの水素を除去することで誘導された2価の有機ラジカルを意味し、ここで、アルキルは上記の定義のとおりである。
【0039】
本発明に記載の「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0040】
本発明に記載の「ハロアルキル」は、それぞれ一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。例えば、ハロアルキルは、-CF、-CHF、-CHF、-CBr、-CHBr、-CHBr、-CCl、-CHCl、-CHCI、-CCI、-CHI、-CHI、-CH-CF、-CH-CHF、-CH-CHF、-CH-CBr、-CH-CHBr、-CH-CHBr、-CH-CCl、-CH-CHCl、-CH-CHCI、-CH-CI、-CH-CHI、-CH-CHI、およびこれと類似のものを含む。ここで、アルキルおよびハロゲンは、上記の定義のとおりである。
【0041】
本発明に記載のアルキルなどに記載されている炭素数は、置換基の炭素数を含まないものであり、一例として、C1-C10アルキルは、アルキルの置換基の炭素数が含まれていない炭素数1~10のアルキルを意味する。
【0042】
本発明に記載の「置換された」(substituted)は、置換される部分(例えば、アルキル、アリール、またはシクロアルキル)の水素原子が置換基で代替されることを意味する。
【0043】
以下、本発明について具体的に説明する。この際、用いられる技術用語および科学用語において、別に定義しない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明で本発明の要旨を不明瞭にする可能性のある公知機能および構成についての説明は省略する。
【0044】
本発明は、下記化学式1で表されるモリブデン化合物を提供する。
【0045】
【化7】
[前記化学式1中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり、
~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してよい。]
【0046】
本発明に係る前記化学式1で表されるモリブデン化合物は、優れた熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を示し、これを採用すると、高い信頼度を有するモリブデン含有薄膜を得ることができる。
【0047】
本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物は、前記化学式1中、Lは、C1-C6アルキレンであり、R~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり、Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、R11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してよい。
【0048】
好ましい一実施形態に係るモリブデン化合物は、下記化学式2で表されるものであってよい。
【0049】
【化8】
[前記化学式2中、
~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してよく、
mは1~3の整数である。]
【0050】
前記化学式2で表されるモリブデン化合物は、より具体的に、R~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであってよく、Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、R11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してよく、mは2~3の整数である。
【0051】
より好ましい一実施形態に係るモリブデン化合物は、下記化学式3で表されるものであってよい。
【0052】
【化9】
[前記化学式3中、
~RおよびR~R10は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであるか、前記R11とR12は、C2-C6アルキレンで連結されて脂環族環を形成してよい。]
【0053】
より具体的に、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物は、下記化学式3-1で表されるものであってよい。
【0054】
【化10】
[前記化学式3-1中、
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであるか、前記R11とR12は、C2-C6アルキレンで連結されて脂環族環を形成してよい。]
【0055】
一実施形態において、前記モリブデン化合物は、下記化合物から選択されるものであってよいが、これに限定されるものではない。
【0056】
【化11】
【0057】
本発明は、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物を製造する方法を提供し、下記化学式1-1で表されるモリブデン化合物は、水素供給源またはアルキルリチウム、下記化学式4の化合物、および下記化学式5の化合物を反応させて製造されてよい。
【0058】
【化12】
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
[前記化学式1-1、4、および5中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり、
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してよく、
Xはハロゲンである。]
【0061】
前記化学式4で表される化合物は、アルキルリチウムおよび下記化学式6の化合物を反応させて製造されてよい。
【0062】
【化15】
[前記化学式6中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり、
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してよい。]
【0063】
本発明の一実施形態に係る水素供給源は、反応により生成物に水素を導入できる化合物であり、具体的に、水素源を提供可能な金属水素化物であってよく、具体的に、CaH、LiAlH、LiBH、NaBH、NaH、LiH、およびKHから選択される一つまたは二つ以上であってよい。より具体的に、前記金属水素化物は、LiAlHまたはNaBHであってよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
具体的に、前記アルキルリチウムは、C1-C10アルキルリチウム、より具体的に、C1-C6アルキルリチウム、さらに具体的に、C1-C4アルキルリチウムであってよく、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、Tert-ブチルリチウム、およびn-ヘキシルリチウムから選択される一つまたは二つ以上であってよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
前記モリブデン化合物の製造方法は、単純な工程により、容易に大量生産が可能である。
【0066】
一実施形態に係る製造方法で用いられる溶媒としては、通常の有機溶媒であれば何れも可能であるが、ヘキサン、ペンタン、ジクロロメタン(DCM)、ジクロロエタン(DCE)、トルエン(Toluene)、アセトニトリル(MeCN)、ニトロメタン(Nitromethan)、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、およびN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)からなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0067】
反応温度は、通常の有機合成で用いられる温度で可能であるが、反応物質および出発物質の量によって変わり得る。好ましくは-80℃~20℃で行われてよく、具体的に、-70℃~10℃で行われてよく、より具体的には、-60℃~5℃で行われてよい。
【0068】
反応は、出発物質が完全に消耗されたことをNMRなどにより確認してから終結させる。その後、抽出過程、減圧下で溶媒を蒸留させる過程、およびカラムクロマトグラフィーなどの通常の方法により目的物を分離精製する過程を行ってもよい。
【0069】
前記シクロペンタジエン系化合物は、共鳴構造により中心金属に安定に配位結合され、モリブデン化合物の熱安定性が非常に向上することができる。これにより、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物は、これを採用してモリブデン、モリブデン窒化物(MoNx)、またはモリブデン酸化物(MoOx)から構成される薄膜を高い信頼度で形成することができる。
【0070】
前記シクロペンタジエン系化合物は、アミノアルキル、アルコキシアルキル、またはアルキルスルフィドが結合されることができる。これにより、蒸着工程の時に、前記シクロペンタジエン化合物の熱安定性がより向上することができる。
【0071】
本発明は、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物を含むモリブデン含有薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0072】
また、本発明は、前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を用いてモリブデン含有薄膜を製造する製造方法を提供する。
【0073】
前記モリブデン含有薄膜の製造方法は、当業界で用いられる通常の方法、具体的には、原子層蒸着法(ALD)、化学気相蒸着法(CVD)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、低圧化学気相蒸着法(LPCVD)、プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)、またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)であってよい。
【0074】
より好ましく、一実施形態に係る前記モリブデン含有薄膜の製造方法は、原子層蒸着法(ALD)、化学気相蒸着法(CVD)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)などであってよい。
【0075】
本発明の一実施形態に係る前記製造方法は、
a)チャンバー内に取り付けられた基板を昇温させるステップと、
b)チャンバー内に反応ガスと前記モリブデン含有薄膜蒸着用組成物を注入し、モリブデン含有薄膜を製造するステップと、を含んでよい。
【0076】
一実施形態において、目的とする薄膜の構造または熱的特性に応じて蒸着条件が調節されてよく、一実施形態に係る蒸着条件としては、モリブデン化合物の投入流量、反応ガスおよび移送ガスの投入流量、圧力、RFパワーなどが挙げられる。
【0077】
かかる蒸着条件の非限定的な一例としてはモリブデン化合物の投入流量は1~1000sccm、移送ガスは1~5000sccm、反応ガスの流量は10~5000sccm、圧力は0.1~10torr、RFパワーは10~1000Wの範囲で調節されてよいが、これに限定されるものではない。
【0078】
一実施形態において、前記a)ステップで、チャンバー内に取り付けられた基板は200℃~700℃に昇温し、具体的に、500℃~600℃に昇温してよいが、これに限定されるものではない。
【0079】
一実施形態に係る基板は、Si、Ge、SiGe、GaP、GaAs、SiC、SiGeC、InAs、およびInPの一つ以上の半導体材料を含む基板;SOI(Silicon On Insulator)基板;石英基板;またはディスプレイ用ガラス基板;ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンテレフタレート(PET、PolyEthylene Terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN、PolyEthylene Naphthalate)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Poly Methyl MethAcrylate)、ポリカーボネート(PC、PolyCarbonate)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル(Polyester)などの可撓性プラスチック基板;であってよいが、これらに限定されるものではない。
【0080】
一実施形態において、前記反応ガスは限定されるものではないが、酸素(O)、オゾン(O)、蒸留水(HO)、過酸化水素(H)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、窒素(N)、ヒドラジン(N)、アミン、ジアミン、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、C~C12の飽和または不飽和炭化水素、水素(H)、アルゴン(Ar)、およびヘリウム(He)から選択される何れか一つまたは二つ以上の混合気体であってよい。
【0081】
具体的に、前記反応ガスは、酸素(O)、過酸化水素(H)、亜酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、窒素(N)、および水素(H)から選択される何れか一つまたは二つ以上であってよく、より詳細には、アンモニア(NH)であってよいが、これに限定されない。
【0082】
一実施形態において、前記蒸着するステップにおける移送ガスは、不活性ガスであって、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、および窒素(N)から選択される何れか一つまたは二つ以上であってよく、具体的に、窒素(N)であってよいが、これらに限定されない。
【0083】
一実施形態に係る前記製造方法は、
c)b)ステップの後に、チャンバー内に反応ガスを注入するステップをさらに含んでよく、前記b)およびc)ステップを一周期とし、前記周期を繰り返し行ってよい。
【0084】
一実施形態において、前記チャンバー内に移送ガスと前記モリブデン化合物を注入した後、基板に吸着されていないモリブデン化合物またはその組成物を、前記移送ガスを用いて除去するパージ(purge)ステップを行ってよい。
【0085】
一実施形態において、前記チャンバー内に反応ガスを注入した後、反応副産物および残留反応ガスを、前記移送ガスを用いて除去するパージ(purge)ステップを行ってよい。
【0086】
一実施形態において、前記モリブデン化合物の注入ステップ、パージ(purge)、反応ガスの注入ステップ、およびパージ(purge)の工程を1周期とし、繰り返し行ってよい。
【0087】
一実施形態に係る前記モリブデン含有薄膜の製造方法により製造された薄膜は、均一で、且つ安定した蒸着速度を示し、大きいアスペクト比を有する構造体に対する均一なステップカバレッジ(conformal step coverage)を提供することができる。
【0088】
本発明に係るモリブデン含有薄膜は、モリブデン35%以上、窒素40%以上を含んでよく、好ましく、モリブデン35%~65%、窒素40%~70%、より好ましく、モリブデン35%~50%、窒素40%~55%を含んでよく、一実施形態に係るモリブデン含有薄膜は優れた組成比を示す。
【0089】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明に係るモリブデン化合物の製造方法およびそれを採用した薄膜の製造方法についてより詳細に説明する。
【0090】
但し、下記実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照にすぎず、本発明がこれらに限定されるものではなく、多様な形態で実現可能である。また、本発明の説明で用いられる用語は、特定の実施例を効果的に記述するためのものにすぎず、本発明を制限することを意図しない。
【0091】
また、別に断らない限り、全ての実施例は、不活性雰囲気、例えば、精製された窒素(N)またはアルゴン(Ar)下で、当業界で通常知られている空気-敏感性物質を扱う技術を用いて行われた。
【0092】
[実施例1]((CHN(CHCp)MoHの製造
マグネチックスターラと還流装置(condenser)を含む2Lの三つ口フラスコに、n-ブチルリチウム(316ml、2.3M solution in n-Hexane、0.73mol)を投入した後、n-ヘキサン500mlを投入してから撹拌した。
【0093】
前記混合物の内部温度を0℃に維持しつつ、(2-ジメチルアミノエチル)シクロペンタジエンをゆっくりと投入した後、常温で2時間撹拌した。その後、溶媒を減圧下で除去し、Li(2-ジメチルアミノエチル)シクロペンタジエンを95g(収率:92%)得た。
【0094】
マグネチックスターラと還流装置(condenser)を含む2Lの二つ口フラスコに、Li(2-ジメチルアミノエチル)シクロペンタジエン(95g、0.66mol)とLiAlH(10.8g、0.29mol)を混合して投入した後、THFを1000ml投入してから、内部温度を-50℃に維持しつつ撹拌した。
【0095】
マグネチックスターラと還流装置(condenser)を含む2Lの三つ口フラスコに、MoCl(78g、0.29mol)を投入した後、トルエン100ml、THF1000mlを投入してから、内部温度を-50℃に維持しつつ撹拌した。
【0096】
前記混合物に、Li(2-ジメチルアミノエチル)シクロペンタジエンとLiAlHの混合物をゆっくりと投入したところ、発熱とガスの発生が確認され、濃い赤褐色への色変化が観察された。その後、溶媒を減圧下で除去した後、残留物をn-ペンタン(1500ml)で抽出した。生成された濃い赤色溶液を濾過装置で濾過した後、溶媒を減圧下で除去し、濃い赤褐色の液体である((CHN(CHCp)MoHを約43g(MoCl基準収率:38%)得た。
1H NMR(400 MHz, C6D6) δ 4.2-4.8 (m, 8H), 2.4 (s, 8H), 2.0 (s, 12H), -8.3 (s, 2H)
【0097】
[実施例2]((CH)O(CHCp)MoHの製造
マグネチックスターラと還流装置(condenser)を含む2Lの三つ口フラスコに、n-ブチルリチウム(122ml、2.3M solution in n-Hexane、0.28mol)を投入した後、n-ヘキサン300mlを投入してから撹拌した。
【0098】
前記混合物の内部温度を0℃に維持しつつ、(2-メトキシエチル)シクロペンタジエンをゆっくりと投入した後、常温で2時間撹拌した。その後、溶媒を減圧下で除去し、Li(2-メトキシエチル)シクロペンタジエンを33g(収率:91.6%)得た。
【0099】
マグネチックスターラと還流装置(condenser)を含む1Lの二つ口フラスコに、Li(2-メトキシエチル)シクロペンタジエン(95g、0.66mol)とLiAlH(10.8g、0.29mol)を混合して投入した後、THF500mlを投入してから、内部温度を-50℃に維持しつつ撹拌した。
【0100】
マグネチックスターラと還流装置(condenser)を含む2Lの三つ口フラスコに、MoCl(30g、0.11mol)を投入した後、トルエン50ml、THF500mlを投入してから、内部温度を-50℃に維持しつつ撹拌した。
【0101】
前記混合物に、Li(2-メトキシエチル)シクロペンタジエンとLiAlHの混合物をゆっくりと投入したところ、発熱とガス発生が確認され、濃い赤褐色への色変化が観察された。その後、溶媒を減圧下で除去した後、残留物をn-ペンタン(1000ml)で抽出した。生成された濃い赤色溶液を濾過装置で濾過した後、溶媒を減圧下で除去し、濃い赤褐色の液体である((CH)O(CHCp)MoHを約22g(MoCl基準収率:53%)得た。
1H NMR(400 MHz, C6D6) δ 4.2-4.8 (m, 8H), 3.3-3.4 (t, 4H), 3.1 (s, 6H), 2.4-2.5 (t, 4H), 3.1 (s, 6H), 1.0 (m,2H), -8.4 (s, 2H).
【0102】
[実施例3]((CHN(CHCp)MoHを用いたモリブデン含有薄膜の製造
前記実施例1に係るモリブデン化合物を使用し、反応ガスとしてアンモニア(NH)を用いて、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)によりモリブデン含有薄膜を製造した。
【0103】
蒸着チャンバーの内部に酸化シリコンが成長されたシリコン基板をローディングし、前記基板の温度を400℃に調節した。ステンレス鋼製のバブラー容器内にある実施例1で製造された((CHN(CHCp)MoHを有機金属前駆体として充填し、温度を100℃に調節した。
【0104】
プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)工程の時に、工程圧力はスロットル弁を調節して10Torr以下に調節した。窒素ガスを移送気体(100sccm)として、前記有機金属前駆体を蒸着チャンバーの内部に5秒間注入した。窒素ガス(500sccm)を用いてパージを3秒間行い、前記蒸着チャンバー内に残留している前記有機金属前駆体および反応副産物を除去した。
【0105】
反応ガスとしてアンモニア(NH)(2,000sccm/RFパワー400W)を3秒間注入し、モリブデン含有窒化薄膜を蒸着した。その後、窒素ガス(500sccm)を用いてパージを3秒間行い、残留反応ガスおよび反応副産物を除去した。
【0106】
上述の工程を一サイクルとし、1000サイクルを繰り返すことで、図1のような、厚さ320Åのモリブデン含有窒化薄膜を製造した。前記モリブデン含有薄膜に対してAES分析を行った結果、モリブデン(Mo)の含量および窒素(N)の含量はそれぞれ41.8%および45.4%と測定され、実際的にモリブデン窒化膜が形成されたことを確認した。
【0107】
[実施例4]((CH)O(CHCp)MoHを用いたモリブデン含有薄膜の製造
前記実施例2に係るモリブデン化合物を使用し、反応ガスとしてアンモニア(NH)を用いて、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)によりモリブデン含有薄膜を製造した。
【0108】
蒸着チャンバーの内部に酸化シリコンが成長されたシリコン基板をローディングし、前記基板の温度を400℃に調節した。ステンレス鋼製のバブラー容器内にある実施例2で製造された((CH)O(CHCp)MoHを有機金属前駆体として充填し、温度を100℃に調節した。
【0109】
プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)工程の時に、工程圧力はスロットル弁を調節して10Torr以下に調節した。窒素ガスを移送気体(100sccm)として、前記有機金属前駆体を蒸着チャンバーの内部に5秒間注入した。窒素ガス(500sccm)を用いてパージを3秒間行い、前記蒸着チャンバー内に残留している前記有機金属前駆体および反応副産物を除去した。
【0110】
反応ガスとしてアンモニア(NH)(2,000sccm/RFパワー400W)を3秒間注入し、モリブデン含有窒化薄膜を蒸着した。その後、窒素ガス(500sccm)を用いてパージを3秒間行い、残留反応ガスおよび反応副産物を除去した。
【0111】
上述の工程を一サイクルとし、1000サイクルを繰り返すことで、図2のような、厚さ270Åのモリブデン含有窒化薄膜を製造した。前記モリブデン含有薄膜に対してAES分析を行った結果、モリブデン(Mo)の含量および窒素(N)の含量はそれぞれ41.3%および46.5%と測定され、実際的にモリブデン窒化膜が形成されたことを確認した。
【0112】
このことから、本発明の一実施形態に係るモリブデン化合物は、より向上した熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を有することで、それを用いて薄膜を製造した際に、均一で且つ安定した蒸着速度を示し、高い信頼度を有する薄膜を形成することができ、立体的な装置に対して均一な膜厚を提供することができ、モリブデンおよび窒素の優れた組成比を示す薄膜を製造することができる。
【0113】
以上のとおり、本発明では特定の事項と限定された実施例および比較例により説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されるものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0114】
したがって、本発明の思想は上述の実施例に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なもの、または等価的変形があるものなどは、何れも本発明の思想の範疇に属するといえる。
図1
図2
【国際調査報告】