(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】アルファ-L-イズロニダーゼ酵素を含む融合タンパク質及びその方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241210BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241210BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241210BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241210BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241210BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241210BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241210BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241210BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20241210BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241210BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241210BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241210BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241210BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/47
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/55
C12N15/62 Z
C12N9/24
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/47
A61K47/68
A61P3/00
A61P25/00
A61K39/395 N
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534711
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 US2022053196
(87)【国際公開番号】W WO2023114485
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518086619
【氏名又は名称】デナリ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Denali Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アドゥスミリ, ゴウリスダ
(72)【発明者】
【氏名】デイビス, オリバー ブレイアー
(72)【発明者】
【氏名】カリオリス, ミハリス エス.
(72)【発明者】
【氏名】マホーン, カタル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ティヤギ, シュリシュティ
(72)【発明者】
【氏名】山ノ口 繭輔
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA31
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA44
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZC192
4C084ZC211
4C085AA14
4C085BB11
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、血液脳関門(BBB)を通過させて輸送し得、アルファーL-イズロニダーゼ(IDUA)酵素-Fc融合ポリペプチドを含むタンパク質である。特定の実施形態は、MPS Iを治療するためにそのようなタンパク質を使用する方法も提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質であって、
a.アルファ-L-イズロニザーゼ(IDUA)アミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチドと、
b.配列番号28と少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、トランスフェリン受容体(TfR)に特異的に結合し得る第2のFcポリペプチドと、を含む前記タンパク質。
【請求項2】
前記第2のFcポリペプチドが、EU付番に従う、位置389にAlaを有する、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記第2のFcポリペプチドが、EU付番に従う、位置380にGlu;及び位置390にAsnをさらに含む、請求項2に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記第2のFcポリペプチドが、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち:
i.位置384にTyr;
ii.位置386にThr;
iii.位置387にGlu;
iv.位置388にTrp;
v.位置413にThr;
vi.位置415にGlu;
vii.位置416にGlu;及び
viii.位置421にPhe、
をさらに含む、請求項3に記載のタンパク質。
【請求項5】
対象の血液脳関門を通過させて輸送され得る、請求項1~4のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項6】
約100nM~約500nMの親和性でTfRに結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項7】
約200nM~約400nMの親和性でTfRに結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記第2のFcポリペプチドが、前記TfRのアピカルドメインに結合する、請求項1~7のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記タンパク質の前記TfRへの前記結合が、トランスフェリンの前記TfRへの結合を実質的に阻害しない、請求項1~8のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記IDUAアミノ酸配列が、配列番号39、40、45、78、及び99のいずれか1つに対する少なくとも80%、85%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項11】
前記IDUAアミノ酸配列が、配列番号39、40、45、78、及び99のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項10に記載のタンパク質。
【請求項12】
前記IDUAアミノ酸配列が、配列番号41~44のいずれか1つに対する少なくとも80%、85%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項13】
前記IDUAアミノ酸配列が、配列番号41~44のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項12に記載のタンパク質。
【請求項14】
前記IDUAアミノ酸配列が、配列番号46~49のいずれか1つに対する少なくとも80%、85%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項15】
前記IDUAアミノ酸配列が、配列番号46~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項14に記載のタンパク質。
【請求項16】
前記IDUAアミノ酸配列が、配列番号79~82のいずれか1つに対する少なくとも80%、85%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項17】
前記IDUAアミノ酸配列が、配列番号79~82のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項16に記載のタンパク質。
【請求項18】
前記第1のFcポリペプチドが、ペプチド結合によってまたはポリペプチドリンカーによって、前記IDUAアミノ酸配列、前記IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される、請求項1~17のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項19】
前記ポリペプチドリンカーが可塑性ポリペプチドリンカーである、請求項18に記載のタンパク質。
【請求項20】
前記可塑性ポリペプチドリンカーがグリシンリッチリンカーである、請求項18に記載のタンパク質。
【請求項21】
前記ポリペプチドリンカーが、GS(配列番号71)、G
4S(配列番号72)または(G
4S)
2(配列番号73)である、請求項19または20に記載のタンパク質。
【請求項22】
前記第1のFcポリペプチドのN末端が、前記IDUAアミノ酸配列、前記IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される、請求項1~21のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項23】
前記第1のFcポリペプチドのC末端が、前記IDUAアミノ酸配列、前記IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される、請求項1~21のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項24】
単一のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片を含む請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項25】
前記第2のFcポリペプチドが前記第1のFcポリペプチドとFc二量体を形成する請求項1~24のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項26】
前記第1のFcポリペプチド及び前記第2のFcポリペプチドがそれぞれ、ヘテロ二量体化を促進する改変を含有する、請求項1~25のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項27】
EU付番に従い、前記Fcポリペプチドのうちの一方が、T366W置換を有し、もう一方のFcポリペプチドが、T366S、L368A、及びY407V置換を有する、請求項26に記載のタンパク質。
【請求項28】
前記第1のFcポリペプチドが前記T366S、前記L368A、及び前記Y407V置換を含有し、前記第2のFcポリペプチドが前記T366W置換を含む、請求項27に記載のタンパク質。
【請求項29】
前記第1のFcポリペプチドが、配列番号9~16及び19~22のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;前記第2のFcポリペプチドが、配列番号25~32及び35~38のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項28に記載のタンパク質。
【請求項30】
前記第1のFcポリペプチド及び/または前記第2のFcポリペプチドが、ネイティブFcRn結合部位を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項31】
前記第1のFcポリペプチド及び前記第2のFcポリペプチドが、エフェクター機能を有しない、請求項1~30のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項32】
前記第1のFcポリペプチド及び/または前記第2のFcポリペプチドが、エフェクター機能を低下させる改変を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項33】
エフェクター機能を低下させる前記改変が、EU付番に従い、位置234でのAla及び位置235でのAla;位置234でのAla、位置235でのAla及び位置329でのGly;または位置234でのAla、位置235でのAla及び位置329でのSerという置換である、請求項32に記載のタンパク質。
【請求項34】
前記第1のFcポリペプチドが、配列番号11~16及び19~22のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のタンパク質。
【請求項35】
前記第1のFcポリペプチドが、配列番号11、12、19、及び20のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34に記載のタンパク質。
【請求項36】
前記第1のFcポリペプチドが、配列番号15、16、21、及び22のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34に記載のタンパク質。
【請求項37】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号50~69及び83~92のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のタンパク質。
【請求項38】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号50~53のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のタンパク質。
【請求項39】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号54~57のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のタンパク質。
【請求項40】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号83~86のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のタンパク質。
【請求項41】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号58~61及び91~92のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のタンパク質。
【請求項42】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号62~65のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のタンパク質。
【請求項43】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号87~90のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のタンパク質。
【請求項44】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号66~67のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のタンパク質。
【請求項45】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号68~69のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のタンパク質。
【請求項46】
前記第2のFcポリペプチドが、配列番号27~32及び35~38のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項33~45のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項47】
前記第2のFcポリペプチドが、配列番号27、28、35及び36のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項46に記載のタンパク質。
【請求項48】
前記第2のFcポリペプチドが、配列番号31、32、37及び38のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項46に記載のタンパク質。
【請求項49】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号50~65及び83~92のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;前記第2のFcポリペプチドが、配列番号35~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項26に記載のタンパク質。
【請求項50】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号50~57及び83~86のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;前記第2のFcポリペプチドが、配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項49に記載のタンパク質。
【請求項51】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号58~65及び87~92のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;前記第2のFcポリペプチドが、配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項49に記載のタンパク質。
【請求項52】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号66~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;前記第2のFcポリペプチドが、配列番号35~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項26に記載のタンパク質。
【請求項53】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号66~67のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;前記第2のFcポリペプチドが、配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項52に記載のタンパク質。
【請求項54】
前記IDUAアミノ酸配列に連結された前記第1のFcポリペプチドが、配列番号68~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;前記第2のFcポリペプチドが、配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項52に記載のタンパク質。
【請求項55】
前記IDUAアミノ酸配列の脳内への取り込みが、前記第1のFcポリペプチド及び前記第2のFcポリペプチドの非存在下での前記IDUAアミノ酸配列の取り込みと比較して、または前記第2のFcポリペプチドに対するTfR結合をもたらす前記改変のない前記IDUA酵素の取り込みと比較して、少なくとも5倍大きい、請求項1~54のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項56】
前記第1のFcポリペプチドが、血液脳関門(BBB)受容体に結合するように改変されておらず、前記第2のFcポリペプチドが、TfRに特異的に結合するように改変されている、請求項1~55のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項57】
前記タンパク質が、免疫グロブリン重鎖及び/もしくは軽鎖可変領域配列またはその抗原結合部分を含まない、請求項1~56のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項58】
アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)アミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結されたFcポリペプチドを含むポリペプチドであって、前記Fcポリペプチドが、配列番号12に対する少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、かつ別のFcポリペプチドとのヘテロ二量体化を促進する1つ以上の改変を含む、前記ポリペプチド。
【請求項59】
前記Fcポリペプチドが、ペプチド結合によってまたはポリペプチドリンカーによって、前記IDUA酵素、前記IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される、請求項58に記載のポリペプチド。
【請求項60】
N末端からC末端まで:前記IDUA酵素、前記IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片;ポリペプチドリンカー;及び前記Fcポリペプチド、を含む、請求項59に記載のポリペプチド。
【請求項61】
N末端からC末端まで:前記Fcポリペプチド;ポリペプチドリンカー;及び前記IDUA酵素、前記IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片、を含む、請求項59に記載のポリペプチド。
【請求項62】
前記Fcポリペプチドが、EU付番に従うT366S、L368A、及びY407V置換を含む、請求項58~61のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項63】
前記Fcポリペプチドが、EU付番に従い、位置234でのAla及び位置235でのAla;位置234でのAla、位置235でのAla及び位置329でのGly;または位置234でのAla、位置235でのAla及び位置329でのSerという置換を含む、請求項58~62のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項64】
前記ポリペプチドが、配列番号50~69及び83~92のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項63に記載のポリペプチド。
【請求項65】
請求項58~64のいずれか1項に記載のポリペプチド及び請求項58に記載の他のFcポリペプチドを含むタンパク質。
【請求項66】
請求項1~57及び65のいずれか1項に記載のタンパク質、または請求項58~64のいずれか1項に記載のポリペプチド及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項67】
請求項58~64のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項68】
請求項67に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項69】
請求項67に記載のポリヌクレオチドまたは請求項68に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項70】
請求項58に記載の前記他のFcポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドをさらに含む、請求項69に記載の宿主細胞。
【請求項71】
IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結されたFcポリペプチドを含むポリペプチドを生成する方法であって、請求項67に記載のポリヌクレオチドによってコードされる前記ポリペプチドが発現する条件下で宿主細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項72】
請求項1~57のいずれか1項に記載の、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された前記第1のFcポリペプチドをコードする第1の核酸配列と;前記第2のFcポリペプチドをコードする第2の核酸配列と、を含む、ポリヌクレオチドの対。
【請求項73】
請求項72に記載のポリヌクレオチドの対を含む、1つ以上のベクター。
【請求項74】
請求項72に記載のポリヌクレオチドの対、または請求項73に記載の1つ以上のベクターを含む宿主細胞。
【請求項75】
IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチドと、第2のFcポリペプチドとを含むタンパク質を生成する方法であって、請求項72に記載のポリヌクレオチドの対が発現する条件下で宿主細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項76】
MPS Iを治療する方法であって、請求項1~57及び65のいずれか1項に記載のタンパク質または請求項58~64のいずれか1項に記載のポリペプチドを、それを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項77】
MPS Iの治療を必要とする患者におけるその治療に使用するための、請求項1~57及び65のいずれか1項に記載のタンパク質または請求項58~64のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項78】
MPS Iの治療を必要とする患者におけるそれを治療するための医薬の調製における、請求項1~57及び65のいずれか1項に記載のタンパク質または請求項58~64のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項79】
MPS Iを有する患者において毒性代謝産物の蓄積を減少させる方法であって、請求項1~57及び65のいずれか1項に記載のタンパク質または請求項58~64のいずれか1項に記載のポリペプチドを、前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項80】
MPS Iを有する患者における毒性代謝産物の蓄積を減少させるのに使用するための、請求項1~57及び65のいずれか1項に記載のタンパク質または請求項58~64のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項81】
MPS Iを有する患者における毒性代謝産物の蓄積を減少させるための医薬の調製における、請求項1~57及び65のいずれか1項に記載のタンパク質または請求項58~64のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項82】
前記毒性代謝産物が、ヘパラン硫酸由来オリゴ糖またはデルマタン硫酸由来オリゴ糖を含む、請求項79~81のいずれか1項に記載の方法、タンパク質または使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月17日出願の米国仮出願第63/291,283号に対する優先権を主張する。上に参照された出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ムコ多糖症I型(MPS I)(またはハーラー症候群)は、IDUA遺伝子の遺伝子変異によって引き起こされるリソソーム蓄積障害である。これらの変異により、アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)タンパク質の機能が低下または消失し、グリコサミノグリカンであるデルマタン硫酸及びヘパラン硫酸が蓄積し、骨格、心臓、呼吸器系、及び脳などの複数の臓器及び組織に変化が生じる。MPS Iの治療は依然として大部分が保存的である;欠乏している酵素は静脈内投与してもよいが、血液脳関門(BBB)を通過させて組換え酵素を送達することが困難であるせいで、脳にはほとんど効果がない。したがって、MPS Iの症状及びIDUA欠損を、CNS(中枢神経系)及び末梢神経の両方で治療する、より効果的な治療法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
したがって、本明細書では、BBBを通過し、MPS Iの末梢及びCNS症状の両方を治療する能力を有する特定の酵素補充療法が提供される。特に、特定の実施形態は、(a)アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)アミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチド;及び(b)第2のFcポリペプチドを含むタンパク質を提供し;この第1及び/または第2のFcポリペプチドは、血液脳関門(BBB)受容体、例えばトランスフェリン受容体(TfR)に結合し得る(例えば、特異的に結合し得る)改変Fcである。特定の実施形態では、この第2のFcポリペプチドは、第1のFcポリペプチドとFc二量体を形成する。
【0004】
特定の実施形態では、この第1のFcポリペプチドは、TfRに結合し得る(例えば、特異的に結合する)改変されたFcである。特定の実施形態では、この第1のFcポリペプチドは、配列番号28または98(例えば、配列番号28)と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む改変Fcであり、TfRに特異的に結合し得る。
【0005】
特定の実施形態では、この第1のFcポリペプチドは、1)配列番号28または98(例えば、配列番号28)と少なくとも90%の同一性を有する配列を含み;2)TfRに特異的に結合し得;かつ3)EU付番に従い位置389にAlaを有する。特定の実施形態では、この第1のFcポリペプチドは、EU付番に従い、位置380にGlu;及び位置390にAsnをさらに含む。いくつかの実施形態では、この第1のFcポリペプチドは、EU付番に従い、以下の位置に:すなわち位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheをさらに含む。
【0006】
特定の実施形態では、この第2のFcポリペプチドは、TfRに結合し得る(例えば、特異的に結合し得る)改変Fcである。特定の実施形態では、この第2のFcポリペプチドは、配列番号28または98(例えば、配列番号28)と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む改変Fcであり、TfRに特異的に結合し得る。
【0007】
特定の実施形態では、この第2のFcポリペプチドは、1)配列番号28または98(例えば、配列番号28)と少なくとも90%の同一性を有する配列を含み;2)TfRに特異的に結合し得;かつ3)EU付番に従い位置389にAlaを有する。特定の実施形態では、この第2のFcポリペプチドは、EU付番に従い、位置380にGlu;及び位置390にAsnをさらに含む。特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドは、EU付番に従い、以下の位置に、すなわち位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheをさらに含む。
【0008】
特定の実施形態は、以下を含むタンパク質を提供する:
a.アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)アミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチド;及び
b.配列番号28と少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、トランスフェリン受容体(TfR)に特異的に結合し得る第2のFcポリペプチド。
【0009】
特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドは、EU付番に従い、位置389にAlaを有する。
【0010】
特定の実施形態では、前記第2のFcポリペプチドが、EU付番に従い、位置380にGlu;及び位置390にAsnをさらに含む。
【0011】
特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドは、EU付番に従い、以下の位置に、すなわち:位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheをさらに含む。
【0012】
特定の実施形態では、タンパク質は、対象の血液脳関門を横切って輸送され得る。
【0013】
特定の実施形態では、タンパク質は、約100nM~約500nMの親和性でTfRに結合する。
【0014】
特定の実施形態では、タンパク質は、約200~約400nMの親和性でTfRに結合する。
【0015】
特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドは、TfRのアピカルドメインに結合する。
【0016】
特定の実施形態では、タンパク質のTfRへの結合は、トランスフェリンのTfRへの結合を実質的に阻害しない。
【0017】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号39、40、45、78、及び99のいずれか1つに対する少なくとも80%、85%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0018】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号39、40、45、78、及び99のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0019】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号41~44のいずれか1つに対する少なくとも80%、85%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号41~44のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0021】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号46~49のいずれか1つに対する少なくとも80%、85%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号46~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0023】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号79~82のいずれか1つに対する少なくとも80%、85%、90%、または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0024】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号79~82のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0025】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ペプチド結合によってまたはポリペプチドリンカーによって、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ペプチド結合によって、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ペプチドリンカーによって、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0026】
特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、可塑性ポリペプチドリンカーである。
【0027】
特定の実施形態では、可塑性ポリペプチドリンカーは、グリシンリッチリンカーである。
【0028】
特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、GS(配列番号71)、G4S(配列番号72)または(G4S)2(配列番号73)である。
【0029】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドのN末端は、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0030】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドのC末端は、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0031】
特定の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、単一のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片を含む。
【0032】
特定の実施形態では、この第2のFcポリペプチドは、第1のFcポリペプチドとFc二量体を形成する。
【0033】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドはそれぞれ、ヘテロ二量体化を促進する改変を含む。
【0034】
特定の実施形態では、EU付番に従い、Fcポリペプチドのうちの一方は、T366W置換を有し、他方のFcポリペプチドは、T366S、L368A、及びY407V置換を有する。
【0035】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、T366S、L368A、及びY407V置換を含有し、第2のFcポリペプチドは、T366W置換を含む。
【0036】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号9~16及び19~22のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;第2のFcポリペプチドは、配列番号25~32及び35~38のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0037】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、T366W置換を含み、第2のFcポリペプチドは、T366S、L368A、及びY407V置換を含む。
【0038】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号17~18及び74~75のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;第2のFcポリペプチドは、配列番号33~34及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0039】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、ネイティブFcRn結合部位を含む。
【0040】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドは、エフェクター機能を有さない。
【0041】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させる改変を含む。
【0042】
特定の実施形態では、エフェクター機能を低下させる改変は、EU付番に従い、位置234でのAla及び位置235でのAla;位置234でのAla、位置235でのAla及び位置329でのGly;または位置234でのAla、位置235でのAla及び位置329でのSerという置換である。
【0043】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号11~16、及び19~22のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号11、12、19、及び20のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0045】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号15、16、21、及び22のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0046】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号50~69及び83~92のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0047】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号50~53のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0048】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号54~57のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0049】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号83~86のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0050】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号58~61及び91~92のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0051】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号62~65のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0052】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号87~90のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0053】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号66~67のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0054】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号68~69のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号27~32及び35~38のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0056】
特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号27、28、35及び36のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0057】
特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号31、32、37及び38のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0058】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号50~65及び83~92のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0059】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号50~57及び83~86のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;第2のFcポリペプチドは、配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0060】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号58~65及び87~92のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;第2のFcポリペプチドは、配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0061】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号66~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0062】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号66~67のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;第2のFcポリペプチドは、配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0063】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドは、配列番号68~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;第2のFcポリペプチドは、配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0064】
特定の実施形態では、IDUAアミノ酸配列の脳内への取り込みは、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドの非存在下でのIDUAアミノ酸配列の取り込みと比較して、またはTfR結合をもたらす、第2のFcポリペプチドに対する、改変のないIDUA酵素の取り込みと比較して、少なくとも5倍大きい。
【0065】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、血液脳関門(BBB)受容体に結合するように改変されておらず、第2のFcポリペプチドはTfRに特異的に結合するように改変されている。
【0066】
特定の実施形態では、タンパク質は、免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変領域配列またはその抗原結合部分を含まない。
【0067】
特定の実施形態では、アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)アミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結されたFcポリペプチドを含むポリペプチドを提供し、このFcポリペプチドは、配列番号12に対する少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、別のFcポリペプチドとのヘテロ二量体化を促進する1つ以上の改変を含む。
【0068】
特定の実施形態では、Fcポリペプチドは、ペプチド結合によってまたはポリペプチドリンカーによって、IDUA酵素、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0069】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで:IDUA酵素、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片;ポリペプチドリンカー;及びFcポリペプチドを含む。
【0070】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで:Fcポリペプチド;ポリペプチドリンカー;及びIDUA酵素、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片を含む。
【0071】
特定の実施形態では、Fcポリペプチドは、EU付番に従う、T366S、L368A及びY407V置換を含む。
【0072】
特定の実施形態では、Fcポリペプチドは、EU付番に従う、位置234でのAla及び位置235でのAla;位置234でのAla、位置235でのAla及び位置329でのGly;または位置234でのAla、位置235でのAla及び位置329でのSerという置換を含む。
【0073】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号50~69及び83~92のいずれか1つに対する少なくとも95%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0074】
特定の実施形態では、1)アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)アミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結されたFcポリペプチドを含むポリペプチドであって、このFcポリペプチドは、配列番号12に対する少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、別のFcポリペプチドとのヘテロ二量体化を促進する1つ以上の改変を含む、ポリペプチドと、2)他のFcポリペプチドと、を含むタンパク質を提供する。
【0075】
特定の実施形態は、本明細書に記載の融合タンパク質または本明細書に記載のポリペプチドと、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0076】
特定の実施形態は、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、本明細書に記載のIDUA-Fc融合ポリペプチド)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0077】
特定の実施形態は、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0078】
特定の実施形態は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたは本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞を提供する。特定の実施形態では、その宿主細胞は、本明細書に記載の別のポリペプチド(例えば、TfR結合改変Fcポリペプチドなどの他のFcポリペプチド)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドをさらに含む。
【0079】
特定の実施形態は、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結されたFcポリペプチドを含むポリペプチドを生成する方法であって、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが発現する条件下で宿主細胞を培養することを含む、方法を提供する。
【0080】
特定の実施形態は、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチドをコードする第1の核酸配列;及び本明細書に記載される、第2のFcポリペプチドをコードする第2の核酸配列、を含むポリヌクレオチドの対を提供する。
【0081】
特定の実施形態はまた、本明細書に記載のポリヌクレオチドの対を含む1つ以上のベクターを提供する。例えば、特定の実施形態は、ポリヌクレオチドの対を含む単一のベクターを提供する。他の実施形態は、2つのベクターを提供し、この第1のベクターは、この対からの第1のポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、この対からの第2のポリヌクレオチドを含む。
【0082】
特定の実施形態は、本明細書に記載のポリヌクレオチドの対、または本明細書に記載の1つ以上のベクターを含む宿主細胞を提供する。
特定の実施形態は、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチド、及び第2のFcポリペプチドを含むタンパク質を生成する方法であって、本明細書に記載のポリヌクレオチドの対が発現する条件下で宿主細胞を培養することを含む、方法を提供する。
【0083】
特定の実施形態は、MPS Iを治療する方法であって、本明細書に記載のタンパク質または本明細書に記載のポリペプチドを、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。特定の実施形態では、治療有効量のタンパク質またはポリペプチドが投与される。
【0084】
特定の実施形態は、MPS Iの治療を必要とする患者におけるその治療に使用するための、本明細書に記載のタンパク質または本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
【0085】
特定の実施形態は、MPS Iの治療を必要とする患者におけるそれを治療するための医薬の調製における、本明細書に記載のタンパク質または本明細書に記載のポリペプチドの使用を提供する。
【0086】
特定の実施形態は、MPS Iを有する患者における毒性代謝産物の蓄積を減少させる方法であって、本明細書に記載のタンパク質または本明細書に記載のポリペプチドをこの患者に投与することを含む、方法を提供する。特定の実施形態では、治療有効量(例えば、治療上有効な量)のタンパク質またはポリペプチドが投与される。
【0087】
特定の実施形態は、MPS Iを有する患者における毒性代謝産物の蓄積を減少させるのに使用するための、本明細書に記載のタンパク質または本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
【0088】
特定の実施形態は、MPS Iを有する患者における毒性代謝産物の蓄積を減少させるための医薬の調製における、本明細書に記載のタンパク質または本明細書に記載のポリペプチドの使用を提供する。
【0089】
特定の実施形態では、毒性代謝産物は、ヘパラン硫酸由来のオリゴ糖またはデルマタン硫酸由来のオリゴ糖を含む。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】例示的なETV:IDUA融合タンパク質の図解であり、IDUA酵素は、FcポリペプチドのN末端(A)またはFcポリペプチドのC末端(B)に融合されている。
【
図2】IDUA-Fc融合タンパク質及びAldurazyme(アウドラザイム)(ラロニダーゼ)の酵素活性のインビトロ評価。
【
図3】ヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸のLCMS定量を使用して、ハーラー(MPS I)患者と健常対照群の線維芽細胞におけるラロニダーゼと比較したETV:IDUA Fusion 1の細胞活性の評価。
【
図4A】TfRノックインマウス(「TfR
mu/huKI」)における、ETV:IDUA Fusion 3血清PKの評価。
【
図4B】TfRノックインマウス(「TfR
mu/huKI」)における、ETV:IDUA Fusion 4血清PKの評価。
【
図4C】TfRノックインマウス(「TfR
mu/huKI」)における、ETV:IDUA Fusion 6血清PKの評価。
【
図5A】TfRノックインマウス(「TfR
mu/huKI」)におけるETV:IDUA Fusion 3脳PKの評価。
【
図5B】TfRノックインマウス(「TfR
mu/huKI」)における、ETV:IDUA Fusion 4脳PKの評価。
【
図5C】TfRノックインマウス(「TfR
mu/huKI」)における、ETV:IDUA Fusion 6脳PKの評価。
【
図6A】MPS Iの健康なマウスモデルと疾患マウスモデルで実施した比較研究における、CSFにおける薬力学的反応(総GAGレベル)の評価。健康なマウスモデルは、TfRノックインマウス(“TfR
mu/hu”)で表され、疾患マウスモデルは、IDUA遺伝子がノックアウトされたTfRノックインマウス(「IDUA KO;TfR
mu/hu」)で表される。グラフには平均±SEM及びp値が示される:一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定;** p≦0.01、***p≦0.001、及び****p≦0.0001。
【
図6B】MPS Iの健康なマウスモデルと疾患マウスモデルで実施した比較研究における、脳における薬力学的反応(総GAGレベル)の評価。健康なマウスモデルは、TfRノックインマウス(“TfR
mu/hu”)で表され、疾患マウスモデルは、IDUA遺伝子がノックアウトされたTfRノックインマウス(「IDUA KO;TfR
mu/hu」)で表される。グラフには平均±SEM及びp値が示される:一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定;** p≦0.01、***p≦0.001、及び****p≦0.0001。
【
図6C】MPS Iの健康なマウスモデルと疾患マウスモデルで実施した比較研究における、肝臓における薬力学的反応(総GAGレベル)の評価。健康なマウスモデルは、TfRノックインマウス(“TfR
mu/hu”)で表され、疾患マウスモデルは、IDUA遺伝子がノックアウトされたTfRノックインマウス(「IDUA KO;TfR
mu/hu」)で表される。グラフには平均±SEM及びp値が示される:一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定;** p≦0.01、***p≦0.001、及び****p≦0.0001。
【
図6D】MPS Iの健康なマウスモデルと疾患マウスモデルで実施した比較研究における、尿における薬力学的反応(総GAGレベル)の評価。健康なマウスモデルは、TfRノックインマウス(“TfR
mu/hu”)で表され、疾患マウスモデルは、IDUA遺伝子がノックアウトされたTfRノックインマウス(「IDUA KO;TfR
mu/hu」)で表される。グラフには平均±SEM及びp値が示される:一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定;** p≦0.01、***p≦0.001、及び****p≦0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0091】
現在、MPS Iの治療のための新しい治療薬、特に神経認知表現型を有する重篤なMPS Iを治療する治療薬が必要とされている。本明細書に記載されているのは、ETV:IDUAと呼ばれる特定の酵素補充療法であり、これには、BBBを通過し、MPS Iの末梢及びCNS症状の両方を治療する能力がある。本明細書で使用される場合、「ETV:IDUA」という用語は、BBBを通過させて輸送し得、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に結合(例えば、融合)している第1のFcポリペプチド;及び第2のFcポリペプチドを含む、タンパク質(例えば、二量体タンパク質)を指す。
【0092】
IDUA酵素-Fc融合ポリペプチドを含むタンパク質分子
本明細書に記載されるように、特定の実施形態は、IDUA酵素-Fc融合ポリペプチドを含むタンパク質分子を提供する。タンパク質に組み込まれたIDUA酵素は、触媒的に活性である、すなわち、酵素活性を保持する。いくつかの態様では、本明細書に記載のタンパク質は、以下を含む:(a)改変(例えば、ヘテロ二量体化を促進する1つ以上の改変)を含んでもよいし、または野生型Fcポリペプチドであってもよい第1のFcポリペプチド;及びIDUA酵素;ならびに(b)第2のFcポリペプチドであって、改変(例えば、ヘテロ二量体化を促進する1つ以上の改変)を含んでもよいし、または野生型Fcポリペプチドであってもよい、第2のFcポリペプチド;及び任意選択でIDUA酵素を含み、ここでこの第1及び/または第2のFcポリペプチドは、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)への結合をもたらす改変を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質は、全長IDUA野生型配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質は、成熟IDUA野性型配列を含む。本明細書に記載されているように、野生型IDUAタンパク質配列にはいくつかの多型が報告されている。例えば、IDUA酵素は、EU付番に従い、位置33にHもしくはQを含み、及び/または位置622にAもしくはTを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質は、触媒活性断片または野生型IDUA配列のバリアントを含む。例えば、IDUA酵素は、EU付番に従い位置27にEを含んでもよいし、または、アミノ酸が存在しなくてもよい。他のIDUA酵素短縮についても本明細書で説明する。したがって、いくつかの実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号39~49、78~82及び99のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号39~49、78~82及び99のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号39、40、45、78、及び99のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号39、40、45、78、及び99のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、このような配列内でX1はHである。特定の実施形態では、このような配列内でX1はQである。特定の実施形態では、このような配列内でX2はAである。特定の実施形態では、このような配列内でX2はTである。特定の実施形態では、このような配列内でX3はEである。特定の実施形態では、このような配列内でX3は存在しない。いくつかの実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号41~44のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号41~44のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号46~49のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号46~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IDUAアミノ酸配列は、配列番号79~82のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号79~82のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0094】
上で考察するとおり、いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、IDUAタンパク質のバリアントまたは触媒活性断片である(例えば、本明細書に記載されたIDUAアミノ酸配列を含む)。いくつかの実施形態では、IDUA酵素の触媒活性バリアントまたは断片は、野生型IDUA酵素の活性の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれ以上を有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質に存在するIDUA酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片は、FcポリペプチドまたはTfR結合Fcポリペプチドに接合されていない場合のその活性と比較して、その活性の少なくとも25%を保持する。いくつかの実施形態では、IDUA酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片は、FcポリペプチドまたはTfR結合Fcポリペプチドに接合されていない場合のその活性と比較して、その活性の少なくとも10%、または少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%を保持する。いくつかの実施形態では、IDUA酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片は、FcポリペプチドまたはTfR結合Fcポリペプチドに接合されていない場合のその活性と比較して、その活性の少なくとも80%、85%、90%または95%を保持する。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドへの融合は、IDUA酵素、またはその触媒活性バリアントもしくは断片の活性を低下させない。いくつかの実施形態では、TfR結合Fcポリペプチドへの融合は、IDUA酵素の活性を低下させない。
【0096】
Fcポリペプチド改変
本明細書に記載の融合タンパク質に組み込まれたFcポリペプチドは、ある特定の改変を含み得る。例えば、Fcポリペプチドは、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)への結合をもたらす改変を含み得る。さらに、Fcポリペプチドは、ヘテロ二量体化を促進する改変、血清安定性または血清半減期を増大させる改変、エフェクター機能を調節する改変、グリコシル化に影響を与える改変、及び/またはヒトにおける免疫原性を低下させる改変など、他の改変を含んでもよい。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、2つのFcポリペプチドを含み、一方のFcは野生型Fcポリペプチド、例えば、ヒトIgG1 Fcポリペプチドであり;他方のFcは、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)に結合するように改変されており、任意選択で、1つ以上の追加の改変をさらに含む。特定の他の実施形態では、両方のFcポリペプチドはそれぞれ、独立して選択された改変(例えば、本明細書に記載の改変)を含む。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、2つのFcポリペプチドを含み、ここで一方のFcは、BBB受容体に結合するように改変されていないが、本明細書に記載される1つ以上の他の改変を含み;もう一方のFcは、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)に結合するように改変されており、任意選択で、1つ以上の追加の改変をさらに含む。特定の他の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、2つのFcポリペプチドを含み、両方のFcポリペプチドとも、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)に結合するように改変されており、任意選択で、1つ以上の追加の改変をさらに含む。
【0097】
種々のFc改変において指定されるアミノ酸残基は、BBB受容体、例えば、TfRに結合する改変Fcポリペプチド中に導入されるものを含め、本明細書において、EUインデックス付番を使用して付番される。任意のFcポリペプチド、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFcポリペプチドは、本明細書に記載の1つ以上の位置に、改変、例えば、アミノ酸置換を有し得る。
【0098】
本明細書に記載の融合タンパク質に存在する改変(例えば、ヘテロ二量体化及び/またはBBB受容体結合を増強させる)Fcポリペプチドは、ネイティブFc領域配列またはその断片、例えば、少なくとも50アミノ酸長もしくは少なくとも100アミノ酸長、もしくはそれ以上の断片に対して、少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、ネイティブFcのアミノ酸配列は、配列番号1のFc領域配列である。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~110もしくは配列番号1のアミノ酸111~217、またはそれらの断片、例えば、少なくとも50アミノ酸長もしくは少なくとも100アミノ酸長もしくはそれ以上の断片に対して、少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0099】
いくつかの実施形態では、改変(例えば、ヘテロ二量体化及び/またはBBB受容体結合を増強させる)Fcポリペプチドは、ネイティブFc領域のアミノ酸配列に対応する、少なくとも50個のアミノ酸、または少なくとも60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個もしくは95個以上、または少なくとも100個以上のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号1のようなネイティブFc領域のアミノ酸配列に対応する、少なくとも25個の連続するアミノ酸、または少なくとも30個、35個、40個もしくは45個の連続するアミノ酸、または50個の連続するアミノ酸、または少なくとも60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個もしくは95個以上の連続するアミノ酸、または100個のもしくはそれ以上の連続するアミノ酸を含む。
【0100】
血液脳関門(BBB)受容体結合のための改変
いくつかの態様では、本明細書で提供されるのは、血液脳関門(BBB)を通過させて輸送し得る融合タンパク質である。このようなタンパク質は、BBB受容体に結合する、改変Fcポリペプチドを含む。BBB受容体は、BBB内皮、ならびに他の細胞型及び組織型で発現する。いくつかの実施形態では、BBB受容体は、トランスフェリン受容体(TfR)である。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、TfRに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、約50nM~約500nMの親和性でTfRに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490または500nMの親和性でTfRに結合する(例えば、特異的に結合する)。いくつかの実施形態では、タンパク質は、約100~約500nMの親和性でTfRに結合する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、約100nM~約300nM、または約200nM~約450nMの親和性でTfRに結合する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、約250nMの親和性でTfRに結合する。特定の実施形態では、タンパク質は、約150~約400nM、または約200~約400nM、または約250nM~約350nM、または約300~約350nMの親和性でTfRに結合する。
【0102】
いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する改変Fcポリペプチドは、CH3ドメインに置換を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、TfR結合活性のために改変されるIgG CH3ドメインなどのヒトIg CH3ドメインを含む。CH3ドメインは、任意のIgGサブタイプ、すなわちIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4からのものであり得る。IgG抗体の文脈では、CH3ドメインとは、EU付番スキームに従って付番されたほぼ位置341~ほぼ位置447のアミノ酸のセグメントを指す。
【0103】
いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する改変Fcポリペプチドは、TfRのアピカルドメインに結合し、かつトランスフェリンのTfRへの結合を遮断することもその他で阻害することもなく、TfRに結合し得る。いくつかの実施形態では、トランスフェリンのTfRへの結合は、実質的に阻害されない。いくつかの実施形態では、トランスフェリンのTfRへの結合は、約50%未満(例えば、約45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%未満)阻害される。いくつかの実施形態では、トランスフェリンのTfRへの結合は、約20%未満(例えば、約15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満または1%未満)阻害される。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在する改変(例えば、BBB受容体結合)Fcポリペプチドは、EU付番スキームに従う、アミノ酸位置384、386、387、388、389、413、415、416及び421に置換を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する改変Fcポリペプチドは、EU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する改変Fcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、TfRに特異的に結合する改変Fcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。
【0106】
追加の実施形態では、改変Fcポリペプチドは、EU付番スキームに従う414、424及び426を含む位置に1つ、2つまたは3つの置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、位置414はLys、Arg、GlyもしくはProであり、位置424はSer、Thr、GluもしくはLysであり、及び/または位置426はSer、TrpもしくはGlyである。
【0107】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸111~217に対する少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し;配列番号23のEUインデックス位置380、384~390及び/または413~421のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸111~216に対する少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し;配列番号23または24のEUインデックス位置380、384~390及び/または413~421のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号23または24に対する少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し;配列番号23または24のEUインデックス位置380、384~390及び/または413~421のアミノ酸を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号23または24に対する少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを有する。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号23または24に対する少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号23または24に対する少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従い、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、改変されたFcポリペプチドは、配列番号23または24のアミノ酸配列を含む。
【0110】
追加のFcポリペプチド変異
いくつかの態様では、本明細書に記載の融合タンパク質は、2つのFcポリペプチドを含み、一方または両方のFcポリペプチドはそれぞれ、独立して選択された改変(例えば、本明細書に記載の改変)を含む。一方または両方のFcポリペプチドに導入され得る他の変異の非限定的な例としては、例えば、Fcポリペプチドの血清安定性もしくは血清半減期を増加させる変異、Fcポリペプチドのエフェクター機能を調節する変異、Fcポリペプチドのグリコシル化に影響を与える変異、Fcポリペプチドのヒトにおける免疫原性を低下させる変異、ならびに/またはFcポリペプチドのノブ及びホールによるヘテロ二量体化をもたらす変異が挙げられる。Fcポリペプチドに含まれ得るさまざまな修飾の例は、WO2019/070577に記載されており、その全体があらゆる目的で本明細書に参照により組み込まれている。
いくつかの実施形態では、融合タンパク質に存在するFcポリペプチドはそれぞれ独立して、対応する野生型Fcポリペプチド(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFcポリペプチド)に対する少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0111】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質に存在するFcポリペプチドは、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げるノブ変異及びホール変異を有する。一般に、改変は、突起が空洞内に配置されてヘテロ二量体形成を促進し、それによってホモ二量体形成を妨げることができるように、一方のポリペプチドの界面で突起(「ノブ」)を導入し、別のポリペプチドの界面で対応する空洞(「ホール」)を導入する。突起は、第一のポリペプチドの界面の小さいアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築される。突起と同一または類似のサイズの埋め合わせとなる空洞は、第二のポリペプチドの界面で、大きなアミノ酸側鎖をより小さいもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)と置き換えることによって作成される。いくつかの実施形態では、このような追加の変異は、BBB受容体、例えば、TfRへのポリペプチドの結合に悪影響を与えないFcポリペプチドの位置にある。
【0112】
二量体化のためのノブ及びホールアプローチの一つの例示的な実施形態では、融合タンパク質に存在するFcポリペプチドのうちの一方の位置366(EU付番スキームに従って付番された)は、ネイティブトレオニンの代わりにトリプトファンを含む。二量体の他方のFcポリペプチドは、位置407(EU付番スキームに従って付番された)にネイティブチロシンの代わりにバリンを有する。他方のFcポリペプチドはさらに置換を含んでもよく、この場合、位置366(EU付番スキームに従って付番された)のネイティブトレオニンがセリンで置換され、位置368(EU付番スキームに従って付番された)のネイティブロイシンがアラニンで置換される。したがって、本明細書に記載の融合タンパク質のFcポリペプチドのうちの一方は、T366Wノブ変異を有し、他方のFcポリペプチドはY407V変異を有しており、これは通常、T366S及びL368Aホール変異を伴う。特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、T366S、L368A、及びY407V置換を含有し、第2のFcポリペプチドは、T366W置換を含む。特定の他の実施形態では、第1のFcポリペプチドは、T366W置換を含有し、第2のFcポリペプチドは、T366S、L368A、及びY407V置換を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、血清半減期を増強するための改変を、導入してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、EU付番スキームに従って付番した、位置252にチロシン、位置254にトレオニン及び位置256にグルタミン酸を含んでもよい。したがって、一方または両方のFcポリペプチドは、M252Y、S254T、及びT256E置換を有し得る。代替的に、一方または両方のFcポリペプチドは、EU付番スキームに従って付番した、M428L及びN434S置換を有し得る。代替的に、一方または両方のFcポリペプチドは、N434SまたはN434A置換を有し得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させる改変、すなわち、エフェクター機能を媒介するエフェクター細胞上に発現したFc受容体に結合した際に、特定の生物学的機能を誘導する能力が低下している改変を含み得る。抗体のエフェクター機能の例としては、限定するものではないが、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化が挙げられる。エフェクター機能は、抗体のクラスによって異なる場合がある。例えば、ネイティブヒトIgG1及びIgG3抗体は、免疫系細胞に存在する適切なFc受容体に結合するとADCC及びCDC活性を誘発し得;ネイティブヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4は、免疫細胞に存在する適切なFc受容体に結合すると、ADCP機能を誘発し得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在する一方または両方のFcポリペプチドを、ヘテロ二量体化のための他の改変、例えば、天然に荷電したCH3-CH3界面内の接触残基の静電的な操作または疎水性パッチ改変を含むように操作してもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を調節する追加の改変を含んでもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させるか、または除去する改変を含んでもよい。エフェクター機能を低下させる例示的なFcポリペプチド変異としては、CH2ドメインにおける、例えば、EU付番スキームに従う位置234及び位置235での置換が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、位置234及び位置235にアラニン残基を含んでもよい。したがって、一方または両方のFcポリペプチドは、L234A及びL235A(LALA)置換を有してもよい。
エフェクター機能を調節する追加のFcポリペプチド変異としては、以下のもの、すなわち、位置329に、プロリンが、グリシン、セリンもしくはアルギニンで、またはFcのプロリン329とFcγRIIIのトリプトファン残基Trp87及びTrp110との間に形成されたFc/Fcγ受容体界面を破壊するのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換されている変異を有し得ることが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例示的な置換としては、EU付番スキームに従うS228P、E233P、L235E、N297A、N297D、及びP331Sが挙げられる。複数の置換もまた存在する場合がある、例えば、EU付番スキームに従う、ヒトIgG1のFc領域のL234A及びL235A;ヒトIgG1のFc領域のL234A、L235A、及びP329G;ヒトIgG1のFc領域のL234A、L235A、及びP329S;ヒトIgG4のFc領域のS228P及びL235E;ヒトIgG1のFc領域のL234A及びG237A;ヒトIgG1のFc領域のL234A、L235A、及びG237A;ヒトIgG2のFc領域のV234A及びG237A;ヒトIgG4のFc領域のL235A、G237A、及びE318A;ならびにヒトIgG4のFc領域のS228P及びL236E。いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、ADCCを調節する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、EU付番スキームに従う位置298、333、及び/または334での置換を有し得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、C末端Lys残基は、本明細書に記載のFcポリペプチドにおいて除去される(すなわち、EU付番スキームに従う、位置447のLys残基)。
【0119】
追加の変異を含む例示的なFcポリペプチド
本明細書に記載の非限定的な例として、本明細書に記載の融合タンパク質に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番スキームに従って付番したT366W)、ホール変異(例えば、EU付番スキームに従って付番したT366S、L368A及びY407V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番スキームに従って付番したL234A、L235A及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))、及び/または血清安定性もしくは血清半減期を増加させる変異(例えば、(i)EU付番を参照して付番されたM252Y、S254T、及びT256E、または(ii)EU付番スキームに従って付番されたM428Lを伴うかまたは伴わないN434S)、を含む追加の変異を含んでもよい。例として、配列番号9~22、25~38、74~77、及び97~98は、これらの追加の変異の1つ以上を含む改変Fcポリペプチドの非限定的な例を提供する。
【0120】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドまたは改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番スキームに従って付番したT366W)、ならびに配列番号1、2、23及び24のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、配列番号1、2、23、及び24のいずれか1つの配列を有するFcポリペプチドまたは改変Fvポリペプチドは、ノブ変異を有するように改変してもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)を含み、かつ配列番号17及び18のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号17及び18のいずれか1つの配列を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)を含み、かつ配列番号25及び26のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)を含み、配列番号25及び26のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)を含み、配列番号25または26に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)を含み、配列番号25または26に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号25及び26のいずれか1つの配列を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドまたは改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番スキームに従って付番したT366W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番スキームに従って付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))、ならびに配列番号1、2、23、及び24のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、配列番号1、2、23、及び24のうちのいずれか1つの配列を有するFcポリペプチドまたは改変されたFcポリペプチドは、ノブ変異、及びエフェクター機能を調節する変異を有するように改変してもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、かつ配列番号74~75及び76~77のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号74~75及び76~77のいずれか1つの配列を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、配列番号27~32及び35~38のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、配列番号27~32及び35~38のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、配列番号27~32及び35~38のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従い、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ノブ変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366W)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、配列番号27~32及び35~38のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号27~32及び35~38のいずれか1つの配列を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドまたは改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番スキームに従って付番したT366S、L368A及びY407V)、ならびに配列番号1、2、23、及び24のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、配列番号1、2、23、及び24のいずれか1つの配列を有するFcポリペプチドまたは改変Fcポリペプチドは、ホール変異を有するように改変してもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A及びY407V)を含み、かつ配列番号9及び10のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号9及び10のいずれか1つの配列を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A及びY407V)を含み、かつ配列番号33及び34のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A及びY407V)を含み、配列番号33及び34のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A及びY407V)を含み、配列番号33及び34のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置にすなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A、及びY407V)を含み、配列番号33及び34のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号33及び34のいずれか1つの配列を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドまたは改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番スキームに従って付番したT366S、L368A及びY407V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番スキームに従って付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))、ならびに配列番号1、2、23、及び24のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、配列番号1、2、23、及び24のうちのいずれか1つの配列を有するFcポリペプチドまたは改変Fcポリペプチドは、ホール変異、及びエフェクター機能を調節する変異を有するように改変され得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A及びY407V)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、かつ配列番号11~16及び19~22のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号11~16及び19~22のいずれか1つの配列を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A、及びY407V)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、かつ配列番号97~98のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A、及びY407V)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、配列番号97~98のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A、及びY407V)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、配列番号97~98のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、ホール変異(例えば、EU付番を参照して付番したT366S、L368A、及びY407V)、ならびにエフェクター機能を調節する変異(例えば、EU付番を参照して付番したL234A、L235A、及び/またはP329GまたはP329S(例えば、L234A及びL235A;L234A、L235A、及びP329G;またはL234A、L235A、及びP329S))を含み、配列番号97~98のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、配列番号97~98のいずれか1つの配列を含む。
【0132】
FcRn結合部位
特定の態様では、改変(例えば、BBB受容体結合)Fcポリペプチド、またはBBB受容体に特異的に結合しない本明細書に記載の融合タンパク質に存在するFcポリペプチドは、FcRn結合部位を含み得る。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、Fcポリペプチドまたはその断片中に存在する。
【0133】
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、ネイティブFcRn結合部位を含む。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、ネイティブFcRn結合部位のアミノ酸配列に対するアミノ酸変化を含まない。いくつかの実施形態では、ネイティブFcRn結合部位は、IgG結合部位、例えば、ヒトIgG結合部位である。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、FcRn結合を変化させる改変を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、1つ以上の変異した、例えば置換されたアミノ酸残基を有し、この変異(複数可)は、血清半減期を増加させるか、または血清半減期を実質的に減少させない(すなわち、変異した位置に野生型残基を有する同等物の改変Fcポリペプチドと比較して、同一条件下でアッセイした場合に血清半減期を25%以下減少させる)。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、EU付番スキームに従う位置250~256、307、380、428及び433~436で置換された1つ以上のアミノ酸残基を有する。
【0135】
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位のまたはその近傍の1つ以上の残基は、改変ポリペプチドの血清半減期を延長させるために、ネイティブヒトIgG配列に対して変異している。いくつかの実施形態では、変異は、位置252、254及び256のうちの1つ、2つまたは3つに導入されている。いくつかの実施形態では、変異はM252Y、S254T及びT256Eである。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、変異M252Y、S254T及びT256Eをさらに含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、EU付番スキームに従う、位置T307、E380及びN434のうちの1つ、2つまたは3つすべてに置換を含む。いくつかの実施形態では、変異はT307Q及びN434Aである。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、変異T307A、E380A及びN434Aを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、EU付番スキームに従う、位置T250及びM428に置換を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、変異T250Q及び/またはM428Lを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、EU付番スキームに従う、位置M428及びN434に置換を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、変異M428L及びN434Sを含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、N434SまたはN434A変異を含む。
【0136】
Fcポリペプチドに連結されたIDUA酵素
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、本明細書に記載されている2つのFcポリペプチドを含み、Fcポリペプチドの一方または両方は、部分的または完全なヒンジ領域をさらに含み得る。ヒンジ領域は、任意の免疫グロブリンサブクラスまたはアイソタイプ由来のものであり得る。例示的な免疫グロブリンヒンジは、IgG1ヒンジ領域などのIgGヒンジ領域、例えば、ヒトIgG1ヒンジのアミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号5)またはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)である。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、FcポリペプチドのN末端領域に存在する。
【0137】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドのN末端は、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドのC末端は、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0138】
特定の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、単一のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片を含む。
【0139】
特定の他の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、第2のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片を含む。例えば、特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドは、IDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドのN末端は、第2のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。特定の実施形態では、第2のFcポリペプチドのC末端は、第2のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0140】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドのN末端は、第1のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結され;第2のFcポリペプチドのN末端は、第2のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0141】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドのC末端は、第1のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結され;第2のFcポリペプチドのC末端は、第2のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0142】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドのN末端は、第1のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結され;第2のFcポリペプチドのC末端は、第2のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0143】
特定の実施形態では、第1のFcポリペプチドのC末端は、第1のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結され;第2のFcポリペプチドのN末端は、第2のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結される。
【0144】
いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、リンカー、例えば、ペプチドリンカーによってIDUA酵素に接合されている。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、ペプチド結合によって、または、ペプチドリンカーによってIDUA酵素に接合されており、例えば、Fcポリペプチドは融合ポリペプチドである。ペプチドリンカーは、接合しているFcポリペプチドに対してIDUA酵素の回転が可能となるように、及び/またはプロテアーゼによる消化に対して耐性であるように構成されてもよい。ペプチドリンカーは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸またはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、例えば、Gly、Asn、Ser、Thr、Alaなどのようなアミノ酸を含有する可塑性リンカー(例えば、グリシンリッチリンカー)であってもよい。そのようなリンカーは、公知のパラメータを使用して設計され、任意の長さのものであってもよく、かつ任意の長さの任意の反復単位(例えば、Gly残基及びSer残基の反復単位)を任意の数含んでもよい。例えば、リンカーは、2つ、3つ、4つ、5つもしくはそれ以上のGly4-Ser(配列番号72)反復などの反復、または単一のGly4-Ser(配列番号72)を有してもよい。他の態様では、リンカーは、Gly-Ser(配列番号71)であってもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、プロテアーゼ切断部位、例えば、中枢神経系に存在する酵素によって切断可能なプロテアーゼ切断部位を含んでもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、例えば、Gly-Serリンカー(配列番号71)、Gly4-Serリンカー(配列番号72)または(Gly4-Ser)2リンカー(配列番号73)によって、FcポリペプチドのN末端に接合されている。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、リンカーに接合されているかまたはIDUA酵素に直接接合されているヒンジ配列または部分的ヒンジ配列をN末端に含み得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、例えば、Gly-Serリンカー(配列番号71)、Gly4-Serリンカー(配列番号72)または(Gly4-Ser)2リンカー(配列番号73)によって、FcポリペプチドのC末端に接合されている。いくつかの実施形態では、FcポリペプチドのC末端は、IDUA酵素に直接接合されている。
【0147】
いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、化学的架橋剤によってFcポリペプチドに接合されている。そのようなコンジュゲートは、周知の化学的架橋試薬及びプロトコルを使用して生成され得る。例えば、当業者に公知であり、ポリペプチドを目的の作用物質と架橋させるのに有用である、多数の化学的架橋剤がある。例えば、この架橋剤は、段階的に分子を連結させるために使用し得るヘテロ二官能性架橋剤である。ヘテロ二官能性架橋剤によって、タンパク質をコンジュゲートさせるためのより特異的なカップリング方法が設計できるようになり、これにより、ホモタンパク質ポリマーなどの望ましくない副反応の発生を低減させる。多種多様なヘテロ二官能性架橋剤が当技術分野において公知であり、それらとしては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはその水溶性類似体であるN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS);N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC);4-スクシンイミジルオキシカルボニル-a-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)-トルエン(SMPT)、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート]ヘキサノエート(LC-SPDP)が挙げられる。N-ヒドロキシスクシンイミド部分を有するこれらの架橋剤を、一般により高い水溶性を有するN-ヒドロキシスルホスクシンイミド類似体として得ることができる。さらに、連結鎖内にジスルフィド架橋を有する架橋剤は、インビボでのリンカー切断の量を低減させるために、代わりにアルキル誘導体として合成され得る。ヘテロ二官能性架橋剤に加えて、ホモ二官能性架橋剤及び光反応性架橋剤を含む多数の他の架橋剤が存在する。ジスクシンイミジルスベレート(disuccinimidyl subcrate)(DSS)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)及びジメチルピメルイミデート・ 2HCl(DMP)は、有用なホモ二官能性架橋剤の例であり、ならびにビス-[B-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド(BASED)及びN-スクシンイミジル-6(4’-アジド-2’-ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(SANPAH)は、有用な光反応性架橋剤の例である。
【0148】
IDUA酵素-Fc融合ポリペプチドを含む例示的なタンパク質分子
いくつかの態様において、本明細書に記載の融合タンパク質は、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチド、及び第2のFcポリペプチドを含み、この第1及び/または第2のFcポリペプチドは、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)に結合(例えば、特異的に結合)し得る改変Fcである。特定の実施形態では、この第2のFcポリペプチドは、第1のFcポリペプチドとFc二量体を形成する。いくつかの実施形態では、この第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖及び/もしくは軽鎖可変領域配列またはその抗原結合部分を含まない。いくつかの態様では、融合タンパク質は、第2のIDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片(例えば、第2のFcポリペプチドに結合していてもよい)をさらに含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは改変Fcポリペプチドであり、及び/または第2のFcポリペプチドは改変Fcポリペプチドである(例えば、本明細書に記載の1つ以上の改変を含む)。例えば、いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、他方のFcポリペプチドとのヘテロ二量体化を促進する1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させる1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、血清半減期を延長する1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)への結合を付与する1つ以上の改変を含む。例えば、特定の実施形態では、TfRに結合可能なFcポリペプチドは、EU付番に従い、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、TfR受容体に結合し得るFcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、TfR受容体に結合し得るFcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。いくつかの実施形態では、このようなFcポリペプチドは、TfRに特異的に結合する。
【0150】
いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、改変Fcポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、改変Fcポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第1及び第2のFcポリペプチドはそれぞれ改変Fcポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは改変ポリペプチドであるが、TfRに特異的に結合しない;そして第2のFcポリペプチドは、TfRに特異的に結合し得る改変ポリペプチドであり、任意選択で、本明細書に記載される1つ以上のさらなる改変をさらに含む。他の実施形態では、第1のFcポリペプチドは改変ポリペプチドであり、これは、TfRに特異的に結合し得、かつ任意選択で、本明細書に記載の1つ以上のさらなる改変をさらに含み;この第2のFcポリペプチドは、TfRに特異的に結合しない改変ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、TfRに特異的に結合し得る改変ポリペプチドであり、任意選択で、本明細書に記載の1つ以上のさらなる改変をさらに含み;この第2のFcポリペプチドは、TfRに特異的に結合し得る改変ポリペプチドであり、かつ任意選択で、本明細書に記載の1つ以上のさらなる改変をさらに含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒的に活性な断片に連結されたT366S、L368A、及びY407V(ホール)置換を含む第1のFcポリペプチドを含む第1のポリペプチド鎖と;T366W(ノブ)置換を含む第2のFcポリペプチドを含む第2のポリペプチド鎖とを含み、ここでこの第1及び/または第2のFcポリペプチドは、TfRに結合し得る、改変ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、L234A及びL235A(LALA)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、L234A、L235A、及びP329G(LALAPG)置換をさらに含むか、またはL234A、L235A、及びP329S(LALAPS)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、M252Y、S254T、及びT256E(YTE)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、1)L234A及びL235A(LALA)置換;L234A、L235A、及びP329G(LALAPG)置換;またはL234A、L235A、及びP329S(LALAPS)置換;ならびに2)M252Y、S254T、及びT256E(YTE)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、位置234、235、252、254、256及び366にヒトIgG1野生型残基を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、TfRに結合し得る改変ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチドは、TfRに結合するように改変されてはいない。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、ノブ変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、配列番号25~32のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、ノブ変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、配列番号25~32のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号25~32のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号25~32のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含むか、あるいは配列番号25~32のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ホール変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、かつ配列番号9~16のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号9~16のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号25~32のいずれか1つを含み、第1のFcポリペプチドは、配列番号9~16のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含むか、あるいは配列番号35~38のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号19~22のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号19~22のいずれか1つの配列を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドはTfRに結合するように改変されてはいない。いくつかの実施形態では、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチドは、TfRに結合し得る改変ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、ノブ変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、かつ配列番号17~18及び74~75のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号17~18及び74~75のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ホール変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、かつ配列番号33~34、及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ホール変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、配列番号33~34、及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、ホール変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、配列番号33~34、及び97~98のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ホール変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、配列番号33~34、及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含むか、あるいは配列番号33~34、及び97~98のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号17~18及び74~75のいずれか1つを含み、この第1のFcポリペプチドは、配列番号33~34、及び97~98のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号76~77のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号76~77のいずれか1つの配列を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結されたT366W(ノブ)置換を含む第1のFcポリペプチドを含む第1のポリペプチド鎖と;T366S、L368A、及びY407V(ホール)置換を含む第2のFcポリペプチドを含む第2のポリペプチド鎖とを含み、ここでこの第1及び/または第2のFcポリペプチドは、TfRに結合し得る、改変ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、L234A及びL235A(LALA)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、L234A、L235A、及びP329G(LALAPG)置換をさらに含むか、またはL234A、L235A、及びP329S(LALAPS)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、M252Y、S254T及びT256E(YTE)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、1)L234A及びL235A(LALA)置換;L234A、L235A、及びP329G(LALAPG)置換;またはL234A、L235A、及びP329S(LALAPS)置換;ならびに2)M252Y、S254T、及びT256E(YTE)置換をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、位置234、235、252、254、256及び366にヒトIgG1野生型残基を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、TfRに結合し得る改変ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチドは、TfRに結合するように改変されてはいない。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、ホール変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、配列番号33~34、及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、ホール変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、配列番号33~34、及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。前述の実施形態のいくつかでは、第2のFcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu及び位置390にAsnをさらに含む。前述の実施形態のいくつかでは、第2のFcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号33~34、及び97~98のうちのいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ノブ変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、かつ配列番号17~18及び74~75のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号17~18及び74~75のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号33~34及び97~98のいずれか1つを含み、第1のFcポリペプチドは、配列番号17~18及び74~75のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号76~77のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号76~77のいずれか1つの配列を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドはTfRに結合するように改変されてはいない。いくつかの実施形態では、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチドは、TfRに結合し得る改変ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、ホール変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、かつ配列番号9~16のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号9~16のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ノブ変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、かつ配列番号25~32のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、ノブ変異、LALA/LALAPG/LALAPS変異、及び/またはYTE変異を含み、配列番号25~32のいずれか1つに対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。前述の実施形態のいくつかでは、Fcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu及び位置390にAsnをさらに含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のFcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号25~32のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号9~16のいずれか1つを含み、第1のFcポリペプチドは、配列番号25~32のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号19~22のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号19~22のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号35~38のいずれか1つの配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在するIDUA酵素は、配列番号9~16のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する第1のFcポリペプチドを含む第1のポリペプチド鎖に連結されているか、あるいは配列番号9~16のいずれか1つの配列を(例えば、融合ポリペプチドとして)含む。いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、可塑性リンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)によって第1のFcポリペプチドに連結されている。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP;配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号19~22のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号19~22のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するIDUA配列を含むか;あるいは配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドに連結されたIDUA配列は、配列番号50~69、及び83~92のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号50~69、及び83~92のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号25~32のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する第2のFcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号25~32のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する第2のFcポリペプチドを含み、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号25~32のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、配列番号25~32のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含むか、あるいは配列番号25~32のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP;配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu;位置389にAla;及び位置390にAsnを含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つの配列に対する少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含むか、あるいは配列番号35~38のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のIDUA酵素は、可塑性リンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)によって第2のFcポリペプチドに連結されている。いくつかの実施形態では、第2のIDUA酵素は、配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するIDUA配列を含むか、あるいは配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドに連結された第2のIDUA配列は、配列番号101~103のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号101~103のいずれか1つの配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号50~65及び83~92のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号50~57及び83~86のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号50~53のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号50~51のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号51のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号36のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号54~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号83~86のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号83~84のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号84のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号36のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号58~65及び87~92のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号58~61のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号58~59のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号59のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号38のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号60~61のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号61のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号38のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号62~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号64~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号65のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号38のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号87~90のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号89~90のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号90のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号38のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号91~92のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号92のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号38のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号50~51のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号101または102のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のIDUAアミノ酸配列に連結された第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号51のアミノ酸配列を含む第1のIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号102のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のIDUAアミノ酸配列に連結された第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号66~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号66~67のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~36のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号67のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号35~36のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号67のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号36のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号68~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号68のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号37~38のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号68のアミノ酸配列を含むIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号38のアミノ酸配列を含む第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号67のアミノ酸配列を含む第1のIDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチドと;配列番号103のアミノ酸配列を含む第2のIDUAアミノ酸配列に連結された第2のFcポリペプチドと、を含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在するIDUA酵素は、配列番号17~18及び74~75のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する第1のFcポリペプチドを含む第1のポリペプチド鎖に連結されているか、あるいは配列番号17~18及び74~75のいずれか1つの配列を(例えば、融合ポリペプチドとして)含む。いくつかの実施形態では、第1のIDUA酵素は、可塑性リンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)によって第1のFcポリペプチドに連結されている。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP;配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号76~77のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号76~77のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するIDUA配列を含むか、あるいは配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結されたIDUA配列は、配列番号100及び104のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号100及び104のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号33~34及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する第2のFcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号33~34及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する第2のFcポリペプチドを含み、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。前述の実施形態のいくつかでは、第2のポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu及び位置390にAsnをさらに含む。前述の実施形態のいくつかでは、第2のFcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。前述の実施形態のいくつかでは、第2のFcポリペプチドは、配列番号33~34及び97~98のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP;配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第2のIDUA酵素は、可塑性リンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)によって第2のFcポリペプチドに連結されている。
【0192】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在するIDUA酵素は、配列番号25~32のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する第1のFcポリペプチドを含む第1のポリペプチド鎖に連結されている(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号25~32のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu及び位置390にAsnをさらに含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のFcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のFcポリペプチドは、配列番号25~32のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、可塑性リンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)によって第1のFcポリペプチドに連結されている。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP;配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu及び位置390にAsnをさらに含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のFcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のFcポリペプチドは、配列番号35~38のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するIDUA配列を含むか、あるいは配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドに連結されたIDUA配列は、配列番号101~103のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号101~103のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号9~16のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号9~16のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP;配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号19~22のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号19~22のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のIDUA酵素は、可塑性リンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)によって第2のFcポリペプチドに連結されている。いくつかの実施形態では、第2のIDUA酵素は、配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するIDUA配列を含むか、あるいは配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドに連結された第2のIDUA配列は、配列番号50~69及び83~92のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号50~69及び83~92のいずれか1つの配列を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質に存在するIDUA酵素は、配列番号33~34及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する第1のFcポリペプチドを含む第1のポリペプチド鎖に連結されている(例えば、融合ポリペプチドとして)。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、配列番号33~34及び97~98のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有し、かつEU付番に従う、位置389にAlaを含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち、位置380にGlu及び位置390にAsnをさらに含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のFcポリペプチドは、EU付番に従う、以下の位置に、すなわち位置380にGlu;位置384にTyr;位置386にThr;位置387にGlu;位置388にTrp;位置389にAla;位置390にAsn;位置413にThr;位置415にGlu;位置416にGlu;及び位置421にPheを含む。前述の実施形態のいくつかでは、第1のFcポリペプチドは、配列番号33~34及び97~98のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、可塑性リンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)によって第1のFcポリペプチドに連結されている。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP;配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、IDUA酵素は、配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するIDUA配列を含むか、あるいは配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17~18及び74~75のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有する第2のFcポリペプチドを含むか、あるいは配列番号17~18及び74~75のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(例えば、DKTHTCPPCP;配列番号6)を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcポリペプチドは、配列番号76~77のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号76~77のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のIDUA酵素は、可塑性リンカーなどのリンカー、及び/またはヒンジ領域もしくはその一部(例えば、DKTHTCPPCP、配列番号6)によって第2のFcポリペプチドに連結されている。いくつかの実施形態では、第2のIDUA酵素は、配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するIDUA配列を含むか、あるいは配列番号39~49、78~82、及び99のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドに連結された第2のIDUA配列は、配列番号100及び104のいずれか1つに対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性を有するか、あるいは配列番号100及び104のいずれか1つの配列を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、1)IDUAアミノ酸配列に結合した第1のFcポリペプチド、及び2)第2のFcポリペプチドを含み;ここで各ポリペプチドは前述の実施形態で述べたアミノ酸配列からなる。
【0195】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、1)IDUAアミノ酸配列に連結された第1のFcポリペプチド;及び2)第2のIDUAアミノ酸配列に連結された第2のFcポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、前述の実施形態で述べたアミノ酸配列からなる。
【0196】
本明細書に記載の融合タンパク質及び他の組成物は、広範囲にわたる結合親和性を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質は、トランスフェリン受容体(TfR)に対する親和性を有し、その範囲は、約50mM~約500nM、または約100nM~約500nMである。いくつかの実施形態では、TfRに対する親和性は、約50nM~約300nMの範囲である。いくつかの実施形態では、TfRに対する親和性は、約100nM~約350nMの範囲である。いくつかの実施形態では、TfRに対する親和性は、約150nM~約400nMの範囲である。いくつかの実施形態では、TfRに対する親和性は、約200nM~約400nMの範囲である。いくつかの実施形態では、TfRに対する親和性は、約200nM~約450nMの範囲である。いくつかの実施形態では、TfRに対する親和性は、一価の親和性である。
【0197】
タンパク質活性の評価
IDUA酵素を含む本明細書に記載の融合タンパク質の活性は、実施例セクションに記載のものなど、人工基質を使用してインビトロで活性を測定するアッセイを含む、種々のアッセイを使用して評価され得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、組織試料を評価する。組織試料は、上記のアッセイを使用して評価し得るが、ただし、微小胞を確実に破裂させるために、超音波処理ステップの前に、複数回の、例えば2回、3回、4回または5回以上の凍結融解サイクルが通常含まれる。
【0199】
本明細書に記載のアッセイによって評価し得る試料としては、脳、肝臓、腎臓、肺、脾臓、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)及び尿が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の酵素-Fc融合タンパク質(例えば、IDUA-Fc融合タンパク質)を受けた患者由来のCSF試料を評価し得る。
【0200】
核酸、ベクター、及び宿主細胞
本明細書に記載の融合タンパク質に含まれるポリペプチド鎖は、通常、組換え法を使用して調製される。したがって、いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載されているFcポリペプチドを含むポリペプチド鎖のいずれかをコードする核酸配列を含む単離された核酸、ならびにポリペプチドをコードする核酸を複製するため、及び/またはポリペプチドを発現するために使用される核酸が導入された宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核生物、例えば、ヒト細胞である。
【0201】
別の態様では、本明細書に記載のポリペプチド鎖の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、このポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリペプチド配列のうちの1つをコードする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリペプチド配列のうちの2つをコードする。ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても、または二本鎖であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNAである。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、cDNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNAである。
【0202】
いくつかの実施形態はまた、各核酸配列が本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸配列の対を提供する。例えば、特定の実施形態は、核酸配列の対を提供し、この対の第1の核酸配列は、第1のIDUAアミノ酸配列、IDUAバリアントアミノ酸配列、またはその触媒活性断片に連結された第1のFcポリペプチドをコードし;及びこの対の第2の核酸配列は、第2のFcポリペプチドをコードし、ここでこの第1及び/または第2のFcポリペプチドは、血液脳関門(BBB)受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)に結合し得る(例えば、特異的に結合し得る)改変Fcである。
【0203】
いくつかの実施形態では、このポリヌクレオチドが、核酸構築物内に含まれるか、またはポリヌクレオチドの対が1つ以上の核酸構築物内に含まれる。いくつかの実施形態では、構築物は、複製可能なベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、ファージミド、酵母染色体ベクター、及び非エピソーム哺乳動物ベクターから選択される。
【0204】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、発現構築物中の1つ以上の制御性ヌクレオチド配列に作動可能に連結される。ある一連の実施形態では、核酸発現構築物は、表面発現ライブラリーとしての使用に適合する。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、酵母における表面発現に適合する。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、ファージにおける表面発現に適合する。別の一連の実施形態では、核酸発現構築物は、ミリグラム量またはグラム量でポリペプチドを単離することが可能な系におけるポリペプチドの発現に適合する。いくつかの実施形態では、この系は、哺乳動物細胞発現系である。いくつかの実施形態では、この系は、酵母細胞発現系である。
【0205】
組換えポリペプチド生成のための発現ビヒクルとしては、プラスミド及び他のベクターが挙げられる。例えば、好適なベクターとしては、以下のタイプのプラスミド、すなわち、E.coliなどの原核細胞における発現のためのpBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド、及びpUC由来プラスミドが挙げられる。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neo、及びpHyg由来のベクターは、真核細胞のトランスフェクションに好適な哺乳動物発現ベクターの例である。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV-1)またはエプスタイン・バールウイルス(pHEBo、pREP由来及びp205)などのウイルスの誘導体を、真核細胞におけるポリペプチドの一過性発現に使用し得る。いくつかの実施形態では、バキュロウイルス発現系の使用により組換えポリペプチドを発現させることが望ましい場合がある。そのようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393及びpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUW1など)、ならびにpBlueBac由来ベクターが挙げられる。追加の発現系としては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び他のウイルスの発現系が挙げられる。
【0206】
ベクターは、任意の好適な宿主細胞に形質転換し得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞、例えば、細菌または酵母細胞は、表面発現ライブラリーとしての使用に適合し得る。ある種の細胞では、ベクターは宿主細胞中で発現し、比較的大量のポリペプチドを発現する。そのような宿主細胞としては、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び原核細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NS0細胞、Y0細胞、HEK293細胞、COS細胞、Vero細胞、またはHeLa細胞などの哺乳動物細胞である。
【0207】
本明細書に記載の1つ以上のFcポリペプチド鎖をコードする発現ベクター(複数可)でトランスフェクトされた宿主細胞を、適切な条件下で培養して、1つ以上のポリペプチドの発現を生じ得る。ポリペプチドは、ポリペプチドを含有する細胞と培地の混合物から分泌して、単離してもよい。あるいは、ポリペプチドを細胞質中にまたは膜画分中に保持して、細胞を回収して溶解し、所望の方法を使用してポリペプチドを単離してもよい。
【0208】
治療方法
本明細書に記載の融合タンパク質は、MPS Iを治療するために治療上使用し得る。
【0209】
したがって、特定の実施形態は、MPS Iを有する対象における毒性代謝産物(例えば、ヘパラン硫酸由来のオリゴ糖またはデルマタン硫酸由来のオリゴ糖)の蓄積を減少させる方法であって、本明細書に記載のタンパク質を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0210】
特定の実施形態は、MPS Iを有する対象における毒性代謝産物(例えば、ヘパラン硫酸由来のオリゴ糖またはデルマタン硫酸由来のオリゴ糖)の蓄積を減少させるのに使用するための、本明細書に記載のタンパク質を提供する。
【0211】
特定の実施形態は、MPS Iを有する対象における毒性代謝産物(例えば、ヘパラン硫酸由来のオリゴ糖またはデルマタン硫酸由来のオリゴ糖)の蓄積を減少させるための医薬の調製における、本明細書に記載のタンパク質の使用を提供する。
【0212】
特定の実施形態は、MPS Iを治療する方法であって、本明細書に記載のタンパク質をそれを必要とする対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0213】
特定の実施形態は、MPS Iの治療を必要とする対象におけるその治療に使用するための、本明細書に記載のタンパク質を提供する。
【0214】
特定の実施形態は、MPS Iの治療を必要とする対象におけるそれを治療するための医薬の調製における、本明細書に記載のタンパク質の使用を提供する。
【0215】
いくつかの実施形態では、タンパク質(例えば、IDUA酵素に連結された)の投与によって、本明細書に記載の融合タンパク質に連結されていない場合のIDUAの取り込みと比較して、または参照タンパク質(例えば、TfR結合をもたらす第2のFcポリペプチドに対する改変を有さない、本明細書に記載の融合タンパク質)に連結されたIDUAの取り込みと比較して、脳内のIDUAのCmaxが改善される(例えば、増加する)。
【0216】
いくつかの実施形態では、脳内のIDUAのCmaxは、本明細書に記載の融合タンパク質に連結されていない場合のIDUAの取り込みと比較して、または参照タンパク質(例えば、TfR結合をもたらす第2のFcポリペプチドに対する改変を有さない、本明細書に記載の融合タンパク質)に連結されたIDUAの取り込みと比較して、少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.2倍、2.4倍、2.6倍、2.8倍、3倍、4倍、5倍、6倍、またはそれ以上改善される(例えば、増加される)。
【0217】
本明細書に記載の融合タンパク質は、治療有効量または治療有効用量で対象に投与される。
【0218】
種々の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、非経口的に投与される。いくつかの実施形態では、タンパク質は静脈内投与される。
【0219】
いくつかの非経口的な実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、腹腔内投与、皮内投与または筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、硬膜外投与などによりくも膜下腔内に、または側脳室内に投与される。
【0220】
医薬組成物及びキット
他の態様では、本明細書に記載の融合タンパク質を含む医薬組成物及びキットが提供される。
【0221】
医薬組成物
本開示に使用するための製剤を調製するための指針は、当業者に公知の医薬品及び製剤についての多くのハンドブックに見出すことができる。
【0222】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されている融合タンパク質を含み、かつ1つ以上の薬学的に許容される担体及び/または賦形剤をさらに含む。薬学的に許容される担体としては、任意の溶媒、分散媒、またはコーティングが挙げられ、これらは、活性薬剤と生理学的に適合し、活性薬剤の活性を妨害しないか、または別様に阻害しない。
【0223】
本明細書に記載の医薬組成物の用量及び所望の薬物濃度は、想定される特定の使用に応じて変動し得る。
【0224】
キット
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質を含む、MPS Iの治療に使用するためのキットを提供する。
【0225】
いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の融合タンパク質を含み、MPS Iの神経学的症状の治療に使用するための1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法を実施するための指示(すなわち、プロトコル)(例えば、血液脳関門を通過させてIDUA酵素を含む融合タンパク質を投与するためのキットを使用するための使用説明)を含む説明資料をさらに含む。説明資料は通常、書面または印刷資料を含むが、それらに限定されない。このような使用説明書を保存し、それらをエンドユーザーに伝えることが可能な任意の媒体が、本開示によって企図される。このような媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)等が挙げられるがこれらに限定されない。このような媒体は、このような説明資料を提供するインターネットサイトのアドレスを含んでもよい。
【0226】
特定の定義
本明細書で使用する場合、内容が明らかに別段に示されている場合を除き、「ある、1つの(a:不定冠詞)」、「ある、1つの(an:不定冠詞)」及び「この、その(the:定冠詞)」という単数形には、複数の言及物が含まれる。したがって、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」という言及には、2つ以上のそのような分子などを含み得る。
【0227】
本明細書で使用される場合、「約」及び「およそ」という用語は、数値または範囲で指定された量を修正するために使用される場合、その数値及び当業者に公知の値からの妥当な偏差、例えば、±20%、±10%または±5%が、記載された値の意図する意味の範囲内であることを示す。
【0228】
本明細書で互換的に使用される場合、「対象」、「個体」及び「患者」という用語は、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、及びモルモット)、ウサギ、雌ウシ、ブタ、ウマ、及び他の哺乳動物種を含む哺乳動物を指す。一実施形態では、患者はヒトである。いくつかの実施形態では、ヒトは、MPS Iの治療を必要とする患者である。いくつかの実施形態では、患者は、MPS Iの1つ以上の徴候または症状を有する。
【0229】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ヒトまたは動物での使用に対して生物学的に、または薬理学的に適合する非活性医薬成分、例えば、限定されないが、緩衝液、担体、または保存料を指す。
【0230】
「投与する」という用語は、薬剤(例えば、本明細書に記載のETV:IDUA療法などのMPS I治療剤)、化合物、または組成物(例えば、医薬組成物)を生物学的作用の所望の部位に送達する方法を指す。これらの方法としては、非経口送達、静脈内送達、皮内送達、筋肉内送達、髄腔内送達、または腹腔内送達が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、静脈内投与される。
【0231】
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」等のその文法上の変形形態)は、治療されている個体の自然過程を変えるための臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程の間に行ってもよい。治療の望ましい効果としては、限定するものではないが、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、疾患進行速度の減少、病状の回復または緩解、及び寛解または予後の改善が挙げられる。
【0232】
「有効量」という語句は、(i)特定の疾患、状態もしくは障害を治療もしくは予防する、(ii)特定の疾患、状態もしくは障害のうちの1つ以上の症状を減弱させる、改善する、もしくは排除する、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態もしくは障害のうちの1つ以上の症状の発症を予防もしくは遅延させる、本明細書に記載の化合物の量を意味する。
【0233】
本明細書に開示される物質/分子の「治療有効量」は、個体の病状、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する物質/分子の能力などの要因に従って変動し得る。治療有効量は、物質/分子の毒性または有害な効果を、治療上有益な効果が上回る量を包含する。「予防有効量」は、必要な投与量及び投与期間にて、所望の予防的結果を達成するのに有効な量を指す。典型的であって必ずしもそうではないが、疾患の早期段階前または早期段階で予防用量が対象において用いられるため、予防有効量は、治療有効量よりも少ないであろう。
【0234】
本明細書で使用される「アルファ-L-イズロニダーゼ」、「イズロニダーゼアルファ-L」、「L-イズロニダーゼ」、「イズロニダーゼ」、または「IDUA」とは、デルマタン硫酸及びヘパラン硫酸などのグリコサミノグリカンのリソソーム分解に関与する酵素であるアルファ-L-イズロニダーゼ(EC3.2.1.76)を指す。IDUA遺伝子の変異は、MSP Iと関連しており、ヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸の分解障害から生じる。任意選択でFcポリペプチドを含むタンパク質の成分として本明細書で使用される「IDUA」または「IDUA酵素」という用語は、触媒活性であり、機能的バリアント、例としては、対立遺伝子バリアント及びスプライスバリアント、ならびにその触媒活性断片を包含する。ヒトIDUAの配列は、UniProtエントリP35475で利用可能であり、4p16.3のヒトIDUA遺伝子によってコードされている。全長配列は、配列番号39として提供され、位置33にHもしくはQ、及び/または位置622にAもしくはTを有してもよく、この位置はEU付番に従う。本明細書で使用される「成熟」IDUA配列は、天然に存在する完全長ポリペプチド鎖のシグナル配列を欠くポリペプチド鎖の形態を指す。成熟ヒトIDUAポリペプチドのアミノ酸配列の実施形態は、完全長ヒト配列のアミノ酸27~653に対応する配列番号40として提供される。本明細書で使用される「短縮された、短縮型、切断された(truncated)」IDUA配列とは、天然に存在する全長ポリペプチド鎖の触媒活性断片を指す(例えば、配列番号45~49、78~82、及び99(ここで、X3は存在しない))。ヒトIDUAの構造は、十分に特徴付けられている。チンパンジー(例えば、Pan paniscus(ピグミーチンパンジー)(ボノボ)のUniProtエントリA0A2R9ALZ1)を含む、ヒト以外の霊長類のIDUA配列も記載されている。マウスIDUA配列は、UniprotエントリP48441で入手可能である。IDUAバリアントは、例えば、同一条件下でアッセイした場合、対応する野生型IDUAまたはその断片の活性の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を有する。触媒活性IDUA断片は、例えば、同一条件下でアッセイした場合、対応する完全長IDUAまたはそのバリアントの活性の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を有する。市販されているIDUAの組換え型は、Aldurazyme(アウドラザイム)またはラロニダーゼと呼ばれ、どちらの用語も同じ組換え型を指す。
【0235】
本明細書で使用される「トランスフェリン受容体」または「TfR」とは、トランスフェリン受容体タンパク質1を指す。ヒトトランスフェリン受容体1ポリペプチド配列は、配列番号7に示される。他の種に由来するトランスフェリン受容体タンパク質1の配列も公知である(例えば、チンパンジー、アクセッション番号XP_003310238.1;アカゲザル、NP_001244232.1;イヌ、NP_001003111.1;畜牛、NP_001193506.1;マウス、NP_035768.1;ラット、NP_073203.1;及びニワトリ、NP_990587.1)。「トランスフェリン受容体」という用語は、トランスフェリン受容体タンパク質1染色体遺伝子座にある遺伝子によってコードされる、例示的な参照配列、例えば、ヒト配列の対立遺伝子バリアントも包含する。全長のトランスフェリン受容体タンパク質には、短いN末端細胞内領域、膜貫通領域、及び大きな細胞外ドメインが含まれる。細胞外ドメインは、3つのドメイン、すなわち、プロテアーゼ様ドメイン、ヘリカルドメイン、及びアピカルドメインを特徴とする。ヒトトランスフェリン受容体1のアピカルドメイン配列は、配列番号8に規定される。
【0236】
本明細書で使用される「融合タンパク質」または「[IDUA酵素]-Fc融合タンパク質」とは、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結された(例えば、融合した)第1のFcポリペプチド(すなわち、「[IDUA]-Fc融合ポリペプチド」)と;(例えば、第1のFcポリペプチドとFc二量体を形成する)第2のFcポリペプチドと、を含む二量体タンパク質を指す。第2のFcポリペプチドはまた、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結(例えば、融合)されてもよい。第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、ペプチド結合またはポリペプチドリンカーによって、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはそれらの触媒活性断片に連結され得る。第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、他のFcポリペプチドとのそのヘテロ二量体化を促進する、1つ以上の改変を含有する改変Fcポリペプチドであり得る。第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、トランスフェリン受容体への結合を付与する1つ以上の改変を含有する改変Fcポリペプチドであり得る。第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させる1つ以上の改変を含有する改変Fcポリペプチドであり得る。特定の実施形態では、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドは、エフェクター機能を有さない。第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、血清半減期を延長する1つ以上の改変を含む改変Fcポリペプチドであり得る。特定の実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖及び/もしくは軽鎖可変領域配列またはその抗原結合部分を含まない。特定の実施形態では、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖及び/もしくは軽鎖可変領域配列またはその抗原結合部分を含まない。
【0237】
本明細書で使用される「融合ポリペプチド」または「[IDUA酵素]-Fc融合ポリペプチド」とは、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはその触媒活性断片に連結(例えば、融合)したFcポリペプチドを指す。Fcポリペプチドは、ペプチド結合またはポリペプチドリンカーによって、IDUA酵素、IDUA酵素バリアント、またはそれらの触媒活性断片に連結され得る。Fcポリペプチドは、別のFcポリペプチドとのそのヘテロ二量体化を促進する1つ以上の改変を含有する改変Fcポリペプチドであり得る。Fcポリペプチドは、トランスフェリン受容体への結合を付与する1つ以上の改変を含有する改変Fcポリペプチドであり得る。Fcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させる1つ以上の改変を含有する改変Fcポリペプチドであり得る。Fcポリペプチドは、血清半減期を延長する1つ以上の改変を含有する改変Fcポリペプチドであり得る。
【0238】
本明細書で使用される場合、「Fcポリペプチド」という用語は、構造ドメインとしてのIgフォールドを特徴とする天然に存在する免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのC末端領域を指す。Fcポリペプチドは、少なくともCH2ドメイン及び/またはCH3ドメインを含む定常領域配列を含有し、少なくともヒンジ領域の一部を含有し得る。一般に、Fcポリペプチドは可変領域を含有しない。
【0239】
「改変Fcポリペプチド」とは、野生型免疫グロブリン重鎖Fcポリペプチド配列と比較して、少なくとも1つの変異、例えば、置換、欠失、または挿入を有するが、ネイティブFcポリペプチドの全般的なIgフォールドまたは構造を保持するFcポリペプチドを指す。
【0240】
「FcRn」という用語は、胎児性Fc受容体を指す。FcポリペプチドのFcRnへの結合は、Fcポリペプチドのクリアランスを低下させ、血清半減期を延長する。ヒトFcRnタンパク質は、主要組織適合性(MHC)クラスIタンパク質に類似した約50kDaのサイズのタンパク質と、約15kDaのサイズのβ2-ミクログロブリンから構成されるヘテロ二量体である。
【0241】
本明細書で使用される場合、「FcRn結合部位」とは、FcRnに結合するFcポリペプチドの領域を指す。ヒトIgGでは、EUインデックスを使用して付番したFcRn結合部位には、T250、L251、M252、I253、S254、R255、T256、T307、E380、M428、H433、N434、H435及びY436が含まれる。これらの位置は、配列番号1の位置20~26、77、150、198及び203~206に対応する。
【0242】
本明細書で使用される場合、「ネイティブFcRn結合部位」とは、FcRnに結合するFcポリペプチドの領域であってFcRnに結合する天然に存在するFcポリペプチドの領域と同じアミノ酸配列を有するFcポリペプチドの領域を指す。
【0243】
本明細書で使用される場合、「CH3ドメイン」及び「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロブリン定常領域ドメインポリペプチドを指す。本出願の目的で、CH3ドメインポリペプチドとは、EUに従って付番した位置ほぼ341から位置ほぼ447のアミノ酸のセグメントを指し、CH2ドメインポリペプチドとは、EU付番スキームに従って付番した位置ほぼ231から位置ほぼ340のアミノ酸セグメントを指し、ヒンジ領域配列を含まない。CH2及びCH3ドメインのポリペプチドはまた、IMGT(ImMunoGeneTics)付番スキームによっても付番される場合があり、この場合、IMGT Scientific chartの付番(IMGTウェブサイト)によれば、CH2ドメインの付番は1~110であり、CH3ドメインの付番は1~107である。CH2ドメイン及びCH3ドメインは、免疫グロブリンのFc領域の一部である。Fc領域とは、EU付番スキームに従って付番した位置ほぼ231から位置ほぼ447のアミノ酸のセグメントを指すが、本明細書で使用される場合、抗体のヒンジ領域の少なくとも一部を含むことができる。例示的なヒンジ領域の配列は、ヒトIgG1ヒンジ配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号5)である。
【0244】
「天然に存在する」、「ネイティブ」または「野生型」とは、人工的に生成されたものとは異なるものとして自然界に見出され得る物体を説明するために使用される。例えば、生物(ウイルスを含む)に存在するヌクレオチド配列であって、自然界の供給源から単離し得、実験室で意図的に改変されていないものは、天然に存在する。さらに、「野生型」とは、正常な遺伝子、または既知の変異のない自然界に見出される生物を指す。
【0245】
例えば、CH3またはCH2ドメインに関する「野生型」、「ネイティブ」及び「天然に存在する」という用語は、天然において存在する配列を有するドメインを指すために本明細書で使用される。
【0246】
本明細書で使用される場合、変異ポリペプチドまたは変異ポリヌクレオチドに関する「変異体」という用語は、「バリアント」と互換的に使用される。所与の野生型CH3またはCH2ドメインの参照配列に関するバリアントは、天然に存在する対立遺伝子バリアントを含むことができる。「非天然」に生じるCH3またはCH2ドメインとは、細胞に天然には存在せず、ネイティブCH3ドメインもしくはCH2ドメインポリヌクレオチドまたはポリペプチドの、例えば、遺伝子操作技術または変異導入技術を使用した遺伝子改変によって生成されるバリアントまたは変異体ドメインを指す。「バリアント」としては、野生型に対して少なくとも1つのアミノ酸変異を含む任意のドメインが挙げられる。変異には、置換、挿入、及び欠失を含んでもよい。
【0247】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸、及び合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸に類似した様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。
【0248】
天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるもの、ならびにそれらのアミノ酸が後で改変されたもの、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリンである。「アミノ酸類似体」とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、改変R基(例えば、ノルロイシン)または改変ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。「アミノ酸模倣体」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸に類似した様式で機能する化合物を指す。
【0249】
天然に存在するα-アミノ酸としては、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。天然に存在するα-アミノ酸の立体異性体としては、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-トレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0250】
アミノ酸は、本明細書では、一般に知られている3文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字記号のいずれかで言及され得る。
【0251】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用され、一本鎖におけるアミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び非天然に生じるアミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸ポリマーは、完全にL-アミノ酸、完全にD-アミノ酸、またはLアミノ酸及びDアミノ酸の混合物を含み得る。
【0252】
本明細書で使用される、「タンパク質」という用語は、ポリペプチドまたは一本鎖ポリペプチドの二量体(すなわち、2つ)もしくは多量体(すなわち、3つ以上)のいずれかを指す。タンパク質の一本鎖ポリペプチドは、共有結合、例えば、ジスルフィド結合によって、または非共有相互作用によって接合され得る。
【0253】
「保存的置換」、「保存的変異」、または「保存的に改変されたバリアント」という用語は、類似の特徴を有すると分類され得る別のアミノ酸でのアミノ酸の置換を生じる改変を指す。このようにして定義される保存的アミノ酸群の分類の例としては、Glu(グルタミン酸またはE)、Asp(アスパラギン酸またはD)、Asn(アスパラギンまたはN)、Gln(グルタミンまたはQ)、Lys(リジンまたはK)、Arg(アルギニンまたはR)、及びHis(ヒスチジンまたはH)を含めた「荷電/極性群」、Phe(フェニルアラニンまたはF)、Tyr(チロシンまたはY)、Trp(トリプトファンまたはW)、及び(ヒスチジンまたはH)を含めた「芳香族群」、ならびにGly(グリシンまたはG)、Ala(アラニンまたはA)、Val(バリンまたはV)、Leu(ロイシンまたはL)、Ile(イソロイシンまたはI)、Met(メチオニンまたはM)、Ser(セリンまたはS)、Thr(トレオニンまたはT)、及びCys(システインまたはC)を含めた「脂肪族群」を挙げることができる。各グループ内で、サブグループを特定することもできる。例えば、荷電または極性アミノ酸のグループは、Lys、Arg及びHisで構成される「正に荷電したサブグループ」、Glu及びAspで構成される「負に荷電したサブグループ」、ならびにAsn及びGlnで構成される「極性サブグループ」を含むサブグループに細分し得る。別の例では、芳香族または環状群は、Pro、His、及びTrpを含む「窒素環下位群」、ならびにPhe及びTyrを含む「フェニル下位群」を含めた下位群に分割され得る。別のさらなる例では、脂肪族群は、下位群、例えば、Val、Leu、Gly、及びAlaを含む「脂肪族非極性下位群」ならびにMet、Ser、Thr、及びCysを含む「脂肪族微極性下位群」に分割され得る。保存的変異のカテゴリーの例としては、上記サブグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換が挙げられ、これには例えば、以下が挙げられる:LysをArgに、またはその逆で正電荷を維持できるようにする;GluをAspに、またはその逆で負電荷を維持できるようにする;SerをThrに、またはその逆で遊離-OHを維持できるようにする;及びGlnをAsnに、またはその逆で遊離-NH2を維持できるようにする。いくつかの実施形態では、疎水性アミノ酸は、天然に存在する疎水性アミノ酸と、例えば、活性部位で置換され、疎水性を保存する。
【0254】
2つ以上のポリペプチド配列との関連における「同一の」またはパーセント「同一性」という用語は、配列比較アルゴリズムを使用して、または手動アラインメント及び目視検査により測定した場合に、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたり最大限一致するように比較及びアラインメントされるとき、特定の領域にわたって、同じであるかまたは特定のパーセンテージ、例えば、少なくとも60%の同一性、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%もしくはそれ以上同一であるアミノ酸残基を有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。いくつかの実施形態では、参照配列に対して指定されたパーセント同一性を有する配列は、1つ以上の保存的置換によって参照配列とは異なる。
【0255】
ポリペプチドの配列比較の場合、通常は1つのアミノ酸配列が参照配列として機能し、これを候補配列と比較する。アラインメントは、当業者に利用可能な様々な方法、例えば、視覚によるアラインメントを用いて、または既知のアルゴリズムを用いた公開されているソフトウェアを用いて行い、最大のアラインメントを達成し得る。このようなプログラムとしては、BLASTプログラム、ALIGN、ALIGN-2(Genentech,South San Francisco,Calif.)、またはMegalign(DNASTAR)が挙げられる。最大のアラインメントを達成するためにアラインメントに使用されるパラメータは、当業者によって決定され得る。本出願の目的で、ポリペプチド配列の配列比較に関しては、2種のタンパク質配列をデフォルトのパラメータで整列させるためのBLASTPアルゴリズム標準タンパク質BLASTが使用される。
【0256】
ポリペプチド配列における所与のアミノ酸残基の特定との関連で使用される場合の「~に対応する」、「~を参照して決定される」、または「~を参照して付番される」という表現は、所与のアミノ酸配列が最大限にアラインメントされ、参照配列と比較される場合の特定の参照配列の残基の位置を指す。したがって、例えば、改変Fcポリペプチド中のアミノ酸残基は、当該残基を配列番号1に対して最適にアラインメントしたときに配列番号1のアミノ酸と一致する場合、配列番号1のアミノ酸に「対応する」。参照配列に対してアラインメントされるポリペプチドは、参照配列と同じ長さである必要はない。
【0257】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、互換的に、任意の長さのヌクレオチド鎖を指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいは、DNAまたはRNAポリメラーゼによって鎖の中に組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、改変ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。本明細書で企図されるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖RNA、ならびに一本鎖ならびに二本鎖DNA及びRNAの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。
【0258】
本明細書で使用する場合、「結合親和性」とは、2つの分子間、例えば、ポリペプチド上の単一の結合部位と、それが結合する標的、例えばトランスフェリン受容体との間の非共有結合相互作用の強さを指す。したがって、例えば、別段示されない限り、または文脈から明らかでない限り、この用語はポリペプチドとその標的との間の1:1の相互作用を指す場合がある。結合親和性は、平衡解離定数(KD)を測定することにより定量化し得、これは、結合速度定数(ka、時間-1M-1)で除した解離速度定数(kd、時間-1)を指す。KDは、複合体形成及び解離の動態の測定、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)方法、例えばBiacore(商標)システム;KinExA(登録商標)などの結合平衡除外法(kinetic exclusion)アッセイ;及びBioLayer干渉法(例えば、ForteBio(登録商標)Octet(登録商標)プラットフォームを使用する)を使用することによって決定され得る。本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、ポリペプチドとその標的との間の1:1の相互作用を反映するものなどの公式の結合親和性のみならず、強力な結合を反映し得るKDが算出される見かけの親和性も含む。
【0259】
本明細書で使用される場合、標的、例えばTfRに「特異的に結合する」または「選択的に結合する」という用語は、本明細書に記載の操作されたTfR結合ポリペプチド、TfR結合ペプチド、またはTfR結合融合タンパク質を指す場合、それにより、操作されたTfR結合ポリペプチド、TfR結合ペプチド、またはTfR結合融合タンパク質が、構造的に異なる標的に結合するよりも、より高い親和性、より高いアビディティ、及び/またはより長い持続時間で標的に結合する、結合反応を指す。典型的な実施形態では、操作されたTfR結合ポリペプチド、TfR結合ペプチド、またはTfR結合融合タンパク質は、同じアフィニティーアッセイ条件下でアッセイした場合、無関係の標的と比較して、特異的標的、例えば、TfRに対して少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1,000倍、10,000倍、またはそれ以上大きい親和性を有する。本明細書で使用する場合、特定の標的(例えば、TfR)「への特異的な結合」、「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、例えば、結合する標的に対して、例えば、10-4M以下(例えば、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11Mまたは10-12M)の平衡解離定数KDを有する分子によって示され得る。いくつかの実施形態では、操作されたTfR結合ポリペプチド、TfR結合ペプチド、またはTfR結合融合タンパク質は、種間で保存された(例えば、種間で構造的に保存された)、例えば、非ヒト霊長類とヒト種との間で保存された(例えば、非ヒト霊長類とヒト種との間で構造的に保存された)TfR上のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、操作されたTfR結合ポリペプチド、TfR結合ペプチド、またはTfR結合融合タンパク質は、ヒトTfRに排他的に結合し得る。
【0260】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、生殖系列可変(V)遺伝子、多様性(D)遺伝子、または結合(J)遺伝子に由来し(かつ定常(Cμ及びCδ)遺伝子セグメントには由来しない)、抗体に抗原と結合する特異性を与える、抗体重鎖または軽鎖中のドメインを指す。通常、抗体の可変領域は、3つの超可変「相補性決定領域」が散在する4つの保存された「フレームワーク」領域を含む。
【0261】
「抗原結合部分」及び「抗原結合断片」という用語は、本明細書において互換的に使用され、その可変領域を介して抗原に特異的に結合する能力を保持した1つ以上の抗体の断片を指す。抗原結合断片の例としては、Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片)、F(ab’)2断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片から構成される二価断片)、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、ならびにVH(重鎖可変領域)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0262】
以下の実施例は非限定的であることを意図している。
【実施例】
【0263】
実施例1:アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)を含む融合タンパク質の構築。
設計及びクローニング
(i)ヒトIDUA酵素がFc領域を含むヒトIgG1断片に融合した第1の融合ポリペプチド(「IDUA-Fc融合ポリペプチド」)と、(ii)トランスフェリン受容体(TfR)結合を付与するFc領域(「改変Fcポリペプチド」)に変異を含む改変ヒトIgG1断片と、を含むIDUA-Fc融合タンパク質を設計した。(i)ヒトIDUA酵素配列が、Fc領域を含むヒトIgG1断片に融合した第1の融合ポリペプチド(「IDUA-Fc融合ポリペプチド」)と、(ii)ヒトIDUA酵素配列が、TfR結合を付与するFc領域に変異を含む改変ヒトIgG1断片に融合した第2の融合ポリペプチド(「TfRに結合するIDUA-Fc融合ポリペプチド」)と、を含む融合タンパク質も設計した。IDUA配列がヒトIgG1 Fc領域のN末端及びC末端に融合した、IDUA-Fc融合ポリペプチドを作成した。すべての構築物において、シグナルペプチドMGWSCIILFLVATATGAYA(配列番号70)を融合の上流に挿入して分泌を促進した。使用したヒトIgG1 Fc領域の断片は、UniProtKB ID P01857の配列のアミノ酸D104-K330(EU付番、位置221~447、ヒンジの10アミノ酸(位置221~230)を含む)に対応する。(i)IDUA-Fc融合ポリペプチドと(ii)改変Fcポリペプチドを別々にコードする発現ベクターを生成し、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に共トランスフェクトして、IDUA酵素(「モノザイム」)を含むヘテロ二量体融合タンパク質を生成した。(i)IDUA-Fc融合ポリペプチドと(ii)TfRに結合するIDUA-Fc融合ポリペプチドを別々にコードする発現ベクターも生成し、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に共トランスフェクトして、IDUA酵素(「バイザイム」)を含むヘテロ二量体融合タンパク質を生成した。一部の構築物では、IgG1断片には追加の変異が含まれており、これにより2つのFc領域のヘテロ二量体化が容易になる。
【0264】
ホール変異及びLALA変異を有するIgG1 Fcポリペプチド配列のN末端に融合した成熟ヒトIDUA配列を含むIDUA-Fc融合ポリペプチドは、配列番号50または51の配列を有する。IDUA酵素は、GGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0265】
ホール変異及びLALAPS変異を有するIgG1 Fcポリペプチド配列のN末端に融合した成熟ヒトIDUA配列を含むIDUA-Fc融合ポリペプチドは、配列番号58または59の配列を有する。IDUA酵素は、GGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0266】
ホール変異及びLALAPS変異を有するIgG1 Fcポリペプチド配列のN末端に融合した成熟ヒトIDUA配列を含むIDUA-Fc融合ポリペプチドは、配列番号60または61の配列を有する。IDUA酵素は、GGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0267】
ホール変異及びLALAPS変異を有するIgG1 Fcポリペプチド配列のN末端に融合した成熟、短縮型ヒトIDUA配列を含むIDUA-Fc融合ポリペプチドは、配列番号64または65の配列を有する。IDUA酵素は、GGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0268】
ホール変異及びLALAPS変異を有するIgG1 Fcポリペプチド配列のN末端に融合した成熟ヒトIDUA配列を含むIDUA-Fc融合ポリペプチドは、配列番号91または92の配列を有する。IDUA酵素はGGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端はIgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0269】
ノブ変異及びLALA変異を有するIgG1 Fcポリペプチド配列のN末端に融合した成熟ヒトIDUA配列を含むIDUA-Fc融合ポリペプチドは、配列番号104または100の配列を有する。IDUA酵素はGGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0270】
ノブ変異及びLALA変異を有するTfR結合改変IgG1 Fcポリペプチド配列のN末端に融合した成熟ヒトIDUA配列を含む、IDUA-Fc融合ポリペプチドは、配列番号101または102の配列を有する。IDUA酵素はGGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0271】
ノブ変異及びLALA変異を有するTfR結合改変IgG1 Fcポリペプチド配列のC末端に融合した成熟ヒトIDUA配列を含む、Fc-IDUA融合ポリペプチドは、配列番号103の配列を有する。IDUA酵素はGGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0272】
ホール変異及びLALAPS変異を有するIgG1 Fcポリペプチド配列のC末端に融合した成熟ヒトIDUA配列を含むFc-IDUA融合ポリペプチドは、配列番号68の配列を有する。IDUA酵素は、GGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0273】
ホール変異及びLALAPS変異を有するIgG1 Fcポリペプチド配列のC末端に融合した成熟ヒトIDUA配列を含むFc-IDUA融合ポリペプチドは、配列番号69の配列を有する。IDUA酵素は、GGGGSリンカー(配列番号72)によってFcポリペプチドに接合し、FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0274】
ノブ変異及びLALA変異を有するTfR結合改変Fcポリペプチドは、配列番号35または36の配列を有する。改変FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0275】
ノブ変異及びLALAPS変異を有するTfR結合改変Fcポリペプチドは、配列番号37または38の配列を有する。改変FcポリペプチドのN末端は、IgG1ヒンジ領域の一部(DKTHTCPPCP;配列番号6)を含んでいた。
【0276】
最初の「N末端モノザイム」IDUA-Fc融合タンパク質(「ETV:IDUA Fusion 1」)を生成したが、これは、配列番号35の配列を有するTfR結合改変Fcポリペプチドと、配列番号50の配列を有するIDUA-Fc融合ポリペプチドとを含む。IDUA-Fc融合タンパク質をまた、細胞培養生成中にさらにプロセシングして、TfR結合改変Fcポリペプチドが、配列番号36の配列を有するか、及び/またはIDUA-Fc融合ポリペプチドが、配列番号51の配列を有するようにしてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、ETV:IDUA Fusion 1という用語は、非プロセシング配列(すなわち、配列番号35及び50)を有するタンパク質分子;1つ以上のプロセシング配列(すなわち、配列番号36及び51から選択される)を含むタンパク質分子;またはプロセシング及び非プロセシングタンパク質分子を含む混合物を指すために使用し得る。
【0277】
第2の「N末端モノザイム」IDUA-Fc融合タンパク質(「ETV:IDUA Fusion 2」)を生成したが、これは、配列番号37の配列を有するTfR結合改変Fcポリペプチドと、配列番号58の配列を有するIDUA-Fc融合ポリペプチドとを含む。IDUA-Fc融合タンパク質はまた、細胞培養生成中にさらにプロセシングして、TfR結合改変Fcポリペプチドが配列番号38の配列を有し、及び/またはIDUA-Fc融合ポリペプチドが配列番号59の配列を有するようにしてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、ETV:IDUA Fusion 2という用語は、非プロセシング配列(すなわち、配列番号37及び58)を有するタンパク質分子;1つ以上のプロセシング配列(すなわち、配列番号38及び59から選択される)を含むタンパク質分子;またはプロセシング及び非プロセシングタンパク質分子を含む混合物を指すために使用され得る。
【0278】
第3の「N末端モノザイム」IDUA-Fc融合タンパク質(「ETV:IDUA Fusion 3」)を生成したが、これは、配列番号37の配列を有するTfR結合改変Fcポリペプチドと、配列番号60の配列を有するIDUA-Fc融合ポリペプチドとを含む。IDUA-Fc融合タンパク質をまた、細胞培養生成中にさらにプロセシングして、TfR結合改変Fcポリペプチドが配列番号38の配列を有し、及び/またはIDUA-Fc融合ポリペプチドが配列番号61の配列を有するようにしてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、ETV:IDUA Fusion 3という用語は、非プロセシング配列(すなわち、配列番号37及び60)を有するタンパク質分子;1つ以上のプロセシング配列(すなわち、配列番号38及び61から選択される)を含むタンパク質分子;またはプロセシング及び非プロセシングタンパク質分子を含む混合物を指すために使用され得る。
【0279】
第4の「N末端モノザイム」IDUA-Fc融合タンパク質(「ETV:IDUA Fusion 4」)を生成したが、これは、配列番号37の配列を有するTfR結合改変Fcポリペプチドと、配列番号64の配列を有するIDUA-Fc融合ポリペプチドとを含む。IDUA-Fc融合タンパク質をまた、細胞培養生成中にさらにプロセシングして、TfR結合改変Fcポリペプチドが配列番号38の配列を有し、及び/またはIDUA-Fc融合ポリペプチドが配列番号65の配列を有するようにしてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、ETV:IDUA Fusion 4という用語は、非プロセシング配列(すなわち、配列番号37及び64)を有するタンパク質分子;1つ以上のプロセシング配列(すなわち、配列番号38及び65から選択される)を含むタンパク質分子;またはプロセシング及び非プロセシングタンパク質分子を含む混合物を指すために使用され得る。
【0280】
第5の「N末端モノザイム」IDUA-Fc融合タンパク質(「ETV:IDUA Fusion 5」)を生成したが、これは、配列番号37の配列を有するTfR結合改変Fcポリペプチドと、配列番号91の配列を有するIDUA-Fc融合ポリペプチドとを含む。IDUA-Fc融合タンパク質をまた、細胞培養生成中にさらにプロセシングして、TfR結合改変Fc融合ポリペプチドが配列番号38の配列を有し、及び/またはIDUA-Fc融合ポリペプチドが配列番号92の配列を有するようにしてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、ETV:IDUA Fusion 5という用語は、非プロセシング配列(すなわち、配列番号37及び91)を有するタンパク質分子;1つ以上のプロセシング配列(すなわち、配列番号38及び92から選択される)を含むタンパク質分子;またはプロセシング及び非プロセシングタンパク質分子を含む混合物を指すために使用され得る。
【0281】
「C末端モノザイム」IDUA-Fc融合タンパク質(「ETV:IDUA Fusion 6」)を生成したが、これは、配列番号37の配列を有するTfR結合改変Fcポリペプチドと、配列番号68の配列を有するIDUA-Fc融合ポリペプチドとを含む。IDUA-Fc融合タンパク質はまた、細胞培養生産中にさらに処理して、TfR結合改変Fcポリペプチドが配列番号38の配列を有するようにしてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、ETV:IDUA Fusion 6という用語は、配列番号37及び68を含むタンパク質分子、配列番号38及び68を含むタンパク質分子、または配列番号37及び68を含むタンパク質分子と、配列番号38及び68を含むタンパク質分子との混合物を指すために使用され得る。
表1は、追加の例示的なIDUA-Fc融合タンパク質及び組換えタンパク質の配列を示している。
【表1】
【0282】
ETV:IDUA(例えば、上記の任意の融合タンパク質)を含む組成物は、非プロセシング配列を有するタンパク質分子を含む組成物を指すか;1つ以上のプロセシング配列を含むタンパク質分子を含む組成物を指すか;またはプロセシングタンパク質分子と非プロセシングタンパク質分子とを含む混合物を指すために使用され得る。
【0283】
TfR結合を付与する変異を欠くIDUA-Fc融合タンパク質を、同様に設計及び構築した。
【0284】
第1の非TfR結合「N末端モノザイム」IDUA-Fc融合タンパク質(「IDUA-Fc Fusion 12」)を生成したが、これは、配列番号76の配列を有するFcポリペプチドと、配列番号83の配列を有するIDUA-Fc融合ポリペプチドとを含む。IDUA-Fc融合タンパク質をまた、細胞培養生成中にさらにプロセシングして、Fcポリペプチドが配列番号77を有し、及び/またはIDUA-Fc融合ポリペプチドが配列番号84の配列を有するようにしてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、IDUA-Fc融合タンパク質という用語は、非プロセシング配列(すなわち、配列番号76及び83)を有するタンパク質分子;1つ以上のプロセシング配列(すなわち、配列番号77及び84から選択される)を含むタンパク質分子を指すか;またはプロセシング及び非プロセシングタンパク質分子を含む混合物を指すために使用され得る。
【0285】
第2の非TfR結合「N末端モノザイム」IDUA-Fc融合タンパク質(「IDUA-Fc Fusion 13」)を生成したが、これは、配列番号76の配列を有するFcポリペプチドと、配列番号50の配列を有する第2のIDUA-Fc融合ポリペプチドとを含む。IDUA-Fc融合タンパク質をまた、細胞培養生成中にさらにプロセシングして、Fcポリペプチドが配列番号77の配列を有し、及び/またはIDUA-Fc融合ポリペプチドが配列番号51の配列を有するようにしてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、IDUA-Fc融合タンパク質という用語は、非プロセシング配列(すなわち、配列番号76及び50)を有するタンパク質分子を指すか;1つ以上のプロセシング配列(すなわち、配列番号77及び51から選択される)を含むタンパク質分子を指すか;またはプロセシング及び非プロセシングタンパク質分子を含む混合物を指すために使用され得る。
【0286】
非TfR結合「N末端バイザイム」IDUA-Fc融合タンパク質(「IDUA-Fc Fusion 14」)を生成したが、これは、配列番号104の配列を有する第1のIDUA-Fcポリペプチドと、配列番号50の配列を有する第2のIDUA-Fc融合ポリペプチドとを含む。IDUA-Fc融合タンパク質はまた、細胞培養生成中にさらにプロセシングして、第1のIDUA-Fcポリペプチドが配列番号100の配列を有し、及び/または第2のIDUA-Fc融合ポリペプチドが配列番号51の配列を有するようにしてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、IDUA-Fc Fusion 14という用語は、非プロセシング配列(すなわち、配列番号104及び50)を有するタンパク質分子を指すか;1つ以上のプロセシング配列(すなわち、配列番号100及び51から選択される)を含むタンパク質分子;またはプロセシング及び非プロセシングタンパク質分子を含む混合物を指すために使用され得る。表2は、TfRに結合しない例示的なIDUA-Fc融合タンパク質及び組換えタンパク質の配列を示している。
【表2】
【0287】
ETV:IDUA(例えば、上記の任意の融合タンパク質)を含む組成物とは、非プロセシング配列を有するタンパク質分子を含む組成物を指すか;1つ以上のプロセシング配列を含むタンパク質分子を含む組成物を指すか;またはプロセシングタンパク質分子と非プロセシングタンパク質分子とを含む混合物を指すために使用され得る。
【0288】
組換えタンパク質の発現及び精製
組換えIDUA-Fc融合タンパク質を発現させるために、ExpiCHO細胞(Thermo Fisher Scientific)に、製造元の使用説明書(Thermo Fisher Scientific)に従ってExpifectamine(商標)CHOトランスフェクションキットを使用して、関連するDNA構築物をトランスフェクトした。細胞は、オービタルシェーカー(Infors HT Multitron)内で37℃、5%CO2及び125rpmで、製造元のプロトコルに記載されているように、フィードを補充したExpiCHO(商標)発現培地で増殖させた。要するに、対数増殖しているExpiCHO細胞に、培養体積1mLあたり0.8μgの全DNAプラスミドを、6×106細胞/mlの密度でトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を37℃に戻した。トランスフェクションの18~22時間後、トランスフェクトされた培養物に栄養フィードを補充し、生産実行中は細胞培養温度を32℃に下げた。トランスフェクトされた細胞培養上清を、トランスフェクションの120時間後に、4000rpmで15分間遠心分離することにより回収した。清澄化した上清を濾過し(0.22μMのメンブレン)、4℃で保存した。
【0289】
TfR結合を付与する操作されたFc領域を含む(または含まない)IDUA-Fc融合タンパク質を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して細胞培養上清から精製した。上清を、HiTrap MabSelect Prisma Protein Aアフィニティーカラム(GE Healthcare Life Sciences(Akta Pure Systemを使用する))にロードした。次に、そのカラムを、10カラム体積(CV)のPBSで洗浄した。結合したタンパク質は、50mMクエン酸緩衝液pH3.6を使用して溶出した。溶出直後に、1MのTris(pH8)(1:8希釈)を使用して画分を中和した。プロテインAプールは、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)を使用してさらに精製した。HiTrap(登録商標)SP High Performanceカラム(Cytiva、SKU 17-1152-01)への結合を容易にするために、タンパク質Aプールを酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)で10倍に希釈した。カラムは、20mMの酢酸ナトリウム、0.5MのNaCl、pH5.5の線形塩勾配を使用して30CVで溶出した。画分はHPLC-SECでさらに分析した。純度が95%を超える画分をプールし、1XPBS、pH7.4で透析した。IDUA-Fc融合の最終バルクの均一性は、還元及び非還元キャリパー(マイクロキャピラリー電気泳動-SDS)及びHPLC-SECなどの多数の技術によって評価された。
【0290】
C末端ヘキサヒスチジンタグ(配列番号93~95)を有する組換えIDUAは、上記のようにExpiCHO細胞で発現された。ヘキサヒスタジンタグ付きIDUA酵素を精製するために、トランスフェクトした上清を、100mMのNaClを含む20mMのHEPES pH7.4の15Lに対して一晩透析した。透析された上清を、HiTrapカラム(GE Healthcare Life Sciences(Akta Pure Systemを使用する))に結合した。結合後、そのカラムを20CVのPBSで洗浄した。結合したタンパク質は、500mMのイミダゾールを含むPBSを使用して溶出した。IDUA酵素を含むプールされた画分を、50mMのTris pH7.5で1:10に希釈し、Q Sepharose High Performance(GE Healthcare)を使用してさらに精製した。結合後、そのカラムを10CVの50mMのTris pH7.5で洗浄した。結合したタンパク質は、50mMのTris pH7.5及び0.5MのNaClへの直線勾配を使用して溶出して、1CVの画分に収集した。画分の純度は非還元SDS-PAGEによって評価された。
【0291】
実施例2:IDUA-Fc融合タンパク質の特徴付け。
実施例1に記載のとおり構築及び調製したETV:IDUA融合タンパク質を、TfR結合、酵素活性、及び細胞効力について評価した。
【0292】
操作されたTfR結合部位を有するIDUA-Fc融合タンパク質は、ヒトTfRに結合する
操作されたTfR結合を有するIDUA-Fc融合タンパク質が、ヒトTfRと相互作用する改変Fcドメインの能力に影響を与えるか否かを判定するために、ヒトTfRに対するETV:IDUA Fusion 3、4、及び6(実施例1)の親和性を、Biacore 8K装置(Cytiva)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。5μg/mLのIDUA-Fc融合タンパク質を、プロテインAコーティングされたBiacore(商標)シリーズS CM5センサーチップで1分間捕捉し、ヒトアピカルドメインTfRの連続3倍希釈液を30μL/分の流速で注入した。各試料は、ヒトTfR濃度を増加させながら60秒間の注入を5回連続して行い、その後、注入サイクルの最後に60秒間解離させて分析した。各注入後、10mMグリシン-HCl(pH1.5)を使用して、チップを再生した。結合応答は、同様の密度Aで無関係なIgGを捕捉するフローセルからRUを減算することによって補正された。Biacore(商標)Insight Evaluation Softwareを使用した速度論解析には、konとkoffを同時にフィッティングする1:1 Languirモデルを使用した。ETV:IDUA Fusion 3、4、及び6のヒトTfRに対する一価結合親和性は、約200nM~400nMの範囲であった。
【0293】
操作されたTfR結合部位を有するIDUA-Fc融合タンパク質は、インビトロで活性である
操作されたTfR結合IDUA-Fc融合タンパク質のインビトロ活性を評価して、IDUAがヒトIgG断片に融合したとき、その酵素活性を維持することを実証した。組換えIDUAのインビトロ活性は、人工基質を使用した1ステップの蛍光酵素アッセイを使用して測定した。70.96mMの4-メチルウンベリフェリル-α-L-イズロニド(遊離酸)(Cayman Chemical #19543)のアリコートを、アッセイ緩衝液(50mMの酢酸ナトリウム、0.5MのNaCl、0.025%のTriton(登録商標) X-100、pH4.5)で希釈し、最終濃度を2.5mMにした。IDUA-Fc融合タンパク質は、50mMの濃度から開始して段階的に希釈した。次に、5μLの基質を、384ウェルの黒色平底マイクロプレート(NUNC#262260)中で、連続希釈したIDUA-Fc融合タンパク質5μLと混合した。反応は22℃で60分間インキュベートして、10μLの停止緩衝液(0.5M炭酸ナトリウム緩衝液、pH10.3)で停止した。次に、反応溶液の蛍光を測定した(励起波長365nm、及び発光波長450nm)。4-メチルウンベリフェロンの標準曲線を非線形回帰によってフィッティングさせて、生成物の量を計算し、全基質切断の10%未満であることを確認した。比活性(pmol生成物/分/pmol IDUA)は、生成物の量を反応時間及びIDUAのモル量で除すことによって算出した。
【0294】
インビトロ酵素活性アッセイでは、IDUA-Fc融合タンパク質が活性であり、ETV:IDUA Fusion 3、4、及び6間で類似していることが実証された(
図2)。すべてのETV:IDUA融合タンパク質は、Aldurazyme(アウドラザイム)(ラロニダーゼ)の活性の約75%~約90%の範囲の比活性を示した。
【0295】
改変されたTfR結合部位を持つIDUA-Fc融合タンパク質は、インビトロでの基質蓄積を修正する
IDUA-Fc融合タンパク質の細胞活性は、基質補正を評価するためにヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸のLCMS定量を使用して、ハーラー(MPS I)患者及び健常対照の線維芽細胞でも検査した。簡単に説明すると、ハーラー線維芽細胞と健康な線維芽細胞を、10%のFBSを補充したDMEM培地で24ウェル培養プレートに、ウェルあたり75,000細胞の密度でプレートした。細胞は、コンフルエンスに達するまで、約96時間この形式で培養した。次に、ETV:IDUA Fusion 1を、開始濃度62.5nMから12ポイント、5倍連続希釈用量曲線で各ウェルに添加した。タンパク質を添加してから72時間後、低張ショックによって細胞を溶解した。溶解物を、96ウェルアッセイプレートに移し、緩衝液の組成を111mMの酢酸アンモニウム及び11mMの酢酸カルシウムを含むように調整し、超音波処理して溶解を完了した。溶解液のタンパク質濃度をBCAアッセイによって決定し、すべての溶解液を等しいタンパク質濃度に調整した。溶解物に2mMのDTTを補充し、ヘパリナーゼI(1.25mIU/反応)、ヘパリナーゼII(1.25mIU/反応)、ヘパリナーゼIII(1.25mIU/反応)、及びコンドロイチナーゼB(6.25 mIU/反応)を含む酵素混合物を用いて、GAGを30℃で3時間消化した。消化反応は、10mMのEDTAでクエンチさせ、各反応に20ngの4UA-2S-GlcNCOEt-6S内部標準を添加し、続いて95℃で10分間変性させた。遠心濾過により試料から不溶性物質を除去し、清澄化した試料をガラス製LC-MSバイアル内でアセトニトリルと1:1で混合した。ヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸GAG由来の二糖類種を、ACQUITY UPLC BEH Amide 1.7mm、2.1×150mMのカラムを備えたXevo TQ-S Micro装置でLC-MS/MSによって定量した。
【0296】
MPS I患者の線維芽細胞は、IDUA活性を欠いており、2つのグリコサミノグリカン(GAG)種であるヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸の蓄積につながる。ETV:IDUA Fusion 1は、MPS I患者由来細胞においてラロニダーゼと同様の効力を示し、ヘパラン硫酸の蓄積を減らすための低いピコモル細胞EC
50(約7~10pM)を示した(
図3)。
【0297】
TfR結合部位を改変したIDUA-Fc融合タンパク質は、TfR KIマウスの脳への取り込み増大を示す
TfRノックイン(以下「TfR
mu/huKI」または「TfR
mu/hu」と表記)マウスにおけるIDUA-Fc融合タンパク質の末梢(血清)及び脳PKを評価した。TfR
ms/huKIマウスは、国際特許出願番号WO2018/152285に記載のとおり、CRISPR/Cas9技術を使用して、マウスTfrc遺伝子内のヒトTfrcアピカルドメインを発現するように作製された。得られるキメラTfRは、内因性プロモーターの制御下でインビボで発現させた。簡単に説明すると、6~8週齢の雄性TfR
mu/huKIマウス(コホートあたりn=12)にETV:IDUA融合タンパク質40mg/kgを投与し、血清及び脳組織中のIDUA酵素及びETV:IDUA完全分子の濃度を測定した。総IDUA酵素レベルは、サンドイッチELISAベースのアッセイを使用して、血清については投与後t=0.25、0.5、1、4、8、10、24、及び48時間で測定され、脳PKについては投与後t=1、8、24、48時間で測定された。分析に使用したIDUA-Fc融合タンパク質は上記の通りであり、実施例1に従って調製した。総IDUA酵素レベルの測定のために、ポリクローナルヒツジ抗ヒトIDUA抗体(Bio-Techne AF4119)を、MULTI-ARRAY(登録商標)96ウェルプレート(Meso Scale Diagnostics L15XA-3)に一晩コーティングした。そのプレートをPBS(ThermoFisher 37528)、BS中のBlocker(商標)Caseinでブロックし、その後希釈した血清または脳溶解物とインキュベートした。次に、ルテニウム結合ポリクローナルヒツジ抗ヒトIDUA抗体(Bio-Techne AF4119)を、検出用に加えた。界面活性剤を含む1×Read緩衝液T(Meso Scale Diagnostics R92TC-1)を各ウェルに加え、プレートして、MSDリーダーにロードした。標準曲線は個々の構築物に基づいており、4パラメータのロジスティック曲線を使用して適合させた。結果は、
図4A~4C及び
図5A~5Cならびに表3に示されている。
【0298】
ETV:IDUA Fusion 3、4、及び6は循環中で良好な安定性を示した。すべての分子で高い脳Cmax値(約15nM以上)が観察され、すべての分子の脳への取り込みは末梢曝露と一致していた。
【表3】
【0299】
実施例3:ETV:IDUA Fusionsの生成物品質属性。
さまざまなETV:IDUA融合タンパク質を製品品質の観点から評価した。この研究では、ETV:IDUA Fusion 3、4、及び6(実施例1)を評価した。すべての構造は、実施例1で説明したように準備された。溶出画分中のETV:IDUA融合タンパク質の均一性は、還元及び非還元キャリパー(マイクロキャピラリー電気泳動-SDS)及びHPLC-SECなどのさまざまな技術によって評価した。ヒトTfRに対する親和性を、実施例2に記載されるように測定した。
【0300】
結果
実施例2で説明したように、ETV:IDUA Fusion 3及び6に対する測定されたヒトTfR親和性は同等であった(KDは、約200~400nMの範囲)。
ETV:IDUA Fusion 3、4、及び6の発現力価は、約100mg/Lを超えた。
【0301】
ETV:IDUA Fusion 3、4、及び6のタンパク質Aクロマトグラフィー精製後の回収率を評価した。全ての構造のプロテインA後のプールの分析によって、少なくとも約90%のインタクトなETV構造(ノブ及びホールの対を含む改変Fc二量体の維持)を伴う、少なくとも85%の純度が示された(HPLC-SECで測定)。すべての構造のプロテインA後のプールは、さらに洗練させるために陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)にかけた。全ての構造のCEX後プールは、>95%のインタクトなETV構造を伴い、>99%の純度レベル(HPLC-SECで測定)を達成した。
【0302】
ETV:IDUA融合タンパク質の製品品質特性の概要を表4に示す。
【表4】
【0303】
実施例4:MPS Iの疾患モデルにおけるETV:IDUA融合タンパク質とラロニダーゼの比較研究。
代表的なETV:IDUA融合タンパク質(ETV:IDUA Fusion 3)を、MPS Iのマウスモデルにおける標準治療の酵素補充療法であるラロニダーゼと比較した。
【0304】
結果
ETV:IDUA及びラロニダーゼを、単回静脈内(IV)投与後にIDUA KO;TfR
mu/huKIマウスの脳、CSF、及び肝臓における総GAGレベルを、そのタンパク質がどの程度低下させるかについて比較した。ETV:IDUA Fusion 3を、ラロニダーゼと等モル量(0.85mg/kg)、等モル量の約10倍の量(8.8mg/kg)、及び高用量レベル(40mg/kg)でマウスに投与し、ラロニダーゼは治療のための臨床的に関連する用量(0.58mg/kg)と一致する用量で投与した。総GAGは、主要なヘパラン硫酸(HS)(D0A0、D0S0)及びデルマタン硫酸(DS)(D0a4)由来の二糖類の合計として決定した。
図6A~6D及び表5に示すように、単回投与から7日後、ETV:IDUAタンパク質は、脳脊髄液(CSF)と脳組織の両方で総GAGレベルを低下し得、この低下はラロニダーゼで達成された効果よりも優れていた。総GAGレベルの減少は、ラロニダーゼの用量と等モルの用量を含め、ETV:IDUAの3種類の投与量すべてで確認された(CSF:79%減少対36%減少;脳:38%減少対N/S減少)。肝臓では、投与されたすべての用量において、ラロニダーゼとETV:IDUAタンパク質のとの間の総GAG減少は同様であった。尿中では、ETV:IDUAは、等モル用量でラロニダーゼ(0.85mg/kg)と同等に総GAGレベルを低下させた。しかし、ETV:IDUAの高用量(例えば、8.8mg/kg及び40mg/kg)では、尿中の総GAGレベルの低下はラロニダーゼよりも良好であった。
【表5】
【0305】
図6A~6Dのデータは、おおよその平均量+/-平均の標準誤差を表している。その結果、ETV:IDUAがCSF、脳、及び尿中の基質蓄積を確実に減少させ、この減少が標準治療であるERT治療に比べて改善を示したことが示されている。
【0306】
実験方法
ETV:IDUA Fusion 3は、実施例1で説明したように発現及び精製された。ラロニダーゼは、市販品(NDC 58468-0070-1、ロット番号0Y0432)から入手した。
【0307】
この研究で使用したMPS Iマウスモデルは、IDUAをコードする遺伝子がノックアウトされているが、マウスTfRにノックアウトされたヒトTfRアピカルドメインも有するマウスモデルである(本明細書では「IDUA KO;TfRmu/huKI」または「IDUA KO;TfRmu/hu」マウスと呼ぶ)。IDUA KOマウスは、The Jackson Laboratories(JAX ストック番号004068)から入手した。簡単に説明すると、TfRmu/huKI雄性マウス(実施例2参照;本明細書では「TfRmu/hu」と称される)を、IDUA変異についてヘテロ接合性である雌性マスと交配させて、TfRmu/huKIホモ接合バックグラウンドのホモ接合性のIDUA KOマウスを作製した。この研究で使用されたマウスは混合の性別であり、12時間の明暗サイクルの下で、食物(#25502、照射;LabDiet)及び水を自由に摂取させて飼育した。
【0308】
この研究では、IDUA KO;TfRmu/huKIマウスに、ETV:IDUA Fusion 3またはラロニダーゼを静脈内注射で単回投与し、薬力学的反応を評価した。特に、タンパク質の末梢投与がIDUA KO;TfRmu/huKIマウスの脳、CSF、肝臓、及び尿中の総GAGレベルに及ぼす影響を調べた。約2ヶ月齢のIDUA KO;TfRmu/huKIに、生理食塩水、ETV:IDUA融合タンパク質(0.85、8.8、または40mg/kg体重)、またはラロニダーゼ(0.58mg/kg体重)を静脈内(i.v.)注射した(n=4~5/群)。生理食塩水をi.v.注射した約2か月齢の同腹子TfRmu/huKIマウス(非MPS Iマウス)を、対照として使用した。尿試料を、単回投与後6日目と7日目に採取して、分析のためにプールした。単回投与後7日目に、すべての動物を屠殺し、脳、CSF、及び肝臓組織を採取した。収集されたすべての組織及び体液をドライアイスで急速冷凍し、分析まで-80℃で保存した。
【0309】
ヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸種は、以下に説明するLC-MS/MSベースの方法を使用して、インビボで測定した。Qiagen TissueLyzer IIを30Hzで3分間、2回使用して、組織アリコート(50mg)を水(500~750μL)中で均質化した。ホモジネートを、96ウェルディーププレートに移し、96チップ超音波処理装置(Q Sonica)を使用して20×1秒のパルスで超音波処理した。超音波処理したホモジネートを、17,000×gで20分間、4℃で遠心させ、細胞破片をペレット化した。得られた溶解物を清澄な96ウェルディーププレートに移し、BCAを実行して総タンパク質を定量した。試料中のヘパラン硫酸(HS)及びデルマタン硫酸(DS)は、LC-MS/MS分析の前に、対応する二糖類に消化された。タンパク質溶解物(脳及び肝臓組織由来)及びCSF及び尿を、ヘパリナーゼI、II、III及び内部標準D4UA-2S-GlcNCOEt-6S(HD009,Iduron Ltd,Manchester,UK)と、酢酸アンモニウム、酢酸カルシウム、及びDTTからなる消化緩衝液中で混合し、PCRプレート中で30℃で3時間振とう(700rpm)した。尿については、安定標識クレアチニン(内部標準、N-メチル-D3、98%)も混合物に加えた。3時間のインキュベーション後、各試料に0.0025MのEDTAを加えて反応を停止し、その混合物を95℃で10分間煮沸して酵素を不活性化した。脳、肝臓、CSF、及び尿由来の消化試料を遠心分離し、上清をセルロースアセテートフィルタープレート(Millipore、MSUN03010)に移して再度遠心分離した。脳、CSF及び尿試料のために、得られた溶出液を、96ウェルのガラスバイアルプレート中で等量のアセトニトリルと混合し、以下のように質量分析によって分析した。肝臓の場合、得られた溶出液を2倍量のアセトニトリルと混合した。
【0310】
体液及び組織中のHS及びDS由来の二糖類の定量は、液体クロマトグラフィー(Exion LC,Sciex,Framingham,MA,USA;Agilent 1290 Infinity II HPLC,Agilent Technologies Inc.,Santa Clara,CA,USA)とエレクトロスプレー質量分析法(Sciex Triple Quad 7500,Sciex,Framingham,MA,USA;Sciex Triple Quad 6500+,Sciex,Framingham,MA,USA)を組み合わせて実施した。両方の液体クロマトグラフィーでの各分析では、ACQUITY UPLC BEH Amide 1.7mm、2.1×150mmカラム(Waters Corporation、Milford、MA、USA)に、流速0.6mL/分を、カラム温度55℃で用いて試料を注入した。移動相Aは、10mMギ酸アンモニウム及び0.1%ギ酸を含む水で構成され、移動相Bは、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルで構成されていた。勾配を、以下のようにプログラムした:80%Bで0.0~6.0分、80%B~20%Bで6.0~6.01分、20%B~20%Bで6.01~8.0分、20%B~80%Bで8.0~8.1分、及び80%Bで8.1~10分保持。Sciex Triple Quad 7500のために、エレクトロスプレーイオン化を、以下の設定を適用して負イオン化モードで実行した:カーテンガス40;イオンスプレー電圧-4500;温度450℃;イオン源ガス1が50;及びイオン源ガス2が60。Sciex OS 2.1.6.59781を、多重反応モニタリングモード(MRM)を使用して、以下の設定を用いて、データ取得を実行した:滞留期間100msec;衝突エネルギー-30;入口電位-10;衝突セル出口電位-10。Sciex Triple Quad 6500+の場合、エレクトロスプレーイオン化は、以下の設定を適用して、負イオン化モードで実行した:カーテンガス 20、イオンスプレー電圧-4500、温度450℃;イオン源ガス1が50、及びイオン源ガス2が60。Analyst 1.7.1を、MRMを使用して、以下の設定を用いて、データ取得を実行した:滞留期間100msec;衝突エネルギー-30;デクラスタリング電位-80;入口電位-10;衝突セル出口電位-10。個々の二糖種は、市販の参照標準(Iduron Ltd)を使用して、保持時間及びMRMトランジションに基づいて同定した。Sciex Triple Quad 7500及びSciex Triple Quad 6500+では、次の二糖遷移をモニタリングした:D0A0(HS)、m/z 378>87;D0S0(HS)、m/z 416>138、及びD0a4(m/z 458>300);D4UA-2S-GlcNCOEt-6S(内部標準)m/z 472>97。二糖類の量は、BCAアッセイで測定された総タンパク質レベル、または試料あたりに使用された体液の量に対して正規化された。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【表6-7】
【表6-8】
【表6-9】
【表6-10】
【表6-11】
【表6-12】
【表6-13】
【表6-14】
【表6-15】
【表6-16】
【表6-17】
【表6-18】
【表6-19】
【表6-20】
【表6-21】
【表6-22】
【表6-23】
【表6-24】
【表6-25】
【表6-26】
【表6-27】
【表6-28】
【表6-29】
【表6-30】
【表6-31】
【表6-32】
【表6-33】
【表6-34】
【表6-35】
【0311】
すべての刊行物、特許、及び特許文書は、参照により個別に組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、種々の具体的かつ好ましい実施形態及び技術を参照して記載してきた。しかしながら、本発明の主旨及び範囲内に留まりながら、多くの変形及び改変を行うことができることを理解されたい。
【国際調査報告】