(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】癌の免疫療法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241210BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241210BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241210BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241210BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241210BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20241210BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241210BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241210BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/09 Z
C12N15/62 Z
C12N15/13
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/85 Z
A61K47/68
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534730
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 GB2022053174
(87)【国際公開番号】W WO2023105248
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】598176569
【氏名又は名称】キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アディマン,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ジョージナ
(72)【発明者】
【氏名】オースティン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】バーナード,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】チャン,デニス ツ ヤウ
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ディアマンダキス,アガタ
(72)【発明者】
【氏名】グローブス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ホーソーン,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ,ステュアート
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンソン,レスリー
(72)【発明者】
【氏名】ラポイント,ジーン-マーティン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,カースティー-ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】スラター,ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン,トリスタン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA14
4C085AA27
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
抗ヒトSEMA4Aヒト化抗体又はヒト抗体と、リンカーと、細胞毒素と、を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒト-SEMA4Aヒト抗体若しくはヒト化抗体又はその抗原結合断片と、リンカーと、細胞毒素と、を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)。
【請求項2】
前記抗体が、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含むV
H並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含むV
Lを含み、前記CDRが、
(a)5E3(配列番号:3、4、5、12、13、14);
(b)5Hg1-5Lg1(配列番号:21、22、23、30、31、32);
(c)5Hg1-5Lg2(配列番号:39、40、41、48、49、50);
(d)5Hg2-5Lg1(配列番号:57、58、59、66、67、68);
(e)5Hg2-5Lg2(配列番号:75、76、77、84、85、86);
(f)5Hg2-5Lg3(配列番号:93、94、95、102、103、104);
(g)5Hg2-5Lg5(配列番号:111、112、113、120、121、122);
(h)5Hg2-5Lg6(配列番号:129、130、131、138、139、140);
(i)5Hg4-5Lg1(配列番号:147、148、149、156、157、158);
(j)5Hg4-5Lg2(配列番号:165、166、167、174、175、176);
(k)5Hg4-5Lg4(配列番号:183、184、185、192、193、194);
(l)5Hg4-5Lg5(配列番号:201、202、203、210、211、212);
(m)5Hg5-5Lg2(配列番号:219、220、221、228、229、230);
(n)C0120903(配列番号:237、238、239、246、247、248);
(o)C0120904(配列番号:255、256、257、264、265、266);
(p)C0120905(配列番号:273、274、275、282、283、284);
(q)C0120906(配列番号:291、292、293、300、301、302);
(r)C0120910(配列番号:309、310、311、318、319、320);
(s)C0120913(配列番号:327、328、329、336、337、338);
(t)C0120914(配列番号:345、346、347、354、355、356);
(u)C0120917(配列番号:363、364、365、372、373、374);
(v)C0120918(配列番号:381、382、383、390、391、392);
(w)C0120919(配列番号:399、400、401、408、409、410);
(x)C0120920(配列番号:417、418、419、426、427、428);
(y)C0120921(配列番号:435、436、437、444、445、446);
(z)C0120922(配列番号:453、453、455、462、463、464);
(aa)C0120923(配列番号:471、472、473、480、481、482);
(bb)C0120924(配列番号:489、490、491、498、499、500);
(cc)C0120925(配列番号:507、508、509、516、517、518);
(dd)C0120926(配列番号:525、526、527、534、535、536);
(ee)C0120927(配列番号:543、544、545、552、553、554);
(ff)C0120928(配列番号:561、562、563、570、571、572);
(gg)C0120929(配列番号:579、580、581、588、589、590)及び
(hh)C0120930(配列番号:597、598、599、606、607、608)
のCDRから選択され、
前記CDRはKabat命名法に従って定義される、請求項1に記載のADC。
【請求項3】
前記抗体が、
a.5Hg1-5Lg1(配列番号:20及び29);
b.5Hg1-5Lg2(配列番号:38及び47);
c.5Hg2-5Lg1(配列番号:56及び65);
d.5Hg2-5Lg2(配列番号:74及び83);
e.5Hg2-5Lg3(配列番号:92及び101);
f.5Hg2-5Lg5(配列番号:110及び119);
g.5Hg2-5Lg6(配列番号:128及び137);
h.5Hg4-5Lg1(配列番号:146及び155);
i.5Hg4-5Lg2(配列番号:164及び173);
j.5Hg4-5Lg4(配列番号:182及び191);
k.5Hg4-5Lg5(配列番号:200及び209);
l.5Hg5-5Lg2(配列番号:218及び227);
m.C0120903(配列番号:236及び245);
n.C0120904(配列番号:254及び263);
o.C0120905(配列番号:272及び281);
p.C0120906(配列番号:290及び299);
q.C0120910(配列番号:308及び317);
r.C0120913(配列番号:326及び335);
s.C0120914(配列番号:344及び353);
t.C0120917(配列番号:362及び371);
u.C0120918(配列番号:380及び389);
v.C0120919(配列番号:398及び407);
w.C0120920(配列番号:416及び425);
x.C0120921(配列番号:434及び443);
y.C0120922(配列番号:452及び461);
z.C0120923(配列番号:470及び479);
aa.C0120924(配列番号:488及び497);
bb.C0120925(配列番号:506及び515);
cc.C0120926(配列番号:524及び533);
dd.C0120927(配列番号:542及び551);
ee.C0120928(配列番号:560及び569);
ff.C0120929(配列番号:578及び587);及び
gg.C0120930(配列番号:596及び605);
のV
H及びV
Lから選択されるV
H及びV
Lを含み、
前記配列が、Kabat命名法によって定義される、請求項1又は請求項2に記載のADC。
【請求項4】
前記細胞毒素が微小管阻害剤(例えば、メイタンシノイド又はアウリスタチン)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のADC。
【請求項5】
前記細胞毒素が、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE、ベドチン)及びメルタンシン(DM1又はSMCCリンカーを有するエムタンシンとして)から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のADC。
【請求項6】
前記リンカーが、切断不可能なリンカーであるか、又は切断可能なリンカーである、請求項1~5のいずれか一項に記載のADC。
【請求項7】
前記細胞毒素がモノメチルアウリスタチンE(MMAE)であり、前記リンカーがmc-vcPABリンカー(マレイミド系リンカー、システイン連結)であるか、又は前記細胞毒素がメルタンシン(DM1)であり、前記リンカーがSMCCリンカー(NHSエステル系、リジン)である、請求項1~6のいずれか一項に記載のADC。
【請求項8】
前記SEMA4Aに結合したADCが、その表面上にヒトSEMA4Aを発現する細胞に内在化することができる、請求項1~7のいずれか一項に記載のADC。
【請求項9】
前記SEMA4Aに結合したADCが、その表面上にヒトSEMA4Aを発現する細胞に内在化することができ、前記細胞への前記ADCの内在化が、細胞死をもたらす、請求項1~8のいずれか一項に記載のADC。
【請求項10】
HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含むV
H並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含むV
Lを含むヒト又はヒト化抗ヒトSEMA4A抗体であって、前記CDRが、
(a)5E3(配列番号:3、4、5、12、13、14);
(b)5Hg1-5Lg1(配列番号:21、22、23、30、31、32);
(c)5Hg1-5Lg2(配列番号:39、40、41、48、49、50);
(d)5Hg2-5Lg1(配列番号:57、58、59、66、67、68);
(e)5Hg2-5Lg2(配列番号:75、76、77、84、85、86);
(f)5Hg2-5Lg3(配列番号:93、94、95、102、103、104);
(g)5Hg2-5Lg5(配列番号:111、112、113、120、121、122);
(h)5Hg2-5Lg6(配列番号:129、130、131、138、139、140);
(i)5Hg4-5Lg1(配列番号:147、148、149、156、157、158);
(j)5Hg4-5Lg2(配列番号:165、166、167、174、175、176);
(k)5Hg4-5Lg4(配列番号:183、184、185、192、193、194);
(l)5Hg4-5Lg5(配列番号:201、202、203、210、211、212);
(m)5Hg5-5Lg2(配列番号:219、220、221、228、229、230);
(n)C0120903(配列番号:237、238、239、246、247、248);
(o)C0120904(配列番号:255、256、257、264、265、266);
(p)C0120905(配列番号:273、274、275、282、283、284);
(q)C0120906(配列番号:291、292、293、300、301、302);
(r)C0120910(配列番号:309、310、311、318、319、320);
(s)C0120913(配列番号:327、328、329、336、337、338);
(t)C0120914(配列番号:345、346、347、354、355、356);
(u)C0120917(配列番号:363、364、365、372、373、374);
(v)C0120918(配列番号:381、382、383、390、391、392);
(w)C0120919(配列番号:399、400、401、408、409、410);
(x)C0120920(配列番号:417、418、419、426、427、428);
(y)C0120921(配列番号:435、436、437、444、445、446);
(z)C0120922(配列番号:453、454、455、462、463、464);
(aa)C0120923(配列番号:471、472、473、480、481、482);
(bb)C0120924(配列番号:489、490、491、498、499、500);
(cc)C0120925(配列番号:507、508、509、516、517、518);
(dd)C0120926(配列番号:525、526、527、534、535、536);
(ee)C0120927(配列番号:543、544、545、552、553、554);
(ff)C0120928(配列番号:561、562、563、570、571、572);
(gg)C0120929(配列番号:579、580、581、588、589、590)及び
(hh)C0120930(配列番号:597、598、599、606、607、608)
のCDRから選択され、
前記CDRの配列が、Kabat命名法によって定義される、ヒト又はヒト化抗ヒトSEMA4A抗体。
【請求項11】
前記抗体が、
(a)5Hg1-5Lg1(配列番号:20及び29);
(b)5Hg1-5Lg2(配列番号:38及び47);
(c)5Hg2-5Lg1(配列番号:56及び65);
(d)5Hg2-5Lg2(配列番号:74及び83);
(e)5Hg2-5Lg3(配列番号:92及び101);
(f)5Hg2-5Lg5(配列番号:110及び119);
(g)5Hg2-5Lg6(配列番号:128及び137);
(h)5Hg4-5Lg1(配列番号:146及び155);
(i)5Hg4-5Lg2(配列番号:164及び173);
(j)5Hg4-5Lg4(配列番号:182及び191);
(k)5Hg4-5Lg5(配列番号:200及び209);
(l)5Hg5-5Lg2(配列番号:218及び227);
(m)C0120903(配列番号:236及び245);
(n)C0120904(配列番号:254及び263);
(o)C0120905(配列番号:272及び281);
(p)C0120906(配列番号:290及び299);
(q)C0120910(配列番号:308及び317);
(r)C0120913(配列番号:326及び335);
(s)C0120914(配列番号:344及び353);
(t)C0120917(配列番号:362及び371);
(u)C0120918(配列番号:380及び389);
(v)C0120919(配列番号:398及び407);
(w)C0120920(配列番号:416及び425);
(x)C0120921(配列番号:434及び443);
(y)C0120922(配列番号:452及び461);
(z)C0120923(配列番号:470及び479);
(aa)C0120924(配列番号:488及び497);
(bb)C0120925(配列番号:506及び515);
(cc)C0120926(配列番号:524及び533);
(dd)C0120927(配列番号:542及び551);
(ee)C0120928(配列番号:560及び569);
(ff)C0120929(配列番号:578及び587)及び
(gg)C0120930(配列番号:596及び605)
のV
H及びV
Lから選択されるV
H及びV
Lを含み、
前記V
H配列及びV
L配列は、Kabat命名法によって定義される、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
T細胞活性化部分に連結された請求項10又は11のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項13】
前記抗原結合ドメインが、請求項10又は11のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の単鎖Fv(scFv)断片を含む、請求項12に記載のCAR。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載のADC、又は請求項10若しくは11のいずれか一項に記載の抗ヒトSEMA4A抗体、又は請求項12及び13のいずれか一項に記載のCARと、希釈剤と、を含む組成物。
【請求項15】
a.医薬品として使用するための、
b.癌を治療するための医薬品として使用するための、
c.血液癌の治療に使用するための、
d.多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び濾胞性リンパ腫(FL)から選択される血液癌の治療に使用するための、
e.癌の治療的処置のための医薬品の製造に使用するための、
f.血液癌の治療的処置のための医薬品の製造に使用するための、
g.MM、NHL、AML、DLBCL及びFLから選択される血液癌の治療的処置のための医薬品の製造に使用するための、又は
h.細胞表面にSEMA4Aを発現する細胞において細胞死を誘導するための、請求項1~9のいずれか一項に記載のADC、請求項10若しくは11のいずれか一項に記載の抗体、請求項12若しくは13のいずれか一項に記載のCAR、又は請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載のADC、請求項10若しくは11のいずれか一項に記載の抗体、請求項12若しくは13のいずれか一項に記載のCAR、又は請求項14に記載の組成物を対象に投与することを含む、血液癌、例えばMM、NHL、AML、DLBCL及びFLから選択される血液癌等の癌の治療方法。
【請求項17】
請求項10又は請求項11に記載の抗体を、リンカーを介して細胞毒素にコンジュゲーションすることを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のADCの製造方法。
【請求項18】
請求項10又は11のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片をコードする配列を含む、単離された組換えDNA又はRNA配列。
【請求項19】
ベクターである、請求項18に記載の単離された組換えDNA配列。
【請求項20】
発現ベクターである、請求項18又は請求項19に記載の単離された組換えDNA配列。
【請求項21】
プロモータの制御下で、請求項10又は11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする、請求項18~20のいずれか一項に記載の単離された組換えDNA配列。
【請求項22】
請求項18~21のいずれか一項に記載のDNA又はRNA配列を含む宿主細胞。
【請求項23】
請求項10又は11のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片を発現することができる、請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
請求項10又は11に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、請求項22又は23に記載の宿主細胞を、前記単離された抗体又はその抗原結合断片の発現に適した条件下で培養することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
腫瘍細胞を攻撃する免疫系の誘導である癌免疫療法は、長い歴史を有し、関心の最近の復活が見られている。これは、免疫チェックポイント遮断及び癌指向性免疫療法の成功の両方によって推進されてきた。癌細胞上の細胞表面タンパク質の標的化を利用する後者は、20世紀の終わりに導入されたモノクローナル抗体療法(例えば、リツキシマブ、トラスツズマブ)、及び21世紀の初めに導入されたキメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞によって例示される。しかしながら、単剤免疫療法に対する耐性は頻繁であり、一般に抗原回避、すなわち癌細胞による抗原性標的の下方制御によって促進される。抗原回避は、腫瘍内不均一性によって推進され得、低レベルの標的タンパク質を発現するサブクローン又は標的タンパク質を発現しないサブクローンは、免疫療法中に競合的増殖利点を得る。この耐性を克服するために、新規免疫療法は、癌細胞の生存に不可欠な抗原に対して標的化されるべきであり、併用治療が使用され得る。複数のモノクローナル抗体を組み合わせる戦略は、部分的には低毒性のために、また部分的には癌細胞の免疫表現型決定が感受性及び耐性の亜集団を明らかにし得、合理的な治療決定をもたらし得るために、特に魅力的である。したがって、癌細胞の表面上の新規標的タンパク質を同定する緊急の必要性がある。
【0002】
癌細胞の表面プロテオームの完全な理解は、治療を進めるために特に有益であろう。しかしながら、この知識は、利用可能な技術では分かりにくいことが判明している。RNA発現とタンパク質発現との間の相関は適度であり、トランスクリプトームアプローチを非効率的にする。全細胞プロテオミクスアプローチによる細胞表面タンパク質の包括的な同定は、それらの低存在量、疎水性、及びプロテアーゼ切断部位の欠如、並びに不正確な定量によって制限される。これらの制限を克服するために、癌細胞表面タンパク質を単離及び同定するための様々な技術が用いられてきた。しかしながら、これらのアプローチは、主に初代細胞ではなく癌細胞株に焦点を当てており、細胞表面タンパク質全体を捕捉することができず、及び/又は定量的ではない。結果として、これらのタイプのプロテオーム研究は、関連する癌免疫療法標的をもたらすことができなかった。
【0003】
国際公開第2021195536号は、多発性骨髄腫(MM)における細胞表面候補標的の発現の分析を記載している。7つの異なるMM細胞株の表面タンパク質をビオチン化し、分光分析に供し、それによって4761のタンパク質を同定し、統合データベースを使用して細胞表面分子アノテーションを生成し、これを発現レベルに基づく排除と組み合わせて、STRINGによる更なる分析のために326の表面タンパク質を同定した。ヒートマップにより、全身のいくつかの正常組織及び器官における94個の選択された標的のタンパク質アノテーションが明らかにされた。造血組織を除く任意の正常組織における高発現の分子及び3つのプロテオミクスデータベースのうち2つ未満のアノテーションを有する分子を除外した。潜在的な生物学的関連性及び治療的関連性を有する標的のベンン・ダイアグラム重複により、67個の共通の標的が明らかにされ、そのうち24個が原発患者における発現プロファイルに基づいて選択され、CCR1、CD28、CD320、FCRL3、IFNGR1、IL12RB1、IL27RA、IL2RG、IL6R、ITGA4、KCNN4、LAX1、LILRB1、LILRB4、LRRC8A、LRRC8D、PLXNA3、PLXNC1、S1PR4、SELPLG、SEMA4A、SLAMF6、TLR1及びBCMAを含む患者試料における検証に使用された。
【0004】
Anderson et al.(2022)は、原発性癌の細胞表面タンパク質を同定するための初代ヒト骨髄腫細胞の原形質膜プロファイリングを記載している。免疫療法標的を優先順位付けするための新規アプローチを使用して、以前には骨髄腫に関与していることが示唆されていなかった細胞表面タンパク質であるセマフォリン-4A(SEMA4A)を同定した。SEMA4Aの発現はインビトロでの正常な骨髄腫細胞増殖に必須であることが示され、これは、骨髄腫細胞が検出を回避するためにタンパク質を下方制御することができないことを示し、また、エクソンスキッピングのために、SEMA4Aが標準的なCRISPR/Cas9ノックアウトスクリーニングによって骨髄腫治療標的として同定されないことも示された。マウス抗体-薬物コンジュゲートを使用したSEMA4Aの標的化は、インビトロ及びインビボで実証された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MMは、形質細胞の癌であり、疲労、骨痛、病理学的骨折、免疫抑制、及び腎不全を引き起こす。モノクローナル抗体療法及びCAR-T細胞療法を含む近年の新規治療の導入にもかかわらず、治療に対する耐性は不可避である。したがって、MMは常に致命的なままであり、新規治療法が緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の陳述
本発明は、以下を提供する。
1.抗ヒト-SEMA4Aヒト抗体若しくはヒト化抗体又はその抗原結合断片と、リンカーと、細胞毒素と、を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)。
【0007】
2.抗体が、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含むVH並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含むVLを含み、CDRが、
(a)5E3(配列番号:3、4、5、12、13、14);
(b)5Hg1-5Lg1(配列番号:21、22、23、30、31、32);
(c)5Hg1-5Lg2(配列番号:39、40、41、48、49、50);
(d)5Hg2-5Lg1(配列番号:57、58、59、66、67、68);
(e)5Hg2-5Lg2(配列番号:75、76、77、84、85、86);
(f)5Hg2-5Lg3(配列番号:93、94、95、102、103、104);
(g)5Hg2-5Lg5(配列番号:111、112、113、120、121、122);
(h)5Hg2-5Lg6(配列番号:129、130、131、138、139、140);
(i)5Hg4-5Lg1(配列番号:147、148、149、156、157、158);
(j)5Hg4-5Lg2(配列番号:165、166、167、174、175、176);
(k)5Hg4-5Lg4(配列番号:183、184、185、192、193、194);
(l)5Hg4-5Lg5(配列番号:201、202、203、210、211、212);
(m)5Hg5-5Lg2(配列番号:219、220、221、228、229、230);
(n)C0120903(配列番号:237、238、239、246、247、248);
(o)C0120904(配列番号:255、256、257、264、265、266);
(p)C0120905(配列番号:273、274、275、282、283、284);
(q)C0120906(配列番号:291、292、293、300、301、302);
(r)C0120910(配列番号:309、310、311、318、319、320);
(s)C0120913(配列番号:327、328、329、336、337、338);
(t)C0120914(配列番号:345、346、347、354、355、356);
(u)C0120917(配列番号:363、364、365、372、373、374);
(v)C0120918(配列番号:381、382、383、390、391、392);
(w)C0120919(配列番号:399、400、401、408、409、410);
(x)C0120920(配列番号:417、418、419、426、427、428);
(y)C0120921(配列番号:435、436、437、444、445、446);
(z)C0120922(配列番号:453、453、455、462、463、464);
(aa)C0120923(配列番号:471、472、473、480、481、482);
(bb)C0120924(配列番号:489、490、491、498、499、500);
(cc)C0120925(配列番号:507、508、509、516、517、518);
(dd)C0120926(配列番号:525、526、527、534、535、536);
(ee)C0120927(配列番号:543、544、545、552、553、554);
(ff)C0120928(配列番号:561、562、563、570、571、572);
(gg)C0120929(配列番号:579、580、581、588、589、590)及び
(hh)C0120930(配列番号:597、598、599、606、607、608)
のCDRから選択され、
CDRはKabat命名法に従って定義される、
条項1に記載のADC。
【0008】
3.抗体が、
a.5Hg1-5Lg1(配列番号:20及び29);
b.5Hg1-5Lg2(配列番号:38及び47);
c.5Hg2-5Lg1(配列番号:56及び65);
d.5Hg2-5Lg2(配列番号:74及び83);
e.5Hg2-5Lg3(配列番号:92及び101);
f.5Hg2-5Lg5(配列番号:110及び119);
g.5Hg2-5Lg6(配列番号:128及び137);
h.5Hg4-5Lg1(配列番号:146及び155);
i.5Hg4-5Lg2(配列番号:164及び173);
j.5Hg4-5Lg4(配列番号:182及び191);
k.5Hg4-5Lg5(配列番号:200及び209);
l.5Hg5-5Lg2(配列番号:218及び227);
m.C0120903(配列番号:236及び245);
n.C0120904(配列番号:254及び263);
o.C0120905(配列番号:272及び281);
p.C0120906(配列番号:290及び299);
q.C0120910(配列番号:308及び317);
r.C0120913(配列番号:326及び335);
s.C0120914(配列番号:344及び353);
t.C0120917(配列番号:362及び371);
u.C0120918(配列番号:380及び389);
v.C0120919(配列番号:398及び407);
w.C0120920(配列番号:416及び425);
x.C0120921(配列番号:434及び443);
y.C0120922(配列番号:452及び461);
z.C0120923(配列番号:470及び479);
aa.C0120924(配列番号:488及び497);
bb.C0120925(配列番号:506及び515);
cc.C0120926(配列番号:524及び533);
dd.C0120927(配列番号:542及び551);
ee.C0120928(配列番号:560及び569);
ff.C0120929(配列番号:578及び587);及び
gg.C0120930(配列番号:596及び605);
のVH及びVLから選択されるVH及びVLを含み、配列はKabat命名法によって定義される、条項1又は条項2に記載のADC。
【0009】
4.細胞毒素が微小管阻害剤(例えば、メイタンシノイド又はアウリスタチン)である、条項1~3のいずれか一項に記載のADC。
【0010】
5.細胞毒素がモノメチルアウリスタチンF(MMAF)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE、ベドチン)及びメルタンシン(DM1、例えば、SMCCリンカーを有するエムタンシンとして)から選択される、条項1~4のいずれか一項に記載のADC。
【0011】
6.リンカーが、切断不可能なリンカーであるか、又は切断可能なリンカーである、条項1~5のいずれか一項に記載のADC。
【0012】
7.細胞毒素がモノメチルアウリスタチンE(MMAE)であり、リンカーがmc-vcPABリンカー(マレイミド系リンカー、システイン連結)であるか、又は細胞毒素がメルタンシン(DM1)であり、リンカーがSMCCリンカー(NHSエステル系、リジン)である、条項1~6のいずれか一項に記載のADC。
【0013】
8.SEMA4Aに結合したADCが、その表面上にヒトSEMA4Aを発現する細胞に内在化され得る、条項1~7のいずれか一項に記載のADC。
【0014】
9.SEMA4Aに結合したADCが、ヒトSEMA4Aをその表面上に発現する細胞に内在化することができ、細胞へのADCの内在化が、細胞死をもたらす、条項1~8のいずれか一項に記載のADC。
【0015】
10.HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含むVH並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含むVLを含むヒト又はヒト化抗ヒトSEMA4A抗体であって、CDRが、
(a)5E3(配列番号:3、4、5、12、13、14);
(b)5Hg1-5Lg1(配列番号:21、22、23、30、31、32);
(c)5Hg1-5Lg2(配列番号:39、40、41、48、49、50);
(d)5Hg2-5Lg1(配列番号:57、58、59、66、67、68);
(e)5Hg2-5Lg2(配列番号:75、76、77、84、85、86);
(f)5Hg2-5Lg3(配列番号:93、94、95、102、103、104);
(g)5Hg2-5Lg5(配列番号:111、112、113、120、121、122);
(h)5Hg2-5Lg6(配列番号:129、130、131、138、139、140);
(i)5Hg4-5Lg1(配列番号:147、148、149、156、157、158);
(j)5Hg4-5Lg2(配列番号:165、166、167、174、175、176);
(k)5Hg4-5Lg4(配列番号:183、184、185、192、193、194);
(l)5Hg4-5Lg5(配列番号:201、202、203、210、211、212);
(m)5Hg5-5Lg2(配列番号:219、220、221、228、229、230);
(n)C0120903(配列番号:237、238、239、246、247、248);
(o)C0120904(配列番号:255、256、257、264、265、266);
(p)C0120905(配列番号:273、274、275、282、283、284);
(q)C0120906(配列番号:291、292、293、300、301、302);
(r)C0120910(配列番号:309、310、311、318、319、320);
(s)C0120913(配列番号:327、328、329、336、337、338);
(t)C0120914(配列番号:345、346、347、354、355、356);
(u)C0120917(配列番号:363、364、365、372、373、374);
(v)C0120918(配列番号:381、382、383、390、391、392);
(w)C0120919(配列番号:399、400、401、408、409、410);
(x)C0120920(配列番号:417、418、419、426、427、428);
(y)C0120921(配列番号:435、436、437、444、445、446);
(z)C0120922(配列番号:453、454、455、462、463、464);
(aa)C0120923(配列番号:471、472、473、480、481、482);
(bb)C0120924(配列番号:489、490、491、498、499、500);
(cc)C0120925(配列番号:507、508、509、516、517、518);
(dd)C0120926(配列番号:525、526、527、534、535、536);
(ee)C0120927(配列番号:543、544、545、552、553、554);
(ff)C0120928(配列番号:561、562、563、570、571、572);
(gg)C0120929(配列番号:579、580、581、588、589、590)及び
(hh)C0120930(配列番号:597、598、599、606、607、608)
のCDRから選択され、CDRの配列はKabat命名法によって定義される、ヒト又はヒト化抗ヒトSEMA4A抗体。
【0016】
11.抗体が、
(a)5Hg1-5Lg1(配列番号:20及び29);
(b)5Hg1-5Lg2(配列番号:38及び47);
(c)5Hg2-5Lg1(配列番号:56及び65);
(d)5Hg2-5Lg2(配列番号:74及び83);
(e)5Hg2-5Lg3(配列番号:92及び101);
(f)5Hg2-5Lg5(配列番号:110及び119);
(g)5Hg2-5Lg6(配列番号:128及び137);
(h)5Hg4-5Lg1(配列番号:146及び155);
(i)5Hg4-5Lg2(配列番号:164及び173);
(j)5Hg4-5Lg4(配列番号:182及び191);
(k)5Hg4-5Lg5(配列番号:200及び209);
(l)5Hg5-5Lg2(配列番号:218及び227);
(m)C0120903(配列番号:236及び245);
(n)C0120904(配列番号:254及び263);
(o)C0120905(配列番号:272及び281);
(p)C0120906(配列番号:290及び299);
(q)C0120910(配列番号:308及び317);
(r)C0120913(配列番号:326及び335);
(s)C0120914(配列番号:344及び353);
(t)C0120917(配列番号:362及び371);
(u)C0120918(配列番号:380及び389);
(v)C0120919(配列番号:398及び407);
(w)C0120920(配列番号:416及び425);
(x)C0120921(配列番号:434及び443);
(y)C0120922(配列番号:452及び461);
(z)C0120923(配列番号:470及び479);
(aa)C0120924(配列番号:488及び497);
(bb)C0120925(配列番号:506及び515);
(cc)C0120926(配列番号:524及び533);
(dd)C0120927(配列番号:542及び551);
(ee)C0120928(配列番号:560及び569);
(ff)C0120929(配列番号:578及び587)及び
(gg)C0120930(配列番号:596及び605)
のVH及びVLから選択されるVH及びVLを含み、VH配列及びVL配列は、Kabat命名法によって定義される、条項10に記載の抗体。
【0017】
12.T細胞活性化部分に連結された条項10又は11のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【0018】
13.抗原結合ドメインが、条項10又は11のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の単鎖Fv(scFv)断片を含む、条項12記載のCAR。
【0019】
14.条項1~9のいずれか一項に記載のADC、又は条項10若しくは11のいずれか一項に記載の抗ヒトSEMA4A抗体、又は条項12及び13のいずれか一項に記載のCARと、希釈剤と、を含む組成物。
【0020】
15.
a.医薬品として使用するための、
b.癌を治療するための医薬品として使用するための、
c.血液癌の治療に使用するための、
d.多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び濾胞性リンパ腫(FL)から選択される血液癌の治療に使用するための、
e.癌の治療的処置のための医薬品の製造に使用するための、
f.血液癌の治療的処置のための医薬品の製造に使用するための、
g.MM、NHL、AML、DLBCL及びFLから選択される血液癌の治療的処置のための医薬品の製造に使用するための、又は
h.細胞表面にSEMA4Aを発現する細胞において細胞死を誘導するための、
条項1~9のいずれか一項に記載のADC、条項10又は11のいずれか一項に記載の抗体、条項12又は13のいずれか一項に記載のCAR、又は条項14に記載の組成物。
【0021】
16.条項1~9のいずれか一項に記載のADC、条項10又は11のいずれか一項に記載の抗体、条項12又は13のいずれか一項に記載のCAR、又は条項14に記載の組成物を対象に投与することを含む、血液癌、例えばMM、NHL、AML、DLBCL及びFLから選択される血液癌等の癌の治療方法。
【0022】
17.条項10又は条項11のいずれか一項に記載の抗体を、リンカーを介して細胞毒素にコンジュゲーションすることを含む、条項1~9のいずれか一項に記載のADCの製造方法。
【0023】
18.条項10又は11のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片をコードする配列を含む単離された組換えDNA又はRNA配列。
【0024】
19.ベクターである、条項18に記載の単離された組換えDNA配列。
【0025】
20.発現ベクターである、条項18又は条項19に記載の単離された組換えDNA配列。
【0026】
21.プロモータの制御下で、条項10又は11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする、条項18~20のいずれか一項に記載の単離された組換えDNA配列。
【0027】
22.条項18~21のいずれか一項に記載のDNA又はRNA配列を含む宿主細胞。
【0028】
23.条項10又は11のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片を発現することができる、条項22に記載の宿主細胞。
【0029】
24.条項10又は11に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、条項22又は23のいずれか一項に記載の宿主細胞を、単離された抗体又はその抗原結合断片の発現に適した条件下で培養することを含む方法。
【0030】
本発明は、細胞毒素にコンジュゲートしたヒトセマフォリン4A(SEMA4A)に対するヒト若しくはヒト化抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。本明細書で使用される「抗体-薬物コンジュゲート」という用語は、化学リンカーを介して細胞毒性薬(一般に、高い全身毒性を有する小分子薬物)に結合したヒト化若しくはヒトモノクローナル抗体(mAb)又はその抗原結合断片等の抗体を含む化合物を指す。いくつかの実施形態では、ADCは、リンカーを含有するように化学修飾された小分子細胞毒素を含み得る。次いで、リンカーを使用して、細胞毒素を抗体又はその抗原結合断片にコンジュゲートさせる。いくつかの実施形態では、細胞の表面上の標的抗原に結合すると、リンカーの切断又はタンパク質分解によって細胞毒素を放出することができ、次いで細胞毒素はその標的に結合し、細胞死を誘導することができる。
【0031】
本明細書に記載のADCは、全抗体又は抗体断片を含み得る。全抗体は、典型的には、4つのポリペプチド:2つの同一のコピーの重(H)鎖ポリペプチド及び2つの同一のコピーの軽(L)鎖ポリペプチドからなる。各重鎖は1つのN末端可変(VH)領域及び3つのC末端定常(CH1、CH2及びCH3)領域を含み、各軽鎖は1つのN末端可変(VL)領域及び1つのC末端定常(CL)領域を含む。軽鎖及び重鎖の各対の可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。VH及びVL領域は同じ一般構造を有し、各領域は4つのフレームワーク領域を含み、その配列は比較的保存されている。フレームワーク領域は、3つの相補性決定領域(CDR)によって連結されている。CDR1、CDR2及びCDR3として知られる3つのCDRは、抗原結合に関与する各可変ドメインの「超可変領域」を形成する。
【0032】
ADCは、ヒト化抗体又はヒト抗体の抗原結合断片を含み得る。「抗体断片」、「抗原結合断片」、「抗体の機能的断片」及び「抗原結合部」という用語は、本明細書では互換的に使用され、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片又は部分を指す。抗体断片は、例えば、1つ以上のCDR、可変領域(又はその一部)、又はそれらの組合せを、場合により定常領域(又はその一部)と更に組み合わせて含み得る。抗体断片の例としては、限定されないが、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片;(iv)2つのドメインが単一のポリペプチド鎖として合成されることを可能にする合成リンカーによって連結されたFv断片の2つのドメイン(すなわち、VL及びVH)からなる一価分子である単鎖Fv(scFv)、並びに(v)ポリペプチド鎖の二量体であるダイアボディが挙げられ、各ポリペプチド鎖は、同じポリペプチド鎖上のVHとVLとの間の対形成を可能にするには短すぎるペプチドリンカーによってVLに連結されたVHを含み、それにより、異なるVH-VLポリペプチド鎖上の相補的ドメイン間の対形成を駆動して、2つの機能的抗原結合部位を有する二量体分子を生成する。抗体断片は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許出願公開第2009/0093024A1号に更に詳細に記載されている。
【0033】
本発明のヒト化抗体を含む、又は本発明のヒト抗体を含む本発明のADCは、組換えヒトSEMA4A(UniProt ID Q9H3S1)に特異的に結合することができ、組換えカニクイザルSEMA4A(UniProt ID G7NV79)及び/又は組換えマウスSEMA4A(UniProt ID Q62178)にも結合し得る。
【0034】
一実施形態では、ADCは、ヒト化又は完全ヒト抗ヒトSEMA4A抗体の可変領域を含む。この点において、ADCは、抗ヒトSEMA4Aモノクローナル抗体の軽鎖可変領域、重鎖可変領域、又は軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方を含み得る。好ましくは、ADCは、抗ヒトSEMA4A抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む。「細胞毒素」及び「細胞毒性薬」という用語は、細胞の機能を阻害若しくは防止し、及び/又は細胞の破壊(細胞死)を引き起こし、及び/又は抗増殖効果を発揮する任意の分子を指す。ADCの細胞毒素又は細胞毒性薬は、当技術分野ではADCの「ペイロード」又は「弾頭(warhead)」とも呼ばれることが理解されよう。多数のクラスの細胞毒性薬は、ADC分子に潜在的な有用性を有することが当技術分野で知られており、本明細書に記載のADCに使用することができる。例示的なクラスの細胞毒性薬には、チューブリシン、メイタンシノイド、アウリスタチン、又はそれらの誘導体等の抗微小管剤が含まれる。より具体的には、細胞毒性薬は、例えば、MMAF、MMAE又はDM1、DM4であり得る。
【0035】
一実施形態では、細胞毒性薬は抗微小管剤であり得る。「抗微小管剤」及び「微小管標的化剤」という用語は同義であり、微小管を妨害することによって細胞分裂を阻害する薬剤を指す。チューブリシンは、チューブリン重合を阻害し、細胞周期停止及びアポトーシスをもたらす有糸分裂毒として作用する粘液細菌種(Sasse et al.,2000)から単離された天然産物のクラスのメンバーである(Steinmetz et al.,2004;Khalil et al.,2006;Kaur et al.,2006)。チューブリシンの例は、例えば、国際公開第2015/157594号、国際公開第2004/005326号、国際公開第2012/019123号、国際公開第2009/134279号、国際公開第2009/055562号、国際公開第2004/005327号;米国特許第7,776,841号、同第7,754,885号、及び同第7,816,377号;及び米国特許出願公開第2010/0240701号、同第2011/0021568号、及び同第2011/0263650号に開示されている。
【0036】
メイタンシノイドは、微小管タンパク質チューブリンの重合を阻害し、それによって微小管の形成を妨げる(例えば、米国特許第6,441,163号及びRemillard et al.,1975を参照されたい)。メイタンシノイドは、細胞培養モデルを使用してインビトロで、実験動物系を使用してインビボで腫瘍細胞増殖を阻害することが示されている。更に、メイタンシノイドの細胞傷害性は、例えば、メトトレキサート、ダウノルビシン、及びビンクリスチン等の従来の化学療法剤よりも1,000倍大きい(例えば、米国特許第5,208,020号を参照されたい)。メイタンシノイドには、メイタンシン、メイタンシノール、メイタンシノールのC-3エステル、並びに他のメイタンシノール類似体及び誘導体が含まれる(例えば、米国特許第5,208,020号及び同第6,441,163号を参照されたい)。メイタンシノールのC-3エステルは、天然に存在し得るか、又は合成的に誘導され得る。更に、天然に存在するC-3メイタンシノールエステルと合成C-3メイタンシノールエステルの両方は、単純なカルボン酸を有するC-3エステル、又はN-メチル-L-アラニンの誘導体を有するC-3エステルとして分類することができ、後者は前者よりも細胞毒性が高い。合成メイタンシノイド類似体も当技術分野で公知であり、例えば、Kupchan et al.,1978に記載されている。メイタンシノール並びにその類似体及び誘導体を生成する方法は、例えば、米国特許第4,151,042号に記載されている。本明細書に記載のADCに関連して使用され得るメイタンシノイドの例としては、N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシン(DM1)及びN2’-デアセチル-N2’-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM4)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
オーリスタチンは、忍容性の高い用量で実質的な前臨床活性を示した非常に強力な抗有糸分裂剤のクラスを表す(Law et al.,2006;Ma et al.,2006;Tse et al.,2006;Oflazoglu et al.,2008,Oflazoglu et al.,2008)。オーリスタチンADCは、現在、前臨床試験及び臨床試験において評価されている。本明細書に記載のADCに関連して使用され得るアウリスタチンの例としては、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)及び関連分子モノメチルアウリスタチンF(MMAF)が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Doronina et al.,2003;Doronina et al.,2006を参照されたい)。
【0038】
SEMA4Aヒト化抗体若しくはヒトモノクローナル抗体、又はその抗原結合断片は、部位特異的又は非部位特異的コンジュゲーション方法を含む、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して細胞毒素にコンジュゲートされ得る。抗体のための従来のコンジュゲーション戦略は、典型的には、ペイロードを抗体、その抗原結合断片に、リジン又はシステインを介してランダムに(すなわち、非特異的に)コンジュゲーションする確率論的に依拠する。したがって、いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、例えば、抗体又は抗体断片の部分的還元、続いてリンカー部分が結合した又は結合していない所望の薬剤との反応によって、細胞毒性薬にランダムにコンジュゲートされる。例えば、抗体又はその抗原結合断片は、ジチオスレイトール(DTT)又は類似の還元剤を使用して還元され得る。次いで、細胞毒性薬を、それに結合したリンカー部分の有無にかかわらず、ジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で、還元された抗体又は抗体断片にモル過剰で付加することができる。コンジュゲーション後、過剰の遊離システインを添加して未反応薬剤をクエンチすることができる。次いで、反応混合物を精製し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に緩衝液交換することができる。
【0039】
他の実施形態では、細胞毒性薬は、特異的反応性アミノ酸残基での部位特異的コンジュゲーション法を使用してSEMA4Aモノクローナル抗体にコンジュゲートされ、均一な化学量論を有する均一なADC調製物をもたらし得る。部位特異的コンジュゲーションは、システイン残基又は非天然アミノ酸を介するものであり得る。一実施形態では、細胞毒性薬は、少なくとも1つのシステイン残基を介して抗体又はその抗原結合断片にコンジュゲートされ得る。特に、例えば、細胞毒性薬は、SEMA4Aモノクローナル抗体のFc領域中の特定のKabat位置(Kabat et al.,1991)のアミノ酸の側鎖に化学的にコンジュゲートされ得る。これに関して、細胞毒性薬は、抗体のFc領域の任意の適切な位置のシステイン残基を介してSEMA4Aモノクローナル抗体にコンジュゲートされ得る。或いは、細胞毒性薬は、チオール-マレイミド結合を介して、例えばヒンジ及び重軽鎖におけるスルフヒドリル反応性基を介して等、SEMA4Aモノクローナル抗体又はその抗原結合断片にコンジュゲートされ得る。
【0040】
本明細書に記載されるSEMA4Aヒト化又はヒトモノクローナルADCは、それにコンジュゲートされた少なくとも1つの細胞毒素分子を含むが、SEMA4Aヒト化又はヒトモノクローナル抗体は、所望の治療効果を達成するために、それにコンジュゲートされた任意の適切な数の細胞毒素分子(例えば、1、2、3、4又はそれを超える細胞毒素分子)を含み得る。したがって、本発明のADCは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8の薬物-抗体比(DAR)を有し得る。DARは、ADCの所与の調製物の平均薬物(細胞毒素)対抗体比である。DARは、ADCの薬物負荷の尺度である。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明は、ADCとは無関係の上記のヒトSEMA4Aに対して向けられた、ヒト化若しくはヒトモノクローナル抗体、又はその抗原結合断片を提供する。
【0042】
本発明のヒト化及びヒト抗体、並びにそのような抗体を含むADC又はCARは、組換えヒトSEMA4A(UniProt ID Q9H3S1、配列番号613)に特異的に結合することができ、組換えカニクイザルSEMA4A(UniProt ID G7NV79、配列番号614)及び/又は組換えマウスSEMA4A(UniProt ID Q62178、配列番号615)にも結合し得る。
【0043】
ヒトSEMA4Aに対するヒト化抗体若しくはヒト抗体、又はその抗原結合断片は、ヒトSEMA4A又はそのエピトープに対する任意の適切な結合親和性を含み得る。「親和性」という用語は、2つの薬剤の可逆的結合の平衡定数を指し、解離定数(KD)として表される。目的の抗原又はエピトープに対する抗体又はその抗原結合断片の親和性は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して測定することができる。そのような方法としては、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore、ProteOn)、バイオレイヤー干渉法(BLI、例えばOctet)、速度論的排除アッセイ(例えば、KinExA)、分離可能ビーズ(例えば、磁気ビーズ)、抗原パニング、及び/又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(Janeway et al.,2001)が挙げられる。特定の抗体の結合親和性は、結合親和性を分析するために使用される方法に応じて変化することが当技術分野で公知である。
【0044】
リガンドに対する結合剤の親和性、例えば、エピトープに対する抗体の親和性は、例えば、約1nM~約100nMであり得る。一実施形態では、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、500、400、300、200又は100ナノモル(例えば、100nM、約90nM、約80nM、約70nM、約60nM、約50nM、約40nM、約30nM、約20nM、若しくは約10nM、又は前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)以下のKDでヒトSEMA4Aに結合し得る。別の実施形態では、モノクローナル抗体は、10ナノモル(例えば、約9nM、約8.5nM、約8nM、約7.5nM、約7nM、約6.5nM、約6nM、約5.5nM、約5nM、約4.5nM、約4nM、約3.5nM、約3nM、約2.5nM、約2nM、約1.5nM、約1nM、又は前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)以下のKDでヒトSEMA4Aに結合し得る。
【0045】
本発明のヒト化抗体又はヒト抗体の抗原結合部分又は断片は、その部分がヒトSEMA4Aに結合する限り、任意のサイズであり得る。
【0046】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、組換え手段によって産生され得る。「組換え抗体」は、組換え操作された宿主細胞によって産生された抗体である。本発明による抗体又はその抗原結合断片は、場合により単離又は精製される。「抗体」又は「抗体分子」という用語は、天然又は部分的若しくは完全に合成的に産生された免疫グロブリンを表す。本発明の抗原結合タンパク質は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体であり得、ヒト又は非ヒト、キメラ又はヒト化であり得る。
【0047】
抗体分子は、好ましくはモノクローナル抗体分子である。抗体の例は、免疫グロブリンG等の免疫グロブリンアイソタイプ、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4等のそれらのアイソタイプサブクラス、並びにそれらの断片である。4つのヒトサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)はそれぞれ異なる重鎖を含むが、それらは高度に相同的であり、主にヒンジ領域及びそれらが宿主免疫系を活性化する程度が異なる。IgG1及びIgG4はヒンジ領域に2つの鎖間ジスルフィド結合を含み、IgG2は4個の鎖間ジスルフィド結合を有し、IgG3は11個の鎖間ジスルフィド結合を有する。
【0048】
「抗体」及び「抗体分子」という用語は、本明細書で使用される場合、Fab及びscFv断片等の抗体断片を含み、ただし、当該断片はヒトSEMA4Aのエピトープに対するCDRベースの抗原結合部位を含む。抗体断片の例としては、Fv、Fab、F(ab’)、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv)及びドメイン抗体(sdAb)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、文脈上別段の要求がない限り、本明細書で使用される「抗原結合タンパク質」、「抗体」又は「抗体分子」という用語は、「抗体又はその抗原結合断片」と同等である。
【0049】
抗体は免疫グロブリンであり、2つのFabアームを形成する2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる同じ基本構造を有し、2つの重鎖及び2つの軽鎖は、柔軟なヒンジ領域によって抗体のステムに結合された同一のドメイン、Fcドメインを含み、古典的な「Y」形状を与える。Fabドメインは、2つの可変ドメイン及び2つの定常ドメインからなり、重鎖に可変重鎖(VH)ドメイン及び定常重鎖1(CH1)ドメインがあり、軽鎖に可変軽鎖(VL)ドメイン及び定常軽鎖(CL)ドメインがある。2つの可変ドメイン(VH及びVL)は、抗体のCDRベースの抗原特異性を提供する可変断片(Fv)を形成し、定常ドメイン(CH1及びVL)は構造フレームワークとして作用する。各可変ドメインは、相補性決定領域(CDR)として知られる3つの超可変ループを含む。VH及びVLドメインの各々において、3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)は、4つの可変性の低いフレームワーク(FW)領域(FW1、FW2、FW3、及びFW4)に隣接して、構造FW1-CDR1-FW2-CDR2-FW3-CDR3-FW4を与える。CDRは、抗体の表面上に特異的抗原認識部位を提供する。
【0050】
Kabat及びImMunoGeneTics(IMGT)ナンバリング命名法の両方を本明細書で使用することができる。一般に、別段示されない限り、アミノ酸残基は、本明細書ではKabatナンバリングスキームに従ってナンバリングされる(Kabat et al.,1991)。IMGTナンバリングスキームが使用される場合、アミノ酸残基は、Lefranc et al.,2005に記載のImMunoGeneTics(IMGT)ナンバリングスキームに従って本明細書でナンバリングされる。
【0051】
モノクローナル抗体及び他の抗体を使用し、組換えDNAテクノロジーの技術を使用して、一般に元の抗体の特異性を保持する他の抗体又はキメラ分子を産生することが可能である。そのような技術は、CDRを異なる免疫グロブリンフレームワークに導入すること、又は可変領域を異なる免疫グロブリン定常領域にグラフトすることを含み得る。ある免疫グロブリンのCDRの別の免疫グロブリンへの導入は、例えば欧州特許出願公開第A-184187号、英国特許出願公開第2188638A号又は欧州特許出願公開第A-239400号に記載されている。或いは、抗体分子を産生するハイブリドーマ又は他の細胞は、遺伝子変異又は他の変化を受けてもよく、産生された抗体の結合特異性を変化させてもさせなくてもよい。
【0052】
抗体ヒト化は、ヒト抗体フレームワークへの重要な非ヒトアミノ酸の移入又は「グラフト化」を含む。主に、これには、相補性決定領域(CDR)におけるアミノ酸のグラフト化が含まれるが、VH-VL界面及びCDRの配向にとって重要な他のフレームワークアミノ酸も含まれる可能性がある。ヒト化は、非ヒト親抗体の元の結合活性を保持しながら、免疫原性のリスクを低減するためにヒト含有量を導入しようとする。「ヒト化抗体」という用語は、別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を指すことを意図し、場合により、ヒトフレームワーク配列内で更なるフレームワーク領域修飾を行うことができる。「ヒト化抗体」という用語は、別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされ、例えばCDRの1つ以上及び/又は1つ以上のフレームワーク配列中の1つ以上のアミノ酸残基の改変によって(例えば親和性成熟によって)最適化されて、ヒト化抗体の生物学的特性を調節又は改善する、例えば親和性を増加させる、又は抗体のその標的エピトープへの結合のオン速度及び/又はオフ速度を調節する抗体を含む。
【0053】
本発明で使用される可変ドメインは、任意の生殖系列又は再編成されたヒト可変ドメインから得られるか若しくは誘導され得るか、又は既知のヒト可変ドメインのコンセンサス配列又は実際の配列に基づく合成可変ドメインであり得る。可変ドメインのレパートリは、適切な結合メンバーが選択され得るように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第92/01047号のファージディスプレイシステム、又はKay,Winter&McCafferty [Kay,B.K.,Winter,J.,and McCafferty,J.(1996)Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual,San Diego:Academic Press]を含むその後の大規模な文献のいずれか等の適切な宿主システムで表示され得る。他の適切な宿主系には、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、T7ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、細胞ディスプレイ、リボソームディスプレイ及び共有結合ディスプレイが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
抗体は多数の方法で修飾することができるので、「抗原結合タンパク質」又は「抗体」という用語は、天然又は全体的若しくは部分的に合成されているかどうかにかかわらず、免疫グロブリン結合ドメイン、アプタマー、アフィマー又は二環式ペプチドを含む任意のポリペプチドを含む、抗体の抗体断片、誘導体、機能的等価物及びホモログを包含すると解釈されるべきである。
【0055】
したがって、別のポリペプチドに融合された免疫グロブリン結合ドメイン又は等価物を含むキメラ分子が含まれる。キメラ抗体のクローニング及び発現は、欧州特許出願公開第A-0120694号及び欧州特許出願公開第A-0125023号に記載されている。
【0056】
CDR配列及びCH3ドメインの両方を含む抗体断片の例は、CH3ドメインに連結されたscFvを含むミニボディである(Hu et al.,1996)。
【0057】
ドメイン(単一ドメイン)抗体は、重鎖抗体又はIgGの一方の可変ドメイン(VH)を含む、通常約110アミノ酸長のペプチドである。単一ドメイン抗体(sdAb)(例えば、ナノボディ)は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片である。全抗体(2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む)と同様に、それは特定の抗原に選択的に結合することができる抗原結合タンパク質である。ドメイン抗体は、わずか12~15kDaの分子量を有し、したがって、二本のタンパク質重鎖及び二本の軽鎖で構成される抗体(150~160kDa)よりもはるかに小さく、ドメイン抗体は、Fab断片(約50kDa、1つの軽鎖及び半分の重鎖)並びに一本鎖可変断片(約25kDa、2つの可変ドメイン、一方は軽鎖由来、他方は重鎖由来)よりも更に小さい。単一ドメイン抗体は、ラクダ科動物に見られる重鎖抗体から操作されており、これらはVHH断片と呼ばれる。軟骨魚類はまた、重鎖抗体(IgNAR、「免疫グロブリン新規抗原受容体」)を有し、そこからVNAR断片と呼ばれる単一ドメイン抗体を得ることができる。ドメイン(単一ドメイン)抗体は、VH又はVLであり得る。ドメイン抗体は、ヒト又はマウス起源のVH又はVLであり得る。ほとんどの単一ドメイン抗体は重鎖可変ドメインであるが、軽鎖単一ドメイン抗体(VL)も標的エピトープに特異的に結合することが示されている。
【0058】
タンパク質足場は、比較的定義された三次元構造を有し、典型的には、抗原に結合することができる足場内の抗原結合領域を生成するために、特異的又はランダムなアミノ酸配列バリエーションに適した1つ以上の領域を含む。
【0059】
本発明のヒト化若しくはヒト抗体又は抗原結合断片は、ヒトSEMA4Aに特異的に結合する。「特異的」という用語は、抗体分子がその特異的結合パートナー、ここではヒトSEMA4Aのエピトープ以外の分子に有意な結合を示さない状況を指し得る。「特異的」という用語は、抗体が、多数の抗原によって担持されるヒトSEMA4Aのエピトープ等の特定のエピトープに特異的である場合にも適用可能であり、その場合、抗体分子は、エピトープを担持する様々な抗原に結合することができる。エピトープは、細胞表面上に発現されたヒトSEMA4A又は細胞表面から脱落した若しくは組換え発現された可溶性SEMA4A(sSEMA4A)中に存在し得る。いくつかの実施形態では、本発明のヒト化若しくはヒト抗体又は抗原結合断片は、ヒトSEMA4Aに特異的に結合し、カニクイザル及び/又はマウスSEMA4Aに結合し、したがって、本発明のヒト化若しくはヒト抗体又は抗原結合断片は、ヒトSEMA4Aに特異的に結合し得、カニクイザル及び/又はマウスSEMA4Aと交差反応性であり得る。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、ヒト化抗体及びその抗原結合断片は、マウス5E3(配列番号3、4、5、12、13及び14)の6つのCDRのセット及びヒトフレームワーク配列を含む、マウス5E3 mAb(カタログ番号:148402、BioLegend,Inc.、USA)のヒト化バージョンである。
【0061】
本発明のいくつかの態様では、本発明のヒト化抗体及びヒト抗体並びにそれらの抗原結合断片は、マウス5E3 mAb(カタログ番号:148402、BioLegend,Inc.、USA)によって結合されたエピトープに結合するか、又はSEMA4A、好ましくはヒトSEMA4A上のエピトープへの結合についてマウスmAb 5E3と競合する。
【0062】
アミノ酸は、それらの1文字若しくは3文字コードによって、又はそれらの完全名によって参照され得る。20個の標準アミノ酸のそれぞれの1及び3文字コード並びに完全名を以下の表1に示す。
【0063】
【0064】
好ましい実施形態では、本発明は、
a)5E3(配列番号:3、4、5、12、13、14);
b)5Hg1-5Lg1(配列番号:21、22、23、30、31、32);
c)5Hg1-5Lg2(配列番号:39、40、41、48、49、50);
d)5Hg2-5Lg1(配列番号:57、58、59、66、67、68);
e)5Hg2-5Lg2(配列番号:75、76、77、84、85、86);
f)5Hg2-5Lg3(配列番号:93、94、95、102、103、104);
g)5Hg2-5Lg5(配列番号:111、112、113、120、121、122);
h)5Hg2-5Lg6(配列番号:129、130、131、138、139、140);
i)5Hg4-5Lg1(配列番号:147、148、149、156、157、158);
j)5Hg4-5Lg2(配列番号:165、166、167、174、175、176);
k)5Hg4-5Lg4(配列番号:183、184、185、192、193、194);
l)5Hg4-5Lg5(配列番号:201、202、203、210、211、212);
m)5Hg5-5Lg2(配列番号:219、220、221、228、229、230);
n)C0120903(配列番号:237、238、239、246、247、248);
o)C0120904(配列番号:255、256、257、264、265、266);
p)C0120905(配列番号:273、274、275、282、283、284);
q)C0120906(配列番号:291、292、293、300、301、302);
r)C0120910(配列番号:309、310、311、318、319、320);
s)C0120913(配列番号:327、328、329、336、337、338);
t)C0120914(配列番号:345、346、347、354、355、356);
u)C0120917(配列番号:363、364、365、372、373、374);
v)C0120918(配列番号:381、382、383、390、391、392);
w)C0120919(配列番号:399、400、401、408、409、410);
x)C0120920(配列番号:417、418、419、426、427、428);
y)C0120921(配列番号:435、436、437、444、445、446);
z)C0120922(配列番号:453、453、455、462、463、464);
aa)C0120923(配列番号:471、472、473、480、481、482);
bb)C0120924(配列番号:489、490、491、498、499、500);
cc)C0120925(配列番号:507、508、509、516、517、518);
dd)C0120926(配列番号:525、526、527、534、535、536);
ee)C0120927(配列番号:543、544、545、552、553、554);
ff)C0120928(配列番号:561、562、563、570、571、572);
gg)C0120929(配列番号:579、580、581、588、589、590)及び
hh)C0120930(配列番号:597、598、599、606、607、608)
から選択されるクローンの6つのCDR HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のセットを含むヒト化抗体若しくはヒト抗体又はその抗原結合断片を提供し、
ここで、CDRはKabatに従って定義される。
【0065】
各クローンについて、CDRは、フレームワーク領域FW1、FW2、FW3及びFW4によって離間されて、FW1-CDR1-FW2-CDR2-FW3-CDR3-FW4の形式の構造を与える。
【0066】
本発明は、
a)5Hg1-5Lg1(配列番号:20及び29);
b)5Hg1-5Lg2(配列番号:38及び47);
c)5Hg2-5Lg1(配列番号:56及び65);
d)5Hg2-5Lg2(配列番号:74及び83);
e)5Hg2-5Lg3(配列番号:92及び101);
f)5Hg2-5Lg5(配列番号:110及び119);
g)5Hg2-5Lg6(配列番号:128及び137);
h)5Hg4-5Lg1(配列番号:146及び155);
i)5Hg4-5Lg2(配列番号:164及び173);
j)5Hg4-5Lg4(配列番号:182及び191);
k)5Hg4-5Lg5(配列番号:200及び209);
l)5Hg5-5Lg2(配列番号:218及び227);
m)C0120903(配列番号:236及び245);
n)C0120904(配列番号:254及び263);
o)C0120905(配列番号:272及び281);
p)C0120906(配列番号:290及び299);
q)C0120910(配列番号:308及び317);
r)C0120913(配列番号:326及び335);
s)C0120914(配列番号:344及び353);
t)C0120917(配列番号:362及び371);
u)C0120918(配列番号:380及び389);
v)C0120919(配列番号:398及び407);
w)C0120920(配列番号:416及び425);
x)C0120921(配列番号:434及び443);
y)C0120922(配列番号:452及び461);
z)C0120923(配列番号:470及び479);
aa)C0120924(配列番号:488及び497);
bb)C0120925(配列番号:506及び515);
cc)C0120926(配列番号:524及び533);
dd)C0120927(配列番号:542及び551);
ee)C0120928(配列番号:560及び569);
ff)C0120929(配列番号:578及び587);並びに
gg)C0120930(配列番号:596及び605);
から選択されるクローンのVH及び/又はVL配列を含むヒト抗体若しくはヒト化抗体又はその抗原結合断片を提供し、
ここで、配列はKabatに従って定義される。
【0067】
いくつかの例では、抗体を生殖細胞系のために選択した。抗体のVH及びVLドメインのアミノ酸配列を、IMGT(ImMunoGeneTics;www.imgt.org)又はImmuneDiscoverデータベースを介してアクセス可能なヒト生殖系列V、D及びJ領域と比較し、最も近い生殖系列を配列類似性によって同定した。生殖系列化プロセスは、VH及びVLドメイン中のフレームワーク残基を最も近い生殖系列配列に戻して、ヒト抗体と同一にマッチさせることからなっていた。
【0068】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、抗体の機能的特性が保持されている限り、VH及び/又はVL配列中に1つ以上、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の更なるアミノ酸修飾を含み得る。
【0069】
修飾は、アミノ酸の置換、欠失又は挿入であり得、好ましくは、修飾は置換である。1つ以上のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている好ましい実施形態では、置換は、例えば表2による保存的置換であり得る。いくつかの実施形態では、中央の列の同じカテゴリーのアミノ酸は互いに置換されており、すなわち、例えば、非極性アミノ酸は別の非極性アミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、右端の列の同じ行のアミノ酸は、互いに置換されている。
【0070】
【0071】
いくつかの実施形態では、置換は機能的に保存的であり得る。すなわち、いくつかの実施形態では、置換は、等価な非置換抗体分子と比較して、置換を含む抗体分子の1つ以上の機能的特性(例えば、結合親和性)に影響を及ぼさない(又は実質的に影響を及ぼさない)場合がある。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載の本発明のVH及び/又はVL配列と比較して、1つ以上のアミノ酸配列変化(アミノ酸残基の付加、欠失、置換及び/又は挿入)、好ましくは20個又はそれ未満の変化、15個又はそれ未満の変化、10個又はそれ未満の変化、5個又はそれ未満の変化、4個又はそれ未満の変化、3個又はそれ未満の変化、2個又はそれ未満の変化、又は1個の変化を有するVH及び/又はVLドメイン配列を含み得る。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明は、Kabat命名法によって定義されている場合、
a)5E3(配列番号:2及び11);
b)5Hg1-5Lg1(配列番号:20及び29);
c)5Hg1-5Lg2(配列番号:38及び47);
d)5Hg2-5Lg1(配列番号:56及び65);
e)5Hg2-5Lg2(配列番号:74及び83);
f)5Hg2-5Lg3(配列番号:92及び101);
g)5Hg2-5Lg5(配列番号:110及び119);
h)5Hg2-5Lg6(配列番号:128及び137);
i)5Hg4-5Lg1(配列番号:146及び155);
j)5Hg4-5Lg2(配列番号:164及び173);
k)5Hg4-5Lg4(配列番号:182及び191);
l)5Hg4-5Lg5(配列番号:200及び209);
m)5Hg5-5Lg2(配列番号:218及び227);
n)C0120903(配列番号:236及び245);
o)C0120904(配列番号:254及び263);
p)C0120905(配列番号:272及び281);
q)C0120906(配列番号:290及び299);
r)C0120910(配列番号:308及び317);
s)C0120913(配列番号:326及び335);
t)C0120914(配列番号:344及び353);
u)C0120917(配列番号:362及び371);
v)C0120918(配列番号:380及び389);
w)C0120919(配列番号:398及び407);
x)C0120920(配列番号:416及び425);
y)C0120921(配列番号:434及び443);
z)C0120922(配列番号:452及び461);
aa)C0120923(配列番号:470及び479);
bb)C0120924(配列番号:488及び497);
cc)C0120925(配列番号:506及び515);
dd)C0120926(配列番号:524及び533);
ee)C0120927(配列番号:542及び551);
ff)C0120928(配列番号:560及び569);
gg)C0120929(配列番号:578及び587);及び
hh)C0120930(配列番号:596及び605);
から選択されるクローンのVH及び/又はVLアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH及び/又はVLドメインを含むヒト化若しくはヒト抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のヒト化抗体若しくはヒト抗体又はその抗原結合断片は、
(a)5E3(配列番号:3、4、5、12、13、14);
(b)5Hg1-5Lg1(配列番号:21、22、23、30、31、32);
(c)5Hg1-5Lg2(配列番号:39、40、41、48、49、50);
(d)5Hg2-5Lg1(配列番号:57、58、59、66、67、68);
(e)5Hg2-5Lg2(配列番号:75、76、77、84、85、86);
(f)5Hg2-5Lg3(配列番号:93、94、95、102、103、104);
(g)5Hg2-5Lg5(配列番号:111、112、113、120、121、122);
(h)5Hg2-5Lg6(配列番号:129、130、131、138、139、140);
(i)5Hg4-5Lg1(配列番号:147、148、149、156、157、158);
(j)5Hg4-5Lg2(配列番号:165、166、167、174、175、176);
(k)5Hg4-5Lg4(配列番号:183、184、185、192、193、194);
(l)5Hg4-5Lg5(配列番号:201、202、203、210、211、212);
(m)5Hg5-5Lg2(配列番号:219、220、221、228、229、230);
(n)C0120903(配列番号:237、238、239、246、247、248);
(o)C0120904(配列番号:255、256、257、264、265、266);
(p)C0120905(配列番号:273、274、275、282、283、284);
(q)C0120906(配列番号:291、292、293、300、301、302);
(r)C0120910(配列番号:309、310、311、318、319、320);
(s)C0120913(配列番号:327、328、329、336、337、338);
(t)C0120914(配列番号:345、346、347、354、355、356);
(u)C0120917(配列番号:363、364、365、372、373、374);
(v)C0120918(配列番号:381、382、383、390、391、392);
(w)C0120919(配列番号:399、400、401、408、409、410);
(x)C0120920(配列番号:417、418、419、426、427、428);
(y)C0120921(配列番号:435、436、437、444、445、446);
(z)C0120922(配列番号:453、453、455、462、463、464);
(aa)C0120923(配列番号:471、472、473、480、481、482);
(bb)C0120924(配列番号:489、490、491、498、499、500);
(cc)C0120925(配列番号:507、508、509、516、517、518);
(dd)C0120926(配列番号:525、526、527、534、535、536);
(ee)C0120927(配列番号:543、544、545、552、553、554);
(ff)C0120928(配列番号:561、562、563、570、571、572);
(gg)C0120929(配列番号:579、580、581、588、589、590)及び
(hh)C0120930(配列番号:597、598、599、606、607、608)
から選択されるクローンのHCDRのセット:HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHドメインアミノ酸配列、及び/又はクローンのLCDRのセット:LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLドメインアミノ酸配列を含み、
ここで、CDRはKabatに従って定義され、VH及び/又はVLドメインは、Kabat命名法によって定義されている場合、
a.5E3(配列番号:2及び11);
b.5Hg1-5Lg1(配列番号:20及び29);
c.5Hg1-5Lg2(配列番号:38及び47);
d.5Hg2-5Lg1(配列番号:56及び65);
e.5Hg2-5Lg2(配列番号:74及び83);
f.5Hg2-5Lg3(配列番号:92及び101);
g.5Hg2-5Lg5(配列番号:110及び119);
h.5Hg2-5Lg6(配列番号:128及び137);
i.5Hg4-5Lg1(配列番号:146及び155);
j.5Hg4-5Lg2(配列番号:164及び173);
k.5Hg4-5Lg4(配列番号:182及び191);
l.5Hg4-5Lg5(配列番号:200及び209);
m.5Hg5-5Lg2(配列番号:218及び227);
n.C0120903(配列番号:236及び245);
o.C0120904(配列番号:254及び263);
p.C0120905(配列番号:272及び281);
q.C0120906(配列番号:290及び299);
r.C0120910(配列番号:308及び317);
s.C0120913(配列番号:326及び335);
t.C0120914(配列番号:344及び353);
u.C0120917(配列番号:362及び371);
v.C0120918(配列番号:380及び389);
w.C0120919(配列番号:398及び407);
x.C0120920(配列番号:416及び425);
y.C0120921(配列番号:434及び443);
z.C0120922(配列番号:452及び461);
aa.C0120923(配列番号:470及び479);
bb.C0120924(配列番号:488及び497);
cc.C0120925(配列番号:506及び515);
dd.C0120926(配列番号:524及び533);
ee.C0120927(配列番号:542及び551);
ff.C0120928(配列番号:560及び569);
gg.C0120929(配列番号:578及び587);並びに
hh.C0120930(配列番号:596及び605)
から選択されるクローンの配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0075】
配列同一性は、アルゴリズムGAP(Wisconsin GCG package、Accelerys Inc、San Diego USA)を参照して一般に定義される。GAPは、Needleman及びWunschアルゴリズムを使用して2つの完全な配列を整列させ、マッチ数を最大化し、ギャップの数を最小化する。一般に、デフォルトパラメータが使用され、ギャップ生成ペナルティは12であり、ギャップ拡張ペナルティは4と同等である。GAPの使用が好ましいかもしれないが、他のアルゴリズム、例えば、BLAST(Altschul et al.,1990の方法を使用する)、FASTA(Pearson and Lipman 1988の方法を使用する)、又はSmith-Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman 1981)、又は一般にデフォルトパラメータを使用する上記のAltschul et al.,(1990)のTBLASTNプログラムを使用することができる。特に、psi-Blastアルゴリズムを使用することができる(Altschul et al.,1997)。配列アラインメントは、CLUSTAL(W)アルゴリズムを使用して行うこともできる。
【0076】
抗体はCH2ドメインを含み得る。CH2ドメインは、好ましくは、ヒトIgG分子の場合のように、CH3ドメインのN末端に位置する。抗体のCH2ドメインは、好ましくはヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のCH2ドメイン、より好ましくはヒトIgG1のCH2ドメインである。ヒトIgGドメインの配列は、当技術分野で公知である。
【0077】
抗体は、CH2ドメインのN末端に免疫グロブリンヒンジ領域又はその一部を含み得る。免疫グロブリンヒンジ領域は、2つのCH2-CH3ドメイン配列が会合し、二量体を形成することを可能にする。好ましくは、ヒンジ領域又はその一部は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4ヒンジ領域又はその一部である。より好ましくは、ヒンジ領域、又はその一部は、IgG1ヒンジ領域、又はその一部である。
【0078】
CH3ドメインの配列は特に限定されない。好ましくは、CH3ドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 CH3ドメイン等のヒト免疫グロブリンGドメイン、最も好ましくはヒトIgG1 CH3ドメインである。
【0079】
本発明の抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4定常領域を含み得る。ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 CH3ドメインの配列は、当技術分野で公知である。本発明の抗体は、ヒトIgG定常領域、例えばヒトIgG1定常領域を含み得る。本発明の抗体は、リンカー及び細胞毒素とのコンジュゲーションを可能にするように修飾されたヒトIgG Fcを含み得る。
【0080】
本発明の抗体は、Dimasi et al.,2017;Li et al.,2016及びGallagher et al.,2019(例えば、それぞれCH2及びCH3 Fcドメインに239iCys及びS442C(EUナンバリング)を有するヒトIgG1重鎖)に記載されているような制御された様式でリンカーを介した抗体への細胞毒素のコンジュゲーションを可能にする1つ以上、例えば2つの部位特異的な操作されたシステインを含有するように操作されたヒトIgG重鎖、例えばヒトIgG1重鎖を含んで、4の薬物対抗体比を生成し得る(ヒトIgG1 Alya)。本発明の抗体は、ヒトラムダ軽鎖定常ドメイン又はヒトカッパ軽鎖定常ドメインを含み得る。
【0081】
本発明の抗体は、エフェクター機能を有するヒトIgG Fcを含み得る。
【0082】
Fc受容体(FcR)は、細胞エフェクター機能に対する抗体媒介(体液性)免疫応答をつなぐ重要な免疫調節受容体である。FcγR(IgG)、FcεRI(IgE)、FcαRI(IgA)、FcμR(IgM)及びFcδR(IgD)を含む全てのクラスの免疫グロブリンの受容体が同定されている。白血球上に見られるヒトIgGの受容体には、CD64(FcγRI)、CD32(FcγRIIa、FcγRIIb及びFcγRIIc)並びにCD16(FcγRIIIa及びFcγRIIIb)の3つのクラスがある。FcγRIは高親和性受容体(ナノモル範囲の親和性)に分類されるが、FcγRII及びFcγRIIIは低~中程度の親和性(マイクロモル範囲の親和性)である。
【0083】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)では、エフェクター細胞(ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球及び好酸球)の表面上のFcγRは、それ自体が標的細胞に結合しているIgGのFc領域に結合する。結合すると、標的細胞の破壊に介在する溶解酵素、パーフォリン、グランザイム及び腫瘍壊死因子等の様々な物質の分泌をもたらすシグナル伝達経路が引き起こされる。ADCCエフェクター機能のレベルは、特定のIgGサブタイプに応じて異なる。バリエーションのレベルはアロタイプ及び特異的FcγRに依存するが、簡単に言えば、ADCCエフェクター機能はヒトIgG1及びIgG3では高く、IgG2及びIgG4では低い。効力の低下にランク付けされたエフェクター機能のIgGサブタイプバリエーションについては、以下の表3を参照されたい。
【0084】
【0085】
FcγRは、ヒンジ及び上部CH2領域を横切って非対称的にIgGに結合する。結合部位の知識は、IgGエフェクター機能を調節するための工学的努力をもたらした。
【0086】
本発明の抗体は、エフェクター機能、増強されたエフェクター機能又は低減されたエフェクター機能を有するFcを有し得る。
【0087】
抗体の効力は、ADCC及び抗体依存性細胞媒介食作用(ADCP)等の細胞傷害機能を媒介する能力の増強によって増加させることができる。Fcドメイン内の多数の突然変異は、Fc受容体の結合を直接的又は間接的に増強し、細胞傷害性を有意に増強することが同定されている:突然変異S239D/A330L/I332E(「3M」)、F243L又はG236A。或いは、エフェクター機能の増強は、Fcドメインのグリコシル化を修飾することによって達成することができ、FcγRはCH2ドメイン上の炭水化物と相互作用し、グリカン組成物はエフェクター機能活性に実質的な効果を有する。アフコシル化(非フコシル化)抗体は、FcγRIIIaへの結合の増加を通してADCC活性の大幅な向上を示す。
【0088】
ADCC及びCDCの活性化は、いくつかの治療用抗体にとって望ましい場合があるが、いくつかの実施形態では、エフェクター機能を活性化しない抗体が好ましい。
【0089】
エフェクター機能を欠くため、IgG4抗体は、細胞枯渇を伴わない受容体遮断のための好ましいIgGサブクラスである。しかしながら、IgG4分子は、Fabアーム交換と呼ばれる動的プロセスで半分子を交換することができる。この現象は、治療用抗体と内因性IgG4との間で起こり得る。S228P変異は、Fabアーム交換の傾向が低下したIgG4抗体の設計を可能にするこの組換えプロセスを妨げることが示されている。
【0090】
Fc操作アプローチは、IgG1 FcドメインとFcγ受容体及びC1qとの重要な相互作用部位を決定し、次いでこれらの位置を変異させて結合を低減又は消失させるために使用されてきた。アラニンスキャニングにより、ヒンジ及びFcドメインの上部CH2を覆う領域へのC1qの結合部位を同定した。本発明の抗体又は断片のCH2ドメインは、1つ以上のFcγR、例えばFcγRI、FcγRlla、FcγRllb、FcγRIII及び/又は補体へのCH2ドメインの結合を減少させるか又は消失させるための1つ以上の変異を含み得る。ヒトIgGドメインのCH2ドメインは、通常、FcγR及び補体に結合し、FcγRへの結合の減少は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を減少させると予想され、補体への結合の減少は、抗体分子の補体依存性細胞傷害(CDC)活性を減少させると予想される。1つ以上のFcγR及び/又は補体へのCH2ドメインの結合を減少させるか又は消失させる変異は、当技術分野で公知である。本発明の抗体分子は、FcγR及びC1q結合をほぼ完全に無効にする修飾K322A/L234A/L235A又はL234F/L235E/P331S(「TM」)を有するFcを含み得る。本発明の抗体分子は、CH2ドメインを含み得、CH2ドメインは、EU位置234及び235(IMGTナンバリングで位置1.3及び1.2)にアラニン残基を含む(「LALA変異」)。更に、補体活性化及びADCCは、P329(EUナンバリングに従う位置)の、例えばP329A又はP329Gのいずれかへの突然変異によって減少させることができる。本発明の抗体分子は、CH2ドメインを含み得、CH2ドメインは、EU位置234及び235(IMGTナンバリングで位置1.3及び1.2)にアラニン残基を含み、EU位置329(IMGTナンバリングで位置114)にアラニン(LALA-PA)又はグリシン(LALA-PG)を含む。追加的又は代替的に、本発明の抗体分子は、EU位置297(IMGT番号付けによる位置84.4)にアラニン、グルタミン又はグリシンを含み得る。
【0091】
最適なFcγR相互作用に必要であることが知られているFcドメインのアスパラギン297上のグリコシル化の修飾は、FcγRへの結合の喪失をもたらし得、N297点変異でFcγRへの結合の喪失が観察された。本発明の抗体分子は、N297A、N297G又はN297Q変異を有するFcを含み得る。アグリコシルFcドメインを有する本発明の抗体分子は、酵素的脱グリコシル化によって、グリコシル化阻害剤の存在下での組換え発現によって、又は細菌におけるFcドメインの発現後に得ることができる。
【0092】
IgGは、FcRnが介在する再利用のために血清中で長期間自然に存続し、IgGに約21日の典型的な半減期を与える。半減期は、FcドメインとFcRnとのpH依存性相互作用を操作して、pH7.4で最小の結合を保持しながらpH6.0で親和性を増加させることによって延長することができる。T250Q/M428Lバリアントは、IgG半減期の約2倍の増加を与え(アカゲザルで評価)、一方、M252Y/S254T/T256Eバリアント(「YTE」)は、IgG半減期の約4倍の増加を与えた(カニクイザルで評価)。半減期を延長することにより、有効性を維持又は改善しながら、投与頻度を減少させる可能性が可能になり得る。
【0093】
免疫グロブリンは、多数の異なる方法で組み合わせて、多重特異性、例えば二重特異性、三重特異性、又は四重特異性抗体フォーマットを作成することができる、離散ドメインを含むモジュール構造を有することが知られている。例示的な多重特異性抗体フォーマットは、例えば、Spiess et al.,2015;Kontermann 2012に記載される。本発明の抗体は、このような多重特異性フォーマットで使用され得る。
【0094】
本発明は、競合アッセイで評価した場合に、エピトープを含む単離された組換えヒトSEMA4A(配列番号613)ペプチドへの結合について、本明細書に記載の本発明の抗体(例えば、Kabat命名法によって定義される場合、5E3(配列番号3、4、5、12、13、14)のHCDR及びLCDRのセットを含む)及び/又はクローン5E3のVH及びVLアミノ酸配列のヒト化バリアント(配列番号2及び11)と競合することができるヒト化若しくはヒト抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0095】
本発明は、
a.5E3(配列番号2及び11)
b.5Hg1-5Lg1(配列番号:20及び29);
c.5Hg1-5Lg2(配列番号:38及び47);
d.5Hg2-5Lg1(配列番号:56及び65);
e.5Hg2-5Lg2(配列番号:74及び83);
f.5Hg2-5Lg3(配列番号:92及び101);
g.5Hg2-5Lg5(配列番号:110及び119);
h.5Hg2-5Lg6(配列番号:128及び137);
i.5Hg4-5Lg1(配列番号:146及び155);
j.5Hg4-5Lg2(配列番号:164及び173);
k.5Hg4-5Lg4(配列番号:182及び191);
l.5Hg4-5Lg5(配列番号:200及び209);
m.5Hg5-5Lg2(配列番号:218及び227);
n.C0120903(配列番号:236及び245);
o.C0120904(配列番号:254及び263);
p.C0120905(配列番号:272及び281);
q.C0120906(配列番号:290及び299);
r.C0120910(配列番号:308及び317);
s.C0120913(配列番号:326及び335);
t.C0120914(配列番号:344及び353);
u.C0120917(配列番号:362及び371);
v.C0120918(配列番号:380及び389);
w.C0120919(配列番号:398及び407);
x.C0120920(配列番号:416及び425);
y.C0120921(配列番号:434及び443);
z.C0120922(配列番号:452及び461);
aa.C0120923(配列番号:470及び479);
bb.C0120924(配列番号:488及び497);
cc.C0120925(配列番号:506及び515);
dd.C0120926(配列番号:524及び533);
ee.C0120927(配列番号:542及び551);
ff.C0120928(配列番号:560及び569);
gg.C0120929(配列番号:578及び587);並びに
hh.C0120930(配列番号:596及び605)
から選択されるクローンを有する、エピトープを含む単離された組換えヒトSEMA4A(配列番号613)ペプチドへの結合について競合することができるヒト化抗体若しくはヒト抗体又はその抗原結合断片を提供し、
ここで、配列はKabat命名法に従って定義され、結合についての競合は競合アッセイで評価される。
【0096】
競合アッセイは、ELISA、均一時間分解蛍光(HTRF)、フローサイトメトリ、蛍光マイクロボリュームアッセイ技術(FMAT)アッセイ、Mirrorball、高含有量イメージングベースの蛍光イムノアッセイ、放射性リガンド結合アッセイ、バイオレイヤー干渉法(BLI)、表面プラズモン共鳴(SPR)及び熱シフトアッセイ等のイムノアッセイを含む細胞ベース及び無細胞結合アッセイから選択され得る。
【0097】
参照抗体と同じエピトープ又は重複するエピトープに結合する抗体とは、競合アッセイにおいて、その結合パートナー(例えば、抗原又は「標的」)に対する参照抗体の結合を50%以上遮断する抗体を指し、及び/又は逆に、競合アッセイにおいて、その結合パートナーに対する抗体の結合を50%以上遮断する抗体を指す。そのような抗体は、目的のエピトープへの結合について競合すると言われる。抗体は、参照抗体のエピトープと同じエピトープ又は重複するエピトープに結合することによって競合し得る。
【0098】
本発明の実施形態では、本明細書に記載の抗ヒト-SEMA4Aヒト化抗体又はヒト抗体を使用して抗体一本鎖可変断片を生成することができ、次いでこれを使用してキメラ抗原受容体(CAR)を調製することができる。抗体一本鎖可変断片は、短いリンカーペプチドによって連結された免疫グロブリンの軽鎖(VL)及び重鎖(VH)から構成されるキメラタンパク質である。いくつかの実施形態では、VL領域とVH領域との間のリンカーは、柔軟性を付与するグリシン及びセリン、並びに溶解性を付与するグルタマート及びリジンを含む親水性残基からなる。いくつかの態様では、抗体一本鎖可変断片は、典型的には膜貫通ドメインを介して細胞内免疫細胞シグナル伝達ドメインに共有結合してCARを作製することができる。免疫細胞シグナル伝達ドメインは、T細胞、NK細胞、マクロファージ、及び/又は骨髄細胞ドメインであり得る。
【0099】
抗ヒト-SEMA4Aヒト化又はヒト抗体一本鎖可変断片は、例えば膜貫通ドメインを介して細胞内T細胞シグナル伝達又は活性化ドメインに共有結合してCARを作製し得る。CARがT細胞において発現される場合、これは、T細胞に、SEMA4A、特にヒトSEMA4Aを標的化する能力を提供する。したがって、本発明は、血液癌、例えばMM、NHL、AML、DLBCL又はFL患者を治療するために使用するための、SEMA4A、特にヒトSEMA4Aに特異的に結合する、本明細書に記載の抗体の抗ヒトSEMA4A抗体一本鎖可変断片を含むCARを含むCAR T細胞を提供し、血液癌、例えば、MM、NHL、AML、DLBCL又はFLを有する患者を治療する方法は、そのようなCAR T細胞を、治療を必要とする患者に投与することを含み得る。
【0100】
CARの膜貫通ドメインは、CARを原形質膜に固定する細胞膜にまたがる疎水性アルファヘリックスを含み得、細胞外抗原認識ドメイン(すなわち、ヒト化又はヒト抗体一本鎖可変断片)を細胞内シグナル伝達領域と架橋する。CARは、抗原認識ドメインと膜貫通ドメインとの間にヒンジ領域を更に含み得る。ヒンジは、scFvの柔軟性を高め、CARとその標的抗原であるSEMA4Aとの間の空間的制約を低減するのに役立ち得る。ヒンジ配列は、IgG、CD8、及びCD28等の免疫分子からの膜近位領域に基づき得る。本開示のCARは、CARエンドドメイン成分としてCD3-ゼータ細胞質ドメインを含み得る。T細胞は、活性化後に持続するためにCD3シグナル伝達に加えて共刺激分子を必要とする。CARのエンドドメインは、共刺激タンパク質由来の1つ以上のキメラドメインを含み得る。多種多様な共刺激分子からのシグナル伝達ドメインは首尾よく試験されており、CD28、CD27、CD134(OX40)及びCD137から選択され得る。CAR受容体のエンドドメインは、T細胞活性を増強するための共刺激ドメインを含み得、共刺激ドメインは、CD28又は4-1BB、CD28-4-1BB又はCD28-OX40、及びサイトカイン、例えばIL-2、IL-5、及びIL-12のものから選択され得る。
【0101】
本発明はまた、本発明の抗体又は抗原結合断片をコードする核酸又は核酸セット、並びにそのような核酸又は核酸セットを含むベクターを提供する。
【0102】
核酸が本発明の抗体分子のVH及びVLドメイン又は重鎖及び軽鎖をコードする場合、2つのドメイン又は鎖は、同じ又は別個の核酸分子上にコードされ得る。
【0103】
単離された核酸分子は、本発明の抗体分子を発現するために使用され得る。核酸は、一般に、発現のための組換えベクターの形態で提供される。したがって、本発明の別の態様は、上記の核酸を含むベクターを提供する。プロモータ配列、ターミネータ断片、ポリアデニル化配列、エンハンサ配列、マーカ遺伝子及び必要に応じて他の配列を含む適切な調節配列を含む適切なベクターを選択又は構築することができる。好ましくは、ベクターは、宿主細胞における核酸の発現を駆動するための適切な調節配列を含む。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、例えばウイルス、ファージ又はファージミドであり得る。
【0104】
本明細書に記載される核酸分子又はベクターは、宿主細胞に導入され得る。核酸又はベクターを宿主細胞に導入するための技術は、当技術分野で十分に確立されており、任意の適切な技術を使用することができる。組換え抗体分子の産生に適した宿主細胞の範囲は当技術分野で公知であり、細菌、酵母、昆虫又は哺乳動物宿主細胞が含まれる。好ましい宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えばCHO、NS0、又はHEK細胞、例えばHEK293細胞である。
【0105】
本発明の核酸又はベクターを含む組換え宿主細胞も提供される。そのような組換え宿主細胞は、本発明の抗原結合タンパク質(例えば、抗体)を産生するために使用され得る。したがって、本発明の抗原結合タンパク質、例えば抗体を産生する方法であって、抗原結合タンパク質、例えば抗体の産生に適した条件下で組換え宿主細胞を培養することを含む方法も提供される。この方法は、抗原結合タンパク質、例えば抗体を単離及び/又は精製する工程を更に含み得る。
【0106】
したがって、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質、例えば、抗体を産生する方法であって、抗原結合タンパク質、例えば、抗体をコードする核酸を宿主細胞において発現させること、及び場合により、このようにして産生された抗原結合タンパク質、例えば、抗体を単離及び/又は精製することを含む方法を提供する。宿主細胞を培養するための方法は、当技術分野で周知である。組換え抗原結合タンパク質、例えば、抗体の精製のための技術は当技術分野で周知であり、例えば、高圧液体クロマトグラフ(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフ(FPLC)又はアフィニティークロマトグラフィ(例えば、プロテインA又はプロテインLを使用)が挙げられる。いくつかの実施形態では、精製は、抗原結合タンパク質、例えば、抗体上のアフィニティータグを使用して行われ得る。この方法はまた、抗原結合タンパク質、例えば抗体を、場合により薬学的に許容される賦形剤又は以下に記載される他の物質と共に医薬組成物に製剤化することを含み得る。
【0107】
本発明の抗原結合タンパク質、例えば抗体は、治療用途、特にヒトにおける治療用途、例えばMM、NHL、AML、DLBCL又はFL等の血液癌の治療における用途が見出されると予想される。
【0108】
本発明によるADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCAR、及び賦形剤、例えば薬学的に許容される希釈剤を含む組成物、例えば医薬組成物も提供される。
【0109】
本発明は更に、治療方法に使用するための本発明のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARを提供する。患者を治療する方法であって、治療有効量の本発明によるADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARを患者に投与することを含む方法も提供される。医薬品の製造に使用するための本発明によるADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARの使用が更に提供される。本明細書で言及される患者は、好ましくはヒト患者である。
【0110】
本発明はまた、MM、NHL、AML、DLBCL又はFL等の血液癌を治療する方法で使用するための、治療有効量の本発明によるADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARを患者に投与することを含む、本発明のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARを提供する。患者における多発性骨髄腫MM、NHL、AML、DLBCL又はFL等の血液癌を治療するための医薬品の製造に使用するための、本発明によるADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARの使用が更に提供される。
【0111】
別の態様では、本発明は、MM、NHL、AML、DLBCL又はFL等の血液癌に罹患している患者において、a)治療すること、b)進行を遅延させること、c)生存を延長させること、及び/又は(d)症状の緩和を提供することに使用するための本発明のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARに関する。
【0112】
したがって、本明細書に記載のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARは、治療用途、特にMM、NHL、AML、DLBCL又はFL等の血液癌の治療に使用するためのものであり得る。
【0113】
本明細書に記載のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARは、ヒト又は動物の身体の治療方法において使用され得る。本発明の関連する態様は、
(i)医薬品として使用するための本明細書に記載のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCAR、
(ii)疾患又は障害の治療方法に使用するための本明細書に記載のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCAR、
(iii)疾患又は障害の治療に使用するための医薬品の製造における本明細書に記載のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARの使用、及び
(iv)個体における疾患又は障害を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARを個体に投与することを含む方法、を提供する。
【0114】
個体は、患者、好ましくはヒト患者であり得る。
【0115】
治療は、何らかの所望の治療効果、例えば、状態の進行の阻害又は遅延が達成される任意の治療又は治療であり得、進行速度の低下、進行速度の停止、状態の改善、状態の治癒又は寛解(部分的であれ全体的であれ)、状態の1つ以上の症状及び/又は徴候の予防、改善、遅延、緩和若しくは停止、又は治療の非存在下で予想されるものを超える個体又は患者の生存の延長を含む。
【0116】
予防手段(すなわち、予防)としての治療も含まれる。例えば、MM、NHL、AML、DLBCL又はFL等の血液癌に罹患しやすい又は再発のリスクがある個体は、本明細書に記載のように治療することができる。そのような治療は、個体における疾患の再発を予防又は遅延させ得る。
【0117】
ADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARは単独で投与され得るが、ADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARは通常、ADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARに加えて少なくとも1つの成分を含み得る医薬組成物の形態で投与される。したがって、本発明の別の態様は、本明細書に記載のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARを含む医薬組成物を提供する。ADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARを医薬組成物に製剤化することを含む方法も提供される。
【0118】
医薬組成物は、ADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARに加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤又は当業者に周知の他の材料を含み得る。本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、対象(例えば、ヒト)の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形に関する。各担体、賦形剤等はまた、製剤の他の成分と適合性であるという意味で「許容可能」でなければならない。担体又は他の物質の正確な性質は、投与経路に依存し、投与経路は、以下で論じられるように、注入、注射又は任意の他の適切な経路によるものであり得る。
【0119】
非経口投与、例えば皮下投与又は静脈内投与、例えば注射による投与の場合、ADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARを含む医薬組成物は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であり得る。いくつかの実施形態では、本発明のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARは、投与前の再構成のために凍結乾燥形態で提供され得る。例えば、凍結乾燥抗原結合タンパク質、例えば抗体は、個体への投与前に滅菌水又は生理食塩水で再構成され得る。
【0120】
投与は「治療有効量」であってもよく、これは個体に利益を示すのに十分である。投与される実際の量、並びに投与の速度及び時間経過は、治療されるものの性質及び重症度、治療される特定の個体、個体の臨床状態、障害の原因、組成物の送達部位、ADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARの種類、投与方法、投与のスケジュール及び他の要因に依存する。治療の処方は、治療される疾患の症状の重症度及び/又は進行に依存し得る。ADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARの治療有効量又は適切な用量は、インビトロ活性及び動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定することができる。マウス及び他の試験動物における有効投与量をヒトに外挿する方法は公知である。正確な用量は、治療される領域のサイズ及び位置、並びにADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARの正確な性質を含む多くの因子に依存する。
【0121】
血液悪性腫瘍は、血液、骨髄及びリンパ系に影響を及ぼす血液癌の多様な群である。主なカテゴリーは、リンパ腫、白血病、骨髄腫、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性新生物である。好ましい実施形態では、本明細書に記載のADC、抗原結合タンパク質、例えば抗体、又はCARは、MM、NHL、AML、DLBCL又はFL等の血液癌を治療する方法で使用するためのものであり得る。
図面の一覧
【図面の簡単な説明】
【0122】
【
図1】NCI-H929細胞のFab-ZAP細胞死滅アッセイにおける70個の未精製ヒト化IgGの一次スクリーニングにより、30%以上の細胞死滅を示した18個のクローンが同定されたことを示す図である。70個全ての未精製クローンを1.56%の最終濃度でスクリーニングした。18個中12個のヒットクローン(●)を再発現させ、更なる特徴づけのために精製した。進行のために選択された12個のクローンのうちの10個もまた、5E3エピトープ競合アッセイにおいて阻害を示した(
図2を参照のこと)。
【
図2】MM.1S細胞のエピトープ競合アッセイにおける320個の未精製ヒト化IgGの一次スクリーニングにより、30%以上の阻害を示した17個のクローンが同定されたことを示す図である。320個全ての未精製クローンを25%の最終濃度でスクリーニングした。17個中10個のヒットクローン(●)を再発現させ、更なる特徴づけのために精製した。30%未満の阻害を示した2つのクローン:5Hg2/5Lg6及び5Hg4/5Lg4も再発現させ、更なる特徴づけのために精製した。更なる特徴づけのために選択された12個全てのクローンもまた、Fab-ZAP細胞死滅アッセイにおいてヒットとして同定された。
【
図3】NCI-H929細胞のFab-ZAP細胞死滅アッセイにおける未精製の完全ヒトファージディスプレイIgGの一次スクリーニングにより、15%以上の細胞死滅を示したクローンパネルが同定されたことを示す図である。全ての未精製クローンを3.13%の最終アッセイ濃度でスクリーニングした。更なる特徴づけのために、10個のクローン(●)を再発現させ、精製した。
【
図4】MM.1S細胞における結合アッセイにおいて、未精製の完全ヒトファージディスプレイIgGの一次スクリーニングにより、100万を超えるFLUの蛍光強度で結合したクローンが同定されたことを示す図である。全ての未精製クローンを1.56%の最終アッセイ濃度で試験した。結合アッセイデータをFab-ZAPアッセイデータ(
図3)と併せて使用して、Fab-ZAPアッセイでヒットし、MM.1S細胞への良好な結合(>100万FLU)を示した10個のクローン(●)のパネルを選択した。C0120910は、25%の最終アッセイ濃度で試験した場合に結合を示すように進行した(データは示さず)。
【
図5A】
図5Aは、ヒトIgG1 Alyaベクターで発現されたヒト化リードの結合特異性の測定を示す図である。
図5は、ヒトSEMA4A(i)、マウスSEMA4A(ii)、カニクイザルSEMA4A(iii)、ヒトSEMA4B(iv)で一過性にトランスフェクトしたexpi293細胞に結合するリードの能力及び擬似トランスフェクトexpi293細胞(v)を、Mirrorballを使用して測定した。リードの結合を、ヒトIgG1 Alyaとして発現させたマウス5E3と比較した。C0021144IgGを、擬似トランスフェクトexpi293細胞に結合するための陽性対照として含めた。市販の抗SEMA4Bポリクローナル抗体(R&D Systems、AF5485)を、ヒトSEMA4Bトランスフェクトexpi293細胞への結合の陽性対照として含めた。ヒトIgG1 Alyaベクターの説明については、実施例4.1を参照されたい。
【
図5B】
図5Bは、完全ヒトファージディスプレイリードの結合特異性の測定を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、Fab-ZAP細胞死滅アッセイにおいて、ヒトIgG1 Alyaベクターで発現されたヒト化リードがNCI-H929細胞を死滅させる能力の測定を示す図である。
図6は、全てのクローンの細胞死滅能力を、ヒトIgG1 Alyaベクターにおけるマウス5E3と比較した。多くのヒト化クローンは、マウス5E3抗体に匹敵するIC
50値を示した(V
H及びV
L 配列番号2及び11)。いくつかのヒト化クローンは完全な細胞死滅を示さなかった。ヒトAlya IgG1ベクターの説明については、実施例4.1を参照されたい。
【
図6B】
図6Bは、Fab-ZAP細胞死滅アッセイにおいて、ヒトIgG1 Alyaベクターで発現された完全ヒトリードがNCIl-H929細胞を死滅させる能力の測定を示す図である。
【
図7】エピトープ競合アッセイにおけるヒトIgG1 Alyaベクターで発現されたヒト化リードの試験を示す図である。ヒトIgG1 Alyaベクターで発現されるヒト化及び完全ヒトファージディスプレイリードの濃度を増加させて、MM.1S細胞上に内因的に発現されるSEMA4Aへの固定濃度のマウス5E3の結合を阻害する能力を測定した。5E3の固定濃度はマウスIgG1アイソタイプであり、この結合は、Alexa Fluor 647で標識された抗マウス抗体を使用して検出された。ヒトアイソタイプ(ヒトIgG1 Alya)として発現されたマウス5E3をアッセイに競合させ、試験クローンをこれと比較した。全てのヒト化クローンは、5E3とのある程度のレベルの競合を示した。
【
図8A】
図8は、エピトープビニングを示す図である。OctetRED(Pall ForteBio)機器をセクション4.6に記載されているように使用して、エピトープビニングを実施し、リード抗ヒトSEMA4Aクローンを組換えヒトSEMA4Aへの結合に基づいてビンにグループ化した。タンデム形式では、ストレプトアビジンバイオセンサ上に固定化された抗原(ビオチン化組換えヒトSEMA4A)を、2つの競合する分析物に連続工程で提示した。第1のFab断片(マウス5E3)による飽和が第2の完全ヒトファージディスプレイ由来IgGの結合を遮断しなかった場合、別個の重複しないエピトープへの結合が示された。全てのヒト化リードは、セクション3.2において5E3エピトープと競合することが示されていた。
図8Aは、5E3と重複又は競合するエピトープを有する完全ヒトクローンのデータを表す。
【
図8B】
図8Bは、5E3との非重複又は非競合エピトープを有する完全ヒトクローンに対応するデータを示す。
【
図8C】
図8Cは、5E3との非重複又は非競合エピトープを有する完全ヒトクローンに対応するデータを示す。
【
図8D】
図8Dは、互いに非重複又は非競合エピトープを有する完全ヒトクローンに対応するデータを示す。
【
図9A】
図9Aは、ヒトIgG1 Alyaベクターで発現され、McMMAFにコンジュゲートされたヒト化リードの結合特異性を測定する図である。
図9は、ヒトSEMA4A(i)、ヒトSEMA4B(ii)及び擬似トランスフェクトexpi293細胞(iii)で一過性にトランスフェクトしたexpi293細胞に結合するリードの能力を、Mirrorballを使用して測定した。結合を、Alyaベクターで発現されたヒトIgG1(Alya IgG1)及び結合したMcMMAFとしてマウス5E3と比較した。C0021144 IgGを、擬似トランスフェクトexpi293細胞に結合するための陽性対照として含め、C0021144は、McMMAFにコンジュゲート化されなかった。市販の抗SEMA4Bポリクローナル抗体(R&D Systems、AF5485)を、ヒトSEMA4Bトランスフェクトexpi293細胞への結合のための陽性対照として含め、AF5485は、McMMAFにコンジュゲート化されなかった。ヒトIgG1 Alyaベクターの説明については、実施例4.1を参照されたい。
【
図9B】
図9Bは、ヒトIgG1 Alyaベクターで発現され、McMMAFにコンジュゲートされた完全ヒトリードの結合特異性を測定する図である。
【
図10A】
図10Aは、ヒトIgG1 Alyaベクターで発現したMcMMAFにコンジュゲートしたヒト化リードの、NCI-H929細胞を死滅させる能力の細胞死滅アッセイでの測定を示す図である。
図10は、全てのクローンの細胞死滅能力を、McMMAFにコンジュゲートしたAlya IgG1としてマウス5E3と比較した。ヒト化クローンは、細胞株全体にわたってIC50値の範囲を示し、SEMA4A発現について陰性対照細胞株であるK562細胞では細胞死滅は観察されなかった。ヒトAlya IgG1ベクターの説明については、実施例4.1を参照されたい。J6M0抗BCMAモノクローナル抗体対照(Tai et al.,2014)。
【
図10B】
図10Bは、ヒトIgG1 Alyaベクターで発現したMcMMAFにコンジュゲートしたヒト化リードのMM1.S細胞を死滅させる能力の細胞死滅アッセイでの測定を示す図である。
【
図10C】
図10Cは、ヒトIgG1 Alyaベクターで発現したMcMMAFにコンジュゲートしたヒト化リードのKARPAS 25細胞を死滅させる能力の細胞死滅アッセイでの測定を示す図である。
【
図10D】
図10Dは、ヒトIgG1 Alyaベクターで発現したMcMMAFにコンジュゲートしたヒト化リードのK562細胞を死滅させる能力の細胞死滅アッセイでの測定を示す図である。
【
図11A】
図11Aは、ヒトAlya IgG1ベクターで発現したMcMMAFにコンジュゲートした完全ヒトリードが、細胞死滅アッセイでNCI-H929細胞を死滅させる能力の測定を示す図である。
図11は、全てのクローンの細胞死滅能力を、McMMAFにコンジュゲートしたAlya IgG1としてマウス5E3と比較した。完全ヒトクローンはある範囲のIC
50値を示し、一部は、McMMAFにコンジュゲートしたAlya IgG1としてマウス5E3よりもわずかに強力であった。予想されるように、クローンは、K562細胞において、SEMA4A発現のための陰性対照細胞株の細胞死滅を誘発しなかった。ヒトAlya IgG1ベクターの説明については、実施例4.1を参照されたい。J6M0抗BCMAモノクローナル抗体対照(Tai et al.,2014)。
【
図11B】
図11Bは、ヒトAlya IgG1ベクターで発現したMcMMAFにコンジュゲートした完全ヒトリードが、細胞死滅アッセイでMM1.S細胞を死滅させる能力の測定を示す図である。
【
図11C】
図11Cは、ヒトAlya IgG1ベクターで発現したMcMMAFにコンジュゲートした完全ヒトリードが、細胞死滅アッセイでK562細胞を死滅させる能力の測定を示す図である。
【
図12A】
図12は、ヒトAlya IgG1ベクターで発現されたMcMMAFコンジュゲート化ヒト化及び完全ヒトリードの細胞内在化を示す図である。各リード抗体及び対照抗体の内在化を、24時間にわたってある濃度範囲で評価した。ヒトAlya IgG1ベクターの説明については、実施例4.1を参照されたい。
図12Aは、Fab-pHastについて陽性としてスコア付けされた細胞のパーセンテージを、マウス5E3ヒトAlya IgG1についてここに示されるのと同じ様式で、各抗体の各濃度について経時的にプロットした。
【
図12B】
図12Bは、2.5nM 5E3(マウス5E3ヒトAlya IgG1 McMMAF結合)データについて実証されているように、各時間経過を曲線下面積(AUC)分析に供した。
【
図12C】
図12Cは、ヒト化リード及び完全ヒトクローン(全てヒトAlya IgG1 McMMAFコンジュゲートフォーマット)モノクローナルのパネルについてのAUC分析からプロットされた内在化滴定曲線を示す。
【
図12D】
図12Dは、各濃度及び時点について平均染色積分強度も抽出し、ベースラインに対するシグナルの変化倍数としてプロットした。
【
図13】フローサイトメトリによるSEMA4A特異的ヒト抗体(McMMMAFにコンジュゲートさせたAlya IgG1)の結合親和性(KD)の測定を示す図である。全てのクローンのKD値を、ヒトAlya IgG1及びMcMMAFが結合したマウス5E3と比較した。ヒト化リード、5Hg1/5Lg1及び5Hg2/5Lg2は、マウス5E3と同様のKD値を示した。完全ヒトファージディスプレイ由来リードは、マウス5E3よりも低い親和性を有していた。ヒトAlya IgG1ベクターの説明については、実施例4.1を参照されたい。
【
図14】ヒトAlya IgG1ベクターで発現された完全ヒト生殖系列リードの結合特異性の測定を示す図である。ヒトSEMA4A(i)、マウスSEMA4A(ii)、カニクイザルSEMA4A(iii)、ヒトSEMA4B(iv)で一過性にトランスフェクトしたexpi293細胞、擬似トランスフェクトexpi293細胞(v)に結合する生殖系列リードの能力をMirrorballを使用して測定した。結合をマウス5E3(McMMAFに結合されていないヒトAlya IgG1)と比較した。C0021144IgGを、擬似トランスフェクトexpi293細胞に結合するための陽性対照として含めた。市販の抗SEMA4Bポリクローナル抗体(R&D Systems、AF5485)を、ヒトSEMA4Bトランスフェクトexpi293細胞への結合の陽性対照として含めた。試験した6つ全ての完全ヒト生殖系列クローンは、ヒト、マウス及びカニクイザルSEMA4Aへの強い結合を示し、ヒトSEMA4B及び擬似トランスフェクトexpi293細胞への結合は示さなかった。ヒトAlya IgG1ベクターの説明については、実施例4.1を参照されたい。
【
図15A】
図15は、健康な患者及び骨髄腫患者の両方における血清中の可溶性SEMA4Aの低発現を示す図である。
図15Aは、組換えヒトSEMA4A(rSEMA4A)を使用したELISAの標準曲線を示す。検出下限(LLOD)は、ブランク試料の平均+ブランクの3つの標準偏差として決定した。検出限界は、LLODを上回る試験した最低濃度(1.56ng/mL)として計算した。
【
図15B】
図15Bは、健康及び骨髄腫患者の血清中のsSEMA4AをELISAによって検出し、それぞれ3.3ng/ml及び8.1ng/mlであることが見出されたことを示す図である。
【
図16】NCI-H929細胞を使用した細胞死滅アッセイにおけるマウス5E3及び完全ヒトリードの効力に対する可溶性SEMA4Aの影響の評価を示す図である。最大100ng/mlのsSEMA4Aの濃度は、IC50値に関して、それぞれMcMMAFとコンジュゲートしたAlya IgG1としてのマウス5E3又は完全ヒトクローンのいずれかのNCI-H929細胞を死滅させる能力に有意な影響を及ぼさなかった。ヒトAlya IgG1ベクターの説明については、実施例4.1を参照されたい。
【
図17】マウス5E3VH配列と並んだ、SEMA4AリードパネルVHドメインの比較配列アラインメントを示す図である。個々のVH CDR配列は、太字で、灰色の背景で、黒棒で強調されている。Kabat and Wu(1991)によって定義される配列番号。
【
図18】マウス5E3 V
L配列と並んだ、SEMA4AリードパネルV
Lドメインの比較配列アラインメントを示す図である。個々のV
L CDR配列は、太字、灰色の背景及び黒色のバーで強調されている。Kabat and Wu(1991)によって定義される配列番号。
【発明を実施するための形態】
【0123】
実施例
実施例1:5E3 mAbのヒト化
1.1 5E3ヒト化生殖系列バリアントの合理的設計
抗ヒトSEMA4AモノクローナルマウスIgG1(λ)5E3は、BioLegend(登録商標)(カタログ番号:148402)から購入し、その一次アミノ酸配列を逆操作した。具体的には、5E3をトリプシン、キモトリプシン、又はトリプシンとAspNとの組合せのいずれかで消化した。3つの消化物のそれぞれを、Orbitrap Fusion mass spectrometer(Thermofisher Scientific)を使用してLC/MS/MSによって分析した。得られたデータの検索を、Peaksソフトウェア及びマウス生殖系列配列のデータベースを使用して行い、続いて手動で解釈した。
【0124】
10 VH及び7 VLヒト生殖系列配列のパネルを、マウス5E3ヒト化のためのフレームワークとして選択した。ヒト生殖系列の選択は、元の非ヒト化マウス5E3配列をIMGT(登録商標)データベース(www.IMGT.org)に列挙された全てのヒト生殖系列配列に整列させることによって誘導した。マウス5E3配列に対して最も高いアミノ酸配列相同性を有するヒト生殖系列を、その後の5E3 CDRグラフト化のために優先順位付けした。具体的には、ヒト生殖系列を、「3xVH CDRグラフト」、「3xVL CDRグラフト」又は「1xVH CDRグラフト」のいずれかになるように操作した(表4)。各VH及びVL遺伝子配列をデノボで合成し、標準的な分子生物学技術を用いて適切なIgG発現ベクター(Persic,et al.,1997)にクローニングした。
【0125】
【0126】
【0127】
1.2 未精製IgGのハイスループット発現
ヒト化5E3クローンのパネルを、96ウェルマイクロタイタープレートについてのLife Technologies Expi293 Expression Systemプロトコル(プロトコル番号CO25793 0912)に従ってExpi293TMF細胞を使用してハイスループット様式(製品フォーマット又はSiPFでのスクリーニング)でhuIgG1として発現させた。pEU1.3にクローニングされた10個のヒト化5E3 VH及びpEU3.4(カッパ)又はpEU4.4(ラムダ)ベクターのいずれかにクローニングされた7個のヒト化5E3 VL構築物のそれぞれの精製DNAを、70の可能なVHxVLの組合せを生成する96ウェルプレート中でマトリックスとして組み合わせた。合わせたDNAをOptiMEMで希釈し、トランスフェクション試薬としてExpi293TMFを使用して96 deepwell block(Merck、カタログ番号AXYPDW20CS)でExpi293TMF細胞をトランスフェクトするために使用した。細胞を、1000rpmで振盪しながら37℃/8%CO2/80%湿度で成長させ、トランスフェクションの18時間後に(エンハンス1及びエンハンス2を使用して)供給した。IgGをトランスフェクションの4日後に回収し、その後のアッセイにおいて未精製の未精製IgGとして使用した。
【0128】
実施例2:ファージディスプレイによるナイーブライブラリからの完全ヒト抗SMA4A抗体の単離
2.1 組換えヒト、カニクイザル及びマウスSEMA4Aの産生
C末端Aviタグ及びHis10タグを有する組換えヒトSEMA4A(UniProt ID Q9H3S1、アミノ酸33~683)、組換えカニクイザルSEMA4A(UniProt ID G7NV79、アミノ酸32~679)及び組換えマウスSEMA4A(UniProt ID Q62178、アミノ酸33~682)(それぞれ配列番号616、618、617)をpcDNA3.1ベクターにクローニングし、Expi293発現系で一過性に発現させた。続いて、HisTrap HP Hisタグタンパク質精製カラム(40mMイミダゾール洗浄、400mMイミダゾール溶出)を使用してタンパク質を精製した。タンパク質(75kDaのヒトSEMA4A、79kDaのカニクイザルSEMA4A及び79kDaのマウスSEMA4A)を50mMビシンpH8.3に緩衝液交換し、BirAビオチンリガーゼ(基質タンパク質10nmol当たり3mgのビオチンリガーゼ)を使用してビオチン化した。最後に、タンパク質を、5%(w/v)トレハロース(pH7)を含むダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)に緩衝液交換した。
【0129】
【0130】
【0131】
2.2 SEMA4A特異的完全ヒトscFvを単離するためのファージディスプレイ選択
糸状ファージM13に基づいてファージミドベクターにクローニングした5つのナイーブライブラリ(nFL、DP47、CS、BMV及びEG3)を使用して、可溶性ファージディスプレイ選択を行った(Vaughan et al.,1996;Lloyd et al.,2008)。抗SEMA4A scFv抗体を、本質的に以前に記載されたように(Hawkins et al.,1992;Vaughan et al.,1996)、組換えビオチン化ヒト及びマウスSEMA4Aタンパク質(avi-SEMA4A-His10、自社製)に対する一連の選択サイクルを使用してファージディスプレイライブラリから単離した。簡単に記載すると、最初の溶液相選択のために、DPBS pH7中のビオチン化ヒトSEMA4Aを、ストレプトアビジン結合常磁性ビーズ(Dynabeads(登録商標)M280、Invitrogen Life Sciences、UK)を含有するMarvel-PBS(3%w/v)中で1時間プレインキュベートした精製ファージ粒子に添加した(最終濃度100nMビオチン化ヒトSEMA4A)。ストレプトアビジンビーズを抗原の添加前に除去した。ビオチン化ヒトSEMA4Aに結合したファージ粒子を、新しいストレプトアビジン結合常磁性ビーズを使用して捕捉し、弱く結合したファージを、PBS-Tween(0.1%v/v)を使用した一連の洗浄サイクルによって除去した。結合したファージ粒子を、トリプシン(0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液で希釈した10μg/mlの最終濃度;pH7)を使用してビーズから溶出し、E.コリ(E.coli)TG1細菌に感染させ、次の選択ラウンドのためにレスキューした(Vaughan et al.,1996)。その後の2回の選択を前述のように実施したが、ビオチン化SEMA4A抗原の濃度を低下させ、具体的には、ラウンド2で50nMのビオチン化ヒト又はマウスSEMA4A及びラウンド3で25nMのビオチン化ヒトSEMA4Aを使用した。マウス抗原をラウンド2に導入して、マウス交差反応性を駆動した。
【0132】
2.3 細胞に対する直接結合アッセイ(Mirrorball)を使用したSEMA4A特異的完全ヒトscFv(未精製)の同定
ペリプラズム調製物からの未精製scFvが細胞表面発現ヒトSEMA4Aに結合することができるかどうかを決定するために、それらをヒトSEMA4Aで一過性にトランスフェクトしたexpi293細胞(Origene、US;カタログ番号SC323738)と共にインキュベートした。未精製scFvの結合を、scFv上に発現されたmycタグに結合するマウス抗c-myc抗体(Bio-Rad、US;カタログ番号:MCA2200GA)と、それに続くAlexa Fluor 647にコンジュゲートした抗マウス抗体(Invitrogen、US;カタログ番号:A21235)との2つの抗体を使用して検出した。
【0133】
選択アウトプットを、200mMトリス緩衝液pH7.4、0.5mM EDTA及び0.5Mスクロース中で調製した、scFvを含有する未精製細菌ペリプラズム抽出物として単一濃度でスクリーニングした。10μlの未精製scFv試料をGreiner(登録商標)384 well assay plate(Greiner Bio-one、UK;カタログ番号:781906)に添加した。これに続いて、Alexa Fluor 647にコンジュゲートした8nMマウス抗c-myc抗体及び8nM抗マウス抗体を含有する10μlの抗体検出混合物及び20μlの細胞懸濁液を75,000細胞/mlで添加した。
【0134】
非特異的結合ウェル(陰性対照)を、試験scFv試料の代わりに陰性対照未精製scFvを使用することによって、各プレートについて定義した。非特異的に結合するクローンを、擬似トランスフェクションされたexpi293細胞を用いた同時アッセイを使用して同定した(すなわち、ヒトSEMA4A DNAはトランスフェクション中に省かれた)。
【0135】
全ての希釈は、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma、UK;カタログ番号:A9576)を含有するハンクス平衡塩類溶液(Sigma、UK;カタログ番号:H8264)(アッセイ緩衝液)中で行った。アッセイプレートを暗所で室温で4時間インキュベートした後、FL-4チャネル(650及び690nm)で励起及び発光を測定するために640nmレーザーを使用して、Mirrorball fluorescence cytometer(SPT Labtech、UK)で読み取った。データを、カウントx平均強度の中央値(xFLU)として分析した。
【0136】
226個の配列のユニークヒットを、セクション2.4に記載されるようにscFvからヒトIgG1に再フォーマットした直接結合アッセイにおいて同定した。
【0137】
2.4 完全ヒトscFvからIgG1(未精製IgG)へのSEMA4A結合抗体の再フォーマット
MirrorballアッセイによってヒトSEMA4Aへの特異的結合を示した226個の未精製scFvペリプラズム抽出物をDNA配列決定に供した(Osbourn et al.,1996;Vaughan et al.,1996)。226個のユニークなscFvを、それらの配列に基づいてラムダプール及びカッパプールにプールした。更に、全アウトプットを以下のクローニング戦略に供した。2段階戦略を使用して、scFvをIgGにバッチ変換し、最初に(G4S)3 scFvリンカーを、重鎖(HC)のヒンジ及び定常ドメイン並びに軽鎖(LC)のプロモータ及びシグナル配列をコードするDNAセグメントで置き換え、次にscFv骨格をIgGベクター中のLC定常ドメイン及びHCシグナル配列で置き換えた(Xiao et al.,2017に記載されているように)。最終発現ベクターは、CMVプロモータの制御下でHC及びLCの両方とバイシストロン性である。その後、変換されたIgGを、セクション3.2に記載されるように粗IgGとして発現させた。
【0138】
実施例3:一次スクリーニングにおける未精製5E3ヒト化及び完全ヒト、ファージディスプレイ由来、IgG1の機能的スクリーニング
実施例3は、5E3ヒト化アプローチ(実施例1)及びファージディスプレイアプローチ(実施例2)からの未精製IgG1(セクション1.2)の一次スクリーニングを記載する。IgGの両方のセットを、Fab-ZAP細胞死滅アッセイにおいて機能についてスクリーニングした。5E3ヒト化IgGも、マウス5E3エピトープ競合アッセイにおいて5E3エピトープへの結合について競合する能力についてスクリーニングした。完全ヒトファージディスプレイ由来のクローンも、ヒトSEMA4Aを内因的に発現するMM.1S多発性骨髄腫細胞に結合する能力についてスクリーニングした。
【0139】
3.1 Fab-ZAPアッセイを使用した、NCI-H929細胞に内在化し、NCI-H929細胞を死滅させることができるmAbの発見
Fab-ZAPアッセイでは、二次サポリンコンジュゲート、Fab-ZAP(Advanced Targeting Systems、San Diego,CA、IT-51)、CellTiter Glo 2.0(Promega、Madison,WI、G9248)及びPherastarプレートリーダ(BMG Labtech、Germany)を使用して、インビトロで未精製IgGがNCI-H929多発性骨髄腫細胞に結合し、内在化し、死滅させる能力を評価した。Fab-ZAPは、弾頭サポリンにコンジュゲートさせた抗ヒトFabである。未精製ヒト化5E3及び完全ヒトファージディスプレイ由来ヒトIgG1をそれぞれ8倍及び4倍に予備希釈した。未精製ヒトIgG1をExpi293発現培地(Gibco、UK、A1435101)に含有させた。アッセイへの8倍希釈後、最終アッセイ濃度はそれぞれ1.56及び3.13%であった。5μlの予備希釈した未精製ヒトIgG1を、384ウェルアッセイプレート(Greiner Bio-one、UK、781091)中、室温で30分間、5μlの80nM Fab-ZAPと共にプレインキュベートした。2,000個のNCI-H929細胞を30μlの容量でアッセイウェルに添加した。アッセイプレートを37℃/5%CO
2/95%湿度で72時間インキュベートした。細胞死滅を、Pherastarで発光についてプレートを読み取る前に、20μlのCellTiter Glo 2.0を添加し、続いて10分間インキュベートすることによって評価した。10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco、UK、10500-064)及び55μMのβ-メルカプトエタノール(Gibco、UK、21985-023)を補充したRPMI 1640(Gibco、UK、A10491-01)中で全ての希釈を行った。最大アッセイシグナルは、細胞のみを含むウェルによって定義した。バックグラウンドアッセイシグナルは、緩衝液のみを含むウェル、すなわち細胞を含まないウェルによって定義した。GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc、La Jolla,CA)を使用してデータを分析し、グラフ化した。この実験の結果を
図1及び
図3に示す。
【0140】
3.2 IgGエピトープ競合アッセイを使用して、mAbがマウス5E3と重複するエピトープを有することを実証する
5E3エピトープ競合アッセイは、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S細胞によって内因的に発現されるヒトSEMA4A上のマウス5E3エピトープへの結合について競合するヒトIgG1骨格に発現される未精製IgGの能力を評価した。アッセイは、二次Alexa Fluor 647コンジュゲート、マウスIgG1(λ)骨格で発現される5E3(BioLegend(登録商標)、Diego,CA、148402)及びMirrorball fluorescence cytometer(SPT Labtech、UK)を利用した。MM.1S細胞への5E3マウスIgG1の結合を、単一濃度の各未精製ヒトIgG1の存在下で、Alexa Fluor 647(Invitrogen,A21235)で二次標識した抗マウスを介して測定した。未精製IgGによるSEMA4A上の5E3エピトープの占有は、Mirrorballによって測定されるように、蛍光シグナルの減少をもたらした。Expi293発現培地(Gibco、UK、A1435101)に含有される10μlの未希釈未精製IgGをアッセイプレート(Greiner Bio-one、UK、781906)に添加し、続いて、4nMの抗マウスAlexa Fluor 647でスパイクした1,500個の細胞を含有する10μlの1.2nMの5E3マウスIgG1及び20μlのMM.1S細胞懸濁液を添加した。アッセイプレートを室温で4時間、暗所でインキュベートした後、FL-4チャネル(650~690nm)で励起及び発光を測定するために640nmレーザーを使用して、Mirrorball fluorescence cytometer(SPT Labtech、UK)で読み取った。データを、カウントx平均強度の中央値(xFLU)として分析した。全ての希釈は、0.1%(w/v)BSA(Sigma、UK;カタログ番号:A9576)を含有するハンクス平衡塩溶液(Sigma、UK;カタログ番号:H8264)中で行った。5E3マウスIgG1のMM.1S細胞への結合を、競合物質未精製ヒトIgG1の非存在下で分析することによって、最大結合シグナルを決定した。バックグラウンド結合シグナルを、5E3マウスIgG1の非存在下で生成された蛍光を分析することによって決定した。GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc、La Jolla,CA)を使用してデータを分析し、グラフ化した。この実験の結果を
図2に示す。
【0141】
3.3 Mirrorball結合アッセイを使用したMM1.S細胞株へのmAbの特異的結合の実証
MM.1S結合アッセイは、MM.1S細胞によって内因的に発現されたヒトSEMA4Aに直接結合する未精製ヒトIgG1の能力を評価した。単一濃度の未精製ヒトIgG1のMM.1S細胞への直接結合を、Alexa Fluor 647(Invitrogen、A21445)で標識した抗ヒト二次抗体を介して測定した。Expi293発現培地(Gibco、UK、A1435101)に含有される10μlの未希釈未精製IgGをアッセイプレート(Greiner Bio-one、UK、781906)に添加し、続いて、1,500個の細胞を含有する10μlの8nM抗ヒトAlexa Fluor 647及び20μlのMM.1S細胞懸濁液を添加した。アッセイプレートを室温で4時間、暗所でインキュベートした後、FL-4チャネル(650~690nm)で励起及び発光を測定するために640nmレーザーを使用して、Mirrorball fluorescence cytometer(SPT Labtech、UK)で読み取った。データを、カウントx平均強度の中央値(xFLU)として分析した。全ての希釈は、0.1%(w/v)BSA(Sigma、UK;カタログ番号:A9576)を含有するハンクス平衡塩溶液(Sigma、UK;カタログ番号:H8264)中で行った。GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc、La Jolla,CA)を使用してデータを分析し、グラフ化した。この実験の結果を
図4に示す。
【0142】
Fab-ZAPアッセイでは18個のヒト化クローンがヒットとして同定され(細胞死滅≧30%)、マウス5E3エピトープ競合アッセイでは17個のヒト化クローンがヒットとして同定された(阻害≧30%)。両方のアッセイでヒットした12個のクローンと、Fab-ZAPのみのヒットであった2個のクローン(5Hg2/5Lg6及び5Hg4/5Lg4)を再発現させ、更なる特徴づけのために精製した。
【0143】
49個の完全ヒトファージディスプレイ由来クローンをFab-ZAPアッセイでヒットとして同定した(細胞死滅≧15%)。ヒトSEMA4Aを内因的に発現するMM.1S細胞に結合するかどうかに基づいて、49個のクローンを更にトリアージした。これにより、Fab-ZAPアッセイでヒットし、MM.1S細胞に結合した10個のクローンのパネルが得られた。これらの10個のクローンをヒトIgG1からヒトAlya IgG1に再フォーマットし、セクション4.1に記載の更なる特徴づけのために発現及び精製した。
【0144】
実施例4:精製ヒトAlya IgG1の二次スクリーニング
4.1 ヒトAlya IgG1へのSEMA4A結合抗体の再フォーマット
特異的可変断片は、薬物分子が共有結合的にコンジュゲートされ得る各重鎖断片に2つのシステインを導入するための修飾を有するヒトIgG1定常鎖からなるヒトIgG1-ADCアイソタイプ(Alya IgG1)を発現して、これにより、4(4DAR)の「薬物対抗体」比が得られる。可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメインを、それぞれ全ヒト抗体の重鎖及び軽鎖を発現するベクターに導入する。可変重鎖を、ヒト重鎖定常ドメイン及び調節エレメントを含有する哺乳動物発現ベクター(pEU1.22、Alyaベクター)にクローニングして、哺乳動物細胞においてIgG1重鎖全体を発現させた。pEU1.22は、制御された薬物コンジュゲーションを可能にする2つの部位特異的システインを含有するように操作されている(それぞれCH2及びCH3 Fcドメイン中の239iCys及びS442C(EUナンバリング))。同様に、可変軽鎖ドメインを、ヒトラムダ軽鎖定常ドメイン(pEU4.4)又はヒトカッパ軽鎖定常ドメイン(pEU3.4)及び調節エレメントを発現させるための哺乳動物発現ベクターにクローニングして、哺乳動物細胞において全IgG軽鎖を発現させた。重鎖の発現のためのベクターは、Thompson et al.,2016に最初に記載された。軽鎖の発現のためのベクターは、Persic,et al.,1997に最初に記載された。
【0145】
IgGとしてクローンを得るために、重鎖及び軽鎖IgG発現ベクターをExpiCHO(ThermoScientific UK;カタログ番号:A29133)細胞に一過性にトランスフェクトし、そこで抗体を発現させ、培地に分泌した。回収した培地を精製前に濾過した。IgGは、プロテインAクロマトグラフィ(HiTrap Fibro PrismA、Cytiva、UK)を使用して精製した。培養上清を、25mMのTris pH7.4、50mのMNaCl中で予め平衡化した適切なプロテインAカラムにロードした。結合したIgGを、0.1Mのクエン酸ナトリウムpH3.0、100mMのNaClを使用してカラムから溶出した。IgGをPBSに緩衝液交換した。精製したIgGを0.2μmのフィルタに通し、IgGの濃度を、IgGのアミノ酸配列に基づく吸光係数を用いて280nmでの吸光度によって決定した。SEC-HPLC及びSDS-PAGE技術を使用して、精製IgGを凝集又は分解について分析した。
【0146】
4.2 直接結合アッセイ(Mirrorball)を使用したSEMA4A特異的ヒトAlya IgG(精製、非コンジュゲート)の結合プロファイルの確認
一次スクリーニングからのヒットをヒトAlya IgG1ベクターに再フォーマットし、セクション4.1に記載されているように再発現及び精製した。更に、そのVHCDR2内にアスパラギン脱アミド化モチーフ(Asn Gly)を含有する単一クローンが同定された。この潜在的な配列の信頼性は、デノボの2つのクローンバリアントVH遺伝子(Asn Ala及びGln Gly)を合成し、これらの配列をヒトAlya IgG1発現ベクターにクローニングすることによって、リスクが取り除かれた。各精製ヒトAlya IgG1の特異性プロファイルを決定するために、希釈系列を、ヒトSEMA4A、マウスSEMA4A、カニクイザルSEMA4A、ヒトSEMA4B及び擬似トランスフェクト細胞(expi 293細胞に設定された一過性トランスフェクション)への結合について試験した。5つのアッセイは、適切な細胞を使用し、未精製scFvペリプラズム調製物を組換えヒトAlya IgG1希釈系列で置換して、セクション2.3に記載の方法を使用した。データを、カウントx平均強度の中央値(xFLU)として分析した。
【0147】
アッセイの更なる改変は、組換えヒトAlya IgG1がc-mycタグを有さなかったので、Alexa Fluor 647にコンジュゲートしたマウス抗c-myc抗体及び抗マウス抗体を抗ヒトAlexa Fluor 647検出試薬(ThermoFisher Scientific、UK;カタログ番号:A21445)で置換することであった。
【0148】
必要な結合プロファイルは、ヒトSEMA4A、マウスSEMA4A、カニクイザルSEMA4Aへの結合であったが、ヒトSEMA4B及び擬似トランスフェクトexpi293細胞への結合ではなかった。この実験の結果を
図5に示す。
【0149】
4.3 Fab-ZAP細胞死滅アッセイを使用した、SEMA4A特異的ヒトAlya IgG1(精製、非コンジュゲート)の細胞死滅能力の確認
ヒトAlya IgG1ベクターに再フォーマットされ、セクション4.1に記載されるように再発現及び精製された一次スクリーニングからのヒットを、Fab-ZAP細胞死滅アッセイで試験した。Fab-ZAPアッセイ方法は実施例3.1に記載されており、精製されたヒトAlya IgG1を試験するために使用された。精製したヒトAlya IgG1を8倍ストックに希釈し、次いで4倍希釈を用いて段階希釈して、12点濃度応答曲線を作成した。5μlの濃度応答曲線を、未精製IgGの代わりに2連でアッセイプレートに移した。ヒトAlya IgG1ベクターで発現させたヒト化リード及び完全ヒトリードがFab-ZAP細胞死滅アッセイでNCI-H929細胞を死滅させる能力を、それぞれ
図6A及び6Bに示す。表6は、ヒトIgG1 Alyaベクターにおけるマウス5E3と比較したヒト化リードクローンの細胞殺傷能力を示す。多数のヒト化クローンは、5E3に匹敵するIC
50値を示した。
【0150】
【0151】
4.4 SEMA4A特異的Alya IgG(精製、非コンジュゲート)のエピトープ結合を評価するためのIgG競合アッセイ
一次スクリーニングからのヒットをヒトAlya IgG1ベクターに再フォーマットし、セクション4.1に記載されているように再発現及び精製した。5E3エピトープ競合アッセイ方法はセクション3.2に記載されており、精製されたヒトAlya IgG1を試験するために使用した。精製したヒトAlya IgG1を4倍ストックに希釈し、次いで4倍希釈を用いて段階希釈して、10点濃度応答曲線を作成した。10μlの濃度応答曲線を、未精製IgGの代わりに2連でアッセイプレートに移した。この実験の結果を
図7及び表7に示す。
【0152】
【0153】
4.5 改良されたバリアントの動態プロファイリングを可能にするためのFab断片の生成
scFvのIgG1-ADC(セクション4.1)への変換と同等に、scFvをFab断片にも変換し、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメインを、それぞれヒト抗体重鎖及び全軽鎖の一部を発現するベクターにサブクローニングした。可変重鎖を、CH1ヒト重鎖定常ドメイン、ヒンジ領域の一部、及び哺乳動物細胞においてFab重鎖断片を発現するのに必要な調節エレメントを含む哺乳動物発現ベクター(pEU1.3 Fab)にクローニングした。同様に、可変軽鎖ドメインを、ヒトラムダ軽鎖定常ドメイン(pEU4.4)又はヒトカッパ軽鎖定常ドメイン(pEU3.4)及び調節エレメントを発現させるための哺乳動物発現ベクターにクローニングして、哺乳動物細胞において全IgG軽鎖を発現させた。
【0154】
Fabとしてクローンを得るために、Fab重鎖及び軽鎖IgG発現ベクターをExpiCHO細胞(ThermoScientific UK;カタログ番号:A29133)に一過性にトランスフェクトし、そこでFab断片を発現させ、培地に分泌した。回収した培地を精製前に濾過した。Fab断片を、ヒトIgG抗体のCH1ドメインを認識するaffinity matrix(Capture Select CH1-XL Columns、ThermoFisher Scientific、UK)を使用して精製した。培養上清を、PBS中で予め平衡化した適切なCapture Selectカラムにロードした。結合したFab断片を、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH4.0~4.5を使用してカラムから溶出した。Fab断片をPBSに緩衝液交換した。精製したFab断片を0.2μmフィルタに通し、Fab断片のアミノ酸配列に基づく吸光係数を用いて280nmにおける吸光度を測定することにより、Fab断片の濃度を決定した。精製されたFab断片を、SEC-HPLC及びSDS-PAGE技術を使用して凝集又は分解について分析した。
【0155】
4.6 バイオレイヤー干渉法を用いたヒトSEMA4A及びカニクイザルSEMA4Aに対する5E3ヒト化及び完全ヒトリードパネルの結合親和性の決定
OctetRED(Pall ForteBio)機器を使用して、リード抗SEMA4AIgGと組換え産生されたヒトSEMA4A及びカニクイザルSEMA4Aとの間の相互作用の動態パラメータを評価した。Octetバイオセンサは、2つの表面:センサ先端上の固定化タンパク質の層及び内部参照層から反射された白色光の干渉パターンを分析する光学分析技術を使用する。バイオセンサ先端での結合の変化は、干渉パターンのシフトをもたらし、これはリアルタイムで測定することができる。バイオセンサ先端のリガンドと会合又はリガンドから解離する分子は、干渉パターンをシフトさせ、取得ソフトウェアによって記録されるOctetシステム上の応答を生成する。
【0156】
典型的には、所定の濃度の分析種をカップリングされたリガンドと接触させ、任意の結合をシグナルの増加として検出する(会合相)。これに続いて、緩衝液ですすぎ、その間に、表面固定化リガンドからの分析種の解離をシグナルの減少として観察することができる(解離相)。一連の分析物濃度でこれを繰り返すことにより、結合速度論の分析のためのデータが得られる。
【0157】
Octet Kinetics緩衝液(0.01%(v/v)BSA及び0.002%(v/v)Tween20を含有するPBS)は、典型的には、分析物試料の希釈緩衝液として、及び解離相中のフロー緩衝液として使用される。実験データは、経時的な干渉パターン(nm)のシフトとして記録され、これはバイオセンサ先端の光学的厚さに正比例し、次に結合した分析物の質量の近似尺度である。その後、独自のOctet Data Analysisソフトウェアパッケージを使用して、データを処理し、結合モデルをデータセットに適合させることができる。戻った会合(ka、M-1s-1)及び解離(kd、s-1)速度定数は、解離(KD、M)親和定数の計算を可能にする。
【0158】
ビオチン化SEMA4A抗原をストレプトアビジンセンサー先端に捕捉したアッセイを使用して、分析物(ヒトAlya IgG1及びFabとしてヒト化及びファージディスプレイ由来IgG)とヒトSEMA4A及びカニクイザルSEMA4Aとの間の結合親和性を推定した。新しいセンサーチップを各測定に使用し、再生は使用しなかった。リードFab及びヒトAlya IgG1の一連の希釈物(3.25~240nM)を、信頼性のある適切な結合モデルに適合させることができるセンサーグラムを観察するのに十分な時間(典型的には5分)、続いて適切な解離時間(典型的には10分)、リガンド表面と個別に接触させた。任意の緩衝アーチファクト又は非特異的結合効果の影響を低減するために、ブランク参照(0nMの分析物)データを各データセットから差し引いた。次いで、Octet Evaluationソフトウェアを使用して、各分析物滴定からのデータに1:1結合モデルを同時に当てはめた(表8)。
【0159】
【0160】
4.7 Octetを使用したヒト化抗体パネル及び完全ヒト抗体パネルからの抗体のエピトープビニング
OctetRED(Pall ForteBio)機器をセクション4.6に記載されているように使用して、エピトープビニングを実施し、リード抗ヒトSEMA4Aクローンを組換えヒトSEMA4Aへの結合に基づいてビンにグループ化した。このグループ分けは、交差競合アッセイを使用して行われ、特定の抗原に対する分析物対の競合的結合が特徴づけられる。このインタンデムフォーマットでは、ストレプトアビジンバイオセンサ上に固定化された抗原(ビオチン化組換えヒトSEMA4A)は、連続する工程で2つの競合する分析物に提示される。第1のFab断片(マウス5E3)による飽和が第2のIgGの結合を遮断しない場合、異なる重複しないエピトープへの結合が示される。
【0161】
所定の濃度の分析種をカップリングされたリガンドと接触させ、任意の結合をシグナルの増加として検出する(会合相)。エピトープビニングは、この第1の会合を飽和させ(親和性測定中に、典型的には5分間測定される)、続いて第2の会合工程で、センサを第1の分析物(マウス5E3 Fab)及び第2の分析物(ナイーブSEMA4A IgG)の両方を含有するウェルに浸漬する(典型的には5分)ことによって達成される。第1の分析物は、第2の分析物が結合しようとしている間、飽和を維持するために含まれる。これに適切な長さの解離時間(典型的には10分)が続く。新しいセンサーチップを各測定に使用し、再生は使用しなかった。
【0162】
この実験の結果を
図8に示す。
図8Aは、重複又は競合するエピトープを有する2つのクローンから生成されたデータを表す。
図8B~
図8Dは、非重複エピトープを有するクローンに対応するデータを示す。
【0163】
実施例5:ヒトAlya IgG1へのリンカー及び弾頭(McMMAF)のコンジュゲーション
5.1 McMMAFへのSEMA4A特異的ヒトAlya IgG1のコンジュゲーション
ヒト化及び完全ヒトリードをヒトAlya IgG1ベクターにクローニングし、発現させ、精製し、DPBS、pH7中10mg/mlに濃縮した。各タンパク質を、40倍モル過剰のTCEP対抗体でTCEP(トリス-(2-カルボキシエチル)-ホスフィンヒドロクロリド、Sigmaカタログ番号:75259)を使用して37℃で3時間穏やかに還元した。PBS、pH7.2、1mMのEDTA中に脱塩した後(Zeba(商標)Spin Desalting Columns、ThermoFisher Scientific、カタログ番号:89882)、dhAA(デヒドロアスコルビン酸、Sigmaカタログ番号:261556)を使用して20倍モル過剰のdhAA対抗体で室温で4時間IgGを酸化した。MMAFコンジュゲーションは、12倍モル過剰のMMAF対抗体でMcMMAF(MedChemExpress、カタログ番号:HY-15578)を使用して4℃で一晩行った。室温で15分間、4倍モル過剰のNAC(N-アセチル-L-システイン、Sigma-Aldrich、カタログ番号:A7250)を使用して反応を停止させた。最後に、各コンジュゲート化SEMA4A IgG(ヒトAlya IgG1)をPBS、pH7.2、1mMのEDTAに緩衝液交換し、濃縮し、PBS、pH7.2、1mMのEDTAを使用してSuperose 6 Increase 10/300 GL(Sigma-Aldrich、カタログ番号:GE29-0915-96)を使用して精製した。各非コンジュゲート化SEMA4AヒトAlya IgG1と一緒に、IgGをSDS PAGE(NuPAGE 4-12% BisTris gels(12ウェル)、ThermoFisher Scientific、カタログ番号:NP0322PK2)上で200Vで60分間泳動して、コンジュゲーションを確認した。
【0164】
5.2 リードパネル(McMMAFにコンジュゲートしたヒトAlya IgG1)のSEMA4A(Mirrorball)に対する結合/特異性の再確認
ヒトAlya IgG1クローンを、セクション5.1に記載されるようにMcMMAFにコンジュゲートした。コンジュゲーション後、これらのクローンを再試験して、ヒトSEMA4A、ヒトSEMA4B及び擬似トランスフェクト細胞(expi 293細胞で設定された一過性トランスフェクション)に対するそれらの結合プロファイルを再確認することが必要であった。
【0165】
McMMAFにコンジュゲートした各精製ヒトAlya IgG1の特異性プロファイルを決定するために、ヒトSEMA4A、ヒトSEMA4B及び擬似トランスフェクト細胞(expi 293細胞に設定された一過性トランスフェクション)への結合について希釈系列を試験した。これらの3つのアッセイは、適切な細胞を使用し、未精製scFvペリプラズム調製物をMcMMAFにコンジュゲートしたヒトAlya IgG1で置換する、セクション2.3に記載の方法を使用した。データを、カウントx平均強度の中央値(xFLU)として分析した。
【0166】
アッセイの更なる改変は、組換えIgGがc-mycタグを有さなかったので、Alexa Fluor 647にコンジュゲートしたマウス抗c-myc抗体及び抗マウス抗体を抗ヒトAlexa Fluor 647検出試薬(ThermoFisher Scientific、UK;カタログ番号:A21445)で置換することであった。
【0167】
必要な結合プロファイルは、ヒトSEMA4Aへの結合のためのものであったが、ヒトSEMA4B及び擬似トランスフェクトexpi293細胞への結合のためのものではなかった。この実験の結果を
図9に示す。
【0168】
5.3 MM.1S、NCI-H929及びKarpas-25細胞株においてJ6M0に対してベンチマークした、SEMA4Aリードパネル(McMMAFにコンジュゲートしたヒトAlya IgG1)を用いた細胞死滅アッセイ
CellTiter Glo 2.0(Promega、Madison,WI、G9248)及びPherastarプレートリーダ(BMG Labtech、Germany)を使用して、インビトロで、MM.1S、NCI-H929及びKarpas-25多発性骨髄腫細胞及びK562白血病細胞に結合し、内在化し、死滅させる、McMMAFにコンジュゲートしたSEMA4A特異的ヒトAlya IgG1の能力を、細胞死滅アッセイにより評価した。コンジュゲートが4つ全ての細胞株を死滅させる能力を試験し、J6M0(Tai et al.,2014)として知られるMcMMAFコンジュゲートBCMA特異的Alya IgG1と比較してベンチマークした。これらのアッセイのために、3つの細胞株を、ヒトSEMA4Aの高発現(MM.1S)、中発現(NCI-H929)及び低発現(Karpas-25)として選択した。K562細胞はヒトSEMA4Aを発現しない。
【0169】
SEMA4A発現レベルとBCMA発現レベルとの比較において、NCI-H929細胞は、同等のレベルの両方の標的を発現することが示された(Quantum(商標)Simply Cellular(登録商標)anti-Mouse IgG beads、カタログ番号:815、Bangs Laboratories,Inc、Indiana,USA)を使用して決定された、SEMA4A及びBCMAの両方についての細胞当たりの3E5抗体結合部位)。この細胞株は、細胞死滅速度及び内在化速度についてのmAb対J6M0のSEMA4Aパネルの効力を理解するのに適した株であると考えられた。
【0170】
McMMAFコンジュゲートを4倍ストックに希釈し、次いで、4倍希釈を用いて段階希釈して、12点濃度応答曲線を作成した。10μlの濃度応答曲線をアッセイプレート(Greiner Bio-one、UK、781091)に加えた後、2,000個のMM.1S、NCI-H929、Karpas-25又はK562細胞を含有する30μlの細胞懸濁液を加えた。アッセイプレートを37℃/5%CO
2/95%湿度で96時間インキュベートした。細胞死滅を、Pherastarで発光についてプレートを読み取る前に、20μlのCellTiter Glo 2.0を添加し、続いて10分間インキュベートすることによって評価した。アッセイ培地に55μMβ-メルカプトエタノール(Gibco、UK、21985-023)も補充したKarpas-25細胞を試験するアッセイを除いて、全ての希釈を、10%FBS(Gibco、UK、10500-064)を補充したRPMI 1640(Gibco、UK、A10491-01)中で行った。最大アッセイシグナルは、細胞のみを含むウェルによって定義した。バックグラウンドアッセイシグナルは、緩衝液のみを含むウェル、すなわち細胞を含まないウェルによって定義した。GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc、La Jolla,CA)を使用してデータを分析し、グラフ化した。この実験の結果を
図10及び表9、並びに
図11及び表10に示す。
【0171】
【0172】
【0173】
5.4 NCI-H929細胞株においてJ6M0に対してベンチマークしたヒト化及び完全ヒトリードパネル(McMMAFにコンジュゲートしたヒトAlya IgG1)の内在化
ヒトAlya IgG1クローンとしてのヒト化及び完全ヒトリードパネルを、セクション5.1に記載されるようにMcMMAFにコンジュゲートした。これらのコンジュゲート化IgGがSEMA4A発現多発性骨髄腫細胞株に内在化される能力を試験し、J6M0として知られるMcMMAFコンジュゲート化BCMA特異的ヒトAlya IgG1と比較してベンチマークした(Tai et al.,2014)。BCMA(細胞当たり3.3x105個の抗体結合部位)及びSEMA4A(細胞当たり3.2x105個の抗体結合部位)の同等の発現を有するNCI-H929細胞株をこの目的のために選択した。
【0174】
Fab-pHast内在化アッセイを使用して、NCI-H929細胞への内在化を可視化した。このアッセイは、既知濃度のMcMMAFコンジュゲートAlya IgG、Fab-pHast(Advanced Targeting Systems、San Diego,CA、PH-01)、Hoechst 33342(Invitrogen、UK、H3570)及びImageXpress Micro high content imaging system(Molecular Devices、San Jose,CA)を使用して設定した。
【0175】
Fab-pHastは、pH感受性蛍光標識にコンジュゲートされた抗ヒト二次抗体である。組織培養培地の中性pHはFab-pHast蛍光を消光する。抗体-二次複合体がエンドサイトーシス経路の酸性区画に内在化された場合にのみ、有意なFab-pHast蛍光を検出することができる。
【0176】
McMMAFコンジュゲート化ヒトAlya IgG1としてのヒト化及び完全ヒトリードパネルを、10xFab-pHast溶液中で既知の濃度に希釈することによって標識した。標識反応物を室温で20分間インキュベートする前に、同じ溶液に段階希釈を設定して滴定曲線を作成した。標識抗体を、ポリ-D-リジンでコーティングされた96ウェル組織培養プレート上の無血清RPMI 1640(Gibco、UK、A10491-01)に予め播種したNCI-H929細胞に10分の1の比率で添加した。処理した細胞を37℃/5%CO
2/95%湿度でインキュベートし、3、6及び24時間にImageXpress Microの青色及び黄色チャネルで画像化した。これらの画像をMetaXpress 6ソフトウェアパッケージ(Molecular Devices、San Jose,CA)を使用して処理して、定義された閾値に基づいて青色(全ての核のHoescht染色)及び黄色(内在化されたFab-pHastラベル)チャネル内のオブジェクトを同定した。ソフトウェアは、Fab-pHast陽性細胞のパーセンテージとそれらの平均積分強度(全てのFab-pHast陽性ピクセル強度の合計をHoescht陽性核の総数で割ったものとして定義される)の両方を報告した。これらのデータを、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc、La Jolla,CA)を使用して分析し、グラフ化した。この実験の代表的な結果を
図12に示し、以下の表11に重複実験の平均結果を示す。
【0177】
【0178】
5.5 フローサイトメトリによるリードパネルSEMA4A特異的IgG(McMMAFにコンジュゲートしたヒトAlya IgG1)の結合親和性の決定
膜結合SEMA4AへのSEMA4A特異的IgGの結合を、ヒトSEMA4Aを内因的に発現するNCI-H929細胞においてフローサイトメトリを使用して評価した。結合アッセイを、抗SEMA4A抗体を200,000個の細胞と4℃で3時間インキュベートし、続いてPBS、1%(w/v)BSA(FACS緩衝液)で2回洗浄することによって行った。10点、3倍希釈系列を使用して、抗体濃度の範囲を評価した。次いで、細胞を、1:100に希釈したAlexa Fluor 647 conjugated AffiniPure Fab Fragment Goat Anti-Human IgG(H+L)(Jackson Immunoresearch Europe Limited、Ely,Cambridgeshire)と共に4℃で1時間インキュベートし、続いてFACS緩衝液で2回洗浄した。次いで、細胞を4℃で30分間、LIVE/DEAD(商標)Fixable Violet Dead Cell Stain(Life Technologies、L34955)で染色した後、FACS緩衝液で2回洗浄した。次いで、BD Cell Fix(BD Biosciences、340181)を用いて細胞を固定した。生の単一細胞の蛍光を、Novocyte(商標)3000フローサイトメーター及びNovoexpressソフトウェア(Acea Biosciences,Inc、San Diego,CA)を使用して測定した。FlowJoソフトウェア(FlowJo、LLC,Ashland,OR)を使用してデータを分析した。Prismソフトウェア(GraphPad Software Inc、La Jolla,CA)を使用して決定した抗体コンジュゲート濃度及びK
D値に対して平均蛍光強度値をプロットした。この実験の結果を
図13及び表12に示す。
【0179】
【0180】
実施例6:完全ヒトファージディスプレイ由来のリードの生殖系列化及び保持された機能の検証
6.1 完全ヒトファージディスプレイ由来リード生殖系列化
ファージディスプレイ選択から同定された完全ヒトリードは、潜在的な免疫原性リスクを軽減するのを助けるために生殖系列化された。個々の抗体配列を、IMGT(ImMunoGeneTics;www.imgt.org)又はImmuneDiscoverデータベースを介してアクセス可能なヒト生殖系列V、D及びJ領域と比較した。VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2、VLCDR3領域外に存在し、Vernier残基ではない標準的なヒト生殖系列配列とは異なるアミノ酸残基を復帰させた。完全に生殖系列化した各VH及びVL遺伝子配列をデノボで合成し、標準的な分子生物学技術を使用して適切なIgG発現ベクター(Persic,et al.,1997)にクローニングした。
【0181】
6.2 直接結合アッセイ(Mirrorball)を使用した、生殖系列完全ヒトファージディスプレイ由来ヒトAlya IgG1(精製、非コンジュゲート)の結合特異性の確認
各生殖系列完全ヒトのSEMA4A結合特異性を確認するために、ファージディスプレイ由来ヒトAlya IgG1希釈系列を、ヒトSEMA4A、マウスSEMA4A、カニクイザルSEMA4A、ヒトSEMA4B及び擬似トランスフェクト細胞(expi 293細胞に設定された一過性トランスフェクション)への結合について試験した。5つのアッセイは、適切な細胞を使用し、未精製scFvペリプラズム調製物を組換え生殖系列ヒトIgG1 Alya希釈系列で置換して、セクション2.3に記載の方法を使用した。データを、カウントx平均強度の中央値(xFLU)として分析した。
【0182】
アッセイの更なる改変は、組換えIgGがc-mycタグを有さなかったので、Alexa Fluor 647にコンジュゲートしたマウス抗c-myc抗体及び抗マウス抗体を抗ヒトAlexa Fluor 647検出試薬(ThermoFisher Scientific、UK;カタログ番号:A21445)で置換することであった。必要な結合プロファイルは、ヒトSEMA4A、マウスSEMA4A、カニクイザルSEMA4Aへの結合であったが、ヒトSEMA4B及び擬似トランスフェクトexpi293細胞への結合ではなかった。この実験の結果を
図14に示す。
【0183】
実施例7.MM患者試料中のSEMA4Aの血清レベルを評価し、可溶性SEMA4A(sSEMA4A)がリードパネル細胞殺傷効力に影響するかどうかを理解する
7.1 患者試料中のSEMA4Aのレベルの評価
SEMA4Aが潜在的なADC標的であると決定したので、本発明者らは、SEMA4Aの血清濃度を測定することによって、ヒトMM患者においてSEMA4Aを標的とすることの実現可能性を更に調査した。多くの細胞表面タンパク質が循環中に放出され、この可溶性タンパク質はシンクとして作用し、治療用抗体を「浸す」ことができる。これは、有効性を達成するためには、許容できない血中濃度の抗体が必要であることを意味する。これがSEMA4Aの治療標的化を妨害し得るかどうかを理解するために、本発明者らはsSEMA4Aを検出するためのサンドイッチELISAを設計した。
【0184】
White maxisorp plates(ThermoScientific、UK、436110)をPBS中5μg/mLの捕捉抗体(マウス抗ヒトSEMA4Aクローン5E3、BioLegend(登録商標)、San Diego,CA、148402)50μlでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。未結合抗体を除去し、プレートをPBSで洗浄した。非特異的結合を、カゼイン(ThermoScientific、UK、37528)と室温で1時間インキュベーションし、続いてPBS洗浄することによってブロックした。50μl/ウェルの未知試料又は希釈標準(組換えヒトSEMA4A(Abcam、UK、ab182683))を室温で1~2時間インキュベートした。試料を除去し、プレートをPBS-Tween 20(0.1%v/v)洗浄緩衝液で3回洗浄した。捕捉されたsSEMA4Aは、室温での1時間のインキュベーションで抗SEMA4Aポリクローナル抗体(R&D Systems、AF4694、1:20カゼイン中5μg/mlで50μl)によって検出された。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、1:20カゼイン(50μl)中1/5000で二次検出抗体(ロバ抗ヒツジIgGコンジュゲートHRP、Abcam、ab97125)を室温で1時間添加した。二次検出抗体を除去し、洗浄緩衝液で5回洗浄した。50μlのPico ELISA基質(Thermo Scientific、UK、37070)を製造者のガイドラインに従ってプレートに添加し、室温で5分間インキュベートし、EnVisionプレートリーダ(PerkinElmer)を使用して発光を検出した。
【0185】
希釈試験は、アッセイが2ng/ml以下の検出限界を有することを実証した(
図15)。本発明者らは、健康な対照及び骨髄腫患者の血清中のsSEMA4Aをアッセイし、これらがそれぞれ3.3ng/mL及び8.1ng/mLであることを見出した(
図15)。2つの群間の差は有意であったが(p=0.0022;t検定)、sSEMA4Aの絶対レベルは、骨髄腫におけるSEMA4A ADCの活性を破壊する可能性は非常に低い。例えば、ベランタマブ・マホドチン又はCAR-T細胞による骨髄腫におけるTNFRSF17(BCMA)の標的化の成功は、176ng/mLの可溶性BCMAの血清中発現レベル中央値によって損なわれていないようである。したがって、本発明者らは、シェッドSEMA4Aがこの細胞表面タンパク質を標的化する能力に影響を及ぼす可能性は非常に低いと結論付けた。
【0186】
7.2 NCI-H929細胞を死滅させる完全ヒトSEMA4A特異的ヒトAlya IgG1(McMMAFコンジュゲート)の能力に対するsSEMA4Aの影響を測定すること。
セクション5.3に記載される細胞死滅アッセイを使用して、sSEMA4Aの存在が、NCI-H929細胞を死滅させるためのMcMMAFにコンジュゲートされた完全ヒトSEMA4A特異的ヒトAlya IgGの効力に影響を及ぼすかどうかを評価した。sSEMA4Aは、100倍濃縮されたNCI-H929細胞の細胞培養培地(CCM)に由来した。CCM中のsSEMA4Aレベルを、実施例7.1に記載のELISAを使用して定量した。sSEMA4Aを含有しないCCMは、NCI-H929 SEMA4Aノックアウト細胞に由来し、0ng/mlのSEMA4A濃度に使用した。McMMAFにコンジュゲートした完全ヒトファージディスプレイ由来ヒトAlya IgG1の力価を、0、8、25及び100ng/mlでアッセイに添加したsSEMA4Aの存在下で試験した。
【0187】
この実験の結果(n=2)を
図16に示す。McMMAFにコンジュゲートした完全ヒトファージディスプレイ由来ヒトAlya IgG1の細胞死滅IC
50値は、sSEMA4Aの非存在下で測定したIC
50値と比較して有意な変化を示さなかった。
【0188】
実施例8.正常組織及び血液学的組織におけるSEMA4A、BCMA及びCD22の発現プロファイル
8.1 免疫組織化学(IHC)法
SEMA4A:ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織の切片を4ミクロンの厚さで切断した。Ventana Discovery autostainerを用いて切片を脱パラフィン処理し、細胞コンディショニング溶液又はCC1(低pH)溶液中、95℃で64分間抗原回復を行った。SEMA4Aに対する抗体(Atlas抗体、HPA069136、ウサギポリクローナル)を0.2μg/mlの濃度で60分間適用した。色素原として3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)及び対比染色剤としてヘマトキシリンを用いて、Ventana HQキットを使用して検出を完了した。
【0189】
最も近いファミリーメンバーSEMA4Bを過剰発現する細胞を含む、既知のSEMA4A発現を有する細胞株を含む様々なFFPE細胞ペレットを使用して、染色プロトコルを最適化し、その特異性を確認した。予想されるSEMA4A発現(扁桃腺、脾臓)を有する正常ヒト組織を使用して、FFPE組織に対するアッセイの適合性を確認した。
【0190】
BCMA:ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織の切片を4ミクロンの厚さで切断した。Ventana Discovery autostainerを用いて切片を脱パラフィン処理し、CC2(高pH)溶液中、95℃で48分間抗原回復を行った。BCMAに対する抗体(Cell Signaling Technology #88183S、ウサギモノクローナル)を1.6μg/mlの濃度で60分間適用した。色素原としてDAB、対比染色剤としてヘマトキシリンを用いて、Ventana HQキットを使用して検出を完了した。既知のBCMA発現を有する細胞株を含む様々なFFPE細胞ペレットを使用して、染色プロトコルを最適化し、その特異性を確認した。
【0191】
CD22:ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織の切片を4ミクロンの厚さで切断した。Leica Bond autostainerを用いて切片を脱パラフィン処理し、ER2(高pH)溶液中、95℃で20分間抗原回復を行った。CD22に対する抗体(Cell Signaling Technology #98035、ウサギモノクローナル)を0.2μg/mlの濃度で30分間適用した。Leica Bond Refineキットを使用して、DABを色素原として、ヘマトキシリンを対比染色剤として検出を完了した。既知のCD22発現を有する細胞株を含む様々なFFPE細胞ペレットを使用して、染色プロトコルを最適化し、その特異性を確認した。
【0192】
8.2 SEMA4A発現評価
IHCプロトコルを正常組織及び腫瘍組織の集合に適用して、目的の異なる腫瘍タイプにおける発現の有病率及び強度を評価した。切片を、認定された病理学者が調べ、染色結果を、陽性染色腫瘍細胞の割合、並びに大部分の細胞における染色の強度について等級分けした。各試料について、優勢な内在化(膜、細胞質又は核)も認められた。正常組織では、免疫細胞(B細胞並びに骨髄/樹状細胞系統の特定の細胞と一致する)並びに脳のいくつかの細胞において、ヒトSEMA4Aの陽性染色が観察された。
【0193】
腫瘍組織では、MM(いくつかの陽性腫瘍染色を有する試料の92%)、DLBCL(100%)、FL(100%)及びAML(74%)の試料で陽性染色の高い有病率が観察された。発現強度は、MM及びDLBCLにおいて全体的に最も強かった。これらの腫瘍適応症における発現の高い有病率は、非腫瘍組織(脳以外)における発現レベルの欠如又は低さと相まって、SEMA4Aが特異的抗体ベースの抗腫瘍治療アプローチの潜在的に価値のある標的であることを示唆した。
【0194】
多発性骨髄腫及びDLBCLにおけるSEMA4A発現を、これらの腫瘍に対する他の潜在的な治療標的、すなわちMMに対するBCMA及びDLBCLに対するCD22の発現と比較した。同じスコアリングシステムを使用して、SEMA4Aについて染色した同じ試料を染色し、BCMA又はCD22の発現についてスコアリングした。高発現をスコア≧6と定義した。MMについての結果を表13及び14に示し、DLBCLについての結果を表15及び16に示す。
【0195】
全てのMM試料は、SEMA4A及びBCMAの両方についていくらかの陽性を有していた。全体的な発現強度は、SEMA4AとBCMAとの間で類似していると考えられたが、発現は、SEMA4Aについては膜により内在する傾向があり、BCMAについては細胞質においてしばしば優勢であった。個々の試料におけるSEMA4A発現の強度とBCMA発現の強度との間に強い関連は見られなかった(表13)。
【0196】
【0197】
【0198】
DLBCL試料では、全ての症例がSEMA4Aについていくらかの陽性を有したが、CD22については19/20(95%)であった。全体的な発現強度は、CD22よりもSEMA4Aの方が高い傾向があり、スコアがより高く、高発現症例の割合がより高い(表15)。MM症例に関して、SEMA4A発現は主に膜であったが、CD22はしばしばより主に細胞質であった。個々の試料におけるSEMA4A発現の強度とCD22発現との間に関連はないようであった(表16)。
【0199】
【0200】
【0201】
実施例9.有効性のインビボモデル
ヒトMMのNCI-H929、MM.1S、及びMM.1R異種移植モデル(とりわけ)を、側腹部に5x106個の細胞(例えば)を皮下移植することによって、4週齢~6週齢の雌CB-17マウス(又は適切な種)において樹立する(Envigo、Frederick,MD)。ヒトMMのJJN-3異種移植モデルは、雌の無胸腺ヌードマウス(Envigo、Frederick,MD)において、側腹部に10x106個の細胞(例えば)を皮下移植することによって樹立される。腫瘍成長は、研究の過程にわたって監視することができ、腫瘍体積は、[長さ(mm)x幅(mm)x幅(mm)]/2として計算される。腫瘍が150mm3~200mm3に達したら、リード抗体又はIgGアイソタイプADC対照の単回静脈内注射を投与する前に、(例えば)Study Directorソフトウェアパッケージ(Studylog Systems、South San Francisco,CA)に組み込まれた決定論的ランダム化方法を使用して、マウスを群(とりわけ、NCI-H929、MM.1S、MM.1R、及びJJN-3モデルについて、それぞれ群当たりn=5、6、8又は10動物)にランダムに割り当てる。治療情報は腫瘍測定中に盲検化されない。マウスの体重及び腫瘍の測定値を、試験期間中、週に2回決定する。(対照と比較した)腫瘍体積における100%回帰の試料サイズ推定値を、nQueryバージョン4.0(例えば)を使用して計算する(Statistical Solutions Ltd.、Cork,Ireland、2015)。等しい平均の二群t検定を、0.05の有意水準で80%の累乗で使用する(片側検定)。
【0202】
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