(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】リチウム金属負極及びそれを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20241210BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20241210BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241210BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/1395
H01M10/052
H01M4/38 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535295
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 KR2023000611
(87)【国際公開番号】W WO2023136642
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0004911
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ド-ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】キ-ヒュン・キム
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029BJ13
5H029BJ27
5H029CJ02
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ12
5H029HJ14
5H029HJ15
5H050AA15
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB12
5H050FA04
5H050FA15
5H050GA02
5H050GA27
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA12
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
本発明は、リチウム金属層と、前記リチウム金属層の少なくとも一面に位置する酸化層と、を含み、前記酸化層は、クラック部及び非クラック部を有することを特徴とするリチウム金属負極及びその製造方法に関し、リチウム金属層の少なくとも一面に位置する酸化層にクラック部が形成されることで電池の寿命が向上可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属層と、
前記リチウム金属層の少なくとも一面に位置する酸化層と、を含み、
前記酸化層がクラック部及び非クラック部を有することを特徴とする、リチウム金属負極。
【請求項2】
前記クラック部と非クラック部との面積比が、2:8~9:1であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項3】
前記クラック部を有する酸化層の厚さが前記酸化層の最大厚さを基準にして50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項4】
前記クラック部を有する酸化層の厚さが10nm~10μmであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項5】
前記リチウム金属層の厚さが1μm~200μmであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項6】
リチウム金属層と、リチウム金属層の少なくとも一面に位置する酸化層と、を含むリチウム金属負極の製造方法であって、
前記酸化層にクラック部を形成する段階を含む、請求項1のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項7】
前記クラック部を形成する段階は、
前記リチウム金属負極を0.001~1Torr圧力の真空雰囲気下で熱処理する段階を含むことを特徴とする、請求項6に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項8】
前記クラック部を形成する段階は、
前記リチウム金属負極を不活性雰囲気下で熱処理する段階を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項9】
前記クラック部を形成する段階は、
前記リチウム金属負極を40℃~120℃で熱処理する段階を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項10】
前記クラック部を形成する段階は、
前記リチウム金属負極を65℃~85℃で熱処理する段階を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム金属負極を含む、電気化学素子。
【請求項12】
前記電気化学素子がリチウム二次電池を含むことを特徴とする、請求項11に記載の電気化学素子。
【請求項13】
前記リチウム二次電池が、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウム・リチウム対称セル、またはこれらのうち二つ以上を含むことを特徴とする、請求項12に記載の電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム金属負極及びそれを備える電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2022年1月12日出願の韓国特許出願第10-2022-0004911号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術に関する関心が高まるにつれ、携帯電話、タブレットPC、ラップトップコンピューター及びカムコーダー、延いては、電気自動車(EV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)のエネルギーにまで適用分野が拡がることによって、電気化学素子の研究及び開発が次第に増大しつつある。電気化学素子は、このような面で最も注目を浴びている分野であり、最近はこのような電池を開発することにおいて容量密度及び比エネルギーを向上させるために、新しい電極と電池の設計に関わる研究開発に繋がっている。
【0004】
このような電気化学素子、その中でもリチウム硫黄電池(Li-S battery)のようにリチウム金属を負極として使用するリチウム金属二次電池は、理論容量が3,862mAh/gで非常に高く、軽いリチウム金属を負極活物質として使用して次世代高容量電池として脚光を浴びている。リチウム硫黄電池内では、放電時に硫黄の還元反応とリチウムメタルの酸化反応が起こり、この時、硫黄は環状構造のS8から線状構造のリチウムポリスルフィド(Lithium Polysulfide;LiPS)を形成するようになり、このようなリチウム硫黄電池はポリスルフィドが完全にLi2Sに還元されるまで段階的な放電電圧を示すことが特徴である。
【0005】
しかし、リチウム硫黄電池のようなリチウム金属二次電池は、電解液の副反応(電解液の分解による副産物の堆積)、リチウムメタルの不安定性(リチウム金属負極の上にデンドライトが成長して短絡が発生すること)などの理由で充放電過程中に充電/放電効率(Efficiency)が減少して電池の寿命が劣化する。
【0006】
特に、負極活物質であるリチウム金属は、大面積のデンドライトを形成しやすく、電解液中の塩及び添加剤と反応してSEI(solid electrolyte interphase)を形成することで持続的に電解液の塩及び添加剤を消耗させ、結果的には電池の劣化を促進する。
【0007】
そこで、リチウム金属を負極として使用するために、デンドライトの成長を抑制し、電解液中の塩及び添加剤の消耗を阻むための技術開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、クラック部を有する酸化層が表面に形成されることで、リチウムの脱離が改善され、均一な電着が可能になり、かつデンドライト成長が抑制可能なリチウム金属負極及びそれを備える電気化学素子を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、クラック部を有する酸化層が表面に形成されることで、リチウムの脱離が改善され、均一な電着が可能になり、かつデンドライト成長が抑制可能なリチウム金属負極の製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するために、本発明の一面によれば、下記の具現例のリチウム金属負極が提供される。
【0011】
第1具現例によれば、リチウム金属層と、前記リチウム金属層の少なくとも一面に位置する酸化層と、を含み、前記酸化層はクラック部及び非クラック部を有することを特徴とするリチウム金属負極が提供される。
【0012】
第2具現例によれば、第1具現例において、前記クラック部を有する酸化層がクラック部及び非クラック部を有し、前記クラック部と非クラック部との面積比が2:8~9:1であり得る。
【0013】
第3具現例によれば、第1具現例または第2具現例において、前記クラック部を有する酸化層の厚さが前記酸化層の最大厚さを基準にして50%以下であり得る。
【0014】
第4具現例によれば、第1具現例から第3具現例のいずれか一具現例において、前記クラック部を有する酸化層の厚さが10nm~10μmであり得る。
【0015】
第5具現例によれば、第1具現例から第4具現例のいずれか一具現例において、前記リチウム金属層の厚さが1μm~200μmであり得る。
【0016】
第6具現例によれば、リチウム金属層と、リチウム金属層の少なくとも一面に形成された酸化層と、を含むリチウム金属負極の製造方法であって、前記酸化層にクラック部を形成する段階を含む第1具現例から第4具現例のいずれか一具現例のリチウム金属負極の製造方法が提供される。
【0017】
第7具現例によれば、第6具現例において、クラック部を形成する段階は、リチウム金属負極を0.001~1Torr圧力の真空雰囲気下で熱処理する段階を含み得る。
【0018】
第8具現例によれば、第6具現例または第7具現例において、クラック部を形成する段階は、リチウム金属負極を不活性雰囲気下で熱処理する段階を含み得る。
【0019】
第9具現例によれば、第6具現例から第8具現例のいずれか一具現例において、クラック部を形成する段階は、リチウム金属負極を40℃~120℃で熱処理する段階を含み得る。
【0020】
第10具現例によれば、第6具現例から第9具現例のいずれか一具現例において、クラック部を形成する段階はリチウム金属負極を65℃~85℃で熱処理する段階を含み得る。
【0021】
第11具現例によれば、第1具現例から第5具現例のいずれか一具現例のリチウム金属負極を含む電気化学素子が提供される。
【0022】
第12具現例によれば、第11具現例において、電気化学素子はリチウム二次電池を含み得る。
【0023】
第13具現例によれば、第12具現例において、リチウム二次電池が、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウム・リチウム対称セル(symmetric cell)、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施様態によるリチウム金属負極は、リチウム金属表面の酸化層にクラック部が形成されることで、このようなクラック部によってリチウムの脱離が改善され、リチウム金属の表面積の増加によって均一な電着が可能であり、かつデンドライトの成長を抑制することができる。
【0025】
本発明の一実施様態によるリチウム金属負極を含む電気化学素子は、クラック部を有する酸化層を表面に有するリチウム金属負極を含むことで、寿命が向上する。
【0026】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1-3で製造したリチウム金属負極の表面のSEM写真である。
【
図2】比較例1-1で製造したリチウム金属負極の表面のSEM写真である。
【
図3】実施例2-1で製造したリチウム・リチウム対称セルのサイクル寿命性能を示した図である。
【
図4】実施例2-2で製造したリチウム・リチウム対称セルのサイクル寿命性能を示した図である。
【
図5】実施例2-3で製造したリチウム・リチウム対称セルのサイクル寿命性能を示した図である。
【
図6】実施例2-4で製造したリチウム・リチウム対称セルのサイクル寿命性能を示した図である。
【
図7】実施例2-5で製造したリチウム・リチウム対称セルのサイクル寿命性能を示した図である。
【
図8】比較例2-1で製造したリチウム・リチウム対称セルのサイクル寿命性能を示した図である。
【
図9】実施例3-1~3-5及び比較例3-1で製造したリチウム硫黄電池のサイクル寿命性能を示した図である。
【
図10】本発明の一具現例によるリチウム金属負極の断面図である。
【
図11】本発明の一具現例によるリチウム金属負極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応じた意味及び概念で解釈されねばならない。
【0029】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0030】
リチウム金属は、大気に露出する場合、大気中に存在する気体の種類によって、Li2CO3、Li2O、LiOHなどのような酸化層がリチウム金属の表面に形成される。このような酸化層は、リチウム金属の表面における電流密度(current density)を不均一にし、リチウムの溶解と析出(deposition)に必要な表面積を減少させるだけでなく、抵抗層として作用してイオン伝導度も減少させる。また、このような酸化層によってリチウムが不均一に析出されるという問題がある。
【0031】
析出されたリチウムの形態は、充放電電流密度と電解質の種類、そしてデンドライト、モス(moss)、スフィア(sphere)形態のリチウムの成長と関係がある。デンドライト形態で成長しているリチウムの一部が放電中に切れてデッド(dead)リチウムが形成され、これは電気化学的充放電は不可能であるが、化学的に強い反応性を有する。このようなデッドリチウムの形成によってリチウム金属を負極として使用した場合、リチウムの可逆的な充放電が難しくなり、その結果、非水溶性電解質中でもリチウム金属の電極寿命特性は良くなく、熱安定性も劣る。
【0032】
そこで、本発明者は、リチウム金属の表面に存在する酸化層にクラック部を形成すると、前述した問題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0033】
本発明の一面によるリチウム金属負極は、リチウム金属層と、前記リチウム金属層の少なくとも一面に位置する酸化層と、を含み、前記酸化層は、クラック部及び非クラック部を有することを特徴とする。
【0034】
前記リチウム金属は、リチウムまたはリチウム合金であり得る。この際、リチウム合金は、リチウムと合金化が可能な元素を含み得る。具体的には、リチウムと、Si、Sn、C、Pt、Ir、Ni、Cu、Ti、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge及びAlからなる群より選択される一種以上との合金であり得る。
【0035】
前記リチウム金属負極は、リチウム金属層の一側に集電体をさらに含み得る。前記集電体は、負極集電体が使用され得る。前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、銅、アルミニウム、ステンレススチール、亜鉛、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、鉄、クロム、これらの合金及びこれらの組合せからなる群より選択され得る。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されてもよく、前記合金としては、アルミニウム-カドミウム合金が使用可能であり、その他にも、焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子または伝導性高分子などを使用し得る。通常、負極集電体としては銅箔板を適用する。
【0036】
また、その形態は、表面に微細な凹凸が形成された/未形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が使用され得る。また、前記負極集電体は、3~500μmの厚さ範囲を有し得る。負極集電体の厚さが前述した範囲を満たす場合、集電効果を確保できると共に、セルを折り畳んで(folding)組み立てる場合にも加工性の確保が容易になり得る。
【0037】
前記リチウム金属層は、シートまたはホイルの形態であってもよく、場合によっては、集電体の上にリチウムまたはリチウム合金が乾式工程によって蒸着またはコーティングされた形態であるか、または粒子状のリチウムまたはリチウム合金が湿式工程などによって蒸着またはコーティングされた形態であり得る。
【0038】
リチウム金属は、酸素に露出されるか、またはリチウム金属負極を圧延する過程で潤滑剤成分と反応してリチウム金属の表面に厚い酸化層が形成され得る。
【0039】
本発明の一面によるリチウム金属負極は、リチウム金属層と、リチウム金属層の少なくとも一面に位置する酸化層と、を含み、前記酸化層はクラック部及び非クラック部を有する。
【0040】
本明細書において、前記酸化層の「クラック部」とは、隣接する酸化層の「非クラック部」と比較して酸化層の厚さが薄い領域を指し得る。例えば、「非クラック部」は、酸化層が厚い領域を指し、「クラック部」は、隣接する「非クラック部」と比較して酸化層が薄い領域を指し得る。具体的には、「クラック部」は、「非クラック部」の酸化層、即ち、リチウム金属の酸化層の厚さにおいて、最大の厚さを基準にして50%以下、40%以下、30%以下、20%以下または10%以下の領域を指し得る。または、「クラック部」は、酸化層が存在しないことによってリチウム金属層が露出した領域を指し得る。
【0041】
図10は、本発明の一具現例によるリチウム金属負極の断面図であり、
図11は、本発明の一具現例によるリチウム金属負極をさらに具体的に示した断面図である。
【0042】
図10及び
図11を参照すると、リチウム金属層10の一面に酸化層20が位置しており、酸化層20は、クラック部30及び非クラック部40を有している。クラック部30は、リチウム金属の酸化層の厚さにおいて、最大厚さを基準にして50%以下の部分になり得る。また、クラック部30は、酸化層が存在しないことによってリチウム金属層10が露出した領域を指し得る。一方、酸化層の表面が完全に扁平になることは不可能であるので、酸化層表面の微細な高さの差を有する部分はクラック部として看做さなくてもよい。例えば、非クラック部50は、酸化層の最も厚い部分に比べては高さが低いが、クラック部30とは区別される。
【0043】
前記
図10及び
図11は、本発明の一具現例によるリチウム金属負極の断面を示したものであるため、本発明によるリチウム金属負極は、前記
図10及び
図11の構造に制限されない。例えば、前記
図10及び
図11は、リチウム金属層の一面に酸化層が位置する場合を示したが、本発明の他の具現例によれば、リチウム金属層の両面に酸化層が位置し得る。
【0044】
本明細書において、「クラック部」とは、酸化層の表面に形成されたリセス(recess)、ホール、開口(opening)、トレンチピット(trench pit)などを含み得る。そして、前記クラック部の深さは、リチウム金属の表面に形成された酸化層の高さが最も高い厚さから、クラック部の最も低い地点まで、リチウム金属の表面に垂直な高さの差を意味し得る。例えば、リチウム金属の表面に形成された酸化層の最も高い厚さが100nmであり、クラック部に残存する酸化層の厚さが5nmである場合、クラック部の深さは95nmになり得る。
【0045】
そして、酸化層の表面が完全に扁平になることは不可能であるため、前記クラック部は酸化層の表面に微細な高さの差を有する部分を意味しなくてもよい。即ち、前記クラック部は、少なくとも20nm以上、または30nm以上の深さを有する場合のみを意味し得る。
【0046】
また、前記クラック部の深さは、酸化層の厚さの60%以上、70%以上、80%以上または90%以上になり得る。また、クラック部には、酸化層が全て除去されて存在しない場合もあり、この時、前記クラブ部の深さは酸化層の厚さの100%になり得る。
【0047】
本明細書において、「クラック部」とは、30,000倍率の走査電子顕微鏡(SEM)で観察されたイメージにおいて、酸化物が存在しない領域を指し得る。または、「クラック部」とは、30,000倍率の走査電子顕微鏡(SEM)で観察されたイメージにおいて、黒色で示される領域または隣接する部位の「非クラック部」よりも暗い色で示される領域を指し得る。一方、「非クラック部」とは、白色または隣接する部位のクラック部に比べて明るい色で示され得る。この時、走査電子顕微鏡(SEM)撮影は、熱処理直後、電池形成直後または電池サイクリング直前に行われ得るが、これに制限されない。また、SEM観察は、リチウム金属負極の表面を上方から観察したことであり、酸化層及びリチウム金属に平行な平面の垂直方向で観察(top-down)したことである。前記「クラック部」と「非クラック部」は、SEMイメージを目視で観察して黒色または隣接する領域に比べて相対的に暗い領域をクラック部と判断し、白色または隣接する領域に比べて相対的に明るい領域を非クラック部として判断し得る。
【0048】
前記クラック部と非クラック部は、SEMで観察されたイメージを二値画像(binary image)に変換して、より確実に区分し得る。具体的には、SEMで観察されたイメージを白色と黒色に二分化するように変換してクラック部と非クラック部とをはっきり区分し得る。
【0049】
例えば、SEMで観察した原画像(raw image)を閾値処理(thresholding)することで二値画像に変換し得る。ここで、閾値処理は、グローバル閾値処理、大津の二値化(otsu thresholding) または適応的閾値処理(adaptive thresholding)であり得る。
【0050】
前記グローバル閾値処理とは、閾値を決めた後、ピクセル値が閾値を超えると黒色、閾値を超えないと白色に処理することである。
【0051】
前記大津の二値化とは、大津のアルゴリズムを用いて二値画像を作ることである。大津のアルゴリズムは、二値画像に変換されるとき、閾値を任意で決めてピクセルを二つの部類に分け、二つの部類の明暗分布を求める作業を繰り返す。以後、全ての場合の数のうち二つの部類の明暗分布が最も均一なときの閾値を選択する。大津のアルゴリズムは、最適の閾値が自動的に探されるという長所がある。
【0052】
前記適応的閾値処理とは、イメージを複数の領域に分けた後、その周辺のピクセル値のみを活用して二値画像に変換されるときの閾値を求めることである。原画像において背景色がさまざまであるか、または色相が多様な場合、一つの閾値で鮮かな二値画像にしにくいとき、適応的閾値処理を用いると、優秀な品質の二値画像を作ることができる。
【0053】
本発明の一実施様態において、酸化層の表面をSEMで観察したイメージを用いてクラック部と非クラック部との面積比を計算し得る。例えば、前述した方法によってクラック部と非クラック部を区分した後、クラック部と非クラック部との境界線を設定し、クラック部領域及び非クラック部領域の面積を導出して、クラック部領域と非クラック部領域との面積比を計算し得る。この際、クラック部と非クラック部との境界線としては、SEMイメージにおいて白色または明るい部分と、黒色または暗い部分が確実に区分される境界部分を設定し得る。一方、酸化層である非クラック部領域内においても、酸化層の微細な高さ差などによって非クラック部においても非常に明るい部分と若干明るい部分が存在するが、本発明で意味するクラック部は、非クラック部の酸化層の厚さに比べて一定割合以下の部分を意味するので、非クラック部で非常に明るい部分と若干明るい部分が観察されるとしても、これは非クラックにおける微細な高さ差によって発生する差であるため、若干明るい部分も非クラック部として看做し、相対的に明るくないとしてクラック部として看做しない。
【0054】
本発明の一実施様態において、非クラック部は、クラック部によって囲まれて形成される非クラック部である一つ以上の「酸化物アイランド(島)」を形成し得る。この際、前記酸化物アイランド(非クラック部)は、クラック部によって囲まれた領域内における最大酸化層の厚さと同一であるか、或いは90%以上、80%以上、70%以上、60%以上または50%以上の厚さを有する領域を指し得る。例えば、「酸化物アイランド」は、厚さが100~120nmである酸化層領域(非クラック部)であり、5nm以下の厚さを有する酸化物領域(クラック部)で囲まれたものであり得る。
【0055】
本発明の一実施様態において、前記「酸化物アイランド(即ち、非クラック部)」領域は、30,000倍率の走査電子顕微鏡(SEM)で観察されたイメージにおいて白色または隣接する部位のクラック部に比べて明るい色で示され得る。一方、前記「酸化物アイランド」を囲む酸化物が足りない領域(即ち、クラック部)は、黒色または隣接する部位の非クラック部に比べて暗い色で示され得る。この際、SEM観察は、リチウム金属負極を熱処理した直後、電池を製造した直後または電池のサイクリング直前に行われ得るが、これに制限されない。また、SEM観察は、リチウム金属負極の表面を上方から観察したことであって、酸化層及びリチウム金属に平行な平面の垂直方向で観察(top-down)したことである。
【0056】
本発明の一実施様態において、酸化層はリチウム酸化層になり得る。また、酸化層は、自然酸化層であり得る。自然酸化層は、金属と大気成分との反応によって形成されるものであって、金属表面に形成される。リチウムの自然酸化層は通常、二層構造に形成される。二層構造において、内層は酸化リチウム(Li2O)になり、外層は水酸化リチウム(LiOH)及び炭酸リチウム(Li2CO3)になり得る。また、リチウム金属は、窒素と反応して窒化リチウム(Li3N)を形成し、これによって前記リチウムの自然酸化層には窒化リチウムが含まれ得る。但し、リチウム酸化層の構成物質は、前記物質に制限されず、通常の技術者が適用可能な多様な物質から構成され得る。
【0057】
本発明の一実施様態によるリチウム金属負極は、このようなリチウム金属の表面に形成された酸化層にクラック部が存在することによって、リチウム金属の表面に存在する酸化層の全部または一部が除去または破壊され得る。このようなクラック部によって、リチウム脱離に抵抗として作用する厚い酸化層の全部または一部が除去または破壊されてリチウム金属が露出するか、または酸化層が薄くなってリチウムの脱離に必要な過電圧を減少させるため、リチウムの脱離を改善することができ、電着過程ではクラック部がリチウムの核形成部位(nucleation sites)として使用され得ると共に、クラック部によってリチウム金属の表面積が増加するにつれ、表面の電場が減少してデンドライト成長を抑制するので、電着が均一になる。
【0058】
本発明の一実施様態において、前記酸化層は、クラック部及び非クラック部を有してもよく、前記クラック部と非クラック部の面積比は2:8~9:1、または4:6~6:4であり得る。前記クラック部と非クラック部の面積比が前述した範囲を満たす場合、リチウム脱離の改善と均一な電着、デンドライトの成長抑制がさらに容易になり、電池寿命の向上を図ることができる。前記クラック部及び前記非クラック部の面積は、走査電子顕微鏡(SEM)で酸化層を観察したイメージから計算され得る。
【0059】
本発明の一実施様態において、クラック部の少なくとも一部または全部は、細長い形状を有し、クラック部の平均幅は1~500nm、10~400nmまたは50~300nmであり得る。
【0060】
本発明の一実施様態において、クラック部の少なくとも一部または全部は、細長い形状を有し、クラック部の平均長さは2.5μm以上、または3μm以上になり得る。
【0061】
本発明の一実施様態において、クラック部の垂直断面は、少なくとも一部または全部が細長い形状を有し、クラック部の平均長さに対する平均幅の比が0.001~0.2、0.01~0.2または0.03~0.2になり得る。
【0062】
本明細書において、「長い形状」とは、非球形、即ち、楕円形の形状のように異なる垂直方向において異なる直径を有する形状として広範囲に理解されなければならない。また、楕円形の形状に制限されず、長方形、曲がりくねった形態などの形状に限定されず、不規則な形状も含まれ得る。
【0063】
前記クラック部の長さは、クラック部の最も遠い二つの地点間の距離であって、酸化層が形成されたリチウム金属を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したイメージから判断し得る。具体的には、電極の表面をSEMで観察したとき、表面で観察されるクラック部のイメージから判断し得る。
【0064】
前記クラック部の幅は、クラック部の最も遠い二つの地点の間を連結した仮想線に垂直な方向において、クラック部の一側と他側に存在する酸化層間の距離を意味し、酸化層が形成されたリチウム金属を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージから判断し得る。具体的には、電極の表面をSEMで観察したイメージから判断し得る。具体的には、電極の表面をSEMで観察したとき、表面に観察されるクラック部のイメージから判断し得る。
【0065】
本発明の一実施様態において、前記酸化層の総厚さは10nm~10μm、または20nm~1μmであり得る。即ち、例えば、酸化層の非クラック部の厚さが前記範囲を満たし得る。酸化層の厚さが前述した範囲を満たす場合、リチウム金属の保管過程における変質の発生を容易に防止可能であり、抵抗が高くてリチウムの脱離が発生しない問題をより容易に防止することができる。
【0066】
本発明の一実施様態において、リチウム金属層は、シート、ホイルまたは薄膜形態であり得る。そして、前記リチウム金属層の厚さは1~200μm、または5~100μmであり得る。リチウム金属層の厚さが前述した範囲を満たす場合、電池駆動に十分なリチウムソース(source)を提供すると共に、高いエネルギー密度の具現がより容易になる。
【0067】
本発明の一実施様態によるリチウム金属負極は、下記の方法によって製造され得るが、これに限定されない。
【0068】
本発明の一面によれば、リチウム金属層及びリチウム金属層の少なくとも一面に形成された酸化層を含むリチウム金属負極の製造方法は、酸化層にクラック部を形成する段階を含む。
【0069】
本発明の一実施様態によるリチウム金属負極は、リチウム金属を熱処理してリチウム金属の表面に形成された酸化層にクラック部を形成し得る。リチウム金属が熱処理される過程でリチウム金属の体積が膨張することによって、リチウム金属の表面に存在する酸化層にクラック部が発生し得る。
【0070】
本発明の一実施様態において、前記リチウム金属を40℃~120℃、60℃~100℃または65℃~85℃で熱処理し、リチウム金属の表面に形成された酸化層にクラック部を形成し得る。前記リチウム金属を熱処理する温度条件が上記の条件を満たす場合、リチウム金属表面の酸化層にクラック部が充分に形成され、リチウムが蒸発(evaporation)してリチウム金属の厚さが減少し、リチウム負極活物質が減少する問題をより効果的に防止することができ、これによってそれを含む電気化学素子の寿命がさらに改善されることが可能である。
【0071】
本発明の一実施様態において、前記リチウム金属を0.001~1Torr圧力の真空雰囲気下で熱処理してリチウム金属の表面に形成された酸化層にクラック部を形成し得る。前記リチウム金属が前述した圧力条件及び真空雰囲気で熱処理されることで、残留気体がリチウム金属の表面と反応して酸化層がさらに形成されることをより容易に防止することができる。また、熱処理過程中にクラック部が発生すると共に、クラック部によって露出したリチウム金属が残留気体と即時に反応して酸化層が再形成されることをより容易に防止することができる。
【0072】
本発明の他の実施様態において、前記リチウム金属を不活性雰囲気下で熱処理してリチウム金属の表面に形成された酸化層にクラック部を形成し得る。ここで、不活性雰囲気を形成する不活性気体は、アルゴン、窒素など、化学反応を起こさない気体を意味するが、前記気体に制限されず、通常の技術者が適用可能な気体を全て含む。前記リチウム金属が不活性雰囲気下で熱処理されることで、残留気体がリチウム金属の表面と反応して酸化層がさらに形成されることをより容易に防止することができる。また、熱処理過程中にクラック部が発生すると共に、クラック部に露出したリチウムまたは薄くなった酸化層が残留気体と即時に反応して酸化層がさらに形成されることをより容易に防止することができる。
【0073】
本発明の一実施様態において、前記リチウム金属を0.001~1Torr圧力の真空雰囲気下で40℃~120℃、または60℃~100℃で熱処理してリチウム金属の表面に形成された酸化層に亀裂を形成し得る。
【0074】
本発明の他の実施様態において、前記リチウム金属を不活性雰囲気下で40℃~120℃、または60℃~100℃で熱処理してリチウム金属の表面に形成された酸化層に亀裂を形成し得る。
【0075】
本発明の一実施様態による電気化学素子は、亀裂を有する酸化層を表面に含むリチウム金属負極を備えることで、寿命が向上できる。
【0076】
本発明の電気化学素子は、電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的には、全種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシター素子のようなキャパシタ(capacitor)などが挙げられる。
【0077】
本発明の一実施様態において、前記電気化学素子は、リチウム金属を負極として使用する当業界で通用する全てのリチウム二次電池であり、その中でも、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池またはリチウム・リチウム対称セル(symmetric cell)であり得る。
【0078】
本発明の一実施様態による電気化学素子は、正極、リチウム金属負極、分離膜及び非水電解液を含む。前記電気化学素子は、正極を負極と対面させ、その間に分離膜を介在した後、非水電解液を注入する工程によって製造され得る。
【0079】
以下、本発明の一実施様態による電気化学素子において、正極、分離膜及び非水電解液についてより具体的に説明する。
【0080】
前記正極は、正極活物質、バインダー及び導電材などを含む。前記正極活物質としては、通常の電気化学素子に適用可能なものであり得る。例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン系化合物(リチウムNCM系化合物)を含み得る。また、硫黄元素(Elemental sulfur;S8)、硫黄系化合物またはこれらの混合物を含み得る。前記硫黄系化合物は、具体的には、Li2Sn(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素-硫黄複合体((C2Sx)n:x=2.5~50、n≧2)などであり得る。また、前記正極活物質は、硫黄-炭素複合体を含んでもよく、硫黄物質は単独では電気伝導性がないため、導電材と複合して使用し得る。前記硫黄-炭素複合体を構成する炭素材(または、炭素源)は、多孔性構造であるか、または比表面積が高いものであって、当業界で通常使用されるものであれば、いずれでもよい。例えば、前記多孔性炭素材としては、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、 活性炭繊維(ACF)などの炭素繊維;活性炭素;またはこれらのうち二種以上であり得るが、これらに制限されず、その形態は、球状、棒状、針状、板状、管状またはバルク形であって、電気化学素子に適用可能なものであれば、特に制限されない。
【0081】
また、前記炭素材には気孔が形成されており、前記気孔の孔隙率は40~90%、または60~80%であり得る。前記気孔の孔隙率が前述した範囲を満たす場合、リチウムイオン伝達が正常に行われやすく、機械的強度が低下する問題をより容易に防止することができる。前記炭素材の気孔サイズは、10nm~5μm、または50nm~5μmであり得る。前記炭素材の気孔サイズが前述した範囲を満たす場合、リチウムイオンの透過が容易になり、電極同士の接触による電池短絡及び安全性の問題をより容易に防止することができる。
【0082】
前記バインダーは、正極活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に助かる成分であって、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリビニリデンフルオライド-ポリヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF/HFP)、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、アルキル化ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリメチル(メト)アクリレート、ポリエチル(メト)アクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルクロリド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、スチレン-ブチレンゴム、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、でん粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、またはこれらの二種以上を使用し得るが、必ずしもこれらに限定されることではない。
【0083】
前記バインダーは、通常、正極の総重量100重量部を基準にして1~50重量部、または3~15重量部が添加され得る。前記バインダーの含量が前述した範囲を満たす場合、正極活物質と集電体との接着力の確保が容易になると共に、電池容量の確保が容易になり得る。
【0084】
前記正極に含まれる導電材は、電気化学素子の内部環境で副反応を誘発せず、当該電池に化学的変化を誘発することなく優秀な電気伝導性を有するものであれば、特に制限されない。代表的には、黒鉛または導電性炭素を使用し得る。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック;結晶構造がグラフェンやグラファイトである炭素系物質;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性酸化物;及びポリフェニレン誘導体などの導電性高分子;またはこれらの二種以上を使用し得るが、必ずしもこれらに限定されることではない。
【0085】
前記導電材は、通常、正極の全体重量100重量部を基準にして0.5~50重量部、または1~30重量部で添加され得る。導電材の含量が前述した範囲を満たす場合、電気伝導性の向上が容易になり、電気化学的特性の低下を容易に防止可能であり、かつ正極の容量及びエネルギー密度の確保が容易になる。
【0086】
正極に導電材を含ませる方法は特に制限されず、正極活物質へのコーティングなど、当該分野において公知された通常の方法を用い得る。また、必要に応じて、正極活物質に導電性の第2被覆層が付加されることで前記のような導電材の添加を代替し得る。
【0087】
また、本発明の正極には、その膨張を抑制する成分として充填剤が選択的に添加され得る。このような充填剤は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ電極の膨張が抑制可能なものであれば、特に制限されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラスファイバー、炭素繊維などの繊維状物質;などを使用し得る。
【0088】
前記正極は、正極活物質、バインダー及び導電材などを分散媒(溶媒)に分散、混合してスラリーを作り、それを正極集電体の上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造され得る。前記分散媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone;NMP)、ジメチルホルムアミド(Dimethyl formamide;DMF)、ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide;DMSO)、エタノール、イソプロパノール、水及びこれらの混合物を用い得るが、必ずしもこれらに限定されることではない。
【0089】
前記正極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレススチール(STS)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO2)、FTO(F doped SnO2)及びこれらの合金と、アルミニウム(Al)またはステンレススチールの表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)または銀(Ag)を表面処理したものなどを用い得るが、必ずしもこれらに限定されることではない。正極集電体の形態は、ホイル、フィルム、シート、パンチングされたもの、多孔質体、発泡体などの形態であり得る。
【0090】
前記正極と負極との間には通常の分離膜が介在され得る。前記分離膜電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜であって、通常の分離膜として使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液の含浸能力が優秀なものが望ましい。また、前記分離膜は、正極と負極を互いに分離または絶縁し、かつ正極と負極との間におけるリチウムイオンの輸送を可能にする。このような分離膜は、多孔性であり、非伝導性または絶縁性の物質からなり得る。前記分離膜は、フィルムのような独立的な部材であるか、または正極及び/または負極に付加されたコーティング層であり得る。
【0091】
前記分離膜として使用可能なポリオレフィン系多孔性膜の例には、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子を各々単独でまたはこれらを混合した高分子から形成した膜が挙げられる。前記分離膜として使用可能な不織布の例には、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエステル(polyester)などを各々単独でまたはこれらを混合した高分子から形成した不織布が挙げられ、このような不織布は、多孔性ウェブ(web)を形成する繊維形態であって、張繊維から構成されたスパンボンド(spunbond)またはメルトブローン(meltblown)形態を含み得る。
【0092】
前記分離膜の厚さは特に制限されないが、1~100μm、または5~50μmであり得る。分離膜の厚さが前述した範囲を満たす場合、機械的物性を維持できると共に、分離膜が抵抗層として作用することによる電池性能の低下問題を容易に防止することができる。前記分離膜の気孔サイズ及び気孔度は特に制限されないが、気孔サイズは0.1~50μmであり、気孔度は10から95%であり得る。前記分離膜の気孔サイズが前述した範囲を満たす場合、分離膜が抵抗層として作用することを容易に防止でき、分離膜の機械的物性を容易に維持することができる。
【0093】
前記非水電解液が、一つ以上の二重結合を含むか、または含まず、酸素原子及び硫黄原子のいずれか一つを一つ以上含むヘテロ環化合物を含む第1溶媒と、エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のうちいずれか一つ以上を含む第2溶媒と、リチウム塩と、硝酸リチウムと、を含み得る。
【0094】
以下、本発明の一実施様態による非水電解液に含まれる第1溶媒、第2溶媒、リチウム塩及び硝酸リチウムについて各々具体的に説明する。
【0095】
第1溶媒
前記第1溶媒は、一つ以上の二重結合を含むか、または含まず、酸素原子及び硫黄原子のうちいずれか一つを一つ以上含むヘテロ環化合物を含むものであって、ヘテロ原子(酸素原子または硫黄原子)の孤立電子対(lone pair electrons)の非局在化(delocalization)によって塩(salt)を溶解しにくい特性を有するため、電池の初期放電段階でヘテロ環化合物の開環反応(ring opening reaction)によってリチウム金属の表面に高分子保護膜(solid electrolyte interphase;SEI層)を形成することでリチウムデンドライトの生成を抑制でき、さらには、リチウム金属の表面における電解液の分解及びそれによる副反応を減少させることで電気化学素子の寿命特性を向上させることができる。
【0096】
即ち、本発明のヘテロ環化合物は、リチウム金属の表面に高分子保護膜を形成するために、一つ以上の二重結合を含んでもよく、極性を帯びさせて電解液中の他の溶媒との親和度を高めるなどの効果を発現させるように一つ以上のヘテロ原子(酸素原子または硫黄原子)を必ず含む。
【0097】
前記ヘテロ環化合物は、3~15員環、または3~7員環または5~6員環のヘテロ環化合物であり得る。また、このような前記ヘテロ環化合物は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~8の環状アルキル基、炭素数6~10のアリール基、ハルロゲン基、ニトロ基(-NO2)、アミン基(-NH2)及びスルホニル基(-SO2)からなる群より選択される一種以上に置換または非置換のヘテロ環化合物であり得る。また、前記ヘテロ環化合物は、炭素数3~8の環状アルキル基及び炭素数6~10のアリール基のうち一種以上とヘテロ環化合物の多環式化合物であり得る。
【0098】
前記ヘテロ環化合物が炭素数1~4のアルキル基に置換された場合、ラジカルが安定化して電解液との副反応を抑制し得る。また、ハロゲン基またはニトロ基に置換された場合、リチウム金属の表面に機能性保護膜を形成でき、この際、前記形成された機能性保護膜は、圧縮(compact)された形態の保護膜として安定し得る。また、リチウム金属の均一な蒸着(deposition)が可能になり得る。特に、電気化学素子がリチウム硫黄電池である場合、ポリスルフィドとリチウム金属との副反応を抑制し得る。
【0099】
前記ヘテロ環化合物の具体的な例としては、1,3-ジオキソラン(1,3-dioxolane)、4,5-ジエチル-1,3-ジオキソラン(4,5-diethyl-1,3-dioxolane)、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン(4,5-dimethyl-1,3-dioxolane)、4-メチル-1,3-ジオキソラン(4-methyl-1,3-dioxolane)、4-エチル-1,3-ジオキソラン(4-ethyl-1,3-dioxolane)、1,3-ジオキサン(1,3-dioxane)、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、4-メチル-1,3-ジオキサン(4-methyl-1,3-dioxane)、2-メチル-1,3-ジオキサン(2-methyl-1,3-dioxane)、フラン(furan)、2-メチルフラン(2-methylfuran)、3-メチルフラン(3-methylfuran)、2-エチルフラン(2-ethylfuran)、2-プロピルフラン(2-propylfuran)、2-ブチルフラン(2-butylfuran)、2,3-ジメチルフラン(2,3-dimethylfuran)、2,4-ジメチルフラン(2,4-dimethylfuran)、2,5-ジメチルフラン(2,5-dimethylfuran)、ピラン(pyran)、2-メチルピラン(2-methylpyran)、3-メチルピラン(3-methylpyran)、4-メチルピラン(4-methylpyran)、ベンゾフラン(benzofuran)、2-(2-ニトロビニル)フラン(2-(2-Nitrovinyl)furan)、チオフェン(thiophene)、2-メチルチオフェン(2-methylthiophene)、2-エチルチオフェン(2-ethylthiphene)、2-プロピルチオフェン(2-propylthiophene)、2-ブチルチオフェン(2-butylthiophene)、2,3-ジメチルチオフェン(2,3-dimethylthiophene)、2,4-ジメチルチオフェン(2,4-dimethylthiophene)及び2,5-ジメチルチオフェン(2,5-dimethylthiophene)などが挙げられる。
【0100】
このようなヘテロ環化合物を含む第1溶媒は、本発明の一実施様態による非水電解液に含まれる全体有機溶媒(即ち、第1溶媒+第2溶媒)100体積比に対して5~50の体積比で含まれ得る(残りは第2溶媒になる)。前記第1溶媒の含量が前述した範囲を満たす場合、リチウム金属の表面に保護膜が完全に形成されない問題を容易に防止することができ、電解液及びリチウム金属の表面抵抗増加による電池の容量及び寿命減少の問題を容易に防止することができる。
【0101】
特に、正極活物質が硫黄である場合、ポリスルフィドの溶出量を減少させる能力が低下して、電解液の抵抗増加の抑制が難しくなる問題を容易に防止することができる。
【0102】
第2溶媒
前記第2溶媒は、エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のうちいずれか一つ以上を含むものであって、リチウム塩を溶解して電解液がリチウムイオン伝導度を有するようにするだけではなく、正極活物質を溶出させてリチウムとの電気化学的反応を円滑にする役割を果たし得る。特に、正極活物質が硫黄である場合、正極活物質である硫黄を溶出させてリチウムとの電気化学的反応を円滑にする役割を果たし得る。
【0103】
前記カーボネート化合物は、線状カーボネート系化合物または環状カーボネート系化合物であり得る。
【0104】
前記エーテル系化合物の具体的な例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、またはこれらの二種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
また、前記エステル系化合物としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、またはこれらの二種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
前記アミド系化合物は、当業界で使用する通常のアミド系化合物であり得る。
【0107】
前記線状カーボネート系化合物としては、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate;DPC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate;EMC)、メチルプロピルカーボネート(methylpropyl carbonate;MPC)、エチルプロピルカーボネート(ethylpropyl carbonate;EPC)、またはこれらの二種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
前記環状カーボネート系化合物としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、これらのハロゲン化物(フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate;FEC)など)、またはこれらの二種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
前記第2溶媒は、本発明の一実施様態による非水電解液に含まれる全体有機溶媒(即ち、第1溶媒+第2溶媒)100体積比に対して50~95体積比で含まれ得る。前記第2溶媒の含量が前述した範囲を満たす場合、リチウム塩を充分に溶解でき、リチウムイオン伝導度が劣る問題を容易に防止することができ、正極活物質が溶解され得る濃度を超過して析出される問題を容易に防止することができる。特に、正極活物質が硫黄である場合、正極活物質である硫黄が溶解され得る濃度を超過して析出される問題を容易に防止することができ、硫黄が過度に溶出されてリチウムポリスルフィドとリチウム金属負極のシャトル現象がひどくなり、寿命が減少する問題を容易に防止することができる。
【0110】
一方、前記第1溶媒及び第2溶媒を含む有機溶媒は、本発明の一実施様態による非水電解液の全体100重量%に対して60~99.5重量%、または60~99重量%、または60~98重量%、または60~95重量%で含まれ得る。前記有機含量が前述した範囲を満たす場合、電解液の粘度が高くなってイオン伝導度が減少する問題またはリチウム塩や添加剤が電解液に完全に溶解されない問題を容易に防止することができ、電解液中のリチウム塩の濃度が低くなってイオン伝導度が減少する問題を容易に防止することができる。
【0111】
リチウム塩
前記リチウム塩は、イオン伝導性を増加させるために使用される電解質塩として、この例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiC4BO8、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(C2F5SO2)2NLi、(SO2F)2NLi(即ち、LiFSI)、(CF3SO2)2NLi(即ち、LiTFSI)、(CF3SO2)3CLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド、またはこれらの二種以上が挙げられる。
【0112】
前記リチウム塩濃度は、イオン伝導度などを考慮して決定でき、例えば、0.2~2Mまたは0.5~1Mであり得る。前記リチウム塩の濃度が前述した範囲を満たす場合、電池駆動に適するイオン伝導度を容易に確保でき、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が低下するか、またはリチウム塩そのものの分解反応が増加することを防止することができる。
【0113】
硝酸リチウム
本発明の一実施様態による非水電解液は、硝酸リチウム(LiNO3)を含み得る。硝酸リチウムは、リチウム金属負極と反応して窒化リチウム(Li3N)、リチウムオキシナイトライド(LiON)のようなリチウム親和性保護膜をリチウム金属負極の表面に形成してリチウムデンドライトの成長を抑制し、電解液成分の分解を防止して、電池寿命及び効率を向上させることができる。
【0114】
また、必要に応じて、硝酸ランタニウム(La(NO3)3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、亜硝酸リチウム(LiNO2)、亜硝酸カリウム(KNO2)、亜硝酸セシウム(CsNO2)、またはこれらの二種以上をさらに含み得る。
【0115】
前記硝酸リチウムは、非水電解液の全体100重量%に対して0.1~7重量%、または0.5~5重量%、または0.5重量%~1.5重量%の含量で含まれ得る。硝酸リチウムの含量が前述した範囲を満たす場合、クーロン効率が急激に低くなる問題を容易に防止でき、電解液の粘度が高くなる現象を容易に防止することができる。
【0116】
本発明の一実施様態による非水電解液は、第1溶媒である1,3-ジオキソラン、第2溶媒であるジメトキシエタン、リチウム塩である(CF3SO2)2NLi及び硝酸リチウムを含み得る。前記1,3-ジオキソランとジメトキシエタンは、高いリチウムポリスルフィド溶解度を有し、かつリチウム金属負極を安定化できる。これによって、前記非水電解液が前述した物質を含む場合、最適の電気化学素子特性を示すことが可能になる。
【0117】
一方、本発明の一実施様態によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに適用されることは勿論、中・大型デバイスの電源である電池モジュールの単位電池に特に好適に使用され得る。また、このような面で、本発明は、二つ以上の電気化学素子が電気的に接続(直列または並列)されて含まれた電池モジュールを提供する。前記電池モジュールに含まれる電気化学素子の数は、電池モジュールの用途及び容量などを考慮して多様に調節可能であることは勿論である。さらに、本発明は、当該分野における通常の技術によって前記電池モジュールを電気的に接続した電池パックを提供する。前記電池モジュール及び電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle;EV)、ハイブリッド車(Hybrid Electric Vehicle;HEV)及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle;PHEV)を含む電気車;電気トラック;電気商用車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか一つ以上の中・大型デバイス電源として使用可能であるが、必ずしもこれらに限定されることではない。
【0118】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、多様な形態で変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供される。
【0119】
実施例1-1
35μm厚さのリチウム金属を対流式オーブン(convection oven)を用いて0.01Torrの圧力の真空雰囲気下で40℃の温度で4時間の熱処理を行った後、それを銅集電体の上に片面を圧延してリチウム金属負極を製造した。
【0120】
実施例1-2
60℃の温度で熱処理したことを除いては、実施例1-1と同様にリチウム金属負極を製造した。
【0121】
実施例1-3
80℃の温度で熱処理したことを除いては、実施例1-1と同様にリチウム金属負極を製造した。
【0122】
実施例1-4
100℃の温度で熱処理したことを除いては、実施例1-1と同様にリチウム金属負極を製造した。
【0123】
実施例1-5
120℃の温度で熱処理したことを除いては、実施例1-1と同様にリチウム金属負極を製造した。
【0124】
比較例1-1
35μm厚さのリチウム金属を如何なる処理も行わず、そのままリチウム金属負極として使用した。
【0125】
実施例2-1~2-5及び比較例2-1:リチウム・リチウム対称セルの製造
先ず、1,3-ジオキソラン(第1溶媒)とジメトキシエタン(第2溶媒)を1:1の体積比(v/v)で混合した有機溶媒に、電解液の総重量を基準にして1重量%の硝酸リチウムを入れ、(CF3SO2)2NLi(LiTFSI)(リチウム塩)の濃度が1Mになるように溶解して非水電解液を製造した。
【0126】
実施例1-1~1-5及び比較例1-1で製造したリチウム金属負極を、正極及び負極に同一に使用し、この際、リチウムが互いに対面するように位置させた。続いて、正極と負極との間に16μm厚さの多孔性ポリエチレン(PE)分離膜を介在した後、前記製造した非水電解液を各々注入して密封してコインセル型のリチウム・リチウム対称セルを製造した。
【0127】
実施例3-1~3-5及び比較例3-1:リチウム硫黄電池の製造
先ず、正極活物質として硫黄-炭素(CNT)複合体(S/C 75:25重量比)87.5重量部と、導電材としてデンカブラック5重量部と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR/CMC 7:3)7.5重量部と、を混合して、正極スラリー組成物を製造した後、それを集電体(Alホイル)の片面に塗布し、80℃で乾燥してロールプレス(roll press)機器で圧延して正極を製造した(この際、ロード量は4.5mg/cm2にした)。
【0128】
続いて、前記製造された正極と、実施例1-1~1-5及び比較例1-1で製造したリチウム金属負極を対面するように位置させ、その間に多孔性ポリエチレン(PE)分離膜を介在した後、実施例2-1~2-5及び比較例2-1で製造した非水電解液を各々注入して密封してコインセル型のリチウム硫黄電池を製造した。
【0129】
評価例1:リチウム金属負極の表面観察
実施例1-3で製造したリチウム金属負極と比較例1-1で製造したリチウム金属負極の表面を走査電子顕微鏡法(scanning electron microscopy;SEM)で観察して
図1及び
図2に各々示した。この際、実施例1-3で製造したリチウム金属負極に対するSEM観察は、熱処理直後に行った。使用したSEM機器はJEOL JSM-7200Fであり、倍率は30,000xにし、加速度電圧は5kVにした。また、使用した機器の分解能は20kVで1nmであり、1kVで1.6nmであるので、5kVでは1~1.6nmである。
【0130】
図2から確認できるように、比較例1-1で製造したリチウム金属負極は、リチウム金属の表面がクラック部のない自然酸化層(native oxide)で覆われていることを確認することができた。
【0131】
一方、
図1から確認できるように、実施例1-3で製造したリチウム金属負極は、リチウム金属の表面に存在する酸化層にクラック部が形成されていることを確認することができた。
【0132】
評価例2:リチウム金属負極のクラック部及び非クラック部の面積比の計算
前記実施例1-1~1-5及び比較例1-1で製造したリチウム金属負極の表面をSEMで観察したイメージを用いて、クラック部と非クラック部の面積比を計算した。ここで、使用したSEM機器はJEOL JSM-7200Fであり、倍率は30,000xにし、加速度電圧は5kVにした。また、使用した機器の分解能は20kVで1nmであり、1kVで1.6nmであるので、5kVでは1~1.6nmである。
【0133】
具体的には、前記SEMで観察したイメージにおいて、非クラック部は、表面が粗くて突出しているため相対的に明るく示され、クラック部は、表面が滑らかであることから暗く示された。このような性質を用いるために、前記SEM イメージを「ImageJ」ソフトウェアを用いて黒白に2元化(バイナリー)処理し、処理されたイメージの色を黒白反転して(invert)非クラック部は暗い色に、クラック部は明るい色に見えるように明暗を極大化した。その後、クラック部と非クラック部として示された領域の面積を用いて面積比を計算し、その結果を下記の表1に示した。
【0134】
【0135】
評価例3:リチウム・リチウム対称セルのサイクル寿命評価
前記実施例2-1~2-5及び比較例2-1で製造したリチウム・リチウム対称セルを25℃の温度で1.5mA/cm
2の電流密度で放電(-1V下限)及び充電(+1V上限)サイクルを繰り返して時間(サイクル)による電位(potential)を測定してサイクル寿命を評価し、下記の表2及び
図3~
図8に示した。対称セルの駆動中にリチウム負極が円滑に作動する場合には過電圧が0.1V水準であるが、リチウム負極が劣化すると、リチウムを脱離させるのにより大きい過電圧が求められる。-1Vの過電圧が求められる場合、リチウム負極ではリチウムが脱離しにくくなることを意味し、リチウム負極が正常に作動できないことを意味し得る。表2は、リチウムの脱離のために必要な過電圧が-1Vになった場合を基準にしてセルの寿命を示したものである。
【0136】
【0137】
表1、表2及び
図3~
図8から確認できるように、実施例2-1~2-5で製造したリチウム・リチウム対称セルは、リチウム金属表面の酸化層にクラック部が形成されることで均一な電着が誘導され、リチウム金属表面の酸化層にクラック部が形成されていない比較例2-1で製造したリチウム・リチウム対称セルに比べて寿命が向上したことを確認することができた。特に、熱処理温度が60℃~100℃である実施例2-2~2-4で製造したリチウム・リチウム対称セルから、電池の寿命がさらに向上することを確認することができた。
【0138】
評価例4:リチウム硫黄電池のサイクル寿命評価
前記実施例3-1~3-5及び比較例3-1で製造したリチウム硫黄電池に対して、25℃の温度でCCモードで0.2C充電/0.3C放電サイクルを1.8V~2.5Vの電圧区間で行い、充放電サイクルによる容量-電位(potential)を測定し(初期0.1C/0.1C 2.5サイクル、及び0.2C/0.2C 3サイクルの安定化過程を経た後、7番目のサイクルから0.3C/0.5Cで駆動)、その結果を下記の表3及び
図9に示した。
【0139】
【0140】
表3及び
図9から確認できるように、リチウム金属の表面にクラック部が形成された酸化層を含む実施例3-1~3-5で製造したリチウム硫黄電池は、リチウム金属表面の酸化層にクラック部が形成されていない比較例3-1で製造したリチウム硫黄電池に比べて寿命が向上したことを確認することができた。そして、熱処理温度が60℃~100℃である実施例3-2~3-4で製造したリチウム硫黄電池の場合、電池の寿命がさらに向上することを確認することができた。特に、熱処理温度が70~90℃の範囲に含まれる実施例3-3で製造したリチウム硫黄電池の寿命が遥かに優秀であることを確認することができた。
【国際調査報告】