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特表2024-546143テーパ中のモード結合を抑制するための特殊な光ファイバクラッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】テーパ中のモード結合を抑制するための特殊な光ファイバクラッド
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20241210BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20241210BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20241210BHJP
   G02B 6/028 20060101ALI20241210BHJP
   G02B 6/287 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
G02B6/02 411
G02B6/036
H01S3/10 D
G02B6/028
G02B6/287
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535689
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 US2022052459
(87)【国際公開番号】W WO2023114109
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/289,309
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブセン,ダン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンセン,ヨハネス,ヴォーゴ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルストロム,ソレン
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】オヴター,シモーナ
(72)【発明者】
【氏名】ショット,キャスパー.ジェー.
【テーマコード(参考)】
2H250
5F172
【Fターム(参考)】
2H250AB05
2H250AB08
2H250AB10
2H250AB18
2H250AC31
2H250AC32
2H250AC33
2H250AC35
2H250AD15
2H250AH33
2H250AH35
5F172AF03
5F172AM04
5F172AM08
(57)【要約】
光ファイバは、クラッド層に含まれる屈折率減少ドーパントの外方拡散に関連して、テーパに伴って屈折率が変化する特殊なクラッド層を含むように形成される。屈折率の変化(伝搬定数)は、局所的なテーパ角度関係を維持し、テーパの長さが所望の値まで伸びるときに損失振動が起こるのを防ぐのに充分である。特に、特殊クラッド層は、従来のクラッド層の屈折率増加ドーパント(例えば、Ge、Cl、およびPのうちの1つ以上である)よりも速く拡散することが知られているフッ素(F)などの屈折率減少ドーパントの充分な濃度を含むように形成することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の屈折率ncoreを有するコア領域と、
前記コア領域を囲むように配置された特殊クラッド層とを備え、
前記特殊クラッド層は、周囲のクラッド層が前記第1の屈折率ncore未満の第2の屈折率ncladを示すような組成の屈折率減少ドーパントおよび少なくとも1つの屈折率増加ドーパントの両方でドープされ、
前記屈折率減少ドーパントは、光ファイバテーパの形成中に前記コア領域を囲む上昇した屈折率npedの領域を生成するのに充分な、前記少なくとも1つの屈折率増加ドーパントよりも高い拡散速度を示し、ncore>nped>ncladであることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記特殊クラッド層はシリカを含み、前記屈折率減少ドーパントおよび前記少なくとも1つの屈折率増加ドーパントの濃度は、前記第2の屈折率ncladがドープされていないシリカの屈折率と実質的に等しくなるように選択されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記特殊クラッド層に含まれる前記屈折率減少ドーパントは、フッ素(F)を含むことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記屈折率増加ドーパントは、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)および塩素(Cl)からなる群から選択される少なくとも1つの成分からなることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ。
【請求項5】
フッ素(F)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、塩素(Cl)の1つ以上との相対濃度は、前記光ファイバの非テーパ部分における前記特殊クラッド層内で規定された前記第2の屈折率ncladを示すように制御されることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記特殊クラッド層内の定義された屈折率は、光ファイバ半径の関数として実質的に一定の値を維持することを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記特殊クラッド層内の定義された屈折率は、光ファイバ半径の関数として変化し、グレーデッドインデックス特殊クラッド層を形成することを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記特殊クラッド層内の定義された屈折率は、結合光学素子の屈折率に整合するように生成されることを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ。
【請求項9】
βは伝搬HE11モードに関連する局所伝搬定数であり、βは伝搬HE12モードに関連する局所伝搬定数であり、前記コア領域は有効半径ρ(z)によって定義され、前記屈折率減少ドーパントおよび前記屈折率増加ドーパントの濃度は、最大許容局所テーパ角Ω(z)に関係するアディアバティック基準を満たす値でテーパ中にβとβとの間の差を維持するように選択されるとき、
Ω(z)<(ρ(z)/2π)(β-β
であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記コア領域に直接隣接する前記特殊クラッド層の内部の屈折率は、前記光ファイバのテーパプロセスが進むにつれて高くなり、前記コア領域を囲む台座領域が形成されることを特徴とする請求項9に記載の光ファイバ。
【請求項11】
前記コア領域は希土類ドーパントを含み、光ファイバ増幅器の動作に有用な光ファイバを提供することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、米国仮出願63/289,309(2021年12月14日出願)の利益を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本明細書では、光ファイバテーパの主題が開示される、そのようなものは、融着光カプラおよび波長分割マルチプレクサ(WDM)、または光ファイバテーパにおいて極めて低い(ゼロに近い)非アディアバティック損失を維持することが所望される他の用途において使用される。
【背景技術】
【0003】
テーパ光ファイバは、多くの用途で使用され、一般的な例は、融着ファイバカプラおよびWDMであり、2つ以上のファイバは、一緒に融着され、その後、1つのコア領域から他のコア領域へのアディアバティック遷移を生成するようにテーパ化される。テーパ領域内を伝搬する光信号に損失(減衰)を生じさせることなく、全てのファイバをテーパ化できるわけではないことが知られている。このタイプの損失は、「アディアバティック基準(adiabatic criteria)」によって定量化することができ、この「アディアバティック基準」は、最大許容局所テーパ角Ω(z)は以下の関係に従う必要があると示している。
Ω(z)<(ρ(z)/2π)(β-β
ここで、ρ(z)はコア半径であり、βはHE11モードの局所伝搬定数であり、βはHE12モードの局所伝搬定数である。βとβとの差が小さすぎる場合、HE11およびHE12モードは、ある程度の結合を示し、損失振動がテーパ中に出現し、これは、ほとんどの用途に望ましくないであろうことが、上記から明白である。これ以降、ファイバのコアおよびクラッドの屈折率値も参照し、伝搬定数βと屈折率neffとの関係は、以下のように定義される。
β=neff(2π/λ)
ここで、λは、光ファイバコアに沿って伝搬する光波の波長である。
【0004】
モード結合を抑制するための従来の解決策は、量(β-β)が過度に小さくならないように光ファイバの屈折率プロファイルを設計することに基づいていた。特に、1つの一般的な光ファイバ構成は、コアの周囲に小さなペデスタルを追加することができ、ペデスタルは、コアとクラッドとの間の屈折率を示す。しかしながら、ペデスタルの包含は、光ファイバのモードフィールド直径ならびにそのカットオフ波長(カットオフ波長は、ファイバがシングルモード光信号の伝搬をサポートすることができる最低波長である)を変化させることが知られている。その結果、妥当なカットオフ波長に影響を与えることなく損失振動を充分に抑制する妥協点を見出す必要がある。例えば、エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)内で融着ファイバカプラまたはWDMを使用する場合、HE12カットオフは、増幅を生成するために使用されるポンプ波長である980nm未満である必要がある。所与の妥協に関連する制限は、特に、溶融ファイバカプラの屈折率プロファイルをEDFA自体の屈折率プロファイルと整合させたい場合、具現化するのが非常に困難であり得る。
【発明の概要】
【0005】
当技術分野において残っている必要性は、融着光カプラおよび波長分割マルチプレクサ(WDM)において使用されるような光ファイバテーパ、またはテーパにおける極めて低い(ゼロに近い)非アディアバティック損失を維持することが望ましい他の用途に関する本発明によって対処される。このタイプの損失は、「モード結合損失」または「振動損失」と呼ばれることもある。
【0006】
本発明の原理によれば、(従来の屈折率増加クラッドドーパントと組み合わせて)屈折率減少ドーパントを含むように形成されたクラッド層は、ファイバがテーパ状になるにつれて屈折率の変化をもたらすことが見出された。この変化は、局所的なテーパ角度関係(アディアバティック基準)を維持し、テーパの長さが所望の値まで延びるにつれて損失振動が起こるのを防ぐのに充分である。特に、この特殊なクラッド層は、充分な濃度の屈折率減少ドーパント(Fなど)を含むように形成され、これは、含まれる屈折率増加ドーパント(例えば、Ge、Cl、およびPのうちの1つ以上)よりも速く拡散することが知られている。テーパの形成に関連する高温は、Fの外方拡散を引き起こすのに充分であり、したがって、拡散が継続するにつれて特殊クラッド層の屈折率プロファイルを変更する。
【0007】
特殊クラッド層を含む光ファイバをテーパにするプロセス中に、クラッド中に存在するフッ素(または他の屈折率減少ドーパント(「ダウンドーパント」とも呼ばれる))は、クラッド層の外側境界に向かって(クラッドから離れて)外向きに拡散する(ならびにコア領域内にわずかに拡散する)ことが分かっている。ファイバがテーパ状になるほど、クラッド層の外側領域における拡散フッ素の濃度が大きくなり、アップドーパント材料およびダウンドーパント材料の両方で最初にドープされたコアの周りのクラッド領域の平均屈折率が増加する。実際、全体的な効果は、テーパ長さが増加するにつれて、コア領域を直接囲むクラッド層の領域においてペデスタル領域が「成長」することである。ドーパント濃度(アップドーパントおよびダウンドーパントの両方)ならびにテーパ形状は、基本HE11モードと様々な他のモード(少なくともHE12モードを含む)との間の結合を最小限に抑えるのに充分なβとβとの間の差を維持するように制御され得る。
【0008】
本発明の例示的な実施形態は、中心コア領域(ncoreの屈折率値を有するコア領域)を取り囲むように形成された特殊なクラッド層を有する光ファイバの形態をとることができる。特殊なクラッド層は、周囲のクラッド層がncore未満の第2の屈折率ncladを維持するように、屈折率減少ドーパントと少なくとも1つの屈折率増加ドーパントの両方を組成物中にドープされる。屈折率減少ドーパントは、光ファイバテーパの形成中にコア領域を囲む増加屈折率npedの領域を形成するのに充分な、少なくとも1つの屈折率増加ドーパントよりも高い拡散率を示し、ncore>nped>ncladである。テーパに沿ったこのペデスタル領域の生成は、HE11伝搬モードとHE12伝搬モードとの間の分離を維持し、したがって、テーパにおける損失振動を最小限にする。
【0009】
本発明の他のさらなる態様および実施形態は、以下の議論の過程で、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0010】
ここで図面を参照し、いくつかの図において、同様の参照番号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】異なる従来技術のファイバについてのテーパ長の関数としての非アディアバティック損失のシミュレーションを含み、図1(a)は曲げに敏感でないファイバに関連し、図1(b)は低カットオフ波長ファイバに関連する。
図2】本発明の教示に従って特殊クラッド層を含むように形成された例示的な光ファイバの切断端面図である。
図3図2の線3-3に沿って切り取られた、図2の光ファイバに沿ったテーパ領域の長手方向図であり、テーパに沿った特定の位置における関連する屈折率プロファイルの図を含む。
図4】従来技術の光ファイバ(PLOT A)と本発明に従って形成された特殊クラッドを含む光ファイバ(PLOT B)との比較であり、HE11モードとHE12モードとの有効屈折率の差をファイバ直径縮小比の関数としてプロットする。
図5】テーパ長さの関数としての損失測定値を示し、図5(a)のプロットは、図4のPLOT Aにおける従来技術関連データに関連し、図5(b)のプロットは、図4のPLOT Bにおける発明関連データに関連する。
図6】先行技術のファイバと、本発明の教示に従って形成された特殊クラッドを有するファイバとの両方について、テーパ伸びの関数としてテーパ損失をプロットするシミュレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
いくつかの光ファイバテーパは、テーパ引張プロセス中にその出力電力スペクトルにおいて急速な振動を示すことが周知であり、これらの振動の振幅は、光ファイバのタイプおよびテーパ幾何学形状の関数であることが知られている。図1は、2つのタイプの従来技術の光ファイバのテーパ長の増加の関数としての振動の増加を示すシミュレーションのセット(検証済み)を含む。図1(a)のプロットは曲げに敏感でない特殊ファイバに関連し、図1(b)のプロットは低カットオフ波長特殊ファイバに関連する。図1(a)のプロットは、テーパが約9mmの長さに達すると、振動がファイバのモード分離を維持する能力に影響を及ぼし始めることを示している。図1(b)のプロットを参照すると、低カットオフ波長ファイバは、テーパがわずか約5mmの長さに達するにつれて、振動(すなわち、非アディアバティック損失)の存在を経験し始めることが示されている。これらの振動は、HE11モードとHE12モードとの間の望ましくない相互作用(さらに、おそらく、クラッド内を伝搬するいくつかの他の高次モード)に起因する。
【0013】
明らかに、出力電力におけるこれらの振動の存在は、低損失テーパおよびカプラ/WDMなどの用途では望ましくなく、損失メカニズムが可能な限り抑制されるように光ファイバを意図的に設計する必要がある。状況を複雑にすることは、ファイバをテーパにするために使用されるプロセスも重要であり、基本HE11コアモードからクラッドモード(HE12など)への電力伝達を導入できないという事実であり、これも損失振動の開始を引き起こすことになる。
【0014】
言い換えれば、テーパプロセスは、アディアバティック的(テーパ中の伝搬モードを保つ)であり、上で定義された局所テーパ角Ω(z)の制限を守る必要がある。以下の議論は、テーパプロセスが損失振動を最小限に抑えることを確実にするためにドーパント拡散を使用する本発明のプロセスを概説する。以下で詳細に論じられるように、クラッド内の選択されたドーパントの拡散は、テーパプロセス中にβとβとの値を制御するために使用され得、テーパプロセス中のクラッド内のダウンドーパント(例えば、フッ素)の外方拡散は、テーパプロセスが進行するにつれて、コアとクラッドとの間のペデスタル構造を効果的に「成長」させることが分かっている。すなわち、テーパ中のダウンドーパントの外方拡散は、テーパプロセスが継続するにつれて、βとβとの間の差が過度に小さくならない(上述のアディアバティック基準に影響を及ぼす)ことを確実にすることが見出されている。
【0015】
図2は、本発明の教示に従って特殊なクラッド層を含むように形成された例示的な光ファイバ10の切断端面図であり、図3は、図2の線3-3に沿った光ファイバ10の内部テーパ領域の長手方向の図である。図3はまた、テーパに沿った選択された位置に関連する例示的な屈折率プロファイルの概略図を含む。
【0016】
再び図2を参照すると、光ファイバ10は、本発明の原理に従って形成された特殊クラッド層14によって囲まれた中央コア領域12を含むものとして示されている。特殊クラッド層14は、典型的にはシリカ材料を含み、屈折率減少(ダウン)ドーパント16(フッ素など)と1つまたは複数の屈折率増加(アップ)ドーパント18(塩素、ゲルマニウム、および/またはリンなど)の両方を含むように製作される。ダウンドーパント16の必要な移動が光ファイバテーパの形成に関連する高温条件によって引き起こされるので、ダウンドーパント16がアップドーパント18のいずれかよりも高い拡散率を示すことは、本発明の重要な態様である。すなわち、光ファイバテーパの形成に関連する温度は、ダウンドーパント16の外方拡散を引き起こすのに充分であると認識されるが、アップドーパント18は、プロセス中に比較的適所に留まる。図2の特定の図はまた、特殊クラッド層14を取り囲む非ドープ外側クラッド層20を示す。
【0017】
図3は、例示的なテーパプロセス中のダウンドーパント16の外方拡散と、得られるファイバ構造の屈折率プロファイルの変化に対する影響とを示す。ファイバセクション10Lおよび10Rとして示される、図3の光ファイバ10の長手方向図の最も左側および右側の部分は、テーパのない構造を示す。ここで、ダウンドーパント16およびアップドーパント18は、特殊クラッド層14内のそれらの製造されたままの位置に存在する。光ファイバ10は、コア領域12の屈折率(n12)が特殊クラッド層14の屈折率(n14)よりも比較的大きく、本質的にコア領域12内で基本HE11モードの伝搬を維持する、セクション10Lおよび10Rの典型的なステップ屈折率プロファイルを示すものとして示される。光ファイバ10の内部セクション10Tは、テーパプロセスが実行される場所を示す。
【0018】
テーパ化プロセスの開始時に、ダウンドーパント16は、図3のテーパ遷移セクション10TLおよび10TRに示すように、コア領域12および外側クラッド20の両方に向かってクラッド層14から拡散し始める。ファイバ10の屈折率プロファイルは、遷移セクション10TLおよび10TRに沿って変化し始め、プロファイルは、例示のために遷移セクション10TLの近傍に示される。示されるように、ダウンドーパント16の初期の外部拡散は、コア領域12を取り囲むペデスタルPの形成を開始する。ダウンドーパント16のコア領域12への拡散はまた、そのプロファイルを「丸め(round)」始め、ペデスタル形成およびコアプロファイルの丸めの両方が、テーパプロセスが継続するにつれて継続する。
【0019】
テーパプロセスの継続は、最終的に、移行セクション10TLと10TRとの間に中央テーパウエスト10TWを形成することをもたらす。本発明の原理によれば、テーパプロセスの継続はまた、特殊クラッド層14から離れるダウンドーパント16の継続的な外方拡散を提供する。テーパウエスト10TWに関連する屈折率プロファイルを参照すると、ダウンドーパント16の継続的な外方拡散は、コア領域12の屈折率をいくらか低下させながら(さらに丸めながら)ペデスタルPの屈折率値をさらに増加させる。この例では、屈折率プロファイルは、拡散に起因して本質的にガウス形状になっている。本発明の原理によれば、ダウンドーパント16の外方拡散は、HE11モードとHE12モードとの間のモード結合の開始を完全に防止するわけではないが、阻止する。したがって、モード結合の抑制は、テーパ部分10Tに沿って発生し得る振動の量を著しく低減し、あるファイバから別のファイバへの結合効率を改善する。
【0020】
光ファイバ10の形成において、特殊なクラッド層14は、テーパプロセスを開始する前に、様々な異なる屈折率プロファイルを示し得る。屈折率プロファイルは、整合されるか、整合されないか、またはさらには、その屈折率プロファイル内に小さいトレンチおよび障壁を含有してもよい。アップドーパントおよびダウンドーパントは、典型的には、よく理解されている堆積プロセスを用いてクラッド材料中に同時に堆積される。アップドーパントおよびダウンドーパントの相対量は、クラッド層14の最終屈折率プロファイルを決定する。さらに、相対ドーパント量は、半径方向において一定値を維持する必要はなく、ドーパント濃度の勾配もまた、振動抑制ペデスタルの発達を制御するために使用されることを可能にすることが企図される。
【0021】
本発明の特殊クラッド層に基づくファイバテーパにおける振動の開始の低減は、ファイバ直径低減比(スケールファクタ)の関数としてHE11モード(neff11)とHE12モード(neff12)の有効屈折率の差をプロットする図4のグラフにおいて明らかである。上述のように、HE11モードとHE12モードとの間の伝搬定数の差が小さいほど、損失振動がファイバ内に存在する可能性が高い。図3に示す0.05dB閾値は、損失振動に対する選択された閾値であり、この閾値を下回る任意のデータは、振動損失が許容できないほど高すぎる状況として定義することができる。
【0022】
特に、図4は、テーパが始まる前の同一の屈折率プロファイルを有する2つのファイバのプロットを含み、したがって、モード閉じ込め、モード幾何学形状などに関して本質的に同一の光学特性を示す。プロットAは、テーパが進むにつれて比較的迅速に振動を示し始める従来の従来技術のファイバに関連する。この特定の例では、プロットは、スケールファクタが約0.4を上回るときに0.05dB閾値を下回る。対照的に、プロットBは、アップドーパントおよびダウンドーパントの両方を含むクラッド層を有する、本発明に従って形成された光ファイバに関連する。これらのドーパントの組成および濃度は、本発明のファイバがテーパのない状態で従来のファイバと同じ特性を示すようなものである(これは、ファイバを最初に共に結合するときに重要な属性である)。プロットBに示されるように、比較的高い拡散率のダウンドーパント(この場合、F)を組み込むことによって、伝搬するHE11モードとHE12モードは、良好に分離されたままであり、それらのそれぞれの伝搬定数βとβとの間の差は、0.05dB閾値を上回って維持される。
【0023】
図5(a)は、図4のプロットAに関連する従来技術のファイバのテーパ長さの関数としての損失の実際の測定値のプロットであり、図5(b)は、図4のプロットBに関連する本発明のファイバの損失の実際の測定値のプロットである。先行技術のファイバのテーパ中の振動の存在は極めて明白であり、テーパが約8mm程度の長さに達すると顕著になり始める。対照的に、図5(b)に示される測定値は、たとえテーパが20mm程度のオーダーの長さまで延在しても、損失が約0.1dB未満に留まることを明確に示す。
【0024】
図6は、本発明のファイバのモード結合損失の低減を示す別のグラフ(コンピュータシミュレーション)である。ここで示される2つの曲線は、先行技術のファイバと本発明のファイバとの比較のためのものであり、両方のファイバは、テーパの前に同じ屈折率プロファイルを示すように再び形成される。示されるように、曲線(1)は、先行技術のファイバのテーパに関連付けられ、曲線(2)は、選択量の高拡散率ダウンドーパント(例えば、F)を含む特殊クラッド層を有する本発明のファイバのテーパに関連付けられる。ここでもまた、プロット(1)に示すように、テーパが8mmを超えると、先行技術のファイバ内に強い振動が存在するようになる。プロット(2)は、本発明の特殊クラッド層を有するテーパファイバに沿って生じる損失をごくわずかしか示さない。
【0025】
要約すると、様々なプロットに示されるデータは、テーパが進行するにつれての(アップドーパントよりも高い率の)ダウンドーパントの外方拡散が損失振動の存在に対して有意な影響を有することを確認する。この外方拡散は、ファイバコアの有効半径ρ(z)を増大させ、これは、局所テーパ角Ω(z)のアディアバティック条件に従って損失振動を低減する。ドーパントの外方拡散はまた、上述のように、HE11モードとHE12モードとの間の実効屈折率差を変化させ、したがって、Ω(z)を閾値よりかなり低く維持することにも寄与する。
【0026】
本発明は、その例示的な実施形態を参照して説明された。本開示で説明されるすべての例示的な実施形態および条件付き図は、本発明が属する技術分野の当業者による本発明の原理および概念の理解を助けることを目的として説明されている。したがって、本発明は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更された形態で実施され得ることが当業者によって理解されるであろう。種々の特徴を有する多数の実施形態が本明細書で説明されているが、本明細書で議論されない他の組み合わせにおけるそのような種々の特徴の組み合わせは、本明細書に添付される請求項によって定義されるような実施形態の範囲内であることが考慮される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】