(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】シール要件が低減された真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 25/02 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
F04C25/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536451
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 GB2022053270
(87)【国際公開番号】W WO2023118819
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ロング ケイナン
(72)【発明者】
【氏名】ショフィールド ナイジェル ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホルブルック アラン アーネスト キナード
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA06
3H129AA15
3H129AB06
3H129AB12
3H129BB14
3H129BB16
3H129CC02
3H129CC06
3H129CC07
(57)【要約】
真空ポンプ(10)は、実質的に密封された筐体(40)と、筐体(40)内に配置されたコアポンプ組立体と、コアポンプ組立体を取り囲む筐体(40)の内部に不活性パージガスを供給するために、筐体(40)に流体的に接続された不活性パージガス入口(70)とを備え、コアポンプ組立体に不活性の正圧を加え、コアポンプ組立体からのプロセスガスの漏れを低減し、コアポンプ組立体内のシール、詳細には高価でプロセスに敏感なエラストマーシールを除去又は低減できるようになっている。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプであって、
実質的に密封された筐体と、
前記筐体内に配置され、内部に複数のポンプ室を画定するように接合された2つのステータ半体を備えるコアポンプ組立体と、
前記コアポンプ組立体を取り囲む前記筐体の内部に不活性パージガスを供給するために、前記筐体に流体的に接続された不活性パージガス入口と、
を備える、真空ポンプ。
【請求項2】
前記コアポンプ組立体と前記筐体との間に配置され、前記コアポンプ組立体を前記筐体から熱的に分離するためのサーマルスペーサをさらに備える、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記サーマルスペーサは、セラミック材料を含む、請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記複数のポンプ室は、真空システムからプロセスガスを受け入れるように構成された入口ポンプ室を含み、
前記2つのステータ半体は、前記真空ポンプの高真空、入口側の第1の軸方向端面と、前記真空ポンプの低真空、出口側の対向する第2の軸方向端面との間に延び、前記2つのステータ半体の各々は、半径方向内面を画定し、前記半径方向内面に沿って一緒に接合され、
少なくとも1つのステータ半体は、前記第1の軸方向端面を前記入口ポンプ室の下流側のポンプ室に流体的に接続するパージガス漏れ流路を含む、
請求項1、2又は3に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのステータ半体は、前記第1の軸方向端面を前記入口ポンプ室の下流側の異なるポンプ室に流体的に接続する複数のパージガス漏れ流路を備える、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記複数のパージガス漏れ流路は、半径方向に間隔をあけて配置され、前記パージガス漏れ流路の半径方向外側の1つは、前記パージガス漏れ流路の半径方向内側の1つが流体的に接続されるポンプ室よりも容積が小さいポンプ室に流体的に接続される、請求項5に記載の真空ポンプにおいて、
【請求項7】
前記パージガス漏れ流路は、前記第1の軸方向端面から軸方向に延び、断面が実質的にZ字形である、請求項4、5又は6のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記パージガス漏れ流路は、前記第1の軸方向端面にわたって延びる前記パージガス漏れ流路の部分をさらに含む、請求項4から7のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記第1の軸方向端面にわたって延びる前記パージガス漏れ流路の前記部分は、半径方向内面の対向する半径方向側面を流体的に接続する、請求項8に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
前記第1の軸方向端面上の前記パージガス漏れ流路の前記部分は、前記第1の軸方向端面に画定された溝を備える、請求項8又は9に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
前記パージガス漏れ流路は、前記半径方向内面の対向する半径方向側面上に、前記半径方向内面に画定された一対の溝を備える、請求項4から10のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項12】
前記コアポンプ組立体は、前記対向する第1及び第2の軸方向端面に接合されたエンドピースをさらに備える、請求項4から11のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項13】
前記コアポンプ組立体は、エラストマーシールを備えていない、請求項4から11のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項14】
モータと、
歯車ギアカバーと、
エンドカバーと、
をさらに備え、
前記モータ、前記歯車カバー及び前記エンドカバーの各々は、前記筐体の外側に配置されている、請求項1から13のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項15】
前記真空ポンプのロータ組立体を支持するための一対のヘッドプレートをさらに備え、
前記一対のヘッドプレートは、前記コアポンプ組立体から間隔をあけて配置されている、請求項1から14のいずれかに記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ半体の間の、又はステータ半体とそれらのエンドプレートとの間のシールを除去することができる真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、通常、システムから作動ガスを排気するための真空システムの構成要素として使用される。これらのポンプは、例えば半導体の製造に使用される製造装置を排気するために使用することができる。真空から大気圧への圧縮を単一のポンプを使用して単段で行うのではなく、このような用途では、各段が真空から大気圧への移行に必要な圧縮範囲の一部を行う多段真空ポンプを設けることが一般的である。さらに、多くの真空ポンプ用途では、作動ガス又はプロセスガスは、ガスが凝縮して液体又は固体になり、ポンプの動作に悪影響を与えるのを防ぐため、最低温度を超えて保つ必要がある。
【0003】
多段真空ポンプは、一般にクラムシェル構造を有することができ、この場合、ポンプ領域を取り囲むために、2つのステータシェル半体と、ステータ半体の両側の2つのエンドプレートを使用する必要がある。従来、ポンプと周囲環境との間の漏れを防ぐために、2つのステータ半体間、及びステータ半体と2つのエンドプレート間に、それぞれ長手方向シールと環状シールが使用されている。一般に、この目的のためにエラストマーシールが使用されるが、これらの接合面をシールする効果的なシールシステムを実現することは困難である。国際公開第2018/138487号及び国際公開第2018/138489号には、エラストマーシールを使用してステータシェルをシールするための解決策が提示されている。しかしながら、エラストマーシールが望ましくない用途もある。例えば、エラストマーシールは、特定の使用温度及び特定の腐食性プロセスガス環境下で劣化しやすく、シール性を失う可能性がある。また、これらは、特定の条件下ではガス放出(outgassing)の可能性があり、許容できないガス透過性をもつ場合もある。さらに、特定の用途に必要なシール性能をもつエラストマーシールを使用すると、費用及び複雑さが増大する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/138487号
【特許文献2】国際公開第2018/138489号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、これらの制限を克服するために、このような用途においてシール状態を維持し、エラストマーシールの必要性を回避又は低減できるクラムシェル構造の真空ポンプが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、実質的に密封された筐体と、筐体内に配置され、内部に複数のポンプ室を画定するように接合された2つのステータ半体を備えるコアポンプ組立体と、コアポンプ組立体を取り囲む筐体の内部に不活性パージガスを供給するために、筐体に流体的に接続された不活性パージガス入口と、を備える真空ポンプが提供される。
【0007】
コアポンプ組立体の周りに密閉された筐体を設け、そこに入口を介して不活性パージガスを供給することにより、不活性の正圧をコアポンプ組立体に加えることができ、コアポンプ組立体からのプロセスガスの漏れを低減して、内部のシールを除去又は低減することができることが分かっている。これにより、コアポンプ組立体は、そのようなシールが劣化を受けるか又は適切でない場合がある、より高温又はより腐食性の動作転環境での使用により適したものになる。また、コストを削減し、そのようなシールに関連するガス放出/透過性の問題を取り除くこともできる。これは、ステータ半体とエンドプレートとの間のシールに従来から使用されているエラストマーシールに特に当てはまる。
【0008】
随意的に、真空ポンプは、コアポンプ組立体と筐体との間に配置され、コアポンプ組立体を筐体から熱的に分離するサーマルスペーサをさらに備える。
【0009】
サーマルスペーサは、コアポンプ組立体を他のポンプ構成要素(例えば、筐体の外側)から熱的に分離することを可能にする。これにより、より低い温度での動作により適している他のポンプ構成要素をマイナス方向に加熱することなく、コアポンプ組立体は、適切に高温の動作温度に維持することができる(例えば、その中のプロセスガスの凝縮を防ぐために)。
【0010】
一例では、サーマルスペーサは、コアポンプ組立体と筐体との間に配置され、コアポンプ組立体と筐体の両方に接触している。このように、サーマルスペーサは、コアポンプ組立体から筐体への熱伝導を最小限にするために使用される。一例では、筐体は半径方向の壁を備え、サーマルスペーサは半径方向の壁とコアポンプ組立体との間に配置される。
【0011】
随意的に、サーマルスペーサはセラミック材料を含む。
【0012】
セラミック材料は一般的に熱伝導率が低いため、コアポンプ組立体と筐体との間の熱伝導を最小限に抑えることができる。アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)など、何らかの適切なセラミック材料を使用することができる。代替実施形態では、何らかの他の適切な熱絶縁材料をサーマルスペーサとして使用することができる。
【0013】
随意的に、複数のポンプ室は、真空システムからプロセスガスを受け取るように構成された入口ポンプ室を含み;2つのステータ半体は、ポンプの高真空、入口側の第1の軸方向端面と、ポンプの低真空、出口側の対向する第2の軸方向端面との間に延び、2つのステータ半体の各々は、半径方向内面を画定し、半径方向内面に沿って一緒に接合され;少なくとも1つのステータ半体は、第1の軸方向端面を入口ポンプ室の下流側のポンプ室に流体的に接続するパージガス漏れ流路を含む。
【0014】
パージガス漏れ流路は、コアポンプ組立体の高真空、入口段(例えば、第1の軸方向端部)の中に漏れる可能性のある不活性パージガスを、代わりに低真空段に供給することを可能にする。これにより、ポンプの高真空効率及び能力への影響を低減しながら、パージガスの漏れを、ポンプを通して適切に除去することができる。
【0015】
一例では、パージガス漏れ流路は下部ステータ半体に設けられるが、他の例では、代わりに上部ステータ半体に設けること、又は上部及び下部ステータ半体の両方に設けることもできる。
【0016】
複数のポンプ室は、ポンプの圧縮仕事がプロセスガスに作用するポンプ室であり、従って複数のポンプ段を規定することを理解されたい。従って、入口ポンプ室は、ポンプの入口段に相当する。パージガス漏れ流路は、入口ポンプ室以外のポンプ室と連通することができる。入口ポンプ室は最大容積のポンプ室であるため、下流側のポンプ室は容積が小さいことになる。
【0017】
随意的に、少なくとも1つのステータ半体は、第1の軸方向端面を入口ポンプ室の下流側の異なるポンプ室に流体的に接続する複数のパージガス漏れ流路を備える。
【0018】
随意的に、複数のパージガス漏れ流路は、半径方向に間隔をあけて配置され、パージガス漏れ流路の半径方向外側の1つは、パージガス漏れ流路の半径方向内側の1つが流体的に接続されるポンプ室よりも容積が小さいポンプ室に流体的に接続される。
【0019】
このように、複数のパージガス漏れ流路の第2の流路よりも半径方向外側に位置する、複数のパージガス漏れ流路の第1の流路は、複数のパージガス漏れ流路の第2の流路が流体的に接続するポンプ室よりも容積が小さいポンプ室に流体的に接続する。さらなる実施形態では、複数のパージガス漏れ流路の第3のパージガス漏れ流路は、複数のパージガス漏出流路の第2のパージガス漏れ流路の半径方向内側に配置され、複数のパージガス漏れ流路の第2のパージガス漏れ流路が流体的に接続するポンプ室よりも大きな容積のポンプ室に流体的に接続する。何らかの適切な数のパージガス漏れ流路を使用することができ、例えば、入口ポンプ室を除く各ポンプ室に対して最大1つまで使用できる。
【0020】
容積が増加するポンプ室に接続された複数のパージガス漏れ流路により、減少する圧力の範囲にわたって漏れガスを収集することができる。これにより、パージガスがコアポンプ組立体に漏れる際に、段階的にパージガスを集めることができ、漏れ収集量を高めることができる。これにより、ポンプの高真空効率及び能力に対する不活性パージガスの影響をさらに低減することができる。
【0021】
随意的に、パージガス漏れ流路は、第1の軸方向端面から軸方向に延び、断面が実質的にZ字形である。
【0022】
このように、パージガス漏れ流路(複数可)は、第1の軸方向端面から延びる第1の軸方向延在セクションと、半径方向延在セクションへの第1の曲がり部(例えば、90度曲がり部)と、下流側のポンプ室に流体的に接続する第2の軸方向延在セクションへの第2の曲がり部(例えば、90度曲がり部)とを含むことができる。この実質的なZ字形状は、パージガス漏れ流路(複数可)を逆行する漏れを防止するのを助けることができる。
【0023】
随意的に、パージガス漏れ流路は、第1の軸方向端面にわたって延びるパージガス漏れ流路の部分をさらに含む。
【0024】
このように、パージガス漏れ流路は、軸方向端面にわたって延びるとともに、ステータ半体(複数可)の半径方向内面に沿って延びる。これにより、パージガス漏れ流路は、第1の軸方向端面によって画定される接合面にわたって(例えば、ステータ半体とエンドピースとの間)、より多くのパージガスの漏れを集めることができる。このように、より多量のパージガス漏れを除去し、高真空効率をさらに向上させることができる
【0025】
複数のガス漏れ流路が設けられる例では、ガス漏れ流路の各々は、第1の軸方向端面にわたって延びるそれぞれの部分を含むことができ、複数の流路の間の半径方向間隔に従って、軸方向端面にわたって半径方向に離間して入れ子になることができる。
【0026】
随意的に、第1の軸方向端面にわたって延びるパージガス漏れ流路の部分は、半径方向内面の対向する半径方向側面を流体的に接続する。
【0027】
このように、ガス漏れ流路の部分は、ステータ半体(複数可)の部分を取り囲み、第1の軸方向端面によって画定された接合面に漏れたパージガスの多くを集め、これをポンプ室に移送して除去する。
【0028】
第1の軸端面上のガス漏れ流路の部分は、半径方向内面の対向する半径方向側面を接続するために、他の何らかの適切な形状をとることができる。一例では、当該部分は実質的にU字形断面である。別の例では、当該部分は実質的に半円形である。
【0029】
随意的に、第1の軸方向端面上のパージガス漏れ流路の部分は、第1の軸方向端面に画定された溝を備える。
【0030】
第1の軸方向端面に溝を設けることで、パージガス漏れ流路をステータ半体とエンドピースとの間の接合面に開口させることができ、そこからパージガスを収集及び除去することが可能になる。第1の軸方向端面に溝を設けることは、そこにガス漏れ流路の部分を実装する特に簡単な方法とすることができる。例えば、これは、第1の軸方向端面の部分を単に機械加工(例えば、フライス加工)することによって達成することができる。
【0031】
随意的に、パージガス漏れ流路は、半径方向内面の対向する半径方向側面上に、半径方向内面に画定された一対の溝を備える。
【0032】
このように、一対の溝は、ステータ半体(複数可)の対向する側面において、ポンプ20の長手方向軸線Lから実質的に同じ半径方向距離に間隔をあけて配置され、両者は、第1の軸方向端面で開口し、同じ下流側ポンプ室に流体的に接続する。
【0033】
半径方向内面の溝は、パージガス漏れ流路をステータ半体の間の接合面に開口させ、接合面を介してコアポンプ組立体に漏れる可能性のあるパージガスの収集及び除去を可能にする。このように、より多量のパージガスを除去し、高真空効率をさらに向上させることができる。さらに、ステータ半体の半径方向内面に溝を設けることは、ガス漏れ流路を実装する特に簡単な方法である。例えば、これは、半径方向内面の部分を単に機械加工(例えば、フライス加工)することによって実現することができる。
【0034】
随意的に、コアポンプ組立体は、対向する第1及び第2の軸方向端面に接合されたエンドピースをさらに備える。
【0035】
このように、軸方向端面は、ステータ半体と接し、コアポンプ組立体をシールするのを助ける。
【0036】
随意的に、コアポンプ組立体は、エラストマーシールを備えていない。
【0037】
本開示のポンプ構成の様々な特徴により、コアポンプ組立体からエラストマーシールを完全に除去することができる。これは、ステータ半体の半径方向内面の間の長手方向シール(すなわち、ステータ半体の間の接合面に沿って軸方向に延びるシール)、ステータ半体の第1及び第2の軸方向端面と接するエンドピースの環状シール、及び長手方向シールと環状シールを接合するT-接合シールを含む。
【0038】
いくつかの例では、パージガスの漏れから保護するのを助けるために、状況によっては長手方向シール、環状シール、T-接合シールは、コアポンプ組立体に設けられることができる。しかしながら、そのシール効果はあまり懸念されないので、非エラストマーシールとすることができ、実装コストが安くなる。
【0039】
随意的に、真空ポンプは、モータ、歯車カバー、及びエンドカバーをさらに備え、モータ、歯車カバー、及びエンドカバーの各々は、筐体の外側に配置されている。
【0040】
モータ、歯車カバー及びエンドカバーを筐体の外側に配置することにより、コアポンプ組立体よりも低温の動作温度に保つことができる。これにより、これらの構成要素の寿命及び動作特性を向上させることができる。
【0041】
随意的に、真空ポンプは、ポンプのロータ組立体を支持するための一対のヘッドプレートをさらに備え、一対のヘッドプレートは、コアポンプ組立体から間隔をあけて配置される。
【0042】
ヘッドプレートは、ポンプ作動時にロータ組立体(例えば、ロータシャフト)を支持する軸受及び/又はシールを含むことが知られている。ヘッドプレートをコアポンプ組立体から離間させることにより、ヘッドプレートをコアポンプ組立体よりも低温の動作温度に保つことができる。これにより、ヘッドプレート及びその内容物の寿命及び運転特性を向上させることができ、例えば、軸受の潤滑及びそこでのシールの完全性をより良好に維持することができる。
一例では、ヘッドプレートは、コアポンプ組立体から軸方向に離間している。
【0043】
さらなる例では、ヘッドプレートは、サーマルスペーサによってコアポンプ組立体から分離される。このような例では、ヘッドプレートは、サーマルスペーサと接触することができる。これは、コアポンプ組立体からの熱伝導を最小限にすることによって、ヘッドプレートを低温に保つのを助ける。
【0044】
さらに別の例では、ヘッドプレートは筐体の壁を形成し、例えば筐体の上部カバー及び下部カバーが取り付けられる。これは、ポンプの設計を簡素化し、筐体をよりコンパクトに保つことができる。他の例では、ヘッドプレートは、代わりに筐体の外側に配置すること又は代わりに筐体の内側に配置することができる。このような例では、筐体は、ヘッドプレートとは別の壁及びカバーで形成されるか、又は他のポンプ構成要素(例えば、歯車カバー及びエンドカバー)及びカバーを使用して形成される。ヘッドプレートを筐体の外側に配置することで、その温度をさらに低下させることができる。
【0045】
以下、様々な実施形態は、単に例示的に添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1a】本開示の一実施形態による例示的なポンプ組立体を示す。
【
図1b】本開示の一実施形態による別の例示的なポンプ組立体を示す。
【
図2】
図1aの線X-Xに沿った、本開示の一実施形態によるコアポンプ組立体のステータの例示的な断面を示す。
【
図3】本開示の一実施形態による別の例示的なステータを示す。
【
図4】
図1aの線Y-Yに沿った、本開示の一実施形態によるコアポンプ組立体のステータの別の例示的な断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1a及び
図1bを参照すると、多段真空ポンプ10は、第1のステータ構成要素12及び第2のステータ構成要素14を備え、その間にロータ組立体(図示せず)が取り付けられている。
【0048】
2つのステータ構成要素12、14は、その中にポンプ室80a-g(後述の
図2及び
図3に示される)を形成するために一緒に固定されている。このように、2つのステータ構成要素12、14は、ステータ半体12、14(すなわち、ステータ「クラムシェル」半体12、14)として知られており、ステータ半体12、14の半径方向内面13a、13bによって画定される接合面13に沿って一緒に接合されている。
【0049】
ポンプ10は、ステータ半体12、14が延びる中心長手方向軸線Lと、それに垂直な半径方向Rとを規定する。接合面13は、長手方向軸Lに沿って設けられている。
【0050】
ロータ組立体は、何らかの適切なタイプのロータ組立体とすることができ、図示の実施形態では、一般に、各シャフト(図示せず)に取り付けられたロータを有する2つの逆回転シャフトを含むことになる。ロータは、高真空チャンバ80aの入口から低真空チャンバ80gの出口まで、ポンプを通して作動/処理ガスをポンプ送給するために、チャンバ80a-g内で相互作用する。ロータ組立体は、何らかの適切なタイプのロータ組立体とすることができ、例えば、クロー型真空ポンプ、ルーツ型真空、又はそれらの組み合わせを形成することができる。このようなロータ組立体は一般に知られており、本開示の焦点ではないので、これ以上詳細に説明しない。
【0051】
エンドピース50、52は、2つのステータ構成要素12、14の反対側の軸方向端部に取り付けられ、コアポンプ組立体を完成させる。従って、コアポンプ組立体は、チャンバ80a-gの間のプロセスガスの圧縮及びポンプ送給が行われる真空ポンプ10の部分であることを理解されたい。
【0052】
従来の真空ポンプは、2つのステータ構成要素12、14の間に長手方向シールを備え、ステータ構成要素12、14とエンドピース50、52との間に環状シールを備えるが、本発明の真空ポンプ10ではこれらは必要ないことに留意されたい。
【0053】
コアポンプ組立体(2つのステータ構成要素12、14及び2つのエンドプレート50、52によって画定される)は、密閉された筐体40内に配置され、この筐体は、図示の実施形態では、筐体カバー16及びヘッドプレート18によって画定される。2つのヘッドプレート18は、コアポンプ組立体の軸方向両側に配置され、ロータ組立体のシャフト(図示せず)のための軸受及びシールを備える。2つの筐体カバー16は、コアポンプ組立体の半径方向両側(すなわち、コアポンプ組立体の上方及び下方)に配置され、2つのヘッドプレート18の間で軸方向に延びて筐体40を形成する。シール42は、筐体カバー16とヘッドプレート18との間に設けられ、筐体40が実質的に密封されるのを保証する。換言すれば、筐体40は、実質的にガス気密様式でシールされ、ポンプ10が動作しているときに筐体40の内部と周囲の大気との間の圧力差を維持できるようになっている。筐体カバー16及びシール42の配置は、ヘッドプレート18と筐体カバー16との間の熱膨張差を許容しながら、筐体40が環境から密封されるようにすることができる。例えば、
図1aに示すようなピストンシール配置、及び/又は
図1bに示すような端面シール配置である。コアポンプ組立体とは異なり、シール42は、エラストマーシール又は何らかの他の適切なタイプのシール(例えば、非エラストマー)で構成することができる。
【0054】
筐体40の外側では、真空ポンプ10は、モータ20、ロータ組立体のシャフトが延びるエンドカバー30、及びモータ20とヘッドプレート18(エンドピース50に最も近い)との間に軸方向に配置され、ロータ組立体のために歯車(図示せず)を収容する歯車カバー22をさらに備える。モータ20、歯車カバー22、及び端部カバー30の各々は、これらの構成要素の間のシールを維持し、筐体40を環境からさらにシールするのに役立つシール24、26、32を備える。代替実施形態では、筐体カバー16は、ポンプ10の何らかの要素、例えば、歯車カバー22と、端部カバー30との間に軸方向に延びることができ、筐体40は、内部にこれらの構成要素を含むようになっている。そのような例では、ヘッドプレート18を使用する代わりに、追加のプレートが、これらの構成要素の軸方向外側に配置され、カバー16とシール結合状態で配置されることになる。さらなる代替実施形態では、筐体40は、ポンプ10の全ての構成要素を取り囲むことができる。
【0055】
真空ポンプ10の動作時、コアポンプ組立体に要求される動作温度は、典型的には200-400℃であり(例えば、内部でのプロセスガスの凝縮を防ぐために)、一方、軸受、歯車装置、モータ及びエラストマーシールに適した温度は、典型的には150℃未満である。動作時、各構成要素の適切な温度を維持するのを助けるために、エンドピース50、52とそれぞれのヘッドプレート18の間にサーマルスペーサ60が設けられている。このように、サーマルスペーサ60は、コアポンプ組立体からヘッドプレート18及び他の動作温度の低いポンプ構成要素への熱伝導を低減するために使用することができる。従って、サーマルスペーサ60は、適切に低い熱伝導率を有する何らかの材料、例えばセラミック材料を含むことができ、エンドピース50、52とヘッドプレート18との間の熱伝達をさらに最小化するために、比較的小さな断面積を有することができる。また、ロータ組立体のシャフトは、シャフトを介して熱がコアポンプ組立体の外部に伝達されるのを防止するのを助けるために、サーマルブレーク(thermal break)を備えることができる。
【0056】
真空ポンプ10は、筐体40に流体的に接続された不活性パージガス入口70をさらに備える。図示の実施形態では、不活性パージガス入口70は、上部ハウジングカバー16を貫通している。不活性ガス入口70は、窒素のような不活性ガスを筐体40の内部に供給して充填することを可能にする。不活性ガスは、不活性パージガスライン(図示せず)を介して入口70に供給されることになる。パージガスの温度は、用途に適した何らかの温度に選択することができる。例えば、パージガスは、コアポンプ組立体が適切な動作温度(例えば、プロセスガスの凝縮を防ぐための)に到達し、それを維持するのを助けるために加熱することができる。
【0057】
パージガスは不活性であることが重要であり、これによってポンプ10及びその中のプロセスガスに対して悪影響又は望ましくない影響が及ぶことを防ぐことができる。窒素が例示されているが、他の適切な不活性ガス、例えばアルゴンも使用できる。
【0058】
不活性パージガス入口70は、プロセスガスをコアポンプ組立体に移送するために(すなわち、入口(高真空)段80aに)流体的に接続されるプロセスガス入口(図示せず)とは独立した異なるものであることを理解されたい。また、このようなプロセスガス入口は、同様に筐体40を貫通することになるが、ステータ構成要素12、14の間に画定されたポンプ入口(図示せず)に流体的に接続することになり、筐体40の内部空間と流体的に接続されないことになり、内部空間は、不活性パージガス入口70の場合のように、パージガスで満たすことができるようになっている。
【0059】
不活性パージガスは、入口70を通って筐体40に入り、その後、排気口72を通って除去される。排気口72は、筐体40を貫通するダクト又はパイプであり、図示の実施形態では、コアポンプ組立体の排気口と流体的に接続している。換言すれば、低真空(すなわち、出口)段80gの出口に接続され、筐体40の内部には流体的に開放されていない。
【0060】
この実施形態では、不活性パージガス除去通路90がステータ構成要素14(
図2及び
図3参照)を貫通して画定され、低真空段80gの入口と流体連通している。このように、筐体40内のパージガスは、通路90を介して低真空段80gの入口に供給されることによって除去され、そこでパージガスは低真空段80gを通って移動し、同様に低真空段80gを通過するプロセスガスと共に排気口72に移送されることになる。代替実施形態では、パージガスは、低真空段80gの入口ではなく出口に供給すること又は排気口72に直接供給することができる。他の実施形態では、排気口72を介して筐体40からのパージガスの除去を達成するために、何らかの他の適切な配置(例えば、パイプ及び/又は通路)を使用することができる。
【0061】
圧力及び/又は温度センサは、筐体40内のパージガスの圧力及び/又は温度を監視するためにポンプ10に組み込むことができる。センサは、筐体40内への及び/又は筐体40から外への不活性パージガスの流れを制御することによって筐体40内の所望の圧力及び/又は温度を維持するために、パージガス流量コントローラ(例えば、入口70及び/又は通路90に配置された流量制御バルブ)と通信することができる。何らかの適切な圧力及び/又は温度センサを用いることができ、流量制御バルブ又は圧力制御バルブ(圧力調整器)のような何らかの適切な流量コントローラを使用することができる。
【0062】
筐体40によりコアポンプ組立体の周りを密閉し、その中に(例えば、入口70及び排気口72を介して)所望の量の不活性ガスを供給して維持することにより、コアポンプ組立体の周りで正の圧力差を維持することができることを理解されたい。これは、コアポンプ組立体がシールを備えていないにもかかわらず、コアポンプ組立体からのプロセスガスの漏れを最小化するのを助け、さらに筐体40に入る環境からの大気ガスの侵入を防止するのを助ける。また、このシール構成は、シールを使用する用途よりも、動作温度の変化及び腐食性プロセスガスに強く、コアポンプ組立体に複数のエラストマーシールを使用することに関連する潜在的なガス放出、透過性、及びコストの問題を取り除くことができることを理解されたい。
【0063】
さらに、サーマルスペーサ60と組み合わせた筐体40は、異なる動作温度限界を有する異なる構成要素の分離を可能にすることができる。例えば、ヘッドプレート18のシャフト軸受及びシールは、コアポンプ組立体の動作温度よりも低い動作温度に維持することができる。これにより、異なるポンプ構成要素の寿命及び運転特性を向上させることができる。
【0064】
次に
図2を参照すると、
図1aのコアポンプ組立体における線X-Xに沿った断面が示されている。この断面は、第2のステータ構成要素14の半径方向内面13bを示しており、ポンプ室80a-gを見ることができる。以下の実施形態は、第2のステータ構成要素14に関連して説明されるが、同じことが、対応する半径方向内面13a(図示せず)を有することになる第1のステータ構成要素12にも適用できる(必ずしもそうではないが)ことを理解されたい。
【0065】
ステータ構成要素12、14は、それぞれの半径方向内面13a、13bによって画定される接合面13の全域で接合され、コアポンプ組立体を形成する。従って、各ステータ構成要素12、14は、各ポンプ室80a-gの半分を備え、コアポンプ組立体を形成するために一緒に接合されると、ポンプ室80a-gが形成されるようになっている。上述したように、図示の実施形態では、不活性パージガスは、出口(又は低真空)チャンバ80gの入口に流体的に接続する通路90を使用して、筐体40から除去される。
【0066】
図2から分かるように、ポンプ室80a-gは、軸方向に連続的にサイズが小さくなっており、最大容積の入口(又は高真空)ポンプ室80aがモータ20に最も近く、最小容積の出口(又は低真空)ポンプ室80gが端部カバー30に最も近い。入口ポンプ室80aは、プロセスガス入口を介して真空システムからプロセスガスを受け取るように構成されており、出口ポンプ室80gは、出口(上述)を介してコアポンプ組立体からプロセスガスを排気するように構成されている。ポンプ室80aからポンプ室80gへの容積の漸減は、真空の所望の動作圧力から大気圧への圧力の等価な漸増に対応する。複数のポンプ室、従って複数の圧縮段を使用することにより、ポンプ効率が改善され、より高い真空圧力を維持することができる。
【0067】
また、図示されているように、ステータ構成要素12、14は、エンドピース50、52が接合されている反対側の軸方向端面15a、15bの間を軸方向に延びる。このように、エンドピース50、52は、それぞれ端面15a、15bに沿ってステータ構成要素12、14との接合面を提供すると言うことができる。さらに、ポンプ室80a-80gに対する位置関係を考えると、第1の軸方向端面15aは、ポンプ10の高真空、入口側にあり、反対側の第2の軸方向端面15bは、ポンプ10の低真空、出口側にある。
【0068】
第1及び第2のステータ構成要素12、14の間、及びステータ構成要素12、14とエンドピース50、52との間にはシールがないため、筐体40からの不活性パージガスは、コアポンプ組立体に漏れる可能性がある。これを防止する対策が実施されていない場合、漏れたパージガス110がポンプ室80a-gに入り、その中のプロセスガスと共に圧縮され、必要とされる圧縮仕事が増大するため、ポンプ10の効率が低下する可能性がある。
【0069】
この影響に対抗するために、本実施形態では、ステータ構成要素14にパージガス漏れ流路100a及び100bをさらに備え、これらは、ポンプ10の高真空、入口側でエンドピース50と界接する第1の軸方向端部15aから第3及び第5のポンプ室80c、80eにそれぞれ延びる。本実施形態では2つのパージガス漏れ流路100a、100bが示される、1とn-1の間のパージ漏れ流路を備える実施形態が想定され、nはポンプ段80の数である。さらに、流路100a、100bは、第3及び第5ポンプ室80c、80eに接続されて示されているが、流路100は、入口(高真空)ポンプ段80aを除く限り、ポンプ室80のいずれにも接続することができる。
【0070】
パージガス漏れ流路100a、100bは、コアポンプ組立体に漏れるパージガス110を捕捉する役割を果たす。流路100a、100bは、それぞれポンプ室80c、80eに接続されているため、流路100a、100bに入る漏れガス110は、プロセスガスと一緒にポンプ段80c、80eによってポンプ送給される。例えば、ポンプ10の高真空の入口端、すなわちエンドピース50により近い漏れガス110は、最初に流路100bに接触することになる。流路100bは、例えば約100mbarで加圧されるポンプ室80eに接続される。従って、漏れガス110は、流路100b内の圧力が同様に100mbarになるまでポンプ室80e内に送り込まれる。100mbarの圧力になった漏れガス110は、半径方向内側に流れ続けることができる。そうすることで、漏れガスは流路100aに接触することになる。流路100aはポンプ室80cに接続されており、このポンプ室80cは例えば約10mbarの低い圧力で加圧されている。流路100bと同様に、これは、漏れガス110の流れが10mbarの圧力に低減されることを意味する。このように、漏れガス110が最初に大気圧(~1bar)であったと仮定すると、漏れ量は、元の圧力の1/100に減少している。このように漏れガス110の圧力を低下させることにより、これは、漏れガス110が最低圧力のポンプ段80a、80bと接触するとき、漏れガス110を圧縮するためにこれらの段80a、80bが必要とする余分な仕事が著しく低減されることを保証する。
【0071】
図示の構成では、相対的なガス圧が存在するため、半径方向内側の流路100が利益をもたらすためには、半径方向内側の流路100は、半径方向外側の流路100よりも大きな容積のポンプ室80に接続される必要があることを理解されたい。
【0072】
図示の流路100a、100bの各々は、2つの曲がり部102、104を備えるように、断面が実質的にZ字形に似ている。これらの曲がり部102、104は、流路100a、100bを用いてコアポンプ組立体から外への漏れを防止するのを助けることができる。しかしながら、流路100a、100bは、漏れガス110を捕捉して必要なポンプ室80に移送するための何らかの適切な形状を有することができる。
【0073】
さらに、流路100a、100bは、ポンプ室80の中に軸方向に接続するように示されている。本実施形態では、これは、各ポンプ段80の段間ポートが、ロータ組立体の2つの平行なシャフトの間にあり、アクセスできないためである。しかしながら、ポンプ段80の入口が2つのシャフトの間にない実施形態では、流路100a、100bは、そのポンプ段の入口(すなわち、圧縮のためにプロセスガスをポンプ段に運ぶ入口)に接続できることが想定される。
【0074】
図示の流路100a、100bは、ステータ構成要素14の半径方向内面13bの対向する半径方向側面に一対の溝として設けられている。これらの溝は、ステータ構成要素14の半径方向内面13bに機械加工(例えば、フライス加工)することができる。しかしながら、流路100a、100bは、漏れガス110を捕捉して必要なポンプ室80に移送するための何らかの他の適切な形態をとることができ、何らかの他の適切な方法で作ることができる。例えば、これらは、ステータ構成要素14に鋳造又は穿孔することができる。
【0075】
次に
図3を参照すると、真空ポンプ10は、流路100を、長手方向シール120及び/又は環状シール130などの従来のシール方法と組み合わせることができる。長手方向シール120は、高真空エンドピース50から低真空エンドピース52まで、流路100の半径方向外側で、ステータ構成要素12、14の溝内に延びることができる。長手方向シール120及びその溝は、コアポンプ組立体の両端を流体的に接続するのを防止するために、不連続とすることができる。環状シール130は、エンドピース50、52とステータ構成要素12、14との間に配置され、流路100の半径方向外側に位置する直径を有する。これらの随意的なシールの目的は、半径方向外側の流路100bに到達する漏れガス110の量を低減し、従って、当該流路100bが接続されるポンプ段80eが必要とする仕事量を低減し、ポンプ10の効率をさらに向上させることである。しかしながら、本実施形態のコアポンプ組立体のシールシステム120、130は、シール120、130を通るコアポンプ組立体への何らかの漏れが上述のように流路100によって低減されるため、従来のシールシステムほど正確であるか又は堅牢である必要はない。これは、2つのステータ構成要素12、14の間、及びステータ構成要素12、14とエンドピース50、52との間の正確な位置合わせが必要ないことを意味する。さらに、このことは、エラストマーシールが必要条件である従来のシールシステムとは対照的に、シール120、130がエラストマーシール又は非エラストマーシールのいずれかで構成され得ることを意味する。
【0076】
図4を参照すると、
図1aのコアポンプ組立体における線Y-Yに沿った、2つのステータ構成要素12、14の第1の軸方向端面15aに向かって見た断面が示されている。パージガス漏れ流路100a、100bは、ステータ構成要素12、14の第1の軸方向端面15aにわたって延びる部分101a、101bをさらに備えることが分かる。これにより、第1の軸方向端面15aによって画定される接合面(すなわち、ステータ構成要素12、14とエンドピース50との間の接合面)においてさらなるパージガスの漏れを集めることができる。
【0077】
図示の実施形態では、部分101a、101bは、半径方向内面13a、13bの対向する半径方向側面を流体的に接続するために使用され、従って、半径方向内面13a、13bの流路100a、100bの部分に流体的に接続される。このように、部分101a,101bは、第1の軸方向端面15aにおいてステータ構成要素12、14の一部を取り囲み、第1の軸方向端面15aに漏れたパージガスを集め、これを半径方向内面13a,13bにおける流路100a、100bの部分に移送する。これにより、パージガス漏れ流路100a、100bは、第1の軸方向端面15aを取り囲む部分101a、101bがエンドプレート50との接合面において実質的に360度にわたって延びているため、ステータ構成要素12、14とエンドピース50との間の接合面に漏れる可能性のある漏れガス110をより多く集めることができる。
【0078】
このように、より多量の漏れガス110が最低圧力のポンプ段80a、80bに入るのを防止することができ、その結果、ポンプ10の高真空効率をさらに向上させることができる。
【0079】
図4に示される部分101a、101bは、実質的にU字形状であるが、半径方向内面13a、13bの対向する半径方向側面を接続するために他の何らかの適切な形状、例えば半円形状をとることができる。図示のように、部分101a、101bは異なる半径を有し、これらは、第1の軸方向端面15aにわたって半径方向に離間して入れ子になっている。
【0080】
図示の部分101a、101bは、ステータ構成要素12、14の第1の軸方向端面15aの対向する半径方向側面を接続する溝として設けられている。これらの溝は、ステータ構成要素12、14の第1の軸方向端面15aに機械加工(例えば、フライス加工)することができる。しかしながら、第1の軸方向端面15aにわたって漏れガス110を捕捉して移送するための他の何らかの適切な形態をとることができる。
【0081】
本発明は、内部にポンプ室が画定されたクラムシェル型ステータ構造(例えば、ルーツ型ポンプ及びクロー型ポンプ)に関連して説明されているが、本開示は、シールフリー設計が望ましい他のポンプにも適用できることが想定される。例えば、スクリューポンプは、本明細書で説明するものと同様の流路を組み込むことができるが、流路をスクリューの長さに沿って異なる位置に接続することができる。スクリューポンプに関連して、異なるスクリュー長さ位置は、本開示で議論される異なるポンプ室80a-80gに相当すると見なされる。
添付の
図1から4で使用される参照数字の下記のリストは、参照を容易にするために提示される。
【符号の説明】
【0082】
10 真空ポンプ
12 第1のステータ構成要素
13 ステータ構成要素接合面
13a、13b ステータ構成要素の半径方向内面
14 第2のステータ構成要素
15a、15b ステータ構成要素の軸方向端面
16 筐体カバー
18 ヘッドプレート
20 モータ
22 歯車カバー
24 モータシール
26 歯車カバーシール
30 エンドカバー
32 エンドカバーシール
40 筐体
42 筐体シール
50 第1のエンドピース
52 第2のエンドピース
60 サーマルスペーサ
70 不活性パージガス入口
72 排気口
80a-g ポンプ室
90 不活性ガス除去通路
100a、100b パージガス漏れ流路
101a、101b パージガス漏れ流路の部分
102a、102b 第1の流路の曲がり部
104a、104b 第2の流路の曲がり部
110 パージガス漏れ
120 長手方向シール
130 環状シール
L-L 長手方向軸
R-R 半径方向軸
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプであって、
実質的に密封された筐体と、
前記筐体内に配置され、内部に複数のポンプ室を画定するように接合された2つのステータ半体を備えるコアポンプ組立体と、
前記コアポンプ組立体を取り囲む前記筐体の内部に不活性パージガスを供給するために、前記筐体に流体的に接続された不活性パージガス入口と、
を備える、真空ポンプ。
【請求項2】
前記コアポンプ組立体と前記筐体との間に配置され、前記コアポンプ組立体を前記筐体から熱的に分離するためのサーマルスペーサをさらに備える、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記サーマルスペーサは、セラミック材料を含む、請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記複数のポンプ室は、真空システムからプロセスガスを受け入れるように構成された入口ポンプ室を含み、
前記2つのステータ半体は、前記真空ポンプの高真空、入口側の第1の軸方向端面と、前記真空ポンプの低真空、出口側の対向する第2の軸方向端面との間に延び、前記2つのステータ半体の各々は、半径方向内面を画定し、前記半径方向内面に沿って一緒に接合され、
少なくとも1つのステータ半体は、前記第1の軸方向端面を前記入口ポンプ室の下流側のポンプ室に流体的に接続するパージガス漏れ流路を含む、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのステータ半体は、前記第1の軸方向端面を前記入口ポンプ室の下流側の異なるポンプ室に流体的に接続する複数のパージガス漏れ流路を備える、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記複数のパージガス漏れ流路は、半径方向に間隔をあけて配置され、前記パージガス漏れ流路の半径方向外側の1つは、前記パージガス漏れ流路の半径方向内側の1つが流体的に接続されるポンプ室よりも容積が小さいポンプ室に流体的に接続される、請求項5に記載の真空ポンプにおいて、
【請求項7】
前記パージガス漏れ流路は、前記第1の軸方向端面から軸方向に延び、断面が実質的にZ字形である、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記パージガス漏れ流路は、前記第1の軸方向端面にわたって延びる前記パージガス漏れ流路の部分をさらに含む、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記第1の軸方向端面にわたって延びる前記パージガス漏れ流路の前記部分は、半径方向内面の対向する半径方向側面を流体的に接続する、請求項8に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
前記第1の軸方向端面上の前記パージガス漏れ流路の前記部分は、前記第1の軸方向端面に画定された溝を備える、請求項8に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
前記パージガス漏れ流路は、前記半径方向内面の対向する半径方向側面上に、前記半径方向内面に画定された一対の溝を備える、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項12】
前記コアポンプ組立体は、前記対向する第1及び第2の軸方向端面に接合されたエンドピースをさらに備える、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項13】
前記コアポンプ組立体は、エラストマーシールを備えていない、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項14】
モータと、
歯車ギアカバーと、
エンドカバーと、
をさらに備え、
前記モータ、前記歯車カバー及び前記エンドカバーの各々は、前記筐体の外側に配置されている、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項15】
前記真空ポンプのロータ組立体を支持するための一対のヘッドプレートをさらに備え、
前記一対のヘッドプレートは、前記コアポンプ組立体から間隔をあけて配置されている、請求項1に記載の真空ポンプ。
【国際調査報告】