(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R15/20 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537437
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2022132436
(87)【国際公開番号】W WO2023116279
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111569964.4
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building D & E, No.2 Guangdong Road,Zhangjiagang Free Trade Zone,Zhangjiagang,Jiangsu,215634 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ミンフォン
(72)【発明者】
【氏名】シー、ラン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、ソンション
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB01
2G025AB04
2G025AC01
(57)【要約】
差動銅バー(1)と電流シャント銅用バー(2)が並列に接続された電流センサーの入力モジュールです。測定される電流が差動銅バー(1)と電流用シャント用銅バー(2)を流れ、磁場が高電流と低電流検出モジュール(3、4)の位置に発生します。大電流検出モジュール(3)では、第1の磁気誘導モジュールが回路基板(5)上に固定され、入力モジュールの内部ギャップに配置され、第1の磁気誘導モジュールは、少なくとも第1および第2の磁気誘導ユニット(311、312)から構成され、第1および第2の磁気誘導ユニット(311、312)は、入力モジュールの磁界を差動検知し、第1の信号出力モジュール(32)によって出力信号を形成する。低電流検出モジュール(4)において、第2の磁気誘導モジュールは、回路基板(5)上に固定され、入力モジュールの外側に配置され、第2の磁気誘導モジュールは、少なくとも第3および第4の磁気誘導ユニット(411、412)から構成され、入力モジュールの磁界を差動的に感知し、第2の信号出力モジュール(42)によって出力信号を形成する。電流測定範囲を広げることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力モジュールと、高電流検出モジュールと、低電流検出モジュールと、回路基板とを備える、電流センサであって、
該入力モジュールが、並列に接続された差動銅バーおよび電流シャント用銅バーを備え、被測定電流が、該差動銅バーおよび該電流シャント用銅バーの断面と垂直に流れて、該高電流検出モジュールおよび該低電流検出モジュールの位置において磁場を発生させ、
該高電流検出モジュールが、第1の磁気誘導モジュールおよび第1の信号出力モジュールを備え、該第1の磁気誘導モジュールが、該回路基板上に固定されるとともに該入力モジュールの内部間隙内に配置され、該第1の磁気誘導モジュールが、少なくとも、第1の磁気感知ユニットおよび第2の磁気感知ユニットをその中に備え、該第1の磁気感知ユニットおよび該第2の磁気感知ユニットが、該入力モジュールの該磁場を差動的に感知して、該第1の信号出力モジュールを通じて出力信号を形成し、
該低電流検出モジュールが、第2の磁気誘導モジュールおよび第2の信号出力モジュールを備え、該第2の磁気誘導モジュールが、該回路基板上に固定されるとともに該入力モジュールの外側に配置され、該第2の磁気誘導モジュールが、少なくとも、第3の磁気感知ユニットおよび第4の磁気感知ユニットをその中に備え、該第3の磁気感知ユニットおよび該第4の磁気感知ユニットが、該入力モジュールの該磁場を差動的に感知して、該第2の信号出力モジュールを通じて出力信号を形成する、
電流センサ。
【請求項2】
スイッチング・モジュールをさらに備え、該スイッチング・モジュールが、前記被測定電流の範囲に従って、前記高電流検出モジュールに切り替えるかそれとも前記低電流検出モジュールに切り替えるかを選択し、
前記入力モジュール、前記高電流検出モジュール、前記低電流検出モジュール、および該スイッチング・モジュールが、互いに電気的に絶縁されている、
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記第1の磁気感知ユニットが、前記差動銅バーの上方に位置し、前記第1の磁気感知ユニットの感度方向が、前記差動銅バーによって前記第1の磁気感知ユニットにおいて発生される磁場の方向と同じかまたは反対であり、前記第1の磁気誘導モジュールの面内の方向に沿っており、前記被測定電流の前記方向に直交し、
前記第2の磁気感知ユニットの感度方向が、前記第1の磁気感知ユニットの感度方向と同じであり、前記第2の磁気感知ユニットと前記差動銅バーとの間の距離が、前記第1の磁気感知ユニットと前記差動銅バーとの間の距離よりも大きい、
請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記差動銅バーが、前記第1の磁気誘導モジュールの付近で段形状にあり、少なくとも、第1の段および第2の段を備え、
前記第1の磁気感知ユニットが、該第1の段の上方に位置し、前記第2の磁気感知ユニットが、該第2の段の上方に位置し、
前記第1の磁気感知ユニットの感度方向が、前記差動銅バーによって前記第1の磁気感知ユニットにおいて発生される磁場の方向と同じかまたは反対であり、前記第1の磁気誘導モジュールの面内の方向に沿っており、前記被測定電流の前記方向に直交し、
前記第2の磁気感知ユニットの感度方向が、前記差動銅バーによって前記第2の磁気感知ユニットにおいて発生される磁場の方向と同じかまたは反対であり、前記第2の磁気誘導モジュールの面内の方向に沿っており、前記被測定電流の前記方向に直交する、
請求項1または3に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記第1の磁気誘導モジュール内の前記第1の磁気感知ユニットおよび前記第2の磁気感知ユニットが、差動半ブリッジ構造、差動フル・ブリッジ構造、ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造、およびダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造のうちのいずれか1つを形成するように接続され、
前記第2の磁気誘導モジュール内の前記第3の磁気感知ユニットおよび前記第4の磁気感知ユニットが、差動半ブリッジ構造、差動フル・ブリッジ構造、ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造、およびダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造のうちのいずれか1つを形成するように接続され、
該差動半ブリッジ構造では、各磁気感知ユニットが1つの磁気抵抗ブリッジ・アームを備え、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気抵抗ブリッジ・アームがともに電気的に差動化されて、該差動半ブリッジ構造を形成し、
該差動フル・ブリッジ構造では、各磁気感知ユニットが2つの磁気抵抗ブリッジ・アームを備え、同一磁気感知ユニット内の2つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、対向する2つのブリッジ・アーム上に位置し、異なる磁気感知ユニットの2つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、2つの隣接するブリッジ・アーム上に位置して、該差動フル・ブリッジ構造を形成し、前記磁気誘導モジュールの前記出力信号が、該差動フル・ブリッジ構造の差動信号であり、
該ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造では、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットがどちらも、2つの磁気抵抗ブリッジ・アームを備え、各磁気感知ユニット内の2つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、反対の感度方向を有し、該磁気感知ユニット内の2つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、上部および下部ブリッジ・アームであり、プッシュ・プル半ブリッジ構造を形成し、該2つの磁気感知ユニット内の該上部ブリッジ・アームの感度方向が同じであり、該2つの磁気感知ユニット内の該下部ブリッジ・アームの感度方向が同じであり、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットが、該ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造を全体として形成し、前記磁気誘導モジュールの前記出力信号が、該ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造の差動信号であり、
該ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造では、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットがどちらも、4つの磁気抵抗ブリッジ・アームを備え、該磁気感知ユニットの4つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、プッシュ・プル・フル・ブリッジ構造を形成し、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットの感度方向が同じであり、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットが、該ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造を全体として形成し、前記磁気誘導モジュールの前記出力信号が、該ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造の差動信号であり、
該磁気抵抗ブリッジ・アームが、1つまたは複数の磁気抵抗感知コンポーネントを直列および並列に接続することによって形成される、
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第1の信号出力モジュールおよび前記第2の信号出力モジュールがそれぞれ、開ループ回路を使用した開ループ信号調整回路、または閉ループ回路およびフィードバック・コイルを使用した閉ループ信号調整回路を備え、
該開ループ回路では、前記第1の信号出力モジュールまたは前記第2の信号出力モジュールが、該開ループ信号調整回路を使用して、前記モジュール内の2つの磁気感知ユニットの差動信号に対して調整増幅、温度補償、および直線性補正を実施し、該開ループ信号調整回路が、プリント回路基板(PCB)レベルのディスクリート・コンポーネント回路または特定用途向け集積回路(ASIC)のうちの一方であり、
該閉ループ回路では、前記第1の信号出力モジュールまたは前記第2の信号出力モジュールが、該閉ループ信号調整回路および該フィードバック・コイルを使用して、前記モジュール内の2つの磁気感知ユニットの差動信号に対して調整増幅、温度補償、および直線性補正を実施し、該閉ループ信号調整回路、該フィードバック・コイル、および前記高電流検出モジュールまたは前記低電流検出モジュール内の該磁気感知ユニットが、閉ループ磁場フィードバックを形成し、前記モジュール内の2つの磁気感知ユニットの前記差動信号が増幅され、次いで、ディファレンシャル・モード磁場を逆向きに相殺するように、該フィードバック・コイルを通じてフィードバック磁場が発生され、磁場の動的平衡に達すると、前記モジュール内の2つの磁気感知ユニットが、等しいコモン・モード磁場動作点で動作し、該フィードバック・コイルのフィードバック電流がサンプリング抵抗器を通じてサンプリングされて、前記磁気誘導モジュールの出力信号が形成し、
該閉ループ信号調整回路が、PCBレベルのディスクリート・コンポーネント回路またはASICのうちの一方であり、該フィードバック・コイルが、該閉ループ信号調整回路、前記回路基板、該磁気感知ユニット、該ASIC、または前記磁気誘導モジュール内に統合される、
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第2の磁気誘導モジュール内の前記第3の磁気感知ユニットおよび前記第4の磁気感知ユニットが、次の2つの方法、
(1)前記第3の磁気感知ユニットが、前記入力モジュールの上方に位置し、前記第4の磁気感知ユニットが、前記入力モジュールの下方または側方に位置し、前記第3の磁気感知ユニットおよび前記第4の磁気感知ユニットの感度方向が同じである、
(2)前記第3の磁気感知ユニットおよび前記第4の磁気感知ユニットが、前記入力モジュールに対して同じ側に位置し、前記第3の磁気感知ユニットが、前記第3の磁気感知ユニットに最も近い前記電流シャント用銅バーまたは前記差動銅バーの垂直投影カバー範囲内に位置し、前記第3の磁気感知ユニットの感度方向が、前記第3の磁気感知ユニットに最も近い前記電流シャント用銅バーまたは前記差動銅バーによって前記第3の磁気感知ユニットの該位置において発生される磁場の方向と同じかまたは反対であり、前記第2の磁気誘導モジュールの面内の方向に沿っており、前記被測定電流の前記方向に直交し、前記第4の磁気感知ユニットが、前記電流シャント用銅バーおよび前記差動銅バーの垂直投影カバー範囲の外側に位置し、前記第4の磁気感知ユニットの感度方向が、前記第3の磁気感知ユニットの感度方向と同じである、
のうちのいずれか一方で配置される、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項8】
第3の電流検出モジュールをさらに備え、該第3の電流検出モジュールが、第3の磁気誘導モジュールおよび第3の信号出力モジュールを備え、
該第3の磁気誘導モジュールが、前記第1の磁気誘導モジュール内の前記第1の磁気感知ユニットまたは前記第2の磁気感知ユニット、および前記第2の磁気誘導モジュール内の前記第3の磁気感知ユニットまたは前記第4の磁気感知ユニットからなり、該第3の磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットが、前記入力モジュールの前記磁場を差動的に感知して、該第3の信号出力モジュールを通じて前記電流センサの出力信号を形成する、
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項9】
電流シャント用銅バーの数が1つまたは複数であり、任意の電流シャント用銅バーが、前記第1の磁気誘導モジュールの上方または前記差動銅バーの下方に位置し、任意の電流シャント用銅バーの垂直投影範囲が、前記第1の磁気誘導モジュール内の前記第1の磁気感知ユニットおよび前記第2の磁気感知ユニットをカバーする、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項10】
入力モジュールと、高電流検出モジュールと、低電流検出モジュールと、回路基板とを備える、電流センサであって、
該入力モジュールが、並列に接続された2つ以上の電流シャント用銅バーを備え、被測定電流が、該電流シャント用銅バーの断面と垂直に流れて、該高電流検出モジュールおよび該低電流検出モジュールの位置において磁場を発生させ、
該高電流検出モジュールが、該入力モジュールの内部間隙内に位置し、該高電流検出モジュールが、該回路基板上に固定された第1の磁気誘導モジュールおよび第1の信号出力モジュールを備え、該第1の磁気誘導モジュールが、第1の磁気感知ユニットを備え、該第1の磁気感知ユニットが、該入力モジュールの該磁場を感知して、該第1の信号出力モジュールを通じて該電流センサの出力信号を形成し、
該低電流検出モジュールが、該入力モジュールの外側に位置し、該低電流検出モジュールが、該回路基板上に固定された第2の磁気誘導モジュールおよび第2の信号出力モジュールを備え、該第2の磁気誘導モジュールが、第2の磁気感知ユニットを備え、該第2の磁気感知ユニットが、該入力モジュールの該磁場を感知して、該第2の信号出力モジュールを通じて該電流センサの出力信号を形成する、
電流センサ。
【請求項11】
差動検出モジュールをさらに備え、該差動検出モジュールが、前記高電流検出モジュール内の前記第1の磁気感知ユニットおよび前記低電流検出モジュール内の前記第2の磁気感知ユニットを使用して、前記入力モジュールの前記磁場を差動的に感知して、第3の信号出力モジュールを通じて前記電流センサの出力信号を形成する、請求項10に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電流検出デバイスの技術分野に関し、詳細には、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電流センサは、測定された電流情報を、特定のルールによる特定の標準を満たす電気信号、または出力として必要となる他の形態をとる情報に、変換することができる。電流センサは、情報の伝送、処理、記憶、表示、記録、および制御の要件を満たすことのできる検出デバイスである。
【0003】
現在、広く使用されている電流センサとしては、シャント、変流器、ロゴスキー・コイル、光ファイバ電流センサ、および磁気電流センサがあり、それらは主に、家電製品、スマート・グリッド、電気車両、風力発電、および他の分野に使用される。
【0004】
シャントは、直流が標準抵抗器を通過するとその抵抗器の両端部に電圧が発生されるという原理に基づいてなされ、低周波数および低電力に適している。シャントには、信号出力端部と被測定電流ループとの間に電気的な絶縁がない、単一のタイプの対象物しか測定することができない、また大きな交流をシャントが測定することが困難である、という欠点がある。変流器は、電磁誘導の原理に基づいてなされ、交流しか測定することができない。ロゴスキー・コイルは、比較的広い周波数範囲の交流を測定するのに適しているが、直流を測定することができない。ロゴスキー・コイルは、感度が比較的低く、サイズが比較的大きい。光ファイバ電流センサは、磁気光学結晶のファラデー効果に基づいてなされる。光ファイバ電流センサは、外部情報に敏感であるとともに外部情報を検出することの可能な光ファイバを、感知コンポーネントとして使用するもので、測定精度が比較的高く、小型化が容易であるが、コストの高い特別な光ファイバを必要とする。磁気電流センサには多くのタイプがある。例えば、ホール電流センサには、成熟した技術、低コスト、高統合度、および小サイズという利点があるが、ホール電流センサは、感度が低く、温度ドリフト特性が不十分であり、帯域幅が狭く、高精度の電流測定の場合にホール電流センサを使用することは困難である。ホール電流センサと比較して、他のタイプの磁気抵抗電流センサは、飽和磁場が比較的小さく、その結果、動作範囲が比較的狭くなっており、また高電流測定中に磁気飽和を起こしやすく、それにより電流測定範囲が限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、高電流または低電流が入力されたときに、電流測定範囲を増大させ、高精度検出効果を達成するための、電流センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、入力モジュールと、高電流検出モジュールと、低電流検出モジュールと、回路基板とを含む、電流センサであって、
入力モジュールが、並列に接続された差動銅バーおよび電流シャント用銅バーを備え、被測定電流が、差動銅バーおよび電流シャント用銅バーの断面と垂直に流れて、高電流検出モジュールおよび低電流検出モジュールの位置において磁場を発生させ、
高電流検出モジュールが、第1の磁気誘導モジュールおよび第1の信号出力モジュールを備え、第1の磁気誘導モジュールが、回路基板上に固定されるとともに入力モジュールの内部間隙内に配置され、第1の磁気誘導モジュールが、少なくとも、第1の磁気感知ユニットおよび第2の磁気感知ユニットをその中に備え、第1の磁気感知ユニットおよび第2の磁気感知ユニットが、入力モジュールの磁場を差動的に感知して、第1の信号出力モジュールを通じて出力信号を形成し、
低電流検出モジュールが、第2の磁気誘導モジュールおよび第2の信号出力モジュールを備え、第2の磁気誘導モジュールが、回路基板上に固定されるとともに入力モジュールの外側に配置され、第2の磁気誘導モジュールが、少なくとも、第3の磁気感知ユニットおよび第4の磁気感知ユニットをその中に備え、第3の磁気感知ユニットおよび第4の磁気感知ユニットが、入力モジュールの磁場を差動的に感知して、第2の信号出力モジュールを通じて出力信号を形成する、
電流センサを提供する。
【0007】
本発明の一実施形態は、入力モジュールと、高電流検出モジュールと、低電流検出モジュールと、回路基板とを含む、電流センサであって、
入力モジュールが、並列に接続された2つ以上の電流シャント用銅バーを備え、被測定電流が、これらの電流シャント用銅バーの断面と垂直に流れて、高電流検出モジュールおよび低電流検出モジュールの位置において磁場を発生させ、
高電流検出モジュールが、入力モジュールの内部間隙内に位置し、高電流検出モジュールが、回路基板上に固定された第1の磁気誘導モジュールおよび第1の信号出力モジュールを備え、第1の磁気誘導モジュールが、第1の磁気感知ユニットを備え、第1の磁気感知ユニットが、入力モジュールの磁場を感知して、第1の信号出力モジュールを通じて電流センサの出力信号を形成し、
低電流検出モジュールが、入力モジュールの外側に位置し、低電流検出モジュールが、回路基板上に固定された第2の磁気誘導モジュールおよび第2の信号出力モジュールを備え、第2の磁気誘導モジュールが、第2の磁気感知ユニットを備え、第2の磁気感知ユニットが、入力モジュールの磁場を感知して、第2の信号出力モジュールを通じて電流センサの出力信号を形成する、
電流センサをさらに提供する。
【0008】
本発明のこの実施形態では、差動銅バーと電流シャント用銅バーが並列に接続されて、入力モジュールを形成し、被測定電流が分流される。高電流検出モジュールが、入力モジュールの内部間隙内に位置し、低電流検出モジュールが、入力モジュールの外側に位置し、第1の磁気誘導モジュールおよび第2の磁気誘導モジュールがそれぞれ、入力モジュールの磁場を差動的に感知し、次いで、第1の信号出力モジュールおよび第2の信号出力モジュールを通じて出力信号を形成し、それにより、電流センサが、磁気誘導モジュールを通じて、入力モジュールを流れる被測定電流によって発生されたディファレンシャル・モード磁場を差動的に感知することが実現する。本発明のこの実施形態において提供される電流センサでは、各銅バーの形状および分布を調整することによって電流入力範囲および感度を調節し、それにより、電流測定範囲が大きくなり、さまざまな動作範囲にある磁気感知ユニットに電流センサが適したものになるようにすることができる。本電流センサは、高電流または低電流が入力されたときに高精度検出を達成することができ、直流および/または交流を測定することもできる。さらに、入力モジュールと信号出力モジュールが電気的に絶縁されており、それにより、外部磁場干渉に対する耐性能力を改善することが可能である。
【0009】
本発明の実施形態または先行技術における技術的解決策をより明確に示すために、実施形態または先行技術用に必要な図面について、下で簡単に紹介する。下で説明する図面は、本発明の一部の特定の実施形態についてのものであるが、当業者にとっては、本発明のさまざまな実施形態によって開示および喚起されるデバイス構造、駆動方法、および製造方法の基本概念を、他の構造および図面に拡張および拡大できること、ならびにこれらが本発明の特許請求の範囲に含まれるはずであることに疑いの余地のないことが、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態において提供される電流センサの概略図である。
【
図2】
図1の段状差動銅バーの磁場シミュレーション図である。
【
図3】
図1の入力モジュールの磁場シミュレーション図である。
【
図4】本発明の一実施形態において提供される別の電流センサの概略図である。
【
図7】ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造の概略図である。
【
図8】ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造の概略図である。
【
図9】本発明の一実施形態において提供されるさらに別の電流センサの概略図である。
【
図10】本発明の一実施形態において提供されるさらに別の電流センサの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の目的、技術的解決策、および利点をより明確にするために、本発明の技術的解決策について下で、本発明の実施形態における図面を参照して、実装形態を通じて明確かつ完全に説明する。ここで説明する実施形態は本発明の全ての実施形態ではなく一部の実施形態であることが、明らかである。本発明の実施形態によって開示および喚起される基本概念に基づいて、当業者によって得られる他の全ての実施形態は本発明の保護範囲に含まれる。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態において提供される電流センサの概略図を示す。この実施形態における電流センサは、入力モジュールと、高電流検出モジュール3と、低電流検出モジュール4と、回路基板5とを含む。入力モジュールは、並列に接続された差動銅バー1および電流シャント用銅バー2を含み、被測定電流が、差動銅バー1および電流シャント用銅バー2の断面と垂直に流れて、高電流検出モジュール3および低電流検出モジュール4の位置において磁場を発生させる。高電流検出モジュール3は、第1の磁気誘導モジュールおよび第1の信号出力モジュール32を含み、第1の磁気誘導モジュールは、回路基板5上に固定されるとともに入力モジュールの内部間隙内に配置され、第1の磁気誘導モジュールは、少なくとも、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312をその中に含み、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312が、入力モジュールの磁場を差動的に感知して、第1の信号出力モジュール32を通じて出力信号を形成する。低電流検出モジュール4は、第2の磁気誘導モジュールおよび第2の信号出力モジュール42を含み、第2の磁気誘導モジュールは、回路基板5上に固定されるとともに入力モジュールの外側に配置され、第2の磁気誘導モジュールは、少なくとも、第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412をその中に含み、第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412が、入力モジュールの磁場を差動的に感知して、第2の信号出力モジュール42を通じて出力信号を形成する。
【0013】
この実施形態では、入力モジュールが、並列に接続された差動銅バー1および電流シャント用銅バー2を含む。
図1に示す電流センサの断面図では、差動銅バー1と電流シャント用銅バー2との間に間隙がある。差動銅バー1、電流シャント用銅バー2、およびそれらの間の間隙は、入力モジュールの領域として定義することができ、その場合、間隙は入力モジュールの内部間隙である。それに応じて、入力モジュールの領域の周辺部は、入力モジュールの外側として定義することができる。このことから、回路基板5上に固定された高電流検出モジュール3は、入力モジュールの内部間隙内に配置されており、すなわち、高電流検出モジュール3は、差動銅バー1と電流シャント用銅バー2との間に位置し、回路基板5上に固定された低電流検出モジュール4は、入力モジュールの外側に配置されており、任意選択で、低電流検出モジュール4は、電流シャント用銅バー2の、差動銅バー1から離れた側の外側に位置する、ということが分かる。電流センサの断面図は、差動銅バー1および電流シャント用銅バー2に直交する面を選択して電流センサを切断することによって得られた断面図である、と理解することができる。
【0014】
電流センサは、電流を検出するために使用され、被測定電流は、電流センサに流れ込む。具体的には、被測定電流は、差動銅バー1および電流シャント用銅バー2に直交する断面に流れて、高電流検出モジュール3の位置において磁場を発生させるとともに、低電流検出モジュール4の位置においても磁場を発生させる。
【0015】
高電流検出モジュール3は、第1の磁気誘導モジュール(番号付けされていない)および第1の信号出力モジュール32を含み、ここで、第1の磁気誘導モジュールは、回路基板5上に固定されるとともに入力モジュールの内部間隙内に配置され、すなわち、高電流検出モジュール3は、差動銅バー1と電流シャント用銅バー2との間に位置する。
図1に示すように、第1の磁気誘導モジュールは、少なくとも、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312をその中に含む。被測定電流が入力モジュールに流れ込んだ後で、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312が、入力モジュールの磁場を差動的に感知し、第1の信号出力モジュール32によって磁場信号が処理されて、電流センサの出力信号が形成する。
【0016】
低電流検出モジュール4は、第2の磁気誘導モジュール(番号付けされていない)および第2の信号出力モジュール42を含み、ここで、第2の磁気誘導モジュールは、回路基板5上に固定されるとともに入力モジュールの外側に配置され、任意選択で、低電流検出モジュール4は、電流シャント用銅バー2の、差動銅バー1から離れた側に位置する。
図1に示すように、第2の磁気誘導モジュールは、少なくとも、第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412をその中に含み、ここで、第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412は、入力モジュールの外側の同じ側に位置し、任意選択で、入力モジュールの上方かつ電流シャント用銅バー2の付近に位置する。第3の磁気感知ユニット411は、電流シャント用銅バー2の垂直投影カバー範囲(vertical projection coverage)内に位置し、第4の磁気感知ユニット412は、垂直投影カバー範囲の外側に位置する。第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412の感度方向はどちらも右向きである。被測定電流が入力モジュールに流れ込んだ後で、第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412が、入力モジュールの磁場を差動的に感知し、第2の信号出力モジュール42によって磁場信号が処理されて、電流センサの出力信号が形成する。
【0017】
図1に示すように、任意選択で、第1の磁気感知ユニット311は、差動銅バー1の上方に位置し、第1の磁気感知ユニット311の感度方向は、差動銅バー1によって第1の磁気感知ユニット311において発生される磁場の方向と同じかまたは反対であり、第1の磁気誘導モジュールの面内の方向に沿っており、被測定電流の方向に直交する。第2の磁気感知ユニット312の感度方向は、第1の磁気感知ユニット311の感度方向と同じであり、第2の磁気感知ユニット312と差動銅バー1との間の距離は、第1の磁気感知ユニット311と差動銅バー1との間の距離よりも大きい。
【0018】
任意選択で、差動銅バー1は、第1の磁気誘導モジュールの付近で段形状にあり、少なくとも、第1の段11および第2の段12を含む。第1の磁気感知ユニット311は、第1の段11の上方に位置し、第2の磁気感知ユニット312は、第2の段12の上方に位置する。第1の磁気感知ユニット311の感度方向は、差動銅バー1によって第1の磁気感知ユニット311において発生される磁場の方向と同じかまたは反対であり、第1の磁気誘導モジュールの面内の方向に沿っており、被測定電流の方向に直交する。第2の磁気感知ユニット312の感度方向は、差動銅バー1によって第2の磁気感知ユニット312において発生される磁場の方向と同じかまたは反対であり、第2の磁気誘導モジュールの面内の方向に沿っており、被測定電流の方向に直交する。
【0019】
具体的には、
図1に示すように、段状断面をもつ差動銅バー1および矩形断面をもつ電流シャント用銅バー2が使用され、この2つが並列に接続され、分流されて、入力モジュールを形成し、差動銅バー1と電流シャント用銅バー2との間には間隙がある。段状差動銅バー1の、電流シャント用銅バー2に面する側が段状であり、その断面図は、
図1に示すように、第1の段11および第2の段12を含む。第1の磁気感知ユニット311は、第1の段11の上方の磁場一様領域内に位置し、第2の磁気感知ユニット312は、第2の段12の上方の磁場一様領域内に位置する。第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312はどちらも、電流シャント用銅バー2の磁場一様領域に位置し、感度方向はどちらも右向きである。
【0020】
図2は、段状差動銅バーの磁場シミュレーション図を示す。被測定電流I
inが50Aであり、段状差動銅バー1の断面の幅が10mmである、と仮定する。被測定電流が入力モジュールに流れ込むとき、差動銅バー1の0.6mm上方の水平面において磁場が発生される。
図2に示すように、差動銅バー1の段上昇部(step rising section)の付近で、第1の段11および第2の段12の上方の同一面における磁場に明らかな差があり、また磁場分布が比較的一様である、ということが分かる。
【0021】
図3は、入力モジュールの磁場シミュレーション図を示す。差動銅バー1に基づいて、断面の幅が10mmの電流シャント用銅バー2が導入され、電流シャント用銅バー2は、差動銅バー1と並列に接続される。入力モジュールの磁場シミュレーション計算結果が、
図3に示されている。
図2と比較して、入力モジュールの磁場分布の形状はほぼ同じに留まるが、曲線全体が明らかな下方移動を示している、すなわち磁場が減少している、ということが分かる。
【0022】
被測定電流I
inは、入力モジュールの断面と垂直に流れることが可能であり、
図1の電流方向は、紙面に直交で内向きである。第1の段11を通過する電流をI
11、第2の段12を通過する電流をI
12、電流シャント用銅バー2を通過する電流をI
2と仮定すると、差動銅バー1を流れる電流I
1は、I
1=I
11+I
12である。第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312は、電流シャント用銅バー2の磁場一様領域内に位置し、これらの銅バーが同一材料製であり、その場合、式(1)が得られる。
I
in=I
11+I
12+I
2 (1)
【0023】
解析および計算を容易にするために、第1の段11および第2の段12の全体を、第2の段12の高さに従って、上部および下部矩形断面部分に再分割することができる。差動銅バー1によって分割された下部矩形の高さは、第2の段12の高さと一致し、下部矩形の幅は、第1の段11と第2の段12の和である。差動銅バー1によって分割された上部矩形の高さは、第1の段11と第2の段12との間の高さの差であり、上部矩形の幅は、第1の段11と一致する。その場合、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312は、下部矩形の上方に位置し、第1の磁気感知ユニット311は、上部矩形の上方に位置する。第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312は、下部矩形の磁場一様領域内に位置し、第1の磁気感知ユニット311は、上部矩形の磁場一様領域内に位置する、と結論付けることができる。
【0024】
これに基づいて、段状差動銅バー1を流れる電流I1を、下部矩形の電流I’1と上部矩形の電流ΔI1に分割することができ、その場合、式(2)および式(3)が得られる。
I=I’1+ΔI1 (2)
Iin=I’1+ΔI1+I2 (3)
【0025】
図1に示す水平右方向を磁場の順方向とみなすと、通電導体によって発生される磁場についてのビオ・サバールの法則によれば、段状差動銅バー1の電流I
1によって第1の磁気感知ユニット311の位置において発生される磁場H
211および第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される磁場H
212はそれぞれ、電流に対して線形に変化し、その場合、式(4)が得られる。
H
211=k
1I’
1+k
21ΔI
1-k
3I
2;
H
212=k
1I’
1+k
22ΔI
1-k
3I
2 (4)
上式で、k
1は、下部矩形の電流I’
1によって第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される一様磁場の線形定数であり、k
3は、電流シャント用銅バーの電流I
2によって第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される一様磁場の線形定数であり、k
21は、上部矩形の電流ΔI
1によって第1の磁気感知ユニット311の位置において発生される磁場の線形定数であり、k
22は、上部矩形の電流ΔI
1によって第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される磁場の線形定数である。
【0026】
式(4)に対して等価変換を実施することによって、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置における磁場が、コモン・モード磁場H
CMとディファレンシャル・モード磁場H
DMに分解され、その場合、式(5)が得られる。
【数1】
【数2】
【0027】
それに応じて、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置における磁場を、式(6)に表すように、コモン・モード磁場HCMとディファレンシャル・モード磁場HDMの重合せ表現(superposition representation)に変換することができる。
H211=HCM+HDM (6)
H212=HCM-HDM
【0028】
式(5)および
図1から、下部矩形の電流I’
1によって第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される磁場の方向は、電流シャント用銅バーの電流I
2によって第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される磁場の方向とは反対であり、この2つを相殺できる、ということが分かる。具体的には、下部矩形の電流I’
1によって第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される磁場は、k
1I’
1であり、電流シャント用銅バーの電流I
2によって第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される磁場は、K
3I
2であり、この2つは減少し低減することができ、すなわちk
1I’
1-k
3I
2であり、さらには、k
1I’
1-k
3I
2=0など、相殺後にゼロに戻ることすらある。
【0029】
その場合、相殺後に、コモン・モード磁場HCMと、差動銅バー1単体によって発生される磁場は、同じ方向になるか、ゼロになるか、または反対方向になり得る。差動銅バー1単体によって発生される磁場とは、差動銅バー1内の上部矩形の電流ΔI1によって第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される磁場のことと理解できると、理解することができる。さらに、下部矩形の電流I’1および電流シャント用銅バーの電流I2は、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニットの位置においてコモン・モード磁場HCMのみを発生させるが、ディファレンシャル・モード磁場HDMを発生させず、それにより、電流センサによって測定することのできる電流の入力範囲を調整し増大させるという効果が達成される。
【0030】
さらに、低電流検出モジュール4では、通電導体によって発生される磁場についてのビオ・サバールの法則によれば、差動銅バー1および電流シャント用銅バー2によって高電流検出モジュール3の位置において発生される磁場同士が反対方向にあり、したがって相互に相殺または減算されるという、先の解析における状況とは異なり、低電流検出モジュール4は、差動銅バー1および電流シャント用銅バー2からなる入力モジュールの外側に位置する、ということが分かる。任意選択で、低電流検出モジュール4は、電流シャント用銅バー2の、差動銅バー1から離れた側、すなわち入力モジュールの外側の上部位置に、位置する。他の実施形態では、任意選択で、低電流検出モジュールは、差動銅バーの、電流シャント用銅バーから離れた側、すなわち入力モジュールの外側の下部位置に、位置することもできる。したがって、差動銅バー1および電流シャント用銅バー2によって低電流検出モジュール4において発生される磁場同士は、同じ方向を有する。
【0031】
図1では、差動銅バー1および電流シャント用銅バー2によって低電流検出モジュール4内の第3の磁気感知ユニット411の位置において発生される磁場同士は、同じ方向を有し、その場合、この2つを重ね合わせて増大させ、それにより、低電流のケースにおいてより大きな磁場を発生させて、被測定低電流のより高精度の検出を確実なものにすることができる。電流センサによって測定することのできる電流の入力範囲が拡張される。
【0032】
任意選択で、電流シャント用銅バーの数が1つまたは複数であり、ここにおいて、任意の電流シャント用銅バーが、第1の磁気誘導モジュールの上方または差動銅バーの下方に位置し、任意の電流シャント用銅バーの垂直投影範囲が、第1の磁気誘導モジュール内の第1の磁気感知ユニットおよび第2の磁気感知ユニットをカバーする。
図1に示すように、任意選択で、電流シャント用銅バー2の数が1つであり、その電流シャント用銅バーが、第1の磁気誘導モジュールの上方に位置し、電流シャント用銅バー2の垂直投影範囲が、第1の磁気誘導モジュール内の第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312をカバーする。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態において提供される別の電流センサの概略図を示す。
図4に示すように、任意選択で、差動銅バー1が回路基板5の内側に位置する。任意選択で、電流シャント用銅バーの数が2つであり、ここで、電流シャント用銅バー21が、差動銅バー1の下方に位置し、電流シャント用銅バー22が、第1の磁気誘導モジュールの上方に位置し、電流シャント用銅バー21および22の垂直投影範囲が、第1の磁気誘導モジュール内の第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312をカバーする。入力モジュールは、矩形断面をもつ差動銅バー1、ならびに矩形断面をもつ2つの電流シャント用銅バー21および22からなり、それらのバーが並列に接続され、分流される。2つの矩形電流シャント用銅バー21および22は、互いに反対側に配置され、矩形差動銅バー1は、2つの矩形電流シャント用銅バー21と22との間の間隙内に位置する。高電流検出モジュール3が、矩形差動銅バー1と矩形電流シャント用銅バー22との間の間隙内に配置される。矩形差動銅バー1は、第1の磁気感知ユニット311の一方の側に近く、電流シャント用銅バー21の上方に位置する。
【0034】
これに基づいて、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312は、電流シャント用銅バー21の磁場一様領域内に位置し、電流シャント用銅バー22の磁場一様領域内にも位置し、感度方向はどちらも右向きである。第1の磁気感知ユニット311は、差動銅バー1の磁場一様領域内に位置する。その場合、この入力モジュールの解析および計算プロセスは、
図1に示す段状差動銅バー1および矩形電流シャント用銅バー2からなる入力モジュールの解析および計算プロセスと同様である。したがって、
図4の矩形差動銅バー1の電流は、
図1の上部矩形の電流ΔI
1となぞらえることができ、
図4の電流シャント用銅バー21の電流は、
図1の下部矩形の電流I’
1となぞらえることができる。
【0035】
第1の磁気感知ユニット311と第2の磁気感知ユニット312はどちらも、電流シャント用銅バー21および電流シャント用銅バー22の磁場一様領域内に位置すると仮定されるので、差動銅バー1と電流シャント用銅バー21との間に間隙があるとき、式(1)から式(6)は引き続き有効である。
【0036】
上述したように、式(5)および式(6)から、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置における磁場は、被測定電流Iinに正比例し、被測定電流は、ディファレンシャル・モード磁場HDMを測定することによって測定することができる、ということが分かる。複数の電流シャント用銅バーの解析および計算は、k3I2項およびコモン・モード磁場HCMの調整を除き、上記の解析プロセスとおよそ同じである。
【0037】
さらに、理想的条件下では、コモン・モード磁場H
CMが完全に相殺され、その場合、式(7)および式(8)が得られる。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0038】
さらに、理想的条件下では、ΔI
1によって第2の磁気感知ユニット312の位置において発生される磁場は非常に小さく、したがってk
22=0であると近似的に仮定することができ、したがって、式(7~8)は、式(9~10)に単純化することができる。
H
CM=0
【数7】
【数8】
【数9】
【0039】
すなわち、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置における磁場は、被測定電流Iinに正比例し、被測定電流は、ディファレンシャル・モード磁場HDMを測定することによって測定することができる。
【0040】
式(9)と式(10)を組み合わせると、理想的条件下では、コモン・モード磁場HCMが完全に相殺され、すなわち、被測定電流がディファレンシャル・モード磁場HDMのみを第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312の位置において発生させる、ということが分かり、ディファレンシャル・モード磁場HDMの大きさを入力モジュール内の銅バーの形状によって調整し、それにより、ディファレンシャル・モード磁場HDMの大きさが磁気抵抗感知コンポーネントの線形動作範囲に完全に一致するようにすることができる。したがって、電流センサの電流測定範囲が、最大に達することができる。
【0041】
上述したように、高電流検出モジュール3では、入力モジュールによって発生されたディファレンシャル・モード磁場に差動測定(differential measurement)を使用し、また高電流検出モジュール3は、コモン・モード磁場を一部または完全に相殺し、それにより、磁気抵抗感知コンポーネントが容易に飽和するという問題を効果的に解決することができ、その上、電流測定範囲を調整し拡張させ、外部磁場干渉に対する良好な耐性能力をもたらす。結果として、本電流センサは、さまざまな動作範囲における電流検出に適している。
【0042】
任意選択で、電流センサは、スイッチング・モジュール6をさらに含む。スイッチング・モジュール6は、被測定電流の範囲に従って、高電流検出モジュール3に切り替えるかそれとも低電流検出モジュール4に切り替えるかを選択する。入力モジュール、高電流検出モジュール3、低電流検出モジュール4、およびスイッチング・モジュール6は、互いに電気的に絶縁されている。任意選択で、これらのモジュールを互いに電気的に絶縁するために、誘電体絶縁層(dielectric isolation layer)が使用される。スイッチング・モジュール6が高電流検出モジュール3に切り替えると、高電流検出モジュール3が動作し、次いで、電流センサを使用して高電流を測定することが可能になる。スイッチング・モジュール6が低電流検出モジュール4に切り替えると、低電流検出モジュール4が動作し、次いで、電流センサを使用して低電流を測定することが可能になる。
【0043】
任意選択で、電流センサは、機械的支持ハウジング7をさらに含む。機械的支持ハウジング7は、電流センサの内側の各部分を覆い、固定し、支持し、外部インターフェースを提供する役割を果たす。
【0044】
本発明のこの実施形態では、差動銅バーと電流シャント用銅バーが並列に接続されて、入力モジュールを形成し、被測定電流が分流される。高電流検出モジュールが、入力モジュールの内部間隙内に位置し、低電流検出モジュールが、入力モジュールの外側に位置し、第1の磁気誘導モジュールおよび第2の磁気誘導モジュールがそれぞれ、入力モジュールの磁場を差動的に感知し、次いで、第1の信号出力モジュールおよび第2の信号出力モジュールを通じて出力信号を形成し、それにより、電流センサが、磁気誘導モジュールを通じて、入力モジュールを流れる被測定電流によって発生されたディファレンシャル・モード磁場を差動的に感知することが実現する。本発明のこの実施形態において提供される電流センサでは、各銅バーの形状および分布を調整することによって電流入力範囲および感度を調節し、それにより、電流測定範囲が大きくなり、さまざまな動作範囲にある磁気感知ユニットに電流センサが適したものになるようにすることができる。本電流センサは、高電流または低電流が入力されたときに高精度検出を達成することができ、直流および/または交流を測定することもできる。さらに、入力モジュールと信号出力モジュールが電気的に絶縁されており、それにより、外部磁場干渉に対する耐性能力を改善することが可能である。
【0045】
任意選択で、第1の磁気誘導モジュール内の第1の磁気感知ユニットおよび第2の磁気感知ユニットが、差動半ブリッジ構造、差動フル・ブリッジ構造、ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造、およびダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造のうちのいずれか1つを形成するように接続される。第2の磁気誘導モジュール内の第3の磁気感知ユニットおよび第4の磁気感知ユニットが、差動半ブリッジ構造、差動フル・ブリッジ構造、ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造、およびダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造のうちのいずれか1つを形成するように接続される。
【0046】
差動半ブリッジ構造では、各磁気感知ユニットが1つの磁気抵抗ブリッジ・アームを含み、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気抵抗ブリッジ・アームがともに電気的に差動化されて、差動半ブリッジ構造を形成する。
【0047】
差動フル・ブリッジ構造では、各磁気感知ユニットが2つの磁気抵抗ブリッジ・アームを含み、同一磁気感知ユニット内の2つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、対向する2つのブリッジ・アーム上に位置し、異なる磁気感知ユニットの2つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、2つの隣接するブリッジ・アーム上に位置して、差動フル・ブリッジ構造を形成し、磁気誘導モジュールの出力信号が、差動フル・ブリッジ構造の差動信号である。
【0048】
ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造では、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットがどちらも、2つの磁気抵抗ブリッジ・アームを含み、各磁気感知ユニット内の2つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、反対の感度方向を有し、磁気感知ユニット内の2つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、上部および下部ブリッジ・アームであり、プッシュ・プル半ブリッジ構造を形成し、2つの磁気感知ユニット内の上部ブリッジ・アームの感度方向が同じであり、2つの磁気感知ユニット内の下部ブリッジ・アームの感度方向が同じであり、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットが、ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造を全体として形成し、磁気誘導モジュールの出力信号が、ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造の差動信号である。
【0049】
ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造では、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットがどちらも、4つの磁気抵抗ブリッジ・アームを含み、磁気感知ユニットの4つの磁気抵抗ブリッジ・アームが、プッシュ・プル・フル・ブリッジ構造を形成し、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットの感度方向が同じであり、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットが、ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造を全体として形成し、磁気誘導モジュールの出力信号が、ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造の差動信号である。磁気抵抗ブリッジ・アームは、1つまたは複数の磁気抵抗感知コンポーネントを直列および並列に接続することによって形成される。
【0050】
任意選択で、同一磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットについて、(1)2つの磁気感知ユニットが、フラックスゲートを含む磁気感知コンポーネント、巨大磁気インピーダンス(GMI)デバイスを含む磁気感知コンポーネント、および磁気電気結合デバイス(ME)を含む磁気感知コンポーネントのうちの1つからなる、ならびに(2)2つの磁気感知ユニット内の差動構造を形成する磁気抵抗感知コンポーネントが、異方性磁気抵抗(AMR)デバイス、巨大磁気抵抗(GMR)デバイス、トンネル磁気抵抗(TMR)デバイス、および超巨大磁気抵抗(CMR)デバイスのうちの1つからなる、の2つのデバイス・オプションがある。
【0051】
図5は、差動半ブリッジ構造の概略図を示す。
図5に示すように、高電流検出モジュール3には、差動半ブリッジ構造をもつシングル・ブリッジが使用される。具体的には、第1の磁気誘導モジュール内の第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312が、差動半ブリッジ構造を形成するように接続される。差動半ブリッジ構造では、第1の磁気感知ユニット311が磁気抵抗ブリッジ・アーム311aを含み、第2の磁気感知ユニット312が磁気抵抗ブリッジ・アーム312aを含む。第1の磁気誘導モジュール内の2つの磁気抵抗ブリッジ・アーム311aおよび312aがともに接続され、電気的に差動化されて、差動半ブリッジ構造を形成し、ここで、2つの磁気抵抗ブリッジ・アーム311aおよび312aの感度方向は同じであり、水平右向きである。任意選択で、磁気抵抗ブリッジ・アームは、1つまたは複数の磁気抵抗感知コンポーネントからなり、磁気抵抗ブリッジ・アーム311aおよび312a内の磁気抵抗感知コンポーネントは、TMRデバイスである。
【0052】
上記の解析および計算、ならびに
図5に示す差動半ブリッジ構造の概略図によれば、
図1に示すケースでは、差動銅バー1および電流シャント用銅バー2が相殺された後で発生されるコモン・モード磁場と、差動銅バー1によって第1の磁気誘導モジュールの位置において発生される水平右向きの磁場が、同じ方向になるか、ゼロになるか、または反対方向になり得る、ということが分かる。
【0053】
相殺後に、差動銅バー1と電流シャント用銅バー2が相殺された後で発生されるコモン・モード磁場の方向が水平右向きである、すなわち、相殺後に、コモン・モード磁場と、差動銅バー1によって第1の磁気誘導モジュールの位置において発生される磁場が、同じ方向である例を挙げると、ディファレンシャル・モード磁場H
DMにより、第1の磁気感知ユニット311の位置における右向き磁場が、第2の磁気感知ユニット312の位置における右向き磁場よりも大きくなる。
図5では、2つの磁気抵抗ブリッジ・アーム311aおよび312aの感度方向がどちらも右向きであるので、磁気抵抗ブリッジ・アーム311aの位置における右向き磁場が、磁気抵抗ブリッジ・アーム312aの位置における磁場よりも大きくなる。結果として、磁気抵抗ブリッジ・アーム311aの抵抗値が、磁気抵抗ブリッジ・アーム312aの抵抗値未満になり、それにより、磁場から電圧への変化が実現する。したがって、
図5のVoutが、被測定電流の状況に従って相応に変化して、差動電圧信号を形成する。
【0054】
図6は、差動フル・ブリッジ構造の概略図を示す。
図6に示すように、低電流検出モジュール4には、差動フル・ブリッジ構造をもつシングル・ブリッジが使用される。具体的には、第2の磁気誘導モジュール内の第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412が、差動フル・ブリッジ構造を形成するように接続される。差動フル・ブリッジ構造では、第3の磁気感知ユニット411が2つの磁気抵抗ブリッジ・アーム411aおよび411bを含み、第4の磁気感知ユニット412が2つの磁気抵抗ブリッジ・アーム412aおよび412bを含む。第2の磁気誘導モジュール内の4つの磁気抵抗ブリッジ・アーム411a、411b、412a、および412bの感度方向は、完全に同じであり、水平右向きであり、同一差動フル・ブリッジ構造を形成するように電気的に接続される。任意選択で、磁気抵抗ブリッジ・アームは、1つまたは複数の磁気抵抗感知コンポーネントからなり、各磁気抵抗ブリッジ・アーム内の磁気抵抗感知コンポーネントは、TMRデバイスである。
【0055】
図1および
図6に示すように、第3の磁気感知ユニット411における右向き磁場は、第4の磁気感知ユニット412における右向き磁場よりも大きくなる。4つの磁気抵抗ブリッジ・アーム411a、411b、412a、および412bの感度方向がいずれも右向きであるので、磁気抵抗ブリッジ・アーム411aおよび411bにおける右向き磁場が、磁気抵抗ブリッジ・アーム412aおよび412bにおける右向き磁場よりも大きくなり、その場合、磁気抵抗ブリッジ・アーム411aおよび411bの抵抗値が、磁気抵抗ブリッジ・アーム412aおよび412bの抵抗値未満になる。これに基づいて、
図6では、電圧V2が電圧V1よりも大きくなり、それにより、差動電圧信号が形成する、と結論付けることができる。
【0056】
図7は、ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造の概略図を示す。
図4および
図7に示すように、高電流検出モジュール3は、ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造を差動化に使用する。具体的には、第1の磁気誘導モジュール内の第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312が、ダブル・プッシュ・プル半ブリッジ差動構造を形成するように接続される。第1の磁気感知ユニット311は、2つの磁気抵抗ブリッジ・アーム311a1および311a2を含み、この2つのブリッジ・アームが、第1のプッシュ・プル半ブリッジ構造を形成し、ここで、磁気抵抗ブリッジ・アーム311a1の感度方向が左向きであり、磁気抵抗ブリッジ・アーム311a2の感度方向が右向きである。第2の磁気感知ユニット312は、2つの磁気抵抗ブリッジ・アーム312a1および312a2を含み、この2つのブリッジ・アームが、第2のプッシュ・プル半ブリッジ構造を形成し、ここで、磁気抵抗ブリッジ・アーム312a1の感度方向が左向きであり、磁気抵抗ブリッジ・アーム312a2の感度方向が右向きである。任意選択で、磁気抵抗ブリッジ・アームは、1つまたは複数の磁気抵抗感知コンポーネントからなり、磁気抵抗感知コンポーネントは、GMRデバイスである。
【0057】
図1および
図7を参照して、コモン・モード磁場が相殺された後で、方向が右向きであり、ディファレンシャル・モード磁場が重ね合わされた後で、第1の磁気感知ユニット311における右向き磁場が、第2の磁気感知ユニット312における右向き磁場よりも大きいと仮定すると、磁気抵抗ブリッジ・アーム311a1の抵抗値が、磁気抵抗ブリッジ・アーム311a2の抵抗値よりも大きくなり、磁気抵抗ブリッジ・アーム312a1の抵抗値が、磁気抵抗ブリッジ・アーム312a2の抵抗値よりも大きくなり、磁気抵抗ブリッジ・アーム311a1と311a2との間の抵抗値の差が、磁気抵抗ブリッジ・アーム312a1と312a2との間の抵抗値の差よりも大きくなり、それにより、磁場から電圧への変化が実現する。これに基づいて、
図7のV1aおよびV2aが、被測定電流の状況に従って相応に変化して、差動電圧信号を形成する。
【0058】
図8は、ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造の概略図を示す。
図4および
図8を参照すると、低電流検出モジュール4は、ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造を差動化に使用する。具体的には、第3の磁気感知ユニット411が、4つの磁気抵抗ブリッジ・アーム411b1、411b2、411b3、および411b4をその中に含み、プッシュ・プル・フル・ブリッジ構造を形成し、ここで、磁気抵抗ブリッジ・アーム411b2および411b3の感度方向がどちらも左向きであり、磁気抵抗ブリッジ・アーム411b1および411b4の感度方向がどちらも右向きである。第4の磁気感知ユニット412が、4つの磁気抵抗ブリッジ・アーム412b1、412b2、412b3、および412b4をその中に含み、別のプッシュ・プル・フル・ブリッジ構造を形成し、ここで、磁気抵抗ブリッジ・アーム412b2および412b3の感度方向がどちらも左向きであり、磁気抵抗ブリッジ・アーム412b1および412b4の感度方向がどちらも右向きである。磁気抵抗ブリッジ・アームを形成する磁気抵抗感知コンポーネントは、GMRデバイスである。
【0059】
図4および
図8を参照すると、第3の磁気感知ユニット411は、電流シャント用銅バー22によって発生される右方向の磁場の影響を主として受け、第4の磁気感知ユニット412は、電流シャント用銅バー21によって発生される左方向の磁場の影響を主として受ける。
図8では、V1b1とV1b2との間の電圧差が、第3の磁気感知ユニット411の出力信号を形成し、V2b1とV2b2との間の電圧差が、第4の磁気感知ユニット412の出力信号を形成する。ダブル・プッシュ・プル・フル・ブリッジ差動構造の特性により、上述した2つのプッシュ・プル・フル・ブリッジ構造の差動電圧信号が、被測定電流に対して線形に変化する、と結論付けることができる。
【0060】
任意選択で、第1の信号出力モジュールおよび第2の信号出力モジュールはそれぞれ、開ループ回路を使用した開ループ信号調整回路、または閉ループ回路およびフィードバック・コイルを使用した閉ループ信号調整回路を含む。
【0061】
開ループ回路では、第1の信号出力モジュールまたは第2の信号出力モジュールが、開ループ信号調整回路を使用し、信号出力モジュールが、開ループ信号調整回路を使用して、モジュール内の2つの磁気感知ユニットの差動信号に対して調整増幅(conditioning amplification)、温度補償、および直線性補正を実施する。開ループ信号調整回路は、プリント回路基板(PCB)レベルのディスクリート・コンポーネント回路または特定用途向け集積回路(ASIC)のうちの一方である。
【0062】
閉ループ回路では、第1の信号出力モジュールまたは第2の信号出力モジュールが、閉ループ信号調整回路およびフィードバック・コイルを使用し、信号出力モジュールが、閉ループ信号調整回路およびフィードバック・コイルを使用して、モジュール内の2つの磁気感知ユニットの差動信号に対して調整増幅、温度補償、および直線性補正を実施する。閉ループ信号調整回路、フィードバック・コイル、および高電流検出モジュールまたは低電流検出モジュール内の磁気感知ユニットが、閉ループ磁場フィードバックを形成し、モジュール内の2つの磁気感知ユニットの差動信号が増幅され、次いで、ディファレンシャル・モード磁場を逆向きに相殺するように、フィードバック・コイルを通じてフィードバック磁場が発生される。磁場の動的平衡に達すると、モジュール内の2つの磁気感知ユニットが、等しいコモン・モード磁場動作点で動作し、フィードバック・コイルのフィードバック電流がサンプリング抵抗器を通じてサンプリングされて、磁気誘導モジュールの出力信号が形成する。
【0063】
閉ループ信号調整回路は、PCBレベルのディスクリート・コンポーネント回路またはASICのうちの一方である。フィードバック・コイルは、閉ループ信号調整回路、回路基板、磁気感知ユニット、ASIC、または磁気誘導モジュール内に統合される。
【0064】
この実施形態では、第1の信号出力モジュールおよび第2の信号出力モジュールがそれぞれ、開ループ回路を使用した開ループ信号調整回路、または閉ループ回路およびフィードバック・コイルを使用した閉ループ信号調整回路を含む。すなわち、本発明の特定の一実施形態では、第1の信号出力モジュールと第2の信号出力モジュールがどちらも、開ループ回路を使用した開ループ信号調整回路を含むことができ、または第1の信号出力モジュールと第2の信号出力モジュールがどちらも、閉ループ回路およびフィードバック・コイルを使用した閉ループ信号調整回路を含むことができ、または第1の信号出力モジュールが、開ループ回路を使用した開ループ信号調整回路を含み、第2の信号出力モジュールが、閉ループ回路およびフィードバック・コイルを使用した閉ループ信号調整回路を含み、または第1の信号出力モジュールが、閉ループ回路およびフィードバック・コイルを使用した閉ループ信号調整回路を含むことができ、第2の信号出力モジュールが、開ループ回路を使用した開ループ信号調整回路を含む。
【0065】
高電流検出モジュール内の閉ループ回路を使用した第1の信号出力モジュールを一例として挙げる。第1の信号出力モジュールは、閉ループ信号調整回路およびフィードバック・コイルを含む。閉ループ信号調整回路、フィードバック・コイル、およびモジュール内の磁気感知ユニットが、閉ループ磁場フィードバックを形成する。磁場フィードバック・コイルは、閉ループ信号調整回路内に統合することもでき、あるいは回路基板内に統合することもでき、あるいは磁気感知ユニット内に統合することもでき、あるいはASICを使用することもでき、あるいは磁気誘導モジュール内に統合することもできる。磁場フィードバック・コイルがどこに統合されるかにかかわらず、その磁場閉ループ・ネガティブ・フィードバックの原理はおよそ同じである。
【0066】
第1の信号出力モジュールでは、閉ループ信号調整回路およびフィードバック・コイルは、差動電圧信号に対して調整増幅、温度補償、および直線性補正を実施するために使用される。閉ループ信号調整回路は、差動電圧信号を増幅し、次いで、ディファレンシャル・モード磁場を逆向きに相殺するように、フィードバック・コイルを駆動してフィードバック磁場を発生させる。磁場の動的平衡に達すると、第1の磁気感知ユニットおよび第2の磁気感知ユニットが、等しいコモン・モード磁場動作点で動作し、フィードバック・コイルのフィードバック電流がサンプリング抵抗器を通じてサンプリングされて、第1の磁気誘導モジュールの出力が形成する。任意選択で、閉ループ信号調整回路には、PCBレベルのディスクリート・コンポーネント回路が使用される。
【0067】
図1に示すように、高電流検出モジュール3内の第1の信号出力モジュール32は、磁場フィードバック・コイルを含み、磁場フィードバック・コイルは、第1の磁気誘導モジュール内に統合されている。この場合、参照符号32は、第1の信号出力モジュール内の磁場フィードバック・コイルに等しくなり得る。磁場フィードバック・コイル32が位置する面は、第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312が位置する面と平行である。磁場フィードバック・コイル32の断面は、中線の両側に沿って対称的に分配されている。中線の一方の側の電流方向は、紙面に直交で外向きであり、中線の他方の側の電流方向は、紙面に直交で内向きである。
【0068】
磁場フィードバック・コイル32によって発生されるフィードバック磁場の方向に関して、第1の磁気感知ユニット311における右向き磁場が第2の磁気感知ユニット312における右向き磁場よりも大きいケースを一例として挙げると、ディファレンシャル・モード磁場を逆向きに相殺するために、
図1に示す段面図では、任意選択で、磁場フィードバック・コイル32の中線の左側に、すなわち、第1の磁気感知ユニット311の下方に、水平に配置された導体の断面の電流方向は、紙面に直交で外向きであり、磁場フィードバック・コイル32の中線の右側に、すなわち第2の磁気感知ユニット312の下方に、水平に配置された導体の断面の電流方向は、紙面に直交で内向きである。結果として、第1の磁気感知ユニット311において左向きフィードバック磁場が発生され、第2の磁気感知ユニット312において右向きフィードバック磁場が発生され、それにより、ディファレンシャル・モード磁場が逆向きに相殺され、最終的に、磁場の動的平衡が達成される。
【0069】
図4に示すように、磁場フィードバック・コイル32が、モジュール内の磁気感知ユニット内に統合されており、磁場フィードバック・コイル42が、モジュール内の磁気感知ユニット内に統合されている。フィードバック・コイルの位置は、上記の図中に示す位置に限定されない。磁場フィードバック・コイルの分布または接続はわずかに異なるが、磁場フィードバックの原理は同じであり、どちらのモジュールも、磁場フィードバック・コイルの分布を使用して、ディファレンシャル・モード磁場を相殺するように、反対方向の磁場を発生させる。
【0070】
同様に、低電流検出モジュール4が、第2の信号出力モジュールを含み、第2の信号出力モジュールは、閉ループ信号調整回路およびフィードバック・コイル42を使用する。低電流検出モジュール4の回路構造および磁場フィードバックの原理は、高電流検出モジュール3の回路構造および磁場フィードバックの原理とおよそ同じであり、それについて詳細には説明しない。任意選択で、フィードバック・コイル42は、第2の磁気誘導モジュール内に統合されるが、フィードバック・コイルの位置はそこに限定されない。
【0071】
この実施形態では、電流センサは、高電流または低電流が入力されたときに高精度検出を達成することができ、磁気抵抗感知コンポーネントが容易に飽和するという問題を効果的に解決することができ、さまざまな線形動作範囲にある磁気感知ユニットに適しており、外部磁場干渉に対する良好な耐性能力をもたらし、大きな直流および交流を測定できるという特徴、ならびに入力と出力が電気的に絶縁されているという特徴を有する。TMRデバイスの、小サイズ、大きな信号振幅、高感度、低ノイズ、および半導体回路との容易な統合などの特徴と相まって、電流センサのバック・エンド信号処理回路の設計をさらに単純化することができ、電流センサ全体のサイズを縮小することができ、電流センサのコストを下げることができる。
【0072】
任意選択で、第2の磁気誘導モジュール内の第3の磁気感知ユニットおよび第4の磁気感知ユニットは、次の2つの方法、(1)第3の磁気感知ユニットが、入力モジュールの上方に位置し、第4の磁気感知ユニットが、入力モジュールの下方または側方に位置し、第3の磁気感知ユニットおよび第4の磁気感知ユニットの感度方向が同じである、(2)第3の磁気感知ユニットおよび第4の磁気感知ユニットが、入力モジュールに対して同じ側に位置し、第3の磁気感知ユニットが、第3の磁気感知ユニットに最も近い電流シャント用銅バーまたは差動銅バーの垂直投影カバー範囲内に位置し、第3の磁気感知ユニットの感度方向が、第3の磁気感知ユニットに最も近い電流シャント用銅バーまたは差動銅バーによって第3の磁気感知ユニットの位置において発生される磁場の方向と同じかまたは反対であり、第2の磁気誘導モジュールの面内の方向に沿っており、被測定電流の方向に直交し、第4の磁気感知ユニットが、電流シャント用銅バーおよび差動銅バーの垂直投影カバー範囲の外側に位置し、第4の磁気感知ユニットの感度方向が、第3の磁気感知ユニットの感度方向と同じである、のうちのいずれか一方で配置される。
【0073】
図1に示すように、第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412は、入力モジュールに対して同じ側に位置し、任意選択で、電流シャント用銅バー2に近く、差動銅バー1から離れている。第3の磁気感知ユニット411は、電流シャント用銅バー2の垂直投影カバー範囲内に位置し、第3の磁気感知ユニット411の感度方向は、電流シャント用銅バー2によって第3の磁気感知ユニット411の位置に発生される磁場の方向と同じかまたは反対であり、感度方向は、第2の磁気誘導モジュールの面内の方向に沿っており、被測定電流の方向に直交する。第4の磁気感知ユニット412は、電流シャント用銅バー2の垂直投影カバー範囲の外側に位置し、第4の磁気感知ユニット412の感度方向は、第3の磁気感知ユニット411の感度方向と同じである。
【0074】
図4に示すように、第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412は、入力モジュールに対して異なる側に位置する。任意選択で、第3の磁気感知ユニット411は、入力モジュールの上方に位置し、第4の磁気感知ユニット412は、入力モジュールの下方または側方に位置する。第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412の感度方向は同じであり、どちらも右向きである。具体的には、第3の磁気感知ユニット411は、入力モジュールの外側の上方の磁場一様領域内に位置し、第4の磁気感知ユニット412は、入力モジュールの外側の下方の磁場一様領域内に位置する。差動銅バー1ならびに電流シャント用銅バー21および22によって低電流検出モジュール4の第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412の位置において発生される磁場同士は、重ね合わされて増大し、それにより、低電流のケースにおいてより大きな磁場を発生させて、被測定低電流のより高精度の検出を確実なものにする。
【0075】
任意選択で、電流センサは第3の電流検出モジュールをさらに含み、第3の電流検出モジュールは、第3の磁気誘導モジュールおよび第3の信号出力モジュールを含む。第3の磁気誘導モジュールは、第1の磁気誘導モジュール内の第1の磁気感知ユニットまたは第2の磁気感知ユニット、および第2の磁気誘導モジュール内の第3の磁気感知ユニットまたは第4の磁気感知ユニットからなり、第3の磁気誘導モジュール内の2つの磁気感知ユニットが、入力モジュールの磁場を差動的に感知して、第3の信号出力モジュールを通じて電流センサの出力信号を形成する。
【0076】
図4に示すように、任意選択で、電流センサは、第3の電流検出モジュール8をさらに含み、第3の電流検出モジュール8は、第3の磁気誘導モジュールおよび第3の信号出力モジュールを含む。第3の磁気誘導モジュールは、2つの磁気感知ユニットを含み、ここで、第1の磁気誘導モジュール内の第2の磁気感知ユニット312が、第3の磁気誘導モジュール内のある磁気感知ユニットとして多重化され、第2の磁気誘導モジュール内の第3の磁気感知ユニット411が、第3の磁気誘導モジュール内の別の磁気感知ユニットとして多重化される。任意選択で、第2の磁気感知ユニット312は、プッシュ・プル半ブリッジ構造を有し、第3の磁気感知ユニット411は、プッシュ・プル・フル・ブリッジ構造を有する。第2の磁気感知ユニット312および第3の磁気感知ユニット411は、入力モジュールの磁場を差動的に感知して、第3の信号出力モジュールを通じて電流センサの出力信号を形成する。
【0077】
この実施形態では、矩形断面をもつ差動銅バー1、ならびに矩形断面をもつ2つの電流シャント用銅バー21および22が、並列に接続されて、被測定電流を分流する。各銅バーの形状および分布を調整することによって、電流センサの電流入力範囲および感度を調節することができる。高電流検出モジュール3が、2つのプッシュ・プル半ブリッジをもつダブル半ブリッジ構造を差動化に使用し、低電流検出モジュール4が、プッシュ・プル・フル・ブリッジをもつダブル・フル・ブリッジ構造を差動化に使用する。さらに、第3の磁気感知ユニット411が、入力モジュールの外側の上方の磁場一様領域内に位置し、第4の磁気感知ユニット412が、入力モジュールの外側の下方の磁場一様領域内に位置する。任意選択で、ASICを使用した閉ループ信号調整回路が使用され、フィードバック・コイルが磁気感知ユニット内に統合され、磁気抵抗感知コンポーネントには、巨大磁気抵抗(GMR)デバイスが使用される。
【0078】
それに加えて、第3の磁気誘導モジュールが追加され、第2の磁気感知ユニット312のプッシュ・プル半ブリッジ出力および第3の磁気感知ユニット411のプッシュ・プル・フル・ブリッジ出力が、差動化のために選択され、それにより、3つの出力オプションが提供される。したがって、本電流センサは、高電流または低電流が入力されたときに高精度検出を達成することができ、磁気抵抗感知コンポーネントが容易に飽和するという問題を効果的に解決することができ、さまざまな線形動作範囲にある磁気感知ユニットに適しており、外部磁場干渉に対する良好な耐性能力をもたらし、大きな直流および交流を測定できるという特徴、ならびに入力と出力が電気的に絶縁されているという特徴を有する。GMRデバイスの、小サイズ、大きな信号振幅、高感度、低ノイズ、および半導体回路との容易な統合などの特徴と相まって、電流センサのバック・エンド信号処理回路の設計をさらに単純化することができ、電流センサ全体のサイズを縮小することができ、電流センサのコストを下げることができる。
【0079】
図9は、本発明の一実施形態において提供されるさらに別の電流センサの概略図を示す。
図9に示すように、電流センサは、入力モジュールと、高電流検出モジュール3と、低電流検出モジュール4と、回路基板5と、機械的支持ハウジング7とを含む。入力モジュールは、矩形断面をもつ差動銅バー1、ならびに矩形断面をもつ2つの電流シャント用銅バー21および22からなり、それらは並列に接続され、分流され、磁場を発生させる原理は
図1の磁場を発生させる原理とおよそ同じである。
【0080】
高電流検出モジュール3の構造および原理は、
図1の高電流検出モジュール3の構造および原理とおよそ同じである。第1の磁気誘導モジュール内の第1の磁気感知ユニット311および第2の磁気感知ユニット312が、
図5に示す差動半ブリッジ構造を電気的に形成し、その場合、差動化が実施されて、差動電圧信号が形成する。第1の信号出力モジュールが、閉ループ信号調整回路およびフィードバック・コイル32からなる。任意選択で、フィードバック・コイル32は、回路基板5内に統合される。磁気抵抗ユニットが、直列および並列に接続された磁気抵抗感知コンポーネントからなる。任意選択で、磁気抵抗感知コンポーネントには、CMRデバイスが使用される。
【0081】
低電流検出モジュール4内の第2の磁気誘導モジュール内の第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412は、
図8に示す2つのプッシュ・プル・フル・ブリッジ構造を使用して、差動化を実施し、出力すべき差動電圧信号を形成する。任意選択で、第4の磁気感知ユニット412は、入力モジュールの外側の側方に位置し、第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412の感度方向はどちらも右向きである。それに加えて、この実施形態では、第2の信号出力モジュールが、開ループ信号調整回路を使用して、第3の磁気感知ユニット411および第4の磁気感知ユニット412の差動電圧信号に対して調整増幅、温度補償、および直線性補正を実施する。開ループ信号調整回路には、PCBレベルのディスクリート・コンポーネント回路が使用され、磁気抵抗感知コンポーネントには、CMRデバイスが使用される。
【0082】
この実施形態では、電流センサは、高電流または低電流が入力されたときに高精度検出を達成することができ、磁気抵抗感知コンポーネントが容易に飽和するという問題を効果的に解決することができ、さまざまな動作範囲にある磁気感知ユニットに適しており、外部磁場干渉に対する良好な耐性能力をもたらし、サイズが比較的小さく、大きな直流および交流を測定できるという特徴、ならびに入力と出力が電気的に絶縁されているという特徴を有する。
【0083】
本発明の一実施形態は、差動銅バーが設けられないことのある、上記の実施形態における電流センサとは異なる電流センサをさらに提供する。電流センサは、入力モジュールと、高電流検出モジュールと、低電流検出モジュールと、回路基板とを含む。入力モジュールは、並列に接続された2つ以上の電流シャント用銅バーを含む。被測定電流が、電流シャント用銅バーの断面と垂直に流れて、高電流検出モジュールおよび低電流検出モジュールの位置において磁場を発生させる。高電流検出モジュールは、入力モジュールの内部間隙内に位置する。高電流検出モジュールは、回路基板上に固定された第1の磁気誘導モジュールおよび第1の信号出力モジュールを含み、第1の磁気誘導モジュールは、第1の磁気感知ユニットを含む。第1の磁気感知ユニットは、入力モジュールの磁場を感知して、第1の信号出力モジュールを通じて電流センサの出力信号を形成する。低電流検出モジュールは、入力モジュールの外側に位置する。低電流検出モジュールは、回路基板上に固定された第2の磁気誘導モジュールおよび第2の信号出力モジュールを含み、第2の磁気誘導モジュールは、第2の磁気感知ユニットを含む。第2の磁気感知ユニットは、入力モジュールの磁場を感知して、第2の信号出力モジュールを通じて電流センサの出力信号を形成する。
【0084】
図10は、本発明の一実施形態において提供されるさらに別の電流センサの概略図を示す。
図10に示すように、電流センサは、入力モジュールと、高電流検出モジュール92と、低電流検出モジュール93と、回路基板94と、機械的支持ハウジング96とを含む。
【0085】
この実施形態では、入力モジュールが、矩形断面をもつ2つの電流シャント用銅バー911および912からなり、それらは並列に接続され、分流される。被測定電流が、電流シャント用銅バー911および電流シャント用銅バー912の断面と垂直に流れ、被測定電流は、紙面に直交で内向きであり、高電流検出モジュール92および低電流検出モジュール93の位置において磁場を発生させる。
【0086】
高電流検出モジュール92は、電流シャント用銅バー911と電流シャント用銅バー912との間の間隙内に位置し、回路基板94上に固定された第1の磁気誘導モジュールおよび第1の信号出力モジュールを含む。第1の磁気誘導モジュールは、磁気感知ユニット921を含む。磁気感知ユニット921は、入力モジュール内の電流によって発生された磁場を感知して、第1の信号出力モジュールを通じて電流センサの出力信号を形成する。高電流検出モジュール92では、電流シャント用銅バー911によって磁気感知ユニット921において発生される磁場は右向きであり、電流シャント用銅バー912によって磁気感知ユニット921において発生される磁場は左向きであり、この2つは相互に相殺または減算される。電流シャント用銅バーの形状を調整することによって、磁場の大きさを調整することができ、それにより、高電流検出が達成される。
【0087】
低電流検出モジュール93は、電流シャント用銅バーの912の上方に位置し、回路基板94上に固定された第2の磁気誘導モジュールおよび第2の信号出力モジュールを含む。第2の磁気誘導モジュールは、磁気感知ユニット931を含む。磁気感知ユニット931は、入力モジュール内の電流によって発生された磁場を感知して、第2の信号出力モジュールを通じて電流センサの出力信号を形成する。磁気感知ユニット921および磁気感知ユニット931にはどちらも、右向き感度方向をもつGMIデバイスが使用される。低電流検出モジュール93では、磁気感知ユニット931は、電流シャント用銅バー912によって発生される右向き磁場の影響を主として受ける。電流シャント用銅バー911および912によって発生される磁場同士は、同じ方向を有し、重ね合わされて増大し、それによって、低電流のケースにおいてより大きな磁場を発生させ、したがって、低電流検出において比較的高い精度が達成される。
【0088】
図10に示すように、任意選択で、電流センサは、差動検出モジュール95をさらに含む。差動検出モジュール95は、高電流検出モジュール92内の第1の磁気感知ユニット921および低電流検出モジュール93内の第2の磁気感知ユニット931を使用して、入力モジュールの磁場を差動的に感知して、第3の信号出力モジュールを通じて電流センサの出力信号を形成する。磁気感知ユニット921の位置における磁場と、磁気感知ユニット931の位置における磁場との間の差があるので、2つのGMIデバイスの出力電圧を差動化することができ、電流センサの出力信号を、第3の信号出力モジュールを通じて形成することができる。
【0089】
この実施形態では、磁気誘導モジュールが、入力モジュールを流れる被測定電流によって発生されたディファレンシャル・モード磁場を非差動式に感知する。高電流検出モジュールが、電流シャント用銅バー911と電流シャント用銅バー912との間の間隙内に位置し、電流シャント用銅バー911および912が相殺された後の磁場を測定する。高電流測定は、複数の電流シャント用銅バーの相互相殺によって達成される。低電流検出モジュール93が、電流シャント用銅バー912の上方に位置し、電流シャント用銅バー911および912が重ね合わされた後で増大した磁場を、測定する。高電流検出モジュール3および低電流検出モジュール4はそれぞれ、別々のGMIデバイスを使用して、出力信号を非差動形式で測定し、差動検出モジュール95が、2つのGMIデバイスによって出力された電圧を差動化し、それにより、3つの出力オプションが提供される。本電流センサは、大きな直流および交流を測定することができ、入力と出力の電気的な絶縁を実現し、さまざまな線形動作範囲にある磁気感知ユニットに適しており、単純な構造を有し、それにより、さらにサイズが縮小し、コストが下がる。それに加えて、閉ループ・ネガティブ・フィードバックを使用して、高直線性での高精度の電流測定、コモン・モード干渉に対する強力な耐性能力、良好な温度特性、および安定した高信頼の性能を可能にすることができる。
【0090】
上記は、本発明の好ましい実施形態および使用される技術的原理の説明にすぎないことに留意されたい。本発明が、本明細書における特定の実施形態に限定されないことを、当業者なら理解するはずであり、当業者なら、さまざまな明らかな変形、再調整、相互組合せ、および置換を、本発明の保護範囲から逸脱することなく、なすことができる。したがって、本発明については、上記の実施形態を用いて詳細に説明してきたが、本発明は、上記の実施形態に限定されない。本発明の概念から逸脱することなく、他のより多くの等価な実施形態が含まれてもよく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【国際調査報告】