(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】方向性電磁鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C21D 8/12 20060101AFI20241210BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20241210BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20241210BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C21D8/12 B
C22C38/00 303U
C22C38/60
H01F1/147 175
H01F1/147 183
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537603
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2022019322
(87)【国際公開番号】W WO2023121040
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184134
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コ, キュンジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ, サンウ
【テーマコード(参考)】
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4K033AA02
4K033BA01
4K033BA02
4K033CA00
4K033CA01
4K033CA02
4K033CA03
4K033CA04
4K033CA05
4K033CA07
4K033CA08
4K033CA09
4K033CA10
4K033EA02
4K033FA01
4K033FA13
4K033GA00
4K033HA02
4K033HA03
4K033LA01
4K033MA00
4K033MA02
4K033MA03
4K033NA02
4K033NA03
5E041AA02
5E041AA19
5E041BC01
5E041BD10
5E041HB08
5E041HB11
5E041NN01
5E041NN18
(57)【要約】
【課題】1次再結晶焼鈍時の浸窒ガスの露出時間を調節して全体鉄損中の履歴損の比率を画期的に下げた方向性電磁鋼板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.5ないし4.0%、C:0.03ないし0.09%、Al:0.015ないし0.040%、Mn:0.04ないし0.15%、S:0.01%以下(0%を除く)、N:0.002ないし0.012%、Sb:0.01ないし0.05%、Sn:0.03ないし0.1%及びCr:0.05ないし0.2%を含み、残部がFe及び不可避な不純物からなるスラブを熱間圧延して熱延板を製造するステップと、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造するステップと、冷延板を1次再結晶焼鈍するステップと、1次再結晶焼鈍が完了した鋼板を2次再結晶焼鈍するステップと、
前記1次再結晶焼鈍するステップは、前記1次再結晶焼鈍後の鋼板の浸窒量を測定するステップと、測定された浸窒量に応じて1次再結晶焼鈍時の浸窒ガスの露出時間を調節するステップと、を含み、前記浸窒量及び前記浸窒ガスの露出時間は、下記の式1を満足することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
[式1] △[N]/△t≧0.025
(式1で、△[N]は、前記1次再結晶焼鈍後の鋼板の浸窒量(重量%)を示し、△tは、浸窒ガスの露出時間(分)を示す。)を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:2.5ないし4.0%、C:0.03ないし0.09%、Al:0.015ないし0.040%、Mn:0.04ないし0.15%、S:0.01%以下(0%を除く)、N:0.002ないし0.012%、Sb:0.01ないし0.05%、Sn:0.03ないし0.1%及びCr:0.05ないし0.2%を含み、残部がFe及び不可避な不純物からなるスラブを熱間圧延して熱延板を製造するステップと、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造するステップと、
前記冷延板を1次再結晶焼鈍するステップと、
前記1次再結晶焼鈍が完了した鋼板を2次再結晶焼鈍するステップと、を含み、
前記1次再結晶焼鈍するステップは、
前記1次再結晶焼鈍後の鋼板の浸窒量を測定するステップと、
測定された浸窒量に応じて1次再結晶焼鈍時の浸窒ガスの露出時間を調節するステップと、を含み、
前記浸窒量及び前記浸窒ガスの露出時間は、下記の式1を満足することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
[式1]
△[N]/△t≧0.025
(式1で、△[N]は、前記1次再結晶焼鈍後の鋼板の浸窒量(重量%)を示し、△tは、浸窒ガスの露出時間(分)を示す。)
【請求項2】
前記スラブは、Ti及びVのうち1種以上をそれぞれ単独叉はこれらの合計量で0.002ないし0.01重量%さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項3】
前記スラブは、下記の式2を満足することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
[式2]
[Sb]≦[Cr]≦[Sb]+2×[Sn]
(式2で、[Sb]、[Cr]及び[Sn]は、それぞれスラブ内のSb、Cr及びSnの含有量(重量%)を示す。)
【請求項4】
前記1次再結晶焼鈍するステップは、酸化能(PH
2O/PH
2)が0.5ないし0.8の雰囲気で行われることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記1次再結晶焼鈍するステップは、800ないし900℃の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記1次再結晶焼鈍するステップ以降、鋼板の表面に平均厚さが1.6ないし3.2μmの酸化層が存在することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記1次再結晶焼鈍するステップ以降、鋼板の浸窒量が0.02ないし0.04重量%であることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項8】
重量%で、Si:2.5ないし4.0%、C:0.005%以下(0%を除く)、Al:0.015ないし0.040%、Mn:0.04ないし0.15%、S:0.01%以下(0%を除く)、N:0.005%以下(0%を除く)、Sb:0.01ないし0.05%、Sn:0.03ないし0.1%及びCr:0.05ないし0.2%を含み、残部がFe及び不可避な不純物からなる母材と、
前記母材上に位置する金属酸化物層と、を含み、
前記金属酸化物層の最大発光強度比[I(Ti)/I(Mg)]が0.05以上であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
【請求項9】
前記母材は、Ti及びVのうち1種以上をそれぞれ単独叉はこれらの合計量で0.002ないし0.01重量%さらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項10】
前記母材は、下記の式2を満足することを特徴とする請求項8に記載の方向性電磁鋼板。
[式2]
[Sb]≦[Cr]≦[Sb]+2×[Sn]
(式2で、[Sb]、[Cr]及び[Sn]は、それぞれ母材内のSb、Cr及びSnの含有量(重量%)を示す。)
【請求項11】
前記方向性電磁鋼板の白色度は、43ないし51であることを特徴とする請求項8に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項12】
前記金属酸化物層は、Tiを0.003重量%以上含むことを特徴とする請求項8に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項13】
前記金属酸化物層上に位置する絶縁コーティング層をさらに含み、前記方向性電磁鋼板の全体厚さに対する前記金属酸化物層及び前記絶縁コーティング層の厚さの合計の比率が0.03以下であることを特徴とする請求項8に記載の方向性電磁鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向性電磁鋼板及びその製造方法に係り、より詳しくは、1次再結晶焼鈍時の浸窒ガスの露出時間を調節して全体鉄損中の履歴損の比率を画期的に下げた方向性電磁鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
方向性電磁鋼板は、変圧器、電動機、発電機及びその他の電子機器など停止機器の鉄芯材料に用いられる。方向性電磁鋼板の最終製品は、結晶粒の方位が110[001]方向に配向された集合組織を有することによって、圧延方向に極めて優れた磁気的特性を有するので、変圧器、電動機、発電機及びその他の電子機器などの鉄芯材料に用いることができ、エネルギー損失を減らすためには鉄損が低いこと、発電機器の小型化のためには磁束密度が高いことが要求される。
方向性電磁鋼板の鉄損は、履歴損、渦電流損に分れ、このうち渦電流損を減少するためには固有比抵抗を増やすこと、製品板厚さを減らすなどの努力が必要である。製品板厚さを減らす方法については、難圧延製品の方向性電磁鋼板を極薄物に圧延しなければならない困難がある。また、非常に低い鉄損特性を有する極薄物製品を作るにあたり、最も大きい困難で克服しなければならない問題は厚さが薄くなるにつれて方向性電磁鋼板の2次再結晶組織のゴス方位の集積度を非常に強くするのは難しいということである。履歴損は、磁区壁の移動が微細析出物や介在物によって妨げられて増加するが、最終製品の母材のC、N、O、Sなどの成分が極めて少ない清浄に管理しなければならず、ゴス集積度が強いほどこれに比例して減少する。
【0003】
これは、製品厚さが薄くなることによって2次再結晶焼鈍過程中で、特にゴス方位の2次再結晶が現れる区間での表面から析出物の流失が速くなり、ゴス方位集積度を強く維持し難くなることにその原因がある。これは製品磁性特性に直結する問題であって厚さを非常に薄くしても非常に低い鉄損特性を確保し難くする。
また、製品が薄物化するほど全体製品厚さでコーティング層が占める比率が増加することになる。母材上の金属酸化物層(ベースコーティング、ガラスコーティング)が厚いほど製品でコーティング層が占める比率が増加し、履歴損が悪くなる可能性がある。
【0004】
析出物の流失を克服するための方法として、2次再結晶焼鈍過程中で、N2gasの分率を高めて析出物の流失を防止する方法が提案されているが、これは製品板の表面に窒素放出口のような表面欠陥を誘発させる問題がある。
同時脱炭浸窒方法を用いた経済的な製造方法も提案されている。同時脱炭浸窒方法で脱炭板を製造するにあたり、表面の結晶粒径と中心層の結晶粒径の差が存在することを明示しており、これを一定の範囲で制御する必要があることを提案した。
【0005】
Sb、Sn、Pのような偏析元素を含むことによって磁性を画期的に改善する技術も提案されている。偏析元素をさらに追加して極薄物製品の製造時に析出物の流失を補完する補助インヒビタとして偏析元素を活用したが、過量の添加時に極薄圧延が難しい点があり、偏析元素の過量の添加時に酸化層が不均一でかつ薄くなってベースコーティングの特性が劣り、析出物の流失をさらに引き起こす副作用があって磁性を安定的に確保できなかった。
極薄物製品の製造時に1次再結晶焼鈍工程において前端部の酸化能と窒化処理を調節する方法も提案されている。しかし、極薄物製品を製造するにあたっては、析出物の流失影響が非常に敏感になる問題があった。
また、スラブにCrを添加し、1次再結晶焼鈍工程において前端部及び後端部の浸窒ガス投入量を調節する方法が提案されている。しかし、この方法は、鋼板厚さ方向への窒素量は均一に維持したが、AlN析出物は不均一に分布して磁性特性の偏差が依然として存在する問題があった。またCrを添加することによって、酸化層深さが深くなりベースコーティング厚さが厚くなって、製品においてコーティング層が占める比率が大きくなる薄物製品の履歴損を増加させる問題がある。
【0006】
1次再結晶焼鈍中の脱炭及び浸窒の反応は鋼板表層部を通じて行われる。このとき、表層部に形成されている酸化層の形状に応じて脱炭及び浸窒の速度と時期が変わるということである。1次再結晶焼鈍過程中で生じる酸化層の深さと組成は、温度、酸化能のような炉雰囲気、素鋼成分含有量、表面形状などによって敏感に変化することになる。特に、Sb、Sn、Crのような成分は、添加量に応じて酸化層形成挙動を変化させ、結果的に製品の特性に影響を及ぼすので、製品特性に応じて最適の条件を導き出す必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明目的は、方向性電磁鋼板及びその製造方法を提供することである。具体的に1次再結晶焼鈍時の浸窒ガスの露出時間を調節して全体鉄損中の履歴損の比率を画期的に下げた方向性電磁鋼板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.5ないし4.0%、C:0.03ないし0.09%、Al:0.015ないし0.040%、Mn:0.04ないし0.15%、S:0.01%以下(0%を除く)、N:0.002ないし0.012%、Sb:0.01ないし0.05%、Sn:0.03ないし0.1%及びCr:0.05ないし0.2%を含み、残部がFe及びその他不可避に混入される不純物からなるスラブを熱間圧延して熱延板を製造するステップと、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造するステップと、冷延板を1次再結晶焼鈍するステップと、1次再結晶焼鈍が完了した鋼板を2次再結晶焼鈍するステップと、を含む。
1次再結晶焼鈍するステップは、1次再結晶焼鈍後の鋼板の浸窒量を測定するステップと、測定された浸窒量に応じて1次再結晶焼鈍時の浸窒ガスの露出時間を調節するステップと、を含み、浸窒量及び浸窒ガスの露出時間は、下記の式1を満足する。
[式1]
△[N]/△t≧0.025
(式1で、△[N]は、前記1次再結晶焼鈍後の鋼板の浸窒量(重量%)を示し、△tは、浸窒ガスの露出時間(分)を示す。)
【0009】
スラブは、Ti及びVのうち1種以上をそれぞれ単独叉はこれらの合計量で0.002ないし0.01重量%さらに含む。
スラブは、Sb:0.01ないし0.05重量%、Sn:0.03ないし0.1重量%及びCrをさらに含み、下記の式2を満足する。
[式2]
[Sb]≦[Cr]≦[Sb]+2×[Sn]
(式2で、[Sb]、[Cr]及び[Sn]は、それぞれスラブ内のSb、Cr及びSnの含有量(重量%)を示す。)
【0010】
1次再結晶焼鈍するステップは、酸化能(PH2O/PH2)が0.5ないし0.8の雰囲気で行われる。
1次再結晶焼鈍するステップは、800ないし900℃の温度で行われる。
1次再結晶焼鈍するステップ以降、鋼板の表面に平均厚さが1.6ないし3.2μmの酸化層が存在する。
1次再結晶焼鈍するステップ以降、鋼板の浸窒量が0.02ないし0.04重量%である。
【0011】
本発明の方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.5ないし4.0%、C:0.005%以下(0%を除く)、Al:0.015ないし0.040%、Mn:0.04ないし0.15%、S:0.01%以下(0%を除く)、N:0.005%以下(0%を除く)、Sb:0.01ないし0.05%、Sn:0.03ないし0.1%及びCr:0.05ないし0.2%を含み、残部がFe及びその他不可避に混入される不純物からなる母材と、母材上に位置する金属酸化物層と、を含む。
金属酸化物層の最大(Max)発光強度比[I(Ti)/I(Mg)]が0.05以上である。
【0012】
母材は、Ti及びVのうち1種以上をそれぞれ単独叉はこれらの合計量で0.002ないし0.01重量%さらに含む。
母材は、Sb:0.01ないし0.05重量%、Sn:0.03ないし0.1重量%及びCrをさらに含み、下記の式2を満足する。
[式2]
[Sb]≦[Cr]≦[Sb]+2×[Sn]
(式2で、[Sb]、[Cr]及び[Sn]は、それぞれ母材内のSb、Cr及びSnの含有量(重量%)を示す。)
方向性電磁鋼板の白色度は、43ないし51である。
金属酸化物層は、Tiを0.003重量%以上含む。
金属酸化物層上に位置する絶縁コーティング層をさらに含み、方向性電磁鋼板の全体厚さに対する金属酸化物層及び絶縁コーティング層の厚さの合計の比率が0.03以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方向性電磁鋼板は、1次再結晶焼鈍時の浸窒ガスの露出時間を調節して全体鉄損中の履歴損の比率を画期的に下げ、窮極的に全体鉄損を下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1、第2及び第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層及び/叉はセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層叉はセクションを他の部分、成分、領域、層叉はセクションと区別するためにだけ使用される。したがって、以下で述べる第1部分、成分、領域、層叉はセクションは、本発明の範囲から外れない範囲内で第2部分、成分、領域、層叉はセクションと言及することができる。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであって、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は文面がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素及び/叉は成分を具体化し、他の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素及び/叉は成分の存在や付加を除外するものではない。
【0015】
ある部分が他の部分の「の上に」叉は「上に」あると言及する場合、これはすぐ他の部分の上に叉は上にあるか、その間に他の部分が介在する可能性がある。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
特に定義してはいないが、ここに使用される技術用語及び科学用語を含む全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一な意味を有する。通常使用される辞典に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に合致する意味を有するものと追加解釈され、定義されない限り理想的叉は非常に公式的な意味では解釈されない。
また、特に言及しない限り%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明の一実施例で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量だけ残部の鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
【0016】
以下、本発明について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は色々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.5ないし4.0%、C:0.03ないし0.09%、Al:0.015ないし0.040%、Mn:0.04ないし0.15%、S:0.01%以下(0%を除く)、N:0.002ないし0.012%、Sb:0.01ないし0.05%、Sn:0.03ないし0.1%及びCr:0.05ないし0.2%を含み、残部がFe及び不可避な不純物からなるスラブを熱間圧延して熱延板を製造するステップと、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造するステップと、冷延板を1次再結晶焼鈍するステップと、1次再結晶焼鈍が完了した鋼板を2次再結晶焼鈍するステップと、を含む。
【0017】
以下では、各ステップ別に詳しく説明する。
まず、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。
以下では、スラブ合金成分について説明する。
スラブは、重量%で、Si:2.5ないし4.0%、C:0.03ないし0.09%、Al:0.015ないし0.040%、Mn:0.04ないし0.15%、S:0.01%以下(0%を除く)、N:0.002ないし0.012%、Sb:0.01ないし0.05%、Sn:0.03ないし0.1%及びCr:0.05ないし0.2%を含み、残部がFe及び不可避な不純物からなる。
【0018】
Si:2.50ないし4.00重量%
ケイ素(Si、シリコン)は、方向性電磁鋼板素材の比抵抗を増加させて鉄芯損失(core loss)、つまり鉄損を下げる役割を果たす。Si含有量が過度に少ない場合、比抵抗が減少して鉄損が劣化する可能性がある。Si含有量が過度に多い場合、鋼の脆性が増加し、靭性が減少して圧延過程中で板破断の発生率が増加し、溶接性が劣り、冷間圧延操業に負荷が生じ、冷間圧延中でパスエイジングに必要な板温に達しなくなって2次再結晶形成が不安定になる可能性がある。したがって、Si含有量は、2.5ないし4.0重量%であってもよい。さらに具体的に、3.0ないし3.5重量%であってもよい。
【0019】
C:0.030ないし0.090重量%
炭素(C)は、オーステナイト相の形成を誘導する元素であって、C含有量が増加することによって熱間圧延工程中のフェライト-オーステナイト相変態が活性化し、熱延工程中に形成される長く延伸された熱延帯組織が増加し、熱延板焼鈍工程中のフェライト粒成長が抑制する。また、C含有量が増加することによってフェライト組織に比べて強度が高い延伸された熱延帯組織の増加と冷延開始組織の熱延板焼鈍組織の初期粒子の微細化によって冷間圧延以降の集合組織が改善され、特にゴス分率が増加することになる。これは熱延板焼鈍後の鋼板内に存在する残留Cによって冷間圧延中のパスエイジング効果が大きくなり、1次再結晶粒内のゴス分率を増加させるものと考えられる。したがって、C含有量が大きいほど有利であるが、以降脱炭窒化焼鈍時に脱炭焼鈍時間が長くなって、生産性を損傷させ、加熱初期の脱炭が充分でなければ1次再結晶結晶粒を不均一にして2次再結晶を不安定にする。また、磁気時効現象によって磁気的特性が劣る可能性があるので、C含有量は、0.03ないし0.09重量%範囲に制限してもよい。
さらに具体的に、Cは、0.050ないし0.070重量%範囲で含んでもよい。前述したように、1次再結晶焼鈍中で脱炭によって炭素が除去され、最終製造される方向性電磁鋼板の母材にはCを0.005重量%以下で含んでもよい。さらに具体的に、最終製造される方向性電磁鋼板の母材には、Cを0.003重量%以下で含んでもよい。
【0020】
Al:0.015ないし0.040重量%
アルミニウム(Al)は、Nと結合してAlNとして析出するが、脱炭及び浸窒を行う焼鈍で微細な析出物の(Al、Si、Mn)N及びAlN形態の窒化物を形成することになって強力な結晶粒成長抑制の役割を果たす。このように固溶されたAlが一定の量以上必要である。その含有量が過度に少ない場合には、形成される析出物の個数と体積分率が低いため、結晶粒成長抑制効果が十分でないことがある。Alが過度に多く含まれると、析出物が粗大に成長して結晶粒成長抑制効果が低下することになる。したがって、Alは、0.015ないし0.040重量%で含んでもよい。さらに具体的に、0.0200ないし0.0380重量%含んでもよい。
【0021】
Mn:0.040ないし0.150重量%
マンガン(Mn)は、Siと同一に比抵抗を増加させて鉄損を減少させる効果もあり、Siと共に窒化処理によって導入される窒素と反応して(Al、Si、Mn)Nの析出物を形成することによって、1次再結晶粒の成長を抑制して2次再結晶を起こすために重要な元素である。また、MnはCuと共にSurfide析出物を形成して1次再結晶粒の均一性を改善し、2次再結晶が形成されるために補助インヒビタの役割を一部することになる。しかし、Mnが過度に多く含まれると、(Cu、Mn)S微細析出物の調整のためにスラブ再加熱温度を高めなければならず、そうなると、1次再結晶粒が極めて微細になって1次再結晶焼鈍の温度を範囲以上上げなければならず、結晶粒の不均一を引き起こすので、その上限を0.15重量%に制限してもよい。
また、Mnの過多添加時に鋼板の表面にFe2SiO4以外に(Fe、Mn)及びMn酸化物が多量形成され、2次再結晶焼鈍中に形成されるベースコーティング形成を妨げて表面品質を低下させることになり、1次再結晶焼鈍工程でフェライトとオーステナイト間の相変態の不均一を誘発するため、1次再結晶粒の大きさが不均一となり、その結果、2次再結晶が不安定になる。さらに具体的に、0.050ないし0.100重量%含んでもよい。
【0022】
N:0.0020ないし0.0120重量%
窒素(N)は、Alなどと反応して結晶粒を微細化する元素である。これらの元素が適切に分布する場合には、前述のように冷間圧延以後の組織を適切に微細にして適切な1次再結晶粒度を確保するのに役立つが、その含有量が過度な場合、1次再結晶粒が過度に微細化し、その結果、微細な結晶粒によって2次再結晶時の結晶粒成長を引き起こす駆動力が大きくなって、好ましくない方位の結晶粒まで成長する場合があるので好ましくない。そして、Nが過度に多く添加されると、1次再結晶粒が過度に微細化し、その結果、微細な結晶粒によって好ましくない方位が2次再結晶を形成して磁気特性を劣化させる場合がある。したがって、Nは、0.0120重量%以下に定める。一方、Nの含有量が過度に少ないと、1次再結晶抑制効果が弱すぎて安定した結晶粒成長抑制効果が得られないこともある。したがって、スラブ内にNを0.0020ないし0.0120重量%含んでもよい。さらに具体的に、Nを0.0025ないし0.0100重量%含んでもよい。2次再結晶焼鈍過程でNが一部除去されるので、最終製造される方向性電磁鋼板の母材は、Nを0.005重量%以下で含んでもよい。さらに具体的に、最終製造される方向性電磁鋼板の母材は、Nを0.003重量%以下で含んでもよい。
【0023】
S:0.0100重量%以下、
硫黄(S)は、熱間圧延時に固溶温度が高く偏析が激しい元素であって、可能な限り含有されないようにすることが好ましいが、製鋼時に含有される不可避な不純物の一種である。また、Sは(Mn、Cu)Sを形成して1次再結晶粒の均一性に影響を及ぼすので、Sの含有量は、0.0100重量%以下に制限してもよい。さらに具体的に、0.0010ないし0.0080重量%含んでもよい。
【0024】
Sb:0.01ないし0.05重量%
アンチモン(Sb)は、冷間圧延工程中に生成されるゴス方位の結晶粒核を増加させ、1次再結晶集合組織でゴス方位を有する結晶粒の分率を向上させる効果がある。また1次再結晶結晶粒系に偏析して2次再結晶の高温焼鈍時にゴス集合組織を有する結晶粒の2次再結晶開始温度を上昇させ、集積度に優れた2次再結晶微細組織が得られるようにすると共に磁束密度を高めることになる。Sb含有量が過度に少ないと、その作用が上手く発揮され難い。Sb含有量が過度に高いと、1次再結晶粒の大きさが過度に小さくなって2次再結晶開始温度が低くなり、磁気特性を劣化させるか叉は粒成長に対する抑制力が過度に大きくなって2次再結晶が形成されないこともある。したがって、Sbを0.01ないし0.05重量%含んでもよい。さらに具体的に、Sbを0.020ないし0.045重量%含んでもよい。
【0025】
Sn:0.03ないし0.10重量%
スズ(Sn)は、結晶粒系偏析元素であって、結晶粒系の移動を妨げる元素であるので結晶成長抑制剤として知られている。また1次再結晶集合組織において、ゴス方位の結晶粒分率を増加させることによって2次再結晶集合組織に成長するゴス方位核が多くなる。また、これを添加するほど2次再結晶微細組織の大きさが減少し、結晶粒大きさが小さくなるほど渦電流損が小さくなるので、最終製品の鉄損が減少することになる。一方、Snは結晶粒系に偏析を通じて結晶粒成長を抑制するのに重要な役割を果たし、これは微細化した1次再結晶微細組織の結晶粒成長の駆動力を抑制する抑制効果を向上させるだけでなく、2次再結晶集合組織形成のための高温焼鈍過程中で(Al、Si、Mn)N及びAlNなどの結晶粒成長抑制効果を引き起こす粒子が粗大化して結晶粒成長抑制力が減少する現象を防止する。Snの含有量が過度に少ないと、添加効果が充分でないことがある。Snの含有量が過度に多いと、結晶粒成長抑制力が過度に増加して相対的に結晶粒成長の駆動力を増加させるために1次再結晶微細組織の結晶粒大きさを減少させなければならないので、脱炭焼鈍を低い温度で実施しなければならず、これによって適切な酸化層で制御できないため、良好な表面を確保することができない。また機械的特性の面で、粒界偏析元素の過剰偏析によって脆性が増加して製造過程中で板破断を引き起こす可能性がある。したがって、Snを0.03ないし0.10重量%含んでもよい。さらに具体的に、Snを0.030ないし0.090重量%含んでもよい。
【0026】
Cr:0.05ないし0.20重量%
酸化形成を促進する元素としてクロム(Cr)を範囲内で添加すると、表層部の緻密な酸化層形成を抑制し、深さ方向に微細な酸化層が形成されることを助ける。SbとSnの添加と共に適正範囲のCr含有量を添加することにより酸化層表層部にFe2SiO4の形成が多くなり、深さ方向に酸化層の形成を助ける。
また、Crを添加することによって、均一性に優れた1次再結晶を形成させることがさらに容易になる。つまり、CrはSb、Sn含有量を上げることによる脱炭及び浸窒が遅れて1次再結晶粒が不均一になる現象を克服することによって、均一性に優れた1次再結晶粒を形成し、磁性を向上させる効果を奏する元素である。SbとSn含有量に応じてCr含有量を前記提案した範囲で添加すると、内部酸化層がさらに深く形成され、浸窒及び脱炭速度が速くなるので、同時脱炭浸窒工程でSb、Sn添加の効果を高めることができる。Crは、0.05ないし0.20重量%含んでもよい。さらに具体的に、0.10ないし0.15重量%含んでもよい。
【0027】
スラブは、下記の式2を満足することができる。
[式2]
[Sb]≦[Cr]≦[Sb]+2×[Sn]
(式2で、[Sb]、[Cr]及び[Sn]は、それぞれスラブ内のSb、Cr及びSnの含有量(重量%)を示す。)
酸化形成を促進する元素としてクロム(Cr)を範囲内で添加すると、表層部の緻密な酸化層形成を抑制し、深さ方向に微細な酸化層が形成されることを助ける。SbとSnの添加と共に適正範囲のCr含有量を添加することにより酸化層表層部にFe2SiO4の形成が多くなり、深さ方向に酸化層の形成を助ける。
【0028】
また、Crを添加することによって均一性に優れた1次再結晶を形成させることがさらに容易になる。つまり、Crは、Sb、Sn含有量を上げることによる脱炭及び浸窒が遅れて1次再結晶粒が不均一になる現象を克服することによって、均一性に優れた1次再結晶粒を形成し、磁性を向上させる効果を奏する元素である。SbとSn含有量に応じてCr含有量を前記提案した範囲で添加すると、内部酸化層がさらに深く形成され、浸窒及び脱炭速度が速くなるので、同時脱炭浸窒工程でSb、Sn添加の効果を高めることができる。
Cr含有量が、式2の下限値に達しない場合、効果が微弱で、式2の上限値を超える場合、酸化層が過度に形成され、その効果が減少する。
【0029】
スラブは、Ti及びVのうち1種以上をそれぞれ単独叉はこれらの合計量で0.002ないし0.010重量%さらに含んでもよい。Ti、Vを単独で含む場合、それぞれ単独で、0.002ないし0.010重量%含み、Ti及びVを同時に含む場合、Ti+Vの量が0.002ないし0.010重量%であってもよい。さらに具体的に、Ti及びVのうち1種以上をそれぞれ単独叉はこれらの合計量で0.0030ないし0.0070重量%さらに含んでもよい。
【0030】
Ti:0.002ないし0.010重量%
チタニウム(Ti)は、強力なNitride形成元素であって、熱延前のステップでTiNとなってN含有量を低くし、微細析出して結晶粒成長を抑制する。適正な範囲内で添加すると、TiN析出物の形成による結晶粒成長抑制効果と、AlN微細析出物の低減により結晶粒径のコイル内偏差を減らす効果を奏する。
【0031】
V:0.002ないし0.01重量%
バナジウム(V)は、carbideとnitrideの形成元素であって、微細析出して結晶粒成長を抑制する。適正な範囲内で添加して微細析出物の形成による結晶粒成長抑制効果により、コイル内の結晶粒径偏差を減らす効果を奏する。
【0032】
スラブは、P:0.010ないし0.050重量%さらに含んでもよい。
P:0.010ないし0.050重量%
リン(P)は、Sn、Sbと類似の効果を奏する元素であって、結晶粒系に偏析して結晶粒系の移動を妨げ、同時に結晶粒成長を抑制する補助的な役割が可能である。また、微細組織の面で、{110}<001>集合組織を改善する効果がある。Pの含有量が過度に少ないと、添加効果がなく、過度に多く添加すると、脆性が増加して圧延性を大きく悪くなる可能性がある。さらに具体的に、Pを0.015ないし0.045重量%含んでもよい。
【0033】
不純物元素
前記の元素以外にも、Zr、Cu、Ni、Moなどの不可避に混入される不純物が含まれる。Zr、Cu、Ni、Moなどは強力な炭質化物形成元素であるため、できる限り添加されないことが好ましく、それぞれ0.01重量%以下で含有されるようにする。
前述した元素以外の残りは鉄(Fe)からなる。本発明で前述した合金成分以外に元素の追加を排除するものではなく、本発明の技術思想を害しない範囲内で多様に含まれてもよい。追加元素をさらに含む場合、残部のFeを代替して含む。
【0034】
熱延板を製造するステップ以前に、スラブを1230℃以下で加熱するステップをさらに含んでもよい。このステップを通じて析出物を部分溶体化することができる。また、スラブの柱状晶調職が粗大に成長することが防止され、後続の熱間圧延工程で板の幅方向にクラックが発生することを防ぐことができ、実収率が向上する。スラブ加熱温度が過度に高いと、スラブの表面部の溶融により加熱炉を補修するなど加熱炉の寿命が短縮する可能性がある。さらに具体的に、1130ないし1200℃でスラブを加熱することができる。スラブを加熱せず、連続鋳造されるスラブをそのまま熱間圧延することも可能である。
熱延板を製造するステップで熱間圧延によって厚さ1.8ないし2.3mmの熱延板を製造することができる。
熱延板を製造した後、熱延板を熱延板焼鈍するステップをさらに含んでもよい。熱延板焼鈍するステップは、950ないし1、100℃温度まで加熱した後、850ないし1、000℃温度で均熱した後、冷却する過程によって行ってもよい。
【0035】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。
冷間圧延は、1回強冷間圧延を通じて行われるか、複数のパスを通じて行われてもよい。圧延中に1回以上200ないし300℃の温度で温間圧延を通じてパスエイジング効果を与え、最終厚さ0.14ないし0.25mmに製造することができる。冷間圧延された冷延板は、1次再結晶焼鈍過程で脱炭と変形された組織の再結晶及び浸窒ガスを通じた浸窒処理を行うことになる。
【0036】
次に、冷延板を1次再結晶焼鈍する。
本発明では、1次再結晶焼鈍するステップで鋼板の浸窒量を測定し、その測定結果によって1次再結晶焼鈍時の浸窒ガスの露出時間を調節するステップを含む。
浸窒量及び浸窒ガスの露出時間は、下記の式1を満足するように調節することができる。
[式1]
△[N]/△t≧0.025
(式1で、△[N]は、1次再結晶焼鈍後の鋼板の浸窒量(重量%)を示し、△tは、浸窒ガスの露出時間(分)を示す。)
【0037】
本発明は、浸窒量測定以降、事後的に浸窒ガスの露出時間を調節する過程を経ることになるので、浸窒量が測定された鋼板と浸窒ガスの露出時間の調節が適用された鋼板間の遅延が発生することがある。ただし、本発明で1次再結晶焼鈍は連続的に行われるので、その遅延が実質的にないことがあり、全体コイル内で式1の関係を満足することができる。
【0038】
浸窒量は、1次再結晶焼鈍後の鋼板内のN含有量と1次再結晶焼鈍前の鋼板内のN含有量の差を意味する。これを窒素分析器で測定し、この結果を浸窒ガスの露出時間の調節に反映することができる。浸窒量をリアルタイムで測定する方法は制限されず、これについては広く知られているので、具体的な説明は省略する。
鋼板の浸窒量は、0.02ないし0.04重量%であってもよい。浸窒量が過度に小さい場合、つまり式3の左辺値が過度に大きい場合、内部の結晶粒成長抑制力が不足する可能性がある。浸窒量が過度に多い場合、窒素放出口のような欠陥が多量発生し、5mm以下の微細2次再結晶が多量形成され、磁性が劣化する可能性がある。
【0039】
浸窒ガスは、鋼板に窒素を浸透可能なガスであれば制限されることなく用いることができる。具体的にアンモニア叉は窒素が挙げられる。アンモニア雰囲気では熱処理を通じて、窒素雰囲気ではレーザ叉はプラズマ処理などを通じて浸窒が可能である。
浸窒ガスの露出時間は、焼鈍炉内に鋼板の移動方向に沿って雰囲気ガスの移動を妨げられるように遮蔽膜を設け、遮蔽膜で分離された空間内に雰囲気ガスが異なるように調節できるようにガスを投入することによって調節が可能である。その以外に多様な方法で浸窒ガスの露出時間を調節することができる。
浸窒ガスの露出時間とは、浸窒ガスを1ないし10体積%含む雰囲気に鋼板を露出する時間を意味する。浸窒ガスの露出時間以外には、浸窒ガスを1.0体積%未満で含む雰囲気で1次再結晶焼鈍することになる。
【0040】
鋼板の浸窒量は、浸窒ガスの露出時間に比例するが、その他にも多様な変数が存在する。例えば、鋼板の温度、浸窒ガス以外の雰囲気ガス含有量などが挙げられる。このような変数を最大限統制しようとしても全体コイル内で同一に統制することは事実上不可能であり、浸窒ガスの露出時間が同一でも浸窒量に偏差が発生することがある。具体的に浸窒ガス露出時間は30秒ないし5分であってもよい。
浸窒ガスの露出時間に比べて、浸窒量が過度に少ない場合、つまり式1の値が過度に小さい場合、析出物が均一に形成されず、2次再結晶焼鈍過程中で金属酸化物層が不均一に形成されることがある。これによって表面欠陥が発生し、磁性が不安定になることがある。さらに具体的に、式1の値は、0.025ないし0.05であってもよい。
【0041】
1次再結晶焼鈍するステップは、酸化能(PH2O/PH2)が0.5ないし0.8の雰囲気で行うことによって、鋼板内の炭素を外部に排出することができる。前述した酸化能範囲は、1次再結晶焼鈍するステップ全体で調節するか叉は部分的に調節することも可能である。これを通じて鋼板内の炭素を0.005重量%以下に減らすことができる。
1次再結晶焼鈍するステップは、800ないし900℃の温度で行われてもよい。温度が過度に低いと、1次再結晶が行われないか、浸窒が円滑に行われないことがある。温度が過度に高いと、1次再結晶が過度に大きく成長し、磁性が劣る原因になり得る。
【0042】
1次再結晶焼鈍するステップ以降、鋼板の表面に平均厚さが1.6ないし3.2μmの酸化層が存在してもよい。1次再結晶焼鈍時の脱炭によって、鋼板の表面付近に酸化層が存在する。酸化層は鋼板の表面から酸素含有量を測定し、酸素含有量が急激に変動する部分までを意味する。酸化層の厚さが過度に薄いと、磁性の不均一性が増加する。酸化層の厚さが過度に厚いと、金属酸化物層が厚く形成され、相対的に母材の厚さが減って磁性が劣る可能性がある。
【0043】
次に、1次再結晶焼鈍が完了した冷延板を2次再結晶焼鈍する。2次再結晶焼鈍の目的は大きくみると、2次再結晶による{110}<001>集合組織の形成、脱炭時に形成された酸化層と焼鈍分離剤内のMgOの反応による金属酸化物層の形成により絶縁性の付与、磁気特性を損なう不純物の除去にある。2次再結晶焼鈍の方法としては、2次再結晶が起こる前の昇温区間では、窒素と水素の混合ガスで維持して粒子成長抑制剤の窒化物を保護することによって、2次再結晶が上手く発達するようにし、2次再結晶の完了後には、100%水素雰囲気で長時間維持して不純物を除去することにする。2次再結晶焼鈍過程中で窒化析出物が分解されながら窒素が金属酸化物層を通過して除去されることになるが、金属酸化物層に拡散してTiと反応してTiNを一部形成することがある。
【0044】
2次再結晶焼鈍過程において、1次再結晶焼鈍過程で生成された表面酸化層と焼鈍分離剤が反応して金属酸化物層が形成される。金属酸化物層は成分が母材とは区別される。例えば、焼鈍分離剤としてMgOを用いた場合、フォルステライトを含む。本発明で焼鈍分離剤としてMgO以外にTi化合物を追加で含む。さらに具体的に、焼鈍分離剤は固形分であり、MgO90ないし99重量%及びTi化合物1ないし10重量%含む。
2次再結晶焼鈍後に絶縁コーティング層を形成するステップをさらに含んでもよい。絶縁コーティング層の形成方法については広く知られているので、これに対する具体的な説明は省略する。
【0045】
本発明では、浸窒ガス雰囲気露出時間に対する窒素含有量を十分に高く調節することによって、2次再結晶以降の金属酸化物層の厚さを薄く形成することができ、追加で金属酸化物層を除去する工程を含まないこともある。具体的に金属酸化物層及び絶縁コーティング層を含む全体方向性電磁鋼板の厚さに対する金属酸化物層及び絶縁コーティング層の厚さの合計の比率が0.03以下であってもよい。さらに具体的に、0.001ないし0.03であってもよい。
【0046】
本発明の方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.5ないし4.0%、C:0.005%以下(0%を除く)、Al:0.015ないし0.040%、Mn:0.04ないし0.15%、S:0.01%以下(0%を除く)、N:0.005%以下(0%を除く)、Sb:0.01ないし0.05%、Sn:0.03ないし0.1%及びCr:0.05ないし0.2%を含み、残部がFe及び不可避な不純物からなる母材と、母材上に位置する金属酸化物層と、を含む。
方向性電磁鋼板の母材に対する鋼組成については前述したスラブの鋼組成と関連して説明したので、重複する説明は省略する。前述したように、方向性電磁鋼板の製造過程で脱炭及び浸窒が行われるので、スラブの鋼組成と母材の鋼組成中でC、Nの含有量は異なることがあり、残りの元素については実質的に変動がないこともある。
【0047】
本発明の金属酸化物層の最大(Max)発光強度比[I(Ti)/I(Mg)]が0.05以上である。最大発光強度は、グロー放電表面分析方式で厚さ方向に金属酸化層の元素分析を通じてTiとMg成分のmax intensityから比率を測定することができる。本発明で浸窒ガス雰囲気露出時間に対する窒素含有量を十分に高く調節することによって、酸化層及び酸化層の下部に局部的な浸窒濃化を抑制して深さ方向に十分な窒化析出物を形成して2次再結晶焼鈍時に形成される金属酸化物層が緻密でかつ均一に形成され、最大発光強度比が高くなることがある。最大発光強度比が高いということは、金属酸化物層が強固に形成され、均一な張力の付与に有利であり、2次再結晶形成以前の窒素の流失を抑制し、これは窮極的に磁性向上に繋がる。
【0048】
方向性電磁鋼板の白色度は、43ないし51であってもよい。白色度は、絶縁コーティング層がないか、叉は除去されて金属酸化物層だけが存在する状態で測定することができる。白色度は分光色差計の反射測定法で測定し、コーティングの両面を10回以上測定して平均値を取る方式で測定することができる。白色度が過度に大きいと、金属酸化物層が不均一に形成され、表面欠陥が発生して磁性偏差が大きくなる問題が発生する。白色度が過度に小さいと、金属酸化物層が占める厚さ比率が過度に高くなり、むしろ磁性が劣化する。
【0049】
金属酸化物層は、Tiを0.003重量%以上含んでもよい。金属酸化物層のTiは、焼鈍分離剤内のTi化合物成分に由来するか、叉は鋼板内のTi成分が拡散して存在してもよい。金属酸化物層内にTiが少なく存在すると、金属酸化物層が薄くて不均一に形成され、Fe酸化物形成によるコーティング欠陥問題が発生する可能性がある。さらに具体的に、金属酸化物層内に、Tiは、0.003ないし0.02重量%含んでもよい。さらに具体的に、金属酸化物層内に、Tiは、0.005ないし0.02重量%含んでもよい。
【0050】
本発明の方向性電磁鋼板の厚さは、0.23mm以下であってもよい。さらに具体的に、0.20mm以下であってもよい。ここで方向性電磁鋼板の厚さは、母材、金属酸化物層及び絶縁コーティング層を全て合わせた厚さを意味する。
本発明の実施例に係る方向性電磁鋼板は鉄損及び磁束密度が非常に優れている。具体的に鉄損(W17/50)が0.8W/kg以下であり、総鉄損中の履歴損が占める比率が40%以下であってもよい。また、方向性電磁鋼板の800A/mの磁場下で誘導される磁束密度(B8)は1.91T以上であってもよい。さらに具体的に、1.91ないし1.97Tであってもよい
【0051】
。
以下、本発明の好ましい実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例であるだけで、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例
表1に示す成分組成を有するAないしHスラブは、残り成分が残部Feとその他不可避の不純物からなる鋼材を真空溶解した後、インゴットを作り、次いで1150℃温度で210分加熱した後、熱間圧延して2.3mm叉は2.0mm厚さの熱延板を製造した。酸洗した後、0.23mm叉は0.20mm厚さに1回圧下率90%の強冷間圧延をした。
冷間圧延された板は、850℃の温度で湿った50v%水素及び50v%窒素湿潤雰囲気及びアンモニア混合ガス雰囲気中で180秒間維持して、炭素含有量が30ppm以下、総窒素含有量が200ppm以上になるように同時脱炭窒化焼鈍熱処理した。
このとき、アンモニアガス体積分率を1ないし10体積%、酸化能(PH2O/PH2)0.5ないし0.8範囲内で、窒化後の浸窒量とアンモニア露出時間が、表2のような条件を満足するように調整した。
この鋼板に固形分としてMgO95重量%及びTiO25重量%含む焼鈍分離剤を塗布してコイル状に2次再結晶焼鈍した。2次再結晶焼鈍は1200℃までは25v%窒素及び75v%水素の混合雰囲気にしており、1200℃到達後には、100%水素雰囲気で10時間以上維持後、炉冷した。
【0053】
以降、金属リン酸塩及びコロイダルシリカ混合液を含む絶縁コーティング層形成組成物を塗布し、熱処理して絶縁コーティング層を形成した。
各条件に対して測定した白色度、最大発光強度比[I(Ti)/I(Mg)]、履歴損比を下記の表2に整理した。各測定方法は、次の通りである。
白色度:分光色差計の反射測定法で測定し、コーティングの両面を10回以上測定して平均値を取る方式で測定した。
最大発光強度比[I(Ti)/I(Mg)]:グロー放電表面分析方式で厚さ方向に金属酸化層の元素分析を通じてTiとMg成分のmax intensityから比率を測定した。
履歴損比:各条件で製造した試片に対して鉄損と履歴損とを測定して総鉄損から履歴損の比率を求めた。
【0054】
【0055】
【0056】
表2で確認できるように、浸窒量に応じて浸窒ガスの露出時間を適切に調節した発明材は、最大発光強度比[I(Ti)/I(Mg)]が大きく、磁性に優れており、特に履歴損比が小さく、全体的な鉄損が小さくなることを確認できる。
これに対し、浸窒ガスの露出時間が適切に調節されていない比較材1ないし4は、最大発光強度比[I(Ti)/I(Mg)]が小さく、磁性が劣っていることを確認できる。
浸窒ガスの露出時間が適切に調節されても、Sb、Sn、Crの含有量が適切に調節されていない比較材5ないし9は磁性が劣っていることを確認できる。
【0057】
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施できることを理解するはずである。したがって、以上で記述した実施例はあらゆる面で例示的なものであって限定的ではないものと理解されるべきである。
【国際調査報告】