(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】強化プロトン交換膜
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1053 20160101AFI20241210BHJP
H01M 8/1048 20160101ALI20241210BHJP
H01M 8/1023 20160101ALI20241210BHJP
H01M 8/1039 20160101ALI20241210BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20241210BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241210BHJP
H01M 8/1069 20160101ALI20241210BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20241210BHJP
H01M 8/1051 20160101ALI20241210BHJP
【FI】
H01M8/1053
H01M8/1048
H01M8/1023
H01M8/1039
H01M8/10 101
H01M8/00 Z
H01M8/1069
H01B1/06 A
H01M8/1051
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538354
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 US2022051682
(87)【国際公開番号】W WO2023121854
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524237135
【氏名又は名称】ハイゾン モーターズ ユーエスエイ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バシャム、ラジェッシュ
【テーマコード(参考)】
5G301
5H126
【Fターム(参考)】
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE01
5H126AA05
5H126BB06
5H126GG12
5H126GG19
(57)【要約】
第1のイオノマーを含む第1の層(110)を含む強化プロトン交換膜(100)が提供される。第1の層(110)は第1の面(114)と第2の面(116)とを有する。第2層(120)はグラフェン酸化物を含み、第2層(120)は第1面(124)と第2面(126)とを有し、第2層(120)の第1面(124)は第1層(110)の第2面(116)に隣接している。第3層(130)は第2イオノマーを含み、第3層(130)はは第1面(134)と第2面(136)とを有し、第3層(130)の第1面(134)は第2層(120)の第2面(126)に隣接している。プロトン交換膜(100)はは支持層(140)を含み得る、又は、支持層(140)の上に形成され得る。支持層(140)は第1層(110)の第1面(114)に隣接している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン交換膜であって、
第1層であって、第1イオノマーを含み、第1面と第2面とを有する、前記第1層と、
第2層であって、グラフェン酸化物を含み、第1面と第2面とを有し、前記第2層の前記第1面が前記第1層の前記第2面に隣接している、前記第2層と、
第3層であって、第2イオノマーを含み、第1面と第2面とを有し、前記第3層の前記第1面が前記第2層の前記第2面に隣接している、前記第3層と
を備えるプロトン交換膜。
【請求項2】
前記第2層の前記第1面は、前記第1層の前記第2面に直接隣接し、かつ、
前記第3層の前記第1面は、前記第2層の前記第2面に直接隣接している、
請求項1のプロトン交換膜。
【請求項3】
さらに、前記第1層の前記第1面に隣接する支持層を備える、請求項1のプロトン交換膜。
【請求項4】
前記支持層は、前記第1層の前記第1面に直接隣接している、請求項3のプロトン交換膜。
【請求項5】
前記支持層がフッ素ポリマーを含む、請求項3のプロトン交換膜。
【請求項6】
前記第1イオノマー、前記第2イオノマー、又は前記第1イオノマーと前記第2イオノマーのそれぞれが、スルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素ポリマー共重合体を含む、請求項1のプロトン交換膜。
【請求項7】
前記第1層と前記第2イオノマーとは実質的に同一である、請求項1のプロトン交換膜。
【請求項8】
前記グラフェン酸化物が、イオン化単位を有する官能化グラフェン酸化物を含む、請求項1のプロトン交換膜。
【請求項9】
前記イオン化単位がスルホン酸単位を含む、請求項8のプロトン交換膜。
【請求項10】
前記第2層が抗酸化剤を含む、請求項1のプロトン交換膜。
【請求項11】
前記抗酸化剤が酸化セリウムを含む、請求項10のプロトン交換膜。
【請求項12】
前記グラフェン酸化物が官能化グラフェン酸化物を含み、かつ、第2層が酸化セリウムを含む、請求項1のプロトン交換膜。
【請求項13】
前記グラフェン酸化物が官能化グラフェン酸化物を含み、かつ、前記第2層が酸化セリウム及びプロトン型イオノマーを含む、請求項1のプロトン交換膜。
【請求項14】
前記グラフェン酸化物が官能化グラフェン酸化物を含み、かつ、前記第2層が酸化セリウム及びナトリウムイオン型イオノマーを含む、請求項1のプロトン交換膜。
【請求項15】
請求項1に記載のプロトン交換膜を備え、前記プロトン交換膜が2つの電極の間に配置されている
膜電極アセンブリ。
【請求項16】
請求項15に記載の膜電極アセンブリを備える燃料電池。
【請求項17】
請求項16に記載の燃料電池を備える乗り物。
【請求項18】
プロトン交換膜の製造方法であって、
支持層の上に、第1イオノマーを含む第1層を配置することと、
前記第1層の上に、グラフェン酸化物を含む第2層を配置することと、
前記第2層の上に、第2イオノマーを含む第3層を配置することと
を含む方法。
【請求項19】
さらに、前記支持層を除去することを含む、請求項18の方法。
【請求項20】
膜電極アセンブリの製造方法であって、
請求項18の方法に従ってプロトン交換膜を製造することと、
前記プロトン交換膜の一方の面に第1電極を配置することと、
前記プロトン交換膜のもう一方の面に第2電極を配置することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月23日に出願された米国仮出願第63/293,459号の利益を主張する。上述の出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本技術は、膜電極アセンブリに使用されるプロトン交換膜及びそのような膜電極アセンブリを含んだ燃料電池を含む、プロトン交換膜の強化に関する。
【背景技術】
【0003】
緒言
本節は、本開示に関連する背景情報を提供するがそれは必ずしも先行技術ではない。
【0004】
燃料電池システムは、乗り物及び定置式発電装置など、多くの用途において電源として使用することができる。このようなシステムは、経済的に、かつ、環境に基づく利益その他の利益を伴って電力を供給することができる。しかしながら、燃料電池システムは、商業的に実現可能となるためには、その好ましい動作範囲外の条件にさらされたときでも、動作において十分な信頼性を示す必要がある。
【0005】
燃料電池は、反応物、すなわち燃料と酸化剤とを変換して、電力と反応生成物とを生成する。プロトン交換膜燃料電池(PEM燃料電池)は、高分子電解質膜燃料電池とも呼ばれ、2つの電極、すなわち正極と負極との間に配置されたプロトン交換膜(例えば、プロトン伝導性イオノマー)を備える膜電極アセンブリ(MEA)を用いることができる。触媒は通常、電極における所望の電気化学反応を促進する。MEAのそれぞれの面には、それぞれの電極の表面全域にわたって反応物を導くための流れ場を提供するプレートを含むセパレータープレート若しくはバイポーラプレート及び/又は種々の種類のガス拡散媒体を配置することができる。
【0006】
動作時には、負荷がかかった個々の燃料電池の出力電圧は、1ボルト未満になる場合がある。したがって、より高い出力電圧を供給するために、複数の燃料電池を一緒に積み重ね、直列に接続して、より高い電圧の燃料電池スタックを作ることができる。エンドプレートアセンブリを燃料電池スタックの両端に配置して、スタックを一緒に保持し、スタック構成要素を圧縮することができる。圧縮力により、種々のスタック構成要素間の密閉及び適切な電気的接触が可能になる。燃料電池スタックは、さらに、他の燃料電池スタック又は電源と直列及び/又は並列に組み合わせて接続し、より高い電圧及び/又は電流を供給するためのより大きなアレイを形成することができる。
【0007】
燃料電池に使用されるプロトン交換膜は、相対湿度とともに温度に関する変化を含む、広範囲の動作状態に遭う可能性があり、プロトン交換膜を化学的かつ機械的に強化して、プロトン交換膜の耐久性を高めることができる。例えば、膜の機械的強化に延伸ポリテトラフルオロエチレン(e-PTFE)を使用することができるが、膜に1種以上の抗酸化剤を含めて、フェントン反応によって生成されるラジカル(例えば、ヒドロキシラジカル)などの所定のラジカルに対する化学的安定性を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、PEM燃料電池に求められる所望の性能及び耐久性の要件を達成するために、プロトン交換膜の機械的、化学的安定性を最適化することが引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本開示に整合し、驚くべきことに、膜電極アセンブリを含む最適化されたプロトン交換膜及びそのようなプロトン交換膜を含む燃料電池並びにそのようなプロトン交換膜の製造方法が見いだされた。
【0010】
本技術には、第1層、第2層及び第3層を含むプロトン交換膜に関する製造物、システム及び方法が含まれる。第1層は第1イオノマーを含み、第1面と第2面とを有する。第2層はグラフェン酸化物を含み、第1面と第2面とを有し、第2層の第1面は第1層の第2面に隣接している。第3層は第2イオノマーを含み、第1面と第2面とを有し、第3層の第1面は第2層の第2面に隣接している。
【0011】
支持層の上に、第1イオノマーを含んだ第1層を配置することを含む、プロトン交換膜の製造方法を提供する。第1層の上には第2層が配置され、第2層はグラフェン酸化物を含む。第2層の上には第3層が配置され、第3層は第2イオノマーを含む。その後、支持層を除去することができる。
【0012】
さらなる利用可能な範囲は、本明細書に示されている説明から明らかになる。本概要における説明及び具体例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に記載されている図面は、考え得るすべての実施形態ではなく、選択された実施形態の例示のみを目的としており、また、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0014】
【
図1】本技術に従って構成されたプロトン伝導性膜の第1の実施形態の概略断面図である。
【0015】
【
図2】本技術に従って構成されたプロトン伝導性膜の第2の実施形態の概略断面図である。
【0016】
【
図3】本技術に従って構成されたプロトン伝導性膜の第3の実施形態の概略断面図である。
【0017】
【
図4】本技術に従って構成されたプロトン伝導性膜の第4の実施形態の概略断面図である。
【0018】
【
図5】本技術に従って構成されたプロトン伝導性膜の第5の実施形態の概略断面図である。
【0019】
【
図6】本技術に従って構成されたプロトン伝導性膜の第6の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
次の技術の説明は、1つ以上の発明の主題、製造及び使用の性質上、例示にすぎず、本出願若しくは本出願の優先権を主張してされ得るその他の出願又はそれらから発行される特許において特許請求の範囲に記載されている、あらゆる特定の発明の範囲、用途又は使用を限定することを意図するものではない。開示されている方法に関して、示されている工程の順序は、本質的に例示であるため、特に明記されていない限り、所定の工程を同時に実行することができる場合を含め、種々の実施形態では、工程の順序が異なる場合がある。本明細書に使用されている「A」及び「an」は、物品が「少なくとも1つ(at least one)」存在することを示し、可能な場合は、そのような物品が複数存在する場合がある。特に明示されている場合を除き、本明細書におけるすべての数値は、「約(about)」という語によって修飾されているものと理解され、また、すべての幾何学的記述語及び空間的記述語は、技術の最も広い範囲を記述する際に、「実質的に(substantially)」という語によって修飾されているものと理解される。「約」は、数値に適用される場合、計算又は測定によって値に多少の不正確さが許容されることを示す(値の正確さにある程度近づく、値にほぼ近い又は適度に近い、ほとんど)。何らかの理由により、「約」及び/又は「実質的に」によって生じる不正確さが、当技術分野においてこの通常の意味により他に理解されない場合、本明細書に使用されている「約」及び/又は「実質的に」は、少なくとも、そのようなパラメーターを測定するか使用する通常の方法から生じる可能性のある変動を示す。
【0021】
本明細書では、含む(including)、含有する(containing)又は有する(having)などの限定的ではない用語の同義語として、開放型用語(open-ended term)の「含む、備える(comprising)」を使用して、本技術の実施形態を説明し、特許請求の範囲に記載するが、実施形態は、代替的に、「~からなる(consisting of)」又は「~から本質的になる(consisting essentially of)」などのより限定的な用語を使用して説明する場合がある。したがって、材料、構成要素又は工程段階を列挙するいずれかの所与の実施形態について、本技術には、そのような材料、構成要素又は工程段階からなる実施形態又はそれらから本質的になる実施形態であって、本出願において追加の材料、構成要素又は方法が明示的に列挙されていない場合でも、追加の材料、構成要素又は方法(~からなる)及び実施形態の重要な特性に影響を及ぼす追加の材料、構成要素又は方法(~から本質的になる)が除外された実施形態も具体的に含まれる。例えば、要素A、B及びCを列挙する組成物又は方法の列挙は、要素Dが本明細書において除外されると明示的に記載されていない場合でも、当技術分野において列挙される可能性のある要素Dを除いて、A、B及びCからなる実施形態並びにA、B及びCから本質的になる実施形態を具体的に想定する。
【0022】
本明細書に記載されているように、範囲の開示は、特に指示がない限り、終点を含み、全範囲内の別個のすべての値及びさらに分割された範囲を含む。したがって、例えば、「A~(から)B(from A to B)」又は「約A~(から)約B(from about A to about B)」の範囲は、A及びBを含む。特定のパラメーター(量、重量パーセントなど)の値及び値の範囲の開示は、本明細書において有用な他の値及び値の範囲を除外するものではない。所与のパラメーターについての2つ以上の具体的な例示値によって、そのパラメーターに対して要求され得る値の範囲の終点が定義され得ることが想定される。例えば、本明細書において、パラメーターXが、値Aを有するように例示され、値Zを有するようにも例示されている場合、パラメーターXは、約A~約Zの範囲の値を有し得ることが想定される。同様に、パラメーターに関する値の2つ以上の範囲の開示(そのような範囲がぴったり重なっているか、重複しているか、別個であるか)は、開示された範囲の終点を使用して特許請求の範囲に記載される可能性のある値の範囲の考え得るすべての組み合わせを包含することが想定される。例えば、本明細書においてパラメーターXが、1~10、2~9又は3~8の範囲の値を有するように例示されている場合、パラメーターXは、1~9、1~8、1~3、1~2、2~10、2~8、2~3、3~10、3~9などを含む、他の範囲の値を有していてもよいことも想定される。
【0023】
要素又は層が、別の要素又は層の「上にある(on)」、別の要素又は層に「はめ込まれる(engaged to)」、「接続される(connected to)」又は「連結される(coupled to)」と表されている場合、他の要素又は層の上に直接あってもよいし、他の要素又は層に直接はめ込まれていてもよいし、直接接続されていてもよいし、直接連結されていてもよいし又は介在する要素若しくは層が存在していてもよい。対照的に、要素が、別の要素又は層の「上に直接ある(directly on)」、別の要素又は層に「直接はめ込まれている(directly engaged to)」、「直接接続されている(directly connected to)」又は「直接連結されている(directly coupled to)」と表されている場合、介在する要素又は層が存在していなくてもよい。要素間の関係を説明するのに使用される他の用語も、同様に解釈する必要がある(例えば、「~の間(between)」と「~の間に直接(directly between)」、「~に隣接(adjacent)」と「~に直接隣接(directly adjacent)」など)。本明細書に使用されている場合、用語「及び/又は(and/or)」には、関連する列挙項目のうちの1つ以上のあらゆるすべての組み合わせが含まれる。
【0024】
本明細書では、種々の要素、構成要素、領域、層及び/又は部分を説明するのに第1、第2、第3などの用語が使用される場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、層及び/又は部分は、これらの用語によって限定されない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層又は部分を別の領域、層又は部分と区別するためにのみ使用することができる。本明細書に使用されている場合、「第1(first)」、「第2(second)」などの用語その他の数字の用語は、文脈によって明示されていない限り、順序又は順番を意味しない。したがって、以下に論じる第1の要素、構成要素、領域、層又は部分は、例示的な実施形態の開示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層又は部分と称され得る。
【0025】
本明細書では、図に示すように、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明しやすくするために、空間的に相対的な用語、例えば、「内側(inner)」、「外側(outer)」、「~の下に(beneath)」、「~よりも下に(below)」、「下の(lower)」、「~の上に(above)」、「上の(upper)」及び同種のものが使用される場合がある。空間的に相対的な用語は、図に描かれている方向に加えて、使用時又は動作時の装置の種々の方向を包含することを意図するものであり得る。例えば、図中の装置が反転されている場合、他の要素又は特徴「よりも下に」又は他の要素又は特徴「の下に」と説明されている要素は、他の要素又は特徴の「上に」配置される。したがって、例示的な用語の「~よりも下に」は、上と下の両方向を包含し得る。装置は、他の方向に向いていてもよく(90度回転又は他の方向)、本明細書に使用されている空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈してもよい。
【0026】
本技術は、PEM燃料電池内で発生する動作環境において機械的、化学的安定性を向上させる、最適化されたプロトン交換膜に焦点を当てている。このようにして、プロトン交換膜は、PEM燃料電池に求められる所望の性能及び耐久性の要件を達成するために使用することができる。本明細書に示されているプロトン交換膜は、第1層、第2層、及び第3層を含み得る。第1層は第1イオノマーを含み得、第1面と第2面とを有し得る。第2層はグラフェン酸化物を含み得、第1面と第2面とを有し得、第2層の第1面は第1層の第2面に隣接し得る。第3層は第2イオノマーを含み得、第1面と第2面とを有し得、第3層の第1面は第2層の第2面に隣接し得る。所定の実施形態では、第2層の第1面は第1層の第2面に直接隣接し得、第3層の第1面は第2層の第2面に直接隣接し得る。プロトン交換膜は第1層の第1面に隣接する支持層も含み得、支持層はまた、第1層の第1面に直接隣接し得る。したがって、第2層は、第1層と第2層との間に挟まれ得る。プロトン交換膜の構成により、湿度及び温度の変化に対する安定性を含む機械的安定性が向上するとともに、化学的安定性も向上する。本開示に従って構成された、このようなプロトン交換膜は、それによって生じる酸化防止作用に対する安定性の向上ももたらし、また、膜からの抗酸化剤の移動を最小限に抑えることができる。
【0027】
例えばブランク又はウェブとして構成される支持層は、プロトン交換膜の形成に使用することができる。例えば、支持層は、プロトン交換膜を製造するために、連続する層を種々の方法により配置するか、塗布するか、形成することができる安定なプラットフォームを提供してもよい。支持層には、形成されたプロトン交換膜からの後の除去を容易にすることができるフッ素ポリマー層を含み得る。プロトン交換膜を製造する所定の方法には、ブランク又はウェブとして支持層を準備することを含み、支持層はフッ素ポリマー層を含み得る。第1イオノマーを含む第1層は、支持層の上に配置するか、支持層に塗布することができる。グラフェン酸化物を含む第2層は、第1層の上に配置するか、第1層に塗布することができる。第2イオノマーを含む第3層は、第2層の上に配置するか、第2層に塗布することができる。支持層を除去することにより、第1層と第2層とに挟まれた、第2層を含むプロトン交換膜を残すことができる。
【0028】
支持層は以下の態様を含み得る。支持層は、所定のサイズのブランク又は材料の連続したウェブとして構成することができる。支持層はフッ素ポリマー層を含み得る。フッ素ポリマー層は、1種以上の種々のフッ素ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、パーフルオロエラストマー(FFPM)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)及びパーフルオロスルホン酸(PFSA)を含み得る。実施形態には、支持層がフッ素ポリマー層のみから構成される実施形態並びに支持層に他のポリマー、エラストマー及び材料の組み合わせも含まれ得る実施形態、例えば、フッ素ポリマー層を他の材料又は材料の層の上に剥離層として塗布することができる実施形態が含まれる。剥離層は、スプレー塗装又は浸漬塗装などによって塗布することができる。支持層にフッ素ポリマー層を含む場合、フッ素ポリマー層の厚さは、約0.1ミル(2.54ミクロン)~約5ミル(127ミクロン)であり得る。
【0029】
イオノマーを含むそれぞれの層(例えば、第1層及び第2層)には、次の態様が含まれ得る。実施形態には、それぞれの層中のイオノマーが同一である実施形態が含まれ、他の実施形態には、種々の層中のイオノマーが異なる実施形態が含まれる。イオノマーは、スルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素ポリマー共重合体、例えば、デュポン(DuPont)社のNafion(商標)フッ素ポリマー共重合体を含み得る。第1層中及び/又は第3層中のイオノマーのイオノマー当量(EW)は、例えば、約700g/mol~約1,100g/molであってもよい。第1層及び/又は第3層の厚さは、約2.54ミクロン~約127ミクロンであり得る。第1層と第3層とを実質的に同一にすることも可能である。
【0030】
グラフェン酸化物を含む第2層には、次の態様が含まれ得る。グラフェン酸化物は、スルホン酸単位などの種々のイオン化単位を有する官能化グラフェン酸化物を含み得る。例えば、グラフェン酸化物は、種々の官能基を含むように種々の方法により官能化してもよい。所定の実施形態には、グラフェン酸化物が、スルホン酸官能基前駆体として3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を使用することによって官能化することができる実施形態が含まれる。
【0031】
グラフェン酸化物を含む第2層には、抗酸化剤も含まれ得る。所定の実施形態には、抗酸化剤として酸化セリウムが含まれており、酸化セリウムは、約0.01mg/cm2~約0.3mg/cm2により含まれ得る。第2層に官能化グラフェン酸化物及び抗酸化剤(例えば、酸化セリウム)を含めることも可能である。さらに、第2層は、官能化グラフェン酸化物、抗酸化剤(例えば、酸化セリウム)並びにプロトン型イオノマー(proton form ionomer)及び/又はナトリウム型イオノマー(sodium form ionomer)などのイオノマーを含み得る。第2層の厚さは、約2.5ミクロン~約5ミクロンであり得る。
【0032】
グラフェン酸化物は、優れた物理特性、化学特性及び機械特性を有しており、それによって、本明細書に示されているプロトン交換膜を驚くほど強化することができる。グラフェン酸化物は、容易に処理することができ、また、1つ以上の薄膜として被覆することができ、グラフェン酸化物自体が、優れた抗酸化剤としても作用し得る。グラフェン酸化物層は、プロトンを通過させることができるが、ガスの通過を防止することができ、その結果、本プロトン交換膜における補強層として使用するための特別な特性がもたらされる。グラフェン酸化物は、種々の濃度の水性/アルコール性媒体中で処理することもでき、また、他の構成層に対してサンドイッチ層として被覆することができ、例えば、プロトン交換膜の構成において、グラフェン酸化物を含む第2層を第1層と第3層とに挟んでもよい。グラフェン酸化物は、プロトン交換膜構造全体を強化することができる。
【0033】
プロトン交換膜は、種々の用途に使用することができる。膜電極アセンブリには、本明細書に示されている1つ以上のプロトン交換膜が、1つ以上の電極とともに含まれ得る。例えば、プロトン交換膜は、2つの電極、例えば正極と負極との間に配置してもよい。このような膜電極アセンブリは、種々の燃料電池スタックを含む、1つ以上の燃料電池に使用することができる。本明細書に示されている1つ以上のプロトン交換膜を有する燃料電池を含む個々の燃料電池又はスタックは、乗り物用の電源の提供を含む、種々の用途における発電装置として使用することができる。
【0034】
本技術は、プロトン交換膜を製造する種々の方法を提供する。例えば、種々の構成層のうちの1つ以上を、連続する層を積層することを含む種々の手段によって別の層の上に配置するか、1つ以上のローラーによって塗布するか、カレンダー加工するか、噴霧するか、互いに堆積して、完全な層状プロトン交換膜又は部分的プロトン交換膜を形成し、次いで、これらをさらに組み合わせるか積層して、完全な膜を形成してもよい。所定の構成層のウェブに他の構成層を塗布することができ及び/又は所定の構成層のウェブから他の構成層を転写することができる。同様に、所定の寸法の所定の構成層を有する個別ブランクに他の構成層を塗布することができる。
【0035】
プロトン交換膜を製造する所定の方法は、フッ素ポリマー層を含むブランク又はウェブなどの支持層の準備を含み得る。フッ素ポリマー層の上には、イオノマーを含む第1層を配置することができる。第1層の上には、グラフェン酸化物を含む第2層を配置することができる。第2層の上には、イオノマーを含む第3層を配置することができる。支持層は、第1層と第2層とに挟まれた、第2層を含むプロトン交換膜を残して除去することができる。種々の層を互いの上に配置することには、該当する場合、塗布、積層、カレンダー加工、噴霧、堆積という種々の手段その他の膜形成技術が含まれる。
【0036】
したがって、本技術は、プロトン交換膜用途の耐久性を高め、経済的な利点をもたらすことができる。一部の実施形態では、プロトン交換膜は、機械的耐久性と化学的耐久性とを同時に向上させることができる。他のプロトン交換膜では、一定量の抗酸化剤(例えば、CeO2)がプロトン交換膜から浸出し、燃料電池の性能に悪影響を及ぼす可能性があることが観察されている。しかしながら、本技術によって提供されるプロトン交換膜は、添加された抗酸化剤を安定化させ、膜からの抗酸化剤の移動を最小限に抑えることができる。
【実施例】
【0037】
本技術の例示的な実施形態を、本明細書に添付する複数の図を参照して示す。
【0038】
図1を参照すると、プロトン伝導性膜の第1の実施形態が符号100により示されている。第1層110(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面114と第2面116とを有する。所定の実施例では、第1層110はePTFE及び/又は多孔質PTFEを含んでもよく、ePTFEは、イオノマーを収容するために多孔質でもある延伸PTFEである。第2層120(例えば、グラフェン酸化物)は第1面124と第2面126とを有し、第2層120の第1面124は第1層110の第2面116に隣接している。第3層130(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面134と第2面136とを有し、第3層130の第1面134は第2層120の第2面126に隣接している。第1面144と第2面146とを有する支持層140(例えば、ePTFE)が存在することができ、支持層140の第2面146の上に第1層110の第1面114を配置することによって、プロトン伝導性膜100を形成することができる。これに続いて、順次又は同時に、第1層110の上に第2層120を配置し、第2層120の上に第3層130を配置することができる。
【0039】
図2を参照すると、プロトン伝導性膜の第2の実施形態が符号200により示されている。第1層210(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面214と第2面216とを有する。所定の実施形態では、第1層210の厚さは0.1ミル~5ミルの範囲であり得る。第2層220(例えば、H
+官能化グラフェン酸化物)は第1面224と第2面226を有し、第2層220の第1面224は第1層210の第2面216に隣接している。第3層230(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面234と第2面236とを有し、第3層230の第1面234は第2層220の第2面226に隣接している。第1面244と第2面246とを有する支持層240(例えば、厚さが3~5ミルのePTFE)が存在し、支持層240の第2面246の上に第1層210の第1面214を配置することによって、プロトン伝導性膜200を形成することができる。これに続いて、順次又は同時に、第1層210の上に第2層220を配置することができ、第2層220の上に第3層230を配置することができる。
【0040】
図3を参照すると、プロトン伝導性膜の第3の実施形態が符号300により示されている。第1層310(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面314と第2面316とを有する。第2層320(例えば、グラフェン酸化物+CeO
2)は第1面324と第2面326を有し、第2層320の第1面324は第1層310の第2面316に隣接している。第3層330(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面334と第2面336とを有し、第3層330の第1面334は第2層320の第2面326に隣接している。第1面344と第2面346とを有する支持層340(例えば、ePTFE)が存在し、支持層340の第2面346の上に第1層310の第1面314を配置することによって、プロトン伝導性膜300を形成することができる。これに続いて、順次又は同時に、第1層310の上に第2層320を配置することができ、第2層320の上に第3層330を配置することができる。
【0041】
図4を参照すると、プロトン伝導性膜の第4の実施形態が符号400により示されている。第1層410(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面414と第2面416とを有する。第2層420(例えば、官能化グラフェン酸化物+CeO
2)は第1面424と第2面426を有し、第2層420の第1面424は第1層410の第2面416に隣接している。第3層430(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面434と第2面436とを有し、第3層430の第1面434は第2層420の第2面426に隣接している。第1面444と第2面446とを有する支持層440(例えば、厚さが3~5ミルのePTFE)が存在し、支持層440の第2面446の上に第1層410の第1面414を配置することによって、プロトン伝導性膜400を形成することができる。これに続いて、順次又は同時に、第1層410の上に第2層420を配置することができ、第2層420の上に第3層430を配置することができる。
【0042】
図5を参照すると、プロトン伝導性膜の第5の実施形態が符号500により示されている。第1層510(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面514と第2面516とを有する。第2層520(例えば、グラフェン酸化物+CeO
2+H
+型イオノマー)は第1面524と第2面526を有し、第2層520の第1面524は第1層510の第2面516に隣接している。第3層530(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面534と第2面536とを有し、第3層530の第1面534は第2層520の第2面526に隣接している。第1面544と第2面546とを有する支持層540(例えば、PTFE)が存在し、支持層540の第2面546の上に第1層510の第1面514を配置することによって、プロトン伝導性膜500を形成することができる。これに続いて、順次又は同時に、第1層510の上に第2層520を配置することができ、第2層520の上に第3層530を配置することができる。
【0043】
図6を参照すると、プロトン伝導性膜の第6の実施形態が符号600により示されている。第1層610(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面614と第2面616とを有する。第2層620(例えば、官能化グラフェン酸化物+CeO
2+Na
+型イオノマー)は第1面624と第2面626とを有し、第2層620の第1面624は第1層610の第2面616に隣接している。第3層630(例えば、EWが700~1100g/molのイオノマー)は第1面634と第2面636とを有し、第3層630の第1面634は第2層620の第2面626に隣接している。第1面644と第2面646とを有する支持層640(例えば、厚さが0.1~5ミルのePTFE)が存在し、支持層640の第2面646の上に第1層610の第1面614を配置することによって、プロトン伝導性膜600を形成することができる。これに続いて、順次又は同時に、第1層610の上に第2層620を配置することができ、第2層620の上に第3層630を配置することができる。
【0044】
例示的な実施形態は、本開示が完全なものとなり、かつ、当業者にその範囲が十分に伝わるようにするために、示されている。本開示の実施形態を完全に理解することができるように、具体的な構成要素、装置及び方法の例など、多くの具体的な詳細が示されている。当業者であれば、具体的な詳細を採用する必要がなく、例示的な実施形態を種々の多くの形態において具現化することができ、また、いずれも本開示の範囲を限定するものと解釈する必要がないことは、明らかである。一部の例示的な実施形態では、周知の方法、周知の装置構造及び周知の技術は、詳細には説明されていない。本技術の範囲内において、一部の実施形態、材料、組成物及び方法の同等の変更、修正及び変形をすることができ、実質的に同様の結果をもたらす。
【国際調査報告】