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特表2024-546184トウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】トウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C13K 13/00 20060101AFI20241210BHJP
   A23L 5/43 20160101ALI20241210BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20241210BHJP
   A23G 3/32 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C13K13/00 101
A23L5/43
C12P1/00 A
A23G3/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538461
(86)(22)【出願日】2023-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2023096361
(87)【国際公開番号】W WO2024119730
(87)【国際公開日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】202211552492.6
(32)【優先日】2022-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520401745
【氏名又は名称】浙江▲華▼康葯▲業▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAKANG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 偉冬
(72)【発明者】
【氏名】李 勉
(72)【発明者】
【氏名】楊 武龍
(72)【発明者】
【氏名】呉 強
(72)【発明者】
【氏名】秦 淑芳
(72)【発明者】
【氏名】徐 菁菁
(72)【発明者】
【氏名】姚 智慧
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B064
【Fターム(参考)】
4B014GG15
4B014GG18
4B014GL10
4B014GP14
4B018MA06
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF12
4B064CA21
4B064CD09
4B064CD24
4B064CE06
4B064DA10
(57)【要約】
本発明は、トウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム及び方法に関する。システムは、配管を介して互いに接続された、キシロース製造サブシステム、酵素加水分解サブシステム、及びキャラメル色素製造サブシステムを含み、前記キシロース製造サブシステムは、配管を介して順次接続された、原料タンク、前処理タンク、酸加水分解釜、プレート&フレームフィルタープレス、濾液中和タンク、ナノろ過膜分離器、電気透析分離器、蒸発濃縮タンク、結晶化タンク、遠心分離器、及び乾燥器を含み、前記酵素加水分解サブシステムは、配管を介して接続された濾残中和タンク及び酵素加水分解反応釜を含み、前記キャラメル色素製造サブシステムは、配管を介して順次接続された、糖液混合タンク、褐変反応釜、フラッシュタンク、限外濾過膜分離器、及びワイプドフィルム蒸発器を含む。本発明は、トウモロコシ穂軸廃棄物中のヘキソース及びキシロース母液中のペントースを資源化して利用するだけではなく、付加価値の高い高級キャラメル色素製品も得られ、トウモロコシ穂軸の総合利用価値を向上させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステムであって、
配管を介して互いに接続された、キシロース製造サブシステム、酵素加水分解サブシステム、及びキャラメル色素製造サブシステムを含み、前記キシロース製造サブシステムは、配管を介して順次接続された、原料タンク、前処理タンク、酸加水分解釜、プレート&フレームフィルタープレス、濾液中和タンク、ナノろ過膜分離器、電気透析分離器、蒸発濃縮タンク、結晶化タンク、遠心分離器、及び乾燥器を含み、前記酵素加水分解サブシステムは、配管を介して接続された濾残中和タンク及び酵素加水分解反応釜を含み、前記キャラメル色素製造サブシステムは、配管を介して順次接続された、糖液混合タンク、褐変反応釜、フラッシュタンク、限外濾過膜分離器、及びワイプドフィルム蒸発器を含み、プレート&フレームフィルタープレスには、濾液出口及び濾残出口がそれぞれ設けられ、濾液出口は、配管を介して濾液中和タンクに連通し、濾残出口は、配管を介して濾残中和タンクの供給口に連通し、遠心分離器には、固形物出口及び液状物出口がそれぞれ設けられ、固形物出口は、配管を介して乾燥器の供給口に連通し、液状物出口は、糖液混合タンクの1つの供給口に連通し、糖液混合タンクの別の供給口と酵素加水分解反応釜の排出口は、配管を介して連通し、原料タンクは、加工対象のトウモロコシ穂軸原料を貯蔵し、乾燥器の排出口から排出される材料は良質なキシロースであり、ワイプドフィルム蒸発器の排出口で最後に得られる材料は高級キャラメル色素である、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記プレート&フレームフィルタープレスの濾液出口から排出される濾液は、トウモロコシ穂軸加水分解液であり、前記プレート&フレームフィルタープレスの濾残出口から排出される濾残は、トウモロコシ穂軸廃棄物である、ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム。
【請求項3】
前記遠心分離器の液状物出口から送られた液状物は、キシロース母液である、ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム。
【請求項4】
前記酵素加水分解反応釜の排出口から排出される液体は、酵素加水分解液である、ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム。
【請求項5】
トウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロース及び高級キャラメル色素を同時生産する方法であって、
請求項1~4のいずれか1項に記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステムを使用しており、
原料タンクに貯蔵されたトウモロコシ穂軸粉末を、配管を介して前処理タンクに送って水洗し酸洗し、トウモロコシ穂軸液を得た後、配管を介してトウモロコシ穂軸液を酸加水分解釜に送って酸加水分解するステップ1と、
酸加水分解によりプレート&フレームフィルタープレスへの供給液を得、プレート&フレームフィルタープレスへの供給液を、配管を介してプレート&フレームフィルタープレスに送って濾過するステップ2と、
プレート&フレームフィルタープレスへの供給液をプレート&フレームフィルタープレスで濾過して、液体部分のトウモロコシ穂軸加水分解液及び固体部分のトウモロコシ穂軸廃棄物をそれぞれ得るステップ3と、
トウモロコシ穂軸加水分解液に対して濾過液中和タンクによる中和、ナノろ過膜分離器による脱色、電気透析分離器による脱塩、蒸発濃縮タンクによる濃縮、結晶化タンクによる結晶化、及び遠心分離器による固液分離を順次施して、結晶キシロース及びキシロース母液をそれぞれ得て、結晶キシロースを乾燥器で乾燥して、純度>99%、光透過率>98%の良質なキシロース結晶完成品を得て、配管を介してキシロース母液を糖液混合タンクに送るステップ4と、
トウモロコシ穂軸廃棄物を濾残中和タンクに送って中和し、次に、酵素加水分解反応釜に送って酵素加水分解して、酵素加水分解液を得、配管を介して酵素加水分解液を糖液混合タンクに送ってキシロース母液と混合し、さらに、褐変反応釜による褐変反応、フラッシュタンクによる蒸発、限外濾過膜分離器による分離、及びワイプドフィルム蒸発器によるワイプドフィルム蒸発を行って、色率が50,000EBCと高い高級キャラメル色素製品を得るステップ5と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
ステップ1では、トウモロコシ穂軸中の糖類資源乾物の質量パーセント濃度が60~70wt%であり、糖類資源乾物には、ヘキソースが50~55wt%、ペントースが45~50wt%含まれ、酸洗処理には、液固比3:1の0.20~0.30wt%の硫酸溶液が使用される、ことを特徴とする請求項5に記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロース及び高級キャラメル色素を同時生産する方法。
【請求項7】
ステップ2では、酸加水分解において、トウモロコシ穂軸の材料/液体比が1:5であり、硫酸添加量が1.2~1.5%であり、温度が120~125℃であり、時間が100~140minである、ことを特徴とする請求項5に記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロース及び高級キャラメル色素を同時生産する方法。
【請求項8】
ステップ4では、ナノろ過膜分離器による脱色において、ナノろ過膜分離器は、動作温度40~60℃、動作圧力15~35barであり、電気透析分離器による脱塩において、電気透析膜分離器は、動作電流60~120A、電圧200~250V、動作圧力15~35barである、ことを特徴とする請求項5に記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロース及び高級キャラメル色素を同時生産する方法。
【請求項9】
ステップ5では、酵素加水分解において、pHが5.5~6.5に調整され、2~4質量%の市販セルロース複合酵素が触媒として添加され、酵素加水分解反応の温度が40~60℃に制御され、酵素加水分解反応の時間が72~96hであり、褐変反応釜による褐変反応において、反応助剤としてアンモニア水又は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムと尿素とを6:2:2~4:4:2で配合したものが使用され、反応の調整において、まず、pHを7.0~9.0に調整し、その後、80~90℃に昇温して30~50min反応させ、その後、160~180℃に昇温して3~5h反応させ、その後、pHを2~4に調整し、その後、130~150℃に降温して0.5~1h反応させ、限外濾過膜分離器による分離において、限外濾過膜分離器は、動作温度40~60℃、動作圧力5~7barであり、ワイプドフィルム蒸発器によるワイプドフィルム蒸発において、蒸発圧力が4~5barであり、真空度が80~90kpaである、ことを特徴とする請求項5に記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロース及び高級キャラメル色素を同時生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖アルコール製造の技術分野に関し、特にトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キシロースは、白色の結晶で甘味のあるペントースであり、その甘味度がスクロースの0.7倍に相当し、スクロースの代替品として糖の使用量や甘味を軽減するのに使用される。良質なキシロースは、認定キシロースに比べて、純度が高く、光透過率が優れている。高級カラメル色素とは、通常のカラメル色素の2倍以上の色率と耐久性の高いカラメル色素のことである。特許公開第CN111647694A号では、トウモロコシ穂軸からキシロースを抽出する方法を記載しており、トウモロコシ穂軸に対して酸加水分解、脱色、イオン交換、蒸発濃縮、結晶化分離などの工程を施して、キシロース完成品を得る。酸加水分解後の固体のトウモロコシ穂軸廃棄物の大部分は直接焼却され、結晶化後のキシロース母液は、主にシロップメーカーに低価格で販売されるため、トウモロコシ穂軸廃棄物中のヘキソース及びキシロース母液中のペントースの資源が大幅に浪費される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする技術的課題は、トウモロコシ穂軸を原料として、その中のペントースを抽出し、良質なキシロースを製造し、母液中のペントース及びトウモロコシ穂軸渣中のヘキソースを用いて高級キャラメル色素を製造することによって、トウモロコシ穂軸中の各種の糖資源の浪費を回避し、また、環境に悪い農業廃棄物を経済価値の高い製品に変換することもでき、それによって、ハイエンドの製造、環境・生態の保護、そして質の高い経済発展を促進する、トウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は以下のように達成される。トウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステムであって、
配管を介して互いに接続された、キシロース製造サブシステム、酵素加水分解サブシステム、及びキャラメル色素製造サブシステムを含み、前記キシロース製造サブシステムは、配管を介して順次接続された、原料タンク、前処理タンク、酸加水分解釜、プレート&フレームフィルタープレス、濾液中和タンク、ナノろ過膜分離器、電気透析分離器、蒸発濃縮タンク、結晶化タンク、遠心分離器、及び乾燥器を含み、前記酵素加水分解サブシステムは、配管を介して接続された濾残中和タンク及び酵素加水分解反応釜を含み、前記キャラメル色素製造サブシステムは、配管を介して順次接続された、糖液混合タンク、褐変反応釜、フラッシュタンク、限外濾過膜分離器、及びワイプドフィルム蒸発器を含み、プレート&フレームフィルタープレスには、濾液出口及び濾残出口がそれぞれ設けられ、濾液出口は、配管を介して濾液中和タンクに連通し、濾残出口は、配管を介して濾残中和タンクの供給口に連通し、遠心分離器には、固形物出口及び液状物出口がそれぞれ設けられ、固形物出口は、配管を介して乾燥器の供給口に連通し、液状物出口は、糖液混合タンクの1つの供給口に連通し、糖液混合タンクの別の供給口と酵素加水分解反応釜の排出口は、配管を介して連通し、原料タンクは、加工対象のトウモロコシ穂軸原料を貯蔵し、乾燥器の排出口から排出される材料は良質なキシロースであり、ワイプドフィルム蒸発器の排出口で最後に得られる材料は高級キャラメル色素である、システムを提供する。
【0005】
さらに、前記プレート&フレームフィルタープレスの濾液出口から排出される濾液は、トウモロコシ穂軸加水分解液であり、前記プレート&フレームフィルタープレスの濾残出口から排出される濾残は、トウモロコシ穂軸廃棄物である。
【0006】
さらに、前記遠心分離器の液状物出口から送られた液状物は、キシロース母液である。
【0007】
さらに、前記酵素加水分解反応釜の排出口から排出される液体は、酵素加水分解液である。
【0008】
本発明は以下のように達成される。トウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロース及び高級キャラメル色素を同時生産する方法であって、
前記方法は、上記のいずれか1項に記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステムを使用しており、
原料タンクに貯蔵されたトウモロコシ穂軸粉末を、配管を介して前処理タンクに送って水洗し酸洗し、トウモロコシ穂軸液を得た後、配管を介してトウモロコシ穂軸液を酸加水分解釜に送って酸加水分解するステップ1と、
酸加水分解によりプレート&フレームフィルタープレスへの供給液を得、プレート&フレームフィルタープレスへの供給液を、配管を介してプレート&フレームフィルタープレスに送って濾過するステップ2と、
プレート&フレームフィルタープレスへの供給液をプレート&フレームフィルタープレスで濾過して、液体部分のトウモロコシ穂軸加水分解液及び固体部分のトウモロコシ穂軸廃棄物をそれぞれ得るステップ3と、
トウモロコシ穂軸加水分解液に対して濾過液中和タンクによる中和、ナノろ過膜分離器による脱色、電気透析分離器による脱塩、蒸発濃縮タンクによる濃縮、結晶化タンクによる結晶化、及び遠心分離器による固液分離を順次施して、結晶キシロース及びキシロース母液をそれぞれ得て、結晶キシロースを乾燥器で乾燥して、純度>99%、光透過率>98%の良質なキシロース結晶完成品を得て、配管を介してキシロース母液を糖液混合タンクに送るステップ4と、
トウモロコシ穂軸廃棄物を濾残中和タンクに送って中和し、次に酵素加水分解反応釜に送って酵素加水分解して、酵素加水分解液を得、配管を介して酵素加水分解液を糖液混合タンクに送ってキシロース母液と混合し、さらに、褐変反応釜による褐変反応、フラッシュタンクによる蒸発、限外濾過膜分離器による分離、及びワイプドフィルム蒸発器によるワイプドフィルム蒸発を行って、色率が50,000EBCと高い高級キャラメル色素製品を得るステップ5と、を含む、方法をさらに提供する。
【発明の効果】
【0009】
従来技術と比べて、本発明のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム及び方法は、以下の特徴がある。
【0010】
1.トウモロコシ穂軸廃棄物とキシロース母液中のペントース、ヘキソースを混合して高級カラメル色素を製造することにより、トウモロコシ穂軸の糖資源の利用率は90%以上に達する。本発明は、トウモロコシ穂軸資源の利用率を向上させるだけでなく、色率が50,000EBCと高いハイエンドのカラメル色素製品を製造し、トウモロコシ穂軸の総合利用価値を大幅に向上させる。
【0011】
2.プロセスシステム全体の改良及びカラメル色素製造プロセスの最適化により、トウモロコシ穂軸廃棄物中のヘキソースとキシロース母液中のペントースから高級カラメル色素を製造し、キャラメルの品質を向上し、1,000元/トンのキシロース母液及びトウモロコシ穂軸廃棄物を5,000元/トンの高級カラメル色素に変換することで、経済利益は5倍以上に増加する。
【0012】
3.トウモロコシ穂軸廃棄物の焼却や大量の蓄積は環境資源を占有し、生態文明の構築に影響を及ぼし、トウモロコシ穂軸廃棄物の総合利用は持続可能な発展とグリーン生態文明の構築に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステムの好適な実施例の原理模式図である。
図2】本発明のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロース及び高級キャラメル色素を同時生産する方法における各材料の流動方向の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有利な効果をより明確にするために、以下、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明される特定の実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステムの好適な実施例は、配管を介して互いに接続された、キシロース製造サブシステムI、酵素加水分解サブシステムII、及びキャラメル色素製造サブシステムIIIを含む。図における矢印方向は、システム内の材料の流動方向を示す。
【0016】
前記キシロース製造サブシステムIは、配管を介して順次接続された、原料タンク1、前処理タンク2、酸加水分解釜3、プレート&フレームフィルタープレス4、濾液中和タンク5、ナノろ過膜分離器6、電気透析分離器7、蒸発濃縮タンク8、結晶化タンク9、遠心分離器10、及び乾燥器11を含み、前記酵素加水分解サブシステムIIは、配管を介して接続された濾残中和タンク12及び酵素加水分解反応釜13を含み、前記キャラメル色素製造サブシステムIIIは、配管を介して順次接続された、糖液混合タンク14、褐変反応釜15、フラッシュタンク16、限外濾過膜分離器17、及びワイプドフィルム蒸発器18を含む。原料タンク1は、加工対象のトウモロコシ穂軸A原料を貯蔵し、乾燥器11の排出口から排出される材料は良質なキシロースBであり、ワイプドフィルム蒸発器18の排出口から最後に得られる材料は高級キャラメル色素Cである。
【0017】
プレート&フレームフィルタープレス4のそれぞれに濾液出口及び濾残出口が設けられ、濾液出口は、配管を介して濾液中和タンク5に連通し、濾残出口は、配管を介して濾残中和タンク12の供給口に連通する前記プレート&フレームフィルタープレス4の濾液出口から排出される濾液はトウモロコシ穂軸加水分解液Dであり、前記プレート&フレームフィルタープレス4の濾残出口から排出される濾残はトウモロコシ穂軸廃棄物Eである。
【0018】
遠心分離器10には、固形物出口及び液状物出口がそれぞれ設けられ、固形物出口は、配管を介して乾燥器11の供給口に連通し、液状物出口は、糖液混合タンク14の1つの供給口に連通し、糖液混合タンク14の別の供給口及び酵素加水分解反応釜13の排出口は、配管を介して連通する。
【0019】
前記遠心分離器10の液状物出口から送られる液状物はキシロース母液Fである。前記酵素加水分解反応釜13の排出口から排出される液体は酵素加水分解液Gである。
【0020】
前処理タンク2は、トウモロコシ穂軸A中の不純物を清水又は希酸で洗浄して除去するものであり、酸加水分解釜3は、トウモロコシ穂軸A中のヘミセルロースを加水分解するものであり、プレート&フレームフィルタープレス4は、トウモロコシ穂軸加水分解液D及びトウモロコシ穂軸廃棄物Eを分離するものであり、濾液中和タンク5は、トウモロコシ穂軸加水分解液DのpHを中和するものである。ナノろ過膜分離器6は、トウモロコシ穂軸加水分解液Dの脱色のためのものであり、ナノろ過膜分離器6で脱色した遮断液は色素液であり、透過液は脱色液である。電気透析膜分離器7は、脱色液の脱塩のためである。電気透析膜分離器7で脱塩した遮断液は濃塩液であり、透過液は脱塩液である。蒸発濃縮タンク8及び結晶化タンク9は、蒸発濃縮及びキシロースの結晶化のためのものであり、遠心分離器10は、結晶キシロース及びキシロース母液Fを分離するものであり、乾燥器11は、良質なキシロースB結晶を乾燥するものである。
【0021】
濾残中和タンク12は、トウモロコシ穂軸廃棄物EのpHを中和するものであり、酵素加水分解反応釜13は、トウモロコシ穂軸廃棄物E中のセルロースを酵素加水分解してグルコースにすることができる。糖液混合タンク14は、キシロース母液Fと酵素加水分解液Gを混合するものであり、褐変反応釜15は、混合糖液を褐変反応させて高級キャラメル色素粗品を得るものであり、フラッシュタンク16は、キャラメル色素中の不純物であるアミノ化合物又は亜硫酸塩を除去するものであり、限外濾過膜分離器17は、キャラメル色素中の不純物である4-メチルイミダゾールを除去するものであり、ワイプドフィルム蒸発器18は、キャラメル色素を低温濃縮して、高級キャラメル色素Cを得るものである。
【0022】
本発明はまた、トウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロース及び高級キャラメル色素を同時生産する方法を開示し、前記方法は、上記のいずれかに記載のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステムを使用しており、前記方法は、以下のステップを含む。
【0023】
ステップ1:原料タンク1に貯蔵されたトウモロコシ穂軸A粉末を、配管を介して前処理タンク2に送って水洗し酸洗し、トウモロコシ穂軸液を得た後、配管を介してトウモロコシ穂軸液を酸加水分解釜3に送って酸加水分解する。
【0024】
ステップ2:トウモロコシ穂軸液を酸加水分解釜で酸加水分解して、プレート&フレームフィルタープレスへの供給液Hを得、プレート&フレームフィルタープレスへの供給液Hを、配管を介してプレート&フレームフィルタープレス4に送って濾過する。
【0025】
ステップ3:プレート&フレームフィルタープレスへの供給液Hをプレート&フレームフィルタープレス4で濾過し、液体部分及び固体部分をそれぞれ得る。液体部分は、トウモロコシ穂軸加水分解液Dであり、固体部分はトウモロコシ穂軸廃棄物Eである。
【0026】
ステップ4:トウモロコシ穂軸加水分解液Dに対して濾過液中和タンク5による中和、ナノろ過膜分離器6による脱色、電気透析分離器7による脱塩、蒸発濃縮タンク8による濃縮、結晶化タンク9による結晶、及び遠心分離器10による固液分離を順次施して、結晶キシロース及びキシロース母液をそれぞれ得て、結晶キシロースを乾燥器11で乾燥して、良質なキシロースB結晶完成品を得て、配管を介してキシロース母液Fを糖液混合タンク14に送る。良質なキシロースA結晶は、純度>99%、光透過率>98%である。
【0027】
ステップ5:トウモロコシ穂軸廃棄物Eを濾残中和タンク12に送って中和し、次に、酵素加水分解反応釜13に送って酵素加水分解して、酵素加水分解液Gを得、配管を介して酵素加水分解液Gを糖液混合タンク14に送ってキシロース母液Fと混合し、さらに、褐変反応釜15による褐変反応、フラッシュタンク16による蒸発、限外濾過膜分離器17による分離、及びワイプドフィルム蒸発器18によるワイプドフィルム蒸発を行って、色率が50,000EBCと高い高級キャラメル色素C製品を得る。
【0028】
具体的には、ステップ1では、トウモロコシ穂軸A中の糖類資源乾物の質量パーセント濃度が60~70wt%であり、糖類資源乾物には、ヘキソースが50~55wt%、ペントースが45~50%wt含まれ、酸洗処理には、液固比3:1の0.20~0.30wt%の硫酸溶液が使用される。
【0029】
具体的には、ステップ2では、酸加水分解において、トウモロコシ穂軸の材料/液体比が1:5であり、硫酸添加量が1.2~1.5%であり、温度が120~125℃であり、時間が100~140minである。
【0030】
具体的には、ステップ4では、ナノろ過膜分離器6による脱色処理において、ナノろ過膜分離器6は、動作温度40~60℃、動作圧力15~35barであり、電気透析分離器7による脱塩において、電気透析膜分離器7は、動作電流60~120A、電圧200~250V、動作圧力15~35barである。
【0031】
具体的には、ステップ5では、酵素加水分解において、pHが5.5~6.5に調整され、2~4質量%の市販セルロース複合酵素が触媒として使用され、酵素加水分解反応の温度が40~60℃に制御され、酵素加水分解反応の時間が72~96hであり、褐変反応釜15による褐変反応において、反応助剤としてアンモニア水又は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムと尿素とを6:2:2~4:4:2で配合したものが使用され、反応の調整において、まず、pHを7.0~9.0に調整し、その後、80~90℃に昇温して30~50min反応させ、その後、160~180℃に昇温して3~5h反応させ、その後、pHを2~4に調整し、その後、130~150℃に降温して0.5~1h反応させ、限外濾過膜分離器17による分離において、限外濾過膜分離器17は、動作温度40~60℃、動作圧力5~7barであり、ワイプドフィルム蒸発器18によるワイプドフィルム蒸発において、蒸発圧力が4~5barであり、真空度が80~90kpaである。
【0032】
以下、特定実施例によって、本発明のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム及び方法についてさらに説明する。
実施例1
【0033】
本発明のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム及び方法の第1実施例では、トウモロコシ穂軸を原料として精製し、良質な結晶キシロースを得た後、酵素で加水分解して、酵素加水分解液を遠心分離後のキシロース母液と混合し、高級キャラメル色素を製造する。前記方法は、以下のステップを含む。
【0034】
ステップ1:原料タンク1内のトウモロコシ穂軸粉末を、配管を介して前処理タンク2に送って水洗し酸洗し、酸洗には、液固比3:1の0.20wt%の硫酸溶液を用い、その後、酸加水分解釜3に送って加水分解する。
【0035】
ステップ2:前処理タンク2のトウモロコシ穂軸洗浄液を、配管を介して酸加水分解釜3に送って、トウモロコシ穂軸液固比を5:1、硫酸添加量を1.2%、温度を125℃、時間を140minとして加水分解し、その後、プレート&フレームフィルタープレス4に送って濾過する。
【0036】
ステップ3:プレート&フレームフィルタープレス4で加水分解処理後の材料を2つの部分に分離し、液体部分をトウモロコシ穂軸加水分解液D、固体部分をトウモロコシ穂軸廃棄物Eとする。
【0037】
ステップ4:トウモロコシ穂軸加水分解液Dに対して濾過液中和タンク5による中和、ナノろ過膜分離器6による脱色、電気透析分離器7による脱塩、蒸発濃縮タンク8による濃縮、結晶化タンク9による結晶、及び遠心分離器10による固液分離を順次施して、結晶キシロース及びキシロース母液Fをそれぞれ得て、結晶キシロースを乾燥器11で乾燥して、良質なキシロースB結晶完成品を得て、配管を介してキシロース母液Fを糖液混合タンク14に送る。良質なキシロース結晶は、純度>99%、光透過率>98%である。ナノろ過膜分離器6は、動作温度60℃、動作圧力20barであり、電気透析膜分離器7は、動作電流100A、電圧250V、動作圧力20barである。
【0038】
ステップ5:トウモロコシ穂軸廃棄物を濾残中和タンク12に送って中和し、次に、酵素加水分解反応釜13に送って酵素加水分解し、酵素加水分解液Gを得、酵素加水分解液Gを、配管を介して糖液混合タンク14に送ってキシロース母液Fと混合し、さらに、褐変反応釜15による褐変反応、フラッシュタンク16による蒸発、限外濾過膜分離器17による分離、及びワイプドフィルム蒸発器18によるワイプドフィルム蒸発処理を施して、色率が50,000EBCと高く、他の指標が全て国家標準を満たし、糖類資源の利用率が90%と高い高級キャラメル色素C製品を得る。酵素加水分解において、pHが5.5に調整され、2質量%の市販セルロース複合酵素が触媒として添加され、酵素加水分解反応の温度が50℃に制御され、酵素加水分解反応の時間が72hである。褐変反応釜15による褐変反応において、反応助剤として炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムと尿素とを6:2:2で配合したものが使用され、反応の調整において、まず、pHを9.0に調整し、その後、90℃に昇温して30min反応させ、その後、170℃に昇温して3h反応させ、その後、pHを3.0に調整し、その後、130℃に降温して1h反応させる。限外濾過膜分離器17は、動作温度60℃、動作圧力5barである。ワイプドフィルム蒸発器18によるワイプドフィルム蒸発において、蒸発圧力が4barであり、真空度が90kpaである。
比較例1
【0039】
トウモロコシ穂軸Aを原料としてキシロースを直接抽出するステップは、具体的には、以下の通りである。原料タンク1内のトウモロコシ穂軸原料を、配管を介して前処理タンク2に送って清洗した後、酸加水分解釜3に送り、1.5%の硫酸を添加し、その後、プレート&フレームフィルタープレス4で加水分解液に対してアルカリ中和、活性炭脱色、イオン交換脱塩を施した後、蒸発して濃縮し、結晶化し遠心分離し、最後に、完成品として結晶キシロースを得る。プレート&フレームフィルタープレスによるトウモロコシ穂軸廃棄物Eを干して焼却し、又は固体廃棄物処理を行い、遠心分離後のキシロース母液Fをシロップ製造用に市販し、糖資源の実際の利用率はわずか30%である。
比較例2
【0040】
キシロース母液Fを原料としてキャラメル色素を直接製造するステップは、具体的には、以下を含む。遠心分離後のキシロース母液Fを、配管を介して褐変反応釜15に直接送り、pHを9.0に調整し、10w%の炭酸アンモニウムを反応助剤として添加し、反応温度を170℃、反応時間を3hとして反応させ、濾過して、色率が30,000EBCであり、他の指標が全て国家基準を満たすキャラメル色素完成品を得る。
【0041】
以上のように、本発明のトウモロコシ穂軸を用いて良質なキシロースと高級キャラメル色素を同時生産するシステム及び方法では、トウモロコシ穂軸A中の糖類資源の利用率は30%から90%に向上し、キャラメル色素の色率は30,000EBCから50,000EBCに上昇し、トウモロコシ穂軸の総合利用価値を向上させるとともに、キャラメル色素の製品品質を高める。
【0042】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原理の範囲内で行われたあらゆる修正、同等の置換、及び改良等は、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
【国際調査報告】