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特表2024-546188タンパク質測定のための次世代シーケンシング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】タンパク質測定のための次世代シーケンシング
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20241210BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20241210BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20241210BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20241210BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20241210BHJP
   C12Q 1/6855 20180101ALI20241210BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241210BHJP
   C12Q 1/6865 20180101ALI20241210BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/68 100Z
C12Q1/6816 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6855 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6865 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539484
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 US2022082594
(87)【国際公開番号】W WO2023130049
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/294,964
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】505373306
【氏名又は名称】ソマロジック オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジチ,ドム
(72)【発明者】
【氏名】ワイス,アリソン
(72)【発明者】
【氏名】セゲッティ,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ジェンコ,キャスリン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
生物学的サンプル中のタンパク質などの標的分子を検出および定量化する方法を提供する。開示された方法は、アプタマーで標的分子を捕捉することと、アプタマーをアプタマー同定配列に置き換えることと、次世代シーケンシング技術を使用して、アプタマー同定配列を配列決定することと、を含む。
【選択図】図3A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中の標的タンパク質の存在量を定量化するための方法であって、
前記生物学的サンプルを、それぞれが特定のタンパク質に結合するように構成された複数のアプタマーに曝露することによって、前記標的タンパク質を捕捉することと;
アプタマー含有溶出液中の前記標的タンパク質のうちの1つを捕捉した前記アプタマーを単離することと;
前記溶出液中の前記アプタマーを、それぞれが特定のアプタマーにハイブリダイズするように構成された複数の捕捉プローブに曝露することにより、複数の三分子複合体を形成することであって、各三分子複合体が、
前記溶出液からの前記アプタマーのうちの1つと、
前記アプタマーの第1の部分にハイブリダイズした部分を含む第1の捕捉プローブと、
前記アプタマーの第2の部分にハイブリダイズした部分、DNAプライマー領域、前記アプタマーに対応するアプタマーID配列を含む第2の捕捉プローブと、を含む、形成することと;
前記三分子複合体をアプタマーに結合していない捕捉プローブから分離することと;
前記三分子複合体中の前記捕捉プローブを前記対応するアプタマーから解離させることと;
前記解離させた捕捉プローブ中の前記アプタマーID配列を増幅させることと;
次世代シーケンシングにより前記アプタマーID配列を配列決定することと:
前記アプタマーID配列の配列決定により得られたデータに基づいて、前記生物学的サンプル中の前記標的タンパク質の存在量を決定することと、を含む方法。
【請求項2】
前記アプタマーが、SOMAmerである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三分子複合体を形成する前に、前記アプタマー含有溶出液を2つ以上のグループに分割することをさらに含み、前記複数の捕捉プローブが、2つ以上のグループに対応する2つ以上の別個の捕捉プローブのセットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アプタマーID配列を増幅させる前に、前記解離した捕捉プローブを複数のアリコートに分割することをさらに含み、前記アプタマーID配列を増幅させることが、各アリコート中の異なるサブセットのアプタマーID配列を増幅させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アプタマーID配列を増幅させる前に、前記少なくとも1つのアリコートを希釈することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アプタマーID配列を増幅させる前に、各アリコートに定量的スパイクレポーターを添加することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記アプタマーID配列を配列決定する前に、前記アリコートを再度組み合わせることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
生物学的サンプル中の2種以上の標的タンパク質の存在量を定量化するための方法であって、前記方法が、
それぞれが特定のタンパク質を捕捉するように構成された複数のアプタマーに前記生物学的サンプルを曝露することによって、前記標的タンパク質を捕捉することと;
前記生物学的サンプル中の前記標的タンパク質のうちの1つを捕捉した前記アプタマーを単離することによって、アプタマー含有溶出液を形成することと;
複数の三分子複合体を形成することであって、各三分子複合体が:
前記アプタマー含有溶出液中に存在する特定のアプタマーと、
前記特定のアプタマーの対応する第1の部分にハイブリダイズした第1のプローブと、
前記特定のアプタマーの対応する第2の部分にハイブリダイズした部分、少なくとも1つのDNAプライマー領域、および前記特定のアプタマーに対応するアプタマーID配列を含む、第2のプローブと、を含む、形成することと、
前記アプタマーID配列を増幅させることと;
前記アプタマーID配列を配列決定することと;
前記配列決定されたアプタマーID配列に基づいて、前記標的タンパク質の、前記存在量を定量化することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記アプタマーが、SOMAmerである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記三分子複合体を形成する前に、前記アプタマー含有溶出液を2つ以上の希釈グループに分割することをさらに含み、前記複数の捕捉プローブが、2つ以上の希釈グループに対応する2つ以上の別個の捕捉プローブのセットを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記アプタマーID配列を増幅させる前に、前記解離した捕捉プローブを複数のアリコートに分割することをさらに含み、ここで、前記アリコートのうちの少なくとも1つを希釈し、前記アプタマーID配列を増幅させることが、各アリコート中の異なるサブセットのアプタマーID配列を増幅させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記アプタマーID配列を増幅させる前に、各アリコートに定量的スパイクレポーターを添加することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アプタマーID配列を配列決定する前に、前記アリコートを再度組み合わせることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アプタマーID配列を配列決定することが、次世代シーケンシングによって達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
生物学的サンプル中の標的タンパク質を検出するための方法であって、
前記生物学的サンプルを、それぞれが特定のタンパク質を捕捉するように構成された複数のアプタマーと組み合わせることによって、アプタマーで標的タンパク質を捕捉することと;
三分子複合体を形成することであって、
前記標的タンパク質を捕捉したアプタマーと、
前記標的タンパク質を捕捉した前記アプタマーの対応する第1の部分にハイブリダイズした部分を含む第1のプローブと、
前記標的タンパク質を捕捉した前記アプタマーの対応する第2の部分にハイブリダイズした部分、少なくとも1つのDNAプライマー領域、および前記標的タンパク質を捕捉した前記アプタマーに対応するアプタマーID配列を含む第2のプローブと、を含む、三分子複合体を形成することと;
前記アプタマーID配列を増幅させることと;
前記アプタマーID配列の配列決定を行って、前記アプタマーID配列を同定し、それによって前記標的タンパク質を捕捉した前記アプタマーおよび前記標的タンパク質を同定することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記アプタマー上の標的領域を決定し、次いで前記標的領域の相補体を前記第1のプローブと前記第2のプローブに分割するための境界を決定することによって、前記第1のプローブおよび前記第2のプローブを形成することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記境界を決定することが、前記第1のプローブおよび前記第2のプローブの前記ハイブリダイズされた部分の所望の融解温度を達成することに基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記標的領域の前記相補体の前記融解温度をコンピューターにより決定することと、次いで、前記ハイブリダイズされた部分の所望の融解温度が達成されるまで、前記第1のプローブと前記第2のプローブのハイブリダイズされた部分の間の境界の変更を段階的に行うことと、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アプタマーID配列を配列決定することが、次世代シーケンシングによって達成される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記アプタマーID配列を増幅させる前に、前記第2のプローブを前記アプタマーから解離させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
【0002】
以下の明細書および資料は、すべての目的のために、その全体が本明細書に組み込まれる:2021年12月30日出願の米国仮特許出願番号63/294,964。
【0003】
技術分野
本開示は、生物学的サンプル中のタンパク質を定量的に測定するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、開示された実施形態は、特別に設計されたアプタマーで標的タンパク質を捕捉すること、標的タンパク質を捕捉したアプタマーの溶出液を作製すること、次いで、溶出液中のアプタマーを、アプタマー自体よりも簡単に配列決定できる「レポーター」DNA分子に置き換えることに関する。
【0004】
概論
従来、遺伝子活性を評価する、および/または疾患プロセスもしくは薬理作用の生物学的プロセスなどの生物学的プロセスを解読するための様々な試みは、ゲノミクスに焦点を当てている。しかし、プロテオミクスは、細胞および生物の生物学的機能に関するさらなる情報を提供することができる。プロテオミクスは、遺伝子レベルよりも、タンパク質レベルでの発現を検出および定量化することにより、遺伝子活性を定性的かつ定量的に測定することを含む。プロテオミクスは、タンパク質の翻訳後修飾およびタンパク質間の相互作用など、遺伝的にコード化されていない事象の研究も含む。
【0005】
現在では、膨大な量のゲノム情報を得ることが可能である。DNAチップは、この目的のための分子アレイとして実用化されるようになり、直接的DNA配列決定の価格が大幅に下落し続けている。同様に、ハイスループットプロテオミクスに対する需要も高まっている。健康のモニタリングにとって、プロテオミクスは、ゲノミクスよりはるかに優れているが、その理由は、ゲノムが静的であり、医療上の可能性のみを示す一方で、プロテオームは、患者の医学的状態に応じて動的に変化し、患者の医学的状態を定義するとも言える可能性があるためである。しかし、タンパク質の検出および定量化が困難であるのに対し、核酸の検出および定量化は、比較的容易であり、その理由は、少なくとも部分的には、タンパク質は、DNAよりも生物学的機能が複雑であり、かつより多様であるためである。このため、タンパク質濃度の代理として、mRNA(メッセンジャーRNA)濃度を測定するための多くの取り組みが進められている。しかし、mRNA濃度は、タンパク質濃度と十分に相関しないことが示されている。プロテオミクスは、タンパク質を直接検出する能力に依存するように思われる。
【0006】
生物学的サンプル中の特定のタンパク質の存在を検出し、定量化する1つの方法は、タンパク質捕捉SOMAmer(登録商標)(Slow Off-rate Modified Aptamer)試薬の使用を介して行われる。SOMAmer試薬は、SOMAmer試薬が選択される大規模なランダム化核酸ライブラリの物理化学的多様性を大幅に拡大する化学修飾ヌクレオチドで構成される。SOMAmer試薬を使用するアッセイは、個々のそれぞれのタンパク質濃度を対応するSOMAmer試薬濃度に変換することによって、複雑なマトリックス中の天然のタンパク質を測定し、次いでこれを、マイクロアレイまたはqPCRなどの標準的なDNA技術によって定量化する。
【0007】
SOMAmer試薬は、アミノ酸側鎖を模倣する化学修飾ヌクレオチドを含む一本鎖DNAベースのタンパク質親和性試薬であり、標準的なアプタマーの化学的多様性を拡大させ、タンパク質と核酸の相互作用の特異性および親和性を増強する。これらの修飾ヌクレオチドは、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enhancement)と呼ばれる反復選択および増幅プロセスに使用される核酸ライブラリに組み込まれ、そのライブラリからSOMAmer試薬が選択される。SELEXタイプのプロセスを使用することにより、非修飾核酸(ACTG従来のアプタマー)による選択に抵抗性であったタンパク質を捕捉するためのSOMAmer試薬を生成することができる。SOMAmer試薬は、特異性および遅いオフレートの望ましい特性を選択するように、ならびに試薬が使用されるアッセイ条件を模倣するように適合させることもできる。
【0008】
SOMAmerベースのアッセイでは、サンプル中でのタンパク質の存在を、特定のSOMAmerベースのDNAシグナルに変換する。SOMAmer-タンパク質の結合ステップ後、一連の分配ステップおよび洗浄ステップが行われ、ここで、相対的なタンパク質濃度が測定可能な核酸シグナルに変換され、この核酸シグナルを、蛍光標識されたSOMAmerとカスタムDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションなどのDNA検出技術を使用して定量化する。マイクロアレイをレーザースキャンする際に、相対蛍光単位(RFU)での読み取り値は、最初のサンプル中の標的タンパク質の量に正比例する。
【0009】
マイクロアレイハイブリダイゼーションを使用するタンパク質検出の定量化は、様々な欠点を有する。これらの欠点としては、スケーラビリティの制限、一定のアッセイコスト、およびマイクロアレイの商業的供給源の制限が挙げられる。したがって、捕捉後の溶出液中のSOMAmer分子を定量化する代替的方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、次世代シーケンシングまたはNGSとして知られる並列シーケンシング技術を使用するタンパク質の検出および定量化に関するシステム、装置、および方法を提供する。より具体的には、本開示は、タンパク質の捕捉をシグナル伝達するSOMAmer溶出分子を、SOMAmer特異的同定タグまたは「SOMA ID」を含む「レポーター」DNA分子で置き換えて、次いでこれが、NGS技術を使用して配列決定され得るハイブリダイゼーション捕捉(HC)技術に関する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、生物学的サンプル中の標的タンパク質の存在量を定量化するためのシステムおよび方法であって、生物学的サンプルを、それぞれが特異的タンパク質に結合するように構成された複数のアプタマーに曝露することによって、標的タンパク質を捕捉することと;アプタマー含有溶出液中の標的タンパク質のうちの1つを捕捉するアプタマーを単離することと;溶出液中のアプタマーを、それぞれが特定のアプタマーにハイブリダイズするように構成された複数の捕捉プローブに曝露することによって、複数の三分子複合体を形成することであって、各三分子複合体が、溶出液からのアプタマーのうちの1つと、アプタマーの第1の部分にハイブリダイズした部分を含む第1の捕捉プローブと、アプタマーの第2の部分にハイブリダイズした部分、DNAプライマー領域、およびアプタマーに対応するアプタマーID配列を含む第2の捕捉プローブとを含む、形成することと;三分子複合体をアプタマーに結合していない捕捉プローブから分離することと;三分子複合体中の捕捉プローブを対応するアプタマーから解離させることと;解離させた捕捉プローブ中のアプタマーID配列を増幅させることと;次世代シーケンシングによりアプタマーID配列を配列決定することと:アプタマーID配列の配列決定により得られたデータに基づいて、生物学的サンプル中の標的タンパク質の存在量を決定することと、を含むシステムおよび方法に関する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、生物学的サンプル中の2種以上の標的タンパク質の存在量を定量化するためのシステムおよび方法であって、それぞれが特定のタンパク質を捕捉するように構成された複数のアプタマーに生物学的サンプルを曝露することによって、標的タンパク質を捕捉することと;生物学的サンプル中の標的タンパク質のうちの1つを捕捉したアプタマーを単離することによって、アプタマー含有溶出液を形成することと;複数の三分子複合体を形成することであって、それぞれが、アプタマー含有溶出液中に存在する特定のアプタマー、特定のアプタマーの対応する第1の部分にハイブリダイズした第1のプローブ、および特定のアプタマーの対応する第2の部分にハイブリダイズした部分、少なくとも1つのDNAプライマー領域、および特定のアプタマーに対応するアプタマーID配列を含む第2のプローブを含む、形成することと;アプタマーID配列を増幅させることと;アプタマーID配列を配列決定することと;配列決定されたアプタマーID配列に基づいて、標的タンパク質の存在量を定量化することと、を含むシステムおよび方法に関する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、生物学的サンプル中の標的タンパク質を検出するためのシステムおよび方法であって、生物学的サンプルを、それぞれが特定のタンパク質を捕捉するように構成された複数のアプタマーと組み合わせることによって、アプタマーで標的タンパク質を捕捉することと;標的タンパク質を捕捉したアプタマーと、標的タンパク質を捕捉したアプタマーの対応する第1の部分にハイブリダイズした部分を含む第1のプローブと、標的タンパク質を捕捉したアプタマーの対応する第2の部分にハイブリダイズした部分、少なくとも1つのDNAプライマー領域、および標的タンパク質を捕捉したアプタマーに対応するアプタマーID配列を含む第2のプローブと、を含む三分子複合体を形成することと;アプタマーID配列を増幅させることと;アプタマーID配列を配列決定してアプタマーID配列を同定し、それによって標的タンパク質を捕捉したアプタマーおよび標的タンパク質を同定することと、を含むシステムおよび方法に関する。
【0014】
本開示の態様によるいくつかの実施形態では、標的タンパク質を捕捉するために使用されるアプタマーは、アプタマーをより単純な配列に変換するために、三分子複合体を使用することなく、例えば次世代シーケンシング技術を使用して、直接配列決定され得る。
【0015】
本開示の態様によるいくつかの実施形態では、標的タンパク質を捕捉するために使用されるアプタマーは、SOMAmerであり得る。
【0016】
本開示の態様によるいくつかの実施形態では、アプタマー含有溶出液は、ハイブリダイズされたプローブ領域への曝露の前および/または曝露後にグループに分割され得る。いくつかの例では、溶出液グループの一部または全部を所望の程度まで希釈してもよい。
【0017】
本開示の態様によるいくつかの実施形態では、分析物のカウント比例性の補完的変化を補正するために、所望のアッセイ段階において、定量的スパイクレポーターを添加してもよい。
【0018】
特徴、機能、および利点を、本開示の様々な実施形態において独立して達成してもよく、またはさらに他の実施形態において組み合わせてもよく、そのさらなる詳細は、以下の説明および図面を参照することで認められ得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の態様に従う、アプタマーと、アプタマーにハイブリダイズした2つのプローブとを含む三分子複合体の概略図である。
図2A】本発明の教示の態様に従う、図1の三分子複合体を作製するために必要なハイブリダイゼーションプローブを作製するための例示的な方法のステップを示すフローチャートである。
図2B】本発明の教示の態様に従う、図1の三分子複合体を作製するための例示的な方法のステップを示すフローチャートである。
図3A】本発明の教示の態様に従う、図1に示す複合体などの三分子複合体を使用して次世代シーケンシングアッセイを実施するための例示的な方法のステップを示すフローチャートである。
図3B】本発明の教示の態様に従う、標的タンパク質を捕捉することと、次いで図1に示される複合体などの三分子複合体を形成することと、を含む次世代シーケンシングアッセイを実行するための例示的な方法のステップを示すフローチャートである。
図4】本発明の教示の態様に従う、4つのハイブリダイゼーショングループを含む例示的な次世代シーケンシングアッセイのステップおよび副生成物を示すフロー図である。
図5】本発明の教示の態様に従う、単一のハイブリダイゼーショングループと4つのPCRグループとを含む例示的な次世代シーケンシングアッセイのステップおよび副生成物を示すフロー図である。
図6】本発明の教示の態様に従う、4つのハイブリダイゼーショングループおよび4つのPCRグループを含む例示的な次世代シーケンシングアッセイのステップおよび副生成物を示すフロー図である。
図7】2つの個別のサンプルの仮想的な単純化された二分析物アッセイの結果をヒストグラム形式で示すグラフである。
図8】本発明の教示の態様に従う、両方のサンプルに、同じ濃度で添加した定量的スパイク(qSpike)対照レポーターを添加した図7のアッセイの結果を示すグラフである。
図9】本発明の教示の態様に従う、4つの異なるqSpikeレポーターを各サンプルに追加した、異なる分析物濃度での8つの別個のサンプルの、3つの分析物SOMAmerアッセイの生の結果をヒストグラム形式で示すグラフである。
図10】本発明の教示の態様に従う、図9のアッセイの正規化された結果をヒストグラム形式で示すグラフである。
図11】本発明の教示の態様に従う、4つのPCRグループと各グループに添加したqSpike対照レポーターを含む例示的な次世代シーケンシングアッセイのいくつかのステップおよび副生成物を示すフロー図である。
図12】本発明の教示の態様に従う、SOMAmerプローブ二重鎖について、実験により得られた単相熱融解データと、二状態理論モデル曲線フィッテイングを重ね合わせた相対蛍光単位(RFU)対温度のグラフである。
図13】本発明の教示の態様に従う、SOMAmerプローブ二重鎖について実験的に得られた二相性熱融解データと、二相性理論モデル曲線フィッテイングを重ね合わせた、相対蛍光単位(RFU)対温度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
タンパク質の検出および定量化のためのハイブリダイゼーション-捕捉、次世代シーケンシングアッセイシステムの様々な態様および例、ならびに関連方法を、以下に記載し、関連する図面に例証する。特に指定がない限り、本発明の教示によるタンパク質アッセイ、および/またはその様々な構成要素は、本明細書に記載し、図示し、かつ/または組み込まれている構造、構成要素、機能、および/または変形のうちの少なくとも1つを含有し得る。さらに、特に除外されない限り、本発明の教示に関連して記載され、図示され、かつ/または組み込まれているプロセスステップ、構造、構成要素、機能、および/または変形形態は、開示された実施形態間で互換可能であることを含む、他の同様のデバイスおよび方法に含まれていてもよい。以下の様々な例の説明は、本質的に単なる説明であり、開示、その適用、または使用を限定することを意図するものではない。さらに、以下に記載する実施例および実施形態によって提供される利点は、本質的に例示的なものであり、すべての例および実施形態が、同じ利点または同じ程度の利点をもたすものではない。
【0021】
「発明を実施するための形態」は、直後の以下の節を含む;(1)定義;(2)概要;(3)実施例、構成要素、および代替物、(4)利点、機能、および利益、ならびに(5)結論。「実施例、構成要素、および代替物」の節はさらに部分節に分かれており、そのそれぞれが適切に表示されている。
【0022】
定義
特に明記しない限り、本書では以下の定義が適用される。
【0023】
「含む(Comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」(およびそれらの活用形)は、含むが必ずしもこれらに限定されないことを意味するために互換的に使用され、追加の、記載されていない要素または方法のステップを除外することを意図しない制約のない用語である。
【0024】
「第1」、「第2」、および「第3」などの用語は、グループの様々なメンバーなどを区別または同定するために使用され、連続または数値の制限を示すことを意図するものではない。
【0025】
「別名(AKA)」は「としても知られる(also known as)」ことを意味し、所定の要素または複数の要素の代替用語または対応する用語を示すために使用され得る。
【0026】
「上」、「下」、「垂直」、「水平」などの方向を示す用語は、対象の特定の物体の文脈において理解するものとする。例えば、物体は、定義されたX、Y、およびZ軸の周囲に方向付けられ得る。これらの例では、X-Y平面は、水平を定義し、上は、正のZ方向として定義され、下は、負のZ方向として定義される。
【0027】
方法の文脈における「提供すること(providing)」は、提供される物体または材料が、他のステップを実行するための状態および構成であるように、受け取る、得る、購入する、製造する、生成する、加工処理する、前処理するおよび/または類似のことを含み得る。
【0028】
「NGS」は、「次世代シーケンシング」を指す。
【0029】
「HC」は、「ハイブリダイゼーション-捕捉」を意味する。
【0030】
「SOMAmer」とは、SomaLogic Operating Co.,Inc.(「SomaLogic」)(Boulder,Colorado)が開発し、製造した「Slow Off-rate Modified Aptamer」試薬を指す。
【0031】
「SOMAmer ID配列」または「SOMA ID」または「レポーター」は、NGS技術を使用して配列決定することができるSOMAmer特異的DNA鎖を含む三分子複合体の一部を指す。
【0032】
「定量的スパイク」または「レポータースパイク」または「qSpike」は、サンプル間の補完的リードカウントを正規化するために使用され、真のシグナルの変化を認識できるようにする増幅可能レポーターを指す。
【0033】
本開示では、1つ以上の刊行物、特許、および/または特許出願が参照により組み込まれ得る。しかし、こうした資料は、組み込まれた資料と本書に記載された記述および図面との間にいかなる矛盾も存在しない程度に限り組み込まれる。用語における任意の矛盾を含む、そのような任意の矛盾がある場合には、本開示が優先する。
【0034】
概要
一般に、本開示は、生物学的サンプル中のタンパク質などの標的分子を検出し、定量化する方法に関する。開示される方法は、アプタマーで標的分子を捕捉することと、アプタマーをアプタマー同定配列に置き換えることと、次に次世代シーケンシング技術を使用して、アプタマー同定配列を配列決定することと、を含み得る。あるいは、開示される方法は、アプタマーで標的分子を捕捉した後に、アプタマーを直接配列決定することを含み得る。
【0035】
実施例、構成要素、および代替物
以下の節では、SOMAmer試薬などのアプタマーを使用するタンパク質の検出および定量化に関して選択された態様、ならびに関連するシステム、および/または方法について記載しており、ここで、SOMAmerは、次世代シーケンシング技術を使用して配列決定され得るSOMAmer特異的セグメントを含有するレポーターDNA分子によるハイブリダイゼーション捕捉を介して置き換えられる。これらの節の実施例は、説明することを目的としており、本開示の範囲を限定するものとして解釈してはならない。各節は、1つ以上の別個の実施形態もしくは実施例、および/または文脈情報(contextual information)もしくは関連情報、機能、および/もしくは構造を含み得る。
【0036】
A.例示的アプタマー
本節では、SOMAmer(Slow Off-rate Modified Aptamers)について記載し、これは、本明細書に記載されるシステムおよび方法の実施例と併せて好適に使用されるアプタマーの例示的な実施例である。
【0037】
「指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)」として知られる方法は、時にSELEXプロセスと呼ばれ、これを介して、核酸が、タンパク質とよく似た三次元的構造多様性を有することが明らかになった。SELEXプロセスは、特定の望ましい活性に関して核酸分子をin vitroで進化させる方法である。ここでは、標的分子に対して高度に特異的に結合する核酸分子を生成するためのSELEXについて記載する。SELEXプロセスは、それぞれが一意的配列を有し、所望の標的化合物または分子に特異的に結合する特性を有する、核酸リガンドまたはアプタマーと称される任意のクラスの生成物を提供する。SELEXで同定される各核酸捕捉試薬は、所定の標的化合物または分子の特定のリガンドである。SELEXプロセスは、核酸が、様々な二次元構造および三次元構造を形成するのに十分な能力を有し、そのモノマー内で利用可能である十分な化学的汎用性を有しており、これによりモノマーであってもポリマーであっても、実質的にあらゆる化学化合物と、リガンドとして作用する(特定の結合対を形成する)という独自の見識に基づくものである。任意のサイズまたは組成の分子が、標的として作用することができる。
【0038】
高親和性結合の用途に適用されるSELEX法は、候補オリゴヌクレオチドの混合物から選択すること、ならびに同じ一般的な選択スキームを使用して、結合、分配、および増幅を段階的に反復させて、結合親和性および選択性に関する実質的に任意の望ましい基準を達成することを伴う。SELEX法は、好ましくは、ランダム化配列の任意のセグメントを含む核酸の混合物から開始し、結合に有利な条件下で混合物を標的と接触させるステップと、標的分子に特異的に結合した核酸から非結合核酸を分配するステップと、核酸-標的複合体を解離させるステップと、核酸-標的複合体から解離した核酸を増幅して、核酸のリガンドが豊富な混合物を生成するステップと、次に結合ステップ、分配ステップ、解離ステップおよび増幅ステップを望ましいサイクル数反復して、標的分子に対して高度に特異的な高親和性核酸リガンドを生成するステップと、を含む。このようにして、実質的に任意の標的タンパク質に結合するのに好適であるアプタマーを発見することができる。
【0039】
より具体的には、SOMAmerは、SELEXプロセスの改良によって発見されたタンパク質結合アプタマーであり、概して、30~240分の解離速度(t1/2)を有し、これは、タンパク質-アプタマー複合体の半分が解離するのに要する平均時間である。さらに、SOMAmerは、異なる組込み官能性を提供する修飾ヌクレオシドを含有する。これらの官能性は、固定化用のタグ、検出用の標識、分離を促進するかまたは制御する手段、タンパク質とのよりよい親和性を提供するためのアミノ酸様側鎖、および/または類似のものを含み得る。タンパク質との親和性を改善するための修飾は、通常は、ピリミジン塩基の5位に結合する化学基である。5位をタンパク質様部分(例えば、ベンジル、2-ナフチル)で官能基化することにより、SOMAmerの化学的多様性が拡大し、これにより、さらにより広範囲の標的分子との高親和性結合が可能になる。さらに、一部のポリメラーゼは、これらの位置に修飾を有するDNAをなおも転写することができるため、SELEXプロセスに必要な増幅を可能にする。
【0040】
SOMAmerを含む結合アプタマーは、一般に、SELEXプロセスによって発見されるが、それらを選択するための他の手段が存在し得ることに留意すべきである。例えば、分子相互作用のコンピュータモデリングが改善されるにつれて、アプタマーにとって理想的な核酸配列およびSOMAmerにとって関連する化学修飾を直接計算して、所定の標的分子に特異的である捕捉試薬を生成することが可能になり得る。SELEX以外の、アプタマーおよびSOMAmerをスクリーニングするための他の化学技術も可能である。
【0041】
生物学的サンプルおよび他のサンプル中の生理的に重要な分子の検出および定量化を目的としたアッセイは、科学研究およびヘルスケア分野において重要なツールである。SOMAmerは、それぞれが、非常に特異的に、かつ非常に高い親和性でサンプル中の標的分子に結合することができる。適切な洗浄ステップおよび分配ステップ後に、最初に非結合タンパク質を除去し、次に非結合SOMAmerを除去した後、結果として得られたSOMAmer-タンパク質複合体からSOMAmerを溶出する。次に、SOMAmer溶出液をSOMAmerの相補体を含有するマイクロアレイと接触させて、サンプル中の標的分子の存在、非存在、量、および/または濃度の決定を可能にする。
【0042】
B.ハイブリダイゼーション捕捉アッセイの例示的アプローチ
この節は、標的ハイブリダイゼーション-捕捉(HC)アッセイについて記載し、このアッセイでは、アッセイ溶出液からのSOMAmerシグナルを、配列決定用のSOMAmer特異的同定配列または「SOMA ID」を含有する「レポーター」DNA分子に置き換える。
【0043】
この節に記載するHCアッセイの前に、SOMAmer結合ステップがすでに実施されており、サンプル中に対応する標的タンパク質が存在することを示すSOMAmer試薬を含有する溶出液が得られる。例えば、限定されないが、SOMAmer含有溶出液を得るために、以下のステップが実施されていてもよい。
(1)5’蛍光色素、光分解可能リンカー、およびビオチンで標識されたタンパク質特異的SOMAmer試薬を、ストレプトアビジン(SA)コーティングされているビーズ上に固定し、タンパク質の複雑な混合物を含有する1つ以上のサンプルと共にインキュベートする;
(2)ビーズ上にSOMAmer-標的タンパク質複合体が形成される;
(3)ビーズを洗浄して、非結合タンパク質を除去し、結合タンパク質にビオチンのタグを付ける。
(4)SOMAmer-タンパク質複合体は、紫外光によるリンカーの光分解によってビーズから放出される;
(5)ポリアニオン競合物質を含有する緩衝液中でインキュベートすることにより、解離したタンパク質の再結合を防止し、それによって、標的タンパク質の対応するSOMAmerへの結合を表す速いオフレートの相互作用と比較して、遅いオフレートで結合する標的タンパク質に特異的な複合体を速度論的に濃縮させる;
(6)SOMAmer-タンパク質複合体は、ビオチンタグ付きタンパク質を介して、第2のセットのストレプトアビジンコーティングビーズに再度捕捉され、その後、非特異的に結合したSOMAmer試薬のさらなる除去を容易にする追加の洗浄ステップを行う;および
(7)SOMAmer試薬は、変性緩衝液中でビーズから放出され、定量分析にとって好適であるSOMAmer含有溶出液を形成する。
【0044】
ここで、この節の主な焦点であるハイブリダイゼーション-捕捉アプローチに目を向けると、図1は、標的タンパク質を同定するために次世代シーケンシングアッセイで使用することができる、通常、100で示される三分子複合体を概略的に示す。複合体100は、アッセイ後のSOMAmer、すなわち、生物学的サンプルへの曝露および(例えば)上記の他のステップの後に、SOMAmer含有溶出液中に残留しているSOMAmerのうちの1つであるSOMAmer102を含む。換言すれば、アッセイ後の溶出液中にSOMAmer102が存在するということは、サンプル中に対応する標的タンパク質(または他の標的分子)が存在することを示す。
【0045】
複合体100は、第1のプローブ104および第2のプローブ106をさらに含む。第1のプローブ104は、図1のSOMAmer102の左側部分と相補的であるハイブリダイゼーション領域Hを含む。第2のプローブ106は、図1のSOMAmer102の右側部分と相補的であるハイブリダイゼーション領域Hを含み、共通のプライマー領域PおよびP、ならびに以下でより詳細に説明するようにSOMAmer102に対応する一意的SOMAmer同定配列Iまたは「SOMA ID」も含む。HとHの位置を逆にしてもよく、共通プライマー領域PおよびP、ならびにH中の一意的SOMAmer同定配列Iを適切に反転させて、Hは、SOMAmer102の右側部分にハイブリダイズし、Hは、SOMAmer102の左側部分にハイブリダイズする。
【0046】
ハイブリダイゼーション領域HおよびHは、対応するSOMAmerのそれぞれの相補部分に特異的に結合するように構成され、所定のセットのアッセイ条件下で、均一なハイブリダイゼーションを達成するために類似の融解温度(Tm)を有するように設計され得る。複合体100のハイブリダイゼーション領域は、例えば以下のステップに従って設計および作製され得る。
【0047】
最初に、プローブの標的領域をSOMAmer上で決定する。切断型SOMAmerの場合、ランダム領域の各末端からSELEXで増幅するために使用される固定領域の5つの塩基を含む完全なSOMAmer配列を標的領域として使用してもよい。全長SOMAmerの場合、SOMAmerを、例えば50merなど、任意の望ましい長さにin silico(すなわち、計算上)で切断してもよく、その後、ハイブリダイゼーション補完を決定する。
【0048】
次に、標的領域を2つの部分に分割するための境界を決定する。いくつかの実施例では、2つのハイブリダイゼーション領域で同様の融解温度を達成するために、SOMAmerとHおよびHの両方との間の25mer(例えば)二重鎖の融解温度をコンピューターにより決定し、次に、融解温度がH-SOMAmer二重鎖とH-SOMAmer二重鎖との間で最大限にバランスが取れるまで、2つの領域間の境界変更を段階的に行う。他の例では、異なる融解温度、例えば、Hのプローブに対して第1の融解温度(45℃など)、Hのプローブに対して第2の融解温度(35℃など)を意図的に選択してもよい。
【0049】
ハイブリダイゼーション領域には、長さの制約も課され得る。例えば、HおよびHの両方に、最小長18mer設定してもよい。同様に、例えば、Hに最大長30merを設定してもよく、Hと第2のプローブの残りのレポーター部分との合計が、その後の合成のために所望の最大長が、例えば、100塩基長未満に留まることを確実にすることができる。これらの制約の下では、ハイブリダイゼーション領域HおよびHは、コンピューターによって生成され得る。
【0050】
共通プライマー領域PおよびP、ならびに第2のプローブ106のSOMAmerID配列Iを生成する際には、様々な要因が考慮され得る。例えば、カウントアプリケーション用の配列決定アンプリコン設計では、短くて安価なリードに対する要望と、カウントに使用されるSOMAmer IDなどの同定子配列および多重化に使用されるバーコード配列として役立つために十分な長さおよび情報コンテンツを有する配列の必要性との間で適切なバランスを見い出す必要がある。これらの理由により、コンテンツをスケーリングする場合、最終的に配列決定鋳型の最大の部分となるレポーター領域の不動産の長さが制限され得る。例えば、プライマー領域PおよびPの長さを24merに制限してもよく、SOMAmer ID配列Iの長さを15merに制限してもよく、編集距離は少なくとも5の長さであり、いずれのホモポリマーも長さが、2merを超えない。プライマー領域およびSOMAmer ID配列の両方に対して、他の長さの制約および選択が可能である。
【0051】
図2Aは、図1の三分子複合体を形成するために用いられるハイブリダイゼーションプローブH(104)およびH(106)を作製するための例示的な方法200のステップを例証するフローチャートである。ステップ202では、アッセイで使用されるSOMAmer配列のセットが提供される。
【0052】
ステップ204では、ハイブリダイゼーションプローブ領域HおよびHが作製される。これらのハイブリダイゼーションプローブ領域は、例えば、上述のように、様々な長さおよび/または他の制約の下でコンピューターにより決定され得る。また、前述のとおり、いくつかの例では、各領域の融解温度のバランスなどの要因に基づいて、ハイブリダイゼーション領域を、単一のSOMAmer相補的構造から分配してもよい。
【0053】
ステップ206では、各SOMAmerに独自に対応するSOMAmer ID(I)領域が作製される。SOMAmer ID領域は、様々な方法で設計され得る。例えば、I領域は、(例えば、最大編集距離を有するように)「肉眼」で設計され得るか、またはハイブリダイゼーション領域HおよびHのコンピューターによる生成と組み合わせて、コンピューターにより生成され得る。SOMAmer ID領域のライブラリが生成された後、SOMAmerIDは、ランダムに、または任意の他の好適な方法でSOMAmerに割り当てられ、各SOMAmerに対応する一意的レポーターを作製する。
【0054】
ステップ208では、ユニバーサルプライマー領域PおよびPが作製される。ユニバーサルプライマーは、安定性のため、および下流バイアスのリスクを軽減するために設計され得る。例えば、いくつかの例では、プライマーは、推定融解温度が約70℃で、長さが24merまたは25merであってもよい。いくつかの例では、プライマーは、安定性のために3’末端で、グアニン(G)で終了してもよい。いくつかの例では、二量体形成の潜在的なリスクを軽減するために、プライマーをオリゴヌクレオチド(オリゴ)アナライザーで評価してもよい。いくつかの例では、既知のシーケンシング技術で使用される機能性オリゴとの非特異的相互作用を回避するために、プライマーは、さらに調整してもよい。
【0055】
ステップ210では、第1および第2のSOMAmer特異的プローブ(「捕捉プローブ」と呼ばれることもある)が作製される。第1のプローブはそれぞれ、アッセイビーズに結合するのに好適である1つ以上のエレメント、例えば、ストレプトアビジンコーティングビーズに結合するためのビオチンと共にハイブリダイゼーション領域Hを含む。第1のプローブには、光分解可能リンカーなどの追加のエレメントも含み得る。第2のプローブはそれぞれ、ハイブリダイゼーション領域H、ユニバーサルプライマー領域PおよびP、ならびにSOMAmer ID配列Iを含む。第2のプローブを作製する一部として、SOMAmer ID領域をユニバーサルプライマーに追加して、増幅可能レポーターを作製してもよい。
【0056】
図2Bは、図1の三分子複合体などの三分子複合体を作製するための例示的な方法250のステップを例証するフローチャートである。ステップ252では、SOMAmer含有溶出液が提供され、溶出液中のSOMAmerは、前述のとおり、SOMAmerライブラリに曝露された1つ以上の生物学的サンプル中に、1つ以上の標的タンパク質または他の標的分子が存在することを示す。
【0057】
ステップ254では、方法200によって作製されたSOMAmer特異的捕捉プローブのセットまたはライブラリを、アッセイ後のSOMAmer含有溶出液と組み合わせる。一例では、25μlのSOMAmer含有溶出液を、25μlのプローブ含有溶液と組み合わせて、50μlのハイブリダイゼーション容量をもたらす。ハイブリダイゼーションを促進するために、捕捉プローブは、溶出液中のSOMAmerの濃度と同等であるかまたはそれより高い濃度を有し得る。例えば、プローブの好適な濃度は、0.5nM(nM=1リットルあたりのナノモル)などの0.05nM~5.0nMの範囲に入り得る。
【0058】
いくつかの例では、方法250の任意選択のステップ253において、SOMAmer含有溶出液をハイブリダイゼーション前に分割して選択的に希釈し、その後、配列決定前に再度組み合わせてもよい。より具体的には、アッセイ後の溶出液を、各グループ内のSOMAmerの予想される相対的存在量に基づいて、2つ以上の希釈グループ(例えば、4つの希釈グループ)に分割してもよい。最も濃度が低い(最も希釈された)サンプルは、溶出液中に最も存在量の多いSOMAmerを含有し得る。逆に、最も濃度が高い(最も希釈されていない)サンプルでは、溶出液中に最も少ない存在量のSOMAmerを含有し得る。このようにして、SOMAmerカウントを「平準化」して、より少ない存在量のSOMAmerの検出における正確性および精度を改善させてもよい。各希釈グループを、対応するプローブのサブセットに曝露することによって、個別にハイブリダイズさせてもよい。希釈グループの使用に関するさらなる詳細を、本開示のその後の節に示す。
【0059】
さらに、溶出液中の特定の高存在量のSOMAmerに対して、捕捉タグ付きおよび捕捉タグなしH1プローブを固定比率で導入することによって、平準化を達成してもよい。捕捉タグのないHプローブと三分子複合体を形成するSOMAmerは、方法300で以下に詳述されているように、洗浄ステップ中に除去される。
【0060】
ステップ256では、第1のプローブと第2のプローブがSOMAmerにハイブリダイズし、それぞれが、(i)SOMAmer、(ii)ハイブリダイゼーション領域Hを介してSOMAmerに結合した第1のプローブ、および(iii)ハイブリダイゼーション領域Hを介してSOMAmerに結合した第2のプローブを含む三分子複合体を形成する。第2のプローブはそれぞれが、SOMAmer ID配列Iを含み、これを配列決定して、溶出液中に、対応するSOMAmerが存在することを示すことができ、したがって、元の生物学的サンプル中において、そのSOMAmerによって捕捉された対応するタンパク質の存在を示すことができる。捕捉プローブとSOMAmerとのハイブリダイゼーションは、適切な熱サイクリングなど、任意の好適な技術を使用して実行することができ、ハイブリダイゼーション速度を増強するために添加剤を含んでもよい。
【0061】
図3Aは、図1に描かれている複合体などの、および図2Bの方法などの方法によって作製される三分子複合体を用いて次世代シーケンシングアッセイを行うための例示的な方法300のステップを例証するフローチャートである。ステップ302では、アッセイ後のSOMAmerの所望のライブラリに対応するハイブリダイズされた三分子複合体(例えば、それぞれが、複合体100の構造などの構造を有し、方法250などの方法に従って作製される)が、シーケンシングアッセイのために提供される。
【0062】
ステップ304では、三分子複合体が磁気ビーズ上に捕捉される。例えば、複合体は、第1のプローブのハイブリダイゼーション領域Hに結合したビオチンと、ビーズ上のストレプトアビジンとの結合を介して捕捉され得る。捕捉は、任意の好適な技術を使用して達成され得る。例えば、一例では、ハイブリダイゼーション容量を、20mg/mlの濃度のビーズを含有する30μlの溶液と組み合わせて、次いでサーモミキサーで、温度45℃、1200rpmで30分間混合してもよい。
【0063】
ステップ306では、ビーズ捕捉プローブを含有する溶液を1回以上洗浄して、非結合Hプローブレポーター、すなわち対応するSOMAmerにハイブリダイズしていないプローブを除去する。例えば、洗浄することは、1mM EDTAおよび0.05%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む20mMリン酸緩衝液などの好適な緩衝液で行ってもよい。洗浄段階は、静的に実施してもよく、サーモミキサーを使用して動的に実施してもよく、または両方のタイプを順番に組み合わせて実施してもよい。一例では、2つの静的5分間洗浄フェーズと2つの1200rpmでの10分間の動的洗浄フェーズが存在してもよい。いずれの場合も、洗浄後、得られた溶液は、ビーズに結合した三分子複合体を含有しなければならず、非結合Hプローブ/レポーターの残存量は、せいぜい少量である。
【0064】
SOMAmer溶出液の平準化、またはダイナミックレンジの圧縮の特定の実施形態では、H上のビーズ捕捉タグを有しない三分子複合体は、ステップ306において、非結合Hプローブレポーターと同様に除去される。これらの複合体は、最終的なNGSシーケンシングにおいて、これらのSOMAmerのコピーを減少させ、それによってこれらの存在量の多いSOMAmer上でのカウントを低下させる。
【0065】
ステップ308では、結合した三分子複合体は、例えば溶媒への曝露、熱、または任意の他の好適な溶出方法によって、結合しているビーズから溶出される。このステップの一部として複合体の構成要素が解離して、分離されたSOMAmerおよびプローブをもたらしてもよい。一例では、結合した複合体を含む溶出液に濃度20mMのNaOH 85μlを添加し、次いでサーモミキサーで、1200rpmで3分間混合し、複合体を分配するために5分間混合することによって複合体を溶出させる。溶出された複合体を含む溶液を、その後20μlのHCLと組み合わせてもよい。
【0066】
いくつかの例では、ステップ308から得られる溶出溶液(すなわち、溶出液)を、方法300の任意選択のステップ309において、4つの希釈グループまたはプライマー増幅グループなどの2つ以上のグループに分割および/または希釈してもよい。方法250の文脈で前述したように、異なる予想される存在量を有するSOMAmerのサブセットに対応する複数の希釈グループまたはプライマー増幅グループ(いくつかの例では希釈されない場合もある)を使用することは、SOMAmerの全体的なセットの相対的な存在量を平準化するか、または広範囲の分布を圧縮して、比較的希少な標的分子の検出における精度および正確性を高めるために役立つ。このようなグループに分割することは、ハイブリダイゼーションの前(方法20のステップ253のように)、ハイブリダイゼーションの後(ここに記載されているステップ309のように)、またはその両方で行うことができる。可能な希釈および組換え技術のさらなる詳細については、本開示の後の節に記載する。
【0067】
ステップ310では、ステップ308および任意選択のステップ309から得られた溶液(複数可)を、次世代シーケンシング(NGS)のために調製する。これは、関連するSOMAmer ID配列Iと共に共通のプライマー(図1のPおよびP)を含有するレポーター領域のPCR増幅を含み得る。NGSの調製はまた、複数のサンプルからの溶出液を配列決定前に組み合わせる場合、逆多重化のためのアダプター配列および/またはバーコード配列を結合させることも含み得る。アダプター配列およびバーコード配列の作製およびレポーター領域への結合は、次世代シーケンシング用のサンプルを調製する際に一般的になっているように、当技術分野で公知の任意の好適な方法で達成され得る。いくつかの例では、バーコード配列を、第1の調製ステップの一部として追加してもよく、NGSアダプターうぃ、第2の調製ステップの一部として追加してもよい。
【0068】
任意選択のステップ311では、ステップ310後に分離されたままである任意のグループを、配列決定の準備のために再度組み合わせてもよい。
【0069】
ステップ312では、次世代シーケンシング技術を使用して、調製されたサンプル(複数可)を配列決定する。いくつかの例では、調製されたサンプルを、Illumina,Inc.(SanDiego,California)によって開発された次世代シーケンシングプラットフォームを使用して、配列決定してもよい。しかしながら、本発明で開示されている方法は、他のNGSシーケンシングプラットフォームで使用するのにも好適である。
【0070】
NGSの後、配列決定によって得られたデータを、任意のステップ314で分析または他の方法で処理して、元の生物学的サンプル中の標的タンパク質などの分析物の濃度を決定してもよい。一般的に、この分析は、各元のサンプルに対応するバーコードを使用して(複数のサンプルが多重化されている場合)配列決定データを逆多重化すること、レポーター配列をカウントすること、およびデータをスケーリングおよび/または正規化して、正確な結果を抽出することを伴う。分析目的の場合、配列決定データを、SomaLogicによって開発されたADATフォーマットなどの標準形式でデータファイルに書き込んでもよい。可能な定量分析方法については、以下で詳細に論じる。
【0071】
図3Bは、アプタマーで標的タンパク質を捕捉すること、アプタマーから三分子複合体を形成すること、捕捉された標的タンパク質を同定するための基礎として、三分子複合体を使用することと、を含む、次世代シーケンシングアッセイを実施するための例示的な方法350のステップを例証するフローチャートである。方法350のステップはいずれも、前述の方法(すなわち、方法200および300)の対応するステップと類似であり得るため、同じ詳細を再度記載しない場合があることに留意されたい。
【0072】
方法350のステップ352では、標的タンパク質は、それぞれが特異的タンパク質に結合するように構成された複数のアプタマー、例えば、SOMAmerに生物学的サンプルを曝露することによって捕捉される。サンプルを多数のこうしたSOMAmerのライブラリに曝露することによって、1回のアッセイで多数の標的タンパク質種が検出され得る。
【0073】
ステップ354では、標的タンパク質のうちの1つを捕捉したアプタマーが、アプタマー含有溶出液中で単離される。アプタマー含有溶出液を形成することは、例えば、SomaLogicによって実施されるいわゆるSomaScanアッセイプロセスにおいて達成されてもよく、このプロセスは、アプタマーをアッセイビーズに結合することと、アプタマーでタンパク質を捕捉することと、非結合タンパク質を洗い流すことと、結合したタンパク質にビオチンでタグ付けすることと、ビーズからアプタマーを放出することと、タグ付けされたタンパク質を新しいビーズに捕捉することと、非結合アプタマーを除去することと、捕捉されたタンパク質からアプタマーを変性させることと、その後、アプタマーを溶出液に分離することと、を含む。
【0074】
任意選択のステップ356では、アプタマー含有溶出液を、図4~6および図11に関して、以下でより詳細に記載するように、希釈グループであってもよい複数のグループに分割してもよい。
【0075】
ステップ358では、溶出液(または各溶出液希釈グループ)中のアプタマーを、それぞれが特定のアプタマーにハイブリダイズするように構成された複数の捕捉プローブに曝露することによって、複数の三分子複合体が形成される。例えば、各複合体は、図1に示す複合体100の構造に類似した構造を有し得る。したがって、各三分子複合体は、(i)溶出液からのアプタマーのうちの特定の1つと、(ii)アプタマーの第1の部分にハイブリダイズした部分を含む第1の捕捉プローブと、(iii)アプタマーの第2の部分にハイブリダイズした部分を含み、1つ以上のDNAプライマー領域および特定のアプタマーに対応するアプタマーID配列をさらに含む第2の捕捉プローブと、を含む。個別の希釈グループが形成された場合、各希釈グループは、アプタマーの異なるサブセットに対応する捕捉プローブの異なるセットに曝露される。任意選択により、Hプローブの一部は、SOMAmerカウントをさらに平準化するためのビーズ捕捉タグを欠如してもよい。
【0076】
ステップ360では、ステップ356で形成されたグループ(存在する場合)を、再度組み合わせてもよい。
【0077】
ステップ362では、三分子複合体を、アプタマーに結合していない捕捉プローブから分離する。例えば、ハイブリダイズした複合体を磁気ビーズに捕捉し、その後洗浄して、非結合プローブを除去してもよい。
【0078】
ステップ364では、三分子複合体中の捕捉プローブは、対応するアプタマーから解離される。これは、ビーズから複合体を溶出することを含み得るが、いずれにしても、ステップ362の結果は、捕捉プローブがもはやアプタマーに結合しないことである。
【0079】
ステップ366では、非結合捕捉プローブを含む溶出液は、任意選択により分割および/または希釈して(図6に関して以下で論じるように、おそらく2回目)、複数のPCRグループを痙性してもよい。
【0080】
ステップ368では、溶出液の解離した捕捉プローブ中のアプタマーID配列が、例えばDNAプライマー領域(複数可)および関連するID配列のPCR増幅を介して増幅される。この段階では、例えばアダプター配列の結合および/またはバーコード配列の逆多重化などのNGSのためのさらなる調製を実施してもよい。
【0081】
ステップ370では、分離されたPCRグループ(存在する場合)を、再度組み合わせてもよい。
【0082】
ステップ372では、次世代シーケンシング技術を使用して、アプタマーID配列を配列決定する。いくつかの例では、Illumina,Inc.(SanDiego,California)によって開発された次世代シーケンシングプラットフォームを使用してこれが達成され得る。
【0083】
ステップ374では、アプタマーID配列の配列決定によって得られたデータを使用して、元の生物学的サンプル中の標的タンパク質の存在量を決定してもよい。
【0084】
C.次世代シーケンシングのための例示的な希釈グループまたはダイナミックレンジ圧縮
この節では、本発明の教示の態様に従って、次世代シーケンシングシステムにおいてより高いアッセイ効率、再現性、性能、および/または産生実現可能性を得るために、アッセイ溶出液を希釈する考えられる方法について記載する;図4~6を参照されたい。
【0085】
まず、溶出液を希釈グループに分割することなく、すなわち決して分割されていない、希釈されていない、または再度組み合わせられていない単一の溶出溶液中でSOMAmer含有溶出液についてNGSを実施することが可能であることを理解する必要がある。このようなアッセイは、本発明の教示の範囲内であり、必要とされる溶出液が少なく、96個のサンプルごとに、1つのハイブリダイゼーションプレートのみを必要とするという利点を有する。しかし、このようなアッセイでは、例えば、元の溶出液中におけるSOMAmerの存在量が極端な範囲の可能性がある、おそらく数桁に及ぶことから、感度および精度の課題を有する。例えば、サンプル中の標的タンパク質は、fM~μMの範囲(すなわち、約9桁の範囲)の濃度を有する可能性があり、5桁以上に及ぶ溶出液のSOMAmerの濃度をもたらす。このような溶出液に対してアッセイを実施することにより、より存在量の多いSOMAmerの過剰カウント、およびより存在量の少ないSOMAmerの対応する過少カウントをもたらし得る。したがって、配列決定およびカウントを行う前に、SOMAmerの存在量の範囲を平準化するかまたは圧縮することが望ましくなり得る。
【0086】
本開示のシステムおよび方法は、カウント前にSOMAmerを部分集団に細分化することによって、この問題に対処し、これは希釈と組み合わせることで、配列決定およびカウントを行うために部分集団を再び組み合わせたときに、部分集団でのカウントの平準化、またはダイナミックレンジの圧縮をもたらす。いくつかの例では、SOMAmerプローブのセットを、SOMAmer溶出液の存在量に基づいて、部分集団に細分化する(第1のグループには、希少なSOMAmer、第2のグループには、やや希少なSOMAmer、第3のグループには、存在量の多いSOMAmerなど)。各部分集団のダイナミックレンジは、元の(分割されていない)溶出液のダイナミックレンジよりも小さく、いくつかの例ではかなり小さい。以下に記載するとおり、希釈グループは、SOMAmerとプローブのハイブリダイゼーションの前および/または後、すなわち、NGSに好適である三分子複合体の形成の前および/または後に形成され得る。
【0087】
希釈による平準化に加えて、ビーズ捕捉タグを含まないHプローブを、タグを含有するプローブと共に導入することによって、高存在量のSOMAmerを「平準化」してもよい。ビーズ捕捉タグ付きHプローブとタグなしHプローブとの比率は、方法300のステップ304および方法350のステップ358で捕捉された三分子複合体を、その比率に対応する量の分、減少させる。例えば、タグなしプローブ対タグ付きプローブの比率が10:1の場合、三分子複合体の10パーセントのみが捕捉され、タグなしプローブのないアッセイと比較して、NGS出力のカウントを任意の桁の分、減少させる。タグなしプローブとタグ付きプローブの比率は、各SOMAmerの予想カウントに応じて、SOMAmerごとに異なり得る。
【0088】
1.4つのハイブリダイゼーショングループ
図4は、4つのハイブリダイゼーショングループを伴う、一般に400で示される例示的なNGSアッセイのステップおよび副生成物を示す。ステップ402では、SOMAmer含有溶出液404が提供される。溶出液404は、既に記載されているように、生物学的サンプルへの事前の曝露と標的分子からの分離によって生じたSOMAmerを含有する。
【0089】
ステップ406では、溶出液404を、4つの等しい部分またはアリコート408、410、412、および414に分割する。図4のアッセイでは、アリコート408は、1:16の比率、すなわち1部の溶出液に対して16部の緩衝液で希釈され;アリコート410は、1:4の比率で希釈され;アリコート412および414は、それぞれ1:2の比率で希釈される。いくつかの例では、アリコートを、希釈しなくてもよい。
【0090】
ステップ416では、4つのアリコートがそれぞれ「グループ1」、「グループ2」、「グループ3」、および「グループ4」と表示されるハイブリダイゼーション捕捉プローブ418、420、422、および424のグループと組み合わせる。この例では、捕捉プローブグループ418を、最も希釈された溶出液と組み合わせ、したがって、溶出液中の最も一般的なSOMAmerと結合するように構成された捕捉プローブを含有する。同様に、捕捉プローブグループ420は、その次に一般的なSOMAmerと結合するように構成されたプローブを含有し、捕捉プローブグループ422および424は、それぞれ、相対的に少ない存在量のSOMAmerの異なるサブセットと組み合わせるように構成されたプローブを含有する。したがって、ステップ416の結果は、それぞれが、ハイブリダイゼーション時に、SOMAmerと、SOMAmerにハイブリダイズされた対応するプローブとを含む三分子化合物のセットをもたらすように構成された4つの個別の溶液である。各化合物は、図1の化合物100と一般的に類似であり得る。
【0091】
ハイブリダイゼーション捕捉プローブの4つのグループのいずれも、カウントをさらに平準化するために、各グループ中の一部のSOMAmerのサブセットに対して、固定比率の、ビーズ捕捉タグがあるHプローブとタグのないHプローブを含有し得る。
【0092】
ステップ426では、ステップ416で生成された4つの溶液をそれぞれハイブリダイズし、ビーズに捕捉し、洗浄し、および溶出される。これは、例えば、図3Aに示す方法300のステップ304、306、および308に関して以前に記載したように達成され得る。
【0093】
ステップ428では、ステップ426から得られた個別の溶出溶液を、単一の溶出液430に再度組み合わせる。いくつかの例では、個別の溶液を異なる容量で再度組み合わせ、比較的存在量の多い捕捉グループ(すなわち、元の生物学的サンプル中の存在量の多いSOMAmerおよび存在量の多い標的分子種に対応)のさらなる希釈をもたらし得る。その結果、異なる三分子化合物の濃度の全体的な変動の少ない正規化された組み合わせた溶液が得られ、比較的少ないシーケンシング「リード」で分析され得る。例えば、希釈と正規化の組み合わせは、サンプルあたりの必要なリードの数を、約2億から500万未満まで減少させ、これにより、配列決定の実行あたりの多数のサンプルの多重化を可能にし、結果の変動係数(CV)によって測定される許容可能な精度を達成しながら、サンプルあたりのコストを削減する。
【0094】
方法300の前述のステップ310、312、および314を組み合わせたものとして考えられ得るステップ432では、ステップ428から得た溶液430を、次世代シーケンシング(NGS)のために調製し、配列決定し、結果をデータファイルに書き込み、所望により分析する。調製は、関連するSOMAmer ID配列Iと共に共通プライマー(図1のPおよびP)を含有するレポーター領域のPCR増幅を含み得る。前述のとおり、調製は、三分子化合物へと逆多重化するためのアダプター配列および/またはバーコード配列を結合させることも含み得る。次に、調製された溶液を、Illumina,Inc.(San Diego,California)によって開発された次世代シーケンシングプラットフォームまたは他のNGSシーケンシングプラットフォームなどのNGS技術を使用して、配列決定する。NGSの後、配列決定によって得られたデータを、分析するまたは他の方法で処理して、元の生物学的サンプル中の標的タンパク質などの分析物の濃度を決定してもよい。これは、元の各サンプルに対応するバーコードを使用して、配列決定データを逆多重化することと(複数のサンプルを組み合わせた場合)、レポーター配列をカウントすることと、正確な結果を抽出するためにデータをスケーリングおよび/または正規化することを含み得る。配列決定データを、SomaLogicによって開発されたADATフォーマットなどの標準形式でデータファイルに書き込んでもよい。
【0095】
2.4つのPCRグループを有する単一のハイブリダイゼーショングループ
図5は、1つのハイブリダイゼーショングループと4つのPCRグループを伴う、一般的に500で示される例示的なNGSアッセイのステップおよび副生成物を示す。ステップ502では、SOMAmer含有溶出液504が提供される。溶出液504は、前述のように、生物学的サンプルへの事前の曝露と標的分子からの分離によって生じたSOMAmerを含有する。
【0096】
ステップ506では、溶出液504を、ハイブリダイゼーション捕捉プローブ508の完全なセット、すなわち、溶出液中のすべてのSOMAmerと組み合わせるように構成されたプローブのセットと組み合わせる。プローブのセットはまた、上記のように、タグ付きH1プローブとタグなしH1プローブの固定比率も含有してもよい。
【0097】
ステップ510では、ステップ506で得られた溶液をハイブリダイズさせ、ビーズに捕捉し、洗浄し、溶出する。これは、図3Aに示す方法300のステップ304、306、および308に関して記載したように達成され得る。しかし、この例では、1セットのみではなく、4セットのユニバーサルプライマーを使用してもよく、プライマーのそれぞれのセットは、特定の予想される濃度範囲に入るSOMAmerのセットに対応する、異なるSOMAmer IDのセットに会合する。換言すれば、ステップ510は、SOMAmerの異なる存在量グループに対応し、したがって、元の生物学的サンプルからのSOMAmer溶出液中の標的分子の異なる存在量グループに対応する4つの別個の三分子化合物のグループをもたらし、そのそれぞれが、異なるPCRプライマーを含み、したがって、個別に増幅させることができる。
【0098】
ステップ512では、ステップ510から得られた溶出液を、4つの等しい部分またはアリコート514、516、518、および520に分割する。次のステップで増幅されるSOMAmer ID配列の予想濃度を正規化するために、各アリコートを、この段階で任意選択により、任意の所望の程度まで希釈してもよい。しかしながら、図5にはステップ512における希釈はいずれも示されていない。
【0099】
ステップ522では、ステップ512から得られた個別の溶出液を、レポーター領域のPCR増幅を含む次世代シーケンシング(NGS)のために調製する。しかし、この場合、プライマーおよび会合するレポーター領域の異なるセットが、それぞれの個別の溶出液中で増幅され、結果として、各溶出液中で、SOMAmer ID配列のまさに既知のサブセットの増幅が得られる。
【0100】
ステップ524では、各アリコート中の増幅されたSOMAmer ID配列を含む個別の溶液を、単一の溶出溶液526に組み合わせる。いくつかの例では、個別の溶液を異なる容量で再度組み合わせて、比較的存在量の多いSOMAmer ID配列の所望の程度の希釈、およびSOMAmer ID濃度の全体的な変動が少ない正規化された組み合わせ溶液を得ることができ、これらは、比較的少ないリードで分析され得る。
【0101】
ステップ528では、溶液526を、次世代シーケンシング(NGS)のためにさらに調製し、配列決定し、結果をデータファイルに書き込み、所望に応じて分析する。増幅された溶出液の調製は、三分子化合物のレポーター領域に逆多重化するためのアダプター配列および/またはバーコード配列を結合させることを含み得る。次に、調製された溶液を、NGS技術を使用して配列決定し、その後、配列決定から得られたデータを分析または他の方法で処理して、前述のように、元の生物学的サンプル中の標的分析物の濃度を決定してもよい。
【0102】
3.4つのハイブリダイゼーショングループおよび4つのPCRグループ
図6は、一般的に600で示される、4つのハイブリダイゼーショングループおよび4つのPCRグループを伴う、例示的なNGSアッセイのステップおよび副生成物を示しており、したがって、図4~5のアッセイ400および500の態様を組み合わせる。ステップ602では、生物学的サンプルへの事前の曝露および標的分子からの分離から生じたSOMAmerを含有するSOMAmer含有溶出液604を提供する。
【0103】
ステップ606では、溶出液604を、4つの等しい部分またはアリコート608、610、612、および614に分割する。これらのアリコートを、任意選択により様々な程度まで希釈してもよく、また、いくつかの例では、アリコートを希釈しなくてもよい。
【0104】
ステップ616では、4つのアリコートを、それぞれ「グループ1」、「グループ2」、「グループ3」、および「グループ4」と表示されるハイブリダイゼーション捕捉プローブ618、620、622、および624のグループとそれぞれ組み合わせ、そのプローブのそれぞれは、溶出液中のSOMAmerの異なるサブセットと結合するように構成され、次いで、アリコートを個別にハイブリダイズさせる。したがって、ステップ616の結果は、各溶液が、SOMAmerと、SOMAmerにハイブリダイズされた対応するプローブを含む三分子化合物のセットを含有する4つの個別の溶液である。各化合物は、図1の化合物100と一般的に類似であり得る。
【0105】
4つのハイブリダイゼーション捕捉プローブグループのそれぞれは、任意選択で、カウントをさらに平準化するために、タグなしHプローブとタグ付きHプローブとの固定比率を含有し得る。
【0106】
ステップ626では、ステップ616によって生成された4つのハイブリダイズされた溶液を1つの溶出液628に組み合わせ、次いで、ビーズに順次捕捉させ、洗浄し、溶出する。これは、例えば、図3Aに示す方法300のステップ304、306、および308に関して前述したように達成され得る。前述のように、各ハイブリダイズ溶液は、再度組み合わせる前に希釈してもしなくてもよく、また、ビーズ捕捉および洗浄前に、各グループの差次的な容量を使用して分析物の変動を圧縮することもできる。
【0107】
ステップ630では、ステップ626から得られた溶出液を、4つの等しい部分またはアリコート632、634、636、および638に分割する。次のステップで増幅されるSOMAmer ID配列の予想濃度を正規化するために、各アリコートを、この段階で任意選択により任意の所望の程度まで希釈してもよい。しかしながら、図6は、ステップ630においていかなる希釈も示していない。
【0108】
ステップ640では、ステップ630から得られた個別の溶出液を、レポーター領域のPCR増幅を含む次世代シーケンシング(NGS)のために調製する。図5のアッセイ500と同様に、プライマーおよび会合するレポーター領域の異なるセットが、それぞれの個別の溶出液中で増幅され、結果として、各溶出液中で、SOMAmer ID配列のサブセットの増幅が得られる。
【0109】
ステップ642では、各アリコート中の増幅されたSOMAmer ID配列を含む個別の溶液を、単一の溶出溶液644に再度組み合わせる。いくつかの例では、個別の溶液を異なる容量で再度組み合わせ、比較的存在量の多いSOMAmer ID配列を所望の程度の希釈、およびSOMAmer ID濃度の全体的な変動が少ない正規化された組み合わせ溶液を得ることができ、これらは、比較的少ないリードで分析され得る。
【0110】
ステップ646では、溶液644を、NGSのためにさらに調製し、配列決定し、結果をデータファイルに書き込み、所望に応じて分析する。増幅された溶出液の調製は、三分子化合物のレポーター領域に逆多重化するためのアダプター配列および/またはバーコード配列を結合させることを含み得る。次に、調製された溶液を、NGS技術を使用して配列決定し、その後、配列決定から得られたデータを分析または他の方法で処理して、元の生物学的サンプル中の標的分析物の濃度を決定してもよい。
【0111】
D.PCRグループの定量的スパイクの正規化
NGSベースのシステムでは、シグナルは、シーケンスリードカウントとして測定され、所定のサンプルのすべての分析物のリードカウントは、固定または有限の総リードセットを有する同じシーケンシングミックス中で測定される。同じ混合物の割合として、所定のサンプル中で測定したすべての分析物のNGSリードカウントは、互いに影響を及ぼし、これにより、分析物あたりに観察されるシグナルカウントは、固定された総リードを有するサンプルあたりの「ゼロサムゲーム」で測定されたすべての分析物の増加および減少の「正味の結果」である。より具体的には、固定された総リード数を有するNGSシステムでは、1つの分析物のカウントの任意の増加は、他の分析物のカウントのそれに対応する減少をもたらし、減少は、各分析物の分画の総リード数に応じて分布する。
【0112】
図7は、2つの個別のサンプルの簡略化された2つの分析物のアッセイをヒストグラム形式で示すことにより、この「ゼロサムゲーム」を図式的に表したものであり、ここで、縦軸は、各分析物のリードカウントの総数を表し、リードカウントの総数は、200万に固定されている。サンプル1では、分析物Aおよび分析物Bは、等しいカウントを有する。サンプル2では、分析物Aが50万カウント増加し、分析物Bがそれに比例して50万カウント減少したように見える。しかし、総リード数が有限であるため、図7から、サンプル2の分析物Aと分析物Bのカウントの差が、分析物Aの増加によるものか、分析物Bの減少によるものか、あるいはその両方を組み合わせたものによるものかを知ることは不可能である。
【0113】
図8は、リファレンスレポーターまたは定量的スパイク対照レポーター(「qSpike」)の導入を使用して、サンプル全体の補完的リードカウントを正規化することができ、これにより、実際のシグナルの変化の識別を可能にする方法を示す。図8に表すNGSアッセイでは、qSpikeレポーターが、すべてのサンプルにおいて同じ既知濃度で、分析物AおよびBを含有する2つの分析物システムに物理的に追加(スパイク)されている。この例では、qSpikeレポーターは、サンプル1中の分析物AおよびBと偶然同じ濃度になる。サンプル2では、前と同様に、分析物Aの増加および分析物Bの減少が観察される。しかし、同じ濃度のqSpikeが追加されたことが既知であるサンプル1と比較して、サンプル2ではqSpikeの減少が観察することができる。サンプル2中の分析物をすべてスケーリング/調整して、スパイクを予想される濃度に戻すことにより、図8の「サンプル2qSpike調整」ヒストグラムによって示されるとおり、分析物Bと比較して分析物Aの増加を明確に識別することが可能となる。
【0114】
より実際的なNGSアッセイでは、複数のqSpike参照レポーターの混合物を使用して、分析物のカウント比例性の補完的変化を補正してもよい。例えば、本発明の教示によるアッセイでは、4つの一意的Hレポーターの混合物、すなわち、例えば、図3Aに示すアッセイ300のステップ308で三分子複合体の溶出後に導入される第2のプローブの一部を形成する4つの一意的増幅可能レポーターを使用してもよい。あるいは、特定のqSpikeSOMAmerを溶出液に導入してもよく、適切なqSpikeレポーターがSOMAmer特異的プローブのライブラリに含有される。qSpikeレポーターまたはSOMAmerは、異なる相対濃度で提供され得る。
【0115】
図9~10は、こうしたアッセイの生の結果およびqSpike調整後の結果をそれぞれ示すヒストグラムであり、説明文の参照は、以下の意味を有する:
・QSpike-H=高濃度qSpikeレポーター
・QSpike-MH=中-高濃度qSpikeレポーター
・QSpike-ML=中-低濃度qSpikeレポーター
・QSpike-L=低濃度qSpikeレポーター
・Apo E2、トランスフェリン、キニノーゲンHMW=SOMAmer分析物
【0116】
図9~10に表すアッセイでは、3つのSOMAmer ApoE2、トランスフェリン、およびキニノーゲンHMWを50pM~50aMの範囲の濃度で、バッファー中で滴定し、NGS HCアッセイで測定した。各測定ポイントは、3つのSOMAmer分析物すべてが共に配列決定される個別のサンプルであり、qSpikeがすべてのサンプルに同じ濃度で添加される。
【0117】
図9のグラフ(A)では、qSpikeは、分析物の用量反応シグナルの変化による補完的な変化を呈する。NGSアッセイシグナル(リードカウント)を、既知のスパイクと比較し、スケール係数を生成する。図10のグラフ(B)では、NGSカウントがスケーリングされているため、すべてのサンプルに対して、スパイクが均等であり、アッセイで測定された3つのSOMAmerに関して実際のSOMAmer用量反応を再構築する。
【0118】
有限のリードカウントを補完するためにqSpikeレポーターを使用することを、前述の任意の次世代シーケンシングアッセイに組み込むことができる。例えば、図11は、概して1100で示される、4つのPCRグループならびに各グループへのqSpikeレポーターの追加を伴う、例示的なNGSアッセイのステップおよび副生成物のいくつかを示す。したがって、アッセイ1100のステップは、図5~6に示すアッセイ500および600など、複数のPCRグループを使用する任意のNGSアッセイに組み込むことができる。
【0119】
ステップ1102では、すでにプローブにハイブリダイズして、ビーズに捕捉され、洗浄し、溶出したSOMAmerを含有する溶出液1104を提供する。したがって、溶出液1104は、例えば、図5に示すアッセイ500のステップ510から得られる溶出液、または図6に示すアッセイ600のステップ626から得られる溶出液と一般的に類似であると見なされるものとする。
【0120】
ステップ1106では、溶出液1104を、4つの等しい部分またはアリコート1108、1110、1112、および1114に分割する。次のステップで増幅されるSOMAmer ID配列の予想濃度を正規化するために、各アリコートを、この段階で任意選択により任意の所望の程度まで希釈してもよい。
【0121】
ステップ1116では、ステップ1106から得られた個別の溶出液を、レポーター領域のPCR増幅を含む次世代シーケンシング(NGS)のために調製する。アッセイ500および600と同様に、プライマーおよび会合するレポーター領域の異なるセットを、それぞれの個別の溶出液中で増幅させ、各溶出液中で、SOMAmer ID配列のサブセットの増幅が得られる。しかし、この例では、PCR増幅前に、異なるqSpikeレポーターもまた、既知の濃度で各溶出液に添加される。
【0122】
ステップ1118では、各アリコート中の増幅されたSOMAmer ID配列およびqSpikeレポーターを含有する個別の溶液を、単一の溶出溶液1120に再度組み合わせる。いくつかの例では、個別の溶液を異なる容量で再度組み合わせて、比較的存在量の多いSOMAmer ID配列の所望の程度の希釈、およびSOMAmer ID濃度の全体的な変動が少ない正規化された組み合わせ溶液を得ることができ、これらは、比較的少ないリードで分析され得る。
【0123】
ステップ1122では、溶液1120を、NGSのためにさらに調製し、配列決定し、結果をデータファイルに書き込み、分析する。増幅された溶出液の調製は、三分子化合物の増幅されたレポーター配列に逆多重化するためのアダプター配列および/またはバーコード配列を結合させることを含み得る。次に、調製された溶液を、NGS技術を使用して配列決定し、その後、配列決定から得られたデータを分析または他の方法で処理して、元の生物学的サンプル中の標的分析物の濃度を決定してもよい。qSpikeレポーターの使用により、分析は、データのスケーリングまたは再正規化を含み、これにより、qSpike濃度を既知のレベルに戻し、それによって、有限のシーケンシングリードによる、考えられるカウントエラーを補完することができる。
【0124】
E.SOMAmerプローブの安定性の決定
前述のように、本発明の教示の態様によれば、ハイブリダイゼーション領域HおよびHは、対応するSOMAmerのそれぞれの相補的部分に結合するように構成されており、所定の一連のアッセイ条件下で均一なハイブリダイゼーションを達成するために、類似のまたは意図的に異なる融解温度(T)を有するように設計され得る。本節に記載したとおり、いくつかの例では、ハイブリダイゼーション領域の融解温度は、SOMAmer-プローブペアの実験的に決定された融解プロファイルを使用して、コンピューターによって推定され得る。
【0125】
1.背景技術
核酸二重鎖の安定性を予測するために最も広く使用されている方法は、最近傍モデルとして公知である。最近傍モデルは、らせん形成の熱力学的特性が、主に、二重鎖内の隣接する塩基対の同一性に依存することを仮定する。このモデルは、PCRおよびオリゴヌクレオチド二重鎖形成が重要である他の用途に必要なプライマー設計における二重鎖形成の安定性の予測での使用に広く適用されている。本発明の教示によるNGSアッセイ(すなわち、SOMAmerを伴う)の場合、1種類の修飾DNA塩基を含有する1つの鎖と、天然DNA塩基を含む第2の鎖とで構成される二重鎖の安定性を正確に予測するために、この方法を拡張することが望ましい。
【0126】
UV-vis分光光度計で測定された吸光度対温度プロファイル(融解曲線)は、従来、DNA二次構造の安定性を調べるために使用されている。ハイブリダイゼーションは、典型的には、1.0M NaCl、10mMカコジル酸ナトリウム、および0.5mM Na EDTA緩衝液、pH7で実施される。オリゴヌクレオチド濃度は、100倍の範囲にわたって変化し、熱力学的パラメータは、逆融解温度(T -1)と全DNA濃度の自然対数のプロットから得られ、以下にあてはめる;
【数1】
あるいは、
【数2】
および
【数3】
を、融解曲線に対する個々のフィットから得て、異なる濃度に対して平均化することができる。いずれの方法も、本質的にはデータのファントホッフ分析である。これら2つの分析方法から得られる熱力学データは、典型的には、10%以内で一致する。この節では、混合二重鎖の安定性を予測するための熱力学的パラメータを抽出するために、後者の方法(融解曲線プロファイルへの個別のフィット)のみを使用する。さらに、熱融解プロファイルが得られるバッファー組成は、典型的なSOMAmer含有アッセイの読み取り値の組成と一致する。
【0127】
本発明の教示の態様によれば、最も一般的な3つの修飾塩基、Nap-dU、2-Nap-dU、およびBenzyl-dUを含有するSOMAmerに対して、最近傍モデルの拡張を開発する。以下で論じるように、融解プロファイルは、400を超えるSOMAmerプローブペアの蛍光測定を使用して、実験により得られた。これらのデータを使用して、アッセイ読み取り条件下でのSOMAmerプローブの安定性を予測するために必要な最近傍パラメータを定義した。
【0128】
2.SOMAmer-プローブ結合をモデル化するための二重鎖形成
SOMAmer-プローブ二重鎖の形成は、以下のプロセスに従う:
【数4】
式中、
【数5】
は、SOMAmerであり、
【数6】
は、ハイブリダイゼーションプローブであり、
【数7】
は、二重鎖である。初期DNAの総濃度として
【数8】
を定義すると:
【数9】
であり、SOMAmerとプローブの初期濃度が等しいと仮定すると、化学量論から次式が導かれる:
【数10】
【数11】
式中、
【数12】
は、二重鎖のモル分率である。二重鎖形成の平衡定数は、
【数13】
であり、式中、
【数14】
および
【数15】
は、二重鎖形成のエンタルピーおよびエントロピーである。
【数16】
は、絶対温度(K)である。
【数17】
は、気体定数(1.9872cal/K×mol)である。濃度の式を代入すると、
【数18】
となる。定義により、
【数19】
は、二重鎖および非二重鎖の等しい分画が起こる温度に対応する。すなわち、
【数20】
により、融解温度の次式が得られる:
【数21】
【0129】
3.SOMAmer融解モデル
内部構造を有するSOMAmerは、次のように単純な二状態モデルとしてみなすこともできる:
【数22】
式中、
【数23】
および
【数24】
は、構造化SOMAmerおよび非構造化SOMAmerである。初期DNAの総濃度として
【数25】
を定義すると、
【数26】
であり、化学量論から、次式が導かれる。
【数27】
【数28】
式中、
【数29】
は、構造化されたSOMAmerのモル分率である。構造化SOMAmerの平衡定数は、
【数30】
であり、式中、
【数31】
および
【数32】
は、構造形成のエンタルピーおよびエントロピーである。
【数33】
は、絶対温度(K)である。
【数34】
は、気体定数(1.9872cal/Kxmol)である。構造化SOMAmerのモル分率の項で濃度の式を代入すると、
【数35】
となる。ここでも、定義上、
【数36】
は、構造化SOMAmerおよび非構造化SOMAmerの等しい分画が起こる温度に対応する。すなわち、
【数37】
により、以下が得られる:
【数38】
【0130】
これは単分子反応であり、適度な希釈条件下では、すべての反応が独立しているため、SOMAmerの濃度によるエントロピーの寄与はない。最も単純なモデルは、SOMAmerの融解後にプライマーの融解が起こるか、またはその逆の独立したプロセスを想定することである。独立したSOMAmerの融解などの追加実験を行わずに、2つの遷移のいずれがSOMAmer構造の融解によるものであるか、ハイブリダイゼーションプライマーの融解によるものであるか、先験的に知る方法はない。プライマー融解は、16塩基対融解よりも良好に対応するため、おそらくより高い自由エネルギーデータである。
【0131】
4.融解の熱力学の実験的決定
蛍光強度対温度プロファイル(融解曲線)を、蛍光染料SYBR Green Iを使用して測定した。SYBR Green Iの蛍光強度は、一本鎖DNAと比較して、二重鎖DNAに結合したときに100倍増加するため、SOMAmer-プローブ二重鎖構造が融解するにつれて、蛍光強度は低下する。
【0132】
熱融解を、SOMAscanアッセイ溶出液によって定義された成分(この場合は、100mM Tris pH8.0、200mM NaCl、および0.9M過塩素酸塩)を含むバッファー中で実施した。過塩素酸塩は、DNA二重鎖の安定性を低下させることが公知である。SOMAmerおよびプローブの両方について、すべての熱融解を、120μL(8.3x10-7M)中100pMの単一濃度で得た。したがって、すべての熱力学的パラメータを、個々の熱融解プロファイルへの単一のフィットから得た。二状態モデルで予想されるものよりも複雑な挙動を呈する融解プロファイルを、分析から除外した。HプローブおよびHプローブそれぞれについて、合計4枚のプレートを測定した。これら800個の融解プロファイルを、二重鎖形成の想定される二状態モデルと一致するデータを生成するために評価した。この800個のプロファイルのうち、3つの異なる修飾ヌクレオチド(Nap-dU、2-Nap-dU、およびBenzyl-dU)を含有するSOMAmerの合計408個の融解プロファイルをこの分析に使用した。
【0133】
a.単相モデルフィット
図12は、SOMAmer-プローブ二重鎖の典型的な熱融解のデータを示す。縦軸はRFUで測定された蛍光、および横軸は温度であり、次の二状態モデルフィットが重ねられている。まず、最初と最後の15個のデータポイントを使用して、高温ベースラインと低温ベースラインをデータにフィットさせる。低温ベースラインは二本鎖物質に対応し、高温ベースラインは一本鎖物質に対応し、次のように示される。
【数39】
【数40】
【数41】
および
【数42】
の所定の値について、温度の関数としての二重鎖の分画は、まず
【数43】
を計算し、次いで
【数44】
を計算することによって得られる。
【数45】
式中、
【数46】
である。
熱融解のプロファイル、
【数47】
は、以下から計算される
【数48】
【0134】
非線形回帰を使用して、6つの自由パラメータ
【数49】
【数50】
【数51】
【数52】
【数53】
および
【数54】
の最適値を求める。一本鎖および二本鎖のベースラインの初期推定値は上記のように得られ、
【数55】
および
【数56】
の初期値は、200kcal/molおよび-0.6kcal/molxKである。図12のデータに関するモデルフィットを、図12に赤い実線で表示する。下付き文字「p」は、SOMAmerプローブの熱力学を表す。モデルは、データに極めて良好にフィットする。
【0135】
b.二相性モデルのフィット
多くの場合、データは、より複雑な融解挙動を呈するが、これはおそらく、最初にSOMAmerの内部構造が融解し、その後にSOMAmer-プローブ二重鎖が融解するためである。図13は、典型的な二相性挙動を表すデータを示しており、ここでも、赤い実線によって示された理論モデルフィットが重ねられている。データには、2つの明確な遷移が発生しており、おそらく最初は、内部SOMAmer構造の融解であり、その後がSOMAmer-プローブの二重鎖融解であると考えられる。2つの遷移は、独立していることが想定される。二相性モデルをフィットさせるためには、3つのベースラインが必要である。最初のものは、内部SOMAmer構造の温度依存性に対応し、2番目は、二本鎖SOMAmer-プローブの温度依存性に対応し、3番目は、組み合わせた一本鎖材料の温度依存性に対応する。後者の2つは、上記のベースラインと同じである。前者は、次のように表記される。
【数57】
ここで、蛍光は、相加的であると想定されるため、二本鎖SOMAmer-プローブ複合体の蛍光よりも増加することを示す。低温では、SOMAmer中の内部構造およびSOMAmer-プローブ二重鎖の両方が存在するため、正味の蛍光は、独立した構造の合計であることが想定される。SOMAmer内部構造のモル分率は、
【数58】
として示し、SOMAmer-プローブ二重鎖のモル分率は、
【数59】
として示し、熱融解プロファイルは、以下によって得られる
【数60】
低温では、
【数61】
および
【数62】
は、1であり、温度依存性は、
【数63】
によって得られる。SOMAmerの構造が融解すると、蛍光は、完全に、二本鎖二重鎖のベースラインによるものである。単相の場合と同様に、二相モデルは、データに極めて良好にフィットする。
【0136】
5.最近傍モデル
実験データが適切なモデル(例えば、上で論じたように単相または二相)にフィットされ、個々の熱力学的パラメータがコンパイルされると、最近傍モデルのパラメータが、データから得られ得る。自由エネルギーの変化は、次のように近似される;
【数64】
式中、下付き文字
【数65】
は、SOMAmer-プローブ二重鎖を表す。
【数66】
は、最近接スタッキング相互作用の自由エネルギーである。
【数67】
は、二重鎖
【数68】
の最近傍
【数69】
の出現回数である。
【数70】
は、エントロピーを考慮した開始自由エネルギーである。最近傍相互作用は、10個の標準的なワトソン-クリック最近傍スタッキング相互作用(例えば、
【数71】
【数72】
など)を含む。表記
【数73】
は、
【数74】
を有する
【数75】
ワトソン・クリック塩基対を意味する)。さらに、各修飾塩基は、別の7つの修飾ヌクレオチドスタッキング相互作用を導入する(例えば、
【数76】
【数77】

など)。ここで、
【数78】
は、標準
【数79】
ヌクレオチドを有する塩基対である修飾
【数80】
ヌクレオチドを示す。
【数81】
および
【数82】
の類似表現を保持する。
【数83】
二重鎖のセットと
【数84】
最近傍相互作用の場合、寸法
【数85】
を有する「スタッキング行列」行列
【数86】
は、要素
【数87】
を計算することによって、配列データから構築される。実験的に観察された熱力学値
【数88】
は、長さ
【数89】
の列ベクトルとして表される。未知の最近傍スタッキング相互作用
【数90】
は、長さ
【数91】
の列ベクトルによって表され、通常の最小二乗回帰法を使用して、次の過剰決定線形方程式を解くことによって得られる:
【数92】
【0137】
パラメータ
【数93】
は、ユークリッド
【数94】
ノルム
【数95】
を最小化する。
【0138】
6.例示的結果
上記の教示に従った例示的なプロセスでは、3つの異なる修飾ヌクレオチド、Nap-dU、2-Nap-dU、およびBenzyl-dUを含有する二重鎖の熱融解物を使用して、最近傍モデルパラメータを拡張した。これらの拡張された最近傍パラメータに基づいて、熱力学および融解温度を計算するためのPythonコードが開発されている。
【0139】
以下の表は、4つの標準塩基の10個のパラメータと、各修飾塩基の7個の追加パラメータとを含む、最近傍モデルに必要な31個のパラメータを要約する。各NNペアの
【数96】
値および
【数97】
値、ならびに各最近傍パラメータの発生総数がデータセットに含まれる。データ内での(AT/TA)と(TA/AT)の出現は比較的少ないが、これは、これらが必然的に固定された領域でのみ発生するためである。
【表1】
【0140】
上記の表のパラメータを使用して、修飾ヌクレオチド塩基Nap-dU、2-Nap-dU、およびベンジル-dUを含有する二重鎖の推定融解温度Tをコンピューターにより決定してもよい。同様の手順を使用して、任意の他のSOMAmer含有二重鎖の推定融解温度を計算してもよい。本発明の教示の態様によれば、これらの融解温度は、SOMAmerに対するハイブリダイゼーション相補体をどこで分割するか、すなわち、図1に示す化合物100などの三分子化合物の第1および第2のハイブリダイゼーション領域HとHとの間(したがって、第1のプローブ104と第2のプローブ106との間)の分割点を決定するために使用され得る。
【0141】
F.例示的な組み合わせおよび追加の例
この節では、本発明の教示の態様に従って生物学的サンプル中の標的分子を検出および定量化するためのシステムおよび方法の追加の態様および特徴について説明し、一連の段落として限定なく提示し、その一部またはすべてを、明確さおよび効率性のために英数字により指定され得る。これらの段落のそれぞれは、1つ以上の他の段落、および/または相互参照において参照により組み込まれた資料を含む本出願の他の場所からの開示と、任意の好適な方法で組み合わせることができる。以下の段落の一部は、他の段落を明示的に参照し、さらに制限し、好適な組み合わせの一部の例を制限なく提供する。
【0142】
A.生物学的サンプル中の標的タンパク質の存在量を定量化するためのシステムであって、複数のアプタマーであって、それぞれが、標的タンパク質を含む生物学的サンプルをアプタマーに曝露したときに、特定の標的タンパク質に結合するように構成され、これによって、アプタマー含有溶出液を形成する複数のアプタマーと;複数の捕捉プローブであって、それぞれが特定のアプタマーにハイブリダイズするように構成され、ここで、複数の捕捉プローブは、それぞれのアプタマーの第1の部分にハイブリダイズした部分を有する第1の捕捉プローブ、それぞれのアプタマーの第2の部分にハイブリダイズした部分、DNAプライマー領域、およびアプタマーに対応するアプタマーID配列を有する第2の捕捉プローブを含む、複数の捕捉プローブと;溶出液中のアプタマーを捕捉プローブに曝露することによって、複数の三分子複合体を形成するための手段と、アプタマーID配列を配列決定するための手段であって、それによって、生物学的サンプル中の標的タンパク質の存在量を決定する手段と、を含むシステム。
【0143】
B.生物学的サンプル中の2種以上の標的タンパク質の存在量を定量化するためのシステムであって、複数のアプタマーであって、それぞれがサンプル中で特定のタンパク質を捕捉するように構成され、それによって、生物学的サンプル中の標的タンパク質のうちの1つを捕捉したアプタマーを単離したときに、アプタマー含有溶出液を形成する複数のアプタマーと;複数の第1のプローブであって、それぞれが特定のアプタマーの対応する第1の部分にハイブリダイズする複数の第1のプローブと;複数の第2のプローブであって、それぞれが特定のアプタマーの対応する第2の部分にハイブリダイズし、それぞれ第2のプローブが、少なくとも1つのDNAプライマー領域、および特定のアプタマーに対応するアプタマーID配列を含む複数の第2のプローブと、アプタマーID配列を配列決定するための手段と;配列決定されたアプタマーID配列に基づいて、標的タンパク質の存在量を定量化するための手段と、を含むシステム。
【0144】
C.生物学的サンプル中の標的タンパク質を検出するためのシステムであって、それぞれが特定のタンパク質を捕捉するように構成された複数のアプタマーと;複数の第1のプローブであって、それぞれが標的タンパク質を捕捉したアプタマーのうちの1つの対応する第1の部分にハイブリダイズした部分を含む複数の第1のプローブと;複数の第2のプローブであって、それぞれが、標的タンパク質を捕捉したアプタマーのうちの1つの対応する第2の部分にハイブリダイズした部分、少なくとも1つのDNAプライマー領域、および標的タンパク質を捕捉したアプタマーに対応するアプタマーID配列を含む複数の第2のプローブと;アプタマーID配列を増幅させるための手段と;アプタマーID配列の配列決定を行って、アプタマーID配列を同定し、それによって標的タンパク質を捕捉したアプタマーおよび標的タンパク質を同定するための手段と、を含むシステム。
【0145】
D.前述の段落のいずれかに記載のシステムであって、全サンプルの補完的リードカウントを正規化するための手段をさらに含む、システム。
【0146】
E.前述の段落のいずれかに記載のシステムであって、配列決定およびカウントを行う前に、アプタマーおよび/またはアプタマーID配列の存在量のダイナミックレンジ圧縮を行うための手段をさらに含む、システム。
【0147】
利点、特徴、および利益
本明細書に記載された、生物学的サンプル中の標的分子の存在を検出し定量化するための方法およびシステムの様々な実施形態および例は、従来知られている解決策に対していくつかの利点を提供する。例えば、本明細書に記載の例示的な実施形態および実施例は、配列決定標的をアプタマーからアプタマー同定配列へと単純化することにより、次世代シーケンシングを使用して、アプタマーベースのタンパク質検出を定量化することを可能にする。
【0148】
さらに、他の利益の中でも、本明細書に記載の例示的な実施形態および実施例は、アッセイの1つ以上の段階において、アッセイ溶出液を複数の希釈グループに分割し、次世代シーケンシングの前に再度組み合わせるすることにより、数桁の存在量に及ぶ標的分子の正確な検出を可能にする。
【0149】
さらに、他の利点の中でも、本明細書に記載の例示的な実施形態および実施例は、定量的スパイクレポーターをアッセイ溶出液に追加して、サンプル全体の補完的リードカウントを正規化することにより、有限の配列決定リードから生じるエラーを補正することを可能にする。
【0150】
既知のシステムまたはデバイスはいずれも、これらの機能を実施できない。しかし、本明細書に記載のすべての実施形態および実施例が、同じ利点または同じ程度の利点を提供するものではない。
【0151】
結論
上記の開示は、独立した有用性を備えた複数の別個の実施例を包含し得る。これらのそれぞれは、その好ましい形態(複数可)で開示されているが、本明細書で開示され例示されている特定の実施形態は、多数の変形形態が可能であることから、限定的な意味で考慮されるべきではない。本開示内で節見出しが使用されている場合、そのような見出しは、構成上の目的のためのみである。本開示の主題には、本明細書に開示された様々な要素、特徴、機能、および/または特性のすべての新規かつ自明でない組み合わせおよび部分組み合わせを含む。以下の特許請求の範囲は、特に、新規かつ非自明であると見なされる特定の組み合わせおよび部分組み合わせを指摘する。特徴、機能、要素、および/または特性の他の組み合わせおよび部分組み合わせは、本出願または関連出願からの優先権を主張する出願中で特許請求され得る。このような請求項は、元の特許請求の範囲よりも広義である、狭義である、等しい、または異なるかにかかわらず、本開示の主題内に含まれるものとみなされる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】