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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】エステラーゼの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/18 20060101AFI20241210BHJP
   C12P 7/44 20060101ALI20241210BHJP
   C08J 11/20 20060101ALI20241210BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20241210BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
C12N9/18 ZAB
C12P7/44
C08J11/20
C12N15/55 ZNA
C12N15/10 200Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024555267
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022082016
(87)【国際公開番号】W WO2023088910
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21306591.5
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524184518
【氏名又は名称】カルビオス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラン・マルティ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・アルナル
(72)【発明者】
【氏名】ソフィ・デュケーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・トゥルニエ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ジル
【テーマコード(参考)】
4B064
4F401
【Fターム(参考)】
4B064AD29
4B064CA21
4B064CB03
4B064CC07
4B064CC24
4B064CD18
4B064DA16
4B064DA19
4F401AA22
4F401BA06
4F401CA22
4F401CA67
4F401CA76
4F401FA01Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
本発明は、3~6のpHの酸性条件下でのポリエステル又はポリエステル含有物質の分解のための特定の酵素の使用に関しており、より具体的には、ポリエステル分解活性を有する特定のエステラーゼの使用に関する。本発明はまた、ポリエステル又はポリエステル含有物質(例えばプラスチック製品)を分解するプロセスであって、3~6のpHの酸性条件下で実施される酵素的解重合の工程を含むプロセスにも関する。本発明のプロセスは、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート含有物質の分解に特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル又はポリエステル含有物質を分解するためのエステラーゼの使用であって、前記ポリエステル又はポリエステル含有物質を、3~6のpHで、エステラーゼと接触させ、前記エステラーゼは、(i)配列番号1に記載されている完全長アミノ酸配列に対する少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有しており、(ii)F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、T11E/M、R12D/N/Q/E/F、S13E、A14E/D、T16E、A17T、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G/D、W155A、T157S、P179D/E、Q182D/E、F187Y/I、D203C/K/R、N204D/E/G、A205D、S206D/E、N211D/Y/E、S212F、N213P/D、N214D、A215N、S218A、V219I、Y220M/F、Q237D、F238E、N241E/D、N243E/D、L247T、V170I、G135A、V167Q/T、S248C及びA24Rから選択される少なくとも1つの置換を含み、前記位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされており、及び(iii)少なくとも3~6のpHでポリエステル分解活性を有する、エステラーゼの使用。
【請求項2】
前記エステラーゼは、少なくとも4~6のpHでポリエステル分解活性を有しており、好ましくは5~6のpHでポリエステル分解活性を有しており、より好ましくは5~5.5のpHでポリエステル分解活性を有しており、さらにより好ましくはpH5.2でポリエステル分解活性を有する、請求項1に記載のエステラーゼの使用。
【請求項3】
前記エステラーゼを、4~6のpHで前記ポリエステル又はポリエステル含有物質と接触させ、好ましくは5~6のpHで前記ポリエステル又はポリエステル含有物質と接触させ、より好ましくは5~5.5のpHで前記ポリエステル又はポリエステル含有物質と接触させ、さらにより好ましくはpH5.2で前記ポリエステル又はポリエステル含有物質と接触させる、請求項1又は2に記載のエステラーゼの使用。
【請求項4】
前記エステラーゼは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、T11E/M、R12D/N/Q/E/F、S13E、A14E/D、T16E、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G/D、W155A、T157S、Q182D/E、D203C/K、N204E/G、S206D、N211D/Y/E、S212F、N213P、V219I、Y220M、Q237D、N241E/D、N243E、L247T、V170I、G135A、V167Q/T、S248C、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、好ましくは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、T11M、R12D/E/F、A14E/D、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G、W155A、T157S、Q182D/E、D203C/K、N204E/G、N211D/Y/E、S212F、N213P、V219I、Q237D、N241E/D、V170I、G135A、V167Q/T、S248C、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項5】
前記エステラーゼは、A14E/D、F90A/Y、Y92G/D、Q182D/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、N211D/Y/E、N213P/D、V219I、V170I、D203C/K/R、S248C、A24R、及びF187Y/Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、好ましくは、A14E、F90A、Y92G/D、Q182D/E、N204G、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、N211D/E、N213P、V219I、V170I、D203C/K/R、S248C、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、より好ましくは、F90A、Y92G、Q182D/E、N204G、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、N211D/E、V170I、D203C/K/R、S248C、N213P、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、さらにより好ましくは、N211D/E、N204G、F208M/R/I/Q/L/S/T、Q182D/E、Y92G、V170I、D203C/K/R、S248C、N213P、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項6】
前記エステラーゼは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/Eから選択される少なくとも1つ置換を含み、好ましくは、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/Tから選択される少なくとも1つ置換を含み、より好ましくは、F208M/R/I/Q/L/S/Tから選択される少なくとも1つ置換を含み、さらにより好ましくは、F208M/R/Q/L/S/Tから選択される少なくとも1つ置換を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項7】
前記エステラーゼは、少なくとも、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203C+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、及びF208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203K+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の組み合わせを含み、好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M/I/L/T+D203K+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の組み合わせを含み、より好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M/I/L/T+D203K+V170I+Y92G+N213P+Q182Eから選択される置換の組み合わせを含み、さらにより好ましくは、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M+D203K+V170I+Y92G+N213P+Q182Eから選択される置換の組み合わせを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項8】
前記エステラーゼは、S13L及びD158Eから選択される少なくとも1つの置換をさらに含み、好ましくは、少なくとも2つの置換S13L及びD158Eをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項9】
前記エステラーゼは、少なくとも、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L、又はF208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+D158Eから選択される置換の組み合わせを含み、好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択される置換の組み合わせを含み、より好ましくは、組み合わせF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eを含む、請求項8に記載のエステラーゼの使用。
【請求項10】
前記エステラーゼは、3~6のpHで、好ましくは4~6のpHで、より好ましくは5~6のpHで、さらにより好ましくは5~5.5のpHで、配列番号1のエステラーゼと比較して高いポリエステル分解活性、及び/又は高い耐熱性を示す、請求項1から9のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項11】
前記エステラーゼは、7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、具体的には5~5.5のpHで、配列番号1の酵素と比較して大きいポリエステル分解活性の増加、及び/又は大きい耐熱性の増加を示す、請求項1から10のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項12】
前記エステラーゼは、N211D/E、N204G、F208M/R/Q/L/S/T、Q182D/E、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、好ましくは、N211D、F208M/Q/L/S/T、Q182D/、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、且つ7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、具体的には5~5.5のpHで、配列番号1の酵素と比較して大きいポリエステル分解活性の増加を示す、請求項1から11のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項13】
前記エステラーゼは、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み、且つ7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、具体的には5~5.5のpHで、配列番号1の酵素と比較して大きいポリエステル分解活性の増加を示す、請求項1から12のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項14】
前記エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208L+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L及びF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+D158Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせ含み、且つ7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、具体的には5~5.5のpHで、配列番号1の酵素と比較して大きい耐熱性の増加を示す、請求項1から13のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項15】
前記エステラーゼは、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み、且つ7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、具体的には5~5.5のpHで、配列番号1の酵素と比較して大きい耐熱性の増加、及び大きいポリエステル分解活性の増加の両方を示す、請求項1から14のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項16】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-テレフタレート)(PBST)、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート/イソフタレート)-co-(ラクテート)(PBSTIL)、「ポリオレフィン様」ポリエステル、及びこれらのポリマーのブレンド/混合物から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項17】
前記ポリエステルは、少なくとも、テレフタル酸単量体(TA)を含み、好ましくは、前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項16に記載のエステラーゼの使用。
【請求項18】
前記エステラーゼを、洗剤で使用する、請求項1から17のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項19】
前記エステラーゼを、ポリエステル含有物質で使用する、請求項1から17のいずれか一項に記載のエステラーゼの使用。
【請求項20】
ポリエステル又はポリエステル含有物質を分解するプロセスであって、前記プロセスは、プラスチック製品又は前記ポリエステルを、3~6のpHの反応媒体中で、前記少なくとも1種のポリエステルを分解可能なエステラーゼと接触させることにより実施される、前記ポリエステルの解重合工程を含み、前記エステラーゼは、(i)配列番号1に記載されている完全長アミノ酸配列に対する少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有しており、(ii)アミノ酸配列 配列番号1と比較して、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、T11E/M、R12D/N/Q/E/F、S13E、A14E/D、T16E、A17T、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G/D、W155A、T157S、P179D/E、Q182D/E、F187Y/I、D203C/K/R、N204D/E/G、A205D、S206D/E、N211D/Y/E、S212F、N213P/D、N214D、A215N、S218A、V219I、Y220M/F、Q237D、F238E、N241E/D、N243E/D、L247T、V170I、G135A、V167Q/T、S248C及びA24Rから選択される少なくとも1つの置換を含み、前記位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされており、及び(iii)3~6のpHで、好ましくは5~5.5のpHで、ポリエステル分解活性を有する、プロセス。
【請求項21】
前記エステラーゼは、N211D、N204G、F208T/M/L/S/Q/R、Q182D/E、A24R、F187I、F208M/I/T/L+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+D158Eから選択される少なくとも1つの置換、及び/又は置換の組み合わせを含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記解重合工程を、4~6のpHで実施し、好ましくは5~6のpHで実施し、より好ましくは5.0~5.5のpHで実施し、さらにより好ましくはpH5.2で実施する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記解重合工程を、50℃~72℃の温度で実施し、具体的には50℃~65℃又は65℃~72℃の温度で実施する、請求項20又は22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-テレフタレート)(PBST)、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート/イソフタレート)-co-(ラクテート)(PBSTIL)、「ポリオレフィン様」ポリエステル、及びこれらのポリマーのブレンド/混合物から選択される、請求項20から23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記ポリエステルは、少なくとも、テレフタル酸単量体(TA)を含み、好ましくは、前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項20から24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記プロセスは、ポリエステル、又はポリエステル含有物質のポリエステルをリサイクルするプロセスであって、前記ポリエステルを、3~6のpHで実施される解重合工程に供する工程、並びに、単量体及び/又はオリゴマーを回収して任意選択で精製する工程を含むプロセスである、請求項20から25のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性条件下(3~6のpH)でのポリエステル又はポリエステル含有物質の分解のための特定の酵素(より具体的には、ポリエステル分解活性を有する特定のエステラーゼ)の使用に関する。本発明はまた、ポリエステル又はポリエステル含有物質(例えばプラスチック製品)を分解するプロセスであって、酸性条件下(3~6のpH)で実施する酵素的解重合の工程を含むプロセスにも関する。本発明のプロセスは、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート含有物質の分解に特に適している。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、安価で耐久性のある素材であり、幅広い用途(食品包装、繊維等)で使用される様々な製品の製造に使用され得る。そのため、プラスチックの生産量は、過去数十年にわたり劇的に増加している。さらに、これらのほとんどは、包装、農業用フィルム、使い捨て消費財等の一回限りの使い捨て用途に使用されるか、又は製造から1年以内に廃棄される短寿命製品に使用される。含まれているポリマーの耐久性のために、大量のプラスチックが世界中の埋立地及び自然生息地に山積みになり、環境問題が深刻化している。例えば、近年では、テレフタル酸及びエチレングリコールから製造される芳香族ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)が、食品及び飲料の包装(例えば、ボトル、コンビニサイズのソフトドリンク、食品用パウチ)、又は繊維、織物、敷物、カーペット等の、人間による消費のための様々な製品の製造に広く使用されている。
【0003】
プラスチック廃棄物の蓄積に関連する環境及び経済への影響を軽減するために、プラスチック分解からプラスチックリサイクルまでの様々な解決策が研究されている。機械的リサイクル技術は、依然として最も多く使用されている技術であるが、いくつかの欠点がある。実際に、この技術では広範囲でコストのかかる選別が必要となり、且つプロセス中の全体的な分子量の損失、及びリサイクル製品中の添加剤の制御されていない存在に起因して、用途のダウングレードにつながる。現在のリサイクル技術も高価である。その結果、リサイクルプラスチック製品は、未使用のプラスチックと比較して一般的に競争力がない。
【0004】
近年、プラスチック製品の酵素リサイクルの革新的なプロセスが、開発されて説明されている(例えば、国際公開第2014/079844号、国際公開第2015/097104号、国際公開第2015/173265号、国際公開第2017/198786号、国際公開第2020/094661号、国際公開第2020/094646号、及び国際公開第2021/123299号)。従来のリサイクル技術とは異なり、そのような酵素的解重合プロセスは、高価な選別を省き、ポリマーの化学成分(即ち、単量体及び/又はオリゴマー)の回収を可能にする。得られた単量体/オリゴマーを、回収し、精製し、未使用のプラスチック製品と同等の品質のプラスチック製品を再製造するために使用し得、その結果、そのようなプロセスにより、プラスチックの無限のリサイクルが可能になる。これらのプロセスは、PETを含むプラスチック製品からテレフタル酸及びエチレングリコールを回収するのに特に有用である。これらのプロセスでは、前記単量体及び/又はオリゴマーの生成(特に、テレフタル酸の生成)により反応媒体のpHが低下し、この低下により分解酵素の活性が悪影響を受ける可能性がある。pHを維持し、それにより最適な酵素活性を維持するために、反応媒体に大量の塩基が添加される。加えて、沈殿によるテレフタル酸の回収には強酸の使用が必要であり、ほとんど価値がない塩が大量に生産されることになる。従って、塩基及び酸の使用、並びに塩の価値化の欠如は、これらのプロセスのコストに大きな影響を及ぼす。
【0005】
これらの課題に取り組むことにより、本発明者らは、酸性条件下でポリエステルを効率的に分解可能な特定の酵素を同定した。本発明者らは、経済的及び工業的観点から満足のいく解重合収量を維持しつつ、前記酵素を酸性条件下で使用し得ることを発見した。これにより、酵素的解重合中の塩基の必要性が大幅に減少し、塩は全く生成されないか、又はほとんど生成されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/079844号
【特許文献2】国際公開第2015/097104号
【特許文献3】国際公開第2015/173265号
【特許文献4】国際公開第2017/198786号
【特許文献5】国際公開第2020/094661号
【特許文献6】国際公開第2020/094646号
【特許文献7】国際公開第2021/123299号
【特許文献8】国際公開第1999/023055号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sulaiman他, Appl Environ Microbiol. 2012年3月
【非特許文献2】http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/ or http://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/
【非特許文献3】Lebarbe他 Green Chemistry Issue 4 2014年
【非特許文献4】Studier他、2005- Prot. Exp. Pur. 41, 207~234頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特定の条件下での、配列番号1に記載されているアミノ酸配列から誘導された特定のポリエステル分解酵素の使用に関する。配列番号1に記載されているアミノ酸配列は、Sulaiman他, Appl Environ Microbiol. 2012年3月で説明されておりメタゲノム由来クチナーゼのアミノ酸配列のアミノ酸36~293に対応しており、SwissProtではG9BY57と参照されている。
【0009】
これに関して、本発明は、ポリエステル又はポリエステル含有物質を分解するためのエステラーゼの使用であって、ポリエステル又はポリエステル含有物質を、3~6のpHで、酵素と接触させ、この酵素は、3~6のpHで、好ましくは少なくとも5~5.5のpHで、ポリエステル分解活性を有しており、この酵素は、(i)配列番号1に記載されている完全長アミノ酸配列に対する少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有しており、(ii)T11E/M、R12D/N/Q/E/F、S13E、A14E/D、T16E、A17T、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G/D、W155A、T157S、P179D/E、Q182D/E、F187Y/I、D203C/K/R、N204D/E/G、A205D、S206D/E、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、N211D/Y/E、S212F、N213P/D、N214D、A215N、S218A、V219I、Y220M/F、Q237D、F238E、N241E/D、N243E/D、L247T、V170I、G135A、V167Q/T、S248C及びA24Rから選択される少なくとも1つの置換を含み、この位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている、エステラーゼの使用に関する。
【0010】
好ましくは、本酵素は、A14E/D、F90A/Y、Y92G/D、Q182D/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、N211D/Y/E、N213P/D、V219I、V170I、D203C/K/R、S248C、A24R、及びF187Y/Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、好ましくは、A14E、F90A、Y92G/D、Q182D/E、N204G、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、N211D/E、N213P、V219I、V170I、D203C/K/R、S248C、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、より好ましくは、F90A、Y92G、Q182D/E、N204G、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、N211D/E、V170I、D203C/K/R、S248C、N213P、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、さらにより好ましくは、N211D/E、N204G、F208M/R/I/Q/L/S/T、Q182D/E、Y92G、V170I、D203C/K/R、S248C、N213P、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0011】
好ましくは、本エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208L+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L及びF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+D158Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み、より好ましくは、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含む。
【0012】
本発明の目的はまた、上述したように、ポリエステル又はポリエステル含有物質を分解するプロセスであって、ポリエステル又はポリエステル含有物質と、ポリエステルを分解可能なエステラーゼとを接触させる工程を含み、ポリエステル又はポリエステル含有物質と酵素とを接触させる工程を、酸性条件下で実施し、具体的には3~6のpHで実施し、好ましくは5~5.5のpHで実施する、プロセスを提供することでもある。
【0013】
本発明はまた、エステラーゼを含む洗剤組成物にも関する。
【0014】
本発明はまた、エステラーゼを含むポリエステル含有物質にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本開示は、下記の定義を参照することにより、最もよく理解されるだろう。
【0016】
ここで、「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」、「酵素」という用語は、アミノ酸の鎖であって、前記鎖を形成するアミノ酸の数に関係なくペプチド結合により連結されたアミノ酸の鎖を指す。アミノ酸は、本明細書では、下記の命名法に従って1文字又は3文字のコードで表される:A:アラニン(Ala);C:システイン(Cys);D:アスパラギン酸(Asp);E:グルタミン酸(Glu);F:フェニルアラニン(Phe);G:グリシン(Gly);H:ヒスチジン(His);I:イソロイシン(Ile);K:リジン(Lys);L:ロイシン(Leu);M:メチオニン(Met);N: アスパラギン(Asn);P:プロリン(Pro);Q:グルタミン(Gln);R:アルギニン(Arg);S:セリン(Ser);T:スレオニン(Thr);V:バリン(Val);W:トリプトファン(Trp);及びY:チロシン(Tyr)。
【0017】
「エステラーゼ」という用語は、エステルの酸及びアルコールへの加水分解を触媒する、酵素命名法に従ってEC 3.1.1に分類されている加水分解酵素のクラスに属する酵素を指す。「クチナーゼ」又は「クチン加水分解酵素」という用語は、クチン及び水からクチン単量体を生成する化学反応を触媒し得る、酵素命名法に従ってEC 3.1.1.74に分類されているエステラーゼを指す。
【0018】
「野生型タンパク質」又は「親タンパク質」という用語は、自然界に現れるポリペプチドの非変異バージョンを指す。この場合、親エステラーゼは、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有するエステラーゼを指す。
【0019】
「変異体」及び「バリアント」という用語は、配列番号1に由来するポリペプチドであって、配列番号1と比較して1箇所又は複数箇所(例えば、数箇所)の位置で少なくとも1つの改変又は変更(即ち、置換、挿入、及び/又は欠失)を含み、且つポリエステル分解活性を有するポリペプチドを指す。バリアントを、当技術分野で公知の様々な技術により得ることができる。具体的には、野生型タンパク質をコードするDNA配列を変更する技術の例として、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、及び合成オリゴヌクレオチド構築が挙げられるが、これらに限定されない。そのため、「改変」及び「変更」という用語は、特定の位置に関して本明細書で使用される場合、この特定の位置のアミノ酸が野生型タンパク質のこの特定の位置のアミノ酸と比較して改変されていることを意味する。
【0020】
「置換」は、アミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられることを意味する。好ましくは、「置換」という用語は、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基、希少な天然に存在するアミノ酸残基(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、アロヒドロキシリジン、6-N-メチルリジン、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、アロ-イソロイシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、ピログルタミン、アミノ酪酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン)、及び多くの場合には合成により生成される天然には存在しないアミノ酸残基(例えば、シクロヘキシル-アラニン)から選択される別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換えを指す。好ましくは、「置換」という用語は、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基(G、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、K、R、Q、N、E、D、S、及びT)から選択される別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換えを指す。記号「+」は、置換の組み合わせを示す。本書では、置換を指定するために、下記の用語が使用される:L82Aは、親配列の82位でのアミノ酸残基(ロイシン、L)がアラニン(A)に置換されることを示す。A121V/I/Mは、親配列の121位でのアミノ酸残基(アラニン、A)が、下記のアミノ酸:バリン(V)、イソロイシン(I)、又はメチオニン(M)の内の1つに置換されることを示す。置換は、保存的置換又は非保存的置換であり得る。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸、及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン、及びスレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン、及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシン)、並びに小型アミノ酸(グリシン、アラニン、及びセリン)のグループ内に存在する。
【0021】
別途指定されない限り、本出願で開示されているアミノ酸位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている。
【0022】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」又は「同一性」という用語は、2つのポリペプチド配列間の一致(同一のアミノ酸残基)の数(又は百分率%で表される割合)を指す。配列同一性は、配列ギャップを最小限に抑えつつ重複及び同一性を最大化するようにアラインされた場合に配列を比較することにより決定される。具体的には、配列同一性を、2つの配列の長さに応じて、多くの数学的なグローバル又はローカルアラインメントアルゴリズムの内のいずれかを使用して決定し得る。長さが類似した配列は、好ましくは、全長にわたり配列を最適にアラインさせるグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman及びWunschアルゴリズム; Needleman and Wunsch, 1970年)を使用してアラインされるが、長さが実質的に異なる配列は、好ましくは、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith及びWatermanアルゴリズム(Smith and Waterman, 1981年)又はAltschulアルゴリズム(Altschul他, 1997年;Altschul他, 2005年)を使用してアラインされる。アミノ酸配列同一性のパーセントを決定するためのアラインメントは、例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/ 又は http://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/等のインターネットウェブサイトで利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当技術分野内の様々な方法で達成される。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大のアラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズム等の、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定し得る。本明細書で目的のために、アミノ酸配列同一性値%は、ペアワイズ配列アラインメントプログラムEMBOSS Needleを使用して生成された値を指しており、このプログラムは、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して2つの配列の最適なグローバルアラインメントを生成しており、全ての検索パラメータは、デフォルト値に設定されており、即ち、スコアリングマトリックス=BLOSUM62、ギャップオープン=11、ギャップエクステンド=1に設定されている。
【0023】
「ポリマー」は、共有化学結合により連結された複数の単量体(繰り返し単位)で構成されている構造を有する化合物又は化合物の混合物を指す。本発明に関連して、ポリマーという用語は、単一タイプの繰り返し単位(即ち、ホモポリマー)又は異なる繰り返し単位の混合物(即ち、コポリマー若しくはヘテロポリマー)で構成される天然ポリマー又は合成ポリマーを含む。本発明によれば、「オリゴマー」は、2~約20個の単量体を含む分子を指す。
【0024】
本発明に関連して、「ポリエステル含有物質」又は「ポリエステル含有製品」は、結晶形態、半結晶形態、又は完全な非晶質形態の、少なくとも1種のポリエステルを含む製品(例えば、プラスチック製品又はプラスチック製品)を指す。特定の実施形態では、ポリエステル含有物質は、プラスチック製のシート、チューブ、ロッド、プロファイル、シェイプ、フィルム、塊、繊維等の少なくとも1種のプラスチック材料から作られた任意のアイテムを指しており、少なくとも1種のポリエステル、及び場合により、可塑剤、無機物、又は有機充填剤等の他の物質又は添加剤を含む。別の特定の実施形態では、ポリエステル含有物質は、プラスチック製品の製造に適した、溶融状態又は固体状態のプラスチック化合物又はプラスチック配合物を指す。別の特定の実施形態では、ポリエステル含有物質は、少なくとも1種のポリエステルを含む織物、布地、又は繊維を指す。別の特定の実施形態では、ポリエステル含有物質は、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック廃棄物又は繊維廃棄物を指す。具体的には、プラスチック製品とは、工業製品のことであり、例えば、硬質又は軟質の包装(ボトル、トレイ、カップ等)、農業用フィルム、バッグ及び袋、使い捨て商品等、カーペットの切れ端、布地、織物等のことである。プラスチック製品は、可塑剤、無機物、有機充填剤、又は染料等の追加の物質又は添加剤を含み得る。本発明に関連して、プラスチック製品は、半結晶性及び/又は非晶質のポリマー及び/又は添加剤の混合物を含み得る。
【0025】
本明細書では、「ポリエステル」という用語は下記を包含するが、これらに限定されない:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びこれらのポリマーのブレンド/混合物。ポリエステルはまた、「ポリオレフィン様」ポリエステル(好ましくは、「ポリエチレン様」ポリエステル)も包含し得、これは、Lebarbe他 Green Chemistry Issue 4 2014年で定義されているように、エステルセグメントが導入されている(一般に、長鎖α,ω-二官能性単量体の重縮合により達成される)ポリオレフィン(好ましくはポリエチレン)に対応する。
【0026】
ポリマー、又はポリマーを含むプラスチック製品に関する「脱重合」という用語は、ポリマー、又は前記プラスチック製品の少なくとも1種のポリマーが、より小さい分子(例えば、単量体及び/若しくはオリゴマー)、及び/又は任意の分解生成物へと解重合され、並びに/又は分解されるプロセスを指す。
【0027】
本発明によれば、「オリゴマー」は、2~約20個の単量体単位を含む分子を指す。一例として、PETから回収されるオリゴマーとして、メチル-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)、及び/又はビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)、及び/又は1-(2-ヒドロキシエチル)、及び/又は4-メチルテレフタレート(HEMT)、及び/又はジメチルテレフタレート(DMT)が挙げられる。
【0028】
特定のエステラーゼの使用
酸性条件下(具体的には、3~6のpH、より具体的には5~5.5のpH)でのプラスチック製品の酵素分解プロセスの最適化に取り組むことにより、本発明者らは、酸性条件下で効率的なポリエステル分解活性(具体的には、PET分解活性)及び耐熱性の改善を示す特定のエステラーゼを同定している。
【0029】
本発明によれば、「酸性条件」は、3~6のpHでの条件(例えば、媒体、溶液等)を指す。具体的には、「酸性条件」は、本エステラーゼが使用される条件を指しており、例えば、本エステラーゼを、3~6のpHの媒体中でポリエステルと接触させ、より具体的には5~5.5のpHの媒体中でポリエステルと接触させる。
【0030】
本発明によれば、本エステラーゼは、酸性条件下で、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する親エステラーゼ又は野生型エステラーゼと比較して、高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性を示す。具体的には、本発明で開示されているエステラーゼは、3~6のpHで提示された場合に、親エステラーゼと比較して高い活性及び/又は高い耐熱性を示す。従って、この高い活性及び/又は高い耐熱性を、3~6の特定のpH及び/又は3~6のpHの範囲で観察し得る。具体的には、この高い活性及び/又は高い耐熱性を、少なくともpH3、pH3.5、pH4、pH4.5、pH5、pH5.2、pH5.5、及び/又はpH6で観察し得る。この高い活性及び/又は高い耐熱性をまた、pH3~6の全範囲、pH4~6の全範囲、pH4.5~6の全範囲、pH5~6の全範囲、pH5.5~6の全範囲、pH5~5.5の全範囲、pH5~5.2の全範囲、pH5.2~5.5の全範囲でも観察し得る。
【0031】
本発明によれば、本エステラーゼは、3~6のpHで、好ましくは4~6のpHで、より好ましくは5~6のpHで、さらにより好ましくは5~5.5のpHで、さらにより好ましくはpH5.2で、同一のpHでの、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有するエステラーゼ(親エステラーゼとも称される)と比較して、高い活性を示す。
【0032】
具体的には、本発明者らは、配列番号1で実施すべき特定のアミノ酸置換を特定しており、このアミノ酸置換により、酸性条件下でのこのポリマーに対するエステラーゼの活性が有利に増加する。
【0033】
本発明との関連の中で、「高い活性」又は「高い分解活性」という用語は、所与の条件(例えば、温度、pH、濃度)での配列番号1のエステラーゼのポリエステルを分解する及び/又は吸着する能力と比較して、同一の条件での、本エステラーゼの同一のポリエステルを分解する能力が高いこと、及び/又は同一のポリエステルを吸着する能力が高いことを示す。そのような増加は、配列番号1のエステラーゼのポリエステル分解活性と比べて少なくとも10%高い可能性があり、好ましくは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、又はより高い可能性がある。具体的には、分解活性とは、ポリエステルの単量体及び/又はオリゴマーをもたらす解重合活性のことであり、この単量体及び/又はオリゴマーをさらに回収して任意選択で再利用し得る。具体的には、本発明のエステラーゼは、高いPET分解活性を有する。本発明との関連の中で、本エステラーゼは、少なくとも3~6のpHでの親エステラーゼの分解活性と比較して、同一のpHで高い分解活性を示す。好ましくは、本エステラーゼは、少なくとも4~6のpHで、好ましくは5~6のpHで、より好ましくは5~5.5のpHで、さらにより好ましくはpH5.2で、高い活性を示す。
【0034】
エステラーゼの「分解活性」を、当技術分野で既知の方法に従って、当業者により評価し得る。例えば、特定のポリマーの解重合活性率の測定、寒天プレート中に分散させた固体高分子化合物の分解速度の測定、又は反応器中でのポリマーの解重合活性率の測定により、分解活性を評価し得る。具体的には、分解活性を、エステラーゼの「比分解活性」を測定することにより評価し得る。PETに対するエステラーゼの「比分解活性」は、反応の初期期間(即ち、最初の24時間)の間でのエステラーゼ 1mg当たりの加水分解されるPET μmol/分又は生成される相当量のTA mg/時間に相当し、反応の加水分解曲線の直線部分から決定され、そのような曲線は、最初の24時間の間での様々な時間で実施されるいくつかのサンプリングにより設定される。別の例として、ポリマー、又はポリマー含有プラスチック製品と分解酵素とを接触させた場合に、温度、pH、及び緩衝液の適切な条件下で放出されるオリゴマー及び/又は単量体の割合及び/又は収量を、規定の期間後(例えば、24時間後、48時間後、又は72時間後)に測定することにより、「分解活性」を評価し得る。
【0035】
酵素の基質に吸着する能力を、当技術分野で既知の方法に従って、当業者により評価し得る。例えば、酵素の基質に吸着する能力を、酵素を含む溶液から測定し得、この酵素は、適切な条件下で、基質と共に事前にインキュベートされている。
【0036】
本発明者らはまた、高温(具外的には、50℃以上90℃以下の温度、好ましくは60℃以上80℃以下の温度、より好ましくは65℃以上75℃以下の温度)での酸性条件下における対応するエステラーゼの安定性の改善(即ち、耐熱性の改善)のために有利に改変され得る、配列番号1中の標的アミノ酸残基も同定している。
【0037】
本発明によれば、本エステラーゼは、3~6のpHで、好ましくは4~6のpHで、より好ましくは5~6のpHで、さらにより好ましくは5~5.5のpHで、さらにより好ましくはpH5.2で、同一のpHでの、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有するエステラーゼ(即ち、親エステラーゼ)の耐熱性と比較して、高い耐熱性を示す。
【0038】
本発明との関連で、「高い耐熱性」という用語は、配列番号1のエステラーゼと比較した、高温(具体的には、50℃~90℃の温度)での化学的な及び/又は物理的な構造の変化に抵抗するエステラーゼの能力の高さを示す。具体的には、エステラーゼの耐熱性は、50℃~90℃、50℃~80℃、50℃~75℃、50℃~70℃、50℃~65℃、55℃~90℃、55℃~80℃、55℃~75℃、55℃~70℃、55℃~65℃、60℃~90℃、60℃~80℃、60℃~75℃、60℃~70℃、60℃~65℃、65℃~90℃、65℃~80℃、65℃~75℃、65℃~70℃の温度で、親エステラーゼの耐熱性と比較して、酸性条件下で改善されている。具体的には、本エステラーゼの耐熱性は、40℃~80℃、50℃~72℃、55℃~60℃、50℃~55℃、60℃~72℃の温度で、親エステラーゼの耐熱性と比較して、改善されている。好ましくは、本エステラーゼの耐熱性は、少なくとも50℃~65℃の温度で、親エステラーゼの耐熱性と比較して改善されている。本発明との関連で、温度は、+/-1℃で示されている。
【0039】
具体的には、耐熱性を、エステラーゼの融点(Tm)の評価により評価し得る。本発明に関連して、「融点」は、検討する酵素集団の半分が折り畳まれていないか又はミスフォールドする温度を指す。典型的には、本発明のエステラーゼは、3~6のpHで、配列番号1のエステラーゼのTmと比較して、約0.8℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、10℃、又はより高いTmの上昇を示す。具外的には、3~6のpHで、本発明のエステラーゼは、配列番号1のエステラーゼと比較して、50℃~90℃の温度での半減期が延長され得る。具体的には、本発明のエステラーゼは、3~6のpHで、配列番号1のエステラーゼと比較して、50℃~90℃、50℃~80℃、50℃~75℃、50℃~70℃、50℃~65℃、55℃~90℃、55℃~80℃、55℃~75℃、55℃~70℃、55℃~65℃、60℃~90℃、60℃~80℃、60℃~75℃、60℃~70℃、60℃~65℃、65℃~90℃、65℃~80℃、65℃~75℃、65℃~72℃、65℃~70℃、60℃~72℃の温度での半減期が延長され得る。有利には、本発明で開示されているエステラーゼは、3~6のpHで、配列番号1のエステラーゼと比較して、少なくとも50℃~60℃の温度での半減期が延長されている。
【0040】
本発明に関連して、本発明で開示されているエステラーゼは、少なくとも3~6のpHで、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有するエステラーゼと比較して、高い耐熱性を示す。好ましくは、本エステラーゼは、少なくとも4~6のpH、好ましくは5~6のpH、より好ましくは5~5.5のpH、さらにより好ましくはpH5.2で、高い耐熱性を示す。
【0041】
エステラーゼの融点(Tm)を、当技術分野で既知の方法に従って、当業者により評価し得る。例えば、DSFを使用してエステラーゼの熱変性温度の変化を定量し、それにより、このエステラーゼのTmを決定し得る。或いは、円二色性を使用するタンパク質の折り畳みの分析により、Tmを評価し得る。好ましくは、実験部分で示すように、DSF又は円二色性を使用してTmを測定する。本発明に関連して、Tmの比較を、同一条件(例えば、pH、ポリエステルの性質及び量等)下で測定されるTmと共に実施する。
【0042】
或いは、様々な温度でのインキュベーション後のエステラーゼのエステラーゼ活性及び/又はポリエステル解重合活性を測定し、親エステラーゼのエステラーゼ活性及び/又はポリエステル解重合活性と比較することにより、耐熱性を評価し得る。様々な温度でのポリエステルの解重合アッセイを複数回実施する能力も評価し得る。迅速で有益な試験は、様々な温度でのインキュベーション後に寒天プレート中に分散させた固体ポリエステル化合物を分解するエステラーゼの能力のハロー直径測定による評価からなり得る。
【0043】
本発明によれば、本発明で開示されているエステラーゼは、塩基性条件よりも酸性条件、即ち7超のpHにおいて、配列番号1の酵素と比較して、より高いポリエステル分解活性及び/又はより高い耐熱性をさらに示す。本発明に関連して、「塩基性条件」は、7超のpHでの、好ましくは7~9のpHでの条件(例えば、培地、溶液等)を指す。
【0044】
具体的には、これらのエステラーゼは、7以上のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、具体的には4~6、5~6、5~5.5のpHで、親エステラーゼと比較して効率的であり、且つ安定している。具体的には、これらのエステラーゼは、配列番号1の酵素と比較して高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性を示し、これは、7以上のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHでより高く、具体的には5~5.5のpHでより高い。
【0045】
使用されるエステラーゼ
そのため、本発明は、ポリエステル又はポリエステル含有物質を分解するためのエステラーゼの使用であって、ポリエステル又はポリエステル含有物質を、3~6のpHで、酵素と接触させ、この酵素は、(i)配列番号1に記載されている完全長アミノ酸配列に対する少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有しており、(ii)T11E/M、R12D/N/Q/E/F、S13E、A14E/D、T16E、A17T、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G/D、W155A、T157S、P179D/E、Q182D/E、F187Y/I、D203C/K/R、N204D/E/G、A205D、S206D/E、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、N211D/Y/E、S212F、N213P/D、N214D、A215N、S218A、V219I、Y220M/F、Q237D、F238E、N241E/D、N243E/D、L247T、V170I、G135A、V167Q/T、S248C及びA24Rから選択される少なくとも1つの置換を含み、この位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされており、及び(iii)3~6のpHでポリエステル分解活性を有する、エステラーゼの使用に関する。
【0046】
別途規定されない限り、本出願で開示されているアミノ酸位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を参照してナンバリングされている。
【0047】
有利には、本エステラーゼは、4~6のpHで、好ましくは5~6のpHで、より好ましくは5~5.5のpHで、具体的にはpH5.2で、ポリエステル分解活性を有する。
【0048】
本発明によれば、本エステラーゼを、3~6のpHで、好ましくは4~6のpHで、より好ましくは5~6のpHで、さらにより好ましくは5~5.5のpHで、具体的にはpH5.2で、ポリエステル又はポリエステル含有物質と接触させる。
【0049】
ある実施形態では、本エステラーゼは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、T11E/M、R12D/N/Q/E/F、S13E、A14E/D、T16E、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G/D、W155A、T157S、Q182D/E、D203C/K、N204E/G、S206D、N211D/Y/E、S212F、N213P、V219I、Y220M、Q237D、N241E/D、N243E、L247T、V170I、G135A、V167Q/T、S248C、A24R及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、好ましくは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、T11M、R12D/E/F、A14E/D、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G、W155A、T157S、Q182D/E、D203C/K、N204E/G、N211D/Y/E、S212F、N213P、V219I、Q237D、N241E/D、V170I、G135A、V167Q/T、S248C、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0050】
別の実施形態では、本エステラーゼは、F208M/W/I/L/T/E、T11E/M、R12D/N/Q/E/F、S13E、A14E/D、T16E、T61S/V、A62D、F90A/Y、W155A、T157S、Q182D/E、N204E/G、S206D、N211D/Y、S212F、N213P、V219I、Y220M、Q237D、N241E/D、N243E、及びL247Tから選択される少なくとも1つの置換を含み、好ましくは、F208M/W/I/L/T/E、T11M、R12D/E/F、A14E/D、T61S/V、A62D、F90A/Y、W155A、T157S、Q182D/E、N204E、N211D/Y、S212F、N213P、V219I、Q237D、及びN241E/Dから選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0051】
好ましくは、本エステラーゼは、A14E/D、F90A/Y、Y92G/D、Q182D/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、N211D/Y/E、N213P/D、V219I、V170I、D203C/K/R、S248C A24R、及びF187Y/Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、好ましくは、A14E、F90A、Y92G/D、Q182D/E、N204G、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、N211D/E、N213P、V219I、V170I、D203C/K/R、S248C A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、より好ましくは、F90A、Y92G、Q182D/E、N204G、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、N211D/E、V170I、D203C/K/R、S248C、N213P、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、さらにより好ましくは、N211D/E、N204G、F208M/R/I/Q/L/S/T、Q182D/E、Y92G、V170I、D203C/K/R、S248C、N213P A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含む。例えば、本エステラーゼは、F208T/L/S/R/G/I/M、Q182E、Y92G、V170I、D203C、S248C、及びN213Pから選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0052】
本発明によれば、本エステラーゼは、N211D、N204G、F90A、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、Q182D/E、及びA24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み得、好ましくは、N211D、N204G、F208M/R/Q/L/S/T、Q182D/E、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み得、より好ましくは、N211D、F208M/Q/L/S/T、Q182D/E、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み得る。
【0053】
本発明によれば、本エステラーゼは、少なくとも、置換の組み合わせY92G+V170I+D203C+S248Cと、N211D、N204G、F90A、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、及びQ182D/Eから選択され、好ましくは、N211D、N204G、F208M/R/I/Q/L/S/T、及びQ182D/Eから選択され、より好ましくは、F208M/I//L/T及びQ182Eから選択される少なくとも1つの置換とを含み得る。
【0054】
本発明によれば、本エステラーゼは、少なくとも、置換の組み合わせY92G+V170I+D203C+S248C+N213P+Q182Eと、N211D、N204G、F90A、及びF208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/Tから選択され、好ましくは、N211D、N204G、及びF208M/R/I/Q/L/S/Tから選択され、より好ましくは、N211D、N204G、及びF208M/I//L/Tから選択され、さらにより好ましくは、F208M/I//L/Tから選択される少なくとも1つの置換とを含み得る。
【0055】
本発明によれば、本エステラーゼは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/Eから選択される少なくとも1つの置換を含み得、好ましくは、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/Tから選択される少なくとも1つの置換を含み得、より好ましくは、F208M/R/I/Q/L/S/Tから選択される少なくとも1つの置換を含み得、さらにより好ましくは、F208M/R/Q/L/S/Tから選択される少なくとも1つの置換を含み得る。具体的には、本エステラーゼは、F208M/I/L/Tから選択される少なくとも1つの置換を含む。具体的には、この酵素は、少なくとも、置換F208Mを含む。
【0056】
本発明によれば、本エステラーゼが置換D203K/Rを含む場合には、好ましくは、親エステラーゼ(即ち、配列番号1のエステラーゼ)と同様に、アミノ酸残基S248が維持される。
【0057】
本発明によれば、本エステラーゼは、A14E/D、F90A/Y、Y92G/D、Q182D/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、N211D/Y/E、N213P/D、V219I、V170I、D203C/K/R、S248C A24R、及びF187Y/Iから選択され、好ましくは、A14E、F90A、Y92G/D、Q182D/E、N204G、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、N211D/E、N213P、V219I、V170I、D203C/K/R、S248C A24R、及びF187Iから選択され、より好ましくは、F90A、Y92G、Q182D/E、N204G、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、N211D/E、V170I、D203C/K/R、S248C、N213P A24R、及びF187Iから選択され、さらにより好ましくは、N211D、N204G、F208M/R/I/L/S/T、Q182D/E、Y92G、V170I、D203C/K/R、S248C、N213P A24R、及びF187Iから選択される少なくとも2つの置換を含み得、好ましくは、少なくとも3、4、5、6、7個の置換を含み得る。
【0058】
本発明によれば、本エステラーゼは、少なくとも、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203C+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、及びF208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203K+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の組み合わせを含み得、好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M/I/L/T+D203K+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の組み合わせを含み得、より好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M/I/L/T+D203K+V170I+Y92G+N213P+Q182Eから選択される置換の組み合わせを含み得る。
【0059】
例えば、本エステラーゼは、少なくとも、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M+D203K+V170I+Y92G+N213P+Q182Eから選択される置換の組み合わせを含み得、好ましくは、置換の組み合わせF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182Eを含み得る。
【0060】
本発明によれば、本エステラーゼは、S13L及びD158Eから選択される少なくとも1つの置換をさらに含み得、好ましくは、少なくとも2つの置換S13L及びD158Eをさらに含み得る。
【0061】
例えば、本エステラーゼは、少なくとも、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L、又はF208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+D158Eから選択される置換の組み合わせを含み得、好ましくは、組み合わせF208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eを含み得、より好ましくは、組み合わせF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eを含み得る。
【0062】
ある実施形態では、本エステラーゼは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、T11E/M、R12D/N/Q/E/F、S13E、A14E/D、T16E、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G/D、W155A、T157S、Q182D/E、D203C/K、N204E/G、S206D、N211D/Y/E、S212F、N213P、V219I、Y220M、Q237D、N241E/D、N243E、L247T、V170I、G135A、V167Q/T、S248C、A24R、及びF187Iから選択される1~31個の置換を含み、好ましくは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、T11M、R12D/E/F、A14E/D、T61S/V、A62D、F90A/Y、Y92G、W155A、T157S、Q182D/E、D203C/K、N204E/G、N211D/Y/E、S212F、N213P、V219I、Q237D、N241E/D、V170I、G135A、V167Q/T、S248C、A24R、及びF187Iから選択される1~25個の置換を含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有しており、且つ3~6のpHで、好ましくは5~5.5のpHで、アミノ酸配列 配列番号1と比較して高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性を示す。
【0063】
本発明によれば、本エステラーゼは、配列番号1の親エステラーゼと同様に、S130、D175、H207、C240、又はC275から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含み得、即ち、本発明の酵素は、これらの位置の内の1、2、3箇所等又は全てで改変されていない。
【0064】
例えば、本エステラーゼは、少なくとも、この酵素の触媒部位を形成するアミノ酸S130、D175、及びH207、並びに/又は親エステラーゼと同様にジスルフィド結合を形成するアミノ酸C240及びC275を含む。好ましくは、このエステラーゼは、配列番号1の親エステラーゼと同様に、少なくとも、S130+D175+H207、C240+C275、及びS130+D175+H207+C240+C275から選択されるアミノ酸残基の組み合わせを含む。
【0065】
本発明によれば、本発明で開示されているエステラーゼは、少なくとも、3~6、4~6、4.5~6、5~6、5.5~6、5~5.5、5~5.2、5.2~5.5、4~5.5、4.5~5.5、5~5.5のpHの範囲で、好ましくは5~5.2のpHの範囲で、より好ましくはpH5.2で、測定可能なポリエステル分解活性を示す。
【0066】
本エステラーゼは、6.5~10、7~9.5、7~9、7.5~8.5、6~9、6.5~9、6.5~8のpH範囲で、測定可能なポリエステル分解活性をさらに示し得る。好ましくは、本エステラーゼは、pH8で、測定可能なポリエステル分解活性をさらに示す。
【0067】
有利には、本発明で開示されているエステラーゼは、3~6のpHの範囲で、好ましくは4~6のpHで、より好ましくは5~6のpHで、さらにより好ましくは5~5.5のpHで、配列番号1のエステラーゼと比較して高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性を示す。具体的には、本発明のエステラーゼは、3~6、4~6、5~6、5~5.5、5.2~5.5、5.5~6、5~5.2のpHの範囲で、配列番号1のエステラーゼと比較して高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性を示す。本発明によれば、pHの範囲の指定は、前記範囲の下限及び上限を含む。
【0068】
本発明で開示されているエステラーゼは、6~10のpHで、好ましくは6.5~9のpHで、より好ましくは6.5~8のpHで、さらにより好ましくはpH8で、配列番号1のエステラーゼと比較して高い耐熱性及び/又は高いポリエステル分解活性をさらに示し得る。
【0069】
本発明によれば、本エステラーゼは、3~6のpHで、配列番号1のエステラーゼと比較して高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性を示す。具体的には、本エステラーゼは、3~6の特定のpH、及び/又は3~6のpHの範囲で、配列番号1のエステラーゼと比較して高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性を示す。好ましくは、本エステラーゼは、3.5~6、4~6、5~6、5~5.5、5.2~5.5、4~5.5、4.5~5.5のpHで、配列番号1のエステラーゼと比較して高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性を示す。好ましくは、本エステラーゼは、少なくともpH3、pH3.5、pH4、pH4.5、pH5、pH5.2、pH5.5、及び/又はpH6で、配列番号1のエステラーゼと比較して高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性を示す。本エステラーゼはまた、3~6のpHの全範囲で、4~6のpHの全範囲で、4.5~6のpHの全範囲で、5~6のpHの全範囲で、5.5~6のpHの全範囲で、5~5.5のpHの全範囲で、5~5.2のpHの全範囲で、5.2~5.5のpHの全範囲で、配列番号1のエステラーゼと比較して高いポリエステル分解活性及び/又は高い耐熱性も示し得る。
【0070】
本発明によれば、本エステラーゼは、7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、具体的には5~5.5のpHで、配列番号1の酵素と比較して大きいポリエステル分解活性の増加、及び/又は大きい耐熱性の増加を示す。
【0071】
ある実施形態では、本エステラーゼは、N211D、N204G、F208T/M/L/S/Q/R、Q182D/E、A24R、F187I、F208M/I/T/L+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+D158Eから選択される少なくとも1つの置換及び/又は置換の組み合わせを含む。
【0072】
ポリエステル分解活性が高いエステラーゼ
本発明によれば、本エステラーゼは、N211D/Y/E、N204D/E/G、F90A/Y、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、Q182D/E、D203C/K/R、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、A24R、及びF187Y/Iから選択される少なくとも1つの置換を含み得、好ましくは、N211D/E、N204G、F90A、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、Q182D/E、D203C、S248C、V170I、Y92G、N213P A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み得、より好ましくは、N211D/E、N204G、F90A、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、Q182D/E、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み得、且つ3~6のpHで、好ましくは5~5.5のpHで、配列番号1の酵素と比較して高いポリエステル分解活性を示す。有利には、この酵素は、N211D/Y/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、好ましくは、N211D/E、N204G、F208M/R/Q/L/S/T、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G、N213P A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、より好ましくは、N211D/E、N204G、F208M/R/Q/L/S/T、Q182D/E、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含み、さらにより好ましくは、N211D、F208M/Q/L/S/T、Q182D/E、A24R、及びF187Iから選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0073】
具体的には、本エステラーゼは、N211D/Y/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、A24R、及びF187Iから選択され、好ましくは、N211D/E、N204G、F208M/R/Q/L/S/T、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G、N213P A24R、及びF187Iから選択され、より好ましくは、N211D/E、N204G、F208M/R/Q/L/S/T、Q182D/E、A24R、及びF187Iから選択され、さらにより好ましくは、N211D、F208M/Q/L/S/T、Q182D/E、A24R、及びF187Iから選択される1つの置換を含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列からなる。
【0074】
本発明によれば、本酵素は、少なくとも、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択される置換の組み合わせを含み得る。
【0075】
実際に、本発明者らは、これらのエステラーゼが、塩基性条件下と比べて酸性条件下で、配列番号1の酵素と比較して大きいポリエステル分解活性の増加を示すことを示している。具体的には、本発明者らは、前記エステラーゼが、7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、具体的には5~5.5のpHで、親エステラーゼと比較して効率的である(即ち、配列番号1の酵素と比較して大きいポリエステル分解活性の増加を示す)ことを示している。
【0076】
例えば、本エステラーゼは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203C+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、及びF208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203K+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み、好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M/I/L/T+D203K+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み、より好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含む。具体的には、本酵素は、F208M/I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み得る。具体的には、本酵素は、F208M/I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み得る。
【0077】
特定の実施形態では、本エステラーゼは、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択される置換の1つの組み合わせを含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列からなる。
【0078】
ある実施形態では、本エステラーゼは、N211D/Y/E、N204D/E/G、F90A/Y、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、A24R、及びF187Y/Iから選択され、好ましくは、N211D/E、N204G、F90A、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、Q182D/E、D203C、S248C、V170I、Y92G、N213P、A24R、及びF187Iから選択される1~12個の置換を含む配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含み、且つ3~6のpHで、好ましくは5~5.5のpHで、アミノ酸配列 配列番号1と比較して高いポリエステル分解活性を示す。具体的には、本エステラーゼは、N211D/Y/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、A24R、及びF187Y/Iから選択される1~11個の置換を含み、好ましくは、N211D、N204G、F208M/R/I/Q/L/S/T、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G、N213P、A24R、及びF187Iから選択される1~11個の置換を含み、より好ましくは、N211D/E、F208M/I/Q/L/S/T、Q182E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G、N213P、A24R、及びF187Iから選択される1~10個の置換を含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含み、且つ塩基性条件下と比べて酸性条件下で、配列番号1のエステラーゼと比較して大きいポリエステル分解活性の増加を示す。
【0079】
ある実施形態では、本エステラーゼは、N211D/Y/E、N204D/E/G、F90A/Y、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、A24R、及びF187Y/Iから選択され、好ましくは、N211D/E、N204G、F90A、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、Q182D/E、D203C、S248C、V170I、Y92G、N213P、A24R、及びF187Iから選択される1~12個の置換を含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列からなり、且つ3~6のpHで、好ましくは5~5.5のpHで、アミノ酸配列 配列番号1と比較して高いポリエステル分解活性を示す。具体的には、本エステラーゼは、N211D/Y/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、A24R、及びF187Y/Iから選択される1~11個の置換を含み、好ましくは、N211D、N204G、F208M/R/I/Q/L/S/T、Q182D/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G、N213P、A24R、及びF187Iから選択される1~11個の置換を含み、より好ましくは、N211D/E、F208M/I/Q/L/S/T、Q182E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G、N213P、A24R、及びF187Iから選択される1~10個の置換を含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列からなり、且つ塩基性条件下と比べて酸性条件下で、配列番号1のエステラーゼと比較して大きいポリエステル分解活性の増加を示す。
【0080】
ある実施形態では、本エステラーゼは、N211D/Y/E、N204D/E/G、F90A/Y、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、Q182D/E、A24R、及びF187Y/Iから選択され、好ましくは、N211D/E、N204G、F90A、F208M/G/N/R/I/A/Q/L/S/T、Q182D/E、A24R、及びF187Iから選択される単一の置換を含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有しており、且つ3~6のpHで、好ましくは5~5.5のpHで、アミノ酸配列 配列番号1と比較して高いポリエステル分解活性を示す。具体的には、本エステラーゼは、N211D/E、N204G、F208M/R/Q/L/S/T、Q182E、A24R、及びF187Iから選択され、好ましくは、F208T/L/M/S/R及びQ182Eから選択される単一の置換を含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する。有利には、前記エステラーゼは、塩基性条件下と比べて酸性条件下で、配列番号1の酵素と比較して大きいポリエステル分解活性の増加を示す。
【0081】
耐熱性が高いエステラーゼ
本発明によれば、本エステラーゼは、N211D/Y/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、D203C/K/R、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、及びQ182D/Eから選択される少なくとも1つの置換を含み得、好ましくは、N211D、N240G、F208M/I/L/T、D203C、S248C、V170I、Y92G、N213P、及びQ182Eから選択される少なくとも1つの置換を含み得、より好ましくは、N211D、N240Gから選択される少なくとも1つの置換を含み得、且つ3~6のpHで、好ましくは5~5.5のpHで、配列番号1のエステラーゼと比較して高い耐熱性を示す。
【0082】
有利には、本エステラーゼは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203C+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、及びF208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203K+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み、好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、及びF208M/I/L/T+D203K+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み、より好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含む。
【0083】
有利には、本エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208L+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L及びF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+D158Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含む。
【0084】
実際に、本発明者らは、これらのエステラーゼが、塩基性条件下と比べて酸性条件下で、配列番号1の酵素と比較して大きい耐熱性の増加を示すことを示している。具体的には、本発明者らは、前記エステラーゼが、7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、具体的には5~5.5のpHで、親エステラーゼと比較して耐熱性であることを示している。
【0085】
特定の実施形態では、本エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208L+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E、F208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L及びF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+D158Eから選択される置換の1つの組み合わせを含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列からなる。
【0086】
分解活性及び耐熱性の両方が高いエステラーゼ
本発明によれば、本エステラーゼは、
N211D/Y/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、D203C/K/R、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、及びQ182D/Eから選択される少なくとも1つの置換を含み得、好ましくは、N211D、N204G、F208M/I/L/T、D203C/K、S248C、V170I、Y92G、N213P、及びQ182Eから選択される少なくとも1つの置換を含み得、より好ましくは、N211D及びN204Gから選択される少なくとも1つの置換を含み得、且つ3~6のpHで、好ましくは5~5.5のpHで、アミノ酸配列 配列番号1と比較して高いポリエステル分解活性及び高い耐熱性の両方を示す。
【0087】
例えば、本エステラーゼは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203C+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、及びF208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203K+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み、好ましくは、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、及びF208M/I/L/T+D203K+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/Eから選択される置換の少なくとも1つの組み合わせを含み、より好ましくは、置換の組み合わせF208M/I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182Eを含む。
【0088】
実際に、本発明者らは、これらのエステラーゼが、塩基性条件下と比べて酸性条件下で、配列番号1の酵素と比較して大きいポリエステル分解活性の増加、及び大きい耐熱性の増加を示すことを示している。具体的には、本発明者らは、前記エステラーゼが、7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、親エステラーゼと比較して効率的であり且つ安定していることを示している。
【0089】
別の実施形態では、本エステラーゼは、N211D/Y/E、N204D/E/G、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E、D203C/K、S248C、V170I、Y92G/D、N213P/D、及びQ182D/Eから選択され、好ましくは、N211D、N204G、F208M/I/L/T、D203C/K、S248C、V170I、Y92G、N213P、及びQ182Eから選択される1~9個の置換を含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有しており、且つ3~6のpHで、好ましくは5~5.5のpHで、アミノ酸配列 配列番号1と比較して高いポリエステル分解活性及び高い耐熱性の両方を示す。一例として、本エステラーゼは、N204D/E/G及びN211D/Y/Eから選択され、好ましくはN204G及びN211Dから選択される単一の置換を含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する。
【0090】
別の例では、本エステラーゼは、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203C+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203K+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、F208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E及びF208M/W/G/N/R/I/A/Q/L/S/T/E+D203K+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択され、好ましくはF208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、F208M/I/L/T+D203K+S248C+V170I+Y92G/D+N213P/D+Q182D/E、F208M/I/L/T+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158E、及びF208M/I/L/T+D203K+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択され、より好ましくはF208M/I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、又はF208M/I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eから選択される置換の1つの組み合わせを含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有する。具体的には、前記エステラーゼは、塩基性条件下と比べて酸性条件下で、配列番号1の酵素と比較して大きいポリエステル分解活性の増加、及び大きい耐熱性の増加を示す。具体的には、本エステラーゼは、置換の組み合わせF208M/I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E、又はF208M+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+Q182E+S13L+D158Eを含む、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を有しており、且つ7超のpHと比べて、具体的には7~9のpHと比べて、3~6のpHで、親エステラーゼと比較して効率的であり、且つ安定である。
【0091】
分解プロセス
ポリエステル又はポリエステル含有物質の酵素分解プロセスの最適化に取り組むことにより、本発明者らは、工業的性能に適合する酵素活性を維持しつつ、塩基消費量を削減することにより、副産物(塩)の生成を回避し、且つポリエステル又はポリエステル含有物質の分解プロセスの経済的収益を改善することが可能であることを発見している。より具体的には、本発明者らは、反応媒体が、塩の形で特定の量の等価のテレフタル酸を既に含む場合には、いかなる塩基も添加することなく、酸性pHでポリエステルの酵素的解重合を実施し得ることを発見している。上記で説明されている特定のエステラーゼは、酸性条件下でポリエステル又はポリエステル含有物質を分解するのに特に適している。
【0092】
これに関して、本発明の目的は、ポリエステル又はポリエステル含有物質を分解するプロセスであって、3~6のpHの反応媒体中のポリエステル含有物質又はポリエステルを、前記ポリエステルを分解可能な、上記で説明されている任意のエステラーゼと接触させることにより実施される前記ポリエステルの解重合の工程を含むプロセスを提供することである。
【0093】
本発明によれば、解重合工程を、好ましくは、40℃~80℃の温度で実施し、好ましくは50℃~72℃の温度で実施し、より好ましくは50℃~65℃の温度で実施し、さらにより好ましくは50℃~60℃の温度で実施する。ある実施形態では、解重合工程を、55℃~60℃又は50℃~55℃の温度で実施する。別の実施形態では、解重合工程を、55℃~65℃で実施する。別の実施形態では、解重合工程を、60℃~72℃で実施し、好ましくは60℃~70℃で実施する。有利には、解重合工程の温度は、目的のポリエステルのTgよりも低く維持される。本発明に関連して、「目的のポリエステル」は、解重合工程の標的となるポリエステルを指す。好ましくは、目的のポリエステルは、少なくともテレフタル酸単量体(TA)を含む。有利には、温度は、所与の温度±1℃で維持される。
【0094】
本発明によれば、解重合工程を、4~6、5~6、4~5.5、4.5~5.5、5~5.5、5.5~6、5.1~5.3、5~5.2、3~5、3~4、3.5~4、4~5、又は4.5~5のpHで実施し得る。
【0095】
有利には、解重合工程を、5.0~5.5のpH(例えば、pH5.2)、及び50℃~72℃(好ましくは、50℃~55℃又は65℃~72℃)の温度で実施する。
【0096】
追加の酵素
ポリエステル又はポリエステル含有物質を分解するプロセスを、このポリエステル又はポリエステル含有物質を、上記で開示されているエステラーゼの内のいずれか1つ、及び少なくとも1種の追加の酵素と接触させることにより実施し得る。
【0097】
例えば、追加の酵素は、サーモビフィダ・セルロシチカ(Thermobifida cellulosityca)、サーモビフィダ・ハロトレランス(Thermobifida halotolerans)、サーモビフィダ・フスカ(Thermobifida fusca)、サーモビフィダ・アルバ(Thermobifida alba)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、フサリウム・ソラニ・ピシ(Fusarium solani pisi)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、シロコックス・コニゲヌス(Sirococcus conigenus)、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)、ディラビア・テルレストリス(Thielavia terrestris)、サッカロモノスポラ・ビリジス(Saccharomonospora viridis)、サーモモノスポラ・クルバータ(Thermomonospora curvata)から選択される微生物に由来するクチナーゼ、又はクチナーゼ活性を有するこれらの任意の機能的バリアントである。或いは、又は加えて、追加の酵素は、(好ましくはイデオネラ・サカイエンシス(Ideonella sakaiensis)由来の)リパーゼ、及び/又はフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)由来のクチナーゼ(例えば、UniprotにおいてA0A075B5G4で参照されているもの)、又はクチナーゼ活性を有するこれらの任意の機能的バリアントであり得る。追加の酵素はまた、市販の酵素(例えばNovozym 51032)又はその任意の機能的バリアントからも選択され得る。
【0098】
或いは、又は加えて、ポリエステル又はポリエステル含有物質を分解するプロセスを、ポリエステルを、上記で開示されているエステラーゼの内のいずれか1つ、及びMHET分解活性を有する酵素(MHETase)と接触させることにより実施し得る。
【0099】
反応媒体中のエステラーゼの量は、0.1mg~15mg エステラーゼ/g 標的のポリエステルであり得、好ましくは0.1mg/g~10mg/gであり得、より好ましくは0.1mg/g~5mg/gの範囲であり得、さらに好ましくは0.5mg/g~4mg/gであり得る。好ましくは、反応媒体中のエステラーゼの量は、最高4mg/g 標的のポリエステルであり、好ましくは最高3mg/gであり、より好ましくは最高2mg/g 標的のポリエステルである。
【0100】
より一般的には、反応媒体中の各酵素の量は、好ましくは、0.1mg~15mg/g 標的のポリマーである。
【0101】
ポリエステル
特許請求されている本発明を、任意のポリエステル又はポリエステル含有物質で実施し得る。好ましくは、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-テレフタレート)(PBST)、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート/イソフタレート)-co-(ラクテート)(PBSTIL)、「ポリオレフィン様」ポリエステル、及びこれらのポリマーのブレンド/混合物から選択される。好ましくは、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0102】
例えば、本発明を、プラスチック廃棄物回収及び/又は産業廃棄物からのプラスチック製品で実施し得る。より具体的には、本発明を、(たとえ食品残渣、界面活性剤等で汚染されていても)家庭プラスチック廃棄物(例えば、プラスチックボトル、プラスチックトレイ、プラスチックバッグ、プラスチック包装、軟質プラスチック、及び/又は硬質プラスチック)を分解するために実施し得る。或いは、又は加えて、本発明を、布、織物、及び/又は産業廃棄物から得られる繊維等のプラスチック繊維を分解するために実施し得る。より具体的には、本発明を、布、織物、及び/又はタイヤから得られるPET繊維等のPETプラスチック及び/又はPET繊維廃棄物で使用し得る。
【0103】
本発明は、少なくともテレフタル酸単量体(TA)を含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するのに特に適している。
【0104】
精製
プラスチック製品を分解するプロセスは、解重合の工程により生じる単量体、及び/又はオリゴマー、及び/又は分解生成物(好ましくはテレフタル酸)を回収して任意選択で精製する工程をさらに含み得る。解重合により生じる単量体、及び/又はオリゴマー、及び/又は分解生成物を、逐次的に又は連続的に回収し得る。
【0105】
単一タイプの単量体及び/若しくはオリゴマー、又はいくつかの異なるタイプの単量体及び/若しくはオリゴマーを、回収し得る。回収された単量体、及び/又はオリゴマー、及び/又は分解生成物を、あらゆる適切な精製方法を使用して精製し得、任意選択で、再重合可能な形態に調整し得る。精製の一例は、国際公開第1999/023055号で説明されている。例えば、固体形態のTAの回収は、ろ過により反応媒体の固相を液相から分離することを含む。
【0106】
回収された固相を、DMF、NMP、DMSO、DMAC、又はTAを可溶化することが既知の任意の溶媒から選択される溶媒に溶解させ得、不純物を除去するためにろ過し得る。次いで、可溶化されたTAを、当業者に既知の任意の手段により再結晶化させ得る。
【0107】
解重合工程の後、精製プロセスの前に反応媒体にMHETaseを添加して、解重合工程中に生成されたMHETを加水分解してTAを生成させ得る。
【0108】
次いで、再重合可能な単量体及び/又はオリゴマーを再利用して、ポリマーを合成し得る。当業者は、単量体/オリゴマー及び合成するポリマーにプロセスパラメータを容易に適合させ得る。
【0109】
従って、本発明の目的は、ポリエステル、若しくはポリエステル含有物質のポリエステルをリサイクルするプロセスであって、前記ポリエステル若しくはポリエステル含有物質を、3~6のpHで、上記で説明されているエステラーゼの内のいずれか1つと接触させることによるプロセス、並びに/又はポリエステル含有物質から、単量体、及び/若しくはオリゴマー、及び/若しくは分解生成物を製造する方法であって、上記で説明されているエステラーゼの内のいずれかを使用することにより、このポリエステル含有物質を、3~6のpHで実施される解重合工程に供し、任意選択で、この単量体及び/若しくはオリゴマーを精製する工程を含む方法を提供することでもある。
【0110】
プラスチック製品を分解するプロセスに関連して上記の全ての実施形態はまた、単量体及び/又はオリゴマーの製造方法、及びリサイクル方法にも適用される。
【0111】
エステラーゼの他の使用
本発明はまた、ポリエステル含有物質の表面加水分解又は表面機能化の方法における、上記で説明されているエステラーゼの内のいずれか1つの使用であって、ポリエステル含有物質を、3~6のpHで前記エステラーゼに曝露することを含む使用に関する。前記方法は、ポリエステル物質の親水性(即ち、吸水性)を高めるのに特に有用である。そのような親水性の向上は、繊維製品の製造、電子機器、及び生物医学的用途において特に興味深い可能性がある。
【0112】
本発明はまた、3~6のpHで水、廃水、又は汚水を処理するための、上記で説明されているエステラーゼの内のいずれか1つの使用にも関する。廃水又は下水の処理用途において、前記エステラーゼを使用して、ポリマーフィラメント、繊維、又は他の種類のポリエステルベースの製品の破片及び断片、好ましくは、PETベースの製品の破片及び断片のようなポリエステル(好ましくはPET)からなるマイクロプラスチック粒子を分解し得る。
【0113】
本発明はまた、洗剤、食品、動物飼料、製紙、繊維、及び医薬品の用途における、上記で説明されているエステラーゼの内のいずれか1つの使用にも関する。一例として、製紙工業において、上記で説明されているエステラーゼの内のいずれか1つを、3~6のpHで使用し得る。より具体的には、前記エステラーゼを使用して、製紙用パルプ、及び製紙機械の水パイプラインから粘着物を除去し得る。
【実施例
【0114】
(実施例1)
エステラーゼの構築、発現、及び精製
- 構築
本発明に係るエステラーゼを、プラスミド構築pET26b-LCC-Hisを使用して生成した。このプラスミドは、配列番号1のエステラーゼをコードする遺伝子をクローニングしたものであり、NdeI制限部位とXhoI制限部位との間で、大腸菌(Escherichia coli)発現に最適化されている。エステラーゼバリアントを生成するために、供給者の推奨に従って、下記の2種類の部位特異的変異誘発キットを使用した:(Santa Clara社, California, USAの) QuikChange II Site-Directed Mutagenesisキット、及びQuikChange Lightning Multi Site-Directed from Agilent。
【0115】
- エステラーゼの発現及び精製
LB-Miller培地又はZYM自動誘導培地(Studier他、2005- Prot. Exp. Pur. 41, 207~234頁) 50mL中でクローニング及び組換え発現を実施するために、Stellar(商標)株(Clontech社, California, USA)及び大腸菌(E. coli)BL21(DE3)(New England Biolabs社, Evry, France)を連続して採用した。0.5mM イソプロピル β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG、Euromedex社, Souffelweyersheim, France)により、LB-Miller培地での誘導を16℃で実施した。培養を、Avanti J-26 XP遠心機(Beckman Coulter社, Brea, USA)で遠心分離(8000rpm、10℃で20分)して停止させた。細胞を、Talon緩衝液(Tris-HCl 20 mM、NaCl 300 mM、pH8) 20mLに懸濁させた。次いで、細胞懸濁液を、FB 705超音波発生装置(Fisherbrand社, Illkirch, France)により、30%の振幅で2分間超音波処理した(2秒のON及び1秒のOFFサイクル)。次いで、下記の遠心分離工程を行った:エッペンドルフの遠心分離機で10000g、10℃にて30分間。可溶性画分を回収し、アフィニティークロマトグラフィーに供した。この精製工程を、Talon(登録商標) Metal Affinity Resin (Clontech社, CA, USA)で完了した。タンパク質の溶出を、イミダゾールを補充したTalon緩衝液の工程で実行した。精製されたタンパク質を、Talon緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液(100~300mM、pH5.2)に対して透析し、次いで、製造業者の指示に従いBio-Radタンパク質アッセイを使用して定量し(Lifescience Bio-Rad社、France)、+4℃で保存した。
【0116】
(実施例2)
エステラーゼの分解活性の評価
エステラーゼの分解活性を決定し、配列番号1のエステラーゼの活性と比較した。
【0117】
比活性を評価するために、下記の複数の方法論を使用した。
(1)PET加水分解及び超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)分析に基づく比活性
(2)PET加水分解及び紫外線吸収(UVアッセイ)分析に基づく比活性
(3)固体形態のポリエステルの分解に基づく分解活性
(4)100mLを超える反応器中でのPET加水分解に基づく分解活性
【0118】
2.1.PET加水分解及び超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)分析に基づく比活性
粉末状の非晶質PET(20%未満の結晶化度に達するために、国際公開第2017/198786号に従って調製した) 100mgを秤量し、100mLのガラス瓶に導入した。酸性条件での測定用に酢酸ナトリウム緩衝液(100~300mM、pH5.2)で1,727μMに調製した(又は塩基性条件ではTalon緩衝液(Tris-HCl 20mM、NaCl 0.3M、pH8)で0.69μMに調製した)、配列番号1のエステラーゼ(参照対照として)又は本発明のエステラーゼを含むエステラーゼ調製物1mLを、ガラス瓶に導入した。最後に、(測定を行うpHに応じて)対応する緩衝液9mL又は49mLを添加した。
【0119】
Max Q 4450インキュベータ(Thermo Fisher Scientific, Inc.社, Waltham, MA, USA)中において、50℃、54℃、60℃、65℃、68℃、又は72℃、及び150rpmで各ガラス瓶をインキュベートすることにより、解重合が開始した。
【0120】
解重合反応の初速度(mg 生成された当量のTA/時間)を、最初の24時間中の様々な時点で実施したサンプリングにより決定し、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により分析した。必要に応じて、サンプルを、0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH8)で希釈した。次いで、メタノール 150μL及び6N HCl 6.5μLを、サンプル又は希釈液 150μLに添加した。混合し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した後、サンプルをUHPLCにロードして、テレフタル酸(TA)、MHET、及びBHETの遊離をモニタリングした。使用するクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、25℃でのカラムオーブンサーモスタット、及び240nmでのUV検出器を含むUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific, Inc.社, Waltham, MA, USA)であった。使用するカラムは、Discovery(登録商標)HS C18 HPLCカラム(150×4.6mm、5μm、プレカラムを備えている、Supelco社, Bellefonte, USA)であった。TA、MHET、及びBHETを、1mL/分で1mM H2SO4中のMeOHの勾配(30%~90%)を使用して分離した。注入は、サンプル 20μLであった。TA、MHET、及びBHETを、サンプルと同じ条件で、市販のTA及びBHET、並びにインハウス合成したMHETから作成した検量線に従って測定した。PET加水分解の比活性(mg 当量のTA/時間/mg 酵素)を、反応の加水分解曲線の直線部分で(即ち、反応の開始時に)決定し、そのような曲線を、最初の24、48、又は72時間中の様々な時点で実施したサンプリングにより設定した。当量のTAは、測定されたTAと、測定されたMHET及びBHETに含まれるTAとの合計に相当する。前記当量のTAの測定を使用して、所与の時間での及び/又は規定の期間(例えば、24時間又は48時間)後のPET解重合アッセイの収量も算出し得る。
【0121】
2.2.PET加水分解及び紫外線吸収(UVアッセイ)分析に基づく比活性
粉末状の非晶質PET(20%未満の結晶化度に達するために、国際公開第2017/198786号に従って調製した) 100mgを秤量し、100mLのガラス瓶に導入した。酸性条件での測定用に酢酸ナトリウム緩衝液(100~300mM、pH5.2)で1,727μMに調製したか又は塩基性条件ではTalon緩衝液(Tris-HCl 20mM、NaCl 0.3M、pH8)で0.69μMに調製した、配列番号1のエステラーゼ(参照対照として)又は本発明のエステラーゼを含むエステラーゼ調製物1mLを、ガラス瓶に導入した。最後に、(測定を行うpHに応じて)対応する緩衝液9mL又は49mLを添加した。
【0122】
Max Q 4450インキュベータ(Thermo Fisher Scientific, Inc.社, Waltham, MA, USA)中において、50℃、54℃、60℃、又は65℃、及び150rpmで各ガラス瓶をインキュベートすることにより、解重合が開始した。
【0123】
解重合反応の初速度(μmol 生成された可溶性分解物/時間)を、最初の24時間中の様々な時点で実施したサンプリングにより決定し、Eon Microplate Spectrophotometer (BioTek社, USA)を使用して242nmで吸光度を読み取ることにより分析した。(242nmでの)光スペクトルの紫外領域における反応混合物の吸光度の増加は、不溶性PET基質からの可溶性TA又はそのエステル(BHET及びMHET)の放出を示す。この波長での吸光度値を使用して、Lambert-Beerの法則に従ってPET加水分解生成物の総和を算出し得、酵素の比活性を、生成された総当量TAとして決定する。PET加水分解の比活性(μmol 可溶性生成物/時間/mg 酵素)を、反応の加水分解曲線の直線部分で(即ち、反応の開始時に)決定し、そのような曲線を、最初の24、48、又は72時間中の様々な時点で実施したサンプリングにより設定した。前記当量のTAの測定を使用して、所与の時間での及び/又は規定の期間(例えば、24時間又は48時間)後のPET解重合アッセイの収量も算出し得る。必要に応じて、サンプルを、0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH8)で希釈した。
【0124】
2.3.固体形態のポリエステルの分解に基づく活性
寒天プレートの調製を、PET 50mgをヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)に溶解させ、この培地を水溶液 250mLに注ぐことにより実現した。140mbar下での50℃でのHFIP蒸発後、溶液を、リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、又は酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)、又は酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)と混合して、0.5mg/mLのPET及び0.1Mの緩衝液を含む1%寒天の最終濃度を得た。この混合物 約30mLを使用して各プレートを調製し、4℃で保存した。pH8.0、5.2、又は5.0それぞれで、PETを含む寒天プレートのウェルに、酵素調製物(純粋な酵素又は細胞溶解物) 1μL、5μL、又は20μLを入れた。
【0125】
野生型エステラーゼ及びバリアントによるポリエステル分解に起因して形成されたハローの直径又は表面積を、ソフトウェアGimpを使用して寒天プレート写真のハローの直径を測定することにより決定し、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃での規定の期間(2~24時間)後に比較した。
【0126】
2.4.反応器中でのPET加水分解に基づく活性
100mM リン酸カリウム緩衝液(pH8)、又は300mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、又は300mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)、又は300mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0) 80mLで調製された精製エステラーゼ 0.69μmol~2.07μmolを、500mLのMinibioバイオリアクター(Applikon Biotechnology社, Delft, The Netherlands)中において、非晶質PET(20%未満の結晶化度に達するために、国際公開第2017/198786号に従って調製した) 20gと混合した。40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃での温度レギュレーションを、水浴浸漬により実施し、単独のマリンインペラ(marine impeller)を使用して、250rpmで一定の撹拌を維持した。PET解重合アッセイのpHを、6N NaOHの添加により、pH5、又はpH5.2、又はpH6、又はpH8で制御し、my-Control bio controllerシステム(Applikon Biotechnology社, Delft, The Netherlands)により保証した。アッセイ中に塩基消費を記録し、PET解重合アッセイのキャラクタリゼーションに使用し得る。
【0127】
PET解重合アッセイの最終収量を、残存PET質量の決定、又は生成された当量のTAの決定、又は塩基消費のいずれかにより決定した。残存PETの質量決定を、反応の終わりに、12~15μmグレードの11無灰ろ紙(Dutscher SAS社, Brumath, France)に通して反応体積をろ過し、そのような残留物を乾燥させた後に秤量することにより評価した。生成された当量のTAの決定を、2.1で説明されているUHPLC法を使用して実現し、加水分解の百分率を、初期サンプルに含まれるTAの総量に対する所与の時間でのモル濃度(TA+MHET+BHET)の比に基づいて算出した。PET解重合により、反応器内のpHを維持し得るために塩基で中和される酸性単量体が生成された。生成された当量のTAの決定を、対応するモル塩基消費量を使用して算出しており、加水分解の百分率を、初期サンプルに含まれるTAの総量に対する当量のTAの所与の時間におけるモル濃度の比に基づいて算出した。
【0128】
結果
配列番号1のエステラーゼと比較した、酸性条件下での固体形態のPETの分解に基づく活性
本発明のエステラーゼ(バリアント)の活性を、実施例2.3で示したように、50℃、及びpH5.0(V1、V3~V5、V9、V29~V35、V46~48)又はpH5.2(V2、V20~V28、V36~42、V44~V45、V49~V68)で24時間後に評価した。本発明のエステラーゼ(バリアント)のハローの表面積を、配列番号1の野生型エステラーゼにより形成された表面積と比較した。配列番号1の野生型エステラーゼと比べて表面積が大きいバリアント(即ち、規定の期間後に配列番号1のエステラーゼと比べて優れた分解活性を有するバリアント)を、下記のTable 1(表1)で報告する。
【0129】
【表1】
【0130】
Table 1(表1)で列挙されているバリアントは、それぞれ、Table 1(表1)で列挙されている置換を除いて、配列番号1に記載されている正確なアミノ酸配列を有する。
【0131】
興味深いことに、バリアントのほとんどは、配列番号1の野生型エステラーゼのハロー直径の110%以上の直径を有するハローを示す。これらのバリアントを、下記のTable 2(表2)で報告する。
【0132】
【表2】
【0133】
Table 1(表2)で列挙されているバリアントは、それぞれ、Table 1(表2)で列挙されている置換を除いて、配列番号1に記載されている正確なアミノ酸配列を有する。
【0134】
配列番号1のエステラーゼと比較した、酸性条件下での比分解活性
本発明に従って使用したエステラーゼ(バリアント)の比分解活性を、加水分解曲線の直線部分から(即ち、反応開始時に)決定した。配列番号1のエステラーゼの比分解活性を、基準として使用し、100%比分解活性とみなす。比分解活性を、バリアントV1~B15の場合には54℃で、バリアントV16~V19及びV69~V72の場合には60℃で、実施例2.1で示したようにpH5.2にて測定した。結果の概要を、下記のTable 3(表3)にまとめる。
【0135】
【表3A】
【0136】
【表3B】
【0137】
Table 3(表3)のバリアントは、それぞれ、Table 3(表3)で列挙されている置換又は置換の組み合わせを除いて、配列番号1に記載されている正確なアミノ酸配列を有する。
【0138】
配列番号1のエステラーゼと比較した、酸性条件下でのPET解重合収量
pH5.2及び54℃での24時間後の、本発明に従って使用したエステラーゼ(バリアント)のPET解重合収量を、下記のTable 4(表4)に示す。配列番号1のエステラーゼのPET解重合収量を、基準として使用し、100% PET解重合収量とみなす。PET解重合収量を、バリアントV73に関しては24時間後に実施例2.1に示すように測定し、バリアントV74に関しては実施例2.2に示すように測定した。
【0139】
【表4】
【0140】
Table 4(表4)のバリアントは、Table 4(表4)で列挙されている置換を除いて、配列番号1の正確なアミノ酸配列を有する。
【0141】
配列番号1のエステラーゼと比較した、アルカリ性条件下での分解活性
本発明に従って使用したエステラーゼの24時間後の比分解活性及び/又はPET解重合収量をまた、実施例2.1(又はバリアントV16及びV19に関しては実施例2.2)に示すようにpH8でも測定した。活性を68℃で測定したバリアントV16、及び60℃で測定したバリアントV74を除き、活性を65℃で測定した。配列番号1のエステラーゼの24時間後の比分解活性及び/又はPET解重合収量を、基準として使用し、24時間後の100% 比分解活性及び/又は100% PET解重合収量とみなす。
【0142】
配列番号1のエステラーゼと比較してpH8での高い比分解活性を示すバリアントを、下記のTable 5(表5)にさらに示す。
【0143】
【表5】
【0144】
Table 5(表5)で列挙されているバリアントは、それぞれ、Table 5(表5)で列挙されている置換の組み合わせを除いて、配列番号1に記載されている正確なアミノ酸配列を有する。
【0145】
配列番号1のエステラーゼと比較してpH8での高いPET解重合収量を示すバリアントを、下記のTable 6(表6)にさらに示す。
【0146】
【表6】
【0147】
配列番号1のエステラーゼと比較した、酸性条件下及び塩基性条件下での分解活性
pH5.2での相対的な比分解活性、及び/又はpH5.2での24時間後のPET解重合収量と、pH8での相対的な比分解活性、及び/又はpH8での24時間後のPET解重合収量との間の改善比を算出した。1.1を超える改善比を示すバリアント(即ち、(配列番号1と比較して)塩基性条件よりも酸性条件下で高い活性の増加を示すバリアント)を、下記のTable 7(表7)で列挙する。
【0148】
【表7】
【0149】
バリアントは、それぞれ、Table 7(表7)で列挙されている置換、又は置換の組み合わせを除いて、配列番号1に記載されている正確なアミノ酸配列を有する。前記バリアントは、配列番号1と比較して、塩基性条件下と比べて酸性条件下で高い活性の増加を示す。
【0150】
(実施例3)
本発明のエステラーゼの耐熱性の評価
本発明のエステラーゼの耐熱性を決定し、配列番号1のエステラーゼの耐熱性と比較した。
【0151】
下記の様々な方法論を使用して、耐熱性を推定した:
(1)溶液中のタンパク質の円二色性;
(2)温度、時間、及び緩衝液に関する所与の条件下でのタンパク質のインキュベーション後の残存エステラーゼ活性;
(3)温度、時間、及び緩衝液に関する所与の条件下でのタンパク質のインキュベーション後の残存ポリエステル解重合活性;
(4)温度、時間、及び緩衝液に関する所与の条件下でのタンパク質のインキュベーション後の、寒天プレート中に分散させた固体ポリエステル化合物(例えば、PET、又はPBAT、又は類似物)を分解する能力;
(5)温度、緩衝液、タンパク質濃度、及びポリエステル濃度に関する所与の条件下でポリエステル解重合アッセイを複数回実施する能力;
(6)示差走査蛍光定量(DSF)。
【0152】
そのような方法のプロトコルの詳細を、下記に示す。
【0153】
3.1 円二色性
円二色性(CD)をJasco 815装置(Easton社, USA)で実施して、配列番号1のエステラーゼの融点(Tm)と本発明のエステラーゼのTmとを比較した。技術的には、タンパク質サンプル 400μLを、規定の条件のpH(Talon緩衝液(pH8)、酢酸ナトリウム緩衝液 100mM pH5又は5.2)で0.5mg/mLにて調製し、CDに使用した。280~190nmの1回目のスキャンを実現して、タンパク質の正しい折り畳みに対応するCDの2つの最大強度を決定した。次いで、2回目のスキャンを、そのような最大強度に対応する長さの波で25℃~110℃で実施し、Sigmaplotバージョン11.0ソフトウェアにより分析される特定の曲線(シグモイド3パラメータ y=a/(1+e^((x-x0)/b)))を提供し、x=x0の場合には、Tmを決定する。得られたTmは、所与のタンパク質の耐熱性を反映している。Tmが高いほど、バリアントは、高温でより安定となる。
【0154】
3.2 残存エステラーゼ活性
40mg/L(Talon緩衝液、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)、又は酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中)の配列番号1のエステラーゼ又は本発明のエステラーゼの溶液 1mLを、最大10日間、様々な温度(40、50、60、65、70、75、80、及び90℃)でインキュベートした。定期的にサンプルを採取し、0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)、又は酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で1~500倍に希釈し、パラニトロフェノール-ブチラート(pNP-B)アッセイを実現した。サンプル 20μLを、0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)、又は酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0) 175μL、及び2-メチル-2ブタノール中のpNP-B溶液(40mM) 5μLと混合する。酵素反応を、15分にわたり、撹拌下で30℃にて実施し、405nmでの吸光度を、マイクロプレート分光光度計(Versamax, Molecular Devices社, Sunnyvale, CA, USA)により取得した。pNP-B加水分解の活性(μmol pNPB/分で表される初速度)を、加水分解曲線の直線部分における遊離したパラニトロフェノールに関する酵素アッセイと同一の条件の緩衝液及びpHで調製した検量線を使用して決定した。
【0155】
3.3 残存ポリエステル解重合活性
40mg/L(Talon緩衝液、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)、又は酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中)の配列番号1のエステラーゼ又は本発明のエステラーゼの溶液 10mLを、それぞれ、最大30日間、様々な温度(40℃、50℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、及び90℃)でインキュベートした。定期的にサンプル 1mLを採取し、250~500μmに微粉化した非晶質PET(20%未満の結晶化度に達するために、国際公開第2017/198786号に従って調製した) 100mg、及び0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、又は0.2M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)、又は酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0) 49mLが入っているボトルに移し、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃でインキュベートした。緩衝液 150μLを、定期的にサンプリングした。必要に応じて、サンプルを、0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH8)で希釈した。次いで、メタノール 150μL及び6N HCl 6.5μLを、サンプル又は希釈液 150μLに添加した。混合し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した後、サンプルをUHPLCにロードして、テレフタル酸(TA)、MHET、及びBHETの遊離をモニタリングした。使用するクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、25℃でのカラムオーブンサーモスタット、及び240nmでのUV検出器を含むUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific, Inc.社, Waltham, MA, USA)であった。使用するカラムは、Discovery(登録商標)HS C18 HPLCカラム(150×4.6mm、5μm、プレカラムを備えている、Supelco社, Bellefonte, USA)であった。TA、MHET、及びBHETを、1mL/分で1mM H2SO4中のMeOHの勾配(30%~90%)を使用して分離した。注入は、サンプル 20μLであった。TA、MHET、及びBHETを、サンプルと同じ条件で、市販のTA及びBHET、並びにインハウス合成したMHETから作成した検量線に従って測定した。PET加水分解の活性(μmol 加水分解されたPET/分、又はmg 生成された当量のTA/時間)を、加水分解曲線の直線部分で決定し、そのような曲線を、最初の24時間中の様々な時点で実施したサンプリングにより設定した。当量のTAは、測定されたTAと、測定されたMHET及びBHETに含まれるTAとの合計に相当する。
【0156】
3.4 固体形態のポリエステルの分解
配列番号1のエステラーゼ及び本発明のエステラーゼの40mg/L(Talon緩衝液、又は0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、又は0.1M リン酸クエン酸緩衝液(pH6.0)、又は0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2))の溶液 1mLを、それぞれ、最大30日間、様々な温度(40℃、50℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、及び90℃)でインキュベートした。定期的に酵素調製物をサンプリングし、PETが入った寒天プレートのウェルに入れた。寒天プレートの調製を、PET 50mgをヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)に溶解させ、この培地を水溶液 250mLに注ぐことにより実現した。140mbar下での50℃でのHFIP蒸発後、溶液を、リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、又はリン酸クエン酸緩衝液(pH6.0)、又は酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)と混合して、0.5mg/mLのPET及び0.1Mの緩衝液を含む1%寒天の最終濃度を得た。この混合物 約30mLを使用して各プレートを調製し、4℃で保存する。pH8.0、6.0、又は5.2それぞれで、PETを含む寒天プレートのウェルに、酵素調製物1μL、5μL、又は20μLを入れた。
【0157】
野生型エステラーゼ及び本発明のバリアントによるポリエステル分解に起因して形成されたハローの直径又は表面積を測定し、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃での2~24時間後に比較した。所与の温度での酵素の半減期は、ハローの直径が1/2まで減少するのに必要な時間に相当する。
【0158】
3.5 複数回のポリエステルの解重合
エステラーゼが連続回のポリエステル解重合アッセイを実施する能力を、酵素反応器で評価した。Minibio 500バイオリアクター(Applikon Biotechnology B.V.社, Delft, The Netherlands)を、非晶質PET(20%未満の結晶化度に達するために、国際公開第2017/198786号に従って調製した) 3gと、エステラーゼ 3mgを含む100mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、又は100mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)、又は100mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0) 100mLとで開始した。撹拌を、マリンインペラを使用して250rpmに設定した。バイオリアクターを、外付けの水浴への浸漬により、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃で温度調節した。pHを、3M NaOHの添加により、5.0、5.2、又は6.0に調節した。様々なパラメータ(pH、温度、撹拌、塩基の添加)を、BioXpertソフトウェアV2.95によりモニタリングした。非晶質PET(20%未満の結晶化度に達するために、国際公開第2017/198786号に従って調製した) 1.8gを、20時間毎に添加した。反応媒体 500μLを、定期的にサンプリングした。
【0159】
TA、MHET、及びBHETの量を、実施例2.3で説明したように、HPLCにより決定した。EGの量を、65℃に温度調節されたAminex HPX-87Kカラム(Bio-Rad Laboratories, Inc社, Hercules, California, United States)を使用して決定した。溶出液は、0.6mL.分-1での5mM K2HPO4であった。注入は、20μLであった。エチレングリコールを、屈折計を使用してモニタリングした。
【0160】
加水分解の百分率を、初期サンプルに含まれるTAの総量に対する所与の時間におけるモル濃度(TA+MHET+BHET)の比に基づいて算出したか、又は初期サンプルに含まれるEGの総量に対する所与の時間におけるモル濃度(EG+MHET+2×BHET)の比に基づいて算出した。分解速度を、1時間当たりのmg 総遊離TA、又は1時間当たりのmg 総EGで算出する。
【0161】
酵素の半減期を、分解速度の50%の損失を得るのに必要なインキュベーション時間として評価した。
【0162】
3.6 示差走査蛍光定量(DSF)
DSFを使用して、タンパク質集団の半分がアンフォールディングされる温度である融点(Tm)を決定することにより、野生型タンパク質(配列番号1)及びそのバリアントの耐熱性を評価した。pH8.0でのTm値を推定するために、タンパク質サンプルを、20mM Tris HCl(pH8.0)、300mM NaClからなる緩衝液A中に6.25μMの濃度で調製した。pH5.2でのTm値を推定するために、タンパク質サンプルを、最初に、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)からなる緩衝液B中の25μMの濃度で調製し、その後、調製したタンパク質サンプル 0.6μLを、100mM 酢酸ナトリウム(pH5.09)からなる緩衝液C 18μLで希釈し、6.25μM 希釈タンパク質サンプルを含む5.2の最終pH値を得た。DMSO中のSYPROオレンジ色素5000×ストック溶液を、最初に水で250倍に希釈した。タンパク質サンプルを、白色透明96ウェルPCRプレート(Bio-Rad カタログ# HSP9601)上にロードし、各ウェルには、25μlの最終容量が入っていた。各ウェル中のタンパク質及びSYPROオレンジ色素の最終濃度は、それぞれ、6μM(0.14mg/ml)及び10×であった。次いで、PCRプレートを、光学品質のシーリングテープで密封し、室温で1分にわたり2000rpmで回転させた。次いで、DSF実験を、450/490励起及び560/580発光フィルターを使用するように設定されたCFX96リアルタイムPCRシステムを使用して実行した。サンプルを、0.3℃/秒の速度で25~100℃に加熱した。1回の蛍光測定を、0.03秒毎に行った。融点を、Bio-Rad CFX Managerソフトウェアを使用して、融解曲線の一次導関数のピークから決定した。
【0163】
次いで、配列番号1のエステラーゼ、及び本発明のエステラーゼを、それらのTm値に基づいて比較した。pH5.2で、0.8℃のΔTmを、同一の実験セット内でバリアントを比較するのに有意であるとみなした。Tm値は、少なくとも3回の測定の平均に対応する。
【0164】
結果
酸性条件下で配列番号1のエステラーゼと比較した耐熱性
pH5.2で実施例3.6に従って評価した場合での、配列番号1のエステラーゼと比較した、本発明に従って使用したエステラーゼバリアントのTmの上昇を、下記のTable 8(表8)に示す。
【0165】
【表8】
【0166】
Table 8(表8)で列挙されているバリアントは、それぞれ、Table 8(表8)で列挙されている置換、又は置換の組み合わせを除いて、配列番号1に記載されている正確なアミノ酸配列を有する。
【0167】
配列番号1のエステラーゼと比較した、酸性条件下及びアルカリ性条件下での耐熱性
下記のTable 9(表9)は、実施例3.6に従って評価した、pH5.2及びpH8での配列番号1の基準エステラーゼと比較した、本発明で使用したバリアントの耐熱性の増加を示す。
【0168】
【表9】
【0169】
Table 9(表9)で列挙されているバリアントは、それぞれ、Table 9(表9)で列挙されている置換の組み合わせを除いて、配列番号1に記載されている正確なアミノ酸配列を有する。
【0170】
前記バリアントは、配列番号1と比較して、塩基性条件下と比べて酸性条件下で高い耐熱性の増加を示す。
【配列表】
2024546199000001.xml
【国際調査報告】