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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-18
(54)【発明の名称】サルブタモールを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20241211BHJP
   A61M 13/00 20060101ALI20241211BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20241211BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20241211BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20241211BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241211BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241211BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A61K31/137
A61M13/00
A61K9/00
A61K9/72
A61K47/06
A61K47/10
A61P11/00
A61K9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024533818
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 FR2022052421
(87)【国際公開番号】W WO2023118717
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2113999
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】APTAR FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】Lieu-dit Le Prieure,27110 Le Neubourg,France
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ペイロン,イサベル
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,イレーネ
(72)【発明者】
【氏名】サライユ,セゴレーヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076DD35
4C076DD37
4C076FF68
4C076FF70
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA14
4C206KA01
4C206KA14
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA76
4C206NA10
4C206ZA59
(57)【要約】
本発明は、薬学的に許容可能なサルブタモール塩をベースとする有効成分、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)およびエタノールからなる医薬組成物に関する。本発明はまた、呼吸障害の治療での医薬組成物の使用、医薬組成物を含むキャニスター並びにこのようなキャニスターを備えた定量噴射式吸入器に関する。本発明は、最終的には、この医薬組成物及び定量噴射式吸入器中のこのキャニスターの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化合物からなる医薬組成物:
(a)薬学的に許容可能なサルブタモール塩ベース有効成分、
(b)1,1-ジフルオロエタン(R-152a)、及び
(c)エタノール。
【請求項2】
前記有効成分(a)は、サルブタモール塩であり、好ましくは、サルブタモール硫酸塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
有効成分(a)の質量比率は、前記医薬組成物の総質量を基準にして、0.05質量%~0.5質量%、有利には、0.1質量%~0.4質量%及び好ましくは、0.2質量%~0.35質量%である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1,1-ジフルオロエタン(b)の質量比率は、前記医薬組成物の総質量を基準にして、89.5質量%~99.9質量%、特に、94.5質量%~99.9質量%、有利には、96.6質量%~99.7質量%、及び好ましくは、97.65質量%~99.3質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
エタノール(c)の質量比率は、前記医薬組成物の総質量を基準にして、0.05質量%~10質量%、特に、0.05質量%~5質量%、有利には、0.2質量%~3質量%、及び好ましくは、0.5質量%~2質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸障害の治療に使用するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物を含むキャニスター。
【請求項8】
請求項7に記載のキャニスターを備えた定量噴射式吸入器(MDI)。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物の、または定量噴射式吸入器(MDI)中の請求項7に記載のキャニスターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸障害の治療で使用できる医薬組成物であって、サルブタモール塩、特に、サルブタモール硫酸塩ベースの有効成分、及び1,1-ジフルオロエタンにより形成される噴射剤ガスを含む医薬組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、この医薬組成物を含むキャニスター、並びにこのようなキャニスターを備えた定量噴射式吸入器にも関する。
【0003】
本発明は、最終的には、この医薬組成物及び定量噴射式吸入器中のこのキャニスターの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
サルブタモール並びにその誘導体は、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸障害の治療における気管支拡張剤として既知の有効成分である。
【0005】
サルブタモール又はその誘導体の1種を含む医薬組成物は、従来法では、定量噴射式吸入器(MDI)により患者に送達される。
【0006】
定量噴射式吸入器は、医薬組成物を含むキャニスター、制御された量の有効成分を含む医薬組成物の供給を可能にする計量弁及び計量弁に圧力を加えることを可能にし、マウスピースを備えたアプリケーターを備えた投与装置である。
【0007】
医薬組成物は、有効成分が溶解、懸濁又は分散された噴射剤ガス、及び必要に応じ、特に、界面活性物質、極性賦形剤及び防腐剤から選択できる1種又は複数の他の化合物を含む。医薬目的のために定量噴射式吸入器に組み込まれる噴射剤ガスの選択は、数年の間で変化した。
【0008】
オゾン層に対するそれらの有害な作用を考慮して、長期間にわたって使用されたクロロフルオロカーボン(CFC)は中止され、ヒドロフルオロカーボン(HFC)が受け容れられた。
【0009】
これは、つい最近ヒドロフルオロアルカン(HFA)という用語で命名されたもので、例えば、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a、HFA-134a又はR-134a)及び1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea、HFA-227ea又はR-227ea)などがあり、これらは、オゾン層に対し有害な影響又はヒト毒性を持たない化合物である。
【0010】
しかし、これらのヒドロフルオロアルカンR-134a及びR-227eaは、温室効果に無視できない影響を有する高い地球温暖化係数(GWP)が特徴であるので、サルブタモール、又はその誘導体1種、及び代替噴射剤ガスを含む医薬組成物が提案された。
【0011】
従って、本明細書の参考文献の[1]~[3]として言及されているそれぞれの文献の国際公開第2013/054137号、国際公開第2014/170689号及び国際公開第2013/054135号は、特定のヒドロフルオロカーボン(HFC)又はヒドロフルオロアルカン(HFA)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a、HFA-152a又はR-152a)のサルブタモール硫酸塩を含む医薬組成物中への組み込みについて記載している。
【0012】
[4]として言及されている、文献の米国特許出願公開第2007/041911号明細書は、サルブタモールの酸付加塩、共溶媒並びに有機酸又は無機酸を含む医薬組成物中の噴射剤ガスとして使用できる一定数のヒドロフルオロカーボン類の中で、HFC-152aを付随的に言及している。しかし、文献[4]は、R-152aを特に組み込んだ医薬組成物のなんらの例も記載していない。
【0013】
[5]として言及されている最近の文献の米国特許出願公開第2021/244688号明細書は、サルブタモール単独、又は少なくとも1種の長時間作用性ムスカリン受容体遮断薬及び/又は少なくとも1種の副腎皮質ステロイド、並びに噴射剤ガスとしてのHFA-152aを一緒に含む医薬組成物について記載している。しかし、文献[5]では、組み込まれたサルブタモールは、いわゆるサルブタモール「塩基」であり、これは、全てのサルブタモールの薬学的に許容可能な誘導体、特にサルブタモールの塩を除外するとして定義されている。
【0014】
より具体的には、文献[1]及び[2]に記載された医薬組成物は、サルブタモール硫酸塩、R-152a並びに1種又は複数の界面活性物質を含み、その役割は、噴射剤ガス中の有効成分の粒子の分散を支援することである。
【0015】
文献[1]では、この界面活性物質はオレイン酸であり、一方、文献[2]では、この界面活性物質は、オレイン酸以外の少なくとも1種の化合物を含む。
【0016】
これらは、特に好ましい実施形態ではないが、文献[1]及び[2]中に記載の医薬組成物もまた、エタノールなどの1種又は複数の極性賦形剤、例えば、エタノールを含み、これらは、噴射剤中の界面活性物質を可溶化する効果及び/又はキャニスターの表面上の有効成分の粒子の堆積を抑制する効果を有すると記載されている。
【0017】
対照的に、文献[3]に記載の医薬組成物は、界面活性物質は望ましくないと思われること、及び界面活性物質を使用しなくても安定な懸濁液を形成すること興味があるという理由で界面活性物質を含まない。文献[3]は、噴射剤ガスR-152aの使用は、界面活性物質及び極性賦形剤を含まず、それにもかかわらず、それらを定量噴射式吸入器(MDI)などの薬物投与装置を用いて投与した場合、良好な医薬特性を有する医薬組成物の調製を可能とすることを明記している。
【0018】
しかし、発明者らは、サルブタモール硫酸塩及びR-152aのみからなる医薬組成物では、予測されるエアロゾル化特性を得ることができないことを観察した。
【0019】
従って、本発明はこの観察を基準として、エアロゾル化特性、ひいては呼吸器疾患の治療を目的とした医薬組成物によって与えられる治療特性を絶えず改善することに基づいている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的ならび他の目的は、まず第1に、上述のタイプの医薬組成物、即ち、サルブタモールベースの有効成分及び噴射剤ガスとしての1,1-ジフルオロエタンを含む医薬組成物により達成される。
【0021】
本発明では、医薬組成物は、次の化合物からなる:
(a)薬学的に許容可能なサルブタモール塩ベース有効成分、
(b)1,1-ジフルオロエタン(R-152a)、及び
(c)エタノール。
【0022】
発明者らは、予想外で、驚いたことに、サルブタモール塩、R-152a及びエタノールのみを含む医薬組成物は、文献[3]に記載のサルブタモール塩及びR-152aのみを含む医薬組成物より遙かに高いエアロゾル化特性を達成でき、この注目すべきエアロゾル化特性は、さらに、経時的に安定であることを観察した。
【0023】
この結果は、サルブタモール硫酸塩及びR-152aを含む医薬組成物中にエタノールを組み込むのを制限する、更には、回避することを推奨した文献[1]~[3]の教示に反するので、なおさら予想外である。これらの文献は、特に、エタノールは、特に若い患者の、口内及び咽頭の受け入れられないかぶれを引き起こす、及び/又は大きすぎて肺の深層細気管支中への許容可能な侵入を得ることができない液滴直径を特徴とする医薬組成物の粗い噴霧を引き起こす可能性があることを報告している。
【0024】
本発明による医薬組成物の有利な変形例では、有効成分(a)は、サルブタモール塩である。
【0025】
本発明の好ましい変形例では、この有効成分(a)はサルブタモール硫酸塩である。
【0026】
有効成分(a)は、有利には、粒子の形態であり、そのサイズは、それが含まれる医薬組成物の吸入による送達に適合される。従来には、有効成分(a)の、通常、Dv50と表記される粒子の中央粒径、は、6μm以下であり、これは、少なくとも50体積%の有効成分粒子が6μm以下の直径を有することを意味する。
【0027】
この有効成分(a)の粒子の中央粒径は、有利にも、5μm以下、好ましくは0.5μm~5μm、より好ましくは、1μm~4μmである。
【0028】
本発明による組成物の変形例では、有効成分(a)の質量比率は、医薬組成物の総質量を基準にして、0.05質量%~0.5質量%である。この質量比率は、有利には、医薬組成物の総質量を基準にして、0.1質量%~0.4質量%及び好ましくは、0.2質量%~0.35質量%である。
【0029】
本発明による組成物の変形例では、1,1-ジフルオロエタン(b)の質量比率は、医薬組成物の総質量を基準にして、89.5質量%~99.9質量%である。
【0030】
別の変形例では、1,1-ジフルオロエタン(b)の質量比率は、医薬組成物の総質量を基準にして、94.5質量%~99.9質量%である。この質量比率は、有利には、医薬組成物の総質量を基準にして、96.6質量%~99.7質量%、好ましくは、97.65質量%~99.3質量%である。
【0031】
本発明による組成物の変形例では、エタノール(c)の質量比率は、医薬組成物の総質量を基準にして、0.05質量%~10質量%である。
【0032】
別の変形例では、エタノール(c)の質量比率は、医薬組成物の総質量を基準にして、0.05質量%~5質量%である。
【0033】
本発明による医薬組成物のエアロゾル化特性は、相対的に低いエタノールの質量比率で達成でき、これにより、たとえ若年者であっても、患者の健康に対し危険をもたらさない。
【0034】
エタノールの質量比率は、有利には、医薬組成物の総質量を基準にして、0.2質量%~3質量%、好ましくは、0.5質量%~2質量%である。
【0035】
第2に、本発明は、呼吸障害に罹患している、又は罹患し易い患者の治療に使用するための医薬組成物に関する。
【0036】
本発明では、この呼吸障害の治療に使用される医薬組成物は、上記で定義されたとおりであり、すなわち、次の化合物を含む:
(a)薬学的に許容可能なサルブタモール塩ベース有効成分、
(b)1,1-ジフルオロエタン(R-152a)、及び
(c)エタノール。
【0037】
医薬組成物に関連する上記特徴、特に、有効成分並びにこの医薬組成物を構成する種々の化合物の質量比率に関する特徴は、無論、呼吸障害の治療での本発明の使用に適用可能である。
【0038】
このような呼吸障害は、喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)であり得る。
【0039】
本発明の場合、患者は、上記で定義の医薬組成物の治療の観点からの有効量の投与により治療できる。
【0040】
第3に、本発明はまた、医薬組成物を含むキャニスター、並びにこのようなキャニスターを備えた定量噴射式吸入器に関する。
【0041】
本発明では、この医薬組成物は、上記で定義されたとおりであり、すなわち、有効成分(a)、噴射剤ガスとしてのR-152a及びエタノールからなり、これらの化合物に対する特徴は、単独で得ることも、組み合わせで得ることもできる。
【0042】
第4に、本発明は医薬組成物及び/又は上記で定義の定量噴射式吸入器(MDI)中のキャニスターの使用に関する。このような装置は、従来から、サルブタモール又は薬学的に許容可能なその塩をベースにした有効成分を含む医薬組成物を送達するために使用されている。
【0043】
本発明のその他の特徴及び利点は、医薬組成物の実施例並びにインビトロエアロゾル化特性、本発明によりC4及びC4’と表記される2種の医薬組成物、及びその他の、文献[1]及び[3]の教示によるC1~C3及びC3’と表記される医薬組成物比較例の評価に関する以下の追加の説明を読み取ることにより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】NGI薬剤インパクターのステージの関数としての、T0で測定した医薬組成物C1~C4の投与又は吸込からのサルブタモール粒子の堆積比率(%で表した)を示すグラフである。
図2A】NGI薬剤インパクターのステージの関数としての、T0で測定した医薬組成物C3’及びC4’の投与又は吸込からのサルブタモール粒子の堆積比率(%で表した)を示すグラフである。
図2B】NGI薬剤インパクターのステージの関数としての、T3Mで測定した医薬組成物C3’及びC4’の投与又は吸込からのサルブタモール粒子の堆積比率(%で表した)を示すグラフである。
図2C】NGI薬剤インパクターのステージの関数としての、T6Mでそれぞれ測定した医薬組成物C3’及びC4’の投与又は吸込からのサルブタモール粒子の堆積比率(%で表した)を示すグラフである。
図3】NGI薬剤インパクターのステージの関数としての、T0、T3M及びT6Mで測定した本発明による医薬組成物C4’の投与からのサルブタモール粒子の堆積比率(%で表した)を示す図2A図2B及び図2Cのグラフの再現である。
図4】NGI薬剤インパクターのステージの関数としての、T0、T3M及びT6Mで測定した比較例の医薬組成物C3’の投与からのサルブタモール粒子の堆積比率(%で表した)を示す図2A図2B及び図2Cのグラフの再現である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施例1
試験に供されたエアロゾルは、同じバッチの化合物、アルミニウムから作製されたキャニスター及び計量弁で製造された。
【0046】
4種の医薬組成物C1~C4を下表1に挙げる量のサルブタモール硫酸塩(約2μmの中央粒径)、オレイン酸及びエタノールを用いて調製した。
【0047】
【表1】
表1
【0048】
適用できる場合は、オレイン酸又はエタノールを最初にマニュアルで4つの別個のシリーズのキャニスターに導入し、続けて、サルブタモール硫酸塩を導入した。
【0049】
次に、計量弁を適切な器具を用いてそれぞれのキャニスターに圧着した後、適切な器具を用いて計量弁を介してR-152a噴射剤ガスを11375mgの医薬組成物の総質量に達するように導入した。
【0050】
エアロゾルをこのように詰め込み、少なくとも1週間の細菌性疾患の伝染性が消失するまでの期間の間、いわゆる倒立状態(バルブを下方にして)で保管した。
【0051】
この細菌性疾患の伝染性が消失するまでの期間の終了時に、空気力学的粒度分布(APSD)測定を実施した。
【0052】
弁を出る有効成分の空気力学的粒径の評価から構成されるT0でのこの試験を、気管支樹の近似モデル化を可能にする多段医薬インパクターにより実施した。本発明の事例では、使用した医薬インパクターは、ヨーロッパ薬局方の装置Eに相当する次世代インパクター(NGI)であった。
【0053】
より具体的には、試験は、30L/分の流速、5投与量のそれぞれの組成物C1~C4をNGIインパクターに噴出させることにより実施した。
【0054】
図1のグラフは、咽頭及び口内(T&Mと表記)に、及びインパクターの各ステージ(S1~S8と表記)で堆積したサルブタモールの比率を示す。
【0055】
最適治療効力を確保するためには、ステージ3~6(S3~S6と表記)で、及び更に詳細には、S4及びS5で堆積した比率が最大化されなければならない。
【0056】
図1は、1質量%のエタノールを含む本発明による医薬組成物C4は、この治療効力を効率的に最適化可能にする。理由は、これらのステージS3~S6、特に、ステージS4及びS5でのサルブタモール堆積の比率は、比較例の医薬組成物C1~C3を用いたこれらの同じステージでのサルブタモール堆積の比率より極めて明確に大きいためである。この現象は、比較例の医薬組成物C3を用いるとより顕著である。比較例の医薬組成物C1及びC2で得られたデータに関して、本発明による医薬組成物C4の組み込みは、微細粒子のステージS3からステージS4へ、特に、微細粒子のサイズがより小さい、ステージS5への移動を可能にすることが観察される。
【0057】
この観察は以下の理由で更に驚くべきことである:
-一方では、比較例の医薬組成物C1及びC2はそれぞれ、好ましい範囲内の0.2質量%~1.0質量%の界面活性物質、この場合は0.25質量%及び0.3質量%の質量比率の、文献[1]で教示のオレイン酸を含むことであり、及び
-他方では、界面活性物質もエタノールも含まない比較例の医薬組成物C3は、文献[3]により良好な医薬品特性を有すると記載されていることである。
【0058】
更に、本発明による医薬組成物の治療特性は、医薬組成物C1、C2及びC4中に存在するオレイン酸又はエタノールが質量比率(質量%)で記載された、下表2で報告された微細粒子の比率のデータにより裏付けされる。
【0059】
【表2】
表2
【0060】
実施例2
実施例1と同様にして、同一の操作プロトコルに従って、同じバッチの化合物、アルミニウムから作製されたキャニスター及び計量弁を用いて、定量噴射式吸入器を作成した。
【0061】
第1ステップでは、計量弁を適切な器具を用いてそれぞれのキャニスターに圧着した。
【0062】
第2ステップでは、パイロット設備を用いて、以下の2つのステップで、計量弁を経由して導入することにより、2つの別個のシリーズの定量噴射式吸入器に充填した:
-30.125mgのサルブタモール硫酸塩(約5μmの中央粒径)、量を減らした噴射剤ガスR-152a及び、適用できる場合は、医薬組成物の総質量を基準に、下表3に示した質量比率のエタノールを含む濃縮懸濁液の充填、次に、
-9.57gの医薬組成物の総量に達するのに十分な量のR-152a噴射剤ガスの充填。
【0063】
【表3】
表3
【0064】
上記の実施例1と同様に、30L/分の流速、5投与量のそれぞれの組成物C3’及びC4’をNGIインパクターに噴出させることにより、3つのシリーズの空気力学的粒度分布(APSD)測定試験を実施した。
【0065】
第1のシリーズの空気力学的粒度分布測定試験は、T0、即ち、実施例1で言及した細菌性疾患の伝染性が消失するまでの期間の終わりに、得られた医薬組成物C3’及びC4’に対して実施した。
【0066】
この第1のシリーズのT0での試験の結果を図2Aに示す。
【0067】
第2のシリーズの空気力学的粒度分布測定試験は、これらの同じ医薬組成物C3’及びC4’に対して、T3Mで、即ち、T0から開始して3か月の保管期間後までの期間にわたり、定量噴射式吸入器を倒立状況(バルブを下方にして)で、40℃及び75%のそれぞれの温度及び相対湿度条件下に3か月間置くことによる、前記組成物C3’及びC4’を含む定量噴射式吸入器での保管後に、実施した。これらの温度及び湿度の条件は、医薬品規制調和国際会議(ICH Q1 安定性ガイドライン)の指令に準拠している。
【0068】
T3Mでのこの第2のシリーズの試験の結果を図2Bに示す。
【0069】
第3のシリーズの空気力学的粒度分布測定試験は、これらの同じ医薬組成物C3’及びC4’に対して、T6Mで、即ち、T0から開始して6か月の保管期間後までの期間にわたり、定量噴射式吸入器を倒立状況で、前の試験で記載の温度及び相対湿度条件下に6か月間置くことによる、前記組成物C3’及びC4’を含む定量噴射式吸入器での保管後に、実施した。
【0070】
T6Mでのこの第3のシリーズの試験の結果を図2Cに示す。
【0071】
図3及び図4は、本発明による医薬組成物C4’で得られた図2A~2Cのグラフ(図3)及び比較例の医薬組成物C3’(図4)を一緒にまとめたものである。この比較例の医薬組成物C3’は、文献[3]の教示と一致することを明示する。
【0072】
図2A~2C、図3及び図4のグラフは、一方では、咽頭及び口内(T&M)に堆積した、及び他方では、インパクターの8つのステージ(S1~S8と表記)のそれぞれで堆積したサルブタモールの比率を示す。
【0073】
最適治療効力を確保するためには、ステージS3~S6で堆積した比率が最大化され、T&Mで堆積した比率が最小化されなければならない。
【0074】
図2A図2B及び図2Cは、1質量%のエタノールを含む本発明による医薬組成物C4’は、この治療効力を効率的に最適化可能にする。
【0075】
一方では、図2Aを参照すると、医薬組成物C4’を用いて、ステージS3~S6のT0でのサルブタモールの堆積比率の合計は、比較例の医薬組成物C3’を用いたこれらの同じステージS3~S6のT0でのサルブタモールの堆積比率の合計より有意に大きい。この観察は、図2B及び図2Cのグラフを参照すると、更に顕著である。
【0076】
他方では、更に図2Aを参照すると、本発明による医薬組成物C4’を用いた、T0でのT&Mのサルブタモールの堆積比率は約35%であり、従って、比較例の医薬組成物C3’を用いたT0でのサルブタモールの約45%の堆積比率より遙かに少ないことがわかる。図2B及び図2Cを参照すると、この35%の比率は、本発明による医薬組成物C4’では、T3M及びT6Mで保存され、一方、比較例の組成物C3’では、この値は約70%に達するまで増加することが観察される。
【0077】
図3は、本発明による医薬組成物C4’は、40℃及び75%の相対湿度で6か月間の保管の後であっても、この最適化された治療効力を経時的に維持することを示す。実際に、この図3のグラフは、実質的に重ねることが出来、ステージS3~S6でのサルブタモールの堆積比率の合計、並びにT&Mでのサルブタモールの堆積比率はT0、T3M及びT6Mで類似であり、又は、同一でさえある。換言すれば、本発明による医薬組成物C4’は、経時的に安定なエアロゾル化特性を特徴とする。
【0078】
これに対して、図4を参照すると、比較例の医薬組成物C3’では、40℃で75%の相対湿度で少なくとも3か月の保管後(T3M)に既に治療効力は極めて低下し、T6Mではなおさら低下することが観察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】[1]国際公開第2013/054137号
【特許文献2】[2]国際公開第2014/170689号
【特許文献3】[3]国際公開第2013/054135号
【特許文献4】[4]米国特許出願公開第2007/041911号明細書
【特許文献5】[5]米国特許出願公開第2021/244688号明細書
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
【国際調査報告】