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特表2024-546211抗菌ポリウレタンスポンジ及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-18
(54)【発明の名称】抗菌ポリウレタンスポンジ及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/10 20060101AFI20241211BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241211BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20241211BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A01N25/10
A01P3/00
A01N59/20 Z
A01N59/16 A
A01N59/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024560804
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2022097924
(87)【国際公開番号】W WO2023123879
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111669589.0
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524249884
【氏名又は名称】ルーシン メディカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ジャミャン
(72)【発明者】
【氏名】チュ,シンウ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA03
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA09
4H011DC05
4H011DF03
4H011DH05
(57)【要約】
本発明は、医療用被覆材の技術分野、特に抗菌ポリウレタンスポンジ及びその調製方法に関する。抗菌有効成分を成型したポリウレタンスポンジ被覆材に浸漬又は噴霧法で添加することにより得られる抗菌被覆材は、抗菌性の耐久性が低い。本発明によれば、この問題のため、抗菌剤の水分散系をポリウレタンプレポリマーに予め分散させ、それから発泡させ、これにより抗菌剤をポリウレタンスポンジの多孔質構造に封入することが可能となり、抗菌金属イオンの徐放効果を達成し、その結果調製した抗菌ポリウレタンスポンジは良好な抗菌性の耐久性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分A及び成分Bを含む抗菌ポリウレタンスポンジであって、前記成分Aの前記成分Bに対する重量比は、1:(0.5~5)であり、
前記成分Aは、以下の重量部の構成要素を含み、
抗菌剤 0.01~10部
懸濁剤 0.2~5部
湿潤剤 0.2~5部
安定剤 0.2~5部
水 65~99部、
前記成分Bは、ポリウレタンプレポリマーであり、
前記抗菌ポリウレタンスポンジは、前記成分Aを前記成分Bにポリウレタン発泡前に添加することによって調製される、
抗菌ポリウレタンスポンジ。
【請求項2】
前記抗菌剤は、金属酸化物抗菌剤である、請求項1に記載の抗菌ポリウレタンスポンジ。
【請求項3】
前記金属酸化物抗菌剤は、1つ又は複数の酸化銅(II)、酸化銅(I)、酸化亜鉛、及び酸化銀である、請求項2に記載の抗菌ポリウレタンスポンジ。
【請求項4】
前記懸濁剤は、天然ポリマー懸濁剤又は合成ポリマー懸濁剤である、請求項1に記載の抗菌ポリウレタンスポンジ。
【請求項5】
前記天然ポリマー懸濁剤は、アラビアゴム、トラガカント、アプリコットゴム(apricot gum)、桃ゴム(peach gum)、ブレチラゴム(gum bletilla)、寒天、又はキトサンであり、前記合成ポリマー懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ピロリドン、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸、又はα-グルカンである、請求項4に記載の抗菌ポリウレタンスポンジ。
【請求項6】
前記湿潤剤は、1つ又は複数のポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3000、ポリエチレングリコール3350、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、及びポリエチレングリコール8000である、請求項1に記載の抗菌ポリウレタンスポンジ。
【請求項7】
前記安定剤は、1つ又は複数のポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、ポロキサマーPE6200、ポロキサマーPE6400、ポロキサマーPE6800、ポロキサマーPE9200、及びポロキサマーF68である、請求項1に記載の抗菌ポリウレタンスポンジ。
【請求項8】
前記ポリウレタンプレポリマーは、6000~21000mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載の抗菌ポリウレタンスポンジ。
【請求項9】
前記ポリウレタンプレポリマーは、Baymedix(登録商標)FP504、VORANATE(商標)T-80、又はWanCURE TP611である、請求項8に記載の抗菌ポリウレタンスポンジ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗菌ポリウレタンスポンジの調製方法であって、
以下の工程、
(1)前記抗菌剤、前記懸濁剤、前記湿潤剤、前記安定剤、及び前記水を配合量に従って均一に混合して前記成分Aを得る工程、
(2)1:(0.5~5)の重量比の前記成分A及び前記成分Bを異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で1~5秒間攪拌及び混合して成分Cを得る工程、及び
(3)前記成分Cを剥離紙の表面、剥離フィルムの表面上に又は発泡用の型中に迅速に押し出し、熟成させ、40~60℃で20~50分間乾燥させて前記抗菌ポリウレタンスポンジを得る工程を含む、
調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用被覆材の技術分野、特に抗菌ポリウレタンスポンジ及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療技術の発展及び改善により、創傷ケアに関連する機能的被覆材がますます増えている。従来の被覆材と比較して、創傷感染予防又は創傷感染管理用の様々な抗菌被覆材がますます臨床に応用されてきており、使用効果も大多数の医師及び患者によって認識されてきた。
【0003】
販売中の抗菌被覆材には、発泡体、スポンジ、ヒドロゲル、及び他の被覆材が含まれる。被覆材中の抗菌構成要素は、天然の動物及び植物抽出物、可溶性金属イオン溶液、金属錯体、ナノスケール金属粉末含有材料などである。これらの中でも、発泡体又はスポンジ被覆材が本研究の中心である。例えば、中国特許第104072798B号では、基材としてのスポンジを可溶性金属塩溶液及び/又は金属酸化物ナノ粒子の分散液に浸漬すること、及び結合のために超音波処理して抗菌機能を有するスポンジ被覆材を得ることを含む、ナノ粒子で修飾された、抗菌機能を有するスポンジ被覆材の調製方法が開示される。別の例としては、中国特許第201510995203.3号では、発泡体ベースの被覆材及びその調製方法であって、発泡体ベースの被覆材が、シート状発泡体被覆材から作製されたベースフレーム及びベースフレームのセルに充填されたゲル材料から構成され、発泡体ベースの被覆材はまた、抗菌特性を有する銅イオン、銀イオン、又はナノ銀も含有する、発泡体ベースの被覆材及びその調製方法が開示される。
【0004】
現在、スポンジ又は発泡体被覆材は抗菌有効成分を添加するために、主に浸漬又は噴霧法を使用するが、これには以下の短所がある。
(1)浸漬又は噴霧法では可溶性金属塩溶液を発泡体又はスポンジ被覆材の表面に添加し、それから乾燥させる。被覆材を創傷に適用する場合、被覆材中の可溶性金属塩は金属イオンを創傷に急速に放出するので、金属イオンの放出速度及び濃度を制御するのが難しく、持続性の抗菌効果がなく、また、大量の金属イオンを創傷に蓄積させやすく、イオンの局所濃度が過剰になり、これにより皮膚の変色が引き起こされる。
(2)ナノ金属酸化物抗菌材料は、ゲル、コーティング、又は微粒子の形態で被覆材の表面に添加され、良好な抗菌効果を有する。しかしながら、金属ナノ粒子は、被覆材の表面に対する接着が弱く、容易にヒト血液に入り、ヒト組織又は臓器に蓄積するので、代謝及び排泄するのが難しく、重大な毒性を容易に引き起こす。
【発明の概要】
【0005】
先行技術に存在する問題に関して、本発明によって解決されるべき技術的問題は、抗菌有効成分を成型したスポンジ被覆材に浸漬又は噴霧法で添加することにより得られる抗菌被覆材は、抗菌性の耐久性が低いということである。
【0006】
本発明で使用される技術的問題を解決するための技術的解決策は、本発明は、成分A及び成分Bを含む抗菌ポリウレタンスポンジであって、この成分Aのこの成分Bに対する重量比は、1:(0.5~5)であり、
この成分Aは、以下の重量部の構成要素を含み:
抗菌剤 0.01~10部
懸濁剤 0.2~5部
湿潤剤 0.2~5部
安定剤 0.2~5部
水 65~99部、
【0007】
この成分Bは、ポリウレタンプレポリマーであり、
この抗菌ポリウレタンスポンジは、この成分Aをこの成分Bにポリウレタン発泡前に添加することによって調製される、
抗菌ポリウレタンスポンジを提供することである。
【0008】
具体的には、抗菌剤は、金属酸化物抗菌剤である。
【0009】
具体的には、金属酸化物抗菌剤は、1つ又は複数の酸化銅(II)、酸化銅(I)、酸化亜鉛、及び酸化銀である。
【0010】
具体的には、懸濁剤は、天然ポリマー懸濁剤又は合成ポリマー懸濁剤である。
【0011】
具体的には、天然ポリマー懸濁剤は、アラビアゴム、トラガカント、アプリコットゴム(apricot gum)、桃ゴム(peach gum)、ブレチラゴム(gum bletilla)、寒天、又はキトサンである。
【0012】
具体的には、合成ポリマー懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ピロリドン、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸、又はα-グルカンである。
【0013】
具体的には、湿潤剤は、1つ又は複数のグリセロール、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3000、ポリエチレングリコール3350、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、及びポリエチレングリコール8000である。
【0014】
具体的には、安定剤は、1つ又は複数のポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、スパン20、スパン40、スパン60、スパン65、スパン80、スパン85、ポロキサマーPE6200、ポロキサマーPE6400、ポロキサマーPE6800、ポロキサマーPE9200、及びポロキサマーF68である。
【0015】
具体的には、水は、精製水、注射用水、又は脱イオン水である。
【0016】
具体的には、ポリウレタンプレポリマーは、6000~21000mPa・sの粘度を有する。
【0017】
具体的には、ポリウレタンプレポリマーは、Baymedix(登録商標)FP504、VORANATE(商標)T-80、又はWanCURE TP611である。
【0018】
別の態様では、本発明は更に、以下の工程、
(1)この抗菌剤、この懸濁剤、この湿潤剤、この安定剤、及びこの水を配合量に従って均一に混合してこの成分Aを得る工程、
(2)1:(0.5~5)の重量比のこの成分A及びこの成分Bを異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で1~5秒間攪拌及び混合して成分Cを得る工程、及び
(3)この成分Cを剥離紙の表面上に又は発泡用の型中に迅速に押し出し、熟成させ、4
0~60℃で20~50分間乾燥させてこの抗菌ポリウレタンスポンジを得る工程を含む、
上述の抗菌ポリウレタンスポンジの調製方法を提供する。
【0019】
本発明は、以下の有利な効果を有する。
【0020】
(1)抗菌ポリウレタンスポンジを、成分A(抗菌剤の水分散系)を成分B(プレポリマー)にポリウレタン発泡前に添加する、すなわち抗菌剤の水分散系をプレポリマーにポリウレタン発泡前に添加することにより調製し、これにより抗菌剤をポリウレタンスポンジの多孔質構造に封入することが可能となり、抗菌金属粒子の徐放効果を達成し、その結果調製した抗菌ポリウレタンスポンジは良好な抗菌性の耐久性を有する。
【0021】
(2)本発明によれば、特定量の懸濁剤を抗菌金属酸化物(金属酸化物抗菌剤)の水分散系に添加し、その結果抗菌剤はポリウレタンスポンジ中により良好に分散することができ、このことはポリウレタンスポンジ被覆材の抗菌特性を更に改善するのに有利である。
【0022】
(3)本発明の抗菌剤の水分散系は、清掃しやすく、水、エタノールなどの共通溶媒を使用して徹底的に清掃することができ、反応器の内壁を汚染することがなく、いつでも異なる種類の金属酸化物抗菌剤と置き換えることができる。
【実施例
【0023】
実施例を参照して本発明を更に詳細に説明する。
【0024】
実施例1
粒径130nmの0.01gの酸化銅(II)、0.2gのアラビアゴム、0.2gのポロキサマーPE6800、0.2gのPEG-2000、及び65gの注射用水を均一に混合して成分Aを得て、
(2)100gの成分A及び50gのWanCURE TP611を異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で2秒間攪拌及び混合して成分Cを得て、
(3)成分Cを剥離紙の表面上に迅速に押し出して発泡体を形成し、圧縮ローラーを使用して発泡体の厚さを10mmに調整するための間隙を形成し、発泡体を室温で4分間熟成させ、40℃で20分間乾燥させて発泡密度150kg/m及び連続気泡径0.01mmの抗菌ポリウレタンスポンジを得た。
【0025】
実施例2
(1)粒径110nmの0.5gの酸化銅(I)、1.0gのカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.5gのポリソルベート60、1gのPEG-3000、及び97gの精製水を均一に混合して成分Aを得て、
(2)100gの成分A及び100gのWanCURE TP611を異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で5秒間攪拌及び混合して成分Cを得て、
(3)成分Cを剥離紙の表面上に迅速に押し出して発泡体を形成し、発泡体の厚さを10mmに調整し、発泡体を室温で5分間熟成させ、50℃で30分間乾燥させて発泡密度130kg/m及び連続気泡径0.03mmの抗菌ポリウレタンスポンジを得た。
【0026】
実施例3
(1)粒径150nmの1.0gの酸化銀、1.0gのカルボキシメチルセルロースナトリウム、1.0gのポリソルベート60、2.0gのPEG-3000、及び95.0gの精製水を均一に混合して成分Aを得て、
(2)100gの成分A及び400gのBaymedix(登録商標)FP504を異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で5秒間攪拌及び混合して成分Cを得て、
(3)成分Cを型中に迅速に押し出してブロック発泡体を形成し、ブロック発泡体を室温で7分間熟成させ、40℃で50分間乾燥させて発泡密度90kg/m及び連続気泡径0.05mmのブロック抗菌ポリウレタンスポンジを得た。
【0027】
実施例4
(1)粒径160nmの1.0gの酸化亜鉛、1.0gのトラガカント、0.5gのポリソルベート20、3gのオレイン酸ソルビタン(スパン80)、及び94.5gの精製水を均一に混合して成分Aを得て、
(2)100gの成分A及び90gのVORANATE(商標)T-80を異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で5秒間攪拌及び混合して成分Cを得て、
(3)成分Cを型中に迅速に押し出してブロック発泡体を形成し、ブロック発泡体を室温で5分間熟成させ、60℃で20分間乾燥させて発泡密度140kg/m及び連続気泡径0.03mmのブロック抗菌ポリウレタンスポンジを得た。
【0028】
実施例5
(1)粒径150nmの10gの酸化銀、5gの寒天、5gのポリソルベート85、5gのPEG-8000、及び85gの脱イオン水を均一に混合して成分Aを得て、
(2)100gの成分A及び500gのBaymedix(登録商標)FP504を異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で5秒間攪拌及び混合して成分Cを得て、
(3)成分Cを型中に迅速に押し出してブロック発泡体を形成し、ブロック発泡体を室温で8分間成熟させ、40℃で50分間乾燥させて発泡密度85kg/m及び連続気泡径0.05mmのブロック抗菌ポリウレタンスポンジを得た。
【0029】
実施例6
(1)粒径120nmの5gの酸化銅(I)、3gのα-グルカン、2gのポリソルベート40、2gのPEG-6000、及び88gの精製水を均一に混合して成分Aを得て、(2)100gの成分A及び200gのWanCURE TP611を異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で5秒間攪拌及び混合して成分Cを得て、
(3)成分Cを剥離紙の表面上に迅速に押し出して発泡体を形成し、圧縮板を使用して発泡体の厚さを10mmに調整するための間隙を形成し、発泡体を室温で8分間熟成させ、50℃で30分間乾燥させて発泡密度90kg/m及び連続気泡径0.05mmの抗菌ポリウレタンスポンジを得た。
【0030】
比較例1は、比較例1では懸濁剤を添加しないこと以外は、実施例3と同じだった。
【0031】
実施例7は、実施例7の懸濁剤がアラビアゴムであること以外は、実施例3と同じだった。
【0032】
実施例8は、実施例8の懸濁剤がトラガカントであること以外は、実施例3と同じだった。
【0033】
実施例9は、実施例9の懸濁剤が寒天であること以外は、実施例3と同じだった。
【0034】
実施例10は、実施例10の懸濁剤がα-グルカンであること以外は、実施例3と同じ
だった。
【0035】
比較例2は、比較例2ではトラガカントの代わりに界面活性剤ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体F68を使用すること以外は、実施例3と同じだった。
【0036】
比較例3は、比較例3では懸濁剤を添加せず、安定剤がシリコーン界面活性剤L64であり、湿潤剤が界面活性剤ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体F127であること以外は、実施例3と同じだった。
【0037】
比較例4
実施例3とは異なり、比較例4では、まず乾燥ポリウレタンスポンジを調製し、次いで抗菌剤の水分散系を添加した、具体的には、
工程1:浸漬用に、1.0gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを98.0gの精製水に分散させ、完全に溶解した後、粒径150nmの1.0gの酸化銀をそこに添加し、均一に混合して懸濁剤を形成し、
工程2:ポリウレタンスポンジの調製
(1)2.0gのPEG-3000、1.0gのポリソルベート60、及び95.0gの精製水を均一に混合して成分A-1を得て、
(2)98gの成分A-1及び400gのBaymedix(登録商標)FP504を異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で5秒間攪拌及び混合して成分C-1を得て、
(3)成分C-1を型中に迅速に押し出してブロック発泡体を形成し、ブロック発泡体を室温で7分間熟成させ、40℃で50分間乾燥させて発泡密度90kg/m及び連続気泡径0.05mmのブロック抗菌ポリウレタンスポンジを得て、
工程3:工程(1)で得られた懸濁剤を工程(2)で得られたポリウレタンスポンジ状に均一速度で噴霧し、乾燥させて抗菌ポリウレタンスポンジを形成した。
【0038】
比較例5
実施例3とは異なり、比較例5では、添加するカルボキシメチルセルロースナトリウムの割合は0.2g未満だった、具体的には、
(1)粒径150nmの1.0gの酸化銀、0.1gのカルボキシメチルセルロースナトリウム、1.0gのポリソルベート60、2.0gのPEG-3000、及び95.9gの精製水を均一に混合して100gの成分Aを得て、
(2)100gの成分A及び成分B、すなわち400gのBaymedix(登録商標)FP504を異なるパイプラインから高せん断混合装置に同時に添加し、6000rpmの速度で5秒間攪拌及び混合して成分Cを得て、
(3)成分Cを型中に迅速に押し出してブロック発泡体を形成し、ブロック発泡体を室温で7分間熟成させ、40℃で50分間乾燥させて発泡密度90kg/m及び連続気泡径0.05mmのブロック抗菌ポリウレタンスポンジを得た。
【0039】
抗菌性試験
実施例1~6及び比較例1~9で得られた抗菌ポリウレタンスポンジの抗菌特性を調べた。具体的な試験結果を表1に示す。
【0040】
試験基準‐US AATCC 100-2019抗菌性織物の評価方法に従って抗菌率を調べた。
【0041】
【表1】

【0042】
金属イオン含有量の決定
まず試料に消化及び酸分解処理をかけ、次いでGB/T23942-2009、「化学分析用試薬 誘導結合プラズマ発光分光法に関する通則(Chemical Reagent - General rules for inductively coupled plasma atomic emission spectrometry)」に指定される方法に従って決定した。試験データを表2に詳細に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
上記の結果から、本発明で提供される抗菌ポリウレタンスポンジは、良好な抗菌効果及び抗菌性の耐久性を有し、また、実施例の各々の抗菌ポリウレタンスポンジは、安定的に及び均一に金属イオンを放出することができ、その結果、金属イオンの放出速度を制御し、徐放することができ、金属イオンの大部分が創傷に急速に放出されることによるイオンの局所濃度が過剰になることを回避することが分かった。
【0045】
しかしながら、実施例3と比較すると、調製プロセス中に懸濁剤を添加しない比較例1において提供される抗菌ポリウレタンスポンジは、抗菌性の耐久性が低く、同時に金属イオンの放出濃度が低く、抗菌効果が弱い。懸濁剤をそれぞれアラビアゴム、トラガカント、寒天、及びα-グルカンに変更した実施例7~10において提供される抗菌ポリウレタンスポンジは、依然として強力な抗菌特性を有し、168時間での抗菌率は実施例3に類似しており、本発明の範囲内に含まれる。トラガカントの代わりに界面活性剤ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体F68を使用した比較例2において提供される溶液によって形成された抗菌ポリウレタンスポンジでは、金属は安定的に放出されたが、添加したポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体F68には、抗菌効果及び抗菌性の耐久性に影響を及ぼす懸濁効果がないため、抗菌率が低く、金属イオンの放出濃度も低かった。比較例3において提供された溶液は、懸濁剤が添加されず、安定剤がシリコーン界面活性剤L64であり、湿潤剤が界面活性剤ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンF127であるものであり、実施例3のものと比較して抗菌効果及び金属イオンの放出濃度を低下させた。比較例4において提供された溶液は、まずポリウレタンスポンジを調製し、次いで抗菌金属イオンを含有する水分散系を添加するものであり、これから金属イオンが急速に放出され、放出速度が非常に変動し、金属イオンの放出には耐久性がなく、それにより抗菌率及び耐久性に影響が及ぼされ、実施例3のものと比較して耐久性及び抗菌率がかなり低減したことが示された。比較例5において提供された溶液は、懸濁剤カルボキシメチルセルロースナトリウムの添加量が0.2~5部の範囲未満であるものであり、これにより金属イオンは安定的に放出されるが、実施例3と比較して168時間
後の抗菌率が著しく減少した。
【0046】
本発明の理想的な実施形態を発想と考えて、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく上記記載から様々な変形及び修正を行ってもよい。本発明の技術範囲は、説明に限定されるものではないが、特許請求の範囲の範囲により決定する必要がある。
【国際調査報告】