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特表2024-546215α-アルケン抽出剤、及びアルカンとα-アルケンとを分離する方法
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  • 特表-α-アルケン抽出剤、及びアルカンとα-アルケンとを分離する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】α-アルケン抽出剤、及びアルカンとα-アルケンとを分離する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 215/08 20060101AFI20241212BHJP
   C07C 49/04 20060101ALI20241212BHJP
   C07C 11/107 20060101ALI20241212BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20241212BHJP
   C07C 7/10 20060101ALI20241212BHJP
   C01G 5/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C07C215/08
C07C49/04 J
C07C11/107
C07C11/02
C07C7/10
C01G5/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565333
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 CN2022138024
(87)【国際公開番号】W WO2024108672
(87)【国際公開日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】202211482757.X
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520373578
【氏名又は名称】インナー・モンゴリア・イータイ・コール-ベイスト・ニュー・マテリアルズ・リサーチ・インスティテュート・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Inner Mongolia Yitai Coal-based New Materials Research Institute Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】リュウ トン
(72)【発明者】
【氏名】チャン チェン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジーフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン シャオロン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ヤンペン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ガン
(72)【発明者】
【氏名】リー タイシャン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ホンユー
(72)【発明者】
【氏名】シュエ チアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュー
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AD18
4H006BD10
4H006BN10
4H006BU32
(57)【要約】
本公開は、アルコールアミンと、炭素鎖長7~10の飽和モノケトンと、IB族金属の1価塩とを含み、前記アルコールアミンと、炭素鎖長7~10の飽和モノケトンと、IB族金属の1価塩との質量比が(0.9~2.0):(0.8~1.5):(0.1~0.6)であるα-アルケン抽出剤、及びアルカンとα-アルケンとを分離する方法を提供する。本公開は、錯形成抽出精留技術原理を利用し、錯形成抽出剤を添加することによって金属とアルケンとが比較的に安定した錯体を形成し、アルカンと分離する目的を達成し、分離効果が良く、生成物の収率が高い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールアミンと、炭素鎖長7~10の飽和モノケトンと、IB族金属の1価塩とを含み、前記アルコールアミンと、炭素鎖長7~10の飽和モノケトンと、IB族金属の1価塩との質量比が(0.9~2.0):(0.8~1.5):(0.1~0.6)であることを特徴とするα-アルケン抽出剤。
【請求項2】
前記アルコールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のα-アルケン抽出剤。
【請求項3】
前記炭素鎖長7~10の飽和モノケトンは、2-ヘプタノン、2-オクタノン、2-ノナノン及び3-デカノンのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のα-アルケン抽出剤。
【請求項4】
前記IB族金属の1価塩は、塩化第一銅、四フッ化ホウ酸第一銅、テトラフルオロホウ酸銀、トリフルオロ酢酸第一銅、トリフルオロ酢酸銀、酢酸第一銅、酢酸銀、硝酸銀のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載のα-アルケン抽出剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の抽出剤を採用し、アルカンとα-アルケンとを含有する原料を抽出精留して、抽残相とα-アルケンを含有するリッチ溶媒とを得る抽出精留工程と、
α-アルケンを含有するリッチ溶媒を精留して、前記抽出剤と分離したα-アルケンとを得る精製工程と、
を含むことを特徴とするアルカンとα-アルケンとを分離する方法。
【請求項6】
前記アルカンとα-アルケンとを含有する原料は、フィッシャートロプシュ合成油であり、
好ましくは、前記フィッシャートロプシュ合成油を抽出する前に、まず脱酸と脱酸素含有化合物を行い、
好ましくは、重量で、前記原料中にアルカン20~25部とα-アルケン70~75部とを含有することを特徴とする請求項5に記載のアルカンとα-アルケンとを分離する方法。
【請求項7】
前記抽出精留工程が抽出精留塔内で行われ、前記精製工程が精製塔内で行われ、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の圧力が45~56Kpaであり、温度が45~125℃であり、
好ましくは、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の温度が45~65℃であり、より好ましくは、前記抽出精留塔のスチル温度が55~59℃であり、前記精製塔のスチル温度が58~62℃であり、
好ましくは、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の温度が75~95℃であり、より好ましくは、前記抽出精留塔のスチル温度が84~88℃であり、前記精製塔のスチル温度が87~91℃であり、
好ましくは、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の温度が95~125℃であり、より好ましくは、前記抽出精留塔のスチル温度が110~114℃であり、前記精製塔のスチル温度が113~117℃であることを特徴とする請求項5に記載のアルカンとα-アルケンとを分離する方法。
【請求項8】
前記抽出精留塔内の操作パラメータは、トレイ数が34~36であり、原料の仕込み位置がトレイ24~26であり、抽出剤の仕込み位置がトレイ3~5であり、還流比が3.3~3.7:1であり、抽出剤と原料との質量比が2.5~3.5:1であり、
好ましくは、前記抽出精留塔内の操作パラメータは、トレイ数が35であり、原料の仕込み位置がトレイ25であり、抽出剤の仕込み位置がトレイ4であり、還流比が3.5:1であり、抽出剤と原料との質量比が3:1であることを特徴とする請求項7に記載のアルカンとα-アルケンとを分離する方法。
【請求項9】
前記精製塔内の操作パラメータは、トレイ数が39~41であり、仕込み位置がトレイ27~29であり、還流比が2.5~3.5:1であり、
好ましくは、前記精製塔内の操作パラメータは、トレイ数が40であり、仕込み位置がトレイ28であり、還流比が3:1であることを特徴とする請求項7に記載のアルカンとα-アルケンとを分離する方法。
【請求項10】
前記原料及び前記抽出剤を抽出精留塔に仕込む前に、まず予熱を行い、前記原料を65~100℃に予熱し、前記抽出剤を55~85℃に予熱し、
好ましくは、前記原料及び前記抽出剤を抽出精留塔に仕込む前に、まず予熱を行い、前記原料を68~72℃に予熱し、前記抽出剤を58~62℃に予熱し、
好ましくは、前記原料及び前記抽出剤を抽出精留塔に仕込む前に、まず予熱を行い、前記原料を93~97℃に予熱し、前記抽出剤を78~82℃に予熱することを特徴とする請求項5に記載のアルカンとα-アルケンとを分離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2022年11月24日に出願され、名称が「α-アルケン抽出剤、及びアルカンとα-アルケンとを分離する方法」である中国特許出願第202211482757.X号の優先権を主張し、ここで、引用によりその内容を全て組み込む。
【0002】
本公開は、アルケン分離技術分野に属し、具体的に、α-アルケン抽出剤、及びアルカンとα-アルケンとを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
長鎖α-アルケンは、重要な化工原料であり、界面活性剤、油田化学製品、アルケン共重合体、アルコール可塑剤、潤滑油などの分野に広く適用されている。従来、生産プロセスの問題により、長鎖α-アルケンの生産性が低く、原料の供給が需要に追いつかず、長鎖α-アルケンのファインケミカル産業は、最後に不足すぎて、輸入価額が高すぎるため、一部輸入するか、あるいは発展を放棄するしかできない。フィッシャートロプシュ(F-T)合成油中に豊富な長鎖α-アルケンを含有しており、石炭系F-T合成油の生産能力が高いので、最優先に解決すべき技術課題は、F-T粗石油製品から高純度の長鎖α-アルケンを分離する方法を求めることである。
【0004】
フィッシャートロプシュ合成は、合成ガス(CO+H)を原料として、触媒の作用により、液状炭化水素類、酸素含有有機物、二酸化炭素及び水などを生成する反応である。フィッシャートロプシュ合成は、石炭、天然ガス及びバイオマス等の炭素含有資源を液体燃料に間接に転化することができ、中国の「石炭に富み、石油に欠け、天然ガスがある」というエネルギー構造に対して重要な現実意義を有する。王亜東らは、文献において、高温フィッシャートロプシュ合成の主な生成物は、燃料油、酸素含有有機化学製品及びアルケンを含み、含有量が高く炭素数が連続的に分布するアルケンから、効果的な分離技術によって1-炭素又は一定炭素数範囲のα-アルケンを抽出することにより、ワックス分解、エチレンオリゴマー化及びアルカン脱水素化などの従来のプロセスの代わりにアルケンを生産できるだけではなく、フィッシャートロプシュ生成物の下流側への多様化発展に有利であり、F-T合成油から高純度の長鎖α-アルケンを分離することは、高付加価値の長鎖α-アルケンを得ることができるのみならず、石炭系F-T合成油の経済性を向上させることもできると明らかにした。
【0005】
従来、主な分離方法は、抽出精留法、複合膜分離法、吸着法等がある。中でも、抽出精留技術は、抽出と精留との2つの操作の利点を組み合わせ、アルカンとアルケンの分離効率を大幅に向上させる技術である。その操作過程は、精留塔頂へ高沸点の添加剤を連続的に添加し、液状マター中の成分同士の相対揮発度を変化させ、普通の精留により分離されにくい混合物を分離しやすくすることである。しかし、従来の抽出精留法の抽出剤としては、ほとんど単一の有機溶媒が用いられ、消耗量が大きく、環境への二次汚染の影響がひどいか、あるいは、用いる抽出剤が複合溶媒であるが、アルケン生成物の収率が極めて低く、実際の工業生産において収率への要求にかなわず、適切な抽出剤の選択は、分離を実現できるか否かのキーポイントである。複合膜によりアルケンとアルカンを分離する方法において、複合膜の作製コストが高く、実現が煩雑である。吸着法は、吸着剤の比表面積、細孔容積などへの要求が高く、吸着分離プロセスは、仕込み中の有害物質の蓄積に従い、吸着剤が活性を失いやすく、生産能力が低下してしまい、吸着飽和になりやすく、かつ、再生、脱吸着プロセスにおいて、一般に、高温が必要であり、熱を消耗する。反応精留は、要求が厳しく、例えば、主反応時間と精留時間とを比較すると、主反応時間が長すぎてはならず、さもないと、精留塔の分離能力が十分に利用されなくなる。
【0006】
これに鑑み、本公開を提案する。
【発明の概要】
【0007】
本公開の目的は、例えば、従来の精留要求が厳しいという課題を解決できるα-アルケン抽出剤、及びアルカンとα-アルケンとを分離する方法を提供することにある。
【0008】
本公開の実施例は、以下のように実現できる。
【0009】
第1の態様において、本公開は、アルコールアミンと、炭素鎖長7~10の飽和モノケトンと、IB族金属の1価塩とを含み、前記アルコールアミンと、炭素鎖長7~10の飽和モノケトンと、IB族金属の1価塩との質量比が(0.9~2.0):(0.8~1.5):(0.1~0.6)であるα-アルケン抽出剤を提供する。
【0010】
選択可能な実施態様において、前記アルコールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンのうちの少なくとも1種である。
【0011】
選択可能な実施態様において、前記有機ケトンは、2-ヘプタノン、2-オクタノン、2-ノナノン及び3-デカノンのうちの少なくとも1種である。
【0012】
選択可能な実施態様において、前記IB族金属の1価塩は、塩化第一銅、四フッ化ホウ酸第一銅、テトラフルオロホウ酸銀、トリフルオロ酢酸第一銅、トリフルオロ酢酸銀、酢酸第一銅、酢酸銀、硝酸銀のうちの少なくとも1種を含む。
【0013】
第2の態様において、本公開は、
上述した実施態様のいずれか1項に記載の抽出剤を採用し、アルカンとα-アルケンとを含有する原料を抽出精留して、抽残相とα-アルケンを含有するリッチ溶媒とを得る抽出精留工程と、
α-アルケンを含有するリッチ溶媒を精留して、前記抽出剤と分離したα-アルケンとを得る精製工程と、
を含むアルカンとα-アルケンとを分離する方法を提供する。
【0014】
選択可能な実施態様において、前記アルカンとα-アルケンとを含有する原料は、フィッシャートロプシュ合成油であり、
好ましくは、前記フィッシャートロプシュ合成油を抽出する前に、まず脱酸と脱酸素含有化合物を行い、
好ましくは、重量で、前記原料中にアルカン20~25部とα-アルケン70~75部とを含有する。
【0015】
選択可能な実施態様において、前記抽出精留工程が抽出精留塔内で行われ、前記精製工程が精製塔内で行われ、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の圧力が45~56Kpaであり、温度が45~125℃であり、
好ましくは、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の温度が45~65℃であり、より好ましくは、前記抽出精留塔のスチル(塔釜;tower kettle)温度が55~59℃であり、前記精製塔のスチル温度が58~62℃であり、
好ましくは、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の温度が75~95℃であり、より好ましくは、前記抽出精留塔のスチル温度が84~88℃であり、前記精製塔のスチル温度が87~91℃であり、
好ましくは、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の温度が95~125℃であり、より好ましくは、前記抽出精留塔のスチル温度が110~114℃であり、前記精製塔のスチル温度が113~117℃である。
【0016】
選択可能な実施態様において、前記抽出精留塔内の操作パラメータは、トレイ数が34~36であり、原料の仕込み位置がトレイ24~26であり、抽出剤の仕込み位置がトレイ3~5であり、還流比が3.3~3.7:1であり、抽出剤と原料との質量比が2.5~3.5:1であり、
好ましくは、前記抽出精留塔内の操作パラメータは、トレイ数が35であり、原料の仕込み位置がトレイ25であり、抽出剤の仕込み位置がトレイ4であり、還流比が3.5:1であり、抽出剤と原料との質量比が3:1である。
【0017】
選択可能な実施態様において、前記精製塔内の操作パラメータは、トレイ数が39~41であり、仕込み位置がトレイ27~29であり、還流比が2.5~3.5:1であり、
好ましくは、前記精製塔内の操作パラメータは、トレイ数が40であり、仕込み位置がトレイ28であり、還流比が3:1である。
【0018】
選択可能な実施態様において、前記原料及び前記抽出剤を抽出精留塔に仕込む前に、まず予熱を行い、前記原料を65~100℃に予熱し、前記抽出剤を55~85℃に予熱し、
好ましくは、前記原料及び前記抽出剤を抽出精留塔に仕込む前に、まず予熱を行い、前記原料を93~97℃に予熱し、前記抽出剤を78~82℃に予熱する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本公開の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例において使用する必要がある図面を簡単に紹介し、下記の図面は本公開の幾つかの実施例のみを示すので、範囲を限定するものと見なされるべきではなく、当業者にとって、創造的な労働をせずに、これらの図面を基にしてその他の関連図面を得ることもできる。
【0020】
図1図1は、本公開の実施例においてアルカンとα-アルケンとを分離する装置の構造概略図である。
【符号の説明】
【0021】
1 抽出精留塔
2 精製塔
3 配管C
4 配管D
5 配管E
6 配管F
7 管路G
8 配管H
9 配管I
【発明を実施するための形態】
【0022】
本公開の実施例は、例えば、下記の有益な効果を含む。
【0023】
錯形成抽出精留技術原理を利用して、錯形成抽出剤を添加することにより、金属とアルケンとが比較的に安定した錯体を形成し、アルカンと分離する目的を達成する。
【0024】
この方法は、従来の単一の有機抽出剤と比べて、操作が簡単で、有機溶液の使用量が少なく、環境への汚染が小さく、かつ、分離効果が良く、生成物の収率が高く、コストが低く、経済的効益がより高く、アルカンとアルケンとの分離において非常に大きな作用を発揮するようになる。
【0025】
本公開の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、本公開の実施例における図面を参照しながら、本公開の実施例における技術的解決手段を明瞭、全面的に説明し、明らかに、説明する実施例は、本公開の全ての実施例ではなく、本公開の一部の実施例に過ぎない。通常、本明細書の図面において説明及び示される本公開の実施例の構成要素は、様々な異なる構成で配置及び設計され得る。
【0026】
従って、以下、図面において提供される本公開の実施例についての詳しい説明は、保護を求める本公開の範囲を制限することを意図するものではなく、本公開の選択された実施例を示すものだけである。本公開における実施例に基づき、当業者であれば、創造的な労働を行わずに取得した全ての他の実施例は、いずれも本公開の保護範囲に属する。
【0027】
なお、類似する符号及び英文字は、以下の図面において類似項目を表すので、ある項目が1つの図面において定義されていると、その後の図面においてそれを再び定義及び解釈する必要がない。
【0028】
本公開の説明において、「上」、「下」、「内」、「外」など等の用語で示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであるか、或いは、本発明の製品が使用される場合に通常に置かれる方位又は位置関係であり、本発明の説明をしやすくし、簡略化するために過ぎず、示される装置又は要素は必ず特定した方位を有し、特定した方位で構造され操作されることを明示又は暗示していないため、本発明を制限していると理解されてはならない。
【0029】
また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、それらを区別して説明するために過ぎず、相対的な重要性を明示又は暗示するものと理解されてはならない。
【0030】
なお、矛盾がない限り、本公開の実施例における構成要素は互いに組み合わせてもよい。
【0031】
本願の実施例は、アルコールアミンと、炭素鎖長7~10の飽和モノケトンと、IB族金属の1価塩とを含み、前記アルコールアミンと、炭素鎖長7~10の飽和モノケトンと、IB族金属の1価塩との質量比が(0.9~2.0):(0.8~1.5):(0.1~0.6)であるα-アルケン抽出剤を提供する。
【0032】
本公開は、錯形成抽出精留技術原理を利用して、錯形成抽出剤を添加して金属とアルケンとが比較的に安定した錯体を形成することにより、分離の選択性を向上させ、有機溶液の使用量を低減する。用いる金属は、IB族金属の1価塩であり、イオンの4d軌道を占めるd電子がアルケン*π-2p反結合性軌道電子へ逆供与される結果、π結合を形成する。(n-1)d10ns電子配置を有し、電子を受容しやすいし、過剰なd電子を供給しやすく、適切なアルケンキャリアである。
【0033】
本実施例は、抽出剤の組成を最適化することにより、純度が99.8%に達したα-アルケンを得ることができる。
【0034】
その他の選択可能な実施態様において、前記アルコールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンのうちの少なくとも1種である。
【0035】
その他の選択可能な実施態様において、前記有機ケトンは、2-ヘプタノン、2-オクタノン、2-ノナノン及び3-デカノンのうちの少なくとも1種である。
【0036】
その他の選択可能な実施態様において、前記IB族金属の1価塩は、塩化第一銅、四フッ化ホウ酸第一銅、テトラフルオロホウ酸銀、トリフルオロ酢酸第一銅、トリフルオロ酢酸銀、酢酸第一銅、酢酸銀、硝酸銀のうちの少なくとも1種を含む。
【0037】
触媒のコストを考慮すると、IB族金属のうちの銅及び銀の1価塩であることが好ましく、電離程度が高いIB族金属の1価塩が好ましく、1価金属カチオンは、自由度がより高く、1価カチオンとアルケンとの錯形成回数を向上させることができ、より好ましくは、四フッ化ホウ酸第一銅、トリフルオロ酢酸第一銅及び酢酸銅である。
【0038】
本公開のもう1つの実施例は、
前述した実施態様のいずれか1項に記載の抽出剤を採用して、アルカンとα-アルケンとを含有する原料を抽出精留し、抽残相とα-アルケンとを含有するリッチ溶媒を得る抽出精留工程と、
α-アルケンを含有するリッチ溶媒を精留して、前記抽出剤と分離したα-アルケンとを得る精製工程と、を含むアルカンとα-アルケンとを分離する方法を提供する。その他の選択可能な実施態様において、前記アルカンとα-アルケンとを含有する原料がフィッシャートロプシュ合成油である。
【0039】
その他の選択可能な実施態様において、前記フィッシャートロプシュ合成油を抽出する前に、まず脱酸及び脱酸素含有化合物を行う。
【0040】
その他の選択可能な実施態様において、重量で、前記原料中に、アルカン20~25部及びα-アルケン70~75部を含む。
【0041】
本公開は、内モンゴル伊諾新材料有限公司の脱酸、脱酸素されたフィッシャートロプシュ合成油、すなわち、単純炭化水素混合物を原料として、脱酸、脱酸素を行う前後の原料の主な組成を表1に示す。本公開の方法により、アルカン、アルケン成分の分離を高効率に実現し、純度が高く、適用性が広く、コストが低く、経済性が強いα-アルケン製品を得ることができ、国外のα-アルケンに対する独占を打破し、中国の下流側の高級合成樹脂、最高級潤滑油などの高付加値製品の迅速な発展及び広範な適用を大幅に加速する。
【0042】
【表1】
【0043】
その他の選択可能な実施態様において、前記抽出精留工程は、抽出精留塔内で行われ、前記精製工程は、精製塔内で行われ、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の圧力が45~56Kpaであり、温度が45~125℃である。
【0044】
その他の選択可能な実施態様において、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の温度が45~65℃であり、より好ましくは、前記抽出精留塔のスチル温度が55~59℃であり、前記精製塔のスチル温度が58~62℃であり、炭素鎖長6のα-アルケンの単独分離に用いることができる。
【0045】
その他の選択可能な実施態様において、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の温度が75~95℃であり、より好ましくは、前記抽出精留塔のスチル温度が84~88℃であり、前記精製塔のスチル温度が87~91℃であり、炭素鎖長7のα-アルケンの単独分離に用いることができる。
【0046】
その他の選択可能な実施態様において、前記抽出精留塔及び/又は精製塔内の温度が95~125℃であり、より好ましくは、前記抽出精留塔のスチル温度が110~114℃であり、前記精製塔のスチル温度が113~117℃であり、炭素鎖長8のα-アルケンの単独分離に用いることができる。
【0047】
その他の選択可能な実施態様において、前記抽出精留塔内の操作パラメータは、トレイ数が34~36であり、原料の仕込み位置がトレイ24~26であり、抽出剤の仕込み位置がトレイ3~5であり、還流比が3.3~3.7:1であり、抽出剤と原料との質量比が2.5~3.5:1である。
【0048】
その他の選択可能な実施態様において、前記抽出精留塔内の操作パラメータは、トレイ数が35であり、原料の仕込み位置がトレイ25であり、抽出剤の仕込み位置がトレイ4であり、還流比が3.5:1であり、抽出剤と原料との質量比が3:1である。
【0049】
その他の選択可能な実施態様において、前記精製塔内の操作パラメータは、トレイ数が39~41であり、仕込み位置がトレイ27~29であり、還流比が2.5~3.5:1である。
【0050】
その他の選択可能な実施態様において、前記精製塔内の操作パラメータは、トレイ数が40であり、仕込み位置がトレイ28であり、還流比が3:1である。
【0051】
その他の選択可能な実施態様において、前記原料及び前記抽出剤を抽出精留塔に仕込む前に、まず予熱を行い、前記原料を65~100℃に予熱し、前記抽出剤を55~85℃に予熱する。
【0052】
その他の選択可能な実施態様において、前記原料及び前記抽出剤を抽出精留塔に仕込む前に、まず予熱を行い、前記原料を68~72℃に予熱し、前記抽出剤を58~62℃に予熱し、炭素鎖長7のα-アルケンの単独分離に用いることができる。
【0053】
その他の選択可能な実施態様において、前記原料及び前記抽出剤を抽出精留塔に仕込む前に、まず予熱を行い、前記原料を93~97℃に予熱し、前記抽出剤を78~82℃に予熱し、炭素鎖長8のα-アルケンの単独分離に用いることができる。
【0054】
以下、実施例を参照しながら、本公開の構成要件及び性能をさらに詳しく説明する。
【0055】
本公開のアルカンとα-アルケンとを分離する方法は、以下の工程を含む。
【0056】
試験試薬及び装置の用意:エタノールアミン、2-ヘプタノン、塩化第一銅、抽出精留塔、精製塔、熱交換器。
【0057】
操作手順:
本試験の原料は、前処理された脱酸素、脱酸、分画後の石炭系フィッシャートロプシュ油であり、即ち、アルケンとアルカンとを含有する分離すべき混合物であり、目標α-アルケンの炭素鎖長がnであり、かつ6≦n≦8である。
【0058】
図1に示す装置を採用して、炭素鎖長6のα-アルケンを単独分離する際に、分離すべき成分が配管D4を介して中下部から抽出精留塔1に入り、複合抽出剤が配管C3を介して上部から抽出精留塔1に入り、塔底がリボイラにより熱供給される。抽出精留を経て、原料中のアルケンが複合抽出剤に溶解し、アルカンが抽出精留塔1の頂部から配管E5を介して排出され、一部が上部から抽出精留塔1へ還流し、もう一部が抽出される。アルケンを含有するリッチ溶媒が抽出精留塔1の塔底部から抽出され、配管F6を介して中央部から精製塔2に入り、塔底がリボイラにより熱源が供給され、精留によりアルケンと複合抽出剤とを分離し、アルケンが精製塔2の塔頂から管路G7を介して排出され、一部が上部から精製塔2へ還流し、もう一部が抽出され、抽出剤が精製塔2の塔底から配管H8を介して排出され、配管I9を介して冷却された後に抽出精留塔1に戻って循環使用される。
【0059】
ここで、n=6であり、抽出剤は、最適な比、つまりエタノールアミン:2-ヘプタノン:塩化第一銅(質量比)=1:1:0.2で複合される。抽出精留塔の操作パラメータは、スチル温度が57℃であり、操作圧力が55.3kpaであり、トレイ数が35であり、原料の仕込み位置がトレイ25であり、抽出剤の仕込み位置がトレイ4であり、還流比が3.5:1であり、抽出剤と原料との質量比が3:1である。精製塔の操作パラメータは、スチル温度が60℃であり、操作圧力が55.3kpaであり、トレイ数が40であり、仕込み位置がトレイ28であり、還流比が3:1であり、回収後のアルケン純度が99.8wt%以上である。
【0060】
図1に示す装置を採用して、炭素鎖長7のα-アルケンを単独分離する際に、分離すべき成分が配管D4を介して予熱器により70℃に加熱され、中下部から抽出精留塔1に入り、複合抽出剤が配管C3を介して予熱器により60℃に加熱され、上部から抽出精留塔1に入り、塔底がリボイラにより熱供給される。抽出精留により、原料中のアルケンが複合抽出剤に溶解し、アルカンが抽出精留塔1の頂部から配管E5を介して排出され、一部が上部から抽出精留塔1へ還流し、もう一部が抽出される。アルケンを含有するリッチ溶媒が抽出精留塔1の塔底部から抽出され、配管F6を介して中央部から精製塔2に入り、塔底がリボイラにより熱供給され、精留によりアルケンと複合抽出剤を分離し、アルケンが精製塔2の塔頂から管路G7を介して排出され、一部が上部から精製塔2へ還流し、もう一部が抽出され、抽出剤が精製塔2の塔底から配管H8を介して排出され、配管I9を介して冷却された後に抽出精留塔1に戻って循環使用される。
【0061】
ここで、n=7であり、抽出剤は、最適な比、つまり、エタノールアミン:2-ヘプタノン:塩化第一銅(質量比)=1:1:0.2で複合され、抽出精留塔の操作パラメータは、スチル温度が86℃であり、操作圧力が55.3kpaであり、トレイ数が35であり、原料の仕込み位置がトレイ25であり、抽出剤の仕込み位置がトレイ4であり、還流比が3.5:1であり、抽出剤と原料との質量比が3:1である。精製塔の操作パラメータは、スチル温度が89℃であり、操作圧力が55.3kpaであり、トレイ数が40であり、仕込み位置がトレイ28であり、還流比が3:1である。回収後のアルケン純度が99.8wt%以上である。
【0062】
図1に示す装置を採用して、炭素鎖長8のα-アルケンを単独分離する際に、分離すべき成分が配管D4を介して予熱器により95℃に加熱され、中下部から抽出精留塔1に入り、複合抽出剤が配管C3を介して予熱器により80℃に加熱され、上部から抽出精留塔1に入り、塔底がリボイラにより熱供給される。抽出精留により、原料中のアルケンが複合抽出剤に溶解し、アルカンが抽出精留塔1の頂部から配管E5を介して排出され、一部が上部から抽出精留塔1へ還流し、もう一部が抽出される。アルケンを含有するリッチ溶媒が抽出精留塔1の塔底部から抽出され、配管F6を介して中央部から精製塔2に入り、塔底がリボイラにより熱供給され、精留によりアルケンと複合抽出剤を分離し、アルケンが精製塔2の塔頂から管路G7を介して排出され、一部が上部から精製塔2へ還流し、もう一部が抽出され、抽出剤が精製塔2の塔底から配管H8を介して排出され、配管I9を介して冷却された後に抽出精留塔1に戻って循環使用される。
【0063】
ここで、n=8であり、複合抽出剤は、最適な比、つまりエタノールアミン:2-ヘプタノン:塩化第一銅(質量比)=1:1:0.2で複合される。抽出精留塔の操作パラメータは、スチル温度が112℃であり、操作圧力が55.3kpaであり、トレイ数が35であり、原料の仕込み位置がトレイ25であり、抽出剤の仕込み位置がトレイ4であり、還流比が3.5:1であり、抽出剤と原料との質量比が3:1であり、精製塔の操作パラメータは、スチル温度が115℃であり、操作圧力が55.3kpaであり、トレイ数が40であり、仕込み位置がトレイ28であり、還流比が3:1である。回収後のアルケン純度が99.8wt%以上である。
【0064】
なお、操作パラメータのうちの点の値は、装置制御精度の原因により、ある程度変動する可能性があるが、誤差許容範囲内で、結果への影響は制御可能な範囲内である。
【0065】
【表2】
【0066】
比較例1:
アルコールアミン溶液を複合溶液から除外し、有機ケトンと金属塩とのみで複合抽出剤を構成することのみがグループ1の試験と相違し、得られた製品の純度が80wt%であり、収率が4%である。
【0067】
比較例2
有機ケトン溶液を複合溶液から除外し、アルコールアミンと金属塩とのみで複合抽出剤を構成することのみがグループ1の試験と相違し、得られた製品の純度が86wt%であり、収率が19%である。
【0068】
以上は、本公開の具体的な実施形態に過ぎず、本公開の保護範囲はこれらに制限されず、当業者であれば、本公開に披露される技術範囲内で容易に想到し得る変化又は置き換えはいずれも本公開の保護範囲内に包含される。従って、本公開の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に準ずるべきである。
図1
【国際調査報告】