(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収用のバイポーラ膜電池
(51)【国際特許分類】
C25B 9/21 20210101AFI20241212BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241212BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20241212BHJP
C25B 11/093 20210101ALI20241212BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20241212BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20241212BHJP
H01M 8/106 20160101ALI20241212BHJP
H01M 8/1062 20160101ALI20241212BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
C25B9/21
C25B9/00 Z
C25B11/081
C25B11/093
C25B15/08
H01M8/10
H01M8/106
H01M8/1062
H01M8/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525182
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 US2022047196
(87)【国際公開番号】W WO2023076092
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520094798
【氏名又は名称】スカイア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SKYRE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】コラ,プラビーン
(72)【発明者】
【氏名】モルター,トレント エム
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K011AA30
4K011DA11
4K021BA02
4K021DB06
4K021DB31
4K021DB36
4K021DC15
5H126AA05
5H126BB06
5H126GG05
5H126JJ03
5H126JJ04
5H126JJ06
(57)【要約】
一態様において、バイポーラ膜電池は、アノード半電池とカソード半電池との間に配置された分離層を備え、前記アノード半電池は、プロトン交換膜とアノードとを有し、前記プロトン交換膜は、前記アノードと前記分離層との間に配置され、前記カソード半電池は、アニオン交換膜とカソードとを有し、前記アニオン交換膜は、前記カソードと前記分離層との間に配置され、前記バイポーラ膜電池は、前記アノードと前記カソードとを接続する外部回路を更に備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード半電池とカソード半電池との間に配置された分離層を備え、
前記アノード半電池は、プロトン交換膜とアノードとを有し、
前記プロトン交換膜は、前記アノードと前記分離層との間に配置され、
前記カソード半電池は、アニオン交換膜とカソードとを有し、
前記アニオン交換膜は、前記カソードと前記分離層との間に配置され、
前記アノードと前記カソードとを接続する外部回路を更に備える、
バイポーラ膜電池。
【請求項2】
前記カソード半電池は、カソード側チャンバと、前記カソード側チャンバに二酸化炭素を供給するように前記カソード側チャンバに流体連通する二酸化炭素源ストリームとをさらに備える、
請求項1に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項3】
前記カソード半電池は、前記カソード側チャンバから抜き出されるように前記カソード側チャンバに流体連通する二酸化炭素枯渇ストリームを更に備える、
請求項2に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項4】
前記アノード半電池は、アノード側チャンバと、前記アノード側チャンバから送り出されるように前記アノード側チャンバに流体連通する水素リッチストリームとを更に備える、
請求項3に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項5】
前記分離層、前記アノード半電池、及び前記カソード半電池は、互いに対向する平面状の構成を有する、
請求項4に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項6】
前記アノード半電池と前記カソード半電池とは、管状のバイポーラ膜電池を形成するように同心円状に配置されており、
前記分離層は、前記アノード半電池と前記カソード半電池との間に同心円状に配置されている、
請求項5に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項7】
前記カソード半電池によって形成された管の中に前記アノード半電池が配置されているか、又は、前記アノード半電池によって形成された管の中に前記カソード半電池が配置されている、
請求項6に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項8】
前記水素リッチストリームと前記二酸化炭素源ストリームとの両方が、前記管状のバイポーラ膜電池の近位端に流体連通しており、
前記管状のバイポーラ膜電池の遠位端に二酸化炭素生成物ストリームが流体連通している、
請求項7に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項9】
二酸化炭素生成物ストリームと前記二酸化炭素源ストリームとの両方が、前記管状のバイポーラ膜電池の近位端に流体連通しており、
前記水素リッチストリームは、前記管状のバイポーラ膜電池の遠位端に流体連通している、
請求項7に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項10】
前記アノードは、白金を含み、
前記カソードは、少なくとも1つの非白金族金属を含む、
請求項1に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項11】
前記分離層は多孔質炭素を含み、又は、前記分離層の厚さは、0.25マイクロメートル以上5ミリメートル以下、若しくは、1マイクロメートル以上1ミリメートル以下である、
請求項1に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項12】
前記分離層は多孔質炭素を含み、
前記多孔質炭素は、
2ナノメートル未満の細孔径を有するミクロ多孔体と、
2ナノメートル以上50ナノメートル以下の細孔径を有するメソ多孔体と、
0.0001cm
3/g以上0.1cm
3/g以下の全細孔容積と、
2m
2/g以上500m
2/g以下、100m
2/g以上2000m
2/g以下、又は、500m
2/g以上1000m
2/g以下のBET表面積と、
10
-2S/cm以上の電気伝導率と、のうち少なくとも1つを有する、
請求項11に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項13】
前記アノード側チャンバに流体連通する水素抜き出しストリームを更に備える、
請求項1に記載のバイポーラ膜電池。
【請求項14】
請求項1に記載のバイポーラ膜電池と、
水素リッチストリームを介して前記バイポーラ膜電池の入口に流体連通する水電解装置と、
二酸化炭素生成物ストリームを介して前記バイポーラ膜電池の出口に流体連通するCO
2電解装置と、
を備える装置。
【請求項15】
二酸化炭素生成物ストリームを精製する方法であって、
アニオン交換膜とカソードとを有するカソード半電池を備えたカソード側チャンバに、二酸化炭素を含む二酸化炭素源ストリームを導くステップであって、前記アニオン交換膜における前記カソード側チャンバに隣接する側に前記カソードが配置されているステップと、
前記カソード側チャンバから二酸化炭素枯渇ストリームを抜き出すステップと、
前記カソードで前記二酸化炭素を水と反応させて炭酸イオンと重炭酸イオンとを形成するステップと、
前記アニオン交換膜を通して、前記炭酸イオンと前記重炭酸イオンとを分離層に導くステップと、
プロトン交換膜とアノードとを有するアノード半電池を備えたアノード側チャンバに、水素を含む水素リッチストリームを導くステップであって、前記プロトン交換膜における前記アノード側チャンバに隣接する側に前記アノードが配置されているステップと、
前記アノードでプロトンと電子とを形成するように前記水素を反応させて、前記プロトン交換膜を通して、前記分離層に前記プロトンを導くステップと、
前記分離層において、前記プロトン、前記炭酸イオン、及び前記重炭酸イオンを反応させて、二酸化炭素と水を形成するステップと、
前記分離層から、前記二酸化炭素と前記水とを含む二酸化炭素生成物ストリームを取り出すステップと、
を備える方法。
【請求項16】
分離ユニットと、貯蔵ユニットと、CO
2電解セルへの直接供給部とのうちの少なくとも1つに、前記二酸化炭素生成物ストリームの少なくとも一部を導くステップを更に備える、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記二酸化炭素源ストリームは、空気と、工業プロセスからのオフガスとのうちの少なくとも一方を含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記二酸化炭素源ストリームは、乾燥基準での前記二酸化炭素源ストリームの全体積に基づく二酸化炭素の体積パーセントが50%以下である、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記水素リッチストリームは、乾燥基準での前記水素リッチストリームの全体積に基づく水素の体積パーセントが、90%以上100%以下であるか、又は、95%以上99%以下である、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記二酸化炭素生成物ストリームは、前記二酸化炭素生成物ストリームの全体積に基づく二酸化炭素の体積パーセントが、90%以上100%以下である、
請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2021年10月26日に出願された米国仮出願第63/272093号の優先権を主張するものであり、その仮出願の開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)排出量が世界的に増加し、重大な気候変動を引き起こしているため、CO2レベルを工業化以前のレベルまで下げる取り組みを加速することが不可欠である。この目標を達成するための1つの方法は、市場で実現可能なCO2緩和策の開発である。しかしながら、多くのカーボンニュートラル又はカーボンネガティブの転換技術では、空気中から直接得られる微量(約400ppm)のCO2ではなく、濃縮されたCO2原料が必要とされる。この文脈において、例えば、液体ベース又は固体ベースの吸着剤システム、燃料電池ベース又は透析ベースの電気化学システム、及び、レドックス(酸化還元)フロー電池システムなど、多くの直接空気(CO2)回収技術が開発されている。例えば、CO2回収分離用の最先端の液体吸着剤技術は、基本的に、大きな表面積の空気と液体の界面にCO2溶解度の高いアミン系有機溶液をさらすことによる直接回収ステップの後に、温度スイング式の脱着によるCO2分離ステップを実行することで実現される。同様に、固体吸着剤技術は、吸着ステップでCO2を選択的に回収し、脱着ステップでCO2を分離する圧力スイング吸着(PSA)システムによって実現される。それでもなお、これらの吸着剤技術では、高温または高圧のスイング動作のために高エネルギーの入力が必要になる。
【0003】
そこで、CO2を回収するための改良技術が望まれている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、二酸化炭素を回収するためのバイポーラ膜電池(双極膜電池)が開示される。
【0005】
一態様において、バイポーラ膜電池は、アノード半電池とカソード半電池との間に配置された分離層を備え、前記アノード半電池は、プロトン交換膜とアノードとを有し、前記プロトン交換膜は、前記アノードと前記分離層との間に配置され、前記カソード半電池は、アニオン交換膜とカソードとを有し、前記アニオン交換膜は、前記カソードと前記分離層との間に配置され、前記バイポーラ膜電池は、前記アノードと前記カソードとを接続する外部回路を更に備える。
【0006】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池におけるカソード半電池は、カソード側チャンバと、前記カソード側チャンバに二酸化炭素を供給するように前記カソード側チャンバに流体連通する二酸化炭素源ストリームとをさらに備えてもよい。
【0007】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池におけるカソード半電池は、カソード側チャンバと、前記カソード側チャンバから抜き出されるように前記カソード側チャンバに流体連通する二酸化炭素枯渇ストリームを更に備えてもよい。
【0008】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池におけるアノード半電池は、アノード側チャンバと、前記アノード側チャンバから送り出されるように前記アノード側チャンバに流体連通する水素リッチストリームとを更に備えてもよい。
【0009】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池における前記分離層、前記アノード半電池、及び前記カソード半電池は、互いに対向する平面状の構成を有してもよい。
【0010】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池において、前記アノード半電池と前記カソード半電池とは、管状(チューブ状)のバイポーラ膜電池を形成するように同心円状に配置されてもよく、前記分離層は、前記アノード半電池と前記カソード半電池との間に同心円状に配置されてもよい。
【0011】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池において、前記カソード半電池によって形成された管(チューブ)の中に前記アノード半電池が配置されていてもよいし、前記アノード半電池によって形成された管(チューブ)の中に前記カソード半電池が配置されていてもよい。
【0012】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池において、前記水素リッチストリームと前記二酸化炭素源ストリームとの両方が、前記管状のバイポーラ膜電池の近位端に流体連通し、前記管状のバイポーラ膜電池の遠位端に二酸化炭素生成物ストリームが流体連通してもよい。
【0013】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池において、前記二酸化炭素生成物ストリームと前記二酸化炭素源ストリームとの両方が、前記管状のバイポーラ膜電池の近位端に流体連通し、前記水素リッチストリームは、前記管状のバイポーラ膜電池の遠位端に流体連通してもよい。
【0014】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池は、白金を含む前記アノードと、少なくとも1つの非白金族金属を含む前記カソードと、を備えてもよい。
【0015】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池において、前記分離層は多孔質炭素を含んでもよく、前記分離層の厚さは、0.25マイクロメートル以上5ミリメートル以下、又は、1マイクロメートル以上1ミリメートル以下であってもよい。
【0016】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池において、前記分離層は多孔質炭素を含んでもよく、前記多孔質炭素は、2ナノメートル未満の細孔径を有するミクロ多孔体と、2ナノメートル以上50ナノメートル以下の細孔径を有するメソ多孔体と、0.0001cm3/g以上0.1cm3/g以下の全細孔容積と、2m2/g以上500m2/g以下、100m2/g以上2000m2/g以下、又は、500m2/g以上1000m2/g以下のBET表面積と、10-2S/cm以上の電気伝導率と、のうち少なくとも1つを有してもよい。
【0017】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、更なる実施形態に係るバイポーラ膜電池は、前記アノード側チャンバに流体連通する水素抜き出しストリームを備えてもよい。
【0018】
別の態様において、装置は、上記のバイポーラ膜電池を備える。
【0019】
別の態様では、特許請求の範囲に記載されたバイポーラ膜電池を備える装置が提供される。該装置において、水電解装置は、水素リッチストリームを介して前記バイポーラ膜電池の入口に流体連通している。また、当該装置において、CO2電解装置は、二酸化炭素生成物ストリームを介して前記バイポーラ膜電池の出口に流体連通している。
【0020】
さらに別の態様において、二酸化炭素生成物ストリームを精製する方法は、アニオン交換膜とカソードとを有するカソード半電池を備えたカソード側チャンバに、二酸化炭素を含む二酸化炭素源ストリームを導くステップであって、前記アニオン交換膜における前記カソード側チャンバに隣接する側に前記カソードが配置されているステップと、前記カソード側チャンバから二酸化炭素枯渇ストリームを抜き出すステップと、前記カソードで前記二酸化炭素を水と反応させて炭酸イオンと重炭酸イオンとを形成するステップと、前記アニオン交換膜を通して、前記炭酸イオンと前記重炭酸イオンとを分離層に導くステップと、プロトン交換膜とアノードとを有するアノード半電池を備えたアノード側チャンバに、水素を含む水素リッチストリームを導くステップであって、前記プロトン交換膜における前記アノード側チャンバに隣接する側に前記アノードが配置されているステップと、前記アノードでプロトンと電子とを形成するように前記水素を反応させて、前記プロトン交換膜を通して、前記分離層に前記プロトンを導くステップと、前記分離層において、前記プロトン、前記炭酸イオン、及び前記重炭酸イオンを反応させて、二酸化炭素と水を形成するステップと、前記分離層から、前記二酸化炭素と前記水とを含む二酸化炭素生成物ストリームを取り出すステップと、を備える。
【0021】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、本方法のさらなる実施形態は、分離ユニットと、貯蔵ユニットと、CO2電解セルへの直接供給部とのうちの少なくとも1つに、前記二酸化炭素生成物ストリームの少なくとも一部を導くステップを更に備えてもよい。
【0022】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、本方法のさらなる実施形態において、前記二酸化炭素源ストリームは、空気と、工業プロセスからのオフガスとのうちの少なくとも一方を含んでもよい。
【0023】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、本方法のさらなる実施形態において、前記二酸化炭素源ストリームは、乾燥基準での前記二酸化炭素源ストリームの全体積に基づく二酸化炭素の体積パーセントが50%以下であってもよい。
【0024】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、本方法のさらなる実施形態において、前記水素リッチストリームは、乾燥基準での前記水素リッチストリームの全体積に基づく水素の体積パーセントが、90%以上100%以下であってもよいし、95%以上99%以下であってもよい。
【0025】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、本方法のさらなる実施形態において、前記二酸化炭素生成物ストリームは、前記二酸化炭素生成物ストリームの全体積に基づく二酸化炭素の体積パーセントが、90%以上100%以下であってもよい。
【0026】
本明細書に記載の1つ又は複数の特徴に加えて、又は、その代替として、バイポーラ膜電池のさらなる実施形態も考えられる。
【0027】
上述の特徴およびその他の特徴は、以下の図、詳細な説明、および請求項によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下の図は、本開示の説明のために提供される例示的な実施形態を示す。これらの図は、例示を目的としたものであり、本開示に従って製造されるデバイスは、本明細書に記載の材料、条件、又はプロセスパラメータに限定されるものではない。
【0029】
【
図2】平面状構成を有するバイポーラ膜電池の一態様を示す図である。
【
図3】管状構成を有するバイポーラ膜電池の一態様を示す図である。
【
図4】CO
2RENEW処理装置300と流体連通するバイポーラ膜電池10を備えるサポートシステム(バランスオブプラント)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明により、気体混合物から(例えば、直接空気から、又は、産業排ガスから)の単一ステップの電気化学的回収分離プロセスによってCO2を濃縮し得るバイポーラ膜電池(双極膜電池)が開発された。バイポーラ膜電池は、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)のアノード半電池膜と、アニオン交換膜燃料電池(AEMFC)のカソード半電池膜とを備える。アノード半電池膜とカソード半電池膜との間には、混合イオン伝導性を有し得る分離層が配置されている。分離層は、CO2形成および分離領域として機能し得る。
【0031】
バイポーラ膜電池は、他のシステムに比べて、例えば、直接空気から又は産業排ガスからの単一のステップの電気化学的回収分離プロセスを介してCO2を濃縮できること、及び、低温(例えば、100℃未満)で有益に動作し得ることなど、いくつかの利点がある。さらに、二酸化炭素を回収(捕捉)するためにバイポーラ膜電池で使用される反応は、酸素還元反応(ORR)に依存し得る。酸素還元反応(ORR)により、アニオン交換膜燃料電池(AEMFC)のエアカソードに存在するCO2に関連して、より速い平衡速度を有する水酸化物イオン(OH-)が生成される。具体的には、一次的なカソードの酸素還元反応(ORR)は、空気中の酸素を水酸化物イオン(OH-)に自発的に変換し得る。これにより、空気中に存在するCO2を容易に回収(捕捉)して、炭酸イオン(CO3
2-)又は重炭酸イオン(HCO3
-)に変換し得る。これらの燃料電池ベースのCO2回収システムのもう1つの特有の利点は、再生可能な水素(燃料)から電力を同時生成し得ることである。さらに、バイポーラ膜電池から水とともに分離されたCO2は、例えばSKYRE社のCO2RENEW(商標名)技術を使用して、電気化学的CO2電気分解のための直接供給原料としてさらに利用可能であり、カーボンニュートラルな有機液体、合成ガス、又は高エネルギー密度燃料を生産し得る。
【0032】
本発明のバイポーラ膜電池のさらなる利点としては、以下の1つ以上が挙げられる。システムは、液体電解質または可動部品を含まない全固体電気化学デバイスであってもよい。CO2の回収(捕捉)及び分離は、単一のデバイスで実施され得る。バイポーラ膜電池は、CO2の直接空気回収、又は、排ガスなどからのCO2の回収のいずれにも使用可能である。高電流密度(500mA/cm2よりも大きな電流密度)で動作する場合、CO2の回収(捕捉)と発電とが同時になされ得る。再生可能エネルギー源(例えば、太陽エネルギー、風力エネルギーなど)と統合される場合、枯渇されたH2は、水の電気分解を使用して再生され得る。バイポーラ膜電池は、化学汚染物質(例えば、CO、NOx、H2Sなど)に対して耐性であり得る。バイポーラ膜電池は 、例えば潜水艦などの閉ループ生命維持環境または閉ループ制御環境での連続的なCO2のスクラビング用途に理想的であり得る。
【0033】
例えば閉ループ環境におけるCO2スクラバーとして、バイポーラ膜燃料電池が使用される場合、以下の閉ループシステムが想定され得る。
【0034】
図1は、順方向バイアス構成のバイポーラ膜電池10を示す図である。
図1は、分離層40がアノード半電池20とカソード半電池60との間に配置されていることを示している。アノード半電池20は、p型のプロトン伝導性のプロトン交換膜ベースのアノード半電池膜であってもよい。アノード半電池20は、プロトン交換膜22とアノード24とを備える。プロトン交換膜22は、アノード24と分離層40との間に配置され得る。アノード24は、介在層が存在することなくプロトン交換膜22に直接物理的に接触するように、プロトン交換膜22上に配置され得る。アノード側集電体26は、プロトン交換膜22とは反対側におけるアノード24の表面上に配置され得る。アノード側集電体26は、介在層が存在することなくアノード24に直接物理的に接触し得る。
【0035】
カソード半電池60は、n型の水酸化物イオン(OH-)伝導性のアニオン交換膜ベースのカソード半電池膜であってもよい。カソード半電池60は、アニオン交換膜62とカソード64とを備える。アニオン交換膜62は、カソード64と分離層40との間に配置され得る。カソード64は、介在層が存在することなくアニオン交換膜62に直接物理的に接触するように、アニオン交換膜62上に配置され得る。カソード側集電体66は、アニオン交換膜62とは反対側におけるカソード64の表面上に配置され得る。カソード側集電体66は、介在層が存在することなくカソード64に直接物理的に接触し得る。
【0036】
アノード半電池20では水素酸化反応が起こり、下記の反応(1)に従ってアノード24で水素がプロトン(H
+)と電子(e
-)に分解される。
【化1】
電子は、外部回路90を介してアノード24からカソード64に伝導され得る。プロトンは、印加電圧の極性により、プロトン交換膜22を介して分離層40に伝導され得る。
【0037】
カソード半電池60では酸素還元反応が起こる。酸素還元反応では、水素酸化反応からの電子が用いられる。該電子は、下記の反応(2)に従って水酸化物イオン(OH
-)を形成するように、カソード64で酸素および水素と反応する。
【化2】
カソード64に存在する二酸化炭素は、下記の反応(3)~(6)のいずれかに従って、水、上記の反応(2)から生成された水酸化物イオン、又は酸素と反応し得る。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
二酸化炭素の回収速度(捕捉速度)は、一般に、上記の反応(3)及び反応(6)に比べて速い速度で起こる上記の反応(4)及び反応(5)によって決まる。反応(2)から生成された水酸化物イオン、反応(6)から生成された炭酸イオン(CO
3
2-)、および、反応(4)から生成された重炭酸イオン(HCO
3
-)とともに、水が、アニオン交換膜62を介して分離層40に導かれ得る。
【0038】
炭酸イオン(CO
3
2-)及び重炭酸イオン(HCO
3
-)は、アニオン交換膜62を通過するように運ばれる水酸化物イオン(OH
-)とともに、下記の酸塩基反応(7)~(9)に従って、プロトン交換膜22を通過するように運ばれるプロトンと反応し得る。
【化7】
【化8】
【化9】
その後、上記の反応(7)によって生成された炭酸(H
2CO
3)を用いて、反応(3)によって二酸化炭素が生成されるか、又は、アニオン交換膜62を通して運ばれるか若しくは反応(8)によって生成された重炭酸イオン(HCO
3
-)を用いて、反応(4)によって二酸化炭素が生成され得る。その後、分離層40に存在する二酸化炭素および水は、分離層40から除去され得る。
【0039】
アノード単独およびカソード単独におけるシステムの2つの半電池の反応を考慮すると、電池全体の酸化還元電位(E°)は、0.4ボルト(0.4ボルトの電位E還元から0ボルトの電位E酸化を引いた値)となる。この電位は、水素燃料電池システムの標準的な理論上の酸化還元電位(E°=1.23V)よりも低いが、空乏層形成の可能性があるため、バイポーラ界面において残りの電位差が維持され得る。ただし、酸塩基(H+/OH-)中和反応に関連して、例えば最大で1モル当たり-57キロジュール(kJ/mol)のエンタルピー熱損失が発生する可能性があり、このことは、標準的な水素燃料電池のギブスの自由エネルギー(ΔG=-237kJ/mol)の最大25%に寄与する。さらに、炭素層のイオン抵抗/電子抵抗による抵抗損失と電極反応に関連する過電圧も、燃料電池の効率損失の一因になり得る。
【0040】
あるいは、プロトン交換膜(PEM)を介して伝導するのに必要なプロトンを生成するために、アノード半電池20において下記の反応(10)のような酸素発生反応(OER)が生じる場合、バイポーラ膜は、理論上の電池全体の電位条件が-0.83Vである酸素濃縮電解槽として動作する。バイポーラ膜電池全体は、直接空気から酸素とCO
2の両方を回収(捕捉)して分離する複合装置として機能する。
【化10】
【0041】
図2は、平面状構成を有する平面状バイポーラ膜電池110を備える装置を示す図である。本明細書において、「平面状」という用語は、単に、アノード半電池20及びカソード半電池60のそれぞれの平面が互いに実質的に平行(例えば、互いに0°(平行)~5°以内の傾斜、又は、互いに0°~2°以内の傾斜)であることを指す。なお、アノード半電池20とカソード半電池60とは、互いに平行な関係に限定されるものでなく、他の構成も容易に想定され得ることに留意されたい。
図2は、水素リッチストリーム(水素に富む流れ乃至その流路)30が平面状バイポーラ膜電池110のアノード側チャンバ120に流体連通され得ることを示している。図示されていないが、平面状バイポーラ膜電池110のアノード側チャンバ120には、水蒸気ストリーム(水蒸気の流れ乃至その流路)が追加されてもよい。水蒸気ストリームは、平面状バイポーラ膜電池110に導入される前に水素リッチストリーム30に結合(合流)されてもよいし、水素リッチストリーム30から独立して平面状バイポーラ膜電池110のアノード側チャンバ120に追加されてもよい。アノード側チャンバ120は、閉塞端部32で示されるように、水素リッチストリーム30及び任意の水蒸気ストリームのみが流入するような、閉じたチャンバであってもよい。逆に、アノード側チャンバ120から使用済みのストリームを抜き出すために、水素抜き出しストリーム(水素が抜き出される流れ乃至その流路)がアノード側チャンバ120に流体連通されてもよい。
【0042】
二酸化炭素源ストリーム(二酸化炭素供給源の流れ乃至その流路)50は、平面状バイポーラ膜電池110のカソード側チャンバ160に流体連通され得る。二酸化炭素源ストリーム50は、直接空気ストリーム又は排ガスストリームの少なくとも一方を備え得る。平面状バイポーラ膜電池110のカソード側チャンバ160には、水蒸気ストリーム(水蒸気の流れ乃至その流路)が追加されてもよい。水蒸気ストリームは、平面状バイポーラ膜電池110に導入される前に二酸化炭素源ストリーム50に結合(合流)されてもよいし、二酸化炭素源ストリーム50から独立して平面状バイポーラ膜電池110のカソード側チャンバ160に追加されてもよい。カソード側チャンバ160には二酸化炭素枯渇ストリーム(二酸化炭素が使い果たされた流れ乃至その流路)52が流体連通されてもよい。この場合、二酸化炭素枯渇ストリーム52は、バイポーラ膜電池110から抜き出され得るように構成される。
【0043】
平面状バイポーラ膜電池110から二酸化炭素生成物を取り出すために、二酸化炭素生成物ストリーム(二酸化炭素生成物の流れ乃至その流路)70が分離層40に流体連通されてもよい。分離層40は、閉塞端部72で示されるように、1つの二酸化炭素生成物ストリーム70のみが閉じたチャンバに流体連通するように、当該閉じたチャンバ内に収容され得る。逆に、2つ以上の二酸化炭素生成物ストリーム70が、平面状バイポーラ膜電池110から二酸化炭素生成物を取り出すために、分離層40に流体連通されてもよい。二酸化炭素生成物ストリームは、さらなる分離のために相分離器に導かれてもよい。
【0044】
図3は、管状構成を有するバイポーラ膜電池、すなわち、管状バイポーラ膜電池210を示す図である。管状バイポーラ膜電池210では、アノード半電池20とカソード半電池60とが同心管を形成している。
図3において、左側の画像は、管の長さ方向に沿った断面であり、右側の画像は、管の径方向の平面を通るA-A線に沿った断面である。
図3は、水素リッチストリーム30が、管状バイポーラ膜電池210のアノード側チャンバ220に流体連通され得ることを示している。図示の例では、水素リッチストリーム30が、水素リッチストリーム30と二酸化炭素源ストリーム50との並流を生じさせるように、管状バイポーラ膜電池210の近位端214から入る。ただし、逆に、水素リッチストリーム30は、二酸化炭素源ストリーム50の流れに対して逆方向の流れを生じさせるように、管状バイポーラ膜電池210の遠位端216から入ってもよい。
【0045】
アノード側チャンバ220は、管状バイポーラ膜電池210の中心部を形成し、アノード半電池20は、当該中心部の周囲に管を形成する。アノード半電池20は、アノード半電池20の内面にアノード側集電体26を備え得る。アノード側集電体26は、前記中心部(すなわち、アノード側チャンバ220)に隣接する表面に位置する。アノード側集電体26は、多孔質であってもよい。図示されていないが、アノード側チャンバ220には水蒸気ストリームが追加されてもよい。水蒸気ストリームは、管状バイポーラ膜電池210に導入される前に水素リッチストリーム30に結合(合流)されてもよいし、水素リッチストリーム30から独立して管状バイポーラ膜電池210のアノード側チャンバ220に追加されてもよい。アノード側チャンバ220は、閉じたチャンバ端部232で示されるように、水素リッチストリーム30と任意の水蒸気ストリームのみが入るような閉じたチャンバであってもよい。逆に、例えばチャンバ端部232における開口部を通して、アノード側チャンバ220から使用済みのストリームを抜き出すために、水素抜き出しストリームがアノード側チャンバ220に流体連通されてもよい。二酸化炭素生成物ストリーム70における二酸化炭素を水から分離するために、管状バイポーラ膜電池210の出口に相分離器が配置されてもよい。
【0046】
二酸化炭素源ストリーム(二酸化炭素供給源の流れ乃至その流路)50は、近位端214において管状バイポーラ膜電池210のカソード側チャンバ260に流体連通され得る。
図3は、カソード半電池60が管の外壁面212まで延在していないことを示している。ただし、カソード半電池60が外壁面212まで延在する例も想定され、この場合、二酸化炭素枯渇ストリーム52は表面Sから回収され得る。管状バイポーラ膜電池210のカソード側チャンバ260には水蒸気ストリームが追加されてもよい。水蒸気ストリームは、管状バイポーラ膜電池210に導入される前に二酸化炭素源ストリーム50に結合(合流)されてもよいし、二酸化炭素源ストリーム50から独立して管状バイポーラ膜電池210のカソード側チャンバ260に追加されてもよい。二酸化炭素枯渇ストリーム52は、二酸化炭素枯渇ストリーム52が管状バイポーラ膜電池210から抜き出され得るように、カソード側チャンバ260に流体連通され得る。
【0047】
二酸化炭素生成物ストリーム70は、管状バイポーラ膜電池210から二酸化炭素生成物を取り出せるように分離層40に流体連通され得る。図示の例において、二酸化炭素生成物ストリーム70は、二酸化炭素生成物ストリーム70と二酸化炭素源ストリーム50との並流を生じさせるように、管の遠位端216から出るように構成されている。ただし、これとは逆に、又は、これに加えて、二酸化炭素生成物ストリーム70は、二酸化炭素源ストリーム50の流れに対して反対方向または双方向の流れを生じさせるように、管状バイポーラ膜電池210の近位端214から出るように構成されてもよい。
【0048】
分離層40は、閉じた生成物チャンバ端部272で示されるように、閉じたチャンバに1つの二酸化炭素生成物ストリーム70のみが流体連通するように、前記閉じたチャンバ内に収容され得る。逆に、管状バイポーラ膜電池210から二酸化炭素生成物を取り出せるように、2つ以上の二酸化炭素生成物ストリーム70が分離層40に流体連通されてもよい。
【0049】
なお、
図3に示す例では、管状バイポーラ膜電池において、アノード半電池20がカソード半電池60に対して最も内側の層にあるように構成されているが、管内におけるこれらの相対的な配置は、カソード半電池60がアノード半電池20の内側にあるように反転されてもよいことに留意されたい。同様に、アノード半電池20とカソード半電池60が複数の同心層で構成されることも可能である。
【0050】
バイポーラ膜電池は、それぞれの電極構造の両側に配置され得るフローフィールド構造(図示せず)を備えていてもよい。フローフィールド構造は、それぞれの膜電極接合体(MEA)に接触する流体の流れのための空間を提供し得る。
【0051】
システムは、コントローラ(図示せず)を備えてもよい。この場合、前記コントローラは、各半電池の少なくとも1つの層、少なくとも1つのストリーム、電源、又は、プロセス制御コンポーネント(例えば、ポンプ、マスフローコントローラ、熱交換器、圧力制御バルブ、若しくは、流体制御バルブなど)と(例えば、電子信号を介して)通信可能に構成される。さらに、分析装置が、二酸化炭素生成物ストリーム70中の二酸化炭素の濃度を定量化するように構成され得る。前記コントローラは、二酸化炭素の分離を最適化するように、使用中における1つ又は複数のパラメータを調整し得る。
【0052】
二酸化炭素源ストリーム50は、空気、又は、工業プロセスからのオフガスを含み得る。二酸化炭素源ストリーム50は、乾燥基準(すなわち、存在し得る水蒸気を含まない基準)でのストリームの全体積に基づく二酸化炭素の体積パーセントが、最大で50%であってもよく、又は、0.001%以上30%以下であってもよい。二酸化炭素源ストリーム50は、乾燥基準でのストリームの全体積に基づく酸素の体積パーセントが、10%以上15%以下であってもよい。二酸化炭素源ストリーム50は、ストリームの全体積に基づく不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなど)の体積パーセントが10%以上70%以下であってもよい。二酸化炭素源ストリーム50は、空気を含んでもよく、バイポーラ膜電池は、低スループット(例えば、1平方センチメートル当たり50ミリアンペア(50mA/cm2)以下の低電流密度)を有してもよい。二酸化炭素源ストリーム50は、排ガスを含んでもよく、バイポーラ膜電池は、高スループット(例えば、50mA/cm2を超える高電流密度)を有してもよい。
【0053】
水素リッチストリーム30は、乾燥基準での水素リッチストリーム30の全体積に基づく水素の体積パーセントが、90%以上100%以下であってもよく、又は、95%以上99%以下であってもよい。二酸化炭素生成物ストリーム70は、二酸化炭素生成物ストリーム70の全体積に基づく二酸化炭素の体積パーセントが、90%以上100%以下であってもよい。二酸化炭素生成物ストリーム70は、二酸化炭素生成物ストリーム70の全体積に基づく水の体積パーセントが、95%以上99%以下であってもよい。カソード半電池膜およびアノード半電池膜の両方からの反応ガスの拡散は、二酸化炭素生成物ストリーム70の前述の濃度範囲に影響を及ぼす可能性がある。あるいは、例えば10~50気圧の範囲の高圧でバイポーラデバイスが動作する場合、二酸化炭素生成物ストリーム70の組成は、透過により変化する可能性がある。
【0054】
二酸化炭素生成物ストリーム70は、CO2RENEW(商標名)プロセスを使用してカーボンニュートラルな炭化水素または燃料にさらにアップコンバートするように、燃料電池に流体連通されてもよい。二酸化炭素生成物ストリーム70は、CO2電解セルに直接供給可能に流体連通されてもよい。二酸化炭素生成物ストリーム70は、例えば相分離器を使用して、二酸化炭素リッチストリームと水ストリームとを形成するように分離されてもよい。二酸化炭素生成物ストリーム70は、高圧ガスに圧縮されてもよいし、液体に凝縮されてもよい。二酸化炭素生成物ストリーム70は、貯蔵容器に導かれてもよい。
【0055】
図4は、CO
2RENEW処理装置300に流体連通するバイポーラ膜電池10を備えた全体的なサポートシステム(バランスオブプラント(BOP))を示す図である。
図4の例において、二酸化炭素生成物ストリーム70は、SKYRE社から市販されているCO
2RENEW処理装置を使用してカーボンニュートラル炭化水素ストリーム302にさらにアップコンバートするために、プロトン交換膜(PEM)ベースのCO
2電解装置のカソードに流体連通され得る。カーボンニュートラル炭化水素ストリーム302は、必要に応じて、貯蔵タンク304に貯蔵され得る。水電解装置310は、水を、水素リッチストリーム30を形成する水素と、酸素ストリーム312を形成する酸素とに電気分解し得る。水素リッチストリーム30は、アノードでバイポーラ膜電池10に流体連通し得る。二酸化炭素源ストリーム50は、バイポーラ膜電池10に流体連通し得る。二酸化炭素枯渇ストリーム52は、酸素ストリーム312と結合(合流)し得る。
【0056】
二酸化炭素流を精製する方法は、二酸化炭素を含む二酸化炭素源ストリーム50を、カソード半電池60を含むカソード側チャンバ160,260に導くことを含んでもよい。カソード半電池60は、アニオン交換膜62及びカソード64を備えてもよく、カソード64は、アニオン交換膜62におけるカソード側チャンバ160,260に隣接する側に位置する。二酸化炭素枯渇ストリーム52は、カソード側チャンバ160,260から抜き出され得る。二酸化炭素は、カソード64で水と反応して炭酸イオン及び重炭酸イオンを形成し得る。炭酸イオン及び重炭酸イオンは、アニオン交換膜62を通って分離層40に導かれ得る。水素リッチストリーム30は、アノード側チャンバ120,220に導かれ得る。アノード側チャンバ120,220は、プロトン交換膜22及びアノード側集電体26を備えてもよい。アノード側集電体26は、プロトン交換膜22におけるアノード側チャンバ120,220に隣接する側に配置されてもよい。水素は、アノード24で反応してプロトンと電子を形成し、プロトンは、プロトン交換膜22を通って分離層40に導かれ得る。プロトン、炭酸イオン、及び重炭酸イオンは、分離層40で反応して二酸化炭素と水を形成し得る。二酸化炭素と水を含む二酸化炭素生成物ストリーム70は、分離層40から取り出され得る。二酸化炭素生成物ストリーム70の少なくとも一部は、分離ユニット、貯蔵ユニット、及び、別の電気化学電池のうちの少なくとも1つに導かれ得る。
【0057】
分離層40は、多孔質炭素を備えてもよい。前記多孔質炭素は、グラフェン(例えば、ドーピングされたグラフェン若しくは官能化されたグラフェン)、酸化グラフェン(例えば、還元された酸化グラフェン)、フッ化グラフェン、グラファイト、膨張グラファイト(例えば、グラフェン間の間隔が0.4ナノメートル以上のもの)、活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラファイト繊維、炭化ポリマー繊維、又は、化学処理されたコークスのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0058】
前記多孔質炭素は、細孔径が2ナノメートル未満のミクロ多孔体、又は、細孔径が2~50ナノメートルのメソ多孔体の少なくとも一方を有し得る。ミクロ多孔体とメソ多孔体との比率は、体積パーセントにおいて20:80~d50:50であってもよい。前記多孔質炭素は、1グラム当たり0.0001~0.1立方センチメートルの全細孔容積を有し得る。前記多孔質炭素は、1グラム当たり2~500平方メートル(2~500m2/g)、又は、100~2000m2/g、又は、500~1000m2/gのBET表面積を有し得る。炭素の比表面積(SSA)及び細孔容積は、一点または多点の窒素物理吸着技術を使用して測定され得る。比表面積(SSA)は、一点の分圧が0.3(BET単層被覆率のおおよその値)で物理吸着された窒素に基づいて算出され得る。細孔容積は、窒素の分圧が0.99~1で凝縮された液体窒素の容積に基づいて推定され得る。前記多孔質炭素の電気伝導率は、10-2ジーメンス/センチメートル(S/cm)以上である。炭素材料の電気伝導率は、2枚の薄い銅層の間に挟んだ後に4プローブ測定を使用することで測定され得る。
【0059】
分離層40の厚さxは、抵抗損失が最小になるように薄くされる必要がある。例えば、厚さxは、0.25マイクロメートル~5ミリメートルであってもよく、又は、1マイクロメートル~1ミリメートルであってもよい。
【0060】
多孔質炭素層は、酸性カチオン(H+)とアルカリ性アニオン(OH-、CO3
2-、HCO3
-)の両方の混合イオン伝導性を有し得る。例えば、多孔質炭素層は、帯電コーティング層を備えてもよい。帯電コーティング層は、固体電解質層であってもよい。帯電コーティング層は、プロトン伝導性アイオノマー又はアルカリイオン伝導性アイオノマーの少なくとも1つを混合し、その混合物を多孔質炭素上にコーティングすることによって形成され得る。コーティング混合物は、コーティング混合物の総重量に基づいて、5~10重量パーセントのプロトン伝導性アイオノマー、又は、1~20重量パーセントのアルカリイオン伝導性アイオノマーを含み得る。
【0061】
分離層は、多孔質炭素とフッ素ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF))とを含み得る。フッ素ポリマーは、分離層の疎水性を高め得る。フッ素ポリマーは、負に帯電可能であり、例えば、スルホン化テトラフルオロエチレンであってもよい。分離層は、炭素とフッ素ポリマーを混合し、不活性雰囲気中で200~600℃の温度、又は300~350℃の温度で加熱することによって形成され得る。
【0062】
電極(アノード24及び/又はカソード64)は、それぞれの交換膜22,62と直接物理的に接触してもよく、それぞれ交換膜22,62の表面積の90~100%を覆ってもよい。各電極は、触媒層を独立して備える。アノード24の触媒層は、水素をプロトンと電子に解離し得る。カソード64の触媒層は、酸素還元反応を促進し得る。これにより、後に重炭酸イオンに変換される水酸化物イオンが生成され、続いて、カソードにおける反応物供給物中に存在するCO2と水酸化物イオンとが反応すると重炭酸イオンが生成され得る。カソードの触媒層は、白金、パラジウム、ロジウム、炭素、金、タンタル、タングステン、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、ニッケル、マンガン、鉄、コバルト、タングステン、又は銀のうちの少なくとも1つを含み得る。アノード24の触媒層は、白金、又は、白金族金属で形成された複合材料若しくは合金を含み得る。カソード64の触媒層は、アルミニウム、ニッケル、又は白金のうちの少なくとも1つを含み得る。カソード64の触媒層は、白金族以外の金属(例えば、遷移金属をベースにしたMNxベースの触媒)を含み得る。カソード64の触媒層は、ロジウム、炭素、金、タンタル、タングステン、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、又は銀のうちの少なくとも1つを含み得る。それぞれの触媒は、それぞれ独立してバインダ触媒を含み得る。バインダは、フッ素ポリマー又は粒子状炭素のうちの少なくとも1つを含み得る。それぞれの触媒および任意のバインダは、プロトン交換膜の表面に直接堆積され得る。それぞれの触媒は、それぞれ独立して、ガス拡散層全体にわたって配置されるように、又は、プロトン交換膜に接触するガス拡散層の表面上に配置されるように、ガス拡散層上に配置され得る。ガス拡散層は多孔質であってもよい。ガス拡散層はメッシュであってもよい。ガス拡散層は、グラファイト材料を備えてもよい。ガス拡散層は、例えば炭素繊維などの複数の繊維を備えてもよい。ガス拡散層は、導電性であってもよい。
【0063】
カソード64における触媒の荷重は、最小限(例えば、1平方センチメートル当たり1ミリグラム(1mg/cm2)以下)に抑えられてもよい。カソード64における触媒量の削減は、過剰な水酸化物イオン(OH-)の生成を制限するのに役立ち、水酸化物イオン(OH-)は、直接アニオン交換膜62を通過するように導かれ、深刻な副反応を回避するように、H+との結合による水の生成を促進し得る。カソード64の有効表面積は、触媒とCO2ガスの相互作用を高めて全体的なCO2回収効率を向上させるために、1グラム当たり200~1000平方メートル(200~1000m2/g)であってもよい。
【0064】
プロトン交換膜は、疎水性骨格上に、又は、疎水性骨格から外れたペンダント基上に一定量のイオン基を有するアイオノマー型高分子電解質(例えば、炭化水素系樹脂およびフルオロカーボン系樹脂など)を含み得る。炭化水素系イオン交換樹脂は、フェノール樹脂またはポリスチレンの少なくとも1つを含み得る。炭化水素系イオン交換樹脂は、スルホン化されていてもよく、例えば、スルホン化ポリマー(キシリレンオキシド)である。炭化水素系イオン交換樹脂は、プロトン伝導性分子(例えば、フラーレン分子、炭素繊維、又は、カーボンナノチューブの少なくとも1つ)を含み得る。プロトン伝導性分子は、プロトン解離基(例えば、硫酸基(-OSO3H)、リン酸エステル基(-OPO(OH)2)、カルボキシル基(-COOH)、スルホン基(-SO3H)、フェニレン基(-C6H4)、又は、ヒドロキシ基(-OH)の少なくとも1つ)を含み得る。プロトン伝導性分子は、単独でプロトン交換膜を形成してもよいし、バインダポリマー(例えば、フッ素ポリマー(例えば、ポリフルオロエチレン若しくはポリフッ化ビニリデン)又はポリビニルアルコールの少なくとも1つ)との混合物として存在してもよい。プロトン交換膜には酸素が有意な量で存在しないため、酸化の懸念は低く、プロトン交換膜は炭化水素系イオン交換樹脂を含み得る。
【0065】
フルオロカーボン系イオン交換樹脂は、テトラフルオロエチレン-パーフルオロスルホニルエトキシビニルエーテル、又は、テトラフルオロエチレン-水酸化(パーフルオロビニルエーテル)共重合体の少なくとも一方の水和物を含み得る。フルオロカーボン系イオン交換樹脂は、スルホン酸官能基、カルボン酸官能基、又はリン酸官能基の少なくとも1つを有し得る。フルオロカーボン系イオン交換樹脂は、スルホン化フルオロポリマー(例えば、パーフルオロエチレンスルホン酸のリチウム塩など)であってもよい。フルオロカーボン系イオン交換樹脂の一例は、デュポン社から市販されているナフィオン(商標名)である。プロトン交換膜自体は、バリアとして機能し、アノード24(供給側)から分離層40(排出側)までその厚さに亘るプロトンの輸送を許容しつつ、水素リッチストリーム中に存在する他の成分を排除し得る。プロトン交換膜は、一般に、水和されている場合にのみプロトンを伝導する。電気化学デバイスの最大の電気的性能は、膜が完全に酸の形態にあるときに達成され得る。つまり、水素イオンがスルホン酸基の周囲に大量の水を配位させることができるため、プロトン交換膜内のスルホン酸基は完全にプロトン化される。
【0066】
プロトン交換膜22の膜厚は、25~550マイクロメートルであってもよいし、75~550マイクロメートルであってもよいし、100~300マイクロメートルであってもよい。
【0067】
アニオン交換膜62は、炭酸アニオンに対して選択的に透過性であってもよい。アニオン交換膜62は、炭酸アニオンが通過して拡散することを許容する任意の材料から形成されてもよい。例えば、アニオン交換膜62は、ポリオレフィン、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化エチレンプロピレン/テトラフルオロエチレン(FEP/TFE)、ナイロン上のポリスチレンジビニルベンゼン(PS-DVB)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)上のPS-DVB、又は、ポリ塩化ビニル上のPS-DVBのうちの少なくとも1つを含み得る。適切な膜は、例えば、Versogen社(特に、PiperIon及びOrionのAMX膜)、Ionics Incorporated社(マサチューセッツ州ウォータータウン)(特に、AR-204膜およびAR-708膜)、Pall RAI社(ニューヨーク州ホーポージ)(特に、R1030膜およびR4030膜)、徳山曹達(東京、日本)(特に、AMH膜)、旭硝子アメリカ社(ニューヨーク州ニューヨーク)(特に、AAV膜およびAMP膜)、東ソー社(東京、日本)(特に、Tosflex膜)から入手可能である。
【0068】
アニオン交換膜62の膜厚は、25~550マイクロメートルであってもよいし、75~550マイクロメートルであってもよい。
【0069】
以下、本開示の非限定的な態様が記載されている。以下の態様は、列挙された他の態様のうちの1つ又は複数と組み合わされてもよい。
【0070】
[態様1]
アノード半電池とカソード半電池との間に配置された分離層を備えるバイポーラ膜電池であって、前記アノード半電池は、プロトン交換膜とアノードとを有し、前記プロトン交換膜は、前記アノードと前記分離層との間に配置され、前記カソード半電池は、アニオン交換膜とカソードとを有し、前記アニオン交換膜は、前記カソードと前記分離層との間に配置され、前記アノードと前記カソードとを接続する外部回路を更に備える、バイポーラ膜電池。
【0071】
[態様2]
前記カソード半電池は、カソード側チャンバと、前記カソード側チャンバに二酸化炭素を供給するように前記カソード側チャンバに流体連通する二酸化炭素源ストリームとをさらに備えてもよい。
【0072】
[態様3]
前記カソード半電池は、カソード側チャンバと、前記カソード側チャンバから抜き出されるように前記カソード側チャンバに流体連通する二酸化炭素枯渇ストリームを更に備えてもよい。
【0073】
[態様4]
前記アノード半電池は、アノード側チャンバと、前記アノード側チャンバから送り出されるように前記アノード側チャンバに流体連通する水素リッチストリームとを更に備えてもよい。
【0074】
[態様5]
前記分離層、前記アノード半電池、及び前記カソード半電池は、互いに対向する平面状の構成を有してもよい。
【0075】
[態様6]
前記アノード半電池と前記カソード半電池とは、管状のバイポーラ膜電池を形成するように同心円状に配置されてもよく、前記分離層は、前記アノード半電池と前記カソード半電池との間に同心円状に配置されてもよい。前記カソード半電池によって形成された管の中に前記アノード半電池が配置されてもよい。前記アノード半電池によって形成された管の中に前記カソード半電池が配置されてもよい。前記水素リッチストリームと前記二酸化炭素源ストリームとの両方が、前記管状のバイポーラ膜電池の近位端に流体連通してもよく、前記管状のバイポーラ膜電池の遠位端に二酸化炭素生成物ストリームが流体連通してもよい。前記二酸化炭素生成物ストリームと前記二酸化炭素源ストリームとの両方が、前記管状のバイポーラ膜電池の近位端に流体連通してもよく、前記水素リッチストリームは、前記管状のバイポーラ膜電池の遠位端に流体連通してもよい。
【0076】
[態様7]
前記アノードは、白金を含んでもよく、前記カソードは、少なくとも1つの非白金族金属を含んでもよい。
【0077】
[態様8]
前記分離層は多孔質炭素を含んでもよい。前記多孔質炭素は、2ナノメートル未満の細孔径を有するミクロ多孔体を備えてもよい。前記多孔質炭素は、2ナノメートル以上50ナノメートル以下の細孔径を有するメソ多孔体を備えてもよい。前記多孔質炭素の全細孔容積は、1グラム当たり0.0001~0.1立方センチメートルであってもよい。前記多孔質炭素のBET表面積は、2~500m2/g、100~2000m2/g、又は、500~1000m2/gであってもよい。前記多孔質炭素の電気伝導率は、10-2S/cm以上であってもよい。
【0078】
[態様9]
前記分離層の厚さは、0.25マイクロメートル以上5ミリメートル以下であってもよいし、1マイクロメートル以上1ミリメートル以下であってもよい。
【0079】
[態様10]
前記バイポーラ膜電池は、前記アノード側チャンバに流体連通する水素抜き出しストリームを更に備えてもよい。
【0080】
[態様11]
二酸化炭素生成物ストリームを精製する方法は、アニオン交換膜とカソードとを有するカソード半電池を備えたカソード側チャンバに、二酸化炭素を含む二酸化炭素源ストリームを導くステップであって、前記アニオン交換膜における前記カソード側チャンバに隣接する側に前記カソードが配置されているステップと、前記カソード側チャンバから二酸化炭素枯渇ストリームを抜き出すステップと、前記カソードで前記二酸化炭素を水と反応させて炭酸イオンと重炭酸イオンとを形成するステップと、前記アニオン交換膜を通して、前記炭酸イオンと前記重炭酸イオンとを分離層に導くステップと、プロトン交換膜とアノードとを有するアノード半電池を備えたアノード側チャンバに、水素を含む水素リッチストリームを導くステップであって、前記プロトン交換膜における前記アノード側チャンバに隣接する側に前記アノードが配置されているステップと、前記アノードでプロトンと電子とを形成するように前記水素を反応させて、前記プロトン交換膜を通して、前記分離層に前記プロトンを導くステップと、前記分離層において、前記プロトン、前記炭酸イオン、及び前記重炭酸イオンを反応させて、二酸化炭素と水を形成するステップと、前記分離層から、前記二酸化炭素と前記水とを含む二酸化炭素生成物ストリームを取り出すステップと、を備えてもよい。
【0081】
[態様12]
前記方法は、分離ユニットと、貯蔵ユニットと、CO2電解セルへの直接供給部とのうちの少なくとも1つに、前記二酸化炭素生成物ストリームの少なくとも一部を導くステップを更に備えてもよい。
【0082】
[態様13]
前記二酸化炭素源ストリームは、空気と、工業プロセスからのオフガスとのうちの少なくとも一方を含んでもよい。
【0083】
[態様14]
前記二酸化炭素源ストリームは、乾燥基準での前記二酸化炭素源ストリームの全体積に基づく二酸化炭素の体積パーセントが50%以下であってもよい。
【0084】
[態様15]
前記水素リッチストリームは、乾燥基準での前記水素リッチストリームの全体積に基づく水素の体積パーセントが、90%以上100%以下であってもよいし、95%以上99%以下であってもよい。
【0085】
[態様16]
前記二酸化炭素生成物ストリームは、前記二酸化炭素生成物ストリームの全体積に基づく二酸化炭素の体積パーセントが、90%以上100%以下であってもよい。
【0086】
[態様17]
前記二酸化炭素生成物ストリームは、分離ユニットと、貯蔵ユニットと、CO2電解装置とのうちの少なくとも1つに導かれてもよい。
【0087】
装置は、前記バイポーラ膜電池を備え、任意選択的に、水素リッチストリームを介して前記バイポーラ膜電池の入口に流体連通する水電解装置を更に備え、任意選択的に、二酸化炭素生成物ストリームを介して前記バイポーラ膜電池の出口に流体連通するCO2電解装置を更に備えてもよい。
【0088】
組成物、方法、及び物品は、本明細書に開示された任意の適切な材料、ステップ、又は成分を含むか、これらから構成されるか、又は、これらから本質的に構成され得る。組成物、方法、及び物品は、追加的または代替的に、組成物、方法、及び物品の機能または目的の達成に必要でない任意の材料(又は種類)、ステップ、又は成分を欠くように、又は、実質的に含まないように構成され得る。
【0089】
本明細書に記載されている可算名詞は、文脈上明らかに別段の定めがない限り、数量の制限が意図されておらず、単数形と複数形の両方を包含するものとする。例えば、「要素」という記載は、文脈上明らかに別段の定めがない限り、「少なくとも1つの要素」と同じ意味である。「combination」という用語は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含む。また、「少なくとも1つの」という用語は、列挙された各要素を個別に含めること、列挙された2つ以上の要素の組み合わせを含めること、および、列挙された少なくとも1つの要素と指定されていない同様の要素との組み合わせを含めることを意味する。
【0090】
「又は(若しくは)」という用語は、文脈によって明確に示されていない限り、「及び/又は(若しくは)」を意味する。本明細書全体に亘って、「一態様」、「別の態様」、「いくつかの態様」などの言及は、その態様に関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造、ステップ、又は特性)が、本明細書に記載される少なくとも1つの態様に含まれ、他の態様には存在してもしなくてもよいことを意味する。さらに、説明される要素は、さまざまな態様において任意の適切な方法で組み合わされ得ることを理解されたい。
【0091】
層、膜、領域、基板などの要素が他の要素の「上」にあると表現される場合、その要素は他の要素の上に直接ある場合もあれば、介在要素が存在する場合もある。これとは対照的に、ある要素が他の要素の「直ぐ上」にあると表現される場合、介在要素は存在しない。
【0092】
本明細書において別段の定めがない限り、全ての試験規格は、本出願の出願日の時点で有効な最新の規格、又は、優先権が主張されている場合は、試験規格が記載されている最先の優先出願の出願日の時点での最新の規格である。
【0093】
同じ成分または特性に対して記載された複数の範囲における端点(閾値)は、端点を含むことが意図されており、独立して組み合わせ可能であり、全ての中間点および中間範囲を含むことが意図されている。例えば、「最大25vol%、又は5~20vol%」と記載された範囲は、「5~25vol%」の範囲における端点(上限値および下限値)と全ての中間値(例えば、10~23vol%など)を含むことが意図されている。
【0094】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0095】
引用された特許、特許出願、及びその他の参考文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ただし、組み込まれた参考文献の用語に対して本出願の用語が矛盾または衝突する場合は、組み込まれた参考文献における衝突する用語に対して、本出願の用語が優先されるものとする。
【0096】
以上では、特定の実施形態について説明されているが、出願人または他の当業者には、現時点では予見できないか又は予見できない可能性のある代替案、修正、変更、改良、及び実質的同等物が思い浮かぶ可能性がある。したがって、出願時および補正時における添付の特許請求の範囲は、そのような代替案、修正、変更、改良、及び実質的同等物を全て包含することが意図されている。
【国際調査報告】