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特表2024-546230塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20241212BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20241212BHJP
   C08J 11/14 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12 ZAB
C08J11/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527257
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 KR2022021545
(87)【国際公開番号】W WO2023128624
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0190857
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョ サンファン
(72)【発明者】
【氏名】カン スキル
(72)【発明者】
【氏名】イ ホウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ジェフム
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401AA27
4F401BA02
4F401CA70
4F401CA73
4F401CA88
4F401CB01
4F401CB14
4F401EA47
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC11
4H129BC18
4H129NA01
4H129NA22
4H129NA23
(57)【要約】
本開示は、廃プラスチック100重量部に対して水分を1~25重量部含む原料(feed)を準備する第1ステップと、前記原料(feed)を400~600℃で熱分解する第2ステップとを含む、塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック100重量部に対して水分を1~25重量部含む原料(feed)を準備する第1ステップと、
前記原料(feed)を400~600℃で熱分解する第2ステップとを含む、塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法。
【請求項2】
前記水分は、廃プラスチック内に含まれた水分を含む、請求項1に記載の塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法。
【請求項3】
前記第2ステップは、非酸化雰囲気で行われる、請求項1に記載の塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法。
【請求項4】
前記非酸化雰囲気は、気化した水蒸気により、反応器が加圧パージ(purge)されて形成された水蒸気雰囲気である、請求項3に記載の塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法。
【請求項5】
前記第2ステップは、常圧条件で行われる、請求項1に記載の塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法。
【請求項6】
前記第2ステップは、回分式反応器(batch reactor)で行われる、請求項1に記載の塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法。
【請求項7】
前記第1ステップおよび第2ステップにより生成された廃プラスチック熱分解油内の総塩素含有量は、300ppm以下である、請求項1に記載の塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法。
【請求項8】
前記第1ステップおよび第2ステップにより生成された熱分解油内の総塩素含有量は、原料(feed)に対して80%以上除去される、請求項1に記載の塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックを熱分解して得られた熱分解油は、一般的な方法により原油から製造される留分に比べて、塩素、窒素、金属などの不純物の含有量が高いことから、ガソリン、ディーゼル油などの高付加価値燃料としてすぐ使用することができず、精製(Refinery)工程を経なければならない。
【0003】
従来、精製(Refinery)工程として、水素化触媒下で水素化処理することにより、塩素をHClに転換して除去していたが、廃プラスチック熱分解油は、塩素を高含有量で含んでおり、水素化処理時に過量のHClが生成され、これは、装備の腐食および反応異常、製品性状の悪化などの問題を引き起こす。従来の精製(Refinery)工程を活用して塩素留分を除去するためには、精製(Refinery)工程に導入可能な水準に廃プラスチック熱分解油内の塩素含有量を低減するCl低減前処理技術が求められる。
【0004】
また、従来、廃プラスチックに含有された水分は、精製(Refinery)工程において不純物の除去効率を低下させ、製造された熱分解油の純度を下げるなどの問題を引き起こすため、水分を含有する廃プラスチックは、原料(feed)選別過程で廃棄処分されるか、乾燥工程または脱水工程などの前処理工程により水分を除去した後、加熱炉に導入して熱分解工程を行っている。しかし、ヒータまたは送風ファンなどの乾燥設備または前処理設備を備える過程でさらなる費用がかかり、窒素などの不活性ガスを使用したパージ(purge)工程が必須に伴われて、工程効率性が低下するデメリットがある。
【0005】
したがって、水分を含有するか水気がある廃プラスチック原料(feed)を乾燥などの前処理工程なしに、原料(feed)をそのまま使用し、且つ塩素が低減した廃プラスチック熱分解油を経済的に製造することができる技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-1026199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、乾燥などの前処理工程なしに、水分を特定の範囲で含有する廃プラスチック原料(feed)をそのまま使用することで、熱分解油を高い収率で取得することができ、熱分解油内の塩素含有量が最小化した廃プラスチック熱分解油の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本開示は、廃プラスチックの前処理/乾燥工程を省略することで、熱分解工程において不活性雰囲気を作るためのパージ(purge)工程を行なわず、装置費用およびユーティリティの使用を削減し、経済性および工程効率を向上させることができる廃プラスチック熱分解油の製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、廃プラスチック100重量部に対して水分を1~25重量部含む原料(feed)を準備する第1ステップと、前記原料(feed)を400~600℃で熱分解する第2ステップとを含む、塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法を提供する。
【0010】
本開示の一例において、前記水分は、廃プラスチック内に含まれた水分を含むことができる。
【0011】
本開示の一例において、前記第2ステップは、非酸化雰囲気で行われることができる。
【0012】
本開示の一例において、前記非酸化雰囲気は、気化した水蒸気により、反応器が加圧パージ(purge)されて形成された水蒸気雰囲気であることができる。
【0013】
本開示の一例において、前記第2ステップは、常圧条件で行われることができる。
【0014】
本開示の一例において、前記第2ステップは、回分式反応器(batch reactor)で行われることができる。
【0015】
本開示の一例において、前記第1ステップおよび第2ステップにより生成された廃プラスチック熱分解油内の総塩素含有量は、300ppm以下であることができる。
【0016】
本開示の一例において、前記第1ステップおよび第2ステップにより生成された熱分解油内の総塩素含有量は、原料(feed)に対して80%以上除去されることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によると、前処理/乾燥工程なしに、水分を特定の範囲で含有する廃プラスチック原料(feed)をそのまま使用することで、熱分解油を高い収率で取得することができ、熱分解油内の塩素含有量を最小化することができる。
【0018】
本開示によると、廃プラスチックの前処理/乾燥工程を省略することで、熱分解工程において不活性雰囲気を作るためのパージ(purge)工程を行わず、装置費用およびユーティリティの使用を削減することができ、経済性および工程効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用されている用語の単数形態は、特別な指示がない限り、複数形態も含むものと解釈することができる。
【0020】
本明細書で使用されている数値範囲は、下限値と上限値と、その範囲内でのすべての値、二重限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含む。本明細書において特別な定義がない限り、実験誤差または値の四捨五入によって発生する可能性がある数値範囲以外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0021】
本明細書で言及される「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、さらに列挙されていない要素、材料または工程を排除しない。
【0022】
本明細書で特別な言及なしに使用されている%の単位は、特別な定義がない限り、重量%を意味する。
【0023】
本明細書で特別な言及なしに使用されているppm単位は、特別な定義がない限り、質量ppmを意味する。
【0024】
本明細書で特別な言及なしに使用されている沸点(bp、boiling point)は、1気圧(常圧、1atm)での沸点を意味する。
【0025】
本明細書で特別な言及なしに使用されているMpaGは、ゲージ圧であり、1気圧(常圧、1atm)を基準に測定した圧力を意味する。
【0026】
従来、水分を含有する廃プラスチックは、選別過程で廃棄処分されるか、廃プラスチック内の水分を除去するために、乾燥工程または脱水工程などの前処理工程を経た後、加熱炉に導入して熱分解工程を行う。
【0027】
しかし、前記前処理工程を行うためには、ヒータ、熱風乾燥機または送風ファンなどの追加の設備を備えなければならないため、相当な費用がかかり、窒素などの不活性ガスを使用したパージ(purge)工程が必須として伴われ、工程効率の面でもデメリットがある。
【0028】
また、従来、廃プラスチック熱分解油の精製(Refinery)工程として、水素化触媒下で水素化処理することで塩素をHClに転換して除去していたが、廃プラスチック熱分解油は、塩素を高含有量で含んでおり、水素化処理時に過量のHClが生成され、装備の腐食および反応異常、製品性状の悪化などの問題を引き起こす。
【0029】
したがって、水分を含有するか水気がある廃プラスチックを乾燥などの前処理工程なしに原料(feed)をそのまま加熱炉に導入して熱分解工程を行うことで塩素が低減した廃プラスチック熱分解油を製造可能な技術が求められている。
【0030】
したがって、本開示は、廃プラスチック100重量部に対して、水分を1~25重量部含む原料(feed)を準備する第1ステップと、前記原料(feed)を400~600℃で熱分解する第2ステップとを含む、塩素が低減した廃プラスチック熱分解油の製造方法を提供する。
【0031】
前記廃プラスチックは、生活系プラスチック廃棄物(生活系廃プラスチック)または産業系プラスチック廃棄物(産業系廃プラスチック)であることができる。
【0032】
前記生活系廃プラスチックは、PE、PP以外のPVC、PS、PET、PBTなどが混合されたプラスチックであり、具体的には、PE、PPとともにPVCを3重量%以上含む混合廃プラスチックであることができる。塩素含有量は、廃プラスチック100重量部に対して5,000ppm以上含むことができ、具体的には5,000~15,000ppm含むことができる。前記生活系廃プラスチックは、水分を様々な範囲で含むことができ、通常、高い含有量で含むことができる。例えば、0.01~40重量%含むことができるが、これは例示であって、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0033】
前記産業系廃プラスチックは、産業体で製造工程中に発生するスクラップや不良品などの産業系廃棄物であって、PE/PPがほとんどを占める。塩素含有量は、廃プラスチック100重量部に対して、100~1,000ppm含むことができ、具体的には500~1,000ppm、より具体的には700~1,000ppm含むことができる。前記産業系廃プラスチックは、生産工程で発生するスクラップなどであり、比較的きれいな状態を維持し、生活系廃プラスチックに比べて塩素含有量が低く、水分含有量も0.03重量%以下と低い水準である。しかし、接着剤または染料成分から起因する有機塩素含有量が高く、特に、芳香族環(aromatic ring)に含有された塩素の比率が高いことを特徴とする。
【0034】
前記第1ステップは、廃プラスチック100重量部に対して水分を1~25重量部含む原料(feed)を準備するステップであり、これは、廃プラスチックの組成に応じて様々な方法により水分を適正範囲で調節して、原料(feed)を準備することができる。
【0035】
本開示の一例において、前記水分は、廃プラスチック内に含まれた水分であることができる。例えば、前記生活系廃プラスチックのように、水分の重量部を満たす生活系廃プラスチックを選別して、原料(feed)を準備することができる。水分含有量が高い生活系廃プラスチックをそのまま使用するため、乾燥工程または脱水工程などを省略することができ、工程効率や経済性が向上する利点がある。
【0036】
その他にも、前記水分は廃プラスチックに水を混合して準備することができる。例えば、前記廃プラスチック内の水分含有量が0.03重量%以下と極端に低い場合、前記廃プラスチックに水を一定量混合することで、廃プラスチック100重量部に対して、水分を1~25重量部含む原料(feed)を準備することができる。混合は、従来公知の方式で行うことができ、例えば、廃プラスチック原料(feed)を回分式反応器(batch reactor)に投入し、水を一定量投入して混合を行うことができるが、これは例示であって、本開示が必ずしもこれに制限されるものではない。
【0037】
このように、廃プラスチックの組成に応じて好適な方式を採択して、水分が適正な範囲に調節された原料(feed)を準備することができる。
【0038】
前記第2ステップは、前記原料(feed)を400~600℃で熱分解するステップであり、前記廃プラスチックを含む原料(feed)は、炭化水素生成物に変換される。前記炭化水素生成物は、ガス相を含み、ガス相の熱分解ガスは、凝縮器(Condenser)に流入した後、冷却され、液相熱分解油で貯蔵タンクに回収される。
【0039】
廃プラスチック100重量部に対して、水分を1~25重量部含む原料(feed)を400~600℃で熱分解する場合、生成された熱分解油内の塩素含有量を最小化することができる。従来、廃プラスチック内の水分含有量が増加するほど、生成された熱分解油内の塩素などの不純物の含有量が増加すると知られているのに対し、廃プラスチック100重量部に対して水分が1~25重量部の範囲で含まれる場合、生成された熱分解油内の塩素含有量が最小化することができる。廃プラスチックの高温熱分解工程で廃プラスチックから解離された塩素が水分に捕集(trapping)することから、解離された塩素が、熱分解生成物内のオレフィン(Olefin)と再結合(Recombination)し、有機塩素が再生成されることを防止することができる。前記水分重量および熱分解温度の範囲を満たす場合、塩素除去効率が極大化し、生成された熱分解油内の塩素含有量を最小化することができ、反応過程で添加剤/中和剤などを投入するか、別の前/後処理工程を行わなくても、オレフィン(Olefin)収率が高く、塩素含有量が低い熱分解油を製造することができる。水分含有量が25重量部を超えると、熱分解生成物内のオレフィン(Olefin)と水の接触面積が大きくなって、塩素がオレフィン(Olefin)と再結合する逆混合効果(Back-mixing Effect)により熱分解油内の塩素含有量が増加する。また、過量の水分は、容器または配管の腐食を引き起こし、生成された熱分解油の純度や品質を低下させるなどの問題を引き起こすことがある。前記熱分解温度が400℃未満の場合、原料(feed)内の水分によって熱分解がスムーズに行われず、塩素除去効率が低下する。好ましくは、400℃以上および600℃以下の温度範囲で、廃プラスチックの融着を防止することができ、塩素が最小化した熱分解油の収率を極大化することができる。前記水分は、廃プラスチック100重量部に対して、好ましくは2~25重量部含むことができ、より好ましくは3~25重量部、最も好ましくは5~25重量部含むことができる。
【0040】
前記熱分解温度は、具体的には450~580℃、より具体的には、480~550℃であることができる。
【0041】
本開示の一例において、前記第2ステップは、回分式反応器(batch reactor)により行われることができる。具体的には、攪拌と昇温制御が可能なすべての反応器で行うことができ、例えば、ロータリーキルン(Rotary Kiln)タイプの回分式(Batch)反応器で熱分解を行うことができるが、本開示がこれに制限されるものではない。
【0042】
本開示の一例において、前記第2ステップは、非酸化雰囲気で行われることができる。前記非酸化雰囲気は、廃プラスチックが酸化(燃焼)しない雰囲気であり、前記雰囲気で効率的な熱分解を行うことができる。前記非酸化雰囲気は、例えば、酸素濃度が1体積%以下に調整された雰囲気であり、窒素、水蒸気、二酸化炭素およびアルゴンなどの不活性ガスの雰囲気であることができる。酸素濃度が1体積%以下にされた低酸素雰囲気で安定的に熱分解工程を行うことができる。前記第2ステップは、非酸化雰囲気下で、150分~350分間行うことができ、前記維持時間を満たす場合、非酸化雰囲気組成の活性化および十分な熱分解を行うことができ、エネルギー消費および運転時間を最小化することができて好ましい。具体的には、170分~330分であることができ、より具体的には200分~300分であることができる。
【0043】
本開示の一例において、前記非酸化雰囲気は、気化した水蒸気により反応器が加圧パージ(purge)されて形成された水蒸気雰囲気であることができる。前記第2ステップの熱分解工程は、反応効率の向上のために、水分を含有した原料(feed)を100~130℃で1時間~2時間均一に溶融してから行うことができる。この過程で水蒸気が発生することになり、前記水蒸気により加圧パージ(purge)されて酸素が除去されることができる。すなわち、原料(feed)に含まれた水分から水蒸気による非酸化雰囲気を形成することができ、別の不活性ガスを用いたパージ(purge)工程を行わなくてもよい利点がある。
【0044】
本開示の一例において、前記第2ステップは、常圧条件で行われることができる。前記第2ステップの熱分解反応器を常圧条件で運転して高い収率で熱分解物を取得することができ、作業便宜性および安全性が優れた環境で反応を行うことができる。
【0045】
非制限的に、流体流れの形成および反応効率の向上のために、前記第2ステップの熱分解反応器を0.005~0.3MpaGおよび前記貯蔵タンクを0.001~0.02MpaGの条件で運転することができる。
【0046】
前記熱分解により生成された熱分解ガスは、全重量に対して、ナフサ(bp~150℃)5~35重量%、Kero (bp 150~265℃)10~60重量%、LGO(bp 265~380℃)20~40重量%およびUCO-2/AR(bp 380℃~)5~40重量%を含むことができ、具体的には、ナフサ(bp ~150℃)5~30重量%、Kero (bp 150~265℃)15~50重量%、LGO(bp 265~380℃)20~35重量%およびUCO-2/AR(bp 380℃~)10~40重量%を含むことができる。その他にも、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)のような低沸点炭化水素化合物の残量を含むことができる。また、前記熱分解ガスは、重質留分(LGOおよびUCO-2/ARの総和)に対する軽質留分(ナフサおよびKeroの総和)の重量比が0.1~3、0.1~2.0、または0.2~1.0であることができる。
【0047】
前記熱分解ガスを前記凝縮器(Condenser)に流入する前に、熱分解ガスのうちメタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)のような低沸点炭化水素化合物を含む低沸点ガスを別に回収することができる。前記熱分解ガスは、一般的には、水素、一酸化炭素、低分子量の炭化水素化合物などの可燃性物質を含む。炭化水素化合物の例として、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、ブタン、ブテンなどが挙げられる。熱分解ガスは、可燃性物質を含むことから、前記反応器やロータリーキルン(Rotary Kiln)を加熱する燃料として再使用することができる。
【0048】
前記凝縮器は、冷却水が流動する領域を含み、凝縮器に流入した熱分解ガスは、冷却水によって液化し、熱分解油に転換することができる。凝縮器内に生成された熱分解油が所定の水位まで上昇すると、移送され、貯蔵タンクに回収される。
【0049】
前記凝縮器と貯蔵タンクとの間には、熱交換器をさらに備えることができる。凝縮器において未凝縮の熱分解ガスは、前記熱交換器に流入してまた凝縮され、生成された熱分解油は、貯蔵タンクに回収されることができる。未凝縮の熱分解ガスをまた回収することで、反応収率を向上させることができる。
【0050】
前記貯蔵タンクに回収された液相熱分解油は、油分層と水分層を含むことができる。熱分解ガスとともに、水分から生成された水蒸気も液化し、貯蔵タンクに回収され、油水分離が行われて液相熱分解油内に油分層と水分層を形成する。
【0051】
前記水分層には、塩素化合物が含まれており、貯蔵タンクの腐食を引き起こす可能性があり、これを防止するために、前記水分層に中和剤を投入することができる。前記中和剤は、水への溶解時に、pH7以上の値を有するアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を含むことができる。具体的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、塩基性炭酸塩または脂肪酸塩を含むことができる。前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、当該技術分野において通常使用されている金属であることができ、例えば、アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)またはフランシウム(Fr)を含むことができ、アルカリ土類金属は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)またはラジウム(Ra)を含むことができる。前記中和剤は、単独で投入するか、中華効率を向上させるために、アルコールなどの溶媒と混合して投入することができる。
【0052】
前記水分層に中和剤を投入する場合、貯蔵タンクの下部に位置するpH測定器を用いて、水分層のpHを測定することで、中和剤を適正含有量で投入することができる。
【0053】
前記油分層と水分層が分離されると、油分層をすぐ回収するか、水分層の除去後に回収することで、塩素が最小化した油分層(廃プラスチック熱分解油)を回収することができる。水分層は、排出して除去することができ、排出された水分を精製した後、第1ステップに再循環して、廃プラスチックに混合される水として再使用することができる。
【0054】
前記油分層と水分層の効果的な分離のために、電場を加えることができ、電場の印加によって静電気的癒着により、油分層と水分層が短時間で分離されることができる。また、前記油水分離効率を高めるために、添加剤を必要に応じて付加することができ、前記添加剤は、当該分野において周知の通常の抗乳化剤であることができる。
【0055】
前記水分層を排出して除去する場合、密度プロファイラーを用いて密度を探知することで、前記水分層の除去時に、前記油分層がともに除去されることを防止し、水分層だけ効果的に除去することができる。
【0056】
本開示の一例において、前記第1ステップおよび第2ステップにより生成された廃プラスチック熱分解油内の総塩素含有量は、300ppm以下であることができる。本開示の廃プラスチック熱分解工程により、添加剤/中和剤を投入することなく、水分の重量および温度範囲の制御だけで生成された熱分解油内の総塩素含有量を最小化することができる。具体的には、前記全塩素含有量は、290ppm以下であることができ、より具体的には280ppm以下であることができる。非制限的には10以上280ppm以下であることができる。
【0057】
本開示の一例において、前記第1ステップおよび第2ステップにより生成された熱分解油内の総塩素含有量は、原料(feed)に対して80%以上除去されるものであり得る。上述のように、前記水分の重量および熱分解温度の範囲を満たす場合、生成された廃プラスチック熱分解油内の総塩素含有量を最小化することができる。前記塩素除去率は、水分の重量に比例して高くなることができ、原料(feed)に対して80%以上低減することができる。具体的には90%以上低減することができ、非制限的には90%以上97%以下に低減することができる。廃プラスチック100重量部に対して水分が25重量部を超えると、塩素解離効率が低下し、熱分解油内の塩素含有量が増加することから塩素除去率が低下する。
【0058】
以下、本開示の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記実施例は、好ましい一実施形態であって、本開示が下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1
PE、PPとともにPVCを3重量%以上含む生活系混合プラスチックを250℃の条件で押出して、生活系廃プラスチックペレットを製造した。前記生活系廃プラスチックペレットの総Cl含有量は4000ppmであり、水分は0.03重量%であった。
【0060】
生活系廃プラスチックペレット200gと水50gを(廃プラスチック乾燥重量約100g当たり水分約25g)回分式(batch)反応器に投入し、500℃で250分間熱分解を行った。廃プラスチック熱分解過程で発生する水蒸気で非酸化雰囲気を作り、非酸化雰囲気下で反応を行った。
【0061】
製造された熱分解ガスを凝縮器(Condenser)で捕集し、貯蔵タンクで廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0062】
実施例2
実施例1で、水40gを(廃プラスチック乾燥重量約100g当たり水分約20g)回分式(batch)反応器に投入し、520℃で250分間熱分解油を行った以外は、実施例1と同じ方法で反応を行って、廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0063】
実施例3
実施例1で、水分を20重量%含有する生活系廃プラスチックペレット250gを(廃プラスチック乾燥重量約100g当たり水分約25g)準備し、水を追加投入せず500℃で反応を行った以外は、実施例1と同じ方法で反応を行って液相廃プラスチック熱分解油を取得した。前記生活系廃プラスチックの総Cl含有量は4,000ppmであった。
【0064】
実施例4
実施例3で、水分を17重量%含有する生活系廃プラスチックペレット250gを(廃プラスチック乾燥重量約100g当たり水分約20g)準備し、540℃で反応を行った以外は、実施例3と同じ方法で反応を行って、廃プラスチック熱分解油を取得した。前記生活系廃プラスチックの総Cl含有量は4,000ppmであった。
【0065】
比較例1
実施例1で、水60gを(廃プラスチック乾燥重量約100g当たり水分約30g)使用した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0066】
比較例2
実施例1で、300℃の条件で反応を行った以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0067】
比較例3
実施例3で、水分を23重量%含有する生活系廃プラスチックペレット250gを(廃プラスチック乾燥重量約100g当たり水分約30g)使用した以外は、実施例3と同じ条件で反応を行って、廃プラスチック熱分解油を取得した。前記生活系廃プラスチックの総Cl含有量は4,000ppmであった。
【0068】
比較例4
実施例1で、水を追加投入せず、実施例1と同じ条件で反応を行って、廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0069】
評価例
廃プラスチック内の水分は、カールフィッシャー(Karl Fischer)法を用いて測定した。
【0070】
取得した廃プラスチック熱分解油内の総塩素、有機塩素および無機塩素のそれぞれの含有量(ppm)をICPおよびXRF分析により測定した。
【0071】
【表1】
【0072】
前記実施例1~4のように、廃プラスチック熱分解油内の総塩素含有量は、いずれも300ppm以下に低減していることを確認することができる。特に、実施例1が実施例2より、実施例3が実施例4より、総塩素含有量がさらに少ないことを確認することができ、これにより、廃プラスチック100重量部に対して、水分が25重量部である場合、水分が20重量部である場合より熱分解油内の塩素を効果的に低減することができることが分かる。さらに、実施例1および実施例2は、水分を別に投入しているのに対し、実施例3および実施例4は、廃プラスチック内に水分が含まれているものであって、この場合、水分が廃プラスチック内に均一に含まれており、水分による塩素除去反応効率がより向上することが分かる。
【0073】
一方、比較例1、3の熱分解油内の総塩素含有量は、それぞれ、382ppm、379ppmであり、著しく増加することを確認することができ、これにより、水分が25重量部を超えて含まれる場合には、熱分解油内の総塩素含有量がかえって増加することが分かり、比較例4は、水分がない状態で熱分解を実施した場合、総塩素が428ppmと高く示されていることを確認することができる。また、総塩素含有量だけでなく、有機塩素および無機塩素それぞれの含有量も、前記実施例1~4が、比較例1~4より優秀に低減していることを確認することができる。
【0074】
比較例2は、300℃で熱分解を行った場合、廃プラスチックの熱分解工程がスムーズに行われず、収率が45%と著しく低下したことを確認することができ、熱分解油内の総塩素含有量は500ppm以上であり、塩素除去率も低下したことを確認することができる。
【0075】
以上、本発明の実施例について説明しているが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に製造されてもよく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施され得ることを理解することができる。
【国際調査報告】