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特表2024-546235シランカップリング剤を含む多層構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】シランカップリング剤を含む多層構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/12 20060101AFI20241212BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20241212BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241212BHJP
   C09J 131/00 20060101ALI20241212BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241212BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20241212BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20241212BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B15/082
C09J133/00
C09J131/00
C09J11/06
C09J133/08
C09J133/14
C23C26/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530477
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 CN2021137003
(87)【国際公開番号】W WO2023102879
(87)【国際公開日】2023-06-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、ウェンケ
(72)【発明者】
【氏名】レン、シージエ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャンチャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AB03D
4F100AB10D
4F100AH06B
4F100AH06C
4F100AK15A
4F100AK71C
4F100AL01C
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB00C
4F100EJ65B
4F100GB07
4F100JB02
4F100YY00B
4F100YY00C
4J040DE001
4J040DF001
4J040DF041
4J040DF061
4J040DG001
4J040HD36
4J040KA30
4J040LA06
4J040MA02
4J040MA10
4J040MA13
4J040NA06
4J040NA10
4J040NA12
4J040NA19
4K044AA02
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB04
4K044BC02
4K044CA31
4K044CA53
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1つのポリ塩化ビニル(PVC)層と、少なくとも1つの金属層と、鋼層をPVC層に接着する少なくとも1つの結合層とを含む多層構造体であって、結合層が、0~95重量%の少なくとも1つのエチレンアクリレートコポリマーと、5~100重量%のターポリマーとを含み、多層構造体が、結合層に配置されるシランカップリング剤、プライマーとして添加されるシランカップリング剤、又はその両方を含む、多層構造体及びその製造方法の実施形態を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリ塩化ビニル(PVC)層と、少なくとも1つの金属層と、前記鋼層を前記PVC層に接着する少なくとも1つの結合層と、を含む多層構造体であって、
前記結合層が、
0~95重量%の少なくとも1種のエチレンアクリレートコポリマーであって、前記アクリレートが、酢酸ビニル、アルキルアクリレート、又は無水マレイン酸モノエステルから選択される、エチレンアクリレートコポリマーと;
5~100重量%の、式E/V/W(式中、Eはエチレンであり、Vは酢酸ビニル、アルキルアクリレート、又は無水マレイン酸モノエステルから選択されるアクリル酸エステルコモノマーであり、Wはエポキシ、無水マレイン酸、及びカルボキシル基から選択される官能基である)によって表されるターポリマーと、を含み;
前記多層構造体が、前記結合層中に配置されるシランカップリング剤、前記PVC層上にプライマー層として適用されるシランカップリング剤、又はその両方と、を含み、前記シランカップリング剤が、Z-(CH-SiX3-qの構造を含み、式中、n=1~16であり;X=CHO又はCO-;q=1,2、又は3;Y=H,C-C20アルキル、アリール、CHOH-又はCO-;Z=HN-,CH=CH-,CH=C(CH)-COO-,エポキシ-CHO,NH-,OH-,又はHS-である多層構造体。
【請求項2】
前記シランが、以下の構造を含む、請求項1に記載の多層構造体。
【化1】
【請求項3】
前記金属層が、鋼又はアルミニウムを含む、請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が前記プライマー層中に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記プライマー層が0.01~100g/mの量で適用される、請求項4に記載の多層構造体。
【請求項6】
前記シランカップリング剤が前記結合層に配合されている、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記結合層が、0.01~10重量%のシランカップリング剤を含む、請求項6に記載の多層構造体。
【請求項8】
Z=HN-である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項9】
前記アルキルアクリレートが、メチルアクリレート、メタクリレート、エチルアクリレート、又はn-ブチルアクリレート若しくはイソブチルアクリレートを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項10】
前記エチレンアクリレートコポリマーが、0.1~50重量%未満のアクリレートを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項11】
前記エポキシモノマーがグリシジルメタクリレートを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項12】
前記ターポリマーが、0.1~50重量%のアクリル酸エステルコモノマーVを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項13】
前記ターポリマーが、0.1~50重量%の官能基Wを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項14】
前記結合層が、5~95重量%のエチレンアクリレートコポリマーと、5~95重量%のターポリマーと、を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の多層構造体のいずれかを含む防食パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、概して、多層構造体に関し、具体的には、シランカップリング剤を含む多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、(ポリエチレン及びポリプロピレンに次いで)世界で3番目に広く生産されている合成プラスチックポリマーである。PVCは、その優れた性能、例えば難燃性、機械的強度、耐食性、耐熱性、発泡性などにより、建築材料、床材、人工皮革、パイプ、ワイヤ及びケーブル、非食品包装、ボトル、発泡材料、シーラント、繊維などに広く使用されている。
【0003】
防食パネルは、防食が高度に要求される様々な産業施設の屋根材及び壁として適用される。PVCは、結合剤を使用して金属上にPVCを積層することによって、防食パネルの構築に利用され得る。しかしながら、無溶媒結合剤では、PVC上への接着は、共有結合ではなく極性結合又は二次原子価結合によるものであるため、高温(>80℃)での結合は依然として難題である。したがって、改善されたPVCの金属への結合が、防食パネルにおいて必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態は、PVC基材表面の極性及び反応性を増加させ、結合剤層との化学結合を形成することによって、又は基材と結合剤との間の中間層の形成時に接着を提供するシランカップリング剤を使用することによって、これらの必要性を満たす。
【0005】
シランカップリング剤を組み込む実施形態は、PVCを前処理するためのプライマーの形態で、又は結合層樹脂中に配合/含浸された添加剤としてのいずれかで使用することができる。結合層中のシランカップリング剤又は結合層上のプライマーとして添加されるシランカップリング剤により、化学反応が引き起こされて、PVCと結合層との間に共有結合が形成される。PVCに結合するこの結合層は、金属層(例えば、鋼)にも結合し得る。代替的に、別の層(例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン樹脂を含む別の結合層)を使用して、金属層との結合を補助してもよい。この結合層パッケージは、高温で良好な結合性能を有する。
【0006】
本開示の少なくとも1つの実施形態に従い、多層構造体が提供される。多層構造体は、少なくとも1つのポリ塩化ビニル(PVC)層と、少なくとも1つの金属層と、鋼層をPVC層に接着する少なくとも1つの結合層とを含む。結合層は、0~95重量%の少なくとも1種のエチレンアクリレートコポリマー(アクリレートは、酢酸ビニル、アルキルアクリレート、又は無水マレイン酸モノエステルから選択される)と、5~100重量%の式E/V/Wによって表されるターポリマー(式中、Eはエチレンであり、Vは、酢酸ビニル、アルキルアクリレート、又は無水マレイン酸モノエステルから選択されるアクリルエステルコモノマーであり、Wは、エポキシ、無水マレイン酸、及びカルボキシル基から選択される官能基である)とを含む。多層構造体は、結合層中に配置されるシランカップリング剤、PVC層上にプライマー層として適用されるシランカップリング剤、又はその両方を含み、シランカップリング剤は、Z-(CH-SiX3-qの構造を含み、式中、n=1~16であり;X=CHO又はCO-;q=1,2、又は3;Y=H,C-C20アルキル、アリール、CHOH-又はCO-;Z=HN-,CH=CH-,CH=C(CH)-COO-,エポキシ-CHO,NH-,OH-,又はHS-、である多層構造体。
【0007】
これらの実施形態及び他の実施形態を、以下の「発明を実施するための形態」においてより詳しく記載する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本出願の特定の実施形態を説明する。これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、当業者に主題の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0009】
「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、通常、1タイプのみのモノマーから調製されたポリマーを指す「ホモポリマー」という用語、並びに2つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す「コポリマー」という用語を包含する。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、ターポリマーなどの、2つより多い異なるタイプのモノマーから調製された、コポリマー又はポリマーを含む。
【0010】
「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」は、50モル%を超えるエチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するものとする。これには、エチレン系ホモポリマー又はコポリマー(単位が2つ以上のコモノマーに由来することを意味する)が含まれる。当該技術分野で既知の一般的な形態のエチレン系ポリマーとしては、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、極低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
本明細書で使用される場合、「プロピレン系ポリマー」又は「ポリプロピレン」という用語は、50モル%を超えるプロピレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを指す重合形態で、含むポリマーを指す。これには、プロピレンホモポリマー、ランダムコポリマーポリプロピレン、インパクトコポリマーポリプロピレン、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、及びプロピレン/α-オレフィンコポリマーが含まれる。
【0012】
「LLDPE」という用語には、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂に加えて、ビスメタロセン触媒(時に「m-LLDPE」とも称される)、ホスフィンイミン、及び幾何拘束型触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂、並びにビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも称される)を含むがこれに限定されないポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂が含まれる。LLDPEは、直鎖状の、実質的に直鎖状の、又は不均質なエチレン系コポリマー又はホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、及び米国特許第5,733,155号に更に定義されている実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号のものなどの、均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されたものなどの不均質分岐状エチレンポリマー、及びそれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は米国特許第5,854,045号に開示されているものなど)を含む。LLDPE樹脂は、当該技術分野において既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0013】
本明細書に記載されるような多層構造体の実施形態を詳細に参照する。多層構造体の実施形態は、少なくとも1つのポリ塩化ビニル(PVC)層と、少なくとも1つの金属層と、金属層をPVC層に接着する少なくとも1つの結合層とを含み得る。結合層は、0~95重量%の少なくとも1種のエチレンアクリレートコポリマーを含み、アクリレートは、酢酸ビニル、アルキルアクリレート、又は無水マレイン酸モノエステルから選択される。結合層は更に、5~100重量%の式E/V/Wによって表されるターポリマー(式中、Eはエチレンであり、Vは酢酸ビニル、アルキルアクリレート、又は無水マレイン酸モノエステルから選択されるアクリルエステルコモノマーであり、Wはエポキシ、無水マレイン酸、及びカルボキシル基から選択される官能基である)を含む。
【0014】
更に、多層構造体は、結合層中に配置されるシランカップリング剤、PVC層上にプライマー層として適用されるシランカップリング剤、又はその両方を含み、シランカップリング剤は、Z-(CH-SiX3-qの構造を含み、式中、n=1~16であり、X=CHO又はCO-;q=1,2、又は3;Y=H,C-C20アルキル、アリール、CHOH-又はCO-;Z=HN-,CH=CH-,CH=C(CH)-COO-,エポキシ-CHO,NH-,OH-,又はHS-、である多層構造体である。
【0015】
金属層は、当業者によく知られている様々な材料を含み得る。例えば、金属層は、鋼又はアルミニウムを含み得る。特定の実施形態では、金属層は鋼を含み得る。
【0016】
結合層に関して上述したように、エチレンアクリレートコポリマーはアルキルアクリレートを含み得る。1つ以上の実施形態では、アルキルアクリレートは、メチルアクリレート、メタクリレート、エチルアクリレート、又はn-ブチルアクリレート、又はイソブチルアクリレートを含む。
【0017】
エチレンアクリレートは、0.1~50重量%未満のアクリレートモノマー、1~40重量%のアクリレートモノマー、5~30重量%のアクリレートモノマー、10~30重量%のアクリレートモノマー、又は15~25重量%のアクリレートモノマーを含み得る。
【0018】
結合層は、0~95重量%の少なくとも1種のエチレンアクリレートコポリマー、5~90重量%、10~80重量%、25~75重量%、50~75重量%、又は25~50重量%のエチレンアクリレートコポリマーを含み得る。
【0019】
エチレンアクリレートコポリマーは、0.900~0.975グラム/立方センチメートル(g/cc)、0.925~0.975g/cc、又は0.930~0.950g/ccの密度を含み得る。エチレンアクリレートコポリマーは、0.5~40g/10分のメルトインデックス(I)を含み得る(ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定したとき、1~10g/10分、1~5g/10分、又は1.5~3.5g/10分である)。更に、エチレンアクリレートコポリマーは、ASTM D3418に従って測定して、80~100℃、85~95℃、又は90~94℃の溶融温度を有し得る。
【0020】
更に、上述したように、結合層は、5~100重量%の式E/V/Wによって表されるターポリマーを含み得る。エチレンモノマーEは、ターポリマー内に少なくとも50重量%~99重量%、ターポリマー内に55重量%~90重量%、60~85重量%、65~80重量%、又は70~80重量%の量で存在し得る。
【0021】
更に上述したように、アクリル酸エステルコモノマーVは、酢酸ビニル、アルキルアクリレート、又は無水マレイン酸モノエステルから選択される。特定の実施形態では、モノマーVは酢酸ビニルを含み得る。アクリル酸エステルコモノマーVは、ターポリマー中に0.1~50重量%、1重量%~45重量%、ターポリマー中に5重量%~30重量%、5~25重量%、10~25重量%、又は10~20重量%の量で存在し得る。
【0022】
W官能基コモノマーは、エポキシ、無水マレイン酸、及びカルボキシル基から選択される。1つ以上の実施形態では、エポキシモノマーはグリシジルメタクリレートを含む。W官能基は、ターポリマー中に0.1~50重量%、1重量%~45重量%、ターポリマー中に2重量%~30重量%、3~20重量%、又は5~10重量%の量で存在し得る。
【0023】
ターポリマーは、0.925~0.975グラム/立方センチメートル(g/cc)、0.930~0.970g/cc、又は0.940~0.960g/ccの密度を含み得る。ターポリマーは、0.5~20g/10分のメルトインデックス(I)を含み得る(ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定したとき、2~15g/10分、4~10g/10分、又は7~9g/10分である)。更に、ターポリマーは、ASTM D3418に従って測定して、70~100℃、75~90℃、又は80~85℃の溶融温度を有し得る。
【0024】
1つ以上の実施形態では、結合層は、エチレンアクリレートコポリマー及びターポリマーの両方を含む。一実施形態では、結合層は、5~95重量%のエチレンアクリレートコポリマー、及び5~95重量%のターポリマーを含み得る。更なる実施形態では、結合層は、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%の下限から、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、又は95重量%の上限までの範囲の量でエチレンアクリレートコポリマーを含み得る。同様に、結合層は、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%の下限から、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、又は95重量%の上限までの範囲の量でターポリマーを含み得る。
【0025】
更に、多層構造体は、Z-(CH-SiX3-qを有するシランカップリング剤を含み得、式中、n=1~16であり;X=CHO又はCO-;q=1,2、又は3;Y=H,C-C20アルキル、アリール、CHOH-又はCO-;Z=HN-,CH=CH-,CH=C(CH)-COO-,エポキシ-CHO,NH-,OH-,又はHS-、である多層構造体である。更なる実施形態では、Z=HN-である。
【0026】
特定の実施形態では、シランカップリング剤は、下記構造の1つ以上の構造を含み得る。
【化1】
【0027】
更に、シランカップリング剤は、1つ以上のアルコキシシラン、アミノシラン、又はアミノアルコキシシランを含み得る。更に、シランカップリング剤は、下記の1つ以上を含むことができる:(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(CAS 13822-56-5);(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(CAS 919-30-2);3-アミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン(3179-76-8);N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(CAS 1760-24-3);(3-((2-アミノエチル)アミノ)プロピル)シラントリオール(CAS 68400-09-9);及び3-トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン(CAS 5089-72-5)。
【0028】
上述したように、シランカップリング剤は、プライマー層として添加され得、結合層に配合され得、又はその両方であり得る。プライマー層として添加される場合、シランカップリング剤は、0.01~100g/m、1~20g/m、又は5~10g/mの量で適用され得る。代替的に、結合層に配合される場合、結合層は、0.01~10重量%、0.5~7.5重量%、又は1~5重量%のシランカップリング剤を含む。
【0029】
本発明の多層構造体には様々な用途が考えられる。上述したように、多層構造体は、防食パネルに組み込むことができる。
【0030】
任意成分
様々な任意成分が、多層構造体に可能であると考えられる。例えば、多層構造体は酸化防止剤(AO)を含み得る。これらのAOは、IRGANOX 1010(CAS No.6683-19-8)、IRGANOX 1024(CAS No.32687-78-8)、IRGANOX 1035(CAS No.41484-35-9)、IRGANOX 1076(CAS No.2082-79-3)、IRGANOX 1098(CAS No.23128-74-7)、IRGANOX 1135(CAS No.125643-61-0)、IRGANOX 259(CAS No.35074-77-2)、IRGANOX 1330(CAS No.1709-70-2)、IRGANOX 3114(CAS No.27676-62-6)、IRGANOX 565(CAS No.991-84-4)、IRGANOX 245(CAS No.36443-68-2)、IRGANOX 3052(CAS No.61167-58-6)、IRGANOX 3790(CAS No.40601-76-1)、IRGANOX 1520(CAS No.110553-27-0)、IRGANOX 1726(CAS No.110675-26-8)などのヒンダードフェノール系AO;IRGAFOS 168(CAS No.31570-04-4)、IRGAFOS 38(CAS No.145650-60-8)、IRGAFOS 12(CAS No.80410-33-9)、IRGAFOS TNPP(CAS No.26523-78-4)を含むホスファイトAO;IRGANOX PS 800(CAS No.123-28-4)、IRGANOX PS 802(CAS No.693-36-7)などのチオエーテルAO、又はそれらの2つを超えるAOの組み合わせ、を含み得るが、これらに限定されない。
【0031】
更なるポリマー材料が、多層構造体における使用のために企図される。例えば、多層構造体は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、HDPE、LLDPE、ポリオレフィンエラストマー(POE)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、及びこれらの組み合わせの1つ以上を含み得る。
【0032】
更に、結合層は、プライマーとして適用する前にシランが水に溶解されるときに添加され得る1重量%までの非イオン性湿潤剤を任意に含み得る。
【0033】
製造方法
様々な方法論が、本発明の多層構造体を調製するのに適していると考えられる。例えば、シランカップリング剤は、様々なブレンド及びプレブレンド技術を使用して、結合層中のポリマー樹脂に配合され得る。例えば、配合は、浸漬プロセス(例えば、シランを樹脂とブレンドし、溶融温度より低い温度で数時間振とうすることによる)、二軸押出機でのブレンド、BUSS混練機でのブレンド、一軸押出機でのブレンド、バッチミキサーでのブレンド。更に、結合層フィルムに添加される場合、結合層フィルムは、インフレーションフィルム技術又はキャスティングフィルム技術を使用して製造され得る。
【0034】
シランカップリング剤をプライマー層として適用する場合、プライマー層は、スプレーコーティング、ローラーコーティング、又はシラン溶液中へのPVC表面の浸漬によってコーティングすることができる。
【0035】
試験方法
【0036】
180度剥離強度試験
【0037】
180度剥離強度試験は、ASTM D1876に従って、環境キャビネットを備えたインストロン試験機で行った。試験片を50℃で加熱した後、破断するまで100mm/分で引っ張った。
【0038】
密度
【0039】
密度は、ASTM D792-13に従って測定され、1立方センチメートル当たりのグラム(g/cm)で報告された。
【0040】
メルトインデックス(I
【0041】
メルトインデックス(I)は、190℃/2.16キログラム(kg)の条件を使用してASTM D 1238-13に従って測定した。結果は、10分あたりの溶出グラム数(g/10分)の単位で報告された。
【実施例
【0042】
以下の実施例は、本開示の特徴を例示するものであるが、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以下の実験で、本明細書に記載の多層構造体の実施形態の性能を分析した。
【0043】
使用材料
【0044】
PVCフィルムは、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd(SCRC)によって供給され、100μmの厚さ及び1mの幅の寸法を有する。
【0045】
結合樹脂1は、24重量%のメタクリレートコモノマーを含むエチレンメタクリレートコポリマーである。結合樹脂1は、2g/10分のメルトインデックス(I)を有する(ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定した)。
【0046】
結合樹脂2は、エチレンモノマー、15重量%の酢酸ビニル(VA)コモノマー、及び9重量%のグリシジルメタクリレート(GMA)コモノマーからなるターポリマーである。結合樹脂2は、8g/10分のメルトインデックス(I)を有する(ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定した)。
【0047】
高い圧力を使用し、連続方式で操作する標準的なフリーラジカル共重合法により、結合樹脂1及び結合樹脂2を調製することができる。モノマーを、モノマーの反応性、及び組み込まれることが望まれる量に関連する割合で反応混合物に供給する。このようにして、鎖に沿ったモノマー単位の均一でほぼランダムな分布を実現する。この方法での重合は、周知であり、米国特許第4.351.931号(Armitage)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。他の重合技術は、米国特許第5,028,674号(Hatchら)及び米国特許第5,057,593号(Statz)に記載されており、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
実験で使用したシランカップリング剤を以下の表1に列挙する。
【0049】
【表1】

* 国泰華栄化工新材料社(Guotai Huarong New Chemical Materials Co.,Ltd)によって供給された。
【0050】
試験片調製プロセス
【0051】
配合
【0052】
表2及び表3の試験片を参照すると、結合樹脂1及び結合樹脂2を、ポリマーが溶融するまでロータ速度を40rpmに設定した150℃のブラベンダーミキサに供給した。樹脂混合物を40rpmで更に5分間回転させた。次いで、後で使うため化合物を小片に切断した。
【0053】
フィルムの調製
【0054】
次いで、化合物の小片を2枚のマイラーシートの間に配置した後、ホットプレス機に挟み、150℃で10分間予熱した。プレスされた化合物を8回排気し、次いで、150℃及び10MPa(ホットプレス機の上部プレートと下部プレートとの間の圧力)で更に5分間保持した。次に、フィルムを10MPaの圧力で5分以内に室温まで冷却した。表の全てのフィルム試験片のフィルム厚は100μmであった。
【0055】
積層体の調製
【0056】
フィルムを、10cm×10cmの寸法を有する2枚のPVCフィルムの間に挟んだ。挟まれる前に、シラン組成物又は表2及び表3をプライマー層としてPVCフィルム上に添加した。具体的には、シラン組成物を溶媒(エタノール)で希釈して、2重量%のシラン溶液を生成した。シラン溶液をPVC表面上にコーティングし、次いで60℃で3分間乾燥させて溶媒を除去する。シランの添加量は、以下の式1のように計算した。
【0057】
W=(W2-W1)*100; 式1
【0058】
式中、Wはシラン添加量(グラム/m)であり;W1は、10×10cmのPVCフィルムの重量であり;W2は、PVC及び乾燥シランプライマーの総重量である。
【0059】
次いで、下塗りしたPVC試験片を180℃の温度及び0.8MPaの圧力で10秒間積層した。表2及び表3に列挙される積層シートを、更なる試験のために10cm×2.5cmの試験片に切断した。剥離強度の結果を以下に示す。
【0060】
【表2】

CE=比較例 IE=発明例
【0061】
表2を参照すると、シランの下塗りなしの結合樹脂2を含む比較例1(CE-1)は、50℃で0.42±0.03N/mmの180°剥離強度を示した。対照的に、シランで下塗りされた本発明の実施例(IE)は、1.78N/mm以上の剥離強度を示した。定性的な観点から、IE試験片のほとんどは、PVCの破断又は凝集破壊を示した。
【0062】
【表3】
【0063】
表3は、シランプライマーを用いた場合と用いない場合の結合樹脂2及び結合樹脂1のブレンドの剥離強度を示す。示されるように、全てのIE試験片は、下塗りされていないCE試験片よりも高い剥離強度になり、結合層-シランプライマーの利点があることが実証されている。
【0064】
添付の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正及び変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において、好ましいか、又は特に有利なものとして特定されるが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリ塩化ビニル(PVC)層と、少なくとも1つの金属層と、前記金属層を前記PVC層に接着する少なくとも1つの結合層と、を含む多層構造体であって、
前記結合層が、
5~90重量%の少なくとも1種のエチレンアクリレートコポリマーであって、前記アクリレートが、酢酸ビニル、アルキルアクリレート、又は無水マレイン酸モノエステルから選択される、エチレンアクリレートコポリマーと、
5~100重量%の、式E/V/W(式中、Eはエチレンであり、Vは酢酸ビニル、アルキルアクリレート、又は無水マレイン酸モノエステルから選択されるアクリル酸エステルコモノマーであり、Wはエポキシ、無水マレイン酸、及びカルボキシル基から選択される官能基である)によって表されるターポリマーと、を含み;
前記多層構造体が、前記結合層中に配置されるシランカップリング剤、前記PVC層上にプライマー層として適用されるシランカップリング剤、又はその両方と、を含み、前記シランカップリング剤が、Z-(CH-SiX3-qの構造を含み、式中、n=1~16であり;X=CHO又はCO-;q=1,2、又は3;Y=H,C-C20アルキル、アリール、CHOH-又はCO-;Z=HN-,CH=CH-,CH=C(CH)-COO-,エポキシ-CHO,NH-,OH-,又はHS-である多層構造体。
【請求項2】
前記シランが、以下の構造を含む、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記金属層が、鋼又はアルミニウムを含む、請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が前記プライマー層中に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記プライマー層が0.01~100g/mの量で適用される、請求項4に記載の多層構造体。
【請求項6】
前記シランカップリング剤が前記結合層に配合されている、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記結合層が、0.01~10重量%のシランカップリング剤を含む、請求項6に記載の多層構造体。
【請求項8】
Z=HN-である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項9】
前記アルキルアクリレートが、メチルアクリレート、メタクリレート、エチルアクリレート、又はn-ブチルアクリレート若しくはイソブチルアクリレートを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項10】
前記エチレンアクリレートコポリマーが、0.1~50重量%未満のアクリレートを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項11】
前記エポキシモノマーがグリシジルメタクリレートを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項12】
前記ターポリマーが、0.1~50重量%のアクリル酸エステルコモノマーVを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項13】
前記ターポリマーが、0.1~50重量%の官能基Wを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項14】
前記結合層が、5~95重量%のエチレンアクリレートコポリマーと、5~95重量%のターポリマーと、を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の多層構造体のいずれかを含む防食パネル。
【国際調査報告】