(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ガスバリアコーティングフィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 129/04 20060101AFI20241212BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241212BHJP
C09D 133/02 20060101ALI20241212BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241212BHJP
【FI】
C09D129/04
B32B27/30 102
B32B27/30 A
C09D133/02
C09D7/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531500
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2022137309
(87)【国際公開番号】W WO2023104113
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/136058
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ボン、シャロン エム.
(72)【発明者】
【氏名】チン、シュアン
(72)【発明者】
【氏名】シャー、アンドリュー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、ラーフル
(72)【発明者】
【氏名】セカラン、マネシュ ナドゥッパランビル
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、ユエンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】アインスラ、メリンダ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、シャオメイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ヤフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】アインスラ、ブライアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ドラムライト、レイ イー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シャンイー
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AH03A
4F100AK04B
4F100AK21A
4F100AK25A
4F100AK42B
4F100BA02
4F100EH46A
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ86A
4F100GB15
4F100GB23
4F100JA06A
4F100JA07A
4F100JD01A
4F100JD03
4F100JD04
4F100JD15
4F100JL16
4F100YY00A
4J038CE021
4J038CG011
4J038JB18
4J038MA14
4J038NA08
4J038NA27
4J038PB04
4J038PC08
(57)【要約】
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、及びカルボジイミドを含むバリアコーティングであって、バリアフィルムが120℃未満で形成される、バリアコーティングが開示される。ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、及びカルボジイミドを含むバリアコーティングを含む積層体も開示される。ポリアクリル酸は、2000~400,000g/molの分子量及び2~50%の中和度を有するポリ(メタ)アクリル酸を含み得る。ポリビニルアルコールは、少なくとも80%の鹸化度及び10,000~300,000g/molの分子量を有し得る。開示されるバリアコーティングは、高い硬化温度も商業的に実行不可能な硬化時間も必要とせずに、高湿度で良好なOTRを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、及びカルボジイミドを含むバリアコーティングであって、バリアフィルムが120℃未満で形成される、バリアコーティング。
【請求項2】
前記ポリアクリル酸が、少なくとも1つのポリ(メタ)アクリル酸を含む、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項3】
前記ポリアクリル酸が、2000~400,000g/molの分子量を有している、請求項1又は2に記載のバリアコーティング。
【請求項4】
前記ポリアクリル酸が、20,000~300,000g/molの分子量を有している、請求項1~3のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項5】
前記ポリアクリル酸が、40,000~200,000の分子量を有している、請求項1~4のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項6】
前記ポリアクリル酸が、部分的に中和されている、請求項1~5のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項7】
前記ポリアクリル酸が、2~50%の中和度を有している、請求項1~6のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコールが、少なくとも80%の鹸化度を有している、請求項1~7のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコールが、少なくとも95%の鹸化度を有している、請求項1~8のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項10】
前記ポリビニルアルコールが、10,000~300,000g/molの分子量を有している、請求項1~9のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項11】
前記ポリビニルアルコールが、50,000~200,000g/molの分子量を有している、請求項1~10のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項12】
95:5~5:95のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を有している、請求項1~11のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項13】
15:85~85:15のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を有している、請求項1~12のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項14】
請求項1に記載のバリアコーティングを含む積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2021年12月7日に出願された国際出願第PCT/CN2021/136058号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、食品の生産及び貯蔵において使用されるガスバリアコーティングに関する。より具体的には、本開示は、食品の生産及び貯蔵において使用されるPVOH含有ガスバリアコーティングに関する。
【0003】
序論
包装された食品の鮮度及び品質は、酸素及び水分透過性を制限することによって維持される。現在、プラスチック包装は、PVOH、EVOH、又はナイロンなどの厚いガスバリアポリマーで金属化又はコーティングされている。金属化は、エネルギー集約的なプロセスである。加工工程が追加される金属化を使用する場合、プライマーコーティングの塗布が必要になる。これらの添加される材料の量はまた、リサイクル性に悪影響を与える。加えて、PVOHを使用した場合、高湿度で酸素透過率(oxygen transmission rate、OTR)が増大する。充填剤は、ガス拡散分子がたどる経路のねじれを増加させることができるが、ポリマーマトリックス内での分散が不十分になる恐れがあり、更に最終包装フィルムの可撓性などの機械的特性が不十分になる恐れもある。PVOHを架橋することも試みられているが、これは、下層のプラスチックフィルムに損傷を与える恐れのある高い硬化温度又は商業的に実行不可能な硬化時間をもたらし得る。
【0004】
したがって、エネルギー集約度が低く、リサイクルが可能であり、高湿度で良好なOTRを有し、最終フィルムの機械的特性が損なわれず、高い硬化温度も商業的に実行不可能な硬化時間も必要としないガスバリアコーティングが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、及びカルボジイミドを含むバリアコーティングであって、バリアフィルムが120℃未満で形成される、バリアコーティングが開示される。ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、及びカルボジイミドを含むバリアコーティングを含む積層体も開示される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の構成成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲から任意の他の成分、工程、又は手順を排除する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる構成成分、工程、又は手順を排除する。
【0007】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値から上限値までのすべての値(下限値及び上限値を含む)を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6、などを含む)。
【0008】
「組成物」という用語は、当該組成物を構成する材料の混合物、並びに当該組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0009】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、(1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)ホモポリマーという用語、及びコポリマー又はインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)は、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれてもよい。ポリマーは、単一のポリマー、ポリマーブレンド、又は重合中にその場で形成されるポリマーの混合物を含むポリマー混合物であり得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「ポリオレフィン」という用語は、(ポリマーの重量に基いて)例えばエチレン又はプロピレンなどのオレフィンモノマーの過半量を重合した形態で含み、任意選択で1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを意味する。
【0011】
「ポリエチレンポリマー」、「ポリエチレン系ポリマー」、「PE系ポリマー」、「ポリエチレン」、又は「エチレン系ポリマー」は、エチレンモノマーに由来する単位の大部分(>50モル%、又は>60モル%、又は>70モル%、又は>80モル%、又は>90モル%、又は>95モル%、又は>97モル%)を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において周知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、極低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が挙げられる。これらのポリエチレン材料は、一般に、当該技術分野において周知である。しかしながら、以下の記載は、これらの異なるポリエチレン樹脂のうちのいくつかの間の差異を理解するのに役立つ場合がある。
【0012】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、又は「高分岐ポリエチレン」とも称されてもよいが、ポリマーが、過酸化物などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、オートクレーブ又は管状反応器中で、部分的に又は完全に、ホモ重合又は共重合されることを意味するように定義される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,599,392号を参照)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.935g/cm3の範囲内の密度を有する。
【0013】
「LLDPE」という用語は、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒系及びクロム系触媒系、並びにビス-メタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)及び幾何拘束型触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される樹脂の両方を含み、線状、実質的に線状、又は不均質なポリエチレンコポリマー又はホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、及び同第5,733,155号に更に定義されている、実質的に直鎖状エチレンポリマー;米国特許第3,645,992号のものなどの、均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されるものなどの不均質分岐エチレンポリマー、及び/又はこれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は同第5,854,045号に開示されているものなど)が挙げられる。LLDPEは、当技術分野で既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はこれらの任意の組み合わせを介して作製することができる。
【0014】
「MDPE」という用語は、0.926~0.935g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロム若しくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又はビス-メタロセン触媒及び幾何拘束型触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され、典型的には、2.5を超える分子量分布(「molecular weight distribution、MWD」)を有する。
【0015】
「HDPE」という用語は、一般にチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、約0.935g/cm3超~約0.970g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0016】
「ULDPE」という用語は、一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒で調製される、0.880~0.912g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0017】
「ポリプロピレン系ポリマー」、「PP系ポリマー」、又は「ポリピレン系ポリマー」は、ポリピレンモノマーに由来する単位の大部分(>50モル%、又は>60モル%、又は>70モル%、又は>80モル%、又は>90モル%、又は>95モル%)を含むポリマーを意味するものとする。
【0018】
ポリエチレンテレフタレート系ポリマー」又は「PET系ポリマー」は、過半量(>50重量%、又は>60重量%、又は>70重量%、又は>80重量%、又は>90重量%、又は>95重量%)のエチレンテレフタレートを含むポリマーを意味するものとする。
【0019】
「ポリオレフィンプラストマー」は、ポリエチレンプラストマー又はポリプロピレンプラストマーであり得る。ポリオレフィンプラストマーには、例えば、メタロセン及び拘束幾何触媒などのシングルサイト触媒を使用して作製されたポリマーが含まれる。ポリオレフィンプラストマーは、0.885~0.915g/cm3の密度を有する。0.885g/cm3~0.915g/cm3の全ての個々の値及び下位範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、ポリオレフィンプラストマーの密度は、0.895、0.900、又は0.905g/cm3の下限から0.905、0.910、又は0.915g/cm3の上限までであり得る。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンエラストマーは、0.890~0.910g/cm3の密度を有する。
【0020】
「ポリオレフィンエラストマー」は、ポリエチレンエラストマー又はポリプロピレンエラストマーであり得る。ポリオレフィンエラストマーは、0.857~0.885g/cm3の密度を有する。0.857g/cm3~0.885g/cm3の全ての個々の値及び下位範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、ポリオレフィンエラストマーの密度は、0.857、0.860、0.865、0.870、又は0.875g/cm3の下限から0.870、0.875、0.880、又は0.885g/cm3の上限までであり得る。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンエラストマーは、0.860~0.880g/cm3の密度を有する。
【0021】
「ポリエチレン系フィルム」又は「PE系フィルム」は、フィルムの総重量に基づいて、少なくとも90重量パーセントのポリエチレン、少なくとも95重量パーセントのポリエチレン、少なくとも97重量パーセントのポリエチレンを含むフィルムを指す。
【0022】
「ポリプロピレン系フィルム」又は「PP系フィルム」は、フィルムの総重量に基づいて、少なくとも90重量パーセントのポリプロピレン、少なくとも95重量パーセントのポリプロピレン、少なくとも97重量パーセントのポリプロピレンを含むフィルムを指す。
【0023】
「ポリエチレンテレフタレート系フィルム」又は「PET系フィルム」は、フィルムの総重量に基づいて、少なくとも90重量パーセントのポリエチレンテレフタレート、少なくとも95重量パーセントのポリエチレンテレフタレート、少なくとも97重量パーセントのポリエチレンテレフタレートを含むフィルムを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、酸化防止剤は、ポリマー(複数可)を安定化させるか又はポリマー(複数可)の酸化的分解を防止するためにポリマーフィルム中に含まれる化合物である。酸化防止剤は、当業者によく知られている。
【0025】
本明細書で使用される場合、粘着防止剤は、フィルムの2つの隣接する層の間の粘着(すなわち、接着)を最小限に抑えるか又は防止する化合物である。粘着は、例えばフィルムロールの巻き戻し中に問題を引き起こす可能性がある。粘着防止剤の使用は、当業者によく知られている。一般的な粘着防止剤の例としては、限定されないが、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される場合、滑り剤は、フィルムとフィルムとの間及び/又はフィルムと機器との間の摩擦を低減するためにフィルムに添加される化合物である。典型的な滑り剤としては、移行性及び非移行性滑り剤が挙げられ、当業者によく知られている。
【0027】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2つ以上のモノマーを有する任意のポリマーを意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ポリビニルアルコール」という用語は、ビニルアルコールのポリマーを意味する。
【0029】
バリアコーティング
バリアフィルムが120℃以下で形成されるバリアコーティングが本明細書に開示される。バリアコーティングは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、及びカルボジイミドを含み得る。バリアコーティングは、95:5~5:95のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を有し得る。全ての内部部分範囲及び値が開示される。例えば、バリアコーティングは、15:85~85:15、30:70~70:30、又は50:50のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を有し得る。バリアコーティングは、5重量%のカルボジイミドを含み得る。バリアコーティングは、0.5~10%のカルボジイミドを含み得る。バリアコーティングは、これらに限定されるものではないが、粘着防止剤、消泡剤、増粘剤、及び湿潤剤などの水性コーティング添加剤を含み得る。
【0030】
バリアコーティングでコーティングされた基材は、50%以上の相対湿度で0.60cc/m2日未満のOTRを有し得る。バリアコーティングでコーティングされた基材は、50%以上の相対湿度で0.60~0.04cc/m2日のOTRを有し得る。全ての内部値及び部分範囲が開示される。例えば、バリアコーティングでコーティングされた基材は、0.04~0.1cc/m2日のOTRを有し得る。バリアコーティングは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンテレフタレートを含むがこれらに限定されない種々の基材に塗布され得る。
【0031】
バリアコーティングは、120℃未満の温度で形成され得る。バリアコーティングは、50~119.9℃の温度で形成され得る。全ての内部値及び部分範囲が開示される。例えば、バリアコーティングは、80~119.9℃の温度で形成され得る。
【0032】
ポリアクリル酸
ポリアクリル酸は、少なくとも1つのポリ(メタ)アクリル酸を含み得る。ポリアクリル酸は、少なくとも2つのポリマーのコポリマーを含み得る。ポリアクリル酸は、少なくとも2つのモノマーのコポリマーを含み得る。ポリアクリル酸は、少なくとも2つのポリマーの混合物を含み得る。
【0033】
ポリアクリル酸は、2000~400,000g/molの数平均(Mn)分子量を有し得る。全ての内部値及び部分範囲が含まれる。例えば、ポリアクリル酸は、20,000~300,000又は40,000~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有し得る。
【0034】
ポリアクリル酸は、部分的に中和されていてもよい。ポリアクリル酸は、2~50%の中和度を有し得る。全ての内部値及び部分範囲が含まれる。例えば、ポリアクリル酸は、5~20%の中和度を有し得る。ポリアクリル酸は、NaOH、KOH、NH3・H2O、ZnO、及びCaOを含むがこれらに限定されない塩基を使用して部分的に中和されることができる。
【0035】
ポリビニルアルコール
ポリビニルアルコールは、少なくとも80%の鹸化度を有し得る。ポリビニルアルコールは、少なくとも95%の鹸化度を有し得る。ポリビニルアルコールは、80~100%の鹸化度を有し得る。全ての内部値及び部分範囲が含まれる。例えば、ポリビニルアルコールは、95~100%の鹸化度を有し得る。
【0036】
ポリビニルアルコールは、10,000~300,000g/molの分子量を有し得る。全ての内部値及び部分範囲が開示される。例えば、ポリビニルアルコールは、50,000~200,000g/molの分子量を有し得る。
【0037】
ポリビニルアルコール樹脂は、少なくとも80%の鹸化度及び10,000~300,000g/molの分子量(Mw)を有し得る。ポリビニルアルコールは、少なくとも95%の鹸化度及び50,000~200,000g/molの分子量(molecular weight、Mw)を有し得る。
【0038】
基材
基材は、フィルムを含み得る。フィルムは、ポリエチレンを含む少なくとも1つの層を有し得る。他の層は、PP、ナイロン、又は当業者に公知の他のプラスチックであってよい。1つの層が存在し得る。あるいは、2つ以上の層が存在していてもよい。これらの2つ以上の層を一緒に押出して、フィルムを形成してもよい。3つ(又は3つ以上)の層が存在していてもよい。3つ(又は3つ以上)の層が存在する場合、外側の層はシーラント層と呼ばれ、シーラント層の反対側の層はスキン層と呼ばれ、スキン層とシーラント層との間の1つ又は複数の層は、1つ又は複数のコア層である。を含む層が1つしか存在しない場合、本明細書でスキン層、コア層、又はシーラント層として論じる組成物のいずれかを使用してよい。層が2つしか存在しない場合、スキン層とコア層、スキン層とシーラント層、又はコア層とシーラント層の任意の組み合わせを使用してよい。2つ以上の層が存在する場合、各層は、少なくとも1つの他の層又は接着剤層に直接隣接していてよい。フィルムは、シーラント層を含み得る。フィルムは、スキン層、コア層、及びシーラント層を含み得る。
【0039】
フィルムは、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のうちの2つ以上の組み合わせを含み得る。フィルムは、チーグラー・ナッタ触媒、シングルサイト触媒(限定されないが、メタロセンを含む)、又はクロム触媒された線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、オートクレーブで生成又は管状に生成された低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のうちの2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0040】
フィルムは、超低密度ポリエチレン、ポリオレフィンプラストマー、ポリオレフィンエラストマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンエチルアクリレートコポリマー、エチレンビニルアルコール、及び少なくとも50%のエチレンモノマーを含む任意のポリマー、並びにこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを更に含み得る。
【0041】
スキン層は、ポリプロピレン、ナイロン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のうちの2つ以上の組み合わせを含み得る。このLLDPEは、シングルサイト触媒されたポリエチレン(m-LLDPEなどであるが、これには限定されない)であり得る。スキン層は、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、滑り剤、粘着防止剤、顔料又は着色剤、加工助剤、架橋触媒、難燃剤、充填剤及び発泡剤などの添加剤を更に含むことができる。
【0042】
コア層は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のものの2つ以上の組み合わせを含むことができる。
【0043】
シーラント層は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリオレフィンエラストマー又はプラストマー、並びに前述のものの2つ以上の組み合わせを含むことができる。シーラント層は、チーグラー・ナッタ触媒、シングルサイト触媒(メタロセンを含む)、又はクロム触媒された線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、オートクレーブで生成又は管状に生成された低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のうちの2つ以上の組み合わせを含み得る。LLDPEは、シングルサイト触媒されたポリエチレン(例えば、mLLDPE)であり得る。これは、フィルムの外部層であり得る。シーラント層は、粘着防止剤を有利に含んでもよい。例えば、粘着防止剤は、少なくとも約200ppm、少なくとも約1000ppm、又は少なくとも約1500ppmの量でシーラント層中に存在し得る。更に、滑り剤(例えば、エルカミド)が役に立つ場合がある。例えば、滑り剤は、シーラント層の総重量に基づいて、500ppm未満、又は300ppm未満、又は200ppm未満、100ppm未満、又は0ppmに等しい量でシーラント層中に存在し得る。
【0044】
フィルムは、吹込フィルム、流延フィルム、縦方向延伸フィルム、又は二軸延伸フィルムであってよい。フィルムは、吹込、流延、水冷、ダブルバブル、又はFilm Processing Advances,Toshitaka Kanai and Gregory A.Campbell(editors),Chapter 7(Biaxial Oriented Film Technology),pp.194-229に記載されているものなどの当業者に公知の他の技術によって製造することができる。製造後、フィルムを縦方向延伸(machine direction orientation、MDO)又は二軸延伸プロセスに供して、それぞれ縦方向延伸フィルム又は二軸延伸フィルムを提供してよい。
【0045】
フィルムの全体の厚さは、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、又は少なくとも30マイクロメートルであり得る。フィルムの全体の厚さは、200マイクロメートル以下、150マイクロメートル以下、120マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下、80マイクロメートル以下、70マイクロメートル以下、又は60マイクロメートル以下であり得る。
【0046】
フィルム層中の酸化防止剤の濃度は、フィルムの総重量に基づいて、3000ppm未満、又は2000ppm未満、又は1500ppm未満、又は1300ppm未満である。
【0047】
生産及び使用
PVOH及び種々の塩基の溶液は、当技術分野で理解されているように得ることができる。部分的に中和されたPAAは、計算された量の塩基溶液をPAA溶液に添加することによって調製することができる。添加される塩基の量は、所望の中和度及び中和されるサンプル中に存在するPAAカルボキシル基のモル数に依存する。次いで、部分的に中和されたPAANa及びPVOHを当技術分野で理解されている種々の方法によって混合することにより、バリアコーティングを得ることができる。
【0048】
このようにして作製された溶液は、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンテレフタレートなどの種々の基材上に、用途に応じて種々のフィルム厚さでバーコーティングなどの当技術分野で公知の種々の手段を使用してコーティングすることができる。得られるコーティングされた基材は、食品包装並びに酸素不透過性バリアが必要とされる任意の他の用途において有用である。
【0049】
試験手順
蒸気収着
。蒸気収着は、TA Instruments製のVTI-SA+蒸気収着分析機を使用して測定される。薄膜サンプルを基板から剥がし、60℃で24時間乾燥させる。次いで、10%RH間隔で0%~80%RHの各サンプルについての平衡重量を、25℃で、5分以内に0.0010重量%の平衡基準及び各条件で180分の最大平衡時間で測定する。蒸気収着は、各条件での平衡重量とフィルムの乾燥重量との差から計算され、百分率として表される。
【0050】
OTR測定
MOCON Ox-Tran Model 2/21を使用して、ASTM D3985-05に従って23℃及び相対湿度50%でブレンドフィルムの酸素透過率を測定した。
【0051】
WVTR測定
WVTR測定は、Mocon Permatran-W(商標)Model 3/33で、湿潤スポンジ法(100%RH)を用いて37℃で行う。試験面積は50cm2であった。試験手順は、ASTM F1249に従った。
【実施例】
【0052】
表1に、以下の実施例において使用した材料を列挙する。全てのDOW(商標)製品は、DOW(商標)chemicalから入手可能である。
【0053】
【0054】
PVOH薄膜の調製
24グラムのPVOH粉末を176グラムの脱イオン水に95℃で2時間溶解させることによって、12重量%PVOH溶液を調製する。FlackTek Mixerを2000rpmで2~5分間使用して、架橋剤及び充填剤を溶液と混合する。
【0055】
コーティング手順
調製された配合物をピペットでPE又はPET基材上に分配し、3ミルのBYKドローダウンバーで広げる。次いで、コーティングされたサンプルを90℃のオーブンで1時間乾燥させて、約9μmの乾燥フィルムを得る。
【0056】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、及びカルボジイミドを含むバリアコーティングであって、バリアフィルムが120℃未満で形成される、バリアコーティング。
【請求項2】
前記ポリアクリル酸が、少なくとも1つのポリ(メタ)アクリル酸を含む、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項3】
前記ポリアクリル酸が、2000~400,000g/molの分子量を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項4】
前記ポリアクリル酸が、20,000~300,000g/molの分子量を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項5】
前記ポリアクリル酸が、40,000~200,000g/molの分子量を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項6】
前記ポリアクリル酸が、部分的に中和されている、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項7】
前記ポリアクリル酸が、2~50%の中和度を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコールが、少なくとも80%の鹸化度を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコールが、少なくとも95%の鹸化度を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項10】
前記ポリビニルアルコールが、10,000~300,000g/molの分子量を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項11】
前記ポリビニルアルコールが、50,000~200,000g/molの分子量を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項12】
95:5~5:95のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項13】
15:85~85:15のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を有している、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項14】
請求項1に記載のバリアコーティングを含む積層体。
【国際調査報告】