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特表2024-546238高速コロイド量子ドット光検出器を使用する光学的深さ感知システム
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  • 特表-高速コロイド量子ドット光検出器を使用する光学的深さ感知システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】高速コロイド量子ドット光検出器を使用する光学的深さ感知システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/486 20200101AFI20241212BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20241212BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20241212BHJP
【FI】
G01S7/486
H01L31/10 A
G01S17/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532875
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022080635
(87)【国際公開番号】W WO2023102412
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,846
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523192668
【氏名又は名称】エスダブリュアイアール ビジョン システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クレム、イーサン・ジェイ.・ディー.
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー、クリストファー・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヒルトン・ジュニア、ジェフリー・アラン
(72)【発明者】
【氏名】プローチダ、カルメン
(72)【発明者】
【氏名】ボンド、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】テッセマ、テオドロス
【テーマコード(参考)】
5F149
5J084
【Fターム(参考)】
5F149AA01
5F149AA03
5F149BA03
5F149BA05
5F149BB07
5F149DA33
5F149JA05
5F149LA01
5F149LA02
5F149LA03
5F149XB24
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA32
5J084BA39
5J084BA40
5J084CA03
5J084EA05
(57)【要約】
能動照明源と、コロイド量子ドット光検出器と、を含む光学的深さ感知システムが提供される。コロイド量子ドット光検出器は、光感知素子としてコロイド量子ドットを有し、システムは、5.0nsより短い立ち上がり時間と、10.0nsより短い立ち下がり時間と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的深さ感知システムであって、
能動照明源と、
コロイド量子ドット光検出器と、ここで、前記コロイド量子ドット光検出器は、光感知素子としてコロイド量子ドットを有し、
を備え、
前記システムは、5.0nsより短い立ち上がり時間と、10.0nsより短い立ち下がり時間と、を有する、光学的深さ感知システム。
【請求項2】
前記能動照明源は、レーザ又は発光ダイオード(LED)のうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記コロイド量子ドット光検出器によって検出される前記能動照明源の測定された戻り反射に基づいて距離を測定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記能動照明源は、近赤外線(NIR)又は短波赤外線(SWIR)スペクトル領域における光子を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、低バイアス電圧で動作され、前記低バイアス電圧は、印加逆バイアスの0mV~1000mVである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、能動冷却なしで動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、10nsより短い10%~90%の立ち上がり/立ち下がり時間を示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、100MHzより大きい帯域幅を示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、波長が900nm~2500mの範囲にある光に応答して動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コロイド量子ドット光検出器は、高フレームレート、高解像度感知、及び固体システムを可能にするために、検出器の単一要素、線形アレイ、又は2次元アレイを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、2つの隣接するコロイド量子ドット層の間に形成されたp-n接合、又は、コロイド量子ドット層とフラーレン層との間に形成されたp-n接合を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記p-n接合は、少なくとも1つのコロイド量子ドット材料を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムの電荷輸送特性は、拡散プロセスによって支配され、50nmより小さい空乏幅を組み込む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
[0001]本願は、2021年12月1日に出願された「Optical Depth Sensing Systems Using High Speed Colloidal Quantum Dot Photodetectors」と題する米国仮特許出願第63/284,846号の利益及び優先権を主張し、その内容は、その全体が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明概念は、一般に光検出器に関し、より詳細には、コロイド量子光検出器及びそれを含むシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]シーン内の及びシステムからの対象物の距離及び3次元構造を決定するために、能動光源及び光学検出器を利用する深度感知システムは、産業、科学、消費者、自動車及びセキュリティ市場での用途において有用である。これらのシステムを構築するための従来のアプローチの著しい欠点は、近赤外線(NIR)及び短波赤外線(SWIR)スペクトル領域において高速検出を行うことが可能な拡張可能な検出器構造の欠如である。NIR及びSWIRスペクトル帯域において今日一般的に使用される光検出器は、典型的に、シリコン(Si)ベースの光検出器、ゲルマニウム(Ge)ベースの光検出器、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)光検出器、テルル化カドミウム水銀(HgCdTe)検出器、及びアンチモン化インジウム(InSb)検出器で構成される。これらの材料系は全て、一般に、例えば、材料系の雑音性能、コスト構造若しくは製造可能性、スペクトル応答範囲、又はこれらの何らかの組合せにおける欠点に悩まされる。したがって、改善されたシステムが望まれる。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明概念のいくつかの実施形態は、能動照明源と、コロイド量子ドット光検出器と、を含む光学的深さ感知システムを提供する。コロイド量子ドット光検出器は、光感知素子としてコロイド量子ドットを有し、システムは、5.0nsより短い立ち上がり時間と、10.0nsより短い立ち下がり時間と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】[0005]図1は、コロイド量子ドット光検出器応答時間測定において使用されるシステムを例示するブロック図である。
図2】[0006]図2は、本発明概念のいくつかの実施形態による、図1に示されるパルスレーザ源で照射されながら、InGaAsフォトダイオード基準検出器及びコロイド量子ドットフォトダイオードの出力を測定しているときのオシロスコープ表示装置の例となるスクリーンショットである。
図3】[0007]図3は、本発明概念のいくつかの実施形態による、追加の測定統計と共に、平均立ち上がり/立ち下がり時間を報告する、図1のオシロスコープによって記録された測定データを例示する表である。
図4A】[0008]図4Aは、本発明概念のいくつかの実施形態によるコロイド量子ドット検出器光学的深さ測定システムの実証のために使用される例となるセットアップを例示する図である。
図4B図4Bは、本発明概念のいくつかの実施形態によるコロイド量子ドット検出器光学的深さ測定システムの実証のために使用される例となるセットアップを例示する図である。
図5A】[0009]図5Aは、本発明概念のいくつかの実施形態による、位置1(図5A)におけるコロイド量子ドット及び基準検出器の電気出力について撮られたオシロスコープのスクリーンショットである。
図5B図5Bは、本発明概念のいくつかの実施形態による、位置2(図5B)におけるコロイド量子ドット及び基準検出器の電気出力について撮られたオシロスコープのスクリーンショットである。
図6】[0010]図6は、本発明概念のいくつかの実施形態による、コロイド量子ドットセンサスタックを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0011]本発明概念は、本発明概念の実施形態が示される添付の図面を参照して、以下でより完全に説明される。しかしながら、この発明概念は、多くの代替形態で具現化され得、本明細書に記載の実施形態に限定されるように解釈されるべきではない。
【0007】
[0012]したがって、本発明概念は、様々な修正及び代替形態を受け入れる余地がある一方で、その特定の実施形態が、図面において例として示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本発明概念を開示される特定の形態に限定する意図はなく、それどころか、本発明概念は、特許請求の範囲によって定義されるような本発明概念の趣旨及び範囲内に含まれる全ての修正、均等物、及び代替物を網羅するものであることを理解されたい。図の説明の全体を通して、同様の番号は同様の要素を指す。
【0008】
[0013]本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明概念を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別段に明示されていない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、及び/又は「含んでいる(including)」という用語は、記載される特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を除外するものではないことが更に理解されよう。さらに、ある要素が別の要素に「応答」又は「接続」するものとして言及されているとき、それは、この別の要素に直接的に応答若しくは接続し得るか、又は介在する要素が存在し得る。対照的に、ある要素が別の要素に「直接応答」又は「直接接続」するものとして言及されているとき、介在する要素は存在しない。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のあらゆる組合せを含み、「/」と略すこともある。
【0009】
[0014]別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明概念が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。さらに、本明細書で使用される用語は、本明細書及び関連する技術分野の文脈における用語の意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書で明確にそのように定義されていない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されるべきでないことが理解されよう。
【0010】
[0015]第1、第2、等の用語が、様々な要素を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素と別の要素とを区別するためだけに使用される。例えば、本開示の教示から逸脱することなしに、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。図面のうちのいくつかは、通信の主な方向を示すために通信経路上に矢印を含むが、通信は、図示された矢印と反対方向にも行われ得ることを理解されたい。
【0011】
[0016]本明細書で使用される場合、「光電子デバイス」という用語は、概して、光-電気トランスデューサ又は電気-光トランスデューサとして機能する任意のデバイスを指す。したがって、「光電子デバイス」という用語は、例えば、光起電(PV)デバイス(例えば、太陽電池)、光検出器、熱ボルタ電池(thermovoltaic cell)、又は発光ダイオード(LED)及びレーザダイオード(LD)等のエレクトロルミネセント(EL)デバイスを指し得る。一般的な意味において、ELデバイスは、PV及び光検出器デバイスとは逆に動作する。電子及び正孔が、印加バイアス電圧の影響を受けてそれぞれの電極から半導体領域に注入される。半導体層のうちの1つは、光吸収特性ではなく、その発光特性のために選択される。注入された電子と正孔との放射再結合が、この層において発光を生じさせる。PV及び光検出器デバイスに用いられる同じタイプの材料の多くが、同様にELデバイスに用いられ得るが、ELデバイスの異なる目標を達成するように、層の厚さ及び他のパラメータを適合させなければならない。
【0012】
[0017]本明細書で使用される場合、「量子ドット」又は「QD」という用語は、励起子が3つの空間次元全てにおいて閉じ込められている半導体ナノ結晶材料を指し、量子細線(2次元のみでの量子閉じ込め)、量子井戸(1次元のみでの量子閉じ込め)、及びバルク半導体(非閉じ込め)とは区別される。また、量子ドットの多くの光学的、電気的、及び化学的特性は、量子ドットのサイズに強く依存し得、したがって、そのような特性は、量子ドットのサイズを制御することによって修正又は調整され得る。量子ドットは、一般に、粒子として特徴付けられ得、量子ドットの形状は、回転楕円体、楕円体、又は他の形状であり得る。量子ドットの「サイズ」は、その形状又はその形状の近似の寸法特性を指し得、したがって、直径、長軸、優勢な長さ(predominant length)、等であり得る。量子ドットのサイズは、ナノメートルのオーダであり、即ち、一般に、1.0~1000nmの範囲であるが、より典型的には、1.0~100nm、1.0~20nm、又は1~10nmの範囲である。複数の量子ドット又はその集合体において、量子ドットは、平均サイズを有するものとして特徴付けられ得る。複数の量子ドットのサイズ分布は、単分散であってもなくてもよい。量子ドットは、コア-シェル構成を有し得、コア及び周囲のシェルは、異なる組成を有し得る。量子ドットはまた、その外表面に結合された配位子を含み得るか、又は特定の目的のために他の化学部分で官能化され得る。
【0013】
[0018]本開示の目的のために、電磁放射のスペクトル範囲又は帯域は、隣接するスペクトル範囲又は帯域がある程度互いに重なり合うと考えられ得るという理解の下で、一般に以下のように解釈される:紫外線(UV)放射は、約10~400nmの範囲内に入ると考えられ得るが、実際の用途(真空上)では、範囲は約200~400nmである。可視光放射は、約380~760nmの範囲内に入ると考えられ得る。赤外線(IR)放射は、約750~100,000nmの範囲内に入ると考えられ得る。IR放射はまた、サブ範囲に関しても考慮され得、その例は以下の通りである。短波赤外線(SWIR)放射は、約1,000~3,000nmの範囲内に入ると考えられ得る。中波赤外線(MWIR)放射は、約3,000~5,000nmの範囲内に入ると考えられ得る。長距離赤外線(LWIR)放射は、約8,000~12,000nmの範囲内に入ると考えられ得る。
【0014】
[0019]以下で説明されるように、量子ドットフォトダイオード(QDP)技術が、低コストのナノテクノロジー対応光検出器を提供するために実装される。いくつかの実装形態では、光検出器は、約250~2400nmの範囲のスペクトル領域にわたる感度で光を効率的に検出するように構成され得る。したがって、QD光検出器は、入射紫外線(UV)、可視、及び/又は赤外線(IR)電磁放射から画像を生成することが可能なマルチスペクトルデバイスとして構成され得る。いくつかの実装形態では、感度のスペクトル範囲は、最小でX線エネルギーまで、及び/又は、最大で2400nmより長いIR波長まで及び得る。本明細書で教示される光検出器は、コスト効率が高く、大面積アレイに拡張可能であり、可撓性基板に適用可能である。
【0015】
[0020]本明細書で使用される場合、「暗電流」は、入射照明がないときに光電デバイスを流れる残留電流を指す。物理学及び電子工学において、暗電流は、光電子増倍管、フォトダイオード、又は電荷結合素子等の感光デバイスに光子が入ってこないときでもデバイスを流れる比較的小さい電流である。暗電流は、一般に、外部放射が検出器に入ってこないときに、検出器において生成される電荷で構成される。これは、非光学デバイスにおける逆バイアス漏れ電流と呼ばれ得、全てのダイオードにおいて存在する。物理的には、オンソース暗電流は、デバイスの空乏領域内の電子及び正孔のランダムな生成によるものである。
【0016】
[0021]本明細書で使用される場合、「フラーレン」という用語は、バックミンスターフラーレンC、並びに、C70、C84等の他の形態の分子炭素及び類似のケージ状炭素構造を指し、より一般的には、20個から数百個の炭素原子に及び、即ち、nが20以上であるCであり得る。フラーレンは、例えば、溶解性又は分散性を改善すること、又はフラーレンの電気的特性を修飾すること等の特定の目的のために、所望に応じて官能化又は化学修飾され得る。「フラーレン」という用語はまた、非炭素原子又は原子クラスターが炭素ケージに封入されている内包フラーレンも指し得る。「フラーレン」という用語はまた、フラーレン誘導体も指し得るフラーレン誘導体のいくつかの非限定的な例には、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(butyric acid methyl ester)(PCBM)及びフェニル-C61-酪酸コレステリルエステル(butyric acid cholestryl ester)(PCBCR)がある。「フラーレン」という用語はまた、前述の形態のフラーレンの混合物も指し得る。
【0017】
[0022]本明細書で使用される場合、「p-n接合」は、半導体内部の2つの半導体材料タイプ、即ち、p型とn型との間の界面又は境界を指す。p型半導体では、多数担体は正孔であり、少数担体は電子である。n型半導体では、電子が多数担体であり、正孔が少数担体である。ホウ素、インジウム、又はガリウムのような三価原子のいずれかでドープされたゲルマニウム又はシリコンのような半導体は、p型半導体であり得る。リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、及び同様のものは、n型半導体を製造するために使用される。
【0018】
[0023]上述したように、シーン内の及びシステムからの対象物の距離及び3次元構造を決定するために、能動光源及び光学検出器を利用する深度感知システムは、産業、科学、消費者、自動車及びセキュリティ市場での用途において有用である。これらのシステムを構築するための従来のアプローチの著しい欠点は、近赤外線(NIR)及び短波赤外線(SWIR)スペクトル領域において高速検出を行うことが可能な拡張可能な検出器構造の欠如である。NIR及びSWIRスペクトル帯域において今日一般的に使用される光検出器は、典型的に、シリコン(Si)ベースの光検出器、ゲルマニウム(Ge)ベースの光検出器、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)光検出器、テルル化カドミウム水銀(HgCdTe)検出器、及びアンチモン化インジウム(InSb)検出器で構成される。これらの材料系は全て、一般に、例えば、材料系の雑音性能、コスト構造若しくは製造可能性、スペクトル応答範囲、又はこれらの何らかの組合せにおける欠点に悩まされる。
【0019】
[0024]したがって、本発明概念のいくつかの実施形態は、1つ又は複数の光感知素子としてのコロイド量子ドットに基づく高速光検出器を含む光学的深さ感知システムを提供する。本明細書の実施形態による深度感知システムは、NIR又はSWIRスペクトル領域において光子を生成するために、レーザ又は発光ダイオード(LED)等の能動光子源を利用する。
【0020】
[0025]コロイド量子ドット材料を使用して他の検出器構造が構築されてきたが、これらの検出器のいずれも、正確な飛行時間(ToF)深度感知に必要な帯域幅及び応答時間を実証していない。さらに、利用可能な検出器構造のいずれも、直接モードの飛行時間測定を使用する光学的深さ感知システムの時間の実証において使用されていない。
【0021】
[0026]本明細書で説明されるように、コロイド量子ドット光検出器構造は、能動照明源と組み合わされて、光学的深さ感知システムを生成する。能動照明源は、例えば、レーザ又はLEDであり得る。システムは、コロイド量子ドット高速検出器によって検出される能動光源の測定された戻り反射に基づいて距離を測定する。システムは、いくつかの構成で動作され得る。例となる構成を以下に説明する。
【0022】
[0027]第1の例として、システムは、反射された光パルスの振幅、時間、周波数、及び関連する特性の正確な検出及び測定を利用する直接飛行時間構成で動作され得る。本明細書で使用される場合、飛行時間(ToF)は、光パルスが光源から対象物まで進み、光源と同じ場所に配置された光検出器まで戻るのにかかる往復時間の測定値を指す。次いで、この時間情報は、ToFシステムからの対象物の距離を決定するために、光速と併用され得る。
【0023】
[0028]第2の例として、システムは、放出された光信号の位相と比較したときの、反射された光信号の位相シフトの測定及び検出に依拠する間接飛行時間構成で動作され得る。
【0024】
[0029]さらに、システムは、放出された光信号の周波数と比較した、反射された光信号の周波数シフトの測定及び検出を使用して動作され得る。
【0025】
[0030]最後に、システムは、構造化光深度感知システムとして一般に知られているものにおけるレーザドットのグリッド等の放出された光学パターンのアレイの測定及び検出に基づいて動作され得る。本発明概念の実施形態は、これらの例に限定されないことが理解されよう。
【0026】
[0031]上述された全ての構成において、これらの深度/距離測定システムは、本発明概念のいくつかの実施形態による、高速コロイド量子ドット光検出器を使用するシステムを構築する際に見出された利点から利益を享受し得る。
【0027】
[0032]本明細書で説明されるコロイド量子ドットフォトダイオード構造は、産業システム、消費者システム、及び自動車システムにおける光学的深さ感知ソリューションに一般に必要とされる、十分な帯域幅、応答時間、熱動作限界、製造可能性、及びコスト拡張性を提供することが可能である。
【0028】
[0033]本明細書で説明されるコロイド量子ドットフォトダイオード構造は、以前の研究に対してその技術的及び商業的利点をもたらす明確な特性を有する。例えば、これらの特性は、拡散支配的な電荷輸送特性で動作するp-nフォトダイオード構造の設計及び製作を含む。例えば、このフォトダイオード構造は、長さが50nm~250nmの拡散輸送領域と共に、例えば、50nmより小さい厚さの、小さい空乏領域を有するように設計及び構築され得る。
【0029】
[0034]さらに、このフォトダイオード構造は、低いバイアス電圧、例えば、0mV~1000mVの印加バイアスで動作され得る。この低い動作バイアスは、コロイド量子ドット光検出器を構築するための他のアプローチと比較して、優れた時間的応答及び暗雑音(dark noise)性能をもたらす。具体的には、システムは、5.0nsより短い立ち上がり時間と、10.0nsより短い立ち下がり時間と、を示す。本明細書で使用される場合、「立ち上がり時間」は、信号がそのフルスケール値の10%から90%まで立ち上がるのに要する時間の長さを指す。同様に、本明細書で使用される場合、「立ち下がり時間」は、信号がそのフルスケール値の90%から10%まで立ち下がるのに要する時間の長さを指す。
【0030】
[0035]本明細書で説明されるコロイド量子ドットフォトダイオードの暗電流特性もまた、従来のデバイスよりも優れている。暗電流がシステムに存在する背景ノイズの量に強く寄与するので、低い暗電流は、光学的深さ感知システムにとって有利である。その結果、暗電流は、感知システムの設計及び性能に強く影響を及ぼす。例えば、検出器の暗電流は、検出器の暗雑音を克服するのに十分な光パワーを生成するために、システムにおける光源に要件を課し得る。ここで実証されたコロイド量子ドットフォトダイオードは、25℃で50nA/cmより小さい暗電流を有する。これらの暗電流は、検出器が光検出動作中に動作されるのと同じ印加バイアス電圧において測定される。換言すれば、光検出動作中の外部印加バイアス電圧は、暗信号測定中に用いられる外部印加バイアス電圧と同じ値である。
【0031】
[0036]いくつかの実施形態では、コロイド量子ドット高速フォトダイオード検出器構造は、光起電接合(photovoltaic junction)として設計され、ここで、外部回路への光生成電荷担体の抽出は、バイアス電圧の印加を必要としない。これは、内部で生成された電界及び電荷担体拡散勾配が、光生成電荷の抽出に十分であることによる。このコロイド量子ドットベースの光起電p-n接合は、他のタイプのコロイド量子ドット光検出器で典型的に見られる非常に長い時間の信号の過渡状態(signal transients)、即ち、信号減衰時間を回避するという利点を有する。これは、この深度感知システムにおいて測定される極めて高速な光応答時間への主な寄与要因のうちの1つである。
【0032】
[0037]次に図1を参照すると、光学的深さ感知システムにおいてコロイド量子ドット光検出器を使用するシステムを例示するブロック図である。図1に例示されるように、システムは、能動照明源105と、基準検出器115と、コロイド量子ドットを含む高速光検出器120と、オシロスコープ125と、を含む。能動照明源105は、例えば、レーザ又はLEDであり得る。図1では、能動照明源は、Nd:ネオジムドープ(Neodymium doped)イットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Yttrium Aluminum Garnet)パルスレーザである。例示されるように、Nd:YAGレーザは、レーザ出力110を生成し、例えば、Nd:YAGレーザは、空気中を通って進み、コロイド量子ドットフォトダイオード検出器120と、図1に図示される実施形態において基準検出器115として使用されるInGaAsフォトダイオードと、を照射する一連のレーザパルスを放出する。例示される実施形態では、Nd:YAGレーザ105は、3.0~5.0nsの半値全幅パルス幅を有し、5Hzの繰り返し率及び1064nmの波長で動作するように構成されている。コロイド量子ドットフォトダイオードは、0.2mm×0.2mmの正方形の検出器であり、その電気出力は、図示されるように、オシロスコープ125、例えばAgilent品番MSO8104Aに接続されている。InGaAs基準フォトダイオード115は、0.15mm直径の検出器、例えば、Thorlabs品番FGA015であり、その電気出力もまた、図示されるように、オシロスコープ125に接続されており、オシロスコープ測定のためのトリガ源として使用される。
【0033】
[0038]コロイド量子ドットフォトダイオード120は、SWIR Visions systemsのフォトダイオード、例えば、200μm×200μmであり得るが、これに限定されない。さらに、デバイス間のコネクタは、本発明概念の範囲から逸脱することなく、同軸ケーブルであり得る。
【0034】
[0039]図1のシステム100は、本発明概念のいくつかの実施形態によるコロイド量子ドット検出器ベースの光学的深さセンサシステムの機能性を実証するために提供される。示されるように、レーザパルス110の立ち上がり及び立ち下がり時間特性を測定するために、コロイド量子ドットフォトダイオード120を使用した。次に、図1のシステムから収集されたデータを、図2及び図3に関して説明する。
【0035】
[0040]特に、図2は、本明細書で説明される実施形態による、InGaAsフォトダイオード基準検出器及びコロイド量子ドットフォトダイオードの出力を例示するオシロスコープ表示装置のスクリーンショットである。この測定中、オシロスコープは、基準検出器及びコロイド量子ドット検出器について、10%~90%の立ち上がり時間及び90%~10%の立ち下がり時間を測定するように構成された。追加の測定統計値と共に、平均立ち上がり/立ち下がり時間を図3に例示する。この測定データは、オシロスコープによって報告された。コロイド量子ドット検出器は、1.01nsの平均立ち上がり時間及び2.79nsの平均立ち下がり時間であったことを示している。立ち上がり時間と立ち下がり時間との両方が、InGaAs基準検出器を使用して測定されたものよりも短かった。コロイド量子ドット検出器を使用した5nsより短い立ち上がり時間及び立ち下がり時間の測定は、本発明概念の実施形態が深度感知システムに必要とされる時間応答特性を有していることを例示する。
【0036】
[0041]本発明概念のいくつかの実施形態によるコロイド量子ドット検出器光学的深さ測定システムの実証を行うために、例となるシステムが、図4A及び図4Bに例示されている。例示されるように、システムは、能動照明源405、例えば、レーザ又はLEDと、基準検出器415と、コロイド量子ドット検出器420と、を含む。このシステムは、一片の白色プラスチック430を照射するために使用される。この2部測定では、この一片の白色不透明プラスチック430を照射するために、レーザパルス(図4A中の送信されたレーザパルス)を使用した。次いで、レーザパルスは、プラスチック430から反射され(図4A中の反射されたレーザパルス)、反射光は、基準検出器415とコロイド量子ドット検出器420との両方によって検出される。両方の検出器415及び420の電気出力を、オシロスコープ(図示せず-図1の125を参照)によって測定した。この測定に使用された検出器415及び420並びにオシロスコープ125は、図1に関して説明されたものと同様であった。
【0037】
[0042]図4Aに例示されるように、測定の第1部では、基準検出器415及びコロイド量子ドット検出器420は、反射性白色プラスチック表面420から同じ距離の同じ場所に配置されていた。図4Bに例示されるように、この測定の第2部では、コロイド量子ドット検出器420を、基準検出器位置415から28cm離れたところに移動した。これは、光パルス(反射されたレーザパルス)がコロイド量子ドット検出器420によって検出される前に進むべき28cmの経路長差をもたらした。
【0038】
[0043]図5A及び図5Bは、位置1(図4A)及び位置2(図4B)におけるコロイド量子ドット及び基準検出器の電気出力について撮られたスクリーンショットである。位置1(図4A)では、これら検出器は同じ場所に配置されている。位置2では、これら検出器は28cm離れている。2つの検出器出力の立ち上がりエッジでの50%信号レベル間の時間差を、両方の検出器位置についてオシロスコープを使用して測定した。2つの測定間の到達時間差の変化は、0.94nsであった。パルス到達時間におけるこの0.94nsのシフトは、2つの測定間で、光パルスが自由空間を通って進まなければならない距離が28cm増大したために生じた。
【0039】
[0044]以下の式は、図5A及び図5Bで測定されたパルス到達時間の0.94nsの変化から生じる光路長の変化を推定するための計算を表す:
d=ct 式(1)
ここで、dは、距離の変化であり、cは、光速であり、tは、時間の変化である。値を入れると:
d=2.997E8m/s*0.94E-9s
d=0.282m
d=28.2cm
したがって、空気中の光の速度を使用すると、0.94nsでは、光パルスは、28.2cm進むと予期されることを計算できる。これは、28cmの光路長の測定された変化に良好に一致する。したがって、これらの測定値は、コロイド量子ドット検出器を有する光学的深さ感知システムが、飛行時間3次元(3D)深度感知において距離を測定するために実装され得ることを例示する。
【0040】
[0045]次に図6を参照すると、本発明概念のいくつかの実施形態に従って使用され得る、例となるコロイド量子ドットセンサスタックが説明される。コロイド量子ドットセンサスタック600は、金属画素電子機器650を有するシリコン読み出し集積回路640を含む。コロイド量子ドットフォトダイオード660は、電子機器650上に設けられており、封止材670がフォトダイオード660上に設けられている例となる構造は、同一出願人による米国特許出願公開第2021/0288195号及び第2022/0231244号に提供されており、これらの内容は、それらの全体が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。コロイド量子ドット光検出器は、本発明概念の範囲から逸脱することなく、任意のコロイド量子ドット光検出器であり得る。
【0041】
[0046]したがって、本発明概念のいくつかの実施形態は、深度感知のために構築された光検出器構造を提供し、この光検出器構造は、コロイド量子ドット光吸収体を使用して製作され;能動冷却なしで動作し;10nsより短い10%~90%の立ち上がり/立ち下がり時間を示し;100MHzより大きい帯域幅(BW)を有し;波長が900nm~2500nmの範囲にある光に応答して動作し;走査若しくは回転又は他の機械的動作を必要とせずに、高フレームレート、高解像度感知、及び固体システムを可能にするために、検出器の単一要素、線形アレイ、又は2次元アレイであり得;2つの隣接するコロイド量子ドット層の間に形成されたp-n接合、又は、コロイド量子ドット層とフラーレン層との間に形成されたp-n接合を使用して製作され;少なくとも1つのコロイド量子ドット材料を使用して形成されたp-n接合を使用して製作され、ここで、電荷輸送特性は、拡散プロセスによって支配され、50nmより小さい空乏幅を組み込む。
【0042】
[0047]上で簡単に説明したように、本発明概念のいくつかの実施形態は、光学的深さ感知、測距、ジェスチャ認識、顔マッピング、LIDAR、及び/又は他の3次元(3D)深度感知システムのためのフォトセンシング素子として使用され得る高速コロイド量子ドットフォトダイオード構造を提供する。
【0043】
[0048]図面及び明細書では、本発明概念の例示的な実施形態が開示されている。しかしながら、本発明概念の原理から実質的に逸脱することなく、これらの実施形態に対して多くの変形及び修正が行われ得る。したがって、特定の用語が使用されるが、それらは一般的及び記述的な意味でのみ使用されており、限定を目的としておらず、本発明概念の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】