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特表2024-546245ポリエステル/天然繊維混紡布のワンステップ染色プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ポリエステル/天然繊維混紡布のワンステップ染色プロセス
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/00 20060101AFI20241212BHJP
   D06P 3/52 20060101ALI20241212BHJP
   D06P 3/54 20060101ALI20241212BHJP
   D06P 3/82 20060101ALI20241212BHJP
   D06P 3/66 20060101ALI20241212BHJP
   D06P 3/60 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
D06P5/00 103
D06P3/52 D
D06P3/54 Z
D06P3/82 E
D06P3/66 Z
D06P3/60 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534044
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 US2022052613
(87)【国際公開番号】W WO2023114156
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】202141058647
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ニカム、サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーサル、シッダールタ
(72)【発明者】
【氏名】バルン、アミット
【テーマコード(参考)】
4H157
【Fターム(参考)】
4H157AA02
4H157BA07
4H157BA08
4H157CA03
4H157CB08
4H157CB16
4H157CB18
4H157CB34
4H157CB45
4H157CB46
4H157CB48
4H157CC01
4H157CC03
4H157DA01
4H157DA17
4H157DA24
4H157DA30
4H157DA34
4H157GA07
4H157GA21
4H157GA26
4H157HA01
4H157HA03
4H157JA10
4H157JB02
4H157JB03
(57)【要約】
本発明は、方法を提供し、ポリエステル/天然繊維ブレンドをオールインワンステップ染色プロセスで染色するための新規プロセスを提供する。このオールインワンステップ染色プロセスは、1つ以上の合成カチオン化剤を使用する布の前処理によって可能になる。次いで、オールインワン染色は、分散染料及び反応性染料の組み合わせを使用して、より低い温度及び中性pHで行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維及び天然繊維を含む布を染色するための方法であって、
a.前記布を、アルカリ金属水酸化物と、カチオン化剤であって、前記アルカリ金属水酸化物の存在下で2つのエポキシド基を生成することができるハロゲン化化合物、又はモノ若しくはジ四級化カチオン化剤のいずれかを含む、カチオン化剤と、を含む水溶液で前処理するステップと、
b.前記前処理された布を、80~100℃の範囲の温度の反応性及び分散染料を含む水浴であって、pHが6~7である水浴中に、30分~60分の時間にわたって浸漬するステップと
c.前記染色された布を、30℃~40℃の温度の[低温]水で少なくとも20分間洗浄するステップと
d.ステップc.から得られた前記染色された布を、50~70℃の温度の水で少なくとも10分間洗浄するステップと、
e.ステップd.から得られた前記染色された布を、70℃~90℃の範囲の温度の1リットル当たり0.5~2グラムの石鹸、1リットル当たり1~3グラムの50%過酸化水素、及び1リットル当たり1~3グラムの水酸化ナトリウムを含む水溶液で少なくとも10分間洗浄するステップと、
f.ステップe.から得られた前記染色された布を、50℃~70℃の温度の水で少なくとも10分間洗浄するステップと、
g.ステップf.から得られた前記染色された布を、4~6の範囲のpH及び30℃~40℃の範囲の温度の水溶液で少なくとも10分間洗浄するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
カチオン化された、ポリエステル繊維及び天然繊維を含む布を染色するための方法であって、
a.前記カチオン化された布を、80℃~100℃の範囲の温度の反応性染料及び分散染料を含む水浴であって、pHが6~7である水浴中に、30分~60分の時間にわたって浸漬するステップと、
b.前記染色された布を、30℃~40℃の温度の水で少なくとも20分間洗浄するステップと、
c.ステップb.から得られた前記染色された布を、50~70℃の範囲の温度の水で少なくとも10分間洗浄するステップと、
d.ステップc.から得られた前記染色された布を、70℃~90℃の範囲の温度の1リットル当たり0.5~2グラムの石鹸、1リットル当たり1~3グラムの50%過酸化水素、及び1リットル当たり1~3グラムの水酸化ナトリウムを含む水溶液で少なくとも10分間洗浄するステップと、
e.ステップd.から得られた前記染色された布を、50℃~70℃の範囲の温度の水で少なくとも10分間洗浄するステップと、
f.ステップe.から得られた前記染色された布を、4~6の範囲のpH及び30℃~40℃の範囲の温度の水溶液で少なくとも10分間洗浄するステップと、を含む、方法。
【請求項3】
水溶液での前記布の前記カチオン化が、前記布を、アルカリ金属水酸化物と、カチオン化剤であって、前記アルカリ金属水酸化物の存在下で2つのエポキシド基を生成することができるハロゲン化化合物、又はモノ若しくはジ四級化カチオン化剤のいずれかを含む、カチオン化剤と、を含む溶液と接触させることによって達成された、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa.及びf.における前記pHが、酢酸及び/又はリン酸(グリーン酸)の使用によって維持される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップd.で使用される前記石鹸が、アニオン性湿潤剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記アニオン性湿潤剤が、スルホネート、カルボキシレート、サルフェート、ホスフェート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリエステル繊維及び天然繊維(例えば、綿系)を含有する布の染色のための改善された方法であって、染色が単一のステップで行われる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テキスタイル染色は、布、糸及び繊維などのテキスタイル材料に顔料又は染料を適用するプロセスである。望ましくは、染色プロセスは、効率的かつ迅速であり、所望の程度の着色、並びに染料の退色及び色落ちに対する耐性(染色堅牢度)を有する染色されたテキスタイルを提供する。更に、染色プロセス及びそこで使用される材料は、好ましくは、その柔軟性、耐久性及び柔らかさ、滑らかさ、剛性のような触覚特性などの、テキスタイルの側面に悪影響を与えない。テキスタイルの材料(例えば、天然、合成又はそれらの混合物)及び所望の着色に応じて、様々な染料の種類が使用される。
【0003】
天然繊維とのポリエステルブレンド、特にポリエステル/綿ブレンドは、テキスタイル産業において重要であり、ポリエステル/綿ブレンドは、テキスタイル産業における全ての種類のブレンドの製造の約60%を占める。そのようなブレンドは、典型的には、ブレンド中の異なる繊維の性質のために、分散染料及び反応性染料の両方の使用を必要とする。
【0004】
分散/反応性染料とのブレンドのための従来の吸尽染色プロセスは、2種類、1.)ブレンド中の2つの繊維が、2つの独立した染浴中で異なる染料で別々に染色される、2浴法、及び2.)染料が、単一浴中で混合されるが、染色プロセスが、各繊維について別々のステップに分割される、1浴2ステップ法のものである。
【0005】
2浴法では、ポリエステル部分がまず第1の浴中で分散染料を用いて染色され、次いで浴が排水される。次いで、布は、還元洗浄処理が施され、還元剤を用いて洗浄されて、布表面から未固定分散染料が除去される。次いで、次の浴では、綿部分が、塩及びソーダと一緒に反応性染料を用いて染色される。次いで、第2の浴が排水され、次いで、加水分解された反応性染料が洗浄及びソーピングによって除去される。したがって、これらの2つの浴は、互いに独立している。2浴プロセスは、純粋なポリエステル及び純粋な綿染色のものと同様である。
【0006】
1浴2ステップ法では、分散染料及び反応性染料が一緒に染浴に最初に添加される。この方法は、混紡布中のポリエステル部分及び綿部分の両方を染色するために単一浴を使用するが、2つの別個のステップを使用する。第1のステップでは、ポリエステル繊維が、比較的高い温度及び低いpHを用いて染色される。第2のステップでは、反応性染料が、比較的低い温度及び高いpHを用いて天然繊維に固定される。したがって、ステップ1からの高温・低pHから、第2のステップにおいて必要とされる低温・高pHへのシフトがある。この変化は、高温であるが、より低いpHでのポリエステル上への適切な分散染色、続いて第2のステップのための温度の低下を容易にするために必要である。典型的には、綿部分上への反応性染料の固定を容易にするためにアルカリが添加される。
【0007】
従来の2浴染色法は、最長9~10時間になり得る長い染色時間を必要とし、そのうち約2時間は、洗浄及びソーピングに充てられる。より長い染色サイクルはまた、製造コストを押し上げる。また、ポリエステル染色ステップ後に行われる還元洗浄プロセスで使用される化学物質は、環境に悪影響を及ぼす。
【0008】
1浴2ステップ染色法は、より短い時間で完了することができるが、他の課題がある。反応性染料及び分散染料の両方が1つの浴中に同時に存在するので、各染料は、他の染料の異なる染色条件に耐えることができなければならない。反応性染料は、より高温の酸性浴に耐えなければならず、分散染料は、アルカリ性及び高電解質条件に対して安定性を有さなければならない。更に、互いに反応しないか又は交差染色しない分散染料及び反応性染料を選択することが不可欠である。
【0009】
したがって、ポリエステル/天然繊維ブレンドを含む布又はテキスタイルを染色するための改善された方法が望まれている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、方法を提供し、ポリエステル/天然繊維ブレンドをオールインワンステップ染色プロセスで染色するための新規プロセスを提供する。このオールインワンステップ染色プロセスは、1つ以上の合成カチオン化剤を使用する布の前処理によって可能になる。次いで、オールインワン染色は、分散染料及び反応性染料の組み合わせを使用して、より低い温度及び中性pHで行うことができる。プロセスは、一般に、まずカチオン化布を、反応性染料及び分散染料を含む水浴であって、pHが6~7である水浴中に、80~100℃の範囲の温度で30分~60分の時間にわたって浸漬することを含む。次いで、染色された布は、30~40℃の温度の水で少なくとも20分間洗浄し、次いで50~70℃の範囲の温度の水で少なくとも10分間更に洗浄する。このステップ後、布は、70~90℃の範囲の温度の、1リットル当たり0.5~2グラムの石鹸、1リットル当たり1~3グラムの50%過酸化水素、及び1リットル当たり1~3グラムの水酸化ナトリウムを含む水溶液で、少なくとも10分間洗浄される。次に、布は、50~70℃の範囲の温度の水で少なくとも10分間洗浄され、次いで最後に30~40℃の範囲の温度の酸性水溶液で少なくとも10分間洗浄される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に記載される本発明の実施形態は、網羅的であること又は本発明を以下の詳細な説明に開示される正確な形態に限定することを意図するものではない。むしろ、実施形態は、当業者が本発明の原理及び実践を認識及び理解することができるように選択及び説明される。
【0012】
本明細書中で言及される全ての刊行物及び特許は、関連する法律の下で認められる完全な範囲で、本明細書において参照によって組み込まれる。本明細書に開示される刊行物及び特許は、それらの開示のみ提供される。本明細書のいかなるものも、本発明者らが、本明細書に引用される任意の刊行物及び/又は特許を含む、任意の刊行物及び/又は特許に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0013】
本開示又は添付の特許請求の範囲の任意の数値に先行して使用される「約」という用語は、その記載された数値においていくらかのわずかな不正確さを可能にし、この不正確さは、当該技術分野で理解され得るか、又はそのような数値を得るための測定方法(例えば、化学的又は物理的測定値など)からもたらされ得、本開示又は添付の特許請求の範囲の「約」という用語が先行していない任意の数値もまた同様に理解され得る。
【0014】
「含む(comprising)」又は「含む(including)」として記載される本開示の方法及び組成物は、それぞれ、列挙されるステップ及び化合物を含み得、任意選択で、他のステップ及び構成成分を含み得る。本開示の方法又は組成物が「からなる」と記載されている場合、それらの方法又は組成物は、列挙されたステップ又は化合物を有するが、列挙されていないステップ又は化合物を含まない。「から本質的になる」という用語は、一般に、列挙された化合物を含む組成物を指し、他の列挙されていない化合物を含み得るが、実質的ではない量であり得る。例えば、そのような組成物は、1つ以上の他の列挙されていない構成成分を含むことができるが、全組成物の約1%(重量)超、約0.5%(重量)超又は約0.1%(重量)超の量ではない。列挙される構成成分「からなる」組成物では、列挙された構成成分以外の他の測定可能な量の構成成分が存在しないか、又はある特定のステップ「からなる」方法は、列挙されたもの以外のステップを含まない。
【0015】
本発明の目的のために、「テキスタイル」は、糸、布、及び衣類又はリネンなどの布又は糸から作製された物品を含むことが理解されるべきである。
【0016】
本開示は、ポリエステル繊維及び天然繊維、並びに特に綿繊維を含む布を染色する新たな方法を記載する。方法は、まず当該技術分野で一般的に知られているカチオン化処理に供された布での使用に適している。そのような処理の好ましい方法は、最近、特許出願国際公開第2021/158538号及び国際公開第2021/158540号に開示された。これらのカチオン化プロセスは、比較的短期間で実施することができ、プロセスは、低レベルの廃棄物を生成し、最小限のエネルギーを使用する。これらの参考文献に教示されている方法及びシステムは、テキスタイルを、水溶液(これは、「パディング」溶液とも呼ばれ得る)中で処理し、この水溶液は、アルカリ金属水酸化物と、カチオン化剤(例えば、アルカリ金属水酸化物の存在下で、それぞれ、1つ若しくは2つのエポキシド基を生成することができるモノ若しくはジ四級化窒素化合物、又はアルカリ金属水酸化物の存在下で2つのエポキシド基を生成することができるハロゲン化化合物)とを含む。好ましいカチオン化剤としては、DowからECOFAST(商標)の商品名で市販されているものなどの四級アンモニウムの水溶液が挙げられる。
【0017】
いくつかの実施形態では、パディング処理は、迅速に、例えば、1分以下の時間で、かつ周囲温度などの温度で行うことができ、それは水溶液の加熱を必要としない。いくつかの実施形態では、パディング後、過剰な溶液がテキスタイルから除去され、次いで、テキスタイルが加熱装置に導入されて、カチオン化剤のテキスタイルとの反応が引き起こされる。加熱処理はまた、ある程度迅速に、かつ定められた温度範囲で行われる。特に、テキスタイルは、1分~10分の範囲の一定期間にわたって90℃~110℃未満の温度で加熱される。いくつかの実施形態では、より具体的な温度及び時間範囲が使用され得る。
【0018】
有利には、コールドバッチパディングプロセスに特徴的な長いパディング及び反応時間(一定期間の時間など)を必要とせずに、良好なカチオン化が達成される。代わりに、本開示の処理温度及び時間は、加水分解による試薬の損失を最小限に抑えながら、テキスタイルの良好なカチオン化を提供することが発見されている。
【0019】
カチオン化は、テキスタイルを染料との会合に優れた状態とし、染色プロセスは、ひいては、テキスタイルの良好な着色を提供することができる。
【0020】
本発明の方法のステップは、当業者によって一般的に理解されるように、連続プロセス、半連続プロセス、バッチプロセス、又はそれらの組み合わせを使用して実施することができる。
【0021】
テキスタイルを処理するための1つの選択肢は、連続プロセスを使用することである。連続プロセスは、処理フローの停止を回避して物品を製造、処理又は生産するために使用されるフロー製品方法である。連続プロセスでは、処理又は製造中である物品は、移動している。テキスタイルの連続加工では、テキスタイルは、しばしば、2つ以上の処理領域(例えば、「処理ゾーン」)を通して移動されるシートの形態であり、シートは、移動されている間、各処理領域内の異なる化学的、機械的及び/又は物理的プロセスに供される。連続プロセスにおけるテキスタイルの移動は、連続プロセスにおいてテキスタイルの移動に接触し、容易にする、ローラを有するテキスタイルコンベヤなどのシステム装置によって容易にすることができる。連続プロセスは、本明細書に記載される本開示のシステムで実行することができる。
【0022】
実施形態では、本開示の方法の2つ以上のステップは、連続プロセスとして説明され得る。例えば、塩基及びカチオン化剤の溶液中でテキスタイルをパディングし、パディングされたテキスタイルから溶液の一部を機械的に除去し、次いで、テキスタイルを加熱処理するステップでは、テキスタイルは、処理ゾーンを通して連続的に移動され得、これは、移動中のテキスタイルの所定の処理を提供する。染色(例えば、洗浄、中和、及び/又は任意選択の染色)のプロセスにおける他のステップもまた、連続的、又は任意選択で非連続的として記載され得る。
【0023】
半連続プロセスは、フロー製品操業(連続)が停止され、次いで、一定期間後に再開されるものを含み得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法の2つ以上のステップは、半連続プロセスとして説明され得る。例えば、所望の処理条件に応じて、テキスタイルの移動を処理ゾーンで一定期間停止させ、次いで、再開して、テキスタイルを処理ゾーンから移動させることができる。本開示の方法は、半連続プロセスを使用することができ、テキスタイルの移動は、カチオン化剤のテキスタイルとの反応に好適な、本明細書に記載される一定期間及び温度で、加熱処理装置内で停止され、次いで、テキスタイルの移動は、加熱処理装置からテキスタイルを移動させるためにその期間の後に再開される。半連続プロセスは、本明細書に記載される本開示のシステムで実行することができる。
【0024】
任意選択で、実施形態では、本開示の方法における1つ以上のステップは、バッチプロセスで実行され得る。例えば、本開示の処理ステップの前に、又は本開示の処理ステップの後に、テキスタイルは、連続プロセスではなくバッチプロセスでの使用のために構成されるように変更され得る。テキスタイルを切断することによって、次いで、1つ以上のバッチ処理ステップで使用されるテキスタイル部分を提供することによって、変更が行われてもよい。バッチプロセスでは、システムは、テキスタイルが、一方の装置から、他では連続プロセスの装置と関連付けられた他方のものに自動的に移動されないように構成された装置を含むことができる。例えば、バッチ処理ステップのための装置を含むシステムでは、他の点ではテキスタイルを連続プロセスである装置から別の装置に移送するコンベヤ装置などのシステムの特徴は、バッチ処理に使用されるシステムの装置の少なくともいくつかに存在しない場合がある。
【0025】
本開示の実施形態では、カチオン化テキスタイルが提供され、次いで、本明細書に記載されるステップに従って処理される。「テキスタイル」という用語は、繊維のネットワークを含み、かつ織テキスタイル、編テキスタイル及び不織テキスタイルを含む、テキスタイル系物品の全ての形態を包含することを意図する可撓性材料を指す。テキスタイルは、シート(布)又は細いより糸(紡ぎ糸)の形態であり得る。テキスタイルは、繊維含有材料のより糸を織ること、編むこと、かぎ針編みすること、フェルト化すること又は組むことの1つ以上のプロセスを一緒に含む技術分野で既知の技術によって形成することができる。例示的なテキスタイル基材は、1メートル超の幅及び最大100メートル以上の長さを有し得るテキスタイルの連続シートを提供するテキスタイルロールの形態で提供され得る。
【0026】
本発明における使用のためにカチオン化されるテキスタイルは、天然繊維又はその誘導体を含む。テキスタイルの天然繊維は、綿、麻、苧麻、亜麻、黄麻、カポック、コイア、竹などの植物から得ることができる。植物生繊維を回転させて長いより糸を生成することができ、より糸は、織布の当該技術分野で既知であるように、織ること(より糸を織り交ぜる)、編むこと(紡ぎ糸を織り交ぜる)などによってテキスタイルに含まれ得る。不織布では、植物系繊維は、より糸又は紡ぎ糸に変換されないが、むしろ、不織布を生成するために互いに直接混ざり合っているか、又は他の繊維と直接混合される。
【0027】
テキスタイル材料中の天然繊維は、セルロース若しくはセルロース系材料又はキチン、又はそれらの組み合わせ、又はそれらの誘導体などの天然に存在する多糖類などの天然ポリマーを含み得る。改質されたセルロースを含み得るセルロース又はセルロース材料、並びにキチン及びそれらの誘導体は、カチオン化剤との反応を可能にする化学物質を有する。セルロースは、各サブユニットに3つのヒドロキシル基を示す繰り返しグルコピラノースサブユニットからなる。キトサンは、各サブユニットに2つのヒドロキシル基及び1つのアミン基を示す繰り返しグリコサミンサブユニットからなる。これらの多糖類のヒドロキシル基は、水酸化物活性化カチオン化剤と反応性である。
【0028】
セルロース材料はまた、木材パルプから生成されるレーヨン(ビスコース)、及びレーヨンの形態であるリオセル(例えば、Tencel(商標))を含む。本開示に従って処理されたテキスタイル基材はまた、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、又はイミダゾリジノン修飾セルロースを含み得る。
【0029】
天然繊維のブレンドもまた、本発明における使用のために企図され、ウール/綿ブレンド、絹/綿ブレンド、及びアンゴラ/綿ブレンドなどのブレンドを含む。
【0030】
本発明における使用のためにカチオン化されるテキスタイルはまた、ポリエステル繊維を含むであろう。
【0031】
本発明における使用のためのカチオン化テキスタイルは、好ましくは少なくとも約5%(重量)の綿などの天然繊維、又はその誘導体、及びより好ましくは約25%(重量)以上、約35%(重量)以上、又は約40%(重量)以上の天然繊維(例えば、セルロース)、又はその誘導体を有する。例示的なブレンドには、約5:95~約95:5、25:75~約25:75、又は40:60~約60:40の範囲の、天然繊維(又はその誘導体、例えば、セルロース))対ポリエステル繊維の重量比が含まれる。
【0032】
織テキスタイルはまた、テキスタイル重量(重量/面積)に関して説明することができ、これは、1平方ヤード当たりのオンス又は1平方メートル当たりのグラムでしばしば表される。テキスタイル重量は、テキスタイル中の繊維の種類(複数可)及びそれらの特性、テキスタイルの織りの種類、並びにテキスタイルの仕上げによって影響を受け得る。例示的なテキスタイル重量は、典型的には、約50g/m~約450g/m、又は約100g/m~約500g/m、若しくは更に400g/mの範囲である。
【0033】
実施形態では、本開示のプロセスは、当該技術分野において一般的に知られているように、漂白されたカチオン化テキスタイルを利用する。漂白されたテキスタイルは、天然の色、臭気及び他の場合テキスタイルの繊維が未加工の(天然)形態にあるときに存在する不純物をテキスタイルから除去した場合がある。酸化漂白は、典型的には、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、硫酸又はそれらの組み合わせなどの酸化漂白剤を使用して行われる。ハイドロサルファイトナトリウムは、しばしば、テキスタイルの還元的漂白に使用される。
【0034】
カチオン化テキスタイルが得られると、染色プロセスは以下のとおりである:
a.カチオン化布を、80℃~100℃の範囲の温度の反応性染料及び分散染料を含む水浴であって、pHが6~7である水浴中に、30分~60分の時間にわたって浸漬すること、
b.染色された布を、30℃~40℃の温度の水で少なくとも20分間洗浄すること、
c.ステップb.から得られた染色された布を、50~70℃の範囲の温度の水で少なくとも10分間洗浄すること、
d.ステップc.から得られた染色された布を、70℃~90℃の範囲の温度の1リットル当たり0.5~2グラムの石鹸、1リットル当たり1~3グラムの50%過酸化水素、及び1リットル当たり1~3グラムの水酸化ナトリウムを含む水溶液で少なくとも10分間洗浄すること、
e.ステップd.から得られた染色された布を、50℃~70℃の範囲の温度の水で少なくとも10分間洗浄すること、並びに
f.ステップe.から得られた染色された布を、30℃~40℃の範囲の温度の酸性水溶液(例えば、4~6の範囲のpH)で少なくとも10分間洗浄すること。
【0035】
反応性染料及び分散染料を含む水浴中にカチオン化布を浸漬する第1のステップでは、反応性染料は、当該技術分野において知られている任意のもの又はそのような染料の組み合わせであり得る。「反応性」、又はアニオン性染料は、スルホネート基又はカルボキシレート基などの1つ以上のアニオン性基を含み得る。例えば、アニオン性染料は、1つ以上のスルホン酸ナトリウム(-SONa)基を含み得る。1つ以上のアニオン性基は、可視スペクトル内の光を吸収し、かつ共役系を有する少なくとも1つの発色団/色担持基を有することができる染料分子中に存在し得る。一般的に使用されるアニオン性染料としては、アゾ化学、アントラキノン化学及びトリフェニルメタン化学に基づくものが挙げられる。アゾ染料は、基R-N=N-R’によって化学的に特徴付けられ、式中、R及びR’は、一般に、アリール基を含み、様々な化学置換基がアリール基に結合している。他のアニオン性染料としては、ニトロ化学、アジン化学及びキノリン化学を有するものが挙げられる。酸染料は、カルボン酸基、スルホン酸基又はリン酸基などの酸基を含み得るアニオン性染料の一種である。本開示の方法で使用され得るアニオン性染料は、Aspland,J.R.,(1997)Textile Dyeing and Coloration,American Association of Textile Chemists and Colorists,AATCC、Knutson,L.(1986)Synthetic Dyes for Natural Fiber,Interweave Press;Revised editionなどの様々な参考文献に記載されている。例としては、「Reactive Blue 19」、「Direct Blue 71」、「Acid Blue 62」、「Reactive Red ME4BL」など、色名並びに数字及び/若しくは文字が先行するか又は後に続く、「Reactive(反応性)」、「Direct(直接)」及び「Acid(酸)」と命名された染料が挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、染色溶液中の反応性染料の濃度は、約0.001g/L~約5.0g/L、約0.01~約2g/Lの範囲であり、より濃縮された染料溶液は、テキスタイルにより強い染料の色を提供する。
【0037】
第1のステップで使用される分散染料はまた、当該技術分野において既知の任意のもの、又はそれらの混合物であり得る。分散染料は、ポリエステル及び関連する疎水性繊維に典型的に使用される合成染料のカテゴリーである。分散染料は、典型的にはアントラキノン基又はアゾ基を含有する極性分子である。分散染料は、本質的に非イオン性であり、水に部分的に可溶性である。いくつかの実施形態では、染色溶液中の反応性染料の濃度は、約0.001g/L~約5.0g/L、より好ましくは約0.01~約2g/Lの範囲であり、より濃縮された染料溶液は、テキスタイルにより強い染料の色を提供する。
【0038】
反応性染料及び分散染料を含有する水浴は、染色ステップ中、70℃~100℃、より好ましくは少なくとも80℃、又は更には90℃の温度に保たれるべきである。また、水浴は、中性pH、例えば、6~8、より好ましくは6~7、又は更には6.5~7の範囲に保たれることが好ましい。
【0039】
染色ステップは、所望の時間、例えば、約30分~約60分の範囲、より好ましくは35分~55分又は40~50分の範囲にわたって行うことができる。
【0040】
染色ステップ後、染色されたテキスタイルは、テキスタイルが20~50℃、好ましくは25℃~35℃、又は更には30℃~40℃の温度の水で少なくとも15分間、より好ましくは少なくとも20分間、又は更には30分間洗浄される第1の洗浄ステップに供される。
【0041】
第1の洗浄ステップ後、染色されたテキスタイルは、テキスタイルが45℃~75℃、好ましくは50℃~70℃、又は更には55℃~65℃の範囲の温度の水で洗浄される第2の洗浄ステップに供される。この第2の洗浄ステップは、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、又は更には20分間行われる。
【0042】
第2の洗浄ステップ後、染色された布は、布が1リットル当たり0.5~2グラム、好ましくは1リットル当たり0.8~1.75グラム、又は更には1リットル当たり1~1.5グラムの1つ以上の石鹸を含む水溶液で洗浄される石鹸洗浄に供される。この石鹸水溶液はまた、1リットル当たり1~3グラムの50%過酸化水素(すなわち、50%過酸化水素溶液は、水溶液1リットル当たり0.5~1.5グラムの過酸化水素をもたらすようにおよそで添加される)、好ましくは1リットル当たり1.5~2.5グラムの50%過酸化水素、又は更には1リットル当たり1.75~2.25グラムを含有する。最後に、この石鹸水溶液はまた、1リットル当たり1~3グラムの水酸化ナトリウム、好ましくは1リットル当たり1.5~2.5グラムの水酸化ナトリウム、又は更には1リットル当たり1.75~2.25グラムを含有する。この石鹸浴の温度は、70℃~95℃、より好ましくは75℃~90℃、又は更には80℃~85℃の範囲の温度であるべきである。この石鹸洗浄ステップは、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、又は更には20分間行われる。このステップで使用される石鹸は、当該技術分野で知られている任意のソーピング剤、特にスルホネート、カルボキシレート、サルフェート、及びホスフェート、又はそれらの組み合わせなどの、アニオン性湿潤剤のクラスに属するものであり得る。
【0043】
石鹸洗浄ステップ後、染色されたテキスタイルは、テキスタイルが45℃~75℃、好ましくは50℃~70℃、又は更には55℃~65℃の範囲の温度の水で洗浄される別の洗浄ステップに供される。この追加の洗浄ステップは、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、又は更には20分間行われる。
【0044】
最後に、布は、20℃~45℃、好ましくは25℃~40℃、又は更には30℃~35℃の範囲の温度の酸性水溶液での洗浄に供される。この酸性洗浄は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、又は更には20分間行われる。この洗浄で使用される酸は、酢酸及び/又はリン酸(グリーン酸)などの産業で典型的に使用される酸であり得る。この洗浄のpHは、4~6、好ましくは4~5、又は更には4.5~5.5の範囲であり得る。
【0045】
上記のステップは、このプロセスのための最小限のステップと考えられるが、追加の洗浄を含む追加のステップが、当該技術分野で一般に知られているように行われ得ることが理解されるべきである。
【0046】
ポリエステル/綿(又は他の天然繊維)ブレンドから作製されるテキスタイルのためのこの新しい染色プロセスは、プロセス時間をわずか4~5時間に短縮することによってプロセスの生産性を改善し、ポリエステルテキスタイルを染色するために典型的に使用される130℃の代わりに100℃未満の温度で染色を行うことができるので、エネルギーを節約するのにも役立つことを理解されたい。
【0047】
当該技術分野で一般に知られているように、上記で言及されていない他の材料を、上記のプロセスにおけるステップのうちの1つ以上に添加することができるが、塩を含まない、かつアルカリを含まない方法でプロセスを実施することが有利であり得る。更に、分散剤を省略してもよく、それでも良好な結果が得られることが理解されるべきである。
【0048】
本発明のプロセスを以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0049】
ポリエステル/綿混紡布の前処理
漂白されたポリエステル/綿布(25gsm)を、1リットル当たり50グラムのThe Dow Chemical CompanyからECOFAST(商標)Pureの商品名で市販されている四級アンモニウムの水溶液及び1リットル当たり50グラムの水酸化ナトリウムを含有する水溶液中に浸漬する。布を、コールドパッドバッチ(cold pad batch、CPB)又は70%圧出(ウェットピックアップ)を有するパディングマングルを通してこの溶液に通した。次いで、布を、A-Frame上に巻き付け、ポリエテンシートで12~16時間にわたって約25℃の温度で覆う。
【0050】
この時間後、布を80℃で10分間の高温洗浄、続いて酢酸(水1リットル当たり1グラムの酢酸の濃度)を使用した室温で10分間の中和プロセスに供する。布を、70%圧出(ウェットピックアップ)を有するパディングマングルの2つのローラに通して、布から過剰な溶液を搾り出した。布を、ローラ上に巻き付け、ポリエテンシートで16時間覆う。
【0051】
「オールインワン」染色プロセス
2%(布の重量に基づく)の反応性染料及び2%の分散染料を含有する染浴を調製し、40℃~50℃の温度に加熱する。前処理されたポリエステル/綿布の5グラム試料を浴に添加する。表1の組み合わせに示された市販の反応性染料及び分散染料の組み合わせをこれらの実施例に使用する。染色は、Infra Red実験室染色機において1:20のL:R(浴比又は布対水比)で40分の期間にわたって行う。
【表1】
【0052】
染色後、染色された布を、以下に記載されるような仕上げプロセスに供する:
a)10分の期間にわたる室温(25℃~30℃)水洗浄、
b)10分にわたる高温(60℃)水、
c)10分にわたる80℃の温度の1リットル当たり1グラムの石鹸溶液(ACUSOL(商標)-479N、約70,000の分子量を有するアクリル酸及びマレイン酸無水物のコポリマーを含む市販の溶液)での石鹸水洗浄、
d)10分にわたる高温(60℃)洗浄、並びに次いで
e)10分にわたる、pHを5~7の範囲にするために添加された酢酸を含む室温(25℃~30℃)水洗浄。
【0053】
新規「オールインワン」染色プロセスで染色された前処理されたポリエステル/綿布は、従来の染色プロセス、すなわち、2浴プロセス及び1浴2ステッププロセスの各々で染色されたカチオン化されていない同様の布と比較することができる。染色強度は、色強度をパーセンテージとして報告するコンピュータカラーマッチングソフトウェアを使用して評価する(未処理布を使用した2浴法が100%ベースラインとして確立される)。表2に示すように、ポリエステル/綿布が前処理され、新たな「オールインワン」染色プロセスを使用して染色された場合、染色強度が増加する。
【表2】
【0054】
ISO法(ISP 105C10:C(2))を使用して、染色された布の洗浄に対する染色堅牢度を評価する。この方法では、染色された布を、2つの特定の隣接する布、すなわち、綿シート及びポリエステルシートの間に挟む。次いで、それらを、1リットル当たり5グラムの石鹸溶液(例えば、ACUSOL(商標)-479N)及び1リットル当たり2グラムの炭酸ナトリウム(NaCO)を含有する水溶液中で、60℃の温度で30分間機械的に撹拌した後、すすぎ、乾燥させる。試験片の色の変化及び隣接する布の染色をグレースケールで評価し、表3に報告する。
【表3】
【0055】
上記の実験から分かるように、本発明のプロセスは、より環境に優しい条件及びより短い全体的な時間を使用しながら、より良好な染色性能をもたらす。
【国際調査報告】