(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】モリブデン前駆体化合物、それを調製する方法、及びそれを用いるモリブデン含有膜を成膜する方法
(51)【国際特許分類】
C07F 11/00 20060101AFI20241212BHJP
C07C 15/02 20060101ALI20241212BHJP
C23C 16/18 20060101ALI20241212BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241212BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20241212BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20241212BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C07F11/00 B CSP
C07C15/02
C23C16/18
C23C16/455
H01L21/88 M
H01L21/285 C
H01L21/28 301R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534525
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 KR2022021165
(87)【国際公開番号】W WO2023121383
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187252
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514183215
【氏名又は名称】ユーピー ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジン シク
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジュン ファン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
4K030
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB78
4H006AB84
4H006AC90
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB78
4H050AB84
4H050AC70
4H050WB21
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA12
4K030BA36
4K030BA38
4K030BA42
4K030BA50
4K030FA01
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA10
4K030LA15
4M104AA10
4M104BB16
4M104DD43
4M104DD45
4M104HH16
5F033GG03
5F033HH20
5F033PP06
5F033PP11
5F033PP12
5F033PP14
5F033XX10
(57)【要約】
本発明は、モリブデン前駆体化合物、それを含むモリブデン含有膜を形成するための組成物、それを使用して形成されているモリブデン含有膜、及びモリブデン含有膜を成膜する方法に関する。モリブデン前駆体化合物は、単一構造及び高純度を有しており、したがって高品質のモリブデン含有膜を形成することができ、優れた熱安定性及び低い固有抵抗を有しており、したがって半導体分野において様々な用途を有することができる。特に、モリブデン前駆体化合物は、表面上に模様(溝)を有する基板、多孔質基板、プラスチック基板、又は複雑な形状を有する基板の上でも、優れた塗膜性及び均一性を有する膜を形成し得るので、高品質のモリブデン含有膜は、容易に実現し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物。
【化1】
[化学式1中、R
1~R
6は、水素及び直鎖状又は分枝状のC
1~C
8アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択されるが、R
1~R
6のうち少なくとも2つは、水素ではない。]
【請求項2】
化学式1中、R
1~R
6が、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、及びペンチルからそれぞれ独立に選択されるが、R
1~R
6のうち少なくとも2つは、水素ではない、請求項1に記載のモリブデン前駆体化合物。
【請求項3】
以下の化学式1-1~1-3のうちのいずれか1つで表される化合物である、請求項1に記載のモリブデン前駆体化合物。
【化2】
【請求項4】
前記モリブデン前駆体化合物が、180℃~350℃のTG
50(℃)を有し、TG
50が、熱重量分析(TGA)で室温から500℃まで10℃/分の昇温速度で加熱されている間に前記モリブデン前駆体化合物の重量が50%減少するときの温度である、請求項1に記載のモリブデン前駆体化合物。
【請求項5】
以下の方程式1に従って70%以上の残量率(WR
500)を有する、請求項4に記載のモリブデン前駆体化合物。
【数1】
[方程式1中、W
25は、25℃での前記モリブデン前駆体化合物の初期重量(wt%)であり、W
500は、10℃/分の昇温速度で温度を25℃から500℃まで上げた際の、500℃での前記モリブデン前駆体化合物の重量(wt%)である。]
【請求項6】
請求項1のモリブデン前駆体化合物を含む、モリブデン含有膜を形成するための組成物。
【請求項7】
前記モリブデン前駆体化合物が液体である、請求項6に記載のモリブデン含有膜を形成するための組成物。
【請求項8】
以下の化学式1-1~1-3の1つで表されるモリブデン前駆体化合物を使用して成膜される、請求項6に記載のモリブデン含有膜を形成するための組成物。
【化3】
【請求項9】
請求項1に記載のモリブデン前駆体化合物を用いて形成されているモリブデン含有膜。
【請求項10】
1,200μΩ・cm以下の比抵抗を有する、請求項9に記載のモリブデン含有膜。
【請求項11】
モリブデン含有金属膜、モリブデン含有酸化膜、モリブデン含有炭化膜、モリブデン含有硫化膜、及びモリブデン含有窒化膜からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載のモリブデン含有膜。
【請求項12】
請求項1に記載のモリブデン前駆体化合物を用いて基板上にモリブデン含有膜を成膜するステップを含む、モリブデン含有膜を成膜する方法。
【請求項13】
成膜が、化学気相成長法(CVD)又は原子層堆積法(ALD)によって、300℃~550℃の温度で行われる、請求項12に記載のモリブデン含有膜を成膜する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン前駆体化合物、それを調製する方法、それを含むモリブデン含有膜を形成するための前駆体組成物、それを用いるモリブデン含有膜、及びそれを成膜する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデン含有金属膜、モリブデン含有酸化膜、モリブデン含有炭化膜、モリブデン含有硫化膜、及びモリブデン含有窒化膜は、半導体プロセスにおいて金属配線、ゲートメタル、電極などの拡散バリア層として使用され得る。このような膜は、硬質コーティング材料、センサー、チャネル層、及び触媒として工業用に広く使用されている。
【0003】
例えば、次世代の電子機器、とりわけ、高段差を有するDRAMデバイス用のキャパシタ電極として使用されているために、非常に凹凸な面に優れた段差被覆性を獲得し得る化学気相成長法(CVD)又は原子層堆積法(ALD)を使用することが必要である。CVD及び又はALDを使用するには、液体のゼロ価モリブデン前駆体化合物が必要となることがある。特に、低抵抗の液体のゼロ価モリブデン前駆体化合物は、3次元NANDゲートでの使用に必要とされる。
【0004】
その一方で、現在使用されているモリブデン前駆体化合物の例は、ビストルエンモリブデン((η6-MeC6H5)2Mo)及びビスエチルベンゼンモリブデン((η6-EtC6H5)2Mo)を含む。
【0005】
しかし、ビストルエンモリブデン((η6-MeC6H5)2Mo)は、常圧及び常温で固体であるため、プロセスにおいてその供給源を供給することは難しく、固体前駆体を収容している容器を取り外して再度取り付けるプロセスに困難が起こるおそれもある。さらに、化合物を使用する半導体デバイスの大量生産において量産性が著しく低下する点で、課題となる可能性がある。
【0006】
さらに、ビスエチルベンゼンモリブデン((η6-EtC6H5)2Mo)前駆体化合物は、室温で液体であるが、単一化合物ではなく混合構造体であり、純度を上げる限界となっており、合成中に同じ組成を維持することも難しい。したがって、半導体デバイスの大量生産において、均一で高品質なモリブデン含有膜の供給が組成物中の不均一性のために難しいおそれがある。
【0007】
それに応じて、様々な用途、例えば、メモリ及び非メモリ分野のプロセス温度に適し、CVD及び/又はALD用に使用することができ、均一で高品質なモリブデン含有膜を形成するための単一構造及び優れた純度を有する、液体のモリブデン前駆体化合物を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2020-0091469号
【発明の開示】
【技術課題】
【0009】
本発明は、従来技術の課題を解決するために考案されたものである。
【0010】
本発明の目的は、単一構造を有し、室温で液体状態であるため製造工程において有利であり、熱安定性に優れているため原子層堆積法(ALD)によって均一の厚みで優れた品質を有するモリブデン含有膜を形成でき、且つモリブデン含有膜の比抵抗値を最適な範囲に低減できる、新規のモリブデン前駆体化合物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、安全で効率的な手法でモリブデン前駆体化合物を調製する方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、モリブデン前駆体化合物を含むモリブデン含有膜を形成するための組成物を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、モリブデン前駆体化合物を使用することで、様々な基板の上でも均一の厚みで優れた品質を有するモリブデン含有膜を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、モリブデン含有膜が、モリブデン前駆体化合物を使用して成膜される、モリブデン含有膜を成膜する方法を提供することである。
【0015】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、上述のものに限定されず、上記していない他の課題も、下記の記載から当業者によって明確に理解されよう。
【課題の解決】
【0016】
本発明は、以下の化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物を提供する。
【0017】
【0018】
化学式1中、R1~R6は、水素及び直鎖状又は分枝状のC1~C8アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択されるが、R1~R6のうち少なくとも2つは、水素ではない。
【0019】
その上、本発明は、モリブデン前駆体化合物を含む、モリブデン含有膜を形成するための組成物を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、モリブデン前駆体化合物を用いて形成されているモリブデン含有膜を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、モリブデン前駆体化合物を用いて基板上にモリブデン含有膜を成膜するステップを含む、モリブデン含有膜を成膜する方法を提供する。
【発明の有利な効果】
【0022】
本発明の実施形態に係るモリブデン前駆体化合物は、単一構造を有し、純度に優れているため、優れた品質のモリブデン含有膜が、形成され得る。その上、モリブデン前駆体化合物は、室温で液体状態であることから製造工程において有利であり、熱安定性に優れていることから化学気相成長法(CVD)又は原子層堆積法(ALD)によって、モリブデン含有膜を容易に形成でき、その比抵抗値を最適な範囲に低減することが可能であるため、低比抵抗を必要とするDRAM又はNANDフラッシュ、上部及び下部電極、並びにロジックデバイスに使用されているキャパシタのゲート電極などで利用され得る。
【0023】
さらに、その表面に凹凸、又は模様(溝)を有する基板、多孔質基板、プラスチック基板、又は3次元構造の複雑な形状を有する基板の上でも、被覆性に優れた均一の膜を形成することが可能であり、それにより高品質のモリブデン含有膜を獲得することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本出願の実施例1及び3並びに比較例2に従って調製されたモリブデン前駆体化合物の
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図2】本出願の実施例1及び3並びに比較例1のモリブデン前駆体化合物の熱重量分析(TGA)測定結果を示すグラフである。
【
図3】ALD法により、本出願の実施例1で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)を用いて形成されたモリブデン含有窒化膜の、温度に対する透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図4】ALD法により、本出願の実施例1で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)を用いて形成されたモリブデン含有窒化膜の比抵抗値の、温度に対するグラフである。
【
図5】PEALD法により、本出願の実施例1で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いて形成されたモリブデン含有窒化膜の、温度に対するTEM写真である。
【
図6】PEALD法により、本出願の実施例1で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いて形成されたモリブデン含有窒化膜の成膜速度及び比抵抗値を温度に対して示すグラフである。
【
図7】PEALD法により、本出願の実施例1で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いて350℃で形成されたモリブデン含有窒化膜が、オージェ電子分光法(AES)で測定されたときの元素含有量(%)を示すグラフである。
【
図8】PEALD法により、本出願の実施例1で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いて400℃で形成されたモリブデン含有窒化膜が、AESで測定されたときの元素含有量(%)を示すグラフである。
【
図9】PEALD法により、本出願の実施例1で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いて450℃で形成されたモリブデン含有窒化膜が、AESで測定されたときの元素含有量(%)を示すグラフである。
【
図10】PEALD法により、比較例2で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いて形成されたモリブデン含有窒化膜の、温度に対するTEM写真である。
【
図11】PEALD法により、比較例2で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いて350℃で形成されたモリブデン含有窒化膜が、AESで測定されたときの元素含有量(%)を示すグラフである。
【
図12】PEALD法により、比較例2で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いて400℃で形成されたモリブデン含有窒化膜が、AESで測定されたときの元素含有量(%)を示すグラフである。
【
図13】PEALD法により、比較例2で調製されたモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いて450℃で形成されたモリブデン含有窒化膜が、AESで測定されたときの元素含有量(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本出願をより詳細に説明する。
【0026】
本発明の利点及び特徴、並びにそれらを獲得する方法は、以下に説明される実施形態を参照して明らかになるであろう。しかし、本発明は、以下で述べられる実施形態に限定されるものではなく、異なる多くの形態で具現化することができる。これらの実施形態は、本発明の開示が、徹底的で完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。本発明は、特許請求の範囲によってのみ定められるものである。
【0027】
その上、本明細書において、ある構成要素が別の構成要素の「上(on)」に形成されている、と記載されている場合は、1つの構成要素が、別の構成要素の「上」に直接形成されていることだけでなく、他の構成要素(複数可)が間に介在されていることも意味する。
【0028】
本明細書において、ある要素が、構成要素を「含む(comprising)」という表現で用いられているときは、その要素は、他の構成要素を除外するのではなく、別途示されない限り、他の構成要素を含むことがあることを理解されよう。
【0029】
本明細書で使用されている、成分量、反応条件などを表す全ての数字及び表現は、別途示されない限り、「約(about)」という用語で修飾されるものと理解されるべきである。
【0030】
本明細書において、それぞれ「膜(film)」及び「薄膜(thin film)」という用語は、別途指定されない限り、「膜」及び「薄膜」の両方を指す。
【0031】
本明細書において、用語「アルキル(alkyl)」又は「アルキル基(alkyl group)」は、直鎖状又は分枝状アルキル基及びあらゆる可能なその異性体を対象として含む。例えば、アルキル基は、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(nPr)、イソプロピル基(iPr)、n-ブチル基(nBu)基、tert-ブチル基(tBu)、イソブチル基(iBu)、sec-ブチル基(sBu)、ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、4,4-ジメチルペンチル基、オクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、及びその異性体であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
[モリブデン前駆体化合物]
本発明の実施形態に従って、以下の化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物が提供される。
【0033】
【0034】
化学式1中、R1~R6は、水素及び直鎖状又は分枝状のC1~C8アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択されるが、R1~R6のうち少なくとも2つは、水素ではない。
【0035】
モリブデン前駆体化合物は、1H-NMRで解析すると、1つの組成を有する単一構造を有し、高純度を有し、室温で液体状態であることから製造工程において有利であり、熱安定性に優れているので化学気相成長法(CVD)ばかりでなく原子層堆積法(ALD)によっても容易にモリブデン含有膜を形成できる。
【0036】
特に、モリブデン含有膜は、モリブデン前駆体化合物を用いて形成されている場合に、例えば、1,200μΩ・cm以下の低比抵抗(μΩ・cm)値をもたらすことができ、したがって、ゲート電極、拡散バリア層、並びに低比抵抗を必要とするDRAM又はNANDフラッシュ及びロジックデバイスで使用されているキャパシタ電極として広く使用され得る。
【0037】
その上、モリブデン含有膜は、その表面に凹凸、又は模様(溝)を有する基板、多孔質基板、プラスチック基板、又は3次元構造で複雑な形状を有する基板の上でも、被覆性に優れた均一な膜の形成が可能であり、それにより高品質のモリブデン含有膜を提供することが可能である。モリブデン前駆体化合物は、電子機器分野で様々な用途で有利に使用され得るばかりでなく、優れた特性を示し得るという点においても技術的意義がある。
【0038】
本発明の実施形態に従って、化学式1中、R1~R6は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、及びペンチルからそれぞれ独立に選択されるが、R1~R6のうち少なくとも2つは、水素ではない。
【0039】
その上、R1~R6は、非置換の又は置換されたC1~C6アルキル基であって、置換基は、C1~C6アルキル基、C2~C6アルケニル基、C2~C6アルキニル基、及びC1~C6アルコキシ基をそれぞれ独立に含んでもよい。例えば、置換基は、C1~C6アルキル基、C1~C4アルキル基、又はC1~C2アルキル基をそれぞれ独立に含んでもよい。
【0040】
詳細には、モリブデン前駆体化合物は、以下の化学式1-1~1-3のうちのいずれか1つで表される化合物であってもよい。
【0041】
【0042】
本発明の実施形態に係るモリブデン前駆体化合物は、優れた熱安定性を有し、例えば、300℃~550℃で適用することができ、且つ室温で液体状態に存在し、それにより、ALDばかりでなくCVDによってもモリブデン含有膜を形成することが可能である。特に、モリブデン前駆体化合物は、ALDにより原子層単位で均一で優れた膜特性を有するモリブデン含有金属膜、モリブデン含有酸化膜、モリブデン含有炭化膜、モリブデン含有硫化膜、及びモリブデン含有窒化膜を容易に成膜し得るという点において大きな利点を有する。
【0043】
モリブデン前駆体化合物は、例えば、180℃~350℃、例えば、180℃~300℃、例えば、180℃~250℃、例えば、190℃~300℃、例えば、200℃~300℃、例えば、200℃~280℃、又は、例えば、200℃~250℃のTG50(℃)を有するが、TG50は、熱重量分析(TGA)で室温から500℃まで10℃/分の昇温速度で加熱されている間、モリブデン前駆体化合物の重量が50%減少するときの温度である。
【0044】
本発明の実施形態に従って、モリブデン前駆体化合物は、熱重量分析(TGA)で測定された、例えば、36重量%以下、例えば、35重量%以下、例えば、30重量%以下、例えば、20重量%以下、例えば、15重量%以下、例えば、10重量%以下、例えば、8重量%以下、例えば、7重量%以下、例えば、5重量%以下、例えば、4.5重量%以下、例えば、3重量%以下、例えば、2重量%以下、例えば、1.5重量%以下、例えば、1.2重量%以下、例えば、1重量%以下、例えば、0.7重量%以下、又は、例えば、0.6重量%以下の500℃での残重量(W500)を有する。
【0045】
詳細には、モリブデン前駆体化合物は、熱重量分析(TGA)で測定された500℃における1.5重量%以下の残重量(W500)を有する。
【0046】
本発明の実施形態に従って、モリブデン前駆体化合物は、以下の方程式1に従って、70%以上の残量率(WR500)を有することがある。
【0047】
【0048】
方程式1中、W25は、25℃でのモリブデン前駆体化合物の初期重量(wt%)であり、W500は、10℃/分の昇温速度で温度を25℃から500℃まで上げた際の500℃でのモリブデン前駆体化合物の重量(wt%)である。
【0049】
詳細には、モリブデン前駆体化合物は、例えば、72重量%以上、例えば、75重量%以上、例えば、80重量%以上、例えば、85重量%以上、例えば、87重量%以上、例えば、88重量%以上、例えば、89重量%以上、例えば、90重量%以上、例えば、92重量%以上、例えば、93重量%以上、例えば、95重量%以上、例えば、97重量%以上、例えば、98重量%以上、又は、例えば、99重量%以上の残量率(WR500)を有することがある。モリブデン前駆体化合物は、上記範囲を満足する残量率(WR500)を有する場合、優れた変動性を有し、これにより、例えば、300℃以上、詳細には、300~550℃、例えば、350℃~550℃の温度範囲でモリブデン含有金属膜、モリブデン含有酸化膜、モリブデン含有炭化膜、モリブデン含有硫化膜、及びモリブデン含有窒化膜からなる群から選択される少なくとも1種を形成するためにより有利であることがある。特に、モリブデン前駆体化合物は、ALDにより原子層単位で均一で優れた膜特性を獲得することが可能であるという点において大きな利点を有する。
【0050】
[モリブデン前駆体化合物を調製する方法]
本発明の実施形態に従って、以下の化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物を調製する方法が提供される。
【0051】
化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物は、様々な方法によって調製することができる。
【0052】
本発明の実施形態に係る化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物を調製する方法は、以下の化学式Aで表される化合物と以下の化学式Bで表される化合物とを反応させるステップを含む。
【0053】
【0054】
化学式B及び化学式1中、R1~R6は、水素及び直鎖状又は分枝状のC1~C8アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択されるが、R1~R6のうち少なくとも2つは、水素ではない。
【0055】
詳細には、化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物は、以下の反応スキーム1で示すような反応によって調製してもよい。
【0056】
【0057】
反応スキーム1中、R1~R6は、それぞれ上で定義したとおりである。
【0058】
反応スキーム1で示すように、化学式1のモリブデン前駆体化合物は、化学式Aで表される化合物と化学式Bで表される化合物とを反応させ、その後、得られたものを精製することによって容易に得ることができる。特に、反応スキーム1のとおりに調製されている化学式1で表される化合物は、単一構造を有することがあり、及び高純度の液体化合物であり得る。
【0059】
化学式Aで表される化合物と化学式Bで表される化合物とのモル比は、1:2~50、1:2~40、1:2~30、又は1:2~20であってもよい。
【0060】
反応は、150℃以上、5時間以上で行われることがある。
【0061】
詳細には、化学式Aで表される化合物及び化学式Bで表される化合物は、フラスコ内に入れられ、室温で維持される。冷却器がフラスコに接続され、フラスコ内の混合物は、例えば、約150℃以上、詳細には、約160℃~300℃に加熱され、その後、例えば、5時間以上、詳細には、8~20時間の反応をさせられ、化学式1で表される化合物が得られる。その上、反応の完了時に、反応中に形成された塩は、ろ過などにより除去してもよく、溶媒及び揮発性副反応剤は、減圧下で蒸留してもよい。
【0062】
[モリブデン含有膜を形成するための組成物]
本発明の実施形態に従って、化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物を含む、モリブデン含有膜を形成するための組成物が提供される。
【0063】
組成物は、水蒸気(H2O)、酸素(O2)、酸素プラズマ(O2プラズマ)、酸化窒素(NO、N2O)、酸化窒素プラズマ(N2Oプラズマ)、窒化酸素(N2O2)、過酸化水素(H2O2)、及びオゾン(O3)からなる群から選択される少なくとも1種を含む酸素源と、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、アンモニアプラズマ(NH3プラズマ)、ヒドラジン(N2H4)、及び窒素プラズマ(N2プラズマ)からなる群から選択される少なくとも1種を含む窒素源とをさらに含んでもよい。その上、組成物は、水素(H2)をさらに含んでもよい。
【0064】
詳細には、組成物は、例えば、水素(H2)、窒素(N2)、及びアンモニア(NH3)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0065】
組成物は、例えば、水蒸気(H2O)、酸素(O2)、酸素プラズマ(O2プラズマ)、酸化窒素(NO、N2O)、酸化窒素プラズマ(N2Oプラズマ)、酸素硝酸塩(N2O2)、過酸化水素(H2O2)、及びオゾン(O3)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0066】
組成物は、例えば、アンモニア(NH3)、アンモニアプラズマ(NH3プラズマ)、ヒドラジン(N2H4)、及び窒素プラズマ(N2プラズマ)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0067】
より詳細には、組成物は、水素(H2)、オゾン(O3)、及びアンモニア(NH3)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0068】
[モリブデン含有膜]
本発明の実施形態に従って、化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物を用いて形成されているモリブデン含有膜を提供することができる。
【0069】
モリブデン含有膜は、数ナノメートル(nm)~数マイクロメートル(μm)の厚みを有してもよく、適用目的に応じて様々に適用されることがある。
【0070】
例えば、モリブデン含有膜の厚みは、約1nm以上、約5nm以上、約10nm以上、約15nm以上、約20nm以上、約25nm以上、約30nm以上、約35nm以上、約40nm以上、約45nm以上、又は約50nm以上であってもよい。その上、モリブデン含有膜の厚みは、約500nm以下、約450nm以下、約400nm以下、約350nm以下、約300nm以下、約250nm以下、約200nm以下、約150nm以下、又は約100nm以下であってもよい。詳細には、モリブデン含有膜の厚みは、約1nm~約500nmから様々に選択してもよい。
【0071】
モリブデン含有膜は、基板(又はボード(board))上に形成してもよい。
【0072】
基板は、モリブデン半導体ウェハ、化合物半導体ウェハ、並びにプラスチック板(PI、PET、及びPES)であってもよいが、これに限定されるものではない。孔、又は溝を有する基板を使用してもよく、大きな表面積を有する多孔質基板を使用してもよい。
【0073】
本発明の実施形態に係るモリブデン前駆体化合物は、化学式1の特定の構造を有するため、モリブデン前駆体化合物は、低い密度及び高い熱安定性を有し、モリブデン含有膜がCVD及びALDによって様々な温度範囲で効率的に形成されることを可能にする。特に、300℃~550℃の温度範囲において、その表面上に模様(溝)若しくは微細な凹凸を有する基板、多孔質基板、又は数マイクロメートル~数十ナノメートルの厚みを有するプラスチック基板の上でも、モリブデン含有膜を均一に形成することが可能である。
【0074】
本発明の実施形態に従って、モリブデン含有膜は、1~50のアスペクト比及び1μm~10nm以下の幅を有する凹凸、又は模様(溝)を含む基板上に形成してもよい。
【0075】
詳細には、アスペクト比は、約1以上、約2以上、約3以上、約5以上、約7以上、約10以上、又は約15以上であってもよい。その上、アスペクト比は、約50以下、約45以下、約40以下、約35以下、約30以下、約25以下、又は約20以下であってもよい。
【0076】
その上、幅は、約10nm以上、約15nm以上、約20nm以上、約25nm以上、約30nm以上、約35nm以上、又は約40nm以上であってもよい。その上、幅は、約1μm以下、約900nm以下、約800nm以下、約700nm以下、約600nm以下、約500nm以下、又は約450nm以下であってもよい。
【0077】
モリブデン含有膜は、モリブデン含有金属膜、モリブデン含有酸化膜、モリブデン含有炭化膜、モリブデン含有硫化膜、及びモリブデン含有窒化膜からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0078】
その上、本発明の実施形態に係るモリブデン含有膜は、1,200μΩ・cm以下の低比抵抗(μΩ・cm)を有してもよい。
【0079】
モリブデン含有膜は、温度に応じて異なる比抵抗を有してもよい。
【0080】
詳細には、約350℃でのモリブデン含有膜の比抵抗は、例えば、400~1,200μΩ・cm、例えば、450~1,200μΩ・cm、例えば、500~1,200μΩ・cm、例えば、600~1,200μΩ・cm、又は例えば、700~1,200μΩ・cmであってもよい。
【0081】
他の例として、約400℃でのモリブデン含有膜の比抵抗は、例えば、400~1,200μΩ・cm、例えば、400~1,000μΩ・cm、例えば、400~900μΩ・cm、例えば、400~800μΩ・cm、又は、例えば、500~800μΩ・cmであってもよい。
【0082】
さらに別の例として、約450℃でのモリブデン含有膜の比抵抗は、例えば、400~1,200μΩ・cm、例えば、400~900μΩ・cm、例えば、300~800μΩ・cm、例えば、300~700μΩ・cm、例えば、300~600μΩ・cm、又は、例えば、300~500μΩ・cmであってもよい。
【0083】
さらに別の例として、約500℃でのモリブデン含有膜の比抵抗は、例えば、300~1,200μΩ・cm、例えば、300~1,000μΩ・cm、例えば、300~900μΩ・cm、例えば、300~800μΩ・cm、又は、例えば、300~700μΩ・cmであってもよい。
【0084】
したがって、モリブデン含有膜は、ゲート電極、拡散バリア層、並びに低比抵抗を必要とするDRAM又はNANDフラッシュ及びロジックデバイスで使用されているキャパシタ電極として使用することができ、適用目的に応じて様々に適用することができる。
【0085】
[モリブデン含有膜を成膜する方法]
本発明の実施形態に従って、化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物を用いて基板(ボード)上にモリブデン含有膜を成膜するステップを含む、モリブデン含有膜を成膜する方法が提供される。
【0086】
詳細には、成膜する方法は、化学式1で表されるモリブデン前駆体化合物又はモリブデン含有膜を形成するための組成物を気体状態で供給し、基板上にモリブデン含有膜を形成するステップを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0087】
基板は、上述のとおりである。
【0088】
膜を成膜する方法は、当技術分野で周知の任意の方法及び/又は装置を使用してもよく、必要ならば、1種若しくは複数の追加の反応剤ガスなどを使用して行ってもよい。
本発明の実施形態に従って、モリブデン含有膜を成膜する方法において、基板は、反応チャンバーに収容され、その後、モリブデン前駆体化合物は、搬送ガス又は希釈ガスを用いて基板上に送られて、モリブデン含有膜を成膜する。
【0089】
詳細には、成膜は、300℃~550℃、350℃~550℃、350℃~500℃、又は350℃~450℃の温度で、化学気相成長法(CVD)、詳細には、有機金属化学気相成長法(MOCVD)、又は原子層堆積法(ALD)によって行われてもよい。
【0090】
その上、原子層堆積法は、プラズマ励起原子層堆積法(PEALD)を含んでもよい。
【0091】
特に、300℃~550℃の温度範囲において、その表面上に模様(溝)を有する基板、多孔質基板、又はプラスチック基板の上でも、モリブデン含有膜を均一に形成することが可能である。基板上に均一の膜を形成することが可能であり、約1~50以上のアスペクト比及び1μm~10nm以下の幅を有する微細パターン(溝)の最も深い面、並びに微細パターン(溝)の上部表面を被膜する。
【0092】
ここで、上の温度で行われる成膜は、膜が、メモリデバイス、ロジックデバイス、及びディスプレイデバイスに適用されることを可能にする。プロセス温度は、広範囲であるので、様々な分野に適用できるようにするために、成膜は、上記成膜温度で行われるのが望ましい。
【0093】
その上、搬送ガス又は希釈ガスとしてアルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、及び水素(H2)からなる群から選択される少なくとも1種の混合ガスを使用することがより好ましい。
【0094】
その上、基板上にモリブデン前駆体化合物を送る方法は、モリブデン前駆体化合物が、搬送ガス又は希釈ガスを用いて強制的に蒸発されている気泡法と、蒸発器によって蒸発させるために、液相において室温でモリブデン前駆体化合物を供給するための送液システム(LDS)法と、その蒸気圧を用いて前駆体を直接供給するための蒸気流量制御法(VFC)と、バイパス法とからなる群から選択される少なくとも1つの方法でもよい。
【0095】
例えば、蒸気圧が高い場合、蒸気流量制御法(VFC)を、使用してもよい。蒸気圧が低い場合、容器を加熱による蒸発のバイパス法、及びアルゴン(Ar)又は窒素(N2)ガスを用いる気泡法からなる群から選択される少なくとも1つの供給方法を、使用してもよい。
【0096】
より詳細には、輸送方法は、気泡法又は加熱による蒸発のバイパス法を含み、気泡法は、100℃~150℃の温度範囲、及び0.1~10トルにおいて搬送ガスを用いて行ってもよく、且つ加熱による蒸発のバイパス法は、室温~100℃の温度範囲において0.1~1.5トルの蒸気圧を用いて行ってもよい。
【0097】
その上、モリブデン前駆体化合物を蒸発させるために、例えば、アルゴン(Ar)若しくは窒素(N2)ガスを、その輸送のために使用してもよいか、熱エネルギー若しくはプラズマを、成膜中に使用してもよいか、又は、バイアスを、基板に対して掛けてもよい。
【0098】
その一方で、モリブデン含有金属膜を成膜するために、成膜中、水素(H2)、中性窒素(N2)、及びアンモニア(NH3)からなる群から選択される少なくとも1種を、反応ガスとして使用してもよい。
【0099】
その上、成膜中、モリブデン含有酸化膜を成膜するため、水蒸気(H2O)、酸素(O2)、酸素プラズマ(O2プラズマ)、酸化窒素(NO、N2O)、酸化窒素プラズマ(N2Oプラズマ)、酸素硝酸塩(N2O2)、過酸化水素(H2O2)、及びオゾン(O3)からなる群から選択される少なくとも1種を、反応ガスとして使用してもよい。
【0100】
その上、例えば、成膜中、モリブデン含有窒化膜を成膜するために、アンモニア(NH3)、アンモニアプラズマ(NH3プラズマ)、ヒドラジン(N2H4)、及び窒素プラズマ(N2プラズマ)からなる群から選択される少なくとも1種を、反応ガスとして使用してもよい。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例を参照して、本発明を詳細に述べる。以下の実施例は、本発明を単に説明するためのものであり、及び本発明の範囲がこれらだけに限定されるものではない。
【0102】
<実施例1>ビス-4-イソプロピルトルエン-モリブデン:(η
6-4-
iPr-MeC
6H
4)
2Moの調製
【化6】
【0103】
加熱乾燥した2リットルのシュレンクフラスコに、約88g(0.31モル)の以下で述べる比較例1の化学式1-4で表されるビストルエンモリブデン((η6-MeC6H5)2Mo)、及び約1,000mlの4-イソプロピルトルエン(C10H14)を投入し、室温で維持した。冷却器をフラスコに接続し、フラスコ内の混合物を180℃に加熱し、その後12時間撹拌した。反応の完了時に、反応中に形成された塩をろ過により除去し、溶媒及び揮発性副反応剤を減圧下で留去し、約120gの化学式1-1で表される緑色の液体を得た(収率:約60%、MoCl5に基づく)。
【0104】
密度:1.28g/モル(25℃)
沸点(bp):105℃(0.4トル)(760mmHgで308.6℃)
1H-NMR(400MHz、C6D6、25℃):δ4.56(s,8H,Mo((CH3)2CH-C6H*
4-CH3))、δ2.46、2.28、2.26(m,2H,Mo((CH3)2CH*-C6H4-CH3))、δ1.96(s,6H,Mo((CH3)2CH-C6H4-CH*
3))、δ1.17、1.15(d,12H,Mo((CH*
3)2CH-C6H4-CH3))
【0105】
<実施例2>ビス-1,4-ジ-tert-ブチルベンゼン-モリブデン:(η
6-1,4-(
tBu)C
6H
4)
2Moの調製
【化7】
【0106】
加熱乾燥した2リットルのシュレンクフラスコに、約29g(0.1モル)の以下で述べられる比較例1の化学式1-4で表されるビストルエンモリブデン((η6-MeC6H5)2Mo)、及び約250gの1,4-ジ-tert-ブチルベンゼン(C14H22)を投入し、室温で維持した。冷却器をフラスコに接続し、フラスコ内の混合物180℃に加熱し、その後12時間撹拌した。反応の完了時に、反応中に形成された塩を、ろ過により除去し、溶媒及び揮発性副反応剤を減圧下で留去し、約30gの化学式1-2で表される緑色の固体を得た(収率:約60%、MoCl5に基づく)。
【0107】
沸点(bp):130℃(0.4トル)(760mmHgで343.6℃)
1H-NMR(400MHz、C6D6、25℃):δ4.69(s,8H,Mo(C6H*
4(C(CH3)3)2))、1.17(s,36H,Mo(C6H4(C(CH*
3)3)2))
【0108】
<実施例3>ビス-1-イソプロピル-3,5-ジメチルルベンゼン-モリブデン:(η
6-1-
iPr-3,5-Me
2C
6H
3)
2Moの調製
【化8】
【0109】
加熱乾燥した2リットルのシュレンクフラスコに、以下で述べられる比較例1の化学式1-4で表される約55g(0.19モル)のビストルエンモリブデン((η6-MeC6H5)2Mo)、及び約300gの1-イソプロピル-3,5-ジメチルベンゼン(C11H16)を投入し、室温で維持した。冷却器をフラスコに接続し、フラスコ内の混合物を180℃に加熱し、その後12時間撹拌した。反応の完了時に、反応中に形成された塩をろ過により除去し、溶媒及び揮発性副反応剤を減圧下で留去し、約47gの化学式1-3で表される緑色の液体を得た(収率:約63%、MoCl5に基づく)。
【0110】
密度:1.32g/モル(25℃での)
沸点(bp)132℃(0.5トル)(760mmHgで338℃)
1H-NMR(400MHz、C6D6、25℃):δ4.51(s,4H,Mo((CH3)2CH-C6H*
3-(CH3)2))、δ4.40(s,2H,Mo((CH3)2CH-C6H*
3-(CH3)2))、δ2.31、2.29、2.27(m,2H,Mo((CH3)2CH*-C6H3-(CH3)2))、δ1.96(s,12H,Mo((CH3)2CH-C6H3-(CH*
3)2))、δ1.17、1.15(d,12H,Mo((CH*
3)2CH-C6H3-(CH3)2))
【0111】
<比較例1>ビストルエンモリブデン:(η
6-MeC
6H
5)
2Mo
【化9】
【0112】
化学式1-4で表されるビストルエンモリブデン((η6-MeC6H5)2Mo)(SPCI Co.,Ltd.)を購入し、使用した。
【0113】
<比較例2>ビスエチルベンゼンモリブデン:(η
6-EtC
6H
5)
2Mo
【化10】
【0114】
化学式1-5で表されるビスエチルベンゼンモリブデン((η6-EtC6H5)2Mo)(StremChemicals,Inc.)を購入し、使用した。
【0115】
試験例
<試験例1>モリブデン前駆体化合物の構造解析
1H-NMR解析を行い、実施例1及び3で調製したモリブデン前駆体化合物並びに比較例2で調製したモリブデン前駆体化合物の構造を解析した。結果を、下の表1及び
図1に示す。
【0116】
【0117】
図1及び表1で見られるように、比較例2のモリブデン前駆体化合物は、構造異性体により様々な構造の組成(混合構造)を有したため、化学シフト及び水素(プロトン)のピーク多重度は、
1H-NMR解析において明確に現れなかった。その一方、本発明の実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物は、
1H-NMR解析で1つの組成を有することが確認され、化学シフト及びピーク多重度も明確に現れていた。
【0118】
実施例1及び3のモリブデン前駆体化合物が、ALD法に適用されるのに十分に高純度の前駆体であることがモリブデン前駆体化合物の構造解析の結果から確認される。実施例のモリブデン前駆体化合物は、様々な膜、例えば、モリブデン含有金属膜、モリブデン含有酸化膜、モリブデン含有炭化膜、モリブデン含有硫化膜、及びモリブデン含有窒化膜を形成する目的で使用され得る。
【0119】
<試験例2>モリブデン前駆体化合物の熱特性解析
熱重量分析(TGA)で、実施例1及び3で調製したモリブデン前駆体化合物並びに比較例1のモリブデン前駆体化合物の熱特性の解析を行った。結果を、下の表2及び
図2に示す。
【0120】
熱重量分析(TGA)に関して、窒素(N2)雰囲気で、温度を約10℃/分の昇温速度で室温~約500℃に上昇させながら、モリブデン前駆体化合物の重量の変化を測定した。
【0121】
詳細には、モリブデン前駆体化合物の重量減少が50%のときの温度であるモリブデン前駆体化合物の蒸発開始温度(℃)、TG50(℃)と、500℃での残重量であるW500(重量%)と、500℃での残量率であるWR500(%)とを測定した。
【0122】
ここで、500℃での残量率であるWR500(%)は、以下の方程式1から計算できる。
【0123】
【0124】
方程式1中、W25は、25℃でのモリブデン前駆体化合物の初期重量(wt%)であり、W500は、10℃/分の昇温速度で温度を25℃から500℃まで上げた際の、500℃でのモリブデン前駆体化合物の重量(wt%)である。
【0125】
【0126】
図2で見られるように、比較例1のモリブデン前駆体化合物においては、熱安定性に乏しいため多くの残渣が残り、CVD又はALDプロセスでの使用に適さなかった。その一方、実施例1及び3で調製したモリブデン前駆体化合物においては、残渣は、変質せずに揮発し、モリブデン前駆体化合物をCVD又はALDプロセスで使用する前駆体として適していた。
【0127】
その上、表2で見られるように、本発明の実施例1及び3のモリブデン前駆体化合物の大部分は、約209℃~213℃で蒸発し、モリブデン前駆体化合物の重量減少が50%のときの温度TG50(℃)は、約226.88℃であった。
【0128】
その上、実施例1及び3で調製したモリブデン前駆体化合物において、500℃でのモリブデン前駆体化合物の残重量W500(重量%)は、約0.56重量%~1.18重量%であった。比較例1のモリブデン前駆体化合物において、500℃でのモリブデン前駆体化合物の残重量W500(重量%)は、約36.9重量%で、実施例1及び3のモリブデン前駆体化合物と比較すると著しい増加を示した。
【0129】
その一方で、実施例1及び3で調製したモリブデン前駆体化合物において、500℃での残量率(WR500)は、約98.82%~99.44%であった。比較例1のモリブデン前駆体化合物において、残量率(WR500)は、約63.1%に著しく低下した。
【0130】
それに応じて、本発明のモリブデン前駆体化合物は、優れた変動性を示すこと、並びに、特に、本発明のモリブデン前駆体化合物は、300℃~500℃の温度範囲において様々なモリブデン含有膜、例えばモリブデン含有金属膜、モリブデン含有酸化膜、モリブデン含有炭化膜、モリブデン含有硫化膜、及びモリブデン含有窒化膜を形成するための優れた前駆体であることが確認された。
【0131】
<試験例3>アンモニアと混合したモリブデン前駆体化合物の成膜特性
実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物を、ALD法で使用した。アンモニアガス(NH3)を、反応ガスとして使用し、モリブデン含有窒化膜を成膜した。
【0132】
第1の、酸化シリコン基板(ボード)(1,000Å)を、基板として使用し、モリブデン含有窒化膜を調製した。酸化シリコン基板は、酸化シリコン基板の表面から有機物を取り除くために、酸化シリコン基板の表面を流蒸留水(超純水)で洗浄して有機物を除去した酸化シリコン基板であった。
【0133】
モリブデン含有窒化膜を成膜するために、ALDサイクルを100回に固定し、基板の温度を350℃、400℃、及び500℃に設定し、基板の温度に対するモリブデン含有窒化膜の特性を調査した。
【0134】
モリブデン前駆体化合物を、それぞれステンレス製の容器に入れ、使用するために約120℃の温度に加熱した。前述の状況の場合、反応器のプロセス圧力を1.8トルとし、キャリアガスとしてアルゴン(Ar)ガスを流速約200sccmで流し、アンモニア(NH3)を400sccmの流速で流した。
【0135】
それぞれのモリブデン含有窒化膜の最適化した比抵抗特性を調べるために、ALDガスを供給するサイクルを100回繰り返して、モリブデン含有窒化膜を形成し、そのサイクル中、モリブデン前駆体化合物を約5秒間供給し(前駆体化合物を供給する工程)、アルゴン(Ar)ガスを約10秒間供給して、反応器内に残っているモリブデン前駆体化合物(ガス)を除去し(前駆体化合物パージ工程)、NH3を約20秒間反応ガスとして供給し(NH3を供給工程)、且つアルゴン(Ar)ガスを約10秒間供給して、反応器内に残っているNH3を除去した(NH3パージ工程)。
【0136】
酸化シリコン薄膜基板上に成膜したモリブデン含有窒化膜のシート抵抗(μΩ/sq)を、4PPS(4探針プローブシステム)を用いて測定し、モリブデン含有窒化膜の厚みを、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した。比抵抗(μΩ・cm)を、モリブデン含有窒化膜の厚み及びシート抵抗から計算した。
【0137】
前述の状況の場合、比抵抗(μΩ・cm)は、以下の方程式2で表すことができる。
【0138】
[方程式2]
比抵抗(μΩ・cm)=シート抵抗(Ω/sq)×膜の厚み(×10-8、cm)
【0139】
実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)を用いてALD法により形成されたモリブデン含有窒化膜の厚みを、基板の温度、例えば、350℃、400℃、及び500℃で、それぞれ、74.3Å、76.3Å、及び91.5Åであることを測定した。TEM分析の結果を、
図3に示す。
【0140】
その上、実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)を用いて、ALD法により形成したモリブデン含有窒化膜の比抵抗(μΩ・cm)を計算した。結果を、表3及び
図4に示す。
【0141】
【0142】
表3及び
図4で見られるように、350℃、400℃、及び500℃の基板温度で形成されたモリブデン含有窒化膜の比抵抗値は、約1,162.6μΩ・cm、約793.0μΩ・cm、及び約653.4μΩ・cmであり、それぞれ、非常に低い比抵抗値を示した。低い比抵抗値を示したことは、ゲート電極、拡散バリア層、並びに低比抵抗を必要とするDRAM又はNANDフラッシュ及びロジックデバイス中のキャパシタ電極としての使用に有利である。
【0143】
<試験例4>アンモニア(NH3)プラズマと混合したモリブデン前駆体化合物の成膜特性
実施例1及び比較例2のモリブデン前駆体化合物を用いて、プラズマ励起原子層堆積法(PEALD)プロセスを行った。
【0144】
モリブデン含有窒化膜を成膜するために、500WのRFパワーを、反応ガスとして使用される窒素源としてのNH3に適用した。
【0145】
第1に、酸化シリコン基板(ボード)(1,000Å)を基板として使用し、モリブデン含有窒化膜を調製した。酸化シリコン基板は、酸化シリコン基板の表面から有機物を取り除くために、酸化シリコン基板の表面を流蒸留水(超純水)で洗浄して有機物を除去した酸化シリコン基板であった。
【0146】
モリブデン含有窒化膜を成膜するために、PEALDサイクルを、100回に固定し、基板の温度を、350℃、400℃、及び450℃に設定し、基板の温度に対するモリブデン含有窒化膜の特性を調査した。
【0147】
実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物を、ステンレス製の容器に入れ、使用するために約140℃の温度に加熱した。前述の状況の場合、反応器のプロセス圧力を、1.8トルとし、キャリアガスとしてアルゴン(Ar)ガスを、流速約200sccmで流し、アンモニア(NH3)を、流速約500sccmで流した。500WのRFパワーを、13.56MHzのプラズマのために使用した。
【0148】
それぞれのモリブデン含有窒化膜の最適化した比抵抗特性を確認するために、PEALDガス供給サイクルを100回繰り返して、モリブデン含有窒化膜を形成し、そのサイクル中、モリブデン前駆体化合物を約3秒間供給し(前駆体化合物を供給する工程)、アルゴン(Ar)ガスを約10秒間供給して、反応器内に残っているモリブデン前駆体化合物(ガス)を除去し(前駆体化合物パージ工程)、反応ガスとしてNH3を約20秒間供給し(NH3を供給工程)、アルゴン(Ar)ガスを約10秒間供給して、反応器内に残っているNH3を除去した(NH3パージ工程)。
【0149】
比較例2のモリブデン前駆体化合物は、同じ条件下で試験したが、ALDガス供給サイクルを100回繰り返して、モリブデン含有窒化膜を形成する条件は異なり、サイクル中、モリブデン前駆体化合物を約15秒間供給し(前駆体化合物を供給する工程)、アルゴン(Ar)ガスを約10秒間供給して、反応器内に残っているモリブデン前駆体化合物(ガス)を除去し(前駆体化合物パージ工程)、NH3を約20秒間反応ガスとして供給し(NH3の供給工程)、アルゴン(Ar)ガスを約15秒間供給して、反応器内に残っているNH3を除去した(NH3パージ工程)。
【0150】
酸化シリコン薄膜基板上に成膜したモリブデン含有窒化膜のシート抵抗(μΩ/sq)を、4PPS(4探針プローブシステム)を使用して測定し、その厚みをTEMを使用して測定した。
【0151】
実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを使用してPEALD法により形成されるモリブデン含有窒化膜の厚みを、測定し、例えば、350℃、400℃、及び450℃の基板の温度で、それぞれ、約116.2Å、約127.2Å、及び約127.3Å、であった。TEM分析の結果を、
図5に示す。
【0152】
その上、実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを使用し、PEALD法により形成されたモリブデン含有窒化膜の成膜速度は、それぞれ、約1.16Å/サイクル、約1.27Å/サイクル、及び約1.27Å/サイクルであった。比抵抗(μΩ・cm)を、シート抵抗から計算した。結果を、表4及び
図6に示す。
【0153】
【0154】
その上、AES(オージェ電子分光法)により、それぞれの温度でのモリブデン含有窒化膜の元素含有量(%)を測定した。結果を表5及び
図7~9に示す。
【0155】
【0156】
その一方で、比較例2のモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを用いたPEALD法により形成されるモリブデン含有窒化膜の厚みを測定し、例えば、350℃、400℃、及び450℃の基板の温度で、それぞれ、約240.3Å、約250.1Å、及び約243.3Åであった。TEM分析の結果を
図10に示す。その上、モリブデン含有窒化膜の元素含有量(%)を、AESで、それぞれの温度で測定した。結果を表6及び
図11~13に示す。
【0157】
【0158】
表5及び6、
図7~9、並びに
図11~13のAESによる膜成分分析結果で見られるように、実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを使用したPEALD法により形成されたモリブデン含有窒化膜の炭素含有量は、比較例2のモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH
3)プラズマを使用したPEALD法により形成されたモリブデン含有窒化膜の炭素含有量よりも、著しく低減した。
【0159】
一般に、炭素含有量が高い場合、例えば、電気特性の劣化及び仕事関数の低下の問題を引き起こすことがある。実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物を使用して形成されるモリブデン含有膜は、上記の問題を解決し得る。
【0160】
その上、表4で見られるように、350℃、400℃及び500℃の基板温度で、実施例1で調製したモリブデン前駆体化合物及びアンモニア(NH3)プラズマを用いたPEALD法により形成されたモリブデン含有窒化膜の比抵抗値は、約716.6μΩ・cm、約581.3μΩ・cm、及び約357.1μΩ・cmであり、それぞれ、非常に低い比抵抗値を示した。
【0161】
要するに、本発明の実施形態に係るモリブデン前駆体化合物を使用してモリブデン含有膜を形成する方法によれば、ALDによりモリブデン含有膜を容易に成膜でき、低い炭素含有量及び低比抵抗値を有するモリブデン含有膜を形成することが可能であった。
【0162】
特に、本発明の実施形態に係るモリブデン前駆体化合物を使用してモリブデン含有膜を形成する方法に従って、所望の厚み及び1,200μΩ・cm以下の低比抵抗を有する膜を、350℃~450℃の温度で得ることができた。結果として、こうして得られたモリブデン含有窒化膜の炭素含有量は、比較例2のモリブデン前駆体化合物を使用したモリブデン含有窒化膜と比較すると著しく改良された。
【0163】
その上、本発明のモリブデン前駆体化合物を使用してモリブデン含有膜を形成する場合には、モリブデン含有膜は、5%以下の低炭素含有量及び1,200μΩ・cm以下の低比抵抗をもたらすことができ、したがって、ゲート電極、拡散バリア層、並びに低比抵抗を必要とするDRAM又はNANDフラッシュ及びロジックデバイスで使用されているキャパシタ電極として広く使用され得る。
【国際調査報告】