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特表2024-546254グルホシネート又はその誘導体の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】グルホシネート又はその誘導体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/30 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
C07F9/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534609
(86)(22)【出願日】2023-03-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 CN2023083701
(87)【国際公開番号】W WO2024113549
(87)【国際公開日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】202211545734.9
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522225099
【氏名又は名称】リアー ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LIER CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リ, ユエドン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヨンジアン
(72)【発明者】
【氏名】チン, ユーティン
(72)【発明者】
【氏名】ズオ, シャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ケ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン, シャオリャン
(72)【発明者】
【氏名】イン, インスイ
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA02
4H050AB04
4H050AC81
4H050BB11
4H050BB12
4H050BC10
4H050BC31
4H050BD21
4H050BE01
4H050BE03
4H050BE10
4H050BE11
4H050BE14
4H050WA15
4H050WA23
4H050WA24
4H050WA26
(57)【要約】
本開示は、グルホシネート又はその誘導体の調製方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のグルホシネート又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を調製するための方法であって、
【化1】

前記方法は、以下の工程:
a)式(II)の化合物又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を式(III)の化合物と反応させる工程と、
【化2】

b)中間体を、それが単離されているかいないかに関わらず、水及び酸又は塩基の存在下で反応させて、グルホシネート(I)又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を得る工程と
を含み、
PGがアミノ保護基である場合、前記アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことができ、
ここで、
Xはハロゲン、-OAc、-OTs、-OMs又は
【化3】

であり、
Hal、Hal及びHalは、それぞれ独立して、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは-OR、-NH、-NHR又は-N(R)(R)であり、
PGは水素又はアミノ保護基であり、アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)であり、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール、3~10員のヘテロシクリル又は-Si(R)(R)(R)であり、
は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から選択され、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール又は3~10員のヘテロシクリルであり、
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、それぞれ任意選択で、ハロゲン、-OH、=O、-O-(C~Cアルキル)、-C(=O)-(C~Cアルキル)、-C(=O)OH、-C(=O)O-(C~Cアルキル)、-NH、-NO、-CN、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から独立して選択される1つ又は複数の置換基によって置換され、
不斉炭素原子はで表示されている
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
式(I)-1の化合物又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を調製するための方法であって、
【化4】

前記方法は、以下の工程:
a)式(II)の化合物又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を、式(III)の化合物と反応させる工程と、
【化5】

b-1)中間体を、それが単離されているかいないかに関わらず、ROHの存在下で反応させて、グルホシネート(I)又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を得る工程と
を含み、
PGがアミノ保護基である場合、前記アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことができ、
ここで、
Xはハロゲン、-OAc、-OTs、-OMs又は
【化6】

であり、
Hal、Hal及びHalは、それぞれ独立して、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは-OR、-NH、-NHR又は-N(R)(R)であり、
PGは水素又はアミノ保護基であり、アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)であり、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール、3~10員のヘテロシクリル又は-Si(R)(R)(R)であり、
は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から選択され、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール又は3~10員のヘテロシクリルであり、
はH、C~Cアルキル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール又は3~10員のヘテロシクリルであり;好ましくは、RはH又はC~Cアルキルであり;より好ましくは、RはH、メチル又はエチルであり、
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、それぞれ任意選択で、ハロゲン、-OH、=O、-O-(C~Cアルキル)、-C(=O)-(C~Cアルキル)、-C(=O)OH、-C(=O)O-(C~Cアルキル)、-NH、-NO、-CN、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から独立して選択される1つ又は複数の置換基によって置換され、
不斉炭素原子はで表示されている
ことを特徴とする、方法。
【請求項3】
工程a)の式(II)の化合物が鏡像異性的に純粋であり、得られた式(I)のグルホシネート若しくはその塩、又は式(I)-1の化合物若しくはその塩も鏡像異性的に純粋である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)のグルホシネート若しくはその塩又は式(I)-1の化合物若しくはその塩の鏡像異性体比は、(L):(D)-鏡像異性体又は(D):(L)-鏡像異性体が50.5:49.5~99.5:0.5である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
式(II)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が2:1以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(III)の化合物又はその溶液が、式(II)の化合物若しくはその溶液に添加され;又は式(II)の化合物若しくはその溶液が、式(III)の化合物若しくはその溶液に添加され;
好ましくは、式(III)の化合物若しくはその溶液が、式(II)の化合物若しくはその溶液に少しずつ若しくは一度に添加され;又は式(II)の化合物若しくはその溶液が、式(III)の化合物若しくはその溶液に少しずつ若しくは一度に添加される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Xが塩素、臭素、ヨウ素、-OAc、-OTs、-OMs又は
【化7】

であり、
好ましくは、Xが塩素である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
、R及びRが、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~C10アリール又はC~C12アラルキルであり、
好ましくは、R、R及びRが、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル又はナフチルであり;より好ましくはエチルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Yが-NHCHCHCHCH、-N(CH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHCH、-OCH(CH、-OCHCHCHCH、-OCHCH(CH又は-OBnである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Yが-ORであり、Rが、好ましくはエチル又はn-ブチルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
PGが水素、-C(=O)CH、-C(=O)Ph、-C(=O)OC、-C(=O)OC(CH又は
【化8】

であり、
好ましくは、PGが水素である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(III)の化合物がジクロロ(メチル)ホスファンである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式(III)の化合物が唯一のリン含有反応出発原料である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)において、反応温度が-50~200℃であり、好ましくは-20~140℃又は20~100℃である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程a)が塩基の存在下で実施され、前記塩基が無機塩基又は有機塩基であり、
好ましくは、(式(II)の化合物+上記塩基)と式(III)の化合物とのモル比が2.5:1以上であり、より好ましくは3:1以上であり、最も好ましくは4:1以上であり、
無機塩基が、好ましくはアンモニア、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩;例えば、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムであり、
有機塩基が、好ましくは活性水素を含有しない有機塩基であり、活性水素を含有しない前記塩基が、好ましくはトリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン又はピリジンであり、前記トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン及びピリジンが、任意選択で第三級アミンの1個又は複数の炭素原子と結合した1~3個の置換基を有し、前記置換基が、ハロゲン、-OH、-O-(C~Cアルキル)、-NH、-NO2、-CN、C~Cアルキル、C~C10シクロアルキル及びC~C10アリールから選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程a)が追加の塩基の非存在下で実施される場合、式(II)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が、好ましくは4:1以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程a)が無溶媒条件下又は不活性溶媒中で実施され、
好ましくは、不活性溶媒が、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、スルホン又はスルホキシド溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のうちのいずれか1種又は複数から選択され;好ましくは、不活性溶媒が、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のうちのいずれか1種又は複数から選択され、
より好ましくは、不活性溶媒が、クロロベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、石油エーテル、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、及び酢酸ブチルのうちのいずれか1種又は複数から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程b)において、無機酸又は有機酸が添加される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
無機酸が塩酸又は硫酸である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程b)において、塩基が無機塩基又は有機塩基である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
塩基がNaOH、KOH又はBa(OH)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程b)において、反応温度が20~150℃である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程b1)において、反応温度が0℃~100℃であり、好ましくは0℃~80℃であり、より好ましくは20℃~60℃又は30℃~60℃である、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本開示は、グルホシネート又はその誘導体の調製方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
グルホシネートは、1980年代にHoechstによって開発された特定の全身作用を伴う、非常に強力で、広域スペクトルの、低毒性、非選択的な(滅菌剤)有機リン除草剤である。それは、一年生又は多年生の双子葉雑草及びイネ科雑草を制御することができる。グルホシネートには、2種(L-及びD-)の鏡像異性体がある。L-グルホシネートの除草力は、ラセミDL-グルホシネートの除草力の2倍強力である。
【0003】
グルホシネートを調製するための既存の方法には、多くの欠点(例えば、複雑なプロセス、大規模生産に適さない、非常に有毒及び/又は高価な試薬の使用)がある。
【0004】
[発明の概要]
本開示は、グルホシネート又はその誘導体を調製するための方法を提供する。この方法で使用される出発原料は、容易に入手可能であり、工程手順は、工業規模の生産に適している。
【0005】
一部の実施形態では、本開示は、式(I)のグルホシネート又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の当該鏡像異性体の混合物を調製するための方法であって、
【化1】

当該方法は、以下の工程:
a)式(II)の化合物又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の当該鏡像異性体の混合物を、式(III)の化合物と反応させる工程と、
【化2】

b)中間体を、それが単離されているかいないかに関わらず、水及び酸又は塩基の存在下で反応させて、グルホシネート(I)又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の当該鏡像異性体の混合物を得る工程と
を含み、
PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことができ、
ここで、
Xはハロゲン、-OAc、-OTs、-OMs又は
【化3】

であり、
Hal、Hal及びHalは、それぞれ独立して、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは-OR、-NH、-NHR又は-N(R)(R)であり、
PGは水素又はアミノ保護基であり、アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)であり、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール、3~10員のヘテロシクリル又は-Si(R)(R)(R)であり、
は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から選択され、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール又は3~10員のヘテロシクリルであり、
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、それぞれ任意選択で、ハロゲン、-OH、=O、-O-(C~Cアルキル)、-C(=O)-(C~Cアルキル)、-C(=O)OH、-C(=O)O-(C~Cアルキル)、-NH、-NO、-CN、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から独立して選択される1つ又は複数の置換基によって置換され、
不斉炭素原子はで表示されている
ことを特徴とする、方法を提供する。
【0006】
一部の実施形態では、本開示は、式(I)-1の化合物又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の当該鏡像異性体の混合物を調製するための方法であって、
【化4】

当該方法は、以下の工程:
a)式(II)の化合物又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の当該鏡像異性体の混合物を、式(III)の化合物と反応させる工程と、
【化5】

b-1)中間体を、それが単離されているかいないかに関わらず、ROHの存在下で(すなわち、酸又は塩基の非存在下で)反応させて、グルホシネート(I)又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の当該鏡像異性体の混合物を得る工程と
を含み、
PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことができ、
ここで、
Xはハロゲン、-OAc、-OTs、-OMs又は
【化6】

であり、
Hal、Hal及びHalは、それぞれ独立して、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは-OR、-NH、-NHR又は-N(R)(R)であり、
PGは水素又はアミノ保護基であり、アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)であり、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール、3~10員のヘテロシクリル又は-Si(R)(R)(R)であり、
は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から選択され、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール又は3~10員のヘテロシクリルであり、
はH、C~Cアルキル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール又は3~10員のヘテロシクリルであり;好ましくは、RはH又はC~Cアルキルであり;より好ましくは、RはH、メチル又はエチルであり、
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、それぞれ任意選択で、ハロゲン、-OH、=O、-O-(C~Cアルキル)、-C(=O)-(C~Cアルキル)、-C(=O)OH、-C(=O)O-(C~Cアルキル)、-NH、-NO、-CN、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から独立して選択される1つ又は複数の置換基によって置換され、
不斉炭素原子はで表示されている
ことを特徴とする、方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、上記工程a)の式(II)の化合物は鏡像異性的に純粋であり、得られた式(I)のグルホシネート若しくはその塩、又は式(I)-1の化合物若しくはその塩も鏡像異性的に純粋である。
【0008】
一部の実施形態では、上記の方法によって得られた式(I)のグルホシネート若しくはその塩又は式(I)-1の化合物若しくはその塩の鏡像異性体比は、(L):(D)-鏡像異性体又は(D):(L)-鏡像異性体が50.5:49.5~99.5:0.5である。
【0009】
一部の実施形態では、上記の方法において、式(II)の化合物と式(III)の化合物とのモル比は2:1以上である。
【0010】
一部の実施形態では、上記の方法において、式(II)の化合物と式(III)の化合物とのモル比は0.2:1~10:1であり、好ましくは0.7:1~5:1である。
【0011】
一部の実施形態では、式(III)の化合物若しくはその溶液は、式(II)の化合物若しくはその溶液に添加され;又は式(II)の化合物若しくはその溶液は、式(III)の化合物若しくはその溶液に添加される。
【0012】
一部の実施形態では、式(III)の化合物若しくはその溶液は、式(II)の化合物若しくはその溶液に少しずつ若しくは一度に添加され;又は式(II)の化合物若しくはその溶液は、式(III)の化合物若しくはその溶液に少しずつ若しくは一度に添加される。
【0013】
一部の実施形態では、Xは塩素、臭素、ヨウ素、-OAc、-OTs、-OMs又は
【化7】

である。
【0014】
一部の実施形態では、Xは塩素である。
【0015】
一部の実施形態では、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~C10アリール又はC~C12アラルキルである。
【0016】
一部の実施形態では、R、R及びRは、それぞれ独立して、C~Cアルキル、C~C10アリール又はC~C12アラルキルである。
【0017】
一部の実施形態では、R、R及びRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル又はナフチルであり;より好ましくはエチルである。
【0018】
一部の実施形態では、Yは-NHCHCHCHCH、-N(CH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHCH、-OCH(CH、-OCHCHCHCH、-OCHCH(CH又は-OBnである。
【0019】
一部の実施形態では、Yは-ORである。
【0020】
一部の実施形態では、Rはエチル又はn-ブチルである。
【0021】
一部の実施形態では、PGは水素、-C(=O)CH、-C(=O)Ph、-C(=O)OC、-C(=O)OC(CH又は
【化8】

である。
【0022】
一部の実施形態では、PGは水素である。
【0023】
一部の実施形態では、式(III)の化合物はジクロロ(メチル)ホスファンである。
【0024】
一部の実施形態では、式(III)の化合物は、唯一のリン含有反応出発原料である。
【0025】
一部の実施形態では、工程a)において、反応温度は-50~200℃であり、好ましくは-20~140℃又は20~100℃である。
【0026】
一部の実施形態では、工程a)は塩基の存在下で実施され、塩基は無機塩基又は有機塩基であり、
好ましくは、(式(II)の化合物+上記塩基)と式(III)の化合物とのモル比は2.5:1以上であり、より好ましくは3:1以上であり、最も好ましくは4:1以上であり、
無機塩基は、好ましくはアンモニア、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩;例えば、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムであり、
有機塩基は、好ましくは活性水素を含有しない有機塩基であり、活性水素を含有しない当該塩基は、好ましくはトリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン又はピリジンであり、当該トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン及びピリジンは、任意選択で第三級アミンの1個又は複数の炭素原子と結合した1~3個の置換基を有し、当該置換基は、ハロゲン、-OH、-O-(C~Cアルキル)、-NH、-NO2、-CN、C~Cアルキル、C~C10シクロアルキル及びC~C10アリールから選択される。
【0027】
一部の実施形態では、工程a)が活性水素を含有する塩基(例えば、アンモニア)の存在下で実施される場合、活性水素を含有する当該塩基は、式(II)の化合物を式(III)の化合物の全部又は一部と混合した後に添加される。
【0028】
一部の実施形態では、工程a)が追加の塩基の非存在下で実施される場合、式(II)の化合物と式(III)の化合物とのモル比は、好ましくは4:1以上である。
【0029】
一部の実施形態では、工程a)は、無溶媒条件下又は不活性溶媒中で実施され、
好ましくは、不活性溶媒は、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、スルホン又はスルホキシド溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のうちのいずれか1種又は複数から選択され;好ましくは、不活性溶媒は、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のうちのいずれか1種又は複数から選択され、
より好ましくは、不活性溶媒は、クロロベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、石油エーテル、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、及び酢酸ブチルのうちのいずれか1種又は複数から選択される。
【0030】
一部の実施形態では、工程b)において、無機酸又は有機酸が添加される。
【0031】
一部の実施形態では、無機酸は塩酸又は硫酸である。
【0032】
一部の実施形態では、工程b)において、塩基は、無機塩基又は有機塩基であり;好ましくは、塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩であり;より好ましくは、塩基は、NaOH、KOH又はBa(OH)である。
【0033】
一部の実施形態では、工程b)において、反応温度は20~150℃である。
【0034】
一部の実施形態では、工程b1)において、反応温度は0℃~100℃であり、好ましくは0℃~80℃であり、より好ましくは20℃~60℃又は30℃~60℃である。
【0035】
本発明の方法は、グルホシネートの調製に特に適しており、既存の調製プロセスの工程を実質的に減少させ、反応収率が優れている。本開示の方法で使用される式(III)の化合物は、低コストで容易に利用可能であり、それによって本開示の方法が工業的な大規模生産に適したものになる。
【0036】
加えて、L-グルホシネートの調製において、生成物は、出発原料のee値を効果的に維持することができる。例えば、鏡像異性的に純粋な出発原料(例えば、鏡像異性体過剰率(%ee)が90%超である)が使用される場合、調製されたL-グルホシネートの鏡像異性体過剰率(%ee)は、例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%超である。
【0037】
定義
特に規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有することが意図される。本明細書で使用される技術への言及は、当業者に明らかであるそれらの技術の変形又は同等の技術の置換を含む、当技術分野で一般に理解されるような技術を指すことが意図される。以下の用語は、当業者によって容易に理解されると考えられるが、それにもかかわらず、以下の定義は、本発明をより良く例示するために示される。
【0038】
本明細書では、用語「含有する(contain)」、「含む(include)」、「含む(comprise)」、「有する(have)」、又は「関する(relate to)」、並びに本明細書で使用される他の変形は、包括的又は非限定的(open-ended)であり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。
【0039】
用語「アミノ保護基」は、アミノ基中の窒素原子に結合してアミノ基を反応に関与することから保護することができ、その後の反応において容易に除去することができる基を指す。適切なアミノ保護基としては、以下の保護基が挙げられるが、これらに限定されない:
式-C(=O)O-R(式中、Rは、例えば、メチル、エチル、tert-ブチル、ベンジル、フェネチル、CH=CH-CH-などである)のカルバメート基;式-C(=O)-R(式中、Rは、例えば、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメチルなどである)のアミド基;式-S(=O)-R(式中、Rは、例えば、トリル、フェニル、トリフルオロメチル、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-イル-、2,3,6-トリメチル-4-メトキシベンゼンなどである)のN-スルホニル誘導体基。
【0040】
用語「アルキル」は、1~18個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝状基を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。1~6個の炭素原子を有するアルキル(すなわち、C~Cアルキル)、例えば、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル及びペンチルが好ましい。アルキルは、置換又は非置換であり得、置換される場合、置換基は、ハロゲン、ニトロ、スルホニル、エーテルオキシ、エーテルチオ、エステル、チオエステル又はシアノであり得る。
【0041】
~Cアルキルは、1~4個の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖を含む直鎖又は分枝鎖である。それは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル又はtert-ブチルであり得る。
【0042】
本明細書では、用語「アルケニル」は、1つ又は複数の二重結合を含有し、2~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状の一価ヒドロカルビル(「C2~6アルケニル」)を指す。アルケニルは、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-メチル-2-プロペニル及び4-メチル-3-ペンテニルである。本発明の化合物がアルケニル基を含有する場合、化合物は、純粋なE(entgegen)形態、純粋なZ(zusammen)形態、又はその任意の混合物として存在し得る。
【0043】
本明細書では、用語「アルキニル」は、1つ又は複数の三重結合を含有し、好ましくは2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する一価ヒドロカルビル、例えば、エチニル又はプロピニルを表す。
【0044】
本明細書では、用語「シクロアルキル」は、飽和単環式又は多環式(例えば、二環式)炭化水素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルなどの単環式、又はスピロ、縮合若しくは架橋環系を含む二環式(ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル又はビシクロ[5.2.0]ノニル、デカヒドロナフタレンなど))を指し、これは1個又は複数(例えば、1~3個)の適切な置換基で任意選択で置換されている。シクロアルキルは、3~15個の炭素原子を有する。例えば、用語「C~C10シクロアルキル」は、3~10個の環形成炭素原子を有する飽和単環式又は多環式(例えば、二環式)炭化水素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル)を指し、これは1個又は複数(例えば、1~3個)の適切な置換基、例えば、メチル置換シクロプロピルで任意選択で置換されている。
【0045】
本明細書では、用語「ヘテロシクリル」は、環内に、2、3、4、5、6、7、8又は9個の炭素原子と、C(=O)、O、S、S(=O)、S(=O)、及びNR(式中、Rは水素原子、C1~6アルキル、又はC1~6ハロアルキル基を表す)からなる群から選択される1個又は複数(例えば、1、2、3又は4個)のヘテロ原子含有基とを有する飽和又は不飽和の、一価の、単環式又は二環式残基を指す。ヘテロシクリルは、炭素原子又は窒素原子(存在する場合)のいずれか1個を介して残りの分子と結合していてもよい。特に、3~10員のヘテロシクリルは、環内に3~10個の炭素原子とヘテロ原子(複数可)とを有する基、例えば、これらに限定されないが、オキシラニル、アジリジニル、アゼチジニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソリニル、ピロリジニル、ピロリジノニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ピペラジニル又はトリチアニルを指す。
【0046】
本明細書では、用語「アリール」は、共役π電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式芳香族基を指す。例えば、本明細書では、用語「C~C10アリール」は、6~10個の炭素原子を含む芳香族基、例えば、フェニル又はナフチルを指す。アリールは、1個又は複数(例えば、1~3個)の適切な置換基(例えば、ハロゲン、-OH、-CN、-NO、C1~6アルキル)で任意選択で置換されている。
【0047】
本明細書では、用語「アラルキル」は、好ましくはアリール置換アルキルを意味し、ここで、アリール及びアルキルは本明細書で定義されている通りである。通常は、アリール基は、6~10個の炭素原子を有していてもよく、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有していてもよい。例示的なアラルキル基としては、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書では、用語「ヘテロアリール」は、5、6、8、9、10、11、12、13又は14個の環原子、特に1又は2又は3又は4又は5又は6又は9又は10個の炭素原子を有し、同じであっても異なっていてもよい少なくとも1個のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を含有する一価の単環式、二環式又は三環式芳香族環系を指す。さらに、それぞれの場合において、ヘテロアリールはベンゾ縮合していてもよい。特に、ヘテロアリールは、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリルなど、及びそのベンゾ誘導体;又はピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなど、及びそのベンゾ誘導体からなる群から選択される。
【0049】
本明細書では、用語「置換された」は、指定された原子上の1個又は複数(例えば、1個、2個、3個、又は4個)の水素が、指摘された基から選択されるもので置き換えられていることを意味するが、ただし、既存の状況下での指定された原子の通常の原子価を超えず、置換により安定な化合物がもたらされる。置換基及び/又は変数の組合せは、そのような組合せが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0050】
本明細書では、用語「活性水素を含有しない塩基」は、分子中にNH、OH、SH及びPHなどの基を含まない塩基を指す。
【0051】
本明細書では、「全ての比率の鏡像異性体の混合物」は、「任意の比率の鏡像異性体の混合物」と同じ意味を有する。
【0052】
[発明の詳細な説明]
実施例1
【化9】

クロロベンゼン(835g)中のクロロホモセリンエチルエステル(2.1当量、162g、0.987mol、ee値99%)の溶液及びトリエチルアミン(2.1当量、100g、0.987mol)を、1Lの四つ口フラスコに添加し、添加後に窒素置換を実施し、氷水浴中で温度を0℃に下げた。クロロベンゼン(127.4g)中のMDP(1当量、55g、0.47mol)の溶液を、定圧滴下漏斗に添加し、温度を0~5℃に制御しながら滴下を開始し、1.5時間で完了した。
【0053】
得られた反応溶液を油浴中で90℃まで加熱し、2時間反応させた。反応完了後、反応溶液を30℃まで自然冷却し、ろ過し、ろ過ケーキをクロロベンゼン(200g)で洗浄した。
【0054】
ろ液を水(300g)と一緒に添加し、50℃で1時間撹拌し、次いで25%アンモニア水(40g)を添加してpHを7に調整した。中和後に相を分離し、二次抽出のために水(100g)を下部の有機相に添加した。水相を合わせ、減圧下で粘性状態まで濃縮し、そこに塩酸500gを添加し、加水分解のために100℃まで8時間加熱した。試料を採取して、反応溶液中のグルホシネート酸の絶対量及びee値を決定した。MDPの量から計算されたグルホシネート酸(85.1g)の理論収率に基づいて、グルホシネート酸の収率は92.6%であり、ee値は98%であった。
【0055】
実施例2:
【化10】

クロロベンゼン(255g)中のクロロホモセリンエチルエステル(濃度30%w/w、2.1当量、0.46mol、ee:99%)の溶液及びトリエチルアミン46.7g(2.1当量)を、1Lの四つ口フラスコに添加し、氷水浴中で0℃に冷却した。窒素置換を3回行った。クロロベンゼン(60.5g)中のMDP(濃度43.17%w/w、1当量、0.22mol)の溶液を、定圧滴下漏斗に添加し、約1.5時間にわたる滴下中に温度を0~5℃に維持しながら、窒素の保護下でMDPを1滴ずつ添加した。滴下完了後、反応混合物を段階的に温めた:初めに60℃まで温め、1時間反応させ、次いで80℃まで温め、0.5時間反応させ、次いで20~30℃まで自然冷却した。混合物を吸引ろ過し、ろ過ケーキをクロロベンゼン110gで洗浄し、ろ液を次の反応のために放置した。
【0056】
上記のろ液を1Lの四つ口フラスコに添加し、水160gと一緒に添加し、50℃まで温め、機械的に1時間撹拌した。次いで、アンモニア水20g(濃度25%w/w、1.33当量、0.29mol)を50℃で添加して、pHを7~8に調整し、混合物を5分間撹拌し、中和後に相を分離した。生成物は水相にあった。下部の有機相を水(60g×2)で抽出した。水相を合わせ、水相中のクロロホモセリンエチルエステルをクロロベンゼン100gで逆抽出した。最終水相を次の加水分解に供し、有機相を、クロロホモセリンエチルエステルの出発原料の回収のために維持した。
【0057】
上記の最終水相を減圧下で蒸留して、水の大部分を除去し、粘性状態まで濃縮し、そこに塩酸250g(濃度30%w/w、9.3当量、2.1mol)を添加し、加水分解のために100℃まで8時間加熱した。試料を採取して、グルホシネート酸の絶対量(LCによって)及びee値を決定した。MDPの量から計算されたグルホシネート酸の理論収率に基づいて、グルホシネート酸の収率は92.6%であり、ee値は98%であった。
【0058】
試料を採取して、上述の有機相中のクロロホモセリンエチルエステルの絶対量(LCによって)及びee値を決定した。計算すると、過剰クロロホモセリンエチルエステル(1.1当量)の回収率は95%であり、ee値は96%であることが決定した。
【0059】
実施例3:
【化11】

クロロベンゼン(375g)中のクロロホモセリンエチルエステル(濃度40%w/w、4.1当量、0.91mol、ee:96.3%)の溶液を、1Lの四つ口フラスコに添加し、氷水浴中で0℃に冷却した。窒素置換を3回行った。クロロベンゼン(60.5g)中のMDP(濃度43.17%w/w、1当量、0.22mol)の溶液を、定圧滴下漏斗に添加し、約1.5時間にわたる滴下中に温度を0~5℃に維持しながら、窒素の保護下でMDPを1滴ずつ添加した。滴下完了後、反応混合物を段階的に温めた:初めに60℃まで温め、1時間反応させ、次いで80℃まで温め、0.5時間反応させ、次いで自然冷却した。
【0060】
内部温度を60℃まで下げ、水160gを添加し、温度を50℃に調整し、反応混合物を機械的に1時間撹拌した。アンモニア水50g(濃度25%w/w、3.3当量、0.74mol)を50℃で添加して、pHを7~8に調整し、混合物を5分間撹拌し、中和後に相を分離した。生成物は水相にあった。下部の有機相を水(60g×2)で抽出した。水相を合わせ、水相中のクロロホモセリンエチルエステルをクロロベンゼン100gで逆抽出した。最終水相を次の加水分解に供し、有機相を、クロロホモセリンエチルエステルの出発原料の回収のために維持した。
【0061】
上記の最終水相を減圧下で蒸留して、水の大部分を除去し、粘性状態まで濃縮し、そこに塩酸250g(濃度30%w/w、9.3当量、2.1mol)を添加し、加水分解のために100℃まで8時間加熱した。試料を採取して、グルホシネート酸の絶対量(LCによって)及びee値を決定した。MDPの量から計算されたグルホシネート酸の理論収率に基づいて、グルホシネート酸の収率は92.8%であり、ee値は93.8%であった。
【0062】
試料を採取して、上述の有機相中のクロロホモセリンエチルエステルの絶対量(LCによって)及びee値を決定した。計算すると、過剰クロロホモセリンエチルエステル(3.1当量)の回収率は98%であり、ee値は94%であることが決定した。
【0063】
実施例4:
【化12】

クロロベンゼン(375g)中のクロロホモセリンエチルエステル(濃度40%w/w、2.75当量、0.91mol、ee:96.3%)の溶液を、1Lの四つ口フラスコに添加し、氷水浴中で0℃に冷却した。窒素置換を3回行った。クロロベンゼン(53g)中のMDP(濃度49%w/w、2/3当量、0.22mol)の溶液を、定圧滴下漏斗に添加し、約1.5時間にわたる滴下中に温度を0~5℃に維持しながら、窒素の保護下でMDPを1滴ずつ添加した。滴下完了後、混合物を30分間撹拌し、アンモニアガスを200mL/分の速度で45分間ポンプ供給し、それはガスがオーバーフローするまで停止し、アンモニアガスの合計量は7.5g(1.33当量、0.44mol)であった。次いで、温度を15~20℃まで温め、アンモニアを-0.095MPaの真空下で30分間除去し、窒素をポンプ供給した。反応混合物を0~10℃まで冷却し、さらなるクロロベンゼン(13.2g)中のMDP(濃度49%w/w、1/3当量、0.11mol)の溶液を滴下した。滴下完了後、反応混合物を段階的に温めた:初めに60℃まで温め、1時間反応させ、次いで80℃まで温め、0.5時間反応させ、次いで自然冷却した。
【0064】
内部温度を60℃まで下げ、水200gを添加し、内部温度を50℃に調整し、反応混合物を機械的に1時間撹拌した。アンモニア水50g(濃度25%w/w、2.3当量、0.75mol)を50℃で添加して、pHを7~8に調整し、混合物を5分間撹拌し、中和後に相を分離した。生成物は水相にあった。下部の有機相を水(60g×2)で抽出した。水相を合わせ、水相中のクロロホモセリンエチルエステルをクロロベンゼン100gで逆抽出した。最終水相を次の加水分解に供し、有機相を、クロロホモセリンエチルエステルの出発原料の回収のために維持した。
【0065】
上記の最終水相を減圧下で蒸留して、水の大部分を除去し、粘性状態まで濃縮し、そこに塩酸373g(濃度30%w/w、9.3当量、3.07mol)を添加し、加水分解のために100℃まで8時間加熱した。試料を採取して、グルホシネート酸の絶対量(LCによって)及びee値を決定した。MDPの量から計算されたグルホシネート酸の理論収率に基づいて、グルホシネート酸の収率は90.77%であり、ee値は92.3%であった。
【0066】
試料を採取して、上述の有機相中のクロロホモセリンエチルエステルの絶対量(LCによって)及びee値を決定した。計算すると、過剰クロロホモセリンエチルエステル(1.75当量)の回収率は95.2%であり、ee値は93.5%であることが決定した。
【0067】
実施例5:
【化13】

キシレン(163.4g)中のクロロホモセリンエチルエステル(濃度41.5%w/w、2.1当量、0.35mol、ee:99%)の溶液及びトリエチルアミン35.4g(2.1当量)を、1Lの四つ口フラスコに添加し、氷水浴中で0℃に冷却した。窒素置換を3回行った。キシレン(38.7g)中のMDP(濃度50%w/w、1当量、0.165mol)の溶液を、定圧滴下漏斗に添加し、約1.5時間にわたる滴下中に温度を0~5℃に維持しながら、窒素の保護下でMDPを1滴ずつ添加した。滴下完了後、反応混合物を段階的に温めた:初めに60℃まで温め、1時間反応させ、次いで80℃まで温め、0.5時間反応させ、次いで20~30℃まで自然冷却した。混合物を吸引ろ過し、ろ過ケーキをキシレン150gで洗浄し、ろ液を次の反応のために放置した。
【0068】
上記のろ液を1Lの四つ口フラスコに添加し、水180gと一緒に添加し、50℃まで温め、機械的に1時間撹拌した。アンモニア水20g(濃度25%w/w、1.78当量、0.29mol)を50℃で添加して、pHを7~8に調整し、混合物を5分間撹拌し、中和後に相を分離した。生成物は水相にあった。上部の有機相を水(60g×2)で抽出した。水相を合わせ、水相中のクロロホモセリンエチルエステルをキシレン100gで逆抽出した。最終水相を次の加水分解に供し、有機相を、クロロホモセリンエチルエステルの出発原料の回収のために維持した。
【0069】
上記の最終水相を減圧下で蒸留して、水の大部分を除去し、粘性状態まで濃縮し、そこに塩酸255g(濃度30%w/w、12.7当量、2.1mol)を添加し、加水分解のために100℃まで8時間加熱した。試料を採取して、グルホシネート酸の絶対量(LCによって)及びee値を決定した。MDPの量から計算されたグルホシネート酸の理論収率に基づいて、グルホシネート酸の収率は87.5%であり、ee値は97.10%であった。
【0070】
試料を採取して、上述の有機相中のクロロホモセリンエチルエステルの絶対量(LCによって)及びee値を決定した。計算すると、過剰クロロホモセリンエチルエステル(1.1当量)の回収率は95%であり、ee値は98.25%であることが決定した。
【0071】
実施例6:
【化14】

キシレン(470.5g)中のクロロホモセリンエチルエステル(濃度38.54%w/w、4.1当量、0.935mol、ee:99.6%)の溶液を、1Lの四つ口フラスコに添加し、氷水浴中で0~5℃に冷却した。窒素置換を3回行った。キシレン(53.35g)中のMDP(濃度50%w/w、1当量、0.228mol)の溶液を、定圧滴下漏斗に添加し、約1.5時間にわたる滴下中に温度を0~5℃に維持しながら、窒素の保護下でMDPを1滴ずつ添加した。滴下完了後、反応混合物を80℃まで温め、2時間反応させ、次いで自然冷却した。
【0072】
内部温度を70℃まで下げ、水160gを添加し、温度を70℃に調整し、反応混合物を機械的に1時間撹拌した。アンモニア水50g(濃度25%w/w、3.2当量、0.74mol)を25~30℃で添加して、pHを7~8に調整し、混合物を5分間撹拌し、中和後に相を分離した。生成物は水相にあった。上部の有機相を水(60g×2)で抽出した。水相を合わせ、水相中のクロロホモセリンエチルエステルをキシレン100gで逆抽出した。最終水相を次の加水分解に供し、有機相を、クロロホモセリンエチルエステルの出発原料の回収のために維持した。
【0073】
上記の最終水相を減圧下で蒸留して、水の大部分を除去し、粘性状態まで濃縮し、そこに塩酸250g(濃度30%w/w、9.2当量、2.1mol)を添加し、加水分解のために100℃まで8時間加熱した。試料を採取して、グルホシネート酸の絶対量(LCによって)及びee値を決定した。MDPの量から計算されたグルホシネート酸の理論収率に基づいて、グルホシネート酸の収率は88%であり、ee値は97.29%であった。
【0074】
試料を採取して、上述の有機相中のクロロホモセリンエチルエステルの絶対量(LCによって)及びee値を決定した。計算すると、過剰クロロホモセリンエチルエステル(3.1当量)の回収率は95.73%であり、ee値は95.68%であることが決定した。
【0075】
実施例7:
【化15】

キシレン(370.9g)中のクロロホモセリンエチルエステル(濃度38.54%w/w、2.75当量、0.69mol、ee:99.6%)の溶液を、1Lの四つ口フラスコに添加し、氷水浴中で0℃に冷却した。窒素置換を3回行った。キシレン(39.2g)中のMDP(濃度50%w/w、2/3当量)の溶液を、定圧滴下漏斗に添加し、約1.5時間にわたる滴下中に温度を0~5℃に維持しながら、窒素の保護下でMDPを1滴ずつ添加した。滴下完了後、混合物を10~30分間撹拌し、アンモニアガスを200mL/分の速度で30分間ポンプ供給し、それはガスがオーバーフローするまで停止し、アンモニアガスの合計量は5.7g(1.33当量、0.33mol)であった。次いで、温度を15~20℃まで温め、アンモニアを-0.095MPaの真空下で20~30分間除去し、窒素をポンプ供給した。反応混合物を0~10℃まで冷却し、さらなるキシレン(19.5g)中のMDP(濃度50%w/w、1/3当量)の溶液を滴下した。反応混合物を80℃まで温め、0.5時間反応させ、次いで自然冷却した。
【0076】
内部温度を70℃まで下げ、水180gを添加し、内部温度を70℃に調整し、反応混合物を機械的に1時間撹拌した。アンモニア水50g(濃度25%w/w、2.96当量、0.74mol)を25~30℃で添加して、pHを7~8に調整し、混合物を5分間撹拌し、中和後に相を分離した。生成物は水相にあった。上部の有機相を水(60g×2)で抽出した。水相を合わせ、水相中のクロロホモセリンエチルエステルをキシレン100gで逆抽出した。最終水相を次の加水分解に供し、有機相を、クロロホモセリンエチルエステルの出発原料の回収のために維持した。
【0077】
上記の最終水相を減圧下で蒸留して、水の大部分を除去し、粘性状態まで濃縮し、そこに塩酸250g(濃度30%w/w、8.4当量、2.1mol)を添加し、加水分解のために100℃まで8時間加熱した。試料を採取して、グルホシネート酸の絶対量(LCによって)及びee値を決定した。MDPの量から計算されたグルホシネート酸の理論収率に基づいて、グルホシネート酸の収率は85.2%であり、ee値は97.61%であった。
【0078】
試料を採取して、上述の有機相中のクロロホモセリンエチルエステルの絶対量(LCによって)及びee値を決定した。計算すると、過剰クロロホモセリンエチルエステル(1.75当量)の回収率は95.68%であり、ee値は96.15%であることが決定した。
【0079】
実施例8:
【化16】

クロロベンゼン(375g)中のクロロホモセリンエチルエステル(濃度40%w/w、2.75当量、0.91mol、ee:96.3%)の溶液を、1Lの四つ口フラスコに添加し、氷水浴中で0℃に冷却した。窒素置換を3回行った。クロロベンゼン(53g)中のMDP(濃度49%w/w、2/3当量、0.22mol)の溶液を、定圧滴下漏斗に添加し、約1.5時間にわたる滴下中に温度を0~5℃に維持しながら、窒素の保護下でMDPを1滴ずつ添加した。滴下完了後、混合物を30分間撹拌し、アンモニアガスを200mL/分の速度で45分間ポンプ供給し、それはガスがオーバーフローするまで停止し、アンモニアガスの合計量は7.5g(1.33当量、0.44mol)であった。次いで、温度を15~20℃まで温め、アンモニアを-0.095MPaの真空下で30分間除去し、窒素をポンプ供給した。反応混合物を0~10℃まで冷却し、さらなるクロロベンゼン(13.2g)中のMDP(濃度49%w/w、1/3当量、0.11mol)の溶液を滴下した。滴下完了後、反応混合物を段階的に温めた:初めに60℃まで温め、1時間反応させ、次いで80℃まで温め、0.5時間反応させ、次いで自然冷却した。
【0080】
内部温度を60℃まで下げ、水200gを添加し、内部温度を50℃に調整し、反応混合物を機械的に1時間撹拌した。アンモニア水50g(濃度25%w/w、2.3当量、0.75mol)を50℃で添加して、pHを7~8に調整し、混合物を5分間撹拌し、中和後に相を分離した。生成物は水相にあった。下部の有機相を水(60g×2)で抽出した。水相を合わせ、水相中のクロロホモセリンエチルエステルをクロロベンゼン100gで逆抽出した。有機相を、クロロホモセリンエチルエステルの出発原料の回収のために維持した。
【0081】
試料を採取して、MPNの絶対量(LCによって)を決定した。MDPの量から計算されたMPNの理論収率に基づいて、MPNの収率は77.5%であった。
【0082】
試料を採取して、上述の有機相中のクロロホモセリンエチルエステルの絶対量(LCによって)及びee値を決定した。計算すると、過剰クロロホモセリンエチルエステル(1.75当量)の回収率は97.8%であり、ee値は95.3%であることが決定した。
【0083】
本明細書に記載されたものに加えて、前述の記載に従って、本発明に対する種々の変更が当業者に明らかであろう。そのような変更は、添付の請求の範囲内にあるものとする。本明細書に引用される各参考文献(全ての特許、特許出願、学術論文、書籍、及び任意の他の開示を含む)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のグルホシネート又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を調製するための方法であって、
【化1】

前記方法は、以下の工程:
a)式(II)の化合物又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を式(III)の化合物と反応させる工程と、
【化2】

b)中間体を、それが単離されているかいないかに関わらず、水及び酸又は塩基の存在下で反応させて、グルホシネート(I)又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を得る工程と
を含み、
PGがアミノ保護基である場合、前記アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことができ、
ここで、
Xはハロゲン、-OAc、-OTs、-OMs又は
【化3】

であり、
Hal、Hal及びHalは、それぞれ独立して、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは-OR、-NH、-NHR又は-N(R)(R)であり、
PGは水素又はアミノ保護基であり、アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)であり、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール、3~10員のヘテロシクリル又は-Si(R)(R)(R)であり、
は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から選択され、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール又は3~10員のヘテロシクリルであり、
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、それぞれ任意選択で、ハロゲン、-OH、=O、-O-(C~Cアルキル)、-C(=O)-(C~Cアルキル)、-C(=O)OH、-C(=O)O-(C~Cアルキル)、-NH、-NO、-CN、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から独立して選択される1つ又は複数の置換基によって置換され、
不斉炭素原子はで表示されている
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
式(I)-1の化合物又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を調製するための方法であって、
【化4】

前記方法は、以下の工程:
a)式(II)の化合物又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を、式(III)の化合物と反応させる工程と、
【化5】

b-1)中間体を、それが単離されているかいないかに関わらず、ROHの存在下で反応させて、グルホシネート(I)又はその塩、その鏡像異性体又は全ての比率の前記鏡像異性体の混合物を得る工程と
を含み、
PGがアミノ保護基である場合、前記アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことができ、
ここで、
Xはハロゲン、-OAc、-OTs、-OMs又は
【化6】

であり、
Hal、Hal及びHalは、それぞれ独立して、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは-OR、-NH、-NHR又は-N(R)(R)であり、
PGは水素又はアミノ保護基であり、アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)であり、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール、3~10員のヘテロシクリル又は-Si(R)(R)(R)であり、
は、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から選択され、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール又は3~10員のヘテロシクリルであり、
はH、C~Cアルキル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール又は3~10員のヘテロシクリルであり;好ましくは、RはH又はC~Cアルキルであり;より好ましくは、RはH、メチル又はエチルであり、
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、それぞれ任意選択で、ハロゲン、-OH、=O、-O-(C~Cアルキル)、-C(=O)-(C~Cアルキル)、-C(=O)OH、-C(=O)O-(C~Cアルキル)、-NH、-NO、-CN、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10アリール、C~C12アラルキル、5~14員のヘテロアリール及び3~10員のヘテロシクリルからなる群から独立して選択される1つ又は複数の置換基によって置換され、
不斉炭素原子はで表示されている
ことを特徴とする、方法。
【請求項3】
工程a)の式(II)の化合物が鏡像異性的に純粋であり、得られた式(I)のグルホシネート若しくはその塩、又は式(I)-1の化合物若しくはその塩も鏡像異性的に純粋である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)のグルホシネート若しくはその塩又は式(I)-1の化合物若しくはその塩の鏡像異性体比は、(L):(D)-鏡像異性体又は(D):(L)-鏡像異性体が50.5:49.5~99.5:0.5である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
式(II)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が2:1以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
式(III)の化合物又はその溶液が、式(II)の化合物若しくはその溶液に添加され;又は式(II)の化合物若しくはその溶液が、式(III)の化合物若しくはその溶液に添加され;
好ましくは、式(III)の化合物若しくはその溶液が、式(II)の化合物若しくはその溶液に少しずつ若しくは一度に添加され;又は式(II)の化合物若しくはその溶液が、式(III)の化合物若しくはその溶液に少しずつ若しくは一度に添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
Xが塩素、臭素、ヨウ素、-OAc、-OTs、-OMs又は
【化7】

であり、
好ましくは、Xが塩素である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
、R及びRが、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~C10アリール又はC~C12アラルキルであり、
好ましくは、R、R及びRが、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル又はナフチルであり;より好ましくはエチルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
Yが-NHCHCHCHCH、-N(CH、-OCH、-OCHCH、-OCHCHCH、-OCH(CH、-OCHCHCHCH、-OCHCH(CH又は-OBnである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
Yが-ORであり、Rが、好ましくはエチル又はn-ブチルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
PGが水素、-C(=O)CH、-C(=O)Ph、-C(=O)OC、-C(=O)OC(CH又は
【化8】

であり、
好ましくは、PGが水素である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
式(III)の化合物がジクロロ(メチル)ホスファンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
式(III)の化合物が唯一のリン含有反応出発原料である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
工程a)において、反応温度が-50~200℃であり、好ましくは-20~140℃又は20~100℃である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
工程a)が塩基の存在下で実施され、前記塩基が無機塩基又は有機塩基であり、
好ましくは、(式(II)の化合物+上記塩基)と式(III)の化合物とのモル比が2.5:1以上であり、より好ましくは3:1以上であり、最も好ましくは4:1以上であり、
無機塩基が、好ましくはアンモニア、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩;例えば、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムであり、
有機塩基が、好ましくは活性水素を含有しない有機塩基であり、活性水素を含有しない前記塩基が、好ましくはトリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン又はピリジンであり、前記トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン及びピリジンが、任意選択で第三級アミンの1個又は複数の炭素原子と結合した1~3個の置換基を有し、前記置換基が、ハロゲン、-OH、-O-(C~Cアルキル)、-NH、-NO2、-CN、C~Cアルキル、C~C10シクロアルキル及びC~C10アリールから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
工程a)が追加の塩基の非存在下で実施される場合、式(II)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が、好ましくは4:1以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項17】
工程a)が無溶媒条件下又は不活性溶媒中で実施され、
好ましくは、不活性溶媒が、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、スルホン又はスルホキシド溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のうちのいずれか1種又は複数から選択され;好ましくは、不活性溶媒が、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のうちのいずれか1種又は複数から選択され、
より好ましくは、不活性溶媒が、クロロベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、石油エーテル、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、及び酢酸ブチルのうちのいずれか1種又は複数から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
工程b)において、無機酸又は有機酸が添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
無機酸が塩酸又は硫酸である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程b)において、塩基が無機塩基又は有機塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
塩基がNaOH、KOH又はBa(OH)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程b)において、反応温度が20~150℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
工程b1)において、反応温度が0℃~100℃であり、好ましくは0℃~80℃であり、より好ましくは20℃~60℃又は30℃~60℃である、請求項2に記載の方法。
【国際調査報告】