(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20241212BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20241212BHJP
B60C 11/24 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 Z
B60C11/24 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535332
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2022085307
(87)【国際公開番号】W WO2023110713
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリオ ボルトロット
(72)【発明者】
【氏名】マルコ パスクッチ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ アレヴァ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131LA21
3D131LA34
(57)【要約】
車両のタイヤ摩耗速度を算出するコンピュータ実装方法であって、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを取得するステップと、車両の技術データを取得するステップと、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを取得するステップと、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、取得された車両の技術データ、及び取得された車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータに少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出するステップとを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤ摩耗速度を算出するコンピュータ実装方法(700)であって、
車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを取得するステップ(710)と、
前記車両の技術データを取得するステップ(720)と、
前記車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを取得するステップ(730)と、
セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って、取得された前記車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、取得された前記車両の技術データ、及び取得された前記車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータに少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出するステップ(740)と
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、タイヤ摩耗速度を算出するステップは、
タイヤ摩耗速度を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムの1つを選択するステップ
をさらに含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、タイヤ摩耗速度を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムの1つを選択するステップは、
前記タイヤ摩耗速度を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムを実行するステップと、
前記複数のアルゴリズムのうち、取得された前記少なくとも1つの動作中測定のデータに基づくタイヤ摩耗速度に最も近い前記タイヤ摩耗速度の算出値を出すアルゴリズムを選択するステップと
を含む方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、前記セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルは、前記車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの動作中測定のデータに基づいてチューニングされる方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、前記セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルは、複数の算出タイヤ摩耗速度に基づいてチューニングされ、該複数の算出タイヤ摩耗速度は、複数の車両から取得されたデータに基づき、該取得されたデータは、前記車両のそれぞれの少なくとも1つのタイヤの技術データ、前記車両のそれぞれの技術データ、及び前記車両のそれぞれの少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを含む方法。
【請求項6】
車両のタイヤ摩耗速度を算出するコンピュータ実装方法(800)であって、
車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを送信するステップ(810)と、
前記車両の技術データを送信するステップ(820)と、
前記車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを送信するステップ(830)と、
送信された前記車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、送信された前記車両の技術データ、及び送信された前記車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータに少なくとも一部基づく算出タイヤ摩耗速度を取得するステップ(840)であり、該算出タイヤ摩耗速度はセルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出されるステップ(840)と
を含む方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、
前記算出タイヤ摩耗速度に基づいて、残存トレッド深さ及び/又は前記タイヤの残走行距離及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を推定するステップ
をさらに含む方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、
前記算出タイヤ摩耗速度、推定された前記残存トレッド深さ、前記タイヤの残走行距離、及び前記設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間の少なくとも1つを、制御システムに報告するステップ
をさらに含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記制御システムは前記車両に配置される方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記制御システムは、前記車両の外部に配置され、複数の車両から、前記算出タイヤ摩耗速度、推定された前記残存トレッド深さ、前記タイヤの残走行距離、及び前記設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を少なくとも収集することを可能にする方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法において、前記車両の少なくとも1つのタイヤの技術データは、タイヤ製造業者、タイヤモデル、タイヤパターン、タイヤ仕様、タイヤサイズ、タイヤ装着位置、リトレッド情報、及び前記タイヤのバッチ番号の少なくとも1つを含む方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法において、前記車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の動作中測定を実行するステップは、動作中の前記残存トレッド深さを測定するステップと、好ましくは、測定された前記残存トレッド深さを前記車両のオドメータの状態に関連付けるステップとを含む方法。
【請求項13】
車両のタイヤ摩耗速度を監視する装置であって、前記方法は、
車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを取得する手段と、
前記車両の技術データを取得する手段と、
前記車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを取得する手段と、
セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って、取得された前記車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、取得された前記車両の技術データ、及び取得された前記車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータに少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出する手段と
を備えた装置。
【請求項14】
車両のタイヤ摩耗速度を監視する装置であって、前記方法は、
車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを送信する手段と、
前記車両の技術データを送信する手段と、
前記車両のテレマティクス情報を送信する手段と、
送信された前記車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、送信された前記車両の技術データ、及び送信された前記車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータに少なくとも一部基づく算出タイヤ摩耗速度を取得する手段であり、該算出タイヤ摩耗速度はセルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出される手段と
を備えた装置。
【請求項15】
請求項13に記載の装置において、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法のいずれか1つを実行するよう構成された装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装置において、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法のいずれか1つを実行するよう構成された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包括的には、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法及び装置を対象とする。
【背景技術】
【0002】
タイヤ摩耗速度は、交通安全に寄与する必須要素である。タイヤの交換が遅すぎると、危険な交通状況又は事故にさえつながる場合があり、重症又は死亡に至る可能性があると共に賠償責任のリスクが高まる可能性もある。したがってタイヤを適時に交換できるか否かは、安全性の問題だけでなく、経済的問題でもある。タイヤ交換に適切な時点を逃すと、潜在的な事故又は損害により多額の費用がかかる場合があり、交換が早すぎると、フリートコストが追加され得る。早すぎるタイヤ交換は貴重な資源の浪費につながり得るので、適切なタイヤライフサイクル管理は持続可能性の問題でもある。
【0003】
タイヤ交換に適切な時点の判断は、車両ロジスティクス又はフリート管理の重要な成功要因でもある。車両のタイヤ交換を適時にスケジューリングすること、又は車両の他のコンポーネントの保守と組み合わせてタイヤ交換をスケジューリングすることができることにより、非稼働期間をできる限り短くすることができ、特に商業的用途の点でコスト削減及び信頼性向上が得られる。例えば、タイヤ交換時に、残寿命が僅かしかない車両の他のコンポーネントも交換することができる。特に、複数の長距離トラックを含むフリートを管理する場合、タイヤの摩耗速度の適切な監視は、例えば利用可能なトラックのうち特定のルートに最適なトラックを決定するのに重要である。
【0004】
したがって、タイヤ交換に適切な時点を精度よく予測できることが、モビリティ及び物資の運送をより安全に、環境に優しく、確実に、且つより経済的にするために重要な要素である。
【0005】
タイヤ摩耗の推定によりタイヤ摩耗速度を監視する従来の方法は、純粋に静的な数理モデル又はタイヤ内の高価な専用センサに基づくか、又はそれらの組み合わせである。純粋に静的な数理モデルの使用は、精度不足につながり、したがってタイヤ交換の適切な時点を正確に予測するという目標を達成できなくする。純粋に静的な数理モデルに固有の手法の欠点を克服するために、センサベースの方法が開発されている。しかしながら、各センサは高価であり、タイヤ交換時に余計な手間がかかる。さらに、タイヤセンサと車両の電子機器との間の適切な通信には、システム全体を複雑にする追加要因が伴う。さらに、タイヤ交換時にタイヤのセンサも交換しなければならない場合がある。これは、コスト高だけでなく廃棄物の増加、したがって環境フットプリントの増加にもつながる。
【0006】
特許文献1は、車両データ及び/又はタイヤデータを車両の車両メモリユニットにより利用可能とする、車両のタイヤに関するデータを利用可能にする方法を開示しており、この場合、車両データは車両に配置されたセンサにより取得される。車両データ及び/又はタイヤデータは、車両のタイヤの少なくとも1つの特性に関する情報を有する。車両のタイヤのタイヤ摩耗確率が、車両データ及び/又はタイヤデータの関数として取得される。
【0007】
特許文献2は、センサデータに基づくタイヤ摩耗推定システムを提供する。この開示のシステムでは、少なくとも1つのセンサが、第1の予測変数を生成するためにタイヤに取り付けられている。ルックアップテーブルまたはデータベースが、第2の予測変数に関するデータを記憶する。予測変数のうちの1つが、少なくとも1つの乗物影響を含む。モデルが、予測変数を受け取り、少なくとも1つのタイヤに関する推定摩耗率を生成する。
【0008】
特許文献3は、車両統合型の予想トレッド寿命インジケータシステム及びその動作方法を開示している。この開示の方法では、1つ又は複数のトレッド深さ測定に関連するデータが受信される。1つ又は複数のトレッド深さ測定は、車両の外部の測定装置により行われた。1つ又は複数のトレッド深さ測定値は、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つのトレッドのトレッド深さを表す。この方法は、各距離値を1つ又は複数のトレッド深さ測定値のそれぞれに関連付けるステップと、1つ又は複数のトレッド深さ測定値を予想トレッド深さに相関させるモデルにアクセスするステップとを含む。この方法は、モデルに少なくとも一部基づいて、予想トレッド深さがトレッド深さ閾値に等しいか又はこれを超えると予想される推定距離を求めるステップを含む。この方法は、推定距離を車両の通知システムに供給するステップを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0001482号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0272813号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0009618号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ビッグデータ及び機械学習の出現で、今日では以前にも増して堅牢で汎用性の高いツールチェーンが利用可能である。これらの技術に基づいて、車両のタイヤ摩耗速度をより高い精度で監視することで、残存トレッド深さ、残走行距離、又はタイヤ交換までの残時間の正確な予測が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視する様々なコンピュータ実装方法及び装置の本開示により達成される。
【0012】
第1の態様によれば、本開示は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視する第1のコンピュータ実装方法を提供する。本方法は、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを取得するステップと、車両の技術データを取得するステップと、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを取得するステップと、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、取得された車両の技術データ、及び取得された車両のテレマティクス情報に少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出するステップとを含む。このコンピュータ実装方法は、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルによるタイヤ摩耗の正確な表現を可能にする。
【0013】
第1の態様の一例によれば、本方法は、タイヤ摩耗速度を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムの1つを選択するステップをさらに含み得る。
【0014】
第1の態様のさらに別の例によれば、本方法は、タイヤ摩耗速度を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムを実行するステップと、複数のアルゴリズムのうち、取得された少なくとも1つの動作中測定のデータに基づくタイヤ摩耗速度に最も近いタイヤ摩耗速度の算出値を出すアルゴリズムを選択するステップとをさらに含み得る。
【0015】
第1の態様の別の例によれば、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルは、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの動作中測定のデータに基づいてチューニングされる。
【0016】
第1の態様のさらにまた別の例によれば、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルは、複数の算出タイヤ摩耗速度に基づいてチューニングされ、複数の算出タイヤ摩耗速度は、複数の車両から取得されたデータに基づき、取得されたデータは、車両のそれぞれの少なくとも1つのタイヤの技術データ、車両のそれぞれの技術データ、及び車両のそれぞれの少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを含む。
【0017】
第1の態様の別の例によれば、本方法は、算出タイヤ摩耗速度に基づいて、残存トレッド深さ及び/又はタイヤの残走行距離及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を推定するステップを含む。
【0018】
第1の態様の別の例によれば、本方法は、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間の少なくとも1つを、制御システムに報告するステップを含む。
【0019】
第1の態様の一例では、制御システムは車両に配置される。
【0020】
第1の態様のさらに別の例では、制御システムは、車両の外部に配置され、複数の車両から、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を少なくとも収集することを可能にする。
【0021】
第1の態様のさらに別の例では、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の動作中測定の実行は、動作中の残存トレッド深さを測定すること、及び好ましくは、測定された残存トレッド深さを車両のオドメータの摩耗速度に関連付けることを含む。
【0022】
別の/第2の態様によれば、本開示は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視する第2のコンピュータ実装方法を提供する。本方法は、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを送信するステップと、車両の技術データを送信するステップと、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを送信するステップと、送信された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、送信された車両の技術データ、及び送信された車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータに少なくとも一部基づく算出タイヤ摩耗速度を取得するステップであり、算出タイヤ摩耗速度はセルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出されるステップとを含む。
【0023】
第2の態様の一例によれば、本方法は、算出タイヤ摩耗速度に基づいて、残存トレッド深さ及び/又はタイヤの残走行距離及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を推定するステップを含む。
【0024】
第2の態様の別の例によれば、本方法は、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間の少なくとも1つを、制御システムに報告するステップを含む。
【0025】
第2の態様の一例では、制御システムは車両に配置される。
【0026】
第2の態様のさらに別の例では、制御システムは、車両の外部に配置され、複数の車両から、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を少なくとも収集することを可能にする。
【0027】
第2の態様の一例では、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データは、タイヤ製造業者、タイヤモデル、タイヤパターン、タイヤ仕様、タイヤサイズ、タイヤ装着位置、リトレッド情報、及びタイヤのバッチ番号の少なくとも1つを含む。
【0028】
第2の態様のさらに別の例では、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の動作中測定の実行は、動作中の残存トレッド深さを測定すること、及び好ましくは、測定された残存トレッド深さを車両のオドメータの摩耗速度に関連付けることを含む。
【0029】
別の/第3の態様によれば、本開示は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視する第3のコンピュータ実装方法を提供する。本方法は、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを取得するステップと、車両の技術データを取得するステップと、車両のテレマティクス情報を取得するステップと、データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルに従って、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、取得された車両の技術データ、及び取得された車両のテレマティクス情報に少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出するステップとを含む。コンピュータ実装方法は、データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルによるタイヤ摩耗の正確な表現を可能にする。
【0030】
第3の態様の一例によれば、本方法は、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを取得するステップをさらに含むことができ、その場合、タイヤ摩耗速度を算出するステップは、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータに少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出するステップをさらに含む。動作中測定により、本発明はさらに、タイヤ摩耗のより正確な評価を可能にし、以下でより詳細に説明するように、将来に向けて総タイヤ寿命をより正確に予測することができる。
【0031】
タイヤ摩耗速度を算出するステップは、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータの取得後に、タイヤ摩耗を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムの1つを選択するステップをさらに含むのが有利である。好ましくは、予め記憶されたアルゴリズムは、所定の条件下でのタイヤ摩耗の算出に十分な性能を発揮するアルゴリズムを表す。
【0032】
第3の態様のさらに別の例によれば、タイヤ摩耗速度を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムの1つを選択するステップは、タイヤ摩耗を算出するための複数のアルゴリズムを実行するステップと、複数のアルゴリズムのうち、少なくとも1つの動作中測定で取得されたタイヤ摩耗の値に最も近いタイヤ摩耗の算出値を出すアルゴリズムを選択するステップとを含む。
【0033】
第3の態様のさらに別の例によれば、タイヤ摩耗速度を算出するステップは、セルフチューニング型モデルに従ってタイヤ摩耗速度を算出するステップをさらに含み、セルフチューニング型モデルは、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの動作中測定のデータに基づいてチューニングされる。
【0034】
第3の態様のさらに別の例によれば、データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルは、複数の算出タイヤ摩耗速度に基づいて訓練することができ、複数の算出タイヤ摩耗速度は、複数の車両から取得されたデータに基づき、取得されたデータは、車両のそれぞれの少なくとも1つのタイヤの技術データ、車両のそれぞれの技術データ、及び車両のそれぞれのテレマティクス情報を含む。したがって、この態様によれば、データ駆動型数理タイヤ摩耗は、複数の車両により提供されたデータに従って連続的に適合される。
【0035】
さらに別の/第4の態様によれば、本発明は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視する第4のコンピュータ実装方法を提供する。本方法は、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを送信するステップと、車両の技術データを送信するステップと、車両のテレマティクス情報を送信するステップと、送信された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、送信された車両の技術データ、及び送信された車両のテレマティクス情報に少なくとも一部基づく算出タイヤ摩耗速度を取得するステップであり、算出タイヤ摩耗速度はデータ駆動型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出されるステップとを含む。
【0036】
第4の態様の一例では、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法は、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを送信するステップをさらに含み、算出タイヤ摩耗速度はさらに、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定に少なくとも一部基づいて算出される。
【0037】
第4の態様のさらに別の例によれば、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法は、算出タイヤ摩耗速度に基づいて、残存トレッド深さ及び/又はタイヤの残走行距離及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を推定するステップを含み得る。
【0038】
第4の態様のさらに別の例によれば、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法は、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間の少なくとも1つを、制御システムに報告するステップを含み得る。
【0039】
第4の態様の一例では、制御システムは車両に配置され得る。
【0040】
第4の態様のさらに別の例では、制御システムは、車両の外部に配置され、複数の車両から、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を少なくとも収集することを可能にする。
【0041】
第4の態様のさらに別の例によれば、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データは、タイヤ製造業者、タイヤモデル、タイヤパターン、タイヤ仕様、タイヤサイズ、タイヤ装着位置、リトレッド情報、及びタイヤのバッチ番号の少なくとも1つを含む。
【0042】
第4の態様のさらに別の例によれば、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の動作中測定を実行するステップを含む、前述の車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法は、動作中の残存トレッド深さを測定するステップと、好ましくは、測定された残存トレッド深さを車両のオドメータの摩耗速度に関連付けるステップとをさらに含む。
【0043】
第4の態様のさらに別の例によれば、車両からの車両情報は、車両製造業者、車両シャーシ、車両使用状況、トラクタ荷重、地域、国、前後加速度、横加速度、速度、GPS座標、オドメータ、道路タイプ、荷重、タイヤ空気圧、変速、エンジンRPM、車輪速度、スロットル/ブレーキペダル位置、タイヤ温度、外気温、ハンドル角の少なくとも1つを含む。
【0044】
さらなる第5の態様では、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを取得する手段と、車両の技術データを取得する手段と、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの測定のデータを取得する手段と、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、取得された車両の技術データ、及び取得された車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの測定のデータに少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出する手段とを備えた、第1の装置が提供される。
【0045】
さらなる第6の態様では、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを送信する手段と、車両の技術データを送信する手段と、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの測定のデータを送信する手段と、送信された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、送信された車両の技術データ、及び送信された車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの測定のデータに少なくとも一部基づく算出タイヤ摩耗速度を取得する手段であり、算出タイヤ摩耗速度はセルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出される手段とを備えた、第2の装置が提供される。
【0046】
さらなる第7の態様では、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを取得する手段と、車両の技術データを取得する手段と、車両のテレマティクス情報を取得する手段と、データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルに従って、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、取得された車両の技術データ、及び取得された車両の車両テレマティクス情報に少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出する手段とを備えた、第3の装置が提供される。
【0047】
さらなる第8の態様では、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを送信する手段と、車両の技術データを送信する手段と、車両のテレマティクス情報を送信する手段と、送信された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、送信された車両の技術データ、及び送信された車両の車両テレマティクス情報に少なくとも一部基づく算出タイヤ摩耗速度を取得する手段であり、算出タイヤ摩耗速度はデータ駆動型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出される手段とを備えた、第4の装置が提供される。
【0048】
本発明のさらに他の利益及び利点は、添付図面を適切に参照して詳細な説明を精読すれば明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本開示による、車両の少なくとも1つのタイヤのタイヤ情報、車両の技術情報、及びタイヤ摩耗の少なくとも1つの動作中測定の組み合わせに基づくセルフチューニング型タイヤ摩耗モデルによる車両のタイヤの例示的な算出タイヤ摩耗のチャートを示す。
【
図2】
図2aは、本開示による、タイヤ摩耗を正確に算出するためのプロセス中に用いられる例示的な予め記憶されたアルゴリズムを3つのチャートの形態で示す。
図2bは、本開示による、算出タイヤ摩耗速度の精度を高めるためのセルフチューニング型数理モデルの機能的態様を、車両の別の例示的なタイヤ摩耗のチャートの形態で示す。
【
図3】
図3aは、本開示による、車両の少なくとも1つのタイヤのタイヤ情報、車両の技術情報、及び車両のテレマティクス情報の組み合わせに基づくデータ駆動型タイヤ摩耗モデルに関する、車両のタイヤの例示的なタイヤ摩耗のさらに別のチャートを示す。
図3bは、本開示による、車両の少なくとも1つのタイヤのタイヤ情報、車両の技術情報、車両のテレマティクス情報、及び残存トレッド深さの少なくとも1つの動作中測定のデータの組み合わせに基づくデータ駆動型タイヤ摩耗モデルに関する、車両のタイヤの例示的なタイヤ摩耗のさらに別のチャートを示す。
【
図4】
図4aは、本開示による、データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルの開発の基礎となる荷重条件及び道路タイプを含む種々の例示的なシナリオを示す。
図4bは、本開示による、種々の道路タイプ及び荷重条件でのトラックのトレッド摩耗1mmあたりの最大走行距離(km/mm)を求めた例示的な値を示す。
図4cは、本開示による、種々の道路タイプ及び荷重条件でのトラックのトレッド摩耗1mmあたりの最大走行距離(km/mm)を求めた例示的な値の相対差を示す。
【
図5】
図5Aは、本開示による、タイヤ摩耗の算出と、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を含む、算出タイヤ摩耗について行われ得る報告とに関する、車両とクラウドとの間の例示的なデータフローを示す。
図5Bは、本開示による、タイヤ摩耗の算出と、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を含む、算出タイヤ摩耗について行われ得る報告とに関する、車両とクラウドとユーザコンピューティングデバイスとの間の例示的なデータフローを示す。
図5Cは、本開示による、タイヤ摩耗の算出と、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を含む、算出タイヤ摩耗について行われ得る報告とに関する、車両とクラウドと制御システムとの間の例示的なデータフローを示す。
【
図6】本開示による、算出タイヤ摩耗速度の報告を受け得る例示的なフリートマネージャプラットフォームを示す。
【
図7】本開示による、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法700を示すフローチャートを示す。
【
図8】本開示による、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法800を示すフローチャートを示す。
【
図9】本開示による、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法900を示すフローチャートを示す。
【
図10】本開示による、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法1000を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法及び装置を提供する。本開示によるコンピュータ実装方法及び装置は、多くの利点をもたらす。本発明は、車両のタイヤの交換に最適な時点の決定を可能にし、したがって人のモビリティ及び物資の運送をより安全に、環境に優しく、確実に、且つより経済的にする。
【0051】
セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデル対純粋な統計モデル
図1は、車両のタイヤの例示的なタイヤ摩耗プロファイルを示すチャートを示す。横軸に沿って、タイヤの走行距離を示す。縦軸に沿って、残存トレッド深さ、RTD等のタイヤ特性を示す。左上隅では、タイヤが新品状態であり、すなわちこの例ではタイヤの残存トレッド深さが13mmで走行距離が0kmである。残存トレッド深さ3mmが、この例ではタイヤの寿命末期を示す。一点鎖線及び破線は、タイヤサイズ、タイヤ位置等のタイヤパラメータに基づく純粋な統計モデルにより算出された推定タイヤ摩耗を表す。この例では、純粋な統計モデルの使用により算出されたタイヤの平均走行距離は、約180,000キロメートルであり(一点鎖線で示す)、両方向に約80,000キロメートルの偏差があるので、統計的な走行距離は100,000キロメートル~260,000キロメートル(細い破線で示す)の範囲となることが示されている。したがって、最小トレッド深さに達する正確な時点を精度よく評価することができないことが分かる。
【0052】
図1はさらに、ある時点で残存トレッド深さの測定を行い、タイヤ摩耗速度の算出時にその測定値を考慮すると、従来の純粋に統計的な方法を改善できることを示す。図示の例では、約110,000キロメートルで動作中測定が実行される(黒三角形で示す)。動作中測定は、タイヤ摩耗が平均を下回ること、換言すれば、現在のタイヤ摩耗速度(この場合は残存トレッド深さ)が平均を上回ることを示す。
【0053】
タイヤの寿命末期、すなわち残存トレッド深さ3mmにいつ達するかを評価するために、本開示によれば、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルが適用される。セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルには、特定の走行距離で測定されたタイヤの特性(ここでは、110,000キロメートルで測定されたRTD)と、さらに車両のタイヤの技術データ及び車両の技術データに関する入力データとが与えられる。これらのデータにより、セルフチューニング型数理モデルは、例えばタイヤの寿命末期に達するまでの(例えば、ある最小RDT、例えば3mmに達するまでの)将来の予想タイヤ摩耗を算出する。したがって、タイヤの残存トレッド深さが走行距離に対してどのように生じるかを算出することができる。算出されたタイヤの残存トレッド深さを黒の実線で示し、その偏差を二点鎖線で示す。ここに見られるように、この例のタイヤの平均走行距離は約200,000キロメートルであり、両方向に約40,000キロメートルの偏差しかないので、統計走行距離は160,000キロメートル~240,000キロメートルの範囲に改善される。したがって、偏差範囲が50%小さくなったので、最小トレッド深さに達する正確な時点をより精度よく評価することができる。
【0054】
車両のタイヤの技術データに関する入力データは、タイヤ製造業者、タイヤパターン、タイヤ仕様、タイヤサイズ、タイヤ装着位置、リトレッド情報、国、又は地域の1つ又は複数を含み得る。
【0055】
車両の技術データに関する入力データは、車両製造業者、車両シャーシ、車両使用状況、及び/又はトラクタ荷重の1つ又は複数を含み得る。
【0056】
さらに、セルフチューニング型数理モデルは、タイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを入力として用いる。動作中測定中に、例えば、タイヤの実際の残存トレッド深さ及びオドメータから読み取られた走行距離が取得される。
【0057】
車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法の実行により、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データと車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータとが取得され、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データと取得された車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータとに基づいて、セルフチューニング型数理モデルに従ってタイヤ摩耗速度が算出される。
【0058】
上記ステップは、(より詳細に後述するように)タイヤがさらなる走行距離を経た後のさらなる動作中測定で繰り返すことができる。通常、動作中測定及びタイヤ摩耗速度の新たな算出を繰り返す毎に、いつタイヤが寿命末期に達するかに関して精度が高くなり、したがって例えばトラックルートの計画の予測性が高くなる。
【0059】
図2aは、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法がタイヤ摩耗及び/又はタイヤ摩耗速度を算出する際に従い得るセルフチューニング型数理モデルの態様例を示す。一態様では、タイヤ摩耗速度の算出は、タイヤの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータ、例えば車両のオドメータから読み取られた各走行距離と組み合わせた残存トレッド深さの取得後に行われ得る。
【0060】
一態様では、タイヤ摩耗速度の算出は、複数の予め記憶されたアルゴリズムの実行を含み得る。
図2aに、3つの異なる予め記憶されたアルゴリズムの3つの異なるチャートを示す。3つのグラフのそれぞれについて、縦軸に残存トレッド深さ(RTD)を示し、横軸に車両のオドメータから読み取られた少なくとも1つのタイヤの走行距離(KM)を示す。各グラフの左上隅は、タイヤが新品である状態、すなわちタイヤの走行距離が0であるタイヤの販売時の技術データに従った残存トレッド深さの状態を表す。走行距離が増えると、残存トレッド深さが減る。
【0061】
グラフのそれぞれの黒丸は、車両のオドメータ状態に関連する残存トレッド深さの測定値を表す。例えば、1番目のグラフでは、以前に2回の動作中測定が行われており、2番目のグラフでは、以前に6回の動作中測定が行われており、3番目のグラフでも、以前に6回の動作中測定が行われている。グラフのそれぞれの白丸は、以前の測定(黒丸)及び適用されたアルゴリズムに基づいて、さらなる動作中測定がスケジューリングされた特定の走行距離に対する算出RTDを表す。グラフのそれぞれのバツ印(X)は、特定の走行距離でのRTDの直近の動作中測定を表す。説明の簡略化のために、グラフのそれぞれで白丸の上にバツ印(X)を示す。
【0062】
3つのグラフが示す3つのアルゴリズムは、並行して実行することができ、予測に最適なアルゴリズムを見つけるのに適している。この例では、1番目のグラフは、算出RTD(白丸)とRTD測定値(バツ印)との間の顕著なオフセットを示す。したがって、最後の2つの測定値を将来のRTDの算出に用いる「3点」アルゴリズムの適用は、この場合は不正確である。線形回帰モデルを示す2番目のグラフは、算出RTD(白丸)とRTD測定値(バツ印)との間の小さなオフセットを示す。したがって、この場合、このアルゴリズムは、将来のRTDの算出に関して最初のアルゴリズムよりも好ましい可能性があり、現在の測定値を将来のRTDの算出のためのさらなる測定点とする。最後に、指数回帰モデルを示す3番目のグラフは、算出RTD(白丸)とRTD測定値(バツ印)との間のさらに小さなオフセットを示す。したがって、この場合、これが将来のRTDの算出に最も好ましいアルゴリズムであり得る。この場合も、現在の測定値(白丸)が将来のRTDの算出のためのさらなる測定点とされる。
【0063】
より一般的には、
図2aに示す例は、車両のオドメータ状態に関連する残存トレッド深さの少なくとも1つの測定からのデータの取得後に、3点、線形回帰、指数回帰、対数回帰、又はニューラルネットワーク等の様々な予め記憶されたアルゴリズムが実行され得ることを示す。予め記憶され実行されたアルゴリズムのうち、特定の走行距離に対してその特定の走行距離でのタイヤ摩耗速度(例えば、RTD)の測定値に最も近い算出タイヤ摩耗速度(例えば、RTD)を生成するアルゴリズムが、タイヤの寿命にわたるタイヤ摩耗速度の算出のために選択される。
【0064】
複数のアルゴリズムが、タイヤの特性の全ての利用可能な動作中測定結果を活用し、タイヤ製造業者、タイヤパターン、タイヤ仕様、タイヤサイズ、タイヤ装着位置、リトレッド情報、車両製造業者、車両シャーシ、車両使用状況、トラクタ荷重、国、又は領域等モのデルに提供される他の入力情報と組み合わせて、予め記憶されたアルゴリズムのうちどれが動作中のタイヤの各特性の記述に最適かを推定することができる。一態様では、カーブフィッティング技術が適用され得る。1つ又は複数の動作中測定の各値にベストフィットの結果を出すアルゴリズムを続いて用いて、各タイヤ特性が外挿される。この外挿に基づいて、タイヤの残寿命を求めることができる。タイヤの寿命末期値は、トレッド深さ3mm又はユーザが定義する任意の他の値として定義され得る。
【0065】
一態様では、セルフチューニング型数理モデルの予め記憶されたアルゴリズムは、各提供者により継続的に修正、改良、又は置換/更新され得る。
【0066】
図2bは、セルフチューニング型数理モデルのさらに別の態様を示すグラフを示す。横軸に、kmでの車両のタイヤの走行距離と、特定のオドメータ状態で行われる3つの検査とを示す。縦軸に、残存トレッド深さを新品タイヤ(「New Tire」)に対する離散値の形態で示す。さらに、3つの検査が行われた場合の3つの残存トレッド深さ状態(「RTD
1」、「RTD
2」、「RTD
3」)と、タイヤの寿命末期の残存トレッド深さの別の離散値(TWI、トレッド摩耗インジケータ)とを示す。
【0067】
タイヤが新品である場合、1において、セルフチューニング型モデルにタイヤデータ及び車両データを供給することができ、タイヤ摩耗及び残存トレッド深さの傾向を算出することができる(破線Aで示す)。特定の走行距離で、第1の検査がスケジューリングされる。この走行距離で、セルフチューニング型モデルが特定のRTDを算出した(2で示す)。この特定の走行距離で実行される残存トレッド深さの実際の動作中測定では、算出されたものよりも低い値となる。当該値を、3で示す「RTD1」として示す。結果として、下向き矢印で示すように、セルフチューニング型モデルは予測を調整し、算出タイヤ摩耗は当初の予測よりも大きい。
【0068】
したがって、タイヤの特性の算出値、例えば「RTD1」が、タイヤの各特性の実測値からずれている場合、数理モデルは自己補正する、すなわち数理モデルはチューニングされる。数理モデルのチューニングは、タイヤの特性の算出値を、測定が行われる走行距離での当該特性の実測値と等しくすることを含む。モデルのチューニングはさらに、タイヤの各特性の最新の実測値及び利用可能な場合はタイヤの各特性の少なくとも1つの以前の測定値へのモデルへのフィッティングを含み得る。
【0069】
上記手順は、タイヤの各特性の動作中測定の追加毎に、よって第2及び第3の検査及び測定値「RTD2」、「RTD3」それぞれについて繰り返すことができる。これらの値は、奇数5及び7(及びTWIを示す9)でも示す。さらにまた、算出値は偶数、ここでは4、6、及び8で示す。これにより、モデルの継続的なセルフチューニングが可能となる。測定の実行回数が多いほど、モデルの精度が高くなり算出誤差が小さくなる。
【0070】
一態様では、タイヤ摩耗速度を算出するためのセルフチューニング型数理モデルは、ビッグデータ手法及び/又は機械学習技術の適合により継続的に修正/改良され得る。例えば、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルは、複数の算出タイヤ摩耗速度に基づいて訓練することができ、複数の算出タイヤ摩耗速度は、複数の車両から取得されたデータに基づき、取得されたデータは、車両のそれぞれの少なくとも1つのタイヤの技術データ、車両のそれぞれの技術データ、及び車両のそれぞれの少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータを含む。
【0071】
経時的に、様々な異なる交通条件下の多くの異なる車両を含む無数の運転シナリオを表す多くのデータが取得され得る。各データは、タイヤ摩耗速度を算出するためのセルフチューニング型の数理的方法の継続的な訓練に用いられることにより、付加価値を生み出すことができる。全ての利用可能なデータに基づいて、特定のシナリオに関する摩耗パターンを機械学習技術により求めることができる。
【0072】
別の態様では、セルフチューニング型数理モデルを手動で修正することもできる。例えば、特定のタイヤ製品があるシナリオ下で事前の予想とは異なる挙動を示すことが判明する場合である。モデルに対する入力が多数であることにより、特定の製造施設からのタイヤモデルの特定のバッチに修正を限定することさえできる。例えば、特定の施設で製造されたタイヤモデルの特定のバッチが、他の施設からの他のバッチとは異なる性能を示すことが判明する場合がある。そのような場合、タイヤの単一バッチの挙動がモデルにより考慮され得る。
【0073】
タイヤ摩耗に影響を及ぼす別の重要な要因は、監視対象のタイヤを装着した車両が運転されている国である。平坦で広い道路を有する国もあれば、山脈との関連で狭くカーブした道路が多い国もあり得る。タイヤ摩耗に影響を及ぼす別の国別要因は気候であり、例えば、特定の国で夏季が長く冬が温暖であるか又は冬が寒冷で夏季が短いかで違いがあり得る。
【0074】
さらに、湿度又は乾燥等の他の要因がタイヤ摩耗に影響し得る。
【0075】
タイヤ摩耗は、国が提供しなければならないインフラの質に応じても変わり得る。道路インフラに多額の投資をする国がある一方で、あまり投資しない国もあり得る。後者では、保守不足により路面の損傷が生じる場合があり、これがさらにタイヤの寿命の短縮にも寄与し得る。タイヤの寿命に影響を及ぼし得る別の要因は、各国の運転者教育の質であり得る。さらに別の考慮すべき要因は、国毎に異なる運転規則であり得る。オランダ等の一部の国では高速道路でも非常に厳しい速度制限がある一方で、高速道路に速度制限のないドイツ等の国もある。これにより、国に応じてタイヤが受ける応力が全く異なり得る。
【0076】
さらに、様々な国の境界条件があまり均一でない可能性があることを考慮しなければならない。そのため、タイヤ摩耗をできる限り正確に算出するために地域も用いられ得る。多くの国では、大きな経済の中心地のインフラの質は地方とは異なり得る。追加として又は代替として、国の一部の地域は平坦であり得る一方で、山が多い地域もあり得る。いずれの場合も、タイヤの摩耗の仕方は大きく異なり得る。したがって、地域データは国データよりも精細であるとみなされ得る。
【0077】
動作中測定の有無によるタイヤ摩耗のデータ駆動型数理モデル
図3a及び
図3bは、車両のタイヤの例示的な算出タイヤ摩耗プロファイルの他のチャートを示す。
図1に対応して、横軸に沿ってタイヤの走行距離を示す。縦軸に沿って残存トレッド深さを示す。左上隅では、タイヤは新品状態であり、すなわち(この例では)走行距離が0kmで残存トレッド深さが13mmである。残存トレッド深さが(この例では)3mmの値に達すると、タイヤの寿命末期に達する。
【0078】
破線は、純粋な統計モデルに従って算出されたタイヤの走行距離の範囲を表す。2組の一点鎖線及び二点鎖線は、車両のテレマティクス情報を考慮してデータ駆動型数理モデルに従ったタイヤの走行距離の予測範囲を表す。特に、車両のテレマティクス情報は、車両の荷重(例えば、空車又は積車)及び車両の使用方法(地域シナリオ又は長距離シナリオ)に関するデータを含み得る。
【0079】
車両のテレマティクス情報により、タイヤ摩耗速度をさらにより精度よく算出することができる。例えば、タイヤ摩耗は、車両が交通渋滞の多い短距離に用いられるか、又は主に、特にトラックが長期間継続して一定の速度を有することが多い長距離移動に用いられるかで、異なり得る。さらに、実測タイヤ圧をタイヤ摩耗に寄与するさらなる要因として考慮することができる。圧力が例えば低すぎる(すなわち、推奨タイヤ圧から逸脱している)場合、タイヤと道路との接触面積が大きくなる。結果として、タイヤ摩耗が加速される。実測タイヤ圧に関する情報は、車両のトラクタ荷重に関連してさらにより重要である。既知のように、推奨タイヤ圧は、車両の荷重に応じて変わる。したがって、車両の荷重が大きいが、測定されたタイヤ圧が空荷車両の推奨タイヤ圧の範囲内である場合、タイヤ摩耗は依然として増加する。
【0080】
概して、すなわちタイヤ圧を考慮しない場合、荷重はタイヤ摩耗に影響を及ぼす。したがって、重荷重車両は空荷車両よりもタイヤ摩耗が大きくなる。
【0081】
タイヤの予測残走行距離は、車両の荷重及びユースケースに対して大きくずれる。車両が積車状態で地域シナリオに用いられる場合、残走行距離は、車両が空車状態で長距離シナリオに用いられる場合に比べてはるかに短い。車両のテレマティクス情報を考慮することにより、残走行距離の予測精度を明らかに向上させることができる。
【0082】
例えば、車両が空車状態で長距離シナリオに用いられる場合(幅広の点を含む一点鎖線及び二点鎖線を参照)、タイヤの平均走行距離は、約235,000キロメートル(幅広の点を含む一点鎖線を参照)であり、両方向に約20,000キロメートルの偏差があるので、統計的な走行距離は215,000キロメートル~255,000キロメートル(幅広の点を含む二点鎖線を参照)の範囲となる。
【0083】
同様に、車両が積車状態で地域シナリオに用いられる場合(小さな点を含む一点鎖線及び二点鎖線を参照)、タイヤの平均走行距離は、120,000キロメートル(小さな点を含む一点鎖線を参照)であり、両方向に約20,000キロメートルの偏差があるので、統計的な走行距離は100,000キロメートル~140,000キロメートル(小さな点を含む二点鎖線を参照)の範囲となる。
【0084】
結果として、偏差範囲が技術水準(例えば、純粋な統計モデル)に比べて75%小さく、
図1に示すような車両のテレマティクス情報を考慮しないセルフチューニング型数理モデルの使用に比べて50%小さいので、最小トレッド深さに達する正確な時点又はその走行距離をより精度よく評価することができる。
【0085】
車両のテレマティクス情報は、車両使用状況、タイヤ空気圧、トラクタ荷重、前後加速度、横加速度、速度、GPS座標、オドメータ、道路タイプ、荷重、タイヤ空気圧、変速、エンジンRPM、車輪速度、スロットル/ブレーキペダル位置、タイヤ温度、外気温、及びハンドル角の少なくとも1つを含み得る。
【0086】
図3bに示すように、いくつかの態様では、データ駆動型数理モデルの利点を、セルフチューニング型数理モデルについて記載したような動作中測定に対応する動作中測定と組み合わせることができる。例えば、第2のコンピュータ実装方法は、少なくとも1つの動作中測定からデータを取得するステップを含み得る。この場合、データ駆動型モデルに基づく算出タイヤ摩耗は、
図2a及び
図2bに関連して記載したようなセルフチューニング型モデルのメカニズムにより改善され得る。残存トレッド深さ等のタイヤの少なくとも1つの特性の動作中測定が実行される場合、残存トレッド深さの測定値がトレッド深さの算出値と比較され、すなわち、この測定値を用いてデータ駆動型数理モデルが補正される。動作中測定の実行及びモデルの適合のプロセスがセルフチューニング型モデルの場合の測定及び適合に対応すると考えると、簡単のために、これらの特徴は上記よりも広範には説明しない。しかしながら、上述のこれらの特徴をここでも適用できることを理解されたい。
【0087】
図3bに見られるように、車両が空車状態で長距離シナリオに用いられる場合(幅広の点を含む一点鎖線及び二点鎖線を参照)、タイヤの平均走行距離は、約240,000キロメートル(幅広の点を含む一点鎖線を参照)であり、両方向に約10,000キロメートルの偏差があるので、統計的な走行距離は230,000キロメートル~250,000キロメートル(幅広の点を含む二点鎖線を参照)の範囲となる。
【0088】
車両が積車状態で地域シナリオに用いられる場合(小さな点を含む一点鎖線及び二点鎖線を参照)、タイヤの平均走行距離は、160,000キロメートル(小さな点を含む一点鎖線を参照)であり、両方向に約10,000キロメートルの偏差があるので、統計的な走行距離は150,000キロメートル~170,000キロメートル(小さな点を含む二点鎖線を参照)の範囲となる。
【0089】
結果として、偏差範囲が技術水準に比べて略90%小さくなったので、最小トレッド深さに達する正確な時点又はその走行距離をより精度よく評価することができる。さらに、偏差範囲は、
図1に示すような車両のテレマティクス情報を考慮しないセルフチューニング型数理モデルを用いる方法に比べて75%小さくなった。最後に、データ駆動型数理モデルを含む第2のコンピュータ実装方法の利点を少なくとも1つの動作中測定からのデータの取得の利点と組み合わせることにより、測定データを追加せずにデータ駆動型数理モデルが用いられる場合に比べて、偏差範囲をさらに50%小さくすることができる。
【0090】
データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルの開発
図4aは、データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルの開発の基礎となる異なる条件を示す。速度、加速度、変速、エンジンRPM、車輪速度、ブレーキ/スロットルペダル位置、タイヤ空気圧、タイヤ温度、外気温、又はハンドル角等の車両テレマティクス情報が考慮されて、タイヤ摩耗をより正確に予測する際に重要な役割を果たし得る。
【0091】
一連の実験で、各車両テレマティクスをタイヤ摩耗と相関させた。この一連の実験は、例えば荷重、加速度、及び温度を含むタイヤ摩耗の主因に的を絞って複数のタイヤで実行した。荷重状況は、満載時の移動が加速度について調査されるように最小限及び最大限の荷重として定義した。同様に、横加速度及び前後加速度に関する差を最大にするように、カーブしたルート及び高速道路のルートを定義した。
【0092】
一連の実験では、複数のトラックを、夏期及び冬期にカーブした道路及び高速道路等の2つの異なるタイプの道路で並走させ、トラックの積載条件はそれぞれ異なるものとした。一定の間隔で、3D走査に基づくトレッド摩耗測定をタイヤの360°プロファイルを定義するために実行した。測定値に基づいて、1kmあたりのタイヤ摩耗と車両テレマティクス情報との関係を抽出した。
【0093】
図4bに示すように、車両荷重シナリオ、すなわち空車状態及び積車状態毎に、異なる道路タイプ、すなわち高速道路及びカーブした道路でのタイヤの寿命末期に達するまでの最大走行距離を求めた。異なる道路タイプでのタイヤの寿命末期に達するまでの最大走行距離に基づいて、タイヤのトレッド摩耗1mmあたりの走行距離を求めた。この値は、キロメートル/mm(KPM)でも表される。
図4bで示す表に、道路条件毎のトラックの様々な軸に対するKPMを示す。
【0094】
図4cは、
図4bからの結果の各パーセンテージを示す。例えばここに見られるように、カーブした道路の場合、空荷トラックの操舵軸のKPMは、高速道路で運転中の空荷トラックのKPMに対して80%であると予想される。曲がった道路の駆動軸では、積載トラックのKPM値は、高速道路の空荷トラックに比べて僅か37%である。
【0095】
残存トレッド深さについて得られた一般式を、以下のように表すことができる。
残存トレッド深さ=
F(走行距離,タイヤの技術データ,車両の技術データ,Ax,Ay,荷重,IP}
ここで、Axは前後加速度、Ayは横加速度、IPはタイヤ空気圧である。
【0096】
本発明により提供されるデータ駆動型数理タイヤ摩耗モデルでは、いくつかの特徴の中で、前後加速度による摩耗エネルギーも推定される。摩耗エネルギーは、前後力(Fx)及びスリップ(Sx)に基づいて計算することができ、スリップは、車輪速度(Vx)と車両速度(Vv)との差として定義される。
δWE=FxdSx=Fx(Vx-Vv)dt
各スリップ比(SR)を以下で表すことができる。
【0097】
【0098】
すると、摩耗エネルギーの式は、
δWE=FxVv SR dt
となる。
【0099】
スリップ比(SR)が小さい場合、前後力(Fx)と制動スリップ比(BpSR)との線形相関を見出すことが可能である。
Fx=ZBpSR
【0100】
この関係を活用して、摩耗エネルギーを次式のように表すことが可能である。
【0101】
【0102】
ここで、mは車両の各タイヤの質量である。上記式は、特定の時間間隔の摩耗エネルギーを表す。上記式を一定期間で積分することにより、前後力による全摩耗エネルギーを次式のように計算することができる。
【0103】
【0104】
Bpは摩耗段階に従って変化し得るので、タイヤを異なる摩耗段階に分け、それに従って摩耗エネルギーを再計算ことができる。
【0105】
小さなスリップ角では横力とスリップ角αとに線形相関があることを考慮して、横力(指数y)による摩耗エネルギーについて同様の計算を実行することができる。
【0106】
【0107】
データ駆動型実験から、異なる道路及び荷重シナリオに対する前後加速度及び横加速度の残差が求められる。さらなるステップにおいて、荷重及び加速度に基づくデータ駆動型の摩耗速度を得るために、タイヤの摩耗エネルギーの一般式のスケーリングに用いることができる重み係数(a1、b1等)が、残差から以下のように導出される。
【0108】
【0109】
上記式中、mtireは各タイヤに作用する質量、Vvは車両の速度、ayは横加速度、axnegは減速度(負の加速度)、axposviscは空気抵抗力による成分も考慮した速度上昇に用いられる加速度(正の加速度)である。
【0110】
タイヤ摩耗速度の算出及び報告
図5A、
図5B、及び
図5Cは、算出タイヤ摩耗速度が報告され得る異なる方法を示す。タイヤの技術データ、車両の技術データ、及び車両のテレマティクス情報等のデータの送信を黒矢印で示す。算出が車両で又は
図5に示さない車両の外部のコンポーネントで実行される場合、黒矢印は、代替として又は追加として、算出タイヤ摩耗速度の送信、換言すれば適用された数理モデルの出力の送信を示し得る。いずれにせよ、点線矢印は、算出タイヤ摩耗速度又はモデル出力の報告を示す。
【0111】
図5Aで示すように、一態様では、タイヤ摩耗速度は、車両の外部で、例えばクラウドコンピューティングデバイスで算出され得る。この例では、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ、車両の技術データ、及び車両のテレマティクス情報が、クラウドコンピューティングデバイスに送信され得る。クラウドコンピューティングデバイス内で、タイヤ摩耗の算出を行うことができ、算出タイヤ摩耗を少なくとも該当車両に報告することができる。
【0112】
図5B及び
図5Cで示すように、追加として又は代替として、報告は、スマートフォン、ノートブック、PC、又はタブレット等のユーザコンピューティングデバイスへ、又はフリート管理プラットフォームへ送信され得る。
【0113】
図5B及び
図5Cで示す他の例では、タイヤ摩耗速度は車両で計算される。この場合、算出タイヤ摩耗は、車両からユーザコンピューティングデバイス又はフリート管理プラットフォームに報告することができる。
【0114】
図6は、本開示による車両のタイヤの摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法に基づく、フリート管理アプリケーション例のスクリーンショットを示す。フリート管理プラットフォーム/ソフトウェアは、クラウドコンピューティングデバイス/サーバに記憶されて実行され得る。各フリート管理ソフトウェアに、少なくとも1つの車両のフリートの各車両のデジタル表現があり得る。車両のデジタル表現は、ブランド、車両モデル、軸数、使用タイヤ等の車両の技術データを含み得る。本開示による方法の1つを用いて車両のタイヤ摩耗速度が算出されると、算出タイヤ摩耗速度をフリート管理アプリケーションに報告することができる。フリート管理アプリケーション内で、算出タイヤ摩耗速度を該当車両のデジタル表現に関連付けることができる。この関連付けは、タイヤ毎に実行することができる。
【0115】
結果として、アプリケーションは、車両の各タイヤのタイヤ摩耗速度を表示することが可能であり得る。いくつかの態様では、車両の各タイヤの残時間又は残走行距離が表示され得る。表示された情報に基づいて、フリート管理プラットフォームのユーザに、車両の各タイヤの算出タイヤ摩耗速度、残存トレッド深さ、残走行距離、及び残寿命の少なくとも1つに関する詳細情報が提供され得る。特定の条件が満たされた場合、例えば運転者、フリート管理者、又は任意の他のユーザに警告メッセージを発することができる。
【0116】
タイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法
図7は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法900を示すフローチャートを示す。コンピュータ実装方法700の動作は、コンピューティングデバイスにより実装され得る。
【0117】
710において、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを取得する。
【0118】
720において、車両の技術データを取得する。
【0119】
730において、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの測定のデータを取得する。
【0120】
740において、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ及び取得された車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの測定のデータに少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出する。
【0121】
別の態様では、タイヤ摩耗速度の算出は、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定の実行後に、タイヤ摩耗速度を算出するために複数の予め記憶されたアルゴリズムの1つを選択することを含み得る。
【0122】
さらに別の態様では、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定の実行後にタイヤ摩耗速度を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムの1つを選択することは、タイヤ摩耗を算出するための複数のアルゴリズムを実行すること、及び複数の予め記憶されたアルゴリズムのうち、少なくとも1つの動作中測定で取得されたタイヤ摩耗に最も近いタイヤ摩耗の算出値を出す1つのアルゴリズムを選択することを含み得る。
【0123】
さらに別の態様では、セルフチューニング型モデルは、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの動作中測定のデータに基づいてチューニングされる。
【0124】
さらに別の態様では、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルは、複数の算出タイヤ摩耗速度に基づいて訓練され、複数の算出タイヤ摩耗速度は、複数の車両から取得されたデータに基づき、取得されたデータは、車両のそれぞれの少なくとも1つのタイヤの技術データ、車両のそれぞれの技術データ、及び車両のそれぞれのテレマティクス情報を含む。
【0125】
さらに別の態様では、残存トレッド深さ及び/又はタイヤの残走行距離及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間が、算出タイヤ摩耗速度に基づいて推定される。
【0126】
さらに別の態様では、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間の少なくとも1つが、制御システムに報告される。
【0127】
さらに別の態様では、制御システムは車両に配置される。
【0128】
別の態様では、制御システムは、車両の外部に配置され、複数の車両から、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を少なくとも収集することを可能にする。
【0129】
図8は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法800を示すフローチャートを示す。コンピュータ実装方法800の動作は、コンピューティングデバイスにより実装され得る。
【0130】
810において、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを送信する。
【0131】
820において、車両の技術データを送信する。
【0132】
830において、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの測定のデータを送信する。
【0133】
840において、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出された、送信された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ及び取得された車両のテレマティクス情報に一部基づく算出タイヤ摩耗速度を取得する。
【0134】
さらに別の態様では、残存トレッド深さ及び/又はタイヤの残走行距離及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間が、算出タイヤ摩耗速度に基づいて推定される。
【0135】
さらに別の態様では、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間の少なくとも1つが、制御システムに報告される。
【0136】
さらに別の態様では、制御システムは車両に配置される。
【0137】
別の態様では、制御システムは、車両の外部に配置され、複数の車両から、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を少なくとも収集することを可能にする。
【0138】
図9は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法900を示すフローチャートを示す。コンピュータ実装方法900の動作は、コンピューティングデバイスにより実装され得る。
【0139】
910において、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを取得する。
【0140】
920において、車両の技術データを取得する。
【0141】
930において、車両のテレマティクス情報を取得する。
【0142】
940において、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ及び取得された車両のテレマティクス情報に少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を、データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出する。
【0143】
さらに別の態様では、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定からのデータを取得することができ、タイヤ摩耗速度の算出は、取得された車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定のデータに少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出することをさらに含む。
【0144】
別の態様では、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定から取得されたデータに少なくとも一部基づくタイヤ摩耗速度を算出することは、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定の実行後に、タイヤ摩耗速度を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムの1つを選択することを含み得る。
【0145】
さらに別の態様では、セルフチューニング型数理タイヤ摩耗モデルに従って車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定の実行後にタイヤ摩耗速度を算出するための複数の予め記憶されたアルゴリズムの1つを選択することは、タイヤ摩耗を算出するための複数のアルゴリズムを実行すること、及び複数の予め記憶されたアルゴリズムのうち、少なくとも1つの動作中測定で取得されたタイヤ摩耗に最も近いタイヤ摩耗の算出値を出す1つのアルゴリズムを選択することを含み得る。
【0146】
さらに別の態様では、タイヤ摩耗速度の算出は、セルフチューニング型モデルに従ってタイヤ摩耗速度を算出することをさらに含み、セルフチューニング型モデルは、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの動作中測定のデータに基づいてチューニングされる。
【0147】
さらに別の態様では、データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルは、複数の算出タイヤ摩耗速度に基づいて訓練され、複数の算出タイヤ摩耗速度は、複数の車両から取得されたデータに基づき、取得されたデータは、車両のそれぞれの少なくとも1つのタイヤの技術データ、車両のそれぞれの技術データ、及び車両のそれぞれのテレマティクス情報を含む。
【0148】
さらに別の態様では、残存トレッド深さ及び/又はタイヤの残走行距離及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間が、算出タイヤ摩耗速度に基づいて推定される。
【0149】
さらに別の態様では、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間の少なくとも1つが、制御システムに報告される。
【0150】
さらに別の態様では、制御システムは車両に配置される。
【0151】
別の態様では、制御システムは、車両の外部に配置され、複数の車両から、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を少なくとも収集することを可能にする。
【0152】
図10は、車両のタイヤ摩耗速度を算出及び/又は監視するコンピュータ実装方法1000を示すフローチャートを示す。コンピュータ実装方法1000の動作は、コンピューティングデバイスにより実装され得る。
【0153】
1010において、車両の少なくとも1つのタイヤの技術データを送信する。
【0154】
1020において、車両の技術データを送信する。
【0155】
1030において、車両のテレマティクス情報を送信する。
【0156】
1040において、データ駆動型数理タイヤ摩耗モデルに従って算出された、送信された車両の少なくとも1つのタイヤの技術データ及び取得された車両のテレマティクス情報に少なくとも一部基づく算出タイヤ摩耗速度を取得する。
【0157】
さらに別の態様では、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定からのデータを送信することができ、算出タイヤ摩耗速度はさらに、車両の少なくとも1つのタイヤの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの動作中測定に少なくとも一部基づいて算出される。
【0158】
さらに別の態様では、残存トレッド深さ及び/又はタイヤの残走行距離及び/又は設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間が、算出タイヤ摩耗速度に基づいて推定される。
【0159】
さらに別の態様では、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間の少なくとも1つが、制御システムに報告される。
【0160】
さらに別の態様では、制御システムは車両に配置される。
【0161】
別の態様では、制御システムは、車両の外部に配置され、複数の車両から、算出タイヤ摩耗速度、推定された残存トレッド深さ、タイヤの残走行距離、及び設定最小トレッド深さに従った交換までの残時間を少なくとも収集することを可能にする。
【国際調査報告】