(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】天然産物のためのロースティング・モジュール及び処理ライン、並びにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A23N 12/08 20060101AFI20241212BHJP
A23N 12/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A23N12/08 A
A23N12/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536157
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022085601
(87)【国際公開番号】W WO2023110857
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524227088
【氏名又は名称】ナパロースト アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イヴァルソン、カメオン
(72)【発明者】
【氏名】キューンディク、ディーター
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA01
4B061BA09
4B061BA10
4B061BB11
4B061CD02
4B061CD03
4B061CD12
4B061CD19
(57)【要約】
本発明は、具体的には、豆、穀物、種、又はナッツなどの、天然産物をローストするためのロースティング・モジュール10に関連し、ロースティング・モジュール10が、ローストされることになる産物を収容するためのトレー11、また具体的には立方体トレーであって、トレーが逆さの切頭錐体15の形態である底部を備える、トレー11と、逆さの錐体の大きい方の基部15aを覆うグリッドであって、グリッドのメッシュが、ローストされることになる産物がグリッドの上に配置されるときに産物を保持するのに十分な小ささである、グリッドと、を備え、トレーが、逆さの錐体15の反対側に配置された開口部12をさらに備え、開口部12が、ローストされることになる産物をトレーの中に導入するように構成され、トレーが、逆さの錐体の小さい方の基部15bの上に、空気入口16をさらに備え、ロースティング・モジュール10が、空気入口16を通して高温空気をトレーの中に供給するための第1の手段を備え、空気入口16及び高温空気を供給するための第1の手段が、ローストされることになる産物の高さの1m当たり且つ逆さの錐体の大きい方の基部15aの表面の1m2当たりにおいて少なくとも4’000m3/時のレートで高温空気の流れを供給するように適合され、高温空気を供給するための第1の手段が、105℃から250℃の範囲内の温度で、好適には115℃から200℃の間の温度範囲で、有利には125℃から170℃の間で、具体的には135℃から150℃の間で、空気を供給するように適合される。本発明はさらに、本発明によるロースティング・モジュール10を備える、天然産物のための処理ライン100に関連し、さらには、特には、豆、穀物、種、又はナッツなどの、天然産物をローストするための、このようなロースティング・モジュール10又はこのような処理ライン100の使用に関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
具体的には、豆、穀物、種、又はナッツなどの、天然産物をローストするためのロースティング・モジュール(10)において、ローストされることになる前記産物を収容するためのトレー(11)、また具体的には立方体トレーであって、前記トレー(11)が逆さの切頭錐体(15)の形態である底部を備える、トレー(11)と、前記逆さの錐体の大きい方の基部(15a)を覆うグリッドであって、前記グリッドのメッシュが、ローストされることになる前記産物が前記グリッドの上に配置されるときに前記産物を保持するのに十分な小ささである、グリッドと、を備え、前記トレー(11)が、前記逆さの錐体(15)の反対側に配置された開口部(12)をさらに備え、前記開口部(12)が、ローストされることになる前記産物を前記トレー(11)の中に導入するように構成され、トレー(11)が、前記逆さの錐体の小さい方の基部(15b)の上に、空気入口(16)をさらに備え、前記ロースティング・モジュール(10)が、前記空気入口(16)を通して高温空気を前記トレー(11)の中に供給するための第1の手段を備える、ロースティング・モジュール(10)であって、
前記空気入口(16)及び高温空気を供給するための前記第1の手段が、ローストされることになる産物の高さの1m当たり且つ前記逆さの錐体の前記大きい方の基部(15a)の表面の1m
2当たりにおいて少なくとも4’000m
3/時のレートで高温空気の流れを供給するように適合され、高温空気を供給するための前記第1の手段が、105℃から250℃の範囲内の温度で空気を供給するように適合される、ことを特徴とする、ロースティング・モジュール(10)。
【請求項2】
高温空気を供給するための前記第1の手段が、好適には、豆、種、又はナッツをローストするために、115℃から200℃の間の、有利には125℃から170℃の間の、具体的には135℃から150℃の温度範囲で、空気を供給するように適合される、請求項1に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項3】
前記ロースティング・モジュール(10)が前記開口部(12)を覆うためのカバー(13)を備え、前記カバー(13)が、高温空気を前記トレー(11)の外部へ誘導するための出口(14)を備える、請求項1及び/又は2に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項4】
前記ロースティング・モジュール(10)が、前記トレー(11)の中へ供給されることになる前記高温空気の温度を調整するための手段を備える、請求項1から3までのいずれか1つ又は複数の項に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項5】
前記ロースティング・モジュール(10)が、前記トレー(11)の内部の温度を測定するための温度センサー(19)を備える、請求項1から4までのいずれか1つ又は複数の項に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項6】
前記ロースティング・モジュール(10)が、前記トレー(11)の内部の湿度レベルを測定するための湿度センサー(19)を備える、請求項1から5までのいずれか1つ又は複数の項に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項7】
高温空気の温度を調整するための手段が、前記温度センサー及び/又は前記湿度センサー(19)からデータを受信するように、並びに、前記受信されたデータに応じて、前記トレー(11)の中へ供給されることになる高温空気の温度を調整するように、構成される、請求項5及び/又は6に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項8】
前記空気入口(16)が空気フィルターに接続され、特にはHEPAフィルターに接続される、請求項1から7までのいずれか1つ又は複数の項に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項9】
前記空気入口(16)が、高温空気を前記トレー(11)の中へ供給するための手段のダクト(17)に接続される、請求項1から8までのいずれか1つ又は複数の項に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項10】
前記入口(16)及び/又は前記ダクト(17)が、シール、好適には膨張可能なシールを備える、請求項1から9までのいずれか1つ又は複数の項に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項11】
前記トレー(11)の中へ高温空気を供給するための前記第1の手段が、前記トレー(11)内の前記産物の密度に応じて空気流を調整するための可変速度を有する送達ファンを備える、請求項1から10までのいずれか1つ又は複数の項に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項12】
前記高温空気の流れ方向を逆にするための手段を備える、請求項1から11までのいずれか1つ又は複数の項に記載のロースティング・モジュール(10)。
【請求項13】
特には豆及びナッツなどの、天然産物のための処理ライン(100)であって、前記処理ライン(100)が、40℃から120℃の、有利には60℃から90℃の、特には70℃から80℃の、温度の高温空気を用いて前記天然産物を加熱するための予熱モジュール(20)と、前記産物を周囲温度まで冷却するための冷却モジュール(40)と、前記予熱モジュール(20)と前記冷却モジュール(40)との間にある、請求項1から11までのいずれか一項に記載のロースティング・モジュール(10)と、を備え、前記処理ライン(100)が、前記産物を収容するための前記トレー(11)を前記予熱モジュール(20)から前記ロースティング・モジュール(10)まで及びロースティング・モジュール(10)から前記冷却モジュール(40)まで変位させるための手段を備える、処理ライン(100)。
【請求項14】
前記処理ライン(100)が、前記産物を低温殺菌するための低温殺菌モジュール(30)を前記予熱モジュール(20)と前記ロースティング・モジュール(10)との間に備える、請求項13に記載の処理ライン(100)。
【請求項15】
前記予熱モジュール(20)が高温空気を前記トレー(11)の中へ供給するための第2の手段(27)を備え、前記第2の手段(27)が、前記トレー(11)の入口(16)を通して、40℃から120℃の、有利には60℃から90℃の、具体的には70℃から80℃の温度の空気を供給するように構成される、請求項13又は14のいずれか1つ又は複数の項に記載の処理ライン(100)。
【請求項16】
前記冷却モジュール(40)が低温空気を前記トレー(11)の中へ供給するための手段を備え、低温空気を供給するための前記手段が、前記トレー(11)の前記入口(16)を通して、15℃から35℃の温度の空気を供給するように構成される、請求項13から15までのいずれか1つ又は複数の項に記載の処理ライン(100)。
【請求項17】
前記処理ライン(100)が、前記予熱モジュール(20)、前記ロースティング・モジュール(10)、及び前記冷却モジュール(40)により、前記トレー(11)の中へ供給される前記空気の温度を調整するための制御装置を備える、請求項13から16までのいずれか1つ又は複数の項に記載の処理ライン(100)。
【請求項18】
前記制御装置が、前記モジュールの間で前記トレー(11)を変位させるための前記手段を制御するように構成される、請求項17に記載の処理ライン(100)。
【請求項19】
前記予熱モジュール(20)、前記冷却モジュール(40)、及び前記ロースティング・モジュール(10)の各々が、前記トレー(11)の開口部を覆うための分離したカバー(13、23、43)を備え、前記カバー(13、23、43)が、前記トレー(11)の外部に空気を誘導するための出口を呈する、請求項13から18までのいずれか1つ又は複数の項に記載の処理ライン(100)。
【請求項20】
前記トレー(11)が、有利には、フォークリフトのフォークを挿入するためのフォーク開口部(18)を備える、請求項13から19までのいずれか1つ又は複数の項に記載の処理ライン(100)。
【請求項21】
少なくとも2つのロースティング・モジュール(10)を備える、請求項13から20までのいずれか1つ又は複数の項に記載の処理ライン(100)。
【請求項22】
各ロースティング・モジュール(10)の前記入口(16)及び/又はダクト(17)が、1つ又は複数の前記トレー(11)の前記入口(16)及び/又はダクトの間の接続を気密にするための、好適にはその上に前記トレー(11)が配置されてから膨張され得るシールを備える、請求項13から21までのいずれか1つ又は複数の項に記載の処理ライン(100)。
【請求項23】
具体的には豆、穀物、種、又はナッツをローストするための、またより好適には、豆、種、木の実、又はグラウンド・ナッツをローストするための、天然産物をローストするための、請求項1から12までのいずれかの1つ又は複数の項に記載のロースティング・モジュール或いは請求項13から22までのいずれか1つ又は複数の項に記載の処理ラインの使用。
【請求項24】
前記豆が、好適には、大豆、インゲン豆、ひよこ豆、エンドウ豆、そら豆、ライマメ、ルパン豆、ヤエナリ、ピジョン豆、及びサヤマメである、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記穀物及び種が、好適には、ヒマワリの種、セサミ・シード、オート麦、モルト、及びパンプキン・シードである、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
前記木の実が、好適には、アーモンド、ヘーゼルナッツ、ペカンの実、カシュー、マカダミア、及びピスタチオであり、並びに/或いは、前記グラウンド・ナッツが、好適には、ピーナッツである、請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具体的には、豆、穀物、種、及びナッツなどの、またより好適には、豆、種、及びナッツなどの、天然産物をローストするためのロースティング・モジュールの分野に関する。本発明は、本発明によるロースティング・モジュールを備える、豆、穀物、種、及びナッツのような天然産物を処理するための、また具体的にはローストするための、処理ラインにさらに関する。さらに、本発明は、天然産物、また特には、豆、穀物、種、及びナッツのロースティングのための、このようなロースティング・モジュール又はこのような処理ラインの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然産物のロースティングは、特定の回分(batch)のすべての産物の均一な焙焼を結果として引き起こさなければならない複雑なプロセスである。均一な焙焼を達成するためには、従来技術からの既知であるロースティング・プロセス及びロースティング・デバイスは、産物のすべての粒子及び表面全体を均一に加熱することを目的として、空気流中で又は高温の表面を横断させるように産物を変位させるか或いは放射熱に対して産物を露出することを必要とする。産物を変位させることは、産物を移動状態で維持することを目的として、積載物を、転がり回らせるか、振動させるか、揺らすか、回転させるか、又はかき混ぜる機械的デバイスを必要とする。
【0003】
最もよく知られている産業用ロースターは継続的に稼働するものであり、産物粒子が、ベルト上で、振動する支持体上で、又は空気流により、ロースティング・プロセスの多様なステップを通るように移動させられる。ロースティングは、設定可能な温度の高温空気の流れに対して産物粒子を露出することによって達成され、それにより、ライト・ロースティングからダーク・ロースティングまでの多様な程度のロースティングを達成するのを可能にする。
【0004】
主として1時間当たりのスループットがより小さい場合の、一部のロースターは、回分システム(batch system)として設計される。これらのロースターは、均一なロースティング効果を達成するためにプロセス中に産物が移動させられなければならないという共通点を有する。この移動は、ドラム内で産物を転がり回らせることにより、或いは、プロセス中に産物をかき混ぜるアーム又はパドルを移動させることにより、達成され得る。
【0005】
ロースティング・プロセス中に産物自体を変位させることは、結果的に、破損させるなどして産物を傷つけてしまうか、又は、擦ることにより、ダスト(dust)、無駄となるもの(waste)、及び破損粒子を発生させてしまう。産物を変位させるデバイスでは、擦られて破損することによりダスト及び破損粒子が発生し、これらのダスト及び破損粒子は洗浄を必要とし、そのための有意な停止時間を必要とする。さらに、産物を変位させるための機械的手段は可動部品の摩耗及び裂断を伴い、それにより有意な保守管理及び停止時間が必要となる。
【0006】
最後に、ロースティング・プロセス中、過度のロースティング又は不十分なロースティングを回避するために、熱に対して露出することになる産物の量を制御することが必要となる。連続するロースターつまり産物自体を変位させるようなロースターでは、ロースティング・ラインの起動フェーズ及び停止フェーズが困難なものとなり得るが、その理由は、それらの時間において産物の層が積み上げられたり低くなったりするからである。
【0007】
本発明の目的は、ロースティング・プロセスを通るように産物自体を移動させるための機械的手段を必要とすることなく、産物をローストするのを可能にする新規のロースティング・モジュール及び新規の処理ラインを提案することである。したがって、本発明の目的は、さらに、産物のダメージ及び廃棄を低減すること、並びに、ダスト及び破損片(broken piece)のための洗浄時間を短縮することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、それを用いて、既知のシステムの上述の欠点を完全に克服することができるか又は少なくとも大幅に低減することができるような新規のロースティング・モジュール及び新規の処理ラインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、これらの目的が、具体的には2つの独立請求項の要素を通して達成される。別の有利な実施例が従属請求項及び本記述からさらに得られる。
【0010】
具体的には、本発明の目的は、具体的には、豆、種、又はナッツなどの、天然産物をローストするためのロースティング・モジュールによって達成され、ロースティング・モジュールが、ローストされることになる産物を収容するためのトレー、また具体的には立方体トレーであって、トレーが逆さの切頭錐体の形態である底部を備える、トレーと、逆さの錐体の大きい方の基部を覆うグリッドであって、グリッドのメッシュが、ローストされることになる産物がグリッドの上に配置されるときに天然産物を保持するのに十分な小ささである、グリッドと、を備え、トレーが、逆さの錐体の反対側に配置された開口部をさらに備え、開口部が、ローストされることになる産物をトレーの中に導入するように構成され、トレーが、逆さの錐体の小さい方の基部の上に、空気入口をさらに備え、ロースティング・モジュールが、入口を通して高温空気をトレーの中に供給するための第1の手段を備え、ここでは、入口及び高温空気を供給するための第1の手段が、ローストされることになる産物の高さの1m当たり且つ逆さの錐体の大きい方の基部の表面の1m2当たりにおいて少なくとも4’000m3/時のレートで高温空気の流れを供給するように適合され、高温空気を供給するための第1の手段が、105℃から250℃の範囲内の温度で、好適には115℃から200℃の間の温度範囲で、有利には125℃から170℃の間の温度範囲で、具体的には135℃から150℃の間の温度範囲で、空気を供給するように適合される。
【0011】
発明者らは、上で言及した温度範囲内の温度で、及び、トレー内の産物の高さの1m当たり且つ逆さの錐体の大きい方の基部の表面の1m2当たりにおいて少なくとも4’000m3/時の流量で、高温空気を供給することを目的としてトレー内の産物の均一なロースティングを達成することが必要であることを見出した。このようなロースティング・モジュールにより、高温空気の流れを通るように又は別の熱源を通るように産物自体を移動させることを必要とすることなく、大量の天然産物を一様にローストすることが可能となる。これは、産物を傷つけること並びにダスト(dust)及び破損片を生成することを回避することから、有利である。さらに、ロースティング・プロセスが「回分的」に実施されることを理由として(回分はトレー内の産物の量である)、産物の追跡可能性が改善される。トレーはロースティング・モジュールの一部であるが、トレーが、冷却モジュールなどの別のモジュールまで産物を移送するためにロースティング・モジュールから分離されることが可能となるように構成される、ということに留意することが重要である。
【0012】
ローストされることになる好適な天然産物は、木の実、グラウンド・ナッツ、穀物、及び食用種子、さらには豆である。
【0013】
「木の実」は、例えば、アーモンド、ヘーゼルナッツ、トチの実、クルミ、ペカンの実、カシュー、マカダミア、ピスタチオ、松の実、及びブラジル・ナッツなどの、任意の種類の木の実を包含する。好適な木の実は、アーモンド、ヘーゼルナッツ、ペカンの実、カシュー、マカダミア、及びピスタチオである。
【0014】
「グラウンド・ナッツ」は、例えばピーナッツ及びタイガーナッツなどの、任意の種類のグラウンド・ナッツを包含する。好適なグラウンド・ナッツはピーナッツである。
【0015】
「穀物及び食用種子」は、例えば、キノア、アマランス、メイズ、米、小麦、ソバ、オート麦、モルト、パンプキン・シード、チア・シード、セサミ・シード、ケシの実、及びヒマワリの種などの、任意の種類の穀物及び食用種子を包含する。好適な穀物及び食用種子は、ヒマワリの種、セサミ・シード、オート麦、モルト、及びパンプキン・シードを包含する。
【0016】
「豆」は、例えば、大豆、インゲン豆、ひよこ豆、エンドウ豆、そら豆、ライマメ、ルパン豆、ヤエナリ、ピジョン豆、及びサヤマメなどの、任意の種類の豆を包含する。
【0017】
本発明の実施例では、ロースティング・モジュールはココア豆をローストするためのロースティング・モジュールである。ココア豆がローストされる場合、好適には105℃から135℃の範囲内の、より好適には112℃から130℃の範囲内のロースティング温度が適用される。
【0018】
本発明の実施例では、ロースティング・モジュールがコーヒー豆をローストするためのロースティング・モジュールである。コーヒー豆がローストされる場合、より高いロースティング温度すなわち200℃から250℃の範囲内の温度が有利には適用される。
【0019】
本発明の別の実施例では、入口及び高温空気を供給するための第1の手段が、例えばかさ密度及び幾何学的形状などのローストされることになる天然産物の物理的特性に応じて、ローストされることになる産物の高さの1m当たり且つ逆さの錐体の大きい方の基部の表面の1m2当たりにおいて少なくとも4’000m3/時から9’000m3/時の範囲内のレートで高温空気の流れを供給するように適合される。
【0020】
本発明の第1の好適な実施例では、ロースティング・モジュールが開口部を覆うためのカバーを備え、ここでは、カバーが、高温空気をトレーの外部へ誘導するための出口を備える。これは、カバーが熱損失を低減すること及びひいてはロースティング時間を短縮することを可能にするということを理由として、有益である。さらに、カバーは、トレーの中身を環境から隔離することによりロースティング・プロセスの再現性を向上させるのを可能にする。
【0021】
本発明の第2の好適な実施例では、トレーのカバーは、産物を通るように空気流を押し込むことを目的としてカバー及びトレーを密に接続することを可能にするためのシール、好適には膨張可能なシールを備える。本文脈の「密」とは、5Vol.%未満、好適には2Vol.%未満、好適には1Vol.%未満の空気の損失を意味する。カバーとトレーとの間のこのような密な接続を用いることにより、ロースティング・プロセス中に空気流の方向を頂部から底部へ又はその逆で少なくとも一回変化させることも可能となる。これはトレーの満杯の積載(complete load)での均一なロースティングのために有利であり、それにより、産物の均一性をさらに向上させる。
【0022】
したがって、ロースティング・モジュールは、有利には、高温空気の流れ方向を逆にするための手段を備える。
【0023】
本発明の別の好適な実施例では、ロースティング・モジュールは、トレーの中へ供給されることになる高温空気の温度を調整するための手段を備える。これにより、例えばトレー内の産物の種類及び/又は量に応じて多様なロースティング・レシピを実行することが可能となる。
【0024】
本発明のさらに別の好適な実施例では、ロースティング・モジュールは、トレーの内部の温度を測定するための温度センサーを備える。これは、ロースティング・プロセスの温度を制御するのを可能にする。
【0025】
本発明の別の好適な実施例では、ロースティング・モジュールは、トレーの内部の湿度レベルを測定するための湿度センサーを備える。これは、ロースティング・プロセス中に湿度を制御するのを可能にする。
【0026】
本発明のさらに別の好適な実施例では、高温空気の温度を調整するための手段は、温度センサー及び/又は湿度センサーからデータを受信するように、並びに、受信されたデータに応じて、トレーの中へ供給されることになる高温空気の温度を調整するように、構成される。
【0027】
本発明の別の好適な実施例では、トレーの中へ高温空気を供給するための第1の手段は、トレー内の産物の密度に応じて空気流を調整するための可変速度を有する送達ファンを備える。
【0028】
本発明の別の好適な実施例では、ロースティング・モジュールは、出口を通ってトレーから外に出る空気流を調整するための可変速度を有するファンを備える。
【0029】
本発明の別の好適な実施例では、入口が空気フィルターに接続され、特にはHEPAフィルターに接続される。
【0030】
本発明の別の好適な実施例では、産物を通るように空気流を押し込むことを目的として入口及びトレーを密に接続するのを可能にするためのシール、好適には膨張可能なシールを備える。本文脈の「密」とは、5Vol.%未満、好適には2Vol.%未満、好適には1Vol.%未満の空気の損失を意味する。入口とトレーとの間のこの密な接続は、ロースティング・プロセス中に空気流の方向を頂部から底部へ又はその逆で少なくとも一回変化させるのを可能にする。これはトレーの満杯の積載での均一なロースティングのために有利であり、それにより、産物の均一性をさらに向上させる。
【0031】
特には2つ以上のロースティング・モジュールを備えるより大きい処理ラインの、代替的な好適な実施例では、各ロースティング・モジュールのダクトが、各ダクトと1つ又は複数のトレーとの間の接続を気密にするための、好適にはその上にトレーが配置されてから膨張され得るシールである、シールを備える。本文脈の「気密」とは、5Vol.%未満、好適には2Vol.%未満、好適には1Vol.%未満の空気の損失を意味する。これは、ロースティング・プロセス中に空気流の方向を頂部から底部へ又はその逆で少なくとも一回変化させることも可能にする。空気流がトレーの底部にある空気入口からトレーを通過した後、空気がトレーのカバーの出口を通して排出される。別法として、空気はトレーのカバーの出口を通ってトレーの中へ押し込まれてトレーの底部にある入口を通して排出され得る。
【0032】
本発明の別の実施例では、ロースティング・モジュールの入口さらにはダクトの両方が、シール、好適には膨張可能なシールを備える。
【0033】
本発明の別の好適な実施例では、処理ラインの各ロースティング・モジュールの入口さらにはダクトの両方が、シール、好適には膨張可能なシールを備える。本発明のより好適な実施例では、処理ラインの各ロースティング・モジュールのトレーのカバーもシールを備える。
【0034】
第2の態様では、本発明の目的は、特には、種、穀物、豆、及びナッツ、より好適には、種、豆、及びナッツなどの、天然産物のための処理ラインによって達成され、ここでは、処理ラインが、40℃から120℃の、有利には60℃から90℃の、特には70℃から80℃の、温度まで天然産物を加熱するための予熱モジュールと、産物を周囲温度まで冷却するための冷却モジュールと、予熱モジュールと冷却モジュールとの間にある、本発明によるロースティング・モジュールと、を備え、ここでは、処理ラインが、産物を収容するためのトレーを予熱モジュールからロースティング・モジュールまで及びロースティング・モジュールから冷却モジュールまで変位させるための手段を備える。このような手段は、例えば、周波数インバータを備える電動チェーン・コンベア(electric chain conveyor)となり得る。
【0035】
予熱モジュール及び/又は冷却モジュールが、シールと、高温空気の流れ方向を逆にするために手段と、をさらに装備し、これらのモジュール内での高温空気の流れの方向も逆にされ得る。
【0036】
本発明の処理ラインの実施例では、予熱モジュール及び冷却モジュール内の流れが、それぞれ、底部から頂部である。
【0037】
本発明の特別な実施例では、予熱モジュール内の空気が、底部から頂部まで押し込まれて通過させられることの代わりに頂部のところで吸い出される。
【0038】
本発明の好適な実施例では、このような処理ライン内のこれらのモジュールのうちの少なくとも1つのモジュールがステンレス鋼で作られる。特に好適な実施例では、このような処理ライン内のすべてのモジュールがステンレス鋼で作られる。
【0039】
本発明による処理ラインは、処理されることになる産物自体を移送するのを必要とすることなく、予熱するステップと、ローストするステップと、冷却するステップとを含めて、天然産物を完全に処理することを可能にする。これは、産物を傷つけること並びにダスト及び破損片を生成することを回避するのを可能にする。
【0040】
本発明のこの態様の第1の好適な実施例では、処理ラインが、産物を低温殺菌するための低温殺菌モジュールを予熱モジュールとロースティング・モジュールとの間に備える。低温殺菌モジュールにより、産物が、低温殺菌された後でローストされ得るようになる。
【0041】
処理ラインの第2の好適な実施例では、低温殺菌モジュール及び1つ又は複数のロースティング・モジュールがクリーン・ルーム・エリア内に位置する。
【0042】
本発明のこの態様の別の好適な実施例では、予熱モジュールが高温空気をトレーの中へ供給するための第2の手段を備え、ここでは、第2の手段が、トレーの入口を通して、40℃から120℃、有利には60℃から90℃、特には70℃から80℃の温度の空気を供給するように構成される。これが、産物を均一に予熱するのを可能にする。
【0043】
本発明のこの態様の別の好適な実施例では、冷却モジュールが低温空気をトレーの中へ供給するための手段を備え、ここでは、低温空気を供給するための手段が、トレーの入口を通して、15℃から35℃の温度の空気を供給するように構成される。これが、産物を均一に冷却するのを可能にする。
【0044】
本発明のこの態様のさらに別の好適な実施例では、処理ラインが、予熱モジュール、ロースティング・モジュール、及び冷却モジュールにより、トレーの中へ供給される空気の温度を調整するための制御装置を備える。これが、多様なモジュール内の温度状態を完全に制御するのを可能にする。
【0045】
本発明のこの態様の別の好適な実施例では、制御装置が、モジュールの間でトレーを変位させるための手段を制御するように構成される。これが、各モジュール内に産物が留まる時間を制御するのを可能にする。
【0046】
本発明のこの態様の別の好適な実施例では、予熱モジュール、冷却モジュール、及びロースティング・モジュールの各々が、トレーの開口部を覆うための分離したカバーを備え、ここでは、カバーが、トレーの外部に空気を誘導するための出口を呈する。これが、各モジュール内での処理時間を最小にするのを可能にする。
【0047】
現在、このような処理ラインでは1時間当たり最大6トンの天然産物をローストすることが可能であり、ここでは、初期の天然産物の湿度が、ほぼ、その総重量の4重量%から10重量%の範囲内である。
【0048】
予熱モジュールと、低温殺菌モジュールと、ロースティング・モジュールと、冷却モジュールと、を備える本発明の処理ライン(全長9.8m、全幅4.8m)は、1時間当たり1トンのスループットの場合の最大接地面積が47m2であることから、持続性も有する。
【0049】
ロースティング・モジュール及びさらには処理ラインの持続性をさらに向上させるために、使用される空気が少なくとも部分的に再循環させられる。本発明の一実施例では、有利には、空気が、ロースティング・モジュールから離れた後で且つ少なくとも部分的に予熱モジュールに入れられる前に、乾燥される。
【0050】
本発明は、上で開示される優位性を有するロースティング・モジュールの使用、さらには、上で与えられる優位性を有する、具体的には、豆、穀物、種、又はナッツをローストするための、またより好適には、豆、種、木の実、又はグラウンド・ナッツをローストするための、天然産物をローストするための、上で開示される優位性を有する処理ラインの使用を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の実施例によるロースティング・モジュールのトレーを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施例によるロースティング・モジュールのトレーを示す断面図である。
【
図3】本発明の実施例によるロースティング・モジュールを示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施例による処理ラインを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、本発明の実施例によるロースティング・モジュール10(
図4を参照)のトレー11の概略斜視図を示す。示されるように、トレー11は有利には実質的に立方体であり、開口部12を有し、豆、種、又はナッツのようなローストされることになる産物が開口部12を通してトレー11の中へ挿入され得る。開口部12は、
図3に示されるように、カバー13によって覆われ得る。カバー13は、有利には、高温空気を誘導するための及びトレー11の外部で副産物をローストするための空気出口14を備える。
図4に示されるように、ロースティング・モジュール10(予熱モジュール20及び冷却モジュール40と同様に)、開口部12を閉じたり開けたりすることを目的としてカバー13を降下及び上昇させるための手段(ここでは示されない)を備える。
【0053】
図2に示されるように、トレー11は逆さの切頭錐体15の形態の底部を備える。錐体の大きい方の基部15aが、ローストされることになる産物を保持するのに十分な小ささであるメッシュを有するグリッドによって覆われる。小さい方の基部15bが、空気をトレー11の中へ供給するための空気入口16(
図3を参照)に接続される。入口16が、高温空気をトレー11の中へ供給するための手段のダクト17に接続され、具体的にはロースティング・モジュール10内の空気が、115℃から200℃の間の、有利には125℃から170℃の間の、具体的には135℃から150℃の間の温度を有する。発明者らは、上で言及した温度範囲内の温度で、及び、トレー11(
図2を参照されたい(
図2では、Lがトレー11内の産物の高さを画定する))内の産物の高さHの1m当たり且つ逆さの錐体の大きい方の基部15aの表面の1m
2当たりにおいて少なくとも4’000m
3/時の流量での流量で、高温空気を供給することを目的としてトレー11内の産物の均一なロースティングを達成することが必要であることを見出した。ロースティング・モジュール10の入口16及び高温空気を供給するための手段は、したがって、このような温度及びこのような流量で高温空気を供給するように構成される。したがって、このようなロースティング・モジュール10を用いることにより、産物自体を移送することを必要とすることなく、ひいては産物を傷つけること及びダストを生成することを回避しながら、豆、種、又はナッツのような大量の天然産物をローストすることが可能となる。
【0054】
好適には、入口16及び/又はダクト17は、シール、好適には膨張可能なシールを有する。これは、入口16又はダクト17のいずれかがシールを有するか或いはこれらの両方の各々がシールを有することを意味する。
【0055】
トレー11は、有利には、フォークリフトのフォークを挿入するためのフォーク開口部18を備える。これが、例えば倉庫からベルト50の上までトレー11を容易に移送するのを可能にし、ベルト50が、処理ライン100(
図4を参照)の1つのモジュールから別のモジュールまでトレー11を移動させるのを可能にする。
【0056】
図4に示されるように、ロースティング・モジュール10、さらには、低温殺菌モジュール30及び予熱モジュール20が、有利には、センサー19を備える。センサー19は、トレー11の内部の温度及び/又は湿度を測定すると予見され得る。
【0057】
図4は、本発明の一実施例による処理ライン100の側面図を示す。処理ライン100は、予熱モジュール20、ロースティング・モジュール10、低温殺菌モジュール30、及び冷却モジュール40を備える。予熱モジュール、ロースティング・モジュール、及び冷却モジュールの各々が、対応するモジュールの内部にトレー11が配置されるときにトレー11を覆うためのそれらの専用のカバー13、23、43を有する。予熱モジュール20は、入口16により、40℃から120℃の間の、有利には60℃から90℃の間の、具体的には70℃から80℃の間の温度の高温空気をトレー11の中に挿入するための手段27を備える。同様の手法で、冷却モジュール40が、入口16により15℃から35℃の間の温度の空気をトレー11の中に挿入するための手段47を備える。低温殺菌モジュール30が、トレー11の周りに亜大気圧を作り出すように構成されたチャンバ31を備え、ここでは、トレー11の内部の産物の上に乾燥蒸気を挿入するための手段がチャンバ31内に提供される。さらに、低温殺菌モジュール30が空気を挿入するための手段37を備える。各モジュール10、20、30、及び40がモーター51を有するベルト50(
図3を参照)を備え、ベルト50が1つのモジュールから別のモジュールまでトレー11を移動させるのを可能にする。
【0058】
処理ライン100は、予熱すること、ローストすること、低温殺菌すること、及び周囲温度まで冷却することにより、豆、種、又はナッツのような天然産物を完全に処理するのを可能にする。これらのすべてのステップがトレー11の内部で天然産物を保持しながら実施されることを理由として、従来技術の処理ラインのように産物をその移送により傷つけるのを回避することが可能となる。
【0059】
最後に、上記が1つの関連の非限定の実施例を概説するものであることを指摘しておかなければならない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示される非限定の実施例に対しての修正が実施され得ることが当業者には明らかとなろう。したがって、説明される非限定の実施例は、顕著な特徴及び用途のうちのいくつかの特徴及び用途を単に説明するものとみなされなければならない。非限定の実施例を別の手法で適用することにより又は当業者には既知の手法で実施例を修正することにより他の有益な結果も実現され得る。
【0060】
さらに、各々の与えられる優位性は任意の他の単一の又は複数の優位性と組み合わされ得、このような組み合わせも本発明の範囲に包含され得る。
【国際調査報告】