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特表2024-546281組成制御下でポリオレフィンを製造するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】組成制御下でポリオレフィンを製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/16 20060101AFI20241212BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20241212BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F4/6592
C08F2/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536208
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 US2022081511
(87)【国際公開番号】W WO2023114815
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,997
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】グルラジャン ギリプラサス
(72)【発明者】
【氏名】マ ロン
(72)【発明者】
【氏名】ダーマラジャン ナラヤナスワミ
(72)【発明者】
【氏名】シャウダー ジャン-ロッホ ハー
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011DA04
4J011DB13
4J011DB18
4J100AA02P
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA15Q
4J100AA16Q
4J100AA19Q
4J100AA21Q
4J100AR04Q
4J100AR11Q
4J100AR17Q
4J100AR22Q
4J100CA03
4J100CA04
4J100DA05
4J100DA09
4J100DA13
4J100DA14
4J100DA19
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA27
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC01
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB07
4J128EC02
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
(57)【要約】
オレフィンコポリマー、特にエチレン系コポリマーの製造プロセス。オレフィンコポリマーの製造プロセスは、オレフィンモノマー、少なくとも1種の他のオレフィンコモノマー、及び単一タイプの触媒システムを管型反応器に導入して、a)約2.0~約30.0の絶対コモノマー分布(CD)勾配90、約2.0~約30.0の絶対CD勾配75、約2.0~約30.0の絶対CD勾配50、又は約2.0~約30.0の絶対CD勾配25と、b)約0.30~約1.0の第1の長鎖分岐指数(g’(Mz))と、c)約0.30~約1.0の第2の長鎖分岐指数(g’(Mz+1))とを含有するオレフィンコポリマーを生成するステップを含み得る。管型反応器は、1つ以上の栓流成分、1つ以上のスパイラル式熱交換器、及び/又は再循環ポンプを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンコポリマーの製造プロセスであって、オレフィンモノマー、少なくとも1種の他のオレフィンコモノマー、及び単一タイプの触媒システムを管型反応器に導入して、a)約2.0~約30.0の絶対コモノマー分布(CD)勾配90、約2.0~約30.0の絶対CD勾配75、約2.0~約30.0の絶対CD勾配50、又は約2.0~約30.0の絶対CD勾配25と、b)約0.30~約1.0の第1の長鎖分岐指数(g’(Mz))と、c)約0.30~約1.0の第2の長鎖分岐指数(g’(Mz+1))とを備えるオレフィンコポリマーを生成するステップを含む、前記プロセス。
【請求項2】
MZ/MWが約1.8~6.0であるときにCD勾配50とCD勾配75の絶対平均、CD勾配25とCD勾配50の絶対平均、又はCD勾配75とCD勾配90の絶対平均が約1.5~約12.0である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記管型反応器が再循環ポンプを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記管型反応器がスパイラル式熱交換器を含む、請求項1~2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記触媒システムが、2つの補助的モノアニオン性配位子を備える4族有機金属化合物を含むメタロセン触媒を含み、前記各配位子は独立に置換されているか又は置換されておらず、前記配位子が、置換された単一の14族原子を含む共有結合的架橋によって結合されており、前記14族原子上の置換がアリール基を含み、その少なくとも1つが少なくとも1つのヒドロカルビルシリル置換基を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ヒドロカルビルシリル置換基が、式Rn"SiR'3-nを有し、式中、各R'は、独立にC1-C20ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、ヒドロフルオロカルビル置換基であり、R"は、Siとアリール基との間のC1-C10連結基であり、n=0又は1である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記オレフィンモノマーと前記少なくとも1種の他のオレフィンコモノマーが、連続溶液重合プロセスを用いて共重合される、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
水素を前記反応器に導入するステップをさらに含み、前記オレフィンモノマーがエチレンであり、前記少なくとも1種の他のオレフィンコモノマーが少なくとも1種のC4-C20オレフィンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記オレフィンコポリマーの質量平均分子量(Mw)を下記方程式:(Mw)2.2=-2.1E+011+1.5E+9*Tavg-2.7E+8*H2/C2+4.1E+10*C2conc+3.4E+011*C8conc-1.8E+9*Tavg*C8conc-1.9E+010*C2conc*C8conc(式中、Tavgは、平均反応器温度であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)に従って計算するステップと、計算されたMwに基づいて前記Mwを制御するステップとをさらに含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記CD勾配90を下記方程式:Sqrt(勾配90)=+0.11-7.6E-003*H2/C2+0.5*C2conc-0.2*C8conc+0.20*セメントconc(式中、Tavgは、平均反応器温度であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、セメントconcは、wt%でのセメント濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)を用いて計算するステップと、計算されたCD勾配90に基づいて前記コモノマー分布を制御するステップとをさらに含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記CD勾配75を下記方程式:Sqrt(勾配75)=+2.6-0.011*Tavg-5.7E-003*H2/C2+0.13*C2conc-0.06*C8conc+0.10*セメントConc(式中、Tavgは、平均反応器温度であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、セメントconcは、wt%でのセメント濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)を用いて計算するステップと、計算されたCD勾配75に基づいて前記コモノマー分布を制御するステップとをさらに含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の長鎖分岐指数を下記方程式:g'-Mz=+0.89+1.47E-004*H2/C2+0.02*C2conc-2.8E-003*C8conc-2.8E-005*PRPM(式中、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、PRPMは、反応器内のポンプ速度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)を用いて計算するステップと、計算された第1の長鎖分岐指数に基づいて前記第1の長鎖分岐指数を制御するステップとをさらに含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項13】
前記オレフィンコモノマーが、約2wt%~約40wt%のセメント濃度及び約3~約50の再循環率で生成される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項14】
前記オレフィンコポリマーが、約2.0~約7.0のMWDを有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記オレフィンコポリマーが、ASTM D1238(190℃/2.16kg)に従って測定して、約0.1dg/分~約500.0dg/分のメルトインデックスを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記オレフィンコポリマーが、ASTM D1238に従って測定して、約20.0~約100.0のメルトインデックス比(MI21.6/MI2.16)を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記オレフィンコポリマーが、ASTM D792に従って測定して、約0.850g/cc~約0.920g/ccの密度を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第1の長鎖分岐指数が約0.70~約0.97であり、かつ前記第2の長鎖分岐指数が約0.70~約0.97である、請求項1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することによりその開示内容全体をここに援用する2021年12月17日に出願された米国仮出願第63/290,997号の利益を主張する。
【0002】
分野
本発明の実施形態は、一般的にポリオレフィンの製造プロセス及びそれによって製造されるポリオレフィンに関する。さらに詳細には、該実施形態は、オレフィンコポリマー、例えばエチレン系コポリマーを、単一タイプの触媒システム及び単一の管型反応器を用いて、それらのコポリマーの組成を制御しながら製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ポリオレフィンホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等は、種々のタイプの触媒システム及び重合プロセスを用いて生成され得る。ポリオレフィンの生成に使用できる1つのタイプの触媒システムは、メタロセン系触媒システムである。メタロセン触媒は、1又は2つのシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環が中心の遷移金属原子にπ結合している有機金属配位化合物を含む均質なシングルサイト触媒である。シングルサイト触媒を含む触媒システムは典型的に、鎖、例えば、コモノマー挿入が少ない高分子量鎖及びコモノマー挿入が多い低分子量鎖間の幅広の分子量分布及び幅広のコモノマー分布とは対照的に、分子間の狭い分子量分布及び均一のコモノマー分布を有するポリオレフィンを生成する。
【0004】
ポリマー鎖に沿って狭い分子量分布及び均一のコモノマー分布を有するポリマーは、特定のプロセス及び最終用途には有利であり得るが、このタイプのポリマーは、他のプロセスや用途には望ましくないことがある。例えば、狭い分子量分布のポリマーは、例えばメルトフラクチャー等の流動不安定性なくポリマーを望ましい生産率で加工するためにフルオロポリマー添加剤の使用を必要とし得る。残念ながら、フルオロポリマー加工助剤の使用は、ポリマーから完成品を生産するコストを高くする。例えばブローフィルム及びブロー成形等の他のポリマー加工操作における安定性は、狭い分子量分布のポリマーでは、より幅広の分子量分布のポリマーに比べて低いことが多く、結果として生産率が低下する。また、異なる鎖間の幅広のコモノマー分布(通常の組成分布とも呼ばれる)を有するポリマーに比べて均一のコモノマー分布を有するポリマーは、望ましくない溶融加工性を有し得る。従って、シングルサイト触媒を用いて生成されるポリマーの分子量分布及びコモノマー分布を制御する能力を有することは非常に望ましい。
【0005】
シングルサイト触媒を含む触媒システムを用いて、適量の長鎖分岐分子を有するポリオレフィンを生成することができる。場合によっては、長鎖分岐は、結果として生じるポリマーの加工性を向上させるために望ましい。例えば、長鎖分岐の存在は、フィルムブローイング中のバブルの安定性を改善することができる。しかしながら、多くの最終用途では、相当量の長鎖分岐が、望ましくなく引き裂き特性及び引張特性に影響を及ぼすポリマーを生成する恐れがある。従って、シングルサイト触媒を含む触媒システムを用いてポリマー中の長鎖分岐の量を制御する能力を有することは望ましい目標である。
【0006】
クロム又はチーグラー・ナッタ(ZN)型触媒等の他の触媒を用いてより広い分子量分布のポリマーを生成することができる。しかしながら、クロム又はZN触媒のいずれかを利用すると、オレフィン重合プロセスにおける水素の使用が、結果として生じるポリマーの分子量分布の狭小化及び分子量低下の原因となり得る。ZN触媒使用の別の欠点は、結果として生じるポリマーが、ポリマーの機械的特性にとって不利益な低分子量という結末となる傾向があることである。クロム又はZN触媒の使用に関与する課題を克服するため、ポリマーの分子量分布の制御に利用できる複数のメタロセン触媒を含有する混合メタロセン系触媒システムが開発された。メタロセン系触媒システムと共に2つ以上の反応器を用いて分子量分布を制御する方法も開発された。しかしながら、これらの選択肢は、両方とも非常に高価であり、一般的に溶液重合プロセスを用いて達成されない。また、これらの選択肢は、分子量分布、コモノマー分布、及び長鎖分岐の有効な制御を全て同時には提供しない。
従って、シングルサイト触媒を含む触媒システム及び溶液重合プロセスを利用しながら、結果として生じるポリマーの分子量、コモノマー分布、及び長鎖分岐を同時に制御できる、ポリオレフィンを安価に生成する方法が必要である。また、水素の存在下で、シングルサイト触媒を用いて、幅広の分子量分布及び幅広のコモノマー分布を有するポリマーを生成する能力を有することが有利だろう。
【発明の概要】
【0007】
要約
オレフィンコポリマー、特にエチレン系コポリマーの製造プロセスを提供する。1つ以上の実施形態において、オレフィンコポリマーの製造プロセスは、オレフィンモノマー、少なくとも1種の他のオレフィンコモノマー、及び単一タイプのシングルサイト触媒を管型反応器に導入して、a)約2.0~約30.0の絶対コモノマー分布(CD)勾配90、約2.0~約30.0の絶対CD勾配75、約2.0~約30.0の絶対CD勾配50、又は約2.0~約30.0の絶対CD勾配25と、b)約0.30~約1.0の第1の長鎖分岐指数(g’(Mz))と、c)約0.30~約1.0の第2の長鎖分岐指数(g’(Mz+1))とを含有するオレフィンコポリマーを生成するステップを含み得る。管型反応器は、1つ以上の栓流要素、1つ以上の熱交換器、及び少なくとも1つの再循環ポンプを含み得る。
【0008】
本発明の上記特徴を詳細に理解できるように、上で簡単に要約した本発明のさらに特定の説明を実施形態を参照して行うことができ、実施形態のいくつかについては添付図面に例示する。しかしながら、添付図面は本発明の典型的実施形態を単に例示するだけであり、本発明は他の同等に有効な実施形態を認め得るのだから、添付図面を本発明の範囲の限定とみなすべきでないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】aは、本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、実質的に垂直方向に配置されたスパイラル式熱交換器を含有する管型反応器を示し、bは、図1aのスパイラル式熱交換器の平面図を示す。
図2】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、実質的に水平方向に配置されたスパイラル式熱交換器を含有する管型反応器を示す。
図3A】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、エチレン-オクテンコポリマーについてポリマー鎖に沿った分子量分布及びコモノマー分布を示すグラフである。
図3B】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、図3aのコモノマー分布プロファイルの勾配を示すブラフである。
図4】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、上記エチレン-オクテンコポリマーについてTREF分布プロファイルを示すグラフである。
図5A】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、追加のエチレン-オクテンコポリマーのコモノマー分布プロファイルの勾配を示すグラフである。
図5B】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、追加のエチレン-オクテンコポリマーについてTREF分布プロファイルを示すグラフである。
図6】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、追加のエチレン-オクテンコポリマーについて複素弾性率対位相角を示すVan Gurp-Palmenプロットである。
図7】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、エチレン-オクテンコポリマーについて予測されたMwに対する観測されたMwを示すグラフである。
図8A】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、エチレン-オクテンコポリマー生成についてオクテン濃度に対する観測されたコモノマー分布勾配90及び予測されたコモノマー分布勾配90を示すグラフである。
図8B】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、エチレン-オクテンコポリマー生成についてセメント濃度に対する観測されたコモノマー分布勾配75及び予測されたコモノマー分布勾配75を示すグラフである。
図9】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、エチレン-オクテンコポリマー生成について長鎖分岐指数(g’(Mz))対エチレン濃度を示すグラフである。
図10】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、エチレン-ブテンコポリマーについてポリマー鎖に沿った分子量分布及びコモノマー分布を示すグラフである。
図11】本明細書で提供する1つ以上の実施形態に従って、エチレン-オクテンコポリマー及びエチレン-ブテンコポリマーについてMz/Mw値に対するコモノマー分布プロファイルの平均勾配を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
下記開示は、本発明の様々な特徴、構造、及び/又は機能を実行するためのいくつかの例示実施形態を記述することを理解すべきである。以下に成分、配置、及び構成の例示実施形態を記述して本開示を単純化する。しかしながら、これらの例示実施形態は、単に例として提供するものであり、本発明の範囲を限定する意図はない。さらに、本開示は、種々の例示実施形態において及び本願で提供する図面にわたって参照番号及び/又は参照文字を繰り返すことがある。この繰り返しは、単純化及び明瞭化のためであり、図面で考察する種々の例示実施形態及び/又は構成間の関連性をそれ自体で指示するものではない。さらに、下記例示実施形態は、いずれの組み合わせ方法でも併用し得る。すなわち、ある例示実施形態のいずれの要素も、本開示の範囲を逸脱することなく、いずれの他の例示実施形態でも使用することができる。
さらに、下記説明及び特許請求の範囲を通して、ある一定の用語を用いて特定成分を表す。当業者には明らかなように、種々のエンティティが異なる名称で同一成分を指すことがあり、同様に、本明細書に記載の要素についての命名規則は、本明細書で具体的に定義していない限り、本発明の範囲を限定する意図はない。さらに、本明細書で用いる命名規則は、名称が異なるが機能は異ならない成分間を区別するつもりはない。
【0011】
下記考察及び特許請求の範囲において、用語「含む(including及びcomprising)は、制約のない様式で使用され、従って、「含むが、これらに限定されない」という意味に解釈すべきである。「から本質的に成る(consisting essentially of)という表現は、記載組成物及び/又は請求組成物が、実質的にその特性を当該特性の5%以上変えることになるいずれの他の成分をも含まず、いずれの場合にも、3質量%超のレベルまでいずれの他の成分をも含まないことを意味する。
用語「又は(or)」は、排他的及び包括的の両ケースを包含する意図であり、すなわち、「A or B」は、本明細書で明白に特定していない限り、「AとBの少なくとも1つ」と同義であるとされる。
不定冠詞「a」及び「an」は、文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、単数形(すなわち、「1つ」)と複数参照(すなわち、1つ以上)の両方を意味する。例えば、「an olefin」を使用する実施形態には、反対に特定されていない限り又は文脈上明白に1種のオレフィンだけを使用すると指示していない限り、1、2、又は3種以上のオレフィンを使用する実施形態が含まれる。
用語「wt%」は、質量百分率を意味し、「vol%」は、体積百分率を意味し、「mol%」は、モル百分率を意味し、「ppm」は、百万分率を意味し、「ppm wt」及び「wppm」は、互換的に用いられて、質量基準の百万分率を意味する。本明細書の全ての濃度は、別段の定めがない限り、問題の組成物の総量に基づいて表される。
【0012】
用語「ポリマー」は、同一又は異なる反復単位/mer単位又は単位の任意の2種以上を指す。用語「ホモポリマー」は、同一である単位を有するポリマーを指す。用語「コポリマー」は、互いに異なる2種以上の単位を有するポリマーを指し、ターポリマー等を含む。用語「ターポリマー」は、互いに異なる3種の単位を有するポリマーを指す。用語「異なる」は、それが単位を指すとき、該単位が互いに少なくとも1つの原子が異なるか又は類似体的に異なることを意味する。同様に、本明細書で用いるポリマーの定義は、ホモポリマー、コポリマー等を含む。例として、コポリマーが10wt%~30wt%の「プロピレン」含量を有すると言われるとき、コポリマー中の反復単位/mer単位又は単に単位が、重合反応でプロピレンから誘導され、この誘導単位が、コポリマーの質量に基づいて10wt%~30wt%で存在すると理解される。
【0013】
用語「連続」は、中断又は停止せずに作動するシステムを指す。例えば、ポリマーを生成するための連続プロセスは、反応体が連続的に1つ以上の反応器に導入され、ポリマー生成物が連続的に引き出されるプロセスということになる。
用語「溶液重合」は、ポリマーが、不活性溶媒、モノマー(複数可)、又はそのブレンドのような液体重合媒体に溶解される重合プロセスを指す。溶液重合は典型的に均一である。用語「均一重合」は、ポリマー生成物が重合媒体に溶解される重合プロセスを指す。該システムは、好ましくは、J. Vladimir Oliveira, C. Dariva, and J. C. Pinto, Ind. Eng. Chem. Res., 29, 2000, 4627に記載のように混濁されない。均一重合プロセスは、典型的に生成物の少なくとも90wt%が反応媒体に溶解するプロセスである。
【0014】
用語「層状の」流れは、層間の破壊のない平行層内の流体(例えば、気体、液体)の流れを指す。流体は、固体境界近傍で層状の流れを示し得る。「層状に近い」流れは、層間に最小限の破壊のある平行層内の流体の流れを指す。
本明細書で使用する場合、「Mn」は、ポリマー材料中の様々なポリマーの数平均分子量を指し、「Mw」は、ポリマー材料中の様々なポリマーの質量平均分子量を指し、「Mz」は、ポリマー材料中の様々なポリマーのz平均分子量を指す。用語「分子量分布」(MWD)及び「多分散指数」(PDI)は、互換的に使用されて、MwとMnの比を指す。特に断りのない限り、全ての分子量(Mw、Mn、Mz)は、g/モルの単位で報告する。
本明細書で使用する元素及びその基の命名法は、1988年以後の国際純正及び応用化学連合が用いた周期表に準じる。周期表の例は、F. Albert Cotton et alによるAdvanced Inorganic Chemistry, 6th Edition(John Wiley & Sons, Inc., 1999)のフロントカバーの内部ページに示されている。
【0015】
以下に詳細な説明を提供する。添付した各請求項は別々の発明を定義し、これは侵害目的で、請求項に特定した種々の要素又は限定と等価なものを含むと認められる。文脈によっては、「発明」への全ての言及が特定の具体的実施形態のみを指す場合がある。他の場合には、「発明」への言及が、1つ以上であるが、必ずしも全てではない請求項に記載の主題を指すことが認められるだろう。本発明のそれぞれについて具体的実施形態、変形及び実施例を含め、さらに詳細に後述するが、本発明は、これらの実施形態、変形又は実施例に限定されず、これらの実施形態、変形又は実施例は、本開示の情報が公に入手可能な情報及び技術と併用されると、当業者が本発明を作り、使用できるように含められる。
【0016】
本明細書ではオレフィンコポリマーの製造プロセスであって、オレフィンモノマーと、少なくとも1種の他のコモノマーと、単一タイプの触媒システムとを単一の管型反応器に導入してオレフィンコモノマーを生成するステップを含み得る、プロセスを提供する。用語「管型反応器」は、その中にフィードが連続的に導入され(例えば、入口を経て)、そこから生成物が連続的に除去される(例えば、出口を経て)反応器を指し、反応器内では典型的に撹拌は起こらない。例えば、管型反応器は、実質的に管形状であり得、直線パイプ又は再循環できるようにループを含み得る。管型反応器は、1つ以上の栓流成分及び/又は1つ以上の層流要素を含み得る。管型反応器は再循環ポンプを含み得る。好ましくは、管型反応器は1つ以上の熱交換器を含み得る。熱交換器(複数可)は、スパイラル式熱交換器(SHE)であり得る。驚いたことに、シングルサイト触媒を含む単一タイプの触媒システムと共に単一の管型反応器のみを用いて、水素の存在下でさえ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で決定されるポリマー鎖に沿って不均一な幅広のコモノマー分布及び幅広の分子量分布(MWD)を有するオレフィンコポリマーを生成することができる。既に述べたように、これらの特性を有するオレフィンコポリマーは、通常は1つの触媒システム及び1つの管型反応器のみを用いて生成され得ない。また、該コポリマーは、連続撹拌槽型反応器(CSTR)を用いて通常は生成され得ない。このように、本明細書で開示するプロセスは、該特性を有するオレフィンコポリマーを生成するために用いられるプロセスより簡便であるのみならず、対費用効果も高い。
【0017】
本明細書で生成されるオレフィンコポリマーの絶対コモノマー分布(CD)勾配25、勾配50、勾配75、及び勾配90は、予想外に2.0~30.0の範囲であり得る。このことは、これらのコポリマーが幅広のコモノマー分布を有し得ることを示唆している。絶対勾配の1若しくは2つ又は全てが2超であり得る。絶対勾配は、勾配25から勾配90まで昇順に増加し得るか、又は絶対勾配は勾配90から勾配25まで降順に増加し得るか、又は絶対勾配は順不同に増加し得る。幅広のコモノマー分布を有するポリマーは、コモノマー組み込みが少なくて相対的に高い分子量鎖又はコモノマー組み込みが多くて相対的に低い分子量鎖のどちらかを有する。好ましい実施形態では、オレフィンコポリマーの絶対CD勾配75は2.0~20.0の範囲である。好ましい実施形態では、オレフィンコポリマーの絶対CD勾配90は2.0~約20.0の範囲である。1.5~6.0の範囲の全てのMz/Mw値について、絶対勾配の平均、すなわち、オレフィンコポリマーの(勾配50+勾配75)/2、(勾配25+勾配50)/2、及び(勾配75+勾配90)/2は、15.0まで、好ましくは0.1~12.0、さらに好ましくは0.1~10.0の値を有し得る。好ましい実施形態では、オレフィンコポリマーは、1.8~6.0の範囲の全てのMz/Mw値について1.5~12.0の範囲の絶対勾配平均を有する。
【0018】
本明細書で生成されるコポリマーは、2.0~7.0の範囲のMWD(Mw/Mn)を有する可能性もあり、コポリマーのMWDが幅広であり得ることを示唆している。好ましい実施形態では、オレフィンコポリマーのMWDは、2.0~約6.0の範囲である。コポリマーは、1.5~6.0、好ましくは1.8~6.0、さらに好ましくは1.8~5.0の範囲のMz/Mw値を有し得る。コポリマーは、3.0~40.0、好ましくは3.0~30.0、さらに好ましくは3.0~25.0の範囲のMz/Mn値をも有し得る。CD勾配、分子量モーメント及び分子量分布の決定に使用できる手順については下記実施例で述べる。
有利には、本明細書で生成されるポリオレフィンコポリマーは、低レベルの長鎖分岐(LCB)をも示し得る。特に、コポリマーは、0.30~1.00、好ましくは0.70~0.97の範囲の第1の長鎖分岐指数(g’(Mz))を有し得る。コポリマーは、0.30~1.00、好ましくは0.70~0.97の第2の長鎖分岐指数(g’(Mz+1))を有し得る。LCBを決定するために用いた方法の記述は、下記実施例で見つけられる。
本明細書で生成されるオレフィンコポリマーは、ASTM D792に従って測定して、0.850g/cc~0.920g/ccの密度を有する可能性があり、オレフィンコポリマーがエラストマー及びポリマーという質を兼ね備えるプラストマーとして役立ち得ることを示唆している。オレフィンコポリマーは、0.1dg/分~500.0dg/分の範囲の幅広のメルトインデックス(MI)値及び20.0~約100.0の範囲のメルトインデックス比(MIR)(MI21.6/MI2.16)をも有し得る。両方ともASTM D1238(190℃/2.16kg)に従って測定される。
【0019】
本明細書で開示するプロセスの別の利点は、本明細書で生成されるコポリマーについて、下記例示方程式を用いて質量平均分子量(Mw)、ひいてはMWD、コモノマー分布、及び長鎖分岐のレベルを全て制御できることである。Mwは、下記方程式を用いて計算することができる。
(Mw)2.2=-2.1E+011+1.5E+9*Tavg-2.7E+8*H2/C2+4.1E+10*C2conc+3.4E+011*C8conc-1.8E+9*Tavg*C8conc-1.9E+010*C2conc*C8conc
式中、Tavgは、反応器の入口温度と出口温度の℃での平均であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、少なくとも1種の他のコモノマーのwt%での濃度(例えば、オクテン濃度)であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている。計算されたMwに基づいてg/モルでのMwを制御することができる。
CD勾配90は、下記方程式を用いて計算することができる。
Sqrt(勾配90)=+0.11-7.6E-003*H2/C2+0.5*C2conc-0.2*C8conc+0.20*セメントconc
式中、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマーの濃度(例えば、オクテン濃度)であり、セメントconcは、wt%でのセメント濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている。計算されたCD勾配90に基づいてコモノマー分布を制御することができる。
【0020】
CD勾配75は、下記方程式を用いて計算することができる。
Sqrt(勾配75)=+2.6-0.011*Tavg-5.7E-003*H2/C2+0.13*C2conc-0.06*C8conc+0.10*セメントconc
式中、Tavgは、反応器の入口温度と出口温度の℃での平均でありH2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、少なくとも1種の他のコモノマーのwt%での濃度(例えば、オクテン濃度)であり、セメントconcは、wt%でのセメント濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている。計算されたCD勾配75に基づいてコモノマー分布をも制御することができる。
長鎖分岐指数g’(Mz)は、下記方程式を用いて計算することができる。
g'-Mz=+0.89+1.47E-004*H2/C2+0.02*C2conc-2.8E-003*C8conc-2.8E-005*PRPM
式中、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマーの濃度(例えば、オクテン濃度)であり、PRPMは、反応器のポンプ速度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている。計算されたg’(Mz)に基づいて長鎖分岐指数を制御することができる。
【0021】
重合プロセス
重合プロセスは、モノマー、コモノマー、及び触媒システムが溶液相中で接触され、その中でポリマーが形成される溶液重合プロセスであり得る。好ましくは、溶液重合プロセスは、バルク重合プロセスである。本明細書で使用する場合、「バルク重合」は、重合されるモノマー及び/又はコモノマーが、溶媒又は希釈剤として使用され、液体又は希釈剤としてほとんど又は全く不活性溶媒を使用しない重合プロセスを指す。ほんのわずかな不活性溶媒を触媒用担体として及びスカベンジャーとして使用することもある。
好ましい実施形態では、重合のためのモノマー及びコモノマーのフィード濃度は、フィードストリームの総体積に基づいて、60vol%以下、好ましくは40vol%以下、さらに好ましくは20vol%以下である。
【0022】
モノマー及びコモノマー
オレフィンモノマーは、置換又は非置換C2-C40オレフィン、好ましくはC2-C20オレフィン、さらに好ましくはC2-C12オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、及びその異性体であるか又はこれらを含み得る。少なくとも1種の他のオレフィンコモノマーは、置換又は非置換C4-C40オレフィン、好ましくはC4-C20オレフィンであるか又はこれらを含み得る。
1つ以上の実施形態において、モノマーはエチレンであり得、少なくとも1種の他のコモノマーは、C4-C20オレフィンを含み得る。C4-C20オレフィンコモノマーは、直鎖、分岐、又は環式であり得る。適切なC4-C20環式オレフィンは、歪みがあるか又は歪みがない単環式又は多環式であり得、場合によりヘテロ原子及び/又は1つ以上の官能基を含み得る。反応器のC2濃度は、0.1~40.0wt%の範囲であり得、反応器のコモノマー濃度は、0.1~40.0wt%の範囲であり得る。
少なくとも1種のコモノマーの具体例としては、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロドデセン、7-オキサノルボルネン、7-オキサノルボルナジエン、その置換誘導体、及びその異性体、好ましくはヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、シクロオクテン、1,5 -シクロオクタジエン、l-ヒドロキシ-4-シクロオクテン、1-アセトキシ-4-シクロオクテン、5-メチルシクロペンテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、並びにそれらのそれぞれの同族体及び誘導体、好ましくはノルボルネン、ノルボルナジエン、及びジシクロペンタジエンが挙げられる。
【0023】
好ましい実施形態では、1種以上のジエン(ジオレフィンモノマー)が重合プロセスに添加される。ジエンは、本明細書で生成されるポリマー中に、組成物の総質量に基づいて、10wt%まで、好ましくは0.00001~8.0wt%、好ましくは0.002~8.0wt%、さらに好ましくは0.003~8.0wt%で存在し得る。一部の実施形態では、500ppm以下、好ましくは400ppm以下、好ましくは300ppm以下のジエンが重合に添加される。他の実施形態では、少なくとも50ppm、又は100ppm以上、又は150ppm以上のジエンが重合に添加される。
適切なジオレフィンモノマーは、任意の炭化水素構造、好ましくは少なくとも2つの不飽和結合を有するC4-C30を含み、不飽和結合の少なくとも1つは、鎖の増大中にポリマー鎖に容易に組み込まれる。α,ω-ジエンモノマー(すなわち、ジビニルモノマー)から選択されるジオレフィンモノマーがさらに好ましい。さらに好ましくは、ジオレフィンモノマーは直鎖ジビニルモノマー、最も好ましくは4~30個の炭素原子を含有する直鎖ジビニルモノマーである。好ましいジエンの具体例としては、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエン、ウンデカジエン、ドデカジエン、トリデカジエン、テトラデカジエン、ペンタデカジエン、ヘキサデカジエン、ヘプタデカジエン、オクタデカジエン、ノナデカジエン、イコサジエン、ヘンエイコサジエン、ドコサジエン、トリコサジエン、テトラコサジエン、ペンタコサジエン、ヘキサコサジエン、ヘプタコサジエン、オクタコサジエン、ノナコサジエン、トリアコンタジエンが挙げられ、特に好ましいジエンとしては、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,11-ドデカジエン、1,12-トリデカジエン、1,13-テトラデカジエン、及び低分子量(1000g/モル未満のMw)ポリブタジエンが挙げられる。好ましい環式ジエンとしては、シクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジビニルベンゼン、及びジシクロペンタジエン又は種々の環位置に置換基があるか若しくは置換基がないジオレフィンを含有するより高級な環が挙げられる。
【0024】
触媒システム
用語「触媒システム」は、触媒前駆体/活性剤ペアを意味する。「触媒システム」を用いて活性化前の該ペアを記述するときには、それは活性剤及び、場合により共活性剤と共に非活性化触媒(プレ触媒)を意味する。「触媒システム」を用いて活性化後の該ペアを記述するときには、それは活性化触媒及び活性剤又は他の電荷平衡化成分を意味する。遷移金属化合物は、プレ触媒におけるように中性であってよく、或いは活性化触媒システムにおけるように対イオンとの荷電種であり得る。用語「触媒システム」は、複数の触媒前駆体並びに/又は複数の活性剤及び場合により共活性剤をも含み得る。
本明細書に記載の重合プロセスに用いる触媒システムは、メタロセン金属中心の2つの補助的モノアニオン性配位子、例えば置換若しくは非置換シクロペンタジエニル含有(Cp)配位子並びに/又は置換及び非置換13族~16族ヘテロ原子配位子等を架橋している単一の置換炭素又はケイ素を有する架橋メタロセン化合物を含み得る。架橋置換基は、置換アリール基であり得、該置換基は、アリール基架橋置換基の少なくとも1つの上に配置された少なくとも1つの可溶化ヒドロカルビルシリル置換基を含む。シクロペンタジエニル及び/又はヘテロ原子配位子上に存在する置換基は、当該配位子上の水素基、又はシクロペンタジエニル環上の縮合芳香環上の水素基の1つ以上の代替基としてC1-C30ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロフルオロカルビル基を含み得る。芳香環がシクロペンタジエニル配位子上の置換基であることがあり、これらにはシクロペンタジエニル基及びそれらの水素化対応基のインデニル及びフルオレニル誘導体が含まれる。該芳香環は、典型的に直鎖、分岐、環式、脂肪族、芳香族又は複合構造基(縮合環若しくはペンダント配置を含む)から選択される1つ以上の芳香環置換基を含む。例として、メチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、三級ブチル、ネオペンチル、フェニル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、及びアダマンチルが挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「炭化水素」又は「ヒドロカルビル」は、本質的に炭化水素特性を有するが、場合により約10モル%以下の非炭素ヘテロ原子、例えばホウ素、ケイ素、酸素、窒素、硫黄及びリン等を含有する化合物又は基を含むことを意味する。さらに、この用語は、ヒドロフルオロカルビル置換された基を含むことを意味する。「ヒドロカルビルシリル」は、限定するものではないが、ジヒドロカルビルシリル及びトリヒドロカルビルシリルによって例示され、好ましいヒドロカルビル基は、架橋基フェニルのためのC1-C30置換基ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル又はヒドロフルオロカルビル置換基である。ヘテロ原子含有触媒については、国際公開第WO92/00333号を参照されたい。また、ヘテロ原子含有環又は縮合環(非炭素13族、14族、15族又は16族原子が1個の環炭素に取って代わる)の使用は、本明細書では用語「シクロペンタジエニル」、「インデニル」、及び「フルオレニル」の範囲内であるとみなす。例えば、参照することによりこれらの内容をここに援用する国際公開第WO98/37106号及び第WO98/41530号の背景及び教示を参照されたい。
【0025】
特に適切なシクロペンタジエニル系錯体は、(パラ-トリメチルシリルフェニル)(パラ-n-ブチルフェニル)メチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ジ(パラ-トリメチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tert-ブチル-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、(パラ-トリエチルシリルフェニル)(パラ-t-ブチルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル又はジベンジル、及びジ(パラ-トリエチルシリル-フェニル)メチレン(2,7-ジメチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル又はジベンジルの化合物、異性体、又は混合物である。
【0026】
架橋メタロセン化合物は、配位重合又はカチオン重合を可能にするのに十分ないずれの様式によっても重合触媒作用のために活性化され得る。これは、1つの配位子が引き抜かれることが可能であり、別の配位子は不飽和モノマーの挿入を可能にするか又は不飽和モノマー(不安定な配位子)、例えば、アルキル、シリル、又はヒドリドの挿入を可能にする配位子との置換のために同様に引き抜かれ得るときに配位重合のために達成され得る。配位重合技術の伝統的活性剤、例えば、アルモキサン化合物等のルイス酸、及び架橋メタロセンの金属中心をカチオンにイオン化し、均衡する非配位性アニオンをもたらすように1つの配位子を引き抜くイオン化性アニオン前駆体化合物が適切である。
触媒システムは、他のタイプのシングルサイト触媒、例えばハーフメタロセン及びポストメタロセンを組み入れてもよい。適切な触媒システムの詳細な説明については、それぞれ参照することによりその内容をここに援用する国際公開第WO/2000/024793号及び第WO/2021/162748号をも参照されたい。
【0027】
管型反応器システム
管型反応器システムは、1つ以上のスパイラル式熱交換器を含み得る。例えば、図1aに示すように、モノマー、コモノマー、及び触媒システムを含むストリーム1は、管型反応器2に入り、スパイラル式熱交換器3を通って移動し得る。コポリマー生成物、未反応モノマー及び/又はコモノマー、並びにクエンチされたか又はクエンチされない触媒システムを含むストリーム4が反応器2を出ることができる。熱交換媒体を含むストリーム5がスパイラル式熱交換器3を通って流れ得る。少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、スパイラル式熱交換器の軸周囲に半径方向に配置されるスパイラルを形成するように巻かれた少なくとも1枚のスパイラルシートによって形成された本体を含み得る。スパイラルは、熱交換媒体の流れ用の少なくとも1つの流路を形成することができ、スパイラルは、図2に示すように、実質的に円筒殻によって囲い込まれ得る。また、円筒殻は、熱交換媒体を供給及び除去するための少なくとも1つの流路と流体連絡している少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を含み得る。
【0028】
少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、例えば、図lbに示すように、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器のスパイラル6間に形成された流路を通ってモノマー、コモノマー、触媒システム、及びコポリマー生成物が軸方向に流れ、それによってフィード及びポリマー生成物が少なくとも1つのスパイラル式熱交換器を通って移動しながら流れるような方向に配置することができる。言い換えれば、モノマー、コモノマー、触媒システム、及びコポリマー生成物は、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器の中を、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器のスパイラルに対してクロスフロー方向に流れ得る。本明細書で使用する場合、「クロスフロー」方向は、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器のスパイラルに対する方向が実質的に直交性の流れを指す。実質的に直交性には、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器のスパイラルに対して、70°~110°、好ましくは80°~100°、さらに好ましくは85°~95°、さらに好ましくは88°~92°、最も好ましくは90°の角度のモノマー、コモノマー、触媒システム、及びコポリマー生成物の流れが含まれ得る。
【0029】
図lbに示すように、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、モノマー、コモノマー、触媒システム、及びコポリマー生成物が少なくとも1つのスパイラル式熱交換器の中を実質的に垂直方向に流れるように実質的に垂直方向に配置することができる。少なくとも1つのスパイラル式熱交換器の幾何学的配置は、該垂直配置に限定されるのではなくむしろ、フィード及び生成物が、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器の中を少なくとも1つのスパイラル式熱交換器のスパイラルに対してクロスフロー方向に流れる限り、いずれの方向に配置することもできる。例えば、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、図2に示すように、モノマー、コモノマー、触媒システム、及びコポリマー生成物が少なくとも1つのスパイラル式熱交換器の中を実質的に水平方向に流れるように、実質的に水平方向に配置することができる。
或いは、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、複数、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24等のスパイラル式熱交換器を含み得る。
【0030】
本明細書に記載のプロセスで用いる少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、技術上周知のいずれの適切なスパイラル式熱交換であってもよい。適切なスパイラル式熱交換器の非限定例としては、それぞれ参照することによりその内容をここに援用する米国特許第8,622,030号;第8,075,845号;第8,573,290号;第7,640,972号;第6,874,571号;第6,644,391号;第6,585,034号;及び第4,679,621号;米国公開第2010/0170665号;第2010/0008833号;第2002/0092646号;及び第2004/0244968号、並びに国際公開第WO/2017/058385号に記載のものが挙げられる。さらに又はこれとは別に、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、約66~98m2/m3(20~30ft2/ft3)の表面積と体積の比を有し得る。有利には、スパイラル式熱交換器は、0.15~9.1m(0.5~30フィート)、好ましくは0.3~7.6m(1~25フィート)、0.9~6.1m(3~20フィート)、1.5~4.6m(5~15フィート)、又は1.5~3m(5~10フィート)の開路高さを有し得る。
【0031】
少なくとも1つのスパイラル式熱交換器のスパイラルの中を流れる熱交換媒体は、技術上周知のいずれの適切な熱交換媒体であってもよい。特に有用な熱交換媒体は、反応温度で安定している媒体であり、典型的に200℃以上で安定な媒体を含む。伝熱媒体の例としては、水及び他の水溶液、油(例えば、炭化水素、例えば鉱物油、灯油、ヘキサン、ペンタン等)、及び合成媒体、例えばThe Dow Chemical Company(Midland, Michigan)から商品名DOWTHERM(商標)で商業的に入手可能なもの、例えばグレードA、G、J、MX、Q、RP、及びTが挙げられる。水を使用する場合には、水は、沸騰しないように適量の圧力下にあるのが好ましい。好ましくは、熱交換媒体は、スパイラルの中をフィードストリームの温度未満の温度で流れる。さらに、又はこれとは別に、熱交換媒体は、スパイラルの中をポリマーの沈殿点より高い温度で流れ得る。例えば、熱交換媒体は、スパイラルの中を100℃~150℃、好ましくは120℃~140℃、さらに好ましくは130℃の温度で流れ得る。
【0032】
種々の態様において、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、>約100Btu/時間-立法フィート-°F(約1,860W/立法メートル-℃)、>約150Btu/時間-立法フィート-°F(約2,795W/立法メートル-℃)、>約200Btu/時間-立法フィート-°F(約3,725W/立法メートル-℃)、>約250Btu/時間-立法フィート-°F(約4,660W/立法メートル-℃)、>約300Btu/時間-立法フィート-°F(約5,590W/立法メートル-℃)、>約350Btu/時間-立法フィート-°F(約6,520W/立法メートル-℃)、>約400Btu/時間-立法フィート-°F(約7,450W/立法メートル-℃)、>約450Btu/時間-立法フィート-°F(約8,385W/立法メートル-℃)、>約500Btu/時間-立法フィート-°F(約9,315W/立法メートル-℃)、>約550Btu/時間-立法フィート-°F(約10,245W/立法メートル-℃)、>約600Btu/時間-立法フィート-°F(約11,180W/立法メートル-℃)、>約650Btu/時間-立法フィート-°F(約12,110W/立法メートル-℃)、>約700Btu/時間-立法フィート-°F(約13,040W/立法メートル-℃)、>約750Btu/時間-立法フィート-°F(約13,970W/立法メートル-℃)、又は>約800Btu/時間-立法フィート-°F(約14,905W/立法メートル-℃)の比率で熱(例えば、重合反応中に生じた)を除去することができる。好ましくは、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、約>400Btu/時間-立法フィート-°F(約7,450W/立法メートル-℃)の比率で熱を除去することができる。明示的に開示した範囲は、上記列挙値の任意の組み合わせ、例えば、約100~約800Btu/時間-立法フィート-°F(約1,860~約14,905W/立法メートル-℃)、約200~約650Btu/時間-立法フィート-°F(約3,725~約12,110W/立法メートル-℃)、約350~約550Btu/時間-立法フィート-°F(約6,520~約10,245W/立法メートル-℃)を含む。好ましくは、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器は、約100~約800Btu/時間-立法フィート-°F(約1,860~約14,905W/立法メートル-℃)、好ましくは約200~約700Btu/時間-立法フィート-°F(約3,725~約13,040W/立法メートル-℃)、さらに好ましくは約300~約500Btu/時間-立法フィート-°F(約5,590~約9,315W/立法メートル-℃)の比率で熱を除去する。
【0033】
さらに、本明細書に記載の重合プロセスにおける少なくとも1つのスパイラル式熱交換器の使用は、有利なことに低い圧力降下をもたらし、より高い再循環率及び生産率につながる。例えば、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器にわたる圧力降下は、<約6.9hPa(0.1psi)、<約14hPa(0.2psi)、<約21hPa(0.3psi)、<約28hPa(0.4psi)、<約34hPa(0.5psi)、<約41hPa(0.6psi)、<約48hPa(0.7psi)、<約55hPa(0.8psi)、<約62hPa(0.9psi)、<約69hPa(1.0psi)、<約138hPa(2.0psi)、<約207hPa(3.0psi)、<約276hPa(4.0psi)、<約345hPa(5.0psi)、<約414hPa(6.0psi)、<約483hPa(7.0psi)、<約552hPa(8.0psi)、<約621hPa(9.0psi)、<約689hPa(10.0psi)、<約827hPa(12.0psi)、<約965hPa(14.0psi)、<約1103hPa(16.0psi)、<約1241hPa(18.0psi)、又は<約1379hPa(20.0psi)であり得る。少なくとも1つのスパイラル式熱交換器にわたる圧力降下は、<約689hPa(10.0psi)、好ましくは<約345hPa(5.0psi)、さらに好ましくは<約69hPa(1.0psi)であり得る。明示的に開示した範囲は、上記列挙値の任意の組み合わせ、例えば、約6.9hPa(0.1psi)~約1379hPa(20.0psi)、約34hPa(0.5psi)~約1103hPa(16.0psi)、約69hPa(1.0psi)~約827hPa(12.0psi)、約207hPa(3.0psi)~約552hPa(8.0psi)等を含む。好ましくは、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器にわたる圧力降下は、約6.9hPa(0.1psi)~約965hPa(14.0psi)、さらに好ましくは約34hPa(0.5psi)~約689hPa(10.0psi)、さらに好ましくは約55hPa(0.8psi)~約138hPa(2.0psi)、或いは1段階当たり14hPa(0.2psi)~55hPa(0.8psi)である。
【0034】
種々の態様において、モノマー、コモノマー、触媒システム、及びポリマーは、重合条件下で実質的に単一液相として維持され得る。少なくとも1つのスパイラル式熱交換器を通る液体の流れは、実質的に層状又は層状に近い可能性がある。好ましくは、液体の流れのレイノルズ数は、>約0.1、>約1.0、>約10.0、>約20.0、>約30.0、>約40.0、>約50.0、>約60.0、>約70.0、>約80.0、>約90.0、>約100、>約200、>約300、>約400、>約500、>約600、>約700、>約800、>約900、>約1,000、>約1,100、>約1,200、>約1,300、>約1,400、>約1,500、>約1,600、>約1,700、>約1,800、>約1,900、>約2,000、>約2,100、又は約2,200であり得る。さらに又はこれとは別に、液体の流れのレイノルズ数は、<約40.0、<約50.0、≦約60.0、≦約70.0、≦約80.0、≦約90.0、≦約100、≦約200、<約300、≦約400、≦約500、≦約600、≦約700、≦約800、≦約900、≦約1,000、≦約1,100、≦約1,200、≦約1,300、≦約1,400、≦約1,500、≦約1,600、≦約1,700、≦約1,800、≦約1,900、≦約2,000、≦約2,100又は<約2,200であり得る。明示的に開示した範囲は、上記列挙値の任意の組み合わせ、例えば、約0.1~約2,200、約1.0~約1,400、約1.0~約100、約50.0~約900等を含む。好ましくは、液体のレイノルズ数は、約0.1~約2,200、好ましくは約1.0~約1,000、好ましくは約1.0~約100、さらに好ましくは約1.0~約50である。レイノルズ数は、水力直径(Dh)を用いて計算され、水力直径(Dh)はDh=4A/Pと定義され、式中、Aはスパイラル式熱交換器の流路の断面の断面積であり、Pは、接液周囲長(wetted perimeter)である。非ニュートン流体の使用時にレイノルズ数を計算するためにはゼロせん断粘度を使用する。
【0035】
重合プロセスは、約50℃~約220℃、好ましくは約70℃~約210℃、好ましくは約90℃~約200℃、好ましくは約100℃~約190℃、好ましくは約130℃~約160℃の温度で行うことができる。重合プロセスは、約120~約1,800psi(827.371~12,410.560kPa)、好ましくは約200~約1,000psi(1,378.950~6,894.760kPa)、好ましくは約300~約800psi(2,068.430~5,515.810kPa)の圧力で行うことができる。
種々の態様において、少なくとも1つのスパイラル式熱交換器内の滞留時間は、24時間まで又はそれ以上、典型的に約1分~約15時間であり得る。滞留時間は、好ましくは約2分~約1時間、約3~約30分、約5~約25分、又は約5~約20分である。
一部の実施形態では、重合プロセス中に水素が約0.001~約50.000psig(0.007~344.738kPa)、好ましくは約0.010~約25.000psig(0.069~172.369kPa)、さらに好ましくは約0.100~約10.000psig(0.689~482.633kPa)の分圧で存在し得る。或いは、フィード中の水素濃度は、500wppm以下、好ましくは200wppm以下であり得る。
種々の態様において、生成ポリマーのセメント濃度は、約2wt%~約40wt%、好ましくは約5wt%~約30wt%、さらに好ましくは約6wt%~約25wt%の範囲であり得る。本明細書では「セメント濃度」を総溶媒(例えば、モノマー、コモノマー、及び/又は溶媒)に基づく生成ポリマーの質量であると定義する。
【0036】
重合プロセスは、管型反応器内の溶媒、モノマー/コモノマー、触媒システム、及びポリマーの少なくとも一部を戻して管型反応器の中を再循環させるステップをさらに含み得る。ポリマーは、約3~約50、好ましくは約3~約30、さらに好ましくは約3~約20の範囲の循環率で生成され得る。本明細書では再循環率を、スパイラル式熱交換器(単独又は直列)の中に入る直前の再循環ループの流量をスパイラル式熱交換器(単独又は直列)への未使用フィードの流量で割った比率であると定義する。
【実施例
【0037】
実施例:
前述の考察を下記非限定例を参照してさらに記述することができる。
エチレン(C2)とオクテン(C8)のコポリマーの7つのサンプル(実施例1~3)を管型反応器(「TR」)及び単一のメタロセン系触媒システムを用いて以下のように作製した。触媒活性剤(ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート)、水素(H2)、及びエチレン(C2)モノマーを反応器に添加した。次にハフニウム系メタロセン(MCN)触媒(段落[0029]に開示したとおり)、オクテン(C8)コモノマー、及びヘキセン(C6)を反応器に添加してスラリー相重合を開始させた。反応器に供給されるC2、C8、C6、及びH2の量を重合プロセスの間中ずっと一定に維持した。Ex.1~7のために利用したプロセス条件を下表1に示す。
MCN触媒及びCSTR反応器を用いて製造されたExxonMobilから商業的に入手可能なC2/C8コポリマー(比較例1及び2)を比較目的のために得た。比較目的のため下記C2/C8コポリマーをも得た:Dow Chemical Co.から商業的に入手可能なEngage(商標)8150、Engage(商標)11547、及びAffinity(商標)PL 1880(それぞれ、比較例3、4、及び6);並びにBorealis AGから商業的に入手可能なQueo(商標)06201(比較例5)。
【0038】
【表1】
【0039】
Ex.1~7及びC.Ex.1~6のサンプルのC8含量、分子モーメント、密度、及びLCB指数、MI、MIR、及び溶解度分布幅指数(SDBI)値を下表2~3に提示する。Ex.1~3の密度は0.882~0.886g/ccの範囲であり、Ex.1~3のMI値は2.4~15.8dg/分の範囲だった。Ex.2~3のサンプルのMWD(Mw/Mn)は、C.Ex.1及びEx.1のサンプルのMWDより、それらは類似密度を有したにもかかわらず大きかった。Ex.4~7の密度は、0.892~0.895g/ccの範囲であるEx.1~3の密度より大きかった。図2に示すように、Ex.4~7のサンプルについてのMWDの変動は、MIR(MI21.6/MI2.16)が26から53まで漸進的に変化するときに非常に明白だった。Ex.7の発明サンプルは、驚いたことにEx.4~6及びC.Ex.2のサンプルより幅広のMWD(2.6)及び小さいLCB指数(g’(Mz))を示した。分岐指数g’(Mz)は、z平均(第3モーメント)分子量平均で推定されるGPC-4Dからのg’だった。この計算は、MATLAB(登録商標)プログラムを用いて分子量データに対するg’をn次多項式にカーブフィッティングすることによって行った。nの値は典型的に3と4の間だった。GPC-IRの測定から得たMz値をカーブフィットに挿入して当該分子量に関連するg’を計算した。
【0040】
図3a及び3bは、Ex.1~3及びC.Ex.1のサンプルの分子量分布及びコモノマー分布のグラフを示す。図3bにおいて、コモノマー分布は、分子量分布のそれぞれ、25%、50%、75%及び90%で推定されるコモノマー分布曲線の勾配から計算した勾配25、50、75、及び90として表される。これらの勾配は、MATLAB(登録商標)プログラムを用いて分子量変化に対するコモノマー含量をn次多項式に第1のカーブフィッティングすることによって決定した。nの値は、典型的に2と4の間だった。分子量範囲のそれぞれ25%、50%、75%及び90%である種々の分子量点で曲線の微分係数を得た。例えば、x軸上の25%点を決定するためには、特定データセットについて最小分子量(mwmin)と最大分子量(mwmax)との差を最初に確証した。勾配25のx値をmwmin+0.25*(mwmax-mwmin)として計算した。微分係数の絶対値を当該点で決定して勾配25を求めた。0~2の範囲の勾配値は、均一コモノマー分布に相当するとみなし、勾配>2は、不均一コモノマー分布に相当するとみなした。Ex.1~7及びC.Ex.1~6のサンプルについての勾配25、勾配50、勾配75、勾配90、及び勾配50と勾配75の平均を下表2~3に示す。図3bに示すように、Ex.3の発明サンプルは、予想外に勾配の顕著な上昇(>2)を示した。これは、高分子量鎖はより少ないコモノマー含量を有し、低分子量鎖はより多いコモノマー含量を有する幅広のコモノマー分布を示唆している。また、表2~3に示すように、Ex.3及びEx.7の発明サンプルは、C.Ex.1~6、Ex.1~2、及びEx.4~6のサンプルよりずっと大きい平均勾配を有した。さらに、表2に示すように、MIRが26から53まで漸進的に変動するとき、Ex.4~7のサンプルについての組成分布の変化が非常に明白だった。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
Ex.1~3及びC.Ex.1のサンプルを昇温溶出分別(TREF)技術によって解析した。図4は、これらの各サンプルについてのTREF分布プロファイルのグラフを示す。図4は、Ex.3の発明サンプルについてのGPCの幅広コモノマー分布プロファイルを補強する。Ex.1、Ex.2、及びEx.3のサンプルについてC.Ex.1のサンプルと比較すると、勾配の漸進的増加及び対応する組成の拡幅化が特に注目すべきである。この組成の変化は、MWDにも組成分布にも影響を及ぼすセメント濃度、転化率、及び温度の変動が主原因である。
Ex.4~7及びC.Ex.2のサンプルについてGPC-4Dコモノマープロファイルの勾配及びTREF分布プロファイルから推定された組成分布をそれぞれ図5a及び5bに表示する。Ex.7の発明サンプルは、勾配50、75、及び90に最大の増加を示した。これは、ポリマー鎖に沿ったコモノマーの幅広分布を示している。TREFプロファイルは、Ex.4~7、及びC.Ex.2のサンプルについて勾配の漸進的増加及び対応する組成分布の拡幅化を補強する。
図6は、Ex.4~7及びC.Ex.2のサンプルについてのvan Gurp-Palmentプロットを示す。分岐含量の上記変化は、Ex.4~7のサンプルについてMIRが26から53まで増加しながら一定弾性率(G*)で位相角(δ)が減少することを示す図6によっても支持される。分岐レベルの上昇は位相角の減少をもたらす。
【0044】
Ex.1~7について収集したデータに基づいて、質量平均分子量を反応器内のC2濃度及びH2/C2モル比と相関させて下記方程式を特定した。
(Mw)2.2=-2.1E+011+1.5E+9*Tavg-2.7E+8*H2/C2+4.1E+10*C2conc+3.4E+011*C8conc-1.8E+9*Tavg*C8conc-1.9E+010*C2conc*C8conc
式中、Tavgは、反応器の入口と出口の℃での温度の平均であり、H2/C2は、反応器に導入された水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での1-オクテン濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入された溶液の総質量に基づいている。調整回帰モデルフィットR2は0.92だった。本明細書で使用する場合、R2は、モデルによって説明された平均値に関する変動量の尺度である。調整R2は、モデル精度の予測因子である。1という値は、モデルが完全にデータを予測することを意味し、一方で0又は負の値は、予測値を持たないモデルを意味する。相関性に基づいて、観測されたMwに対する予測されたMwの間の関係性を図7に示す。
【0045】
コモノマー分布曲線の勾配から推定される組成分布を下記プロセスパラメーター、すなわち平均反応器温度、H2/C2モル比、反応器内のC8濃度、及びセメント濃度と相関させて下記方程式を特定した。
Sqrt(勾配90)=+0.11-7.6E-003*H2/C2+0.5*C2conc-0.2*C8conc+0.20*セメントconc(調整R2=0.77);及び
Sqrt(勾配75)=+2.6-0.011*Tavg-5.7E-003*H2/C2+0.13*C2conc-0.06*C8conc+0.10*セメントconc(調整R2=0.86)
式中、Tavgは、反応器の入口と出口の℃での温度の平均であり、H2/C2は、反応器に導入された水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での1-オクテン濃度であり、セメントconcは、wt%でのセメント濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入された溶液の総質量に基づいている。図8a及び8bは、これらの相関性に基づいて、観測された勾配90及び75に対する予測された勾配90及び70との間の関係性を示す。
【0046】
g’(Mz)を用いて計測される分岐指数をも下記方程式に基づいて反応器内のC2濃度及びC8濃度と相関させた。
g'-Mz=+0.89+1.47E-004*H2/C2+0.02*C2conc-2.8E-003*C8conc-2.8E-005*PRPM(調整R2=0.85)
式中、H2/C2は、反応器に導入された水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での1-オクテン濃度であり、PRPMは、反応器内のポンプ速度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入された溶液の総質量に基づいている。図9は、この相関性に基づいて、予測されたg’(Mz)と観測されたg’(Mz)との間のエチレン濃度の関数としての関係性を示す。
C2及びC4(C8に代えて)のコポリマーの7つのサンプル(実施例8~14)をEx.1~7と同様に作製した。Ex.8~9及びEx.11~14のためのプロセス条件を下表4に示す。気相反応器及びチーグラー・ナッタ(Z-N)触媒を用いて生成されるExxonMobilから商業的に入手可能なC2/C4コポリマーのサンプル(比較例1及び2);(比較例7及び8)を比較目的のために得た。
【0047】
【表4】
【0048】
Ex.8~14及びC.Ex.7~8のサンプルのC4含量、分子モーメント、密度、及びLCB指数、MI、MIR、及びSDBI値を下表5に提示する。Ex.8~9及びEx.13~14の発明サンプルは、予想外にC.Ex.7~8のサンプルのMWDより高いか又はそれらに匹敵する3.5~4.9の範囲の相対的に幅広のMWDを示した。驚いたことに、Ex.8及びEx.10~14の発明サンプルは、2.1~5.7の範囲の平均勾配値によって示されるように、C.Ex.7~8のサンプルより幅広のコモノマー分布を有した。
【0049】
【表5】
【0050】
図10は、Ex.8~9及びC.Ex.8のサンプルの分子量分布曲線及びコモノマー分布曲線のグラフを示す。Ex.8の発明サンプルの曲線によって示されるように、反応器制御を利用して、負勾配によって表される、より幅広のMWD及び幅広のコモノマー分布を生成することができた。対照的に、Ex.9のサンプルは、ほんのわずかな勾配によって表される、より均一のコモノマー分布を示した。
図11は、Ex.1~14及びC.Ex.1~8のサンプルについての勾配50と勾配75の平均対Mz/Mw値のプロットを示す。絶対勾配の平均、すなわち、(勾配50+勾配75)/2は、1.5~6.0の範囲の全てのMz/Mw値に対して0.1~12.0の範囲にあった。驚いたことに、図11に示した大きな長方形によって表されるように、Ex.3、7、8、10、12、13及び14のサンプルは、図11のより小さい長方形内に入る、C.Ex.1~8及び他の全ての実施例のサンプルより良い絶対勾配平均及びMz/Mwを示した。これらのEx.3、7、8、10、12、13、及び14の好ましいサンプルは、約1.5~12.0の絶対勾配平均及び約1.8~約6.0のMz/Mw値を有した。
【0051】
試験手順
前述の全ての実施例において、密度は、ASTM D792に従って測定し、MI値及びMIR値(MI21.6/MI2.16)は、ASTM D1238(190℃/2.16kg)に従って測定した。
分子量の分布及びモーメント(Mw、Mn、Mz、Mw/Mn、Mz/Mn等)、コモノマー含量(C8)、及び長鎖分岐指数(g’)は、赤外線検出器IR5をベースとするマルチプルチャネルバンドフィルター、18角光散乱検出器及び粘度計を備えた高温ゲル浸透クロマトグラフィー(Polymer Char GPC-IR)を用いて決定した。3つのAgilent Plgel 10μm Mixed-B LSカラムを用いてポリマー分離をもたらした。分子量決定に関する詳細な解析原理及び方法は、参照することによりその内容をここに援用する国際公開第WO/2019/246069A1号の段落[0044]~[0051]に記載されている(クロマトグラムの各点の濃度Iについてその段落[0044]で参照しているcに関する方程式はc=βIであり、式中、βは質量定数であり、Iはベースライン減算IR5ブロードバンドシグナル強度(I)であることに留意)。具体的に述べていない限り、本開示で使用するか又は述べる全ての分子量モーメントは、通常の分子量(IR分子量)決定方法(例えば、今しがた述べた公報の段落[0044]~[0045]で参照されている)に従って決定され、該段落[0044]における方程式では、a=0.695及びK=0.000579(1-0.75Wt)が用いられ、Wtはヘキサンコモノマーの質量分率であることに留意し、さらにコモノマー組成は、それらの公称値がNMR又はFTIRによって予め決められている一連のPE及びPPホモポリマー/コポリマー標準物質で較正されたCH2及びCH3チャンネルに対応するIR5検出器強度の比によって決定される(今しがた述べた国際公報の段落[0045]に記載されているように、1000の総炭素当たりのメチル(CH3/1000TC)を与える)ことに留意する。
TREF手法は、参照することによりその内容をここに援用するWild, et al., J. Poly. Sci., Poly. Phys. Ed., Vol. 20, pg. 441 (1982)及び米国特許第5,008,204号に記載どおりに行った。
SDBIは、所与のポリマーについての溶解度分布曲線の幅を計測する。SDBIを計算するために本明細書で用いた手順は、参照することによりその内容をここに援用する国際公開第WO93/03093号(16~18ページ)に記載されている。
【0052】
実施形態のリスト
本開示は、下記非限定実施形態の任意の1つ以上をさらに含み得る。
1.オレフィンコポリマーの製造プロセスであって、オレフィンモノマー、少なくとも1種の他のオレフィンコモノマー、及び単一タイプの触媒システムを管型反応器に導入して、a)約2.0~約30.0の絶対コモノマー分布(CD)勾配90、約2.0~約30.0の絶対CD勾配75、約2.0~約30.0の絶対CD勾配50、又は約2.0~約30.0の絶対CD勾配25と、b)約0.30~約1.0の第1の長鎖分岐指数(g’(Mz))と、c)約0.30~約1.0の第2の長鎖分岐指数(g’(Mz+1))とを備えるオレフィンコポリマーを生成するステップを含む、プロセス。
2.MZ/MWが約1.8~6.0であるときにCD勾配50とCD勾配75の絶対平均、CD勾配25とCD勾配50の絶対平均、又はCD勾配75とCD勾配90の絶対平均が約1.5~約12.0である、実施形態1に記載のプロセス。
3.管型反応器が再循環ポンプを含む、実施形態1又は2に記載のプロセス。
4.管型反応器がスパイラル式熱交換器を含む、実施形態1~2のいずれかに記載のプロセス。
【0053】
5.触媒システムが、2つの補助的モノアニオン性配位子を備える4族有機金属化合物を含むメタロセン触媒を含み、各配位子は独立に置換されているか又は置換されておらず、これらの配位子が、置換された単一の14族原子を含む共有結合的架橋によって結合されており、前記14族原子上の置換がアリール基を含み、その少なくとも1つが少なくとも1つのヒドロカルビルシリル置換基を含む、実施形態1~4のいずれかに記載のプロセス。
6.ヒドロカルビルシリル置換基が、式Rn"SiR'3-nを有し、式中、各R'は、独立にC1-C20ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、ヒドロフルオロカルビル置換基であり、R"は、Siとアリール基との間のC1-C10連結基であり、n=0又は1である、実施形態5に記載のプロセス。
7.オレフィンモノマーと少なくとも1種の他のオレフィンコモノマーが、連続溶液重合プロセスを用いて共重合される、実施形態1~6のいずれかに記載のプロセス。
【0054】
8.水素を反応器に導入するステップをさらに含み、オレフィンモノマーがエチレンであり、少なくとも1種の他のオレフィンコモノマーが少なくとも1種のC4-C20オレフィンを含む、実施形態1~7のいずれかに記載のプロセス。
9.オレフィンコポリマーの質量平均分子量(Mw)を下記方程式:(Mw)2.2=-2.1E+011+1.5E+9*Tavg-2.7E+8*H2/C2+4.1E+10*C2conc+3.4E+011*C8conc-1.8E+9*Tavg*C8conc-1.9E+010*C2conc*C8conc(式中、Tavgは、平均反応器温度であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)に従って計算するステップと、計算されたMwに基づいてMwを制御するステップとをさらに含む、実施形態8に記載のプロセス。
10.CD勾配90を下記方程式:Sqrt(勾配90)=+0.11-7.6E-003*H2/C2+0.5*C2conc-0.2*C8conc+0.20*セメントconc(式中、Tavgは、平均反応器温度であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、セメントconcは、wt%でのセメント濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)を用いて計算するステップと、計算されたCD勾配90に基づいてコモノマー分布を制御するステップとをさらに含む、実施形態8に記載のプロセス。
11.CD勾配75を下記方程式:Sqrt(勾配75)=+2.6-0.011*Tavg-5.7E-003*H2/C2+0.13*C2conc-0.06*C8conc+0.10*セメントConc(式中、Tavgは、平均反応器温度であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、セメントconcは、wt%でのセメント濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)を用いて計算するステップと、計算されたCD勾配75に基づいてコモノマー分布を制御するステップとをさらに含む、実施形態8に記載のプロセス。
12.第1の長鎖分岐指数を下記方程式:g'-Mz=+0.89+1.47E-004*H2/C2+0.02*C2conc-2.8E-003*C8conc-2.8E-005*PRPM(式中、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、PRPMは、反応器内のポンプ速度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)を用いて計算するステップと、計算された第1の長鎖分岐指数に基づいて第1の長鎖分岐指数を制御するステップとをさらに含む、実施形態8に記載のプロセス。
【0055】
13.オレフィンコモノマーが、約2wt%~約40wt%のセメント濃度及び約3~約50の再循環率で生成される、実施形態3に記載のプロセス。
14.オレフィンコポリマーが、約2.0~約7.0のMWDを有する、実施形態1~13のいずれかに記載のプロセス。
15.オレフィンコポリマーが、ASTM D1238(190℃/2.16kg)に従って測定して、約0.1dg/分~約500.0dg/分のメルトインデックスを有する、実施形態1~14のいずれかに記載のプロセス。
16.オレフィンコポリマーが、ASTM D1238に従って測定して、約20.0~約100.0のメルトインデックス比(MI21.6/MI2.16)を有する、実施形態1~15のいずれかに記載のプロセス。
17.オレフィンコポリマーが、ASTM D792に従って測定して、約0.850g/cc~約0.920g/ccの密度を有する、実施形態1~16のいずれかに記載のプロセス。
18. 第1の長鎖分岐指数が約0.70~約0.97であり、かつ第2の長鎖分岐指数が約0.70~約0.97である、実施形態1~17のいずれかに記載のプロセス。
【0056】
一連の上限数値及び一連の下限数値を用いて特定の実施形態及び特徴を記載した。別段の指示がない限り、任意の2つの値の組み合わせ、例えば、任意の下限値と任意の上限値の組み合わせ、任意の2つの下限値の組み合わせ、及び/又は任意の2つの上限値の組み合わせを含む範囲が企図されることを理解すべきである。特定の下限、上限及び範囲が下記1つ以上の請求項に現れる。全ての数値は、「約(about又はapproximately)」指示値であり、当業者が予測するであろう実験誤差及び変動を考慮する。
種々の用語を上で定義した。請求項に用いられる用語が上で定義されていない限りでは、少なくとも1つの刊行物又は発行された特許に反映されたように当業者がその用語に与えた最も広い定義を与えるべきである。さらに、本出願で引用した全ての特許、試験手順、及び他の文書は、参照することにより該開示が本出願と矛盾しない程度まで完全に援用され、かつ該援用が許容される全ての権限のために援用される。
前述の説明は、本発明の実施形態に関するもであるが、本発明の基本範囲を逸脱することなく本発明の他の実施形態及びさらなる実施形態を考案することが可能であり、本発明の範囲は、下記特許請求の範囲によって決められる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンコポリマーの製造プロセスであって、オレフィンモノマー、少なくとも1種の他のオレフィンコモノマー、及び単一タイプの触媒システムを管型反応器に導入して、a)約2.0~約30.0の絶対コモノマー分布(CD)勾配90、約2.0~約30.0の絶対CD勾配75、約2.0~約30.0の絶対CD勾配50、又は約2.0~約30.0の絶対CD勾配25と、b)約0.30~約1.0の第1の長鎖分岐指数(g’(Mz))と、c)約0.30~約1.0の第2の長鎖分岐指数(g’(Mz+1))とを備えるオレフィンコポリマーを生成するステップを含む、前記プロセス。
【請求項2】
MZ/MWが約1.8~6.0であるときにCD勾配50とCD勾配75の絶対平均、CD勾配25とCD勾配50の絶対平均、又はCD勾配75とCD勾配90の絶対平均が約1.5~約12.0である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記触媒システムが、2つの補助的モノアニオン性配位子を備える4族有機金属化合物を含むメタロセン触媒を含み、前記各配位子は独立に置換されているか又は置換されておらず、前記配位子が、置換された単一の14族原子を含む共有結合的架橋によって結合されており、前記14族原子上の置換がアリール基を含み、その少なくとも1つが少なくとも1つのヒドロカルビルシリル置換基を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ヒドロカルビルシリル置換基が、式Rn"SiR'3-nを有し、式中、各R'は、独立にC1-C20ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、ヒドロフルオロカルビル置換基であり、R"は、Siとアリール基との間のC1-C10連結基であり、n=0又は1である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記オレフィンモノマーと前記少なくとも1種の他のオレフィンコモノマーが、連続溶液重合プロセスを用いて共重合される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
水素を前記反応器に導入するステップをさらに含み、前記オレフィンモノマーがエチレンであり、前記少なくとも1種の他のオレフィンコモノマーが少なくとも1種のC4-C20オレフィンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記オレフィンコポリマーの質量平均分子量(Mw)を下記方程式:(Mw)2.2=-2.1E+011+1.5E+9*Tavg-2.7E+8*H2/C2+4.1E+10*C2conc+3.4E+011*C8conc-1.8E+9*Tavg*C8conc-1.9E+010*C2conc*C8conc(式中、Tavgは、平均反応器温度であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)に従って計算するステップと、計算されたMwに基づいて前記Mwを制御するステップとをさらに含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記CD勾配90を下記方程式:Sqrt(勾配90)=+0.11-7.6E-003*H2/C2+0.5*C2conc-0.2*C8conc+0.20*セメントconc(式中、Tavgは、平均反応器温度であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、セメントconcは、wt%でのセメント濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)を用いて計算するステップと、計算されたCD勾配90に基づいて前記コモノマー分布を制御するステップとをさらに含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記CD勾配75を下記方程式:Sqrt(勾配75)=+2.6-0.011*Tavg-5.7E-003*H2/C2+0.13*C2conc-0.06*C8conc+0.10*セメントConc(式中、Tavgは、平均反応器温度であり、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、セメントconcは、wt%でのセメント濃度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)を用いて計算するステップと、計算されたCD勾配75に基づいて前記コモノマー分布を制御するステップとをさらに含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1の長鎖分岐指数を下記方程式:g'-Mz=+0.89+1.47E-004*H2/C2+0.02*C2conc-2.8E-003*C8conc-2.8E-005*PRPM(式中、H2/C2は、反応器に導入される水素とエチレンのモル比であり、C2concは、wt%でのエチレン濃度であり、C8concは、wt%での少なくとも1種の他のコモノマー濃度であり、PRPMは、反応器内のポンプ速度であり、全ての質量百分率は、反応器に導入される溶液の総質量に基づいている)を用いて計算するステップと、計算された第1の長鎖分岐指数に基づいて前記第1の長鎖分岐指数を制御するステップとをさらに含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項11】
前記オレフィンコポリマーが、ASTM D1238(190℃/2.16kg)に従って測定して、約0.1dg/分~約500.0dg/分のメルトインデックスを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記オレフィンコポリマーが、ASTM D1238に従って測定して、約20.0~約100.0のメルトインデックス比(MI21.6/MI2.16)を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記オレフィンコポリマーが、ASTM D792に従って測定して、約0.850g/cc~約0.920g/ccの密度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第1の長鎖分岐指数が約0.70~約0.97であり、かつ前記第2の長鎖分岐指数が約0.70~約0.97である、請求項1に記載のプロセス。
【国際調査報告】