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特表2024-546293ポリエステル離型フィルムおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ポリエステル離型フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20241212BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20241212BHJP
   C09D 191/06 20060101ALI20241212BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20241212BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20241212BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241212BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241212BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20241212BHJP
【FI】
B32B27/36
C09D167/00
C09D191/06
C09D5/24
C09D133/00
B32B27/00 L
B32B27/18 D
C08J7/04 B CFD
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537128
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2022021136
(87)【国際公開番号】W WO2023128476
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191912
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ウン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨン チャン
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB13
4F006AB24
4F006AB35
4F006AB37
4F006AB39
4F006AB63
4F006AB66
4F006BA07
4F006BA12
4F006CA05
4F100AJ11A
4F100AJ11H
4F100AK03A
4F100AK42B
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA17A
4F100CA17H
4F100CA22C
4F100CA22H
4F100GB48
4F100JG03
4F100JK06
4F100JL14
4J038CB112
4J038CG141
4J038DD001
4J038JB06
4J038JB27
4J038JC18
4J038KA12
4J038NA10
4J038NA20
4J038PB09
4J038PC08
(57)【要約】
本発明はポリエステル離型フィルムおよびその製造方法に関し、剥離性およびコーティング加工性に優れているだけでなく、帯電防止性に優れており摩擦帯電圧が50V未満で顕著に低い特性があり、フィルムの走行および巻取りの際に発生する静電気発生を防止し、静電気によって流入される空気または異物の量を顕著に減少させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル基材フィルム、前記基材フィルムの一面に形成された離型層、および、前記基材フィルムの他面に形成された帯電防止層を含み、
前記離型層は、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を含み、
前記帯電防止層は、伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を含むものである、ポリエステル離型フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル離型フィルムは、50V未満の摩擦帯電圧を有する、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂および前記アクリル系樹脂の固形分の重量比が1:0.1~1:1.5である、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層は、ポリエステル樹脂100重量部に対してポリオレフィンワックス20~50重量部を含む、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項5】
前記ポリオレフィンワックスは、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスからなる群より選択される1種以上のワックスである、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項6】
前記伝導性高分子は、ポリチオフェン系、ポリピロール系、およびポリアニリン系から選択される一つ以上を含むものである、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項7】
前記水分散性帯電防止組成物は水系ポリウレタン樹脂をさらに含む、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項8】
前記水分散性帯電防止組成物の固形分は、1~30wt%の伝導性高分子および70~99wt%の水系ポリウレタン樹脂を含むものである、請求項7に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項9】
前記帯電防止層の表面抵抗が1010Ω/□以下である、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項10】
3.90%以下のヘイズおよび下記式1を充足する加工コーティング性を有する、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム:
[式1]
=0
上記式1中、Nは、前記ポリエステル離型フィルムの前記離型層上に、UV樹脂を厚さ10μmで塗布して硬化させた時、単位面積(m)当り生成されるピンホールの個数である。
【請求項11】
前記離型層は前記水系コーティング組成物がインラインコーティングされて形成されたものであり、
前記帯電防止層は、前記水分散性帯電防止組成物がインラインコーティングされて形成されたものである、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項12】
前記基材フィルムは二軸延伸されたものであり、前記離型層および帯電防止層は横方向(TD)に一軸延伸されたものである、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項13】
前記基材フィルムの厚さが10~300μmであり、前記離型層および帯電防止層の厚さが10~200nmである、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項14】
前記ポリエステル離型フィルムは偏光板保護用である、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項15】
ポリエステル基材フィルムを準備する第1段階;
ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を前記基材フィルムの一面に塗布して離型層を形成する第2段階;
伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を、前記基材フィルムの他面に塗布して帯電防止層を形成する第3段階;および
前記基材フィルムと前記基材フィルムの上に形成された離型層および帯電防止層を含む積層体を、延伸しながら熱処理する第4段階;を含む、ポリエステル離型フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記第4段階は、通過区間に供給される空気の総熱量が222,000kcal/min~229,000kcal/minである熱処理装置に、前記積層体を通過させて延伸および熱処理することである、請求項15に記載のポリエステル離型フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記第4段階は、前記積層体を44,000kcal/min~46,000kcal/minの熱量が供給される区間を通過させて予熱する工程;
予熱された前記積層体を62,000kcal/min~64,000kcal/minの熱量が供給される区間を通過させながら横方向(TD)に延伸する工程;および、
延伸された前記積層体を114,000kcal/min~120,000kcal/minの熱量が供給される区間を通過させながら前記熱処理する工程;を含んで行われる、請求項15に記載のポリエステル離型フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル離型フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの大型化および薄形化の傾向により、画像表示装置において偏光板に対する薄形化の要求が大きくなっている。
【0003】
偏光板の薄形化のための一つの方案は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)などの典型的な偏光子保護素材を薄膜化することである。偏光板を薄形化するためのまた一つの方案は、前記偏光子保護素材について、バリア性を有するコーティング層(以下、“バリアコーティング層”)で代替することである。
【0004】
前記バリアコーティング層は、前記バリアコーティング層形成用組成物を任意の基材上に均一に塗布し、これを硬化した後、剥離する工程を経て形成される。
【0005】
良質のバリアコーティング層を得るためには、前記バリアコーティング層が基材上に均一に塗布されていなければならず、硬化された前記バリアコーティング層が前記基材から、良好に剥離されなければならない。
【0006】
前記基材としてシリコーン系離型フィルムを使用するようになると、前記シリコーン系離型フィルムは、低い表面エネルギーを有するため、前記バリアコーティング層が均一な厚さで形成されにくく、シリコーンによる静電気の問題が発生しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一の目的は、剥離性、コーティング加工性、および帯電防止性に優れており、摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)が低いポリエステル離型フィルムを提供することである。
【0008】
本発明の他の一の目的は、フィルムの走行および巻取りの際に発生する静電気発生を防止し、静電気によって流入される空気または異物の量を顕著に減少させることができるポリエステル離型フィルムを提供することである。
【0009】
本発明のまた他の一の目的は、前記ポリエステル離型フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、ポリエステル基材フィルム、前記基材フィルムの一面に形成された離型層、および、前記基材フィルムの他面に形成された帯電防止層を含み、前記離型層は、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を含み、前記帯電防止層は、伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を含むものである、ポリエステル離型フィルムが提供される。
【0011】
本発明の他の一実施形態によれば、ポリエステル基材フィルムを準備する第1段階;ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を前記基材フィルムの一面に塗布して離型層を形成する第2段階;伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を前記基材フィルムの他面に塗布して帯電防止層を形成する第3段階;および、前記基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された離型層および帯電防止層とを含む積層体を、延伸しながら熱処理する第4段階;を含む、ポリエステル離型フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によるポリエステル離型フィルムは、剥離性およびコーティング加工性に優れているだけでなく、帯電防止性に優れており、摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)が50V未満であって顕著に低いという特性がある。
【0013】
また、本発明の一実施形態によるポリエステル離型フィルムは、フィルムの走行および巻取りの際に発生する静電気発生を防止し、静電気によって流入される空気または異物の量を顕著に減少させることができる。
【0014】
本発明の一実施形態によるポリエステル離型フィルムは、これを用いてコーティング層を形成させる際に発生する未反応物による収率の低下、静電気による異物の吸着などの問題を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
一方、本発明の実施形態は、様々の異なる形態に変形でき、本発明の範囲が、以下に説明する実施形態に限定されるのではない。
【0017】
また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に、本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。
【0018】
また、明細書および添付された特許請求の範囲で使用される単数の形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数の形態も含むことと意図することができる。
【0019】
さらに、明細書全体で、ある構成要素を「含む」ということは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0020】
発明の一実施形態によるポリエステル離型フィルムは、ポリエステル基材フィルム、前記基材フィルムの一面に形成された離型層、および、前記基材フィルムの他面に形成された帯電防止層を含む。
【0021】
一実施形態で、前記離型層は、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を含むことができる。
【0022】
また、一実施形態で、前記帯電防止層は、伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を含むことができる。
【0023】
また、一実施形態で、前記ポリエステル離型フィルムは50V未満の摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)を有することができる。
【0024】
本発明者は、薄膜偏光板などの光学フィルムの製造時に基材として使用される離型フィルムについて、継続的な研究を行った。
【0025】
その結果、基材フィルム上に、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を、インラインコーティング方式で塗布して離型層を形成させ、離型層が形成されていない前記基材フィルムの他面上に、伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を塗布して帯電防止層を形成させた場合、コーティング加工性と剥離性に優れているだけでなく、帯電防止性に優れており、摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)が低いポリエステル離型フィルムが提供できるということを知るようになって、本発明を完成することになった。
【0026】
前記ポリエステル離型フィルムは、これを使用した後-加工(例えば、前記離型フィルム上にバリアコーティング層を形成させる工程など)で優れたコーティング加工性および剥離性を示すことができるだけでなく、50V未満の低い摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)を有して静電気による汚染の発生を防止することができる。
【0027】
前記ポリエステル離型フィルムは、ポリエステル基材フィルムと、前記基材フィルムの一面に形成された離型層と、前記基材フィルムの離型層が形成されていない面(以下、他面)に形成された帯電防止層とを含む。
【0028】
前記ポリエステル基材フィルムはポリエステル樹脂からなるものであり、本発明の属する技術分野における通常的なものが特別な制限なく使用できる。例えば、前記ポリエステル基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどからなるものであってもよい。
【0029】
非制限的な例として、前記基材フィルムは、固有粘度が0.6~0.8dl/gである範囲のポリエチレンテレフタレートからなるものが、耐喉性および耐加水分解性の確保の側面から有利であり得る。
【0030】
前記離型層は、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を含むことができる。
【0031】
前記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸を主成分とする酸成分とアルキレングリコールを主成分とするグリコール成分を縮重合して得られる樹脂である。前記酸成分としては、テレフタル酸またはそのアルキルエステルやフェニルエステルなどを主に使用することができるのであって、その一部をイソフタル酸、オキシエトキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸などで代替して使用することができる。前記グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどを主に使用することができるのであって、その一部をプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ビスオキシエトキシベンゼン、ビスフェノール、ポリオキシエチレングリコールなどで代替して使用することができる。
【0032】
非制限的な例として、前記ポリエステル樹脂は、ジエチレングリコールとエチレングリコールを5:5のモル比で含む50モル%のグリコール成分、および、テレフタル酸とスルホテレフタル酸を8.5:1.5のモル比で含む50モル%の酸成分を縮重合して得ることができる。
【0033】
前記ポリエステル樹脂は、2,000~25,000g/molの重量平均分子量を有するものが、前記離型層が適切な耐溶剤性を有するようにするのに有利であり得る。好ましくは、前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、2,000~25,000g/mol、または2,000~20,000g/mol、または3,000~20,000g/mol、または3,000~15,000g/molであってもよい。
【0034】
本明細書で、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折率検出器(refractive index detector)などの検出器および分析用カラムを使用することができ、通常適用される温度条件、溶媒、流量(flow rate)を適用することができる。
【0035】
前記アクリル系樹脂は、共重合モノマーとして、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーを全体モノマー成分中の20~80モル%で含有するものであってもよい。前記グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーは、架橋反応によって前記離型層の強度を向上させ、オリゴマーの流出を防止することができるようにすることができることから選好される(preferred;好ましい)。前記グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリールグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
前記グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとの共重合が可能なラジカル重合性不飽和モノマーとしては、ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和ニトリル、不飽和カルボン酸、アリル化合物、含窒素系ビニルモノマー、炭化水素ビニルモノマーまたはビニルシラン化合物などが挙げられる。前記ビニルエステルとしては、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニルなどを使用することができる。前記不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどを使用することができる。前記不飽和カルボン酸アミドとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ブトキシメチロールアクリルアミドなどを使用することができる。前記不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリルなどを使用することができる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸酸性エステル、フマル酸酸性エステル、イタコン酸酸性エステルなどを使用することができる。前記アリル化合物としては、酢酸アリル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、イタコン酸アリル、イタコン酸ジアリルなどを使用することができる。前記含窒素系ビニルモノマーとしては、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールなどを使用することができる。前記炭化水素ビニルモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ヘキセン、オクテン、スチレン、ビニルトルエン、ブタジエンなどを使用することができる。前記ビニルシラン化合物としては、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルジメトキシシランなどを使用することができる。
【0037】
非制限的な例として、前記アクリル系樹脂は、アクリル酸グリシジル40~60モル%とプロピオン酸40~60モル%が共重合されたものであってもよい。
【0038】
前記アクリル系樹脂は、20,000~70,000g/molの重量平均分子量を有することが好ましい。より好ましくは、前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、20,000~60,000g/mol、または30,000~60,000g/mol、または40,000~60,000g/mol、または45,000~55,000g/molであってもよい。
【0039】
一実施形態で、前記ポリエステル樹脂および前記アクリル系樹脂の固形分の重量比は1:0.1~1:1.5であってもよく、さらに具体的には1:0.2~1:1であってもよい。前記範囲を満足する水系コーティング組成物から離型層を製造する際、ポリエステル離型フィルムは、剥離性に優れるだけでなく加工コーティング性がさらに向上する効果を有することができる。
【0040】
前記離型層は、ポリオレフィンワックスを含むことができ、前記ポリエステル樹脂およびアクリル系樹脂上に分散した形態であってもよい。
【0041】
前記ポリオレフィンワックスの具体的な種類は特に制限されないが、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスからなる群より選択された1種以上を、好ましく使用することができる。
【0042】
前記ポリオレフィンワックスは、前記ポリエステル樹脂100重量部に対して20~50重量部または30~40重量部で含まれてもよい。前記離型層が、適切な剥離力を示すことができるようにするために、前記ポリオレフィンワックスは、前記ポリエステル樹脂100重量部に対して20重量部以上で含まれることが好ましい。但し、前記離型層に、前記ポリオレフィンワックスが過剰量で添加される場合、背面転写問題と加工コーティング性の低下が誘発されうる。したがって、前記ポリオレフィンワックスは、前記ポリエステル樹脂100重量部に対して50重量部以下で含まれることが好ましい。
【0043】
例えば、前記ポリオレフィンワックスは、前記ポリエステル樹脂100重量部に対して20重量部以上、または25重量部以上、または30重量部以上;そして50重量部以下、または45重量部以下、または40重量部以下で含まれてもよい。具体的に、前記ポリオレフィンワックスは、前記ポリエステル樹脂100重量部に対して、20~50重量部、または25~50重量部、または25~45重量部、または30~45重量部、または30~40重量部で含まれてもよい。
【0044】
前記水系コーティング組成物に含まれている前記ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂およびポリオレフィンワックスの総含量は、固形分基準で1~10wt%、2~9wt%、4~8wt%、または5~6wt%であることが好ましい。
【0045】
前記水系コーティング組成物に含まれている前記バインダーおよび前記ポリオレフィンワックスの、固形分基準の総含量が、前記範囲を満足させて製造されるポリエステル離型フィルムは、転写特性と剥離性に優れるだけでなく摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)が50V未満で顕著に低下しうる。また、前記範囲を満足させて製造される離型フィルムは、微細ピンホールの発生を防止することができることから加工コーティング性が向上できる。
【0046】
本発明の一実施形態で、前記離型層に塗布される水系コーティング組成物は必要によって、シリコーン系ウェッティング剤、フッ素系ウェッティング剤、硬化剤、酸触媒、スリップ剤、消泡剤、湿潤剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、および架橋剤といった添加剤がさらに付加されてもよい。前記添加剤は、前記離型層の物性を阻害しない限度内で、選択的に使用することができる。
【0047】
前記帯電防止層は、伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を含むことができる。
【0048】
本発明の一実施形態によるポリエステル離型フィルムは、非シリコーン系素材からなる前記離型層と前記帯電防止層を含むことによって、コーティング加工性および剥離性に優れるだけでなく、帯電防止性に優れており摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)が50V未満で顕著に低い特性を有することができる。
【0049】
前記伝導性高分子は、電気伝導性および極性を有するナノサイズの構造体であってもよい。前記伝導性高分子は、例えば、ポリチオフェン系、ポリピロール系、およびポリアニリン系などの伝導性高分子から選択される一つ以上を含むものであってもよい。
【0050】
また、一実施形態として前記伝導性高分子の範疇には、伝導性高分子を含む樹脂組成物も含むことができる。前記樹脂は、例えば、水系樹脂であってもよく、イオン性重合体を含むものであってもよい。
【0051】
前記イオン性重合体の場合、陽イオンまたは陰イオン基を含む基を有する重合体であって、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリスチレンアンモニウム塩などのイオン性重合体であってもよく、これに限定されるのではない。前記イオン性重合体を使用する場合、本発明の目的を達成する限りではその含量を限定しないが、例えば、前記伝導性高分子に対して0.01~2重量比で使用することができる。
【0052】
一実施形態として、前記伝導性高分子としては、好ましくは、ポリチオフェン系伝導性高分子であってもよく、またポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)であってもよい。前記伝導性高分子としてPEDOT:PSSを使用する場合、水分散性に優れていてインライン塗布工程に使用するのに適しており、インライン塗布工程以後、延伸工程を経ても透明性が低下せず、1010Ω/□以下の表面抵抗を発現することができることから、さらに選好される。
【0053】
前記水分散性帯電防止組成物は、水系ポリウレタン樹脂をさらに含むことができる。前記水系ポリウレタン樹脂を伝導性高分子と混合して使用することによって、混和性に優れており、表面抵抗性能を向上させ、ポリエステルベースフィルムとの密着力に優れており、高温高湿条件で物性変化が少なく、黄変現象が少ない帯電防止層を形成することができる。前記水系ポリウレタン樹脂は、ポリカーボネート系ポリオールとジイソシアネートを反応させたポリウレタンバインダーを使用することによって、耐熱性に優れており、表面抵抗変化率が少ない物性を達成することができる。さらに好ましくは、前記ジイソシアネートの具体的な例としてヘキサメチレンジイソシアネートを使用することが耐熱性を向上させて黄変現象が少ない塗膜を形成するための観点から好ましいが、これに制限されるわけではない。
【0054】
一実施形態で、前記水分散性帯電防止組成物の固形分含量100wt%中に、伝導性高分子が1~30wt%、水系ポリウレタン樹脂が70~99wt%で含まれるのであってもよい。さらに具体的に、伝導性高分子が5~25wt%、ポリウレタンバインダーが75~95wt%で含まれるのであってもよい。さらに具体的に、伝導性高分子が5~20wt%、ポリウレタンバインダーが80~95wt%で含まれるのであってもよい。
【0055】
より具体的に、前記帯電防止層は、伝導性高分子溶液と水系ポリウレタン樹脂溶液、有機溶媒、および水を含む水分散性帯電防止組成物を塗布して形成したものであってもよい。
【0056】
さらに具体的に、例えば、前記水分散性帯電防止組成物は、固形分含量が1~3wt%である伝導性高分子溶液40~90wt%、固形分含量が30~40wt%である水系ポリウレタン樹脂溶液5~50wt%、有機溶媒3~50wt%、および、残量の水を含むものであってもよい。
【0057】
前記伝導性高分子は、最適の分散性を発現するために溶媒に混合された状態の伝導性高分子溶液として使用するものであってもよく、具体的に、例えば、PEDOT:PSSを使用する場合、水、アルコール、および誘電定数が大きい溶媒などに混合して使用するものであってもよい。
【0058】
前記帯電防止組成物中の伝導性高分子溶液の含量は、40~90wt%、さらに好ましくは50~70wt%であってもよいのであり、発明の目的を達成するのに十分な含量であるが、これに制限されるわけではない。
【0059】
また、前記水系ポリウレタン樹脂は溶媒に分散したものであってもよく、溶媒は制限されるわけではないが、アミド系有機溶媒、および非プロトン性高極性(Aprotic Highly Dipolar、AHD)有機溶媒からなる群より選択されたいずれか一つまたは二つ以上の混合溶媒を使用することができる。
【0060】
前記水分散性帯電防止組成物中の水系ポリウレタン樹脂の含量は5~50wt%、さらに好ましくは10~30wt%であってもよいが、これに制限されないことはもちろんである。
【0061】
前記有機溶媒は特に制限されるわけではないが、アルコール系有機溶媒および非プロトン性高極性有機溶媒からなる群より選択された、いずれか一つまたは二つ以上の混合溶媒を使用することができ、これに制限されるわけではない。
【0062】
前記有機溶媒の含量は、前記水分散性帯電防止組成物中の50wt%以下、40wt%以下、30wt%以下、20wt%以下、または10wt%以下であってもよく、下限は1wt%または2wt%以上であってもよく、前記範囲で、伝導性高分子および水系ポリウレタン樹脂の分散性を向上させるのに適した含量であるのであるが、これに制限されるわけではない。
【0063】
前記アルコール系有機溶媒は制限されるわけではないが、具体的に、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、および2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどを使用することができ、単独または二つ以上を混合して使用することができる。
【0064】
前記非プロトン性高極性有機溶媒は制限されるわけではないが、具体的に例えば、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネートなどを使用することができ、単独または二つ以上を混合して使用することができる。非プロトン性高極性有機溶媒を使用することによって伝導性高分子の伝導度をさらに向上させることができる。
【0065】
前記水分散性帯電防止組成物が各物質を前記含量範囲で含むことによって、本発明の一実施形態によるポリエステル離型フィルムは、摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)が50V未満と顕著に低くて帯電防止性に優れており、フィルムの走行および巻取りの際に発生される静電気発生を防止し、静電気によって流入される空気または異物の量を顕著に減少させることができる。
【0066】
また、前記水分散性帯電防止組成物が前記含量範囲を満足することによって、本発明の一実施形態によるポリエステル離型フィルムは、これを用いてコーティング層を形成させる時に発生する未反応物による収率低下、静電気による異物吸着などの問題を解決することができる。
【0067】
本発明の一実施形態で、前記帯電防止層の表面抵抗が1010Ω/□以下であってもよく、より具体的には10Ω/□以下であってもよい。
【0068】
本発明の一実施形態で、前記水分散性帯電防止組成物は、必要に応じて、シリコーン系ウェッティング剤、フッ素系ウェッティング剤、スリップ剤、消泡剤、湿潤剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、および架橋剤などをさらに含むものであってもよい。
【0069】
前記基材フィルム、離型層、および帯電防止層の厚さは、特に制限されず、前記ポリエステル離型フィルムの具体的な適用分野に応じて調節できる。
【0070】
例えば、前記基材フィルムは10~300μmの厚さを有することができ、前記離型層および帯電防止層は10~200nmの厚さを有することができるが、必ずしもこれに限定するのではない。
【0071】
前記離型層および帯電防止層の厚さは互いに同一または異なってもよい。具体的には、前記基材フィルムの厚さは、10~200μm、10~100μm、または10~50μmであってもよく、前記離型層の厚さは、10~100nm、さらに具体的には50~100nmであってもよく、前記帯電防止層の厚さは10~100nm、さらに具体的には20~80nmであってもよい。
【0072】
前記ポリエステル離型フィルムで、前記基材フィルムは、特に限定するのではないが、機械方向(MD)または横方向(TD)に一軸延伸されるか、または機械方向(MD)および横方向(TD)に二軸延伸されたものであってもよく、前記離型層および帯電防止層は、一軸または二軸延伸されたものであってもよいが、横方向(TD)に一軸延伸される場合、本発明の特性をさらによく付与することができるので、選好される。
【0073】
前記ポリエステル離型フィルムは、前述の特性を充足することによって優れた剥離性を有するだけでなく低い摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)を有して帯電防止性に優れるものであり得る。
【0074】
例えば、前記ポリエステル離型フィルムは、350~700gf/inch、または400~650gf/inch、または400~600gf/inchの剥離力を有することができる。前記範囲の剥離力を有するポリエステル離型フィルムは、後-加工(例えば、前記離型フィルム上にバリアコーティング層を形成させる工程など)にて、優れたコーティング加工性および剥離性を有することができる。
【0075】
本明細書で、前記剥離力はASTM D 3330の標準試験法によって測定されたものである。具体的に、前記剥離力は、前記ポリエステル離型フィルムの離型層上にアクリレート系粘着テープ(日東電工製NITTO#31Bテープ幅:25mm)を5mm×180mmのサイズに切断して積層し、70g/cmの荷重を加えて常温に30分間放置した後、剥離試験器(peel tester)を用いて300mm/minの剥離速度で前記テープを180度剥離して測定することができる。
【0076】
また、前記ポリエステル離型フィルムは50V未満、または40V未満、または30V未満、または20V未満、または10V未満の顕著に低い摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)を有することができ、摩擦帯電圧の下限は特に制限されないが、例えば1V以上、3Vまたは5V以上であってもよい。
【0077】
本明細書で、前記摩擦帯電圧(Frictional Electrostatic Voltage)はKS K 0555の標準試験法によって測定されたものである。具体的に、前記摩擦帯電圧の測定は、通常のロータリースタティックテスター(rotary static tester)を用いて、前記ポリエステル離型フィルムに対する摩擦静電気を測定する方法で行うことができる。この時、A面(前記ポリエステル離型フィルムで前記離型層面)およびB面(前記ポリエステル離型フィルムで前記帯電防止層面)を回転速度300rpmで180秒間摩擦させて発生する静電気量を測定する。
【0078】
さらに、前記ポリエステル離型フィルムは、低いヘイズ値を有しながらも優れた加工コーティング性を示すことができる。
【0079】
例えば、前記ポリエステル離型フィルムは3.90%以下のヘイズを有することができる。好ましくは、前記ポリエステル離型フィルムは、3.50~3.90%、3.60~3.90%、または3.70~3.86%のヘイズを有することができる。
【0080】
また、前記ポリエステル離型フィルムは、下記式1を充足する優れた加工コーティング性を有することができる。
【0081】
[式1]
=0
【0082】
上記式1中、Nは前記ポリエステル離型フィルムの前記離型層上にUV樹脂を厚さ10μmで塗布して硬化させた時、単位面積(m)当り生成されるピンホールの個数である。
【0083】
即ち、前記ポリエステル離型フィルムを基材として使用する任意の製造工程で、前記離型層上に任意の樹脂層を形成させる時、前記離型層上にはピンホールが実質的に形成されず、優れた加工コーティング性を示すことができる。
【0084】
また、前記ポリエステル離型フィルムは90%~95%の全光線透過率、85°~90°の水接触角、50°~60°のジヨードメタン(diiodomethane)接触角、および、30~35mN/mの表面エネルギーを示すことができる。
【0085】
また、本発明の一実施形態によるポリエステル離型フィルムは、薄膜偏光板用ポリエステル離型フィルムであってもよいが、これに制限されず、帯電防止、コーティング加工性、および剥離性が要求される多様な分野への適用が可能であるのはもちろんのことである。例えば、薄膜偏光板用途以外にMLCC(Multi Layer Ceramic Capacitor)Carrier用Cover tape、FPCB(Flexible Printed Circuits Board)工程保護用、OCA(Optically Clear Adhesive)用、およびOCA保護用、ディスプレイ用光学部材(各種ディスプレイ表面保護用などに適用可能である。
【0086】
前記ポリエステル離型フィルムで、特に、前記離型層および帯電防止層は、前記ポリエステル基材フィルム上にインラインコーティングによって形成されたものであってもよい。前記離型層は、前記ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を、前記ポリエステル基材フィルムの一面にインラインコーティング方法によって塗布して形成することができる。
【0087】
前記帯電防止層は、前記伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を、前記基材フィルムの他面にインラインコーティング方法によって塗布して形成することができる。
【0088】
前記離型層および帯電防止層は、インラインコーティング方法によって形成されることによって、塗布厚さが薄いながらも前記ポリエステル基材フィルムとの接着力に優れており、水分および溶剤に対する優れた耐性を示すことができる。
【0089】
前記ポリエステル離型フィルムは、優れたコーティング加工性、剥離性、および低い摩擦帯電圧を有することによって、薄膜偏光板の製造時、離型用基材フィルムとして適するように使用できる。
【0090】
非制限的な例として、前記薄膜偏光板の製造時、前記ポリエステル離型フィルムの前記基材フィルム上には、バリアコーティング層;ポリビニルアルコール樹脂層;接着層;およびポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)などの樹脂層を順に積層して積層体を形成することができる。
【0091】
また、前記ポリエステル離型フィルムは前記積層体から除去できる。
【0092】
以下では、ポリエステル離型フィルムの製造方法について詳しく説明する。
【0093】
本発明の一実施形態によるポリエステル離型フィルムの製造方法は、ポリエステル基材フィルムを準備する第1段階;ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を、前記基材フィルムの一面に塗布して離型層を形成する第2段階;伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を、前記基材フィルムの他面に塗布して帯電防止層を形成する第3段階;および、前記基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された離型層および帯電防止層とを含む積層体を延伸しながら熱処理する第4段階;を含むことができる。
【0094】
前記第1段階はポリエステル基材フィルムを準備する段階であって、前記ポリエステル基材フィルムはポリエステル樹脂からなるものである。
【0095】
前記ポリエステル基材フィルムとしては、本発明の属する技術分野における通常のものが、特別な制限なく使用できる。前記ポリエステル基材フィルムは、必ずしもこれに制限されるわけではないが、機械方向(MD、または長さ方向)に延伸されたものとして準備することができる。好ましくは、前記ポリエステル基材フィルムは、機械方向(MD)に2倍~5倍延伸されたものであってもよい。前記ポリエステル基材フィルムは、10~300μmの厚さを有することが好ましいが、本発明の目的を達成する限度内でこれに制限されないのはもちろんである。
【0096】
前記第2段階は、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む水系コーティング組成物を、前記基材フィルムの一面に塗布して離型層を形成する段階であって、前記水系コーティング組成物は、前記ポリエステル基材フィルム上に前記離型層を形成させるためのものである。
【0097】
前記水系コーティング組成物は、前記ポリエステル樹脂、前記アクリル系樹脂、および前記ポリオレフィンワックスを含むことができ、前記樹脂およびワックスに関する具体的な内容は前述のところを適用することができる。
【0098】
前記水系コーティング組成物は、前述の成分と水を均一に混合する方法で準備することができる。前記水系コーティング組成物の固形分含量は、20~60wt%であることがコーティング工程の効率性確保のために好ましいのであり得る。
【0099】
前記離型層は、前記水系コーティング組成物を使用してインラインコーティング法によって、前記ポリエステル基材フィルムの一面に形成することができる。前記インラインコーティング法によって前記離型層を形成することによって、塗布厚さが薄いながらも前記ポリエステル基材フィルムとの接着力が優れており、水分および溶剤に対する優れた耐性を示すことができる。
【0100】
前記インラインコーティング法は、通常の装置を用いて行うことができる。
【0101】
前記インラインコーティングを行うことにおいて、前記水系コーティング組成物は、前記離型層の最終延伸および乾燥後に、厚さが20~200nmになるように塗布することができる。前記離型層の厚さその他の特性に関する具体的な内容は、前述のところを適用することができる。
【0102】
前記水系コーティング組成物を前記ポリエステル基材フィルム上に塗布した後、前記水系コーティング組成物の水分を除去し硬化させることによって、前記離型層を形成することができる。
【0103】
前記第3段階は、伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を前記基材フィルムの他面に塗布して、帯電防止層を形成する段階であって、前記水分散性帯電防止組成物は、水系ポリウレタン樹脂をさらに含むことができ、前記伝導性高分子、水系ポリウレタン樹脂などに関する具体的な内容は前述のところを適用することができる。
【0104】
前記水分散性帯電防止組成物は、前述の成分と水を均一に混合する方法で準備することができる。前記帯電防止組成物の固形分含量は5~50wt%であることがコーティング工程の効率性確保のために好ましいのであり得る。
【0105】
前記水分散性帯電防止組成物は有機溶媒をさらに含むことができ、これに関する具体的な内容は前述のところを適用することができる。
【0106】
前記帯電防止層は、前記水分散性帯電防止組成物を使用してインラインコーティング法によって前記ポリエステル基材フィルムの他面に形成することができ、インラインコーティング法に関する具体的な内容は前記離型層で詳述したところを適用することができる。
【0107】
前記第4段階は、前記基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された離型層および帯電防止層とを含む積層体を機械方向(MD)または横方向(TD)に延伸しながら熱処理する段階である。
【0108】
一実施形態で、必ずしもこれに制限されるわけではないが、前記積層体は横方向(TD)に2倍~5倍延伸される場合、本発明の一実施形態が目的とする物性を達成するのに適するので選好される。
【0109】
例えば、機械方向(MD)に一軸延伸された前記ポリエステル基材フィルム上に、前記離型層および帯電防止層を形成した後、これを横方向(TD)に延伸することができる。このような延伸工程を通じて前記ポリエステル基材フィルムは機械方向および横方向に二軸延伸され、前記離型層および帯電防止層は横方向に一軸延伸される。
【0110】
前記第4段階は、テンター(tenter)といった通常の熱処理装置を用いて行うことができる。前記第4段階で、前記積層体はテンターを連続的に通過することができる。
【0111】
前記積層体は、前記テンターの前段部を通過しながら予熱され、前記テンターの中段部を通過しながら例えば、横方向(TD)延伸され、前記テンターの後段部を通過しながら熱処理される。前記熱処理は、前記横方向延伸時、前記積層体に加えられた張力を維持した状態で加熱されることであってもよい。
【0112】
好ましくは、前記第4段階は、通過区間に供給される空気の総熱量が222,000kcal/min~229,000kcal/minである熱処理装置に、前記積層体を通過させながら行うことができる。前記熱処理装置を通過する前記積層体は前記総熱量範囲下に露出されながら前記延伸および熱処理される。
【0113】
具体的に、前記第4段階は、全体の通過区間に供給される空気の総熱量が222,000kcal/min~229,000kcal/min、あるいは225,000kcal/min~229,000kcal/min、あるいは226,000kcal/min~229,000kcal/min、あるいは226,000kcal/min~228,000kcal/min、あるいは226,000kcal/min~227,000kcal/minである熱処理装置に前記積層体を通過させながら行うことができる。
【0114】
前記第4段階で、前記積層体が通過する全体区間に供給される空気の総熱量(kcal)は、前記区間の温度(℃)、前記熱処理装置に供給される空気の質量(kg/min)、空気の比熱(kcal/kg℃)のようなデータから計算することができる。前記空気の質量(kg/min)は、空気の体積流量(Nm/min)および空気の密度(kg/Nm)から得ることができる。
【0115】
例えば、前記熱処理装置で、任意の区間(zone)に供給される空気の密度が1.286kg/Nmであり、空気の比熱が0.24kcal/kg℃であり、空気の体積流量が380Nm/min、空気の初期温度が20℃であり、前記区間の設定温度が220℃であるという時、前記区間に供給される空気の総熱量(kcal)は、下記計算式1および2によって23,456.64kcal/minと得ることができる。
【0116】
[計算式1]
空気の質量(kg/min)=空気の体積流量(Nm/min)×空気の密度(kg/Nm
【0117】
[計算式2]
空気の熱量(kcal/min)=空気の質量(kg/min)×空気の比熱(kcal/kg℃)×温度変化(℃)
【0118】
そして、前記区間の通過長さが3mであり、前記積層体が100m/minの速度で前記区間を通過する時、前記区間で前記積層体が露出される熱量は、下記計算式3によって7,037kcal/zoneと得られうる。
【0119】
[計算式3]
積層体が露出される熱量(kcal/zone)=空気の熱量(kcal/min)×区間の通過長さ(m/zone)×積層体の速度(m/min)
【0120】
発明の一実施形態によれば、前記積層体を44,000kcal/min~46,000kcal/minの熱量が供給される区間を通過させて予熱する工程;予熱された前記積層体を62,000kcal/min~64,000kcal/minの熱量が供給される区間を通過させながら前記機械方向(MD)または横方向(TD)に延伸する工程;および、延伸された前記積層体を114,000kcal/min~120,000kcal/minの熱量が供給される区間を通過させながら前記熱処理する工程を含んで行うことができる。
【0121】
好ましくは、前記予熱する工程は、前記積層体を45,000kcal/min~46,000kcal/minの熱量が供給される区間を通過させながら行うことができる。
【0122】
好ましくは、前記延伸する工程は、予熱された前記積層体を63,000kcal/min~64,000kcal/minの熱量が供給される区間を通過させながら行うことができる。
【0123】
そして、好ましくは、前記熱処理する工程は、延伸された前記積層体を、115,000kcal/min~120,000kcal/min、あるいは115,000kcal/min~119,000kcal/min、あるいは116,000kcal/min~119,000kcal/min、あるいは117,000kcal/min~118,500kcal/min、あるいは118,000kcal/min~118,500kcal/minの熱量が供給される区間を通過させながら行うことができる。
【0124】
前記第4段階(特に、前記延伸後熱処理ゾーン)にて通過区間に供給される空気の総熱量が過度に低い場合、前記ポリエステル離型フィルムの剥離性と転写特性が劣悪になり、摩擦帯電圧が大きくなりうる。そして、前記第4段階(特に、前記横方向延伸後熱処理ゾーン)にて通過区間に供給される空気の総熱量が過度に高い場合、前記ポリエステル離型フィルムの表面エネルギーが低くなって加工コーティング性が低下しうる。
【0125】
また、前記第4段階にて、前記積層体は、前記熱処理装置を80m/min~120m/min、または90m/min~110m/min、または90m/min~100m/minの速度で通過することが好ましい。
【0126】
前記第4段階を行うにあたり、前記各区間で、前記積層体を適切な熱量下に露出させ、前記横方向延伸と熱処理が十分に行われるようにするために、前記積層体は前記速度範囲内で前記熱処理装置を通過することが好ましい。
【0127】
前記第4段階は、120℃~245℃の下で行うことができる。例えば、前記第4段階は、120℃~150℃の下で前記積層体を予熱する工程;130℃~150℃の下で前記予熱された積層体を横方向に延伸する工程;および215℃~245℃の下で前記延伸された積層体を熱処理する工程でもって行うことができる。
【0128】
特に、前記延伸された積層体を熱処理する工程は、215℃以上、220℃以上、225℃以上、または230℃以上;そして245℃以下、または240℃以下で行うことができる。具体的に、前記延伸された積層体を熱処理する工程は、215~245℃、220~245℃、220~240℃、225~240℃、または230~240℃の下で行うことができる。
【0129】
前記延伸された積層体を熱処理する工程の温度が前記範囲を満足する場合、前記ポリエステル離型フィルムの剥離性が優れているだけでなく、摩擦帯電圧が低まることになり、前記ポリエステル離型フィルムの製造時、微細ピンホールが発生せずに加工コーティング性が向上しうる。
【0130】
前記第4段階を行った後、150℃~200℃の下で機械方向および横方向にそれぞれ2~10%だけ弛緩させる工程を行うことができる。
【0131】
前記工程を通じて得られる前記ポリエステル離型フィルムの最終厚さは20~100μm、または30~80μm、または30~50μmであってもよい。
【0132】
以下、本発明の製造例、実施例、および実験例を下記に具体的に例示して説明する。但し、後述の実施例および実験例は本発明の一部を例示するものに過ぎず、本発明がこれに限定されるのではない。
【実施例
【0133】
<製造例1>第1水系コーティング組成物の製造
(1)第1樹脂組成物の製造
ジエチレングリコールとエチレングリコールを5:5のモル比で含む50モル%のグリコール成分、および、テレフタル酸とスルホテレフタル酸を8.5:1.5のモル比で含む50モル%の酸成分を、縮重合して第1ポリエステル樹脂を得た(重量平均分子量10,000g/mol)。
【0134】
蒸留水に100重量部の前記第1ポリエステル樹脂および25重量部のポリエチレンワックス(日本高松社のWax No.1)を添加し、30分間攪拌して第1樹脂組成物(固形分20wt%)を製造した。
【0135】
(2)第2樹脂組成物の製造
ジエチレングリコールとエチレングリコールを5:5のモル比で含む50モル%のグリコール成分、および、テレフタル酸とスルホテレフタル酸を8.5:1.5のモル比で含む50モル%の酸成分を、縮重合して第2ポリエステル樹脂を得た(重量平均分子量3,000g/mol)。
【0136】
アクリル酸グリシジル60モル%およびプロピオン酸ビニル40モル%を共重合してアクリル系樹脂を得た(重量平均分子量50,000g/mol)。
【0137】
蒸留水に50重量部の前記第2ポリエステル樹脂、50重量部の前記アクリル系樹脂、および25重量部のポリエチレンワックスを添加し30分間攪拌して第2樹脂組成物(固形分20wt%)を製造した。
【0138】
(3)水系コーティング組成物の製造
前記第1樹脂組成物14.3wt%(固形分20wt%)、前記第2樹脂組成物14.3wt%(固形分20wt%)、シリコーン系ウェッティング剤0.2wt%(Dow Corning社、Q2-5212、固形分90wt%)、フッ素系ウェッティング剤0.2wt%(DuPont社、FS-31、固形分25wt%)、および残量の水を混合して第1水系コーティング組成物を製造した。
【0139】
<製造例2>第2水系コーティング組成物の製造
前記製造例1で製造した第1樹脂組成物を使用せず、その含量だけ第2樹脂組成物をさらに使用したことを除いては、製造例1と同一の方式で第2水系コーティング組成物を製造した。即ち、製造例2による第2水系コーティング組成物は第2樹脂組成物を28.6wt%だけ含む。
【0140】
<製造例3>第1帯電防止コーティング組成物の製造
伝導性高分子水分散液(Heraeus社、Clevios P、固形分1.3wt%)60wt%、水6wt%、イソプロピルアルコール(IPA)5wt%を混合容器に入れて1時間攪拌し、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(Alfa aesar、95%)2wt%を混合容器に追加的に入れて再び1時間攪拌した後に、水系ポリウレタン樹脂(Neo resins社、NeorezR-960、固形分31wt%)を20wt%入れて30分間再攪拌した後、混合容器にジメチルスルホキシド5wt%、シリコーン系ウェッティング剤(BYK 348)を2wt%添加して、1時間追加攪拌することで第1水分散性帯電防止組成物(固形分6.98wt%)を製造する。そして、前記第1水分散性帯電防止組成物を2次希釈製造する。この際、前記第1水分散性帯電防止組成物30wt%、水69.6wt%、シリコーン系ウェッティング剤0.2wt%(Dow Corning社、Q2-5212、固形分90wt%)、およびフッ素系ウェッティング剤0.2wt%(DuPont社、FS-31、固形分25wt%)を混合して、第1帯電防止コーティング組成物を製造した。
【0141】
<比較製造例1>第3水系コーティング組成物の製造
シリコーン離型主材20wt%(Wacker社、400E、固形分55wt%)と硬化剤1.1wt%(Wacker社、V-72、固形分40wt%)、シリコーン系ウェッティング剤0.18wt%(DowCorning社、Q2-5212、固形分90wt%)、イソプロピルアルコール(IPA)5wt%、および残量の水を混合して、第3水系コーティング組成物を製造した。
【0142】
<比較製造例2>第4水系コーティング組成物の製造
前記製造例1で製造した第2樹脂組成物を使用せずその含量だけ第1樹脂組成物をさらに使用したことを除いては、製造例1と同一の方式で第4水系コーティング組成物を製造した。即ち、比較製造例1による第4水系コーティング組成物は、第1樹脂組成物を28.6wt%だけ含む。
【0143】
<比較製造例3>第2帯電防止コーティング組成物の製造
アクリル系水分散体(日本高松社のATX-014、固形分40wt%)5.1wt%、陰イオン系高分子帯電防止剤((株)JINBO、ICP-323、分子量100,000g/mol以上、固形分25.5wt%)、9wt%、シリコーン系ウェッティング剤(BYK 384)2wt%、および残量の水を混合して第2帯電防止コーティング組成物を製造した。
【0144】
<実施例1>
(1)水分が100ppm以下に除去されたPETチップを溶融押出機に注入して溶融した後、T-ダイを通じて押出しながら表面温度20℃であるキャスティングドラムで急冷および固化させてPETシートを製造した。製造されたPETシートを110℃で機械方向に3.5倍延伸した後、常温に冷却して前記PET基材フィルムを得た。
【0145】
(2)グラビアコーターを用いて製造例1による第1水系コーティング組成物を前記PET基材フィルムの一面に最終乾燥後厚さ70nmになるように塗布して離型層を形成し、製造例3による第1帯電防止コーティング組成物を前記PET基材フィルムの他面に最終乾燥後厚さ50nmになるように塗布して帯電防止層を形成した。
【0146】
(3)次いで、予熱ゾーン、延伸ゾーン、および熱処理ゾーンに区画されたテンター(tenter)で前記離型層および帯電防止層が形成された積層体を横方向(TD)に4倍延伸しながら熱処理する段階が行われた。
【0147】
予熱ゾーン、延伸ゾーン、および熱処理ゾーンを順に含む全長33mの前記テンターに前記積層体(初期幅5.12m、初期厚さ152μm)が100m/minの移動速度で通過しながら前記熱処理する段階が行われた。
【0148】
前記熱処理する段階は、通過区間に供給される空気の総熱量が226,400kcal/minである前記テンターに前記積層体を通過させながら行われた。
【0149】
前記テンターに供給される空気の密度は1.286kg/nmであり、空気の比熱は0.24kcal/kg℃であると確認され、空気の体積流量は270~680nm/minの範囲内で調節された。
【0150】
具体的に、前記積層体は約120℃~130℃の温度下で45,000kcal/minの熱量が供給される前記予熱ゾーン(通過長さ7.5m)を通過した。連続して、予熱された前記積層体は約130℃~140℃の温度下で63,200kcal/minの熱量が供給される前記延伸ゾーン(通過長さ10.5m)を通過しながら横方向に4倍延伸された。連続して、延伸された前記積層体は230~235℃の温度下で118,200kcal/minの熱量が供給される前記熱処理ゾーン(通過長さ15m)を通過しながら熱処理された。
【0151】
(4)前記熱処理段階後、200℃で機械方向および横方向にそれぞれ10%ずつ弛緩させて熱固定することによって、総厚さ38μmのポリエステル離型フィルムを製造した。
【0152】
<実施例2>
実施例2では、実施例1の離型層として製造例2による第2水系コーティング組成物をコーティングして形成したことを除いては、実施例1と同一に実施して総厚さ38μmのポリエステル離型フィルムを製造した。
【0153】
<比較例1>
比較例1では、実施例1の帯電防止層を形成しないことを除いては実施例1と同一に実施して総厚さ38μmのポリエステル離型フィルムを製造した。
【0154】
<比較例2>
比較例2では、実施例1の離型層として比較製造例1による第3水系コーティング組成物をコーティングして形成したことを除いては、実施例1と同一に実施して総厚さ38μmのポリエステル離型フィルムを製造した。
【0155】
<比較例3>
比較例3では、比較例2の帯電防止層を形成しないことを除いては、比較例2と同一に実施して総厚さ38μmのポリエステル離型フィルムを製造した。
【0156】
<比較例4>
比較例4では、実施例1の帯電防止層として比較製造例3による第2帯電防止コーティング組成物をコーティングして形成したことを除いては、実施例1と同一に実施して総厚さ38μmのポリエステル離型フィルムを製造した。
【0157】
<比較例5>
比較例5では、実施例1の離型層として比較製造例2による第4水系コーティング組成物をコーティングして形成したことを除いては、実施例1と同一に実施して総厚さ38μmのポリエステル離型フィルムを製造した。
【0158】
<評価項目>
実施例および比較例の下記特性を測定した値を下記表1に示した。
【0159】
1.光学特性
Haze meter(Nippon denshoku、NDH 5000)を用いて下記実施例および比較例のフィルムに対するヘイズ(haze)および全光線透過率(TT)を測定した。
【0160】
2.転写特性(Transfer test)
ポリエステル離型フィルムの離型層上に無-処理されたPET基材フィルムを積層させ50gf/inchの荷重を与えて45℃のオーブンに24時間放置した後、水接触角の差が△2°以上であれば、転写が「有」と表記し、水接触角の差がない場合、転写が「無」と表記した。
【0161】
ポリエステル離型フィルムの帯電防止層に対しても、同一の転写テストを実施して転写の有無を表記した。
【0162】
3.水接触角
接触角測定器(KRUSS、DSA 100)を用いて前記フィルムの離型層に対する水接触角を測定した。純水3μl(S1、Volume mode)を前記フィルム試片に落とし、15秒間の水接触角平均を測定した。合計5回測定してその平均値を示した。
【0163】
4.ジヨードメタン(Diiodomethane)接触角
接触角測定器(KRUSS、DSA 100)を用いて前記フィルムの離型層に対するdiiodomethane接触角を測定した。Diiodomethane1μl(S1、Volume mode)を前記フィルム試片に落とし15秒間のdiiodomethane接触角平均を測定した。合計5回測定してその平均値を示した。
【0164】
5.表面エネルギー
前記水接触角とdiiodomethane接触角の測定結果からOwens-Wendt Methodで用いて前記フィルムの離型層の表面エネルギーを計算した。
【0165】
6.加工コーティング性
前記フィルムの離型層の上にUV樹脂(Miwon Specialty Chemical Co., MIRAMER M1130)を厚さ10μmで塗布してUV硬化させたサンプルを準備した。前記サンプルの加工コーティング性を下記の基準によって評価した。
【0166】
*1等級-単位面積(m)当りにピンホール無し
*2等級-単位面積(m)当りのピンホール2個以下
*3等級-単位面積(m)当りのピンホール5個以下
*4等級-単位面積(m)当りのピンホール10個以下
*5等級-単位面積(m)当りのピンホール10個超過
【0167】
7.剥離力
前記ポリエステル離型フィルムの離型層の上にアクリレート系粘着テープ(日東電工製NITTO #31B テープ幅:25mm)を貼り付けた第1サンプルを準備する段階;前記第1サンプルを5mm×180mmのサイズに切断して第2サンプルを準備する段階;および、前記第2サンプル上に70g/cmの荷重を加えて常温に30分間放置した後、剥離試験器(peel tester)を用いて、300mm/minの剥離速度で前記テープを180度剥離する段階;を含む方法で剥離力を測定した。
【0168】
8.摩擦帯電圧
ロータリースタティックテスター(Daiei Kagaku Seiki MFG、RST-300a)を用いて、前記ポリエステル離型フィルムに対する摩擦静電気を測定した。この時、A面(前記ポリエステル離型フィルムで前記離型層面)およびB面(前記離型フィルムで前記帯電防止層面)を、回転速度300rpmで180秒間摩擦させて発生する静電気量を測定した。
【0169】
9.表面抵抗
実施例および比較例で製造されたフィルムの帯電防止層に対する表面抵抗を評価した。測定方法は、Mitsubishi Chemical Corp.Hiresta-Up MCP-HP450装備を使用して、25℃、50%RH、10V、10秒の条件で表面抵抗を測定した。
【0170】
【表1】
【0171】
上記表1を参照すれば、実施例によるポリエステル離型フィルムは、比較例の離型フィルムに比べて転写特性、剥離性、およびコーティング加工性に優れているだけでなく、帯電防止性に優れており摩擦帯電圧が50V未満で顕著に低いことが確認された。
【0172】
したがって、本発明のポリエステル離型フィルムは、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィンワックスを含む、水系コーティング組成物を含む離型層、および、伝導性高分子を含む水分散性帯電防止組成物を含む帯電防止層を含むことによって、剥離性およびコーティング加工性に優れているだけでなく、帯電防止性に優れており摩擦帯電圧が50V未満と顕著に低い特性があり、フィルムの走行および巻取りの際に発生する静電気発生を防止し、静電気によって流入される空気または異物の量を顕著に減少させることができる。
【0173】
また、本発明のポリエステル離型フィルムは、前記離型フィルムを用いてコーティング層を形成させる際に発生する、未反応物による収率低下、静電気による異物吸着などの問題を解決することができ、薄膜偏光板などの光学フィルムの製造時に基材として使用することに適する。
【国際調査報告】