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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】結晶性中間体
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/10 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
C07D493/10 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537351
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-15
(86)【国際出願番号】 AU2022051546
(87)【国際公開番号】W WO2023115123
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2021904153
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519029516
【氏名又は名称】キューバイオティクス プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100231902
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 李花
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ドメニギーニ
(72)【発明者】
【氏名】ロレーナ フマガリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ガンビーニ
(72)【発明者】
【氏名】ニコーラ サルドーネ
(57)【要約】
6,7-エポキシチグリアン化合物の製造において有用な結晶性中間体が本明細書において提供される。結晶性中間体を用いて6,7-エポキシチグリアン化合物を作製する方法、並びに結晶性中間体を用いて生成することができる高純度6,7-エポキシチグリアン化合物も提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の化合物の結晶形態、又はその立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
式(Ia):
【化2】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である、請求項1に記載の式(I)の化合物の結晶形態。
【請求項3】
無水形態である、請求項1又は2に記載の結晶形態。
【請求項4】
2θ約10.5度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項5】
2θ約6.2度、約7.6度及び約10.5度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項3又は4に記載の結晶形態。
【請求項6】
2θ約6.2度、約7.6度、約10.5度、約12.5度及び約15.2度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項3~5のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項7】
2θ約6.2度、約7.6度、約10.5度、約12.5度、約15.2度、約16.2度、約18.3度、約19.9度、約23.2度及び約27.8度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項3~6のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項8】
2θ約11.4度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項9】
2θ約8.5度、約9.8度及び約11.4度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項8に記載の結晶形態。
【請求項10】
2θ約4.9度、約8.5度、約9.8度、約11.4度及び約14.6度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項8又は9に記載の結晶形態。
【請求項11】
2θ約4.9度、約8.5度、約9.8度、約11.4度、約14.6度、約16.5度、約17.5度、約19.5度、約21.4度、約27.7度及び約28.7度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項3~6のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項12】
メタノール溶媒和物の形態である、請求項1又は2に記載の結晶形態。
【請求項13】
2θ約9.5度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項12に記載の結晶形態。
【請求項14】
2θ約7.2度、約9.5度及び約13.1度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項12又は13に記載の結晶形態。
【請求項15】
2θ約7.2度、約9.5度、約11.5度、約13.1度及び約17.9度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項12~14のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項16】
2θ約7.2度、約9.5度、約11.5度、約12.6度、約13.1度、約14.0度、約17.9度、約20.3度、約21.2度、約22.8度及び約32.6度にピークを含むX線粉末回折パターンを示す、請求項12~15のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項17】
二水和物結晶形態である、請求項1又は2に記載の結晶形態。
【請求項18】
2θ約10.5度に少なくとも1つのピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、請求項17に記載の結晶形態。
【請求項19】
2θ約10.5度、約7.4度及び約12.4度にピークを含むXRPDパターンを示す、請求項17又は18に記載の結晶形態。
【請求項20】
2θ約10.5度、約7.4度、約12.4度、約6.2度、約9.9度及び約15.3度にピークを含むXRPDパターンを示す、請求項17~19のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項21】
2θ約6.2度、約7.4度、約8.9度、約9.9度、約10.5度、約12.4度、約15.3度、約18.6度、約20.2度、約21.1度、約22.4度、約22.9度、約26.0度、約27.0度、約27.3度及び約33.7度にピークを有するXRPDパターンを示す、請求項17~21のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項22】
式(I)又は式(Ia)の前記化合物が実質的に純粋な形態である、請求項1~21のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項23】
式(I)の化合物の結晶形態を作製する方法であって、
i)式(II):
【化3】
の1種以上の化合物を含む混合物[式中、各Rは、H及び-C(O)Rから独立して選択され、1つの化合物又は式(II)のみが組成物中に存在する場合、少なくとも1つのR基は、水素ではなく、そして
は、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、シクロアルキル、アリール、C1~10アルキルシクロアルキル、C2~10アルケニルシクロアルキル、C2~10アルキニルシクロアルキル、C1~10アルキルアリール、C2~10アルケニルアリール、C2~10アルキニルアリール、C1~10アルキルC(O)R、C2~10アルケニルC(O)R、C2~10アルキニルC(O)R、C1~10アルキルCH(OR)(OR)、C(O)C2~10アルケニルCH(OR)(OR)、C2~10アルキニルCH(OR)(OR)、C1~10アルキルSR、C2~10アルケニルSR、C2~10アルキニルSR、C1~10アルキルC(O)OR、C2~10アルケニルC(O)OR、C2~10アルキニルC(O)OR、C1~10アルキルC(O)SR、C2~10アルケニルC(O)SR、C2~10アルキニルC(O)SR
【化4】
から選択され、
は、水素、-C1~10アルキル、-C2~10アルケニル、-C2~10アルキニル、シクロアルキル又はアリールであり、
式中、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はアリール基は、任意選択で置換されている]を提供する工程と、
ii)式(II)の前記化合物を2,2-ジメトキシプロパン及び弱酸性触媒で処理することによって、式(III):
【化5】
の5,20-アセトニドを形成する工程と、
iii)式(III)のC12及びC13におけるエステルを脱エステル化して、式(III)の前記化合物を塩基で処理することによって式(I):
【化6】
の化合物を提供する工程と、
iv)式(I)の前記化合物を結晶化させる工程と、を含む方法。
【請求項24】
式(II)の前記化合物が、式(IIa):
【化7】
の化合物[式中、各Rは、独立して請求項23に定義された通りである]である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記立体化学が、式(Ia)の化合物を生成するように維持される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
式(I)又は式(Ia)の前記化合物をメタノール溶媒から結晶化させてメタノール溶媒和物を形成する、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
式(I)又は式(Ia)の前記化合物をアセトニトリルから結晶化させて無水結晶形態を形成する、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
式(I)の前記化合物又は式(Ia)の前記化合物のC12ヒドロキシ基及びC13ヒドロキシ基の一方又は両方を、活性化カルボン酸との反応によってエステル化することを更に含む、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
酸化条件下で5,20-アセトニド基を除去して、式(IV):
【化8】
の化合物[式中、各Rは、H及び-C(O)Rから独立して選択され、そして
は、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、シクロアルキル、アリール、C1~10アルキルシクロアルキル、C2~10アルケニルシクロアルキル、C2~10アルキニルシクロアルキル、C1~10アルキルアリール、C2~10アルケニルアリール、C2~10アルキニルアリール、C1~10アルキルC(O)R、C2~10アルケニルC(O)R、C2~10アルキニルC(O)R、C1~10アルキルCH(OR)(OR)、C(O)C2~10アルケニルCH(OR)(OR)、C2~10アルキニルCH(OR)(OR)、C1~10アルキルSR、C2~10アルケニルSR、C2~10アルキニルSR、C1~10アルキルC(O)OR、C2~10アルケニルC(O)OR、C2~10アルキニルC(O)OR、C1~10アルキルC(O)SR、C2~10アルケニルC(O)SR、C2~10アルキニルC(O)SR
【化9】
から選択され、
は、水素、-C1~10アルキル、-C2~10アルケニル、-C2~10アルキニル、シクロアルキル又はアリールであり、
式中、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はアリール基は、任意選択で置換されている]
又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩、を提供する工程を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項23に記載の方法によって生成された、12-チグロイル-13-(2-メチルブタノイル)-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン。
【請求項31】
請求項23に記載の方法によって生成された、12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン。
【請求項32】
実質的に純粋な形態の、12-チグロイル-13-(2-メチルブタノイル)-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン又は12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン。
【請求項33】
式(I):
【化10】
の化合物の結晶形態を作製する方法であって、式(I)の前記化合物をアセトニトリル又はメタノール溶媒から結晶化させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月21日に出願されたオーストラリア特許仮出願第2021904153号からの優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、6,7-エポキシチグリアン化合物の製造において有用な結晶性中間体に関する。結晶性中間体を用いて6,7-エポキシチグリアン化合物を作製する方法、並びに結晶性中間体を用いて生成することができる高純度6,7-エポキシチグリアン化合物も開示される。
【背景技術】
【0003】
6,7-エポキシチグリアンは、固形腫瘍がん及び細菌感染などの疾患並びに創傷治癒の促進においてヒト及び獣医学的治療用途を有することが示されているジテルペンエステルのクラスである(国際公開第2007070985号、同第2014169356号)。いくつかの6,7-エポキシチグリアン化合物、例えばチギラノールチグラート(化合物1、12-チグロイル-13-(2-メチルブタノイル)-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン、国際公開第2007070985号)は、Fontainea及びHylandia種に属する植物において天然に存在する。他のエポキシチグリアン化合物、例えば、12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン(化合物2、国際公開第2014169356号)は、天然に存在する6,7-エポキシチグリアン化合物から半合成プロセスによって誘導される。
【0004】
少なくともいくつかのエポキシチグリアン化合物は植物材料から治療量で入手可能であるが、得られた抽出物は、分離が困難であり得る複数の密接に関連したエポキシチグリアン化合物を含有する。抽出された6,7-エポキシチグリアン化合物の変動は、6,7-エポキシチグリアン構造のC12位及びC13位のエステル基において生じるので、抽出物を処理してC12エステル及びC13エステルを脱アシル化して、C12位及びC13位にヒドロキシ基を有する単一の6,7-エポキシチグリアン化合物を得ることが以前に提案されている。次いで、この中間体化合物を合成的に操作して、単一の所望の天然又は非天然6,7-エポキシチグリアン化合物を生成することができる(国際公開第2014169356号)。
【0005】
しかしながら、このようにして生成された6,7-エポキシチグリアン化合物は、有害であると考えられ得る望ましくない溶媒及び不純物の除去を確実にするために、依然として精製を必要とする。いくつかの合成プロセスでは、6,7エポキシチグリアン化合物のごく一部が6,7-エポキシド環の開環を受け、以下のようなヒドロクロリド付加物:
【化1】
を形成することが見出されている。
【0006】
これらの化合物は、有毒な不純物と考えられ、所望の6,7-エポキシチグリアン化合物から除去することが困難であり、クロマトグラフィー精製工程中に所望の化合物の損失及び低収率をもたらす。
【0007】
生成物6,7-エポキシチグリアン化合物の結晶化による精製が試みられてきたが、これらの化合物は結晶化に対して特に耐性があるようである。
【0008】
高収率及び高純度の治療用生成物をもたらす6,7-エポキシチグリアン化合物の製造方法が必要とされている。
【0009】
任意の先行技術の刊行物が本明細書において言及される場合、そのような言及は、その刊行物がオーストラリア又は任意の他の国において当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものではないことが理解されるべきである。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、治療的に有用な6,7-エポキシチグリアン化合物の合成調製における重要な中間体が結晶化して高純度生成物を形成し、所望の6,7-エポキシチグリアン化合物の高収率及び高純度での調製を可能にするという発見に少なくとも部分的に基づく。
【0011】
本発明の第1の態様では、式(I):
【化2】
の化合物の結晶形態、又はその立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0012】
本発明の別の態様では、式(I)の化合物の結晶形態を作製する方法であって、
i)式(II):
【化3】
の1種以上の化合物を含む組成物[式中、各Rは、H及び-C(O)Rから独立して選択され、式(II)の1つの化合物のみが組成物中に存在する場合、少なくとも1つのR基は、水素ではなく、そして
は、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、シクロアルキル、アリール、C1~10アルキルシクロアルキル、C2~10アルケニルシクロアルキル、C2~10アルキニルシクロアルキル、C1~10アルキルアリール、C2~10アルケニルアリール、C2~10アルキニルアリール、C1~10アルキルC(O)R、C2~10アルケニルC(O)R、C2~10アルキニルC(O)R、C1~10アルキルCH(OR)(OR)、C(O)C2~10アルケニルCH(OR)(OR)、C2~10アルキニルCH(OR)(OR)、C1~10アルキルSR、C2~10アルケニルSR、C2~10アルキニルSR、C1~10アルキルC(O)OR、C2~10アルケニルC(O)OR、C2~10アルキニルC(O)OR、C1~10アルキルC(O)SR、C2~10アルケニルC(O)SR、C2~10アルキニルC(O)SR
【化4】
から選択され、
は、水素、-C1~10アルキル、-C2~10アルケニル、-C2~10アルキニル、シクロアルキル又はアリールであり、
式中、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はアリール基は、任意選択で置換されている]を提供する工程と、
ii)式(II)の化合物を2,2-ジメトキシプロパン及び弱酸性触媒で処理することによって、式(III):
【化5】
の5,20-アセトニドを形成する工程と、
iii)式(III)のC12及びC13におけるエステルを脱エステル化して、式(III)の化合物を塩基で処理することによって式(I):
【化6】
の化合物を提供する工程と、
iv)式(I)の化合物を結晶化させる工程と、を含む方法が提供される。
【0013】
本発明のなお更なる態様では、実質的に純粋な形態の12-チグロイル-13-(2-メチルブタノイル)-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン(化合物1)又は12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン(化合物2)が提供される。
【0014】
本発明のなお更なる態様では、式(I):
【化7】
の化合物の結晶形態を作製する方法であって、式(I)の化合物をアセトニトリル又はメタノール溶媒から結晶化させることを含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】式(Ia)の化合物の無水結晶形態AのX線粉末回折パターンを示す。
【0016】
図2】式(Ia)の化合物の無水結晶形態BのX線粉末回折パターンを示す。
【0017】
図3】式(Ia)の化合物のメタノール溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。
【0018】
図4】式(Ia)の化合物の二水和物のX線粉末回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を記載する。本発明の目的のために、以下の用語を下記で定義する。
【0020】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、参照数量、レベル、値、寸法、サイズ、又は量に対して30%、25%、20%、15%、又は10%ほど変動する数量、レベル、値、寸法、サイズ、又は量を指す。X線粉末回折(XRPD)パターンにおけるピークの位置に関して使用される場合、「約」という用語は、記載された位置の2θ±0.2度、特に、記載された位置の2θ±0.1度内のピークを含む。例えば、本明細書で使用される場合、「2θ約10.0度」におけるXRPDピークは、記載されたピークが2θ9.8~10.2度に生じることを意味する。
【0022】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という語は、記載されたステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素の群を含むが、任意の他のステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素の群を除外しないことを意味すると理解される。
【0023】
「アルキル」という用語は、1~20個の炭素原子を有する、任意選択で置換された直鎖及び分岐鎖の飽和炭化水素基を指す。適切な場合、アルキル基は、特定の数の炭素原子を有していてもよく、例えば、-C~Cアルキルであり、これには、直鎖又は分枝鎖の配置で1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキル基が含まれる。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s-及びt-ブチル、ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル及びペンタデシルが挙げられる。
【0024】
「アルケニル」という用語は、2~20個の炭素原子を有し、少なくとも1つの二重結合を有する、任意選択で置換された不飽和直鎖又は分岐鎖の炭化水素を指す。適切な場合、アルケニル基は、特定の数の炭素原子を有していてもよく、例えば、C~Cアルケニルであり、これには、直鎖又は分岐鎖の配置で2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルケニル基が含まれる。アルケニル基の非限定的な例としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、s-及びt-ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプタ-1,3-ジエン、ヘキサ-1,3-ジエン、ノン-1,3,5-トリエンなどが挙げられる。
【0025】
「アルキニル」という用語は、2~20個の炭素原子を有し、少なくとも1つの三重結合を有する、任意選択で置換された不飽和直鎖又は分岐鎖の炭化水素を指す。適切な場合、アルキニル基は、特定の数の炭素原子を有していてもよく、例えば、C~Cアルキニルであり、これには、直鎖又は分岐鎖の配置で2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキニル基が含まれる。非限定的な例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル及びヘキシニルが挙げられる。
【0026】
「シクロアルキル」及び「炭素環式」という用語は、任意選択で置換された飽和又は不飽和であるが、芳香族ではない単環式、二環式又は三環式炭化水素基を指す。適切な場合、シクロアルキル基は、特定の数の炭素原子を有していてもよく、例えば、C~Cシクロアルキルは、3、4、5又は6個の炭素原子を有する炭素環式基である。非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニルなどが挙げられ得る。
【0027】
「アリール」は、各環に7個までの原子を有し、少なくとも1つの環が芳香族である、C~C14員単環式、二環式又は三環式炭素環式環系を意味する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル及びビフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。アリールは、1~3個のベンゼン環を含んでもよい。2つ以上の芳香族環が存在する場合、隣接する環が共通の結合を共有するように、環は互いに縮合していてもよい。
【0028】
各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はアリールは、個々の実体であっても、より大きな実体の一部としてであっても、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~6シクロアルキル、オキソ(=O)、-OH、SH、OC1~6アルキル、OC2~6アルケニル、OC2~6アルキニル、OC3~6シクロアルキル、SC1~6アルキル、SC2~6アルケニル、SC2~6アルキニル、SC3~6シクロアルキル、COH、CO1~6アルキル、NH、NH(C1~6アルキル)、N(C1~6アルキル)、NH(フェニル)、N(フェニル)、CN、NO、ハロゲン、CF、-OCF、SCF、CHF、OCHF、SCHF、フェニル、C1~6アルキルフェニル、Oフェニル、C(O)フェニル及びC(O)C1~6アルキルからなる群から選択される1つ以上の任意選択の置換基で、任意選択で置換されていてもよい。好適な置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ビニル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、ニトロ、-COH、-COCH、-C(O)CH、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、ジフルオロメチルチオ、モルホリノ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、フェニル、フェノキシ、フェニルカルボニル、ベンジル及びアセチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
エポキシチグリアン化合物は、薬学的に許容される塩の形態であってもよい。しかしながら、薬学的に許容されない塩もまた、これらが薬学的に許容される塩の調製において中間体として有用であり得る、又は保管若しくは輸送中に有用であり得るので、本発明の範囲内に含まれることが理解される。好適な薬学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸及び臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の塩、又は酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸及び吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
塩基塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム及びアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容されるカチオンで形成されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド、例えばメチル、エチル、プロピル及びブチルクロリド、ブロミド及びヨージド;ジアルキルスルフェート、例えばジメチル及びジエチルスルフェートなどの試薬で四級化されてもよい。
【0032】
また、エポキシチグリアン化合物は不斉中心を有してもよく、したがって2つ以上の立体異性体形態で存在することができることも認識されるであろう。したがって、本発明はまた、1つ以上の不斉中心で実質的に1つの立体異性体形態である化合物、例えば、90%超のee、例えば、約95%若しくは97%ee、又は99%超のeeである化合物、及びその混合物、例えばラセミ混合物に関する。そのような立体異性体は、天然源からの単離によって、キラル中間体を使用するなど不斉合成によって、又はキラル分割によって得ることができる。本発明の化合物はまた、幾何異性体として存在してもよい。本発明はまた、実質的に純粋なシス(Z)若しくはトランス(E)形態の化合物又はそれらの混合物に関する。
【0033】
「6,7-エポキシチグリアン化合物」という用語は、以下の基本的な炭素環構造:
【化8】
を有する化合物を指す。
【0034】
この化合物は、6員環に付加された縮合シクロプロパン環を有するトリシクロ[9.3.0.0]テトラデカン系を有する。エポキシドは、6,7位で7員環に縮合している。
【0035】
6,7-エポキシチグリアン化合物の一例は、6,7-エポキシチグリエン-3-オン化合物である。「エポキシチグリエン-3-オン化合物」という用語は、5員環が1,2-エン-3-オン構造を有する、上に定義されたエポキシチグリアン構造を有する化合物:
【化9】
を指す。
【0036】
「実質的に純粋な形態」という用語は、96%超の化学純度、特に97%超、98%超、99%超若しくは100%の化学純度、及び/又は97%超のee、特に98%超若しくは99%超のee、より特に100%のeeを有する生成物を指す。いくつかの実施形態では、実質的に純粋な形態は、不純物化合物A及び/又はBが0.5%未満、0.1%未満、0.05%未満で存在する場合、最も特にはそれらが存在しない場合を指す。
【0037】
本発明は、結晶形態の式(I)の化合物、特に結晶形態の式(Ia)の化合物に関する:
【化10】
【0038】
いくつかの実施形態では、結晶形態は無水結晶形態である。他の実施形態では、結晶形態はメタノール溶媒和物である。別の実施形態では、結晶形態は二水和物である。
【0039】
実施形態では、結晶形態が式(Ia)の化合物の無水結晶形態である場合、その結晶形態は2つの形態のうちの1つであり得る。
【0040】
無水結晶形態の形態Aは、2θ約10.5度に少なくとも1つのピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。別の実施形態では、無水結晶形態Aは、2θ約10.5度におけるピークと、2θ約6.2度及び約7.6度からなる群から選択される少なくとも1つのピークとを含むXRPDパターンを示す。別の実施形態では、無水結晶形態Aは、2θ約10.5度におけるピーク、2θ約6.2度及び約7.6度から選択される少なくとも1つのピーク、並びに2θ約12.5度及び約15.2度から選択される少なくとも1つのピークを含むXRPDパターンを示す。なお更なる実施形態では、無水結晶形態Aは、2θ約10.5度におけるピーク、2θ約6.2度及び約7.6度から選択される少なくとも1つのピーク、2θ約12.5度及び約15.2度から選択される少なくとも1つのピーク、並びに2θ約16.2度、約16.7度、約18.3度、約19.9度、約23.3度及び約27.8度から選択される少なくとも1つのピークを含むXRPDパターンを示す。一実施形態では、XRPDパターンは、図1と実質的に同じである。別の実施形態では、無水結晶形態Aは、2θ6.2度、7.6度、10.5度、12.5度、15.2度、16.2度、16.7度、18.3度、19.9度、21.5度、23.3度、25.2度及び27.8度±0.2度にピークを有するXRPDパターンを有する。
【0041】
更に、無水結晶形態Aは、約3458.4、3345.6、3056.9、2984.6、2968.6、2941.1、2882.4、1708.3、1636.1、1458.5、1376.1、1319.0、1223.5、1085.7、1025.4、1000.3、973.7、930.3、902.1、880.3、832.1及び769.0cm-1において吸収周波数を含む、減衰全反射(ATR)モードで4000~550cm-1スペクトル範囲におけるフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを特徴とする。
【0042】
いくつかの実施形態では、無水結晶形態Aは、0.5%未満、特に0.3%未満、例えば約0.28%の含水量を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、無水結晶形態Aは、50ppm未満、特に40ppm未満、より特に25ppm未満、例えば、約34ppmの残留有機溶媒のレベルを有する。
【0044】
第2の無水結晶形態(形態B)は、高湿度条件下、例えば、温度25℃及び相対湿度80%で68時間にわたって無水結晶形態Aから形成され得る。無水結晶形態Bは、保管時に安定であり、無水結晶形態Aの保管時に存在し得る。
【0045】
無水結晶形態の形態Bは、2θ約11.4度に少なくとも1つのピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。別の実施形態では、無水結晶形態Bは、2θ約11.4度におけるピークと、2θ約8.5度及び約9.8度からなる群から選択される少なくとも1つのピークとを含むXRPDパターンを示す。別の実施形態では、無水結晶形態Bは、2θ約11.4度におけるピーク、2θ約8.5度及び約9.8度から選択される少なくとも1つのピーク、並びに2θ約4.9度及び約14.6度から選択される少なくとも1つのピークを含むXRPDパターンを示す。なお更なる実施形態では、無水結晶形態Bは、2θ約11.4度におけるピーク、2θ約8.5度及び約9.8度から選択される少なくとも1つのピーク、2θ約4.9度及び約14.6度から選択される少なくとも1つのピーク、並びに2θ約16.5度、約17.5度、約19.5度、約21.4度、約27.7度及び約28.7度から選択される少なくとも1つのピークを含むXRPDパターンを示す。一実施形態では、XRPDパターンは、図2と実質的に同じである。別の実施形態では、無水結晶形態Bは、2θ4.9、8.5、9.8、11.4、14.6、16.5、17.5、19.5、21.4、27.7、28.7±0.2度にピークを有するXRPDパターンを有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、無水結晶形態Bは、0.5%未満、特に0.3%未満、例えば約0.28%の含水量を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、無水結晶形態Bは、50ppm未満、特に40ppm未満、より特に25ppm未満、例えば、約34ppmの残留有機溶媒のレベルを有する。
【0048】
結晶形態が式(Ia)の化合物のメタノール溶媒和物結晶形態である実施形態では、その結晶形態は、2θ約9.5度に少なくとも1つのピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。別の実施形態では、該結晶形態は、2θ約9.5度におけるピークと、2θ約7.2度及び約13.1度からなる群から選択される少なくとも1つのピークとを含むXRPDパターンを示す。別の実施形態では、該結晶形態は、2θ約9.5度におけるピーク、2θ約7.2度及び約13.1度から選択される少なくとも1つのピーク、並びに2θ約11.5度、約14.5度及び約17.9度から選択される少なくとも1つのピークを含むXRPDパターンを示す。なお更なる実施形態では、該結晶形態は、2θ約9.5度におけるピーク、2θ約7.2度及び約13.1度から選択される少なくとも1つのピーク、2θ約11.5度、約14.5度及び約17.9度から選択される少なくとも1つのピーク、並びに2θ約20.3度、約21.2度、約22.8度及び約32.6度から選択される少なくとも1つのピークを含むXRPDパターンを示す。一実施形態では、XRPDパターンは、図3と実質的に同じである。別の実施形態では、該メタノール溶媒和物結晶形態は、2θ7.2、9.5、11.5、12.6、13.1、14.0、14.5、17.0、17.7、17.9、19.2、20.3、21.2、22.8、23.7、24.7、27.1、28.3、29.7及び32.6±0.2度にピークを有するXRPDパターンを有する。
【0049】
更に、該結晶性メタノール溶媒和物は、約3443.1、3374.1、3189.1、3002.6、2975.7、2944.4、2863.6、1703.3、1635.7、1461.9、1372.9、1290.7、1221.1、1077.1、1025.1、992.0、973.9、929.7、905.8、876.7、829.0及び769.1において吸収周波数を含む、減衰全反射(ATR)モードで4000~550cm-1スペクトル範囲におけるフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを特徴とする。
【0050】
いくつかの実施形態では、該結晶性メタノール溶媒和物は、約145.33℃で開始する吸熱ピーク、並びにいくつかの実施形態では、約221.12℃及び/又は234.22℃における1つ又は2つのより弱い吸熱ピークを特徴とする示差走査熱量測定(DSC)プロファイルを有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、該結晶性メタノール溶媒和物は、熱重量分析によって決定される場合、4~8%、特に5~6%の残留メタノールを含む。
【0052】
結晶形態が式(Ia)の化合物の二水和物結晶形態である実施形態では、その結晶形態は、2θ約10.5度に少なくとも1つのピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。別の実施形態では、該結晶形態は、2θ約10.5度におけるピークと、2θ約7.4度及び約12.4度からなる群から選択される少なくとも1つのピークとを含むXRPDパターンを示す。別の実施形態では、該結晶形態は、2θ約10.5度におけるピーク、2θ約7.4度及び約12.4度から選択される少なくとも1つのピーク、並びに2θ約6.2度、約9.9度及び約15.3度から選択される少なくとも1つのピークを含むXRPDパターンを示す。なお更なる実施形態では、該結晶形態は、2θ約10.5度におけるピーク、2θ約7.4度及び約12.4度から選択される少なくとも1つのピーク、2θ約6.2度、約9.9度及び約15.3度から選択される少なくとも1つのピーク、並びに2θ約8.9度、約18.6度、約20.2度、約22.4度、約22.9度、約26.0度、約27.0度、約27.3度及び約33.7度から選択される少なくとも1つのピークを含むXRPDパターンを示す。一実施形態では、XRPDパターンは、図4と実質的に同じである。別の実施形態では、該二水和物結晶形態は、2θ6.2、7.4、8.9、9.9、10.5、12.4、15.3、18.6、20.2、21.1、22.4、22.9、26.0、27.0、27.3及び33.7±0.2度にピークを有するXRPDパターンを有する。
【0053】
該二水和物結晶形態は、低温、例えば約5℃での保管時に形成され得、室温及び湿度80%での保管によって無水形態A又は無水形態Bに変換し戻り得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、結晶形態は、実質的に純粋であり、例えば、96%、97%、98%又は99%超の化学純度、特に99%~100%の化学純度、より特に99.5%~100%の化学純度、及び任意選択で97%超のee、特に98%超のee又は99%超のee、より特に100%のeeを有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、結晶形態は、単結晶形態、例えば、無水結晶形態の形態A又は形態Bである。他の実施形態では、結晶形態は、結晶形態の混合物、例えば、形態A及び形態Bの混合物、又は形態A及び二水和物結晶溶媒和物の混合物である。しかしながら、複数の結晶形態が存在する場合であっても、式(Ia)の化合物は、依然として実質的に純粋であり得、96%、97%、98%又は99%超の化学純度、特に99%~100%の化学純度、より特に99.5%~100%の化学純度、及び任意選択で97%超のee、特に98%超のee又は99%超のee、より特に100%のeeを有する。
【0056】
特定の実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態は、無水結晶形態、特に式(Ia)の化合物:
【化11】
の無水結晶形態である。
【0057】
いくつかの実施形態では、無水結晶形態は形態Aである。他の実施形態では、無水結晶形態は形態Bである。
【0058】
本発明の結晶形態は、好適な溶媒からの式(I)の化合物の結晶化によって調製することができる。好適な溶媒は実施例7に示すように調査した。
【0059】
メタノールからの結晶化により、結晶性メタノール溶媒和物を得た。結晶化は、化合物の重量と比較して好適には2~10体積(2V~10V)、特に3V~8V、より特に3V~7V、より特に約3V~6Vのメタノール中に20~25℃で化合物を溶解した後に起こった。結晶化は、溶解後、自発的に起こった。
【0060】
アセトニトリルからの結晶化により、1:1アセトニトリル(MeCN)溶媒和物を介して、結晶性無水形態である形態Aを得た。式(I)の化合物の溶解は還流下で得られ、約68~70℃に冷却すると結晶化が起こった。結晶化は、化合物の重量と比較して3V~15V、特に4V~12V、より特に5V~10Vの溶媒の比率で起こった。最初のMeCN溶媒和物を濾過により回収し、乾燥させると無水結晶形態Aが得られた。
【0061】
有利には、無水結晶形態である形態Aは溶媒を含まず、結晶性メタノール溶媒和物の70~80%の収率と比較して、より高い収率85~95%をもたらした。
【0062】
無水結晶形態Aは相対湿度60%で安定であったが、相対湿度80%などのより高い湿度では、二水和物(約5℃で保管)又は第2の無水結晶形態である形態B(約25℃で保管)に変換することができた。
【0063】
無水又は溶媒和物形態の式(I)の化合物の製造
式(I)の化合物は、スキーム1に示されるように、国際公開第2014/169356号(実施例3)に記載されているように製造することができる。
【化12】
【0064】
本発明の一態様では、式(I)の化合物の結晶形態を作製する方法であって、
i)式(II):
【化13】
の1種以上の化合物を含む組成物[式中、各Rは、H及び-C(O)Rから独立して選択され、式(II)の1つの化合物のみが組成物中に存在する場合、少なくとも1つのR基は、水素ではなく、そして
は、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、シクロアルキル、アリール、C1~10アルキルシクロアルキル、C2~10アルケニルシクロアルキル、C2~10アルキニルシクロアルキル、C1~10アルキルアリール、C2~10アルケニルアリール、C2~10アルキニルアリール、C1~10アルキルC(O)R、C2~10アルケニルC(O)R、C2~10アルキニルC(O)R、C1~10アルキルCH(OR)(OR)、C(O)C2~10アルケニルCH(OR)(OR)、C2~10アルキニルCH(OR)(OR)、C1~10アルキルSR、C2~10アルケニルSR、C2~10アルキニルSR、C1~10アルキルC(O)OR、C2~10アルケニルC(O)OR、C2~10アルキニルC(O)OR、C1~10アルキルC(O)SR、C2~10アルケニルC(O)SR、C2~10アルキニルC(O)SR
【化14】
から選択され、
は、水素、-C1~10アルキル、-C2~10アルケニル、-C2~10アルキニル、シクロアルキル又はアリールであり、
式中、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はアリール基は、任意選択で置換されている]を提供する工程と、
ii)式(II)の化合物を2,2-ジメトキシプロパン及び弱酸性触媒で処理することによって、式(III):
【化15】
の5,20-アセトニドを形成する工程と、
iii)式(III)のC12及びC13におけるエステルを脱エステル化して、式(III)の化合物を塩基で処理することによって式(I):
【化16】
の化合物を提供する工程と、式(I)の化合物を結晶化させる工程と、を含む方法が提供される。
【0065】
いくつかの実施形態では、式(II)の1種以上の化合物を含む組成物は、式(II)の化合物の混合物、特に式(IIa):
【化17】
の化合物の混合物を含む。
【0066】
例えば、式(II)又は(IIa)の1種以上の化合物を含む組成物は、以下から選択される1種以上の化合物:
【表1】
又はその立体異性体、特に式(IIa)に示される立体中心を有する立体異性体を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、弱酸性触媒は、例えば、弱ブレンステッド酸触媒、例えば、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸又はカンファースルホン酸(CSA)、陽イオン交換樹脂、p-トルエンスルホン酸、HSO、塩化亜鉛及び他のルイス酸、及びBFエーテラートである。特定の実施形態では、弱酸性触媒は、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸である。
【0068】
アセトニドの形成において使用される溶媒は、反応物を可溶化することができる任意の好適な溶媒である。好適な溶媒としては、アセトン、ジメチルホルムアミド、トルエン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン及びアセトニトリルが挙げられる。
【0069】
C12及びC13エステルの脱エステル化は、塩基の存在下で起こる。好適な塩基としては、CsCO、NaCO、KCO及びLiCOなどの炭酸塩が挙げられる。特定の実施形態では、使用される塩基は、水性若しくはアルコール性溶媒中又はジメチルホルムアミド(DMF)中のCsCO、特にメタノール中のCsCOである。
【0070】
いくつかの実施形態では、式(I)の5,20-アセトニド化合物は、結晶化の前にカラムクロマトグラフィーによって精製される。他の実施形態では、式(I)の化合物は、クロマトグラフィーによる精製なしで結晶化される。
【0071】
式(I)の化合物の結晶化は、メタノール又はアセトニトリルなどの好適な溶媒から行うことができる。メタノール溶媒から、メタノール溶媒和物結晶形態を得た。アセトニトリルから、結晶性アセトニトリル溶媒和物、結晶性無水形態、形態A及び形態B、並びに二水和物結晶形態を得た。特定の実施形態では、結晶形態は、式(Ia)の化合物の結晶形態である。
【0072】
式(I)の化合物の1つ以上の結晶形態を使用して、化合物1及び化合物2などの治療効果のある6.7-エポキシチグリアン化合物を高収率及び高純度で調製することができる。
【0073】
6,7-エポキシチグリアン化合物の合成における式(I)の化合物の1つ以上の結晶形態の使用は、得られる全収率を50%まで改善し得、かつ/又は溶媒及び/若しくはヒドロクロリドA及びBなどの不純物を治療上許容されるレベルに低減し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、スキーム2に示されるように、式(I)の化合物のC12ヒドロキシ基及びC13ヒドロキシ基の一方又は両方をエステル化する工程を更に含み、ここで、出発物質は、式(I)の結晶性化合物である。
【化18】
【0075】
スキーム2に示される反応は、C12ヒドロキシ基及びC13ヒドロキシ基の両方のエステル化が単一の活性化カルボン酸で起こる単一工程で行われてもよい。その実施形態では、各Rは同じである。
【0076】
他の実施形態では、C12ヒドロキシ基及びC13ヒドロキシ基は、別々の逐次反応においてエステル化されて、異なるC12エステル及びC13エステルを有する6,7-エポキシチグリアン化合物を生成し、ここで各Rは異なっている。反応中、最初のエステル化はC13ヒドロキシ基で起こり、C13での反応がいつ完了するかを確認するために反応をモニターしてもよい。
【0077】
カルボン酸は、当技術分野において公知の任意の手段によって、ヒドロキシ基との反応のために活性化され得る。いくつかの実施形態では、活性化カルボン酸は、酸塩化物又は酸無水物である。いくつかの実施形態では、活性化カルボン酸は、チグリン酸無水物などの対称酸無水物であってもよい。他の実施形態では、活性化カルボン酸は、非対称酸無水物、例えば、チグリン酸-ピバル酸無水物であってもよい。更に他の実施形態では、カルボン酸はカルボジイミドで活性化され、例えば、好適なカルボジイミドとしては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などが挙げられる。
【0078】
各Rは、同一であるか又は異なり、H及び-C(O)Rからなる群から独立して選択され、そしてRは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、シクロアルキル、アリール、C1~10アルキルシクロアルキル、C2~10アルケニルシクロアルキル、C2~10アルキニルシクロアルキル、C1~10アルキルアリール、C2~10アルケニルアリール、C2~10アルキニルアリール、C1~10アルキルC(O)R、C2~10アルケニルC(O)R、C2~10アルキニルC(O)R、C1~10アルキルCH(OR)(OR)、C(O)C2~10アルケニルCH(OR)(OR)、C2~10アルキニルCH(OR)(OR)、C1~10アルキルSR、C2~10アルケニルSR、C2~10アルキニルSR、C1~10アルキルC(O)OR、C2~10アルケニルC(O)OR、C2~10アルキニルC(O)OR、C1~10アルキルC(O)SR、C2~10アルケニルC(O)SR、C2~10アルキニルC(O)SR
【化19】
から選択され、
は、水素、-C1~10アルキル、-C2~10アルケニル、-C2~10アルキニル、シクロアルキル又はアリールであり、
式中、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はアリール基は、任意選択で置換されている。特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは水素以外であり、特に両方のRが水素以外である。
【0079】
所望の様式でC12エステル及びC13エステルが形成されると、スキーム3に示されるように、5,20-アセトニド保護基を除去して、式(IV)のエポキシチグリアン化合物が形成され得る。
【化20】
【0080】
アセトニド保護基は、当技術分野において公知の任意の好適な条件下、例えば、水性酸性条件下で除去され得る。酸性条件を提供するために使用され得る好適な酸としては、塩酸(HCl)、トリフルオロ酢酸、過塩素酸、硫酸、Amberlite(商標)樹脂又は他の強イオン交換樹脂及びルイス酸、例えばBFエーテラートが挙げられる。好適な溶媒としては、水性及びアルコール性溶媒、例えば、水、メタノール、水性メタノール、水性テトラヒドロフラン、水性アセトニトリルなどが挙げられる。好適な条件の例としては、水性メタノール若しくは水性テトラヒドロフラン中のHCl、水性アセトニトリル中のトリフルオロ酢酸又は水性過塩素酸(HClO)が挙げられる。
【0081】
一実施形態では、本方法は、12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン(化合物2)を高収率及び/又は実質的に純粋な形態で生成する。
【0082】
別の実施形態では、本方法は、12-チグロイル-13-(2-メチルブタノイル)-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン(化合物1)を高収率及び/又は実質的に純粋な形態で生成する。
【0083】
本発明の一態様では、上記の方法によって生成された12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン(化合物2)又は12-チグロイル-13-(2-メチルブタノイル)-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン(化合物1)が提供される。
【0084】
本発明のなお更なる態様では、式(I):
【化21】
の化合物の結晶形態を作製する方法であって、式(I)の化合物をアセトニトリル又はメタノール溶媒から結晶化させることを含む、方法が提供される。
【実施例
【0085】
実施例1-バイオマスの抽出
Fontainea picrospermaの粉砕種子9.49kg(分析:総チグリアノン(tiglianone)化合物:6.7%、635.8g)をメタノール(24L)に懸濁し、得られた懸濁液を撹拌下、室温で4時間維持した。懸濁液を2.5時間放置し、次いでメタノール相を除去し、回収した。残留バイオマスを同じ手順に従って更に2回再抽出し、次いで10分の沈降時間で10Lのメタノールで1回洗浄した。合わせたメタノール抽出物を真空下、40℃未満の温度で最終体積20Lまで濃縮し、粗メタノール溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びカールフィッシャー(KF)滴定によって分析した。HPLCは、逆相アミドカラム(Halo P/N 92814-707)及びガードカラム(Halo P/N 92814-107)を使用し、溶媒A:水/0.1%ギ酸及び溶媒B:アセトニトリル/0.1%ギ酸を直線勾配で用いて行った。
【表2】
【0086】
1mL/分の流速、5.0μLの注入量、40℃のカラム温度、及び249nmでの検出であった。
【0087】
分析を表1に示す。
【表3】
【0088】
実施例2-粗抽出物の精製
実施例1からの粗濃縮メタノール溶液を、n-ヘキサンで2回、室温で抽出した(1回目の抽出は30L、2回目の抽出は15L)。各抽出物を約10分間混合し、次いで相を10分間分離させた後、ヘキサン相を回収した。回収したヘキサン相を合わせ、メタノール/水(90/10)混合物で2回再抽出し、次いで排出した。合わせた水-メタノール相を先のメタノール抽出物と共にプールし、10%NaCl(水溶液、5L)で希釈した。メタノール水溶液をジクロロメタンで3回抽出した(1回目の抽出は10L、2回目及び3回目の抽出は5L)。合わせた有機相をNaSO上で乾燥させ、次いで、KFによって測定して0.1%未満の含水量を有する油状物が得られるまで、40℃未満の温度で、真空下で濃縮した。
【0089】
合わせた水メタノール相を先のメタノール抽出物と共にプールし、クロロ付加物の形成を低減するために10%NaClではなく水で希釈したことを除いて上記の方法を使用して、精製された粗抽出物の更なるバッチを調製した。
【0090】
実施例3-エポキシチグリアン-5,20アセトニドエステルの調製
実施例2からの油状物をアセトン(4L)に溶解し、次いで、2,2-ジメトキシプロパン(1.125L)及びピリジニウムp-トルエンスルホネート(0.338Kg)を加えた。混合物を撹拌下40℃で25時間加熱した。次いで、試料を実施例1に記載されるようにHPLC分析によりチェックして、反応の完了を確認した。反応混合物に酢酸エチルを加え、次いで反応混合物を水で2回洗浄した。回収した有機相を真空下で乾燥して、5,20-アセトニドエステルを油状物として得た。
【0091】
実施例4-脱エステル化エポキシチグリアン-5,20-アセトニド:式(Ia)の化合物の調製
実施例3からの油状物をメタノール(10L)に溶解し、1kgのCsCOを加えた。混合物を撹拌下25℃で22時間維持し、その後、水(2L)を加えた。得られた混合物をn-ヘキサンで3回(3×3L)洗浄した。酢酸エチル(10L)、水(8L)及びHSO 2N溶液(5L)を残留した水-メタノール相に加えた。有機相を回収し、水-メタノール溶液を酢酸エチルで再抽出(10L×4回)し、全ての酢酸エチル有機溶液を一緒にプールした。次いで、酢酸エチル溶液を10%NaSO水溶液で2回(2L×2)洗浄し、毎回水相を排出し、次いで、二相混合物が得られるまで真空下で濃縮した。相分離後、水相を排出し、有機相を再び濃縮して、式(II)の12,13-ジヒドロキシアセトニド化合物を油状物として得た。該油状物をシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチル20:80)、HPLCで測定して純度81.3%の化合物163gを得た。
【0092】
実施例5-12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン-5,20-アセトニドの調製
実施例4の生成物のジクロロメタン溶液(5L)に、27.8gの4-DMAP及び132.0gのヘキサン酸を加え、得られた混合物を溶解するまで撹拌した。216.8gのエチルカルボジイミド塩酸塩(EDC HCl)を加え、混合物を25℃で24時間撹拌し続けた。3.3LのHSO 2Nを滴加することによって反応混合物を後処理し、相分離後、水相を除去した。有機残留溶液を水で洗浄し(3.3L×3)、次いで濃縮乾固して、ジヘキサノイル生成物を得た。
【0093】
SOの添加前に、クロロ付加物の形成を低減するために予備的な水洗工程を実施したことを除いて上記の方法を使用して、12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン-5,20-アセトニドの更なるバッチを調製した。
【0094】
実施例6-12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン(化合物2)の調製
実施例5の生成物のアセトニトリル溶液(3.1L)に、HClO70%を含有する酸性水溶液(300mLの水+12.4gのHClO70%)を加え、得られた混合物を25℃で47時間撹拌し、薄層クロマトグラフィー(溶離液MeCN/HO 85:15v/v、シリカゲル、60 RP18F 254S)によって反応の完了をモニターした。5Lのジクロロメタン及び900mLの酢酸ナトリウム10%水溶液を加えることによって反応物を後処理した。水相を排出し、有機溶液を水で2回洗浄し(2L×2)、次いで濃縮乾固して、粗12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オンを得た。
【0095】
粗生成物を逆相RP18上のカラムクロマトグラフィー(溶離液としてアセトニトリル/水50:50+20ppm HPO)により精製した。多量の所望の化合物を含有する中心画分のみをプールして、
【化22】
であると考えられる塩酸付加物不純物の存在を低減した。
【0096】
不純物化合物をLC-HRMS(ナトリウム塩)により分析した。C324910Cl Na=651.2906。
【0097】
プールした画分を水で希釈し、ジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を濃縮乾固して、93.7g(10Kgの未乾燥種子から57%)の純粋な12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オンを得た。
【0098】
12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オンの最終的な濃縮乾固の前に、濃縮した12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オンに対して水洗工程を行って不純物の形成を防止することを除いて上記の方法を使用して、12,13-ジヘキサノイル-6,7-エポキシ-4,5,9,12,13,20-ヘキサヒドロキシ-1-チグリアエン-3-オン(化合物2)の更なるバッチを調製した。
【0099】
実施例7-結晶化試験
化合物2を生成するための合成経路における初期中間体、例えば、式(I)の化合物を、結晶化可能性について調べた。
【0100】
実施例4から得られた式(Ia)の精製化合物のアリコート(約10gの化合物を含有する0.83L)を結晶化試験に使用した。予備スクリーニングの結果を表2に示す。
【表4】
【0101】
メタノール及びアセトニトリル中での結晶化を更に調べた。
【0102】
実施例8-MeOH溶媒和物としての結晶性化合物(Ia)。
実施例4の生成物の試料(非晶質固体、HPLCで純度約80~85%)をメタノール中、室温で溶解した。完全な溶解が数秒で起こった。溶解直後に制御なしで結晶化が引き起こされた。得られた生成物は、約5~6%のMeOH含量を有する溶媒和物結晶形態であった。以下の表3に、実施した結晶化試験をまとめる。
【表5】
【0103】
式(Ia)の化合物の結晶性メタノール溶媒和物は、1.54056Å及び1.54439Åの銅波長λ及びλを使用して得られたX線粉末回折(X-RPD)パターンによって特徴付けられ、このパターンは結晶構造を示し、2θ度値として表される特有の反射を、2θ7.2、9.5、11.5、12.6、13.1、14.0、14.5、17.0、17.7、17.9、19.2、20.3、21.2、22.8、23.7、24.7、27.1、28.3、29.7、32.6において含んでいた。
【0104】
ATRモードで4000~500cm-1スペクトル範囲における結晶性メタノール溶媒和物のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルは、約3443.1、3374.1、3189.1、3002.6、2975.7、2944.4、2863.6、1703.3、1635.7、1461.9、1372.9、1290.7、1221.1、1077.1、1025.1、992.0、973.9、929.7、905.8、876.7、829.0、769.1cm-1において特徴的な吸収周波数を含んでいた。
【0105】
結晶性メタノール溶媒和物の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルは、約145.33℃で開始する吸熱ピーク、並びにそれぞれ約221.12℃及び234.22℃で開始する2つの他のより弱い吸熱ピークを特徴とする。
【0106】
結晶性メタノール溶媒和物は、5.5%の重量損失を示す熱重量プロファイル(TG)によって更に特徴付けられ、これは5~6%の残留MeOHの存在と一致する。
【0107】
実施例9-式(Ia)の無水結晶性化合物
実施例4の生成物とアセトニトリルとの混合物を、透明な溶液が得られるまで還流下で撹拌し、次いで、溶液を冷却させ、約68~70℃で冷却すると結晶化が自発的に起こった。以下の表に、実施した結晶化試験をまとめる。
【表6】
【0108】
アセトニトリルから結晶化すると、1:1 MeCN溶媒和物である固体が形成された。アセトニトリル溶媒和物を回収し、乾燥させて、式(I)の無水結晶性化合物の形態Aを得た。MeCN溶媒和物は、7.8重量%の乾燥減量(LoD)を有した。MeCN溶媒和物は、1.54056Å及び1.54439Åの銅波長λ及びλを使用して得られたX線粉末回折(X-RPD)パターンによって特徴付けられ、このパターンは結晶構造を示し、2θ度値として表される特有の反射を、2θ6.2、7.5、10.4、12.2、14.9、16.0、17.7、18.5、19.5、20.9、22.4、24.7、26.8、及び33.4±0.2度に含んでいた。
【0109】
式(Ia)の結晶性無水化合物の形態Aは、1.54056Å及び1.54439Åの銅波長λ及びλを使用して得られたX線粉末回折(X-RPD)パターンによって特徴付けられ、このパターンは結晶構造を示し、2θ度値として表される特有の反射を2θ6.2、7.6、10.5、12.5、15.2、16.2、16.7、18.3、19.9、21.5、23.3、25.2、及び27.8±0.2度に含んでいた。
【0110】
式(Ia)の無水結晶性化合物の形態Aは、電量滴定による約0.28%の含水量及び水素炎イオン化検出を伴うヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HS GC FID)による34ppmの残留有機溶媒測定によって更に特徴付けられた。
【0111】
式(Ia)の結晶性無水化合物の形態Aは、25℃及び60%の相対湿度で工業用包装(ポリエチレン栓付きの黒色プラスチックスクリューキャップによって閉じられたIII型アンバーガラスバイアル(10mL))中で少なくとも9ヶ月間安定であり、遊離結晶性粉末として80℃及び60%の湿度で24時間、安定であった。
【0112】
5℃で5日間保管すると、無水結晶性化合物の形態Aは、9.3重量%の乾燥減量(LoD)を有する化合物の二水和物形態に変換された。該二水和物形態は、25℃及び80%の相対湿度で5日間保管すると、無水結晶形態の形態Aに変換し戻ることができた。
【0113】
該二水和物結晶形態は、1.54056Å及び1.54439Åの銅波長λ及びλを使用して得られたX線粉末回折(X-RPD)パターンによって特徴付けられ、このパターンは結晶構造を示し、2θ度値として表される特有の反射を、2θ6.2、7.4、8.9、9.9、10.5、12.4、15.3、18.6、20.2、21.1、22.4、22.9、26.0、27.0、27.3、及び33.7±0.2度に含んでいた。
【0114】
25℃、80%の相対湿度で68時間、又は40℃、80%の相対湿度で7日間、形態Aの無水結晶形態を保管すると、新しい安定な無水結晶形態である形態Bが形成された。形態Bは、0.3重量%のLoDを有し、25℃、80%の相対湿度で少なくとも更に7日間、変化せずに安定であった。無水結晶形態Bは、1.54056Å及び1.54439Åの銅波長λ及びλを使用して得られたX線粉末回折(X-RPD)パターンによって特徴付けられ、このパターンは結晶構造を示し、2θ度値として表される特有の反射を、2θ4.9、8.5、9.8、11.4、14.6、16.5、17.5、19.5、21.4、27.7、28.7±0.2度に含んでいた。
【0115】
実施例10:結晶化による精製の有無の比較
化合物2を調製するための上記方法を用いて、式(Ia)の化合物を介した化合物2の調製を結晶化の有無で比較するために分析を行った。
【0116】
9.5kgの未乾燥種子のバッチから、上記方法に続いて、クロマトグラフィー後に、約165~176gの式Iaの化合物を得た。
【0117】
結晶化工程なしでは、他の試験のために約10gの式Iaの化合物を除去した後、式Iaの化合物の処理により92gの量の化合物2を得、HPLCによる分析により生成物が97.5%の純度を有することが示された。
【0118】
式(Ia)の化合物の結晶化有りでは、他の試験のために約4.7gの式Iaの化合物を除去した後、式Iaの化合物の処理により152gの量の化合物2を得、HPLCによる分析により98.7%の純度が示された。
【0119】
実施例11:式(Ia)の無水結晶性化合物の調製
式(Ia)の化合物のシリカゲル精製から選択された画分(160~190gの式Iaの化合物)を、40~45℃に設定した浴温及びおよそ100mbarの真空でアセトニトリル(12体積を使用)に溶媒交換した。次いで、式Iaの化合物の混合物を、溶解するまでアセトニトリル(10体積)中で加熱還流し(82℃)、次いで撹拌しながら20±5℃に冷却した。得られたスラリーを20±5℃で一晩保管し、次いで0±5℃に少なくとも1時間冷却した。次いで、混合物を真空下で焼結ガラスフィルターを通して濾過した。濾過ケーキをアセトニトリル(1体積)で洗浄した。固体をフィルター上にある間真空下に維持し、次いでスチールトレイに入れ、真空下で約50℃の乾燥機で乾燥させた。式Iaの化合物の収量は138~167gの範囲であった。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】