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特表2024-546307マンガンドープ銅触媒の存在下で第二級アミン及び/又は第三級アミンを作製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】マンガンドープ銅触媒の存在下で第二級アミン及び/又は第三級アミンを作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/26 20060101AFI20241212BHJP
   C07C 211/07 20060101ALI20241212BHJP
   C07C 211/08 20060101ALI20241212BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20241212BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
C07C209/26
C07C211/07
C07C211/08
B01J23/889 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537604
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 FR2022052424
(87)【国際公開番号】W WO2023118719
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114157
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュパン、クリストフ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169CB25
4G169CB77
4G169DA05
4G169EA02Y
4G169FC08
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC52
4H006BA05
4H006BA16
4H006BA55
4H006BC13
4H006BC32
4H006BE14
4H006BE20
4H039CA10
4H039CA71
4H039CD10
4H039CD40
4H039CG10
(57)【要約】
本発明は、アミノ化工程を含む、第二級アミン及び/又は第三級アミンを作製するための方法であって、前記アミノ化工程が、触媒の存在下で、第一級アルコール若しくは第二級アルコール及び/又はケトンとアンモニア又は第一級アミン若しくは第二級アミンとの気相反応によって実施され、前記触媒が、銅を含み、マンガンがドープされ、マンガンの量が、前記触媒の総重量に対して1重量%~10重量%である、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ化工程を含む、第二級アミン及び/又は第三級アミンを作製するための方法であって、
前記アミノ化工程が、触媒及び水素の存在下で、第一級アルコール若しくは第二級アルコール及び/又はケトンとアンモニア又は第一級アミン若しくは第二級アミンとの気相反応によって実施され、
前記触媒が、マンガンがドープされた銅を含み、及び
マンガンの量が、前記触媒の総重量に対して1重量%~10重量%である、
作製方法。
【請求項2】
前記触媒における銅の量が、前記触媒の総重量に対して20重量%~60重量%、より好ましくは35重量%~50重量%である、
請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
マンガンの量が、前記触媒の総重量に対して4重量%~10重量%、好ましくは4重量%~8重量%である、
請求項1又は請求項2に記載の作製方法。
【請求項4】
前記触媒が、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、二酸化チタン、ジルコニア、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される担体、好ましくはアルミナ及び/又はシリカを含む、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項5】
形成される前記アミンが、以下の一般式(A)のアミンであり:
【化1】

式中:
は、所望により置換される、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキルラジカル、分枝鎖状アルキルラジカル又は環式アルキルラジカルを表し;
は、水素原子及び所望により置換される、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキルラジカル、分枝鎖状アルキルラジカル又は環式アルキルラジカルから選択され;
或いは
及びRは、一緒に及びそれらを担持する窒素原子と共に、所望により置換され、酸素及び窒素から選択される1又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、飽和の又は部分的に若しくは全体的に不飽和の環式ラジカルを形成し;前記環式部分は、3~9員環、好ましくは5員環又は6員環を含んでもよく;
は、所望により置換される、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状、分枝鎖状又は環式の芳香族炭化水素鎖又は非芳香族炭化水素鎖を表し;
は、水素原子及び所望により置換される、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状、分枝鎖状又は環式の芳香族炭化水素鎖又は非芳香族炭化水素鎖から選択され;
或いは
及びRは、一緒に及びそれらを担持する炭素原子と共に、所望により置換され、酸素及び窒素から選択される1又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、飽和の又は部分的に不飽和の環式ラジカルを形成し;前記環式部分は、3~9員環、好ましくは5員環又は6員環を含む、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項6】
形成される前記アミンが、ジイソプロピルアミン(DIPA)、ジ-n-プロピルアミン(DPA)、N-エチルメチルアミン(EMA)、N-イソプロピルメチルアミン、N-エチルプロピルアミン、N-エチルイソプロピルアミン、N-エチルブチルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-エチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン(DMEA)、N,N-ジメチルイソプロピルアミン(DMIPA)、N,N-ジメチルプロピルアミン(DMPA)、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン(DEMA)、トリエチルアミン(TEA)及びジ-sec-ブチルアミン(DB2A)からなる群から選択される、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項7】
形成される前記アミンが、DIPA、DMEA、DMIPA及びEMA、より好ましくはDIPA及びEMAからなる群から選択される、
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項8】
前記触媒が、好ましくは水素(H)の流れにおいて、150℃~400℃の温度で、還元によって事前に活性化される、
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項9】
以下の工程:
i)請求項1~8のいずれか一項に定義される通りのアミノ化工程であって、第二級アミン及び/又は第三級アミン及び水を含む逸脱流れGを生成する前記工程;
ii)前記流れGを分離して、
水を含む流れ、及び
前記第二級アミン及び/又は前記第三級アミンを含む流れの少なくとも1つを提供する工程;
iii)所望により、第二級アミン及び第三級アミンの両方を含む前記流れを分離して、
前記第二級アミンを含む流れ;及び
前記第三級アミンを含む流れを提供する工程;並びに
iv)所望により、前記第三級アミンを含む前記流れを工程i)に再利用すること、を含む、
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項10】
以下の工程:
a)請求項1~8のいずれか一項に定義される通りのアミノ化工程であって、第二級アミン及び/又は第三級アミン、水及び未反応水素を含む気体状態において逸脱流れGを生成する前記工程;
b)前記流れGを集め、分離して、
第二級アミン及び/又は第三級アミン及び水を含む液体流れG’、及び
気体水素流れG”を提供すること;
c)所望により、前記流れG”を工程a)に再利用すること;
d)前記流れG’を分離して、
水を含む流れK、及び
前記第二級アミン及び/又は前記第三級アミンを含む流れLを提供すること;
e)所望により、前記流れLが第二級アミン及び第三級アミンの両方を含む場合、前記流れLを分離して、
前記第二級アミンを含む流れM;及び
前記第三級アミンを含む流れNを提供すること;並びに
f)所望により、前記流れNを工程a)に再利用すること、を含む、
請求項9に記載の作製方法。
【請求項11】
前記反応物がアンモニアである場合、前記流れGが副生成物として第一級アミンも含み、前記第一級アミンが続いて流れG’及び流れLに存在し、前記分離工程e)終了において流れPで分離され、所望により前記流れPが工程a)に再利用されてもよい、
請求項10に記載の作製方法。
【請求項12】
第二級アミン及び/又は第三級アミンを作製するための、マンガンがドープされた銅を含む触媒の使用であって、前記マンガンが、前記触媒の総重量に対して1重量%~10重量%の量で存在する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンガンがドープされた、触媒活性金属としての銅を含む触媒の存在下で、第一級アルコール若しくは第二級アルコール及び/又はケトンとアンモニア又は第一級アミン若しくは第二級アミンとの気相反応によって、第二級アミン及び/又は第三級アミンを合成するための方法に関する。
【0002】
本発明は、第二級アミン及び/又は第三級アミンの合成のためのそのような触媒(catalyst、cata)の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
アミン及び、とりわけ、アルキルアミンは、産業用途が非常に多様な有機化合物である。これらの化合物は、特に、中和剤、腐食抑制剤、重合触媒及び/又は架橋触媒として、並びに、とりわけ、製薬、農芸化学、エレクトロニクス及び洗浄作用における合成中間体として使用される。
【0004】
そのような化合物の可能な例としては:
- 医薬有効成分又は農芸化学有効成分を合成する場合に掃酸剤(acid scavenger)として使用されるN-エチルジイソプロピルアミン(ヒューニッヒ塩基)に対する主要な合成前駆体であるジイソプロピルアミン(DIPA)(第二級アミン)(DIPAは、半導体デバイスの作製における酸化ケイ素膜又は窒化ケイ素膜の制御された成膜のための選択の前駆体であるジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)及び他の揮発性アミノシラン誘導体のためのアクセスポイントでもある。);
- 例えばテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウムとして、神経系の変性疾患を処置することを目的とする活性医薬分子の製造、及び金属塩の合成に関与するN-エチルメチルアミン(EMA)、又は半導体の作製におけるCVD(化学気相成長法)若しくはALD(原子層堆積法)による成膜された金属膜の生成のための選択の揮発性前駆体であるジルコニウム化合物;並びに
- 「コールドボックス」法による鋳造鋳型の製造のためのポリウレタン樹脂のための重合触媒として使用される第三級アミンであるN,N-ジメチルエチルアミン(DMEA)及びN,N-ジメチルイソプロピルアミン(DMIPA)
が挙げられる。
【0005】
水素及び水素化触媒/脱水素触媒の存在下におけるアンモニア又は第一級アミン若しくは第二級アミンによるアルコール及び/又はケトンのアミノ化による第二級アミン及び/又は第三級アミンの作製は、広く知られている(Amines,Aliphatic,sections 3.1 and 3.2,Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2015,Wiley Online Library)。前記作製は、出発材料の性質及び/又は触媒の型に応じて液相又は気相において進行する。
【0006】
可能な一合成例としては、従来、アンモニアによるアセトン及び/又はイソプロパノールの触媒アミノ化によってモノイソプロピルアミン(MIPA)を製造するための方法における副生成物として得られるジイソプロピルアミン(DIPA)の合成例がある。
【0007】
アセトンからの前記合成は、以下の反応スキームに従って行われる。
【化1】
【0008】
イソプロパノールの場合、イソプロパノールをアセトンに事前にin situ脱水素化した後の反応は同様である。
【化2】
【0009】
この合成は通常、気相法又は液相法を介して連続的に行われ、主に又はほぼ独占的にMIPAが生成され、MIPAの主な用途は、世界中で依然としてグリホサート塩である。
【0010】
DIPAを選択的に取得するには、出発反応物としてMIPAとアセトンから直接DIPAを生成するか、又はMIPAを通常、次のスキームに従って、触媒又はゼオライトの固定床を通して高温で連続的に不均化させる。
【化3】
【0011】
したがって、DIPA及び一般的な第二級アミンの最も選択的な合成には、アセトン(より一般的にはアルデヒド又はケトン)又はイソプロパノール(より一般的にはアルコール)と第一級アミン(DIPAの場合はMIPA)のアミノ化を実行するか、又は後者の化合物の不均化を実行することが必要であることは明らかである。したがって、これら2つの技術では、主生成物として第一級アミンを事前に製造し、その後に第二級アミンに変換する必要がある。
【0012】
したがって、特に第二級アミンの合成のためにケトン及び/又はアルコールとアンモニアから出発して、第二級アミン及び/又は第三級アミンを主生成物として(副生成物としてではなく)合成する方法が必要である。
【0013】
実現するのが容易で、産業的に実行可能な、第二級アミン及び/又は第三級アミンを合成するための方法の必要性がある。
【0014】
そのうえ、ケトン(とりわけアセトン)が対応するアルコール(とりわけイソプロパノール)よりも安い場合、ケトンは好ましい出発材料である。しかし、アンモニア又は第一級アミン若しくは第二級アミンによるケトンの還元的アミノ化は、アルコールの還元的アミノ化よりも非常に発熱性の方法である。ケトンのアミノ化反応が固定触媒床によって連続的に行われる場合、この高レベルの生成熱によって、触媒の粒内の温度の実質的増加が生じ、それによって二次反応が生じることによって、選択率の減少が生じるか、或いは、触媒の単位体積当たりのケトンのより低い体積流量(LHSV)で働く必要性が生じ、結果的にアルコールから開始して行われる同じ方法に対して生産性が減少する。このより高い温度によって、触媒の経時変化にネガティブな影響を及ぼす可能性もあり、それゆえに触媒の寿命にネガティブな影響を及ぼす可能性もある。
【0015】
したがって、窒素性反応物の高温及び/又は実質的過剰によって、望ましくないアミン不純物が形成する可能性がある。とりわけ、形成された不純物としては、不要なアミンの形成を生じるアミノ交換又は不均化の二次反応に由来するものが挙げられる。
【0016】
例えば、及び網羅的にではなく、DIPAの場合、アセトンがアセトアルデヒドに分解することによって、以下のスキームに従って、特にモノエチルアミン(MEA)及びN-エチルイソプロピルアミン(EIPA)が形成される。
【化4】

及び/又は
【化5】
【0017】
さらに、アセトンの付随的に発生する自己縮合によってメチルイソブチルケトン(MIBK)の形成が生じ、前記メチルイソブチルケトン(MIBK)は、アンモニア及びモノイソプロピルアミンによる還元的アミノ化によって、それぞれ1,3-ジメチルブチルアミン(1,3-DMBA)及びN-(1,3-ジメチルブチル)イソプロピルアミン(DMBIPA)の二次形成をもたらす。
【0018】
同様に、ジメチルアミン(DMA)がDMEA、DMIPA又はDMPAなどのジメチルアルキルアミン型の第三級アミンを製造するために使用される場合、DMAは、以下の反応に従って、トリメチルアミン(TMA)及びモノメチルアミン(MMA)に部分的に不均化され得る。
【化6】
【0019】
MMAは、アルコール又はケトンと反応して、所望のアミンから分離することが困難な第二級アミンを形成する可能性もある。
【0020】
MMAがN-エチルメチルアミン(EMA)又はN-イソプロピルメチルアミンなどのアルキルメチルアミン型の第二級アミンを製造するために使用される場合、MMAは、以下の反応に従って、ジメチルアミン(DMA)及びアンモニアに部分的に不均化され得る。
【化7】
【0021】
エタノールから開始するEMAの製造において、副生成物のDMAは、次いで、エタノールと反応してDMEAを形成する可能性があり、前記DMEAの沸点はEMAの沸点に非常に近く(32.6℃に対して36.5℃)、このことにより、とりわけエレクトロニクス用途のための必要な仕様を満たすためにEMAを精製することが非常に複雑になる。アンモニアは、エタノールと反応して、モノエチルアミン、ジエチルアミン及び/又はトリエチルアミンの副生成物を生じる可能性もある。
【0022】
ゆえに、現行のアミノ化反応が多くのアミン不純物の形成を生じることは、明らかである。これらの不純物によって、良好な(高いことは言うまでもない)純度の第二級アミン及び/又は第三級アミンを得ることは特に困難となる。
【0023】
ゆえに、所望の第二級アミン又は第三級アミンに対して選択的で、特にアミン不純物の形成を限定するか又は防止する、第二級アミン及び/又は第三級アミンを合成するための方法の必要性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の一目的は、簡便で、産業的に実行可能な、第二級アミン及び/又は第三級アミンを合成するための方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、実現するのが容易な、第二級アミン及び/又は第三級アミンを合成するための気相法を提供することである。
【0026】
本発明の更なる目的は、第二級アミン又は第三級アミン、好ましくは第二級アミンを合成するための選択的方法を提供することである。
【0027】
本発明の一目的は、第二級アミン又は第三級アミンに対する良好な又は更に高い選択率の獲得を可能にするアミノ化触媒を提供することである。
【0028】
本発明の一目的は、アミンのアミノ交換反応又は不均化反応を限定するか又は更に防止し、それによってアミン不純物の形成を限定するか又は更に防止するアミノ化触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、上記の目的の全て又は一部を満たす。
【0030】
本発明者は、第二級アミン及び/又は第三級アミンに対する良好な又は更に高い又は向上した転化率及び/又は選択率の獲得を可能にする触媒を使用してアミンを作製するための新しい方法を見出した。前記新しい触媒は、アミン不純物、とりわけアミンのアミノ交換又は不均化によって形成されるものの形成を限定するか又は更に防止する。このように、触媒される反応は向上し、実現するのが容易である。本発明に従って形成される第二級アミン及び/又は第三級アミンは、より容易に精製され得る。
【0031】
とりわけ、本発明に係る触媒が使用され、副次的に生成された第一級アミン及び/又は第三級アミンがアミノ化工程に再利用される場合、高く選択的である、第二級アミンを合成するための方法も、本発明者は驚くべきことに見出した。このような方法は、特に、第二級アミンに対する90%超の選択率を獲得することが可能である。
【0032】
特に、本発明に係る方法は、アルコール及び/又はケトン及びアンモニアから直接開始した第二級アミンの選択的合成を可能にする。
【0033】
したがって、本発明は、アミノ化工程を含む、第二級アミン及び/又は第三級アミンを作製するための方法であって、前記アミノ化工程が、触媒及び水素の存在下で第一級アルコール若しくは第二級アルコール及び/又はケトンとアンモニア又は第一級アミン若しくは第二級アミンとの気相反応によって実施され、
前記触媒が、マンガンがドープ(又は促進)された銅を含み、及びマンガンの量が、前記触媒の総重量に対して1重量%~10重量%である、方法に関する。
【0034】
本発明はまた、第二級アミン及び/又は第三級アミンを作製するための、マンガンがドープされた銅を含む触媒の使用であって、前記マンガンが、前記触媒の総重量に対して1重量%~10重量%の量で存在する、使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
本発明によれば、「触媒」は、活性金属及びドーパント(特に、酸化などがなされた、いかなる形における銅及びマンガン)並びに、更に、担体及び任意の添加剤を含む触媒組成物を指す。下記の重量百分率は、任意の前活性化又は活性化の前の触媒に相当する。
【0036】
本発明に係る触媒において、銅は活性金属であり、マンガンはドーパントであると理解される。「ドーパント」(又は「促進剤」としても知られる)は、触媒の触媒活性を改変することが可能であり、特に向上させることが可能な化学物質又は化学物質の組成物を指す。例えば、「ドーパント」は、ドーパントなしの触媒に対して触媒された反応の転化率及び/又は選択率を向上させるための化学物質又は化学物質の組成物を指す。
【0037】
「窒素性反応物」は、本発明に係るものとしてのアミノ化反応における反応物として使用されるアンモニア及び/又は第一級アミン若しくは第二級アミンを指す。
【0038】
「選択率」は、以下の式に従って算出されるS、又は転化された反応物に対する生成されたアミン(A)に対する選択率である:
=100×(Zreactant/Zamine)×(形成された標的アミンのモル数/転化された反応物のモル数)
ここで、Zamineは、アミンの化学量論係数であり、Zreactantは、反応物の化学量論係数である。上記の算出のために使用される反応物は、好ましくは限定反応物質である。
【0039】
特に、本発明に係る方法は、50%以上、例えば、50%~90%、好ましくは70%~90%の第二級アミンに対する選択率の獲得を可能にする。
【0040】
特に、本発明に係る方法は、90%~100%、好ましくは90%~99%の第三級アミンに対する選択率の獲得を可能にする。
【0041】
「アミン不純物」は、とりわけ、アミノ交換若しくは不均化の付随的反応の後、又はケトンの自己縮合の後に得られる任意の不要な第一級アミン、第二級アミン又は第三級アミンを指す。特に、目的は、これらの不純物の形成を限定するか、又は更に防止することである。
【0042】
本発明に係る触媒
本発明に係る触媒は、マンガンがドープされた銅を含み、マンガンの量は、前記触媒の総重量に対して1重量%~10重量%である。前記触媒における銅の量は、前記触媒の総重量に対して、好ましくは60重量%以下である。特に、銅の量は、前記触媒の総重量に対して15重量%~60重量%である。銅の量は、前記触媒の総重量に対して、特に20重量%~60重量%、好ましくは35重量%~50重量%、より好ましくは40重量%~50重量%、例えば44重量%~48重量%である。前記銅は、1又は複数の酸化銅の形で、好ましくはCuOの形で存在してもよい。
【0043】
マンガンの量は、前記触媒の総重量に対して、好ましくは4重量%~10重量%、より好ましくは4重量%~8重量%である。前記マンガンは、1又は複数の酸化物の形で、好ましくは二酸化マンガン(MnO)又はMnの形で存在してもよい。
【0044】
前記触媒は、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、二酸化チタン、ジルコニア、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される担体、好ましくはアルミナ及び/又はシリカを含んでもよい。
【0045】
特に、前記触媒は:
- 前記触媒の総重量に対して20重量%~60重量%、好ましくは35%~50%、例えば40重量%~50重量%の銅、
- 前記触媒の総重量に対して1重量%~10重量%、好ましくは4%~10%、例えば4重量%~8重量%のマンガン、及び
- アルミナを含む。
【0046】
前記触媒は、好ましくは、CuOの形の銅、並びにMnO及び/又はMnの形のマンガンを含む。前記銅及び前記マンガンは、前記触媒の活性化の前に、特に1又は複数の酸化物の形で存在する。前記触媒は、好ましくは、酸化された形の銅、酸化された形のマンガン、アルミナ又はシリカなどの担体及び任意の添加剤から実質的になるか、又は更になる。
【0047】
より詳しくは、前記触媒は:
- 前記触媒の総重量に対して25重量%~75重量%、好ましくは40重量%~65重量%の酸化銅(CuOとして表される)、及び
- 前記触媒の総重量に対して1重量%~20重量%、好ましくは5重量%~15重量%の酸化マンガン(MnOとして表される)を含む。
【0048】
前記触媒は、好ましくは、前記銅以外の活性金属(すなわち、元素の形であろうと、有機化合物又は無機化合物、例えば金属酸化物の形であろうと)を含まない。前記触媒は、好ましくは、前記マンガン以外のドーパント(すなわち、元素の形であろうと、有機化合物又は無機化合物、例えば金属酸化物の形であろうと)を含まない。特に、前記触媒は、クロム及び/又はニッケルを含まない。
【0049】
好ましくは、前記触媒は希土類金属を含まない。希土類金属とは、スカンジウム、イットリウム、及びランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ジスプロシウムなどのランタニドを意味する。より具体的には、前記触媒はセリウムを含まない。
【0050】
好ましくは、前記触媒は、周期表の8族、9族及び10族(以前は、VIII族)の元素を含まない。特に、前記触媒は、白金、パラジウム、ルテニウム及びロジウムを含まない。より詳しくは、前記触媒は、希土類金属も周期表の8族、9族及び10族の元素も含まない。
【0051】
別の実施形態によれば、他の金属化合物は、前記触媒に含まれてもよい。そのような化合物の可能な非限定的例としては、モリブデン、タングステン、クロム、バナジウム及びマグネシウムが挙げられる。それらは、酸化物の形、例えば、MoO、WO、Cr、V及びMgOの形であってもよい。
【0052】
前記触媒は、触媒の分野において慣例である、安定剤などの他の添加剤及び/又は黒鉛などの成形助剤を含んでもよい。これらの化合物は、概して、前記触媒の総重量に対して1重量%~15重量%の量で含まれる。
【0053】
前記触媒は、好ましくは、直径が3~6mm、長さが3~6mmのペレットの形で使用される。
【0054】
挙げることができる一例としては、Clariant(登録商標)のHySat(登録商標)200 tab 4.8×4.8という触媒がある。
【0055】
本発明に係る方法
本発明に係る方法によって、特に第二級アルキルアミン及び/又は第三級アルキルアミンの形成が可能になる。形成されるアミンは、好ましくは、以下の一般式(A)のものである。
【化8】
【0056】
は、(好ましくは、フェニルなどのアリールラジカル(aryl radical)によって)所望により置換される、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキルラジカル(alkyl radical)、分枝鎖状アルキルラジカル又は環式アルキルラジカルを表し;
は、水素原子及び(好ましくは、フェニルなどのアリールラジカルによって)所望により置換される、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキルラジカル、分枝鎖状アルキルラジカル又は環式アルキルラジカルから選択され;
或いは
及びRは、一緒に及びそれらを担持する窒素原子と共に、所望により置換され、酸素及び窒素から選択される1又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、飽和の又は部分的に若しくは全体的に不飽和の環式ラジカル(cyclic radical)を形成し;前記環式部分は、多くの3~9員環、好ましくは5員環又は6員環を含んでもよく;
は、(好ましくは、フェニルなどのアリールラジカルによって)所望により置換される、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状、分枝鎖状又は環式の芳香族炭化水素鎖又は非芳香族炭化水素鎖を表し;
は、水素原子及び(好ましくは、フェニルなどのアリールラジカルによって)所望により置換される、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状、分枝鎖状又は環式の芳香族炭化水素鎖又は非芳香族炭化水素鎖から選択され;
或いは
及びRは、一緒に及びそれらを担持する炭素原子と共に、所望により置換され、酸素及び窒素から選択される1又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、飽和の又は部分的に不飽和の環式ラジカルを形成し;前記環式部分は、多くの3~9員環、好ましくは5員環又は6員環を含む。
【0057】
及び/又はRは、上記で定義された通りアルキルラジカルによって表される場合、6~10個の炭素原子を含む1又は複数のアリール基、好ましくはフェニルによって置換されてもよい。
【0058】
及び/又はRは、上記で定義された通りアルキルラジカルによって表される場合、6~10個の炭素原子を含む1又は複数のアリール基、好ましくはフェニルによって置換されてもよい。
【0059】
及びRは、一緒に及びそれらを担持する炭素と共に飽和の又は部分的に不飽和の環式ラジカルを形成する場合、1~10個の炭素原子を含む1又は複数のアルキル基によって、好ましくは1又は複数のメチル基によって置換されてもよい。
【0060】
特に、Rは、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキルラジカル又は分枝鎖状アルキル基を表し;
は、水素原子、及び1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキルラジカル又は分枝鎖状アルキルラジカルから選択され;
は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキルラジカル又は分枝鎖状アルキルラジカルを表し;並びに
は、水素原子、及び1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む直鎖状アルキルラジカル又は分枝鎖状アルキルラジカルから選択される。
【0061】
及び/又はRは、好ましくは水素原子である。
【0062】
より詳しくは、形成されるアミンは:
ジイソプロピルアミン(DIPA)、ジ-n-プロピルアミン(DPA)、N-エチルメチルアミン(EMA)、N-イソプロピルメチルアミン、N-エチルプロピルアミン、N-エチルイソプロピルアミン、N-エチルブチルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-エチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン(DMEA)、N,N-ジメチルイソプロピルアミン(DMIPA)、N,N-ジメチルプロピルアミン(DMPA)、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン(DEMA)、トリエチルアミン(TEA)及びジ-sec-ブチルアミン(DB2A)からなる群から選択される。
【0063】
さらにより詳しくは、形成されるアミンは、DIPA、DMEA、DMIPA及びEMA、より好ましくはDIPA及びEMAからなる群から選択される。
【0064】
前記アミノ化工程は、とりわけ、以下の反応の1又は複数に対応してもよい:
- 第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミン、好ましくは主に第二級アミンを形成するためのアンモニアと第一級アルコール若しくは第二級アルコール及び/又はケトンとの反応;
- 第二級アミン及び第三級アミン、好ましくは主に第二級アミンを形成するための第一級アミンと第一級アルコール若しくは第二級アルコール及び/又はケトンとの反応;又は
- 第三級アミンを形成するための第二級アミンと第一級アルコール若しくは第二級アルコール及び/又はケトンとの反応。
【0065】
特に、本発明の文脈において、第二級アミン及び/又は第三級アミン、好ましくは第二級アミンを形成することが所望される。
【0066】
特に、式(I)のアルコール及び/又は式(II)のケトンとアンモニア又は式(III)のアミンとの使用が行われ:
【化9】



ここで、R、R、R及びRは、上記で定義される通りであり、
は、式(II)のケトンのため水素原子以外である。
【0067】
式(I)のアルコールとしては、以下のもの:エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、メチルイソブチルカルビノール、n-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、n-オクタノール、ジイソブチルカルビノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2-フェニルエタノール及び3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールが挙げられる。
【0068】
式(II)のケトンとしては、以下のもの:アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロン及び3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンが挙げられる。
【0069】
アミノ化工程の操作条件の下で、前記アルコールは、脱水を経てケトンを形成した後、水素及び窒素性反応物と反応することが理解される。
【0070】
アンモニアの他に、式(III)の好ましいアミン反応物は、以下のもの:メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、イソブチルアミン、2-ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルフォリン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン及び2-フェニルエチルアミンである。
【0071】
好ましくは本発明の方法に従ってこのように作製され得る第二級アミン又は第三級アミンの例としては:
- アセトン及び/又はイソプロパノール及びアンモニアから開始するジイソプロピルアミン(DIPA)、
- プロパノール及びアンモニアから開始するジ-n-プロピルアミン(DPA)、
- メチルエチルケトン及び/又は2-ブタノールとアンモニアとから開始するジ-sec-ブチルアミン、
- エタノール及びモノメチルアミン(MMA)から開始するN-エチルメチルアミン(EMA)、
- アセトン及び/又はイソプロパノール及びMMAから開始するN-イソプロピルメチルアミン、
- n-プロパノール及びモノエチルアミンから開始するか、或いはエタノール及びn-プロピルアミンから開始するN-エチルプロピルアミン、
- エタノール及びイソプロピルアミンから開始するか、或いはアセトン及び/又はイソプロパノール及びモノエチルアミンから開始するN-エチルイソプロピルアミン、
- n-ブタノール及びモノエチルアミンから開始するか、或いはエタノール及びn-ブチルアミンから開始するN-エチルブチルアミン、
- シクロヘキサノール及び/又はシクロヘキサノン及びMMAから開始するN-メチルシクロヘキシルアミン、
- シクロヘキサノール及び/又はシクロヘキサノン及びモノエチルアミンから開始するか、或いはエタノール及びシクロヘキシルアミンから開始するN-エチルシクロヘキシルアミン、
- ベンジルアルコール及びモノエチルアミンから開始するか、或いはエタノール及びベンジルアミンから開始するN-エチルベンジルアミン、
- エタノール及びジメチルアミン(DMA)から開始するN,N-ジメチルエチルアミン(DMEA)、
- アセトン及び/又はイソプロパノール及びDMAから開始するN,N-ジメチルイソプロピルアミン(DMIPA)、
- n-プロパノール及びDMAから開始するN,N-ジメチルプロピルアミン(DMPA)、
- n-ブタノール及びDMAから開始するN,N-ジメチルブチルアミン、
- エタノール及びDMAから開始するN,N-ジエチルメチルアミン(DEMA)がある。
【0072】
本発明に係るアミノ化工程によって、気相における、及び水素の存在下における、第二級アミン及び/又は第三級アミン(及び水)の形成が可能になる。前記方法は、バッチ式で、又は連続的に、好ましくは連続的に実施されてもよい。
【0073】
「気相(gas phase)」又は「気相(gaseous phase)」は、特に、前記アミノ化工程の温度条件及び圧力条件の下で前記反応物(アルコール及び/又はケトン及び窒素性反応物)が気体状態であることを意味する。反応器には、事前に(例えば、蒸気によって、又は任意の他の知られた手段によって加熱される)蒸発器を介した液体反応物の通過による気相が供給されてもよい。蒸発器温度は、用いられる圧力条件の下で前記反応物が液体から気体状態に移行することを確保するように設定される。次いで、形成された気体は、例えば、水素及び、適切な場合には、アンモニアの流れによって、前記反応器の入口の方へ運ばれてもよい。
【0074】
触媒反応は、好ましくは過剰の、水素圧(H)の下で操作されてもよい。アルコール及び/又はケトンに対する水素のモル比は、選好的には0.5~20mol/mol、好ましくは1~15mol/mol、より選好的には2~10mol/molである。
【0075】
アミノ化反応は、好ましくは、本発明に係るような触媒の1又は複数の固定床を通して行われる。1又は複数の固定床は、本発明に係る触媒の1又は複数の層を含んでもよい。多層の触媒を含む触媒床が使用される場合、(例えば、Cu及び/又はMnの)金属の濃度は、反応器の入口から出口へ増加してもよい、層数は、前記触媒床の長さに応じて変化してもよい。
【0076】
アミノ化反応は、1(又は2つ以上)の管状反応器又は多管状反応器の中で、連続して又は並行して実施されてもよい。
【0077】
アミノ化反応は、30bar以下、好ましくは1~20bar、より好ましくは2~10barの反応器において、絶対圧力の下で実施されてもよい。
【0078】
アミノ化反応は、120℃~220℃、好ましくは140℃~200℃、より好ましくは150℃~190℃の温度で実施されてもよい。
【0079】
反応器の温度は、熱伝達流体によって維持されてもよく、蒸気で、電気的に、又は任意の他の手段で加熱されてもよく、水及び/又はエチレングリコール又は任意の他の知られている冷却流体を有する冷却回路によって冷却されてもよい。熱伝達流体は、特に溶融硝酸塩(KNO、NaNO、LiNO)の混合物を含んでもよい。
【0080】
アミノ化反応は、窒素性反応物に対するアルコール及び/又はケトンのモル比が0.1~20mol/mol、好ましくは0.5~10mol/mol、及びより選好的には1~5mol/molで行われてもよい。
【0081】
触媒床の単位体積当たりのアルコール及び/又はケトンの質量流量(MVH)は、0.05~1.0kg/L.h、好ましくは0.10~0.80kg/L.h、及びより選好的には0.15~0.60kg/L.hであってもよい。
【0082】
本発明に係る作製方法は、以下の工程:
i)上記で定義される通りのアミノ化工程であって、第二級アミン及び/又は第三級アミン及び水を含む逸脱流れGを生成する前記工程;
ii)前記流れGを分離して、
- 水を含む流れ、及び
- 前記第二級アミン及び/又は前記第三級アミンを含む流れ
の少なくとも1つを提供する工程;
iii)所望により、第二級アミン及び第三級アミンの両方を含む前記流れを分離して、
- 前記第二級アミンを含む流れ;及び
- 前記第三級アミンを含む流れ
を提供する工程;並びに
iv)所望により、前記第三級アミンを含む前記流れを工程i)に再利用すること、
を含んでもよい。
次いで、前記第二級アミン及び/又は前記第三級アミンは、回収されてもよく、所望により精製されてもよい。
【0083】
より詳しくは、前記方法は、以下の工程:
a)上記で定義される通りのアミノ化工程であって、第二級アミン及び/又は第三級アミン、水及び未反応水素を含む気体状態において逸脱流れGを生成する前記工程;
b)前記流れGを集め、分離して、
- 第二級アミン及び/又は第三級アミン及び水を含む液体流れG’、及び
- 気体水素流れG”
を提供すること;
c)所望により、前記流れG”を工程a)に再利用すること;
d)前記流れG’を分離して、
- 水を含む流れK、及び
- 前記第二級アミン及び/又は前記第三級アミンを含む流れL
を提供すること;
e)所望により、前記流れLが第二級アミン及び第三級アミンの両方を含む場合、前記流れLを分離して、
- 前記第二級アミンを含む流れM;及び
- 前記第三級アミンを含む流れN
を提供すること;並びに
f)所望により、前記流れNを工程a)に再利用すること
を含んでもよい。
工程b)及び工程d)は、同時であってもよく、又は同時でなくてもよい。
【0084】
前記気体流れG”は、微量の第二級アミン及び/又は第三級アミンを含んでもよく、並びに微量の第一級アミンを含む可能性があってもよい。
【0085】
アンモニアが反応物として使用され、完全に反応しない場合、前記アンモニアは、流れG”において見出されてもよく、更に、G’において微量の形で見出されてもよい。その場合、流れG’及び/又は流れG”の補助的分離を行い、前記アンモニアを回収し、前記アンモニアを工程a)に再利用することは可能である。
【0086】
さらに、アンモニアが反応物として使用される場合、対応する第一級アミンは、副生成物として形成されてもよい。この第一級アミンは、流れG、流れG’及び流れLにおいて連続的に見出される(及び微量の形でG”において見出される可能性がある)。前記第一級アミンは、前記分離工程e)の終了において前記流れLから分離されて、前記第一級アミンを含む流れPを提供してもよい。前記流れPは、前記アミノ化工程a)に再利用されてもよい。
【0087】
分離工程b)、d)及びe)は、任意の知られた手段によって(例えば、蒸留又は沈降によって)、好ましくは蒸留によって行われてもよい。
【0088】
生成された前記第二級アミン及び/又は前記第三級アミンは、必要に応じて続いて精製されてもよい。連続的に操作する一連の蒸留カラムによって、特に分別蒸留が使用される。
【0089】
より詳しくは、前記方法は、以下の工程:
a)上記で定義される通りのアミノ化工程であって、第二級アミン及び/又は第三級アミン、水及び場合によっては未反応反応物、及びアルコールに対するケトンの水素添加反応から生じるアルコールを含む気体状態において逸脱流れGを生成する前記工程;
b)前記流れGを集め、分離して、
- 第二級アミン及び/又は第三級アミン、水及び場合によっては未反応反応物、及びアルコールに対するケトンの水素添加反応から生じるアルコールを含む液体流れG’、及び
- 微量の第二級アミン及び/又は第三級アミン、場合によっては微量の未反応反応物、及び、更に、アルコールに対するケトンの水素添加反応から生じる微量のアルコールを含む気体水素流れG”
を提供すること;
c)所望により、前記流れG”を工程a)に再利用すること;
d)前記流れG’を分離して、
- 水及び場合によっては未反応反応物、及びアルコールに対するケトンの水素添加反応から生じるアルコールを含む流れK、及び
- 前記第二級アミン及び/又は前記第三級アミンを含む流れL
を提供すること;
e)所望により、前記流れLが第二級アミン及び第三級アミンの両方を含む場合、前記流れLを分離して、
- 前記第二級アミンを含む流れM;及び
- 前記第三級アミンを含む流れN
を提供すること;並びに
f)所望により、前記流れNを工程a)に再利用すること
を含んでもよい。
【0090】
前記流れKは、水を含む流れOと前記アルコールを含む流れTとを提供するために分離されてもよい。このように回収された前記アルコールは、工程a)に再利用されてもよい。
【0091】
前記触媒の所望による活性化
前記触媒は、工程a)の前に活性化されてもよい。理由は、前記触媒が、概して、酸化されたか又は前還元された形(Cu及びMnなどの金属が完全に又は部分的に酸化物の形であることを意味する)で前記反応器に装入されるからである。この場合、前記触媒は、好ましくは事前に活性化される。前記活性化は、好ましくは前記アミノ化工程が実施される前記反応器において、還元によって行われる(in situにおける活性化)。前記触媒は、当業者によく知られている従来の方法によって活性化される。それは、対応する酸化された形の還元による水素添加又は脱水素化に対して活性である金属種を産出する。したがって、銅は、以下の反応:CuO+H→Cu+HOを経て、CuII状態(CuOにおける)からCu状態に移行する。
【0092】
ゆえに、前記触媒は、150℃~400℃、例えば200℃~400℃、好ましくは250℃~350℃の温度で水素(H)の流れにおいて活性化されてもよい。
【0093】
本発明に係る使用
本発明は、上記で定義される通りの第二級アミン及び/又は第三級アミンを作製する方法のための、及び特に上記で定義される通りのアミノ化工程のための、上記で定義される通りの触媒の使用にも関する。
【実施例
【0094】
略語及び定義:
ACE:アセトン
ISO:イソプロパノール
EtOH:エタノール
MIPA:モノイソプロピルアミン
DIPA:ジイソプロピルアミン
EMA:N-エチルメチルアミン
DEMA:N,N-ジエチルメチルアミン
DMEA:N,N-ジメチルエチルアミン
DMIPA:N,N-ジメチルイソプロピルアミン
RM:モル比
MVH:触媒の単位体積当たりの供給物の1時間当たりの質量流量(単位:kg/L.h)
=転化される反応物に対する生成されたアミン(A)についての選択率
前記選択率は、反応域を出る粗混合物の質量組成に基づいて算出され、前記組成は、ガスクロマトグラフィ分析によって決定される。
DCDMA=用いられるDMAの転化率の程度=DMAの転化率
NL:圧力(1.013bar)及び温度(273K)の標準条件の下における1Lの体積に相当する標準リットル。
【0095】
実施例1:ジイソプロピルアミン(DIPA)の合成-第二級アミン
体積が7Lで、長さが2.8mの触媒床を含む垂直管状反応器において、試験を行う。電気的に加熱され、冷却ピンを通した水の循環によって冷却される溶融硝酸塩(KNO、NaNO、LiNO)の浴に前記反応器を浸漬する。前記触媒床の全体を横断するシース内に挿入され、摺動することが可能な温度プローブによって、反応温度を測定することができる。
【0096】
ニッケル触媒(比較):
活性化前の重量組成が以下の通りである円柱状ペレット(4.8×4.8mm)の形におけるニッケルに基づいた触媒を含む三層触媒床。
- 底層(反応器入口)=0.33L:
Al上における5.3%Ni(Ni及びNiOの形における)及び2.5~5%の黒鉛、
- 中間層=0.33L:
Al上における20%Ni(Ni及びNiOの形における)及び2.5~5%の黒鉛、
- 上層(反応器出口)=0.33L:
Al上における43%Ni(Ni及びNiOの形における)及び10%の黒鉛。
【0097】
本発明の)銅触媒C1:
単層触媒床は、アルミナ担体(Al)上におけるマンガンドープ銅系触媒の円柱状ペレット(4.8×4.8mm)を含み、前記銅及び前記マンガンは、活性化前において酸化された形である。
【0098】
活性化前において、重量による前記触媒の銅濃度は46%(CuOとして表される57.6%に相当する)であり、重量によるマンガン濃度は6%(MnOとして表される9.5%に相当する)である。
【0099】
前記ニッケル触媒及び触媒C1の活性化:
大気圧で240℃に予熱された管状反応器に、それぞれHが50NL/L.h及びNが500NL/L.hである触媒床の単位体積当たりの体積流量(HSV)で水素及び窒素の流れを装入する。マルチポイント温度プローブによってモニタされる最大熱生成域が触媒床の全体を通過してすぐに(約8時間後)、窒素の導入を停止し、反応器の温度を、銅触媒の場合は280℃に、ニッケル触媒の場合は350℃に増加させながら、100NL/L.hのHのHSVで水素の注入を12時間継続する。
【0100】
アミノ化工程:
次いで、反応器に、前もって蒸気交換器を通して蒸発させ、予熱した新鮮なアセトン、再利用されたイソプロパノール、アンモニア及び水素の混合物を底部から上部に供給する。反応器の圧力を4bar絶対圧で維持し、温度を150℃で維持する。
【0101】
以下の表は、触媒床の性質、再利用されたイソプロパノールの比率、NH及びHのMVH及びRMに従って得られた結果を示す。
【表1】

【0102】
触媒C1は、ニッケル触媒よりもジイソプロピルアミンに対する選択率がはるかに高く、蒸留によってDIPAから分離することが難しいEIPAの二次生成も発生しない。MIPAを再利用することなく、DIPAに対する90%近い選択率を直接得ることができる。
【0103】
実施例2:ジメチルイソプロピルアミン(DMIPA)の合成-第三級アミン
体積が1Lで、長さが80cmの、触媒C1又は触媒C2を含む触媒床を含む、熱的に調節された垂直管状反応器において、これらの試験を行った。
【0104】
(本発明の)銅触媒C1:実施例1に記載された通り
銅触媒C2(比較):
活性化前の重量組成が以下の通りである円柱状ペレット(6×5mm)で前記触媒床を作製する:シリカ(SiO)上における76%CuO、3%MgO、1.5%Cr
【0105】
アミノ化工程:
250~350℃のHでの還元による触媒の事前の活性化の後、反応器に、前もって、電気的に加熱された交換器を通して蒸発させ、予熱した新鮮なアセトン並びに/又は新鮮な及び/若しくは再利用されたイソプロパノール、DMA並びに水素の混合物を底部から上部に供給する。8barの圧力下で、185℃の温度で、前記DMAに対して大きくモル過剰のアセトン及び/又はイソプロパノールで、合成を操作する。
【0106】
以下の表は、各々の場合においてDMAの転化率が99%超であることを踏まえて、触媒床の性質並びにACE+ISO及びDMAのそれぞれのモル流量に従って得られた結果を示す。
【表2】

【0107】
触媒C2による、DMAに対するDMIPAについての選択率は、触媒C1によって得られるものよりも8~9%低い。これは、TMA及びMMAへの前記DMAのより大きな不均化のためである可能性があり、続いて、前記MMAはアセトンと反応して、メチルイソプロピルアミン(Me-IPA)及びメチルジイソプロピルアミン(Me-DIPA)を形成する。
【0108】
実施例3:DEMAを再利用する場合及び再利用しない場合における、エタノール及びMMAからのエチルメチルアミン(EMA-第二級アミン)及び/又はジエチルメチルアミン(DEMA-第三級アミン)の合成
前もって還元された触媒C1によって実施例2の装置と同じ装置において、これらの試験を実施した。
【0109】
水素の存在下で、8barの圧力下で、175℃の温度で、DEMAの再利用によって適用可能な場合、前記MMAに対してモル過剰のエタノールで前記合成を操作する。
【0110】
以下の表は、EtOH/MMAモル比及びDEMAの所望による再利用に従って得られた結果を示す。
【表3】

【0111】
512時間及び760時間の操作の結果は、蒸留による反応の終了において回収され、反応器に再導入されたDEMAの再利用によって実施された試験に相当する。
【0112】
MMAに対する第二級アミン(EMA)についての選択率は、再利用された第三級アミン(DEMA)の流量に応じて90%を超える可能性があることは明らかである。
【0113】
実施例4:エタノール及びMEAからの第二級アミンエチルプロピルアミン(EPA)の合成
前もって還元された触媒C1によって実施例2の装置と同じ装置において、これらの試験を実施した。
【0114】
170℃の温度で、H(RM H/EtOH=4)の存在下で、4barの圧力の下で、6mol/時間のエタノール及び2mol/時間のモノエチルアミン(MEA)の連続供給物を供給する。反応器出口におけるMEAの転化率は81%であり、EPAは、転化されたMEAに対して92%の選択率で得られる。
【0115】
実施例5:n-PA(n-プロピルアミン)及びTPA(トリプロピルアミン)の再利用によるn-プロパノール及びアンモニアからの第二級アミン ジ-n-プロピルアミン(DPA)の合成
前もって還元された触媒C1によって実施例2の装置と同じ装置において、これらの試験を実施した。
【0116】
165℃の温度で、H(RM H/PrOH=4)の存在下で、4barの圧力下における、8mol/時間のn-プロパノール(MVH=0.48kg/L.h)及び24mol/時間のアンモニア(RM PrOH/NH=0.33)の連続供給物によって、並びに196g/時間のn-PA及び90g/時間のTPAの再利用によって、79.0%のn-プロパノールの転化率に対して92.5%の選択率でDPAを得る。
【0117】
実施例6:n-プロパノール及びDMAからの第三級アミン ジメチルプロピルアミン(DMPA)の合成
8barの絶対圧力下で、185℃又は190℃の反応温度Tで、前もって還元された触媒C1によって実施例2の装置と同じ装置において、これらの試験を実施した。
【0118】
以下の表は、触媒床の性質及び用いられる反応条件に従って得られた結果を示す。
【表4】

【0119】
触媒C1によって、99%超のDMAの転化率の程度(DC)で、アミン不純物の非常に低いレベルで、98%超のDMPAに対する非常に高い選択率が得られる。
【0120】
実施例7:エタノール及びDMAからの第三級アミン ジメチルエチルアミン(DMEA)の合成-合成の交互
実施例1の装置と同じであるが、体積が3.2Lで、長さが2.8mである触媒C1の触媒床を有する装置において、以下の反応条件の下で、これらの試験を実施した。
- 4.3%の水を含むRENグレードのエタノールの平均モル流量:0.435kg/Lcatahのエタノールの平均MVHに相当する28.8mol/時間、
- DMAの平均モル流量:0.135kg/LcatahのDMAの平均MVH、及び3のEtOH/DMA平均モル比に相当する6.6mol/時間、
- 平均モル比H/EtOH=8、
- 8barの絶対圧力下で行われる反応。
【0121】
異なる生成の行動後の前記触媒の安定性を評価するため、触媒床は、DMEAの生成とDMIPAの生成に対して交互に操作される。
【0122】
以下の表は、DMAに対する対応する選択率を示し、ちょうどDMEAの生成の行動についての選択率は、以下で算出される。
【表5】

【0123】
これらの結果は、アセトンから開始するDMIPAのための中間体操作行動(更により発熱性の反応)にもかかわらず、経時的な触媒性能の安定性を示している。ゆえに、この触媒は、異なる種類のアミンが連続的行動によって製造され得る多目的生成ユニットで有利に用いられ得る。
【0124】
必要に応じて、前記触媒は、酸化後に水素による新たな還元を行う工程によって性能を失うことなく容易に再生され得ることも明らかである。
【国際調査報告】