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特表2024-546311電気油圧トランスミッション用の改善された起動または係合解除方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電気油圧トランスミッション用の改善された起動または係合解除方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/4035 20100101AFI20241212BHJP
【FI】
F16H61/4035
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537991
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 FR2022052471
(87)【国際公開番号】W WO2023118754
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114253
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502036262
【氏名又は名称】ポクラン イドロリク アンドゥストリ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】タキシル,ロリス
【テーマコード(参考)】
3J053
【Fターム(参考)】
3J053AA01
3J053AB01
3J053AB32
3J053AB46
3J053DA06
3J053FA02
(57)【要約】
車両の変位コンポーネントのための推進システムの起動のためのプロセスであって、前記推進システムは、油圧ポンプ(30)と、閉ループ油圧回路を介して前記油圧ポンプ(30)によって供給される油圧モータ(40)と、電気モータ(10)とを備え、
推進システムが停止状態にある構成(電気モータ、油圧ポンプおよび供給ポンプ(35)が停止状態にあり、前記油圧モータが係合解除されている)を前提として、
前記起動のためのプロセスが、以下のステップ:前記供給ポンプを起動するステップ、前記電気モータを起動するステップ、前記油圧ポンプの回転を設定するステップ、前記油圧モータの設定点に対応する流量を供給するための前記油圧ポンプの前記変位および/または前記電気モータの前記回転速度を調整するステップ、前記油圧モータを起動するステップ、を含む、プロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両変位コンポーネント用の二次推進システムを起動するためのプロセスであって、前記車両が、一次推進システムを備え、当該推進システムが、
吐出口と吸入口とを有する油圧ポンプ(30)、
吐出口と吸入口とを有し、前記変位コンポーネントを回転駆動するように適合され、前記変位コンポーネントから選択的に係合または係合解除され得る油圧モータ(40)であって、前記油圧モータ(40)が、供給ポンプを含む閉ループ油圧回路を介して前記油圧ポンプ(30)から供給され、前記油圧回路が、
前記油圧ポンプ(30)に対して前記油圧モータ(40)を選択的に接続するかあるいは前記油圧ポンプ(30)に対して前記油圧モータ(40)を分離し、前記油圧ポンプ(30)の前記吐出口をその前記吸入口に接続し、かつ前記油圧モータ(40)の前記吐出口をその吸入口に接続するように適合された係合バルブ(80)、
を含む、油圧モータ(40)、
前記油圧ポンプを駆動するように適合された電気モータ(10)、
前記電気モータ(10)に給電するように適合された電力源(12)、
を備え、
前記推進システムが停止状態にあり、前記電気モータ(10)、前記油圧ポンプ(30)、および前記供給ポンプ(30)が停止状態にあり、かつ前記油圧モータ(40)が係合解除されている構成を前提として、前記起動するためのプロセスが、以下のステップ:
前記供給ポンプ(35)を起動させるステップ、
前記油圧ポンプを回転駆動するために前記電気モータを起動させるステップ、
前記油圧モータ(40)に適用される設定点に対応する流量を供給するために、前記油圧ポンプ(30)の変位量(displacement)および/または前記電気モータ(10)の回転速度を調整するステップ、
前記油圧モータ(40)の起動を行うために前記係合バルブ(80)を制御するステップ、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記係合バルブ(80)が、前記油圧モータ(40)に接続された3つのポートを有し、前記油圧モータ(40)のクランクケースと前記油圧回路の供給回路(60)とに、前記油圧モータ(40)の前記吸入口と前記吐出口とを接続するように適合され、前記油圧モータ(40)が、シリンダブロック内のピストンの引き込みによって係合解除されるタイプであることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記油圧モータ(40)には、前記ピストンを前記シリンダブロック内の引き込み位置に位置決めしようとする戻しばね、が取り付けられていることを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記変位量の調節中に適用される前記設定点が、前記油圧モータ(40)がトルクをもたらさないような車両の前進速度に、対応する、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記係合バルブの制御に続いて、前記油圧モータ(40)がゼロでない牽引トルクをもたらすように設定点が前記システムに適用される、請求項1から4のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項6】
前記供給ポンプが、前記電気モータによって回転駆動され、ここで、前記電気モータの起動が、前記供給ポンプを作動させるように実行される、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記供給ポンプ(35)が、前記電気モータ(10)とは独立した電動ポンプグループである、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記油圧ポンプ(30)の変位量および前記電気モータ(10)の回転速度が、設定点を生成し、前記電気モータ(10)の回転速度を下限閾値(Vmin)よりも高く維持するように、制御される、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記油圧ポンプ(30)の変位量および前記電気モータ(10)の回転速度が、前記電気モータ(10)の回転速度を前記下限閾値(Vmin)よりも高く維持しながら、前記油圧ポンプ(30)および前記電気モータ(10)の合計出力を最大化することによって、前記設定点を生み出すように制御される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記電気モータ(10)が回転し、前記油圧ポンプ(30)および前記供給ポンプ(35)が流量を供給し、かつ前記油圧モータ(40)が係合して前記変位コンポーネントを回転駆動する、前記推進システムの係合構成を前提として、
前記推進システムを係合解除するための以下のステップ:
前記油圧回路内の圧力を低下させて静止圧力に達するように、前記油圧ポンプ(30)の変位量および/または前記電気モータ(10)の回転速度を制御するステップ、
前記油圧ポンプ(30)から前記油圧モータ(40)を分離するように、前記係合バルブ(80)を制御するステップ、
前記油圧ポンプ(30)の変位量をゼロにして前記電気モータ(10)を停止するステップ、
前記供給ポンプ(35)を停止するステップ、
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の起動するためのプロセス。
【請求項11】
前記油圧ポンプ(30)の変位量および前記電気モータ(10)の回転速度が、前記電気モータ(10)を停止するステップまで、前記電気モータ(10)の回転速度が下限閾値(Vmin)よりも高い値を維持するように、制御される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記静止圧力が、前記油圧モータ(40)がゼロトルクを印加するように、決定される、請求項10または11に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気油圧トランスミッション、特に一時的補助装置用の改善された起動および係合解除プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
一次熱モータまたは一次電気モータを有する車両またはエンジン用の電気油圧推進装置を組み込むことを提案するさまざまな解決策が、知られている。
【0003】
車両、特に油圧駆動要素と熱的要素または電気的要素とを組み合わせた車両、の推進を実現するために、また、特に油圧補助、例えば電気油圧による一時的補助のために、さまざまなトランスミッションアーキテクチャが提案されてきた。
【0004】
しかし、提案されている様々なアーキテクチャは、特定の制限を伴う様々な要素の特性により、最適化と実行の面で問題を引き起こし、その結果、一般的に使用されているアーキテクチャとプロセスを適合させることができない。
【0005】
本発明は、これらの問題に少なくとも部分的に対処することを目的とする。
【0006】
本発明は、車両変位コンポーネント用の二次推進(propulsion)システムを起動するためのプロセスであって、前記車両が、一次推進システムを備え、当該推進システムが、
吐出口と吸入口とを有する油圧ポンプ、
吐出口と吸入口とを有し、前記変位コンポーネントを回転駆動するように適合され、前記変位コンポーネントから選択的に係合または係合解除され得る油圧モータであって、前記油圧モータが、供給ポンプを含む閉ループ油圧回路を介して前記油圧ポンプから供給され、前記油圧回路が、
前記油圧ポンプに対して前記油圧モータを選択的に接続または分離し、あるいは前記油圧ポンプ(30)に対して前記油圧モータを分離し、前記油圧ポンプの前記吐出口をその吸入口に接続し、前記油圧モータの吐出口をその吸入口に接続するように適合された係合バルブ、
を含む、油圧モータ、
前記油圧ポンプを駆動するように適合された電気モータ、
前記電気モータに給電するように適合された電力源、
を備え、
前記推進システムが停止状態にあり、前記電気モータ、前記油圧ポンプ、および前記供給ポンプが停止状態にあり、かつ前記油圧モータが係合解除されている構成を前提として、前記起動するためのプロセスが、以下のステップ:
前記供給ポンプを起動させるステップ、
前記油圧ポンプを回転駆動するために前記電気モータを起動させるステップ、
前記油圧モータに適用される設定点に対応する流量を供給するために、前記油圧ポンプの変位量(displacement)および/または前記電気モータの回転速度を調整するステップ、
前記油圧モータの起動を行うために前記係合バルブを制御するステップ、
を含む、プロセス、に関する。
【0007】
一例によれば、前記係合バルブは、前記油圧モータに接続された3つのポートを有し、前記油圧モータの前記吸入口および前記吐出口を、前記油圧モータのクランクケースと、前記油圧回路の供給回路とに接続するように適合されており、前記油圧モータは、ピストンをシリンダブロック内に引き込むことによって係合解除されるタイプである。
【0008】
一例によれば、前記油圧モータには、前記ピストンを前記シリンダブロック内の引き込み位置に位置決めしようとする戻しばねが、取り付けられている。
【0009】
一例によれば、前記変位量の調整中に適用される前記設定点は、前記油圧モータがトルクをもたらさないような車両の前進速度に、対応する。
【0010】
一例によれば、前記係合バルブの制御に続いて、前記油圧モータがゼロでない牽引トルクをもたらすように、設定点が前記システムに適用される。
【0011】
一例によれば、前記供給ポンプは前記電気モータによって回転駆動され、前記電気モータの起動は、前記供給ポンプを作動させるように実行される。
【0012】
一例によれば、前記供給ポンプは、前記電気モータからは独立した電動ポンプグループである。
【0013】
一例によれば、前記油圧ポンプの変位量および前記電気モータの回転速度は、設定点を生成し前記電気モータの回転速度を下限閾値より高く維持するように、制御される。
【0014】
一例によれば、前記油圧ポンプの変位量および前記電気モータの回転速度は、前記電気モータの回転速度を前記下限閾値より高く維持しながら、前記油圧ポンプおよび前記電気モータの合計出力を最大化することによって、前記設定点を生み出すように制御される。
【0015】
一例によれば、前記電気モータが回転し、前記油圧ポンプおよび前記供給ポンプが流量を供給し、油圧モータが係合し、かつ前記変位コンポーネントを回転駆動する推進システムの係合構成を前提として、前記プロセスは、前記推進システムの係合を解除するための以下のステップ:
前記油圧回路の圧力を下げて静止圧力にするように、前記油圧ポンプの変位量および/または前記電気モータの回転速度を制御するステップ、
前記油圧モータを前記油圧ポンプから分離するように、前記係合バルブを制御するステップ、
前記油圧ポンプの変位量をゼロにして、前記電気モータを停止するステップ、
前記供給ポンプを停止するステップ、
を含む。
【0016】
本発明はまた、車両変位コンポーネント用の二次推進システムの係合解除プロセスであって、前記車両が、一次推進システムを備え、前記推進システムが、
吐出口と吸入口とを有する油圧ポンプ、
吐出口と吸入口とを有し、前記変位コンポーネントを回転駆動するように適合され、前記変位コンポーネントから選択的に係合または係合解除され得る油圧モータであって、前記油圧モータが、供給ポンプを含む閉ループ油圧回路を介して前記油圧ポンプから供給され、前記油圧回路が、
前記油圧モータ(40)を前記油圧ポンプ(30)に選択的に接続するか、あるいは前記油圧モータ(40)を前記油圧ポンプ(30)から分離し、前記油圧ポンプ(30)の前記吐出口をその前記吸入口に接続し、前記油圧モータ(40)の前記吐出口をその前記吸入口に接続するように適合された係合バルブ(80)、
を含む、油圧モータ、
前記油圧ポンプを駆動するように適合された電気モータ、
前記電気モータに給電するように適合された電力源、
を備え、
前記電気モータが回転し、前記油圧ポンプおよび前記供給ポンプが流量を供給し、かつ前記油圧モータが係合して前記変位コンポーネントを回転駆動する、前記推進システムの係合構成を前提として、前記係合解除プロセスが、以下のステップ:
前記油圧回路内の圧力を低下させて静止圧力に達するように、前記油圧ポンプの変位量および/または前記電気モータの回転速度を制御するステップ、
前記油圧ポンプから前記油圧モータを分離するように前記係合バルブを制御するステップ、
前記油圧ポンプの変位量をゼロにして前記電気モータを停止するステップ、
前記供給ポンプを停止するステップ、
を含む、プロセス、に関する。
【0017】
前記係合解除は、例えば、前記二次推進システムの活動段階の後に、前述の起動するためのプロセスに続いて、実行され得る。
【0018】
一例によれば、前記油圧ポンプの変位量および前記電気モータの回転速度は、前記電気モータを停止するステップまで前記電気モータの回転速度が下限閾値よりも高い値を維持するように、制御される。
【0019】
一例によれば、前記静止圧力は、前記油圧モータ(40)がゼロトルクを印加するように、決定される。
【0020】
本発明は、トラクションチェーンまたは電気駆動装置を有するあらゆる機械またはエンジン、特に農業機械、例えばトラクターおよび自走式噴霧器、ならびに建設機械、例えばコンパクター、フォークリフト、チェリーピッカー、機械式ショベル、ブルドーザー、車両、特にトラック、ローリーおよび動力式トレーラーに、適用される。
【0021】
本発明およびその利点は、非制限的な例として付与する本発明の異なる実施形態の下記の詳細な説明を読めばより深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電気油圧式車軸推進システムを備えた車両またはエンジンを概略的に示す図である。
図2】本発明の一態様に係る制御を概略的に示す図である。
図3】本発明の一態様に係る制御プロセスのステップの概要を示す図である。
図4】本発明の一態様に係るシステムの一例を示す図である。
【0023】
上記図面の全てにおいて、共通の要素は同一の参照番号によって識別される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、電動油圧車軸推進システムを装備した車両またはエンジンを概略的に示している。
【0025】
この図には、バッテリー12によって給電され、コントローラ20によって制御される電気モータ10が示されている。前記電気モータ10は、例えば永久磁石を備えた同期型である。前記電気モータ10は、例えば、図示されていない内部制御カードおよびチョッパまたはコンバータを含み得る。外部から受信した設定値から、チョッパによって電流の強度および周波数がカットされ、前記電気モータ10を必要なトルクおよび速度で駆動する。前記電気モータ10は、油圧ポンプ30に連結されている。前記油圧ポンプ30は、簡略化して示した油圧回路に接続されており、この油圧回路を介して、車両の推進コンポーネントを回転駆動するのに適合された1つまたは複数の油圧モータを、駆動する。変位コンポーネントとは、例えば車軸や車輪を意味する。図示の例では、前記油圧ポンプ30は、直列に取り付けられた2つの油圧モータ40Aおよび油圧モータ40Bに供給し、前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bはそれぞれ、車両の車輪を回転駆動する。この実施形態は限定的なものではなく、1つまたは複数の油圧モータ40を含み、車両の変位コンポーネント(特に車軸または車輪)を回転駆動する前記油圧ポンプ30には、任意のタイプの油圧回路を取り付けることができることを、理解されたい。
【0026】
前記ポンプ30は、可変容量油圧ポンプ(variable displacement hydraulic pump)であり、通常、軸方向ピストンと傾斜プレートとを備えた油圧ポンプであり、前記プレートの傾斜を制御することで前記ポンプの変位量(displacement)の制御を行う。
【0027】
前記油圧ポンプ30によって供給される一つまたは複数の油圧モータは、通常、固定容量油圧モータ、例えば、ラジアルピストンとマルチローブカムとを有する油圧モータ、である。
【0028】
提案されたような前記システムは、例えば、車両の主変速を実行するために、採用され得、また、車両のプライマリモータによって駆動されるプライマリ車軸とは対照的に、セカンダリ車軸の油圧補助を定めることもできる。油圧補助を実施する場合、システムは、恒久的に、定期的に、または、例えば、車両の速度が所定の速度以下であるときなど、所定の条件下で、係合させることができる。以下に説明する動作は、どのような用途であっても変わらない。
【0029】
図示のような推進システムの作動は、前記電気モータ10の制御の問題を引き起こす。
【0030】
提案されているような前記コントローラ20は、前記電気モータ20および前記油圧ポンプ30の制御を実行するように構成され、コンポーネントの安全性を確保し、前記出力を最適化する動作を実現するように構成されている。
【0031】
前記コントローラ20は、通常、制御コンポーネントに接続され、したがって、通常、ユーザによる動作をもたらし、例えば、油圧補助の起動を制御する設定点を受信するように、適合されている。
【0032】
前記設定点は、通常、前記油圧ポンプ30によって送出されるべき流量目標値を定める流量設定値、または、前記システムによって駆動される変位コンポーネントの回転目標値を定める回転速度設定点であり、例えば、機械の速度設定点、車輪または車軸の回転設定点、または車輪などの変位コンポーネントを駆動するモータの回転速度である。このような設定点は同等であると理解される。
【0033】
提案されているようなコントローラ20は、設定点を達成し、電気モータ10の最小回転速度を確保するように、油圧ポンプ30の変位量および電気モータ10の回転速度を制御する。
【0034】
実際、前記電気モータは、低回転速度で動作して高トルクをもたらすときに温度が上昇しやすく、劣化のリスクがある。また、所定の回転速度に対して過大なトルクの供給を要求されると、前記電気モータ10の出力が劣化する。
【0035】
提案されているような前記コントローラ20は、下限速度閾値以上の回転速度で電気モータ10が確実に作動すること目的としており、これにより、過熱のリスク、ひいては電気モータ10の劣化が防止される。
【0036】
前記下限速度閾値は、通常、メモリユニット22に記憶されているデータに応じて、コンピュータによって決定される。
【0037】
前記下限速度閾値は、例えば800~1500rpm、または900~1200rpm、または例えば1000rpmに等しい固定値であり得、あるいは温度に応じる可変値であってもよい。
【0038】
前記システムは、前記電気モータ10の動作の温度特性を測定するように適合された温度センサ24を備えていてもよい。前記温度センサ24は、例えば、電気モータ10の近くまたは電気モータ10に対向して配置され、電気モータの温度を測定したり、周囲温度を測定したりすることができる。
【0039】
前記コントローラ20は、このようにして測定された温度に応じて、下限速度閾値を決定することができる。前記下限閾値Vminは通常、測定された温度に応じて可変である。前記下限閾値Vminは、通常、システム、特に前記電気モータ10の熱安定性を確保するように決定され、前記電気モータ10が十分に高い速度で回転して熱を確実に放出し、前記電気モータ10の過熱を防止するようにする。
【0040】
このようにして、前記コントローラ20は、前記電気モータ10の回転速度が前記下限速度閾値以上となるように優先するように構成され、このようにして電気モータ10を過熱から保護する。コントローラ20は、設定値を生じさせるために油圧ポンプ30の変位量を適合させる。
【0041】
前記コントローラ20は、通常、前記油圧ポンプの出力をその後最大化するように構成される。
【0042】
したがって、コントローラ20は、通常、油圧ポンプの変位量および電気モータの回転速度を制御して、電気モータの回転速度を下限閾値よりも高く維持しながら、油圧ポンプおよび電気モータの合計出力を最大化することによって、設定値を達成するように構成される。
【0043】
前記メモリユニット22は、通常、前記油圧ポンプ30および前記電気モータ10の動作特性のデータ、通常は出力特性、または入力値もしくは設定値と当該要素の出力パラメータとの間の対応を示す特性を、例えばチャートまたは表の形式で予めロードされており、設定値および前記電気モータ10の回転速度に応じて総出力を最大化するように、前記油圧ポンプの変位量および前記電気モータ10の回転速度を決定し、この値は、前記下限閾値以上である。このデータは、例えば、前記油圧ポンプ30および前記電気モータ10の損失/出力または動作/トルクのマッピング、または前記流量および送出圧力の必要量に応じての前記油圧ポンプの変位量のマッピングを構成し、前記油圧ポンプ30および前記電気モータ10によって形成されるトルクの複数の動作点を定める。
【0044】
最適化された動作点を実現するために、現時点でロードされているデータに応じて、トルクおよび電力が、回転速度に応じて決定され、前記油圧モータ10の動作点が、利用可能な最大電力を供給する点に、位置付けられる。
【0045】
前記コントローラ20は、通常、車軸の駆動速度、または電気油圧牽引システムによって駆動される構成要素の駆動速度に応じた可変動作、すなわち非線形動作を行うように構成される。
【0046】
前記コントローラは、前記システムのいくつかの動作ステップに対応するいくつかの閾値を定めるように、構成され得る。
【0047】
前記閾値は、例えば、油圧システムによって回転駆動されるコンポーネントの回転速度、例えば、車軸の回転速度に、対応し得る。
【0048】
図示された実施例は、油圧モータ40Aおよび油圧モータ40Bによって駆動される車輪の回転速度を測定し、相対的な情報を提供するように適合された速度センサ26を示している。この例は限定的なものではなく、閾値を定めるために他のセンサまたはコンポーネントを使用できることが、理解される。
【0049】
前記閾値は、通常、異なる動作モードが定められ得る漸進的起動に、対応している。
【0050】
一例として、0rpmからS1rpmの間の値に対して第1動作モードが定められ得、ここで、S1は第1閾値である。
【0051】
この第1動作モードは、車両の起動およびその動作開始を表している。
【0052】
このようなモードでは、トルクの必要性が高く、また到達すべき速度、ひいては供給すべき流量が非常に低いことが、理解される。しかし、電気モータ10の場合、回転速度を低下させて大きなトルクを供給すると、過熱の重大なリスクが生じる。このように、この第1動作モードでは、前記コントローラ20は、前記電気モータ10の回転速度が下限閾値以上になることを優先的に確保するように、または、通常、電気モータ10の回転速度を一定に維持して下限閾値に等しくすることによって、制御を行う。次に、前記油圧ポンプ30の変位量は、設定値に到達できるように、決定される。
【0053】
第1閾値S1に達すると、前記コントローラ20は第2動作モードを提示することができ、この動作モードでは通常、油圧ポンプ30の変位量を一定値に保持することによって制御を行い、電気モータ10の回転速度を上昇させて設定値に到達させる。
【0054】
この第2動作モードは、例えば、第2閾値S2向けて、前記電気モータ10がその最大回転速度に達するまで、実行され得る。
【0055】
前記第2閾値S2に達すると、前記電気モータ10の回転速度は一定に保たれ、その最大値に等しくなり、前記コントローラ20は、設定値に到達するように油圧ポンプ30の変位量を制御する。
【0056】
図2は、これらの異なる動作モードを概略的に示すグラフである。
【0057】
この図での横軸は、例えば車軸の回転速度に対応し得る設定値の値の推移である。
【0058】
縦軸は、前記電気モータ10の回転速度、前記油圧ポンプ30の流量、および前記油圧ポンプ30の変位量の変化を表す。
【0059】
異なる曲線は、設定値に応じてのこれらの異なるパラメータの変化を示している:
-Vmは前記電気モータ10の回転速度を表し、
-Cpは前記油圧ポンプ30の変位量を表し、
-Qpは前記油圧ポンプ30によって供給される流量を表す。
【0060】
この図に見られるように、システムが作動しているとき、すなわち設定値が0より大きくなるとき、前記電気モータ10の回転速度Vmは急速に上昇して下限閾値Vminに達する。前記電気モータ10の回転速度Vmは、閾値S1まで一定でVminに等しい。この第1の区間では、所望の流量Qpが得られるように変更されるのは、前記油圧ポンプ30の変位量である。図示の例では、下限閾値Vminは一定であるように表されている。しかし、上で示したように、下限閾値は温度に応じて変化し得る。したがって、ここでは、この例は限定的なものではないと理解される。一例によれば、前記電気モータ10の回転速度VmがVmin未満である限り、油圧ポンプ30の変位量Cpはゼロのままである。
【0061】
前記設定値がS1とS2との間にあるとき、前記油圧ポンプ30の変位量Cpは一定に保たれ、値C1に等しい。所望の流量Qpが得られるように変更されるのは、前記電気モータ10の回転速度Vmである。
【0062】
値S2は通常、前記電気モータ10がその最大回転速度Vmaxに達する設定値に、対応する。前記設定点がS2より大きいとき、前記電気モータ10の回転速度Vmは一定でVmaxに等しく、所望の流量Qpが得られるように変更されるのは、前記油圧ポンプ30の変位量である。Cmaxは、前記油圧ポンプ30の変位量の最大値を示す。
【0063】
変形例として、または追加として、前記設定値がS1とS2の間である場合、前記コントローラ20は、前記電気モータ10の回転速度Vmを下限閾値Vmin以上に維持しながら、前記油圧ポンプ30および前記電気モータ10の出力を最大化するように構成され得る。前記コントローラ20は、例えば、前記電気モータ10の回転速度Vmおよび前記油圧ポンプ30の変位量Cpを変化させて、適用される設定値に関係なくあるいは設定値の1つまたは複数の所定の範囲にわたって、前記電気モータ10の回転速度Vmを下限閾値Vmin以上に維持しながら、前記出力を最適化することができる。
【0064】
変形例として、または追加として、前記コントローラ20は、前記電気モータ10の回転速度Vmを下限閾値Vmin以上に維持しながら、前記電気モータ10によってもたらされるトルクを最大化するように、構成され得る。前記コントローラ20は、例えば、前記電気モータ10の回転速度Vmおよび前記油圧ポンプ30の変位量Cpを変化させて、適用される設定値に関係なくあるいは設定値の1つまたは複数の所定の範囲にわたって、前記電気モータ10の回転速度Vmを下限閾値Vmin以上に維持しながら、前記電気モータ10によってもたらされるトルクを最大化することができる。
【0065】
前記コントローラ20は、使用条件に応じて異なる制御モード間を交互に切り替え、所定のパラメータを優先するように、構成され得る。
【0066】
本発明はまた、車両車軸の推進システムを制御するためのプロセスに関する。図3を参照して、このような制御プロセスの例示的な1つの実施形態を、以下に説明する。
【0067】
考慮される推進システムは、可変容量油圧ポンプと、閉ループ油圧回路を介して前記油圧ポンプから供給され、1つ以上の車軸を回転駆動するように適合された1つ以上の油圧モータと、を含む。前記油圧モータは、通常、固定容量油圧モータである。前記推進システムはまた、前記油圧ポンプを駆動するように適合された電気モータと、前記電気モータに給電するように適合された電力源と、センサおよび/またはメモリもしくは情報記憶ユニットに連結され得るコントローラなどの制御コンポーネントと、を含む。
【0068】
図3は、通常はユーザによる動作をもたらし、例えば油圧アシストの起動を制御する、設定点を適用するための第1ステップ100を含むプロセスを概略的に示している。
【0069】
前記設定点は、通常、前記油圧ポンプ30によって供給される流量設定点、または前記システムによって駆動されるコンポーネントの回転速度設定点、によって反映される速度推進設定点である。
【0070】
次いで、動作モードが決定される。図3では、これは2つの比較ステップ110および比較ステップ120によって示されており、この比較ステップ110および比較ステップ120では、前記設定点が第1閾値S1より大きいか否か、および第2閾値S2より大きいか否かが、順次判定される。
【0071】
次いで、行われた判定に応じて、特に図1および図2を参照して既に説明したように適合された制御方法が、適用される。
【0072】
このようにして、図示の例では、ステップ130は、通常、設定点が0とS1との間にあり、前記電気モータ10の回転速度Vmが下限閾値Vmin以上であることが優先的に確保される制御方法、または通常、前記電気モータ10の回転速度Vmを一定に維持しつつ下限閾値Vminに等しくする制御方法に、対応する。そして、前記油圧ポンプ30の変位量Cpは、前記設定点を達成するように、決定される。
【0073】
ステップ140は、通常、前記設定点がS1とS2との間にあり、前記油圧ポンプ30の変位量Cpが値C1に等しく一定に保たれる制御方法に、対応する。所望の流量Qpが得られるように変更されるのは、前記電気モータ10の回転速度Vmである。
【0074】
ステップ140は、通常、前記設定点がS2より大きく、前記電気モータ10の回転速度Vmが一定のままでVmaxに等しい制御方法に対応し、所望の流量Qpが得られるように変更されるのは、前記油圧ポンプ30の変位量である。
【0075】
次に、前記プロセスは、比較ステップ110のループを介して、前記設定点の変化に応じて制御方法を適応させる。
【0076】
前で示したように、前記電気モータ10の回転速度Vmを下限閾値Vmin以上に維持しながら、前記油圧ポンプ30と前記電気モータ10との合計出力を最大化するように、制御を実施することができる。前記電気モータ10の回転速度Vmおよび前記油圧ポンプ30の変位量Cpは、例えば、適用される設定値に関係なく、または設定値の1つまたは複数の所与の範囲にわたって、前記電気モータ10の回転速度Vmを下限閾値Vmin以上に維持しながら、合計出力を最適化するように変化させることができる。例えば、所望の流量設定点に対して、ポンプおよび電気モータのコンポーネントの記憶された特性を参照して、前記プロセスは、前記電気モータ10の回転速度Vmが常に下限閾値Vminよりも大きい使用範囲において、前記電気モータのトルク速度-良好な出力のために最も有益なポンプの変位量を、決定する。このプロセスでは、電気モータの負荷を考慮することができる。例えば、電気モータに要求されるトルクが過大である場合、前記プロセスは、前記モータのより高い回転速度Vmおよび前記油圧ポンプ30のより少ない変位量Cpを選択し、より有益な全体出力を実現することができる。
【0077】
変形例として、または追加として、前記電気モータ10の回転速度Vmを下限閾値Vmin以上に維持しながら、前記電気モータ10によって伝達されるトルクを最大化するように、制御を行うことができる。前記電気モータ10の回転速度Vmおよび前記油圧ポンプ30の変位量Cpは、例えば、適用される設定点に関係なくあるいは設定点の値の1つまたは複数の所定の範囲にわたって、前記電気モータ10の回転速度Vmを下限閾値Vmin以上に維持しながら、前記電気モータ10によって伝達されるトルクを最大化するように、変化させることができる。
【0078】
提案されているシステムおよび関連する制御プロセスは、前記電気モータの回転速度および前記油圧ポンプの変位量を、動作範囲にわたって非線形に制御する。
【0079】
提案されているシステムは、例えば騒音モードを回避するために、またはあるいは経済性またはパワーを強調しながらコンポーネントを利用するために、VminからVmaxまでの範囲およびC1からCmaxまでの範囲において、前記電気モータ10の異なる他の速度トルクおよび油圧ポンプ30の変位量を利用することもできる。これらの制御則は、車輪速度に応じて非線形であってもよい。
【0080】
提案されている本発明は、前記電気モータを過熱から保護しながら、前記電気モータおよび前記油圧ポンプの動作を最適化するための制御を定める。
【0081】
図4は、車両またはエンジンの主トランスミッションまたは補助トランスミッション、特に選択的に係合または係合解除され得る補助トランスミッションであり得る電気油圧式トランスミッションのシステムの特定の実施形態を示す。
【0082】
選択的に係合させることができる補助機の場合、前記油圧モータ40は、通常、車輪から係合解除できるタイプのものであり、特に、モータの吸入ポートおよび吐出ポートに圧力がかかっていないときに、ブロック内のピストンを引き込むことよって係合解除できるラジアルマルチローブカムタイプのものである。このようなモータは、ピストンを引き込むための留めばねを含み得る。クランクケース圧力は、ピストンを引き込み位置に戻すか維持するのに役立つ。ピストンが引き込まれると、ピストンがカムから解放され、前記モータが非アクティブになってトルクなしで回転できるようになり、その結果、従動シャフトが解放される。前記吸入ポートおよび前記吐出ポートの圧力がリセットされると、前記ピストンはハウジングから出て前記マルチローブカムに係合し、前記モータを従動軸に接続する。非係合位置では、これらのモータは、目立った引き摺りトルクを生じない。これらのモータは低圧で係合させることができ、これにより前記ピストンが前記カムに係合する。また吸入ポートおよび吐出ポートが等圧であれば、係合させたままトルクなしで回転させることができ、これによりフリーホイールの動作モードとなるが、一定の引き摺りトルクが発生する。
【0083】
この図には、図1を参照して既に説明した要素と、以下に説明する追加の要素とが示されている。
【0084】
前記油圧ポンプ30を前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bに接続する油圧回路は、前記油圧ポンプ30に回転自在に連結された供給ポンプ35によって供給される供給回路60を含む。前記供給ポンプ35は、前記油圧ポンプ30とは独立して回転駆動することも可能であることが理解される。前記供給回路60はまた、油圧制御用の制御圧力を得ることを可能にする。
【0085】
前記供給回路60は、既知の構造を有し、油圧回路の供給を行うか、あるいは余剰の流体をタンクRに注出する。
【0086】
前記油圧回路は、前記油圧ポンプ30と前記油圧モータ40A、40Bとの間に介在する制御バルブ80を有する。前述したように、この実施形態は限定的なものではなく、例えば直列または並列に取り付けられた1つまたは複数の油圧モータに置き換えることができることを理解されたい。
【0087】
係合バルブ80は、5つのポートと2つの位置とを有する5/2型のバルブである。
【0088】
前記係合バルブ80は、以下:
前記油圧ポンプ30の第1ポートに接続された第1ポート81、
前記油圧ポンプ30の第2ポートに接続された第2ポート82、
前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bの第1ポートに接続された第3ポート83、
前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bの第2ポートに接続された第4ポート84、および
第5ポート85、
を有する。
【0089】
前記第5ポート85は、絞り72を介してタンクRに接続され、較正バルブ73を介して前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bのクランクケースに接続され、連続して配置された絞り72および絞り74を介してタンクRに接続されている。前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bのクランクケースは、通常0.3bar程度の較正を有する較正バルブ75を介して供給回路60に接続され、供給回路60への流体の循環を可能にする。
【0090】
第1構成では、前記第1ポート81は前記第2ポート82に接続され、一方、前記第3ポート83、前記第4ポート84および前記第5ポート85は、一緒に接続される。ばねなどの戻り手段88は、前記係合バルブ80をデフォルトでその第1構成に保持する。
【0091】
第2構成では、前記第1ポート81は前記第3ポート83に接続され、前記第2ポート82は前記第4ポート84に接続され、前記第5ポート85はブロックされる。
【0092】
このようにして、その第1構成では、前記係合バルブ80は、一方では前記油圧ポンプ30の吸入と吐出を接続し、他方では前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bの吸入と吐出を接続する。このようにして、油圧ポンプ30の「バイパス」および油圧モータ40A、前記油圧モータ40Bの「バイパス」という英語の「bypass(バイパス)」で最もよく知られたバイパス機能を、実行する。
【0093】
その第2構成では、前記係合バルブ80は、所定の回転方向において、前記油圧ポンプ30の吐出口を、前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bの吸入口に接続し、前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bの吐出口を、前記油圧ポンプ30の吸入口に接続する。移動方向が逆になって流量の方向が逆になると、吸入と吐出の名称は、逆になる。
【0094】
前記係合バルブ80の制御は、対向する2つの油圧コントローラ86、油圧コントローラ87によって、実行される。
【0095】
前記係合バルブ80、は制御バルブ90によって作動される。
【0096】
前記制御バルブ90は、4つのポートと2つの構成を有する4/2型のバルブである。
【0097】
前記制御バルブ90は、以下:
前記絞り72を介して前記係合バルブ80の第5ポート85に接続された第1ポート91、
前記供給ポンプ35および前記較正バルブ75に接続された第2ポート92、
前記油圧制御86に接続された第3ポート93、
前記油圧制御87に接続された第4ポート94、
を含む。
【0098】
前記制御バルブ90は、前記第1ポート91が前記第3ポート93に接続され、前記第2ポート92が前記第4ポート94に接続される第1構成と、前記第1ポート91が前記第4ポート94に接続され、前記第2ポート92が前記第3ポート93に接続される第2構成と、を有する。
【0099】
前記制御バルブ90は、本明細書では電動アクチュエータとして示されているアクチュエータ97によって制御され、通常はばねである弾性戻り手段96が対向している。
【0100】
前記制御バルブ90は、デフォルトではその第1構成であり、油圧コントローラ87を作動させ、その第1構成(すなわち、前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bが前記油圧ポンプ30によって供給されない構成)に、前記係合バルブ80を位置決めする。
【0101】
前記コントローラ97の作動により、前記係合バルブ80がその第2の構成に切り替わる。これにより、油圧コントローラ86が作動し、前記係合バルブ80がその第2構成に位置付けられ、前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bが前記前記油圧ポンプ30に接続される。
【0102】
本発明は、本明細書で以下に示すように、説明したようなシステムによる前記変位コンポーネントの推進の係合または係合解除のための改良された制御を、提案する。
【0103】
システム全体が停止している初期状態が、考慮される。前記電気モータ10は停止状態にあり、前記油圧回路内の圧力はゼロであり、前記制御バルブ90および前記係合バルブは、それぞれ第1構成にある。
【0104】
前記電気モータ10が起動される。既に前述したように、前記電気モータ10の起動は、下限閾値Vminよりも高い回転速度を確保するように、実行される。
【0105】
前記電気モータ10の起動により、前記油圧ポンプ30を回転駆動し、その変位量は、可変容量油圧ポンプに関係する場合にはゼロであり、前記供給ポンプ35が作動し、油圧回路内の供給圧力が設定される。前記供給ポンプ35の起動によって前記油圧回路内に供給圧力が確立されるように、通常、時間遅延が実行される。
【0106】
前記供給ポンプ35が別の要素によって駆動されるか、または前記油圧ポンプ30とは独立して駆動される場合、前記供給ポンプ35は前記油圧ポンプ30の係合または変位に先立って係合されることが、理解される。例えば、前記供給ポンプ35は、独立した電動ポンプグループを構成する別個の電気モータによって、作動させることができる。このようにして、前記供給ポンプ35が別の要素によって駆動される場合、後者は通常、電気モータ10が起動する前に、最初に使用開始される。このようにして、前記電気モータ10の起動、一方では油圧ポンプ30の起動、他方では供給ポンプ35の起動は、システムの構成に応じて、同時にまたは順次、行うことができる。
【0107】
前記供給ポンプ35を作動させるということは、2つの油圧ライン上の供給チェックバルブを介して、油圧ループ内の圧力を前記油圧ポンプ30の側に設定し、例えば前記油圧ポンプ30の変位制御のため、および前記制御バルブ90を介した前記係合バルブ80の制御のために、制御圧力を生じさせることを意味する。
【0108】
次に、前記油圧ポンプ30の変位量および/または前記電気モータ10の回転速度が、前記油圧モータ40に適用される設定点に対応する流量を供給するように、調整される。この設定点の値は、通常、トランスミッションによって駆動される車両の速度をシステムが再現するのに必要な流量に対応し、したがって、車輪にモータトルクがかからないようにする。
【0109】
前記油圧ポンプ30ならびに前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bはバイパス状態にあるので、回路内の圧力は供給圧力に等しいかあるいは実質的に等しく、通常は5~20barである。
【0110】
前記コントローラ97は、前記制御バルブ90を第2構成に切り替えるように作動され、これによって前記係合バルブ80を第2構成に切り替え、前記油圧モータ40に油圧ポンプ30から油圧が供給されるようにし、その過程で前記油圧モータ40を起動し、油圧モータの場合には必要に応じて前記油圧モータ40のピストンをそのハウジングから引き抜き、前記ピストンがマルチローブカムまたはプレートと接触している係合構成とは対照的に、ピストンをそれぞれのハウジング内に引き込んでフリーホイール構成を実現することができる。前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bのクランクケース内の過剰圧力は、絞り74および/または較正バルブ75を介してパージされ、後者はクランクケースからの圧力を前記供給回路60に再注入する。前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bが係合し、供給される流量が車両の変位速度に実質的に等しいので、前記油圧回路はトルクや目立った牽引力をもたらさない。圧力は通常80barに設定され、これは補助が作動しているが待機状態にあることを意味する。車両の減速または制動時には、前記設定点の値をより低い圧力、例えば40barに設定することができる。この制御は、圧力センサからのデータを使用して調整することで改良することができる。次いで、前記補助が使用されると、車両の前進速度よりもわずかに大きい設定点の値、またはより高い圧力への圧力制御により、目立った牽引力が供給され、前記補助が、効果的牽引モードになる。圧力は通常、400barまで上昇する。適用された設定点の値に応じて、前記油圧ポンプ30の変位量が制御され、特に図2および図3を参照して前述したように、例えば前記電気モータ10の回転速度が制御され、車両の運転に適応される。
【0111】
前記供給ポンプ35が別の要素によって駆動されるか、あるいは油圧ポンプ30とは独立して駆動される場合、前記油圧ポンプ30の係合または変位に先立って前記供給ポンプ35が係合されることが、理解される。
【0112】
一次推進システムによって回転駆動される一次車軸を有する車両の二次車軸における油圧補助の場合、前記システムに適用される設定点の値は、通常、二次車軸の回転速度を一次車軸の回転速度と同期させることを目的としている。前記電気モータ10の回転速度および前記油圧ポンプ30の変位量は、通常、この設定点の値を達成するように制御され、一方、前記電気モータ10の回転速度は、前述したような下限閾値Vminよりも高い値に維持される。
【0113】
次に、前記システムの解除のためのシーケンスを、説明する。
【0114】
前記システムが係合され、前記変位コンポーネントが前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bによって駆動される初期状況が考慮されるが、この場合、速度はゼロであり得る。
【0115】
まず、前記油圧ポンプの変位および/または前記電気モータの回転速度を制御して、油圧回路内の圧力を下げて静止圧力に達するようにする。この静止位置または待機位置は、前記油圧モータが作動しているがトルクを供給していない走行モードに相当する。回路内の圧力は非常に低く、通常は80barである。
【0116】
次に、前記制御バルブ90の制御97が解除される。前記制御バルブ90は第1構成に戻り、これにより前記係合バルブ80も第1構成に戻る。
【0117】
前記係合バルブ80は、第1構成では、油圧モータ40を油圧ポンプ30から分離する。これにより、回路内の圧力が低下し、圧力が供給圧力のレベルに落ち着き、必要に応じて、ピストンがハウジング内に引き込まれる効果が生じる。実際、前記係合バルブ80が第1構成に切り替わると、前記油圧モータ40は、変位コンポーネント、通常は車輪または車軸によって回転駆動されるが、圧力は供給されなくなる。これにより、前記油圧モータ40の吐出口の圧力が上昇する。このようにして排出される流体は、係合バルブ80を通過し、第5ポート85を通って再び出てきてから、絞り72を通ってタンクRに吐出される。前記絞り72が存在するため、流量の一部は、通常0.3bar程度の較正値を有する較正バルブ73を通過する。前記較正バルブ73は油圧モータ40のクランクケースに取り付けられているため、この較正バルブ73を通過する流量によって油圧モータ40のクランクケース内の圧力が上昇し、その結果、前記油圧モータ40のピストンがハウジング内に引き込まれる効果が生じる。
【0118】
前記油圧モータ40Aおよび前記油圧モータ40Bには、例えば、ピストンを引き込み構成に位置決めしようとするばねなどの戻し要素が、取り付けられている。このようにして、ピストンをハウジングから離脱させる圧力が加えられていない場合、ピストンは引き込まれ、油圧モータの変位はゼロとなる。
【0119】
ここで、例えば、前記ピストンの引き込みを確実にするために、時間遅延を行うことができる。
【0120】
前記油圧ポンプ30は可変容量油圧ポンプであるため、前記油圧ポンプ30の変位はゼロ変位になるように制御される。前記電気モータ10は、下限閾値Vminよりも高い回転速度に維持される。
【0121】
次に、前記電気モータが停止され、これにより前記油圧ポンプ30が停止され、次いで、必要に応じて、前記供給ポンプ35が別のモータ要素によって駆動されるときに、供給システムが停止される。
【0122】
図示されたようなシステムおよびプロセスは、システムが係合解除されているときにポンプを駆動する必要のない動作を提供する。また、補助トランスミッションの場合、様々なコンポーネントの保護、および回転速度の同期が、確保される。
【0123】
本発明は、具体的な例示的実施形態を参照して説明したが、これらの例に対しては、請求項によって定められる本発明の一般的範囲から逸脱することなく修正および変更を行うことができることは明らかである。特に、図示および/または言及したような異なる実施形態の個々の特徴は、さらなる実施形態において組み合わせることができる。したがって、上記説明および図面は、制限的な意味ではなく例示的な意味で捉えるべきである。
【0124】
また、一つのプロセスを参照して説明した特徴はすべて、単独でまたは組み合わせて一つのデバイスに移し替えることができ、また逆に、一つのデバイスを参照して説明した特徴は全て、単独でまたは組み合わせて一つのプロセスに移し替えることができることも明らかである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】