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特表2024-546315三次元生体適合性マトリックスおよび創傷管理におけるその使用
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  • 特表-三次元生体適合性マトリックスおよび創傷管理におけるその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】三次元生体適合性マトリックスおよび創傷管理におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/44 20060101AFI20241212BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241212BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241212BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20241212BHJP
   A61L 15/40 20060101ALI20241212BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241212BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241212BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20241212BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20241212BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20241212BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20241212BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241212BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241212BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241212BHJP
   A61F 13/00 20240101ALI20241212BHJP
【FI】
A61L15/44
A61K9/70 401
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/42
A61K47/46
A61K9/00
A61L15/40
A61P29/00
A61P17/02
A61K45/00
A61L15/28
A61L15/26
A61L15/24
A61L15/32
A61L15/32 300
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
A61F13/00 301Z
A61F13/00 301G
A61F13/00 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538079
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2022087782
(87)【国際公開番号】W WO2023118589
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21217588.9
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524235061
【氏名又は名称】アクセノール ライフ サイエンシズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AXENOLL LIFE SCIENCES AG
【住所又は居所原語表記】Talacker 35,8001 Zurich,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】デック、デイヴィッド エル.
(72)【発明者】
【氏名】プローガー、フランク
(72)【発明者】
【氏名】エルスター、デイナ
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ、ニコール
(72)【発明者】
【氏名】タディッチ クリッペンドルフ、ヴェドラナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA73
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC19
4C076EE12
4C076EE16
4C076EE22
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE26
4C076EE27
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE38
4C076EE41
4C076EE42
4C076EE43
4C076EE57
4C076FF02
4C076GG01
4C081AA03
4C081AA12
4C081BA12
4C081BA14
4C081BB06
4C081CA061
4C081CA081
4C081CA161
4C081CA171
4C081CA181
4C081CA211
4C081CA231
4C081CA241
4C081CC01
4C081CD011
4C081CD022
4C081CD041
4C081CD111
4C081CD121
4C081CD151
4C081CD34
4C081CE02
4C081DA02
4C081DC04
4C081EA03
4C084AA17
4C084MA63
4C084NA10
4C084ZA082
4C084ZB112
(57)【要約】
本発明は、ポリマー剤でできた三次元足場を含み、少なくとも1つの成分をさらに含む三次元生体適合性マトリックスに関する。本発明はまた、このような三次元生体適合性マトリックスを含む組成物に関する。さらに、本発明は、そのような三次元生体適合性マトリックスおよび/または組成物の用途にも関する。特に、本発明はまた、創傷治療または管理の方法における使用のための、そのような三次元生体適合性マトリックスおよび/または組成物に関する。さらに、本発明はまた、本発明による三次元生体適合性マトリックスを製造するための方法に関する。さらに、本発明は、三次元(3D)印刷用インク組成物、および本発明による三次元生体適合性マトリックスを製造する際のその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む三次元生体適合性マトリックス:
- ポリマー剤でできた三次元足場、および
- 非オピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞から選択される少なくとも1つの成分であって、前記少なくとも1つの成分が前記足場に組み込まれている、少なくとも1つの成分。
【請求項2】
前記足場が寸法的に安定なものであり、クリーム、ローション、軟膏、膏剤、ペースト、アンギュエント、またはバームのような展延性の半固体または液体ではない、請求項1に記載の三次元生体適合性マトリックス。
【請求項3】
前記足場が、3次元(3D)印刷、好ましくは3次元(3D)スクリーン印刷によって製造されたものである、請求項1~2のいずれか一項に記載の3次元生体適合性マトリックス。
【請求項4】
前記足場が、編物ではなく、織物でも不織布でもなく、および/または糸状構造を有さず、好ましくは、前記足場が再吸収性である、請求項1~3のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス。
【請求項5】
前記足場が、100μm~20mmの範囲、好ましくは100μm~15mmの範囲、より好ましくは100μm~12mmの範囲、さらに好ましくは100μm~10mmの範囲の厚さを有し、さらに好ましくは前記足場が100μm~200μmの範囲の最小厚さを有し、特に線維芽細胞および/またはケラチノサイトの細胞の単層を収容することを可能にする、請求項1~4のいずれかに記載の三次元マトリックス。
【請求項6】
以下を含む、上記請求項のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス:
a)
- ポリマー剤でできた 足場、および
- 前記足場に組み込まれた非オピオイド系鎮痛剤、または
b)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、または
c)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞;または
d)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、非オピオイド系鎮痛剤および動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞;または
e)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、非オピオイド系鎮痛剤および20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞;または
f)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、非オピオピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞。
【請求項7】
前記ポリマー剤が以下を含む群から選択される、請求項1~6のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス:
a)以下の多糖類から選択される天然に存在するポリマー、例えばアガロース、キチン、キトサン、デキストラン、アルギン酸塩、カラギーナン、セルロース、デンプン、フコイダン、ラミナラン、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカンとコラーゲンとのコポリマー;キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムから選択されるガム;およびイヌリン;ポリペプチド、例えばコラーゲン、およびかかるポリペプチドの加水分解形態、例えばゼラチン;ポリアミノ酸、例えばポリリジン;ポリヌクレオチド;b)合成ポリマー、例えばポリ(α-ヒドロキシ酸)、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリ(アルキル)メタクリレート、例えばポリ(メチル)メタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリジオキサノン、ポリグリセリン、およびかかる合成ポリマーb)とかかる天然に存在するポリマーa)の混合物または組み合わせ;c)シリコン系ポリマー、例えばポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン;および前記a)~c)のいずれかの組み合わせまたは混合物。
【請求項8】
前記ポリマー剤が、多糖類、例えばアガロース、キチン、キトサン、デキストラン、アルギン酸塩、カラギーナン、セルロース、デンプン、フコイダン、ラミナラン、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカンとコラーゲンとのコポリマー;キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムから選択されるガム;およびイヌリン;ポリペプチド、例えばコラーゲン、およびかかるポリペプチドの加水分解形態、例えばゼラチン;ポリアミノ酸、例えばポリリジン;ポリヌクレオチド;から選択される天然に存在するポリマーから選択され、ここで、好ましくは、前記ポリマー剤が、アルギン酸塩、ゼラチン、セルロース、コラーゲン、キトサン、および前記いずれかの混合物から選択される、請求項7に記載の三次元生体適合性マトリックス。
【請求項9】
前記非オピオイド系鎮痛剤が、アミノエステル鎮痛剤、アミノアミド鎮痛剤、フォモカイン、および前記アミノエステル鎮痛剤または前記アミノアミド鎮痛剤または前記フォモカインのそれぞれの炭酸付加物から選択され、好ましくは、前記アミノエステル鎮痛剤には、プロカイン、クロロプロカイン、オキシブプロカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、およびプロキシメタカインが含まれ;好ましくは、前記アミノアミド鎮痛剤には、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、シンチカイン、およびエチドカインが含まれ;好ましくは、前記フォモカインには、フォモカインおよびそのC-アルキルモルホリン誘導体が含まれる、上記請求項のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス。
【請求項10】
前記非オピオイド系鎮痛剤が、アミノエステル鎮痛剤またはその炭酸付加物であり、好ましくは、プロカイン、クロロプロカイン、オキシブプロカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、およびプロキシメタカイン、ならびにそれらのそれぞれの炭酸付加物から選択される、上記請求項のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス。
【請求項11】
前記非オピオイド系鎮痛剤が、アミノアミド鎮痛剤またはその炭酸付加物であり、好ましくは、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、シンチカイン、およびエチドカイン、ならびにそれらのそれぞれの炭酸付加物から選択される、請求項1~9のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス。
【請求項12】
前記非オピオイド系鎮痛剤が、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、インドメタシン、パラセタモール、メタミゾール、フェナゾン、プロピフェナゾン、パレコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、ケタミン、カプサイシン、ジコノチド、カンナビノイド、およびフルピルチンから選択される、請求項1~8のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス。
【請求項13】
前記細胞外小胞が、動物の血小板または幹細胞、好ましくは哺乳動物の血小板または幹細胞、より好ましくはヒトの血小板または幹細胞由来であり、サイトカイン、成長因子、転写因子、RNA、特にマイクロRNA、およびmRNAから選択される少なくとも1つの成分を含み;ここで、好ましくは、前記幹細胞は、間葉系幹細胞および誘導幹細胞から選択され、より好ましくは、前記間葉系幹細胞は、骨髄、臍帯血、脂肪組織、または羊水由来であり;ここで、好ましくは、前記人工的に構築された脂質小胞は、サイトカイン、成長因子、転写因子、RNA、特にマイクロRNA、mRNAおよび請求項9~12のいずれかに記載される非オピオイド系鎮痛剤から選択される少なくとも1つの成分を含有する、上記請求項のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス。
【請求項14】
a)前記細胞外小胞が動物血小板、好ましくは哺乳動物血小板、より好ましくはヒト血小板由来であり、CD9、CD41a、CD41b、CD42b、CD61、CD62P、CD63およびシンテニンから選択される細胞マーカーの少なくとも1つに対して陽性であり、および/または前記細胞外小胞がCD81、CD3、CD4、CD19、CD20、CD2、CD8、CD11aおよびCD25から選択される細胞マーカーの少なくとも1つに対して陰性である;または、
b)前記細胞外小胞が幹細胞由来であり、CD81、CD9、CD63、Tsg101、およびHSP70に対して陽性であり、CD105、CD90、CD73、およびCD44のうちの1つ、いくつか、または全てに対して陽性であり、および/または前記細胞外小胞が、CD45、CD34、CD31、CD19、CD79α、CD14、CD11b、およびHLA-DRのうちの1つ、いくつか、または全てに対して陰性である、
上記請求項のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス。
【請求項15】
上記請求項のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックスを含む組成物。
【請求項16】
パッチ、ドレッシング、パッド、プラスター、包帯、バンドエイド、テープ、またはパウチとして製造される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
以下の2つの構造AまたはBのいずれかを有する、請求項15~16のいずれかに記載の組成物:
構造A:
前記三次元生体適合性マトリックスが第一の層に配置され、前記組成物が、前記第一の層に付着した追加層を含み、この追加層が、前記生体適合性マトリックスに機械的支持を提供するキャリア層であるか、または前記生体適合性マトリックスの片側からの前記少なくとも1つの成分の拡散を防止する半透性バッキング層であるか、または、前記生体適合性マトリックスを一方の側で密封し、前記少なくとも1つの成分の前記生体適合性マトリックスからの拡散をその側で防止する溶媒不透過性バッキング層、特に水不透過性バッキング層であり、またはここで、前記追加の層がキャリア層および半透過性バッキング層または溶媒不透過性バッキング層の両方であり;
前記第1の層が、100μm~20mm、好ましくは100μm~15mm、より好ましくは100μm~12mm、さらに好ましくは100μm~10mmの範囲の厚さを有し;ここで、前記追加の層が、50μm~2mm、好ましくは100μm~2mm、より好ましくは100μm~1mm、さらに好ましくは100μm~500μmの範囲の厚さを有する;
または、
構造B:
前記三次元生体適合性マトリックスは、前記組成物内の唯一の層として配置され、前記三次元生体適合性マトリックスの前記層に付着した追加の層は存在せず;ここで、前記唯一の層は、500μm~3mmの範囲、好ましくは500μm~2mmの範囲、より好ましくは1mm~2mmの範囲の厚さを有する;
ここで、任意に、構造Aの前記組成物および構造Bの前記組成物は、前記組成物の輸送および/または貯蔵のために再剥離可能なキャリアシートに取り付けられてもよく、前記組成物が使用中、例えば創傷の治療および/または管理中であるときには、再剥離可能なキャリアシートに取り付けられておらず、そのような再剥離可能なキャリアシートを含まない。
【請求項18】
構造AおよびBの前記組成物が、前記組成物の輸送および/または貯蔵のために再剥離可能なキャリアシートに取り付けられており、前記組成物が使用中、例えば創傷の治療および/または管理中にあるときには、再剥離可能なキャリアシートに取り付けられておらず、そのような再剥離可能なキャリアシートを含まない、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
創傷を治療し、および/または管理する方法において使用するための、請求項1~14のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックス、または請求項15~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記創傷が急性創傷または慢性創傷であり、好ましくは、前記急性創傷が火傷、皮膚病変、皮膚損傷、手術創傷、切創または刺創であり、好ましくは、前記慢性創傷が褥瘡または糖尿病性潰瘍であり;ここで、より好ましくは、前記火傷は、熱傷、放射線熱傷、化学熱傷、電流への曝露によって引き起こされる熱傷、および摩擦熱傷から選択され、さらに好ましくは、前記火傷は、第1度、第2度または第3度の火傷であり、さらに好ましくは、第2度または第3度の火傷である、請求項19に記載の三次元生体適合性マトリックス、または組成物。
【請求項21】
前記創傷を治療し、および/または管理する方法が、前記三次元生体適合性マトリックスまたは前記組成物を前記創傷に塗布し、規定された期間、前記創傷と接触させたままにすることを含む、請求項19または20のいずれか記載の三次元生体適合性マトリックスまたは組成物。
【請求項22】
前記方法が、前記創傷の痛みを緩和するためおよび/または前記創傷の炎症を軽減するためである、請求項19~21のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックスまたは組成物。
【請求項23】
前記方法が、前記方法によって治療されない創傷と比較して、創傷治癒が達成される速度を増加させるためのものであり、および/または、前記方法が、前記創傷への鎮痛剤の送達のためのものであり、および/または、前記方法が、前記創傷内および/またはその周囲の皮膚を再構築するためのものである、請求項19~22のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックスまたは組成物。
【請求項24】
請求項1~14のいずれかに記載の三次元生体適合性マトリックスを製造するための方法であって、以下を含む、方法:
以下のいずれか:
a)ポリマー剤を提供し、そのような剤を3次元足場に3Dプリント、好ましくは3Dスクリーンプリントすること;
b)非オピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞から選択される少なくとも1つの成分を、前記三次元足場に適用し、前記少なくとも1つの成分を前記足場に取り込ませ、それによって前記三次元生体適合性マトリックスを製造すること;
前記ポリマー剤および前記少なくとも1つの成分は請求項1~14のいずれかに定義される;
または
a*)ポリマー剤および非オピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞から選択される少なくとも1つの成分を提供し、前記ポリマー剤および前記少なくとも1つの成分を混合すること、その後、
b*)前記少なくとも1つの成分が前記足場に組み込まれるように、ステップa*)から得られた混合物を3次元足場に3Dプリント、好ましくは3Dスクリーンプリントし、それによって前記3次元生体適合性マトリックスを製造すること;
前記ポリマー剤および前記少なくとも1つの成分は請求項1~14のいずれかに定義される。
【請求項25】
三次元(3D)印刷、特に三次元(3D)スクリーン印刷するためのインク組成物であって、該インク組成物が以下を含む、インク組成物:
i. 以下を含む群から選択されるポリマー剤:
a)多糖類から選択される天然に存在するポリマー、例えばアガロース、キチン、キトサン、デキストラン、アルギン酸塩、カラギーナン、セルロース、デンプン、フコイダン、ラミナラン、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカンとコラーゲンとのコポリマー;キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムから選択されるガム;およびイヌリン;ポリペプチド、例えば、コラーゲン、およびかかるポリペプチドの加水分解形態、例えばゼラチン;ポリアミノ酸、例えばポリリジン;ポリヌクレオチド;b)合成ポリマー、例えばポリ(α-ヒドロキシ酸)、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリ(アルキル)メタクリレート、例えばポリ(メチル)メタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、ポリアミド、およびかかる合成ポリマーb)とかかる天然に存在するポリマーa)との混合物または組み合わせ;c)シリコン系ポリマー、例えばポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン;および前記a)~c)のいずれかの組み合わせまたは混合物;
ii. iのための溶媒、好ましくは、前記溶媒は、水、水溶液、アルコール、特にメタノール、エタノール、n-プロパノール、またはイソプロパノール、アルコール溶液、テトラヒドロファン、アセトン、および酢酸エチルから選択される;
iii. 非オピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞から選択される少なくとも1つの成分;ここで、前記非オピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および人工的に構築された脂質小胞は、請求項9~14のいずれかに定義される通りである;
iv. 任意に、充填剤、架橋剤、結合剤、界面活性剤、添加剤、希釈剤、増粘剤、着色剤、染料、安定化剤、緩衝剤、保湿剤、乳化剤、分散剤、および保存剤から選択される1種または数種のさらなる成分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー剤でできた三次元足場を含み、少なくとも1つのさらなる成分を含む三次元生体適合性マトリックスに関する。本発明はまた、そのような三次元生体適合性マトリックスを含む組成物に関する。さらに、本発明は、そのような三次元生体適合性マトリックスおよび/または組成物の用途にも関する。特に、本発明はまた、創傷治療または管理の方法における使用のための、そのような三次元生体適合性マトリックスおよび/または組成物に関する。さらに、本発明はまた、本発明による三次元生体適合性マトリックスを製造するための方法に関する。さらに、本発明は、三次元(3D)印刷用インク組成物、および本発明による三次元生体適合性マトリックスを製造する際のその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
治癒プロセスに関与するプロセスが複雑であるため、創傷が治癒して塞がるまでにかなりの期間を要することがある。しばしば、創傷は痛みを伴い、その治癒は、さらなる合併症を引き起こす可能性のある感染によって悪化し得る。創傷の医学的治療は「創傷管理」とも呼ばれ、創傷の治癒をサポートし、創傷感染を予防し、創傷による痛みを緩和することが理想である。さらに、瘢痕の形成を抑えるか、完全に予防する必要がある。創傷管理の重要な側面は、自然治癒のプロセスを医療行為によって促進し、その一方で悪影響を与えないことである。火傷による創傷は頻繁に発生するため、その管理は特に注目されている。火傷の原因は、火災、放射線、電流、化学物質、摩擦などである。火傷の重症度によって、火傷/創傷は異なるカテゴリーに分類される:
【0003】
第1度火傷では表皮のみが侵され、皮膚には軽度の損傷しかない。このような火傷の治癒は通常、自然に起こり、瘢痕は形成されない。このような第1度火傷の典型的な例は、軽度の日焼けである。スキンケアクリームによる保存的治療が推奨されるが、厳密には必要ない。このような熱傷では、抗菌剤や創傷被覆材は通常必要ない。
【0004】
第2度火傷は、「部分的厚さ熱傷」とも呼ばれ、表皮と真皮の一部が侵される。火傷の部位は赤く水ぶくれができ、腫れて痛みを伴う。傷からにじみ出たり出血したりすることもある。このような火傷は通常1~3週間で治癒するが、治癒後、皮膚が変色することがある。このような火傷は一般に盛り上がった瘢痕を残さないが、治療は火傷の深さによって異なる。軟膏や特殊なドレッシング材を使用することもある。非常に深い第2度火傷の場合は手術が必要になることもある。場合によっては、治療の一環として壊死組織の除去や抗菌薬治療が行われる。
【0005】
第3度火傷では、表皮と真皮が破壊され、皮膚の最も内側の層、すなわち皮下組織にまで及ぶことがある。火傷の部位は白っぽく見えたり、黒く焦げて見えたりする。神経終末が破壊されているため、皮膚の感覚が損なわれている場合もある。治療には、壊死組織の除去と、細菌感染の危険性が高いため抗菌薬による治療が必要である。また、皮膚移植や代用皮膚による一時的な被覆を行うこともある。
【0006】
第4度火傷は、皮膚の両層、皮下組織、深部組織、場合によっては筋肉や骨にまで及ぶ。治療には、手術、皮膚移植、そして多くの場合、患肢の切断が必要となる。
【0007】
一般的に、火傷の治療にはさまざまな選択肢があり、火傷の程度に応じてさまざまな組み合わせが用いられる。創傷の洗浄、壊死組織の除去、保湿、軟膏単独または適切なドレッシング材や包帯を併用した抗生物質による創傷ケア、手術、皮膚移植、代用皮膚による被覆などがある。皮膚移植には、患者自身の皮膚(自家皮膚移植)、健康な人の皮膚(同種皮膚移植)、動物の皮膚(異種皮膚移植)が用いられる。皮膚移植の使用には限界があり、特に体の広い範囲が侵されている患者においては、適切な健康な皮膚の利用が限られるためである。この問題を解決する一つの方法として、in vitro培養によって人工的に皮膚組織パッチを作製すること、あるいは天然皮膚や細胞外マトリックスの性質を模倣した人工皮膚代替物の使用が検討されており、これらの方法論は、成功の程度にばらつきはあるものの実際に使用されている。
【0008】
したがって、当技術分野では、創傷、特に火傷の治療および管理における代替手段を提供する必要がある。また、当該技術分野には、そのような創傷の痛みの緩和および/または炎症の軽減を可能にする創傷管理のための皮膚代替物に対する必要性も存在する。また、創傷治癒の促進および/または創傷内および/または創傷周囲の皮膚の再構築を可能にする創傷管理のための皮膚代替物を提供することも当技術分野において必要とされている。また、このような創傷への鎮痛剤の安全かつ効率的な送達を可能にする皮膚代替物を提供することも、当技術分野において必要とされている。
[発明の概要]
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、生体適合性マトリックスが2つの異なる種類の活性成分(=非オピオイド系鎮痛剤、細胞外小胞、および人工的に構築された脂質小胞から選択される成分)を含む、本発明の実施形態における組成物の例示的な構造AおよびBの概略図を示す。
図2図2は、生体適合性マトリックスが1種類の活性成分(=非オピオイド系鎮痛剤、細胞外小胞および人工的に構築された脂質小胞から選択される成分)を含有する、本発明の実施形態による組成物の例示的な構造AおよびBの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の局面において、本発明は、以下を含む三次元生体適合性マトリックスに関する:
- ポリマー剤でできた三次元スキャフォールド、および
- 非オピオイド鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞から選択される少なくとも1つの成分であって、前記少なくとも1つの成分が前記足場に組み込まれる、少なくとも1つの成分。
【0011】
一実施形態において、前記足場は寸法的に安定であり、クリーム、ローション、軟膏、膏剤、ペースト、アンギュエント、またはバームなどの展延可能な半固体または液体ではない。
【0012】
一実施形態において、前記足場は、三次元(3D)印刷によって、好ましくは三次元(3D)スクリーン印刷によって製造されている。
【0013】
一実施形態において、前記足場は、編物ではなく、織物でも不織布でもなく、および/または糸状構造を有さず、好ましくは、前記足場は再吸収性である。
【0014】
一実施形態において、前記三次元足場および前記三次元生体適合性マトリックスは、細胞、特に羊膜細胞を含まず、羊膜または可溶化羊膜(SAM)に由来しない。一実施形態において、前記三次元足場および前記三次元生体適合性マトリックスは無細胞性である。用語「無細胞性」は、この文脈で使用される場合、そのような足場およびマトリックスが、(創傷管理または創傷治療において)使用される前に、無細胞であり、いかなる生物学的細胞も含まないことを意味する。
【0015】
別の実施形態において、前記足場はまた、糸状構造を有さず、また、編物ではなく、織物でも不織布でもなく、しかし、好ましくは、このような別の実施形態において、前記足場は再吸収性ではない。このような実施形態において、前記足場は、典型的には、(創傷において直面するであろう)生理学的条件下で化学的に不活性であり、そして好ましくは、分解またはその消失に至る他のプロセス、例えば、酵素プロセスによる分解を起こしにくいポリマーから作られる。このようなポリマーは、合成ポリマー、例えばポリ(メチル)メタクリレート、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリジオキサノン、およびこのような合成ポリマーの混合物または組合せ、あるいはシリコン系ポリマー、例えばポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、またはこれらの混合物または組合せであってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記足場は、100μm~20mmの範囲の厚さ、好ましくは100μm~15mmの範囲の厚さ、より好ましくは100μm~12mmの範囲の厚さ、さらに好ましくは100μm~10mmの範囲の厚さを有し、さらに好ましくは、前記足場は、100μm~200μmの範囲の最小厚さを有し、細胞、特に線維芽細胞および/またはケラチノサイトの単層を収容することを可能にする。典型的には、前記足場が、例えば連続した単層またはそのような単層のパッチの形態で細胞を含む場合、これは、三次元生体適合性マトリックスが創傷に適用され、足場内に含まれる細胞が創傷組織または創傷を取り囲む組織に由来する場合にのみ生じる。つまり、三次元生体適合性マトリックスを創傷に適用する前のこのような実施形態において、このようなマトリックスは細胞を含まない。また、好ましい実施形態において、創傷への適用前の三次元生体適合性マトリックスは、無菌であり、複製および/または増殖が可能な微生物を含まないことに留意すべきである。
【0017】
一実施形態において、前記三次元生体適合性マトリックスは乾燥形態であり、すなわち液相を含まない。このような三次元生体適合性マトリックスが乾燥形態である場合、好ましくは、蒸発または凍結乾燥のような適切な乾燥プロセスによって製造後にこのような乾燥形態にされている。このような「乾燥状態」の実施形態において、三次元生体適合性マトリックスが長期間保存される場合、および/または出荷される場合、および/または(まだ)いかなる(医療)用途にも供されない場合に、特に有用である。一実施形態において、前記三次元生体適合性マトリックスは、三次元スキャフォールドがゲル状態、好ましくはヒドロゲル状態にあるような液相をさらに含む。このような実施形態は特に有用であり、実際、三次元生体適合性マトリックスが医療目的、例えば創傷を治療および/または管理する方法に使用されようとしている場合に好ましい実施形態である。三次元スキャフォールドがハイドロゲル状態にある場合、液相は水または水溶液である。また、三次元スキャフォールドがハイドロゲル状態にあり、それにもかかわらず三次元生体適合性マトリックスがしばらくの間保存される場合、液相が蒸発しないように、三次元生体適合性マトリックスが密封された区画、例えば密封されたバッグまたはパウチに封入されることが好ましい。
【0018】
一実施形態において、三次元生体適合性マトリックスは以下を含む。
a)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた非オピオイド鎮痛剤、または

b)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、または

c)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞;または

d)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、非オピオイド鎮痛剤と、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞;または

e)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、非オピオイド鎮痛剤と、20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞、または

f)
- ポリマー剤でできた足場、および
- 前記足場に組み込まれた、非オピオイド鎮痛剤と、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞と、20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞。
【0019】
一実施形態において、前記ポリマー剤は、以下を含む群から選択される。
a)多糖類から選択される天然に存在するポリマー、例えばアガロース、キチン、キトサン、デキストラン、アルギン酸塩、カラギーナン、セルロース、デンプン、フコイダン、ラミナラン、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカンとコラーゲンとのコポリマー;キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムから選択されるガム;およびイヌリン;ポリペプチド、例えばコラーゲン、およびかかるポリペプチドの加水分解形態、例えばゼラチン;ポリアミノ酸、例えばポリリジン;ポリヌクレオチド;b)合成ポリマー、例えばポリ(α-ヒドロキシ酸)、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリ(アルキル)メタクリレート、例えばポリ(メチル)メタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリジオキサノン、ポリグリセリン、およびかかる合成ポリマーb)とかかる天然に存在するポリマーa)の混合物または組み合わせ;c)シリコン系ポリマー、例えばポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン;および前記a)~c)のいずれかの組み合わせまたは混合物。
【0020】
グリコサミノグリカンの好ましい実施形態において、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、およびケラタン硫酸が挙げられる。
【0021】
本明細書において、「セルロース」という用語は、セルロースエーテル誘導体(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)およびセルロースエステル誘導体(例えばセルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)など)のようなセルロース誘導体も含むことを意味する。
【0022】
一実施形態において、前記ポリマー剤は、例えば以下に挙げられる多糖類から選択される天然に存在するポリマーから選択される。例えばアガロース、キチン、キトサン、デキストラン、アルギン酸塩、カラギーナン、セルロース、デンプン、フコイダン、ラミナラン、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカンとコラーゲンとのコポリマー;キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムから選択されるガム;およびイヌリン;ポリペプチド、例えばコラーゲン、およびかかるポリペプチドの加水分解形態、例えばゼラチン;ポリアミノ酸、例えばポリリジン;ポリヌクレオチド;ここで、好ましくは、前記ポリマー剤は、アルギン酸塩、ゼラチン、セルロース、コラーゲン、キトサン、および前述のいずれかの混合物から選択される。
【0023】
一実施形態において、前記非オピオイド鎮痛剤は、アミノエステル鎮痛剤、アミノアミド鎮痛剤、フォモカイン、および前記アミノエステル鎮痛剤または前記アミノアミド鎮痛剤または前記フォモカインのそれぞれの炭酸付加物から選択され、ここで、好ましくは、前記アミノエステル鎮痛剤は、プロカイン、クロロプロカイン、オキシブプロカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、およびプロキシメタカインを含み;ここで、好ましくは、前記アミノアミド鎮痛剤は、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、シンチカイン、およびエチドカインを含み;そしてここで、好ましくは、前記フォモカインは、フォモカインおよびそのC-アルキルモルホリン誘導体を含む。
【0024】
一実施形態において、前記非オピオイド鎮痛剤は、アミノエステル鎮痛剤またはその炭酸付加物であり、好ましくは、プロカイン、クロロプロカイン、オキシブプロカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、およびプロキシメタカイン、ならびにそれらのそれぞれの炭酸付加物から選択される。
【0025】
一実施形態において、前記非オピオイド鎮痛剤は、アミノアミド鎮痛剤またはその炭酸付加物であり、好ましくは、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、シンチカイン、およびエチドカイン、ならびにそれらのそれぞれの炭酸付加物から選択される。
【0026】
前述の鎮痛剤の炭酸付加物は公知であり、例えばWO2019/048590A1に記載されている。特に好ましい鎮痛剤は、プロカイン、クロロプロカイン、およびリドカイン、ならびにそれぞれの炭酸付加物である。
【0027】
一実施形態において、前記非オピオイド鎮痛剤は、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、インドメタシン、パラセタモール、メタミゾール、フェナゾン、プロピフェナゾン、パレコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、ケタミン、カプサイシン、ジコノチド、カンナビノイド、およびフルピルチンから選択される。
【0028】
一実施形態において、前記細胞外小胞は、動物の血小板または幹細胞、好ましくは哺乳動物の血小板または幹細胞、より好ましくはヒトの血小板または幹細胞に由来し、サイトカイン、成長因子、転写因子、RNA、特にマイクロRNA、およびmRNAから選択される少なくとも1つの成分を含む;ここで、好ましくは、前記幹細胞は、間葉系幹細胞および誘導幹細胞から選択され、ここで、より好ましくは、前記間葉系幹細胞は、骨髄、臍帯血、脂肪組織、または羊水由来であり;ここで、好ましくは、前記人工的に構築された脂質小胞は、サイトカイン、成長因子、転写因子、RNA、特にマイクロRNA、mRNA、および本明細書中で定義される非オピオイド鎮痛剤から選択される少なくとも1つの成分を含有する。前記細胞外小胞は、細胞外マトリックス由来ではなく、細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックス成分を含まないことに留意すべきである。
【0029】
一実施形態において、a)前記細胞外小胞が動物血小板、好ましくは哺乳動物血小板、より好ましくはヒト血小板由来であり、CD9、CD41a、CD41b、CD42b、CD61、CD62P、CD63およびシンテニンから選択される細胞マーカーの少なくとも1つに対して陽性であり、および/または、前記細胞外小胞が、CD81、CD3、CD4、CD19、CD20、CD2、CD8、CD11aおよびCD25から選択される細胞マーカーの少なくとも1つに対して陰性であり;またはb)前記細胞外小胞が幹細胞由来であり、CD81、CD9、CD63、Tsg101、およびHSP70に対して陽性であり、CD105、CD90、CD73、およびCD44のうちの1つ、いくつか、または全てに対して陽性であり、および/または前記細胞外小胞がCD45、CD34、CD31、CD19、CD79α、CD14、CD11b、およびHLA-DRのうちの1つ、いくつか、または全てに対して陰性である。
【0030】
一実施形態において、前記三次元生体適合性マトリックスは、生体組織または死体組織から得られた細胞、特に線維芽細胞および/またはケラチノサイトをさらに含む。そのような細胞を三次元生体適合性マトリックス内に含む場合、それらは、典型的には、三次元生体適合性マトリックスの製造中に既に組み込まれ、すなわち、それらは、その適用/使用の前に既にそのような三次元生体適合性マトリックスによって含まれ得る。
【0031】
前段落の実施形態とは異なる別の実施形態において、前記三次元生体適合性マトリックスは、線維芽細胞および/またはケラチノサイトなどの細胞をさらに含まない。特に、この実施形態において、適用/使用前の前記三次元生体適合性マトリックスは、細胞を含まない。これは、そのような三次元生体適合性マトリックスの製造中に、細胞が含まれないか、またはその製造に組み込まれないことを意味し、そのような生体適合性マトリックスの適用/使用前は、いかなる生物学的細胞も含まない。三次元生体適合性マトリックスは、その適用後、例えば創傷上に配置された後にのみ、創傷またはその周囲からの生物学的細胞によってコロニー形成される可能性がある。
【0032】
本発明はまた、本明細書で定義される三次元生体適合性マトリックスを製造するために構成されたキットに関し、前記キットは、本明細書で定義されるポリマー剤でできた三次元スキャフォールドと、本明細書で定義される前記少なくとも1つの成分を含む容器とを含み、好ましくは、前記容器は、適切な溶媒中の前記少なくとも1つの成分の溶液または分散液または懸濁液を含む。
【0033】
本発明はまた、本明細書で定義される、本発明による三次元生体適合性マトリックスを含む組成物に関する。
【0034】
一実施形態において、本発明による組成物は、パッチ、ドレッシング、パッド、プラスター、包帯、バンドエイド、タイプ、またはパウチとして製造される。
【0035】
本発明による組成物の一実施形態において、前記組成物は、特に、前記組成物が使用される場合、層状配置、例えば、積層体または多層配置を有し、好ましくは、前記層状配置の層の1つは、前記三次元生体適合性マトリックスによって形成される。そのような一実施形態において、前記組成物は、前記三次元生体適合性マトリックスに付着される少なくとも一つの追加層を含むことが好ましい。前記三次元生体適合性マトリックスに付着されるそのような付加的な層は、前記生体適合性マトリックスに機械的支持を提供するキャリア層であってもよく、または前記生体適合性マトリックスの片面からの前記少なくとも1つの成分の拡散を防止する半透過性バッキング層であってもよく、または溶媒不透過性バッキング層、特に水不透過性バッキング層であって、前記生体適合性マトリックスを片面で密封し、そのような面で前記生体適合性マトリックスからの前記少なくとも1つの成分の拡散を防止する。そのような実施形態において、そのような層状配置が、5mm~20mm、好ましくは5mm~15mm、より好ましくは8mm~12mm、より好ましくは9mm~11mm、さらに好ましくは約10mmの範囲の厚さを有することが特に好ましい。一実施形態において、前記三次元生体適合性マトリックスは、100μm~20mm、好ましくは100μm~15mm、より好ましくは100μm~12mm、さらに好ましくは100μm~10mmの範囲の厚さを有し;そして前記追加層は、50μm~2mm、好ましくは100μm~2mm、より好ましくは100μm~1mm、さらに好ましくは100μm~500μmの範囲の厚さを有する。前記組成物の前記実施形態(単数または複数)はまた、例えば、前記組成物が使用中ではなく、貯蔵または輸送される場合に、追加の成分を含むことができる;例えば、前記組成物の輸送および/または貯蔵のために、再剥離可能なキャリアシートに付着させることができる。このような再剥離可能なキャリアシートは、前記組成物の安全な輸送および/または貯蔵のための手段として機能し得るが、前記組成物の意図された使用の前に前記組成物から除去される。
【0036】
組成物の別の実施形態において、前記組成物は層状配置を有するが、特に前記組成物が使用される場合には、前記三次元生体適合性マトリックスによって形成される単層のみを含む。そのような実施形態において、使用時には、前記組成物は、単層の配置を有し、そのような単層は、本明細書において定義されるようなポリマー剤、または本明細書において定義されるようなポリマー剤の組み合わせもしくは混合物でできたものであり;そのような単層は、三次元生体適合性マトリックスを構成する。このような実施形態において、前記組成物は、前記三次元生体適合性マトリックスに付着するような追加の層またはシートを含まないことが好ましい。そのような一実施形態において、そのような単層配置は、0.5mm~3mmの範囲、好ましくは0.5mm~2mmの範囲、より好ましくは1mm~2mmの範囲の厚さを有することが特に好ましい。しかしながら、前記組成物の前述の(単層)実施形態において、前記組成物が使用中ではなく、貯蔵または輸送される場合、例えば、追加の構成要素を含むこともでき;例えば、前記組成物の輸送および/または貯蔵のために、再剥離可能なキャリアシートに取り付けられてもよいことに留意すべきである。そのような再剥離可能なキャリアシートは、前記組成物の安全な輸送および/または貯蔵のための手段として機能し得るが、前記組成物の意図された使用の前に前記組成物から除去される。三次元生体適合性マトリックスを構成するこのような単層が三次元(3D)スクリーン印刷によって製造される場合、スクリーン印刷プロセスの固有の様式に起因して、このようなスクリーン印刷された単層は、いくつかの副層からなる可能性があることにも留意すべきである。しかしながら、これらの副層はすべて、本明細書で定義されるような同じポリマー剤、または本明細書で定義されるようなそのようなポリマー剤の同じ組み合わせもしくは混合物でできており、そのような副層は全体として、三次元生体適合性マトリックスである単層を構成する。
【0037】
組成物の一実施形態において、前記組成物は、以下の2つの構造AまたはBのうちの1つを有する:
【0038】
構造A:
前記三次元生体適合性マトリックスが第一の層に配置され、前記組成物が、前記第一の層に付着した追加層を含み、この追加層が、前記生体適合性マトリックスに機械的支持を提供するキャリア層であるか、または前記生体適合性マトリックスの片側からの前記少なくとも1つの成分の拡散を防止する半透性バッキング層である、または、溶媒不透過性バッキング層、特に水不透過性バッキング層であり、前記生体適合性マトリックスを一方の側で密封し、前記少なくとも1つの成分の前記生体適合性マトリックスからの拡散をその側で防止する、または前記追加の層がキャリア層および半透過性バッキング層または溶媒不透過性バッキング層の両方であり;
前記第1の層が、100μm~20mm、好ましくは100μm~15mm、より好ましくは100μm~12mm、さらに好ましくは100μm~10mmの範囲の厚さを有し;そして前記追加の層が、50μm~2mm、好ましくは100μm~2mm、より好ましくは100μm~1mm、さらに好ましくは100μm~500μmの範囲の厚さを有する;
または、
構造B:
前記三次元生体適合性マトリックスは、前記組成物内の唯一の層として配置され、前記三次元生体適合性マトリックスの前記層に付着した追加の層は存在せず;ここで、前記唯一の層は、500μm~3mmの範囲、好ましくは500μm~2mmの範囲、より好ましくは1mm~2mmの範囲の厚さを有する;
ここで、任意に、構造Aの前記組成物および構造Bの前記組成物は、前記組成物の輸送および/または貯蔵のために再剥離可能なキャリアシートに取り付けられてもよく、前記組成物が使用中、例えば創傷の治療および/または管理中であるときには、再剥離可能なキャリアシートに取り付けられておらず、そのような再剥離可能なキャリアシートを含まない。
【0039】
構造AまたはBを有する前記組成物の一実施形態において、輸送および/または貯蔵の間、構造AおよびBの前記組成物は、前記組成物の輸送および/または貯蔵のために再剥離可能なキャリアシートに取り付けられ、前記組成物が使用中、例えば創傷の治療および/または管理中であるとき、再剥離可能なキャリアシートに取り付けられず、そのような再剥離可能なキャリアシートを含まない。
【0040】
本発明の実施形態における組成物の例示的な構造AおよびBを図1および2に示す。
【0041】
さらなる態様において、本発明はまた、創傷を治療および/または管理する方法において使用するための、本明細書において定義される三次元生体適合性マトリックスまたは本発明による組成物に関する。
【0042】
本発明による三次元生体適合性マトリックスおよび組成物は、プレハブ化マトリックスおよびプレハブ化組成物であることに留意すべきである。この文脈で使用される「プレハブ化(prefabricated)」という用語は、好ましくは、そのようなマトリックスおよび組成物が、創傷に適用される前に創傷と切り離されて、既製で完全であることを意味する。好ましくは、そのようなプレハブ化マトリックスおよびそのようなプレハブ化組成物は、創傷上へのその場での印刷、創傷上へのその場での架橋、または創傷上へのその場での重合を必要とせず;その代わりに、本発明によるプレハブ化マトリックスおよびプレハブ化組成物は、治療される創傷とは別の場所および創傷治療が行われる時間とは別の場所および時間で印刷および製造されている。より詳細には、本発明によるプレハブ化マトリックスおよび組成物は、注射可能な溶液もしくは注射可能な足場材料、または自由流動性の溶液もしくは足場材料ではない。さらに、本発明によるプレハブ化マトリックスおよび組成物は、その場、すなわち治療または管理される創傷において重合、硬化、架橋または硬化されたものではなく、そのような創傷およびそのような創傷への適用とは別の部位および時間で調製されたものである。
【0043】
本発明による使用のための三次元生体適合性マトリックスまたは組成物の一実施形態において、前記創傷は急性創傷または慢性創傷であり、好ましくは、前記急性創傷は火傷、皮膚病変、皮膚損傷、手術創、切り傷または刺し傷であり、好ましくは、前記慢性創傷は褥瘡または糖尿病性潰瘍であり;ここで、より好ましくは、前記火傷は、熱傷、放射線熱傷、化学熱傷、電流曝露による熱傷、および摩擦熱傷から選択され、ここで、さらに好ましくは、前記火傷は、第1度、第2度または第3度火傷であり、さらに好ましくは、第2度または第3度火傷である。
【0044】
本発明による使用のための三次元生体適合性マトリックスまたは組成物の一実施形態において、創傷を治療し、および/または管理する前記方法は、前記三次元生体適合性マトリックスまたは前記組成物を前記創傷に塗布し、規定された期間、前記創傷と接触させたままにすることを含む。
【0045】
本発明による使用のための三次元生体適合性マトリックスまたは組成物の一実施形態において、前記方法は、前記創傷の痛みを緩和するためおよび/または炎症を軽減するためのものである。
【0046】
本発明による使用のための三次元生体適合性マトリックスまたは組成物の一実施形態において、前記方法は、前記方法によって治療されない創傷と比較して、創傷治癒が達成される速度を増加させるためのものであり、および/または、前記方法は、前記創傷への鎮痛剤の送達のためのものであり、および/または、前記方法は、前記創傷内および/またはその周囲の皮膚の再構築のためのものである。
【0047】
さらなる局面において、本発明はまた、創傷を治療および/または管理するための医薬の製造のための本発明による三次元生体適合性マトリックスまたは組成物の使用に関する。かかる局面において、三次元生体適合性マトリックス、組成物および創傷は、本明細書で定義される通りである。そのような局面において、前記医薬品は、創傷を治療し、および/または管理する方法において使用される。より詳細には、そのような局面において、創傷を治療し、および/または管理する前記方法は、前記三次元生体適合性マトリックスまたは前記組成物を前記創傷に塗布し、規定された期間、そのような創傷と接触させたままにすることを含む。
【0048】
かかる局面の一実施形態において、前記医薬品が使用される前記方法は、前記創傷の痛みを緩和するため、および/または炎症を軽減するためのものである。
【0049】
さらに、先の実施形態に加えて、または代替的に、前記方法は、前記方法によって治療されない創傷と比較して、創傷治癒が達成される速度を増加させるためのものであり、および/または、前記方法は、前記創傷への鎮痛剤の送達のためのものであり、および/または、前記方法は、前記創傷内および/またはその周囲の皮膚の再構築のためのものである。
【0050】
さらなる局面において、本発明はまた、創傷を治療し、および/または管理する方法に関し、このような方法は、本明細書で定義される三次元生体適合性マトリックスまたは本発明による組成物を、前記創傷に塗布し、規定された期間、このような創傷と接触させたままにすることを含む。また、この局面において、一実施形態において、前記方法は、痛みを緩和するため、および/または前記創傷の炎症を軽減するためのものである。
【0051】
さらに、この局面の先の実施形態に加えて、または代替的に、前記方法は、前記方法によって治療されない創傷と比較して、創傷治癒が達成される速度を増加させるためのものであり、および/または、前記方法は、前記創傷に鎮痛剤を送達するためのものであり、および/または、前記方法は、前記創傷内および/またはその周囲の皮膚を再構築するためのものである。
【0052】
さらなる局面において、本発明はまた、本明細書で定義される、本発明による三次元生体適合性マトリックスを製造するための方法に関し、前記方法は以下を含む:
以下のいずれか:
a)ポリマー剤を提供し、そのような剤を3次元足場に3Dプリント、好ましくは3Dスクリーンプリントすること;
b)非オピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞から選択される少なくとも1つの成分を、前記三次元足場に適用し、前記少なくとも1つの成分を前記足場に取り込ませ、それによって前記三次元生体適合性マトリックスを製造すること;
前記ポリマー剤および前記少なくとも1つの成分は、本明細書で定義される通りである;

または

a*)ポリマー剤と非オピオイド系鎮痛剤と、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞と、20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞とから選択される少なくとも1つの成分を提供し、前記ポリマー剤および前記少なくとも1つの成分を混合すること、その後、
b*)前記少なくとも1つの成分が前記足場に組み込まれるように、ステップa*)から得られた混合物を3次元足場に3Dプリント、好ましくは3Dスクリーンプリントし、それによって前記3次元生体適合性マトリックスを製造すること;
前記ポリマー剤および前記少なくとも1つの成分は、本明細書において定義される通りである。
【0053】
一実施形態において、前記ステップb)は、噴霧、浸漬、コーティング、浸漬、含浸、塗布およびその後の凍結乾燥、ナノゾル技術、塗布およびその後の足場/マトリックスの負圧または真空への曝露などを含む、任意の適切な技術によって実施することができる。
【0054】
さらなる局面において、本発明はまた、三次元(3D)印刷、特に三次元(3D)スクリーン印刷のためのインク組成物に関し、前記インク組成物は以下を含む:
i. 以下を含む群から選択されるポリマー剤:
a)多糖類から選択される天然に存在するポリマー、例えばアガロース、キチン、キトサン、デキストラン、アルギン酸塩、カラギーナン、セルロース、デンプン、フコイダン、ラミナラン、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカンとコラーゲンとのコポリマー;キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムから選択されるガム;およびイヌリン;ポリペプチド、例えば、コラーゲン、およびかかるポリペプチドの加水分解形態、例えばゼラチン;ポリアミノ酸、例えばポリリジン;ポリヌクレオチド;b)合成ポリマー、例えばポリ(α-ヒドロキシ酸)、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリ(アルキル)メタクリレート、例えばポリ(メチル)メタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、ポリアミド、およびかかる合成ポリマーb)とかかる天然に存在するポリマーa)との混合物または組み合わせ;c)シリコン系ポリマー、例えばポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン;および前記a)~c)のいずれかの組み合わせまたは混合物;
ii. iのための溶媒、好ましくは、前記溶媒は、水、水溶液、アルコール、特にメタノール、エタノール、n-プロパノール、またはイソプロパノール、アルコール溶液、テトラヒドロファン、アセトン、および酢酸エチルから選択される;
iii. 非オピオイド系鎮痛剤と、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞と、20nm~150nmの範囲のサイズを有する人工的に構築された脂質小胞とから選択される少なくとも1つの成分;ここで、前記非オピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および人工的に構築された脂質小胞は、本明細書において定義される通りである;
iv. 任意に、充填剤、架橋剤、結合剤、界面活性剤、添加剤、希釈剤、増粘剤、着色剤、染料、安定化剤、緩衝剤、保湿剤、乳化剤、分散剤、および保存剤から選択される1種または数種のさらなる成分。
【0055】
好ましい実施形態において、三次元(3D)印刷、特に三次元(3D)スクリーン印刷用の前記インク組成物は、100~300000mPas、好ましくは1000~30000mPasの範囲の粘度を有する。好ましくは、そのような粘度範囲の値は、DIN EN ISO 3219-1および/またはISO 3219の方法論に従って測定および決定される。
【0056】
インク組成物の一実施形態において、前記少なくとも1つの成分は、インク組成物の重量を基準として、0.1~20wt.%の範囲の濃度で前記インク組成物内に存在する。少なくとも1つの成分が三次元(3D)生体適合性マトリックスに適用される実施形態において、そのようなマトリックスが形成された後、前記少なくとも1つの成分は、溶液または分散液または懸濁液の一部として適用され、その中で、前記少なくとも1つの成分は、そのような溶液または分散液または懸濁液の重量を基準として、0.1~20wt.%の範囲の濃度で存在することに留意すべきである。
【0057】
[詳細な説明]
本明細書で使用される「本発明の(of the [present] invention)」、「本発明に従って(in accordance with the invention)」、「本発明による(according to the invention)」等の用語は、本明細書で記載および/または請求される本発明の全ての局面および実施形態において言及することを意図する。本明細書で使用される場合、用語「を含む(comprising)」は、「を含む(including)」および「からなる(consisting of)」の両方を包含すると解釈され、両方の意味は、具体的かつ明示的に意図され、したがって、本発明に従って個別に開示された実施形態である。本明細書で使用される場合、「および/または」は、2つの指定された特徴または構成要素の各々について、他方の有無にかかわらず、具体的に開示されていると見なされる。例えば、「A」及び/又は「B」は、(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びBのそれぞれの具体的な開示とみなされ、それぞれが本明細書で個別に規定されているのと同様である。不定冠詞または定冠詞が使用される場合、例えば「a」、「an」または「the」のような単数形の名詞を指す場合、他の何かが具体的に記載されていない限り、その名詞の複数形も含まれる。同様に、このような開示は、「a」、「an」または「the」によって開始される単一の個々の実体の具体的な開示と見なされることを意味する。
【0058】
本発明者らは、驚くべきことに、非オピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来の細胞外小胞、好ましくは哺乳動物細胞由来の細胞外小胞、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞、および人工的に構築された脂質小胞から選択される少なくとも1つの成分を、ポリマー剤でできた三次元足場に含めることにより、医療目的、特に創傷を治療し、および/または管理する方法に有利に使用できる三次元生体適合性マトリックスが得られることを見出した。好ましい実施形態において、前記三次元足場は、三次元(3D)印刷、好ましくは三次元(3D)スクリーン印刷によって製造されている。これらの3D印刷技術、特に3Dスクリーン印刷技術は、非常に汎用性が高く、高圧または高温のような過酷な条件を避けることができるため、非常に穏やかである。その結果、このような三次元生体適合性マトリックスの製造における3D印刷技術、特に3Dスクリーン印刷技術の使用は、製造プロセス中に、活性医薬成分(API)または脂質小胞のような繊細または敏感な成分、さらには生物学的細胞を直接包含および/または組み込むことを可能にする。製造プロセス中にこのような繊細または敏感な成分を直接包含および/または組み込む結果、これらの成分は、三次元足場を取り囲む孔空間に緩く含まれるのではなく、三次元足場の不可欠な部分となり得る。さらに、3D印刷技術、特に3Dスクリーン印刷技術は、マイクロメートル範囲の構造を確実かつ再現性よく生成、すなわち印刷することができるような、高度な精度、再現性、および極めて高度な解像度を可能にする。このような3D印刷技術、特に3Dスクリーン印刷技術により、異なる場所での生産、そのような異なる場所間での中間製品の輸送、さらに場合によっては異なる生産段階や複数の工程を含む複雑な製造スキームの使用が回避される。
【0059】
このようにして生成された三次元生体適合性マトリックスは、創傷管理に一般的に使用される包帯、ドレッシング材、パッチ、プラスター、パウチ、パッドまたはゲルなどの他のマトリックスとも構造的に異なる。特に、本発明による三次元生体適合性マトリックスの三次元足場(したがって、マトリックス自体)は、糸状構造を有さず、および/または編物ではなく、織物または不織布ではないという点で、古典的な織物構造を有さない。さらに、本発明による三次元生体適合性マトリックスの三次元足場(したがって、マトリックス自体)は、三次元足場が寸法的に安定であり、クリーム、ローション、軟膏、膏剤、ペースト、アンギュエント、またはバームのような展延可能な半固体または液体ではない点で、市販の創傷用ゲルとも構造的に異なる。また、展延性ゲルや自由流動性ゲルでもなく、ガーゼパッド、不織布、織布、その他の織物に染み込んだゲルでもない。さらに、織物や繊維のメッシュなどで構造的に支えられたり、つなぎ止められたりするゲルでもない。本明細書で使用される「寸法的に安定な」という用語は、好ましくは、前記三次元足場が、保管の条件下で、またはその意図される使用に置かれたときに、それぞれ、その寸法、すなわち、長さ、幅または高さのいずれをも実質的に変化させないシナリオを指す。好ましい実施形態において、「寸法的に安定な」とは、前記三次元足場が、その意図される使用の条件、特にその意図される使用の温度条件、特に-20℃~+50℃、特に0℃~+45℃の範囲の温度条件、および/または0%~100%の範囲の相対湿度の湿度条件にさらされたときに、その寸法を実質的に維持するシナリオを意味する。この用語は、特に、自由に流動せず、自由に拡散しない三次元足場を意味する。また、好ましくは、前記足場が曝される外部条件の変化を受けたときに、全く異なる形状、伸長、幅および/または高さを呈さない足場を指すことを意味する。「寸法的に安定な」という用語は、好ましくは、ゲル/ヒドロゲルが自由流動性でなく、膨潤した後でも全体的な形状の変化に対して抵抗する限り、ゲルが水および/または湿った環境にさらされることによる水和または再水和によるゲルの膨潤も含むことを意味する。より詳細には、前記三次元足場は、創傷管理用または創傷治療用の組成物に含まれる際に、その寸法が実質的に変化しないという点で、好ましくは「寸法的に安定な」ものである。より具体的には、例えば、パッチ、ドレッシング、パッド、絆創膏、包帯、バンドエイド、テープ、またはパウチのような創傷管理用組成物の一部として保存されるとき、または創傷に適用されたとき、または適用されるときにも、その寸法が実質的に変化しないという点で、好ましくは「寸法的に安定な」ものである。「寸法的に安定な」という用語は、しかし、好ましくは、三次元足場が、乾燥した貯蔵状態から、創傷に適用する準備ができているか、または既に適用されている湿潤状態に移されたときの膨潤も含むことを意味し、再び、そのような湿潤状態において、そのような三次元足場は、そのような湿潤状態にされた後でさえも、依然として自由流動性ではなく、その形状を保持し、その全体的な形状の変化に対する抵抗力を提供するという条件で、そのような湿潤状態にされた後でも、そのような三次元足場は、その形状を保持し、その全体的な形状の変化に対する抵抗力を提供する。
【0060】
さらに、前記三次元生体適合性マトリックスによって含まれる前記少なくとも1つの成分の適切な選択によって、そのような三次元生体適合性マトリックスの品質は、特定の必要性および/または要件に合わせて調整することができる。例えば、創傷による痛みを緩和する必要がある場合、前記少なくとも1つの成分は非オピオイド系鎮痛剤であってもよい。しかしながら、創傷の炎症局面の治療および管理が第一に重要である場合、三次元生体適合性マトリックスは、炎症に対処し得る適切なサイトカイン、成長因子および/またはmRNAを含む細胞外小胞を含んでもよい。このような細胞外小胞の利点の一つは、患部組織の一部を形成する細胞に容易に取り込まれることである。このような細胞外小胞の起源となる適切な細胞がないために細胞外小胞が利用できない場合には、それでも、所望の効果をもたらすために所望の成分を担持させた人工的に構築した脂質小胞を三次元生体適合性マトリックスに含めることを検討してもよい。例えば、このような人工的に構築された脂質小胞には、本明細書で定義する非オピオイド系鎮痛剤を担持させることもできる。
【0061】
好ましい実施形態において、本明細書で使用される「ポリマー剤」は、ゲル形成剤である。本明細書で使用する「ゲル形成剤」という用語は、適切な液相に曝されたときにゲルを形成することができる薬剤を意味する。本明細書で使用する「ゲル」という用語は、固体の三次元網目構造を意味し、このような三次元網目構造は、液相によって充填された細孔または間隙空間を有する。このような液相が水または水溶液である場合、得られるゲルは「ヒドロゲル」とも呼ばれる。液体が有機溶媒の場合、ゲルは「有機ゲル」とも呼ばれる。適切な有機溶媒の例は、エタノール、アセトン、イソプロパノール、グリセロール、PEG-400、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MBB)、プロピレンカーボネート、および植物油である。本明細書の好ましい実施形態において、ゲル形成剤はヒドロゲル形成剤であり、そのような好ましい実施形態において三次元生体適合性マトリックスによって使用され、かつ含まれる液相は、水または水溶液である。そのような水溶液において、含まれ得る追加の成分は、緩衝剤成分、防腐剤、キレート剤、保湿剤、デキスパンテノールなどである。水またはそのような水溶液が三次元生体適合性マトリックスによって含まれる場合、三次元足場はハイドロゲル状態にあるか、またはハイドロゲルである。
【0062】
用語「細胞外小胞」は、本明細書で使用される場合、生物細胞によって排出または放出された粒子を指す。本発明に従って、前記細胞外小胞は細胞外マトリックスに由来せず、細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックス成分を含まない。典型的には、本発明の実施形態における細胞外小胞は、脂質二重層膜を有し、20nm~500nm、好ましくは20nm~300nm、より好ましくは20nm~200nm、さらに好ましくは20nm~150nm、なおさらに好ましくは20nm~100nmの範囲のサイズを有する。特に好ましい実施形態において、このような細胞外小胞は脂質二重層膜を有し、30nm~100nmの範囲のサイズを有する。「動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来の細胞外小胞」という表現において、「動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来」という用語は、そのような細胞外小胞が、そのような動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来から放出されたシナリオを意味する。好ましい実施形態において、そのような細胞外小胞はヒト細胞から放出されている。例えば、このような細胞外小胞はヒト血小板または幹細胞から放出されたものであってもよい。それぞれの細胞起源に依存して、それぞれの細胞外小胞は、それぞれの膜(および関連する細胞表面マーカー)の組成および/またはその含有量が異なり得る。典型的には、細胞外小胞は、小胞の細胞起源を反映する内容物と表面を有する。それらは、タンパク質および/またはその断片、ならびに核酸を含有していてもよく、これらはすべて小胞由来である。本発明による実施形態において、細胞外小胞は、サイトカイン、成長因子、転写因子、タンパク質分解酵素、RNA、特にマイクロRNA、およびmRNAから選択される一種または数種の成分を含むことができる。このような成分は、抗炎症作用または炎症促進作用を有し、例えば、抗炎症性サイトカインまたは炎症促進性サイトカインであってもよい。タンパク質分解酵素は、創傷の切除に寄与する可能性がある。細胞外小胞の産生方法は当業者に知られており、例えば、Doyleら、Cells、2019年、8巻、727、doi:10.3390/cells8070727に記載されている。
【0063】
本明細書で使用する「人工的に構築された脂質小胞」という用語は、脂質膜、通常は脂質二重膜も有し、生体細胞から放出されたものではなく人工的に合成された小胞を指すものとする。このような人工的に構築された脂質小胞は、「リポソーム」と呼ばれることもある。このような人工的に構築された脂質小胞は、20nm~150nm、好ましくは20nm~100nmの範囲のサイズを有する。その外殻は脂質膜、典型的には脂質二重膜で構成され、液相で形成されたコアを取り囲んでいる。本発明の一実施形態において、このような人工的に構築された脂質小胞は、核酸と同様に、タンパク質および/またはその断片を含有していてもよい。一実施形態において、このような人工的に構築された脂質小胞は、サイトカイン、成長因子、転写因子、タンパク質分解酵素、RNA、特にマイクロRNA、およびmRNAから選択される1つまたはいくつかの成分を含有し得る。一実施形態において、このような人工的に構築された脂質小胞は、非オピオイド系鎮痛剤も含むことができる。
【0064】
本明細書において前記三次元マトリックスと共に使用される「生体適合性」という用語は、創傷管理の文脈において、そのようなマトリックスの受容者において望ましくない局所的または全身的効果を誘発せず、そのようなマトリックスの受容者において有益な細胞応答または組織応答、好ましくは適切な有益な細胞応答または組織応答、より好ましくは最も適切な有益な細胞応答または組織応答を生成するという、そのようなマトリックスの品質を意味する。
【0065】
本発明による三次元足場の文脈で本明細書において使用される「再吸収性」という用語は、当該足場(したがって、当該足場を含むマトリックス)が適用された生体組織によって再吸収される当該足場の性質を意味する。再吸収は、例えば、前記足場の分解およびその後の代謝によって起こり得る。
【0066】
本発明のさらなる局面は、以下のスキーム、実施例、表、図および手順の説明によって例示されるが、これらは本発明を限定するためではなく、単に説明する目的で記載される。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0067】
さらに、以下の図を参照されたい。
【0068】
以下において、実施例を参照するが、これらは本発明を限定するものではなく、説明するために与えられる。
【実施例
【0069】
実施例1:
生体適合性マトリックスの三次元(3D)スクリーン印刷用各種インク(1.1~1.8)の製造、およびバッキング層の三次元(3D)スクリーン印刷用インク1.9の製造
【0070】
1.1
12gのゼラチンを200mlのPBSに40℃で200rpmの撹拌下で溶解する。完全に溶解した後、10gのセルロースを添加し、10分間撹拌する。撹拌を400rpmに上げ、2gのアルギン酸塩をインクに加え、2時間撹拌する。
インクはさらに使用するまで4℃で保存する。
【0071】
1.2
2gのコラーゲンを200mlのH2Oに加え、200rpmで1時間撹拌する。完全に分散または溶解した後、5gのセルロースと0.5gのキサンタンガムを加え、1時間撹拌する。
インクはさらに使用するまで4℃で保存する。
【0072】
1.3
100mlの1.2%コラーゲン分散液を100mlのH2Oに加える。pHをコントロールし、pH<7に調整する。完全に分散させた後、2gのアルギン酸塩を加え、2時間撹拌する。
インクはさらに使用するまで4℃で保存する。
【0073】
1.4
2gのセルロースを200mlのH2Oに加え、4℃で一晩インキュベートする。翌日、浸したセルロースを室温で1時間撹拌する。10mlのグリセロールと1gのPEGを加え、400rpmで1時間撹拌する。1.5gのコラーゲンを加え、400rpmで2時間撹拌する。バイオインクをさらにスピードミキサーで10分間、800rpmから1500rpmまで回転数を上げながら混合する。
インクをさらに使用するまで4℃で保存する。
【0074】
1.5
10gのナノセルロースを100mlのPBS、ddH2OまたはCO2濃縮水に300rpmの一定撹拌下で可溶化する。さらに、1gのアルギン酸塩を加え、450rpmで2時間撹拌する。バイオインクを4℃で一晩インキュベートする。翌日、バイオインクをさらにスピードミキサーで10分間混合し、真空下で800rpmから1300rpmまで増速する。
インクはさらに使用するまで4℃で保存する。
【0075】
1.6
2gのアルギン酸塩を50mlのPBSまたはddH2Oに溶解し、200rpmの一定撹拌下で20mlの0.9%コラーゲン懸濁液と混合する。得られたバイオインクに、さらに非オピオイド系鎮痛剤、および/またはEVを添加する。この目的のために、2.5gの非オピオイド系鎮痛剤と2.5gのPVPを20mlのCO2濃縮水に可溶化する。この非オピオイド系鎮痛剤/PVP懸濁液をバイオインクに加え、すぐ混合する。さらに、EV濃度2.5x109/mlのEV/PBS懸濁液(リン酸緩衝生理食塩水中の細胞外小胞)10mlを加える。
インクはさらに使用するまで4℃で保存する。
【0076】
1.7
2.5gのアルギン酸塩と5.5gのゼラチンを100mlのPBS、ddH2OまたはCO2濃縮水に40℃で400rpmの撹拌下で溶解する。さらに、5gの非オピオイド系鎮痛剤と5gのPVPを、得られたバイオインクに可溶化する。
インクはさらに使用するまで4℃で保存される。
【0077】
1.8
3.5gの非オピオイド系鎮痛剤と3.5gのPVPを100mlの7.5%ナノセルロースゲルに400rpmの一定撹拌下で可溶化する。
インクはさらに使用するまで4℃で保存する。
【0078】
1.9
180gのシリコン成分Aを加え、20gのシリコン成分Bと撹拌する。0.1~0.5w%のチキソトロピー増粘剤と0.5~4w%の硬化時間抑制剤を加え、撹拌する。最後に1-4w%のカラーペーストを加える。このシリコンペーストをスピードミキサーで10分間、800~1500rpmの速度で撹拌する。
【0079】
実施例2:
三次元生体適合性マトリックスの製造
【0080】
A)
3D印刷用インク組成物1.1.から1.8を使用して、3Dスクリーン印刷装置で三次元生体適合性マトリックスを製造する。1.1.から1.8のインクは、4~50℃、好ましくは20℃の温度に予熱または予冷される。スクリーン印刷用スキージは、角度が50°~80°、好ましくは65°、硬度が浸水用で65~85ショア、好ましくは75ショア、印刷用で40~90ショア、好ましくは55ショアのものが使用される。スクリーンメッシュは、ポリアミド、ポリエステル、またはスチールからなり、8~400本/cm、好ましくは48本/cm、糸の太さは27~300μm、好ましくは55μmである。スクリーンのEOM(「Emulsion over Mesh」)は8~150μm、好ましくは20~25μmの間で変化する。z軸の形状を構築する印刷プロセスは、浸水、印刷、硬化の連続的な繰り返しである。インクは、4~65℃、好ましくは20~40℃の温度で、スクイージーを用いてスクリーンメッシュを通して浸水・印刷される。印刷工程中の印刷室内の湿度は20~100%、好ましくは60%に調整される。印刷されたインクの硬化は、IR、対流乾燥、UV、または冷却システムを用いて0~180℃で実行される。好ましくは、1.1.から1.のバイオインクは、4~40℃の温度で硬化される。硬化チャンバー内の湿度は10~60%、好ましくは40%に調整することができる。印刷工程は、三次元生体適合性マトリックスの最終サイズが達成されるまで繰り返される。印刷工程は、インク1.1~1.8の組み合わせおよび/または回転を含むことができる。さらに、印刷工程は、異なるメッシュ組成および幾何学形状を有する複数のスクリーンを含むことができる。インク1.6または1.8が使用される場合、活性成分、すなわち「非オピオイド系鎮痛剤、動物細胞由来、好ましくは哺乳動物細胞由来、より好ましくはヒト細胞由来、および人工的に構築された脂質小胞から選択される少なくとも1つの成分」は、印刷プロセス自体によって、および印刷プロセス中に、三次元生体適合性マトリックスに組み込まれるようになる。しかしながら、インク1.1~1.5が使用される場合、そのような活性成分、すなわち「...から選択される少なくとも1つの成分」は、以下に記載されるように、すでに印刷された足場/マトリックスに別途添加されなければならない:
【0081】
B)
3D印刷用インク組成物1.1.から1.5を使用して、3Dスクリーン印刷装置で3次元生体適合性マトリックスを製造する。1.1.から1.5のインクは、4~50℃、好ましくは20℃の温度に予熱または予冷される。スクリーン印刷用スキージは、角度が50°~80°、好ましくは65°、硬度が浸水用で65~85ショア、好ましくは75ショア、印刷用で40~90ショア、好ましくは55ショアのものが使用される。スクリーンメッシュは、ポリアミド、ポリエステル、またはスチールからなり、8~400本/cm、好ましくは48本/cm、糸の太さは27~300μm、好ましくは55μmである。スクリーンのEOM(「Emulsion over Mesh」)は8~150μm、好ましくは20~25μmの間で変化する。z軸の形状を構築する印刷プロセスは、浸水、印刷、硬化の連続的な繰り返しである。インクは、4~65℃、好ましくは20~40℃の温度で、スクイージーを用いてスクリーンメッシュを通して浸水・印刷される。印刷工程中の印刷室内の湿度は20~100%、好ましくは60%に調整される。印刷されたインクの硬化は、IR、対流乾燥、UV、または冷却システムを用いて0~180℃で実行される。好ましくは、1.1.から1.5.のバイオインクは、4~40℃の温度で硬化される。硬化チャンバー内の湿度は10~60%、好ましくは40%に調整することができる。印刷工程は、三次元生体適合性マトリックスの最終サイズが達成されるまで繰り返される。印刷工程は、インク1.1~1.5の組み合わせおよび/または回転を含むことができる。さらに、印刷工程は、異なるメッシュ組成および形状を有する複数のスクリーンを含むことができる。
【0082】
その後、所望の活性成分(複数可)、すなわち「...から選択される少なくとも1つの成分」、例えば非オピオイド系鎮痛剤/EVは、そのような「...から選択される少なくとも1つの成分」をそのような足場/マトリックスに適用することによって、またはそのような足場/マトリックス上に適用することによって、三次元生体適合性足場/マトリックスに導入される。このような成分を塗布するステップは、噴霧、浸漬、コーティング、浸漬、含浸、塗布およびその後の凍結乾燥、ナノゾル技術、塗布およびその後の足場/マトリックスの負圧または真空への暴露などを含む、任意の適切な技術によって行うことができる。
【0083】
実施例3:
バッキング層の製造と三次元(3D)生体適合性マトリックスへの適用
【0084】
3Dスクリーン印刷された三次元生体適合性マトリックスの安定性を最大化するために、印刷プロセス中、またはその後、架橋剤を使用することができる。
【0085】
上記の実施例1の3D印刷用シリコン系組成物1.9を用いて、三次元バッキング層を作製する。1.9のペーストをスクリーン印刷装置において室温条件下で処理する。スクリーン印刷用スキージは、角度が50°~80°、好ましくは65°、硬度が浸水用65~85ショア、好ましくは75ショア、印刷用40~90ショア、好ましくは55ショアのものを使用する。スクリーンメッシュは、ポリアミド、ポリエステルまたはスチールからなり、8~400本/cm、好ましくは48本/cm、糸の太さは27~300μm、好ましくは55μmである。スクリーンEOMは8~150μm、好ましくは20~25μmの間で変化する。z軸の形状を構築する印刷工程は、浸水、印刷、硬化の連続的な繰り返しである。シリコンペーストは浸水され、室温で、スクイーグでスクリーンメッシュを通して印刷される。印刷されたシリコンペーストの硬化は、120~180℃で10~50秒間、好ましくは20~30秒間、赤外線および/または対流乾燥を使用して行われる。印刷工程は、三次元バッキング層の最終サイズが得られるまで繰り返される。印刷工程は、バッキング層を変化させるために、異なるメッシュ組成および形状を有する複数のスクリーンを含むことができる。このようなバッキング層は、その後、実施例2の三次元(3D)生体適合性マトリックスのいずれかに適用することができ、接着、貼付、ラミネートなどにより、または1つもしくは数個の追加の接着剤層を用いてそこに貼り付けることができる。
【0086】
3Dスクリーン印刷された1.1~1.8および1.9の間に、製品を最終的に仕上げるための1~数層の接着剤層を塗布できる可能性がある。このために、感圧接着剤ペーストが、前述のようにスクリーン印刷装置で室温条件下で処理される。従って、5~25μm、好ましくは10~20μmの厚さの感圧接着剤の各5~20層が、別個のキャリアマトリックスとして印刷された。
【0087】
本明細書、特許請求の範囲、および/または添付の図に開示された本発明の特徴は、別々に、およびそれらの任意の組み合わせの両方において、本発明をその様々な形態で実現するための材料となり得る。
図1
図2
【国際調査報告】