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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】多層繊維複合フィルタ媒体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/24 20060101AFI20241212BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20241212BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20241212BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20241212BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B32B5/24
B32B5/26
B01D61/14
B01D39/16 A
B01D39/16 C
B01D39/16 E
B01D29/04 510D
B01D29/04 510A
B01D29/04 530A
B01D29/04 510F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538311
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-06
(86)【国際出願番号】 US2022053718
(87)【国際公開番号】W WO2023122216
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/292,724
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス,クレントン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ムーディー,ジャレド アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラフマトゥッラー,アフラル
(72)【発明者】
【氏名】サザー,アニル シー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,エリザベス
【テーマコード(参考)】
4D006
4D019
4D116
4F100
【Fターム(参考)】
4D006GA07
4D006HA42
4D006JA02B
4D006KE11Q
4D006KE30R
4D006MA03
4D006MA22
4D006MA31
4D006MC16
4D006MC19
4D006MC24
4D006MC33
4D006MC36
4D006MC39
4D006MC54
4D006MC57
4D006MC60
4D006PC45
4D019AA03
4D019BA12
4D019BA13
4D019BB03
4D019BB08
4D019BB10
4D019BC13
4D019BD01
4D019BD02
4D019CA05
4D019CB01
4D019CB04
4D019DA03
4D116AA27
4D116BB01
4D116BC01
4D116BC06
4D116DD01
4D116EE06
4D116EE10
4D116FF15B
4D116FF18B
4D116GG12
4D116GG13
4D116GG21
4D116GG23
4D116GG26
4D116GG29
4D116QC32A
4D116VV07
4F100AK01B
4F100AT00A
4F100BA08
4F100BA25
4F100BA41B
4F100DG01B
4F100DG15A
4F100DJ00A
4F100DJ00B
4F100GB56
4F100JD05
4F100YY00B
(57)【要約】
複合媒体は、20以上の層を有する積層体を含み、各層は、第1の主表面及び反対側の第2の主表面を備えた基材と、その基材の第1の主表面に積み重ねられた、100nm~1.5μmの直径を有するポリマー繊維を含む繊維層とを含む。各繊維層は個別に5μm~100μmの厚さを有し、各層は個別に0.1μm~10μmの細孔径を有する。フィルタは、ハウジングと、そのハウジング内に配置された上記の複合媒体とを含むことができる。そのフィルタは、シリンジフィルタであり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20以上の層を有する積層体を含み、それぞれの層は、
第1の主表面及び反対側の第2の主表面を備えた基材と、
前記基材の第1の主表面に積み重ねられた、100nm~1.5μmの直径を有するポリマー繊維を含む繊維層と
を含み、各繊維層は個別に5μm~100μmの厚さを有し、それぞれの前記層は個別に0.1μm~10μmのP95細孔径を有する、複合媒体。
【請求項2】
前記基材が不織布基材を含む、請求項1に記載の複合媒体。
【請求項3】
前記基材が膜を含む、請求項1又は2に記載の複合媒体。
【請求項4】
前記積層体が、2つ以上の繊維層を含む層を備え、任意で前記積層体のそれぞれの層は、2つ以上の繊維層を含み、任意で前記積層体は、前記基材の前記第2の主表面に積み重ねられた第2の繊維層を備えた層を含む、請求項1から3のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項5】
前記層の前記細孔径は、0.5μm~5.0μm、0.7μm~2.0μm、又は0.8μm~1.5μmである、請求項1から4のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項6】
前記繊維層の前記細孔径が、前記積層体全体に亘って細孔径の勾配を形成し、任意で前記複合媒体が入口側及び出口側を有し、前記細孔径の勾配は、前記入口側での50μmの最大細孔径から、前記出口側での0.1μmの最小細孔径となる、請求項1から5のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項7】
前記積層体は、0.01μm~2.5μmの細孔径を有する、請求項1から6のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項8】
前記積層体は、100~3000、300~2000、又は500~1000の層を有する、請求項1から7のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項9】
前記積層体が、第1の組成を有する第1の繊維層と、前記第1の組成とは異なる第2の組成を有する第2の繊維層とを含み、任意で前記積層体の繊維層が、前記積層体全体に亘って化学組成の勾配を形成する、請求項1から8のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項10】
前記積層体でのそれぞれの層が、同一の組成及び構造を有する、請求項1から8のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項11】
前記積層体が、第1の圧縮度合いである第1の複数の層と、前記第1の圧縮度合いとは異なる第2の圧縮度合いである第2の複数の層とを含む、請求項1から10のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項12】
複数の層が、前記積層体全体に亘って圧縮度合いの勾配を有している、請求項11に記載の複合媒体。
【請求項13】
前記複合媒体の初期水流束が、150mL/cm/時間/kPa以上~300mL/cm/時間/kPaである、請求項1から12のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項14】
前記繊維層が、1μm-1以上の体積に対する表面積の比、任意で前記繊維層が、20μm-1以下の体積に対する表面積の比を有する、請求項1から13のいずれかに記載の複合媒体。
【請求項15】
ハウジングと、
該ハウジング内に配置された請求項1から14のいずれかに記載の複合媒体と
を含むフィルタであって、任意でシリンジフィルタである、フィルタ。
【請求項16】
前記フィルタの前記ハウジングが、第1の複数の層を第1の度合いに圧縮し、第2の複数の層を第2の度合いに圧縮するように構成され、前記第2の圧縮の度合いは前記第1の圧縮の度合いとは異なり、任意で複数の層が、前記積層体全体に亘って圧縮度合いの勾配を有する、請求項15に記載のフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年12月22日出願の米国仮特許出願第63/292,724号の利益を主張するものであり、その出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、微細繊維を含有するフィルタ媒体に関する。本開示は更に、微細繊維を含有する複数の層を含むフィルタ媒体に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
複合媒体は、20以上の層を有する積層体を含み、各層は、第1の主表面及び反対側の第2の主表面を有する基材と、その基材の第1の主表面に積み重ねられた、100nm~1.5μmの直径を有するポリマー繊維を含む繊維層とを含む。各繊維層は、個別に5μm~100μmの厚さを有する。各層は個別に0.1μm~10μmのP95細孔径を有する。基材は不織布基材であってもよい。基材は膜であってもよい。
【0004】
積層体は、2つ以上の繊維層を有する層を含んでもよい。積層体の各層は、任意で2つ以上の繊維層を含んでもよい。積層体は、第2の繊維層が基材の第2の主表面に積み重ねられた層を含んでもよい。
【0005】
繊維層のP95細孔径は、0.5μm~5.0μm、0.7μm~2.0μm、又は0.8μm~1.5μmであってもよい。繊維層の細孔径は、積層体全体に亘って細孔径の勾配を形成してもよい。複合媒体は入口側及び出口側を有してもよく、細孔径の勾配は、入口側での50μmの最大のP95細孔径から、出口側での0.1μmの最小のP95細孔径であってもよい。
【0006】
積層体の細孔径は0.01μm~2.5μmであってもよい。積層体は、100~3000、300~2000、又は500~1000の層を含んでもよい。
【0007】
積層体は、第1の組成を有する第1の繊維層と、第1の組成とは異なる第2の組成を有する第2の繊維層とを含んでもよい。積層体の繊維層は、積層体全体に亘って化学組成の勾配を形成してもよい。あるいは、積層体での各層は、同一の組成及び構造を有してもよい。
【0008】
積層体は、第1の圧縮度合いである第1の複数の層と、第1の圧縮度合いとは異なる第2の圧縮度合いである第2の複数の層とを含んでもよい。その複数の層は、積層体全体に亘って圧縮度合いの勾配を有してもよい。
【0009】
複合媒体の初期水流束は、150mL/cm/時間/kPa~300mL/cm/時間/kPaであってもよい。
【0010】
繊維層の体積に対する表面積の比は、1μm-1以上であってもよく、任意で20μm-1以下であってもよい。
【0011】
フィルタは、ハウジングと、そのハウジング内に配置された複合媒体とを含んでもよい。そのフィルタは、シリンジフィルタであってもよい。
【0012】
フィルタハウジングは、第1の複数の層を第1の度合いに圧縮し、第2の複数の層を第2の度合いに圧縮するように構成されてもよく、ここで第2の圧縮の度合いは、第1の圧縮の度合いとは異なる。その複数の層は、積層体全体に亘って圧縮度合いの勾配を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】一実施形態での単一の層の概略図である。
図1B】別の一実施形態での単一の層の概略図である。
図2】20以上の図1Aの層の積層体を含む、一実施形態での複合媒体の概略図である。
図3図2の複合媒体を含む、一実施形態でのフィルタの概略断面図である。
図4】様々な圧縮度合いの複数の層の積層体を含む、一実施形態でのフィルタの概略断面図である。
図5】一実施形態での単一の層の概略上面図である。
図6】一実施形態での2種類の微細繊維層を有する単一の層の概略上面図である。
図7】2つの図6の層が積層体として配置された一実施形態の概略図である。
図8A-8D】様々な配置での2つの図6の層の積層体の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
本明細書で使用される全ての科学用語及び技術用語は、別段の定めがない限り、その技術分野で一般的に使用される意味を有する。本明細書で提供される定義は、本明細書で多く使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0015】
別段の定めがない限り、用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」としては、限定するものではないが、有機ホモポリマー、コポリマー(例えばブロック、グラフト、ランダム及び交互コポリマーなど)、ターポリマーなど、並びにこれらの混合物及び修飾物が挙げられる。更に、具体的に限定されていない限り、「ポリマー」という用語は、材料のあらゆる可能な幾何学的構成を含むものとする。これらの構成には、限定されるものではないが、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチック対称が含まれる。
【0016】
本明細書において、「樹脂」又は「樹脂性の」は、モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーを指し、特に繊維形成中に微細繊維の表面に移動できる性質のものを指す。
【0017】
本開示において、用語「芳香族環」は、有機化合物の共役環系を意味する。芳香族環は、炭素原子のみを含んでもよく、又は酸素、窒素若しくは硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。
【0018】
本開示において、用語「アルキル化」は、化合物がその水素原子又は負電荷をアルキル基で置換するように反応し、それによりそのアルキル基が化合物に共有結合される化合物を説明するために使用される。
【0019】
本開示において、用語「アルキル」は、アルカンのラジカルであって、直鎖、分岐、環状、及び二環式アルキル基、並びにそれらの組み合わせを含む、一価の基を説明するために使用され、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を含む。別段の定めがない限り、アルキル基は通常は1~30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、n-オクチル、n-ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。
【0020】
本明細書において、用語「微細繊維」は、平均繊維径が10μm以下の繊維を指すために使用される。これは、通常は本開示の複数の繊維の試料の平均繊維径が10μm未満であることを意味する。
【0021】
本明細書において、用語「繊維径」は、繊維の平均直径を指すために使用され、複数の繊維の試料での繊維径により、示された平均繊維径を示す。繊維径は、トップダウンSEM画像を用いて測定することができる。試料は、例えば60:40のAu:Pd混合物を含む金とパラジウムの混合物などのスパッタコーターで、スパッタコーティングされてもよい。より正確な繊維径測定値は、試料中の少なくとも30箇所で繊維の直径を測定することによって得られることができる。Trainable Weka Segmentation(ImageJプラグイン)などのソフトウェアが、繊維径の分析に有用であり得る。
【0022】
本明細書において、用語「細孔径」は、流れの平均細孔径を指すために使用される。
【0023】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、細孔径(例えばP5、P50、及びP95)は、キャピラリーフローポロメトリーを使用して測定される。キャピラリーフローポロメトリーは、連続圧力スキャンモードを使用して実施されることができる。湿潤液として、20.1ダイン/cmの表面張力及び0の湿潤接触角を有するシリコーンオイルを使用することが有用であり得る。試料を、まず乾燥状態で低圧から高圧まで変化させながら試験し、次に湿潤状態で再び低圧から高圧まで変化させながら試験してもよい。試験は、通常は周囲温度条件(例えば20℃~25℃)で実施される。乾燥曲線及び湿潤曲線の両方について、圧力スキャンの範囲に亘って多数のデータ点、例えば256個のデータ点を収集することができる。通常は、屈曲係数及び/又は形状係数は使用されない(即ち、調整係数を使用する他の試験方法との比較のために、1に等しい係数を使用することができる)。本明細書で使用される場合、値P(x)は、本明細書に記載の方法を使用して測定されるように、湿潤曲線が乾燥曲線の(100-x)%に等しい場合に計算された細孔径である。計算値ではあるものの、これは層を通る全流量のx%がそのサイズ以下の細孔を通過する特質を表すものとして理解されることができる。例えば、P50(流れの平均細孔径)は、湿潤曲線が乾燥曲線の半分に等しい特質を表し、層を通る全流量の50%がそのサイズ以下の細孔を通るような細孔径とみなすことができる。P95は、層を通る全流量の95%がそのサイズ以下の細孔を通る特質を表す。
【0024】
平均細孔径(例えば平均最大細孔径)は、少なくとも3つの測定値(少なくとも3つの異なる試料位置から得られた)の平均により計算されることができる。最大細孔径(P100と呼ばれる場合もある)の個々の測定値はバブルポイントで検出されることができ、ここでそのバブルポイントは、流体が試料を通過し始めた後に検出され、3つの連続測定値が少なくとも1%増加し、スキャン全体で256個のデータ点が、1分あたり約17個のデータ点の速度で収集される。
【0025】
本明細書において、頭字語「SAVR」は、材料の体積に対する表面積の比を表すために使用される。SAVRは測定値又は推定値のいずれかであってもよい。SAVRは、SAVR=(4*c)/dfとして推定されることができ、ここでcは材料(例えば繊維層)のソリディティであり、dfは層の平均繊維径である。SAVRは、SAVR=(繊維の長さ*繊維の円周)/層の体積、として計算されることもできる。SAVRは一般的には、材料の直径1インチ(25mm)のダイカット片などの、材料の特定の面積について計算される。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、「有意に」と同じ意味を有し、後に続く用語を「少なくとも約90%」、「少なくとも約95%」、又は「少なくとも約98%」で修飾するものとして理解されることができる。本明細書で使用される場合、用語「実質的に…ない」は、「有意には…ではない」と同じ意味を有し、「実質的に」の逆の意味を有する、即ち、後に続く用語を「25%以下」、「10%以下」、「5%以下」、又は「2%以下」で修飾するものとして理解されることができる。
【0027】
本明細書において、用語「約」は、当業者によって予想されるような測定値の通常のばらつきを含めるために数値と共に使用され、「およそ」と同じ意味を有し、記載された値の±5%などの典型的な誤差の範囲を包含すると理解される。
【0028】
「ある(a、an)」及び「その又は上記(the)」などの用語は、単一のもの又は物のみを指すことを意図するものではなく、全体的な集合を含み、その特定の例示が説明のために使用され得る。
【0029】
用語「ある(a、an)」及び「その又は上記(the)」は、用語「少なくとも1つの」と同義で使用される。その後に列記が続く表現「…のうちの少なくとも1つ」及び「…のうちの少なくとも1つを含む」は、その列記での項目のうちのいずれか1つ、及びその列記での2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「又は」は、そうでないことが文脈から明らかでない限り、通常は「及び(又は並びに)/又は(又は若しくは)」を含むその通常の意味で使用される。用語「及び(又は並びに)/又は(又は若しくは)」は、列記された要素のうちの1つもしくは全て、又は列記された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0031】
端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含み、又は10以下は、10、9.4、7.6、5、4.3、2.9、1.62、0.3などを含む)。値の範囲が、「最大」で又は「少なくとも」特定の値である場合、その値はその範囲に含まれる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「有する」、「含む」「備える」などは、その非限定的な意味で使用され、一般に「…を含むがそれに限定されない」を意味する。「…から本質的になる」、「…からなる」などは、「…を備える、含む」などに包含されることが理解される。本明細書で使用される場合、「…から本質的になる」は、組成物、物、方法などに関する場合、その組成物、物、方法などの構成要素が、列挙されている構成要素と、その組成物、物、方法などの1つ以上の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない任意の他の構成要素とに限定されることを意味する。
【0033】
「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下で他の実施形態もまた好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを暗示するものではなく、他の実施形態を、特許請求の範囲を含む本開示の範囲から除外することを意図するものではない。
【0034】
「上」、「下」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、並びに他の方向及び配向などの本明細書で言及されるいずれの方向も、本明細書において、明確にするのために図面を参照して説明され、実際の装置若しくはシステム、又はその装置若しくはシステムの使用を限定するものではない。本明細書に記載の装置又はシステムは、多数の方向及び配向において使用されることができる。
【0035】
本開示は、微細繊維を含有するフィルタ媒体に関する。本開示は更に、微細繊維を含有する複数の層を含むフィルタ媒体に関する。
【0036】
一実施形態では、複合媒体は、層を含む積層体を含み、各層は、第1の主表面及び反対側の第2の主表面を有する基材と、その基材の第1の主表面に積み重ねられた繊維層とを含む。その繊維層はポリマー繊維を含む。その繊維は微細繊維又はナノ繊維であってもよい。繊維の直径は100nm~1.5μmであってもよい。繊維層の厚さは5μm~100μmであってもよい。上記層のP95細孔径は、0.1μm~10μmであってもよい。
【0037】
一実施形態では、複合媒体(例えば複合媒体の繊維層)は、体積に対する表面積の高い比(「SAVR」)を有する。複合媒体は、層状の微細繊維構造及び高いSAVRによって恩恵を受けることができるあらゆるフィルタに使用されることができる。一部の例では、その複合媒体はシリンジフィルタに使用される。
【0038】
積層体での層の数を変更して複合媒体に深さを追加し、その結果として異なる特性を加えることができる。複合媒体は、積層体の層が異なっていてもよい。複合媒体は、異なる特性を備えた複数の積層体を含んでもよい。複合媒体は、例えば細孔径の勾配、又は化学組成及び化学官能性の勾配などの1つ以上の様々な勾配を提供することができる。
【0039】
積層体での層の数は、2つ以上、5つ以上、10以上、20以上、50以上、100以上、200以上、300以上、又は500以上であってもよい。積層体は、3000以下、2500以下、2000以下、1500以下、又は1000以下の層を含んでもよい。積層体での層の数は、100~3000、300~2000、又は500~1000であってもよい。
【0040】
積層体の各層は、少なくとも1つの基材と、少なくとも1つの繊維層とを有する。通常は、各層は1つの基材のみを含む。その層は、単一の基材と、基材に積み重ねられた単一の繊維層とを含んでもよい。ここで図1Aを参照すると、基材21と、基材21上に積み重ねられた繊維層22とを含む単一の層10の概略図が示される。20以上の層10の積層体60を含む複合媒体50の概略図が、図2に示される。
【0041】
いくつかの実施形態では、層のうちの1つ以上は、単一の基材と、その基材に積み重ねられた2つ以上の繊維層とを含んでもよい。例えば、層のうちの1つ以上は、単一の基材と、その基材の第1の主面に積み重ねられた1つの繊維層と、基材の第2の主面に積み重ねられた別の繊維層とを含んでもよい。ここで図1Bを参照すると、基材21と、基材21の第1の主面に積み重ねられた第1の繊維層22Aと、基材21の第2の主面に積み重ねられた第2の繊維層22Bとを含む、単一の層12の概略図が示される。
【0042】
層はまた、基材に積み重ねられた第1の繊維層と、第1の繊維層に積み重ねられた1つ以上の追加の繊維層とを含んでもよい。そのような繊維層は、例えばそれらの構造又は化学組成によって互いに区別されることができる。
【0043】
一実施形態では、繊維層はポリマー繊維を含む。即ち、繊維は、ポリマー材料を含むか又はポリマー材料からなる。いくつかの実施形態では、繊維層はガラス繊維を含まない。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、電界紡糸による積み重ねに適するように選択される。ポリマー繊維の組成はまた、複合媒体の使用目的に基づいて、繊維層に化学的親和性などの望ましい特性を付与するように選択されてもよい。
【0044】
上記繊維の直径は、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、又は500nm以上であってもよい。繊維の直径は、3μm以下、2μm以下、1.5μm以下、1.2μm以下、又は1.0μm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、繊維は100nm~1.5μm、300nm~1.2μm、又は500nm~1.0μmの範囲の直径を有する。一部の例では、繊維は、微細繊維であることを特徴としてもよい。各層の繊維径は、積層体全体を通して必ずしも同じである必要はない。各層の繊維径は個別に選択されてもよい。積層体での層は、積層体全体に亘って繊維径勾配を形成してもよい。
【0045】
積層体の各繊維層の厚さは、個別に5μm以上、10μm以上、25μm以上、又は50μm以上であってもよい。各繊維層の厚さは、個別に100μm以下、80μm以下、又は60μm以下であってもよい。繊維層の厚さは、5μm~100μm、10μm~80μm、又は20μm~60μmの範囲であってもよい。各繊維層の厚さは、積層体全体を通して必ずしも同じである必要はない。積層体での異なる繊維層が、異なる厚さを有してもよい。積層体での繊維層は、積層体全体に亘って繊維層の厚さの勾配を形成してもよい。
【0046】
基材の厚さは、50μm以上、100μm以上、又は500μm以上であってもよい。基材の厚さは、1000μm以下、750μm以下、又は500μm以下であってもよい。基材の厚さは、50μm~1000μm、又は100μm~500μmであってもよい。層(基材と繊維層との組み合わせ)の全体の厚さは、55μm~1100μm、又は150μm~600μmであってもよい。フィルタ媒体は100~3000の層の積層体を含み得るため、フィルタ媒体の全体の厚さは5500μm(5.5mm)以上となり得る。
【0047】
各層のP95細孔径は、個別に0.05μm以上、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、又は1.0μm以上であってもよい。各層のP95細孔径は、個別に20μm以下、10μm以下、7.5μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下、2.0μm以下、又は1.5μm以下であってもよい。層のP95細孔径は、0.1μm~10μm、0.5μm~5.0μm、0.7μm~2.0μm、0.8μm~1.5μm、又は1.0μm~1.5μmの範囲であってもよい。各層の細孔径は、積層体全体を通して必ずしも同じである必要はない。積層体での異なる層が、異なる細孔径を有してもよい。積層体での層は、積層体全体に亘って層の細孔径の勾配を形成してもよい。一実施形態では、複合媒体は、高いSAVRを有する。繊維層のSAVRは、1μm-1以上、2μm-1以上、又は5μm-1以上であってもよい。繊維層のSAVRは、20μm-1以下、又は15μm-1以下であってもよい。繊維層のSAVRは、1μm-1~20μm-1、又は2μm-1~15μm-1の範囲であってもよい。
【0048】
基材は、任意の好適な材料で作られることができる。いくつかの実施形態では、基材は不織布基材である。いくつかの実施形態では、基材は膜を含む。
【0049】
積層体全体のP95細孔径は、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.75μm以上、又は1.0μm以上であってもよい。積層体のP95細孔径は、2.5μm以下、2.2μm以下、2.0μm以下、1.75μm以下、1.5μm以下、又は1.0μm以下であってもよい。積層体のP95細孔径は、0.01μm~2.5μm、0.1μm~2.0μm、又は0.5μm~1.5μmであってもよい。
【0050】
一実施形態では、複合媒体の初期水流束は、100mL/cm/時間/kPa以上、120mL/cm/時間/kPa以上、150mL/cm/時間/kPa以上、175mL/cm/時間/kPa以上、又は200mL/cm/時間/kPa以上である。初期水流束は、350mL/cm/時間/kPa以下、300mL/cm/時間/kPa以下、又は250mL/cm/時間/kPa以下であってもよい。水流束は、25℃及び1バールの水を複合媒体に適用し、流量計で流量を測定することによって測定される。測定される値には、水の圧力、水温、及び体積流量が含まれる。
【0051】
繊維層のポリマー繊維を調製するために、任意の適したポリマー又はポリマーの組み合わせを使用することができる。繊維層の組成は、個別に選択されてもよい。単一繊維の材料は、その繊維全体に亘って均質(例えばポリマー、コポリマー、若しくは複数のポリマーのブレンド)であってもよく、又はコア-シース構造を含んでもよく、この場合にはコアはシースとは異なる組成を有する。好適なポリマー材料は、例えば2012年9月21日出願の国際公開第2013/043987号明細書及び2014年3月5日出願の国際公開第2014/164130号明細書に記載されており、これらはいずれもその全体が参照により本明細書に援用される。
【0052】
いくつかの実施形態では、ポリマー繊維は、ポリマー材料(例えば繊維形成ポリマー)を樹脂性アルデヒド組成物と混合するか又はブレンドすることによって形成される。特定の実施形態では、アルデヒド組成物はメラミン-アルデヒド組成物である。繊維への形成時に、繊維形成ポリマー材料と樹脂性アルデヒド組成物の適切な比率での混合物又はブレンドは、少なくとも2つの(例えば同心又は同軸の)相を形成することができる。第1の相は、繊維形成ポリマー材料を含む内部コアである。そのコアは、樹脂性アルデヒド組成物を含む第2の相(コーティング)によって取り囲まれる。樹脂性アルデヒド組成物のある割合が、コアに存在する隣接するポリマー鎖と架橋してもよい。ポリマー材料と樹脂性アルデヒド組成物の混合又はブレンドを含む移行層又は移行相が、コアとコーティングの間に形成され得る。ポリマーに対する樹脂性アルデヒド組成物の重量比は、ポリマー100重量部あたり樹脂性アルデヒド組成物20重量部以上であってもよい。繊維形成ポリマー材料はまた、樹脂性アルデヒド組成物のアルコキシ基によって架橋することができる官能基(例えば活性水素基)などの反応性基を含んでもよい。
【0053】
用語「繊維形成ポリマー」(例えばホモポリマー又はコポリマー)は、反応性添加剤なしで微細繊維を形成することができるポリマーを指すために使用される。
【0054】
繊維形成ポリマー材料及び樹脂性アルデヒド組成物は、溶液又は溶融物の形態で組み合わされることができる。特定の実施形態では、ポリマー繊維は、溶液又は分散液から電界紡糸される。従って、ポリマー材料及び樹脂性アルデヒド(例えばメラミン-アルデヒド)組成物は、電界紡糸に適した少なくとも1つの共通の溶媒又は溶媒混合物に分散又は溶解可能である。
【0055】
好適な樹脂性アルデヒド組成物は、本明細書に記載の微細繊維の作製に使用されるポリマーを架橋させることができる、分子1個あたり2つ以上のアルコキシ基を含む。架橋剤として有用な例示の樹脂性アルデヒド組成物としては、尿素とアルデヒドの縮合生成物、フェノールとアルデヒドの縮合生成物、又はメラミンとアルデヒドの縮合生成物が挙げられる。架橋樹脂の1つの有用な部類としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリルなどの窒素化合物をベースとする樹脂、及びアルデヒドを窒素化合物と反応させることによって作られる他の同様の樹脂が挙げられる。
【0056】
有用な樹脂状アルデヒド組成物(例えばメラミン-アルデヒド組成物)としては、高メチル化メラミン、部分メチル化メラミン、メチル化高イミノメラミン、高アルキル化混合エーテルメラミン、高アルキル化カルボキシル化高イミノ混合エーテルメラミン、高n-ブチル化メラミン、n-ブチル化高イミノ及び部分n-ブチル化メラミン、部分イソ-ブチル化メラミン、部分n-ブチル化尿素、部分イソ-ブチル化尿素、グリコールウリル、高アルキル化混合エーテルメラミン-ホルムアルデヒド、高アルキル化混合エーテルカルボキシル化メラミン樹脂、ヘキサブトキシメチルメラミン、ブトキシメチルメラミン、高アルキル化混合エーテルメラミン、メトキシメチルメチロールメラミン、高メチル化メラミン樹脂、メタノール及びn-ブトキシエタノール/n-ブタノールブレンドで共エーテル化されたメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、n-ブタノール中でメタノール及びn-ブタノールで共エーテル化されたメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、n-ブタノール及びブチルグリコールのブレンドに溶解されたブチル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、部分n-ブチル化メラミン、高固形分の高メチル化メラミン樹脂、Allnex GmbH(ドイツ、フランクフルト・アム・マイン)から入手可能な商標名CYMELで販売されている種々の樹脂状アルデヒド組成物、BASF AG(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)から入手可能な商標名LUWIPALで販売されている種々の樹脂状アルデヒド組成物、Prefere Resins Holding GmbH(ドイツ、エルクナー)から入手可能な商標名RESIMENE、MAPRENAL、及びMADURITで販売されている樹脂などの化合物及びそれらの混合物が挙げられる。樹脂性アルデヒド組成物の様々な組み合わせを、必要に応じて使用することができる。置換の程度との関連における用語「高」(例えば「高アルキル化」、「高メチル化」など)は、50%以上を意味するものと理解される。即ち、利用可能な置換部位のうち50%以上が置換されている。
【0057】
好ましい繊維形成ポリマー材料は、樹脂性アルデヒド組成物と反応してこれに架橋することができる、1つ以上の活性水素基を含む。活性水素基としては、限定するものではないが、チオール(-SH)、ヒドロキシル(-OH)、カルボキシレート(-COH)、アミド(-C(O)-NH-又はC(O)-NH2)、アミノ(-NH)、又はイミノ(-NH-)、及び無水物(-COO)R基(加水分解時)が挙げられる。本開示のポリマー組成物での使用に適したポリマー材料としては、活性水素を有する付加ポリマー材料及び縮合ポリマー材料の両方が挙げられる。適当な例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、セルロースエーテル及びエステル、ポリ(無水マレイン酸)、キトサンなどのポリアミン、並びにこれらの混合物、ブレンド、アロイ、及びブロック、グラフト又はランダムコポリマーが挙げられる。これらの一般的な部類に含まれる好ましい材料としては、架橋及び非架橋形態の様々な加水分解度(例えば87%~99.5%)のポリ(ビニルアルコール)が挙げられる。有用なポリマー材料の他の好ましい例としては、エチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、及びこれらの混合物からなる群から選択されるセルロース誘導体;例えばスチレン-(メタ)アクリル酸コポリマー及びエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマーなどのポリ(メタ)アクリル酸ホモポリマー及びコポリマー;例えばポリビニルブチラール及びエチレンコ-ビニルアルコールコポリマーなどのポリビニルアルコールホモポリマー又はコポリマー;例えばスチレン-無水マレイン酸コポリマーなどのポリ(無水マレイン酸)ホモポリマー又はコポリマー;並びにポリウレタンが挙げられる。本明細書では、「ポリ(メタ)アクリル酸」は、ポリ(アクリル酸)及びポリ(メタクリル酸)ポリマーを指す。
【0058】
多くの種類のポリアミドもまた、本開示の繊維でのポリマー材料として有用である。ポリアミド縮合ポリマーの1つの有用な部類は、ナイロン材料である。用語「ナイロン」は、全ての長鎖合成ポリアミドの総称である。一般的にナイロンの命名法は、出発物質がC6ジアミン及びC6二酸であることを示すナイロン-6,6(最初の数字はC6ジアミンを示し、2番目の数字はC6二酸化合物を示す)のように一連の数字を含む。別のナイロンは、少量の水の存在下でε-カプロラクタムを重縮合することによって作られることができる。この反応は、線状ポリアミドであるナイロン-6(ε-アミノカプロン酸としても知られる環状ラクタムから作られる)を形成する。更に、ナイロンコポリマーも想定される。例示のナイロン材料としては、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、これらの混合物又はコポリマーが挙げられる。
【0059】
コポリマーは、反応混合物中で様々なジアミン化合物、様々な二酸化合物、及び様々な環状ラクタム構造を組み合わせ、次にポリアミド構造中にランダムに配置されたモノマー材料を含むナイロンを形成することによって作られることができる。例えばナイロン-6,6-6,10材料は、ヘキサメチレンジアミンと、C6及びC10の二酸のブレンドとから作られるナイロンである。ナイロン-6-6,6-6,10は、ε-アミノカプロン酸と、ヘキサメチレンジアミンジ酸と、C6及びC10二酸材料のブレンドとの共重合によって作られるナイロンである。本明細書において、用語「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマーから作られるポリマーを含み、ターポリマーなどを含む。
【0060】
ブロックコポリマーもまた、本開示の繊維でのポリマー材料として有用である。そのようなコポリマーで繊維を電界紡糸する場合には、溶媒又は溶媒混合物の選択が重要である。選択される溶媒又は溶媒混合物は、両方のブロックが溶媒に溶けるように選択される。有用なブロックコポリマーの例としては、Arkema Inc.(ペンシルベニア州フィラデルフィア)から入手可能なPEBAX ε-カプロラクタム-b-エチレンオキシド、並びにエチレンオキシド及びイソシアネートのポリウレタンが挙げられる。
【0061】
ポリビニルアルコールのような付加ポリマー、及びアクリル酸とのポリ(アクリロニトリル)コポリマーなどの非晶質付加ポリマーもまた有用である。これらは、低圧及び低温で様々な溶媒及び溶媒混合物に溶解又は分散可能であるため、比較的容易に溶液紡糸することができる。例えば87~99.9+%の加水分解度を有するポリ(ビニルアルコール)を、本開示の繊維でのポリマー材料として使用することができる。
【0062】
好ましいポリマーとしては、ポリアミド(特にナイロン)、ポリエステルアミド、ポリビニルアルコール、エチレン-コ-ビニルアルコールポリマー、ポリビニルブチラール、及びポリ(マレイン酸無水物)が挙げられる。好ましい活性水素基としては、ヒドロキシ-1、アミノ、及びアミド基が挙げられる。ポリマー材料の様々な組み合わせを、必要に応じて使用することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポリマー繊維は、繊維形成ポリマー材料と、例えば繊維形成プロセス又は後処理プロセスにおいて互いに反応することができる少なくとも2つの反応性添加剤とから形成されることができる。少なくとも2つの反応性添加剤は、任意で繊維形成ポリマーとも反応する。通常は、1つ以上の繊維形成ポリマーに対する1つ以上の反応性添加剤の量は、繊維形成ポリマー100重量部あたり、反応性添加剤0.5重量部以上、1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、又は20重量部以上である。通常は、1つ以上の繊維形成ポリマーに対する1つ以上の反応性添加剤の量は、繊維形成ポリマー100重量部あたり、反応性添加剤200重量部以下、又は50重量部以下である。
【0064】
用語「反応性添加剤」は、他の反応性添加剤の官能基と反応することができ、任意で繊維形成ポリマーと反応することができる官能基を含むモノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーを指す。
【0065】
反応性添加剤の重量平均分子量は、3000ダルトン未満であってもよい。好ましい反応性添加剤は、室温及び室内圧において実質的に不揮発性である。反応性添加剤は、電界紡糸などでの処理のためのポリマー材料について選択される溶媒で、好ましい可溶性を有するように選択される。反応性添加剤は、微細繊維の表面に、通常は繊維形成中に、移動することができる表面移動剤であってもよい。例示の様々な好適な反応性添加剤を官能基で分類すると、次の通りである:アルコキシ官能性、ヒドロキシル官能性、酸官能性、グリシジルエーテル官能性、イソシアネート官能性、アミン官能性、及びジクロロ官能性。様々な反応性の組み合わせ(例えば互いに対して反応性である材料の組み合わせ)を、本開示の微細繊維の作製に使用することができる。
【0066】
適したアルコキシ官能性反応性添加剤としては、上述の例示の樹脂性アルデヒド組成物(例えばメラミン-アルデヒド組成物)が挙げられる。
【0067】
ヒドロキシル官能性反応性添加剤としては、ビスフェノールA;ビスフェノールAF;4,4(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(PDPBPA);4,4’(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(PEDBPA);HOSTANOX O3(Clariant製)、IRGANOXなどの商品名で入手可能なものなどの、ヒンダード芳香族フェノールなどのポリマー加工において一般的に使用されるヒドロキシル基含有酸化防止剤;Omnova Chemicals社のPOLYFOX反応性ポリマー中間体などのフッ素化ジオール;Solvayから商品名FOMBLIN PFPE FUNCTIONAL及びFLUOROLINKで入手可能なヒドロキシル含有化合物;脂肪族ポリカーボネートジオール(例えばPerstopから商品名M112で入手可能なもの);フェノキシ系樹脂;フェノール系樹脂;ノボラック樹脂;レゾルシノール;並びにポリオールが挙げられる。ポリオールを使用する場合には、そのようなポリオールは好ましくは、ポリオール分子1個あたり少なくとも2つのヒドロキシル基、多くの場合に20個までのヒドロキシル基を含む。ヒドロキシル官能性反応性添加剤としては、(メタ)アクリル化ペンタエリトリトール誘導体、(メタ)アクリル化グリセロール、(メタ)アクリル化トリメチロールプロパン、(メタ)アクリル化DGEBA、不飽和ポリエステル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコールプロポキシレートなどのヒドロキシル官能性不飽和モノマー;トリメチロールプロパン(例えば、1,1,1-トリメチロールプロパン)又はペンタエリトリトール又はグリセロール、エリトリトール、トレイトール、ペンタエリトリトール、ソルビトールなどのアリルエーテルなどの多価アルコールのアリルエーテル及びエステルなどが挙げられる。ヒドロキシル官能性反応性添加剤としては、シクロヘキサンジメタノール(例えばDowから入手可能なジオールUNOXOL)又はそのエトキシレート、エトキシル化又はプロポキシル化多価アルコール(例えばPerstropから商品名BOLTRONポリオール及びエトキシル化ペンタエリトリトールで入手可能なもの)が挙げられる。これらは複素環をベースとするポリオールを含むことができる。これらは、スチレンなどの不飽和芳香族モノマーと、Lyondell Corp.から商品名SAAで入手可能なスチレン-アリルアルコールコポリマーなどのヒドロキシル含有不飽和モノマーとの、コポリマーを含むことができる。
【0068】
ヒドロキシル官能性反応性添加剤としては、ポリビニルアルコールなどのヒドロキシル基を含有するポリマー;エチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及び酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースなどのヒドロキシル基を含有するポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0069】
酸官能性反応性添加剤としては、二酸、三酸などが挙げられる。これらは典型的には、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、トラウマチン酸、ムコン酸、クエン酸、アスコルビン酸、ジメチロールプロピオン酸などのカルボン酸;Solvayから商品名FOMBLIN PFPE FUNCTIONAL及びFLUOROLINKで入手可能なものなどの酸含有化合物などのフッ素化酸;ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンメタクリル酸などのポリカルボン酸である。酸官能性反応性添加剤としては、塩化アジポイルなどのアシルハロゲン化物も挙げられる。酸官能性反応性添加剤は、弱酸性オリゴマー又はポリマーを含んでもよい。例としては、(メタ)アクリル酸(即ちアクリル酸又はメタクリル酸)とスチレンなどの他の不飽和モノマーとのコポリマー、マレイン酸又は無水物とスチレンなどの他の不飽和モノマーとのコポリマー(例えばスチレン-無水マレイン酸コポリマー)、グラフト基がカルボン酸又はその無水物であるグラフトポリマー、リン酸及びそのエステルを含むポリマー(例えばAllnex GmbHから商品名ADDITOL XL-180で入手可能な添加剤)、及び二重官能性を特徴とする不飽和ポリカルボン酸樹脂(例えばSartomerから商品名SARBOX SB500E 50で入手可能なもの)が挙げられる。
【0070】
グリシジルエーテル官能性反応性添加剤としては、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのジグリシジルエーテル含有添加剤、及びエポキシ樹脂若しくは低分子量反応性エポキシ樹脂又は希釈剤で販売されている樹脂が挙げられる。代表的な例としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、Dow Chemicalsによって商品名D.E.Rで販売されているエポキシ反応性希釈剤が挙げられる。これらには、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA/Fジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、並びに変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールA/Fジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールFジグリシジルエーテルなどが含まれる。他の例としては、Dow Chemicalsによって商品名D.E.N.で販売されているエポキシノボラック樹脂、及びMomentiveによって販売されているようなエポキシ樹脂が挙げられる。これらには、エポキシ樹脂、及びエポキシ多官能性樹脂、エポキシノボラック樹脂、並びに商品名EPONで販売されているエポキシポリアクリレート樹脂、商品名HELOXYで販売されているエポキシ官能性改質剤、及び商品名EPONEXで販売されている脂環式エポキシ樹脂が含まれる。
【0071】
イソシアネート官能性反応性添加剤としては、脂肪族及び芳香族ポリイソシアネート(例えばトリフェニルメタントリイソシアネート)、好ましくは芳香族及び脂肪族ブロック化ポリイソシアネート、例えばBayerによって商品名DESMODUR BL、BAYHYDUR BL、EVONIK、及びVESTANATで販売されているものが挙げられる。
【0072】
アミン官能性反応性添加剤としては、ポリエチレンイミン;キトサン;リシン;ポリリシン;アミノ酸;及びフェニレンジアミン(パラ、オルト、メタ)、ジメチル4-フェニレンジアミン、トリエチレンテトラミン、トリメチロールプロパントリス(ポリ(プロピレングリコール)アミン末端)エーテルなどのアミンが挙げられる。アミン官能性反応性添加剤としては、脂肪族及び芳香族ポリウレタン、フッ素化ポリウレタン(プレポリマー、オリゴマー性及びポリマー性)もまた挙げられる。
【0073】
ジクロロ官能性反応性添加剤の例は、ジクロロジフェニルスルホンである。
【0074】
いくつかの実施形態では、個々の繊維層は、これらの個々の繊維層内で繊維の構造、化学組成、又は特性の変化を含む。変化し得る特徴としては、例えば繊維の繊維径、細孔径、ソリディティ、及び化学組成が挙げられる。任意の1つの特徴(例えば繊維径)の変化と、別の特徴(例えば化学組成)の変化とが組み合わされる場合もある。例えば繊維層は、第1の組成を有する第1の繊維と、第1の組成とは異なる第2の組成を有する第2の繊維とを含んでもよい。第1の繊維及び第2の繊維の繊維径は異なってもよい。
【0075】
一実施形態では、繊維層の繊維は、繊維径の変化を含む。即ち繊維層は、第1の繊維径を有する繊維と、第2の繊維径を有する繊維とを含む。繊維層は更に、第3、第4、及びそれに続く繊維径を有する繊維を含む場合もある。繊維層は、異なる繊維径を有する繊維の混合を含んでもよい。いくつかの実施形態では、繊維層は繊維径の勾配を含む。
【0076】
一実施形態では、繊維層の繊維は、化学組成の変化を含む。即ち繊維層は、第1の化学組成を有する繊維と、第2の化学組成を有する繊維とを含む。繊維層は更に、第3、第4、及びそれに続く化学組成を有する繊維を含む場合もある。繊維層は、異なる化学組成を有する繊維の混合を含んでもよい。いくつかの実施形態では、繊維層は化学組成の勾配を含む。機能化された濾過又は化学濾過のための材料には、選択された官能基を有する、又はポリマー材料と共に含まれる活性炭若しくは他の吸着剤若しくは吸収剤などの他の材料を有する、ポリマーから作られた繊維が含まれ得る。繊維層は、繊維の化学組成が異なることによって異なる特性を有する繊維の混合物を含んでもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、個々の繊維層は、これらの個々の繊維層内で繊維の構造、化学組成、又は特性の変化を含む。変化し得る特徴としては、例えば繊維の繊維径、細孔径、ソリディティ、及び化学組成が挙げられる。任意の1つの特徴(例えば繊維径)の変化と、別の特徴(例えば化学組成)の変化とが組み合わされる場合もある。例えば繊維層は、第1の組成を有する第1の繊維と、第1の組成とは異なる第2の組成を有する第2の繊維とを含んでもよい。第1の繊維及び第2の繊維の繊維径は異なってもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、繊維層内での1つ以上の特徴の変化は、隣接した構成にされる。図5は、均質な繊維層122を有する単一の層110の概略上面図である。図6は、第1の種類の繊維層122Aと第2の種類の繊維層122Bが隣接した単一の層111の概略上面図である。第1の種類の繊維層122A及び第2の種類の繊維層122Bは、一緒に繊維層を形成する。第1の種類の繊維層122A及び第2の種類の繊維層122Bは、層111にあるパターンで配置されても又はランダムに分散されてもよい。第1の種類の繊維層122A及び第2の種類の繊維層122Bは、層111で対等の部分を構成してもよく、又は一方の種類が他方よりも大きい部分を構成してもよい。第1の種類の繊維層122A及び第2の種類の繊維層122Bを含む微細繊維層は、2つの基材層の間に挟まれていてもよく、これによって基材-微細繊維層-微細繊維層-基材(「S-FF-FF-S」)構成が形成される。
【0079】
図7に示すように、2つ以上の層111を互いに積層してもよい。これらの層は、第1の種類の繊維層122A及び第2の種類の繊維層122Bが整列しないように配向されてもよい。これにより、第1の種類の繊維層122Aが別の層の第1の種類の繊維層122Aと重なって領域122AAを形成する領域、第1の種類の繊維層122Aが第2の種類の繊維層122Bと重なって領域122ABを形成する領域、及び第2の種類の繊維層122Bが別の層の第2の種類の繊維層122Bと重なって領域122BBを形成する領域が形成される。図8A~8Dは、層の配向を角度α変えることで領域122AA、122AB、及び122BBのサイズ(面積)を変えた複数の実施形態を示す。
【0080】
第1の種類の繊維層122A及び第2の種類の繊維層122Bは、ソリディティ、繊維サイズ、細孔径、化学組成、又は他の特性について異なってもよい。1つの例示の実施形態では、微細繊維層は、異なるソリディティを有する第1の種類の繊維層122A及び第2の種類の繊維層122Bを含む。微細繊維層は、S-FF-FF-S構成で配設される。2つの異なるソリディティが重なる領域では、複合層のソリディティは高ソリディティ部分によって支配されるが、2つの高ソリディティ部分層が重なる部分よりも理論的に低い差圧を有する。異なる角度αの配向を有する複数のそのような層を積層して、勾配構造を有する複合媒体を作ることができる。そのような配置は、積層体でのより高い位置でより小さい粒径を捕捉する能力を提供することができ、これによってフィルタの粒子捕捉能力(DHC)及び寿命を増大させることができる。そのような配置はまた、濾過される流体の滞留時間を増大させることによって、この構成内での流れの制御を向上させることができる。
【0081】
一実施形態では、複合媒体はフィルタに含まれる。そのようなフィルタは、ハウジングと、そのハウジング内に配置された複合媒体とを含んでもよい。ここで図3を参照すると、ハウジング3とその中に配置された複合媒体50とを含むフィルタ1の概略図が示される。フィルタハウジングは、入口31及び出口32を形成する。複合媒体50はフィルタハウジング3内において、繊維層22を入口31に向けて配向し、基材21を出口に向けて配向し、又は反対に繊維層22を出口32に向けて配向し、基材21を入口31に向けて配向するいずれかで、図示のように配向されてもよい。一部の例では、一部の層を一方の向きに配向し(例えば繊維層22を入口31に向けて配向)、他の層を別の向きに配向する(例えば基材21を入口31に向けて配向)。任意で、追加の層が含まれてもよい。任意の適切なフィルタハウジングが使用されることができる。複合媒体は、水性又は非水性液体などの様々な液体の濾過での使用に適したものとなり得る。いくつかの実施形態では、そのフィルタはシリンジフィルタである。典型的なシリンジフィルタは、例えばLUER-LOK接続によってシリンジの端部に取り付けることができる小さなディスク状のフィルタである。いくつかの実施形態では、フィルタは、内径25mm又は47mmのシリンジフィルタである。いくつかの好ましい実施形態では、フィルタは、例えばγ線によって滅菌可能である。
【0082】
いくつかの実施形態では、複合媒体は、積層体全体を通して層の構造、化学組成、又は特性の変化を含む。いくつかの実施形態では、これらの変化が、積層体で勾配を形成する。変化し得る特徴としては、例えば繊維径、細孔径、繊維層の厚さ、繊維の化学組成、及び積層体での層の圧縮が挙げられる。積層体全体に亘って、任意の1つの特徴の変化と、1つ以上の他の特徴の変化とが組み合わされる場合がある。例えば、化学組成の変化が、細孔径及び繊維層の厚さの変化と組み合わされる場合がある。
【0083】
一実施形態では、複合媒体の層は、繊維径の変化を含む。即ち複合媒体は、第1の繊維径を有する1つ以上の層と、第2の繊維径を有する1つ以上の層とを含む。複合媒体は更に、第3、第4、及びそれに続く繊維径を有する1つ以上の層を含んでもよい。所定の繊維径を有する層は、1つにグループ化されることができる。複合媒体は、第1の繊維径を有する第1の層のグループと、第2の繊維径を有する第2の層のグループとを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複合媒体は繊維径の勾配を含む。
【0084】
一実施形態では、複合媒体の層は、層によって細孔径の変化を含む。即ち複合媒体は、第1の細孔径を有する1つ以上の層と、第2の細孔径を有する1つ以上の層とを含む。複合媒体は更に、第3、第4、及びそれに続く細孔径を有する1つ以上の層を含んでもよい。所定の細孔径を有する層は、1つにグループ化されることができる。複合媒体は、第1の細孔径を有する第1の層のグループと、第2の細孔径を有する第2の層のグループとを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複合媒体は細孔径の勾配を含む。複合媒体は、入口側(上流側)と出口側(下流側)とを有してもよい。例えば複合媒体は、入口及び出口を有するフィルタに配設され得る。複合媒体は、入口側での比較的大きな細孔径を有する層と、出口側での比較的小さな細孔径を有する層とを含んでもよい。一実施形態では、複合媒体は、P95細孔径が1μm以上、2μm以上、5μm以上、10μm以上、又は25μm以上の1つ以上の層を、入口側に有する。入口側の1つ以上の層のP95細孔径は、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、又は5μm以下であってもよい。入口側の1つ以上の層のP95細孔径は、1μm~50μm、又は5μm~40μmの範囲であってもよい。一実施形態では、複合媒体は、P95細孔径が0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.75μm以上、又は1.0μm以上の1つ以上の層を、出口側に有する。出口側の1つ以上の層のP95細孔径は、3.0μm以下、2.0μm以下、1.5μm以下、1.2μm以下、1.0μm以下、0.75μm以下、又は0.5μm以下であってもよい。出口側の1つ以上の層のP95細孔径は、0.1μm~10μm、0.5μm~5.0μm、0.75μm~2.0μm、0.8μm~1.5μm、又は1.0μm~1.5μmの範囲であってもよい。一実施形態では、複合媒体は、入口側の10μm~50μmの最大のP95細孔径から、出口側の0.1μm~1μmの最小のP95細孔径までの範囲での細孔径勾配を有する。いくつかの実施形態では、異なる細孔径を有する層が配置されて、複合媒体の入口側にふるい層(例えば複数の層の積層体)が形成され、複合媒体の出口側に濾過層(例えば複数の層の積層体)が形成される。濾過層は更に、機能化された濾過又は化学濾過のための材料で作られた繊維を更に含んでもよい。機能化された濾過又は化学濾過のための材料には、選択された官能基を有するポリマー、又はポリマー材料と共に含まれる活性炭若しくは他の吸着剤若しくは吸収剤などの他の材料を有するポリマーが含まれ得る。あるいは又は加えて、ふるい層、濾過層、又はこれら両方は、必要に応じて、その1つ以上の層を疎水性又は親水性にする材料で作られることができる。
【0085】
一実施形態では、複合媒体の層は、繊維層厚さの変化を含む。即ち複合媒体は、第1の繊維層厚さを有する1つ以上の層と、第2の繊維層厚さを有する1つ以上の層とを含む。複合媒体は更に、第3、第4、及びそれに続く繊維層厚さを有する1つ以上の層を含んでもよい。所定の繊維層厚さを有する繊維層は、1つにグループ化されることができる。複合媒体は、第1の繊維層厚さを有する第1の層のグループと、第2の繊維層厚さを有する第2の層のグループとを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複合媒体は繊維層厚さの勾配を含む。一般に、細孔径が大きな繊維層ほど、多くの量の捕捉された汚染物質を収容するために厚く構成されることができる。一方、細孔径が小さな繊維層ほど、これらの層を横断する際の圧力降下を制限するために薄く構成されることができる。
【0086】
一実施形態では、複合媒体の層は、層によって繊維の化学組成の変化を含む。即ち複合媒体は、第1の化学組成を有する1つ以上の層と、第2の化学組成を有する1つ以上の層とを含む。複合媒体は更に、第3、第4、及びそれに続く化学組成を有する1つ以上の層を含んでもよい。所定の化学組成を有する層は、1つにグループ化されることができる。複合媒体は、第1の化学組成を有する第1の層のグループと、第2の化学組成を有する第2の層のグループとを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複合媒体は、化学組成の勾配を含む。複合媒体は、入口側及び出口側を有してもよい。例えば複合媒体は、入口側と出口側とを有するフィルタに配設されてもよい。複合媒体は、入口側での所定の化学組成を有する層と、出口側での別の化学組成を有する層とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、出口側での層は、機能化された濾過又は化学濾過に適した組成物で作られるか又はコーティングされる。機能化された濾過又は化学濾過のための材料には、選択された官能基を有するポリマー、又はポリマー材料と共に含まれる活性炭若しくは他の吸着剤若しくは吸収剤などの他の材料を有するポリマーが含まれ得る。あるいは又は加えて、いくつかの実施形態では、一部の層を、必要に応じて、疎水性又は親水性にする材料で作ることができる。複合媒体は、積層体全体に亘って疎水性又は親水性の勾配を含んでもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、積層体は、充填層として作用するのに適した1つ以上の層を含む。充填層は、複合媒体の入口(上流)側に配置されてもよい。充填層は1つ以上の微細繊維層を含んでもよく、各微細繊維層は基材によって支持されてもよい。一般に充填層は、その層に目的の汚染物質を充填するのに適した特性を示す。例えば充填層は、積層体の残りの部分よりも大きな細孔径を有してもよい。そのような充填層は、ふるい分けに適したものとなり得る。充填層は、目的の汚染物質に対して親和性を有する化学組成を有してもよい。充填層として使用される1つ以上の層のP95細孔径は、2μm以上、3μm以上、4μm以上、又は5μm以上であってもよい。P95細孔径は、20μm以下、15μm以下、12μm以下、10μm以下、又は8μm以下であってもよい。P95細孔径は、2μm~20μm、3μm~15μm、4μm~10μm、又は5μm~8μmの範囲であってもよい。細孔径は、目的の汚染物質に基づいて選択されることができる。充填層として使用される1つ以上の層の繊維径は、500nm以上、750nm以上、又は1μm以上であってもよい。繊維の直径は、3μm以下、2μm以下、1.5μm以下、又は1.2μm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、繊維は、500nm~3μm又は1.0μm~2μmの範囲の直径を有する。いくつかのより大きな繊維が層に存在して、足場として機能してもよい。そのような足場繊維は、15μmであるか、又は20μmまでの大きさであってもよい。充填層として作用することを意図される積層体の部分は、複数の特徴の組み合わせを含んでもよく、その複数の特徴は、充填層内の各繊維層に存在しても、又は充填層内の複数の別の繊維層に存在してもよい。例えば充填層は、汚染物質のふるい分け能力に基づいて構築された1つ以上の層と、異なるサイズ若しくは種類の汚染物質の親和性若しくはふるい分け能力に基づいて構築された別の1つ以上の層とを含んでもよい。
【0088】
一実施形態では、複合媒体の層は、様々な度合いに圧縮されている。即ち複合媒体は、第1の圧縮の度合いである第1の複数の繊維層と、第1の圧縮の度合いとは異なる第2の圧縮の度合いである第2の複数の繊維層とを含む。複合媒体は更に、第3、第4、及びそれに続く圧縮の度合いである1つ以上の繊維層を含んでもよい。それらの層は、積層体の製造中に、又は様々な圧縮度合いで積層体を圧縮するハウジング(例えばフィルタハウジング)を使用することによって、一体となるように圧縮されることができる。ここで図4を参照すると、層の積層体61、62、63に様々な圧縮の度合いを加えるハウジング4を用いたフィルタ1’の概略断面図が示される。積層体の数及び各積層体61、62、63に示される層の数は例示のみの目的であり、実際の層の数を表すものではない。各積層体61、62、63は、20以上の層を含んでもよい。第1の積層体61は第1の圧縮度合いであることができ、第2の積層体62は第2の圧縮度合いであることができ、第3の積層体63は第3の圧縮度合いであることができる。圧縮の度合いは、フィルタ1’の入口端部41から出口端部42に向かって連続的に増大してもよい。いくつかの実施形態では、複合媒体、又は複数の複合媒体を含むフィルタは、圧縮度合いの勾配を含む。圧縮の度合いが高いほど、積層体の有効細孔径が小さくなり得る。異なる複数の圧縮の度合いを適用することによって、様々な積層体の異なる有効細孔径が実現されることができる。いくつかの実施形態では、圧縮度合いの勾配を用いて、有効細孔径の勾配が実現される。
【0089】
以下は、本開示による例示の実施形態の列記である。
【0090】
実施形態1によると、複合媒体は、20以上の層を有する積層体を含み、各層は、
第1の主表面及び反対側の第2の主表面を備えた基材と、
その基材の第1の主表面に積み重ねられた、100nm~1.5μmの直径を有するポリマー繊維を含む繊維層と
を含み、各繊維層は個別に5μm~100μmの厚さを有し、各層は個別に0.1μm~10μmのP95細孔径を有する。
【0091】
実施形態2は、基材が不織布基材を含む、実施形態1の複合媒体である。
【0092】
実施形態3は、基材が膜を含む、実施形態1又は2の複合媒体である。
【0093】
実施形態4は、積層体が、2つ以上の繊維層を含む層を備え、任意で積層体の各層は、2つ以上の繊維層を含む、実施形態1~3のいずれか1つの複合媒体である。
【0094】
実施形態5は、積層体が、基材の第2の主表面に積み重ねられた第2の繊維層を備えた層を含む、実施形態4の複合媒体である。
【0095】
実施形態6は、各層のP95細孔径が、個別に0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、又は1.0μm以上である、実施形態1~5のいずれか1つの複合媒体である。各層のP95細孔径は、個別に10μm以下、7.5μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下、2.0μm以下、又は1.5μm以下であってもよい。層のP95細孔径は、0.1μm~10μm、0.5μm~5.0μm、0.7μm~2.0μm、0.8μm~1.5μm、又は1.0μm~1.5μmの範囲であってもよい。
【0096】
実施形態7は、繊維層の細孔径が、積層体全体に亘って細孔径の勾配を形成する、実施形態1~6のいずれか1つの複合媒体である。
【0097】
実施形態8は、複合媒体が入口側及び出口側を有し、細孔径の勾配は、入口側での50μmの最大細孔径から、出口側での0.1μmの最小細孔径となる、実施形態7の複合媒体である。
【0098】
実施形態9は、積層体のP95細孔径が、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.75μm以上、又は1.0μm以上である、実施形態1~8のいずれか1つの複合媒体である。積層体のP95細孔径は、2.5μm以下、2.2μm以下、2.0μm以下、1.75μm以下、1.5μm以下、又は1.0μm以下であってもよい。積層体のP95細孔径は、0.01μm~2.5μm、0.1μm~2.0μm、又は0.5μm~1.5μmであってもよい。
【0099】
実施形態10は、積層体が、50以上、100以上、200以上、300以上、又は500以上の層を備える、実施形態1~9のいずれか1つの複合媒体である。積層体は、3000以下、2500以下、2000以下、1500以下、又は1000以下の層を含んでもよい。積層体での層の数は、100~3000、300~2000、又は500~1000であってもよい。
【0100】
実施形態11は、積層体が、第1の組成を有する第1の繊維層と、第1の組成とは異なる第2の組成を有する第2の繊維層とを含む、実施形態1~10のいずれか1つの複合媒体である。
【0101】
実施形態12は、積層体の繊維層が、積層体全体に亘って化学組成の勾配を形成する、実施形態11の複合媒体である。
【0102】
実施形態13は、積層体での各層が、同一の組成及び構造を有する、実施形態1~10のいずれか1つの複合媒体である。
【0103】
実施形態14は、積層体が、第1の圧縮度合いである第1の複数の層と、第1の圧縮度合いとは異なる第2の圧縮度合いである第2の複数の層とを含む、実施形態1~13のいずれか1つの複合媒体である。
【0104】
実施形態15は、複数の層が、積層体全体に亘って圧縮度合いの勾配を有している、実施形態14の複合媒体である。
【0105】
実施形態16は、複合媒体の初期水流束が、100mL/cm/時間/kPa以上、120mL/cm/時間/kPa以上、150mL/cm/時間/kPa以上、175mL/cm/時間/kPa以上、又は200mL/cm/時間/kPa以上である、実施形態1~15のいずれか1つの複合媒体である。初期水流束は、350mL/cm/時間/kPa以下、300mL/cm/時間/kPa以下、又は250mL/cm/時間/kPa以下であってもよい。初期水流束は、100mL/cm/時間/kPa~350mL/cm/時間/kPa、又は120mL/cm/時間/kPa~300mL/cm/時間/kPaであってもよい。
【0106】
実施形態17は、繊維層の体積に対する表面積の比が、1μm-1以上、2μm-1以上、又は5μm-1以上である、実施形態1~16のいずれか1つの複合媒体である。繊維層のSAVRは、20μm-1以下、又は15μm-1以下であってもよい。繊維層のSAVRは、1μm-1~20μm-1、又は2μm-1~15μm-1であってもよい。
【0107】
実施形態18は、ポリマー繊維の直径が、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、又は500nm以上である、実施形態1~17のいずれか1つの複合媒体である。ポリマー繊維の直径は、1.5μm以下、1.2μm以下、又は1.0μm以下であってもよい。ポリマー繊維は、100nm~1.5μm、300nm~1.2μm、又は500nm~1.0μmの範囲の直径を有してもよい。
【0108】
実施形態19は、積層体の各繊維層の厚さが、個別に5μm以上、10μm以上、25μm以上、又は50μm以上であり得る、実施形態1~18のいずれか1つの複合媒体である。各繊維層の厚さは、個別に100μm以下、80μm以下、又は60μm以下であってもよい。繊維層の厚さは、5μm~100μm、10μm~80μm、又は20μm~60μmであってもよい。各繊維層の厚さは、積層体全体を通して必ずしも同じである必要はない。積層体での異なる繊維層が、異なる厚さを有してもよい。積層体での繊維層は、積層体全体に亘って繊維層の厚さの勾配を形成してもよい。
【0109】
実施形態20は、基材の厚さが、50μm以上、100μm以上、又は500μm以上である、実施形態1~19のいずれか1つの複合媒体である。基材の厚さは、1000μm以下、750μm以下、又は500μm以下であってもよい。基材の厚さは、50μm~1000μm、又は100μm~500μmであってもよい。層(基材と繊維層との組み合わせ)の全体の厚さは、55μm~1100μm、又は150μm~600μmであってもよい。
【0110】
実施形態21は、複合媒体が液体の濾過のために構成される、実施形態1~20のいずれか1つの複合媒体である。その液体は水性液体であってもよい。その液体は非水性液体であってもよい。
【0111】
実施形態22は、ハウジングと、そのハウジング内に配置された実施形態1~21のいずれか1つの複合媒体とを含むフィルタである。
【0112】
実施形態23は、フィルタがシリンジフィルタである、実施形態22のフィルタである。
【0113】
実施形態24は、フィルタハウジングが、第1の複数の層を第1の度合いに圧縮し、第2の複数の層を第2の度合いに圧縮するように構成され、第2の圧縮の度合いは第1の圧縮の度合いとは異なる、実施形態22又は23のフィルタである。
【0114】
実施形態25は、複数の層が、積層体全体に亘って圧縮度合いの勾配を有する、実施形態24のフィルタである。
【0115】
実施形態26は、積層体の層を備えた複合媒体であって、各層は繊維層を備え、繊維層は、基材の表面に積み重ねられて、100nm~1.5μmの直径を有するポリマー繊維を含み、各繊維層の厚さは、個別に5μm~100μmであり、各層のP95細孔径は、個別に0.1μm~10μmであり、
層のうちの少なくとも2つは、第1の種類の繊維層と、第2の種類の繊維層とを隣接して含み、第1の層の第1の種類の繊維層は、第2の層の第1の種類の繊維層と完全には整列されない、複合媒体である。
【0116】
実施形態27は、第1の種類の繊維層及び第2の種類の繊維層が、ソリディティ、繊維サイズ、細孔径、化学組成、又はこれらの組み合わせにおいて異なっている、実施形態26の複合媒体である。
【0117】
実施形態28は、実施形態1~21の特徴のうちの1つ以上を更に備える、実施形態26又は27の複合媒体である。
【0118】
実施形態29は、フィルタハウジング内に配置された実施形態26~28のいずれか1つの複合媒体であり、任意でフィルタがシリンジフィルタである。
【0119】
実施形態30は、フィルタハウジングが、第1の複数の層を第1の度合いに圧縮し、第2の複数の層を第2の度合いに圧縮するように構成され、第2の圧縮の度合いが第1の圧縮の度合いとは異なっており、任意で複数の層が、積層体全体に亘って圧縮度合いの勾配を有する、実施形態29の複合媒体である。
【0120】
本明細書中で引用される全ての参考文献及び刊行物は、これらが本開示と直接的に矛盾する場合を除いて、その全体が参照により本開示に明示的に援用される。本明細書では特定の実施形態が図示及び説明されているが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、図示及び説明されている特定の実施形態を、様々な代わりの及び/又は均等な実施に置き換えることができることを理解するであろう。本明細書に記載された例示の実施形態及び実施例によって本開示が不当に限定されることは意図されておらず、そのような実施例及び実施形態は単なる例として提示されており、本開示の範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されることが意図される。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
【国際調査報告】