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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】膜形成装置および膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20241212BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20241212BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
B81B1/00
C12M1/34 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538392
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2021141635
(87)【国際公開番号】W WO2023122883
(87)【国際公開日】2023-07-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517110612
【氏名又は名称】ビージーアイ シェンチェン
【住所又は居所原語表記】Main building, Beishan Industrial Zone, Yantian Street, Yantian District, Shenzhen, Guangdong 518083, China
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ユニン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, クアンシン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ユーシャン
(72)【発明者】
【氏名】ドン, ユーリャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュウ, シュン
【テーマコード(参考)】
2G060
3C081
4B029
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060AF20
2G060AG03
2G060AG11
2G060FA17
2G060KA09
3C081BA04
3C081BA21
3C081BA22
3C081DA03
3C081DA05
3C081DA06
3C081DA27
3C081EA01
3C081EA27
3C081EA29
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB15
4B029BB20
4B029CC11
4B029FA15
(57)【要約】
膜形成装置および膜形成方法が提供される。膜形成装置は、基部(10)と、基部(10)に配置され、凹部を有する本体(20)と、凹部の基部(10)から離れた端部にある凹部ポートの内側に配置された開口部材(30)とを含み、開口部材(30)の中空部分(32)は、両親媒性分子膜(80)を形成するように構成されており、開口部材(30)の中空部分(32)の断面積は、収容チャンバ(21)の断面積よりも小さい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部(10)と、
前記基部(10)に配置され、凹部を有する本体(20)と、
前記凹部の前記基部(10)から離れた端部にある凹部ポートの内側に配置された開口部材(30)であって、前記開口部材(30)の中空部分(32)が膜(80)を形成するように構成されている、開口部材(30)と
を備える、膜形成装置。
【請求項2】
前記凹部が、極性媒体溶液を収容するための収容チャンバ(21)を画定するように構成され、前記膜(80)が両親媒性分子膜であり、前記開口部材(30)の前記中空部分(32)の断面積が、前記収容チャンバ(21)の断面積よりも小さい、請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項3】
前記本体(20)が、
前記基部(10)の表面に配置された第1の本体層(22)と、
前記第1の本体層(22)の前記基部(10)から離れた側に位置する第2の本体層(23)と
を備え、
前記凹部が、前記第2の本体層(23)および前記第1の本体層(22)を前記基部(10)に垂直な方向に貫通しており、前記開口部材(30)が、前記第2の本体層(23)を貫通する前記凹部の一部に接続されている、
請求項1または2に記載の膜形成装置。
【請求項4】
前記開口部材(30)が、前記第2の本体層(23)と一体的に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項5】
前記開口部材(30)が、前記本体(20)と一体的に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項6】
前記開口部材(30)が、
前記凹部ポートに対して半径方向に内向きに突出するフランジ(31)
を備え、
前記フランジ(31)の内縁が前記中空部分(32)を形成する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項7】
前記フランジ(31)の前記内縁が同じ平面上に位置する、請求項1~6のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項8】
前記フランジ(31)の突出端が、面取りされているか、または丸みを帯びている、請求項1~7のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項9】
前記フランジ(31)の断面が、T字形または凸多角形の形状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項10】
前記基部(10)に垂直な方向における前記フランジ(31)の前記突出端の厚さが、前記基部(10)に垂直な方向における前記フランジ(31)の根元部分の厚さ以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項11】
前記基部(10)に垂直な方向における前記フランジ(31)の厚さが、前記根元部分から前記突出端まで徐々に減少する、請求項1~10のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項12】
前記フランジ(31)が、前記フランジ(31)の表面から前記基部(10)に垂直な方向に突出するまたは凹む少なくとも一部分を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項13】
前記少なくとも一部分が、前記フランジ(31)の前記基部(10)から離れた側に少なくとも位置する、請求項1~12のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項14】
前記フランジ(31)の前記内縁が、内向きに突出する複数の突起を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項15】
前記中空部分(32)の断面が円形または凸多角形の形状であり、前記収容チャンバ(21)の断面が円形または凸多角形の形状である、請求項1~14のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項16】
前記収容チャンバ(21)の長手方向断面が、長方形、台形、湾曲縁台形またはドラムの形状である、請求項1~15のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項17】
前記収容チャンバ(21)の外側に配置された第1の電極(51)と、
前記収容チャンバ(21)の内側に配置された第2の電極(52)と
をさらに備える、請求項1~16のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項18】
前記基部(10)が、
基板(11)と、
前記基板(11)と前記本体(20)との間に配置された少なくとも1つのパッシベーション層(12,13)と
を備え、
前記第2の電極(52)が、前記凹部の底部から露出しており、
前記第2の電極(52)が、前記基板(11)と前記少なくとも1つのパッシベーション層(12,13)との間に位置するか、または、前記第2の電極(52)が、前記少なくとも1つのパッシベーション層(12,13)の前記基板(11)から離れた側に位置するか、または、前記第2の電極(52)が、前記少なくとも1つのパッシベーション層(12,13)が複数のパッシベーション層(12,13)として構成されている場合、隣り合うパッシベーション層(12,13)の間に位置する、
請求項1~17のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項19】
前記本体(20)が、複数の凹部を含み、前記本体(20)の前記複数の凹部が、長方形アレイ、平行四辺形アレイ、ハニカムアレイまたは不規則に配置される、請求項1~18のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項20】
前記開口部材(30)が、複数の中空部分(32)を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項21】
前記本体(20)と組み立てられるように構成された封止カバープレート(60)
をさらに備える、請求項1~20のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項22】
前記本体(20)と組み立てられるように構成された封止カバープレート(60)と、
前記開口部材(30)の前記中空部分(32)に形成される両親媒性分子膜(80)と、
前記収容チャンバ(21)に収容される第1の極性媒体溶液(M1)と、
前記収容チャンバ(21)の外側に収容され、前記本体(20)、前記開口部材(30)および前記両親媒性分子膜(80)の上方に位置する第2の極性媒体溶液(M4)と
をさらに備える、請求項1~21のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項23】
前記両親媒性分子膜(80)が、単層脂質膜、二層脂質膜または高分子ポリマー膜である、請求項1~22のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項24】
前記両親媒性分子膜(80)に埋め込まれた膜チャネル(90)
をさらに備える、請求項1~23のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項25】
膜形成方法であって、
請求項1~24のいずれか一項に記載の膜形成装置を用意し、前記本体(20)の上側に封止カバープレート(60)を組み立てて、前記封止カバープレート(60)と前記本体(20)との間に流路を形成するステップと、
前記流路に第1の極性媒体溶液(M1)を導入し、その結果、前記第1の極性媒体溶液(M1)が開口部材(30)の中空部分(32)から前記本体(20)の凹部に流入し、前記本体(20)の前記凹部を満たすステップと、
前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の前記第1の極性媒体溶液(M1)を除去し、無極性媒体溶液(M3)および第2の極性媒体溶液(M4)に前記開口部材(30)を覆わせるステップと
を含み、
前記無極性媒体溶液(M3)および前記第2の極性媒体溶液(M4)の少なくとも1つが、前記中空部分(32)に両親媒性分子膜(80)を形成する両親媒性分子を含有する、膜形成方法。
【請求項26】
前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の前記第1の極性媒体溶液(M1)を前記除去するステップが、
ガス媒体(M2)によって、前記本体(20)と前記封止カバープレート(60)との間、および前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の前記第1の極性媒体溶液(M1)を除去するように、前記流路内に前記ガス媒体(M2)を導入するステップ
を含む、請求項25に記載の膜形成方法。
【請求項27】
前記無極性媒体溶液(M3)および前記第2の極性媒体溶液(M4)に前記開口部材(30)を前記覆わせるステップが、
前記無極性媒体溶液(M3)が前記開口部材(30)を覆うように、前記無極性媒体溶液(M3)を前記流路に導入するステップと、
前記第2の極性媒体溶液(M4)が前記開口部材(30)を覆うように、前記第2の極性媒体溶液(M4)を前記流路に導入するステップと
を含む、請求項25または26に記載の膜形成方法。
【請求項28】
前記無極性媒体溶液(M3)および前記第2の極性媒体溶液(M4)に前記開口部材(30)を前記覆わせるステップが、
前記封止カバープレート(60)を除去するステップと、
前記本体(20)および前記開口部材(30)に前記無極性媒体溶液(M3)をコーティングし、前記無極性媒体溶液(M3)に前記開口部材(30)を覆わせるステップと、
前記封止カバープレート(60)を前記本体(20)の上側に組み立てて、前記封止カバープレート(60)と前記本体(20)との間に流路を形成するステップと、
前記第2の極性媒体溶液(M4)が前記開口部材(30)を覆うように、前記第2の極性媒体溶液(M4)を前記流路に導入するステップと
を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の膜形成方法。
【請求項29】
前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の前記第1の極性媒体溶液(M1)を除去し、前記無極性媒体溶液(M3)および前記第2の極性媒体溶液(M4)に前記開口部材(30)を前記覆わせるステップが、
前記無極性媒体溶液(M3)によって、前記本体(20)と前記封止カバープレート(60)との間の第1の極性媒体溶液(M1)および前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の第1の極性媒体溶液(M1)を除去し、前記無極性媒体溶液(M3)によって前記開口部材(30)を覆うことを達成するように、前記無極性媒体溶液(M3)を前記流路に導入するステップと、
前記第2の極性媒体溶液(M4)が前記開口部材(30)を覆うように、前記第2の極性媒体溶液(M4)を前記流路に導入するステップと
を含む、請求項25~28のいずれか一項に記載の膜形成方法。
【請求項30】
前記両親媒性分子膜(80)に膜チャネル(90)を埋め込むステップ
をさらに含む、請求項25~29のいずれか一項に記載の膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、バイオ医薬品の技術分野に関し、特に、膜形成装置および膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ナノポアベースの単一分子遺伝子配列決定は、遺伝子検査の分野における破壊的技術と考えられている。ナノポア配列決定技術は、DNA分子の修飾を必要とせず、単一分子を連続的に直接配列決定することができるその単純な配列決定原理のために、原理的に独特の利点を有する。第1世代および第2世代の遺伝子配列決定技術と比較して、次世代のナノポアベースの遺伝子配列決定技術は、低コスト、長い読取り長さ、容易な組込みおよび携帯性などの利点を有し、様々な分野で広く使用されている。
【0003】
[0003]生物学的ナノポアに基づく現在の配列決定技術は、多くのナノポア技術の中で最も潜在的かつ破壊的であると考えられており、商業化に成功している。しかしながら、生物学的ナノポアに基づく現在の配列決定技術は依然として多くの課題に直面しており、最大の課題の1つは配列決定チップの安定性に起因する。生物学的ナノポアタンパク質の安定性を維持するためには、分子の単一層の厚さを有するキャリア膜にポアタンパク質を埋め込むことが必要である。キャリア膜は、通常、両親媒性分子の自己集合によって形成され、膜材料は、通常、リン脂質分子またはブロックポリマーである。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本開示の一態様では、基部と、基部に配置され、凹部を有する本体と、凹部の基部から離れた端部にある凹部ポートの内側に配置された開口部材とを含み、開口部材の中空部分が膜を形成するように構成されている、膜形成装置が提供される。
【0005】
[0005]いくつかの実施形態では、凹部は、極性媒体溶液を収容するための収容チャンバを画定するように構成され、膜は、両親媒性分子膜であり、開口部材の中空部分の断面積は、収容チャンバの断面積よりも小さい。
【0006】
[0006]いくつかの実施形態では、本体は、基部の表面に配置された第1の本体層と、第1の本体層の基部から遠い側に位置する第2の本体層とを含み、凹部は、第2の本体層および第1の本体層を基部に垂直な方向に貫通しており、開口部材は、第2の本体層を貫通する凹部の一部に接続されている。
【0007】
[0007]いくつかの実施形態では、開口部材は、第2の本体層と一体的に形成される。
【0008】
[0008]いくつかの実施形態では、開口部材は、本体と一体的に形成される。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態では、開口部材は、凹部ポートに対して半径方向に内向きに突出するフランジを含み、フランジの内縁は中空部分を形成する。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態では、フランジの内縁は、同じ平面上に位置する。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態では、フランジの突出端は、面取りされているか、または丸みを帯びている。
【0012】
[0012]いくつかの実施形態では、フランジの断面は、T字形または凸多角形の形状である。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態では、基部に垂直な方向におけるフランジの突出端の厚さは、基部に垂直な方向におけるフランジの根元部分の厚さ以下である。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態では、基部に垂直な方向におけるフランジの厚さは、根元部分から突出端まで徐々に減少する。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態では、フランジは、基部に垂直な方向にフランジの表面から突出するまたは凹む少なくとも一部分を有する。
【0016】
[0016]いくつかの実施形態では、少なくとも一部分は、フランジの基部から離れた側に少なくとも位置する。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態では、フランジの内縁は、内向きに突出する複数の突起を有する。
【0018】
[0018]いくつかの実施形態では、中空部分の断面は、円形または凸多角形の形状であり、収容チャンバの断面は、円形または凸多角形の形状である。
【0019】
[0019]いくつかの実施形態では、収容チャンバの長手方向断面は、長方形、台形、湾曲縁台形またはドラムの形状である。
【0020】
[0020]いくつかの実施形態では、膜形成装置は、収容チャンバの外側に配置された第1の電極と、収容チャンバの内側に配置された第2の電極とをさらに含む。
【0021】
[0021]いくつかの実施形態では、基部は、基板と、基板と本体との間に配置された少なくとも1つのパッシベーション層とを含み、第2の電極は、凹部の底部から露出しており、第2の電極は、基板と少なくとも1つのパッシベーション層との間に位置するか、または、第2の電極は、少なくとも1つのパッシベーション層の基板から離れた側に位置するか、または、第2の電極は、少なくとも1つのパッシベーション層が複数のパッシベーション層として構成されている場合、隣り合うパッシベーション層の間に位置する。
【0022】
[0022]いくつかの実施形態では、本体は複数の凹部を含み、本体の複数の凹部は、長方形アレイ、平行四辺形アレイ、ハニカムアレイまたは不規則に配置される。
【0023】
[0023]いくつかの実施形態では、開口部材は、複数の中空部分を有する。
【0024】
[0024]いくつかの実施形態では、膜形成装置は、本体と組み立てられるように構成された封止カバープレートをさらに含む。
【0025】
[0025]いくつかの実施形態では、膜形成装置は、本体と組み立てられるように構成された封止カバープレートと、開口部材の中空部分に形成される両親媒性分子膜と、収容チャンバに収容される第1の極性媒体溶液と、収容チャンバの外側に収容され、本体、開口部材および両親媒性分子膜の上方に位置する第2の極性媒体溶液とをさらに含む。
【0026】
[0026]いくつかの実施形態では、両親媒性分子膜は、単層脂質膜、二層脂質膜または高分子ポリマー膜である。
【0027】
[0027]いくつかの実施形態では、膜形成装置は、両親媒性分子膜に埋め込まれた膜チャネルをさらに含む。
【0028】
[0028]本開示の一態様では、先行請求項のいずれか一項に記載の膜形成装置を用意し、本体の上側に封止カバープレートを組み立てて、封止カバープレートと本体との間に流路を形成するステップと、流路に第1の極性媒体溶液を導入し、その結果、第1の極性媒体溶液が開口部材の中空部分から本体の凹部に流入し、本体の凹部を満たすステップと、開口部材と封止カバープレートとの間の第1の極性媒体溶液を除去し、無極性媒体溶液および第2の極性媒体溶液に開口部材を覆わせるステップとを含み、無極性媒体溶液および第2の極性媒体溶液の少なくとも1つが、中空部分に両親媒性分子膜を形成する両親媒性分子を含有する、膜形成方法が提供される。
【0029】
[0029]いくつかの実施形態では、開口部材と封止カバープレートとの間の第1の極性媒体溶液を除去するステップは、ガス媒体によって本体と封止カバープレートとの間および開口部材と封止カバープレートとの間の第1の極性媒体溶液を除去するように、ガス媒体を流路に導入するステップを含む。
【0030】
[0030]いくつかの実施形態では、無極性媒体溶液および第2の極性媒体溶液に開口部材を覆わせるステップは、無極性媒体溶液が開口部材を覆うように無極性媒体溶液を流路に導入するステップと、第2の極性媒体溶液が開口部材を覆うように第2の極性媒体溶液を流路に導入するステップとを含む。
【0031】
[0031]いくつかの実施形態では、無極性媒体溶液および第2の極性媒体溶液に開口部材を覆わせるステップは、封止カバープレートを除去するステップと、本体および開口部材に無極性媒体溶液をコーティングし、無極性媒体溶液に開口部材を覆わせるステップと、封止カバープレートを本体の上側に組み立てて、封止カバープレートと本体との間に流路を形成するステップと、第2の極性媒体溶液が開口部材を覆うように第2の極性媒体溶液を流路に導入するステップとを含む。
【0032】
[0032]いくつかの実施形態では、開口部材と封止カバープレートとの間の第1の極性媒体溶液を除去し、無極性媒体溶液および第2の極性媒体溶液に開口部材を覆わせるステップは、無極性媒体溶液によって、本体と封止カバープレートとの間の第1の極性媒体溶液および開口部材と封止カバープレートとの間の第1の極性媒体溶液を除去し、無極性媒体溶液によって開口部材を覆うことを達成するように、無極性媒体溶液を流路に導入するステップと、第2の極性媒体溶液が開口部材を覆うように第2の極性媒体溶液を流路に導入するステップとを含む。
【0033】
[0033]いくつかの実施形態では、膜形成方法は、両親媒性分子膜に膜チャネルを埋め込むステップをさらに含む。
【0034】
[0034]説明の一部を形成する添付の図面は、本開示の実施形態を示し、説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0035】
[0035]本開示は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明からより明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本開示のいくつかの実施形態による膜形成装置の概略部分切欠三次元構造図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態による膜形成装置の概略長手方向断面図である。
図3】本開示のいくつかの実施形態による別の膜形成装置の概略長手方向断面図である。
図4】本開示のいくつかの実施形態によるさらに別の膜形成装置の概略長手方向断面図である。
図5】本開示のいくつかの実施形態によるさらに別の膜形成装置の概略長手方向断面図である。
図6A】封止カバープレートと組み立てられた本開示のいくつかの実施形態による膜形成装置の概略構造図である。
図6B】本開示のいくつかの実施形態による、封止カバープレート、第1の極性媒体溶液、膜チャネルが埋め込まれた両親媒性分子膜、および第2の極性媒体溶液を含む膜形成装置の構造の概略図である。
図7】本開示のいくつかの実施形態による膜形成装置の凹部内の電極配置の概略構造図である。
図8】本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における中空部分および収容チャンバの断面形状を示す。
図9】本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における開口部材のフランジの形状を示す。
図10】本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における収容チャンバの長手方向断面の形状を示す。
図11】本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における本体の複数の凹部の配置を示す。
図12】本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における複数の中空部分を有する開口部材を示す概略構造図である。
図13A】本開示による膜形成方法のいくつかの実施形態の概略フローチャートである。
図13B】本開示による膜形成方法の他の実施形態の概略フローチャートである。
図14】本開示による膜形成方法のいくつかの実施形態の一連のステップにおける膜形成装置の部分断面図である。
図15】本開示による膜形成方法のいくつかの実施形態の一連のステップにおける別の膜形成装置の部分断面図である。
図16】本開示による膜形成方法のいくつかの実施形態の一連のステップにおけるさらに別の膜形成装置の部分断面図である。
図17】本開示による膜形成方法のいくつかの実施形態の一連のステップにおけるさらに別の膜形成装置の部分断面図である。
図18】本開示による膜形成装置の第1の実施形態の走査型電子顕微鏡フェノグラムである。
図19】本開示による膜形成装置の第2の実施形態の走査型電子顕微鏡フェノグラムである。
図20】本開示による膜形成装置の第3の実施形態の部分切欠走査型電子顕微鏡フェノグラムである。
図21】本開示による膜形成装置の第4の実施形態の部分切欠走査型電子顕微鏡フェノグラムである。
図22】上面図から取った切欠状態の、本開示による膜形成方法の第1の実施形態における膜アレイの共焦点蛍光顕微鏡フェノグラムである。
図23】本開示による膜形成方法の第2の実施形態における膜アレイの共焦点蛍光顕微鏡フェノグラムである。
図24】本開示による膜形成装置の実施形態における膜形成後に三角波電圧が異なるチャネルに印加されたときに監視された膜貫通電流曲線を示すグラフである。
図25】本開示による膜形成装置の実施形態における膜形成後に三角波電圧が異なるチャネルに印加されたときに監視された別の膜貫通電流曲線を示すグラフである。
図26】本開示による膜形成装置の一実施形態における膜形成後に三角波電圧が印加されたときに監視された膜貫通電流曲線を示すグラフである。
図27】本開示による膜形成装置の一実施形態における膜形成プロセス中に経時的に変化する複数のチャネルの静電容量を示すグラフである。
図28】本開示による膜形成装置の一実施形態により形成されたキャリア膜を使用して電気的方法によって単一分子が検出される場合の検出電流信号の概略図である。
図29】関連技術における膜形成装置の寸法概略図(a)と、本開示による膜形成装置の一実施形態の寸法概略図(b)である。 [0060]添付の図面に示される様々な部品の寸法は、実際の縮尺関係に従って描かれていないことを理解されたい。さらに、同一または類似の符号は、同一または類似の構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0061]以下、本開示の様々な例示的実施形態を図面を参照して詳細に説明する。例示的な実施形態の説明は、単なる例示であり、決して本開示およびその用途または使用を限定することを意図するものではない。本開示は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されない。これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。特に指定されない限り、これらの実施形態に記載されている構成要素およびステップの相対的な配置、材料の組成、数式および数値は、単なる例示として解釈されるべきであり、限定として解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0038】
[0062]本開示で使用される「第1」、「第2」などの類似語は、順序、量または重要性を示すものではなく、異なる部分を区別するためにのみ使用される。「含む」または「備える」などの類似語は、他の要素を網羅する可能性を排除することなく、単語の前の要素が単語の後に列挙された要素を網羅することを意味する。「上」、「下」、「左」、「右」などは、相対的な位置関係を示すためにのみ使用される。記載された物体の絶対位置が変化した後、相対的な位置関係もそれに応じて変化し得る。
【0039】
[0063]本開示において、特定の装置が第1の装置と第2の装置との間に位置すると説明される場合、特定の装置と第1の装置または第2の装置との間に介在する装置が存在してもよく、または存在しなくてもよい。特定の装置が他の装置に接続されていると説明される場合、特定の装置は、介在する装置を介さずに他の装置に直接接続されてもよく、他の装置に直接接続されずに介在する装置を有してもよい。
【0040】
[0064]本開示で使用されるすべての用語(技術用語または科学用語を含む)は、特に定義されない限り、本開示が属する技術分野の当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。また、例えば一般的な辞書において定義される用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明示的に定義されない限り、理想化されたまたは極めて形式的な意味で解釈されるべきではないことも理解されるべきである。
【0041】
[0065]当業者に知られている技術、方法および機器は、詳細に説明されない場合があるが、技術、方法および機器は、適切な状況下では説明の一部と見なされるべきである。
【0042】
[0066]本発明者らの研究により、配列決定チップでは、キャリア膜がマイクロウェル構造によって支持され、支持構造の形状および開口径が膜の安定性に直接影響することが分かった。膜の安定性はポアタンパク質の安定性に直接影響し、膜形成収率は単一ナノポアの数を直接決定する。したがって、膜形成装置ならびにその膜形成方法および効率は、最終的に、配列決定システム全体のデータ出力およびデータ品質に影響する。
【0043】
[0067]いくつかの関連技術では、配列決定チップは凹部構造を含み、凹部の底部にはチップ電極が設けられている。配列決定チップの膜形成プロセスは、凹部の表面全体を疎水性層で完全に覆うことと、極性媒体溶液を導入し、チップ電極が極性媒体溶液に電気的に接続されるように、チップ電極の親水性を使用することによって疎水性層を凹部の側壁に反発させることと、凹部の外側にある極性媒体溶液を排出することと、膜の形成に使用される両親媒性分子および極性媒体溶液を順次導入して、凹部の凹部ポートに、単層/二層の両親媒性分子で構成されるキャリア膜を形成することとを含む。
【0044】
[0068]研究後、これらの関連技術は以下の欠点を有する。
【0045】
[0069]1.チップアレイの膜形成収率が低く、形成されたキャリア膜の安定性が低い。
【0046】
[0070]2.プロセス要件に基づいて、チップ本体は最初に疎水性コーティングで前処理される必要があり、これはチップ処理プロセスをより複雑にする。
【0047】
[0071]3.膜形成面積が大きく、高い膜静電容量がもたらされ、その結果、電気ノイズが大きくなり、複数のナノポアタンパク質の埋込みが容易になる。
【0048】
[0072]4.凹部に収容することができる電気化学溶液の体積がより少なく、これは、短い検出寿命につながる。
【0049】
[0073]これに関連して、本開示は、形成されるキャリア膜の安定性を改善することができる膜形成装置および膜形成方法の実施形態を提供する。
【0050】
[0074]図1は、本開示のいくつかの実施形態による膜形成装置の概略部分切欠三次元構造図である。図2図5は、本開示のいくつかの実施形態による膜形成装置の概略長手方向断面図である。図1図5を参照すると、いくつかの実施形態では、膜形成装置は、基部10と、本体20と、開口部材30とを含む。本体20は、基部10に設けられ、凹部を有する。開口部材30は、凹部の基部10から離れた側の凹部ポートの内側に設けられ、開口部材30の中空部分32は、膜80を形成するように構成される。
【0051】
[0075]いくつかの実施形態では、凹部は、極性媒体溶液を収容するための収容チャンバ21を画定し、開口部材30の中空部分32の断面積は、収容チャンバ21の断面積よりも小さく、膜80は両親媒性分子膜である。
【0052】
[0076]本実施形態の膜形成装置を使用して両親媒性分子(すなわち、両親媒性分子膜)で構成されたキャリア膜を形成する場合、キャリア膜の形成は動的に安定な自己集合プロセスであるため、最終的な安定化キャリア膜の形状およびサイズは、開口部材の中空部分の形状およびサイズによって決定される。より小さい断面積を有する開口部材の中空部分により、形成されるキャリア膜の面積は効果的に低減することができ、それによってキャリア膜の安定性が改善され、チップ全体の機械的安定性がさらに改善される。さらに、キャリア膜の面積を低減することにより、キャリア膜の膜静電容量を効果的に低減することができ、それによってシステムの電気ノイズを低減することができる。比較的大きい断面積を有する収容チャンバにより、収容チャンバ内の電気化学溶液の体積および装置の検出寿命は延ばすことができる。
【0053】
[0077]本開示による膜形成装置の実施形態は、遺伝子配列決定、タンパク質配列決定、生体分子検査などのインビトロ診断検査のための医療装置の分野に適用することができる。例えば、核酸分子を試験するために、形成されたキャリア膜にナノポアタンパク質が埋め込まれる。本開示による膜形成装置の実施形態は、MEMSセンサおよびバイオセンサなどのハイエンドの製造分野もしくは半導体分野、または生命科学研究および脳/神経科学研究などの科学研究分野にも適用することができる。
【0054】
[0078]図1において、収容チャンバ21は、液体状態の極性媒体溶液を収容することができる。極性媒体溶液は、本体20の上側から開口部材30を通って収容チャンバ21に流入することができる。極性媒体溶液は、塩化カリウム水溶液またはフェリシアン化カリウム/フェロシアン化カリウム溶液などの電気化学溶液であってもよい。本体20の材料は、非導電性フォトレジストまたは他の非導電性材料であってもよい。本体20の材料はまた、半導体材料または導電性材料を含んでもよく、半導体材料または導電性材料の表面に非導電性パッシベーション層が形成される。
【0055】
[0079]基部10は、単一層または多層構造として構成されてもよい。本体20は、単一層または多層構造として構成されてもよい。開口部材30は、本体20の全部または一部と一体的に形成されてもよく、または本体20とは別に形成され、本体20に接続されてもよい。基部10は、膜形成装置の他の部分のための支持体および形成面を提供することができる。複数の凹部を含む本体20の場合、基部10および本体20は、隣り合う電極間の電気的絶縁を達成するために電気的絶縁を達成することができる材料を選択することができる。
【0056】
[0080]図2を参照すると、いくつかの実施形態では、本体20は単一層構造として構成され、開口部材30は、本体20の凹部の凹部ポートの内側に接続される。開口部材30は、本体の形成後に形成されてもよい。例えば、本体20は、単一のフォトリソグラフィステップを実行することによって形成されてもよい。
【0057】
[0081]図3を参照すると、いくつかの実施形態では、本体20は、第1の本体層22および第2の本体層23を含む。第1の本体層22は、基部10の表面に設けられている。第2の本体層23は、第1の本体層22の基部10から離れた側に位置する。凹部は、第2の本体層23および第1の本体層22を基部10に垂直な方向に貫通しており、開口部材30は、第2の本体層23を貫通する凹部の一部に接続されている。
【0058】
[0082]第1の本体層22は、単一層構造として構成されてもよく、または多層構造として構成されてもよい。開口部材30は、プロセスを簡略化するために、第2の本体層23と一体的に形成されてもよい。第1の本体層22および第2の本体層23は、フォトリソグラフィによる多数回の積層、または接合プロセスによって形成されてもよい。第1の本体層22および第2の本体層23は、同じ材料で作製されてもよく、または異なる材料で作製されてもよい。本体のすべての層に使用され得る材料としては、限定されないが、シリコン系材料、フォトレジストなどが挙げられる。例えば、積層された本体20において、第1の本体層22はシリコン系材料で作製され、第2の本体層23は感光性エポキシ樹脂フォトレジストで作製される。
【0059】
[0083]図4を参照すると、いくつかの実施形態では、本体20は単一層構造として構成され、開口部材30は、プロセスを簡略化するために、本体20と一体的に形成される。本体20および開口部材30は、同じ材料で形成されてもよく、または異なる材料で形成されてもよい。
【0060】
[0084]図5を参照すると、いくつかの実施形態では、設定された機能を実施するために、電極層などの一層または多層状構造40が、本体20の基板10から離れた側に設けられてもよい。
【0061】
[0085]図2において、開口部材30は、凹部ポートに対して半径方向に内向きに突出するフランジ31を含んでもよい。フランジ31の内縁は、中空部分32を形成する。中空部分32は、膜チャネルの挿入を可能にする両親媒性分子膜を形成するために使用することができる。膜チャネルは、ナノポア、天然に存在するポア、天然に存在するポアに由来する突然変異ポア、または合成ポアであってもよい。ポアは、(同じモノマーに由来する)ホモオリゴマーであってもよく、またはヘテロオリゴマー(少なくとも1つのモノマーが他のモノマーとは異なる)であってもよい。
【0062】
[0086]図1図5を参照すると、いくつかの実施形態では、フランジ31の内縁は、加工を容易にし、より安定したキャリア膜を形成するのを助けるために同じ平面上に位置する。他の実施形態では、フランジ31の内縁は、同じ平面上に位置しなくてもよい。
【0063】
[0087]図6Aは、封止カバープレートと組み立てられた本開示のいくつかの実施形態による膜形成装置の概略構造図である。図6Aを参照すると、いくつかの実施形態では、膜形成装置は、収容チャンバ21の外側に配置された第1の電極51と、収容チャンバ21の内側に配置された第2の電極52とをさらに含む。第1の電極51は、本体20の基部10から離れた一方の側の表面に堆積された導電層によって実施されてもよい。第2の電極52は、収容チャンバ21の底部に配置されてもよく、または収容チャンバ21の側壁に配置されてもよく、または収容チャンバ21内に懸吊されてもよい。第2の電極52は、本体に含まれる複数の本体層の間に埋め込まれてもよい。
【0064】
[0088]第1の電極51および第2の電極52は、それぞれ収容チャンバ21の外側および内側の水溶液に電気的に接続され、そのため、両親媒性分子膜を横切る電気信号は、第1の電極51および第2の電極52への回路の接続によって測定することができる。回路は、両親媒性分子層を横切る電気信号を検出する従来の回路と同じ構造を採用することができる。
【0065】
[0089]第1の電極51および第2の電極52は、水溶液と接触し、より低い電流を測定することができる電気化学電極であり、水溶液に対する安定性を有する。第1の電極51に使用され得る材料としては、限定されないが、銀/塩化銀が挙げられる。第2の電極52に使用され得る材料としては、限定されないが、銀/塩化銀、貴金属、例えば金、白金およびパラジウム、または導体、例えばグラフェンもしくは窒化チタン、または半導体材料が挙げられる。第1の電極51および第2の電極52に使用される材料は、同じであっても異なってもよい。第1の電極51および第2の電極52は、複数の材料を積層または混合することによって形成された複合電極であってもよい。第1の電極51および第2の電極52の表面は、導電性ポリマーおよびヒドロゲルなどの材料で覆われてもよく、または覆われなくてもよい。
【0066】
[0090]他の実施形態では、膜形成装置は電極を含まなくてもよい。これに対応して、光学信号検出などの他の方法を使用して、DNA配列決定、タンパク質分析、単一細胞分析、または薬物スクリーニングなどの用途を達成することができる。
【0067】
[0091]両親媒性分子膜の形成を容易にするために、図6Aを参照すると、いくつかの実施形態では、膜形成装置は封止カバープレート60をさらに含む。この膜形成装置では、封止カバープレート60は着脱可能である。封止カバープレート60は、本体20の上方に位置する流路を形成するように本体20と組み立てることができ、流路は、封止カバープレート60に形成された入口および出口(図示せず)に接続されてもよい。オペレータは、両親媒性分子膜の形成中に、ガス媒体、極性媒体溶液または無極性媒体溶液を入口を通して流路に導入することができる。
【0068】
[0092]図6Bは、本開示のいくつかの実施形態による、封止カバープレート、第1の極性媒体溶液、膜チャネルが埋め込まれた両親媒性分子膜、および第2の極性媒体溶液を含む膜形成装置の構造の概略図である。図6Bを参照すると、いくつかの実施形態では、膜形成装置は、封止カバープレート60と、両親媒性分子膜80と、第1の極性媒体溶液M1と、第2の極性媒体溶液M4とをさらに含む。封止カバープレート60は、本体20の上方に位置する流路を形成するように本体20と組み立てられるように構成され、流路は、封止カバープレート60に形成された入口および出口(図示せず)に接続されてもよい。
【0069】
[0093]両親媒性分子膜80は、開口部材30の中空部分32に形成される。第1の極性媒体溶液M1は収容チャンバ21に収容され、第2の極性媒体溶液M4は収容チャンバ21の外側に収容され、本体20、開口部材30および両親媒性分子膜80の上方に位置する。
【0070】
[0094]両親媒性分子膜80は、中空部分32に形成されてもよいが、中空部分32に形成されることに限定されず、フランジ31の上側および/または下側に延在してもよい。両親媒性分子膜80は、第1の極性媒体溶液M1と第2の極性媒体溶液M4との間の界面に位置してもよく、無極性媒体溶液M3の一部が両親媒性分子膜80が位置する層に残存してもよい。両親媒性分子膜80は、フランジ31に直接付着されてもよく、または無極性溶液M3をフランジ31に付着させることによって中空部分32に維持されてもよい。
【0071】
[0095]この実施形態では、第1の極性媒体溶液M1および第2の極性媒体溶液M4は、同じまたは異なる液体であってもよく、通常は導電性塩溶液、例えば塩化カリウムの水溶液、またはフェリシアン化カリウム/フェロシアン化カリウム溶液などであってもよい。両親媒性分子膜80は、単層脂質(例えば、リン脂質単層)、二層脂質(例えば、リン脂質二層)、またはポリマー膜(例えば、ジブロック、トリブロック)であってもよい。
【0072】
[0096]図6Bを参照すると、いくつかの実施形態では、膜チャネルが両親媒性分子膜に埋め込まれる。任意選択的に、膜チャネルは、例えば、ナノポアタンパク質である。ナノポアタンパク質とは、膜貫通タンパク質ポアを形成することができるタンパク質を指す。膜貫通タンパク質ポアは、通常、複数の(例えば、6、7または8個の)反復サブユニットによって形成される。これらのサブユニットは、一般に、中心軸線を取り囲み、イオンがその中を流れることを可能にするチャネルを提供する。膜貫通タンパク質ポアは、イオンが膜の一方の側から他方の側にそれらの電気化学的勾配を流れ落ちることを可能にする。
【0073】
[0097]いくつかの実施形態では、ナノポアタンパク質は、ヘモリシン、MspA、Frac、ClyA、PA63、CsgG、GspD、XcpQ、Wza、SP1、Phi29コネクタ、SPP1コネクタ、T3コネクタ、T4コネクタ、T7コネクタ、Kイオンチャネルタンパク質、Naイオンチャネルタンパク質およびCaイオンチャネルタンパク質から選択される。
【0074】
[0098]膜チャネルは、ナノポア、天然に存在するポア、天然に存在するポアに由来する突然変異ポア、または合成ポアであってもよい。ポアは、(同じモノマーに由来する)ホモオリゴマーであってもよく、またはヘテロオリゴマー(少なくとも1つのモノマーが他のモノマーとは異なる)であってもよい。
【0075】
[0099]図7は、本開示のいくつかの実施形態による膜形成装置の凹部内の電極配置の概略構造図である。図7を参照すると、いくつかの実施形態では、基部10は、基板11および少なくとも1つのパッシベーション層(例えば、パッシベーション層12および13)を含む。少なくとも1つのパッシベーション層は、基板11と本体20との間に配置される。第2の電極52は、収容チャンバ21内の水溶液と接触するように、凹部の底部から露出している。
【0076】
[0100]第2の電極52は、基板11と少なくとも1つのパッシベーション層との間に位置してもよく、または少なくとも1つのパッシベーション層の基板11から離れた側に位置してもよい。少なくとも1つのパッシベーション層が複数のパッシベーション層、例えば、図7に示す2つのパッシベーション層12,13として構成されている場合、第2の電極52は、隣り合うパッシベーション層12,13の間に位置してもよい。
【0077】
[0101]基板11は、シリコン系基板、ガラス基板、炭素系基板、集積回路ウェハ、プリント回路基盤、フレキシブル回路基盤などであってもよい。パッシベーション層の材料は、二酸化ケイ素および窒化ケイ素などの従来のシリコン系パッシベーション材料、またはエポキシ樹脂フォトレジストもしくはポリイミドフィルムなどのフォトレジストの薄層であってもよく、またはアクリル樹脂などのプリント回路基盤をパッシベーションするために一般的に使用される絶縁塗料であってもよい。
【0078】
[0102]図8の(a)~(g)は、本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における中空部分および収容チャンバの断面形状をそれぞれ示す。図8を参照すると、基部上の中空部分32の断面の正投影は、収容チャンバの断面内に位置する。中空部分32の断面および収容チャンバ21の断面は、形状が同じであっても異なってもよく、中空部分32の断面は、円形または凸多角形の形状であってもよく、収容チャンバ21の断面は、円形または凸多角形の形状であってもよい。凸多角形は、三角形、長方形、正方形、六角形、八角形などの形状であってもよい。円形または凸多角形の断面を有する中空部分は、安定したキャリア膜を形成する可能性が高い。円形または凸多角形の断面を有する収容チャンバは、大量の水溶液を収容することができる。
【0079】
[0103]図8の(a)~(c)において、収容チャンバ21の断面はすべて円形である。図8の(d)および(e)において、収容チャンバ21の断面はすべて正方形である。図8の(a)および(d)において、中空部分32の断面はいずれも円形である。図8の(b)、(c)および(e)において、中空部分32の断面は、それぞれ長方形および三角形である。
【0080】
[0104]中空部分32のキャリア膜への接着を改善するために、図8の(f)および(g)を参照すると、いくつかの実施形態では、フランジ31の内縁は、内向きに突出する複数の突起を有する。複数の突起によって形成された不均一な縁部微細構造は、より高い安定性を有するキャリア膜を形成することができる。
【0081】
[0105]図9の(a)~(i)は、本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における開口部材のフランジの形状をそれぞれ示す。図9を参照すると、いくつかの実施形態では、フランジ31の断面は、T字形または凸多角形の形状であってもよい。図9の(c)において、T字形断面を有するフランジ31の突出端の基部10に垂直な方向の厚さは、フランジ31の根元部分の基部10に垂直な方向の厚さ以下である。この構造の開口部材はより信頼性が高く、また、より高い安定性を有するキャリア膜を形成することができる。
【0082】
[0106]図9の(a)において、フランジ31の断面は三角形の形状である。基部10に垂直な方向におけるフランジ31の厚さは、根元部分から突出端に向かって徐々に減少する。この緩やかな鋭角の縁部のフランジ21は、キャリア膜の組立て応力を増加させ、キャリア膜の安定性を改善することができる。
【0083】
[0107]図9の(b)において、フランジ31の断面は長方形の形状である。図9の(d)において、フランジ31の断面は凸五角形の形状であり、これは、フランジ31の根元部分が長方形で、突出端が三角形であることを意味する。図9の(g)~(h)において、フランジ31の断面は凸四辺形の形状であり、突出端の内縁の位置は、フランジ31の最も高い位置または最も低い位置と面一であってもよい。
【0084】
[0108]フランジ31の比表面積の増加は、無極性媒体溶液の付着をより容易にし、形成されたキャリア膜の安定性を改善することができる。図9の(i)を参照すると、フランジ31の突出端は、面取りされているか、または丸みを帯びていてもよい。図9の(e)および(f)を参照すると、いくつかの実施形態では、フランジ31は、フランジ31の表面から基部10に垂直な方向に突出するまたは凹む少なくとも一部分を有する。この部分は、離散的または連続的に隆起したまたは凹んだ微細構造であってもよい。図9の(f)において、少なくとも一部分は、フランジ31の基部10から離れた側に少なくとも位置する。キャリア膜は、中空部分に限定されなくてもよく、フランジ31の上面または下面に形成されてもよい。局所的な微細構造は、キャリア膜をフランジ31の表面に維持するのを助ける。
【0085】
[0109]図10の(a)~(d)は、本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における収容チャンバの長手方向断面の形状をそれぞれ示す。図10を参照すると、いくつかの実施形態では、収容チャンバ21の長手方向断面は、長方形、台形、湾曲縁台形またはドラムの形状である。収容キャビティ21を画定する凹部の側壁は、垂直構造であってもよく、傾斜構造もしくは曲面構造、または曲面、傾斜面および垂直構造の任意の組合せであってもよい。
【0086】
[0110]図10の(a)および(d)において、収容チャンバ21の長手方向断面はいずれも長方形であるが、図10の(d)がより大きい長方形を実現し、それによって、より大きい容積の収容チャンバを形成する点で異なり、これは、膜形成装置の検出寿命を延ばすために有益である。図10の(b)および(c)において、収容チャンバ21の長手方向断面は、それぞれ台形および湾曲縁台形である。
【0087】
[0111]図11の(a)~(c)は、本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における本体の複数の凹部の配置をそれぞれ示す。図11を参照すると、いくつかの実施形態では、本体20は複数の凹部を含んでもよい。上面図から、複数の凹部は、長方形アレイ、平行四辺形アレイ、ハニカムアレイまたは不規則状など、様々な形態で本体20に配置されてもよい。例えば、図11の(a)において、複数の凹部は、長方形アレイで配置されており、凹部は、略同じ行間隔および略同じ列間隔で配置されている。図11の(b)において、複数の凹部は、ハニカムアレイで配置されている。図11の(c)において、複数の凹部は、不規則に配置されている。
【0088】
[0112]図12の(a)~(c)は、本開示による膜形成装置のいくつかの実施形態における複数の中空部分を有する開口部材を示す概略構造図である。図12を参照すると、いくつかの実施形態では、開口部材30は、複数の中空部分32を有する。この開口部材30はフランジ31を含まないが、複数の貫通孔が、複数の中空部分32として、中実の開口部材に形成されている。複数の中空部分32は、より小型のキャリア膜をそれぞれ形成してもよい。用途要件に応じて、ナノポアタンパク質などの膜チャネルは、開口部材30の1つまたは複数の中空部分32に形成されたキャリア膜に埋め込まれてもよい。
【0089】
[0113]図12の(a)および(c)では、開口部材30は、より多い数の中空部分32を有し、図12の(b)では、開口部材30は、より少ない数の中空部分32を有する。複数の中空部分32は、同じまたは異なる間隔で配置されてもよい。各中空部分32の断面は、円形または凸多角形の形状であってもよい。
【0090】
[0114]本開示による膜形成装置の上記の実施形態に基づいて、本開示は、対応する膜形成方法をさらに提供する。図13Aは、本開示による膜形成方法のいくつかの実施形態の概略フローチャートである。図13Aを参照すると、いくつかの実施形態では、膜形成方法は、ステップS10~ステップS30を含む。
【0091】
[0115]ステップS10では、上述の膜形成装置のいずれかの実施形態が提供され、封止カバープレート60が本体20の上側に組み立てられて、封止カバープレート60と本体20との間に流路を形成する。
【0092】
[0116]ステップS20では、第1の極性媒体溶液M1が流路に導入され、その結果、第1の極性媒体溶液M1は、開口部材30の中空部分32から本体20の凹部に流入し、本体20の凹部を満たす。
【0093】
[0117]ステップS30では、開口部材30と封止カバープレート60との間の第1の極性媒体溶液M1が除去され、無極性媒体溶液M3および第2の極性媒体溶液M4に、開口部材30を覆わせる。
【0094】
[0118]この実施形態では、無極性媒体溶液M3および第2の極性媒体溶液M4の少なくとも1つが、中空部分32に両親媒性分子膜80を形成する両親媒性分子を含有する。両親媒性分子膜80は、中空部分32に形成されてもよいが、中空部分32に形成されることに限定されず、フランジ31の上側および/または下側に延在してもよい。両親媒性分子膜80が位置する層は、無極性媒体溶液M3の一部を保持することができる。両親媒性分子膜80は、フランジ31に直接付着されてもよく、または無極性溶液M3をフランジ31に付着させることによって中空部分32に維持されてもよい。
【0095】
[0119]両親媒性分子膜は、両親媒性分子で構成される単層/二層分子膜であってもよい。両親媒性分子としては、限定されないが、脂質、例えば1,2-ビス(ジフェニルホスフィン)エタン(DPPE)リン脂質分子が挙げられ、これは、ポリマー、例えばジブロックおよびトリブロックであり得る。脂質は、頭部基および疎水性尾部基を含み得る。形成された両親媒性分子膜では、脂質の頭部基は極性媒体溶液に面し、疎水性尾部基は無極性媒体溶液に面し得る。
【0096】
[0120]第1の極性媒体溶液M1および第2の極性媒体溶液M4は、同じまたは異なる液体であってもよく、通常は導電性塩溶液、例えば塩化カリウムの水溶液、またはフェリシアン化カリウム/フェロシアン化カリウム溶液などであってもよい。無極性媒体溶液M3は、n-ヘキサデカン、n-デカン、n-ヘキサンおよびシリコーン油などの水に不溶な溶媒であってもよい。
【0097】
[0121]図13Bは、本開示による膜形成方法のいくつかの実施形態の概略フローチャートである。図13Bを参照すると、図13Aと比較して、いくつかの実施形態では、膜形成方法はステップS40をさらに含む。ステップS40では、膜チャネル90は、両親媒性分子膜80に埋め込まれる。ステップS40は、安定した両親媒性分子膜の形成後に実行されてもよい。
【0098】
[0122]図14図17は、本開示による膜形成方法のいくつかの実施形態の一連のステップにおける膜形成装置の部分断面図である。図14の(a)および(b)~図17の(a)および(b)を参照すると、封止カバープレート60の組立ておよび第1の極性媒体溶液M1の導入は、それぞれステップS10およびS20によって実行される。第1の極性媒体溶液M1を導入するプロセスでは、第1の極性媒体溶液M1は、開口部材30の中空部分32から本体20の凹部に流入し、本体20の凹部を満たす。
【0099】
[0123]図14の(c)および(d)~図16の(c)および(d)を参照すると、いくつかの実施形態では、ステップS30において、開口部材30と封止カバープレート60との間の第1の極性媒体溶液M1を除去するステップは、ガス媒体M2によって、本体20と封止カバープレート60との間および開口部材30と封止カバープレート60との間の第1の極性媒体溶液M1を除去するように、ガス媒体M2を流路に導入するステップを含む。
【0100】
[0124]ガス媒体M2は、空気、窒素、アルゴンなどのいずれか1つ、またはこれらの組合せであってもよい。導入されたガス媒体M2は、本体20および開口部材30の上方の第1の極性媒体溶液M1を排出することができ、これによって、開口部材30の中空部分32内において、第1の極性媒体溶液M1とガス媒体M2との間に界面を形成する。
【0101】
[0125]他の実施形態では、開口部材30と封止カバープレート60との間の第1の極性媒体溶液M1はまた、無極性媒体溶液などの、第1の極性媒体溶液M1と不溶の液体を導入するなどの他の手段によって除去されてもよい。
【0102】
[0126]図14および図15を参照すると、いくつかの実施形態では、ステップS30において無極性媒体溶液M3および第2の極性媒体溶液M4に開口部材30を覆わせるステップは、無極性媒体溶液M3が開口部材30を覆うように無極性媒体溶液M3を流路に導入するステップと、第2の極性媒体溶液M4が開口部材30を覆うように第2の極性媒体溶液M4を流路に導入するステップとを含む。
【0103】
[0127]ステップS30では、図14の(e)に示すように、無極性媒体溶液M3が流路に導入された直後に、第2の極性媒体溶液M4が流路に導入されてもよく、または図15の(e)および(f)に示すように、無極性媒体溶液M3が流路に導入され、一定時間待機した後に、第2の極性媒体溶液M4が流路に導入されてもよい。
【0104】
[0128]両親媒性分子は、無極性媒体溶液M3、または第2の極性媒体溶液M4、または無極性媒体溶液M3および第2の極性媒体溶液M4の両方に溶解することができる。図14の(f)および図15の(g)を参照すると、両親媒性分子を含有する無極性媒体溶液M3または第2の極性媒体溶液M4が導入された後、第1の極性媒体溶液M1と第2の極性媒体溶液M4とを分離する膜80は、開口部材30の中空部分に形成される。膜80は、自己集合することができる両親媒性分子を含有し、安定性に達するまで自己集合によって徐々に薄くなり、面積を拡大する。
【0105】
[0129]図16を参照すると、いくつかの実施形態では、ステップS30において、無極性媒体溶液M3および第2の極性媒体溶液M4に開口部材30を覆わせるステップは、封止カバープレート60を除去するステップと、本体20および開口部材30に無極性媒体溶液M3をコーティングし、無極性媒体溶液M3に開口部材30を覆わせるステップと、封止カバープレート60を本体20の上側に組み立てて、封止カバープレート60と本体20との間に流路を形成するステップと、第2の極性媒体溶液M4が開口部材30を覆うように第2の極性媒体溶液M4を流路に導入するステップとを含む。
【0106】
[0130]図16の(e)では、封止カバープレート60が除去され、それによって、本体20および開口部材30が露出する。次いで、無極性媒体溶液M3の層が、本体20および開口部材30の表面に可能な限り均一に塗布される。無極性媒体溶液M3は、滴下法、霧化噴霧法、または他の方法によって塗布されてもよい。図16の(f)では、封止カバープレート60は、本体20の上側に再び組み立てられ、次いで、第2の極性媒体溶液M4は、形成された流路内に導入される。第2の極性媒体溶液M4は、開口部材30の外側にある無極性媒体溶液M3を排出することができる。
【0107】
[0131]両親媒性分子は、無極性媒体溶液M3、または第2の極性媒体溶液M4、または無極性媒体溶液M3および第2の極性媒体溶液M4の両方に溶解することができる。図16の(g)を参照すると、第1の極性媒体溶液M1と第2の極性媒体溶液M4とを分離する膜80は、開口部材30の中空部分に形成される。膜80は、自己集合することができる両親媒性分子を含有し、安定性に達するまで自己集合によって徐々に薄くなり、面積を拡大する。
【0108】
[0132]図17を参照すると、いくつかの実施形態では、ステップS30において、開口部材30と封止カバープレート60との間の第1の極性媒体溶液M1を除去し、無極性媒体溶液M3および第2の極性媒体溶液M4に開口部材30を覆わせるステップは、無極性媒体溶液M3によって、本体20と封止カバープレート60との間の第1の極性媒体溶液M1および開口部材30と封止カバープレート60との間の第1の極性媒体溶液M1を除去し、無極性媒体溶液M3によって開口部材30を覆うことを達成するように、無極性媒体溶液M3を流路に導入するステップと、第2の極性媒体溶液M4が開口部材30を覆うように第2の極性媒体溶液M4を流路に導入するステップとを含む。
【0109】
[0133]図17の(c)では、無極性媒体溶液M3は流路に導入される。このとき、せん断力の作用下で、図17(d)に示すように、第1の極性媒体溶液M1と無極性媒体溶液M3との間の界面が、開口部材30の中空部分に形成される。図17の(e)では、第2の極性媒体溶液M4は、流路に導入される。両親媒性分子は、無極性媒体溶液M3、または第2の極性媒体溶液M4、または無極性媒体溶液M3および第2の極性媒体溶液M4の両方に溶解することができる。図17を参照すると、両親媒性分子を含有する無極性媒体溶液M3または第2の極性媒体溶液M4が導入された後、第1の極性媒体溶液M1と第2の極性媒体溶液M4とを分離する膜80は、開口部材30の中空部分に形成される。膜80は、自己集合することができる両親媒性分子を含有し、安定性に達するまで自己集合によって徐々に薄くなり、面積を拡大する。
【0110】
[0134]関連技術と比較して、本開示における上述の膜形成方法の様々な実施形態は、膜形成装置の基部、本体、開口部材などの疎水性前処理を必要とせず、膜形成装置の準備困難性を低減する。膜形成装置の開口部材に基づいて、膜形成プロセス中のガス媒体または無極性媒体溶液と第1の極性媒体溶液との間の界面のせん断均一性が最適化され、その結果、両親媒性分子膜は、1回で完成させることができ、これは、膜形成プロセスを単純化し、膜形成収率および膜安定性を改善する。
【0111】
[0135]膜形成装置および膜形成方法の実施形態の効果を、実験データに基づいて複数の態様から以下に説明する。
【0112】
[0136]図18は、本開示による膜形成装置の第1の実施形態の走査型電子顕微鏡フェノグラムである。図18を参照すると、膜形成装置の第1の実施形態では、膜形成装置の開口部材の中空部分の直径は、約80μmである。周方向に配置された複数組の微細溝構造が開口部材のフランジに設けられ、各組の微細溝構造は、半径方向に配置された複数の微細溝構造を含む。この微細溝構造は、ガス媒体または無極性媒体溶液と第1の極性媒体溶液との間の界面の形成およびキャリア膜の維持に有益である。構造は、SU-8フォトレジスト(最終厚さ95μm)をシリコン基板上にスピンコーティングし、次いで、プリベーク、露光、ポストベーク、現像、およびハードベークなどのプロセスを行うことによって形成される。
【0113】
[0137]図19は、本開示による膜形成装置の第2の実施形態の走査型電子顕微鏡フェノグラムである。図19を参照すると、膜形成装置の第2の実施形態では、膜形成装置の開口部材の中空部分の直径は50μm未満であり、最終的には約47μmと測定される。周方向に配置された複数組の微細溝構造が開口部材のフランジに設けられ、各組の微細溝構造は、半径方向に配置された複数の微細溝構造を含む。この微細溝構造は、ガス媒体または無極性媒体溶液と第1の極性媒体溶液との間の界面の形成およびキャリア膜の維持に有益である。構造は、SU-8フォトレジスト(最終厚さ95μm)をシリコン基板上にスピンコーティングし、次いで、プリベーク、露光、ポストベーク、現像、および膜硬化などのプロセスを行うことによって形成される。
【0114】
[0138]図20は、本開示による膜形成装置の第3の実施形態の部分切欠走査型電子顕微鏡フェノグラムである。図20を参照すると、膜形成装置の第3の実施形態では、膜形成装置の開口部材の中空部分の直径は、約80μmである。開口部材の中空部分の形状は略円形であり、フランジは微細構造を有さず滑らかである。開口部材内の収容チャンバの側壁は、滑らかな曲面である。
【0115】
[0139]図21は、本開示による膜形成装置の第4の実施形態の部分切欠走査型電子顕微鏡フェノグラムである。図21を参照すると、膜形成装置の第4の実施形態では、膜形成装置の開口部材の中空部分の直径は、約75μmである。開口部材の中空部分の形状は、不規則なパターンの略円形であり、その内縁は、内向きに突出する複数の約3μmの隆起した微細構造を有する。この隆起した微細構造は、キャリア膜の安定性を高めることができる。開口部材内の収容チャンバの側壁は、滑らかな曲面である。
【0116】
[0140]図22は、上面図から取った切欠状態の、本開示による膜形成方法の第1の実施形態における膜アレイの共焦点蛍光顕微鏡フェノグラムである。図14を参照すると、膜形成方法の第1の実施形態では、第1の極性媒体溶液としての塩化カリウム(500mM)およびHepes(5mM)の水溶液が、複数の凹部(図11の(b))を含む膜形成装置の流路に導入され、水溶液は収容チャンバを満たす。次いで、膜形成装置の流路から10mLの空気が押し込まれて、凹部内に水溶液を保持しながら、本体および開口部材の直上の水溶液を完全に排出する。流体せん断力の効果により、水溶液と空気との界面が、開口部材の中空部分に形成される。次いで、両親媒性分子(1,2-ビス(ジフェニルホスフィン)エタン(DPPE)リン脂質分子)(50mg/mL)が溶解した無極性媒体溶液(n-ヘキサデカン)5μLと、第2の極性媒体溶液としての塩化カリウム(500mM)およびHepes(5mM)の水溶液1mLとが、順次押し込まれる。
【0117】
[0141]液体の表面張力の効果により、無極性媒体溶液およびそれに溶解した両親媒性分子は、開口部材の中空部分に自然に平らに置かれ、中空部分に位置する第1の極性媒体溶液を完全に覆い、したがって中空部分に水/油/水界面の層を形成する。リン脂質分子は、自己集合によって水溶液と油(n-ヘキサデカン)との界面に自発的に自己配置する。最後に、分子間力の下で、いくつかの領域のリン脂質分子が自己集合して二層リン脂質膜を形成する。時間が経つにつれて、膜面積はますます大きくなり、安定する傾向がある。
【0118】
[0142]図22に表す物体は、開口径が約80μmの複数の凹部のアレイ上に形成されたキャリア膜のアレイである。実験で使用した蛍光共焦点顕微鏡(FCFM)モデルは、Nikon C2+である。各凹部内の収容チャンバ内の第1の極性媒体溶液は、0.02質量%のRhodamine B蛍光色素を含有する。Rhodamine Bの励起ピーク波長および発光ピーク波長は、それぞれ546nmおよび568nmである。開口部材の中空部分の上方の第2の極性媒体溶液は、Rhodamine Bを含有しない。2μMのBODIPY FL蛍光色素が、無極性媒体溶液に混合される。BODIPY FLの励起ピークおよび発光ピークは、それぞれ503nmおよび512nmである。BODIPY FLは無極性媒体溶液に容易に可溶であるため、アレイ装置内の無極性媒体溶液を含有する領域は緑色に見える。
【0119】
[0143]図22に示す顕微鏡フェノグラムでは、Rhodamine Bは膜より下の水溶液に溶解し、フェノグラムでは赤色に見える(矢印Rで示す)。膜より上の水溶液はRhodamine Bを含有せず、したがって蛍光を有さず、黒色のバックグラウンドを示す。リン脂質を含有する無極性媒体溶液は、フェノグラムでは淡緑色に見える(矢印Gで示す)。図22に示す蛍光共焦点断面から分かるように、膜界面において、凹部の収容チャンバ内の第1の極性媒体溶液は、わずかに凸状の形状を呈し、キャリア膜の実際の形状がわずかに凸状の曲面であることを示している。図22に示す上面図から分かるように、キャリア膜の境界は、比較的規則的な円形である。
【0120】
[0144]図23は、本開示による膜形成方法の第2の実施形態における膜アレイの共焦点蛍光顕微鏡フェノグラムである。図16を参照すると、膜形成方法の第2の実施形態では、第1の極性媒体溶液としての塩化カリウム(500mM)およびHepes(5mM)の水溶液が、複数の凹部(図11の(b))を含む膜形成装置の流路に導入され、水溶液は収容チャンバを満たす。水溶液はまた、0.02質量%のRhodamine Bを含有する。次いで、膜形成装置の流路から10mLの空気が押し込まれて、凹部内に水溶液を保持しながら、本体および開口部材の直上の水溶液を完全に排出する。流体せん断力の効果により、水溶液と空気との界面が、開口部材の中空部分に形成される。
【0121】
[0145]次いで、封止カバープレートが除去され、次いで、50mg/mLの両親媒性分子(1,2-ビス(ジフェニルホスフィン)エタン(DPPE)リン脂質分子)が溶解した無極性媒体溶液(n-ヘキサデカン)30μLが本体の直上に滴下され、10分間待機する。このとき、リン脂質分子は水-油界面で分子力によって自己集合して、安定したリン脂質単層を形成する。次いで、封止カバープレートが組み立てられ、Rhodamine Bを含まない第2の極性溶液1mLが、膜形成装置の流路から押し込まれる。次いで、外乱なく24時間待機し、その間に、膜は自己集合して安定したリン脂質二層を形成する。
【0122】
[0146]キャリア膜が安定した後、Rhodamineを含まない500mMの塩化カリウムおよび5mMのHepesの溶液5mLが、フラッシングのために液体入口から押し込まれる。図23を参照すると、顕微鏡フェノグラムに現れる円形の蛍光スポットは、安定したキャリア膜の形成を表す。膜形成が失敗した場合、膜が破裂した後、凹部の底部で蛍光溶媒の拡散を阻止することができない。凹部の収容チャンバ内の蛍光色素は、収容チャンバの外側の非蛍光の第2の極性溶液中に迅速に拡散し、最終的に蛍光顕微鏡フェノグラムでは灰色-黒色に見える。図23では、各凹部に対応する位置に強い蛍光があり、これは、膜形成収率が100%に達していることを示す。
【0123】
[0147]図24および図25はそれぞれ、本開示による膜形成装置の実施形態における膜形成後に三角波電圧が異なるチャネルに印加されたときに監視された膜貫通電流曲線を示すグラフである。図19に示す直径が約47μmの中空部分を有する膜形成装置に基づいて、本明細書に開示された膜形成方法によって膜が形成された後、キャリア膜は24時間安定化され、次いで、振幅が50mVの三角波電圧がキャリア膜の両側の電極に印加され、電流がリアルタイムで監視される。
【0124】
[0148]図24を参照すると、三角波電圧によって独立したチャネルが駆動されたとき、膜貫通電流は、ピーク値が約80~90pAの準方形波として現れる。次いで、膜静電容量は40pFと計算され、これは、正常な膜形成のための合理的な静電容量範囲内(10~150pF)である。図25を参照すると、三角波電圧によって別の独立したチャネルが駆動されたとき、膜貫通電流は、ピーク値が約60~70pAの準方形波として現れる。次いで、膜静電容量は30.7pFと計算され、これは、正常な膜形成のための合理的な静電容量範囲内(10~150pF)である。
【0125】
[0149]図26は、本開示による膜形成装置の一実施形態における膜形成後に三角波電圧が印加されたときに監視された膜貫通電流曲線を示すグラフである。直径が約90μmの中空部分を有する膜形成装置に基づいて、本明細書に開示された膜形成方法によって膜が形成された後、キャリア膜は24時間安定化され、次いで、振幅が50mVの三角波電圧がキャリア膜の両側の電極に印加され、電流がリアルタイムで監視される。図26を参照すると、三角波電圧によって駆動されると、膜貫通電流は、ピーク値が約200~220pAの準方形波として現れる。次いで、膜静電容量は100pFと計算され、これは、正常な膜形成のための合理的な静電容量範囲内(10~150pF)である。
【0126】
[0150]別の実施形態では、図18に示す直径が約80μmの中空部分を有する膜形成装置が使用され、本開示の膜形成方法によって膜が形成された後、静電容量統計が実行される。膜が形成された直後、膜内には比較的大量の無極性媒体溶液が依然として存在するので、膜厚が大きいか、または膜面積が小さく、したがって、ほとんどのチャネルの膜静電容量は、0~20pFと測定される。24時間後、静電容量は再び監視される。ほとんどのチャネルの膜静電容量は、約30~40pFまで増加し、安定する傾向がある。膜静電容量の値はすべて、正常な膜形成の合理的な静電容量範囲内(10~150pF)にあることが分かる。監視後、膜破裂によるチャネルの短絡と判断された理由で、128個のチャネルのうちの1つのチャネルのみが300pFを超える膜静電容量を有するが、残りの127個のチャネルはすべて無傷のキャリア膜を有することが分かり、したがって、膜形成収率は127/128=99.2%と計算される。したがって、膜形成収率が非常に高いだけでなく、キャリア膜の安定性も非常に良好である。
【0127】
[0151]図27は、本開示による膜形成装置の一実施形態における膜形成プロセス中に経時的に変化する複数のチャネルの静電容量を示すグラフである。直径が約110μmの中空部分を有する膜形成装置が使用される。膜形成装置は、銀/塩化銀電極を使用する。本明細書に記載の膜形成方法を使用して膜が形成された後、膜形成装置内の複数の独立したチャネルの膜静電容量の曲線は、長期測定によって得られる。膜静電容量のデータ記録モードは、10分ごとにすべてのチャネルの静電容量を記録する。図27を参照すると、x軸は時間(h)の最小単位で時間を表し、y軸はピコファラド(pF)単位で静電容量を表す。図27は、膜形成後の合計15時間にわたる複数の独立したチャネルの静電容量データを記録する。データから分かるように、膜形成の初期段階中、ほとんどのチャネルの静電容量は、0~20pFである。その後、キャリア膜は分子間のファンデルワールス力によって自発的に薄くなり、その結果、キャリア膜の面積は増加し続け、静電容量は徐々に増加する。
【0128】
[0152]膜の有効面積は、平行平板コンデンサの膜静電容量計算式C=(ε*ε*S)/dを参照することによって推定することができ、式中、Cは、膜静電容量を表し、εは、真空誘電率を表し、εは、膜分子の誘電率を表し、Sは、膜の有効面積を表し、dは、膜の厚さを表す。一般に、両親媒性分子が自己集合して安定した単層または二層の膜を形成する場合、膜の厚さdおよび膜分子の誘電率は一定のままであり、真空誘電率εは一定であるため、膜静電容量Cは膜の有効面積Sに直接線形依存する。膜の有効面積が大きいほど、静電容量は大きくなり、逆に、膜の有効面積が小さいほど、静電容量は小さくなる。ほとんどのチャネルの静電容量は急速にホップし、膜形成後1時間目から10時間目まで約110pFまで安定する。この静電容量値は、正常な膜形成のための合理的な静電容量値範囲内(10~150pF)にある。安定した静電容量をまだ達成していないチャネルはわずかのみである。
【0129】
[0153]図28は、本開示による膜形成装置の一実施形態により形成されたキャリア膜を使用して電気的方法によって単一分子が検出される場合の検出電流信号の概略図である。上述した膜形成装置および膜形成方法により得られたキャリア膜は、例えば電気的方法による単一分子の検出に使用することができる。安定したキャリア膜が形成された後、ナノポアタンパク質(MspA)を含有する溶液200μLが流路に導入される。ナノポアタンパク質は、溶液の流れおよび分子の熱運動のために、キャリア膜の近くにランダムに分布する。次いで、電圧の刺激下で、単一ナノポアタンパク質がキャリア膜内の分子の障壁を首尾よく通過し、キャリア膜に首尾よく埋め込まれる。ナノポアタンパク質が首尾よく埋め込まれた後、試験対象の核酸分子を含有する溶液が膜形成装置の流路入口に添加され、次いで、膜形成装置の電極に180mVの電圧が印加される。単一の核酸分子は、電界力の作用下でナノポアタンパク質を通過し、連続的なイオン電流遮断信号を形成する。図28を参照すると、核酸分子がナノポアを通過するとき、約50~150pAの電流の変動信号を生成する。
【0130】
[0154]図29の(a)および(b)は、関連技術における膜形成装置の寸法概略図、および本開示による膜形成装置の一実施形態の寸法概略図である。従来の電気化学的検出では、銀/塩化銀電極などの消耗電極が通常使用される。この場合、通常、膜形成装置の収容チャンバ内の電解質の体積および溶液の消費量の代わりに、電極自体の耐用寿命に焦点を合わせる必要がある。
【0131】
[0155]しかしながら、別の電気化学的検出システムでは、検出電極は非消耗電極(金または白金および他の不活性金属電極など)であってもよく、それに対応して、膜形成装置の収容チャンバ内の溶液は消耗電子対溶液(フェリシアン化カリウム/フェロシアン化カリウム溶液など)で置き換える必要がある。この場合、アレイ密度および検出チャネルの数を増加させる必要性によって制限され、凹部のサイズは、通常、非常に小さくなるように設計され、収容チャンバ内の溶液の体積は、非常に少量(通常、ナノリットル規模)である。したがって、検出寿命に対する凹部の内部容積の影響に焦点を合わせる必要がある。図29の(a)および(b)を参照すると、図29の(a)に示す関連技術の収容チャンバ内の溶液の総体積と、図29の(b)に示す本開示による膜形成装置の実施形態の収容チャンバ内の溶液の総体積との間で、計算および比較が行われる。非消耗電極および消耗電子対溶液の場合、本開示による膜形成装置の実施形態の収容チャンバは大きな利点を有することが理解され得る。
【0132】
[0156]図29の(a)および(b)を参照すると、関連技術の収容チャンバおよび本開示による膜形成装置の実施形態の収容チャンバは、いずれも円筒形状であると仮定される。関連技術の収容チャンバの対応する円筒は、直径がd0および高さがhである。本開示による膜形成装置の実施形態では、収容チャンバの対応する円筒の直径はdであり、高さはhであり、開口部材の高さはhであり、開口部材の中空部分の直径はdである。
【0133】
[0157]体積式によれば、関連技術の収容チャンバの内部溶液体積は、V=(π*d *h)/4と計算することができ、本開示による膜形成装置の実施形態の収容チャンバの内部溶液体積は、V≒(π*d *h)/4と計算される。膜面積の効果的な低減を保証する条件(d<d)下で、d=2*d、h=hとすると、V≒(π*d *h)/4=4*((π*d *h)/4)=4*V、すなわち、本開示による膜形成装置の実施形態の収容チャンバの内部溶液体積は、関連技術の収容チャンバの内部溶液体積の約4倍である。
【0134】
[0158]典型的な値d=100μm、d=200μm、h=100μm、h=100μmをとると、V=7.85×10μm、V=3.14×10μmとなる。Vは約0.8nLに等しく、Vは約3.1nLに等しい。本開示による膜形成装置の実施形態は、関連技術と比較して大きな利点を有することが分かる。溶液の貯蔵容量は関連技術の4倍以上であり、それによって、より長い検出寿命を保証する。
【0135】
[0159]上述の様々な実験で提示されたデータは、技術的に相互運用可能であり、相互に関連している。形成されたキャリア膜について、キャリア膜の測定された静電容量は合理的な範囲内(10~150pF)であり、これは、正常な膜形成を意味する。したがって、図24図26に示す直径が約47μmおよび90μmの中空部分の場合の膜貫通電流曲線を使用して、単一チャネル静電容量測定結果を提示する。直径が約110μmの中空部分の場合の静電容量変化図は、図27に示すように、膜形成開始から最終的に安定した膜が形成されるまでの静電容量の動的変化過程を提示する。直径が約80μmの中空部分を有する膜形成装置のマルチチャネル統計から得られた膜形成収率も上記に提供されている。
【0136】
[0160]以上、本開示の様々な実施形態について詳細に説明した。本開示の概念を曖昧にすることを避けるために、当技術分野で周知のいくつかの詳細は記載されていない。当業者は、上記の説明に従って本明細書に開示された技術的解決策を実施する方法を十分に理解することができる。
【0137】
[0161]本開示のいくつかの特定の実施形態を例を通して詳細に説明したが、上記の例は例示のためのものにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことを当業者は理解すべきである。当業者は、本開示の範囲および精神から逸脱することなく、上記の実施形態を修正することができ、またはいくつかの技術的特徴を均等物に置き換えることができることを理解すべきである。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図10(d)】
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図12
図13A
図13B
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図14(d)】
図14(e)】
図14(f)】
図15(a)】
図15(b)】
図15(c)】
図15(d)】
図15(e)】
図15(f)】
図15(g)】
図16(a)】
図16(b)】
図16(c)】
図16(d)】
図16(e)】
図16(f)】
図16(g)】
図17(a)】
図17(b)】
図17(c)】
図17(d)】
図17(e)】
図17(f)】
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29(a)】
図29(b)】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部(10)と、
前記基部(10)に配置され、凹部を有する本体(20)と、
前記凹部の前記基部(10)から離れた端部にある凹部ポートの内側に配置された開口部材(30)であって、前記開口部材(30)の中空部分(32)が膜(80)を形成するように構成されている、開口部材(30)と
を備える、膜形成装置。
【請求項2】
前記凹部が、極性媒体溶液を収容するための収容チャンバ(21)を画定するように構成され、前記膜(80)が両親媒性分子膜であり、前記開口部材(30)の前記中空部分(32)の断面積が、前記収容チャンバ(21)の断面積よりも小さい、請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項3】
前記本体(20)が、
前記基部(10)の表面に配置された第1の本体層(22)と、
前記第1の本体層(22)の前記基部(10)から離れた側に位置する第2の本体層(23)と
を備え、
前記凹部が、前記第2の本体層(23)および前記第1の本体層(22)を前記基部(10)に垂直な方向に貫通しており、前記開口部材(30)が、前記第2の本体層(23)を貫通する前記凹部の一部に接続されている、
請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項4】
前記開口部材(30)が、
前記凹部ポートに対して半径方向に内向きに突出するフランジ(31)
を備え、
前記フランジ(31)の内縁が前記中空部分(32)を形成する、
請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項5】
前記フランジ(31)の前記内縁が同じ平面上に位置する、請求項に記載の膜形成装置。
【請求項6】
前記フランジ(31)の突出端が、面取りされているか、または丸みを帯びている、請求項に記載の膜形成装置。
【請求項7】
前記フランジ(31)の断面が、T字形または凸多角形の形状である、請求項に記載の膜形成装置。
【請求項8】
前記基部(10)に垂直な方向における前記フランジ(31)の前記突出端の厚さが、前記基部(10)に垂直な方向における前記フランジ(31)の根元部分の厚さ以下である、請求項に記載の膜形成装置。
【請求項9】
前記基部(10)に垂直な方向における前記フランジ(31)の厚さが、前記根元部分から前記突出端まで徐々に減少する、請求項に記載の膜形成装置。
【請求項10】
前記フランジ(31)が、前記フランジ(31)の表面から前記基部(10)に垂直な方向に突出するまたは凹む少なくとも一部分を有する、請求項に記載の膜形成装置。
【請求項11】
前記少なくとも一部分が、前記フランジ(31)の前記基部(10)から離れた側に少なくとも位置する、請求項10に記載の膜形成装置。
【請求項12】
前記フランジ(31)の前記内縁が、内向きに突出する複数の突起を有する、請求項に記載の膜形成装置。
【請求項13】
前記収容チャンバ(21)の外側に配置された第1の電極(51)と、
前記収容チャンバ(21)の内側に配置された第2の電極(52)と
をさらに備え
前記基部(10)が、
基板(11)と、
前記基板(11)と前記本体(20)との間に配置された少なくとも1つのパッシベーション層(12,13)と
を備え、
前記第2の電極(52)が、前記凹部の底部から露出しており、
前記第2の電極(52)が、前記基板(11)と前記少なくとも1つのパッシベーション層(12,13)との間に位置するか、または、前記第2の電極(52)が、前記少なくとも1つのパッシベーション層(12,13)の前記基板(11)から離れた側に位置するか、または、前記第2の電極(52)が、前記少なくとも1つのパッシベーション層(12,13)が複数のパッシベーション層(12,13)として構成されている場合、隣り合うパッシベーション層(12,13)の間に位置する、
請求項に記載の膜形成装置。
【請求項14】
前記開口部材(30)が、複数の中空部分(32)を有する、請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項15】
前記本体(20)と組み立てられるように構成された封止カバープレート(60)と、
前記開口部材(30)の前記中空部分(32)に形成される両親媒性分子膜(80)と、
前記収容チャンバ(21)に収容される第1の極性媒体溶液(M1)と、
前記収容チャンバ(21)の外側に収容され、前記本体(20)、前記開口部材(30)および前記両親媒性分子膜(80)の上方に位置する第2の極性媒体溶液(M4)と
をさらに備える、請求項に記載の膜形成装置。
【請求項16】
膜形成方法であって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の膜形成装置を用意し、前記本体(20)の上側に封止カバープレート(60)を組み立てて、前記封止カバープレート(60)と前記本体(20)との間に流路を形成するステップと、
前記流路に第1の極性媒体溶液(M1)を導入し、その結果、前記第1の極性媒体溶液(M1)が開口部材(30)の中空部分(32)から前記本体(20)の凹部に流入し、前記本体(20)の前記凹部を満たすステップと、
前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の前記第1の極性媒体溶液(M1)を除去し、無極性媒体溶液(M3)および第2の極性媒体溶液(M4)に前記開口部材(30)を覆わせるステップと
を含み、
前記無極性媒体溶液(M3)および前記第2の極性媒体溶液(M4)の少なくとも1つが、前記中空部分(32)に両親媒性分子膜(80)を形成する両親媒性分子を含有する、膜形成方法。
【請求項17】
前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の前記第1の極性媒体溶液(M1)を前記除去するステップが、
ガス媒体(M2)によって、前記本体(20)と前記封止カバープレート(60)との間、および前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の前記第1の極性媒体溶液(M1)を除去するように、前記流路内に前記ガス媒体(M2)を導入するステップ
を含む、請求項16に記載の膜形成方法。
【請求項18】
前記無極性媒体溶液(M3)および前記第2の極性媒体溶液(M4)に前記開口部材(30)を前記覆わせるステップが、
前記無極性媒体溶液(M3)が前記開口部材(30)を覆うように、前記無極性媒体溶液(M3)を前記流路に導入するステップと、
前記第2の極性媒体溶液(M4)が前記開口部材(30)を覆うように、前記第2の極性媒体溶液(M4)を前記流路に導入するステップと
を含む、請求項17に記載の膜形成方法。
【請求項19】
前記無極性媒体溶液(M3)および前記第2の極性媒体溶液(M4)に前記開口部材(30)を前記覆わせるステップが、
前記封止カバープレート(60)を除去するステップと、
前記本体(20)および前記開口部材(30)に前記無極性媒体溶液(M3)をコーティングし、前記無極性媒体溶液(M3)に前記開口部材(30)を覆わせるステップと、
前記封止カバープレート(60)を前記本体(20)の上側に組み立てて、前記封止カバープレート(60)と前記本体(20)との間に流路を形成するステップと、
前記第2の極性媒体溶液(M4)が前記開口部材(30)を覆うように、前記第2の極性媒体溶液(M4)を前記流路に導入するステップと
を含む、請求項17に記載の膜形成方法。
【請求項20】
前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の前記第1の極性媒体溶液(M1)を除去し、前記無極性媒体溶液(M3)および前記第2の極性媒体溶液(M4)に前記開口部材(30)を前記覆わせるステップが、
前記無極性媒体溶液(M3)によって、前記本体(20)と前記封止カバープレート(60)との間の第1の極性媒体溶液(M1)および前記開口部材(30)と前記封止カバープレート(60)との間の第1の極性媒体溶液(M1)を除去し、前記無極性媒体溶液(M3)によって前記開口部材(30)を覆うことを達成するように、前記無極性媒体溶液(M3)を前記流路に導入するステップと、
前記第2の極性媒体溶液(M4)が前記開口部材(30)を覆うように、前記第2の極性媒体溶液(M4)を前記流路に導入するステップと
を含む、請求項16に記載の膜形成方法。
【国際調査報告】