(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】冷却孔を有するガスタービンノズル、及びタービン
(51)【国際特許分類】
F01D 9/04 20060101AFI20241212BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F01D9/04
F01D25/12 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538401
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2023025028
(87)【国際公開番号】W WO2023143864
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】102022000001355
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】クレスキ,アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】クベダ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】パオネ,ファブリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】トリポリ,ジローラモ
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202GA07
3G202GB01
3G202JJ08
3G202JJ17
(57)【要約】
【解決手段】 ガスタービン用のノズルセグメントは、内側プラットフォーム(23)、及び外側プラットフォーム(25)、並びに、内側プラットフォーム(23)と外側プラットフォーム(25)との間に配置された複数の翼形部(27、29)を、含む。プラットフォーム膜冷却孔(37)のセットは、当該高温ガス流路(31)に面している、内側プラットフォームの表面上、又は外側プラットフォームの表面上の少なくとも1つのプラットフォーム膜冷却孔を含めて、設けられる。それぞれの翼形部(29)の圧力側からのプラットフォーム膜冷却孔(37)の接線方向の距離(Δγhole)と、プラットフォーム膜冷却孔(37)における接線方向の高温ガス流路(31)の幅(Δγ)との比が、0~0.5に含まれている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン用のノズルセグメントであって、前記ノズルセグメントが、
内側プラットフォーム(23)、及び外側プラットフォーム(25)と、
前記内側プラットフォーム(23)と前記外側プラットフォーム(25)との間に配置された、複数の翼形部(27、29)であって、前記内側プラットフォーム(23)、前記外側プラットフォーム(25)、及び前記複数の翼形部(27、29)が、付加製造によって製造され、各翼形部(27、29)が、前縁(27L、29L)、後縁(27T、29T)、圧力側(27P、29P)、及び負圧側(27S、29S)を、備え、高温ガス流路(31)が、前記内側プラットフォーム(23)と、前記外側プラットフォーム(25)と、前記複数の翼形部(27、29)の連続して配置された各対の翼形部(27、29)との間に形成される、複数の翼形部と、
前記高温ガス流路(31)に面している、前記内側プラットフォームの表面上、又は前記外側プラットフォームの表面上の少なくとも1つのプラットフォーム膜冷却孔を含む、プラットフォーム膜冷却孔(37)のセットと、を含み、
前記冷却孔が、非円形、及び非楕円形の発散形状を有する、成形冷却孔であり、
前記それぞれの翼形部(29)の前記圧力側(29P)からの前記プラットフォーム膜冷却孔(37)の接線方向の距離(Δyhole)と、前記プラットフォーム膜冷却孔(37)における接線方向の前記高温ガス流路(31)の幅(Δy)との比が、0~0.5に含まれ、
各前記翼形部の食違い余角(α)が85°以下であり、
羽根流路幅(St)と各前記高温ガス流路(31)の軸方向翼弦(Cax)との比が、0~0.5に含まれている、ノズルセグメント。
【請求項2】
前記前縁(27L、29L)からの前記プラットフォーム膜冷却孔(37)の軸方向距離(Cax,hole)と、前記軸方向翼弦(Cax)との間の比が、0.15~0.95、好ましくは、0.2~0.925、より好ましくは、0.25~0.9に含まれている、請求項1に記載のノズルセグメント。
【請求項3】
前記プラットフォーム膜冷却孔(37)が、前記高温ガス流路(31)に面している、前記それぞれのプラットフォーム(23、25)の表面と60°以下、好ましくは、55°以下、より好ましくは、50°以下の角度(δ)を形成する軸(A)を有する、請求項1又は2に記載のノズルセグメント。
【請求項4】
前記プラットフォーム膜冷却孔(37)の合成角(β)と前記翼形部の前記食違い余角(α)との間の差が、15°以下又は25°以上、好ましくは、-7.5°以下又は27.5°以上、より好ましくは、-5°以下又は30°以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のノズルセグメント。
【請求項5】
前記それぞれの翼形部(29)の前記圧力側からの前記プラットフォーム膜冷却孔(37)の接線方向の前記距離(Δyhole)と、前記プラットフォーム膜冷却孔(37)における接線方向の前記高温ガス流路(31)の幅(Δy)との比が、0~0.45、好ましくは、0~0.40に含まれている、請求項1~4のいずれか一項に記載のノズルセグメント。
【請求項6】
前記食違い余角(α)が、80°以下、好ましくは、75°以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のノズルセグメント。
【請求項7】
前記羽根流路幅(St)と前記軸方向翼弦(Cax)との間の前記比は、0~0.45、好ましくは、0~0.40に含まれている、請求項1~6のいずれか一項に記載のノズルセグメント。
【請求項8】
プラットフォーム膜冷却孔(37)の前記セットが、前記内側プラットフォーム(23)上の少なくとも1つのプラットフォーム膜冷却孔と、前記外側プラットフォーム(25)上の少なくとも1つのプラットフォーム膜冷却孔とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のノズルセグメント。
【請求項9】
プラットフォーム膜冷却孔(37)の前記セットが、各高温ガス流路(31)に沿って連続して配置された前記内側プラットフォーム(23)上の複数のプラットフォーム膜冷却孔を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のノズルセグメント。
【請求項10】
プラットフォーム膜冷却孔(37)の前記セットが、各高温ガス流路(31)に沿って連続して配置された前記外側プラットフォーム(25)上の複数のプラットフォーム膜冷却孔を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のノズルセグメント。
【請求項11】
ガスタービンエンジンであって、請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのノズルセグメントを備える、ガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンエンジンに関する。具体的には、本明細書では、燃焼器と高圧タービンホイールとの間に配置される定置型入口ガスノズルなど、膜冷却を必要とするタービン構成要素を開示する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの熱効率を向上させる上で、熱力学サイクルの高温部を増加させると熱効率が増加することから高い燃焼温度が望ましい。
【0003】
高い燃焼ガス温度は、燃焼室に最も近いタービン構成要素、すなわち、燃焼器、典型的には、燃焼室からの高圧高温燃焼ガスが高圧タービンの第1タービンホイールに向かって流れる第1段ノズルの冷却を必要とする。一般に、高温燃焼ガスが流れる、構成要素の熱損傷及び摩耗を、防止又は低減するために、当該構成要素の膜冷却が使用される。タービン構成要素内で製造され、タービン構成要素の冷却されるべき表面に孔出口を有する孔を通して冷却空気を供給することによって、膜冷却は達成される。これらの孔は、一般に、「膜冷却孔」又は「膜孔」と呼ばれる。
【0004】
通常、膜冷却孔は、燃焼室と高圧タービンホイールとの間に配置された定置ノズルの翼型形状部に製造される。一部のタービンでは、同心円状に配置された内側プラットフォーム及び外側プラットフォームにも膜冷却孔が設けられ、これらのプラットフォーム間には、ガス流路を形成する翼型形状部が配置される。
【0005】
冷却効率は、翼形部に対する膜冷却孔の位置、及び向きによって影響を受ける場合がある。
【0006】
冷却効率を改善させて、熱力学サイクルの高温化、及び/又はタービン構成要素への熱損傷の低減を実現するために、冷却孔の設計を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、タービン構成要素、より具体的には、1つ以上のノズルを画定する2つ以上の翼形部を含む、ガスタービン用のノズルセグメント(ノズルセクタ)を開示する。高温加圧燃焼ガスの流れを第1タービンホイール内で誘導する第1セットの定置高圧ノズルを形成するよう、1つ以上のノズルセグメントが、タービン軸を中心にして円周方向に配置されている。
【0008】
本明細書で開示の実施形態では、ノズルセグメントは、内側プラットフォーム、及び外側プラットフォームを含む。翼形部は、内側プラットフォームと外側プラットフォームとの間に配置されている。
【0009】
内側プラットフォーム、外側プラットフォーム及び翼形部は、付加製造によって単一の一体型構成要素として製造される。
【0010】
各翼形部は、前縁と、後縁と、圧力側と、負圧側とを含む。連続して配置された翼形部の各ペアは、ノズル、すなわち、高温ガス流路を形成する。
【0011】
より具体的には、各高温ガス流路は、内側プラットフォームと、外側プラットフォームと、ある翼形部の負圧側と、別の隣接する翼形部の圧力側との間に形成される。
【0012】
更に、ノズルセグメントは、それぞれの高温ガス流路に面している、内側プラットフォームの表面上、若しくは外側プラットフォームの表面上のいずれか、又は両方に配置されている、各流路内に少なくとも1つの内側膜冷却孔を含む膜冷却孔も含む。
【0013】
膜冷却孔は、ノズルセグメントが付加製造によって生成される際に形成される。すなわち、膜冷却孔は、その結果、穿孔、又は放電加工(EDM)などの他の製造方法の機械的制約が克服される。
【0014】
冷却効率を向上させるために、膜冷却孔は、成形膜冷却孔であり、それぞれの翼形部の圧力側からの膜冷却孔の接線方向の距離と、膜冷却孔における接線方向の高温ガス流路の幅との比が0~0.5に含まれているように配置されている。更に、各翼形部の食違い余角は85°以下である。加えて、羽根流路幅と各当該流路の軸方向翼弦との比は、0~0.5に含まれている。
【0015】
「拡散成形孔」、又は「拡散冷却孔」とも称される、「成形膜冷却孔」は、出口端が円形でも楕円形でもなく発散形状を有し、冷却流の拡散を支援する孔である。成形膜冷却孔によって、冷却されるべき構成要素の表面被覆率がより大きくなることによって、冷却効率を改善させる。典型的な成形膜冷却孔は、円筒形の第1チャネル部から構成され、出口端の付近で上流から下流方向に増大する断面を有し得る。
【0016】
上記で概説した幾何学的条件を満たす冷却孔は、翼形部の冷却効率を改善する上で驚くべき効果があることが判明した。実際に、隣接する翼形部の圧力側と負圧側との間の圧力勾配により、プラットフォーム表面の冷却孔から流れる冷却媒体は圧力側から離れ、反対側の翼形部の負圧側に向かって移動する傾向がある。この結果、翼形部の圧力側の熱保護が不十分となる。翼形部の圧力側の近くに膜冷却孔を配置することにより、翼形部の圧力側の冷却効率が改善される。この位置決めは、成形膜冷却孔の使用とあいまって、成形膜冷却孔の拡散効果が翼形部の圧力側に隣接して適用されるという点で、相乗効果をもたらす。隣接する翼形部の圧力側から離れるように負圧側に向かって冷却空気を移送させる傾向がある、隣接する翼形部間を流れるガスの圧力勾配にもかかわらず、この位置及び拡散効果は、翼形部の圧力側の冷却効果を促進する。
【0017】
上述の幾何学的条件を満たす成形膜冷却孔に加えて、上述の条件を満たさない新たな膜冷却孔を1つ以上の流路に設けることができる。すなわち、流路の中心線に向けてより近づけたり、更には、ノズルセグメントの前方から後方を見た状態で、内側及び/又は外側プラットフォーム表面上の更に左側に配置したりすることもできる。
【0018】
以下、添付図面を参照しながら更なる特徴及び実施形態を解説し、添付の特許請求の範囲にてこれを述べる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
ここで、添付図面を簡単に参照する。
【
図1】
図1は、本開示に係るタービン構成要素を使用可能とする、航空転用ガスタービンエンジンの概略図である。
【
図2】
図2は、本開示に係るノズルセグメントの不等角投影図を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示に係るノズルセグメントの不等角投影図を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示に係るノズルセグメントの不等角投影図を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示に係るノズルセグメントの不等角投影図を示す図である。
【
図7】
図7は、膜冷却ダクトの軸に沿った内側プラットフォーム、及び外側プラットフォームの1つの断面図を概略的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、例示的なガスタービンエンジン1の概略図を示し、このガスタービンエンジンでは、本開示に係るノズルセグメントは、燃焼器と高圧タービンホイールとの間に定置ノズルを形成することができる。
【0021】
図1のガスタービンエンジン1は、圧縮機セクション2と、燃焼器3と、タービンセクション4と、を含む、航空転用ガスタービンエンジンである。ガスタービンエンジン1は、本開示に係るタービン構成要素を使用可能とする、ガスタービンエンジンの一例として図示されている。とはいえ、ターボ機械の当業者は、本開示に係るノズルセグメントの有利な特徴が、例えば、異なる数のタービンホイール、圧縮機、及びシャフトを含む、異なる構造と性質のガスタービンエンジンにおいて使用可能であることを理解するであろう。
【0022】
図1の例示的な実施形態では、圧縮機セクション2は、低圧圧縮機2A、及び高圧圧縮機2Bを含む。
図1の例示的な実施形態では、タービンセクション4は、高圧タービン4Aと、低圧タービン4Bと、出力タービン4Cとを、含む。高圧タービン4Aによって生成された動力が高圧圧縮機2Bを駆動するように、高圧タービン4Aは、第1シャフト5を通じて高圧圧縮機2Bへと駆動連結される。低圧タービン4Bによって生成された動力が低圧圧縮機2Aを駆動するように、低圧タービン4Bは、第2シャフト6を通じて低圧圧縮機2Aへと駆動連結される。第3シャフト7は、ガス圧縮機若しくは圧縮機トレイン、発電機、又は他の任意の種類の被駆動機械を含み得る負荷に、出力タービン4Cを駆動連結することができる。
【0023】
圧縮機セクション2によって燃焼器3に送達される圧縮空気は、燃料と混合され、この燃料-空気混合物が燃焼されて高温加圧燃焼ガスの流れを生成し、この燃焼ガスは、高圧タービン4A、低圧タービン4B、そして出力タービン4C内で順次膨張して、圧縮機セクション2及び負荷8を駆動する動力を生成する。
【0024】
燃焼器3からの高温加圧燃焼ガスの流れは、環状配置された定置翼形部のセットを通って高圧タービン4Aに送達され、この翼形部は、内側プラットフォーム及び外側プラットフォームと共に4Dで概略的に示すノズルを形成し、このノズルは、燃焼ガスをタービンホイールに向かって誘導する。
【0025】
ノズルの環状配置は、ガスタービンエンジン1の軸A-Aを中心に環状配置された一連のノズルセグメントによって形成することができる。各ノズルセグメントは、内側プラットフォーム及び外側プラットフォームと、それらの間に配置された複数の翼形部、例えば、第1翼形部及び第2翼形部とを含むことができる。「第1」及び「第2」翼形部に関する言及は従来とおりであり、あくまで一方の翼形部を他方の翼形部から区別することを目的としており、本開示をいかなる形でも限定するものとして、解釈されるべきではない。
【0026】
図2、
図3、
図4、
図5及び
図6は、ノズルセグメント11の1つを詳細に示しており、このノズルセグメントは、組み立て時にガスノズル4Dの環状配置を形成する。本明細書で例示する実施形態では、各ノズルセグメントは2つの翼形部を含むが、他の実施形態では、各ノズルセグメント内に3つ以上の翼形部を含み得る。より具体的には、
図2及び
図3は、図の下側に内側プラットフォームを有するノズルセグメントのそれぞれ入口側、及び出口側からの不等角投影図を示す。
図4及び
図5は、図の下側に外側プラットフォームを有する同じノズルセグメントのそれぞれ入口側、及び出口側からの不等角投影図を示す。
【0027】
より具体的には、ノズルセグメント11は、内側プラットフォーム、又は内側プラットフォーム部23と、外側プラットフォーム又は外側プラットフォーム部25とを含む。複数のノズルセグメント11が、タービン軸A-Aを取り囲む環状配置で共に組み立てられる際、ノズルセグメント11の内側プラットフォーム又は内側プラットフォーム部23は、高圧タービンのガス入口ノズルの完璧な環状内側プラットフォームを形成する。同様に、ノズルセグメント11の外側プラットフォーム、又は外側プラットフォーム部25は、高圧タービンのガス入口ノズルの完璧な環状外側プラットフォームを形成する。
【0028】
以下では、要素23及び25が完璧な内側プラットフォーム、及び外側プラットフォームの一部のみを表す場合があるが、それぞれを簡単に内側プラットフォーム、及び外側プラットフォームと称することにする。
【0029】
第1翼形部27、及び第2翼形部29は、内側プラットフォーム23と外側プラットフォーム25との間に配置され、外側プラットフォーム25に面する内側プラットフォーム23の表面23Aから、内側プラットフォーム23に面している外側プラットフォーム25の表面25Aまで延在する。
図6で見られるように、第1翼形部27は、負圧側27Sと、圧力側27Pとを有する。具体的には、負圧側27Sは凸形状であり、圧力側27Pは凹形状である。負圧側27S、及び圧力側27Pは融合して、第1翼形部27の前縁27L、及び後縁27Tを形成する。同様に、第2翼形部29は、凸状負圧側29Sと、凹状圧力側29Pとを有する。負圧側29S、及び圧力側29Pは、第2翼形部29の前縁29L、及び後縁29Tで融合する。
【0030】
高温ガス流路31は、第1翼形部27の負圧側27Sと、第2翼形部29の圧力側29Pと、内側プラットフォーム23、及び外側プラットフォーム25の互いに面している表面23A、25Aとの間に延在する。
【0031】
この図で見られるように、第1翼形部23、及び第2翼形部29は、互いに等しいことが好ましい。
【0032】
第1翼形部27、及び第2翼形部29の内部の適切なチャネルを流れる冷却空気は、翼形部表面上の従来の膜冷却孔(図示せず)に送達することができる。
【0033】
翼形部27、29上の従来の冷却孔に加えて、ノズルセグメント11は、内側、及び外側プラットフォーム23、25上に、高温ガス流路31の入口と出口の近くに配置された従来の膜冷却孔35を含む。
【0034】
本開示によると、少なくとも1つのプラットフォーム膜冷却孔37を含む膜冷却孔の少なくとも追加のセットが、第2翼形部29の圧力側29Pの近くの位置で、すなわち、高温ガス流路31の内部に面している第2翼型形状部29の凹面の近くの位置で、内側プラットフォーム23、及び外側プラットフォーム25のいずれか、又は両方に設けられる。図示の実施形態では、追加の3つのプラットフォーム膜冷却孔37が高温ガス流路31の方向に沿った3つの位置に設けられている。他の実施形態では、少なくとも1つのプラットフォーム膜冷却孔を、内側プラットフォーム23のみに、又は、外側プラットフォーム25のみに設けることができる。
【0035】
プラットフォーム膜冷却孔37は、
図6で詳しく示されており、この図では、内側プラットフォーム23と外側プラットフォーム25との間に延在し、これらのプラットフォームに平行な表面に沿ったノズルセグメント11の断面図を示している。以下で参照し、プラットフォーム膜冷却孔37について言及するノズルセグメント11の形状部を内側プラットフォーム23、及び外側プラットフォーム25の両方に複製することができるので、
図6は、内側プラットフォーム、及び外側プラットフォーム表面23A、25Aのいずれか一方、又は他方を示すことができる。簡潔さと便宜性のために、以下の
図6は、内側プラットフォーム23の表面23Aを表すものとする。しかしながら、以下で定義するパラメータ、及び以下で説明するプラットフォーム膜冷却孔の位置は、外側プラットフォームと同様に参照できることを、理解されたい。言い換えれば、外側プラットフォーム25には、内側プラットフォーム23に設けられたプラットフォーム膜冷却孔37の配置と同様のプラットフォーム膜冷却孔37の配置を設けることができる。しかしながら、本明細書で以下に説明する幾何学的制約が満たされることを条件として、内側プラットフォーム23上のプラットフォーム膜冷却孔37の位置は、外側プラットフォーム25上のプラットフォーム膜冷却孔37の位置と異なっていてもよいことを理解されたい。
【0036】
いくつかの実施形態では、
図6で見られるように、各プラットフォーム膜冷却孔37は、成形孔とすることができる。本明細書で理解されるように、各プラットフォーム膜冷却孔37は、それぞれの内側プラットフォーム23、又は外側プラットフォーム25の厚さを貫通する膜冷却ダクトの出口端である。
図7は、プラットフォーム膜冷却孔37で終端する、膜冷却ダクト38の軸に沿った内側プラットフォーム、及び外側プラットフォーム23、25の1つの断面図を概略的に表す。
【0037】
各プラットフォーム膜冷却孔37の位置は、最大冷却性能が得られるように選択される。各プラットフォーム膜冷却孔37の位置を定義する前に、ノズルセグメント11、及びプラットフォーム膜冷却孔37に関するいくつかのパラメータを定義し、具体的に
図6を参照すると、一点鎖線A-Aは、軸方向、すなわち、ガスタービンエンジン1の軸A-Aと平行な方向を示す(
図1も参照)。図面を見やすくするために、以下で説明し、プラットフォーム膜冷却孔37の位置を定義する幾何学的パラメータは、中間プラットフォーム膜冷却孔37についてのみ、
図6で示されている。
【0038】
次に、プラットフォーム膜冷却孔37の形状及び位置を定義するため、以下で使用される幾何学的パラメータの定義を参照するが、一点鎖線A-Aによって表される「軸方向」は、ノズルセグメント11がガスタービンエンジン1に取り付けられた際のガスタービンエンジン1の軸A-Aと平行な方向である。一点鎖線T-Tによって図示される接線方向は、軸方向A-Aに直交する方向である。Caxは、軸方向A-Aにおける各翼形部27、29の後縁27T、29Tと前縁27L、29Lとの間の距離であり、「軸方向翼弦」と称される。
【0039】
Cax,holeは、第1翼形部27、及び第2翼形部29の前縁27L及び29Lからのプラットフォーム膜冷却孔37の軸方向A-Aにおける距離である。
【0040】
参照符号Stは、羽根流路幅を示し、この幅は、羽根流路、すなわち、第2翼形部29の後縁29Tにおける高温ガス流路31のスロート、又は開口部の幅とも称される。すなわち、羽根流路幅は、第1翼形部27の負圧側27Sから第2翼形部29の後縁29Tまでの距離である。
【0041】
Δyは、プラットフォーム膜冷却孔37の中心を通る(軸方向A-Aと直交する、すなわち、接線方向の)線に沿った、第1翼形部27の負圧側27Sと、第2翼形部29の圧力側29Pとの間の接線方向の距離である。
【0042】
Δyholeは、プラットフォーム膜冷却孔37の中心と、第2翼形部29の圧力側29Pとの間の接線方向に沿った距離である。
【0043】
αで示した角度、すなわち、翼型形状部27、29の翼弦CHと接線方向T-Tとの間の角度を本明細書では食違い余角と称する。
【0044】
線Aholeは、プラットフォーム膜冷却孔37で終端する冷却ダクト38の軸A(
図7)のそれぞれの内側プラットフォーム23、又は外側プラットフォーム25の表面上の射影である。角度βは、孔複合角とも呼ばれ、本明細書でもそのように称され、線Aholeと接線方向T-Tとの間の角度である。
【0045】
本開示の一態様によると、第1翼形部27、及び第2翼形部29は、角度α(すなわち、接線方向T-Tに対する翼形部27、29の翼弦の傾き)が0°~85°に含まれているような形状と位置である。好ましい実施形態では、かかる傾きは、0°~80°、より好ましくは、0°~75°に含まれている。
【0046】
更に、羽根流路の幅Stと軸方向翼弦Caxとの間の比は、0~0.5に含まれ、すなわち、
【0047】
【0048】
好ましい実施形態では、上述の比は0.45以下であり、より好ましくは、0.4以下である。
【0049】
上記で定義された翼形部27、29の幾何学的特徴によって特徴付けられるノズルセグメント11において、プラットフォーム膜冷却孔37、より正確には、各プラットフォーム膜冷却孔37は、第2翼形部29の圧力側29Pに隣接して、すなわち、そこから接線方向T-Tに距離Δyholeに配置され、これにより、当該距離Δyholeと、プラットフォーム膜冷却孔37の位置における接線方向の第2翼形部29の圧力側29Pと第1翼形部27の負圧側27Sとの間の距離Δyとの間の比は、0~0.5、好ましくは、0~0.45、より好ましくは、0~0.4であり、すなわち、
【0050】
【数2】
となり、
式中、dは0.5、好ましくは、0.45、より好ましくは、0.4である。
【0051】
好ましい実施形態において、プラットフォーム膜冷却孔37、又は各当該プラットフォーム膜冷却孔37は、好ましくは、高温ガス流路31内に深く、すなわち、前縁27L、29Lから、及び後縁27T、29Tから比較的長い距離に配置されている。より具体的には、プラットフォーム膜冷却孔37の距離Cax,holeと軸方向翼弦Caxとの間の比は、好ましくは、0.15~0.95であり、すなわち、
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
プラットフォーム膜冷却孔37において表面23A又は25Aに面しているダクト38の軸Aの傾きδ(
図7参照)は、好ましくは、0°~60°、好ましくは、0°~55°、より好ましくは、0°~50°に含まれている。孔合成角βは、孔合成角と食違いαとの間の差が-15°未満又は25°超、より好ましくは、-7.5°未満又は27.5°超、更により好ましくは、-5°未満又は30°超であることが好ましい。
【0056】
上記で概説した幾何学的関係は、空気冷却膜によって、羽根流路31の領域が、前縁、及び後縁から離れ、第2翼形部29の圧力側の付近に配置されているので、ノズルセグメント11のとりわけ効率的な膜冷却をもたらす。
【0057】
ノズルセグメント11が付加製造によって製造される場合、この製造技術は、とりわけ、放電加工などの現在使用されている技術の制約及び制限を受けないので、上記の幾何学的条件を有利に満たすことができる。
【0058】
例示的な実施形態は、上記で開示され、添付の図面に示されている。以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示されているものに、様々な変更、省略、及び追加を行ってもよいことが、当業者には理解されるであろう。
【国際調査報告】