(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】化粧メークアップ製品の体表面への塗布をシミュレートする方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/90 20170101AFI20241212BHJP
G01J 3/46 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G06T7/90 A
G01J3/46 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538440
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2023050196
(87)【国際公開番号】W WO2023143886
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ブシェ
(72)【発明者】
【氏名】テオ・ファン・ヴァン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユエ・チャオ
【テーマコード(参考)】
2G020
5L096
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA12
2G020DA13
2G020DA14
2G020DA34
2G020DA52
5L096AA02
5L096AA06
5L096CA17
5L096DA01
5L096GA40
5L096GA41
5L096MA07
(57)【要約】
本発明は、メークアップ製品の体表面への塗布をシミュレートする方法であって、少なくとも1つの色変換を含むメークアップ効果を仮想メークアップされる体表面を含む入力画像データの少なくとも一部に適用するように構成され、且つ仮想的に塗布されるメークアップ製品の少なくとも1つの特徴的な色パラメータに従ってメークアップ製品の上記塗布をシミュレートする変換後画像データを生成するように構成される、レンダリングエンジンを実施することを含み、方法が、- 仮想メークアップされる上記体表面の色データを取得することと、- メークアップ製品の特徴的な色パラメータの値を、仮想メークアップされる体表面の上記色データの関数として取得することと、を含む、上記特徴的な色パラメータを判定する事前ステップを含むことを特徴とする、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メークアップ製品(PM)の体表面への塗布をシミュレートする方法であって、
少なくとも1つの色変換を含むメークアップ効果を仮想メークアップされる前記体表面を含む入力画像データ(X_S)の少なくとも一部に適用するように構成され、仮想的に塗布される前記メークアップ製品の少なくとも1つの特徴的な色パラメータ(COL)に従ってメークアップ製品の上記塗布をシミュレートする変換後画像データ(X_V)を生成するように構成される、レンダリングエンジン(R)を実施することを含み、
前記方法が、
- 仮想メークアップされる前記体表面の色データ(LIPS_P3)を取得することと、
- 前記メークアップ製品の前記特徴的な色パラメータの値を、仮想メークアップされる前記体表面の前記色データの関数として取得することと、
を含む、前記特徴的な色パラメータを判定する事前ステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
仮想メークアップされる身体領域が唇領域であり、前記化粧メークアップ製品(PM)が唇メークアップ製品であり、特に口紅(LS C)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
仮想メークアップされる前記体表面の前記色データ(LIPS_P3)が、前記入力画像データ(X_S)から取得されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
仮想メークアップされる前記体表面の前記色データ(LIPS_P3)が、特に測色計又は分光光度計を使用した色測定によって、前記入力画像データ(X_S)から別個に取得されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記入力画像データ(X_S)が、特定の所望の仕上がり又は質感を有するメークアップ製品でメークアップされた前記身体領域の画像(I2)であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記色パラメータ値(COL)が、少なくとも1つの化粧メークアップ製品基準(PM LS C)を、検討されている前記身体領域の複数の基準色(LIPS1、LIPS2、LIPS3)に関連付ける、データベース(DB)から取得されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化粧品(PM)の特徴的な前記色パラメータ(COL)の前記値が、前記入力画像データから取得された仮想メークアップされる前記身体領域の前記色に最も近い、前記検討されている身体領域の前記基準色に割り当てられているものとして、前記データベースから選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化粧品(PM)の特徴的な前記色パラメータ(COL)の前記値が、検討されている前記化粧品の固有色データ及び前記入力画像データ(X_S)から取得されたメークアップされる前記身体領域の色データに、測色レンダリングモデル(KM)を適用することによって取得されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記色パラメータ(COL)の値が、仮想メークアップされる前記体表面の異なる部分領域に対して、特に、ピクセル単位の色処理に対して取得されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レンダリングエンジン(R)が、光沢/艶消しパラメータを受信することが可能であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧メークアップ製品の体表面への塗布をシミュレートする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「化粧品」とは、化粧品に関する2009年11月30日付の欧州議会及び理事会規則(EC)第1223/2009号において定義されたあらゆる製品を意味すると理解されたい。化粧メークアップ製品は、より具体的には、体表面の知覚される色及び/又は質感を修正することを目的として体表面を覆うことを意図するものである。
【0003】
本出願は、より具体的には、唇用の着色製品又は肌用のファンデーションの塗布をシミュレートすることに関する。しかしながら、それは、ヘアカラーリング製品又はマニキュアの塗布をシミュレートすることに適用可能である。
【0004】
製品の、特に色合いの選択肢は非常に膨大であるため、満足のいくメークアップ製品の選択は、ユーザにとって難題である場合がある。特に、ユーザは、複数の製品を購入及び試用しなければならないという事実に直面しており、それによって、特に、ユーザが試用した製品の全て又はいくつかの結果が期待外れであると考える場合に、それらの製品に対して非常に落胆することがある。さらに、それでも口紅又はファンデーションを塗布及び除去することは比較的容易であるが、ヘアカラーリング及びネイルエナメルの場合にそのような試用方法には、より多くの問題がある。
【0005】
社会におけるデジタル技術の幅広い開発によって、ユーザが化粧品を仮想的に試用することを可能にする拡張現実ソフトウェアの開発が可能となった。したがって、L’OREAL(https://www.loreal.com/en/articles/science-and-technology/l-oreal-modiface-brings-ai-powered-virtual-makeup-try-ons-to-amazon/)、MAYBELLINE(https://www.maybelline.com/virtual-try-on-makeup-tools)、及びNYX(https://www.nyxcosmetics.com/try-it-on.html)はそれぞれ、例えば、メークアップ製品をそれぞれの範囲から仮想的に試用することが可能であることを提案している。一般に、そのようなソフトウェアは、ユーザのデジタル画像から、検討されている製品を塗布することによって得られるとみられるメークアップ効果を示す対応画像が計算及び生成されることを可能にする。このようなシステムは、衣類又は眼鏡に対して存在するように、ファンデーション、口紅、又はヘアカラーリングを仮想的に試用することに対して知られている。
【0006】
このようなシステムのおかげで、ユーザは、製品を購入したり、メークアップを塗布及び除去したりしなくても、容易に直接的且つすぐに複数の製品のメークアップ結果を評価することができる。
【0007】
メークアップ製品についての仮想試用方法の例は、例えば、文献、(特許文献1)及び(特許文献2)、並びに出願人の名義によるまだ未公開の出願、(特許文献3)、(特許文献4)、及び(特許文献5)に記載されている。
【0008】
一般に、そのような方法は、仮想的に塗布される化粧品に対応する1つ又は複数の特性パラメータの関数として、変換又は効果のセットを入力画像に適用するように構成される、1つ又は複数のレンダリングエンジンを実施する。これらの変換は、特に、中でも形状修正、色修正、及び質感レンダリング修正を適用する前に、仮想的に処理される体表面を配置及び隔離することを特に意図した、1つ又は複数のセグメンテーションステップを含み得る。これらのレンダリングエンジンは、様々な計算方法を使用してこれらの変換を実行し、特に、機械学習技術及びこれらの目的のために訓練されたニューラルネットワークを実施し得る。
【0009】
したがって、仮想試用システムは、修正する画像、一般にはユーザの写真、特にユーザの顔写真と、選択した化粧品の特徴的なレンダリングパラメータのセットと、を受信する。これらのパラメータは、特に、色及び/又は形状及び/又は質感パラメータを含む。レンダリングエンジンの変換を代表的なパラメータの関数として入力画像に適用することによって、仮想試用システムは、関連する身体領域への化粧品の塗布をシミュレートした結果画像を生成する。この結果画像は、ユーザに提示される。
【0010】
化粧メークアップ製品を仮想試用する特定の場合に、色パラメータは、明らかに、特に重要である。メークアップ製品が、ある範囲まで着色され得る体表面に層の形態で塗布されることを考慮すると、塗布後の結果となる色、及びそれによって知覚される色は、そのカバーリング能力又は不透明度、及びそれが塗布される体表面の色を含む、複数の要因に依存する。
【0011】
しかしながら、実施に対する簡略化のために、多くの仮想試用システムは、この固有の特徴を考慮に入れておらず、固定の定義済みパラメータを使用している。化粧品の塗布のレンダリングがユーザによって変動することは、レンダリングエンジンによるアルゴリズム処理によって下流において考慮に入れることができる。しかしながら、この処理は複雑である場合があり、集中的計算リソースを必要とすると同時に、カラーレンダリングの点から精度を欠く。
【0012】
近年、もはや固定の定義済みパラメータを使用しようとせずに、これらの製品を着用した個人の画像からそれらを抽出しようとする、新たなシステムが開発されている。これは特に、例えば、別の個人、特に周知の有名人が付けている口紅などの化粧品を、例えば、仮想的に試用することを可能にする。問題は、そのような方法が、参照する個人に対する結果となる色を取得し、ユーザ自身の肌色によって必要となる調整を必ずしも行うことができないまま、それをユーザに仮想的に転写するという点で、類似している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0160153A1号明細書
【特許文献2】米国特許第9449412B1号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開21/06030号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開21/11155号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開21/11164号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、仮想試用システムにおけるメークアップ製品のカラーレンダリングを改善するための簡単な解決策に対する要件が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本出願は、メークアップ製品の体表面への塗布をシミュレートする方法であって、少なくとも1つの色変換を含むメークアップ効果を仮想メークアップされる体表面を含む入力画像データの少なくとも一部に適用するように構成され、且つ仮想的に塗布されるメークアップ製品の少なくとも1つの特徴的な色パラメータに従ってメークアップ製品の上記塗布をシミュレートする変換後画像データを生成するように構成される、レンダリングエンジンを実施することを含む、方法を提供する。
【0016】
方法は、
- 仮想メークアップされる上記体表面の色データを取得することと、
- メークアップ製品の特徴的な色パラメータの値を、仮想メークアップされる体表面の上記色データの関数として取得することと、
を含む、上記特徴的な色パラメータの値を判定する事前ステップを含むことを特徴とする。
【0017】
第1の代替の実施形態によれば、仮想メークアップされる上記体表面の色データは、入力画像データから取得される。第2の代替の実施形態によれば、仮想メークアップされる体表面の色データは、別個に取得されてもよく、その際、入力画像データは、特定の所望の仕上がり又は質感を有するメークアップ製品でメークアップされた身体領域の画像であってもよい。
【0018】
好ましくは、仮想メークアップされる体表面の色データは、裸の身体領域、即ちメークアップされていない、及び好ましくは、いかなる化粧品も付けていない身体領域から取得される。
【0019】
したがって、ユーザともはや無関係ではない、メークアップされる身体領域の色から判定される、色パラメータの値が供給されるレンダリングエンジンを提供することによって、追加の複雑な変換及び計算をレンダリングエンジンに統合しなくても、ユーザに適合された結果となる色値をレンダリングエンジンに容易且つ直接的に送信することが可能である。
【0020】
言い換えると、一般に、ある色合いを有する化粧品を選択することによって、判定され、且つ検討されている身体領域の色に依存しない、レンダリングエンジンに送信される色パラメータ値が得られる一方、本方法は、ユーザに最も適した特徴的な色パラメータ値をレンダリングエンジンに導入するように、所望のメークアップ化粧品に関連するだけでなく身体領域の色にも関連して判定された色パラメータ値をレンダリングエンジンに送信することを提供する。
【0021】
したがって、Lancome「Absolu Rouge」の色合い397の口紅「ブラックベリーマット(black berry matte)」を仮想試用したいと思うユーザに対して、色パラメータの値が、その唇色の関数として取得され得る。実際には、色の薄い唇に塗布された同じ口紅が、色の濃い唇に塗布されたときと同じレンダリングをもたらさない。この理由から、ユーザに依存しない、又は別のユーザに対しても取得された色パラメータ値ではなく、適当な色パラメータ値を用いるレンダリングエンジンを提供することが可能であることが重要である。
【0022】
好ましくは、色値及びデータは、所与の色空間、特に、CIELAB色空間(特に、L*、a*、b*、又は極座標L*、C*、h*を用いる)などの知覚可能な均等色空間における座標として表現される。特に、知覚可能な均等色空間は、視覚的差異を表すデルタE色差を容易に判定することを可能にする。当然ながら、代替として、又は加えて、色は、特にコンピュータ処理要件に従って、他の色空間で、特にRGBで又は16進コンピュータコードとして直接的にでも、表現することができる。
【0023】
本出願の主題である方法は、より具体的には、唇のメークアップ製品、特に、好ましくは固形スティックタイプの口紅、又はリップバーニッシュ(グロス)である化粧メークアップ製品を用いた、唇領域の仮想メークアップに関する。当然ながら、方法は、それぞれファンデーション又はアイシャドウである化粧メークアップ製品を用いた肌の領域、特に顔又は瞼の皮膚などの他の身体領域の仮想メークアップに対しても実施され得る。
【0024】
好ましい代替の実施形態によれば、色パラメータ値は、少なくとも1つの化粧メークアップ製品基準を、検討されている身体領域の複数の基準色に関連付ける、データベースから取得される。したがって、データベースは、化粧品基準(例えば、口紅)ごとに、例えば、明るい/中間の/暗いトーンの身体領域(例えば、唇)上の上記化粧品のレンダリング色に対応する色パラメータの値を含み得る。
【0025】
有利なことに、化粧品の特徴的な色パラメータの値は、特に入力画像データから取得された、仮想メークアップされる身体領域の色に最も近い、検討されている身体領域の基準色に割り当てられているものとして、データベースから選択される。特に、近接度は、考慮される色空間における色差を計算することによって、例えば、CIELAB空間においてパラメータΔEを計算することによって、判定され得る。
【0026】
検討されている身体領域の複数の基準色についての色パラメータの値を含むデータベースの使用によって、アクセスが簡易でポーリングが容易であり、且つ化粧品の多数の基準が記憶されることを可能にしつつ十分な精度及びユーザの身体領域の色に対する適合性を維持するシステムが維持されることが可能となる。
【0027】
様々な化粧品及び様々な身体領域の基準色についての色パラメータの値が、様々な方法で、例えば、実際に塗布される製品上の色を測定することによって、又は以下の段落で説明されるような測色レンダリングモデル(例えば、クベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)近似)を使用したシミュレーションによって、取得され得る。
【0028】
様々な色パラメータ値を含むデータベースの使用の代替として、化粧品の特徴的な色パラメータの値が、検討されている化粧品の固有色又は特定色データ、及び特に入力画像データから取得されたメークアップされる身体領域の色値に、測色レンダリングモデルを適用することによって取得され得る。したがって、仮想メークアップされる身体領域の色は、もはや類似の基準色に合致せず、仮想試用システムのレンダリングエンジンに送信される上記色パラメータの値を判定するために直接使用される。検討されている化粧品の固有色は、それが塗布されることを意図した皮膚面の色には依存しない色を意味すると理解されたい。この色は、標準化された条件下で、例えば、黒色コーティング面及び白色コーティング面(Leneta(登録商標)チャートなどの「不透明度チャート」)を含む不透明度測定サポート上に製品を(例えば、定義された厚さの層をコーティングすることによって)塗布した後、且つ好ましくはこれも標準化された照明条件(特にD65)下で、インビトロ(in vitro)測定によって取得され得る。体表面の色は、好ましくは、例えばCHROMASPHERE(登録商標)などのデバイスを使用して、類似又は同一の照明条件下で取得される。有利なことに、ユーザがレンダリングエンジンに供給する画像も、同じ照明条件下で撮ることができる。
【0029】
仮想試用システムのレンダリングエンジンの動作によれば、単一の色パラメータの値は、仮想メークアップされる体表面の全体的な平均色に対して取得され得る。しかしながら、レンダリング精度を改善するために、且つ仮想メークアップされる体表面の色が全体的に均一でない場合があると仮定すると、仮想メークアップされる体表面は、複数のより小さな部分領域に細分化されてもよく、そのそれぞれに対して色パラメータ値が取得されてもよい。色パラメータ値は、必要に応じてピクセルごとにでも取得されてもよい。
【0030】
有利な追加の方法では、レンダリングエンジンは、光沢/艶消しパラメータを受信することが可能である。
【0031】
代替として又は追加で、上で説明したように、メークアップされる体表面の色は、裸の/メークアップされていない体表面からの入力画像データから別個に取得され得る。その際、レンダリングエンジンに供給される入力画像データは、所望の仕上がり(艶消し/光沢)及び/又は質感を有する製品でメークアップされた体表面を含んでもよく、レンダリングエンジンは色変換を実行するだけである。
【0032】
本発明は、添付した図面に関連する以下の詳細な説明を用いてより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】個人に塗布された唇メークアップ製品の写実的レンダリングを生成するように構成されたレンダリングエンジンRを実施する、仮想試用システムの処理フローの概略的な例を示す。
【
図2】
図1のレンダリングエンジンの色パラメータの値を判定する方法の概略的表現である。
【
図3】
図2及び
図3の判定方法のデータベースに記憶することを目的として、又は
図1のレンダリングエンジンの色パラメータとして直接使用することを目的として、上記唇の色の関数として唇メークアップ製品のレンダリング色を判定する方法の概略的表現である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図示されているが、例として、ユーザの唇の表面を口紅で仮想メークアップすることによって、本方法は、他の体表面(肌、特に顔、髪)及び上記体表面に塗布されることを意図する他のメークアップ製品に適用可能である。本出願は、特に、多種多様な色合いを有する化粧メークアップ製品に関し、母集団の中で多種多様な色を有する体表面に関する。
【0035】
図1は、個人P3に塗布された唇メークアップ製品PMの写実的レンダリングを生成するように構成されたレンダリングエンジンRを実施する、仮想試用システムの処理フローの例を示している。上述の通り、説明する汎用ステップを、他の体表面のための他の種類の化粧品に準用することができる。
【0036】
ステップ20において、レンダリングエンジンRは、唇メークアップ製品PMの色COL、この製品PMの反射REF、及びこの製品PMの質感TXTに関連する特徴化パラメータを受信する。
【0037】
ステップ21において、レンダリングエンジンRは、個人P3の唇のソース画像X_Sも受信する。ステップ22において、レンダリングエンジンRは次いで、ソース画像X_Sの唇のモデルM3Dを計算し得る。ステップ23において、レンダリングエンジンRは、また、ソース画像X_Sの唇の光反射を推定し得る。
【0038】
それ自体知られているように、ソース画像X_Sは、従来通り、特に顔を含む、個人のより大きな画像X_I上に対象領域(唇)をセグメンテーション及びクリップすることによって取得され得る。
【0039】
システムの複雑性に応じて、レンダリングエンジンRは、次いでステップ24において、入力として入力されたメークアップ製品PMの色パラメータから補正後の色パラメータを判定し得る。これらの補正後の色パラメータは、例えば、ソース画像の唇の明度を考慮に入れる。明度パラメータは、ソース画像X_I及びその環境から抽出され得る。場合によっては、特にプロフェッショナル環境では、ソース画像は、標準化された条件下で取得され得る(上記を参照)。標準化された条件は、仮想試用される化粧品PMを特徴付けるパラメータを判定するための条件と実質的に同一である。このような場合、追加の変換が必要でなくてもよい。
【0040】
次いでステップ25において、レンダリングエンジンRは、第1の中間画像IM1を生成し、レンダリングエンジンは、前もって計算された唇のモデルを考慮に入れて、補正後の色パラメータをソース画像の唇に適用する。
【0041】
ステップ26において、レンダリングエンジンRは、次いで任意で、第2の中間画像IM2を生成し、入力された反射パラメータが、ソース画像の唇の光反射も考慮して、第1の中間画像IM1の唇に適用される。
【0042】
ステップ27において、レンダリングエンジンRは、次いで任意で、変換された画像IMTを出力として生成し、入力として入力された質感パラメータが、第2の中間画像の唇に適用される。
【0043】
変換された画像IMT(オプションの変換ステップが存在しない場合はIMT=IM1)は、ユーザに提示され得る対象の仮想メークアップ領域を含む画像X_Vを生成するように、より大きな画像X_I上のソース画像X_Sを置換する。
【0044】
本出願によれば、化粧メークアップ製品PMの色COLに関連する特徴化パラメータの値は、上記パラメータを判定する事前ステップを通して取得され、その実施形態は、
図2に概略的に示されている。
【0045】
化粧品PMの色パラメータCOLの値を判定することは、仮想メークアップされる個人P3の唇の色データLIP_P3を取得することを含む。この色データは、好ましくは標準化され校正された照明条件(特にD65)下で撮られた、個人P3の画像I1から直接取得される。任意で、色データは、特に、測色計又は分光光度計を使用して、別個に取得されてもよい。前に示したように、唇色データは、個人のメークアップされていない(裸の)唇から取得される。
【0046】
代替の実施形態によれば、裸の唇で撮られた個人P3の画像I1は、レンダリングエンジンの入力画像X_Sとしての役割をしてもよい。
【0047】
代替として、上で説明したように、仮想メークアップされる体表面の色データは、唇の色を取得するために使用される画像I1(メークアップされていない唇の画像)から別個に取得される。入力画像X_Sは、その際、特定の所望の仕上がり又は質感を有するメークアップ製品でメークアップされた身体領域の画像I2であってもよい。この場合、選択された口紅のレンダリング色は、ユーザのメークアップされていない唇の色(画像I1)から取得される。画像(I2、I3)もまた、その体表面が艶消し仕上げの口紅及び光沢仕上げの口紅のそれぞれでメークアップされた個人P3から取得される。仮想試用される化粧品の所望の仕上がりに応じて、これらの画像のいずれかが、入力画像データX_Sを形成し得る。レンダリングエンジンRは、次いで、単純な色変換を実行し、追加のレンダリング変換計算を回避し得る。
【0048】
それによって判定される唇色データLIP_P3及び仮想試用される化粧品PM LS Cの基準から、参照される化粧品に対して、上記唇の様々な基準色値に対して記録された色パラメータの複数の値を含むデータベースDBがポーリングされる。
【0049】
より具体的には、データベースは、1つ又は複数の化粧品基準PM、この場合は口紅LS A、LS B、LS C、LS Dを、複数の基準唇色LIPS1、LIPS2、LIPS3に関連付けたテーブルを含む。化粧品/唇色の対(LS i;LIPS j)ごとに、データベースは、色LIPjの唇に塗布されるときの化粧品PM(LS i)のレンダリング色を表す色値を記憶し得る。
【0050】
仮想メークアップされる個人の唇色LIP_P3から、最も近い色LIPj(P3)が判定され、それに対して化粧品PM(LS C)に対応する色値が入力される(この場合はLIPS2)。唇LIPS2に塗布されたときの化粧品PM(この場合はLS C)の色値が、データベースから抽出されて、個人P3の画像上に仮想的にレンダリングするために化粧品PM(LS C)の色パラメータCOLとしてレンダリングエンジンに送信される。
【0051】
様々な基準唇色は、母集団サンプルからの実際の色測定データを分割することによって判定され得る。唇色は、有利なことに、標準化され校正された照明条件(D65、特にCHROMASPHERE(登録商標)デバイスを使用する)下で、測色計又は分光光度計で測定され得る。したがって、任意で中間グラデーションを有する、3から10の間の唇色のグループで、特に、明るい、中間、及び暗い唇色で判定することが可能である。特に、「k平均クラスタリング」方法が使用されてもよく、唇色は、各クラスタの中央から選択されてもよい。
【0052】
様々な基準唇色に対する様々なメークアップ製品の色値は、対応する色を有する唇に実際に塗布された製品の色を測定することによって取得されてもよく、及び/又は、例えば、クベルカ-ムンク近似若しくは
図3に示すような別の物理的レンダリングモデルを実施するカラーレンダリングモデル(KM)から計算することによって取得されてもよい。測色レンダリングモデルKMは、裸の唇の測色(エクスビボ(ex vivo))及び体表面色に依存しない固有色値に対応する化粧品PMの測色(インビトロ)からレンダリングされた色をシミュレートする。測色補正は、色シミュレーションの結果と唇に実際に塗布された製品上で取得された実際の値との比較によって判定され得る測色偏差パラメータを使用して適用され得る。このようなシミュレーションシステムの全て又は一部は、特に、理論的物理モデルに対して色補正を行うことを可能にする測色偏差パラメータを判定するための、機械学習技術を実施し得る。そのようなシステムは、特に、ヘアカラーリングについての仏国特許出願第3094201号明細書に記載されている。
【0053】
こうして定義された、色レンダリングシミュレーションシステムは、基準唇色ごとに仮想試用され得る様々な化粧品に対するカラーレンダリング値を事前計算することを可能にする。これらの値が、データベースに記憶される。
【0054】
代替の実施形態では、シミュレーションシステムは、レンダリングエンジンRに送信される色パラメータ値COLを直接生成してもよい。この場合、ユーザの唇の色は、従来通り取得され、仮想試用される化粧品PMについての既知の固有色データとともにシミュレーションシステムにサブミットされる。シミュレーションシステムは、次いで、化粧品PMをユーザの唇に塗布することによってレンダリングされた色の推定又は予測に対応する値をフィードバックする。
【0055】
仮想試用システムのレンダリングを改善するために、仮想的に塗布された口紅の艶消し又は光沢のある仕上がりを反映する艶消し/光沢パラメータを、レンダリングエンジンに送信することも可能である。このパラメータは、特に、レンダリングエンジンが光レンダリングを最適化するために供給され得る反射パラメータの一部を形成し得る。
【0056】
説明されていないが、仮想試用される化粧品の選択は、従来通り、パラメータが利用可能であり、且つ仮想試用が可能である製品カタログの全て又は一部を提示するインターフェースから行われ得る。
【0057】
さらに、ステップの全て又は一部は、コンピュータによって実施されることを意図しており、この目的を達成するために、本出願は、命令を含むコンピュータプログラム製品にも関連し、コンピュータプログラム製品は、プログラムがコンピュータによって実行されると、方法の少なくとも特徴的なステップの実施をもたらす。好ましくは、プログラムは、また、仮想試用システム及びレンダリングエンジンを実施する。本出願は、また、メモリを含むシステムに関連し、プログラム製品がメモリに記憶される。システムは、また、方法を実施するために必要な任意の追加のデバイス、特に、任意の測色データ取得デバイスを含み得る。
【国際調査報告】