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特表2024-546345分光検出器のエネルギー較正をするための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】分光検出器のエネルギー較正をするための方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/17 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01T1/17 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539575
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2022088055
(87)【国際公開番号】W WO2023126509
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】2114708
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(71)【出願人】
【識別番号】518039545
【氏名又は名称】サントラルスペレック
【氏名又は名称原語表記】CENTRALESUPELEC
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】511230347
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ティス ケリアン
(72)【発明者】
【氏名】フリジェリオ アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】コラス セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ル ブリュスケ ローラン
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA21
2G188AA23
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188BB09
2G188CC01
2G188CC08
2G188CC28
2G188CC29
2G188DD13
2G188EE01
2G188EE06
2G188FF30
(57)【要約】
本発明は、X線又はガンマ線光子の分光検出器によって取得された較正スペクトルを処理する方法である。この方法は、較正関数のパラメータ形式を考慮することを含み、較正関数は、エネルギーチャネルの位置をエネルギー値に関連付ける。この方法は、較正スペクトルのピークのチャネルと較正同位体の放出エネルギーとを比較することを含む。この比較により、較正関数のパラメータの値を定義することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光測定装置(1)によって形成された較正スペクトル(y)を処理する方法であって、前記分光測定装置は、
‐ 粒子を検出するように構成され、かつ、各検出において、その振幅が、検出器内で相互作用した粒子のエネルギーに依存するパルスを形成するように構成された検出器(10)と、
‐ スペクトルを形成するように構成された分光測定回路(12,13)とを備え、前記スペクトルは、複数のチャネル内で検出された粒子の数に対応し、各チャネルは、ランクが割り当てられ、パルスの振幅は、各ランクに対応し、
前記方法は、
‐ a)異なる既知の放出エネルギー(E′)を有する複数の粒子を検出器へ放出する較正物体(2)の方を向くように、前記分光測定装置を配置するステップと、
‐ b)前記検出器によって前記複数の粒子の一部を検出し、検出された粒子の較正スペクトル(y)を形成するステップであって、前記較正スペクトルは、複数の異なるピークを含み、各ピークは既知のエネルギーに対応する、ステップと、
‐ c)前記較正スペクトルのピークを検出し、検出された各ピークに対しチャネルのランク(k)を割り当てるステップと、
‐ d)ステップc)において異なるピークに対して割り当てられたチャネルのランクと前記放出エネルギーから(E′)、較正関数を決定するステップであって、前記較正関数は各チャネルの前記ランクからエネルギーを決定し、較正関数は全単射関数である、ステップとを含み、
ステップd)は、
‐ d-i)前記較正関数(f)の解析モデルを考慮するサブステップであって、前記解析モデルは、一組のパラメータ(β)によってパラメータ化される、サブステップと、
‐ d-ii)各パラメータの異なる値について、
・ 検出された各ピークに割り当てられた各チャネルのランクに対して前記較正関数を適用し、各ランクについて、前記較正関数によって決定されたエネルギーを得るサブステップ、
・ 又は、前記較正関数の逆関数を各放出エネルギーに適用して、各放出エネルギーについて、前記逆関数によって決定されたチャネルを得るサブステップと、
‐ d-iii)各パラメータの値を決定するサブステップであって、
・ d-ii)で決定されたエネルギーが、前記較正物体の前記放出エネルギーに最も近くなるためのパラメータの値を決定するサブステップ、
・ d-ii)で決定されたチャネルが、検出された各ピークに割り当てられたチャネルに最も近くなるためのパラメータの値を決定するサブステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
サブステップd-iii)は、
‐ 各パラメータL(β|κ,σ,E′)の値の尤度関数を計算することと、
‐ 前記尤度関数を最大化する各パラメータ
の値を推定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
‐ 前記ステップc)は、各ピークの幅(w)を決定するステップを含み、
‐ 前記尤度関数は、各ピークの前記幅が考慮される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サブステップd-iii)は、
‐ ステップc)に続いて、異なる複数のペア((E′;k))を考慮することと、各ペアは、放出エネルギーと、ピークに割り当てられたチャネルを含み、
‐ 前記較正関数がいくつかのペアを関連付けることを可能にするための各パラメータの値を決定することと、決定された各値は、各パラメータの初期値を形成し、
‐ 前記尤度関数を最大にする各パラメータの値が、前記パラメータの初期値の近くに定義された検索範囲において推定されるように、各初期値について、前記初期値の近くに広がる検索範囲を定義することとを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記サブステップd-iii)は、最適化アルゴリズムによって実行される、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップc)は、前記ピークの選択基準に応じて、前記較正スペクトルのピークを選択することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記選択基準は、各ピークで検出された光子の数、又は各ピークについて決定された信号対雑音比である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記サブステップd-iii)は、少なくとも1つのパラメータの値に関するアプリオリを考慮して、前記パラメータの値を決定することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子は、光子、中性子、又は荷電粒子から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
物体から放出された粒子のスペクトルを取得するように構成された装置(1)であって、
‐ 粒子を検出するように構成され、かつ、各検出において、その振幅が、検出器内で相互作用した粒子によって放出されたエネルギーに依存するパルスを形成するように構成された検出器(10)と、
‐ 前記検出器によって検出されたパルスの振幅の分布に対応するスペクトル(y)を形成するように構成された分光測定回路(12)と、
‐ 前記スペクトルから、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法の前記ステップd)を実行するようにプログラムされた処理ユニット(14)と
を備えた、装置(1)。
【請求項11】
検出された粒子のエネルギーを表すスペクトルから、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法の前記ステップd)を実行するための命令を含む、コンピュータに接続されるように構成された媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、放射線の検出に応用される分光法である。
【0002】
先行技術
ガス状の検出材料、半導体又はシンチレータに基づいて、電離放射線を検出する装置は、検出材料中の放射線の相互作用によって形成された電気パルスを取得することができる。各パルスの振幅は、各相互作用中に放射線によって蓄積されるエネルギーに依存する。これらの装置は、通常、分光測定回路に接続される。このような装置は、スペクトルを取得することができ、スペクトルは、照射期間中に検出された振幅のヒストグラムに対応する。スペクトルは、複数の異なる振幅チャネル、通常、数百又は数千のチャネルに従って形成される。各チャネルは、対応する狭い振幅帯域を有する。各チャネルは、照射期間中に検出されたパルスの数に対応する値が割り当てられ、その振幅は、チャネルに対応する振幅帯域内である。
【0003】
分光測定システムは、現在広く工業化されている。応用分野は広く、特に、核廃棄物、装置若しくは施設の測定、又は環境の放射線モニタリングを含む。ソフトウェアは、パルスの処理、測定の駆動及び自動解釈をパラメータ化することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いくつかのステップは困難であり、手動設定に関する広い余地を残している。そのことは、例えば、エネルギー較正にも当てはまり、これは、パルスの振幅と、パルスを発生させた相互作用によって放出されたエネルギーとの関係の確立を可能にする。振幅とエネルギーとの関係は、使用される検出器に依存し、また、分光測定回路のパラメータ化、例えば、増幅利得、パルス整形パラメータ又はチャネル数に依存する。さらに、同じ装置について、設定を変更しない限り、振幅とエネルギーとの関係は変わり易く、定期的な較正が必要である。
【0005】
エネルギー較正は、通常、その放出エネルギーが分かっている較正物体に、検出器を曝すことによって行われる。較正物体は、その放出エネルギーが分かっている1以上の同位体を含み得る。この較正は、同位体によって放射された光子のスペクトルを取得することと、次いで、スペクトルに存在する主要なピークを特定することを含む。検出されたピークの一部は、既知の放出エネルギーに対応する。検出された各ピークは、中心チャネルの両側に広がっている。エネルギー較正は、異なるチャネル(すなわち、ピークの中心チャネル)-放出エネルギーのペアの特定を可能にする。これらの異なるペアから、各チャネルのランクをエネルギーに関連付ける、較正関数と呼ばれる分析関数が決定される。
【0006】
エネルギー較正は、頻繁な操作であり、測定値の解釈を誤らないように正確に行わなければならない。以下に記載する発明は、エネルギー較正の自動化及び再現性を容易にする。また、本発明は、考慮されるピークの数を最大化して、較正関数を決定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の主題は、分光測定装置によって形成された較正スペクトルを処理する方法であって、分光測定装置は、
‐ 粒子を検出するように構成され、かつ、各検出において、その振幅が検出器内で相互作用した粒子のエネルギーに依存するパルスを形成するように構成された検出器と、
‐ スペクトルを形成するように構成された分光測定回路とを備え、スペクトルは、チャネル内で検出された粒子の数に対応し、各チャネルは、ランクが割り当てられ、各ランクは、対応するパルスの振幅を有し、
当該方法は、
‐ a)異なる既知の放出エネルギーを有する複数の粒子を検出器へ放出する較正物体の方を向くように、分光測定装置を配置するステップと、
‐ b)検出器によって粒子の一部を検出し、検出された粒子の較正スペクトルを形成するステップであって、較正スペクトルは複数の異なるピークを含み、各ピークは既知のエネルギーに対応する、ステップと、
‐ c)検出された各ピークに対してチャネルのランクを割り当てるステップと、
‐ d)ステップc)において複数の異なるピークに割り当てられたチャネルのランクと、放出エネルギーに基づいて、較正関数を決定するステップであって、較正関数は各チャネルのランクに基づいてエネルギーを決定し、較正関数は全単射関数である、ステップとを含み、
ステップd)は、
‐ d-i)較正関数の解析モデルを考慮するサブステップであって、解析モデルは一組のパラメータによってパラメータ化される、サブステップと、
‐ d-ii)各パラメータの複数の異なる値について、
・ 検出された各ピークに割り当てられた各チャネルのランクに対して較正関数を適用し、各ランクについて、較正関数によって決定されたエネルギーを取得するサブステップと、
・ 又は、各放出エネルギーに対して較正関数の逆関数を適用し、各放出エネルギーについて、逆関数によって決定されたチャネルを取得するサブステップと、
‐ d-iii)各パラメータの値を決定するサブステップであって、
・ d-ii)で決定されたエネルギーが、較正物体の放出エネルギーに最も近くなるためのパラメータの値、
・ d-ii)で決定されたチャネルが、検出された各ピークに割り当てられたチャネルに最も近くなるためのパラメータの値とを決定する、サブステップと、
を含むことを特徴とする。
【0008】
一実施形態によれば、サブステップd-iii)は、
‐ 各パラメータの値の尤度関数を計算することと、
‐ 尤度関数を最大化する各パラメータの値を推定することを含み得る。
【0009】
ステップc)は、各ピークの幅を決定することを含む得る。そして、尤度関数は、各ピークの幅が考慮される得る。
【0010】
サブステップd-iii)は、
‐ ステップc)に続いて、異なる複数のペアを考慮することと、各ペアは、放出エネルギーと、ピークに割り当てられたチャネルを含み、
‐ 較正関数がいくつかのペアを関連付けることを可能にするための各パラメータの値を決定することと、決定された各値は、各パラメータの初期値を形成し)、
‐ 尤度関数を最大にする各パラメータの値が、前記パラメータの初期値の近くに定義された検索範囲内で推定されるように、各初期値について、前記初期値の近くに広がる検索範囲を定義することを含み得る。
【0011】
サブステップd-iii)は、最適化アルゴリズムによって優先的に実行される。1つの可能性によれば、ステップc)は、ピークの選択基準に応じて、較正スペクトルのピークを選択することを含む。選択基準は、各ピークにおいて検出される光子の数、又は各ピークについて決定される信号対雑音比とし得る。
【0012】
サブステップd-iii)は、少なくとも1つのパラメータの値に関するアプリオリを考慮して、前記パラメータの値を決定することを含み得る。
【0013】
粒子は、光子、中性子、荷電粒子の中から選択し得る。
【0014】
本発明の第2の主題は、物体によって放出された粒子のスペクトルを取得するように構成された装置であって、この装置は、
‐ 粒子を検出するよう構成され、かつ、各検出において、その振幅が検出器内で相互作用した粒子によって放出されたエネルギーに依存するパルスを形成するように構成された検出器と、
‐ 検出器によって検出されたパルスの振幅の分布に対応するスペクトルを形成するように構成された分光測定回路と、
‐ スペクトルに基づいて、本発明の第1の主題に係る方法のステップd)を実行するようにプログラムされた処理ユニットとを備える。
【0015】
本発明の第3の主題は、コンピュータに接続されるように構成された媒体であり、当該媒体は、検出された粒子のエネルギーを表すスペクトルに基づいて、本発明の第1の主題に係る方法のステップd)を実行するための命令を含む。この媒体は、コンピュータに組み込むことができ、又は、有線若しくは無線リンクによってコンピュータに接続することができる。
【0016】
本発明の第4の主題は、分光測定装置によって形成された較正スペクトルを処理するための方法であり、分光測定装置は、
‐ 粒子を検出するように構成され、かつ、各検出において、その振幅が検出器内で相互作用した粒子の質量に依存するパルスを形成するように構成された検出器と、
‐ スペクトルを形成するように構成された分光測定回路とを備え、スペクトルは、複数のチャネル内で検出された粒子の数に対応し、各チャネルは、ランクが割り当てられ、各ランクは、パルスの振幅に対応し、
当該方法は、
‐ a)既知の質量の粒子を含む較正物体に分光測定装置を曝すステップと、
‐ b)検出器によって粒子の全部又は一部を検出し、検出された粒子の較正スペクトルを形成するステップであって、較正スペクトルは複数の異なるピークを含み、各ピークは既知の質量に対応する、ステップと、
‐ c)各ピークに対してチャネルのランクを割り当てるステップと、
‐ d)ステップc)において複数の異なるピークに割り当てられたチャネルのランクと、既知の異なる質量に基づいて、較正関数を決定するステップを含み、較正関数は、各チャネルのランクから質量を決定し、較正関数は全単射関数であり、
当該方法は、ステップd)において、
‐ d-i)一組のパラメータによってパラメータ化される、較正関数の分析モデルを考慮することと、
‐ d-ii)各パラメータの異なる値について、
・ 各ピークに割り当てられた各チャネルのランクに対して較正関数を適用し、各ランクについて、較正関数によって決定された質量を取得すること、
・ 又は、各質量に対して較正関数の逆関数を適用して、各質量について、逆関数によって決定されたチャネルを取得することと、
‐ d-iii)パラメータの値を決定することであって、
・ d-ii)で決定されたエネルギーが、較正物体の粒子の質量に最も近くなるためのパラメータの値と、
・ d-ii)で決定されたチャネルが、各ピークに割り当てられたチャネルに最も近くなるためのパラメータの値とを決定することと
を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明は、以下に列挙された図に関連して、以下の説明において示される例示的な実施形態の説明を読むことにより、より一層、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施を可能にする装置の一例を示す。
図2A図2Aは、スペクトルの一例を示す。
図2B図2Bは、図2Aの詳細である。
図3図3は、スペクトルのピークと、スペクトルに対する二階線形微分作用素の適用を示す。
図4図4は、本発明に係る方法の実施形態の主要なステップを示す。
図5図5は、放出エネルギーと検出ピークの中心チャネルとの相関を示す。
図6図6は、検出ピークの中心チャネル(X軸)と放出エネルギー(Y軸)との相関を示す。
図7A図7Aは、ゲルマニウム検出器を用いて取得された較正スペクトルを示す。また、複数の異なる検出ピークに割り当てられたチャネルの位置が示されている。
図7B図7Bは、ゲルマニウム検出器を用いて取得された較正スペクトルを示す。また、複数の異なる検出ピークに割り当てられたチャネルの位置が示されている。
図7C図7Cは、前記パラメータの異なる値に対する較正関数のパラメータの尤度関数の値を示す。図7Cは、図7A及び図7Bに示すスペクトルに対応する。
図7D図7Dは、図7Cの詳細である。
図7E図7Eは、前記パラメータの異なる値に対する較正関数の別のパラメータの尤度関数の値を示す。図7Eは、図7A及び図7Bに示すスペクトルに対応する。
図7F図7Fは、図7Eの詳細である。
図7G図7Gは、図7Aに示すスペクトルの検出ピークに割り当てられたチャネル(X軸)と放出エネルギー(Y軸)との相関を示す。
図8A図8Aは、LaBr3(臭化ランタン)検出器を用いて取得された較正スペクトルを示す。また、検出された複数の異なるピークに割り当てられたチャネルの位置と、その位置に対する不確実性の範囲が示されている。
図8B図8Bは、前記パラメータの複数の異なる値に対する較正関数のパラメータの尤度関数の値を示す。図8Bは、図8Aに示すスペクトルに対応する。
図8C図8Cは、図8Bの詳細である。
図8D図8Dは、前記パラメータの複数の異なる値に対する較正関数の別のパラメータの尤度関数の値を示す。図8Dは、図8Aに示すスペクトルに対応する。
図8E図8Eは、図8Dの詳細である。
図8F図8Fは、図8Aに示すスペクトルの検出ピークに割り当てられたチャネル(X軸)と放出エネルギー(Y軸)との相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施を可能にする装置1が、図1に示されている。この装置は、測定システムであり、物体2によって放射された放射線5と相互作用可能な検出器10を含む。物体2は、ここでは、核廃棄物であり、これは異なる複数の放射性同位体2を含み得る。通常、測定される物体に存在する可能性のある放射性同位体は、予め分かっている。特に、分析される物体に潜在的に存在する放射性同位体を含むリストを作成することが可能である。添え字jは、各放射性同位体を示す。
【0020】
図に示す例では、検出器10は、電離光子放射線を検出するように構成されている。電離光子放射線は、例えば、そのエネルギーが1keVから2MeVの間の光子によって形成されるXタイプ又はガンマタイプの光子放射線であると理解されている。本発明に係る方法は、その他の粒子、例えば、中性子、荷電粒子(例えば、α線又はβ線)、又は光子の検出に応用される。
【0021】
図に示す例では、検出器は、ゲルマニウム(Ge)型の半導体材料を備えるが、半導体材料は、電離光子の検出のために一般的に実装される、例えば、Si、CdTe、CdZnTe型の半導体材料でもよい。入射放射線を形成する光子は、検出器の材料と相互作用する。検出器の材料は、バイアス電圧Vが印加される。各相互作用は、電荷キャリアを生成し、これは、電極、通常はアノードによって収集される。
【0022】
検出器10内での相互作用中に電離放射線によって放出されるエネルギーEの影響下で、電荷Qの収集が可能であれば、その他の種類の検出器、例えば、光子/電荷キャリアコンバータに接続されたシンチレータ、又は、電離チャンバータイプのガス検出器を利用できる。例示し得るシンチレータタイプの通常の検出器は、NaI(Tl)又はLaBrを含む。
【0023】
検出器10は、パルスを生成するように構成された電子回路12に接続され、その振幅は、相互作用中に収集される電荷の量に依存し、また、当該電荷の量に比例することが好ましい。電荷の量は、相互作用中に放射線によって蓄積されるエネルギーに対応する。
【0024】
図に示す例では、検出器10は、クライオスタット16に接続され、これは、Ge検出器を、1つの動作温度に維持する液体窒素を含む。
【0025】
電子回路12は、当該電子回路の下流に配置された分光ユニット13に接続され、これにより、取得期間中に形成された全てのパルスを一緒に収集することが可能になる。各パルスは、検出材料における入射放射線の相互作用に対応する。そして、分光回路が、その振幅Aに応じてパルスを分類し、その振幅に応じて検出されたパルスの数を含むヒストグラムを提供する。このヒストグラムは、振幅スペクトルである。通常、それは、マルチチャネルアナライザーを用いて得られる。各振幅は、チャネルに従って離散化され、各チャネルは、振幅帯域が割り当てられる。スペクトルの各チャネルの値は、その振幅が、チャネルに割り当てられた振幅帯域の範囲内であるパルスの数に対応する。各振幅帯域は、エネルギー帯に対応し、その相関は双方向である。したがって、各チャネルは、エネルギー帯又は振幅帯域が割り当てられる。
【0026】
振幅とエネルギーとの関係は、そのエネルギーが分かっている放射線を放射する、較正物体を用いて、検出器を照射することによって行うことができる。これは、特に、既知のエネルギー値を有し、少なくとも1つの不連続性又はエネルギーピークを有する放射線である。この操作は、通常、エネルギー較正という用語で参照される。ガンマ分光法の場合、検出器は、152Euタイプの較正線源に曝され、既知の放出エネルギーを有する光子を生成する。また、以下に例示的な実施形態の1つにおいて説明するように、他の同位体線源を実装することも可能である。1つの同位体又は複数の同位体は、少なくとも2つの異なる放出エネルギーに従って光子が放出されることが好ましい。放出エネルギーは、最小値と最大値の間に広がる。最小値と最大値の差は、検出器が使用されることが想定されるスペクトル領域を網羅することが好ましい。
【0027】
エネルギー較正は、較正関数fの確立を可能にし、これは、測定された振幅とエネルギーとの分析的な関係の確立を可能にする。較正関数fを考慮することは、変数の変更により、チャネルの値を、振幅ではなく、エネルギー値に割り当てることを可能にする。実際、振幅は、検出器及び設定に依存するが、エネルギーは、検出器に依存しない、設定された物理量に対応する。
【0028】
スペクトルyは、エネルギー又は振幅チャネルに従って検出及び離散化された各パルスの振幅のヒストグラムである。各チャネルは、振幅帯域が割り当てられ、これは、較正関数を利用することにより、エネルギー帯になる。スペクトルは、ベクトル形式(y,...y,...y)で表すことができ、ここで、nは、チャネルの総数に相当する。各チャネルは、ランクkが割り当てられ、ここで、1≦k≦nである。ランクkの各チャネルは、低振幅Aと高振幅Ak+1によって境界が定められ、その振幅がAとAk+1の間にある場合、検出されたパルスは、ランクkのチャネルが割り当てられる。
【0029】
各チャネルの低振幅Aは、低エネルギーeに対応する。各チャネルの高振幅Ak+1は、高エネルギーek+1に対応する。振幅-エネルギーの相関は、先行技術に関連して説明した較正関数fによって確立される。したがって、
【数1】
及び
【数2】
であり、βは、以下に説明する較正関数fの一組のパラメータである。
【0030】

は、スペクトルのチャネル数nに対するランクkのチャネルの中心の位置に対応する。これは、各チャネルの標準化されたランクであり、1(k=1)と(k=n)の間にある。標準化は、チャネル数nに依存しない較正関数の確立を可能にし、後者は、パラメータ化することができる。
【0031】
この装置は、処理ユニット14を備え、これは、図4に関連して説明されるアルゴリズムのステップを実行するようにプログラムされる。処理ユニット14は、分光ユニット13に接続され、そこから、測定された各スペクトルを受ける。
【0032】
ガンマ分光法による測定の目的は、物体2に存在する同位体2を特定することであり、それぞれの活性を推定することが好ましい。図2Aは、同位体152Euを含む線源に曝されたゲルマニウム検出器から得られたスペクトルyを示す。X軸は、チャネルに対応し、Y軸は、その振幅が各チャネルに対応するパルスの数に対応する。図2Bは、図2Aの詳細図であり、図2Aに描かれた矩形領域に対応する。
【0033】
表されているスペクトルyは、いくつかのピークを含み、各ピークは、物体2に存在する同位体の放出エネルギーに対応する。これらのピークは、各スペクトルの有用な情報を形成し、そこから同位体を特定し、それぞれの活性を定量化することが可能である。スペクトルはまた、連続部分を含み、検出器内の光子の散乱又は検出器に到達する前の光子の散乱に対応する。この連続部分は、各ピークにおけるスペクトルの部分又は各ピークの間のスペクトルの部分に対応する。スペクトルはまた、バックグラウンドノイズ成分を含み、これは、統計的な変動によって表される。
【0034】
スペクトル処理のルーチンステップの1つは、各ピークの検出である。図2Bでは、異なるピークが示されている。X軸は、振幅チャネルに対応し、Y軸は、各チャネルで検出されたパルスの数に対応する。そして、処理ユニットは、各ピークのチャネルの特性、例えば、ピークが中心に位置する中心チャネルを決定することができる。中心チャネルは、通常、検出されたパルスの最大数を含むチャネルである。
【0035】
各ピークは、2つのチャネルによって境界が定められ、それぞれが各ピークの下限inf及び上限supを構成する。その結果、各ピークは、振幅の昇順で、順番iが割り当てられる。順番iの各ピークは、その中心チャネルのランクkのチャネルによって識別され、後者は、ピークの下限inf及び上限supの間に配置される。
【0036】
1つの可能性として、各ピークを手動で境界を定めることが可能である。各ピークを検出すること及び各ピークの境界を定めることは、例えば、dで示す二階微分作用素を実装することにより、自動的に行うこともできる。図3は、1つのピークに対応する1つのスペクトルyの一部を示す。図3では、スペクトルに適用される、d(y)で示す2階微分作用素も示されている。d(y)の局所的な最小値に対応する垂直線は、ピークの中心に対応するランクkのチャネルの識別を可能にする。この微分作用素は、ウィンドウ幅11の三次のSavitzky又はGolayフィルタとし得る。
【0037】
図4は、較正関数を決定するための方法の主要なステップを概略的に示しており、これらのステップは、以下で説明される。
【0038】
ステップ100:較正スペクトルyの取得。このステップの間、検出器は、較正物体に曝される。較正物体は、通常、その放出エネルギーが分かっている1つ以上の較正同位体を含む。
【0039】
ステップ110:較正スペクトルのピークの検出と、検出された各ピークに対するチャネルの割り当て。k....k....kは、較正スペクトルで検出された各ピークに割り当てられたチャネルのランクを示すために使用される。Iは、較正スペクトルyにおいて検出されたピークの数を示し、これは、それぞれ較正同位体の放出エネルギーE′...E′....E′に対応する。
【0040】
較正スペクトルyの各ピークは、半値全幅(largeur a mi-hauter)wに応じて広がる。半値全幅の一例を図2Bに示す。
【0041】
半値全幅はまた、通常の手段によるピークの検出において決定される。例えば、ピークの検出が、図3に関連して説明したように、Savitzky及びGolayフィルタを利用して行われる場合、各ピークの半値全幅は、ピークに対応する局所的な最小値の両側の関数d(y)の2つのゼロ交差の間のチャネル数を決定することによって推定できる。図3は、半値全幅wを示す。この半値全幅は、手動によるピークの境界の決定に続く、その他の通常の分光ソフトウェア手段によって決定できる。
【0042】
ステップ120:較正関数fの解析モデルの考慮。このステップでは、較正関数の解析モデル、例えば、線形関数又は所定の次数の多項式が定義される。このモデルは、一組のパラメータβによってパラメータ化される。
【0043】
検出されたピークに対応する各エネルギーEが、ランクkのチャネルの中心に位置すると仮定し、これは、eとei+1との間のエネルギーのパルスを一緒に収集する。したがって、数式3が想定される。
【数3】
(1)、(2)及び(3)により、
【数4】
ここで、
‐nは、スペクトルのチャネルの総数に対応する。
‐k及びk+1は、それぞれエネルギーEに対応するランクiの振幅チャネルの最小振幅と最大振幅である。
-1/2は、ランクiのチャネルの中央振幅に対応し、これは、放出エネルギーに対応することが想定される。
【0044】
較正関数は線形関数とすることができ、その場合、一組のパラメータは、β=(β;β)であり、
【数5】
である。
【0045】
2次多項式の場合、較正関数は、数式5′のタイプである。
【数5】
一組のパラメータは、β=(β;β;β)である。
【0046】
較正関数fは、必然的に全単斜関数である。通常、チャネルは、増加する振幅に従って分類され、この場合、較正関数は増加関数である。
【0047】
は、較正関数fの利用により、ランクkのチャネルの中央振幅に対応するエネルギーを表す。したがって、較正関数fは、ランクkの各チャネルに対応するエネルギーを生成する。
【0048】
較正物体は、放出エネルギーE′...E′...E′を有する光子を放出する。Jは、放出エネルギーの数に対応する。例えば、ピーク内の光子の量が小さ過ぎる場合、放出エネルギーに対応する全てのピークは、ピークの検出によって検出されないことがある。検出された特定のピークに対応するランクk....k....kは、特定の放出エネルギーE′...E′...E′に対応する。
【0049】
図5は、検出された各ピークに対応するチャネルk....k....k(I=5)の一例を昇順(k>ki-1)で示し、同位体の放出エネルギーE′...E′...E′を昇順(E′>E′j+1)(J=7)で示す。較正関数は、
に従って、発生(オカレンス)の数を最大化する。
【0050】
図5では、各発生を矢印で示す。2つの放出エネルギーが近接している場合、それらは同じランクのチャネルに関連付けることができる。図5では、この特定のケースが、エネルギーE及びEによって示されている。
【0051】
ステップ130:確率密度の確立
【0052】
以下のように、各放出エネルギーE...E...Eは、関数f -1の適用により、ランクx...x...xの対応するチャネルを有する。
【数6】
【0053】
表記f -1(E′,β)は、f -1がβに依存することを示す。
【0054】
上述したように、検出されたピークは、特定のスペクトル幅wを有し、チャネルのランクkに関する不確実性をもたらす。各放出エネルギーE′について、ピークが検出されたチャネルのランクkは、以下のように、所定の確率密度g、例えば、ガウス分布に従う変数であると捉えることができる。
【数7】
ここで、
‐xは、放出エネルギーEのピークに関連するチャネルの「真の」ランクである。
‐kは、検出されたi番目のピークに割り当てられたランクである。
【0055】
(7)から初めて、次のように書くことができる。
【数8】
ここで、
‐κは、検出されたピークに対応するチャネルの全てのランクを含むベクトルであるκ=k...k...kI。
‐P(i,j)は、ランクkのピークが放出エネルギーE′に対応する確率である。
‐σは、ベクトル(σ...σ...σ)である。
【0056】
全ての組み合わせk,E′は、同じ確率であると見なされる。したがって、
【数9】
である。
【0057】
ステップ140:尤度関数及び最大化関数の確立。
【0058】
(7)、(8)、及び(9)を考慮することにより、次のように書くことができる。
【数10】
【0059】
そこから、以下のように、L(β|κ,σ,E′)で表される、βの尤度関数が導出される。
【数11】

E′は、較正に使用される放射性核種の放出エネルギーに相当する:E′=E′...E′...E′
【0060】
尤度関数を最大にするパラメータ
のベクトルは、次のように推定できる。
【数12】
【数13】
【0061】
ベクトル
は、E′とκとの相関の数が最大になるベクトルである。これにより、
に従って発生の最大値が得られる。
【0062】
このようにして得られたベクトル
によって、較正関数fを定義することができる。
【0063】
図6は、較正関数fが線形関数である状況を示している。較正関数fは、ランクkの各チャネルについて以下の通りである。
【数14】
【0064】
反対に、エネルギーEは、以下のように、ランクkのチャネルに対応する。
【数15】
【0065】
数式(13)は、次のようになる。
【数16】
【0066】
(16)で表される最適化アルゴリズムは、β及びβの所定の値の近くで実装できるため有利である。これにより、所定の検索範囲内でβ及びβの所定の初期値の周辺に最大化アルゴリズムを利用できる。これにより、β及びβの局所的な最大値の決定に対応する「最適化トラップ」を回避できる。また、これにより、計算時間を最適化できる。検索範囲は、値β及びβの各ペアの周辺で定義される。
【0067】
一般に、較正関数の種類に関わらず、ベクトル
は、最適化アルゴリズムを利用することによって決定されるため有利であり、ベクトル
の離散的な初期値の近くの限定された検索範囲に基づいて、(16)を解くことができる。この検索範囲は、各初期値の近くに広がる連続的な区間に対応する。
【0068】
限定された検索範囲の定義について、図6に関連して以下に説明する。
【0069】
図6では、X軸は、各チャネルの標準化されたランクk/nに対応する。Y軸は、最も高い放出エネルギーE′j,maxによって標準化された放出エネルギーE′に対応し、E′j,max=E′である。放出エネルギーは、それにチャネルが割り当てられたときに、検出される。
【0070】
較正スペクトルにおけるピークの検索によって特定されたチャネルkは、黒い垂直線で表されている。前述したように、エネルギーチャネルは、不確実性wが割り当てられており、黒い垂直線の両側にある2本の細い垂直線で表されている。標準化された放出エネルギー
は、水平線に対応する。これらは正確な値であり、関連する不確実性はない。
【0071】
関連する不確実性を考慮して、複数の直線が灰色でプロットされており、これは、標準化された放出エネルギー
と検出チャネルkとの間の少なくとも2つの交点を通る。各交点は、相関
に対応する。チャネルのランクを振幅の昇順で並べると、較正関数は必然的に増加するということが考慮されている。したがって、増加関数(β>0)に対応し得る直線のみが表わされている。黒で表された直線は、交点の最大数を示す直線であり、この場合、(E′,k)、(E′,k)、(E′,k)である。
【0072】
図6は、前述した最適化アルゴリズムを実行するための限定された検索範囲の定義を示している。これは、全単射較正関数の利用により、E′(又は
)と、f(k)との間、反対に、kとf -1(E′)との間で発生を生成する較正関数のパラメータの初期値を決定することを含む。換言すると、異なる複数のペアが形成され、各ペアは、放出エネルギーと、検出されたピークに割り当てられたチャネルのランクとを含む。(16)に記載された最適化アルゴリズムは、較正関数のパラメータのベクトル
の初期値の近くで実行され、そのため、較正関数は、それぞれのエネルギー及びランクが一方のペアと他方のペアとで異なる少なくとも2つのペアについて、換言すると、2つのペア(E′;k)及び(E′j′;k′i′)について、E′=f(k)であることを裏付ける関数であり、
である。
【0073】
図6から、β及びβの異なる初期値を確立することが可能である。
【数17】
及び
【数18】
【0074】
変形例によれば、ステップ130及び140は、最も強い放出エネルギーE′及び/又はチャネルkを選択することによって実行され、そのため、ピークの表面が最も高く、又は信号対雑音比が高いと考えられる。これにより、計算時間を最適化することができる。この変形例によれば、放出エネルギーの数及びチャネルの数を数十に制限することができる。例えば、I=30及びJ=20とし得る。より一般的には、この方法は、各ピークの選択基準を考慮することを含む。ステップ130及び140において処理されるピークは、選択基準を満たすピークである。
【0075】
変形例によれば、ステップ140では、一組のパラメータβを構成する1つ又は複数のパラメータの値に関するアプリオリを考慮する。例えば、1つ又は複数のパラメータについて変動範囲が定義される。アプリオリが考慮される各パラメータは、所定の変動範囲内であることが必要である。アプリオリを考慮することにより、最適化アルゴリズムが非現実的なパラメータの値を生成するのを避けることができる。アプリオリは、最適化アルゴリズムを実行するための制約であり、較正関数が単調であるという条件に追加される。
【0076】
実験試験
本発明者らは、2種類の検出器、すなわち、図1に模式的に示すGe(ゲルマニウム)型の検出器と、LaBr(臭化ランタン)型の検出器を用いて、前述した較正方法を実行した。ここで、その較正の結果を報告する。
【0077】
最初の一連の試験では、ゲルマニウム検出器のエネルギー較正を実施した。放射能35.04KBqの152Euの標準的な線源が使用された。較正スペクトルが3時間、取得された。この線源は、検出器から40cmの距離に設置された。スペクトルは、8192個のチャネルで取得された。較正関数は、線形関数であると見なした。
【0078】
図7A及び図7Bは、ピーク検出アルゴリズムから得られたチャネルを示す。ランク6600のチャネルを超えて検出されたピークがないことが分かる。図7A及び図7Bでは、X軸はチャネルに対応し、Y軸は、検出されて各チャネルに割り当てられたパルスの数(すなわち、数)に対応する。これは、従来のスペクトル表現である。
【0079】
ピークの検出により、検出されたピークと放出エネルギーとの可能性のあるチャネルの相関の179700個のペアを得ることが可能になった。較正関数が増加関数であるということを考慮することにより、82650個の可能性のあるペアが得られる。これは、J=20(考慮された放出エネルギーの数)及びI=30(検出されたピークの数)に対応し、増加関数である較正関数に対応する可能性のあるペアの数Npairingsは、次の式に等しい。
【数19】
【0080】
図7Cは、β(X軸)に応じた尤度関数Lの値(Y軸)を示す。図7Dは、図7Bの詳細である。この尤度関数を最大化するβの値は、0.3689keVに等しい。
【0081】
図7Eは、β(X軸)に応じた尤度関数Lの値(Y軸)を示す。図7Fは、図7Eの詳細である。この尤度関数を最大化するβの値は、1907.2475keVに等しい。
【0082】
図7Gは、前述した図6と同様の表現である。X軸は、検出されたピークのチャネルのランクと、関連する不確実性に対応する。Y軸は、152Euの放出エネルギー(keV)に対応する。最適値β及びβを考慮した較正関数を利用することにより、検出されたピークのチャネルと放出エネルギーとの相関の数を最大化できる。
【0083】
2回目の一連の試験では、LaBr検出器のエネルギー較正を行った。22Na、57Co、60Co及び133Baの標準的な線源が使用された。主な放出エネルギーは、276.4keV、302.85keV、356.01keV、383.85keV、511keV、1173.23keV、1274.54keV、1332.49keVであった。スペクトルは、4096個のチャネルで取得された。較正関数は、線形関数であると見なした。
【0084】
図8Aは、ピーク検出アルゴリズムから得られたチャネルを示す。8つのピークが検出され、これは、エネルギー放出の数に対応する。これらのピークの検出は、較正関数が増加関数であるということを考慮することにより、1568個のポイントを得ることができた。
【0085】
図8Bは、β(X軸)に応じた尤度関数Lの値(Y軸)を示す。図8Cは、図8Bの詳細である。この尤度関数を最大化するβの値は、-120.7273keVに等しい。
【0086】
図8Dは、β(X軸)に応じた尤度関数Lの値(Y軸)を示す。図8Eは、図8Dの詳細である。この尤度関数を最大化するβの値は、1607.1911keVに等しい。
【0087】
図8Fは、前述した図7F及び図6と同様である。X軸は、検出されたピークのチャネルのランクと、関連する不確実性に対応する。Y軸は、前述した放出エネルギーに対応する。β及びβの値を考慮した較正関数を利用することにより、検出されたピークのチャネルと放出エネルギーとの相関の数を最大化できる。
【0088】
較正関数は、線形関数とは異なるものでもよい。例えば、較正関数は、2以上の次数の多項式とすることができる。
【0089】
本発明について、ガンマ線分光法に関連して説明してきた。本発明は、他の種類の光子又は他の種類の粒子、特に中性子又は荷電粒子の放射線の分光法へ一般化することができる。本発明はまた、非電離光子、例えば、赤外スペクトル範囲の光子、可視スペクトル範囲の光子、又は近紫外スペクトル範囲の光子の検出において実施することができる。
【0090】
本発明は、質量分析に応用可能であることが理解される。この場合、分光検出器は、その振幅が検出器内で相互作用した粒子の質量に依存するパルスを形成するように構成される。較正関数の確立は、質量の異なる既知の複数の粒子を含む較正物体に検出器を曝すことによって行われる。較正関数は、各パルスの振幅と、検出器によって検出された粒子の質量との間の全単射的な関連付けを可能にする。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
【国際調査報告】